IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの特許一覧

特開2024-160882非水電解質二次電池用正極活物質及び非水電解質二次電池
<>
  • 特開-非水電解質二次電池用正極活物質及び非水電解質二次電池 図1
  • 特開-非水電解質二次電池用正極活物質及び非水電解質二次電池 図2
  • 特開-非水電解質二次電池用正極活物質及び非水電解質二次電池 図3
  • 特開-非水電解質二次電池用正極活物質及び非水電解質二次電池 図4
  • 特開-非水電解質二次電池用正極活物質及び非水電解質二次電池 図5
  • 特開-非水電解質二次電池用正極活物質及び非水電解質二次電池 図6
  • 特開-非水電解質二次電池用正極活物質及び非水電解質二次電池 図7
  • 特開-非水電解質二次電池用正極活物質及び非水電解質二次電池 図8
  • 特開-非水電解質二次電池用正極活物質及び非水電解質二次電池 図9
  • 特開-非水電解質二次電池用正極活物質及び非水電解質二次電池 図10
  • 特開-非水電解質二次電池用正極活物質及び非水電解質二次電池 図11
  • 特開-非水電解質二次電池用正極活物質及び非水電解質二次電池 図12
  • 特開-非水電解質二次電池用正極活物質及び非水電解質二次電池 図13
  • 特開-非水電解質二次電池用正極活物質及び非水電解質二次電池 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024160882
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用正極活物質及び非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20241108BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241108BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20241108BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/131
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076374
(22)【出願日】2023-05-02
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100209624
【弁理士】
【氏名又は名称】制野 友樹
(72)【発明者】
【氏名】韓 貞姫
(72)【発明者】
【氏名】中山 潤平
(72)【発明者】
【氏名】森田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】松本 政俊
(72)【発明者】
【氏名】古賀 一路
(72)【発明者】
【氏名】松本 和順
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB05
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050GA28
5H050HA00
(57)【要約】
【課題】熱暴走を抑制することができる正極活物質及びそれを用いた非水電解質二次電池を提供すること。
【解決手段】非水電解質二次電池用正極活物質は、Li[Li(Ni1-y-z-wCoMn1-x]O(式中、Mは、Li、Ni、Co、Mn及びO以外の1種以上の元素であり、-0.1≦x≦0.15、0<y≦0.4、0≦z≦0.4、0≦w≦0.1である)で表され、対極をリチウムとして充電した試料についてDTG曲線を複数のピークに分離したとき、150℃以上350℃以下で、ピークトップにおけるDTGの値が最大値を示す第1のピークと、そのピークトップを示す温度に対して20℃以上離れた温度にピークトップを示すピークのうちDTGの値が最大値を示す第2のピークとを有し、第2のピークのピークトップにおけるDTGの値に対する第1のピークのピークトップにおけるDTGの値が1以上9以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式Li1+xNi1-y-z-wCoMn(式中、Mは、Li、Ni、Co、Mn及びO以外の1種以上の元素、-0.1≦x≦0.15、0≦y≦0.4、0≦z≦0.4、0≦w≦0.1である)で表される複合酸化物を含み、
前記複合酸化物を、対極をリチウムとして4.30Vまで充電した試料について、50℃から600℃まで毎分5℃/分で昇温して得られる微分熱重量曲線を複数のピークに分離したとき、
150℃以上350℃以下の温度範囲で、ピークトップにおける微分熱重量の値が最大値を示す第1のピークと、該第1のピークのピークトップを示す温度に対して20℃以上離れた温度にピークトップを示すピークのうち、ピークトップにおける微分熱重量の値が最大値を示す第2のピークとを有し、
前記第2のピークのピークトップにおける微分熱重量の値に対する前記第1のピークのピークトップにおける微分熱重量の値が1以上9以下である
非水電解質二次電池用正極活物質。
【請求項2】
前記複合酸化物において、0<x≦0.15である
請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記第1のピークのピークトップにおける微分熱重量の値が3%/分以下である
請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の正極活物質を含有する正極を備える
非水電解質二次電池。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解質二次電池用正極活物質及び非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
AV機器やパソコン等の電子機器の駆動用電源として、小型、軽量で高エネルギー密度を有し、充放電電圧が高く、充放電容量も大きいという長所を有するリチウムイオン二次電池が注目されている。
【0003】
リチウムイオン二次電池には、通常、主に可燃性の有機溶媒が電解液として用いられているため、高い熱安定性が求められている。例えば、リチウムイオン二次電池においては、充電状態になっているときに熱が与えられることで、正極活物質結晶中から酸素が放出されるが、この酸素が電解液と反応することで熱暴走を起こすことが知られている。
【0004】
特に、正極活物質としては、近年、Ni、Co及びMnを含む活物質が汎用されている。このような正極活物質においては、Niの含有率が高いほど正極活物質の相転移反応がより低温領域で生じ、急激に酸素が放出されるため、正極活物質の熱暴走が起こりやすい。その一方で、電池容量が大きいNi含有率が高い材料が求められるようになり、そのためNi含有率が高い材料特有の熱安定性が低下する傾向が見られるようになってきている。
【0005】
そこで、このような正極活物質の熱暴走を抑制するため、例えば特許文献1には、Liを除く金属元素の総モル数に対して80モル%以上のNi及び0.1モル%以上1.5モル%以下のBを含有するリチウム遷移金属複合酸化物を含む正極活物質であって、少なくともリチウム遷移金属複合酸化物の粒子表面に、Bと、第4族~第6族から選ばれる少なくとも1種以上の元素(M1)と、が存在し、30%粒径より小さな粒子の表面における、Liを除く金属元素の総モル数に対するM1のモル分率は、体積基準の粒径が70%粒径より大きな粒子の表面における、Liを除く金属元素の総モル数に対するM1のモル分率よりも大きい正極活物質が提案されている。そして、特許文献1には、このような複合酸化物をリチウムイオン二次電池に用いることで、高温でも自己発熱速度が抑制されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-51979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の正極活物質では、正極活物質の粒子表面にホウ素化合物を被覆することにより、正極活物質から放出された酸素と電解質との反応による熱暴走に対して一定の抑制効果が期待されるが、これだけでは熱暴走に対する抑制効果は十分ではなく、なお改良の余地がある。
【0008】
したがって、上述したような正極活物質の表面に化合物を被覆する方法以外で、熱暴走を抑制する方法が求められている。
【0009】
本開示は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、非水電解質二次電池において、熱暴走を抑制することができる正極活物質及びそれを用いた非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、一般式Li1+xNi1-y-z-wCoMn(式中、Mは、Li、Ni、Co、Mn及びO以外の1種以上の元素であり、-0.1≦x≦0.15、0≦y≦0.4、0≦z≦0.4、0≦w≦0.1である)で表される複合酸化物を含み、その複合酸化物を、対極をリチウムとして4.30Vまで充電した試料について、50℃から600℃まで毎分5℃/分で昇温して得られる微分熱重量曲線を複数のピークに分離したとき、150℃以上350℃以下の温度範囲で、ピークトップにおける微分熱重量の値が最大値を示す第1のピークと、第1のピークのピークトップを示す温度に対して20℃以上離れた温度にピークトップを示すピークのうち、ピークトップにおける微分熱重量の値が最大値を示す第2のピークとを有し、前記第2のピークの微分熱重量の値に対する前記第1のピークの微分熱重量の値が1以上9以下である正極活物質を、非水電解質二次電池に用いた場合、正極活物質からの酸素の最大放出速度(以下、「最大酸素放出速度」という。)を抑制し、さらには熱暴走を抑制することができることを見出した。具体的に、本開示は、以下のものを提供する。
【0011】
(1)一般式Li1+xNi1-y-z-wCoMn(式中、Mは、Li、Ni、Co、Mn及びO以外の1種以上の元素であり、-0.1≦x≦0.15、0≦y≦0.4、0≦z≦0.4、0≦w≦0.1である)で表される複合酸化物を含み、前記複合酸化物を、対極をリチウムとして4.30Vまで充電した試料について、50℃から600℃まで毎分5℃/分で昇温して得られる微分熱重量曲線を複数のピークに分離したとき、150℃以上350℃以下の温度範囲で、ピークトップにおける微分熱重量の値が最大値を示す第1のピークと、該第1のピークのピークトップを示す温度に対して20℃以上離れた温度にピークトップを示すピークのうち、ピークトップにおける微分熱重量の値が最大値を示す第2のピークとを有し、前記第2のピークのピークトップにおける微分熱重量の値に対する前記第1のピークのピークトップにおける微分熱重量の値が1以上9以下である、非水電解質二次電池用正極活物質。
【0012】
(2)前記複合酸化物において、0<x≦0.15である、(1)に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
【0013】
(3)前記第1のピークのピークトップにおける微分熱重量の値が3%/分以下である、(1)又は(2)に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
【0014】
(4)(1)又は(2)に記載の正極活物質を含有する正極を備える、非水電解質二次電池。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、非水電解質二次電池に用いた場合に、熱暴走を抑制することができる正極活物質及びそれを用いた非水電解質二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1の複合酸化物試料のDTG曲線である。
図2】実施例2の複合酸化物試料のDTG曲線である。
図3】実施例3の複合酸化物試料のDTG曲線である。
図4】実施例4の複合酸化物試料のDTG曲線である。
図5】実施例5の複合酸化物試料のDTG曲線である。
図6】実施例6の複合酸化物試料のDTG曲線である。
図7】実施例7の複合酸化物試料のDTG曲線である。
図8】実施例8の複合酸化物試料のDTG曲線である。
図9】実施例9の複合酸化物試料のDTG曲線である。
図10】実施例10の複合酸化物試料のDTG曲線である。
図11】実施例11の複合酸化物試料のDTG曲線である。
