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特開2024-161055安定化されたNAを有する組換えインフルエンザウイルス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161055
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】安定化されたNAを有する組換えインフルエンザウイルス
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20241108BHJP
   C12N 15/56 20060101ALN20241108BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
C12N7/01
C12N15/56
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024141090
(22)【出願日】2024-08-22
(62)【分割の表示】P 2022544779の分割
【原出願日】2021-01-22
(31)【優先権主張番号】62/965,225
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、革新的先端研究開発支援事業インキュベートタイプ、研究開発課題名「インフルエンザ制圧を目指した革新的治療・予防法の研究・開発」産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】506097988
【氏名又は名称】ウィスコンシン アルムニ リサーチ ファンデイション
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】山吉 誠也
(72)【発明者】
【氏名】古澤 夢梨
(72)【発明者】
【氏名】河岡 義裕
(57)【要約】
【課題】本明細書には、ワクチンの生成効率を向上させ、それによってワクチンウイルスの収量を向上できる、安定化されたNA四量体を有する修飾されたインフルエンザウイルスノイラミニダーゼが述べられている。
【解決手段】本発明は安定化されたノイラミニダーゼ(NA)四量体を有するウイルス粒子を形成するNA単量体をコードするNAウイルス断片を含む、単離された組換えインフルエンザウイルスを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定化されたノイラミニダーゼ(NA)四量体を有するウイルス粒子を形成するNA単量体をコードするNAウイルス断片を含む、単離された組換えインフルエンザウイルス。
【請求項2】
修飾されていないNAストークを含むNAを有するインフルエンザウイルスに対比して、安定化された四量体を生成する修飾されたNAストークを有する、請求項1に記載の組換えインフルエンザウイルス。
【請求項3】
前記修飾されたNAストークが欠失を有する、請求項2に記載の組換えインフルエンザウイルス。
【請求項4】
前記修飾されたNAストークが挿入を有する、請求項2または3に記載の組換えインフルエンザウイルス。
【請求項5】
前記修飾されたNAストークが、前記修飾されていないストークに対比して少なくとも1つのアミノ酸置換を有する、請求項2、3、または4に記載の組換えインフルエンザウイルス。
【請求項6】
前記修飾されたNAストークでの少なくとも1つの置換が、システイン置換である、請求項5に記載の組換えインフルエンザウイルス。
【請求項7】
前記修飾されたNAストークが、少なくとも2つの置換を有する、請求項5に記載の組換えインフルエンザウイルス。
【請求項8】
前記NAが、N1の付番に対して48位にシステインを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組換えインフルエンザウイルス。
【請求項9】
前記NAが、N1の付番に対して50位にシステインを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組換えインフルエンザウイルス。
【請求項10】
前記NAが、N1の付番に対して48位および50位にシステインを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組換えインフルエンザウイルス。
【請求項11】
前記NAストークが、膜貫通ドメインのC末端から1~10残基の範囲内で修飾されている、請求項2~7のいずれか一項に記載の組換えインフルエンザウイルス。
【請求項12】
前記NAストークが、膜貫通ドメインのC末端から10~20残基の範囲内で修飾されている、請求項2~7のいずれか一項に記載の組換えインフルエンザウイルス。
【請求項13】
前記NAストークが、膜貫通ドメインのC末端から20~30残基の範囲内で修飾されている、請求項2~7のいずれか一項に記載の組換えインフルエンザウイルス。
【請求項14】
前記NAストークが、膜貫通ドメインのC末端から30~50残基の範囲内で修飾されている、請求項2~7のいずれか一項に記載の組換えインフルエンザウイルス。
【請求項15】
有効量の請求項1~14のいずれか一項に記載の組換えインフルエンザウイルスまたはその一部を含む、ワクチン。
【請求項16】
全ウイルスワクチンである、請求項15に記載のワクチン。
【請求項17】
スプリットウイルスワクチンである、請求項15に記載のワクチン。
【請求項18】
サブユニットワクチンである、請求項15に記載のワクチン。
【請求項19】
アジュバントをさらに含む、請求項15~18のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項20】
薬学的に許容可能な担体をさらに含む、請求項15~19のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項21】
前記担体が、鼻腔内投与または筋肉内投与に適している、請求項20に記載のワクチン。
【請求項22】
少なくとも1種の他のインフルエンザウイルス単離株をさらに含む、請求項15~21のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項23】
安定化されたNA四量体を有するインフルエンザウイルスを調製する方法であって、
安定化されたNA四量体を有するインフルエンザウイルスを生成するのに有効な量で、安定化されたNA四量体を有するウイルス粒子を形成するNA単量体をコードするインフルエンザウイルスNA断片用の核酸、インフルエンザウイルスPA断片用の核酸、インフルエンザウイルスPB1断片用の核酸、インフルエンザウイルスPB2断片用の核酸、インフルエンザウイルスNP断片用の核酸、インフルエンザウイルスNS断片用の核酸、インフルエンザウイルスM断片用の核酸、およびインフルエンザウイルスHA断片用の核酸を含む1種以上のベクターを細胞に接触させる工程を含む、方法。
【請求項24】
前記NAが、N1、N2、N3、またはN5である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞が哺乳類細胞である、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞が、293T、PER.C6(登録商標)、MDCK、MvLu1、CHO、またはVeroの各細胞、あるいは鳥類の卵の細胞である、請求項23~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
インフルエンザワクチンを製造する方法であって、
請求項1~14のいずれか一項に記載の組換えウイルスを提供する工程;および
前記ウイルスをアジュバントと複合させる工程、あるいは前記ウイルスを不活化する薬剤で前記ウイルスを処理する工程を含む、方法。
【請求項28】
