(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160694
(43)【公開日】2024-11-14
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
H01L29/78 301H
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024069694
(22)【出願日】2024-04-23
(31)【優先権主張番号】P 2023075736
(32)【優先日】2023-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100203264
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 未久
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊太朗
【テーマコード(参考)】
5F140
【Fターム(参考)】
5F140AA03
5F140AA21
5F140AC01
5F140AC02
5F140BA01
5F140BA16
5F140BB13
5F140BC06
5F140BC12
5F140BC17
5F140BE07
5F140BF04
5F140BG08
5F140BG12
5F140BG14
5F140BG41
5F140BG44
5F140BH15
5F140BH49
5F140BJ08
5F140BK13
5F140BK14
5F140BK21
5F140CB01
5F140CB04
(57)【要約】
【課題】1/fノイズを低減しつつ、短チャネル効果の増加が抑制された半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置は、ゲート絶縁膜と、半導体基板の表層部に位置する第1導電型のウェル領域と、ウェル領域の表層部に位置する第2導電型のソース領域及び第2導電型のドレイン領域と、第2導電型の第1領域と、第1導電型の第2領域とを備える。第1領域は、ソース領域とドレイン領域との間に位置し、ウェル領域に埋め込まれる。第2領域は、第1領域とゲート絶縁膜との間に位置する。第1領域に含まれる第2導電型の不純物濃度は、第1領域に含まれる第1導電型の不純物濃度よりも高い。第2領域に含まれる第2導電型の不純物濃度は、第2領域に含まれる第1導電型の不純物濃度よりも低い。第1領域のウェル領域への半導体基板の表面からの埋め込み深さは、50nm以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート絶縁膜と、
半導体基板の表層部に位置する第1導電型のウェル領域と、
前記ウェル領域の表層部に位置する第2導電型のソース領域及び前記第2導電型のドレイン領域と、
前記ソース領域と前記ドレイン領域との間に位置し、前記ウェル領域に埋め込まれる前記第2導電型の第1領域と、
前記第1領域と前記ゲート絶縁膜との間に位置する前記第1導電型の第2領域と
を備え、
前記第1領域及び前記第2領域は、前記第1導電型の同じ種類の不純物及び前記第2導電型の同じ種類の不純物をそれぞれ含み、
前記第1領域に含まれる前記第2導電型の不純物濃度は、前記第1領域に含まれる前記第1導電型の不純物濃度よりも高く、
前記第2領域に含まれる前記第2導電型の不純物濃度は、前記第2領域に含まれる前記第1導電型の不純物濃度よりも低く、
前記第1導電型の不純物濃度は、前記第1領域及び前記第2領域の少なくとも一部において5.0×1016cm-3以上であり、
前記第1領域の前記ウェル領域への前記半導体基板の表面からの埋め込み深さは、50nm以上である、半導体装置。
【請求項2】
前記第1導電型の不純物濃度は、前記第1領域及び前記第2領域の少なくとも一部において1.0×1018cm-3以下である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2導電型の不純物濃度は、前記第1領域及び前記第2領域の少なくとも一部において1.0×1018cm-3以下である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2領域では、前記半導体基板の厚さ方向に垂直な方向において前記第1導電型の不純物濃度が略均一である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ウェル領域では、前記半導体基板の厚さ方向に垂直な方向において前記第1導電型の不純物濃度が略均一である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
第1導電型はn型であり、第2導電型はp型である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第ウェル領域に含まれる前記第1導電型の不純物濃度の最大値は、前記第1領域及び前記2領域に含まれる前記第2導電型の不純物濃度よりも高い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1領域に含まれる前記第2導電型の不純物濃度の最大値は、前記第2領域及び前記ウェル領域に含まれる前記第2導電型の不純物濃度よりも高い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2導電型の不純物は、インジウムである、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第2領域は、前記第1領域とともに前記ウェル領域に埋め込まれる、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第2領域の前記ウェル領域への前記半導体基板の表面からの埋め込み深さは、1nm以上50nm以下である、請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記第2領域は、シリコン薄膜であり、
前記第2領域は、前記半導体基板の上に位置する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記第1領域に含まれる前記第2導電型の不純物は、ボロンである、請求項12に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第2領域の厚さは、10nm以上50nm以下である、請求項12に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記ゲート絶縁膜と前記半導体基板との間の界面準位密度は、1.0×1010cm-2以下である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記ゲート絶縁膜と前記半導体基板との間の界面準位密度は、1.0×109cm-2以上1.0×1010cm-2以下である、請求項15に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アナログ回路の高性能化のために、回路内に配置されたMOS(Metal-Oxide-Semiconductor)トランジスタの1/fノイズを低減させることが有効である。1/fノイズの原因の1つとして、キャリアがゲート絶縁膜と半導体基板との間の界面にトラップされることが挙げられる。
【0003】
そこで、1/fノイズへの対策として、埋め込みチャネル型トランジスタが知られている。埋め込みチャネル型トランジスタは、チャネルが形成される領域が半導体基板に埋め込まれるように構成されたトランジスタである。このような構成の埋め込みチャネル型トランジスタでは、キャリアがゲート絶縁膜と半導体基板との間の界面にトラップされにくくなる。そのため、埋め込みチャネル型トランジスタでは、表面チャネル型トランジスタと比較すると、1/fノイズが低減される。しかしながら、チャネルが形成される領域を半導体基板に深く埋め込むように構成すると、短チャネル効果が増加する。そこで、チャネルが形成される領域の深さを0.05μm以下にした埋め込みチャネル型トランジスタが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
