(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160684
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】搾乳システム
(51)【国際特許分類】
A01J 5/003 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
A01J5/003
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024027909
(22)【出願日】2024-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2023075699
(32)【優先日】2023-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度みどりの食料システム戦略実現技術開発・実証事業のうち農林水産研究の推進(委託プロジェクト研究)(繋ぎ牛舎でも利用できる高度な搾乳システムの開発)産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000103921
【氏名又は名称】オリオン機械株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 瑛一
(72)【発明者】
【氏名】町田 一幸
(72)【発明者】
【氏名】石田 三佳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 知之
(72)【発明者】
【氏名】神谷 裕子
(72)【発明者】
【氏名】及川 康平
(57)【要約】
【課題】 作業効率の向上、これに伴う生産性向上を図り、かつ作業者の労力削減を図るとともに、システム構築のコスト削減に寄与する。
【解決手段】 搾乳ユニットUaに支持され、かつ垂直支持部2を昇降可能に支持する支持機構部3と、垂直支持部2の上端2us側又は下端2ds側に設けることにより、乳牛Cの上端位置Cu又は下端位置Cdを検出する高さ方向位置検出部4と、垂直支持部2の下部に一端5sを設けるとともに、他端5tが水平方向Fhに変位可能な支持アーム部5を設け、この支持アーム部5の他端5t側にティートカップTc…を支持するティートカップセット部6を有するティートカップ支持機構部7と、高さ方向位置検出部4の検出結果に対応して垂直支持部2が所定の高さに移動可能にするとともに、ティートカップセット部6に設けた支持アーム部5の他端5tを変位させる操作機構部8とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
係留牛舎における複数のストールに対して設置したガイドレールに沿って移動可能な少なくとも一つの搾乳ユニットを備える搾乳システムにおいて、前記搾乳ユニットを、搾乳対象となる乳牛の側方に位置する設定された搾乳ポジションへ移動させる移動手段を備えるとともに、前記搾乳ユニットに支持され、かつ垂直支持部を昇降可能に支持する支持機構部と、前記垂直支持部の上端側又は下端側に設けることにより、前記乳牛の上端位置又は下端位置を検出する高さ方向位置検出部と、前記垂直支持部の下部に一端を設けるとともに、他端が水平方向に変位可能な支持アーム部を有し、この支持アーム部の他端側にティートカップを支持するティートカップセット部を有するティートカップ支持機構部と、前記高さ方向位置検出部の検出結果に対応して前記垂直支持部が所定の高さに移動可能にするとともに、前記ティートカップセット部に設けた前記支持アーム部の他端を変位させる操作機構部とを有するティートカップセッティング装置1を備えることを特徴とする搾乳システム。
【請求項2】
前記垂直支持部は、上シャフト部と下シャフト部を軸方向に連結支持部を介して連結した連結構造に構成するとともに、前記上シャフト部と前記下シャフト部は上下方向の相対変位が規制され、かつ回動方向の相対変位が許容されるように構成することを特徴とする請求項1記載の搾乳システム。
【請求項3】
前記高さ方向位置検出部は、前記垂直支持部の上部に、一端を設けるとともに、他端側を水平方向に延出して前記乳牛の上端位置に当接可能な所定長さの検出用横バーを備えることを特徴とする請求項1記載の搾乳システム。
【請求項4】
前記検出用横バーは、他端に、前記乳牛の前記上端位置に当接する左右一対の当接部を備えることを特徴とする請求項3記載の搾乳システム。
【請求項5】
前記当接部は、所定の弾性を有する弾性素材により形成することを特徴とする請求項4記載の搾乳システム。
【請求項6】
前記当接部は、棒素材又はチューブ素材を横8の字状に形成した当接ユニット部における下方に突出した左右一対の湾曲部位を用いることを特徴とする請求項4又は5記載の搾乳システム。
【請求項7】
前記当接ユニット部は、一又は二以上使用し、前記乳牛に対して前後方向に配置して構成することを特徴とする請求項4記載の搾乳システム。
【請求項8】
前記当接ユニット部は、水平方向における回動変位を規制する規制部により支持することを特徴とする請求項4記載の搾乳システム。
【請求項9】
前記検出用横バーは、他端側の一部に、前記乳牛の上端位置から延出方向に沿って湾曲又は折曲したフック形状部を有することを特徴とする請求項3記載の搾乳システム。
【請求項10】
前記高さ方向位置検出部は、前記垂直支持部の下端を下方へ所定長さにわたって延出させた検出用縦バーを備えることを特徴とする請求項1記載の搾乳システム。
【請求項11】
前記ティートカップセット部は、乳頭に対する収容口を上方に向けて配した四つのティートカップを保持可能な保持機能部を備えることを特徴とする請求項1記載の搾乳システム。
【請求項12】
前記操作機構部は、少なくとも前記垂直支持部を昇降可能なシャフト昇降駆動部及び前記ティートカップセット部を旋回可能なティートカップ旋回駆動部を含む動力駆動手段により構成することを特徴とする請求項1記載の搾乳システム。
【請求項13】
前記操作機構部は、前記垂直支持部を手動操作により昇降可能にするとともに、前記ティートカップセット部を手動操作により旋回可能にする手動操作手段により構成することを特徴とする請求項1記載の搾乳システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、係留牛舎における各ストールに対して搾乳ユニットを移動させて搾乳を行う搾乳システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、係留牛舎(スタンチョン牛舎)には、多数のストールが配列するストール群が設置され、各ストールに乳牛が係留されるとともに、各ストールに対して搾乳ユニットを自動で移動させて搾乳を行う搾乳システムが設置される。
【0003】
従来、この種の搾乳システムとしては、特許文献1の搾乳ユニットの自動搬送方法及び装置に記載される搾乳システム(自動搬送装置)及び特許文献2の搾乳システムの制御方法に記載される搾乳システムが知られている。