前記ウイルスの投与量を容器に分注する工程をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記アジュバントが、免疫刺激性DNA配列、細菌由来成分、アルミニウム塩(ミョウバン)、またはMF59およびAS03などのスクアレン水中油型エマルジョン系を含む、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記薬剤が、前記ウイルスを化学的に不活化する、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記薬剤が、ホルマリンまたはβプロピオラクトンを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記薬剤が界面活性剤を含む、請求項27~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記界面活性剤が陽イオン性界面活性剤である、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記界面活性剤が陰イオン性界面活性剤である、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記界面活性剤が、CTAB、デオキシコール酸アンモニウム、トリトン、SDS、ネオドール23-6、またはデオキシコール酸ナトリウムを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記薬剤がエーテルを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項38】
HAおよびNAを他のウイルス成分から分離する工程をさらに含む、請求項27~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
インフルエンザウイルスを調製する方法であって、
子孫ウイルスを生むのに有効な量で、請求項1~14のいずれか一項に記載の組換えウイルスを細胞に接触させる工程を含む、方法。
【請求項40】
前記ウイルスを鳥類の卵に接触させる、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記細胞が哺乳類細胞である、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記ウイルスのHAがH1、H3、H5、またはH7である、請求項23~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
安定化されたNA四量体を調製する方法であって、
安定化されたNA四量体を有するウイルス粒子を形成するNA単量体をコードするインフルエンザウイルスNA断片用の核酸およびインフルエンザウイルスHA用の核酸を含む1つ以上のベクターを細胞に接触させる工程を含む、方法。
【請求項44】
NAおよびHAを前記細胞から単離する工程をさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記細胞が昆虫細胞である、請求項43または44に記載の方法。
【請求項46】
前記細胞が、CHO、MDCK、Vero、またはEB66の各細胞である、請求項43または44に記載の方法。
【請求項47】
請求項23~26または39~46のいずれか一項に記載の方法によって調製され単離された、ウイルス。
【請求項48】
鳥類または哺乳類を免疫化する方法であって、
請求項1~14または47のいずれか一項に記載のウイルスの有効量を有する組成物を、鳥類または哺乳類に投与する工程を含む、方法。
【請求項49】
前記組成物が、少なくとも1つの他の異なるインフルエンザウイルスを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記哺乳類がヒトである、請求項48または49に記載の方法。
【請求項51】
前記組成物が、鼻腔内にまたは注射によって投与される、請求項48~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
請求項1~14または47のいずれか一項に記載のウイルスを卵中で継代培養する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年1月24日付け出願の米国出願第62/965,225号の出願日の利益を主張し、その開示は20~30件の参照によって本明細書内に組み込まれる。
【0002】
連邦政府からの資金援助の陳述
本発明は、米国国立衛生研究所から授与されたHHSN272201400008Cの下での政府の支援を受けて実施された。政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
インフルエンザは、ウマなどの一部の哺乳類での主な呼吸器疾患であり、毎年、相当数の罹患および経済損失が発生している。また一部の鳥類では、インフルエンザウイルスに感染すると、重篤な全身疾患を引き起こし、死に至る可能性もある。インフルエンザウイルスゲノムが分割されるという性質により、2種以上のインフルエンザウイルスに感染した細胞では、ウイルスが複製される際に分割断片は再結合する。この断片の再結合は、遺伝子の変異や浮動との組合せによって、経時的に無数の分岐したインフルエンザウイルス株を生み出す可能性がある。これらの新たな株は、ヘマグルチニン(HA)タンパク質および/またはノイラミニダーゼ(NA)タンパク質の抗原変異を示し、特にHAタンパク質をコードする遺伝子は高い変異率を有する。現状のインフルエンザ予防の実務は、ワクチン接種が主流である。最も一般的には、不活化ウイルスワクチンが使用される。インフルエンザHAタンパク質は、ウイルスに対する宿主の防御免疫応答の主要な標的抗原でありかつ変異率が高いので、最新の流行に関連するインフルエンザウイルスの単離およびHA抗原の同定かつ特性解析は、ワクチン製造には重要なものとなる。流行の状況および予測に基づいて、ワクチンは、主流になると予測されるインフルエンザウイルス株に対して防御免疫応答を刺激するように設計される。
【0004】
インフルエンザウイルスには、一般的にA型、B型、C型、D型の4種類があり、これらのウイルスは、それらの内部のタンパク質間に血清学的な交差反応性が存在しないことで定義されている。A型インフルエンザウイルスは、その糖タンパク質であるHAタンパク質およびNAタンパク質の抗原性の差異かつ遺伝的な差異に基づいて、さらに亜型に分類される。既知のHA亜型およびNA亜型(H1~H18およびN1~N11)は全て水鳥から単離されていて、これら水鳥はインフルエンザの天然の保菌宿主として作用すると考えられている。
【0005】
NAに対する抗体は、インフルエンザウイルス感染症の予防に重要な役割を果たすことが示唆されている。しかし、卵中で増殖させたインフルエンザウイルスの不活化およびウイルス抗原の精製により生成された現状のインフルエンザワクチンでは、抗NA抗体を効率的に誘発することは不可能である。
【発明の概要】
【0006】
抗NA抗体の産生量が少なくなる原因の一つは、ホモ四量体として働くNAタンパク質の構造的な不安定性に起因している。NAの四量体は、抗原精製過程中に破壊される可能性がある。従って現状のワクチンが含むNAの量は、抗NA抗体の産生を誘発するのに不十分である。
【0007】
