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  • 特開-改質スラグの製造方法 図1
  • 特開-改質スラグの製造方法 図2
  • 特開-改質スラグの製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160731
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】改質スラグの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F27D 15/00 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
F27D15/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075956
(22)【出願日】2023-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000180070
【氏名又は名称】山陽特殊製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】道方 康生
【テーマコード(参考)】
4K063
【Fターム(参考)】
4K063AA03
4K063AA04
4K063BA02
4K063CA01
4K063HA40
(57)【要約】
【課題】改質スラグが効率よく得られうる装置2の提供。
【解決手段】製造装置2は、処理ステーションS1、待機ステーションS2及び排出経路4を有している。処理ステーションS1は、圧力容器6、バスケット8、供給経路10及びドレイン分岐パイプ12を有している。バスケット8には、中間スラグ36が投入される。待機ステーションS2は、ピット14と暴露機16とを有している。ピット14には、原料スラグ38が投入される。圧力容器6から排出された廃蒸気は、排出経路4を通じてピット14へと送られる。このピット14において、原料スラグ38は廃蒸気に曝される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
待機ステーションにある原料スラグを、圧力容器から排出された廃蒸気に曝露させ、中間スラグを得る工程、
上記中間スラグを圧力容器に投入する工程、
及び
上記圧力容器に水蒸気を導入し、上記中間スラグを改質する工程
を備えた、改質スラグの製造方法。
【請求項2】
原料スラグが蓄えられる待機ステーション、
圧力容器、
上記圧力容器に水蒸気を導くための供給経路、
及び
上記圧力容器から排出される廃蒸気を上記待機ステーションに送るための排出経路
を備えた、改質スラグのための製造装置。
【請求項3】
上記排出経路が、バルブの開放によって上記圧力容器からの廃蒸気を通過させる減圧パイプと、上記圧力容器からの廃蒸気を継続的又は断続的に通過させるドレインパイプとを含む、請求項2に記載の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、水和未反応物の含有率が小さいスラグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鋼で生じるスラグには、石灰(酸化カルシウム及び水酸化カルシウム)が多く含まれる。スラグが水を吸収すると、石灰が水和反応を起こす。この水和反応は、スラグの膨張を伴う。水和反応が十分に進行した後のスラグでは、さらなる大幅な膨張は、生じない。水和反応が十分に進行した後のスラグ(改質スラグ)が、路盤材、骨材等として利用されている。
【0003】
水和反応を促進するための装置が、特開2015-193506公報に記載されている。この装置は、圧力容器を有している。この圧力容器に、原料スラグが投入される。この圧力容器に導入された水蒸気により、水和反応が促される。この処理は、エージングと称されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-193506公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水蒸気が利用されるので、エージングには多大のエネルギーが必要である。さらに、エージングには、長時間を要する。
【0006】
本出願人の意図するところは、改質スラグが効率よく得られうる製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、改質スラグの製造方法を開示する。この製造方法は、
(1)待機ステーションにある原料スラグを、圧力容器から排出された廃蒸気に曝露させ、中間スラグを得る工程、
(2)この中間スラグを圧力容器に投入する工程、
及び
(3)この圧力容器に水蒸気を導入し、中間スラグを改質する工程
を含む。
【0008】
本明細書はさらに、改質スラグのための製造装置を開示する。この製造装置は、
原料スラグが蓄えられる待機ステーション、
圧力容器、
この圧力容器に水蒸気を導くための供給経路、
及び