【0004】
特許文献1の自動搬送装置は、作業動線の短縮による作業労力の軽減及び作業効率の向上を図るとともに、搾乳ユニットの台数に対する柔軟性及び汎用性を高め、部品や組付の共通化によるコストダウン及び組立性向上を図ることを目的とし、具体的には、検出可能側又は検出不能側に切換可能な被検出部を各分岐レールに対応して設け、予め、被検出部を検出可能側に切換えるとともに、任意の搾乳ユニットが主レールを走行する際に、被検出部を検出することを条件に、検出した被検出部に対応する分岐レールへの進入を許容し、かつ被検出部を一回検出したなら当該被検出部を検出不能側に切換えるようにしたものであり、基本的構成として、係留牛舎における複数のストールに対して設置したガイドレールに沿って移動可能な搾乳ユニットを含む搾乳システムを備えている。
【0005】
また、特許文献2の搾乳システムの制御方法は、疾病牛の存在等の異常に対する早期発見を可能にし、常に最適な条件による搾乳を可能にすることを目的とし、具体的には、搾乳機に搭載した搾乳機コントローラの通信部と管理コンピュータの管理通信部を相互通信可能にし、搾乳時に、搾乳機に搾乳された乳から得られる搾乳時の搾乳データを、搾乳機コントローラの通信部から管理コンピュータの管理通信部に送信するとともに、管理コンピュータにより、受信した搾乳データを監視し、当該搾乳データに対して、予め設定した判定基準に基づく特異態様を検出したなら、当該特異態様を生じた搾乳時の動作を、当該特異態様に対応する予め設定した特異処理モードにより制御するようにしたものであり、基本的構成として、係留牛舎における複数のストールに対して設置したガイドレールに沿って移動可能な搾乳ユニット(搾乳機)を含む搾乳システムを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-021045号公報
【特許文献2】特開2014-233250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した従来の搾乳システムは、次のような解決すべき課題も存在した。
【0008】
即ち、この種の搾乳システムでは、搾乳ユニットをコントローラ等により制御される移動部(自走部)により、搾乳対象となる乳牛の側方に位置する搾乳ポジションへほぼ自動で移動させることができるが、搾乳ポジションに到着した以降の作業は、作業者により人的に行う場合も少なくない。この結果、搾乳開始までに時間がかかり、作業効率の低下、これに伴う生産性の低下を招くとともに、ティートカップの装着作業を含む作業者の労力増加を招く難点があった。
【0009】
なお、このような装着作業等に対する自動化も技術的には可能であるとしても、基本的には、体型や立位置の異なる乳牛を対象、即ち、位置が不安定な乳牛(動物)を対象とする制御を行う必要があるため、高度な位置制御や大掛かりの設備が要求されるなど、システム構成が複雑化し、無視できないコストアップを招くとともに、乳牛を傷付ける虞れがあるなど、現実的には、容易に採用できない問題がある。
【0010】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した搾乳システムの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る搾乳システムMは、上述した課題を解決するため、係留牛舎100における複数のストールSt…に対して設置したガイドレールRに沿って移動可能な少なくとも一つの搾乳ユニットUa…を備える搾乳システムMを構成するに際して、搾乳ユニットUa…を、搾乳対象となる乳牛Cの側方に位置する設定された搾乳ポジションPcへ移動させる移動手段Fmを備えるとともに、搾乳ユニットUaに支持され、かつ垂直支持部2を昇降可能に支持する支持機構部3と、垂直支持部2の上端2us側又は下端2ds側に設けることにより、乳牛Cの上端位置Cu又は下端位置Cdを検出する高さ方向位置検出部4と、垂直支持部2の下部に一端5sを設けるとともに、他端5tが水平方向Fhに変位可能な支持アーム部5を有し、この支持アーム部5の他端5t側にティートカップTc…を支持するティートカップセット部6を備えるティートカップ支持機構部7と、高さ方向位置検出部4の検出結果に対応して垂直支持部2が所定の高さに移動可能にするとともに、ティートカップセット部6に設けた支持アーム部5の他端5tを変位させる操作機構部8とを有するティートカップセッティング装置1を備えることを特徴とする。
【0012】
この場合、発明の好適な態様により、垂直支持部2は、上シャフト部2uと下シャフト部2dを軸方向Fsに連結支持部11を介して連結した連結構造に構成するとともに、上シャフト部2uと下シャフト部2dは上下方向の相対変位が規制され、かつ回動方向の相対変位が許容されるように構成することが望ましい。また、高さ方向位置検出部4は、垂直支持部2の上部に、一端12sを設けるとともに、他端12t側を水平方向Fhに延出して乳牛Cの上端位置Cuに当接可能な所定長さの検出用横バー12により構成することができる。この検出用横バー12は、他端12tに、乳牛Cの上端位置に当接する左右一対の当接部12tp,12tpを設けることができる。
【0013】
この際、当接部12tp,12tpは、所定の弾性を有する弾性素材により形成することができるとともに、望ましくは、棒素材又はチューブ素材Pを横8の字状に形成した当接ユニット部73における下方に突出した左右一対の湾曲部位を用いることができる。さらに、当接ユニット部73は、一又は二以上使用し、乳牛Cに対して前後方向に配置して構成することができる。なお、当接ユニット部73は、水平方向における回動変位を規制する規制部74により支持することができる。
【0014】
他方、他端12t側の一部には、乳牛Cの上端位置Cuから延出側に沿って湾曲又は折曲したフック形状部12tfを設けてもよい。また、高さ方向位置検出部4は、垂直支持部2の下端を下方へ所定長さにわたって延出させた検出用縦バー13を設けて構成することもできる。一方、ティートカップセット部6には、乳頭Cb…に対する収容口Tco…を上方に向けて配した四つのティートカップTc…を保持可能な保持機能部14を設けることができる。他方、操作機構部8は、少なくとも垂直支持部2を昇降可能なシャフト昇降駆動部15v及びティートカップセット部6を旋回可能なティートカップ旋回駆動部15fを含む動力駆動手段15により構成してもよいし、或いは垂直支持部2を手動操作により昇降可能にするとともに、ティートカップセット部6を手動操作により旋回可能にする手動操作手段16により構成してもよい。
【発明の効果】
【0015】
このような構成を備える本発明に係る搾乳システムMによれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0016】