本開示は、その天然のホモ四量体構造を安定化させる、NAタンパク質中に特定の残基または修飾を持つインフルエンザウイルスに関し、かつそのウイルスを生成し、例えばワクチンにそのウイルスを用いる方法に関する。一実施態様では、安定化されたNA四量体を有するウイルス粒子を形成するNA単量体をコードするノイラミニダーゼ(NA)ウイルス断片を含む単離された組換えインフルエンザウイルスが提供される。一実施態様では、組換えインフルエンザウイルスは、安定化四量体をもたらす、親NAに対して修飾されたNAストークを持つ。一実施態様では、修飾NAストークは欠失を持つ。一実施態様では、修飾NAストークは、親NAに対して挿入を持つ。一実施態様では、修飾NAストークは、親NAに対して少なくとも1つのアミノ酸置換を持つ。一実施態様では、修飾NAストークの少なくとも1つの置換は、システイン置換である。一実施態様では、修飾NAストークは、親NAに対して少なくとも2つの置換を持つ。一実施態様では、NAは、N1の付番に対して48位にシステインを持つ。一実施態様では、NAは、N1の付番に対して50位にシステインを持つ。一実施態様では、NAは、N1の付番に対して48位と50位の位置にシステインを持つ。一実施態様では、NAストークは、親NAに対して膜貫通ドメインのC末端から1~10残基内で修飾される。一実施態様では、NAストークは、膜貫通ドメインのC末端から10~20残基内で修飾される。一実施態様では、NAストークは、膜貫通ドメインのC末端から20~30残基内で修飾される。一実施態様では、NAストークは、膜貫通ドメインのC末端から30~50残基内で修飾される。一実施態様では、ストークドメインは、ジスルフィド結合を形成するNAのヘッド領域内で、保存されたシステインに至るNAの膜貫通ドメイン内の最終残基の後の最初の残基で始まり、あるいは保存されたシステインの前の1~2残基で始まる(Blumenkrantz et al., J. Virol., 87:10539 (2013)を参照)。一実施態様では、NAストークでの挿入は、1、2、3、4、または5、あるいは5~10、あるいは10~20、あるいはそれ以上の残基での挿入である。一実施態様では、NAストークでの欠失は、1、2、3、4、または5、あるいは5~10、あるいは10~20、あるいはそれ以上の残基での欠失である。一実施態様では、ストーク領域にシステインを持つNAは、例えば、別のシステインの1~10残基または1~5残基内で修飾された第2または第3のシステインを含む。一実施態様では、NAは、互いに1~2、2~3、3~4または5までの各残基内にある少なくとも2つのシステインをストーク領域内に持つ。一実施態様では、NAは、ストーク領域内に少なくとも2つのシステインを有し、そのうちの一方は、NA内の48残基のN末端またはC末端のいずれかの5残基内にあり、そのうちの他方は、NA内の50残基のN末端またはC末端のいずれかの5残基内にある。一実施態様では、システインは互いに隣接し、例えば、46および47残基、46、47、および48残基、47および48残基、47、48、および49残基、48および49残基、48、49、および50残基、49および50残基、または49、50、および51残基にあり、一実施態様では両方はストーク領域内に存在する。一実施態様では、システインは2つ離れた残基にあり、一実施態様では両方はストーク領域内に存在し、例えばシステインは、46および48、47および49、48および50、49および51、50および52、51および53などの各残基にある。一実施態様では、システインは3つ離れた残基にあり、例えばシステインは、45および48、46および49、47および50、48および51、49および52、50および53、51および54などの各残基にあり、一実施態様では、両方はストーク領域内に存在する。一実施態様では、システインは4つ離れた残基にあり、例えばシステインは、44および48、45および49、46および50、47および51、48および52、49および53、50および54、51および55などの各残基にあり、一実施態様では、両方はストーク領域内に存在する。一実施態様では、ストーク領域は、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1個以下のシステイン残基を持つ。一実施態様では、ストーク領域内のシステインは、ストーク領域のN末端の30残基内に存在する。一実施態様では、ストーク領域内のシステインは、ストーク領域のN末端の20残基内に存在する。
【0008】
本明細書での記載のように、構造的に安定化されたノイラミニダーゼ四量体を発現する高増殖性の組換えインフルエンザウイルスを調製した。一実施態様では、NA-48CもしくはNA-50Cのいずれか、または両方を含む組換えインフルエンザウイルスは、安定化NA四量体を発現しかつ効率的に複製する。従って、構造的に安定化されたNA四量体を発現する高増殖性の組換えインフルエンザウイルスの生成を可能にするインフルエンザNAでのアミノ酸変異を用いて、より多量のNA抗原を含むインフルエンザワクチン、すなわち抗NA抗体を効率的に誘発できるより多量のNA抗原を含むインフルエンザワクチン株を生成できる。
【0009】
一実施態様では、有効量の組換えインフルエンザウイルスまたはその一部分を含むワクチンが提供される。一実施態様では、ワクチンは、全ウイルスワクチンである。一実施態様では、ワクチンは、スプリットウイルスワクチンである。一実施態様では、ワクチンは、サブユニットワクチンである。一実施態様では、ワクチンはさらにアジュバントを含む。一実施態様では、ワクチンはさらに薬学的に許容可能な担体を含む。一実施態様では、担体は鼻腔内投与または筋肉内投与に適している。一実施態様では、ワクチンはさらに、少なくとも1種のその他のインフルエンザウイルス単離株を含む。
【0010】
一実施態様では、安定化NA四量体を持つインフルエンザウイルスを調製する方法が提供される。この方法は、安定化NA四量体を持つインフルエンザウイルスを生成するのに有効な量で、1つ以上のベクターを細胞に接触させる工程を含み、この1つ以上のベクターは、例えばストーク領域内に少なくとも1つのシステインをコードするインフルエンザウイルスNA断片用の核酸、インフルエンザウイルスPA断片用の核酸、インフルエンザウイルスPB1断片用の核酸、インフルエンザウイルスPB2断片用の核酸、インフルエンザウイルスNP断片の用の核酸、インフルエンザウイルスNS断片用の核酸、インフルエンザウイルスM断片用の核酸、およびインフルエンザウイルスHA断片用の核酸を含む。一実施態様では、NAは、N1、N2、N3、またはN5である。一実施態様では、NAは、N4、N6、N7、N8、またはN9である。一実施態様では、細胞は哺乳類細胞である。一実施態様では、細胞は、Vero細胞、293T細胞、またはMDCK細胞である。
【0011】
一実施態様では、インフルエンザワクチンを生成する方法が提供される。この方法は、組換えウイルスをアジュバントと複合させる工程、またはウイルスを不活化する薬剤でウイルスを処理する工程を含む。一実施態様では、この方法はさらに、選択用量のウイルスを容器に分注する工程を含む。一実施態様では、アジュバントは、免疫刺激性のDNA配列、細菌由来成分、アルミニウム塩(ミョウバン)、またはMF59およびAS03などのスクアレン水中油型エマルジョン系を含む。一実施態様では、薬剤はウイルスを化学的に不活化する。一実施態様では、薬剤は、ホルマリンまたはβプロピオラクトンを含む。一実施態様では、薬剤は、界面活性剤、例えば、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、または陰イオン性界面活性剤を含む。一実施態様では、界面活性剤は、CTAB、トリトン、SDS、ネオドール23-6、またはデソキシコール酸ナトリウムを含む。一実施態様では、この方法はさらに、例えば、遠心分離および可溶性分子の回収を用いて、HAおよびNAを他のウイルス成分から単離する工程を含む。
【0012】
一実施態様では、子孫ウイルスを生むのに有効な量の組換えウイルスと細胞を接触させる工程を含む、インフルエンザウイルスを調製する方法が提供される。一実施態様では、ウイルスを鳥類の卵と接触させる。一実施態様では、細胞は哺乳類細胞である。一実施態様では、ウイルスのHAは、H1、H3、H5、またはH7である。
【0013】
