(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160872
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】熱塩基発生剤、化合物、反応性組成物及び反応生成物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/40 20060101AFI20241108BHJP
C07D 213/75 20060101ALI20241108BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C08G59/40
C07D213/75 CSP
C09K3/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076349
(22)【出願日】2023-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有光 晃二
【テーマコード(参考)】
4C055
4J036
【Fターム(参考)】
4C055AA01
4C055BA01
4C055CA01
4C055DA53
4C055DB04
4C055DB08
4C055DB10
4C055DB15
4C055FA11
4C055FA37
4J036AB01
4J036AB02
4J036AB03
4J036AD08
4J036AD09
4J036AJ11
4J036AJ21
4J036DC05
4J036DC06
4J036DC11
4J036DC21
4J036DC22
4J036DC38
4J036HA01
4J036JA01
4J036JA06
4J036JA10
4J036KA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】加熱した際の反応性に優れる反応性組成物を調製可能な、熱塩基発生剤の提供。
【解決手段】下記一般式(a)で表され、加熱により4-アミノピリジン骨格を有する塩基を発生させる化合物を含む熱塩基発生剤であり、一般式(a)中、R
1は水素原子又は1価の置換基であり、R
11~R
14は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基であり、R
2は一般式(a)中のカルボニル炭素と結合する原子が、炭素原子、酸素原子又は硫黄原子である1価の置換基である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(a)で表され、加熱により4-アミノピリジン骨格を有する塩基を発生させる化合物を含む熱塩基発生剤。
【化1】
一般式(a)中、R
1は水素原子又は1価の置換基であり、R
11~R
14は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基であり、R
2は一般式(a)中のカルボニル炭素と結合する原子が、炭素原子、酸素原子又は硫黄原子である1価の置換基である。
【請求項2】
一般式(a)中、R1は1価の置換基であり、前記1価の置換基はアルキル基である請求項1に記載の熱塩基発生剤。
【請求項3】
一般式(a)中、R2は、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいチオアルキル基である請求項1に記載の熱塩基発生剤。
【請求項4】
前記一般式(a)は、下記一般式(a-1)を満たす請求項1に記載の熱塩基発生剤。
【化2】
一般式(a-1)中、R
1は水素原子又は1価の置換基であり、R
11~R
14及びR
21~R
24は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基であり、R
3は電子供与性基又は電子求引性基である。
【請求項5】
一般式(a-1)中、R3はアルコキシ基又はニトロ基である請求項4に記載の熱塩基発生剤。
【請求項6】
下記一般式(a)で表され、加熱により4-アミノピリジン骨格を有する塩基を発生させる化合物。
【化3】
一般式(a)中、R
1は水素原子又は1価の置換基であり、R
11~R
14は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基であり、R
2は一般式(a)中のカルボニル炭素と結合する原子が、炭素原子、酸素原子又は硫黄原子である1価の置換基である(但し、R
2がo-ニトロベンジルオキシ構造又はフルオレニルメチルオキシ構造を含む構造である場合を除く)。
【請求項7】
一般式(a)中、R1は1価の置換基であり、前記1価の置換基はアルキル基である請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
一般式(a)中、R2は、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいチオアルキル基である請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
前記一般式(a)は、下記一般式(a-1)を満たす請求項6に記載の化合物。
【化4】
一般式(a-1)中、R
1は水素原子又は1価の置換基であり、R
11~R
14及びR
21~R
24は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基であり、R
3は電子供与性基又は電子求引性基である。
【請求項10】
一般式(a-1)中、R3はアルコキシ基又はニトロ基である請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の熱塩基発生剤と、塩基反応性化合物と、を含み、前記塩基反応性化合物は、塩基の作用により反応性を示す基に変換される官能基を有する化合物、又は塩基の作用により反応する基を有する化合物である反応性組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の反応性組成物を反応させて得られる反応生成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱塩基発生剤、化合物、反応性組成物及び反応生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱によって重合する熱重合性材料及び光の照射によって重合する光重合性材料は、比較的簡単な操作で重合反応の精密な制御が可能であることから、広く実用化されており、例えば、電子材料分野、印刷材料分野等で重要な位置を占めている。
【0003】
熱重合性材料及び光重合性材料としては、加熱又は光照射により塩基を発生する塩基発生剤と、塩基の作用により重合するモノマー又はオリゴマーと、を含有する塩基触媒系のものも知られている。
例えば、熱塩基発生剤及び光塩基発生剤としては、例えば、グアニジン等の強塩基とカルボン酸との塩に相当するイオン型のものが知られている(例えば、特許文献1及び非特許文献1を参照)。このようなイオン型塩基発生剤は、加熱又は露光によりカルボキシ基において脱炭酸反応が進行するとともに、このカルボキシ基と塩を形成していた強塩基が遊離することで、塩基を発生する。
【0004】
しかし、このようなイオン型塩基発生剤は、反応性が高いものの、保存時の安定性が低く、また、溶解性が低いという問題点があった。さらに、このようなイオン型光塩基発生剤を用いた樹脂組成物も、安定性が低いという問題点があった。
【0005】
これに対して、非イオン型の塩基発生剤も検討されている。非イオン型の光塩基発生剤としては、例えば、ニトロベンジル骨格を有するカルバメートであり、露光により脱炭酸反応が進行するとともに、第1級アミン又は第2級アミンが遊離することで、塩基を発生するものが知られている(例えば、非特許文献2を参照)。このような非イオン型光塩基発生剤では、上述のようなイオン型塩基発生剤での問題点が解消される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】K.Arimitsu,R.Endo,Chem.Mater.2013,25,4461-4463.