図12】実施例12の複合酸化物試料のDTG曲線である。
図13】実施例13の複合酸化物試料のDTG曲線である。
図14】比較例1の複合酸化物試料のDTG曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施形態について説明するが、本開示は実施形態の記載によって何ら限定されるものではなく、適宜変更を加えて実施することができる。
【0018】
<非水電解質二次電池用正極活物質>
本開示の実施形態に係る非水電解質二次電池用正極活物質は、一般式Li1+xNi1-y-z-wCoMn(式中、Mは、Li、Ni、Co、Mn及びO以外の1種以上の元素であり、-0.1≦x≦0.15、0≦y≦0.4、0≦z≦0.4、0≦w≦0.1である)で表される複合酸化物を含み、その複合酸化物を、対極をリチウムとして4.30Vまで充電した試料について、50℃から600℃まで毎分5℃/分で昇温して得られる微分熱重量曲線を複数のピークに分離したとき、150℃以上350℃以下の温度範囲で、ピークトップにおける微分熱重量の値が最大値を示す第1のピークと、第1のピークのピークトップを示す温度に対して20℃以上離れた温度にピークトップを示すピークのうち、ピークトップにおける微分熱重量の値が最大値を示す第2のピークとを有し、第2のピークのピークトップにおける微分熱重量の値に対する第1のピークのピークトップにおける微分熱重量の値が1以上9以下であるものである。
【0019】
正極活物質からの酸素放出が相互に離れた複数の温度帯で起こる場合、正極活物質からの酸素放出が、1つの狭い温度帯でのみ起こる場合と比較して、1つの温度帯あたりで酸素放出が抑制され、その結果として電解液との反応も抑制され、発熱量が減少する。したがって、正極活物質からの酸素放出が相互に離れた複数の温度帯で起こるようにすることで、正極活物質の熱暴走を抑制することができる。
【0020】
本発明者らは、複合酸化物のTG測定を行った場合、350℃付近までの温度での重量減少は、ほぼ全量が酸素放出であることをTG-MSで確認した。その結果、正極活物質からの酸素放出は、150℃以上350℃以下の温度範囲で起こる一方、この温度範囲で、正極活物質は他の反応を起こさない。したがって、正極活物質の微分熱重量曲線(以下、「DTG曲線」ということもある。)を複数のピークに分離したとき、150℃以上350℃以下の温度範囲において、最も大きい第1のピークと、20℃以上の温度を隔てて相互に離れた第2のピークを有し、第1のピークの大きさが第2のピークの大きさの9倍以下であることで、正極活物質からの酸素放出が相互に離れた複数の温度帯で起こるものとする。
【0021】
一方、DTG曲線において、複数のピークに分離できない(単一のピークからなる)場合や、複数のピークに分離はできるものの、第1のピークの大きさが第2のピークの大きさよりも非常に大きい場合には、1つの狭い温度帯で正極活物質からの酸素放出が起こるため、熱暴走が起こりやすくなる。
【0022】
正極活物質がこのようなDTG曲線を示すための要件は、正極活物質の元素組成、結晶構造、結晶性、合成条件等多数の要素が関連しており、またそれらのバランスによっても変化し得る。このようなDTG曲線を示す傾向にある材料として、一般式Li1+xNi1-y-z-wCoMn(式中、Mは、Li、Ni、Co、Mn及びO以外の1種以上の元素であり、-0.1≦x≦0.15、0≦y≦0.4、0≦z≦0.4、0≦w≦0.1である)で表される複合酸化物が挙げられるが、このような組成を有していたとしても、DTG曲線の所定の2つのピークが上述した要件を必ずしも満たすとは限らない。言い換えると、DTG曲線の所定の2つのピークは、化合物の組成のみに依存するものではない。
【0023】
以下、リチウムが結晶構造内から多量に脱離し、一般的に結晶構造が不安定な状態である充電状態において、複合酸化物が酸素を放出するメカニズムを、Li1-x-δNiOを例に説明する。このような複合酸化物を正極活物質として用い、充電状態で加熱すると、以下の式(1)や式(2)で示されるように、特定の温度範囲で、結晶状態が層状岩塩構造(R-3m)からスピネル構造(Fd-3m)や岩塩構造(Fm3m)に相転移する。これらの相転移の温度は充電深度に依存するが、190~310℃程度の温度範囲で起きる。また、式(1)や式(2)で明らかなように、酸素ガスを発生させながら進行すると考えられている。
【0024】
式(1):
Li1-x-δNiO(層状岩塩構造 R-3m)
→{(1-x-δ)/(1-δ)}Li1-δNiO(層状岩塩構造1 R-3m)
+{x/3(1-δ)}Ni(スピネル構造 Fd-3m)
+{x/3(1-δ)}O
【0025】
式(2):
・{(1-x-δ)/(1-δ)}Li1-δNiO(層状岩塩構造1 R-3m)
→(1-x-δ)LiNiO(層状岩塩構造2 R-3m)
+{δ(1-x-δ)/(1-δ)}NiO(岩塩構造1 Fm3m)
+{δ(1-x-δ)/2(1-δ)}O
・{x/3(1-δ)}Ni(スピネル構造 Fd-3m)
→{x/3(1-δ)}NiO(岩塩構造2 Fm3m)
+{x/6(1-δ)}O
【0026】
なお、本来はR-3mにおける「-」は3の上に付記されるものであるが、便宜上、以上のとおり記載する。同様にして、Fd-3mについても「-」は3の上に付記されるものであるが、便宜上以上のとおり記載する。
【0027】
本発明者らは、この酸素ガスの急激な発生が充電された非水電解質二次電池の熱安定性に重大な影響を及ぼすと考えた。
【0028】
充電状態の非水電解質二次電池が過熱されて温度が上昇すると、式(1)や式(2)の反応で発生した酸素ガスにより、主として非水電解質二次電池の中の有機電解液が酸化(燃焼を含む)する。この反応は発熱反応であるため、この非水電解質二次電池の温度が上昇する。この温度上昇によりさらに電解液が酸化されて発熱することから、温度上昇が制御不能な状態に陥り、熱暴走に至る。
【0029】
温度の上昇は、非水電解質二次電池で単位時間あたりに発生する熱量と、非水電解質二次電池から単位時間あたりに散逸する熱量との差に比例する。したがって、式(1)と式(2)により発熱する熱量及び熱流を短時間に集中させないようにすることで、温度上昇を抑制し、制御不能である熱暴走させないことで安全性を高めることができる。
【0030】
以上のことから、本発明者らは制御不能となる熱暴走を抑制するためには正極活物質からの酸素放出速度を抑制することが最も重要であると考えた。そして、そのためには、本開示にあるように複合酸化物の酸素放出が複数の温度帯で起こるように調整し、狭い温度帯で急激な酸素の放出が起こらないよう制御することが効果的であるといえる。
【0031】
〔化学構造〕
複合酸化物としては、一般式Li[Li(Ni1-y-z-wCoMn1-x]O(式中、Mは、Li、Ni、Co、Mn及びO以外の1種以上の元素であり、-0.1≦x≦0.15、0<y≦0.4、0≦z≦0.4、0≦w≦0.1である)で表されるものであれば特に限定されるものではない。
【0032】
本開示において、正極活物質としての複合酸化物が複数のピークを示す理由については必ずしも明らかではなく、また特定の理論に限定されるものでもないが、本発明者らは次のように考えている。このような複合酸化物において、高SOCの充電状態では正極活物質中のNiは大部分が高原子価のNi4+に酸化されており、150℃~350℃の温度範囲で還元されてNi2+の状態になる。このとき、Ni2+がLiとイオン半径がほぼ同等であるために、Ni2+はLi層に移動することになる。本発明者らは、このNi4+の還元とNi2+のLi層への移動がほぼ同時に起きており、この移動を抑制することができれば還元も抑制できると考えた。Ni2+がLi層に移動するためにはNi2+が存在しているメタル層の酸素八面体位から、それと接している空の酸素四面体位を経て、さらにそれに接しているLi層の空の酸素八面体位に移動する必要がある。したがって、Ni2+が空の四面体位や八面体位に移動するためのエネルギー障壁を高めることができれば、移動に必要なエネルギーが余分に必要になるため、より高温で還元されるようになる。このようにしてNi2+の移動に要する障壁の高さに分布を持たせると、結果として高原子価のNiが還元する温度帯に分布を持たせることができる。これにより、一つの狭い温度帯で還元するNiの量を抑制することで酸素発生量も抑制できるため、一つの狭い温度帯でのDTGピークを下げることができる。したがって、Li、Ni、Co、Mn及び元素Mの比、元素Mの種類、複合酸化物の結晶性、並びに複合酸化物の合成条件等によって、このような現象が起こる複合酸化物であれば、正極活物質として用いたときに非水電解質二次電池の基本的な機能(充電容量やサイクル特性)を維持したまま、酸素を放出する温度帯を複数に分散することができ、上述したようにDTGのピーク値を下げられることがわかった。
【0033】
具体的には、複合酸化物に含まれる他の元素や、複合酸化物の結晶性、合成条件等との組み合わせによるが、複合酸化物がCoを含む場合、約230~270℃の間でCo3+及びCo4+がCo2+に還元されてスピネル構造のCoを形成し、Li層の酸素四面体位に滞留すると考えられる。この酸素四面体位は、Ni2+の酸素八面体位への移動経路となっており、この位置をCo2+を占有することで、Ni2+の酸素八面体位への移動を抑制しやすくなると考えられる。したがって、このような場合においては、複合酸化物を正極活物質として用いたときに非水電解質二次電池の基本的な機能(充電容量やサイクル特性)を維持したまま、酸素を放出する温度帯を複数に分散することができ、上述したようにDTGのピーク値を下げられる可能性がある。
【0034】
一般式中、xの値としては、-0.10≦x≦0.15の範囲内であれば特に限定されないが、例えば-0.095以上、-0.09以上、-0.085以上、-0.08以上、-0.075以上、-0.07以上、-0.065以上、-0.06以上、-0.055以上、-0.05以上、-0.045以上、-0.04以上、-0.035以上、-0.03以上、-0.025以上、-0.02以上、-0.015以上、-0.01以上、-0.0095以上、-0.009以上、-0.0085以上、-0.008以上、-0.0075以上、-0.007以上、-0.0065以上、-0.006以上、-0.0055以上、-0.005以上、-0.0045以上、-0.004以上、-0.0035以上、-0.003以上、-0.0025以上、-0.002以上、-0.0015以上、-0.001以上、0以上、0.001以上、0.0015以上、0.002以上、0.0025以上、0.003以上、0.0035以上、0.004以上、0.0045以上、0.005以上、0.0055以上、0.006以上、0.0065以上、0.007以上、0.0075以上、0.008以上、0.0085以上、0.009以上、0.0095以上、0.01以上、0.015以上、0.02以上、0.025以上、0.03以上、0.035以上、0.04以上、0.045以上、0.05以上、0.055以上、0.06以上、0.065以上、0.07以上、0.075以上、0.08以上、0.085以上、0.09以上、0.095以上、0.1以上、0.102以上、0.105以上、0.107以上、0.11以上、0.112以上、0.115以上、0.117以上、0.12以上、0.122以上、0.125以上、0.127以上、0.13以上、0.132以上、0.135以上、0.137以上、0.14以上、0.142以上、0.145以上、0.147以上、0.15以上であることが好ましい。一方、xの値としては、0.147以下、0.145以下、0.142以下、0.14以下、0.137以下、0.135以下、0.132以下、0.13以下、0.127以下、0.125以下、0.122以下、0.12以下、0.117以下、0.115以下、0.112以下、0.11以下、0.107以下、0.105以下、0.102以下、0.1以下、0.095以下、0.09以下、0.085以下、0.08以下、0.075以下、0.07以下、0.065以下、0.06以下、0.055以下、0.05以下、0.045以下、0.04以下、0.035以下、0.03以下、0.025以下、0.02以下、0.015以下、0.01以下、0.0095以下、0.009以下、0.0085以下、0.008以下、0.0075以下、0.007以下、0.0065以下、0.006以下、0.0055以下、0.005以下、0.0045以下、0.004以下、0.0035以下、0.003以下、0.0025以下、0.002以下、0.0015以下、0.001以下、0以下、-0.001以下、-0.0015以下、-0.002以下、-0.0025以下、-0.003以下、-0.0035以下、-0.004以下、-0.0045以下、-0.005以下、-0.0055以下、-0.006以下、-0.0065以下、-0.007以下、-0.0075以下、-0.008以下、-0.0085以下、-0.009以下、-0.0095以下、-0.01以下、-0.015以下、-0.02以下、-0.025以下、-0.03以下、-0.035以下、-0.04以下、-0.045以下、-0.05以下、-0.055以下、-0.06以下、-0.065以下、-0.07以下、-0.075以下、-0.08以下、-0.085以下、-0.09以下、-0.095以下であることが好ましい。xの値が所要の範囲内であることは、Liの含有量が所要の範囲内であることを意味する。xの値を所要の値以上とすることで、Liの含有量を増加させ、Liの空孔を減らし、Niの約200~250℃の間で起こる1度目の還元を抑制するとともに、約260~320℃の間で起こる2度目の還元の割合を増加させ得る。これによって、微分熱重量曲線の低温側のピークトップが減少し、高温側のピークトップが増加する傾向にある。xの値を所要の値以下とすることで、Liの空孔を一定量担保し、充電容量の低下を抑制し得る。