また安定化NA四量体を調製する方法が提供され、この方法は、ストーク領域内の少なくとも1つのシステインをコードするインフルエンザウイルスNA断片のための核酸、およびインフルエンザウイルスHAのための核酸を含む1つ以上のベクターと細胞を接触させる工程を含む。一実施態様では、この方法はさらに、細胞からNAおよびHAを単離する工程を含む。一実施態様では、細胞は昆虫細胞である。
【0014】
さらに鳥類または哺乳類を免疫化する方法が提供され、この方法は、有効量の組換えウイルスを有する組成物を、鳥類または哺乳類に投与する工程を含む。一実施態様では、この組成物は、少なくとも1種の他の異なるインフルエンザウイルスを含む。一実施態様では、哺乳類はヒトである。一実施態様では、組成物は、鼻腔内にまたは注射によって投与される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、インフルエンザウイルスに感染させたhCK細胞内でNAを検出するウェスタンブロットを示す。
図2図2は、A/Yokohama/2017/2003のNAのアミノ酸配列(配列番号1)を示す。
図3図3は、A/Saitama/103/2014のNAのアミノ酸配列(配列番号2)を示す。
図4図4は、A/Yokohama/2017/2003の変異体のNAのアミノ酸配列(配列番号3)を示す。
図5-1】図5は、N3、N4、N6、N7、N8、およびN9の例示的なNA配列(配列番号4~9)を示す。ストーク領域は、赤色のフォントおよび下線で示される。
図5-2】図5は、N3、N4、N6、N7、N8、およびN9の例示的なNA配列(配列番号4~9)を示す。ストーク領域は、赤色のフォントおよび下線で示される。
図6-1】図6は、例示的なウイルス骨格配列(配列番号10~14)を示す。
図6-2】図6は、例示的なウイルス骨格配列(配列番号10~14)を示す。
図6-3】図6は、例示的なウイルス骨格配列(配列番号10~14)を示す。
図7-1】図7は、例示的なNA配列(配列番号15~18)を示す。ストーク領域は、赤色のフォントおよび下線で示される。
図7-2】図7は、例示的なNA配列(配列番号15~18)を示す。ストーク領域は、赤色のフォントおよび下線で示される。
図8-1】図8は、例示的なNA核酸配列(配列番号19~29)を示す。
図8-2】図8は、例示的なNA核酸配列(配列番号19~29)を示す。
図8-3】図8は、例示的なNA核酸配列(配列番号19~29)を示す。
図8-4】図8は、例示的なNA核酸配列(配列番号19~29)を示す。
図8-5】図8は、例示的なNA核酸配列(配列番号19~29)を示す。
図8-6】図8は、例示的なNA核酸配列(配列番号19~29)を示す。
図8-7】図8は、例示的なNA核酸配列(配列番号19~29)を示す。
図8-8】図8は、例示的なNA核酸配列(配列番号19~29)を示す。
図9-1】図9は、例示的なB型インフルエンザウイルスのNA配列(配列番号45~50)を示す。一実施態様では、B型インフルエンザウイルスのNA内のストーク領域は、38~86残基であってもよい。
図9-2】図9は、例示的なB型インフルエンザウイルスのNA配列(配列番号45~50)を示す。一実施態様では、B型インフルエンザウイルスのNA内のストーク領域は、38~86残基であってもよい。
図10】は、ウイルスの成長曲線を示す。高収率のA/Puerto Rico/8/1934(H1N1)の骨格内にA/Singapore/GP1908/2015(H1N1)pdm09由来のHAおよびNAウイルス断片を含む6+2合併結合変異インフルエンザウイルスを、逆遺伝学およびhCK細胞内の37℃での増殖を用いて調製した。NA-T48C変異またはNA-N50C変異のいずれか、あるいは両方の変異を備える変異ウイルスを生成した。0.001のMOI(感染倍率)でhCK細胞にこれらのウイルスを感染させた。感染後の指定時間に上清を回収し、hCK細胞内の溶菌斑測定法によってウイルス力価を測定した。
【0016】
本発明の詳細な説明
定義
本明細書で使用される用語「単離された」は、本発明の核酸分子、例えば、ベクターまたはプラスミド、ペプチドまたはポリペプチド(タンパク質)、またはウイルスの生体外での調製および/または単離を指し、結果としてそれは生体内の物質とは関連せず、あるいは生体外の物質から実質的に精製される。単離されたウイルス調製物は、一般的に、生体外での培養および増殖によって、かつ/あるいは卵中での継代によって得られ、他の感染性物質を実質的に含まない。
【0017】
本明細書で使用される「実質的に精製された」は、目的の種が主流の種となり、例えば、モル比率基準で組成物中の他のいかなる個々の種よりも豊富にあり、好ましくは、組成物中に存在する種のうち少なくとも約80%、場合によっては90%以上、例えば、95%、98%、99%以上となることを意味する。
【0018】
本明細書で使用される「実質的に含まない」は、特定の感染性薬剤について、その薬剤の標準的な検出方法を用いて検出できる濃度未満であることを意味する。
【0019】
「組換え」ウイルスは、ウイルスゲノムに変化を導入するために、例えば組換えDNA技術を用いて生体外で操作されたウイルスである。合併結合変異ウイルスは、組換え技術または非組換え技術によって調製してもよい。
【0020】
本明細書で使用される用語「組換え核酸」または「組換えDNA配列または断片」は、その配列が天然起源ではないように、または天然ゲノム内に配置されるようには配置されない天然起源の配列に対応するように、供給源に由来またはそれから分離され、かつ続いて生体外で化学的に変化させてもよい核酸、例えばDNAを指す。供給源に「由来する」DNAの例としては、有用な断片として識別され、次いで本質的に純粋な形態で化学的に合成されたDNA配列が挙げられる。供給源から「単離された」そのようなDNAの例としては、遺伝子工学の方法によって、本開示での使用のためにさらに操作され得るように、例えば増幅され得るように、化学的手段、例えば制限エンドヌクレアーゼの使用によって前記の供給源から切除された、あるいは取り出された有用なDNA配列が挙げられる。
【0021】
本明細書で使用される「異種」インフルエンザウイルス遺伝子またはウイルス断片とは、組換えインフルエンザウイルス、例えば合併結合変異インフルエンザウイルス内の他のインフルエンザウイルス遺伝子またはウイルス断片の大部分とは異なるインフルエンザウイルス源に由来するものである。
【0022】
用語「単離ポリペプチド」、「単離ペプチド」、または「単離タンパク質」は、1種の合成起源を含むcDNAまたは組換えRNAによってコードされるポリペプチド、ペプチド、またはタンパク質、あるいはそれらのいくつかの組合せを含む。
【0023】
本明細書で使用される用語「組換えタンパク質」または「組換えポリペプチド」は、組換えDNA分子から発現されるタンパク質分子を指す。対照的に、本明細書で使用される用語「天然タンパク質」は、天然起源の供給源から単離されたタンパク質(すなわち非組換えタンパク質)を示す。分子生体技術を用いて、タンパク質の天然形態に対比して同等の特性を持つタンパク質の組換え形態を生成してもよい。
【0024】
比較のための配列の整列方法は、当技術分野では周知である。従って、任意の2つの配列間の同一性の百分率は、数学的アルゴリズムを用いて決定できる。
【0025】