埋め込みチャネル型トランジスタにおいて、1/fノイズを低減するためには、チャネルが形成される領域を半導体基板に深く埋め込むことが望まれる。しかしながら、従来のトランジスタでは、チャネルが形成される領域を半導体基板に深く埋め込むと、短チャネル効果が増加していた。
【0006】
かかる点に鑑みてなされた本開示の目的は、1/fノイズを低減しつつ、短チャネル効果の増加が抑制された半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本開示の一実施形態に係る半導体装置は、
ゲート絶縁膜と、
半導体基板の表層部に位置する第1導電型のウェル領域と、
前記ウェル領域の表層部に位置する第2導電型のソース領域及び前記第2導電型のドレイン領域と、
前記ソース領域と前記ドレイン領域との間に位置し、前記ウェル領域に埋め込まれる前記第2導電型の第1領域と、
前記第1領域と前記ゲート絶縁膜との間に位置する前記第1導電型の第2領域と
を備え、
前記第1領域及び前記第2領域は、前記第1導電型の同じ種類の不純物及び前記第2導電型の同じ種類の不純物をそれぞれ含み、
前記第1領域に含まれる前記第2導電型の不純物濃度は、前記第1領域に含まれる前記第1導電型の不純物濃度よりも高く、
前記第2領域に含まれる前記第2導電型の不純物濃度は、前記第2領域に含まれる前記第1導電型の不純物濃度よりも低く、
前記第1導電型の不純物濃度は、前記第1領域及び前記第2領域の少なくとも一部において5.0×1016cm-3以上であり、
前記第1領域の前記ウェル領域への前記半導体基板の表面からの埋め込み深さは、50nm以上である。
【0008】
[2]本開示の一実施形態として、[1]において、
前記第1導電型の不純物濃度は、前記第1領域及び前記第2領域の少なくとも一部において1.0×1018cm-3以下である。
【0009】
[3]本開示の一実施形態として、[1]又は[2]において、
前記第2導電型の不純物濃度は、前記第1領域及び前記第2領域の少なくとも一部において1.0×1018cm-3以下である。
【0010】
[4]本開示の一実施形態として、[1]から[3]までの何れか1つにおいて、
前記第2領域では、前記半導体基板の厚さ方向に垂直な方向において前記第1導電型の不純物濃度が略均一である。
【0011】
[5]本開示の一実施形態として、[1]から[4]までの何れか1つにおいて、
前記ウェル領域では、前記半導体基板の厚さ方向に垂直な方向において前記第1導電型の不純物濃度が略均一である。
【0012】
[6]本開示の一実施形態として、[1]から[5]までの何れか1つにおいて、
第1導電型はn型であり、第2導電型はp型である。
【0013】
[7]本開示の一実施形態として、[1]から[6]までの何れか1つにおいて、
前記第ウェル領域に含まれる前記第1導電型の不純物濃度の最大値は、前記第1領域及び前記2領域に含まれる前記第2導電型の不純物濃度よりも高い。
【0014】
[8]本開示の一実施形態として、[1]から[7]までの何れか1つにおいて、
前記第1領域に含まれる前記第2導電型の不純物濃度の最大値は、前記第2領域及び前記ウェル領域に含まれる前記第2導電型の不純物濃度よりも高い。
【0015】
[9]本開示の一実施形態として、[1]から[8]までの何れか1つにおいて、
前記第2導電型の不純物は、インジウムである。
【0016】
[10]本開示の一実施形態として、[1]から[9]までの何れか1つにおいて、
前記第2領域は、前記第1領域とともに前記ウェル領域に埋め込まれる。
【0017】
[11]本開示の一実施形態として、[1]から[10]までの何れか1つにおいて、
前記第2領域の前記ウェル領域への前記半導体基板の表面からの埋め込み深さは、1nm以上50nm以下である。
【0018】
[12]本開示の一実施形態として、[1]から[8]において、
前記第2領域は、シリコン薄膜であり、
前記第2領域は、前記半導体基板の上に位置する。
【0019】
[13]本開示の一実施形態として、[12]において、
前記第1領域に含まれる前記第2導電型の不純物は、ボロンである。
【0020】
[14]本開示の一実施形態として、[12]又は[13]において、
前記第2領域の厚さは、10nm以上50nm以下である。
【0021】
[15]本開示の一実施形態として、[1]から[14]までの何れか1つにおいて、
前記ゲート絶縁膜と前記半導体基板との間の界面準位密度は、1.0×1010cm-2以下である。
【0022】
[16]本開示の一実施形態として、[1]から[15]までの何れか1つにおいて、
前記ゲート絶縁膜と前記半導体基板との間の界面準位密度は、1.0×109cm-2以上1.0×1010cm-2以下である。
【0023】
[17]本開示の一実施形態として、[1]から[11]までの何れか1つの半導体装置の製造方法は、
前記ウェル領域における前記ゲート絶縁膜側の前記第2導電型の不純物濃度が前記ウェル領域の前記第1導電型の不純物濃度よりも低くなるように、前記第2導電型の不純物イオンを前記半導体基板にカウンターイオン注入することを含み、
前記第2導電型の不純物は、レトログレード分布を示す。
【0024】
[18]本開示の一実施形態として、[17]において、
前記ゲート絶縁膜となる絶縁膜を形成し、ゲート電極となるポリシリコン膜を形成した後に高温ランプアニールを行うことをさらに含み、
前記高温ランプアニールは、965℃以上1125℃以下の温度、且つ15秒以上60秒以下の時間の条件で行われる。
【0025】
[19]本開示の一実施形態として、[12]又は[12]に従属する[13]から[16]までの何れか1つの半導体装置の製造方法は、
前記第2導電型の不純物イオンを前記半導体基板にカウンターイオン注入することと、
前記半導体基板上にシリコン薄膜をエピタキシャル成長によって形成することと、
前記シリコン薄膜に前記第1導電型の不純物イオンをイオン注入することとを含む。
【0026】
[20]本開示の一実施形態として、[19]において、
前記ゲート絶縁膜となる絶縁膜を形成し、ゲート電極となるポリシリコン膜を形成した後に高温ランプアニールを行うことをさらに含み、
前記高温ランプアニールの条件は、965℃以上1050℃以下の温度、且つ15秒以上30秒以下の時間である。
【0027】
[21]本開示の一実施形態として、[12]又は[12]に従属する[13]から[16]までの何れか1つの半導体装置の製造方法は、
前記第2導電型の不純物イオンを前記半導体基板にカウンターイオン注入することと、
前記半導体基板上に、前記第1導電型の不純物がドープされたシリコン薄膜をエピタキシャル成長によって形成することとを含む。
【0028】
[22]本開示の一実施形態として、[21]において、
前記ゲート絶縁膜となる絶縁膜を形成し、ゲート電極となるポリシリコン膜を形成した後に高温ランプアニールを行うことをさらに含み、
前記高温ランプアニールの条件は、965℃以上1050℃以下の温度、且つ15秒以上30秒以下の時間である。
【発明の効果】
【0029】
本開示の一実施形態によれば、1/fノイズを低減しつつ、短チャネル効果の増加が抑制された半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図1に示す半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図3】
図1に示す半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図4】
図1に示す半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図5】
図1に示す半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図6】
図1に示す半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図7】
図1に示す半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図8】
図1に示す半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図9】
図1に示す半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図10】