【非特許文献2】J.F.Cameron,J.M.J.Frechet,J.Am.Chem.Soc.1991,113,4303.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の特許文献及び非特許文献に記載されている塩基発生剤の他にも、加熱した際の塩基反応性化合物(例えば、エポキシ化合物)の反応性に優れる反応性組成物を調製可能な熱塩基発生剤が求められている。
【0009】
本開示は、加熱した際の塩基反応性化合物の反応性に優れる反応性組成物を調製可能な塩基発生剤及び化合物、加熱した際の塩基反応性化合物の反応性に優れる反応性組成物、並びにこの反応性組成物を反応させて得られる反応生成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 下記一般式(a)で表され、加熱により4-アミノピリジン骨格を有する塩基を発生させる化合物を含む熱塩基発生剤。
【化1】
一般式(a)中、R
1は水素原子又は1価の置換基であり、R
11~R
14は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基であり、R
2は一般式(a)中のカルボニル炭素と結合する原子が、炭素原子、酸素原子又は硫黄原子である1価の置換基である。
<2> 一般式(a)中、R
1は1価の置換基であり、前記1価の置換基はアルキル基である<1>に記載の熱塩基発生剤。
<3> 一般式(a)中、R
2は、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいチオアルキル基である<1>に記載の熱塩基発生剤。
<4> 前記一般式(a)は、下記一般式(a-1)を満たす<1>に記載の熱塩基発生剤。
【0011】
【0012】
一般式(a-1)中、R1は水素原子又は1価の置換基であり、R11~R14及びR21~R24は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基であり、R3は電子供与性基又は電子求引性基である。
<5> 一般式(a-1)中、R3はアルコキシ基又はニトロ基である<4>に記載の熱塩基発生剤。
<6> 下記一般式(a)で表され、加熱により4-アミノピリジン骨格を有する塩基を発生させる化合物。
【0013】
【0014】
一般式(a)中、R1は水素原子又は1価の置換基であり、R11~R14は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基であり、R2は一般式(a)中のカルボニル炭素と結合する原子が、炭素原子、酸素原子又は硫黄原子である1価の置換基である(但し、R2がo-ニトロベンジルオキシ構造又はフルオレニルメチルオキシ構造を含む構造である場合を除く)。
<7> 一般式(a)中、R1は1価の置換基であり、前記1価の置換基はアルキル基である<6>に記載の化合物。
<8> 一般式(a)中、R2は、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいチオアルキル基である<6>に記載の化合物。
<9> 前記一般式(a)は、下記一般式(a-1)を満たす<6>に記載の化合物。
【0015】
【0016】
一般式(a-1)中、R1は水素原子又は1価の置換基であり、R11~R14及びR21~R24は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基であり、R3は電子供与性基又は電子求引性基である。
<10> 一般式(a-1)中、R3はアルコキシ基又はニトロ基である<9>に記載の化合物。
<11> <1>~<5>のいずれか1つに記載の熱塩基発生剤と、塩基反応性化合物と、を含み、前記塩基反応性化合物は、塩基の作用により反応性を示す基に変換される官能基を有する化合物、又は塩基の作用により反応する基を有する化合物である反応性組成物。
<12> <11>に記載の反応性組成物を反応させて得られる反応生成物。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一形態によれば、加熱した際の塩基反応性化合物の反応性に優れる反応性組成物を調製可能な塩基発生剤及び化合物、加熱した際の塩基反応性化合物の反応性に優れる反応性組成物、並びにこの反応性組成物を反応させて得られる反応生成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、各成分には、該当する物質が複数種含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。
【0019】
[熱塩基発生剤]
本開示の熱塩基発生剤は、下記一般式(a)で表され、加熱(例えば、180℃の加熱)により4-アミノピリジン骨格を有する塩基を発生させる化合物を含む。
【0020】
【0021】
一般式(a)中、R1は水素原子又は1価の置換基であり、R11~R14は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基であり、R2は一般式(a)中のカルボニル炭素と結合する原子が、炭素原子、酸素原子又は硫黄原子である1価の置換基である。
【0022】
例えば、本開示の熱塩基発生剤は、加熱により塩基反応性化合物を反応させることで反応生成物を製造可能な反応性組成物の調製に用いられる。より具体的には、熱塩基発生剤及び塩基反応性化合物を含む反応性組成物を加熱することにより、熱塩基発生剤から塩基が発生し、発生した塩基の作用により、反応性組成物中の塩基反応性化合物に含まれる官能基が変換され、反応性を示すようになる、あるいは、発生した塩基の作用により、塩基反応性化合物に含まれる官能基が反応する。そのため、前述の反応性組成物を加熱して塩基を発生させることにより、反応性組成物に含有される塩基反応性化合物が反応して反応生成物が得られる。
【0023】
本開示の熱塩基発生剤は、一般式(a)で表される化合物であり、ピリジンの4位にアミド基を含む置換基が結合した化合物を含む。当該熱塩基発生剤及び塩基反応性化合物を含む反応性組成物を加熱することにより、当該熱塩基発生剤に含まれる化合物から4-アミノピリジン骨格を有する塩基が発生する。4-アミノピリジン骨格を有する塩基は、以下の一般式(b)で表される化合物である。
【0024】
【0025】
一般式(b)のR1及びR11~R14は、一般式(a)のR1及びR11~R14と同様である。