(1) 垂直支持部2の下部に一端5sを設けるとともに、他端5tが水平方向Fhに変位可能な支持アーム部5を有し、この支持アーム部5の他端5t側にティートカップTc…を支持するティートカップセット部6を備えるティートカップ支持機構部7と、高さ方向位置検出部4の検出結果に対応して垂直支持部2が所定の高さに移動可能にするとともに、ティートカップセット部6に設けた支持アーム部5の他端5tを変位させる操作機構部8とを有するティートカップセッティング装置1を設けたため、搾乳ユニットUa…を、搾乳ポジションPcに移動させた以降であっても、乳牛Cの乳頭Cb…にティートカップTc…を装着する直前までのセッティング作業を容易かつ的確に行うことができる。これにより、搾乳開始までの時間短縮を図れるため、作業効率の向上、更には、これに伴う生産性向上を実現できるとともに、ティートカップTc…の装着作業を含む作業者の大幅な労力軽減に寄与することができる。また、牛床面は、通常、ミルクライン51の下流側に向かって高さが少しずつ変化する構造になっているが、高さ方向位置検出部4により、ティートカップセット部6の相対高さは、乳牛Cに対してのみならず搾乳作業者(の目線)に対しても常に一致することになるため、円滑かつ効率的な搾乳作業に寄与することができる。
【0017】
(2) 大掛かりな自動化システムの構築が不要になるため、大幅なコスト削減に寄与できるとともに、各乳牛C…の体型や動きにより乳頭Cb…の位置や高さが異なり、かつ不安定になる場合であっても、ティートカップTc…を確実かつ効率的にセッティングできるため、コスト削減と労力削減の双方をバランスよく実現できる最適な搾乳システムとして提供することができる。
【0018】
(3) 好適な態様により、垂直支持部2を構成するに際し、上シャフト部2uと下シャフト部2dを軸方向Fsに連結支持部11を介して連結した連結構造に構成するとともに、上シャフト部2uと下シャフト部2dは上下方向の相対変位が規制され、かつ回動方向の相対変位が許容されるように構成すれば、上シャフト部2u又は下シャフト部2dをそれぞれ独立して回動させることができるとともに、上シャフト部2uの変位を直接下シャフト部2dに伝達できるため、上シャフト部2uに高さ方向位置検出部4を設けたり、下シャフト部2dにティートカップセット部6を設けることができるなど、構成をシンプル化しつつ多機能性を高めることができる。
【0019】
(4) 好適な態様により、高さ方向位置検出部4を構成するに際し、垂直支持部2の上部に、一端12sを設けるとともに、他端12t側を水平方向Fhに延出して乳牛Cの上端位置Cuに当接可能な所定長さの検出用横バー12により構成すれば、単純形状に形成可能な検出用横バー12の追加のみで実施できるため、乳牛Cの高さ方向の位置を検出する際における低コスト性及び実施容易性に優れる。
【0020】
(5) 好適な態様により、検出用横バー12を構成するに際し、他端12tに、乳牛Cの上端部に当接する左右一対の当接部12tp,12tpを設ければ、二点位置を検出できるとともに、上端部の左右を挟むように当接できるため、乳牛Cの動きに追従させることができるため、上端位置Cuの検出(間接的検出)を、より正確かつ安定に行うことができる。
【0021】
(6) 好適な態様により、当接部12tp,12tpを、所定の弾性を有する弾性素材により形成すれば、乳牛Cに対する当接時の衝撃を緩和できるため、乳牛Cに対する使用時における無用な悪影響を回避することができる。
【0022】
(7) 好適な態様により、当接部12tp,12tpを構成するに際し、棒素材又はチューブ素材Pを横8の字状に形成した当接ユニット部73における下方に突出した左右一対の湾曲部位を用いれば、一本の汎用的な棒素材又はチューブ素材Pにより容易に構成可能になるため、当接ユニット部73を低コストに製作できる。
【0023】
(8) 好適な態様により、当接ユニット部73を、一又は二以上使用し、乳牛Cに対して前後方向に配置して構成すれば、当接部12tp,12tp…による全体の当接点を増加させることができるため、乳牛Cに対して、当接ユニット部73を安定に当接させ、かつ安定した検出を行うことができるとともに、乳牛Cに対する追従性を高めることができる。
【0024】
(9) 好適な態様により、当接ユニット部73を、水平方向における回動変位を規制する規制部74により支持すれば、乳牛Cに対する当接ユニット部73の水平方向の位置ズレを防止できるため、より正確かつ安定した検出を行うことができる。
【0025】
(10) 好適な態様により、検出用横バー12を構成するに際し、他端12t側の一部に、乳牛Cの上端位置Cuから延出側に沿って湾曲又は折曲したフック形状部12tfを設ければ、乳牛Cの左方向又は右方向の少なくとも一方への変位をフック形状部12tfにより抑制可能になるため、この抑制範囲において、正確かつ安定した検出を行うことができる。
【0026】
(11) 好適な態様により、高さ方向位置検出部4を構成するに際し、垂直支持部2の下端2dsを下方へ所定長さにわたって延出させた検出用縦バー13を設けて構成すれば、高さ方向位置検出部4を乳牛Cに直接接触させることなく目的の高さを検出できるため、乳牛Cの動き等に干渉されることなく正確かつ安定に検出することができる。特に、下端2ds側に設ければ、上端2us側を乳牛Cの上端位置Cuに当接させて乳牛Cの動きを抑制する抑制機構を設けることができるなど、多様性及び多機能性をより高めることができる。
【0027】
(12) 好適な態様により、ティートカップセット部6を構成するに際し、乳頭Cb…に対する収容口Tco…を上方に向けて配した四つのティートカップTc…を保持可能な保持機能部14を設ければ、ティートカップセット部6を移動させた目標位置では、各ティートカップTc…を上方へ変位させるのみで乳頭Cb…への装着が可能になるため、作業者の煩雑な作業が軽減されることによりティートカップ装着作業の容易化及び迅速化を実現することができる。
【0028】
(13) 好適な態様により、操作機構部8を構成するに際し、少なくとも垂直支持部2を昇降可能なシャフト昇降駆動部15v及びティートカップセット部6を旋回可能なティートカップ旋回駆動部15fを含む動力駆動手段15により構成すれば、コントローラ等により容易にシーケンス制御が可能になるため、更なる労力軽減及び作業効率の向上を図ることができるとともに、比較的簡易な制御系により実現することができる。
【0029】
(14) 好適な態様により、操作機構部8を構成するに際し、垂直支持部2を手動操作により昇降可能にするとともに、ティートカップセット部6を手動操作により旋回可能にする手動操作手段16により構成すれば、動力手段が不要になるため、更なる構成の簡易化及びコストの低減に寄与することができるとともに、エネルギー削減にも寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の好適実施形態に係る搾乳システムの動力駆動手段を用いたティートカップセッティング装置の背面構成図、
【
図2】同ティートカップセッティング装置の平面構成図、
【
図3】同ティートカップセッティング装置を含む搾乳ユニットの使用時における側面構成図、
【
図5】同ティートカップセッティング装置のセッティング時の動作を説明するためのフローチャート、