これらの数学的アルゴリズムのコンピュータによる実行を利用して、配列を比較して配列同一性を決定できる。これらのプログラムを用いた整列は、デフォルトのパラメータを用いて実行してもよい。BLAST解析を実行するためのソフトウェアは、米国国立生物工学情報センター(the National Center for Biotechnology Information)(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通して公開されており利用可能である。このアルゴリズムは、まず、クエリー配列中の長さWの短いワードが、データベース配列中の同一長さのワードと並べた際に、ある正の値の閾値スコアTと一致するか、あるいはそれを満たすかのいずれかを識別することによって、高いスコア配列対(HSP)を特定する工程を含んでもよい。Tは近傍ワードのスコア閾値と呼ばれる。これらの初期の近傍ワードのヒットは、それらを含むより長いHSPを見い出す検索を開始するための種として機能する。次いでヒットしたワードは、累積整列スコアが増加できる限り、各配列に沿って両方向に伸長される。累積スコアは、塩基配列の場合には、パラメータM(一致残基対に対する報酬スコア、常に>0)およびN(不一致残基に対する懲罰スコア、常に<0)を用いて算出される。アミノ酸配列の場合には、スコアリング・マトリックスを用いて累積スコアが算出される。各方向でのワードヒットの伸長は、累積配列スコアがその最大達成値から量Xだけ減る場合に、1つ以上の負のスコアの残基配列の蓄積により累積スコアが0以下になる場合に、あるいはいずれかの配列の終端部に到達した場合に停止される。
【0026】
配列同一性の百分率の計算に加えて、BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計的解析を実施できる。BLASTアルゴリズムが提供する類似性の1つの尺度は、最小和確率(P(N))であってもよく、これにより、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の一致が偶然に起こると思われる確率の指標を提供する。例えば、検定される核酸配列と参照の核酸配列との比較での最小和確率が約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満の場合に、検定される核酸配列は参照配列に類似であると見做される。
【0027】
(ヌクレオチド配列の場合に)BLASTNプログラムは、デフォルトとして、ワード長(W):11、期待値(E):10、カットオフ値:100、M=5、N=-4を用いて、両方の鎖を比較してもよい。アミノ酸配列の場合に、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、ワード長(W):3、期待値(E):10を用いて、BLOSUM62スコアリング・マトリックスを実施してもよい。http://www.ncbi.n1m.nih.govを参照。整列はまた、検査によって手動で実行してもよい。
【0028】
配列の比較では、典型的には1つの配列を参照配列として機能させ、それに対して検定配列が比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合に、検定配列および参照配列をコンピュータに入力して、必要に応じて部分配列の座標を指定し、かつ配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列に対して検定配列の配列同一性の百分率を算出する。
【0029】
インフルエンザウイルスの構造および増殖
A型インフルエンザウイルスは、少なくとも10個のタンパク質をコードする8本のマイナスセンス一本鎖ウイルスRNA(vRNA)のゲノムを保有する。インフルエンザウイルスの寿命周期は、ヘマグルチニン(HA)が宿主細胞表面のシアル酸含有受容体に結合することから始まり、その後に受容体を媒介とする形質膜陥入が起こる。後期エンドソームでの低いpHは、HAの構造シフトを引き起こし、それによってHA2サブユニットのN末端(いわゆる融合ペプチド)を露出させる。この融合ペプチドはウイルスとエンドソーム膜の融合を開始させ、マトリックスタンパク質(M1)とRNPの複合体が細胞質内へ放出される。RNPは、vRNAをキャプシド形成するヌクレオタンパク質(NP)、およびPA、PB1、PB2の各タンパク質から形成されるウイルス重合酵素複合体からなる。RNPは核内に移送され、そこで転写および複製が起こる。RNA重合酵素複合体は、5’キャップと3’ポリA構造を有するmRNAの合成、完全長の相補的RNA(cRNA)の合成、およびcRNAを鋳型として用いるゲノムvRNAの合成という3種の反応を触媒する。次いで新たに合成されたvRNA、NP、および重合酵素タンパク質は、RNP内に組み込まれて核から排出され、かつ細胞膜に移送されて、そこで子孫ウイルス粒子の出芽が起こる。ノイラミニダーゼ(NA)タンパク質は、感染の後期に、シアリルオリゴ糖からシアル酸を取り出し、それによって新たに組み立てられたウイルス粒子を細胞表面から遊離させ、かつウイルス粒子の自己凝集を防止するという重要な役割を担っている。ウイルスの組立てには、タンパク質-タンパク質およびタンパク質-vRNAの相互作用が関与するが、これらの相互作用の本質は殆ど分かっていない。
【0030】
B型およびC型インフルエンザウイルスは、A型インフルエンザウイルスに構造的かつ機能的に類似しているが、いくつかの相違点も存在する。例えばB型インフルエンザウイルスは、イオンチャネル活性を備えるM2タンパク質を持たずにBM2を持ち、NA配列とNB配列の両方を備えるウイルス断片を持っている。C型インフルエンザウイルスは、7個のウイルス断片しか持たない。
【0031】
ウイルスの産生に使用できる細胞
インフルエンザウイルスの効率的な複製を支援する任意の細胞を用いて、インフルエンザウイルスを単離かつ/あるいは増殖でき、この細胞は、例えば鳥類または哺乳類のいずれかの細胞、例えば鳥類の卵細胞、293TまたはPER.C6(登録商標)細胞などのヒト細胞、またはイヌ、ウシ、ウマ、ネコ、ブタ、ウシ、齧歯類の細胞、MvLu1細胞などのミンクの細胞、CHO細胞などのハムスターの細胞、またはVero細胞などの非ヒト霊長類の細胞、あるいはそれらの変異細胞などである。単離されたウイルスを用いて、合併結合変異ウイルスを調製できる。一実施態様では、ワクチン製造のための宿主細胞は、連続する哺乳類または鳥類の細胞株または細胞系統である。用いられる細胞の完全な特性解析を実施して、最終産物の純度に関する適切な試験を含むようにしてもよい。細胞の特性解析に使用可能なデータとして、(a)その起源、由来、および継代の履歴に関する情報;(b)その成長および形態学的特性に関する情報;(c)外来性物質の試験結果;(d)他の細胞株のうちで細胞を明確に認識可能な生化学、免疫学、および細胞遺伝学的なパターンなどの識別特性;ならびに(e)腫瘍原性に関する試験結果が含まれる。一実施態様では、用いられる宿主細胞の継代の程度あるいは集団倍加は、可能な限り少なくする。
【0032】
一実施態様では、細胞はWHOにより認証された、または認証可能な連続する細胞株である。このような細胞株を認証するための要件は、系譜、成長特性、免疫学的マーカー、ウイルス感受性腫瘍原性、および保存条件のうちの少なくとも1種に関連し、ならびに動物、卵、および細胞培養物内での試験による特性解析を含む。このような特性解析を用いて、細胞が検出可能な外来性物質を含まないことを確認する。国によっては、細胞核学検査もまた要求される。さらに腫瘍原性は、ワクチン製造に使用される細胞と同じ継代水準にある細胞で試験されてもよい。一貫した結果が得られることが示されているプロセスによって、ワクチン製造の前にウイルスを精製してもよい(例えば、世界保健機関の1982年の資料を参照)。
【0033】
宿主細胞によって製造されたウイルスは、ワクチンまたは遺伝子治療製剤にする前に高度に精製されてもよい。一般的に、これらの精製手順は、細胞DNAおよび他の細胞成分、および外来性物質の広範囲な除去をもたらすことになる。DNAを広範囲に分解または変性させる手順もまた使用されてもよい。
【0034】
インフルエンザワクチン
ワクチンには、本発明の単離された組換えインフルエンザウイルス、および場合によっては他の単離されたインフルエンザウイルスを含む1種以上の他の単離されたウイルス、1種以上の単離されたインフルエンザウイルスまたは1種以上の細菌、非インフルエンザウイルス、酵母、もしくは真菌からの免疫原性タンパク質などの1種以上の他の病原体の1種以上の免疫原性タンパク質または糖タンパク質、あるいは本発明の単離されたインフルエンザウイルスの1種以上の免疫原性タンパク質を含む1種以上のウイルスタンパク質をコードする単離された核酸(例えばDNAワクチン)が含まれる。一実施態様では、本発明のインフルエンザウイルスは、インフルエンザウイルスまたは他の病原体のワクチンベクターであってもよい。