【0035】
一般式中、1-y-z-wの値としては、y、z及びwが採り得る範囲の組み合わせであれば特に限定されないが、例えば0.6以上、0.605以上、0.61以上、0.615以上、0.62以上、0.625以上、0.63以上、0.635以上、0.64以上、0.645以上、0.65以上、0.655以上、0.66以上、0.665以上、0.67以上、0.675以上、0.68以上、0.685以上、0.69以上、0.695以上、0.70以上、0.705以上、0.71以上、0.715以上、0.72以上、0.725以上、0.73以上、0.735以上、0.74以上、0.745以上、0.75以上、0.755以上、0.76以上、0.765以上、0.77以上、0.775以上、0.78以上、0.785以上、0.79以上、0.795以上であることが好ましい。一方、1-y-z-wの値としては、1以下、0.995以下、0.99以下、0.985以下、0.98以下、0.975以下、0.97以下、0.965以下、0.96以下、0.955以下、0.95以下、0.945以下、0.94以下、0.935以下、0.93以下、0.925以下、0.92以下、0.915以下、0.91以下、0.905以下、0.90以下、0.895以下、0.89以下、0.885以下、0.88以下、0.875以下、0.87以下、0.865以下、0.86以下、0.855以下、0.85以下、0.845以下、0.84以下であってよい。1-y-z-wの値が所要の範囲内であることは、Niの含有量が所要の範囲内であることを意味する。1-y-z-wの値を所要の値以上とすることで、複合酸化物内を移動するNiを増加させ得る。一方、1-y-z-wの値を一定以下とすることで、他の元素等とのバランスにもよるが、一部のNiの移動を阻害させ得るような機能性を有する元素を含む余地を与え得る。
【0036】
一般式中、yの値としては、0≦y≦0.4の範囲内であれば特に限定されないが、例えば0超、0.001以上、0.0015以上、0.002以上、0.0025以上、0.003以上、0.0035以上、0.004以上、0.0045以上、0.005以上、0.0055以上、0.006以上、0.0065以上、0.007以上、0.0075以上、0.008以上、0.0085以上、0.009以上、0.0095以上、0.01以上、0.015以上、0.02以上、0.025以上、0.03以上、0.035以上、0.04以上、0.045以上、0.05以上、0.055以上、0.06以上、0.065以上、0.07以上、0.075以上、0.08以上、0.085以上、0.09以上、0.095以上、0.1以上、0.102以上、0.105以上、0.107以上、0.11以上、0.112以上、0.115以上、0.117以上、0.12以上、0.122以上、0.125以上、0.127以上、0.13以上、0.132以上、0.135以上、0.137以上、0.14以上、0.142以上、0.145以上、0.147以上、0.15以上、0.152以上、0.155以上、0.157以上、0.16以上、0.162以上、0.165以上、0.167以上、0.17以上、0.172以上、0.175以上、0.177以上、0.18以上、0.182以上、0.185以上、0.187以上、0.19以上、0.192以上、0.195以上、0.197以上、0.2以上、0.202以上、0.205以上、0.207以上、0.21以上、0.212以上、0.215以上、0.217以上、0.22以上、0.222以上、0.225以上、0.227以上、0.23以上、0.232以上、0.235以上、0.237以上、0.24以上、0.242以上、0.245以上、0.247以上、0.25以上、0.252以上、0.255以上、0.257以上、0.26以上、0.262以上、0.265以上、0.267以上、0.27以上、0.272以上、0.275以上、0.277以上、0.28以上、0.282以上、0.285以上、0.287以上、0.29以上、0.292以上、0.295以上、0.297以上、0.3以上、0.302以上、0.305以上、0.307以上、0.31以上、0.312以上、0.315以上、0.317以上、0.32以上、0.322以上、0.325以上、0.327以上、0.33以上、0.332以上、0.335以上、0.337以上、0.34以上、0.342以上、0.345以上、0.347以上、0.35以上、0.352以上、0.355以上、0.357以上、0.36以上、0.362以上、0.365以上、0.367以上、0.37以上、0.372以上、0.375以上、0.377以上、0.38以上、0.382以上、0.385以上、0.387以上、0.39以上、0.392以上、0.395以上、0.397以上であることが好ましい。一方、yの値としては、0.397以下、0.395以下、0.392以下、0.39以下、0.387以下、0.385以下、0.382以下、0.38以下、0.377以下、0.375以下、0.372以下、0.367以下、0.365以下、0.362以下、0.36以下、0.357以下、0.355以下、0.352以下、0.35以下、0.347以下、0.345以下、0.342以下、0.34以下、0.337以下、0.335以下、0.332以下、0.33以下、0.327以下、0.325以下、0.322以下、0.32以下、0.317以下、0.315以下、0.312以下、0.31以下、0.307以下、0.305以下、0.302以下、0.3以下、0.297以下、0.295以下、0.292以下、0.29以下、0.287以下、0.285以下、0.282以下、0.28以下、0.277以下、0.275以下、0.272以下、0.27以下、0.267以下、0.265以下、0.26以下、0.257以下、0.255以下、0.252以下、0.25以下、0.247以下、0.245以下、0.242以下、0.24以下、0.237以下、0.235以下、0.232以下、0.23以下、0.227以下、0.225以下、0.222以下、0.22以下、0.217以下、0.215以下、0.212以下、0.21以下、0.207以下、0.205以下、0.202以下、0.2以下、0.197以下、0.195以下、0.192以下、0.19以下、0.187以下、0.185以下、0.182以下、0.18以下、0.177以下、0.175以下、0.172以下、0.17以下、0.167以下、0.165以下、0.162以下、0.16以下、0.155以下、0.152以下、0.15以下、0.147以下、0.145以下、0.142以下、0.14以下、0.137以下、0.135以下、0.132以下、0.13以下、0.127以下、0.125以下、0.122以下、0.12以下、0.117以下、0.115以下、0.112以下、0.11以下、0.107以下、0.105以下、0.102以下、0.1以下、0.095以下、0.09以下、0.085以下、0.08以下、0.075以下、0.07以下、0.065以下、0.06以下、0.055以下、0.05以下、0.045以下、0.04以下、0.035以下、0.03以下、0.025以下、0.02以下、0.015以下、0.01以下、0.0095以下、0.009以下、0.0085以下、0.008以下、0.0075以下、0.007以下、0.0065以下、0.006以下、0.0055以下、0.005以下、0.0045以下、0.004以下、0.0035以下、0.003以下、0.0025以下、0.002以下、0.0015以下、0.001以下であることが好ましい。yの値が所要の範囲内であることは、Coの含有量が所要の範囲内であることを意味する。yの値を所要の値以上とすることで、Coを増加させ、これがNi4+の2度目の還元量を増加させ得る。一方、yの値を一定以上としても、2度目の還元量の増加が打ち止めとなり得るため、所要の値以下とする。
【0037】
一般式中、zの値としては、0≦z≦0.4の範囲内であれば特に限定されないが、例えば0.001以上、0.0015以上、0.002以上、0.0025以上、0.003以上、0.0035以上、0.004以上、0.0045以上、0.005以上、0.0055以上、0.006以上、0.0065以上、0.007以上、0.0075以上、0.008以上、0.0085以上、0.009以上、0.0095以上、0.01以上、0.015以上、0.02以上、0.025以上、0.03以上、0.035以上、0.04以上、0.045以上、0.05以上、0.055以上、0.06以上、0.065以上、0.07以上、0.075以上、0.08以上、0.085以上、0.09以上、0.095以上、0.1以上、0.102以上、0.105以上、0.107以上、0.11以上、0.112以上、0.115以上、0.117以上、0.12以上、0.122以上、0.125以上、0.127以上、0.13以上、0.132以上、0.135以上、0.137以上、0.14以上、0.142以上、0.145以上、0.147以上、0.15以上、0.152以上、0.155以上、0.157以上、0.16以上、0.162以上、0.165以上、0.167以上、0.17以上、0.172以上、0.175以上、0.177以上、0.18以上、0.182以上、0.185以上、0.187以上、0.19以上、0.192以上、0.195以上、0.197以上、0.2以上、0.202以上、0.205以上、0.207以上、0.21以上、0.212以上、0.215以上、0.217以上、0.22以上、0.222以上、0.225以上、0.227以上、0.23以上、0.232以上、0.235以上、0.237以上、0.24以上、0.242以上、0.245以上、0.247以上、0.25以上、0.252以上、0.255以上、0.257以上、0.26以上、0.262以上、0.265以上、0.267以上、0.27以上、0.272以上、0.275以上、0.277以上、0.28以上、0.282以上、0.285以上、0.287以上、0.29以上、0.292以上、0.295以上、0.297以上、0.3以上、0.302以上、0.305以上、0.307以上、0.31以上、0.312以上、0.315以上、0.317以上、0.32以上、0.322以上、0.325以上、0.327以上、0.33以上、0.332以上、0.335以上、0.337以上、0.34以上、0.342以上、0.345以上、0.347以上、0.35以上、0.352以上、0.355以上、0.357以上、0.36以上、0.362以上、0.365以上、0.367以上、0.37以上、0.372以上、0.375以上、0.377以上、0.38以上、0.382以上、0.385以上、0.387以上、0.39以上、0.392以上、0.395以上、0.397以上であることが好ましい。