この圧力容器から排出される廃蒸気を待機ステーションに送るための排出経路
を有する。
【0009】
好ましくは、排出経路は、バルブの開放によって圧力容器からの廃蒸気を通過させる減圧パイプと、この圧力容器からの廃蒸気を継続的又は断続的に通過させるドレインパイプとを、含む。
【発明の効果】
【0010】
この製造方法により、少ないエネルギーで改質スラグが得られうる。この製造方法により、短時間で改質スラグが得られうる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態に係る、改質スラグのための製造装置が示された概念図である。
図2図2は、図1の装置による改質スラグの製造方法の一例が示されたフローチャートである。
図3図3は、図2の製造方法のための実験結果が示されたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示された製造装置2は、処理ステーションS1と待機ステーションS2とを有している。この装置2はさらに、排出経路4を有している。この排出経路4は、処理ステーションS1から待機ステーションS2へと至っている。
【0013】
処理ステーションS1は、圧力容器6(オートクレイブ)、バスケット8、供給経路10及びドレイン分岐パイプ12を有している。バスケット8は、圧力容器6に対して出し入れ可能である。供給経路10は、圧力容器6と通じている。ドレイン分岐パイプ12は、圧力容器6から排出経路4に至っている。図1には、3つのドレイン分岐パイプ12が示されている。ドレイン分岐パイプ12の数は、1でもよく、2でもよく、4以上であってもよい。
【0014】
待機ステーションS2は、ピット14と暴露機16とを有している。ピット14は、ボトムプレート18とサイドウォール20とを有している。ボトムプレート18は、複数の溝22を有している。暴露機16は、第一パイプ24と第二パイプ26とを含んでいる。本実施形態では、第一パイプ24は鉛直方向に延在しており、第二パイプ26は水平方向に延在している。第一パイプ24は、排出経路4から第二パイプ26へと至っている。第二パイプ26は、溝22に収容されている。図示されないが、第二パイプ26は多数の小孔を有している。この小孔を通じて、第二パイプ26の中の流動体(液体又は気体)は、第二パイプ26の外へと移動しうる。図1には、2つの第二パイプ26が示されている。第二パイプ26の数は、1でもよく、3以上であってもよい。
【0015】
排出経路4は、メインパイプ28、減圧パイプ30、ドレインパイプ32及びバルブ34を有している。メインパイプ28は、待機ステーションS2において、第一パイプ24と通じている。減圧パイプ30は、圧力容器6からメインパイプ28に至っている。ドレインパイプ32は、ドレイン分岐パイプ12とメインパイプ28とを連結している。バルブ34は、減圧パイプ30に取り付けられている。
【0016】
処理ステーションS1には、中間スラグ36が示されている。中間スラグ36の詳細は、後述される。この中間スラグ36は、バスケット8に収容されている。図1において矢印A1で示されるように、中間スラグ36及びバスケット8は、圧力容器6に収容されうる。この圧力容器6には、供給経路10を通じて水蒸気が導入されうる。導入時、バルブ34は閉じている。この水蒸気により、圧力容器6の内部の高温及び高圧が達成される。中間スラグ36は、この水蒸気に曝されうる。
【0017】
後に詳説されるように、圧力容器6では、ドレインが生じる。このドレインは、ドレイン分岐パイプ12によって圧力容器6から排出される。ドレイン分岐パイプ12からは同時に、水蒸気も排出される。この水蒸気は、廃蒸気とも称される。ドレイン及び廃蒸気は、ドレインパイプ32、メインパイプ28、第一パイプ24及び第二パイプ26を進行する。前述の通り第二パイプ26は、多数の小孔を有している。廃蒸気は、この小孔を通過してピット14へと至る。
【0018】
バルブ34が開かれると、圧力容器6から水蒸気(廃蒸気)が排出される。廃蒸気は、減圧パイプ30、メインパイプ28、第一パイプ24及び第二パイプ26を進行する。廃蒸気は、第二パイプ26の小孔を通過してピット14へと至る。
【0019】
待機ステーションS2には、原料スラグ38が示されている。原料スラグ38の詳細は、後述される。原料スラグ38は、ピット14に収容されている。前述の通り、ピット14には廃蒸気が導かれる。原料スラグ38は、廃蒸気に曝されうる。
【0020】
図2に、図1の装置2による改質スラグの製造方法のフローチャートが示されている。この製造方法では、まず、原料スラグ38が準備される(STEP1)。電気炉、転炉等から排出された溶融スラグの凝固によって、原料スラグ38が得られる。凝固したスラグが適切なサイズに粉砕されて、原料スラグ38が得られてもよい。製鋼では、炉において、溶鋼に石灰源が添加される。この石灰源に起因して、原料スラグ38は石灰を含んでいる。
【0021】