図1に示す半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図11】
図1に示す半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図12】不純物分布のシミュレーション結果を示す図である。
【
図13】トランジスタのドレイン電流-ゲート電圧特性(I
d-V
g特性)の実測結果を示す図である。
【
図14】ゲート絶縁膜と半導体基板との間の界面準位密度(N
SS)の実測結果を示す図である。
【
図15】価電子帯のシミュレーション結果を示す図である。
【
図17】本開示の第2実施形態に係る半導体装置の概略構成を示す断面図である。
【
図18】
図17に示す半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図19】
図17に示す半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図20】
図17に示す半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【
図21】比較例に係る不純物分布のシミュレーション結果を示す図である。
【
図22】実施例に係る不純物分布のシミュレーション結果を示す図である。
【
図23】ドレイン電流-ゲート電圧特性(I
d-V
g特性)のシミュレーション結果を示す図である。
【
図24】価電子帯のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本開示の実施形態に係る半導体装置及び半導体装置の製造方法が説明される。各図中、同じ又は類似の構成要素には、同じ符号を付す。また、説明の便宜上、「上」とは、半導体装置においてゲート電極側を意味し、「下」とは、その反対側を意味する。
【0032】
(第1実施形態)
図1に示すように、本開示の第1実施形態に係る半導体装置1は、半導体基板2と、素子分離層3と、トランジスタ4とを備える。
【0033】
半導体基板2は、例えば、単結晶のシリコン基板である。半導体基板2は、n型又はp型である。半導体基板2の表層部には、半導体素子が位置する。
【0034】
素子分離層3は、半導体基板2の表層部に位置する半導体素子を区画する。
図1では、半導体素子であるトランジスタ4を区画する。
【0035】
トランジスタ4は、半導体基板2の表層部に位置する。トランジスタ4は、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)である。また、トランジスタ4は、P型の埋め込みチャネル型トランジスタである。ただし、トランジスタ4は、N型の埋め込みチャネル型トランジスタであってもよい。
【0036】
本実施形態では、第1導電型は、n型である。また、第2導電型は、p型である。ただし、トランジスタ4がN型の埋め込みチャネル型トランジスタである場合、第1導電型がp型であり、第2導電型がn型であってよい。
【0037】
トランジスタ4は、ウェル領域5と、埋め込み領域6と、ソース領域9と、ドレイン領域10と、ゲート絶縁膜15と、ゲート電極16と、サイドウォール17と、シリサイド層18とを備える。
【0038】
ウェル領域5は、半導体基板2の表層部に位置する。ウェル領域5は、n型である。ウェル領域5は、n型の不純物を含む。ウェル領域5は、例えば、リンを含む。
【0039】
埋め込み領域6は、ソース領域9とドレイン領域10との間に位置する。埋め込み領域6は、ウェル領域5に埋め込まれる。埋め込み領域6の半導体基板2の表面からの深さは、50nm以上である。埋め込み領域6は、第1領域7と、第2領域8とを含む。
【0040】
第1領域7は、第2領域8よりもゲート絶縁膜15から離れて位置する。第1領域7のウェル領域5への半導体基板2の表面からの埋め込み深さは、例えば、50nm以上である。第1領域7のウェル領域5への半導体基板2の表面からの埋め込み深さは、50nm以上90nm以下であってよい。第2領域8は、第1領域7とゲート絶縁膜15との間に位置する。本実施形態では、第2領域8は、第1領域7とともにウェル領域5に埋め込まれる。第2領域8のウェル領域5への埋め込み深さは、第1領域7のウェル領域5への埋め込み深さに応じて選択されてよい。第2領域8のウェル領域5への半導体基板2の表面からの埋め込み深さは、例えば、1nm以上50nm以下である。
【0041】
第1領域7は、p型である。第2領域8は、n型である。第1領域7及び第2領域8は、p型の同じ種類の不純物を含む。後述するように、第1領域7及び第2領域8は、ウェル領域5にp型の不純物イオンをカウンターイオン注入することにより、同時に形成される。このp型の不純物イオンは、例えば、インジウムイオン(In+)である。後述するインジウムイオン(In+)を用いたカウンターイオン注入によって、第2領域8に含まれるp型の不純物であるインジウム濃度は、第2領域8に含まれるn型の不純物であるリン濃度よりも低くなる。また、ウェル領域5に含まれるp型の不純物であるインジウム濃度は、ウェル領域5に含まれるn型の不純物であるリン濃度よりも低くなる。その一方で、第1領域7に含まれるp型の不純物であるインジウム濃度は、第1領域7に含まれるn型の不純物であるリン濃度よりも高くなる。また、第1領域7に含まれるp型の不純物であるインジウム濃度の最大値は、ウェル領域5に含まれるn型の不純物であるリン濃度の最大値よりも高くなる。このような構成により、第1領域7がp型となり、第2領域8がn型となる。第1領域、第2領域及びウェル領域の不純物濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により測定することができる。
【0042】
第1領域7及び第2領域8の少なくとも一部において、n型の不純物であるリン濃度は、1.0×1016cm-3以上とする必要がある。チャネルの埋め込み具合を強化するため、第1領域7及び第2領域8の少なくとも一部において、n型の不純物であるリン濃度は、5.0×1016cm-3以上であることが好ましい。チャネルの埋め込み具合をより強化するため、第1領域7及び第2領域8の少なくとも一部において、n型の不純物であるリン濃度は、6.0×1016cm-3以上であることが、より好ましい。チャネルの埋め込み具合をさらに強化するため、第1領域7及び第2領域8の少なくとも一部において、n型の不純物であるリン濃度は、7.0×1016cm-3以上であることが、さらに好ましい。
【0043】
トランジスタ4の閾値電圧のばらつきを抑制するため、第1領域7及び第2領域8の少なくとも一部において、n型の不純物であるリン濃度は、1.0×1018cm-3以下であることが好ましい。トランジスタ4の閾値電圧のばらつきをさらに抑制するため、第1領域7及び第2領域8の少なくとも一部において、n型の不純物であるリン濃度は、9.0×1017cm-3以下であることが、より好ましい。
【0044】
第1領域7において、p型の不純物であるインジウム濃度は、n型の不純物であるリン濃度以上とする必要がある。チャネルの埋め込み具合を強化するため、第1領域7及び第2領域8の少なくとも一部において、p型の不純物であるインジウム濃度は、8.0×1016cm-3以上であることが好ましい。チャネルの埋め込み具合をより強化するため、第1領域7及び第2領域8の少なくとも一部において、p型の不純物であるインジウム濃度は、1.0×1017cm-3以上であることが、より好ましい。チャネルの埋め込み具合をさらに強化するため、第1領域7及び第2領域8の少なくとも一部において、p型の不純物であるインジウム濃度は、2.0×1017cm-3以上であることが、さらに好ましい。
【0045】
第2領域8において、p型の不純物であるインジウム濃度は、n型の不純物であるリン濃度以下とする必要がある。トランジスタ4の閾値電圧のばらつきを抑制するため、第1領域7及び第2領域8の少なくとも一部において、p型の不純物であるインジウム濃度は、1.0×1018cm-3以下であることが好ましい。トランジスタ4の閾値電圧のばらつきをさらに抑制するため、第1領域7及び第2領域8の少なくとも一部において、p型の不純物であるインジウム濃度は、9.0×1017cm-3以下であることが、より好ましい。