一方、zの値としては、0.397以下、0.395以下、0.392以下、0.39以下、0.387以下、0.385以下、0.382以下、0.38以下、0.377以下、0.375以下、0.372以下、0.367以下、0.365以下、0.362以下、0.36以下、0.357以下、0.355以下、0.352以下、0.35以下、0.347以下、0.345以下、0.342以下、0.34以下、0.337以下、0.335以下、0.332以下、0.33以下、0.327以下、0.325以下、0.322以下、0.32以下、0.317以下、0.315以下、0.312以下、0.31以下、0.307以下、0.305以下、0.302以下、0.3以下、0.297以下、0.295以下、0.292以下、0.29以下、0.287以下、0.285以下、0.282以下、0.28以下、0.277以下、0.275以下、0.272以下、0.27以下、0.267以下、0.265以下、0.26以下、0.257以下、0.255以下、0.252以下、0.25以下、0.247以下、0.245以下、0.242以下、0.24以下、0.237以下、0.235以下、0.232以下、0.23以下、0.227以下、0.225以下、0.222以下、0.22以下、0.217以下、0.215以下、0.212以下、0.21以下、0.207以下、0.205以下、0.202以下、0.2以下、0.197以下、0.195以下、0.192以下、0.19以下、0.187以下、0.185以下、0.182以下、0.18以下、0.177以下、0.175以下、0.172以下、0.17以下、0.167以下、0.165以下、0.162以下、0.16以下、0.155以下、0.152以下、0.15以下、0.147以下、0.145以下、0.142以下、0.14以下、0.137以下、0.135以下、0.132以下、0.13以下、0.127以下、0.125以下、0.122以下、0.12以下、0.117以下、0.115以下、0.112以下、0.11以下、0.107以下、0.105以下、0.102以下、0.1以下、0.095以下、0.09以下、0.085以下、0.08以下、0.075以下、0.07以下、0.065以下、0.06以下、0.055以下、0.05以下、0.045以下、0.04以下、0.035以下、0.03以下、0.025以下、0.02以下、0.015以下、0.01以下、0.0095以下、0.009以下、0.0085以下、0.008以下、0.0075以下、0.007以下、0.0065以下、0.006以下、0.0055以下、0.005以下、0.0045以下、0.004以下、0.0035以下、0.003以下、0.0025以下、0.002以下、0.0015以下、0.001以下であることが好ましい。zの値が所要の範囲内であることは、Mnの含有量が所要の範囲内であることを意味する。zの値を所要の値以上とすることで、LiMnOを形成しやすくし、Liの空孔を増加させ、NiやCoのLi層への移動を促進させ得る。zの値を所要の値以下とすることで、LiMnOの形成の増加により、Liの空孔の過剰な増加による充電容量の低下を抑制し得る。
【0038】
一般式中、wの値としては、0≦w≦0.1の範囲内であれば特に限定されないが、例えば0.001以上、0.0012以上、0.0015以上、0.0017以上、0.002以上、0.0022以上、0.0025以上、0.0027以上、0.003以上、0.0032以上、0.0035以上、0.0037以上、0.004以上、0.0042以上、0.0045以上、0.0047以上、0.005以上、0.0052以上、0.0055以上、0.0057以上、0.006以上、0.0062以上、0.0065以上、0.0067以上、0.007以上、0.0072以上、0.0075以上、0.0077以上、0.008以上、0.0082以上、0.0085以上、0.0087以上、0.009以上、0.0092以上、0.0095以上、0.0097以上、0.01以上、0.012以上、0.015以上、0.017以上、0.02以上、0.022以上、0.025以上、0.027以上、0.03以上、0.032以上、0.035以上、0.037以上、0.04以上、0.042以上、0.045以上、0.047以上、0.05以上、0.052以上、0.055以上、0.057以上、0.06以上、0.062以上、0.065以上、0.067以上、0.07以上、0.072以上、0.075以上、0.077以上、0.08以上、0.082以上、0.085以上、0.087以上、0.09以上、0.092以上、0.095以上、0.097以上であることが好ましい。一方、wの値としては、0.097以下、0.095以下、0.092以下、0.09以下、0.087以下、0.085以下、0.082以下、0.08以下、0.077以下、0.075以下、0.072以下、0.07以下、0.067以下、0.065以下、0.062以下、0.06以下、0.057以下、0.055以下、0.052以下、0.05以下、0.047以下、0.045以下、0.042以下、0.04以下、0.037以下、0.035以下、0.032以下、0.03以下、0.027以下、0.025以下、0.022以下、0.02以下、0.017以下、0.015以下、0.012以下、0.01以下、0.0097以下、0.0095以下、0.0092以下、0.009以下、0.0087以下、0.0085以下、0.0082以下、0.008以下、0.0077以下、0.0075以下、0.0072以下、0.007以下、0.0067以下、0.0065以下、0.0062以下、0.006以下、0.0057以下、0.0055以下、0.0052以下、0.005以下、0.0047以下、0.0045以下、0.0042以下、0.004以下、0.0037以下、0.0035以下、0.0032以下、0.003以下、0.0027以下、0.0025以下、0.0022以下、0.002以下、0.0017以下、0.0015以下、0.0012以下、0.001以下であることが好ましい。wの値が所要の範囲内であることは、元素Mの含有量が所要の範囲内であることを意味する。wの値を所要の値以上とすることで、元素Mを添加したことによる効果を発現させ得る。wの値を所要の値以下とすることで、Ni、Co及びMnの含有量を担保し、これらによる高い充電容量をはじめとする電池性能を維持し得る。
【0039】
式中、元素Mとしては、Li、Ni、Co、Mn及びO以外の1種以上の元素であれば特に限定されないが、例えばAl、Ti、Mg、Zn、Nb、W、Mo、Sb、V、Cr、Ca、Fe、Ga、Sr、Y、Ru、In、Sn、Ta、Bi、Zr、B等を用いることができる。なお、元素Mの種類は、添加の目的に応じて選択すればよい。また、元素Mとして、複数の元素を含む場合、wの値は複数の元素の合計量を表す。
【0040】
この中でも元素MとしてAlを用いることが好ましい。元素MとしてAlを用いると、Alは特定のサイトに固定されて安定な構造を形成する。これにより、Alの近傍のLiが移動しにくくなり、LiとNi2+とのカチオンミキシングが抑制され、複合酸化物の一部の部分で酸素放出のためにより高温が必要になる。したがって、複合酸化物がAlを含む場合には、LiMnOを含まない場合に比べて、DTG曲線において約200~250℃の間で発生する酸素放出に起因したピークがブロードになり、熱暴走が抑制しやすくなる。
【0041】
wのうち、Alのみの含有量wAlの値としては、特に限定されないが、例えば0以上、0.001以上、0.0012以上、0.0015以上、0.0017以上、0.002以上、0.0022以上、0.0025以上、0.0027以上、0.003以上、0.0032以上、0.0035以上、0.0037以上、0.004以上、0.0042以上、0.0045以上、0.0047以上、0.005以上、0.0052以上、0.0055以上、0.0057以上、0.006以上、0.0062以上、0.0065以上、0.0067以上、0.007以上、0.0072以上、0.0075以上、0.0077以上、0.008以上、0.0082以上、0.0085以上、0.0087以上、0.009以上、0.0092以上、0.0095以上、0.0097以上、0.01以上、0.012以上、0.015以上、0.017以上、0.02以上、0.022以上、0.025以上、0.027以上、0.03以上、0.032以上、0.035以上、0.037以上、0.04以上、0.042以上、0.045以上、0.047以上、0.05以上、0.052以上、0.055以上、0.057以上、0.06以上、0.062以上、0.065以上、0.067以上、0.07以上、0.072以上、0.075以上、0.077以上、0.08以上、0.082以上、0.085以上、0.087以上、0.09以上、0.092以上、0.095以上、0.097以上であることが好ましい。一方、wの値としては、0.1以下、0.097以下、0.095以下、0.092以下、0.09以下、0.087以下、0.085以下、0.082以下、0.08以下、0.077以下、0.075以下、0.072以下、0.07以下、0.067以下、0.065以下、0.062以下、0.06以下、0.057以下、0.055以下、0.052以下、0.05以下、0.047以下、0.045以下、0.042以下、0.04以下、0.037以下、0.035以下、0.032以下、0.03以下、0.027以下、0.025以下、0.022以下、0.02以下、0.017以下、0.015以下、0.012以下、0.01以下、0.0097以下、0.0095以下、0.0092以下、0.009以下、0.0087以下、0.0085以下、0.0082以下、0.008以下、0.0077以下、0.0075以下、0.0072以下、0.007以下、0.0067以下、0.0065以下、0.0062以下、0.006以下、0.0057以下、0.0055以下、0.0052以下、0.005以下、0.0047以下、0.0045以下、0.0042以下、0.004以下、0.0037以下、0.0035以下、0.0032以下、0.003以下、0.0027以下、0.0025以下、0.0022以下、0.002以下、0.0017以下、0.0015以下、0.0012以下、0.001以下であることが好ましい。wAlの値が所要の範囲内であることは、Alの含有量が所要の範囲内であることを意味する。wAlの値を所要の値以上とすることで、Alを添加することで得られる、DTG曲線における約200~250℃の間で発生する酸素放出に起因したピークをブロードにし、熱暴走を抑制する効果を発現させ得る。wAlの値を所要の値以下とすることで、Ni、Co及びMnの含有量を担保し、これらによる高い充電容量をはじめとする電池性能を維持し得る。
【0042】
一般式中、z+wの値としては、0≦z≦0.4、0≦w≦0.1の範囲内であれば特に限定されないが、例えば0以上、0超、0.001以上、0.0015以上、0.002以上、0.0025以上、0.003以上、0.0035以上、0.004以上、0.0045以上、0.005以上、0.0055以上、0.006以上、0.0065以上、0.007以上、0.0075以上、0.008以上、0.0085以上、0.009以上、0.0095以上、0.01以上、0.015以上、0.02以上、0.025以上、0.03以上、0.035以上、0.04以上、0.045以上、0.05以上、0.055以上、0.06以上、0.065以上、0.07以上、0.075以上、0.08以上、0.085以上、0.09以上、0.095以上、0.1以上、0.102以上、0.105以上、0.107以上、0.11以上、0.112以上、0.115以上、0.117以上、0.12以上、0.122以上、0.125以上、0.127以上、0.13以上、0.132以上、0.135以上、0.137以上、0.14以上、0.142以上、0.145以上、0.147以上、0.15以上、0.152以上、0.155以上、0.157以上、0.16以上、0.162以上、0.165以上、0.167以上、0.17以上、0.172以上、0.175以上、0.177以上、0.18以上、0.182以上、0.185以上、0.187以上、0.19以上、0.192以上、0.195以上、0.197以上、0.2以上、0.202以上、0.205以上、0.207以上、0.21以上、0.212以上、0.215以上、0.217以上、0.22以上、0.222以上、0.225以上、0.227以上、0.23以上、0.232以上、0.235以上、0.237以上、0.24以上、0.242以上、0.245以上、0.247以上、0.25以上、0.252以上、0.255以上、0.257以上、0.26以上、0.262以上、0.265以上、0.267以上、0.27以上、0.272以上、0.275以上、0.277以上、0.28以上、0.282以上、0.285以上、0.287以上、0.29以上、0.292以上、0.295以上、0.297以上、0.3以上、0.302以上、0.305以上、0.307以上、0.31以上、0.312以上、0.315以上、0.317以上、0.32以上、0.322以上、0.325以上、0.327以上、0.33以上、0.332以上、0.335以上、0.337以上、0.34以上、0.342以上、0.345以上、0.347以上、0.35以上、0.352以上、0.355以上、0.357以上、0.36以上、0.362以上、0.365以上、0.367以上、0.37以上、0.372以上、0.375以上、0.377以上、0.38以上、0.382以上、0.385以上、0.387以上、0.39以上、0.392以上、0.395以上、0.397以上、0.4以上、0.402以上、0.405以上、0.407以上、0.41以上、0.412以上、0.415以上、0.417以上、0.42以上、0.422以上、0.425以上、0.427以上、0.43以上、0.432以上、0.435以上、0.437以上、0.44以上、0.442以上、0.445以上、0.447以上、0.45以上、0.452以上、0.455以上、0.457以上、0.46以上、0.462以上、0.465以上、0.467以上、0.47以上、0.472以上、0.475以上、0.477以上、0.48以上、0.482以上、0.485以上、0.487以上、0.49以上、0.492以上、0.495以上、0.497以上であることが好ましい。