【
図6】同ティートカップセッティング装置の搾乳終了時の動作を説明するためのフローチャート、
【
図7】同ティートカップセッティング装置の搾乳ポジションの模式図、
【
図8】同ティートカップセッティング装置によるセッティング操作時における模式図、
【
図9】同ティートカップセッティング装置による他のセッティング操作時における模式図、
【
図10】同ティートカップセッティング装置による他のセッティング操作時における模式図、
【
図11】同搾乳システムの手動操作手段を用いた第一変更例に係るティートカップセッティング装置の背面構成図、
【
図12】同ティートカップセッティング装置の第二変更例に係る高さ方向位置検出部の背面構成図、
【
図13】同ティートカップセッティング装置の第三変更例に係る高さ方向位置検出部の背面構成図、
【
図14】同ティートカップセッティング装置の第四変更例に係る高さ方向位置検出部の正面構成図、
【
図15】同第四変更例に係る高さ方向位置検出部における規制部の断面を含む一部平面図、
【
図16】同第四変更例に係る高さ方向位置検出部の側面図、
【
図17】同第四変更例に係るティートカップセッティング装置の作用説明図、
【
図18】同第四変更例に係る高さ方向位置検出部の一部を変更した例を示す背面構成図、
【
図19】同第四変更例に係る高さ方向位置検出部の他の一部を変更した例を示す背面構成図、
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0032】
まず、本実施形態に係る搾乳システムMの概略構成について、
図2-
図4を参照して説明する。
【0033】
図4は係留牛舎100に備える搾乳システムMの平面概要図を示す。係留牛舎100には多数のストールSt…が配列するストール群Gが設置され、各ストールSt…に乳牛C…が係留されている。そして、このストール群Gの上方に、ストール群Gに沿ったガイドレールRが設置される。ガイドレールRは、ストール群Gに沿って配した主レールRmと、この主レールRmの中途位置から直角方向に分岐し、かつストールSt…間に配した複数の分岐レールRs…を備える。この場合、分岐レールRs…は、配列するストールSt…に対して一つ置き、即ち、相隣る分岐レールRsとRs…間に二つのストールSt…が入るように配される。ガイドレールRには、少なくとも一つの搾乳ユニットUa…、例示は、2台の搾乳ユニットUa,Ubが装填され、各搾乳ユニットUa,Ubは、ガイドレールRに沿って搾乳ポジションPc等の所定の目標位置まで移動させることができる。
【0034】
したがって、これらの設備は、搾乳ユニットUa…を、搾乳対象となる乳牛Cの側方に位置する設定された搾乳ポジションPcへ移動させる本実施形態における移動手段Fmを構成する。
【0035】
なお、200は、ストール群Gの前方に、このストール群Gに沿って設置された給餌システムを示す。この給餌システム200は、ストール群Gの前上方に配した給餌用レール210と、この給餌用レール210に沿って移動する給餌機220を備える。この給餌システム200により、各ストールSt…に対して給餌機220を自動で移動させて給餌を行うことができる。Bsは給餌機220により投与された給餌飼料を示す。
【0036】
また、搾乳システムMにおける分岐レールRs…の先端前方には、
図3に示すミルクライン51及び真空ライン52を配置する。ミルクライン51及び真空ライン52はストールSt…に沿って配し、各分岐レールRs…に対向する位置には、後述する搾乳ユニットUa…のディストリビュータ22を接続するミルクタップ53を設ける。
【0037】
一方、ガイドレールRに沿って移動する搾乳ユニットUa(他の搾乳ユニットUbも同じ)は、ガイドレールRに装填した自走式の移動部21を備える。移動部21の先端には前述のディストリビュータ22を備える。この移動部21は、モータを用いた走行駆動部21mを備えるとともに、駆動用バッテリ等を含む制御ボックス21cを備える。この場合、移動部21の停止や移動方向の制御は、移動部21に設けた検出部(検出センサ)がガイドレールRの所定位置に配した被検出部を検出することにより行われる。これにより、各ストールSt…に対して各搾乳ユニットUa…を自動で移動させることができる。なお、走行制御は、コントローラE(
図1参照)に搭載した制御機能に基づいて行われる。したがって、少なくとも一部の制御用データは、コントローラEから各搾乳ユニットUa…における制御ボックス21cに転送される。
【0038】
また、移動部21の両側、具体的には、
図2に示すように、制御ボックス21cの左右両側に吊下げられた一対の搾乳部23a,23bを備える。一つの搾乳部23a(他の搾乳部23bも同じ)は、
図3に示すように、パルセータ装置や表示部(操作部)を含む搾乳部本体24,乳牛Cの各乳頭Cb…に装着する四つのティートカップTc…,乳量計25等を備える。
【0039】
さらに、移動部21の他の空スペース、具体的には、制御ボックス21cの左右における側面パネル21cp,21cqを利用して本実施形態に係る左右一対のティートカップセッティング装置1…を取付ける。左右のティートカップセッティング装置1,1は位置が左右対称となる点を除いて同一の構成となる。
【0040】
次に、本実施形態に係る搾乳システムMの要部となる一つのティートカップセッティング装置1の構成について、
図1-
図3を参照して説明する。
【0041】
ティートカップセッティング装置1は、
図1に示すように、基本的な構成として、搾乳ユニットUaに支持され、かつ垂直支持部2を昇降可能に支持する支持機構部3と、垂直支持部2の上端2us側に設けることにより、乳牛Cの上端位置Cuを検出する高さ方向位置検出部4と、垂直支持部2の下部に、支持アーム部5の一端5sを回動可能に配し、かつ水平方向Fhに延出した他端5tに、四つのティートカップTc…を備えるティートカップセット部6を設けたティートカップ支持機構部7と、高さ方向位置検出部4の検出結果に対応して垂直支持部2が所定の高さに移動可能にするとともに、ティートカップセット部6を所定の角度に旋回可能にする操作機構部8とを備える。
【0042】
この場合、支持機構部3は、搾乳ユニットUaに支持され、かつ垂直支持部2を昇降可能に支持する機能を備えており、
図1に示すように、制御ボックス21cの一方の側面パネル21cpに固定したシャフト昇降駆動部15vを備える。また、このシャフト昇降駆動部15vにより昇降する昇降ロッド15vrの下端には、左右に変位可能な水平ロッド32rを支持する支持ブロック32を設ける。さらに、水平ロッド32rの一端(乳牛C側)には、鉛直方向に軸線を有する垂直支持部2を支持する。この場合、支持ブロック32には、モータ等を用いた水平移動駆動部33を内蔵し、この水平移動駆動部33により、水平ロッド32rを左右方向へ変位させることができる。以上の構成が、搾乳ユニットUaに支持され、かつ垂直支持部2が昇降可能に支持される支持機構部3となる。
【0043】