【0026】
また、一般式(a)で表される化合物は、非イオン型熱塩基発生剤であり、従来のイオン型熱塩基発生剤とは異なり、保存時の安定性、及び溶解性が比較的高く、これを用いた反応性組成物は安定性が高い。さらに、一般式(a)で表される化合物を含む熱塩基発生剤から発生する塩基は、ピリジン骨格を有する窒素原子に水素原子が結合した塩基である。そのため、例えば、塩基反応性化合物がエポキシ化合物である場合、加熱した際の塩基反応性化合物の反応性が良好であり、例えば、比較的低温で塩基反応性化合物の反応を進行させることができる。さらに、本開示の熱塩基発生剤に含まれる一般式(a)で表される化合物では、加熱により脱炭酸反応が生じない。これにより、二酸化炭素発生による気泡の発生、反応生成物が硬化物であるときの強度低下等を抑制することができる。
【0027】
一般式(a)で表される化合物にて、カルボニル炭素と結合する原子が、窒素原子である1価の置換基である場合、窒素原子に結合する水素原子とカルボニル炭素との水素結合により、反応性組成物中での分散性が悪化しやすくなる。そのため、分散性向上を目的として、追加の溶媒が必要となり、反応生成物を作製する際に溶媒が一部揮発しないことが原因で硬化不良が発生しやすくなる。一方、一般式(a)で表される化合物にて、カルボニル炭素と結合する原子が、炭素原子、酸素原子又は硫黄原子である1価の置換基である場合、前述のような水素結合の発生が抑制されるため、反応性組成物中での分散性が良好であり、また、追加の溶媒が不要あるいはその量を削減することが可能である。その結果、反応生成物を作製する際の溶媒に起因する硬化不良を抑制することができる。
【0028】
一般式(a)中、R1は水素原子又は1価の置換基であり、反応性組成物としたときの保存安定性及び反応性組成物中での分散性の観点から、R1は1価の置換基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。
R1におけるアルキル基は、炭素数が1~10であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。中でも、メチル基が好ましい。
【0029】
一般式(a)中、R11~R14は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基である。R11~R14における1価の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シアノ基(-CN)、ハロゲン原子、ニトロ基、ハロアルキル基(ハロゲン化アルキル基)、水酸基(-OH)、メルカプト基(-SH)、アミノ基、芳香族炭化水素基、及び芳香族複素環式基が挙げられる。
R11~R14の少なくとも2つは互いに結合して環構造を形成していてもよい。
【0030】
一般式(a)中、R11~R14は、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。R11~R14におけるアルキル基の例としては、前述のR1におけるアルキル基の例と同様である。
【0031】
R11~R14におけるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、シクロプロポキシ基、n-ブトキシ基等、前記アルキル基が酸素原子に結合してなる1価の基が挙げられる。
【0032】
R11~R14におけるアリールオキシ基において、酸素原子に結合しているアリール基は、単環状及び多環状のいずれでもよく、炭素数が6~10であることが好ましい。このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、キシリル基(ジメチルフェニル基)等が挙げられ、これらアリール基の1個以上の水素原子が、さらにこれらアリール基、前記アルキル基等で置換されたものも挙げられる。これら置換基を有するアリール基は、置換基も含めて炭素数が6~10であることが好ましい。
【0033】
R11~R14におけるジアルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、メチルエチルアミノ基等、アミノ基(-NH2)の2個の水素原子が、前記アルキル基で置換されてなる1価の基が挙げられる。前記ジアルキルアミノ基において、窒素原子に結合している2個のアルキル基は、互いに同一でも、異なっていてもよい。
R11~R14におけるジアリールアミノ基としては、例えば、ジフェニルアミノ基、フェニル-1-ナフチルアミノ基等、アミノ基の2個の水素原子が、前記アリール基で置換されてなる1価の基が挙げられる。前記ジアリールアミノ基において、窒素原子に結合している2個のアリール基は、互いに同一でも、異なっていてもよい。
R11~R14におけるアルキルアリールアミノ基としては、例えば、メチルフェニルアミノ基等、アミノ基の2個の水素原子のうち、1個の水素原子が前記アルキル基で置換され、1個の水素原子が前記アリール基で置換されてなる1価の基が挙げられる。
【0034】
R11~R14におけるアルキルカルボニル基としては、例えば、メチルカルボニル基(アセチル基)等、前記アルキル基がカルボニル基(-C(=O)-)に結合してなる1価の基が挙げられる。
R11~R14におけるアリールカルボニル基としては、例えば、フェニルカルボニル基(ベンゾイル基)等、前記アリール基がカルボニル基に結合してなる1価の基が挙げられる。
【0035】
R11~R14におけるアルキルオキシカルボニル基としては、例えば、メチルオキシカルボニル基(メトキシカルボニル基)等、前記アルコキシ基がカルボニル基に結合してなる1価の基が挙げられる。
R11~R14におけるアリールオキシカルボニル基としては、例えば、フェニルオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル基)等、前記アリールオキシ基がカルボニル基に結合してなる1価の基が挙げられる。
【0036】
R11~R14におけるアルキルカルボニルオキシ基としては、例えば、メチルカルボニルオキシ基等、前記アルキル基がカルボニルオキシ基(-C(=O)-O-)の炭素原子に結合してなる1価の基が挙げられる。
R11~R14におけるアリールカルボニルオキシ基としては、例えば、フェニルカルボニルオキシ基等、前記アリール基がカルボニルオキシ基の炭素原子に結合してなる1価の基が挙げられる。
【0037】