一方、z+wの値としては、0.5以下、0.497以下、0.495以下、0.492以下、0.49以下、0.487以下、0.485以下、0.482以下、0.48以下、0.477以下、0.475以下、0.472以下、0.467以下、0.465以下、0.462以下、0.46以下、0.457以下、0.455以下、0.452以下、0.45以下、0.447以下、0.445以下、0.442以下、0.44以下、0.437以下、0.435以下、0.432以下、0.43以下、0.427以下、0.425以下、0.422以下、0.42以下、0.417以下、0.415以下、0.412以下、0.41以下、0.407以下、0.405以下、0.402以下、0.4以下、0.397以下、0.395以下、0.392以下、0.39以下、0.387以下、0.385以下、0.382以下、0.38以下、0.377以下、0.375以下、0.372以下、0.367以下、0.365以下、0.362以下、0.36以下、0.357以下、0.355以下、0.352以下、0.35以下、0.347以下、0.345以下、0.342以下、0.34以下、0.337以下、0.335以下、0.332以下、0.33以下、0.327以下、0.325以下、0.322以下、0.32以下、0.317以下、0.315以下、0.312以下、0.31以下、0.307以下、0.305以下、0.302以下、0.3以下、0.297以下、0.295以下、0.292以下、0.29以下、0.287以下、0.285以下、0.282以下、0.28以下、0.277以下、0.275以下、0.272以下、0.27以下、0.267以下、0.265以下、0.26以下、0.257以下、0.255以下、0.252以下、0.25以下、0.247以下、0.245以下、0.242以下、0.24以下、0.237以下、0.235以下、0.232以下、0.23以下、0.227以下、0.225以下、0.222以下、0.22以下、0.217以下、0.215以下、0.212以下、0.21以下、0.207以下、0.205以下、0.202以下、0.2以下、0.197以下、0.195以下、0.192以下、0.19以下、0.187以下、0.185以下、0.182以下、0.18以下、0.177以下、0.175以下、0.172以下、0.17以下、0.167以下、0.165以下、0.162以下、0.16以下、0.155以下、0.152以下、0.15以下、0.147以下、0.145以下、0.142以下、0.14以下、0.137以下、0.135以下、0.132以下、0.13以下、0.127以下、0.125以下、0.122以下、0.12以下、0.117以下、0.115以下、0.112以下、0.11以下、0.107以下、0.105以下、0.102以下、0.1以下、0.095以下、0.09以下、0.085以下、0.08以下、0.075以下、0.07以下、0.065以下、0.06以下、0.055以下、0.05以下、0.045以下、0.04以下、0.035以下、0.03以下、0.025以下、0.02以下、0.015以下、0.01以下、0.0095以下、0.009以下、0.0085以下、0.008以下、0.0075以下、0.007以下、0.0065以下、0.006以下、0.0055以下、0.005以下、0.0045以下、0.004以下、0.0035以下、0.003以下、0.0025以下、0.002以下、0.0015以下、0.001以下であることが好ましい。
【0043】
複合酸化物の形態としては、特に限定されず、例えば粒子状であってよい。粒子状のものを用いる場合、その粒子は、一次粒子として凝集して二次粒子を形成していても、一次粒子のまま存在してもよく、二次粒子と一次粒子が混在していてもよい。同じ粒度分布を持つ一次粒子であれば、いずれの状態で存在しても複合酸化物から酸素を放出する温度は大きく変わらない。
【0044】
複合酸化物の一次粒子の平均粒子径としては、特に限定されないが、例えば、80nm以上、100nm以上、120nm以上、150nm以上、170nm以上、200nm以上、250nm以上、300nm以上、350nm以上、400nm以上、450nm以上であることが好ましい。複合酸化物の平均粒子径が所要の値以上であることにより、酸素放出温度を高めることができる。一方、一次粒子の平均粒子径としては、15μm以下、14.5μm以下、14μm以下、13.5μm以下、13μm以下、12.5μm以下、12μm以下、11.5μm以下、11μm以下、10.5μm以下、10μm以下、9.5μm以下、9μm以下、8.5μm以下、8μm以下、7.5μm以下、7μm以下、6.5μm以下、6μm以下、5.5μm以下、5μm以下、4.5μm以下であることが好ましい。一次粒子の平均粒子径が所要値以下であることにより、エネルギー密度を高めることができ、またサイクルに伴う粒子破壊やレート特性の低下を抑制することができる。なお、複合酸化物の一次粒子の平均粒子径は、電界放出型走査電子顕微鏡(JSM-7100F:日本電子株式会社製)を用い、加速電圧を10kVとし、3000~20000倍にて電子顕微鏡写真観察を行うことにより算出する。具体的には、粒子の輪郭が確認できる一次粒子が100個以上見える一つの視野を無作為に選択し、その視野に含まれる粒子のうち輪郭が確認できる全ての粒子について、必要に応じて上述した範囲内で倍率を変えて電子顕微鏡写真を得る。次いで、その電子顕微鏡写真について、画像処理ソフトウエア(例えば、ImageJ等)を用いて球換算径を算出し、一次粒子の粒子径とする。
【0045】
また、複合酸化物の平均粒子径(D50)としては、特に限定されないが、例えば、80nm以上、100nm以上、120nm以上、150nm以上、170nm以上、200nm以上、250nm以上、300nm以上、350nm以上、400nm以上、450nm以上であることが好ましい。D50が所要の値以上であることにより、酸素放出温度を高めることができ、加えて電極密度を向上させることができる。一方、D50としては、25μm以下、24.5μm以下、24μm以下、23.5μm以下、23μm以下、22.5μm以下、22μm以下、21.5μm以下、21μm以下、20.5μm以下、20μm以下、19.5μm以下、19μm以下、18.5μm以下、18μm以下、17.5μm以下、17μm以下、16.5μm以下、16μm以下、15.5μm以下、15μm以下、14.5μm以下、14μm以下、13.5μm以下、13μm以下、12.5μm以下、12μm以下、11.5μm以下、11μm以下、10.5μm以下、10μm以下、9.5μm以下、9μm以下、8.5μm以下、8μm以下、7.5μm以下、7μm以下、6.5μm以下、6μm以下、5.5μm以下、5μm以下、4.5μm以下であることが好ましい。複合酸化物のD50が所要の値以下であることにより、この複合酸化物を用いた非水電解質二次電池のエネルギー密度を高めることができ、またサイクルに伴う粒子破壊やレート特性の低下を抑制することができる。なお、D50は、レーザー式粒度分布測定装置(マイクロトラックHRA、日機装株式会社製)を用い、湿式レーザー法にて体積基準で測定する。
【0046】
〔DTG曲線〕
本開示の複合酸化物のDTG曲線は、その複合酸化物を以下に示す充電方法にて充電した試料について、50℃から600℃まで毎分5℃/分で昇温したときに得られるものである。
【0047】
このようにして得られた微分熱重量曲線について、対数正規分布関数を用いてフィッティングしピーク分離することで、それぞれのピークのピークトップにおける温度及び重量減少速度(酸素放出速度)を算出する。
【0048】
具体的に、熱分析重量曲線については、熱重量示差熱分析(TG-DTA)装置(DTG-60H、(株)島津製作所製)を用い、以下に説明する方法にて得た後、第1のピーク及び第2のピークを分析する。
【0049】
(試料の調製)
後述の方法にしたがい、対極をリチウムとした2032タイプコインセルを作製し、25℃の環境下、0.3Cで4.30Vまで定電流充電後、電流値が0.05Cとなるまで定電圧充電を行う。その後、充電完了後に20分間の休止を置き、2.50Vまで0.3Cで定電流放電を行い、その後、0.1Cで定電流放電を行い、20分間の休止を置く。この充電放電を2回繰り返す。次いで、0.3Cで4.30Vまで定電流充電後、電流値が0.05Cとなるまで定電圧充電を行い、充電完了後に20分間の休止を置く。
【0050】
充電状態にあるコインセルを、グローブボックス内(露点:-70℃以下)にてショートしないように解体し、正極を分取する。分取した正極を炭酸ジメチル(DMC)にて10分間洗浄し、サイドボックス内で、真空下で乾燥する。その後、同じグローブボックス内で、Al箔よりスパチュラを用いて正極合材をこそぎ落とす。得られた正極合材の粉末15mgをAl製TG測定用容器内に充填し、蓋をしてカシメ機を用いて密封する。
【0051】
このようにして得られたAl製測定容器をグローブボックスから取り出し、TG-DTA装置の測定側天秤に静置する。
【0052】
(TG-DTA測定)
リファレンス:Alを15~20mg充填したPt容器
最高温度:600℃
昇温速度:
(1)25℃(室温)~50℃:1℃/min
(2)50℃~600℃:5℃/min
測定環境:Nガス雰囲気(200ml/min)
【0053】
測定直前に、Nガス雰囲気であるTG-DTA装置内で、密封したAl製測定容器の蓋に小孔を開けてから昇温を開始する。この手法を用いることにより、測定対象である正極合材粉末を大気雰囲気に暴露することなく測定することができる。
【0054】
得られた結果に基づいて、横軸を温度、縦軸を重量変化(TG)を時間で微分した値(微分熱重量DTG、重量減少速度を意味し、150~350℃の範囲での複合酸化物の酸素放出速度に相当)とするDTG曲線を作成する。
【0055】
このDTG曲線において150~350℃にピークトップを有するピークのうち、微分熱重量のピークトップが最大値を示すピークを第1のピークとする。また、ピークトップにおける微分熱重量の値を酸素放出速度(%/分)とする。さらに、第1のピークのピークトップを示す温度に対して20℃以上離れた温度にピークトップを示すピークのうち、微分熱重量のピークトップの値が最大値を示すピークを第2のピークとする。
【0056】
次いで、第2のピークのピークトップにおける微分熱重量の値に対する第1のピークのピークトップにおける微分熱重量の値を計算する。
【0057】
[第1のピーク]
第1のピークは、上述のようにして得られたDTG曲線を複数のピークに分離したとき、150℃以上350℃以下の温度範囲で、ピークトップにおける微分熱重量の値が最大値を示すピークである。
【0058】
第1のピークのピークトップにおける微分熱重量の値としては、特に限定されないが、例えば3%以下、2.9%以下、2.8%以下、2.7%以下、2.6%以下、2.5%以下、2.4%以下、2.3%以下、2.2%以下、2.1%以下、2%以下であることが好ましい。
【0059】
[第2のピーク]