この原料スラグ38は、ピット14に投入される(STEP2)。このピット14に、廃蒸気が導かれる。ピット14において原料スラグ38は、廃蒸気に曝される(STEP3)。廃蒸気への曝露によって、原料スラグ38は昇温する。この曝露によって、原料スラグ38にて石灰の水和反応が進み、この原料スラグ38が膨張する。この水和反応により、中間スラグ36が得られる。曝露は十分ではないので、中間スラグ36には、未だ水和していない石灰が、多量に残存している。
【0022】
この中間スラグ36が、バスケット8に投入される(STEP4)。さらに、このバスケット8と共に、中間スラグ36が圧力容器6に投入される(STEP5)。この圧力容器6に、バルブ34が閉じた状態で、供給経路10を通じて水蒸気が導入される。この導入により、圧力容器6の内部の温度が上昇し、圧力も上昇する。中間スラグ36は、この水蒸気に曝される(STEP6)。この水蒸気によって、中間スラグ36において石灰の水和反応が進み、中間スラグ36が膨張する。この水和反応により、改質スラグが得られる。改質スラグでは、水和していない石灰の量は少ない。本明細書において、その水和未反応石灰の量が、原料スラグ38における水和未反応石灰の量よりも少ないスラグが「改質スラグ」と称される。
【0023】
中間スラグ36の水和の進行中、圧力容器6では、水蒸気が冷却されてドレインが生じる。このドレインは、ドレイン分岐パイプ12によって圧力容器6から排出される。ドレイン分岐パイプ12からは同時に、一部の水蒸気も排出される。前述の通り、この水蒸気が、廃蒸気としてピット14に供給される。中間スラグ36の水和の進行中、廃蒸気は、継続的又は断続的にピット14に供給される。ドレインの生成によっても圧力容器6の内圧が下がらないよう、供給経路10を通じ、水蒸気が圧力容器6に供給され続ける。
【0024】
圧力容器6への水蒸気の導入が停止され、バルブ34が開かれると、圧力容器6から水蒸気(廃蒸気)が排出される。前述の通り、この廃蒸気がピット14に供給される。改質スラグは、圧力容器6から取り出される。
【0025】
この改質スラグは、構造物の材料として利用されうる。具体的には、改質スラグは、路盤材、骨材等として利用されうる。水和未反応石灰の量が少ないので、この改質スラグは、構造物において膨張しにくい。この構造物において、改質スラグは割れにくい。さらにこの構造物では、サイズの変化が抑制されうる。
【0026】
この製造方法では、待機ステーションS2において石灰の水和反応が進むので、処理ステーションS1における水和反応のための時間は、短くて足りる。この製造方法により、効率よく改質スラグが得られうる。処理ステーションS1における水和反応のための時間が短いので、処理ステーションS1に供給される水蒸気の量は、少なくて足りる。この製造方法では、少ないエネルギーで、改質スラグが得られうる。
【0027】
待機ステーションS2が、複数のピット14を有してもよい。これらのピット14に、輪番で廃蒸気が供給されうる。
【実施例0028】
以下、実施例に係る改質スラグの製造方法の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本明細書で開示された範囲が限定的に解釈されるべきではない。
【0029】
[実施例1]
待機ステーションのピットに、原料スラグを投入した。この原料スラグを、14日間にわたって廃蒸気に曝し、中間スラグを得た。この中間スラグを、圧力容器に投入した。この中間スラグを、所定時間にわたって水蒸気に曝し、改質スラグを得た。圧力容器での処理時間は、110分間(BM)、99分間(-10%)、88分間(-20%)及び60分間(-45%)とした。
【0030】
[実施例2及び3]
待機ステーションでの曝露日数を下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、改質スラグを得た。
【0031】
[比較例1]
待機ステーションでの曝露を行わなかった他は実施例1と同様にして、改質スラグを得た。
【0032】
[膨張係数]
それぞれの改質スラグに、500時間の連続水浸膨張試験を施して、膨張率を測定した。この結果が、指数として、表1及び図3に示されている。
【0033】
【表1】
【0034】
表1に示される通り、各実施例の改質スラグは、圧力容器での処理時間が短くても膨張率が小さい。この評価結果から、各実施例の改質スラグ製造方法の優位性は、明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
この製造方法で得られた改質スラグは、種々の構造物の材料として利用されうる。
【符号の説明】
【0036】
2・・・改質スラグ製造装置
4・・・排出経路
6・・・圧力容器(オートクレイブ)
8・・・バスケット
10・・・供給経路
12・・・ドレイン分岐パイプ
14・・・ピット
16・・・暴露機
18・・・ボトムプレート
20・・・サイドウォール
22・・・溝
24・・・第一パイプ
26・・・第二パイプ
28・・・メインパイプ
30・・・減圧パイプ
32・・・ドレインパイプ
34・・・バルブ
36・・・中間スラグ
38・・・原料スラグ
S1・・・処理ステーション
S2・・・待機ステーション
図1
図2
図3