【0035】
完全なウイルス粒子ワクチンは、限外濾過によって濃縮され、次いで帯状遠心分離によって、またはクロマトグラフ法によって精製されてもよい。本発明のウイルス以外のウイルス、例えば多価ワクチン中に含まれるウイルスは、例えばホルマリンまたはβプロピオラクトンを用いて精製の前後に不活化されてもよい。
【0036】
サブユニットワクチンは、精製された糖タンパク質を含む。このワクチンは以下のように調製される:界面活性剤で処理して断片化されたウイルス懸濁液を用いて、例えば超遠心分離によって表面抗原を精製する。従ってサブユニットワクチンは、主にHAタンパク質を含み、またNAを含む。使用される界面活性剤は、例えば臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(Bachmeyer, 1975)などの陽イオン界面活性剤、デオキシコール酸アンモニウム(Laver & Webster, 1976)などの陰イオン界面活性剤、または例えばトリトンX100という名称で市販されている非イオン界面活性剤のいずれであってもよい。ヘマグルチニンはまた、ブロメリンなどのタンパク質分解酵素でウイルス粒子を処理した後に単離され、次いで精製されてもよい。サブユニットワクチンは、本発明の弱毒化ウイルスと組合せて多価ワクチンとしてもよい。
【0037】
スプリットワクチンは、脂質を溶解する薬剤で処理されているウイルス粒子を含む。スプリットワクチンは、以下のように調製できる:上述のように得られた精製済みウイルスの水性懸濁液を、不活化の有無にかかわらず、撹拌状態で界面活性剤に関連するエチルエーテルまたはクロロホルムなどの脂質溶媒によって処理する。ウイルス外皮膜の脂質が溶解することにより、ウイルス粒子の断片化が起こる。水相は、本来の脂質環境が除去されたヘマグルチニンとノイラミニダーゼを主成分とするスプリットワクチン、および核またはその分解産物を含んで再生される。次いで残存する感染性粒子を、まだ不活化されていない場合には不活化する。スプリットワクチンは、本発明の弱毒性ウイルスと組合せて多価ワクチンとしてもよい
【0038】
不活化ワクチン
不活化インフルエンザウイルスワクチンは、限定はされないが、例えばホルマリン処理またはβプロピオラクトン処理などの既知の方法を用いて複製されたウイルスを不活化して提供される。本発明に使用可能な不活化ワクチンの種類として、全ウイルス(WV)ワクチン、またはサブウイルス粒子(SV)(スプリット)ワクチンを挙げてもよい。WVワクチンは、無処理の不活化ウイルスを含み、SVワクチンは、脂質を含むウイルス外皮膜を溶解する界面活性剤で破壊した精製ウイルスを含み、続いて残留ウイルスを化学的に不活化した精製ウイルスを含む。
【0039】
さらに、使用可能なワクチンには、表面抗原ワクチンまたはサブユニットワクチンと呼ばれる、単離されたHA表面タンパク質およびNA表面タンパク質を含むワクチンが含まれる。
【0040】
弱毒化生ウイルスワクチン
本発明の組換えウイルスを含むワクチンなどの弱毒化した生インフルエンザウイルスワクチンを、インフルエンザウイルス感染の予防または治療に用いることができる。弱毒化は、既知の方法に従って、弱毒化遺伝子を弱毒化ドナーウイルスから複製した単離ウイルスまたは合併結合変異ウイルスに移入して、一工程で達成できる。A型インフルエンザウイルスに対する抵抗性は、主としてHA糖タンパク質および/またはNA糖タンパク質に対する免疫応答の発現によって媒介されるので、これらの表面抗原をコードする遺伝子は、合併結合変異ウイルスまたは臨床分離株に由来する。弱毒化された遺伝子は、弱毒化された親ウイルスに由来する。この手法では、弱毒性を付与する遺伝子は、一般的にHA糖タンパク質およびNA糖タンパク質をコードしていない。
【0041】
インフルエンザウイルスを再現性よく弱毒化できるウイルス(ドナーインフルエンザウイルス)が利用可能であり、例えば、低温適応(ca)ドナーウイルスを弱毒化ワクチンの製造に使用できる。弱毒化された合併結合変異生ワクチンは、caドナーウイルスを強毒性の複製ウイルスと交配させて生成できる。次いで合併結合変異性の子孫を、弱毒化されたcaドナーウイルスの表面抗原を保持するウイルスの複製を阻害する適切な抗血清の存在下で、(強毒性ウイルスの複製を制限する)25℃で選択する。有用な合併結合変異体は、(a)感染性であり、(b)血清陰性の非成体哺乳類および免疫学的に刺激された成体哺乳類に対して弱毒化され、(c)免疫原性があり、かつ(d)遺伝的に安定である。ca合併結合変異体の免疫原性は、それらの複製の程度に類似する。従って、成体および非成体両方の感受性のある哺乳類へのワクチン接種に使用するために、新たな野生型ウイルスによるcaドナーウイルスの6個の伝達可能遺伝子の獲得により、これらのウイルスを再現性よく弱毒化させた。
【0042】
その他の弱毒化変異を、部位特異的変異誘発によってインフルエンザウイルス遺伝子に導入して、これらの変異遺伝子を保持する感染性ウイルスを救済できる。弱毒化変異は、ゲノムの非コード領域に、ならびにコード領域に導入できる。そのような弱毒化変異はまた、HAやNA以外の遺伝子、例えばPB2重合酵素遺伝子にも導入できる。従って、部位特異的変異誘発によって導入された弱毒化変異を保持する新たなドナーウイルスをまた生成でき、そのような新たなドナーウイルスは、caドナーウイルスでの上述の方法と類似の方法によって、弱毒化した合併結合変異生ワクチン候補の製造に用いることができる。同様に、他の既知の適切な弱毒化ドナー株をインフルエンザウイルスと合併結合変異させて、哺乳類のワクチン接種への使用に適する弱毒化ワクチンを得ることができる。
【0043】
一実施態様では、このような弱毒化ウイルスは、元の臨床的単離株と実質的に類似する抗原決定基をコードするウイルスからの遺伝子を保持している。このことは、弱毒化ワクチンの目的が、ウイルスの元の臨床的単離株と実質的に同じ抗原性を提供することであると同時に、ワクチンがワクチン接種された哺乳類で重篤な疾患状態を誘発する可能性を最小とする程度まで病原性を低減することにあるからである。
【0044】
従って多価ワクチン中のウイルスを、動物、例えば哺乳類で免疫応答を誘発するためのワクチンとして、既知の方法に従って弱毒化または不活化し、製剤化し、かつ投与できる。そのような弱毒化または不活化ワクチンが、それに由来する臨床的単離株または高増殖株の抗原性に類似する抗原性を維持しているか否かを決定する方法は、当技術分野では周知である。そのような既知の方法には、ドナーウイルスの抗原決定基を発現するウイルスを排除するための抗血清体または抗体の使用;(アマンタジンまたはリマンチジンなどによる)化学的な選択;HAとNAの活性化および阻害;ならびに抗原決定基をコードするドナー遺伝子(例えばHA遺伝子またはNA遺伝子)が弱毒化ウイルス中に存在しないことを確認するための核酸スクリーニング(例えば、プローブハイブリッド化またはPCR)が挙げられる。
【0045】
医薬組成物
鼻腔、非経口、または経口の各投与などの接種に適する本開示の医薬組成物は、1種以上のインフルエンザウイルス単離株、例えば1種以上の弱毒化または不活化インフルエンザウイルス、そのサブユニット、その単離タンパク質、および/またはその1種以上のタンパク質をコードする単離された核酸を含み、場合によってはその無菌の水性溶液または非水性溶液、懸濁液、および乳状液をさらに含む。この組成物は、当該技術分野で知られているように、補助剤または賦形剤をさらに含んでもよい。本発明の組成物は、一般的に個々の投与量(単位用量)の形態で提供される。
【0046】