第2のピークは、第1のピークのピークトップを示す温度に対して20℃以上離れた温度にピークトップを示すピークのうち、ピークトップにおける微分熱重量の値が最大値を示すピークである。
【0060】
第2のピークのピークトップを示す温度は、第1のピークのピークトップを示す温度に対して20℃以上離れていればよく、その高低については限定されない。すなわち、第2のピークのピークトップを示す温度は、第1のピークのピークトップを示す温度よりも20℃以上高くてもよいし、20℃以上低くてもよい。
【0061】
第2のピークのピークトップを示す温度としては、第1のピークのピークトップを示す温度に対して、例えば21℃以上、22℃以上、23℃以上、24℃以上、25℃以上、26℃以上、27℃以上、28℃以上、29℃以上、30℃以上、31℃以上、32℃以上、33℃以上、34℃以上、35℃以上、36℃以上、37℃以上、38℃以上、39℃以上、40℃以上離れていることが好ましい。一方、第2のピークのピークトップを示す温度としては、第1のピークのピークトップを示す温度に対して、例えば160℃以下、155℃以下、150℃以下、145℃以下、140℃以下、135℃以下、130℃以下、125℃以下、120℃以下、115℃以下、110℃以下、105℃以下、100℃以下、95℃以下、90℃以下、85℃以下、80℃以下、75℃以下、60℃以下離れていてもよい。
【0062】
[微分熱重量の値の比]
本開示の正極活物質において、第2のピークの微分熱重量の値に対する第1のピークの微分熱重量の値(第1のピークの微分熱重量/第2のピークの微分熱重量)としては、1以上9以下であれば特に限定されないが、例えば8.9以下、8.8以下、8.7以下、8.6以下、8.5以下、8.4以下、8.3以下、8.2以下、8.1以下、8以下、7.9以下、7.8以下、7.7以下、7.6以下、7.5以下、7.4以下、7.3以下、7.2以下、7.1以下、7以下、6.9以下、6.8以下、6.7以下、6.6以下、6.5以下、6.4以下、6.3以下、6.2以下、6.1以下、6以下、5.9以下、5.8以下、5.7以下、5.6以下、5.5以下、5.4以下、5.3以下、5.2以下、5.1以下、5以下、4.9以下、4.8以下、4.7以下、4.6以下、4.5以下、4.4以下、4.3以下、4.2以下、4.1以下、4以下、3.9以下、3.8以下、3.7以下、3.6以下、3.5以下、3.4以下、3.3以下、3.2以下、3.1以下、3以下、2.9以下、2.8以下、2.7以下、2.6以下、2.5以下、2.4以下、2.3以下、2.2以下、2.1以下、2以下、1.9以下、1.8以下、1.7以下、1.6以下であることが好ましい。一方、第2のピークの微分熱重量の値に対する第1のピークの微分熱重量の値としては、1.1以上、1.2以上、1.3以上、1.4以上、1.5以上、1.6以上、1.7以上、1.8以上、1.9以上であってよい。
【0063】
<非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法>
本開示の実施形態に係る非水電解質二次電池用正極活物質は、例えば以下の工程をこの順に行うことにより製造することができる。なお、以下では、Li以外の元素中30モル%以上のNiを含む複合酸化物の製造方法を一例として示しており、それ以外の複合酸化物の製造方法については常法にしたがうものとする。
【0064】
工程1:少なくとも遷移金属を含有する前駆体複合化合物を合成し、その前駆体複合化合物とリチウム化合物とを混合して混合物を調製する。
工程2:工程1で調製した混合物を焼成する。
工程3:必要に応じて、工程2において焼成して得られた複合酸化物に対し、水洗処理を施す。
工程4:必要に応じて、工程2又は3において得られた複合酸化物に対し、表面処理を施す。
工程5:必要に応じて、工程1~3の条件を変えることで一次粒子径や平均粒子径等を変えた複数種の複合酸化物を混合する。
【0065】
〔工程1〕
まず、少なくとも遷移金属を含有する一次粒子が集まってなる凝集体としての前駆体複合化合物を合成する。前駆体複合化合物の合成方法としては、特に限定されず、例えば、遷移金属の水溶液と、目的とする複合酸化物の組成に応じた他の元素を含む化合物の水溶液各種とを含む水溶液を、例えば水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア溶液等のアルカリ水溶液を母液として攪拌させている反応槽内に滴下し、水酸化ナトリウム等も滴下しながら、pHが適切な範囲となるようにモニタリングして制御し、湿式反応によって共沈させ、例えば水酸化物や、水酸化物を仮焼した酸化物、炭酸塩等として得る方法を用いることができる。
【0066】
なお、合成に係る反応において、母液となるアルカリ水溶液を準備した状態から、不活性ガスや工業的に好ましくは窒素ガスによって、反応槽内を窒素雰囲気とし、反応槽系内や溶液中の酸素濃度をできる限り低くすることが好ましい。酸素濃度が高過ぎる場合は、残留した所定量以上の酸素によって共沈した水酸化物が酸化し過ぎる恐れや、晶析による凝集体の形成が妨げられるおそれがある。
【0067】
遷移金属の水溶液としては、特に限定されないが、例えば酸性の水溶液を用いることが好ましく、ニッケル化合物であれば硫酸ニッケル水溶液のような硫酸水溶液を用いることがより好ましい。また、遷移金属の水溶液としては、1種以上を用いることができる。
【0068】
ニッケル化合物としては、特に限定されないが、例えば硫酸ニッケル、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、塩化ニッケル、ヨウ化ニッケル、及び金属ニッケル等から選択される1種以上を用いることができる。
【0069】
コバルト化合物としては、特に限定されないが、例えば硫酸コバルト、酸化コバルト、水酸化コバルト、硝酸コバルト、炭酸コバルト、塩化コバルト、ヨウ化コバルト及び金属コバルト等から選択される1種以上を用いることができる。
【0070】
マンガン化合物としては、特に限定されないが、例えば硫酸マンガン、酸化マンガン、水酸化マンガン、硝酸マンガン、炭酸マンガン、塩化マンガン、ヨウ化マンガン及び金属マンガン等から選択される1種以上を用いることができる。
【0071】
アルミニウム化合物としては、特に限定されないが、例えば硫酸アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム及び金属アルミニウム等を用いることができる。
【0072】
チタン化合物としては、特に限定されないが、例えば硫酸チタニル、酸化チタン、水酸化チタン、硝酸チタン、炭酸チタン、塩化チタン、ヨウ化チタン及び金属チタン等から選択される1種以上を用いることができる。
【0073】
鉄化合物としては、特に限定されないが、例えば硫酸鉄、酸化鉄、水酸化鉄、硝酸鉄、炭酸鉄、塩化鉄、ヨウ化鉄及び金属鉄等から選択される1種以上を用いることができる。
【0074】
ニオブ化合物としては、特に限定されないが、例えば酸化ニオブ、塩化ニオブ、ニオブ酸リチウム、ヨウ化ニオブ等から選択される1種以上を用いることができる。
【0075】
タングステン化合物としては、特に限定されないが、例えば酸化タングステン、タングステン酸ナトリウム、パラタングステン酸アンモニウム、ヘキサカルボニルタングステン、硫化タングステン等から選択される1種以上を用いることができる。
【0076】
マグネシウム化合物としては、特に限定されないが、例えば硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硝酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、及び金属マグネシウム等から選択される1種以上を用いることができる。
【0077】
亜鉛化合物としては、特に限定されないが、例えば硫酸亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硝酸亜鉛、炭酸亜鉛、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛及び金属亜鉛等から選択される1種以上を用いることができる。
【0078】
その他の元素についても、硫酸塩、酸化物、水酸化物、硝酸塩、炭酸塩、塩化物、ヨウ化物及び金属等から選択される1種以上を用いることができる。
【0079】
それぞれの化合物の配合割合としては、目的とする複合酸化物の組成を考慮して、それぞれの元素の量が所望の割合となるように調整すればよい。
【0080】
前駆体複合化合物を合成する際の適切なpHの範囲としては、特に限定されず、所望の二次粒子径や疎密度合いといった形状を得るように決定することができ、一般的には10~13程度の範囲とすればよい。
【0081】
湿式反応により得られた前駆体複合化合物は、洗浄処理を施し、脱水後に乾燥処理を行うことが好ましい。
【0082】
前駆体複合化合物に対し洗浄処理を施すことで、反応中に凝集粒子中に取り込まれたり、表層に付着したりしている硫酸根や炭酸根、ナトリウム分のような不純物を洗い流すことができる。洗浄処理には、少量であればブフナー漏斗を用いたヌッチェ洗浄を行う手法や、プレスフィルターに反応後の懸濁液を送液して水洗し、脱水する手法を用いることができる。なお、洗浄処理において、例えば純水、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液等を用いることができるが、工業的には、純水を使用することが好ましい。ただし、残留硫酸根が多い場合は、その残留量に応じてpHを制御した水酸化ナトリウム水溶液を用いてもよい。
【0083】
次に、このように合成した前駆体複合化合物とリチウム化合物とを所定の比率で混合して混合物を調製する。混合は、前駆体複合化合物及びリチウム化合物を各々水溶液等の溶液とし、これらの溶液を所定の割合で混合する溶媒系の混合であってもよく、前駆体複合化合物の粉末とリチウム化合物の粉末とを所定の割合となるように秤量し、これらを乾式にて混合する非溶媒系の混合であってもよい。
【0084】
リチウム化合物としては、特に限定されず、各種のリチウム塩を用いることができる。具体的に、リチウム化合物としては、例えば無水水酸化リチウム、水酸化リチウム・水和物、硝酸リチウム、炭酸リチウム、酢酸リチウム、臭化リチウム、塩化リチウム、クエン酸リチウム、フッ化リチウム、ヨウ化リチウム、乳酸リチウム、シュウ酸リチウム、リン酸リチウム、ピルビン酸リチウム、硫酸リチウム及び酸化リチウム等から選択される1種以上を用いることができる。これらの中でも、無水水酸化リチウム及び水酸化リチウム・水和物から選択がされる1種以を用いることが好ましい。
【0085】
リチウム化合物と前駆体複合化合物との配合割合としては、特に限定されないが、目的とする複合酸化物の組成を考慮して、リチウムの量と、それぞれの元素の量の合計量とが、所望の割合となるように適宜調整すればよい。
【0086】
〔工程2〕
上述したとおり、少なくとも遷移金属を含有する複合酸化物を製造する際に、焼成においてリチウム化反応及び結晶成長が行われるが、このうちリチウム化反応は、一定の酸素分圧が必要となる。リチウム化反応により、リチウムが含まれる複合酸化物が得られる。その後、昇温して所定の温度とすることで、結晶成長が促進される。
【0087】
焼成における混合物の最高温度は、650℃~1100℃、670~1000℃、700℃~980℃であることが好ましい。また、最高温度における焼成時間は1~24時間、1~20時間、1~15時間、1~10時間、2~9時間、3~8時間であることが好ましい。焼成温度が混合物中のリチウム化合物の融点以上で、且つリチウムが含まれる複合酸化物が所望の結晶成長や粒子成長となる最高温度や時間を設定することで、所望の複合化合物を得ることができる。
【0088】
焼成は一般に、リチウム化合物と前駆体複合化合物と必要に応じて元素Mの化合物とを秤量し、混合機にて混合することで得られた混合粉を、坩堝や匣鉢といった容器に充填して行うが、特にリチウム化反応において、特に混合粉が充填された容器下部に近くなるにつれて、発生したガスの外部への排出や、必要な酸素濃度の拡散が困難となる。その結果、反応の均一性や一次粒子径の制御が困難となる。
【0089】
そこで、本開示の実施形態に係る複合酸化物を製造する際には、まず工程2において以下の所定の条件にて予備焼成した後、所定の条件にて本焼成する方法を用いることが好ましい。ただし、予備焼成は必須の工程ではない。
【0090】