【0046】
第1領域7では、半導体基板2の厚さ方向に垂直な方向においてp型の不純物であるインジウム濃度が略均一である。第2領域8では、半導体基板2の厚さ方向に垂直な方向においてn型の不純物であるリン濃度が略均一である。ウェル領域5では、半導体基板2の厚さ方向に垂直な方向においてn型の不純物であるが略均一である。ここで、半導体基板2の厚さ方向とは、ウェル領域5と埋め込み領域6とが積層される積層方向に平行な方向である。例えば、半導体基板2の厚さ方向は、
図1に示すような方向d1である。また、半導体基板2の厚さ方向に垂直な方向とは、半導体基板2の厚さ方向に垂直な方向であれば、任意の方向であってよい。つまり、半導体基板2の厚さ方向に垂直な方向は、半導体基板2が広がる平面内の任意の方向を含んでよい。例えば、半導体基板2の厚さ方向に垂直な方向は、
図1に示すような方向d2である。また、不純物濃度が略均一とは、不純物濃度の最小値に対する最大値の比が9以下であることを意味してよく、好ましくは5以下であることを意味してよく、より好ましくは3以下であることを意味してよい。
【0047】
埋め込み領域6には、トランジスタ4がオン状態になると、チャネルが形成される。第1領域7とゲート絶縁膜15との間に第2領域8が位置することにより、
図15を参照して後述することにより、チャネルが埋め込み領域6に埋め込まれる度合いを大きくすることができる。
【0048】
ソース領域9及びドレイン領域10は、それぞれ、ウェル領域5の表層部に位置する。ソース領域9とドレイン領域10とは、互いに隔離される。ソース領域9は、p型である。ソース領域9は、p型のエクステンション領域11と、p型のコンタクト領域13とを含む。ドレイン領域10は、p型である。ドレイン領域10は、p型のエクステンション領域12と、p型のコンタクト領域14とを含む。
【0049】
エクステンション領域11,12は、それぞれ、ゲート電極16に整合して形成される。ソース領域9からドレイン領域10に向かう方向において、エクステンション領域11と埋め込み領域6との間のジャンクション位置P1は、ゲート電極16の端部から長さD1だけ内側に位置する。同一又は類似に、ソース領域9からドレイン領域10に向かう方向において、エクステンション領域12と埋め込み領域6との間のジャンクション位置P2は、ゲート電極16の端部から長さD1だけ内側に位置する。長さD1は、例えば、5nm以上100nm以下である。
【0050】
エクステンション領域11,12は、それぞれ、コンタクト領域13,14よりも浅い領域に位置する。エクステンション領域11,12が浅い領域に位置することにより、トランジスタ4の短チャネル効果を低減することができる。
【0051】
コンタクト領域13は、ディープソース領域とも称される。コンタクト領域14は、ディープドレイン領域とも称される。コンタクト領域13,14は、それぞれ、サイドウォール17に整合して形成される。コンタクト領域13,14のそれぞれに含まれるp型の不純物濃度は、エクステンション領域11,12のそれぞれに含まれるp型の不純物濃度よりも高い。コンタクト領域13,14のそれぞれは、シリサイド層18を介して配線が接続される。コンタクト領域13,14のそれぞれに含まれるp型の不純物濃度を高くすることにより、配線とのコンタクト抵抗を低減することができる。
【0052】
ゲート絶縁膜15は、半導体基板2の上に位置する。ゲート絶縁膜15は、例えば、酸化シリコン(SiO2)膜である。ゲート絶縁膜15の厚さは、例えば、4~20nmである。
【0053】
ゲート絶縁膜15と半導体基板2との間の界面準位密度は、1.0×1010cm-2以下であってもよいし、1.0×109cm-2以上1.0×1010cm-2以下であってもよい。後述の高温ランプアニールを行うことにより、ゲート絶縁膜15と半導体基板2との間の界面準位密度を1.0×1010cm-2以下にすることができる。
【0054】
ゲート電極16は、ゲート絶縁膜15の上に位置する。ゲート電極16は、例えば、n+ポリシリコン膜である。ただし、ゲート電極16は、p+ポリシリコン膜であってもよい。ゲート電極16の厚さは、例えば、100~400nmである。
【0055】
サイドウォール17は、ゲート絶縁膜15の上に位置する。サイドウォール17は、ゲート電極16の側面に形成される。
【0056】
シリサイド層18は、コンタクト領域13,14及びゲート電極16のそれぞれの上に形成される。シリサイド層18は、サイドウォール17に整合して形成される。シリサイド層18は、例えば、コバルトシリサイド(CoSi2)、チタンシリサイド(TiSi2)又はニッケルシリサイド(NiSi2)等により形成される。
【0057】
<半導体装置の製造方法>
次に、
図2から
図11を参照して
図1に示す半導体装置1の製造方法が説明される。以下に説明する製造方法を適宜修正することにより、トランジスタ4に代えて又は加えてN型の埋め込みチャネル型トランジスタを備える半導体装置1が製造されてもよい。
【0058】
まず、半導体基板2が準備される。次に、
図2に示すように、半導体基板2の表層部に素子分離層3が形成される。素子分離層3が形成されることにより、半導体基板2に形成される半導体素子が区画される。素子分離層3は、例えば、STI(Shallow Trench Isolation)又はLOCOS(Local Oxidation of Silicon)等によって形成される。その後、半導体基板2の上にスルー膜20が形成される。スルー膜20は、例えば、酸化シリコン(SiO
2)膜である。スルー膜20の厚さは、例えば、5~40nmである。
【0059】
次に、
図3に示すように、スルー膜20を介して半導体基板2の表層部にn型の不純物イオンであるリンイオン(P
+)が選択的に注入される。リンイオン(P
+)の注入は、例えば、120~160keVの加速電圧、且つ3×10
12~1×10
13cm
-2のドーズ量の条件で行われる。リンイオン(P
+)が注入されることにより、ウェル領域5Aが形成される。
【0060】
次に、
図4に示すように、カウンターイオン注入が行われる。本実施形態では、p型の不純物イオンであるインジウムイオン(In
+)がスルー膜20を介してウェル領域5Aに選択的に注入される。カウンターイオン注入では、
図1に示すウェル領域5におけるゲート絶縁膜15側のインジウム濃度がウェル領域5のリン濃度よりも低くなるように、インジウムイオン(In
+)がウェル領域5Aに注入される。また、インジウムイオン(In
+)をウェル領域5Aに注入すると、ウェル領域5Aにおけるインジウムの濃度分布は、レトログレード分布となる。レトログレード分布は、一方向に沿って位置が変わるに従って濃度が変化する濃度分布である。より詳細には、レトログレード分布は、一方向に沿って位置が変わるに従って濃度が増加した後、当該一方向に沿って位置が変わるに従って濃度が減少する濃度分布である。つまり、レトログレード分布は、山なりの濃度分布である。このようなカウンターイオン注入により、埋め込み領域6Aが形成される。埋め込み領域6Aは、後に第2領域8となる第2領域8Aと、後に第1領域7となる第1領域7Aとを含む。
【0061】
ここで、カウンターイオン注入において、インジウムイオン(In+)のドーズ量が高くなると、インジウムの不活性化によってトランジスタのドレイン電流-ゲート電圧特性(Id-Vg特性)にキンクが現れることが知られている(I. C. Kizilyalli et al, IEEE Electron Device Letters, vol. 17 (1996), p. 46)。そこで、本実施形態に係るカウンターイオン注入では、インジウムイオン(In+)は、例えば、80~120keVの加速電圧、1×1012~6×1012cm-2のドーズ量で注入される。このような構成により、トランジスタ4のドレイン電流-ゲート電圧特性にキンクが現れることを抑制することができる。
【0062】
カウンターイオン注入が行われた後、活性化アニールが行われる。活性化アニールが行われることにより、ウェル領域5A、第2領域8A及び第1領域7Aにおける不純物イオンが活性化される。不純物イオンが活性化されることにより、
図5に示すようなn型のウェル領域5、p型の第1領域7及びn型の第2領域8が形成される。
【0063】