従来からのワクチンは、通常は、その組成物中に入るそれぞれの株からの約0.1~200 μg、例えば、30~100 μg、0.1~2 μg、0.5~5 μg、1~10 μg、10 μg~20 μg、15 μg~30 μg、または10~30 μgのHAを含有する。本発明のワクチン組成物の主成分を形成するワクチンは、単一のインフルエンザウイルス、またはインフルエンザウイルスの組合せ、例えば、1種以上の合併結合変異体を含む少なくとも2種または3種のインフルエンザウイルスを含んでもよい。
【0047】
非経口投与のための製剤には、無菌の水性溶液または非水性溶液、懸濁液、および乳状液が含まれ、これらは当技術分野で既知の補助剤または賦形剤を含んでもよい。非水性溶媒の例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、オレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが挙げられる。固定化担体または密封性包帯法を用いて、皮膚浸透性を高めかつ抗原吸収を促進できる。経口投与のための液状投与形態は、一般的に液状投与形態を含むリポソーム溶液を含んでもよい。リポソームを懸濁させるのに適する形態には、精製水などの当該技術分野で通常用いられる不活性希釈剤を含む、乳状液、懸濁液、溶液、シロップ、エリキシル剤が含まれる。不活性希釈剤の他に、このような組成物には、アジュバント、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、香味料、または香料を含んでもよい。
【0048】
本開示の組成物が個体への投与に使用される場合に、その組成物はさらに、塩、緩衝剤、アジュバント、または組成物の効力の向上に望ましい他の物質を含んでもよい。ワクチンの場合には、特定の免疫応答を増強できる物質であるアジュバントを使用してもよい。通常は、アジュバントおよび組成物は、免疫系への提供前に混合されるか、あるいは別々ではあるが免疫化される生物の同一部位に提供される。
【0049】
ワクチンでの異質性は、少なくとも2種のインフルエンザウイルス株、例えば2~20種の株、あるいはその中の任意の範囲もしくは数値で複製されるインフルエンザウイルスを混合して提供されてもよい。ワクチンには、当技術分野で既知の技術を用いて、インフルエンザウイルスの単一株での変異種を提供してもよい。
【0050】
本開示による医薬組成物にはさらに、少なくとも1種の化学療法化合物、例えば、遺伝子治療用の免疫抑制剤、抗炎症剤、または免疫増強剤が含まれてもよく、かつワクチン用の化学療法剤、例えば限定はされないが、γグロブリン、アマンタジン、グアニジン、ヒドロキシベンズイミダゾール、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、腫瘍壊死因子α、チオセミカルバルゾン、メチアゾン、リファンピン、リバビリン、ピリミジン類似体、プリン類似体、フォスカルネット、ホスホノ酢酸、アシクロビル、ジデオキシヌクレオシド、タンパク質分解酵素阻害薬、またはガンシクロビルが含まれてもよい。
【0051】
本組成物はまた、変動してもよいが少量であるエンドトキシン不含ホルムアルデヒド、および本組成物が投与される生物内で安全性が確認されかつ望ましくない効果には影響しない防腐剤を含んでもよい。
【0052】
薬学的な目的
組成物(またはそれが誘発する抗血清剤)の投与は、「予防的」あるいは「治療的」のいずれを目的にしてもよい。予防的に提供される場合には、ワクチンである本発明の組成物は、病原体感染のいずれかの症状または臨床的徴候が顕在化する前に提供される。組成物の予防的投与は、その後のいずれかの感染を防止または減弱させるのに役立つ。予防的に提供される場合には、本発明の遺伝子治療組成物は、疾患のいずれかの症状または臨床的徴候が顕在化する前に提供される。組成物の予防的投与は、疾患に関連する1種以上の症状または臨床的徴候を防止または減弱させるのに役立つ。
【0053】
治療的に提供される場合には、ウイルスワクチンは、実際の感染の症状または臨床的徴候を検出すると提供される。化合物の治療的投与は、いずれかの実際の感染を減弱させるのに役立つ。治療的に提供される場合には、遺伝子治療組成物は、疾患の症状または臨床的徴候を検出すると提供される。化合物の治療的投与は、その疾患の症状または臨床的徴候を減弱させるのに役立つ。
【0054】
従って、本開示のワクチン組成物は、(予測される感染を防止または減弱させるように)感染の発症前あるい実際の感染の開始後のいずれかに提供されてもよい。同様に、遺伝子治療の組成物は、障害または疾患のいずれかの症状または臨床的徴候が顕在化する前に、あるいは1種以上の症状が検出された後に提供されてもよい。
【0055】
組成物は、その投与が受容体である哺乳類によって許容できる場合に、「薬理学的に許容可能な」と言える。そのような薬剤は、投与量が生理学的に有意である場合に、「治療有効量」で投与されると言える。本発明の組成物は、その存在が受容体である患者の生理機能に検出可能な変化をもたらす場合に、例えば感染性インフルエンザウイルスの少なくとも1種の株に対する少なくとも1種の一次または二次の液性免疫応答または細胞性免疫応答を増強する場合に、生理学的に有意なものとなる。
【0056】
提供される「防御」は絶対的である必要はなく、すなわち、哺乳類の対照集団または集合に比較して統計的に有意な改善があるのなら、インフルエンザ感染は完全に予防または根絶される必要はない。防御は、インフルエンザウイルス感染の症状または臨床徴候の重症度または発症の速さを軽減することに限定されてもよい。
【0057】
薬学的な投与
本開示の組成物は、受動免疫化または能動免疫化のいずれかによって、1種以上の病原体、例えば1種以上のインフルエンザウイルス株に対する抵抗性を付与できる。能動免疫化では、弱毒化生ワクチン組成物は宿主(例えば哺乳類)に予防的に投与され、この投与に対する宿主の免疫応答は、感染および/または疾患に対して防御する。受動免疫化の場合に、誘発された抗血清性を回復させ、少なくとも1種のインフルエンザウイルス株によって引き起こされる感染症を有すると疑われる受容体に施用できる。遺伝子治療組成物は、能動免疫化によって、所望の遺伝子産物の予防的または治療的な濃度を生成できる。
【0058】
一実施態様では、ワクチンは、(妊娠または分娩時またはそれ以前の)哺乳類の雌に、その雌と胎児または新生児の両方を防御するのに役立つ免疫応答の生成を引き起こすのに十分な時間および量の条件の下で(胎盤全体への、または母乳中への抗体の受動的な取込みを経て)提供される。
【0059】
従って本開示は、障害または疾患、例えば、インフルエンザウイルスなどの病原体の少なくとも1種の株による感染を予防または減弱させる方法を含む。本明細書で使用されるワクチンは、その投与が疾患の臨床的徴候もしくは症状の全体的または部分的な減弱(すなわち抑制)、あるいは疾患に対する個体の全体的または部分的な免疫のいずれかの結果をもたらす場合に、疾患を予防または減弱させたと言える。本明細書で使用される遺伝子治療組成物は、その投与が疾患の臨床的徴候もしくは症状の全体的または部分的な減弱(すなわち抑制)、あるいは疾患に対する個体の全体的または部分的な免疫のいずれかの結果をもたらす場合に、疾患を予防または減弱させたと言える。
【0060】
弱毒化されたウイルスおよび1種以上の他の単離ウイルス、1種以上の単離ウイルスタンパク質、1種以上のウイルスタンパク質をコードする1種以上の単離核酸分子、またはそれらの組合せを含む、本開示の少なくとも1種のインフルエンザウイルスを有する組成物は、意図する目的を達成するいかなる手段によっても投与できる。
【0061】
例えばそのような組成物の投与は、皮下、静脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、経口、または経皮経路などの種々の非経口経路によってもよい。非経口投与は、ボーラス注入によって、または経時的に段階的な灌流によって達成できる。
【0062】