R11~R14におけるアルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、シクロプロピルチオ基等、前記アルキル基が硫黄原子に結合してなる1価の基が挙げられる。
R11~R14におけるアリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、1-ナフチルチオ基、2-ナフチルチオ基等、前記アリール基が硫黄原子に結合してなる1価の基が挙げられる。
【0038】
R11~R14におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子(-F)、塩素原子(-Cl)、臭素原子(-Br)、ヨウ素原子(-I)が挙げられる。
【0039】
R11~R14におけるハロアルキル基としては、前記アルキル基の1個以上の水素原子が、ハロゲン原子で置換されてなる基が挙げられる。
ハロアルキル基におけるハロゲン原子としては、置換基であるハロゲン原子として例示した上記のものが挙げられる。
ハロアルキル基におけるハロゲン原子の数は、特に限定されず、1個でもよいし、2個以上でもよい。ハロアルキル基におけるハロゲン原子の数が2個以上である場合、これら複数個のハロゲン原子は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。ハロアルキル基は、アルキル基中のすべての水素原子がハロゲン原子で置換されたパーハロアルキル基であってもよい。
ハロアルキル基としては、特に限定されず、例えば、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0040】
R11~R14における芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、これら芳香族炭化水素基の1個以上の水素原子が、例示した前記芳香族炭化水素基、アルキル基等の置換基で置換されていてもよい。前述の置換基を有する芳香族炭化水素基は、置換基も含めて炭素数が6~20であることが好ましい。
【0041】
R11~R14における前記芳香族複素環式基としては、芳香族複素環化合物から、その環骨格を構成する炭素原子又はヘテロ原子に結合している1個の水素原子を除いてなる基が挙げられる。芳香族複素環化合物としては、芳香族複素環骨格を構成する原子として1個以上の硫黄原子を有する化合物(含硫黄芳香族複素環化合物)、芳香族複素環骨格を構成する原子として1個以上の窒素原子を有する化合物(含窒素芳香族複素環化合物)、芳香族複素環骨格を構成する原子として1個以上の酸素原子を有する化合物(含酸素芳香族複素環化合物)、硫黄原子、窒素原子及び酸素原子から選択される互いに異なる2個のヘテロ原子を、芳香族複素環骨格を構成する原子として有する化合物が挙げられる。
【0042】
前記含硫黄芳香族複素環化合物としては、例えば、チオフェン、ベンゾチオフェン等が挙げられる。
【0043】
前記含窒素芳香族複素環化合物としては、例えば、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、インドール、イソインドール、ベンゾイミダゾール、プリン、インダゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン等が挙げられる。
【0044】
前記含酸素芳香族複素環化合物としては、例えば、フラン、ベンゾフラン(1-ベンゾフラン)、イソベンゾフラン(2-ベンゾフラン)等が挙げられる。
【0045】
上述の互いに異なる2個のヘテロ原子を、芳香族複素環骨格を構成する原子として有する化合物としては、例えば、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール等が挙げられる。
【0046】
一般式(a)中、R2は一般式(a)中のカルボニル炭素と結合する原子が、炭素原子、酸素原子又は硫黄原子である1価の置換基である。
【0047】
R2は一般式(a)中のカルボニル炭素と結合する原子が酸素原子である1価の置換基である場合、R2はo-ニトロベンジルオキシ構造又はフルオレニルメチルオキシ構造を含む構造でないことが好ましい。
【0048】
R2は、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいチオアルキル基であることが好ましい。置換基を有していてもよいアルコキシ基は、直鎖状のアルコキシ基であることが好ましく、置換基を有していてもよいアルキル基は、直鎖状のアルキル基であることが好ましく、置換基を有していてもよいチオアルキル基は、直鎖状のチオアルキル基であることが好ましい。これらアルコキシ基、アルキル基及びチオアルキル基の炭素数は、それぞれ独立に2~10であってもよく、2~6であってもよく、2~4であってもよい。例えば、アルコキシ基は、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基等であってもよく、アルキル基は、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基等であってもよく、チオアルキル基は、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基等であってもよい。
【0049】
なお、本開示において、各種官能基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シアノ基(-CN)、ハロゲン原子、ニトロ基、ハロアルキル基(ハロゲン化アルキル基)、水酸基(-OH)、メルカプト基(-SH)、アミノ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環式基等が挙げられる。
【0050】
R2における置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアルキル基及び置換基を有していてもよいチオアルキル基において、置換基の数は、置換可能な水素原子の数にもよるが、例えば、0個~5個であってもよく、0個~3個であってもよく、0個、1個又は2個であってもよい。
前記置換基の数が2個以上である場合、これら置換基は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部のみ同一であってもよい。
【0051】