次に、スルー膜20が除去された後、
図5に示すように、絶縁膜15A及びポリシリコン膜16Aが形成される。絶縁膜15Aは、例えば、熱酸化又はプラズマ酸化によって形成された酸化シリコン(SiO
2)である。絶縁膜15Aの厚さは、例えば、4~20nmである。ポリシリコン膜16Aは、例えば、ポリシリコン薄膜を成膜することにより形成される。ポリシリコン膜16Aの厚さは、例えば、100~400nmである。絶縁膜15A及びポリシリコン膜16Aが形成されると、高温ランプアニールが行われる。高温ランプアニールは、例えば、RTA(Rapid Thermal Anneal)法によって行われる。高温ランプアニールは、965℃以上1125℃以下の温度、且つ15秒以上60秒以下の時間の条件で行われる。高温ランプアニールが行われることにより、
図14を参照して後述するように、トランジスタ4の界面準位密度を低減させることができる。界面準位密度が低減することにより、トランジスタ4において1/fノイズを低減させることができる。
【0064】
次に、ポリシリコン膜16Aにリンイオン(P
+)又はヒ素イオン(As
+)が注入されることにより、
図6に示すように、電極層16Bが形成される。電極層16Bは、n
+ポリシリコン膜である。トランジスタ4の閾値電圧を低くしたい場合、ホウ素イオン(B
+)をポリシリコン膜16Aに注入することにより、p
+ポリシリコン膜となる電極層16Bが形成されてもよい。
【0065】
次に、電極層16Bの表面にハードマスク21が成膜された後、
図7に示すように、ハードマスク21及び電極層16Bがエッチングされる。ハードマスク21は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法によって形成される。ハードマスク21の厚さは、例えば、50nmである。
【0066】
次に、再酸化が行われ、
図8に示すように、ゲート電極16及び絶縁膜15Bが形成される。再酸化は、例えば、800~900℃の温度の条件で行われる。再酸化によって、
図7に示す電極層16Bに注入された不純物が電極層16Bと絶縁膜15Aとの間の界面まで拡散される。このような拡散によって、
図8に示すゲート電極16が形成される。また、再酸化によって、ゲート電極16の側面には、酸化膜22が形成される。
【0067】
次に、エクステンションイオン注入が行われ、
図9に示すように、注入領域11A,12Aが形成される。エクステンションイオン注入では、ホウ素イオン(B
+)又は二フッ化ホウ素イオン(BF
2
+)が選択的に注入される。エクステンションイオン注入は、例えば、3~15keVの加速電圧、且つ1×10
13~1×10
15cm
-2のドーズ量の条件で行われる。
図1に示すエクステンション領域11,12のそれぞれの端部がゲート電極16の端部の内側に位置するように、エクステンションイオンの注入時のチルト角が調整される。
【0068】
エクステンションイオン注入が行われた後、活性化アニールが行われる。活性化アニールが行われることにより、注入領域11A,12Aにおける不純物イオンが活性化される。不純物イオンが活性化されることにより、
図10に示すようなエクステンション領域11,12が形成される。
【0069】
次に、
図10に示すように、サイドウォール17が形成される。サイドウォール17は、例えば、CVD法によって絶縁膜を形成して異方性エッチングを行うことにより、形成される。この絶縁膜は、例えば、酸化シリコン又は窒化シリコンである。サイドウォール17は、ゲート電極16に整合して形成される。このとき、
図9に示すハードマスク21がエッチングされる。また、絶縁膜15Bがエッチングされ、
図10に示すようなゲート絶縁膜15が形成される。
【0070】
次に、
図11に示すように、ゲート絶縁膜15、ゲート電極16及びサイドウォール17を含む半導体基板2の表層部上の全面に、スルー膜23が形成される。スルー膜23は、例えば、酸化シリコン(SiO
2)である。スルー膜23は、例えば、CVD法によって形成される。スルー膜23の厚さは、例えば、10nmである。スルー膜23が形成されると、ゲート電極16及びサイドウォール17がマスクされ、半導体基板2の表層部にコンタクト不純物イオンが選択的に注入される。コンタクト不純物イオンは、例えば、ホウ素イオン(B
+)又は二フッ化ホウ素イオン(BF
2
+)である。コンタクト不純物イオンの注入は、例えば、10~40keVの加速電圧、且つ1×10
15~5×10
15cm
-2のドーズ量の条件で行われる。コンタクト不純物イオンが注入されることにより、
図11に示すように、注入領域13A,14Aが形成される。
【0071】
注入領域13A,14Aが形成された後、活性化アニールが行われる。活性化アニールが行われることにより、
図1に示すコンタクト領域13,14が形成される。その後、
図1に示すシリサイド層18が形成される。シリサイド層18の形成では、まず、
図11に示すスルー膜23をウェットエッチング等によって除去することにより、コンタクト領域13,14及びゲート電極16の表面を露出させる。次に、露出したコンタクト領域13,14及びゲート電極16の表面に金属膜が生成された後、アニール処理が行われてシリサイド層18が形成される。その後、未反応の金属膜は、薬液処理によって選択的に除去される。その後、配線層を形成する後工程が行われ、
図1に示すような半導体装置1が形成される。
【0072】
<結果1>
図12は、不純物分布のシミュレーション結果を示す図である。
図12において、横軸は、半導体基板における深さ(Depth [nm])を示す。横軸における0[nm]は、ゲート酸化膜と半導体基板との間の界面に対応する。縦軸は、不純物濃度(Impurity concentration [cm
-3])を示す。
【0073】
一点鎖線は、
図3を参照して上述した条件でリンイオン(P
+)を注入した場合の半導体基板におけるリン濃度を示す。
【0074】
実線は、実施例を示す。つまり、実線は、
図4を参照して上述した条件でインジウムイオン(In
+)をカウンターイオン注入した場合の半導体基板におけるインジウム濃度を示す。インジウムイオン(In
+)を注入する加速電圧の条件は、100keVとした。
【0075】
破線は、比較例として、二フッ化ホウ素イオン(BF2
+)をカウンターイオン注入した場合の半導体基板におけるボロンの濃度を示す。二フッ化ホウ素イオン(BF2
+)を注入する加速電圧の条件は、60keVとした。
【0076】
破線から分かるように、ボロン濃度は、ゲート酸化膜と半導体基板との間の界面付近で最大となる。また、ボロン濃度は、半導体基板における深さが深くなるに連れて減少する。
【0077】
破線と一点鎖線との比較から、半導体基板における深さが0~70nmとなる範囲では、ボロン濃度がリン濃度よりも高くなる。また、半導体基板における深さが70nmよりも深くなる範囲では、ボロン濃度は、リン濃度を下回る。つまり、二フッ化ホウ素イオン(BF2
+)をカウンターイオン注入した場合、半導体基板における深さが0~70nmとなる範囲は、p型となる。また、半導体基板における深さが70nmよりも深くなる範囲は、n型となる。
【0078】
実線から分かるように、インジウム濃度は、半導体基板における深さが0~60nmとなる範囲では、半導体基板における深さが深くなるに連れて増加する。また、インジウム濃度は、半導体基板における深さが60nmとなる位置で最大となる。また、インジウム濃度は、半導体基板における深さが60nmよりも深くなる範囲では、半導体基板における深さが深くなるにつれて減少する。
【0079】
実線と一点鎖線との比較から、半導体基板における深さが0~10nmとなる範囲では、インジウム濃度がリン濃度よりも低くなる。また、半導体基板における深さが10~90nmとなる範囲では、インジウム濃度がリン濃度よりも高くなる。また、半導体基板における深さが90nmよりも深くなる範囲では、インジウム濃度がリン濃度よりも低くなる。つまり、インジウムイオン(In
+)をカウンターイオン注入した場合、半導体基板における深さが0~10nmとなる範囲は、n型になる。また、半導体基板における深さが10~90nmとなる範囲は、p型になる。また、半導体基板における深さが90nmよりも深くなる範囲は、n型になる。このような構成により、インジウムイオン(In