垂直支持部2は乳牛Cの側面に当接して側面位置Cfを検出可能な垂直支持シャフト部2sにより構成する。垂直支持シャフト部2sは、
図1に示すように、上シャフト部2uと下シャフト部2dを軸方向Fsに連結支持部11を介して連結した連結構造に構成するとともに、上シャフト部2uと下シャフト部2dは上下方向の相対変位が規制され、かつ回動方向の相対変位が許容されるように構成する。具体的には、筒状の連結支持部11の上端から上シャフト部2uを鉛直方向上方へ突出させるとともに、連結支持部11の下端から下シャフト部2dを鉛直方向下方へ突出させる。また、連結支持部11の内部の上半部には、上回転駆動部34を内蔵し、上シャフト部2uを回動変位可能に構成するとともに、連結支持部11の内部の下半部には、ティートカップ旋回駆動部15fを内蔵し、下シャフト部2dを回動変位可能に構成する。
【0044】
このように構成することにより、上シャフト部2u又は下シャフト部2dをそれぞれ独立して回動させることができるとともに、上シャフト部2uの変位を直接下シャフト部2dに伝達できるため、上シャフト部2uに後述する高さ方向位置検出部4を設けたり、下シャフト部2dに後述するティートカップセット部6を設けることができるなど、構成をシンプル化しつつ多機能性を高めることができる。
【0045】
また、高さ方向位置検出部4は、垂直支持シャフト部2sの上端2usに設けることにより、乳牛Cの上端位置Cuを検出する機能を備える。例示の高さ方向位置検出部4は、
図1に示すように、垂直支持シャフト部2sの上部、即ち、上シャフト部2uの上端に設けた検出用横バー12により構成した。検出用横バー12は、一端12sを上シャフト部2uの上端に設けるとともに、他端12t側を水平方向Fhに延出して乳牛Cの上端位置Cuに当接可能な所定長さに形成する。このように構成すれば、単純形状に形成可能な検出用横バー12の追加のみで実施できるため、低コスト性及び実施容易性に優れる利点がある。なお、
図1中、Xpは検出用横バー12の底面に設けた乳牛Cに接するパッド部、Xqは連結支持部11の周面に設けた乳牛Cに接するパッド部をそれぞれ示す。
【0046】
一方、垂直支持シャフト部2sの下部、即ち、
図1に示すように、下シャフト部2dの下端には、ティートカップ支持機構部7を設ける。ティートカップ支持機構部7は、下シャフト部2dの下端に、一端5sを設けるとともに、他端5tを水平方向Fhに延出した支持アーム部5と、この支持アーム部5の他端5tに設けたティートカップセット部6を備える。これにより、ティートカップ旋回駆動部15fにより下シャフト部2dを回動変位させれば、支持アーム部5の一端5sを回動変位させることができ、支持アーム部5の他端5t、即ち、ティートカップセット部6を旋回変位させることができる。
【0047】
この場合、ティートカップセット部6には、乳頭Cb…に対する収容口Tco…を上方に向けて配した四つのティートカップTc…を保持可能な保持機能部14を設ける。具体的には、
図1に示すように、支持アーム部5の他端5tに上方へ起立した支持ポスト36を設け、この支持ポスト36の上端から、不図示のチェーン等を用いて四つのティートカップTc…をそれぞれ吊下げるとともに、支持ポスト36の中間位置に、吊下げた四つのティートカップTc…の横方への変位を規制する四つの開口を形成する保持リング37を設けて構成した。
【0048】
ティートカップ支持機構部7を構成するに際し、このように構成すれば、ティートカップセット部6を移動させた目標位置では、各ティートカップTc…を上方へ変位させるのみで乳頭Cb…に装着できるため、作業者の煩雑な作業が軽減されることによりティートカップ装着作業の容易化及び迅速化を実現できる。
【0049】
なお、一つのティートカップTc(他のティートカップTc…も同じ)、特に、ティートカップTcの下端に接続するミルクチューブは、
図1に示すように、搾乳中の真空度変動を抑制するバッファー38を介して集乳部39に接続し、この集乳部39に集められた生乳は、
図3に示すように、集乳チューブ40を介して乳量計25に送られる。
【0050】
以上の基本構成を備えるティートカップセッティング装置1は、高さ方向位置検出部4の検出結果に対応して垂直支持シャフト部2sが所定の高さに移動可能にするとともに、ティートカップセット部6を所定の角度に旋回可能にする操作機構部8が含まれる。具体的には、シャフト昇降駆動部15vの動作により垂直支持シャフト部2sを昇降し、所定の高さに移動させることができるとともに、ティートカップ旋回駆動部15fの動作によりティートカップセット部6を旋回させる動力駆動手段15が含まれる操作機構部8として構成される。このように構成すれば、コントローラ等により容易にシーケンス制御が可能になるため、更なる労力軽減及び作業効率の向上を図ることができるとともに、比較的簡易な制御系により実現することができる。
【0051】
例示の実施形態は、ティートカップセット部6の一端5sを垂直支持シャフト部2sの下部に回動可能に配するとともに、他端5t側を水平方向Fhに延出した支持アーム部5により構成した例を示したが、基本的には、搾乳ユニットUaにより支持される垂直支持シャフト部2sの下部に一端5sを設けるとともに他端5tが水平方向Fhに変位可能な支持アーム部5を設ければよく、他の例としては、水平方向Fhに伸縮する蛇腹アーム等であってもよい。
【0052】
次に、このようなティートカップセッティング装置1を備える本実施形態に係る搾乳システムMの全体の動作について、主に
図7-
図10を参照しつつ
図5及び
図6に示すフローチャートに従って説明する。
【0053】
図5は、ティートカップセッティング装置1のセッティング時における動作を説明するフローチャート、
図6は、ティートカップセッティング装置1の搾乳終了時における動作を説明するフローチャートとなる。
【0054】
今、搾乳ユニットUaがガイドレールRのホームポジションに待機している場合を想定する(ステップS01)。搾乳時には、コントローラEから搾乳するストールSt…の順番に係わる指令データが搾乳ユニットUaの制御ボックス21cに転送され、この指令データに基づいて搾乳ユニットUaがガイドレールRに沿って走行し、目標のストールSt、即ち、目標の搾乳ポジションPcまで移動する(ステップS02,S03)。
【0055】
目標の搾乳ポジションPcに到達したなら、ティートカップセッティング装置1のセッティング動作が行われる。
図7が搾乳ポジションPcにおける搾乳ユニットUaの状態を示す。例示するセッティング手順は、一例であり、例示の手順に限定されるものではない。また、セッティングを行なう前の状態は、支持ブロック32を最上昇位置に上昇させ、かつ垂直支持シャフト部2sと支持ブロック32は最接近位置に移動させ、走行時に障害にならないコンパクト状態にリリースしておく。なお、セッティング動作は、例えば、一連の動作、即ち、シーケンス制御が行なう制御プログラムが制御ボックス21cに設定されている。
【0056】
搾乳ポジションPcでは、まず、