R2は置換基を有していてもよいフェニル基であってもよく、この場合、一般式(a)は、下記一般式(a-1)を満たすことが好ましい。
【0052】
【0053】
一般式(a-1)中、R1は水素原子又は1価の置換基であり、R11~R14及びR21~R24は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基であり、R3は電子供与性基又は電子求引性基である。
一般式(a-1)中のR1及びR11~R14は、一般式(a)のR1及びR11~R14と同様である。
【0054】
一般式(a-1)中、R21~R24は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基である。R21~R24における1価の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シアノ基(-CN)、ハロゲン原子、ニトロ基、ハロアルキル基(ハロゲン化アルキル基)、水酸基(-OH)、メルカプト基(-SH)、アミノ基、芳香族炭化水素基、及び芳香族複素環式基が挙げられる。
R21~R24の少なくとも2つは互いに結合して環構造を形成していてもよい。
【0055】
一般式(a-1)中、R21~R24は、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
R21~R24における1価の置換基の例は、一般式(a)のR11~R14における1価の置換基の例と同様である。
【0056】
一般式(a-1)中、R3は電子供与性基又は電子求引性基である。
【0057】
電子供与性基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、-NHCOR(Rは置換基を有していてもよい炭化水素基である。)、-OCOR(Rは置換基を有していてもよい炭化水素基である。)等が挙げられる。
中でも、電子供与性基は、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基等のアルコキシ基であることが好ましい。
【0058】
電子求引性基としては、カルボキシ基、シアノ基、アルデヒド基、エステル基、ニトロ基、ハロゲン原子、フェニル基、アシル基、スルホン基等が挙げられる。
中でも、電子求引性基は、ニトロ基であることが好ましい。
【0059】
(化合物(a)の製造方法)
以下、化合物(a)の製造方法の一例について説明する。化合物(a)の製造方法の一例として、まず、一般式(X)で表される化合物及び一般式(b)で表される塩基を準備する。一般式(X)中のR2は、一般式(a)中のR2と同様であり、Xはハロゲン原子(例えば、塩素原子)を表す。
【0060】
次に、一般式(X)で表される化合物及び一般式(b)で表される塩基を混合して反応させる。これにより、以下の反応式に表すように、一般式(X)で表される化合物におけるカルボニル基の炭素原子と一般式(b)で表される塩基における窒素原子とが結合して一般式(a)で表される化合物が得られる。
【0061】
【0062】
前述の一般式(a)で表される化合物の製造方法では、一段階の反応により簡便に一般式(a)で表される化合物を製造することができる。なお、本開示の一般式(a)で表される化合物の製造方法は、前述の製造方法に限定されず、他の方方法を用いて製造してもよい。
一般式(X)で表される化合物及び一般式(b)で表される塩基を混合する際は、テトラヒドロフラン等の溶媒にそれぞれ溶解させた後に混合してもよい。
一般式(X)で表される化合物及び一般式(b)で表される塩基の反応温度及び反応時間は特に限定されない。例えば、反応温度は0℃~50℃であってもよく、反応時間は、0.5時間~48時間であってもよい。
前述の反応では、アミン触媒等の触媒を用いてもよい。
【0063】
[反応性化合物]
本開示の反応性化合物は、本開示の熱塩基発生剤と、塩基反応性化合物と、を含み、前記塩基反応性化合物は、塩基の作用により反応性を示す基に変換される官能基を有する化合物、又は塩基の作用により反応する基を有する化合物である。塩基の作用により反応性を示す基に変換される官能基を有する化合物は、前述の官能基を1つのみ有する化合物であってもよく、前述の官能基を2つ以上有する化合物であってもよく、これらの混合物であってもよい。塩基の作用により反応する基を有する化合物は、塩基の作用により反応する基を1つのみ有する化合物であってもよく、塩基の作用により反応する基を2つ以上有する化合物であってもよく、これらの混合物であってもよい。
【0064】
例えば、本開示の反応性組成物を加熱することにより、熱塩基発生剤から塩基が発生し、発生した塩基の作用により、反応性組成物中の塩基反応性化合物に含まれる官能基が変換され、反応性を示すようになる、あるいは、発生した塩基の作用により、塩基反応性化合物に含まれる官能基が反応する。そのため、前述の反応性組成物を加熱して塩基を発生させることにより、反応性組成物に含有される塩基反応性化合物が反応して反応生成物が得られる。
【0065】
反応性組成物は、加熱により塩基反応性化合物が反応することにより硬化される硬化性組成物であってもよく、硬化性組成物は、加熱により硬化物を製造するために用いられてもよい。
【0066】
本開示の反応性組成物が含有する熱塩基発生剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に設定できる。
【0067】
本開示の反応性組成物において、熱塩基発生剤の含有率は、前記塩基反応性化合物の全量に対して、1質量%~40質量%であることが好ましく、2質量%~35質量%であることがより好ましく、3質量%~10質量%であることがさらに好ましい。熱塩基発生剤の前記含有率が1質量%以上であることで、塩基反応性化合物の反応がより容易に進行する。また、熱塩基発生剤の前記含有率が40質量%以下であることで、熱塩基発生剤の過剰使用が抑制される。
【0068】
(塩基反応性化合物)
本開示の反応性組成物は、塩基反応性化合物を含有する。塩基反応性化合物は、塩基の作用により反応性を示す基に変換される官能基を有する化合物(本開示においては、「塩基反応性化合物(9-2a)」と称することがある)、又は塩基の作用により反応する基を有する化合物(本開示においては、「塩基反応性化合物(9-2b)」と称することがある)である。塩基反応性化合物(9-2b)は、反応する基が、塩基の作用により官能基が反応性を示す基に変換されたものではない点で、塩基反応性化合物(9-2a)とは異なる。