+)を用いたカウンターイオン注入によって、
図1に示すような、p型の第1領域7及びn型の第2領域8を同時に形成することができる。
【0080】
p型の第1領域7である、半導体基板における深さが10~90nmとなる範囲では、インジウム濃度の最大値が、第2領域8及びウェル領域5に含まれるインジウム濃度よりも高くなっている。n型のウェル領域5である、半導体基板における深さが90nmよりも深くなる範囲では、リン濃度の最大値が、第1領域7及び第2領域8に含まれるリン濃度よりも高くなっている。
【0081】
<結果2>
図13は、トランジスタのドレイン電流-ゲート電圧特性(I
d-V
g特性)の実測結果を示す図である。実測に用いたトランジスタのゲート幅(W
g)は、10μmであり、当該トランジスタのゲート長(L
g)は、0.4μmであった。また、実測では、ドレイン電圧(V
d)は、-1.5Vとした。
【0082】
図13において、横軸は、ゲート電圧(-V
g)[V])を示す。縦軸は、ドレイン電流(-I
d)[A/μm])を示す。
【0083】
実線は、実施例を示す。つまり、実線は、インジウムイオン(In+)をカウンターイオン注入して形成されたトランジスタ4のドレイン電流-ゲート電圧特性を示す。
【0084】
破線は、比較例として、二フッ化ホウ素イオン(BF2
+)をカウンターイオン注入して形成されたトランジスタのドレイン電流-ゲート電圧特性を示す。
【0085】
実施例のトランジスタ4の方が、比較例のトランジスタよりも、サブスレッショルド特性が若干悪化した。しかしながら、実施例及び比較例は、ほぼ同じId-Vg特性を示した。また、インジウムイオン(In+)のドース量を6×1012cm-2以下にしたことにより、実施例のトランジスタ4では、実線から分かるようにId-Vg特性にキンクが現れることを抑制することができた。
【0086】
<結果3>
図14は、ゲート絶縁膜と半導体基板との間の界面準位密度(N
SS)の実測結果を示す図である。
【0087】
比較例1は、二フッ化ホウ素イオン(BF2
+)をカウンターイオン注入し、RTA法による高温ランプアニールを行わなかった場合である。
【0088】
比較例2は、二フッ化ホウ素イオン(BF2
+)をカウンターイオン注入し、RTA法による高温ランプアニールを行った場合である。
【0089】
実施例は、インジウムイオン(In+)をカウンターイオン注入し、RTA法による高温ランプアニールを行った場合である。
【0090】
比較例1では、界面準位密度は、6.5×10
9cm
-2であった。比較例2及び実施例では、界面準位密度は、2.1×10
9cm
-2であった。この結果から、
図5に示すようなゲート電極となるポリシリコン膜16Aを形成した後に高温ランプアニールを行うことにより、界面準位密度を6.5×10
9cm
-2から2.1×10
9cm
-2まで低減可能であることが分かる。また、比較例2及び実施例から、界面準位密度は、カウンターイオン注入の不純物の種類すなわち二フッ化ホウ素イオン(BF
2
+)又はインジウムイオン(In
+)に依存しないことが分かる。
【0091】
<結果4>
図15は、価電子帯のシミュレーション結果を示す図である。横軸は、半導体基板における深さ(Depth [nm])を示す。横軸における0[nm]は、ゲート酸化膜と半導体基板との間の界面に対応する。縦軸は、価電子帯のエネルギー(Valence band energy [eV])を示す。
【0092】
このシミュレーションでは、実施例及び比較例の両方において、トランジスタのゲート幅(W
g)を10μmとし、当該トランジスタのゲート長(L
g)を0.4μmとした。また、トランジスタのドレイン電圧(V
d)を-1.5Vとし、トランジスタのドレイン電流(I
d)を-1μAとした。
図15には、トランジスタのソース領域とドレイン領域との間に形成されるチャネルの中央の価電子帯のエネルギーを示す。
【0093】
実線は、実施例を示す。つまり、実線は、インジウムイオン(In+)をカウンターイオン注入して形成されたトランジスタ4のチャネルの価電子帯のエネルギーを示す。実施例では、第1領域7のウェル領域5への半導体基板2の表面からの埋め込み深さは、50nm以上であった。
【0094】
破線は、比較例として、二フッ化ホウ素イオン(BF
2
+)をカウンターイオン注入して形成されたトランジスタのチャネルの価電子帯のエネルギーを示す。比較例では、二フッ化ホウ素イオン(BF
2
+)をカウンターイオン注入することにより、p型の埋め込み領域が形成される。つまり、比較例に係るトランジスタでは、
図1に示す埋め込み領域6の全てが、p型となる。比較例では、このp型の埋め込み領域のn型のウェル領域への半導体基板の表面からの埋め込み深さは、50nm以上であった。
【0095】
破線から分かるように、比較例では、価電子帯のエネルギーのピークは、半導体基板における深さが0μmとなる付近すなわち界面付近であった。この結果から、比較例では、ドレイン電流が-1μA程度になると、チャネルがゲート絶縁膜とp型の埋め込み領域との間の界面を流れてしまうことが分かる。つまり、比較例に係るトランジスタは、埋め込みチャネル型トランジスタであるにも関わらず、ドレイン電流が-1μA程度になると、表面チャネル型トランジスタのような挙動を示してしまう。このように比較例に係るトランジスタでは、ドレイン電流が-1μA程度になると、チャネルがゲート絶縁膜とp型の埋め込み領域との間の界面を流れてしまうため、1/fノイズが大きくなってしまう。
【0096】
実線から分かるように、実施例では、価電子帯のエネルギーのピークは、半導体基板2における深さが0.03μmとなる付近であった。つまり、実施例では、ドレイン電流が-1μA程度になっても、半導体基板2における深さが0.03μmとなる付近にチャネルが形成されることが分かる。つまり、実施例に係るトランジスタ4では、比較例とは異なり、ドレイン電流が-1μA程度になっても、チャネルが半導体基板に埋め込まれる。このように実施例に係るトランジスタ4では、ドレイン電流が-1μA程度になっても、チャネルが半導体基板2に埋め込まれるため、1/fノイズを低減することができる。
【0097】
このように実施例では、比較例よりも、チャネルが埋め込み領域6に埋め込まれる度合いが大きくなる。その理由は、実施例に係る埋め込み領域6が、埋め込み領域の全ての部分がp型となる比較例とは異なり、p型の第1領域7及びn型の第2領域8を含むためである。つまり、p型の第1領域7の上にn型の第2領域8が位置することにより、実施例では、埋め込み領域6における価電子のエネルギー準位が変化する。実施例では、価電子のエネルギー準位が変化することにより、価電子帯のエネルギーのピーク位置とゲート絶縁膜15と埋め込み領域6との間の界面との間のエネルギー障壁が比較例よりも大きくなる。実施例では、ゲート絶縁膜15と埋め込み領域6との間の界面との間のエネルギー障壁が大きくなることにより、比較例よりも、チャネルが埋め込み領域6に埋め込まれる度合いが大きくなる。
【0098】
<結果5>
図16は、1/fノイズの実測結果を示す図である。横軸は、ドレイン電流(-I
d[A])である。縦軸は、規格化ドレイン電流換算ノイズを示す。規格化ドレイン電流換算ノイズは、ドレイン電流換算ノイズ(S
id)をドレイン電流の二乗(I
d
2)で除算したものである。fの周波数は、100Hzとした。
【0099】
四角のプロットは、実施例を示す。つまり、実施例は、インジウムイオン(In+)をカウンターイオン注入して形成されたトランジスタ4である。
丸のプロットは、比較例を示す。比較例は、結果4と同じく、二フッ化ホウ素イオン(BF2
+)をカウンターイオン注入して形成されたトランジスタである。
【0100】
実施例では、比較例よりも、全体として1/fノイズが低減された。特に、1/fノイズの実施例と比較例との間の差は、ドレイン電流(-I
d[A])が1μA程度になった時点で大きくなった。これは、
図15を参照して上述したように、比較例に係るトランジスタは、ドレイン電流が-1μA程度になると、表面チャネル型トランジスタのような挙動を示すためである。
【0101】