図8に示すように、垂直支持シャフト部2sを乳牛Cに接近する方向に支持ブロック32の水平移動機構部33を駆動制御する(ステップS1)。これにより、垂直支持シャフト部2sの連結支持部11が乳牛Cの側面に当接したなら移動を停止させる(ステップS2)。次いで、上回転駆動部34を駆動制御することにより検出用横バー12を90゜回動変位させる(ステップS3)。この状態の検出用横バー12を
図9に仮想線で示す。なお、90゜の回動範囲は一例であり、任意の範囲に設定可能である。
【0057】
次いで、シャフト昇降駆動部15vを駆動制御して支持ブロック32を下降変位させる(ステップS4)。そして、
図9に実線で示すように、検出用横バー12が乳牛Cの上端位置Cuを検出、即ち、検出用横バー12が乳牛Cの上端位置Cuに当接したなら下降を停止させる(ステップS5)。この場合、検出用横バー12とティートカップセット部6間の縦方向間隔Lsは、乳牛Cの上端位置Cuと乳牛Cの腹部の下方の所定高さとなるように、予め設定した間隔Ls(
図10参照)として設定されるため、検出用横バー12が乳牛Cの上端位置Cuに当接した際には、ティートカップセット部6と乳頭Cb間の上下方向間隔は予め設定した所定の最適間隔Lcとなる。
【0058】
次いで、ティートカップ旋回駆動部15fを駆動制御し、支持アーム部5を90゜旋回変位させる(ステップS6)。この90゜の旋回範囲は一例であり、搾乳ポジションPcの位置等に対応して任意の範囲に設定可能である。これにより、
図10に示す状態となり、ティートカップセット部6は乳頭Cbのほぼ真下の位置であって、最適高さに位置するとともに、ティートカップセット部6に備える四つのティートカップTc…は、上端の開口が上方を向いた状態にセッティングされる。以上により、一連のセッティング動作が終了する。
【0059】
この後、セッティング動作が終了したら、搾乳作業者は、搾乳部23aに設けた搾乳開始スイッチをONにする(ステップS7)。これにより、バッファー38が開状態となり、ティートカップTc…から吸引が行われるため、作業者は、四つのティートカップTc…を順番に乳頭Cb…に装着する(ステップS8)。そして、全てのティートカップTc…の装着が終了したなら一連の搾乳処理が行われる(ステップS9,S10)。なお、
図1及び
図3は全てのティートカップTc…が装着された状態を示している。
【0060】
搾乳時には、搾乳された生乳が、
図1に示すように、四つのティートカップTc…からバッファー38を通して集乳部39に流入し、この集乳部39の生乳は、集乳チューブ40,乳量計25,ディストリビュータ22を経て、ミルクライン51に供給される。そして、生乳の流量が基準流量以下になるなどにより搾乳終了条件を満たしたなら、搾乳処理を終了させる(ステップS11)。これにより、各ティートカップTc…は自重により乳頭Cb…から離脱し、落下するとともに、前述した保持機能部14により保持されるティートカップ離脱処理が行われる(ステップS12)。即ち、各ティートカップTc…は、支持ポスト36により吊下げられるとともに、保持リング37により位置が規制され、
図10に示す装着前の状態に戻される。以上により、搾乳主要処理(ルーチンステップSA)が終了するため、この後、搾乳終了処理(ルーチンステップSB)が行なわれる。
【0061】
図6は、搾乳終了処理(ルーチンステップSB)に係わる動作を説明するフローチャートを示す。
【0062】
このルーチンステップSBの動作は、基本的に自動で行わせることが可能になるため、搾乳処理が終了したことを検知したなら自動でルーチンステップSBを実行させることができる。なお、搾乳処理が終了したことにより、例えば、搾乳終了ランプを点灯(点滅)させることにより、作業者が乳牛Cの状態等を確認し、その後、搾乳部23aのリリーススイッチをONすることにより、以降のリリース処理を自動で行わせてもよい。
【0063】
ルーチンステップSBでは、まず、ティートカップ旋回駆動部15fを駆動制御し、支持アーム部5を90゜戻し旋回させる。これにより、ティートカップセット部6は、
図9に示す実線位置に戻される(ステップS21)。次いで、シャフト昇降駆動部15vを駆動制御し、支持ブロック32を上昇させるとともに、同時に、水平移動機構部33を駆動制御し、支持ブロック32を乳牛Cから離間する方向へ変位させる。さらに、上回転駆動部34を駆動制御し、検出用横バー12を戻し方向に90゜回動変位させる。これにより、垂直支持シャフト部2sは、
図7に示すセッティング前の状態に復帰させることができる(ステップS22,S23,S24)。
【0064】
搾乳ユニットUaによる搾乳処理が全て終了したときは、ガイドレールRのホームポジションへ移動させる戻し処理を行なう(ステップS25,S28)。
【0065】
一方、搾乳ユニットUaにより次の搾乳処理を行う場合には、次の目標となる対応するストールStへ移動させる(ステップS25,S26)。そして、次の搾乳ポジションPcに到着したなら、上述した搾乳主要処理(ルーチンステップSA)を実行する(ステップS27,SA)。即ち、
図5に示した搾乳主要処理(ルーチンステップSA)を実行することができる。
【0066】
以上、動力駆動手段15によりティートカップセッティング装置1を構成した場合について説明したが、このティートカップセッティング装置1は、後述する第四変更例に示すように、手動操作手段16により構成することもできる。
【0067】
次に、ティートカップセッティング装置1の各種変更例について、
図11-
図19を参照して説明する。
【0068】
図11は、手動操作手段16を用いた第一変更例に係るティートカップセッティング装置1を示す。第一変更例に係る手動操作手段16は、搾乳ユニットUaの制御ボックス21cの外部ケースを利用して固定した取付フレーム61、この取付フレーム61の縦フレームメンバ61vに固定した上下一対の回動支持部62,62により一方の縦フレームメンバ63uが回動可能に支持された矩形の第一フレーム63、この第一フレーム63の他方の縦フレームメンバ63vに固定した上下一対の回動支持部64,64により一方の縦フレームメンバ65uが回動可能に支持された矩形の第二フレーム65、この第二フレーム65の他方の縦フレームメンバ65vに固定した上下一対の回動支持部66,66により一方の縦フレームメンバ67uが回動可能に支持された矩形の第三フレーム67を備える。
【0069】
この場合、第三フレーム67は垂直支持シャフト部2sとして機能するため、取付フレーム61から第三フレーム67までの支持機構は、搾乳ユニットUaに支持され、かつ垂直支持シャフト部2sを昇降可能に支持する支持機構部3として機能し、この支持機構部3の蛇腹伸縮により垂直支持シャフト部2sを乳牛Cに対して進退変位することができるとともに、回動支持部66,66により垂直支持シャフト部2sを昇降変位させることができる。
【0070】
また、第三フレーム67の上端には、一端12sを設けるとともに、他端12t側を水平方向Fhに延出して乳牛Cの上端位置Cuに当接可能な所定長さの検出用横バー12を一体に設ける。この場合、他端12tには、乳牛Cの上端位置Cuに当接する左右一対の当接部12tp,12tpを設けている。これにより、