【0069】
前記塩基反応性化合物において進行する反応としては、例えば、付加重合及び縮合重合(縮重合)が挙げられる。
【0070】
前記塩基反応性化合物は、例えば、モノマー、オリゴマー及びポリマーのいずれであってもよいし、低分子化合物及び高分子化合物のいずれであってもよい。
【0071】
前記塩基反応性化合物としては、公知のものを用いることができ、例えば、「特開2011-80032号公報」に記載の塩基反応性化合物を用いることができる。ただし、これは一例である。
【0072】
塩基反応性化合物(9-2a)としては、例えば、塩基の作用により分解して官能基が反応性を示す基に変換されるものが挙げられる。このような塩基反応性化合物(9-2a)としては、例えば、カーボネート骨格(-O-C(=O)-O-)を有する化合物、感光性ポリイミド等が挙げられる。
【0073】
塩基反応性化合物(9-2b)としては、例えば、エポキシ化合物、シリコーン樹脂、アルコキシシラン化合物、(メタ)アクリレート化合物、チオール化合物等が挙げられる。
なお、本開示において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する概念である。
【0074】
本開示の反応性組成物が含有する塩基反応性化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に設定できる。
【0075】
本開示の反応性組成物における塩基反応性化合物の含有率は、反応性組成物の不揮発分の全量に対して、40質量%~90質量%であることが好ましく、45質量%~80質量%であることがより好ましい。
【0076】
<エポキシ化合物>
本開示の反応性組成物は、塩基反応性化合物としてエポキシ化合物を含むことが好ましい。エポキシ化合物としては、1分子中にエポキシ基を1個以上有するエポキシ化合物を含んでいればよく、2個以上有するエポキシ化合物を含むことが好ましい。エポキシ化合物としては、目的に応じて任意に選択できる。
エポキシ化合物は、例えば、モノマー、オリゴマー及びポリマーのいずれであってもよいし、低分子化合物及び高分子化合物のいずれであってもよい。
【0077】
本開示の反応性組成物がエポキシ化合物を含むことにより、反応性組成物を加熱した際、加熱温度が比較的低い温度(例えば、120℃以下)にてエポキシ化合物の反応性が良好である。
【0078】
エポキシ化合物としては特に限定されず、例えば、ジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フエニルグリシジルエーテル、アルキルフェノールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、脂肪族ジグリシジルエーテル、多官能グリシジルエーテル、3級脂肪酸モノグリシジルエーテル、スピログリコールジグリシジルエーテル、グリシジルプロポキシトリメトキシシラン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル等が挙げられる。これらのエポキシ化合物はハロゲン化されていてもよく、水素添加されていてもよい。
【0079】
(他の成分)
本開示の反応性組成物は、塩基反応性化合物及び熱塩基発生剤以外に、さらに他の成分を含有していてもよい。
前記他の成分は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
反応性組成物が含有する前記他の成分は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に設定できる。
【0080】
前記他の成分としては、充填材、顔料、溶媒が挙げられる。反応性組成物に対して光を照射する場合、他の成分として光塩基発生剤、増感剤が含まれていてもよい。
【0081】
<充填材>
本開示の反応性組成物は、充填材を含有していてもよい。充填材を含有させることで、例えば、反応性組成物自体の粘度、反応後の反応性組成物(後述する反応生成物)の強度等の特性を調節できる。
前記充填材は、公知のものでよく、特に限定されない。例えば、充填材は、繊維状、板状及び粒状のいずれでもよく、その形状、大きさ及び材質は、いずれも目的に応じて適宜選択すればよい。
反応性組成物が含有する充填材は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に設定できる。
反応性組成物の充填材の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜調節すればよい。
【0082】
<顔料>
本開示の反応性組成物は、顔料を含有していてもよい。顔料を含有させることで、例えば、光透過性等を調節できる。
反応性組成物が含有する顔料は、公知のものでよく、例えば、白色、青色、赤色、黄色、緑色等のいずれの顔料でもよく、特に限定されない。
反応性組成物が含有する顔料は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に設定できる。
反応性組成物の顔料の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜調節すればよい。
【0083】
<溶媒>
本開示の反応性組成物は、溶媒を含有していてもよい。溶媒を含有させることで、取り扱い性が向上する。
前記溶媒は、特に限定されず、塩基反応性化合物及び塩基発生剤の溶解性、安定性等を考慮して、適宜選択すればよい。
溶媒としては、特に限定されず、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のカルボン酸エステル;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,2-ジメトキシエタン(ジメチルセロソルブ)等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン;アセトニトリル等のニトリル;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド等が挙げられる。
【0084】
反応性組成物が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に設定できる。
【0085】