この工程2の予備焼成では、特にリチウム化反応を促進させる焼成手法を取り入れることが好ましい。具体的には、混合物に対してより熱がかかりやすい状態とし、リチウム化合物より生成されるガスを容易に排出し、かつ酸素分圧が高いガスを混合物内(粒子内)に拡散させる方法が挙げられる。例えば、より少ない混合物を予備焼成することで、所望の特性を達成することが可能である。
【0091】
工程2において、混合物の予備焼成には、該混合物を匣鉢や坩堝に充填し、静置炉やローラーハースキルン、プッシャー炉で焼成することもできるが、混合物を流動させながら焼成するロータリーキルンを用いることができる。
【0092】
予備焼成される混合物の最高温度としては、特に限定されず、混合物の調製に用いたリチウム化合物の種類に応じて調整することが好ましい。これにより、混合物中の前駆体複合化合物とリチウム化合物とを確実に反応させ、リチウム化反応を確実かつ均一に進行させて、異相を発生させないようにすることができ、目的とする複合酸化物を得ることができる。
【0093】
予備焼成の雰囲気としては、特に限定されず、リチウム化反応が確実かつ均一に進行するような酸化性の雰囲気であればよい。例えば炭酸ガス濃度が30ppm以下である脱炭酸の酸化性ガス雰囲気や、酸素濃度が80vol%以上、90vol%以上の酸素雰囲気を用いることが好ましい。
【0094】
予備焼成の時間としては、特に限定されず、リチウム化反応が確実かつ均一に進行するような時間であればよい。例えば1時間~10時間、2時間~8時間とすることが好ましい。
【0095】
予備焼成した混合物を、さらに高い温度で結晶成長や粒子成長させるため、本焼成を行う。その際、確実かつ均一に結晶成長を進行させて、所望の結晶構造を有する複合酸化物を得る必要がある。
【0096】
本焼成の雰囲気としては、特に限定されず、確実かつ均一な結晶成長が行われ、かつ焼成する混合物に含有される遷移金属が還元しないような酸素分圧を有し、好ましくは水分量や炭酸ガス濃度が小さい雰囲気であればよい。例えば、炭酸ガス濃度が30ppm以下である脱炭酸の酸化性ガス雰囲気や、酸素濃度が好ましくは80vol%以上、90vol%以上といった酸素雰囲気を用いることが好ましい。
【0097】
本焼成の温度としては、予備焼成の温度より高い温度であれば特に限定されず、、得ようとする複合酸化物の組成等によって調整することができる。例えば、最高温度が700℃~1100℃、710℃~1000℃、720℃~980℃となるように調整することが好ましい。最高温度が所要の範囲内であることにより、未反応成分を低減させた、所望の結晶構造を有する複合酸化物を得ることができ、また、得られた複合酸化物を正極に用いた非水電解質二次電池の電池特性の低下を防止することもできる。また、例えばNiの含有量がLi以外の元素中20モル%~80モル%の複合酸化物を得る場合には、混合物の最高温度が1100℃を超えない温度で焼成することが好ましい。
【0098】
本焼成の時間としては、特に限定されず、所望の結晶構造を有する複合酸化物が形成されるのに十分な時間であればよい。例えば、1時間~15時間、2時間~12時間、2時間~10時間であることが好ましい。
【0099】
〔工程3〕
工程2において得られた複合酸化物は、不純物として、未反応のリチウム化合物や、焼成工程の過程で結晶構造から粒子表層に現れるリチウム化合物が存在することがある。そこで、これらの不純物を除去、低減するため、例えば水洗し熱処理することができる。なお、工程3は必須の構成ではない。
【0100】
〔工程4〕
工程2又は3において得られた複合酸化物に対し所定の元素化合物を添加混合し、熱処理を施すことで、複合酸化物の一次粒子及び/又は二次粒子の表面にリチウムと添加した元素との化合物による表面処理を施すことができ、粒子表層に残留したリチウム化合物の低減、リチウムイオン伝導性の向上、反応抵抗の低減等の効果を得ることができる。なお、工程4は必須の構成ではない。
【0101】
上述した表面処理のために添加する元素化合物は、例えば、アルミニウム化合物、ホウ素化合物、タングステン化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、リン化合物、ニオブ化合物、ストロンチウム化合物、アンチモン化合物、ジルコニウム化合物、チタン化合物等から選択でき、1種以上を用いることができる。
【0102】
〔工程5〕
工程2~4のいずれかにて得られた複合酸化物が、単独で上述した特定ピークを複数有しない場合や、特定ピークについて特定の要件を満たすものの熱暴走の抑制効果をより高めたい場合等には、複合酸化物の製造の条件(工程1~4の条件)を変えて、一次粒子径や平均粒子径を変えた複数種の複合酸化物を混合する。なお、工程2~4のいずれかにて得られた複合酸化物が、単独で特定ピークについて特定の要件を満たす場合に、工程5は必須の構成ではない。
【0103】
<非水電解質二次電池>
本開示の実施形態に係る非水電解質二次電池は、上述した複合酸化物を正極活物質として含有する正極を備えたものであり、非水電解質二次電池は、正極、負極及び電解質を含む電解液から構成される。
【0104】
正極を製造する際には、常法に従って、本開示の実施形態に係る複合酸化物に、導電剤及びバインダーを添加し、混合する。導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等を用いることが好ましい。バインダーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等を用いることが好ましい。
【0105】
負極としては、特に限定されないが、例えばリチウム金属、グラファイト、低結晶性炭素材料等の負極活物質だけでなく、Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi及びCdから選択される1種以上の非金属若しくは金属元素、それを含む合金又はそれを含むカルコゲン化合物等を用いることができる。
【0106】
電解液の溶媒としては、特に限定されないが、例えば炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等のカーボネート類や、ジメトキシエタン等のエーテル類から選択される1種以上を含む有機溶媒を用いることができる。
【0107】
電解質としては、特に六フッ化リン酸リチウム(LiPF)以外に、例えば過塩素酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム等のリチウム塩から選択される1種以上を溶媒に溶解して用いることができる。
【実施例0108】
以下、本開示について実施例によりさらに詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0109】
<複合酸化物試料の調製>
以下に示す方法により、実施例1~13及び比較例1の複合酸化物試料を調製した。
【0110】
〔前駆体複合水酸化物の調製〕
(前駆体複合水酸化物1の調製)
硫酸ニッケル水溶液、硫酸コバルト及び硫酸マンガン水溶液を、NiとCoとMnとの割合(モル比)がNi:Co:Mn=83:5:12となるように混合して、混合水溶液を得た。反応槽内には事前に、水酸化ナトリウム水溶液300g及びアンモニア水500gを添加した純水10Lを母液として準備し、0.7L/minの流量の窒素ガスにより反応槽内を窒素雰囲気とし、反応も窒素雰囲気で行った。
【0111】
その後、攪拌羽を1000rpmで回転させながら前記混合水溶液と水酸化ナトリウム水溶液及びアンモニア水とを、所定の速度で同時に滴下させ、pHが11.5となるようにアルカリ溶液の滴下量を調整した晶析反応により、NiとCoとMnとが晶析して凝集粒子を形成するように共沈させ、共沈物を得た。
【0112】
その後、反応器内のスラリーを固液分離し、さらに純水にて洗浄することで残留不純物を低減させてから、ケーキ状態となった共沈物を大気環境下にて100℃で10時間乾燥し、組成式Ni0.83Co0.05Mn0.12(OH)で示されるニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を得た。得られた複合水酸化物前駆体のD50は14.2μmであった。
【0113】
(前駆体複合酸化物2の調製)
硫酸ニッケル水溶液、硫酸コバルト及び硫酸マンガン水溶液を、NiとCoとMnとの割合(モル比)がNi:Co:Mn=83:12:5となるように混合して、混合水溶液を得た。反応槽内には事前に、水酸化ナトリウム水溶液330g及びアンモニア水500gを添加した純水10Lを母液として準備し、0.7L/minの流量の窒素ガスにより反応槽内を窒素雰囲気とし、反応も窒素雰囲気で行った。
【0114】
その後、撹拌羽を1100rpmで回転させながら前記混合水溶液と水酸化ナトリウム水溶液及びアンモニア水とを、所定の速度で同時に滴下させ、pHが12.6となるようにアルカリ溶液の滴下量を調整した晶析反応により、NiとCoとMnとが晶析して凝集粒子を形成するように共沈させ、共沈物を得た。
【0115】
その後、反応器内のスラリーを固液分離し、さらに純水にて洗浄することで残留不純物を低減させてから、ケーキ状態となった共沈物を大気環境下にて100℃で10時間乾燥し、組成式Ni0.83Co0.12Mn0.05(OH)示されるニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を共沈法により得た。得られた複合水酸化物前駆体のD50は4.0μmであった。
【0116】
〔実施例1〕
前駆体複合水酸化物1と水酸化リチウムと水酸化アルミニウムとを、Li/(Ni+Co+Mn+Al)=1.030、Al/(Ni+Co+Mn+Al)=2.0mol%となるように秤量して混合した。その後、酸素雰囲気下570℃で6時間熱処理を行った後、酸素雰囲気下(酸素濃度:97vol%)、805℃で6時間さらに焼成した。得られた焼成物を粉砕しリチウムニッケル複合酸化物粉末を得た。
【0117】
得られたリチウムニッケル複合酸化物粉末と液温を25℃に調整した純水の割合が1500g/Lとなるように混合し作製したスラリーを10分間攪拌させた後、脱水し、ケーキ状化合物を得た。ケーキ状化合物を真空乾燥機にて75℃で2時間、120℃で10時間乾燥した。
【0118】
乾燥後のリチウムニッケル複合酸化物に、ホウ素化合物としてホウ酸を1000ppm添加し混合し、酸素雰囲気下(酸素濃度:97vol%)、325℃で2時間熱処理することで、実施例1の複合酸化物試料を得た。得られた複合酸化物試料のLi/(Ni+Co+Mn+Al)は1.009であった。
【0119】
〔実施例2〕
前駆体複合水酸化物1と水酸化リチウムと水酸化アルミニウムとを、Li/(Ni+Co+Mn+Al)=1.050、Al/(Ni+Co+Mn+Al)=2.0mol%、となるように秤量した以外は実施例1と同様にして実施例2の複合酸化物試料を得た。得られた複合酸化物試料のLi/(Ni+Co+Mn+Al)は1.023であった。
【0120】
〔実施例3〕
前駆体複合水酸化物1と水酸化リチウムと水酸化アルミニウムとを、Li/(Ni+Co+Mn+Al)=1.070、Al/(Ni+Co+Mn+Al)=2.0mol%となるように秤量した以外は実施例1と同様にして実施例3の複合酸化物試料を得た。得られた複合酸化物試料のLi/(Ni+Co+Mn+Al)は1.045であった。
【0121】
〔実施例4〕
前駆体複合水酸化物1と水酸化リチウムと水酸化アルミニウムとを、Li/(Ni+Co+Mn+Al)=1.090、Al/(Ni+Co+Mn+Al)=2.0mol%となるように秤量した以外は実施例1と同様にして実施例4の複合酸化物試料を得た。得られた複合酸化物試料のLi/(Ni+Co+Mn+Al)は1.06であった。
【0122】
〔実施例5〕
前駆体複合水酸化物1と水酸化リチウムと水酸化アルミニウムとを、Li/(Ni+Co+Mn+Al)=1.010、Al/(Ni+Co+Mn+Al)=3.0mol%、となるように秤量して混合した。その後、酸素雰囲気下570℃で6時間熱処理を行った後、酸素雰囲気下(酸素濃度:97vol%)、810℃で6時間さらに焼成した。得られた焼成物を粉砕しリチウムニッケル複合酸化物を得た。それ以降は実施例1と同様にして実施例5の複合酸化物試料を得た。得られた複合酸化物試料のLi/(Ni+Co+Mn+Al)は1.001であった。
【0123】
〔実施例6〕