図11に示す検出用横バー12は、垂直支持シャフト部2sの上端2us側に設けることにより、乳牛Cの上端位置Cuを検出する高さ方向位置検出部4として機能する。このように構成すれば、二点位置を検出できるとともに、上端部の左右を挟むように当接できるため、乳牛Cの動きに追従させることができるため、上端位置Cuの検出(間接的検出)を、より正確かつ安定に行うことができる。
【0071】
他方、垂直支持シャフト部2sの下部には、支持アーム部5の一端5sを回動可能に配し、かつ水平方向Fhに延出した他端5tに、ティートカップTc…を備えるティートカップセット部6を設けたティートカップ支持機構部7を備える。なお、第三フレーム67は、回動可能に支持される一方の縦フレームメンバ67uが実質的な垂直支持シャフト部2sとして機能するため、他方の縦フレームメンバ67vは乳牛Cの側面に当接するシャフトとして機能する。なお、68s,68sは補強フレームメンバを示す。
【0072】
なお、
図11は、基本的なフレーム構成を示したものであり、必要により、各種の操作支援を行う支援機構を付設してもよい。例えば、スプリング等を付設したダンパ機構等の補助機構を設けることにより、乳牛Cに対する衝撃緩和等を考慮してもよいし、或いは、切換機構により動作するエアシリンダ等を用いて操作を支援する補助機構等を設けることにより、作業者の労力をより軽減できるようにしてもよい。
【0073】
よって、以上により、高さ方向位置検出部4の検出結果に対応して垂直支持シャフト部2sが所定の高さに移動可能にするとともに、ティートカップセット部6を所定の角度に旋回可能にする操作機構部8が構成され、手動操作手段16として機能させることができる。このように、操作機構部8を構成するに際し、垂直支持シャフト部2sを手動操作により昇降可能にするとともに、ティートカップセット部6を手動操作により旋回可能にする手動操作手段16により構成すれば、動力手段が不要になるため、更なる構成の簡易化及びコストの低減に寄与することができるとともに、エネルギー削減にも寄与することができる。
【0074】
図12は、ティートカップセッティング装置1における高さ方向位置検出部4に係る第二変更例を示す。
【0075】
この第二変更例は、検出用横バー12を構成するに際し、
図12に示すように、他端12t側の一部に、乳牛Cの上端位置Cuから延出側に沿って折曲(又は湾曲)したフック形状部12tfを設けたものである。このように形成すれば、例示の場合、乳牛Cの右方向への変位(隣の乳牛Cの場合は左方向への変位)をフック形状部12tfにより抑制可能になるため、この抑制範囲において、正確かつ安定した検出を行うことができる。
【0076】
図13は、ティートカップセッティング装置1における高さ方向位置検出部4に係る第三変更例を示す。
【0077】
この第三変更例は、高さ方向位置検出部4を構成するに際し、
図13に示すように、垂直支持シャフト部2sの下端2dsを下方へ所定長さにわたって延出させた検出用縦バー13を設けて構成したものである。このように構成すれば、高さ方向位置検出部4を乳牛Cに直接接触させることなく目的の高さを検出できるため、乳牛Cの動き等に干渉されることなく正確かつ安定に検出することができる。
【0078】
特に、検出用縦バー13を用いれば、
図13に示すように、上シャフト部2uにおける実質的な高さ方向位置検出部4としての機能は不要になるため、
図11に示すように、垂直支持シャフト部2sの上端に左右一対の当接部12tp,12tpを有する検出用横バー12を設けることができる。これにより、当接部12tp,12tpに、乳牛Cの上端を把持する機能を持たせることができるため、乳牛Cの横方向への変位を抑制することができるとともに、この場合には、高さ方向位置検出部4としての機能を有しないため、
図11に仮想線で示すように、検出用横バー12に対して上下変位可能に構成し、検出用横バー12と当接部12tp,12tp間にスプリング12bを介在させ、乳牛Cの上下変位を逃がすように構成することもできる。
【0079】
他方、
図14-
図19は、ティートカップセッティング装置1の高さ方向位置検出部4に係る第四変更例を示す。
【0080】
この高さ方向位置検出部4は、
図14に示すように、検出用横バー12の他端12tに、この検出用横バー12に対して直角となる縦方向の支持筒部71を取付け、この支持筒部71に、上下にスライド自在となるシャフト72を挿通させるとともに、このシャフト72の下端に、当接ユニット部73を備える当接機能部75の中間部を支持する。
【0081】
この際、シャフト72の上端には落下阻止用のストッパ72sを取付けるとともに、
図15に示すように、支持筒部71とシャフト72の断面形状を矩形に形成することにより規制部74を構成した。これにより、当接ユニット部73の水平方向における変位が規制される。このように、当接ユニット部73を、水平方向における回動変位を規制する規制部74により支持するようにすれば、乳牛Cに対する当接ユニット部73の水平方向の位置ズレを防止できるため、より正確かつ安定した検出を行うことができる。
【0082】
当接機能部75は、支持プレート76とこの支持プレート76の下面に取付けた当接ユニット部73を備える。支持プレート76は、水平な支持面部76c及びこの支持プレート76の中央部に一体形成した係止面部76sを金属プレート等により一体に折曲形成する。そして、この支持面部76cの下面に、二つの当接ユニット部73,73を並べて配設した。
【0083】
当接ユニット部73は、所定の弾性を有する弾性素材により形成したチューブ素材P、具体的には、外径13〔mm〕×内径7〔mm〕程度となる二本の軟質性塩化ビニルチューブTu,Tuを用意する。そして、
図15及び
図16に示すように、一端Tus,Tus側を、支持面部76cの下方の中間位置に配し、係止面部76sに取付けた取付ピン部Nにより固定した後、
図14に示すように、他端Tut,Tut側に第一の湾曲部分を形成し、係止面部76sの上側を通した後、さらに、第二の湾曲部分を形成し、他端Tut,Tutを、前記一端Tus,Tusに対向させ、係止面部76sに取付けた取付ピン部Nにより固定する。
【0084】
これにより、当接ユニット部73は、チューブ素材Pにより全体で横8の字状に形成され、下方に突出形成される一対の湾曲部位が当接部12tp,12tpとして機能する。即ち、当接部12tp,12tpを一体に備える当接ユニット部73として形成される。また、当接部12tp,12tpは、所定の弾性を有する弾性素材により形成されることになる。このように、当接部12tp,12tpを弾性素材により形成すれば、乳牛Cに対する当接時の衝撃を緩和できるため、乳牛Cに対する使用時における無用な悪影響を回避することができる。さらに、当接ユニット部73を形成するに際し、チューブ素材Pを横8の字状に形成した当接ユニット部73における下方に突出した左右一対の湾曲部位を用いれば、一本の汎用的なチューブ素材Pにより容易に構成可能になるため、当接ユニット部73を低コストに製作できる。なお、チューブ素材Pの代わりに棒素材を使用しても同様に実施可能である。