反応性組成物において、溶媒の含有量は、前記塩基反応性化合物の含有量に対して、3質量倍~20質量倍であることが好ましく、4質量倍~15質量倍であることがより好ましく、5質量倍~10質量倍であることがさらに好ましい。溶媒の含有量がこのような範囲であることで、反応性組成物の取り扱い性がより向上する。
【0086】
<増感剤>
本開示の反応性組成物は、増感剤を含有していてもよい。
増感剤は、特に限定されず、例えば、ベンゾフェノン、ナフトキノン、アントラキノン、キサンテン、チオキサンテン、キサントン、チオキサントン、アントラセン、フェナントレン、フェナントロリン、ピレン、ペンタセン、これらの誘導体等が挙げられる。
増感剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に設定できる。
反応性組成物の増感剤の含有量は、特に限定されず、適宜調節すればよい。
【0087】
反応性組成物は、塩基反応性化合物、熱塩基発生剤、及び必要に応じて他の成分を配合することで得られる。各成分の配合後は、得られたものをそのまま反応性組成物としてもよいし、必要に応じて引き続き公知の精製操作等を行って得られたものを反応性組成物としてもよい。
【0088】
各成分の配合時には、すべての成分を添加してからこれらを混合してもよいし、一部の成分を順次添加しながら混合してもよく、すべての成分を順次添加しながら混合してもよい。
混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサー等を用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
【0089】
配合時の温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、例えば、3℃~30℃とすることができる。
配合時間も、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、例えば、30秒~1時間とすることができる。
ただし、これら配合条件は、一例に過ぎない。
【0090】
<反応生成物>
本開示の反応生成物は、前述の反応性組成物を反応させて得られるものである。本開示の反応生成物を製造する方法については、後述する本開示の反応生成物の製造方法にて説明する。
本開示の反応生成物の形状は、例えば、膜状、線状等、目的に応じて任意に選択できる。
【0091】
(反応生成物の製造方法)
本開示の反応生成物の製造方法は、前述の反応性組成物を加熱して前記熱塩基発生剤から前記塩基を発生させる工程、を含む。反応性組成物に含有される塩基反応性化合物は、発生した塩基の作用により、塩基反応性化合物に含まれる官能基が変換され、反応性を示すようになる、あるいは、発生した塩基の作用により、塩基反応性化合物に含まれる官能基が反応する。そのため、前述の反応性組成物を加熱して塩基を発生させることにより、反応性組成物に含有される塩基反応性化合物が反応して反応生成物が得られる。
【0092】
前記反応性組成物を、公知の手法で目的物に付着させた後、必要に応じてプリベークして(例えば、乾燥させて)反応性組成物層を形成し、次いでポストベークしてもよい。ポストベークすることで塩基を発生させ、発生させた塩基の作用により塩基反応性化合物が反応して反応生成物が得られる。
【0093】
例えば、膜状の反応生成物を製造する場合には、スピンコーター、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーター、又はアプリケーター等の塗工手段を利用して、反応性組成物を目的物に塗工するか、あるいは目的物を反応性組成物に浸漬することにより、目的物に反応性組成物を付着させればよい。
例えば、膜状又は線状の反応生成物を製造する場合には、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット式印刷法、ディスペンサー式印刷法、ジェットディスペンサー式印刷法、グラビア印刷法、グラビアオフセット印刷法、パッド印刷法等の印刷法を利用することにより、目的物に反応性組成物を付着させればよい。
【0094】
プリベークは、例えば、40℃~120℃、30秒~10分の条件で行ってもよく、特に限定されない。
【0095】
ポストベークは、例えば、50℃~180℃、20分~2時間の条件で行ってもよく、塩基反応性化合物としてエポキシ化合物を用いる場合、好ましくは70℃~140℃、20分~2時間の条件で行ってもよく、より好ましくは90℃~120℃、20分~2時間の条件で行ってもよく、さらに好ましくは90℃~100℃、20分~2時間の条件で行ってもよい。
【0096】
プリベーク後かつポストベーク前の反応性組成物層に光を照射してもよい。光を照射することで、光塩基発生剤から光照射により発生した塩基が、熱塩基発生剤の分解及び塩基反応性化合物の反応を促進する。
【0097】
反応性組成物に照射される光の波長は、特に制限されず、例えば、紫外域~可視光域の波長であってもよい。反応性組成物に照射される光の波長は、10nm以上であってもよく、200nm以上であってもよく、300nm以上であってもよい。また、反応性組成物に照射される光の波長は、600nm以下であってもよく、500nm以下であってもよく、400nm以下であってもよい。
【0098】
反応性組成物に照射される光の照度は、例えば、1mW/cm2~100mW/cm2であることが好ましく、5mW/cm2~80mW/cm2であることがより好ましく、10mW/cm2~60mW/cm2であることがさらに好ましい。
反応性組成物に照射される光照射量は、例えば、100mJ/cm2~20000mJ/cm2であることが好ましく、200mJ/cm2~15000mJ/cm2であることがより好ましく、300mJ/cm2~12000mJ/cm2であることがさらに好ましい。
ただし、ここで挙げた光照射条件は一例に過ぎず、これらに限定されない。
【0099】
反応生成物の厚さは、目的に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。反応生成物の厚さは、例えば、1μm~500μmであることが好ましく、5μm~200μmであることがより好ましい。このような厚さの反応生成物を形成するためには、例えば、前記反応性組成物層の厚さを、目的とする反応生成物の厚さ以上とすればよい。
【実施例0100】