以上のように第1実施形態に係るトランジスタ4では、第1領域7のウェル領域5への半導体基板2の表面からの埋め込み深さは、50nm以上である。このような構成により、第1領域7のウェル領域5への埋め込み深さが50nm未満である場合よりも、埋め込み領域6に形成されるチャネルがゲート絶縁膜15と埋め込み領域6との間の界面から受ける影響を小さくすることができる。チャネルが界面から受ける影響を小さくすることにより、トランジスタ4では、1/fノイズを低減することができる。
【0102】
ここで、上述したように、従来のトランジスタでは、チャネルが形成される領域を半導体基板に深く埋め込むと、短チャネル効果が増加していた。そのため、上述した特許文献1に記載の埋め込みチャネル型トランジスタでは、チャネルが形成される領域の深さを0.05μm以下にしていた。
【0103】
これに対し、第1実施形態に係るトランジスタ4は、p型の第1領域7及びn型の第2領域8を含む埋め込み領域6を備える。このように埋め込み領域6にn型の第2領域8が含まれることにより、トランジスタ4では、埋め込み領域6とゲート絶縁膜15との間の界面付近のp型の不純物濃度が、埋め込み領域にn型の領域が含まれない従来のトランジスタよりも、少なくなる。このようにトランジスタ4では、埋め込み領域6とゲート絶縁膜15との間の界面付近のp型の不純物濃度が少なくなることにより、従来のトランジスタとは異なり、トランジスタの閾値電圧が低下してしまうことを抑制することができる。その結果、トランジスタ4は、オフリーク電流が増加してしまうことを抑制することができる。したがって、第1実施形態に係るトランジスタ4では、第1領域7のウェル領域5への埋め込み深さが50nm以上であっても、短チャネル効果の増加を抑制することができる。
【0104】
さらに、第1実施形態に係るトランジスタ4では、埋め込み領域6がp型の第1領域7及びn型の第2領域8を含むことにより、
図15を参照して上述したように、チャネルが埋め込み領域6に埋め込まれる度合いを大きくすることができる。トランジスタ4では、チャネルが埋め込み領域6に埋め込まれる度合いが大きくなるため、
図15を参照した上述したように、ドレイン電流が-1μA程度になっても、1/fノイズを低減することができる。
【0105】
よって、第1実施形態によれば、1/fノイズを低減しつつ、短チャネル効果の増加が抑制された半導体装置1及び半導体装置1の製造方法を提供することができる。
【0106】
(第2実施形態)
図17に示すように、本開示の第2実施形態に係る半導体装置101は、半導体基板2と、素子分離層3と、トランジスタ104とを備える。
【0107】
トランジスタ104は、半導体基板2の表層部に位置する。トランジスタ104は、MOSFETである。また、トランジスタ104は、P型の埋め込みチャネル型トランジスタである。ただし、トランジスタ104は、N型の埋め込みチャネル型トランジスタであってもよい。
【0108】
本実施形態では、第1導電型は、n型である。また、第2導電型は、p型である。ただし、トランジスタ104がN型の埋め込みチャネル型トランジスタである場合、第1導電型がp型であり、第2導電型がn型であってよい。
【0109】
トランジスタ104は、ウェル領域5と、ソース領域9と、ドレイン領域10と、ゲート絶縁膜15と、ゲート電極16と、サイドウォール17と、シリサイド層18とを備える。トランジスタ104は、第1領域107と、第2領域108とをさらに備える。
【0110】
第1領域107は、p型である。第1領域107は、p型の不純物を含む。第1領域107は、例えば、ボロンを含む。第1領域107は、ソース領域9とドレイン領域10との間に位置する。第1領域107は、ウェル領域5に埋め込まれる。第1領域107のウェル領域5への半導体基板2の表面からの埋め込み深さは、50nm以上である。第1領域107は、後述するように、ウェル領域5にp型の不純物イオンをカウンターイオン注入することにより、形成される。このp型の不純物イオンは、例えば、二フッ化ホウ素イオン(BF2
+)である。
【0111】
第2領域108は、n型である。第2領域108は、n型の不純物を含む。第2領域108は、例えば、リンを含む。第2領域108の厚さは、例えば、10~50nmである。
【0112】
第2領域108は、第1領域107とゲート絶縁膜15との間に位置する。第2領域108は、半導体基板2の上に位置する。第2領域108は、例えば、シリコン薄膜である。
【0113】
<半導体装置の製造方法>
次に、
図18から
図20を参照して
図17に示す半導体装置101の製造方法が説明される。以下に説明する製造方法を適宜修正することにより、トランジスタ104に代えて又は加えてN型の埋め込みチャネル型トランジスタを備える半導体装置101が製造されてもよい。
【0114】
まず、半導体基板2が準備される。
図2を参照した上述したように、半導体基板2の表層部に素子分離層3が形成される。その後、第1実施形態と同じ又は類似に、半導体基板2の上にスルー膜20が形成される。次に、
図3を参照して上述したように、スルー膜20を介して半導体基板2の表層部にn型の不純物であるリンイオン(P
+)が選択的に注入される。
【0115】
次に、
図18に示すように、カウンターイオン注入が行われる。本実施形態では、p型の不純物イオンである二フッ化ホウ素イオン(BF
2
+)がスルー膜20を介してウェル領域5Aに選択的に注入される。二フッ化ホウ素イオン(BF
2
+)を用いることにより、トランジスタ104では、ドレイン電流-ゲート電圧特性(I
d-V
g特性)にキンクが現れるという問題が解決される。また、二フッ化ホウ素イオン(BF
2
+)を用いることにより、トランジスタ104の閾値電圧を低くすることができる。二フッ化ホウ素イオン(BF
2
+)の注入は、例えば、40~100keVの加速電圧、且つ3×10
12~1×10
13cm
-2のドーズ量の条件で行われる。このようなカウンターイオン注入により、後に第1領域107となる第1領域107Aが形成される。
【0116】
カウンターイオン注入が行われた後、活性化アニールが行われる。半導体基板2におけるボロンの拡散を抑制するために、活性化アニールの条件は、930~1000℃の温度、且つ120秒以下の時間であってよい。活性化アニールが行われることにより、ウェル領域5A及び第1領域107Aにおける不純物イオンが活性化される。不純物イオンが活性化されることにより、
図19に示すようなn型のウェル領域5及びp型の第1領域107が形成される。
【0117】
次に、スルー膜20が除去された後、
図19に示すように、第1領域107の表面上にノンドープのシリコン薄膜108Aが形成される。シリコン薄膜108Aは、エピタキシャル成長によって形成されてよい。シリコン薄膜108Aの厚さは、例えば、10~50nmである。
【0118】
次に、
図20に示すように、スルー膜24が形成される。スルー膜24は、例えば、酸化シリコン(SiO
2)膜である。スルー膜24の厚さは、例えば、20nm以下である。その後、スルー膜24を介してシリコン薄膜108Aに、リンイオン(P
+)又はヒ素イオン(As
+)がイオン注入される。シリコン薄膜108Aにリンイオン(P
+)又はヒ素イオン(As
+)がイオン注入されることにより、シリコン薄膜108Bが形成される。リンイオン(P
+)又はヒ素イオン(As
+)のイオン注入は、例えば、5~7keVの加速電圧、且つ3×10
11~3×10
12cm
-2の範囲のドーズ量の条件で行われる。
【0119】
ここで、
図19に示すようなノンドープのシリコン薄膜108Aの代わりに、n型の不純物がドープされたシリコン薄膜が第1第1領域107の表面上に形成されてもよい。n型の不純物がドープされたシリコン薄膜は、エピタキシャル成長によって形成されてよい。
【0120】
次に、活性化アニールが行われる。活性化アニールが行われることにより、シリコン薄膜108Bの不純物イオンが活性化される。シリコン薄膜108Bの不純物イオンが活性化されることにより、
図17に示すような第2領域108が形成される。
【0121】
その後、
図5から
図11を参照して上述した処理が行われることにより、ソース領域9、ドレイン領域10、ゲート絶縁膜15、ゲート電極16、サイドウォール17及びシリサイド層18が形成される。ただし、エクステンション領域11,12は、エクステンションイオン注入の条件に応じて、第2領域108に形成されてもよいし、半導体基板2に形成されてもよい。また、絶縁膜15A及びポリシリコン膜16Aが形成された後に行われる高温ランプアニールの条件は、965℃以上1050℃以下の温度、且つ15秒以上30秒以下の時間である。この高温ランプアニールは、RTA法によって行われる。