【0085】
例示は、二つの当接ユニット部73,73を取付けた場合を示したが、一つであってもよいし、三つ以上を排除するものではない。このように、当接ユニット部73を、一又は二以上使用し、乳牛Cに対して前後方向に配置して構成すれば、当接部12tp,12tp…による全体の当接点を増加させることができため、乳牛Cに対して当接ユニット部73を安定に当接させ、かつ安定した検出を行うことができる。
【0086】
このように構成される当接ユニット部73…は、使用時には、
図17に示すように、当接部12tp,12tpが乳牛Cの左右の背面に当接する。この際、必要により、当接ユニット部73…は、
図16に仮想線で示すように、乳牛Cの背面に追従し、追従性を高めることができる。なお、
図14-
図17は、当接ユニット部73…が自重により下方へ変位するようにしたため、乳牛Cの上下変位を逃がすことができるが、必要により、
図11に示すように、シャフト72にスプリング12bを装着し、当接ユニット部73…を下方へ確実に変位させ、安定した動作を確保するようにしてもよい。
【0087】
なお、
図18及び
図19は、高さ方向位置検出部4の一部を変更した例を示す。
図18は、当接ユニット部73…を、支持プレート76の係止面部76sに取付けるに際し、回動部77を介して回動可能に取付けたものである。この場合、回動範囲は、一定範囲に規制される。これにより、乳牛Cへの当接時に左右で異なる場合であっても左右の高さの平均値を検出できる。
【0088】
また、
図19は、支持プレート76の支持面部76cの幅を広く形成し、各当接ユニット部73,73の取付ピン部N上の位置を調整可能に構成したものである。
図16に示したように、ある程度、追従性を確保できるが、
図19の場合には、事前に追従性を設定することができる。例示の場合、支持プレート76は、主支持面部78cと、チューブ素材Pを支持する副支持面部79…の組合わせにより構成した。したがって、チューブ素材P…を支持する各副支持面部79…が取付ピン部N上の位置を移動することができる。仮想線で示すチューブ素材Pは、実線で示すチューブ素材Pの位置を変更した状態を示す。なお、78sは副係止面部76sを示す。
【0089】
よって、このような本実施形態に係る搾乳システムMによれば、基本的な構成として、搾乳ユニットUa…を、搾乳対象となる乳牛Cの側方に位置する設定された搾乳ポジションPcへ移動させる移動手段Fmを備えるとともに、搾乳ユニットUaに支持され、かつ垂直支持部2を昇降可能に支持する支持機構部3と、垂直支持部2の上端2us側又は下端2ds側に設けることにより、乳牛Cの上端位置Cu又は下端位置Cdを検出する高さ方向位置検出部4と、垂直支持部2の下部に一端5sを設けるとともに、他端5tが水平方向Fhに変位可能な支持アーム部5を有し、この支持アーム部5の他端5t側にティートカップTc…を支持するティートカップセット部6を備えるティートカップ支持機構部7と、高さ方向位置検出部4の検出結果に対応して垂直支持部2が所定の高さに移動可能にするとともに、ティートカップセット部6に設けた支持アーム部5の他端5tを変位させる操作機構部8とを有するティートカップセッティング装置1を設けたため、搾乳ポジションPcに移動させた以降であっても、乳牛Cの乳頭Cb…にティートカップTc…を装着する直前までのセッティング作業を容易かつ的確に行うことができる。これにより、搾乳開始までの時間短縮を図れるため、作業効率の向上、更には、これに伴う生産性向上を実現できるとともに、ティートカップTc…の装着作業を含む作業者の大幅な労力軽減に寄与することができる。しかも、大掛かりな自動化システムの構築が不要になるため、大幅なコスト削減に寄与できるとともに、各乳牛C…の体型や動きにより乳頭Cb…の位置や高さが異なり、かつ不安定になる場合であっても、ティートカップTc…を確実かつ効率的にセッティングできるため、コスト削減と労力削減の双方をバランスよく実現できる最適な搾乳システムとして提供することができる。また、通常、牛床面とミルクライン51の距離は、当該ミルクライン51から牛乳が集められる図示しない受乳装置から離間するに従い、高さが少しずつ変化(増加)する構造になっているが、高さ方向位置検出部4により、ティートカップセット部6の相対高さは、乳牛Cに対してのみならず搾乳作業者(の目線)に対しても常に一致することになるため、円滑かつ効率的な搾乳作業を行うことができる。
【0090】
以上、各種変更例を含む好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0091】
例えば、搾乳ユニットUa…は自動で移動するタイプを例示したが手動で移動するタイプを排除するものではない。即ち、移動手段Fmは、自動電動式,手動電動式又は手動式であるか否かは問わない。また、搾乳ユニットUa…は、二台の搾乳ユニットUa,Ubを示したが、一台であってもよいし、二台以上の任意の台数を適用可能である。垂直支持シャフト部2s(垂直支持部2)は、上シャフト部2uと下シャフト部2dを軸方向Fsに連結支持部11を介して連結した連結構造により構成した場合を示したが、その他、パイプ状の下シャフト部2dの内部に上シャフト部2uを挿入して構成したり、下シャフト部2dと上シャフト部2uを横方向に分離させて構成するなど、同様の機能を有する各種構造により置換可能である。高さ方向位置検出部4は、接触検出方式を例示したが、検出用横バー12(13)の先端に反射式光学センサを取付けるなどにより非接触検出方式を採用する場合を排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明に係る搾乳システムは、係留牛舎における各ストールに対して搾乳ユニットを移動させて搾乳を行う各種の搾乳システムに利用できる。
【符号の説明】
【0093】
M:搾乳システム,1:ティートカップセッティング装置,2:垂直支持部,2u:上シャフト部,2d:下シャフト部,2us:垂直支持部の上端,2ds:垂直支持部の下端,3:支持機構部,4:高さ方向位置検出部,5:支持アーム部,5s:支持アーム部の一端,5t:支持アーム部の他端,6:ティートカップセット部,7:ティートカップ支持機構部,8:操作機構部,11:連結支持部,12:検出用横バー,12s:検出用横バーの一端,12t:検出用横バーの他端,12tp:当接部,12tf:フック形状部,13:検出用縦バー,14:保持機能部,15:動力駆動手段,15v:シャフト昇降駆動部,15f:ティートカップ旋回駆動部,16:手動操作手段,73:当接ユニット部,74:規制部,100:係留牛舎,C:乳牛,Cb…乳頭,Cu:乳牛の上端位置,Cd:乳牛の下端位置,Tc…:ティートカップ,Tco…収容口,St…:ストール,R:ガイドレール,Ua…:搾乳ユニット,Pc:搾乳ポジション,Fm:移動手段,Fh:水平方向,P:チューブ素材