前駆体複合水酸化物1と水酸化リチウムと水酸化アルミニウムとを、Li/(Ni+Co+Mn+Al)=1.030、Al/(Ni+Co+Mn+Al)=3.0mol%となるように秤量した以外は実施例5と同様にして実施例6の複合酸化物試料を得た。なお、得られた複合酸化物試料のLi/(Ni+Co+Mn+Al)は1.012であった。
【0124】
〔実施例7〕
前駆体複合水酸化物1と水酸化リチウムと水酸化アルミニウムとを、Li/(Ni+Co+Mn+Al)=1.050、Al/(Ni+Co+Mn+Al)=3.0mol%となるように秤量した以外は実施例5と同様にして実施例7の複合酸化物試料を得た。得られた複合酸化物試料のLi/(Ni+Co+Mn+Al)は1.032であった。
【0125】
〔実施例8〕
前駆体複合水酸化物1と水酸化リチウムと水酸化アルミニウムとを、Li/(Ni+Co+Mn+Al)=1.030、Al/(Ni+Co+Mn+Al)=1.0mol%となるように秤量した以外は実施例5と同様にして実施例8の複合酸化物試料を得た。得られた複合酸化物試料のLi/(Ni+Co+Mn+Al)は1.008であった。
【0126】
〔実施例9〕
前駆体複合水酸化物2と水酸化リチウムとを、Li/(Ni+Co+Mn)=1.050となるように秤量して混合した。その後、酸素雰囲気下(酸素濃度:97vol%)、860℃で12時間さらに焼成した。得られた焼成物を粉砕しリチウムニッケル複合酸化物粉末を得た。
【0127】
得られたリチウムニッケル複合酸化物粉末を酸素雰囲気下(酸素濃度:97vol%)、700℃で7時間さらに焼成した。
【0128】
焼成後のリチウムニッケル複合酸化物に、ホウ素化合物としてホウ酸を500ppm添加し混合し、大気下、330℃で7時間熱処理することで、実施例9の複合酸化物試料を得た。得られた複合酸化物試料のLi/(Ni+Co+Mn)は1.015であった。
【0129】
〔実施例10〕
前駆体複合水酸化物2と水酸化リチウムとを、Li/(Ni+Co+Mn)=1.060となるように秤量した以外は実施例9と同様にして実施例10の複合酸化物試料を得た。得られた複合酸化物試料のLi/(Ni+Co+Mn)は1.029であった。
【0130】
〔実施例11〕
前駆体複合水酸化物2と水酸化リチウムとを、Li/(Ni+Co+Mn)=1.070となるように秤量した以外は実施例9と同様にして実施例11の複合酸化物試料を得た。得られた複合酸化物試料のLi/(Ni+Co+Mn)は1.048であった。
【0131】
〔実施例12〕
前駆体複合水酸化物2と水酸化リチウムを、Li/(Ni+Co+Mn)=1.070となるように秤量して混合した。その後、酸素雰囲気下(酸素濃度:97vol%)、860℃で12時間さらに焼成した。得られた焼成物を粉砕しリチウムニッケル複合酸化物粉末を得た。
【0132】
得られたリチウムニッケル複合酸化物粉末にアルミ酸化物粉末であるAlを0.5mol% 添加し大気下、700℃で7時間熱処理した。それ以降は実施例9と同様にして実施例12の複合酸化物試料を得た。得られた複合酸化物試料のLi/(Ni+Co+Mn+Al)は1.012であった。
【0133】
〔実施例13〕
前駆体複合水酸化物2と水酸化リチウムとを、Li/(Ni+Co+Mn)=1.050となるように秤量して混合した。その後、酸素雰囲気下(酸素濃度:97vol%)、860℃で12時間焼成した。得られた焼成物を粉砕しリチウムニッケル複合酸化物粉末を得た。
【0134】
得られたリチウムニッケル複合酸化物粉末にアルミ酸化物粉末であるAlを0.8mol%添加し、大気下、600℃で7時間熱処理することでリチウム金属複合酸化物を得た。
【0135】
熱処理後のリチウムニッケル複合酸化物粉末と液温を25℃に調整した純水の割合が1500g/Lとなるように混合し作製したスラリーを10分間攪拌させた後、脱水し、ケーキ状化合物を得た。その後、真空乾燥機にて75℃で2時間、120℃で10時間乾燥した。
【0136】
乾燥後のリチウムニッケル複合酸化物に、ホウ素化合物としてホウ酸を500ppm添加し混合し、大気下、300℃で7時間熱処理することで、実施例13の複合酸化物試料を得た。得られた複合酸化物試料のLi/(Ni+Co+Mn+Al)は0.989であった。
【0137】
〔比較例1〕
前駆体複合水酸化物2と水酸化リチウムと水酸化アルミニウムとを、Li/(Ni+Co+Mn+Al)=1.050となるように秤量して混合した。その後、酸素雰囲気下(酸素濃度:97vol%)、860℃で12時間焼成した。得られた焼成物を粉砕しリチウムニッケル複合酸化物粉末を得た。
【0138】
得られたリチウムニッケル複合酸化物粉末にアルミ酸化物粉末であるAlを0.8mol% 添加し、大気下、700℃で7時間熱処理した。それ以降は実施例9と同様にして比較例1の複合酸化物試料を得た。得られた複合酸化物試料のLi/(Ni+Co+Mn+Al)は1であった。
【0139】
<評価>
得られた試料について、以下に示す方法で評価した。
【0140】
〔前駆体化合物及び複合酸化物の組成分析〕
前駆体複合化合物及び複合酸化物試料の組成は、次の方法にて決定した。複合酸化物試料0.2gを25mlの20%塩酸溶液中で加熱溶解させ、冷却後100mlメスフラスコに移して、純水を入れ調整液を作製した。得られた調整液について、ICP-AES(Optima8300、株式会社パーキンエルマージャパン製)を用いて元素の定量を行った。
【0141】
〔前駆体化合物の平均粒子径(D50)〕
レーザー式粒度分布測定装置(マイクロトラックHRA、日機装株式会社製)を用い、湿式レーザー法にて体積基準で測定した。
【0142】
〔熱重量示差熱分析〕
複合酸化物試料の酸素放出の挙動を確認するため、熱重量示差熱分析(TG-DTA)装置(DTG-60H、(株)島津製作所製)を用いて熱重量示差熱分析を行った。
【0143】
(試料の調製)
後述の方法にしたがい、対極をリチウムとした2032タイプコインセルを作製し、25℃の環境下、0.3Cで4.30Vまで定電流充電後、電流値が0.05Cとなるまで定電圧充電を行った。その後、充電完了後に20分間の休止を置き、2.50Vまで0.3Cで定電流放電を行い、その後、0.1Cで定電流捨て放電を行い、20分間の休止を置いた。この充電放電を2回繰り返した。次いで、0.3Cで4.30Vまで定電流充電後、電流値が0.05Cとなるまで定電圧充電を行い、充電完了後に20分間の休止を置いた。
【0144】
充電状態にあるコインセルを、グローブボックス内(露点:-70℃以下)にてショートしないように解体し、正極を分取した。分取した正極をDMCにて10分間洗浄し、サイドボックス内で、真空下で乾燥した。その後、同じグローブボックス内で、Al箔よりスパチュラを用いて正極合材をこそぎ落とした。得られた正極合材の粉末15mgをAl製TG測定用容器内に充填し、蓋をしてカシメ機を用いて密封させた。
【0145】
このようにして得られたAl製測定容器をグローブボックスから取り出し、TG-DTA装置の測定側天秤に静置した。
【0146】
(TG-DTA測定)
リファレンス:Alを15~20mg充填したPt容器
最高温度:600℃
昇温速度:
(1)25℃(室温)~50℃:1℃/min
(2)50℃~600℃:5℃/min
測定環境:Nガス雰囲気(200ml/min)
【0147】
測定直前に、Nガス雰囲気であるTG-DTA装置内で、密封したAl製測定容器の蓋に小孔を開けてから昇温を開始した。
【0148】
得られた結果に基づいて、横軸を温度、縦軸を重量変化(TG)を時間で微分した値(微分熱重量DTG、重量減少速度を意味し、150~350℃の範囲での複合酸化物の酸素放出速度に相当)とするDTG曲線を作成する。
【0149】
このDTG曲線において150~350℃にピークトップを有するピークのうち、微分熱重量のピークトップが最大値を示すピークを第1のピーク(P1)とした。また、ピークトップにおける微分熱重量の値を酸素放出速度(%/分)とした。さらに、第1のピークのピークトップを示す温度に対して20℃以上離れた温度にピークトップを示すピークのうち、微分熱重量のピークトップの値が最大値を示すピークを第2のピーク(P2)とした。図1~13はそれぞれ、実施例1~13の複合酸化物試料のDTG曲線である。また、図14は、比較例1の複合酸化物試料のDTG曲線である。
【0150】
〔リートベルト解析による結晶構造の分析〕
X線回折装置[SmartLab、(株)リガク製]を用い、以下のX線回折条件にて複合酸化物試料のXRD回折データを得た後、XRD回折データを用い、「R.A.Young,ed.,“The Rietveld Method”,Oxford University Press(1992)」を参考にして、Rietveld解析を行った。具体的には、3aサイト及び3bサイトに含まれるリチウムの割合、並びにユニットセル体積を算出した。
(X線回折条件)
線源:Cu-Kα
加速電圧及び電流:45kV及び200mA
サンプリング幅:0.02deg.
走査幅:15deg.~122deg.
スキャンスピード:1.0ステップ/秒
発散スリット:2/3deg.
受光スリット幅:0.15mm
散乱スリット:2/3deg.
【0151】
〔複合酸化物試料を用いたコインセルの充電容量の評価〕
本明細書において、複合酸化物試料を正極活物質として用いた2032タイプコインセルは、それぞれ次の方法にて作製した正極、負極、及び電解液を用いて製造した。
【0152】
(正極)
導電剤としてアセチレンブラック及びグラファイトを、アセチレンブラック:グラファイト=1:1(重量比)で用い、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを用いて、複合酸化物試料、導電剤、及び結着剤を、複合酸化物試料:導電剤:結着剤=90:6:4(重量比)となるように配合し、これらをN-メチルピロリドンに混合したものをアルミニウム箔に塗布した。これを110℃で乾燥してシートを作製し、このシートを15mmΦに打ち抜いた後、3t/cmで圧延したものを正極とした。
【0153】
(負極)
16mmΦに打ち抜いた厚さ500μmのリチウム箔を負極とした。
【0154】
(電解液)
炭酸エチレン(EC)及び炭酸ジメチル(DMC)の混合溶媒を、EC:DMC=1:2(体積比)となるように調製し、電解質に1mol/LのLiPFを混合した溶液を電解液とした。
【0155】
(セパレータ)
20mmΦに打ち抜いた厚さ0.5mmのセパレータ(Celgard#2400:セルガード製)を用いた。
【0156】
(Total充電容量の測定)
上述した方法にて製造したコインセルを用い、25℃で、0.3Cで4.30Vまで定電流充電後、電流値が0.05Cとなるまで定電圧充電を行った。その後、充電完了後に20分間の休止を置き、2.50Vまで0.3Cで定電流放電を行い、その後、0.1Cで定電流放電を行い、20分間の休止を置いた。この充電放電を2回繰り返した。次いで、0.3Cで4.30Vまで定電流充電後、電流値が0.05Cとなるまで定電圧充電を行った。操作において、total充電容量(mAh/g)を以下のように算出した。
・1回目充電放電
0.3Cで4.3V(0.05Cとなるまで定電圧充電)
20分休止
0.3Cで2.5Vまで放電し、さらにその後0.1Cで2.5Vまで放電
20分休止
・2回目充電放電
0.3Cで4.3V(0.05Cとなるまで定電圧充電)
20分休止
0.3Cで2.5Vまで放電し、さらにその後0.1Cで2.5Vまで放電
・3回目充電
0.3Cで4.3V(0.05Cとなるまで定電圧充電)
Total充電容量
=1回目の充電容量+(2回目の充電容量-1回目の0.3Cでの放電容量-1回目の0.1Cで放電容量)+(3回目の充電容量-2回目の0.3Cでの放電容量-2回目の0.1Cでの放電容量)
【0157】
表1に、実施例1~13及び比較例1の試料を構成する複合酸化物の組成、3aサイト及び3bサイトに含まれるリチウムの割合、ユニットセル体積、Total充電容量、DTG曲線の第1のピークのピークトップ温度、微分熱重量(酸素放出速度)及び比較例1に対する微分熱重量の低減率、第2のピークのピークトップ温度及び微分熱重量(酸素放出速度)、並びに第2のピークのピークトップにおける熱重量微分に対する第1のピークのピークトップにおける熱重量微分の比(第1のピークのピークトップにおける微分熱重量/第2のピークのピークトップにおける微分熱重量)を示す。
【0158】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14