【0122】
<結果1>
図21は、比較例に係る不純物分布のシミュレーション結果を示す図である。比較例に係るトランジスタは、第2領域108を含まない。
図21において、横軸は、半導体基板における深さ(Depth [μm])を示す。横軸における0[μm]は、ゲート酸化膜と半導体基板との間の界面に対応する。縦軸は、不純物濃度(Impurity concentration [cm
-3])を示す。
【0123】
図22は、実施例に係る不純物分布のシミュレーション結果を示す図である。つまり、第2領域108を含むトランジスタ104における不純物分布のシミュレーション結果である。
図22において、横軸は、第2領域108又は半導体基板2における深さ(Depth [μm])を示す。横軸における0[μm]は、ゲート酸化膜と第2領域108との間の界面に対応する。縦軸は、不純物濃度(Impurity concentration [cm
-3])を示す。
【0124】
図21及び
図22において、実線は、ドナー濃度を示す。破線は、アクセプタ濃度を示す。実施例において第2領域108のドナー濃度とウェル領域5のドナー濃度とは、同じである。
【0125】
図21に示すように、比較例では、半導体基板における深さが0~0.09μmとなる範囲では、アクセプタ濃度の方が、ドナー濃度よりも高い。つまり、半導体基板における深さが0~0.09μmとなる範囲は、p型となる。また、半導体基板における深さが0.09μmよりも深くなる範囲では、ドナー濃度の方がアクセプタ濃度よりも高い。つまり、半導体基板における深さが0.09μmよりも深くなる範囲は、n型となる。
【0126】
図22に示す実施例では、深さが0~0.02μmとなる範囲は、第2領域108における深さに対応する。そのため、深さが0~0.02μmとなる範囲では、アクセプタ濃度が0になる。つまり、深さが0~0.02μmとなる範囲は、n型となる。また、深さが0.02μmよりも深くなる範囲は、半導体基板2における深さに対応する。深さが0.02~0.12μmとなる範囲では、アクセプタ濃度の方がドナー濃度よりも高くなる。つまり、深さが0.02~0.12μmとなる範囲は、p型となり、第1領域107に対応する。また、深さが0.12μmよりも深くなる範囲では、ドナー濃度の方がアクセプタ濃度よりも高くなる。つまり、深さが0.12μmよりも深くなる範囲は、n型となる。
【0127】
<結果2>
図23は、ドレイン電流-ゲート電圧特性(I
d-V
g特性)のシミュレーション結果を示す図である。シミュレーションに用いたトランジスタのゲート幅(W
g)は、10μmであり、当該トランジスタのゲート長(L
g)は、0.4μmであった。また、シミュレーションでは、ドレイン電圧(V
d)は、-1.5Vとした。
【0128】
図23において、横軸は、ゲート電圧(-V
g)[V])を示す。縦軸は、ドレイン電流(-I
d)[A])を示す。
【0129】
実線は、実施例を示す。つまり、実線は、第2領域108を備えるトランジスタ104のドレイン電流-ゲート電圧特性を示す。
【0130】
破線は、比較例として、第2領域を備えないトランジスタのドレイン電流-ゲート電圧特性を示す。
【0131】
実施例では、比較例よりも、サブスレッショルド特性が悪化した。これは、実施例に係るトランジスタ104が第2領域108を備えることにより、実施例では、比較例よりも、チャネルが半導体基板2に埋め込まれる度合いが大きくなるためである。ただし、実施例及び比較例は、|Vg|≧|Vth|の領域(Vgはゲート電圧であり、Vthは閾値電圧である)では、ほぼ同じ特性を示した。
【0132】
実施例及び比較例の両方のトランジスタにおいて、Id-Vg特性にキンクが現れなかった。これは、カウンターイオン注入に二フッ化ホウ素イオン(BF2
+)を用いたためである。
【0133】
<結果3>
図24は、価電子帯のシミュレーション結果を示す図である。横軸は、半導体基板における深さ(Depth [μm])を示す。横軸における0[μm]は、比較例では半導体基板の表面、実施例では第2領域108の表面に対応する。縦軸は、価電子帯のエネルギー(Valence band energy [eV])を示す。
【0134】
このシミュレーションでは、実施例及び比較例の両方において、トランジスタのゲート幅(W
g)を10μmとし、トランジスタのゲート長(L
g)を0.4μmとした。また、トランジスタのドレイン電圧(V
d)を-1.5Vとし、トランジスタのドレイン電流(I
d)を-1μAとした。
図24には、トランジスタのソース領域とドレイン領域との間に形成されるチャネルの中央の価電子帯のエネルギーを示す。
【0135】
実線は、実施例を示す。つまり、実線は、第2領域108を備えるトランジスタ104のチャネルの価電子帯のエネルギーを示す。実施例では、第1領域107のウェル領域5への半導体基板2の表面からの埋め込み深さは、50nm以上であった。
【0136】
破線は、比較例として、第2領域を備えないトランジスタのチャネルの価電子帯のエネルギーを示す。比較例に係るトランジスタの構成は、第2領域を備えない点を除き、実施例に係るトランジスタの構成と同じである。
【0137】
破線から分かるように、比較例では、価電子帯のエネルギーのピークは、半導体基板における深さが0μmとなる付近すなわち界面付近であった。この結果から、比較例では、ドレイン電流が-1μA程度になると、チャネルがゲート絶縁膜とp型の埋め込み領域との間の界面を流れてしまうことが分かる。つまり、比較例に係るトランジスタは、埋め込みチャネル型トランジスタであるにも関わらず、ドレイン電流が-1μA程度になると、表面チャネル型トランジスタのような挙動を示してしまう。このように比較例に係るトランジスタでは、ドレイン電流が-1μA程度になると、チャネルがゲート絶縁膜とp型の埋め込み領域との間の界面を流れてしまうため、1/fノイズが大きくなってしまう。
【0138】
実線から分かるように、実施例では、価電子帯のエネルギーのピークは、半導体基板2における深さが0.05μmとなる付近であった。つまり、実施例では、ドレイン電流が-1μA程度になっても、半導体基板2における深さが0.05μmとなる付近にチャネルが形成されることが分かる。つまり、実施例に係るトランジスタ104では、比較例とは異なり、ドレイン電流が-1μA程度になっても、チャネルが半導体基板2に埋め込まれる。このように実施例に係るトランジスタ104では、ドレイン電流が-1μA程度になっても、チャネルが半導体基板2に埋め込まれるため、1/fノイズを低減することができる。
【0139】
このように実施例では、比較例よりも、チャネルが第1領域107に埋め込まれる度合いが大きくなることが分かる。その理由は、
図15を参照した上述したように、p型の第1領域107の上にn型の第2領域108が位置するためである。
【0140】
第2実施形態に係る半導体装置101のその他の構成及び効果は、第1実施形態に係る半導体装置1の構成及び効果と同じ又は類似である。
【0141】
本開示の実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部などに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部などを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0142】
1,101 半導体装置
2 半導体基板
3 素子分離層
4,104 トランジスタ
5,5A ウェル領域
6,6A 埋め込み領域
7,7A,107,107A 第1領域
8,8A,108 第2領域
9 ソース領域
10 ドレイン領域
11,12 エクステンション領域
13,14 コンタクト領域
11A,12A,13A,14A 注入領域
108A,108B シリコン薄膜
15 ゲート絶縁膜
15A,15B 絶縁膜
16 ゲート電極
16A ポリシリコン膜
16B 電極層
17 サイドウォール
18 シリサイド層
20,23,24 スルー膜
21 ハードマスク
22 酸化膜