以下に実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって制限されるものではない。
【0101】
<化合物(a)-1の製造>
まず以下に示すように、4-メトキシベンゾイルクロリド(化合物(X-1))を、4-(メチルアミノ)ピリジンと反応させて化合物(a)-1を製造した。
二口フラスコに化合物(X-1)(3.0g、17mmol)及び乾燥テトラヒドロフラン(20mL)を加えた。4-(メチルアミノ)ピリジン(1.8g、17mmol)、トリエチレンジアミン(TEA、3.0g、30mmol)及び乾燥テトラヒドロフラン(30mL)を混合した混合液を滴下ロートを用い、氷浴下の化合物(X-1)の溶液に滴下した。次いで、室温条件下にて混合液を24時間撹拌し、反応を行った。
得られた反応液に対して、移動相を酢酸エチルとする、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、目的物である化合物(a)-1を白色固体として得た(収量2.1g、収率53%)。
【0102】
【0103】
得られた化合物(a)-1の1H-NMR及び13C-NMRによる分析結果を表1に示す。
また、得られた化合物(a)-1について、昇温速度5℃/min、測定温度領域20℃~300℃の条件で、示差熱・熱重量(TG-DTA)同時測定を行ったところ、5%重量減少温度(Td5)は239℃であった。
【0104】
【0105】
<化合物(a)-2の製造>
まず以下に示すように、4-ニトロベンゾイルクロリド(化合物(X-2))を、4-(メチルアミノ)ピリジンと反応させて化合物(a)-2を製造した。
二口フラスコに化合物(X-2)(1.8g、10mmol)及び乾燥テトラヒドロフラン(20mL)を加えた。4-(メチルアミノ)ピリジン(1.1g、10mmol)、トリエチレンジアミン(TEA、2.1g、20mmol)及び乾燥テトラヒドロフラン(25mL)を混合した混合液を滴下ロートを用い、氷浴下の化合物(X-2)の溶液に滴下した。次いで、室温条件下にて混合液を24時間撹拌し、反応を行った。
得られた反応液に対して、移動相を酢酸エチルとする、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、目的物である化合物(a)-2を淡黄色固体として得た(収量1.8g、収率70%)。
【0106】
【0107】
得られた化合物(a)-2の1H-NMR及び13C-NMRによる分析結果を表2に示す。
また、得られた化合物(a)-2について、昇温速度5℃/min、測定温度領域20℃~300℃の条件で、示差熱・熱重量(TG-DTA)同時測定を行ったところ、5%重量減少温度(Td5)は268℃であった。
【0108】
【0109】
<化合物(a)-3の製造>
まず以下に示すように、クロロぎ酸ブチル(化合物(X-3))を、4-(メチルアミノ)ピリジンと反応させて化合物(a)-3を製造した。
二口フラスコに化合物(X-3)(1.36g、10mmol)及び乾燥テトラヒドロフラン(10mL)を加えた。4-(メチルアミノ)ピリジン(1.30g、12mmol)、トリエチレンジアミン(TEA、1.21g、12mmol)及び乾燥テトラヒドロフラン(25mL)を混合した混合液を滴下ロートを用い、化合物(X-3)の溶液に滴下した。次いで、室温条件下にて混合液を3時間撹拌し、反応を行った。
得られた反応液に対して、移動相を酢酸エチルとする、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、目的物である化合物(a)-3を透明粘性液体として得た(収量1.39g、収率67%)。
【0110】
【0111】
得られた化合物(a)-3の1H-NMR及び13C-NMRによる分析結果を表3に示す。
また、得られた化合物(a)-3について、昇温速度5℃/min、測定温度領域20℃~300℃の条件で、示差熱・熱重量(TG-DTA)同時測定を行ったところ、5%重量減少温度(Td5)は169℃であった。
【0112】
【0113】
[実施例1]
(化合物(a)-1を用いたエポキシ化合物の熱硬化)
まず、以下に構造を示すエポキシ化合物であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER-828、0.36g)、化合物(a)-1(0.0018g、jER-828に対して5質量%)及びテトラヒドロフラン(0.1mL)を混合して反応性組成物を得た。
【0114】
【0115】
バーコート法(バーコーターの線径:3ミル)により、上記で得られた反応性組成物をシリコンウエハ上に塗工した。次いで、この塗膜(反応性組成物層)を60℃で3分加熱(プリベーク)した後、100℃で60分間加熱(ポストベーク)した。以上により、各塗膜を最終的に、エポキシ化合物であるjER-828を重合させた反応生成物(膜厚20μm~24μm)とすることを試みた。
【0116】
[実施例2]
(化合物(a)-2を用いたエポキシ化合物の熱硬化)
化合物(a)-1を化合物(a)-2(0.0018g、jER-828に対して5質量%)に差し替えた以外は実施例1と同様にして反応性組成物を得た後、反応生成物(膜厚20μm~24μm)を作製することを試みた。
【0117】
[実施例2]
(化合物(a)-3を用いたエポキシ化合物の熱硬化)
化合物(a)-1を化合物(a)-3(0.0018g、jER-828に対して5質量%)に差し替えた以外は実施例1と同様にして反応性組成物を得た後、反応生成物(膜厚20μm~24μm)を作製することを試みた。
【0118】
(鉛筆硬度試験)
実施例1~3にて得られた反応生成物の鉛筆硬度を求めた。実施例1では2H、実施例2では3B、及び実施例3ではHBであり、実施例1~3では鉛筆硬度が3B以上の反応生成物を得ることができた。
【0119】
(保存安定性試験)
実施例1~3で調製した反応性組成物を、室温及び暗所の条件にて保管し、5日間保管後にガラス試験管を振ったり、反転させたりして反応性組成物の保存安定性を評価した。実施例1では、5日間保管後に増粘が確認された。一方、実施例2及び3では、5日間保管後においても粘度がほとんど上昇しておらず液体であった。そのため、実施例2及び3の反応性組成物は保存安定性に特に優れていた。
【0120】
以上に示すように、実施例1~3の反応性組成物を加熱することで塩基反応性組成物の重合反応を好適に進行させることができ、比較的高い硬度の反応生成物を得ることが可能であった。