インフルエンザウイルス関連の病態を予防、抑制、または治療するための典型的な処方計画は、1週間~約24ヶ月まで、またはそのうちの任意の範囲もしくは日数に亘って、本明細書に記載のワクチン組成物の有効量を投与する、単一の治療として投与する、あるいは増強用量または追加用量として繰返し投与することを含む。
【0063】
本開示によれば、組成物の「有効量」は、所望の効果を達成するのに十分な量である。当然なことであるが、有効用量は、受容体の種、年齢、性別、健康状態、および体重、もしあるなら同時に実施される治療の種類、治療の頻度、および所望の効果の特性に依存する。以下に提示される有効用量の範囲は、本発明を限定する意図はなしに投与量の範囲を示している。
【0064】
哺乳類の成体生物などの動物に対する生ウイルスワクチン、弱毒化ウイルスワクチン、または死滅ウイルスワクチンの投与量は、約102~1020溶菌斑形成単位(PFU)/kg、例えば103~1014、103~1012、102~1010、105~1011、106~1015、102~1010、または1015~1020 PFU/kg、約102~1010、103~1012、104~1010、105~1011、106~1014、105~1012、または1014~1020 PFU/kg、またはそれらのうちの任意の範囲もしくは数値であってもよい。1つのウイルス単離ワクチンの用量は、例えば不活化ワクチン内で、約0.1~1,000μg、例えば0.1~10μg、1~20μg、30~100μg、10~50μg、50~200μg、または150~300μgの範囲のHAタンパク質であってもよい。但し投与量は、既存のワクチンを出発点として用いて、従来の方法によって決定される安全かつ有効な量とすべきである。
【0065】
複製ウイルスワクチンの各用量中の免疫応答性HAの用量は、適切な量、例えば0.1μg~1μg、0.5μg~5μg、1μg~10μg、10μg~20μg、15μg~30μg、または30μg~100μg、またはそのうちの任意の範囲もしくは数値を含むように、あるいは政府機関または公認専門機関が推奨する量を含むように標準化してもよい。NAの用量もまた、標準化してもよい。
【0066】
複製ウイルスワクチンの各用量での免疫応答性HAの量は、適切な量、例えば1~50 μgまたはその任意の範囲もしくは数値を含むように、あるいは米国公衆衛生局(PHS)が推奨する量、すなわち通常3歳を超える年長児で1成分当たり15μg、および3歳未満児で1成分当たり7.5μgの量を含むように標準化してもよい。NAの量も標準化してもよいが、この糖タンパク質は処理装置での精製および保存中に不安定になる可能性がある(Kendal et al., 1980; Kerr et al., 1975)。0.5mL用量のワクチンはそれぞれ、約1~5億個のウイルス粒子、5~20億個のウイルス粒子、10~500億個のウイルス粒子、10~100億個のウイルス粒子、200~400億個のウイルス粒子、10~50億個のウイルス粒子、または400~800億個のウイルス粒子を含んでもよい。
【0067】
例示的なウイルスおよびワクチン製剤
本開示は、インフルエンザウイルスのNA四量体構造を安定化させる方法、安定化NAを有する組換えウイルス、およびそのウイルスを用いる方法を提供する。例えば、インフルエンザでのNA-48C変異および/またはNA-50C変異は、構造的に安定化させたNA四量体を発現する高増殖性の組換えインフルエンザウイルスを生成し、このウイルスは、例えば有効な免疫応答を引き出すようにより多量のNA抗原を含むインフルエンザワクチン株の生成に使用できる。インフルエンザワクチンは、弱毒化生ウイルス、または例えば全ウイルス、サブユニットウイルス、もしくはスプリットウイルスの各調製物などの不活化(死滅)調製物、あるいは外因的に発現したNAおよびHAを含んでもよい。不活化ワクチンには以下の3種の形態がある:全ウイルスワクチン、(例えば界面活性剤によって破壊された)スプリットウイルスワクチン、およびサブユニットワクチン(すなわちHAおよびNAが他のウイルス成分の除去によってさらに精製されているワクチン)。一実施態様では、組換えウイルスは卵中で増殖され、不活化スプリットワクチンはその組換えウイルスから調製される。一実施態様では、ワクチン中の用量は、(例えば、3価の場合は45μg、4価の場合は60μgの総HA濃度に対して)1株当たり約10~約20μg、例えば15μgのHAを含み、9歳超の個体には一回で投与される。年少児(生後6ヶ月~8歳)では、過去のインフルエンザシーズンにワクチン接種を受けていない場合には、4週間離して2回の投与が必要になる場合がある。標準用量を、典型的には、(皮内(i.d.)製剤および鼻腔内製剤も利用可能であるが)筋肉内(i.m.)注射として送達する。
【0068】
一実施態様では、全ウイルスワクチンは、採取された尿膜液から調製され、例えばホルマリンまたはβプロピオラクトンで化学的に不活化され、続いて濃縮かつ精製されて非ウイルス性タンパク質汚染物を除去する。一実施態様では、スプリットウイルスワクチンは、ウイルス脂質外皮膜を溶解させて、全ウイルスタンパク質および部分ウイルス要素を露出させる界面活性剤による処理を含む。一実施態様では、サブユニットワクチンの場合には、HA(およびNA)タンパク質は、追加の精製工程によってさらに濃縮される。スプリットウイルスワクチンおよびサブユニットワクチンは、抗原刺激を受けた集団では同等の免疫原性を保持するが、全ウイルスワクチン製剤に比較すると反応原性を低くできるので、1970年代以降の最新のワクチンでは、スプリットウイルス製剤またはサブユニット製剤となってきた。
【0069】
例示的なNA修飾
本開示は、従ってノイラミニダーゼ(NA)四量体を安定化させるインフルエンザの親NAに対する修飾、例えばヒトインフルエンザウイルスに関する。それらのNAの修飾はまた、ワクチンウイルスの収量を増加させることができる。
【0070】
従って本開示は、NA中のストーク領域内に選択されたアミノ酸残基、挿入、欠失、またはそれらの任意の組合せを有する単離された組換えインフルエンザウイルス、例えば合併結合変異インフルエンザウイルスを提供する。一実施態様では、NAは48残基にシステインをコードするように選択される。一実施態様では、NAは50位にシステインをコードするように選択される。一実施態様では、NAは48位および50位にシステインをコードするように選択される。
【0071】
一実施態様では、NAは、膜貫通ドメインでの最後の残基の後の1~10残基のうちの1つ以上に欠失を持つように選択され、この欠失はNA四量体を安定化させる。一実施態様では、NAは、膜貫通ドメインでの最後の残基の後の10~20残基のうちの1つ以上に欠失を持つように選択され、この欠失はNA四量体を安定化させる。一実施態様では、NAは、膜貫通ドメインでの最後の残基の後の20~30残基のうちの1つ以上に欠失を持つように選択され、この欠失はNA四量体を安定化させる。一実施態様では、NAは、膜貫通ドメインでの最後の残基の後の30~40残基のうちの1つ以上に欠失を持つように選択され、この欠失はNA四量体を安定化させる。一実施態様では、NAは、膜貫通ドメインでの最後の残基の後の40~50残基のうちの1つ以上に欠失を持つように選択され、この欠失はNA四量体を安定化させる。一実施態様では、この欠失は、ストーク領域内に1、2、3、4、または5残基の欠失を含む。一実施態様では、この欠失は、ストーク領域内に6、7、8、または9残基の欠失を含む。一実施態様では、この欠失は、ストーク領域内に10、11、12、13、14、または15残基の欠失を含む。一実施態様では、この欠失は、ストーク領域内に16、17、18、または19残基の欠失を含む。一実施態様では、この欠失は、ストーク領域内に20、21、22、23、24、または25残基の欠失を含む。一実施態様では、この欠失は、ストーク領域内に26、27、28、または29残基の欠失を含む。
【0072】
一実施態様では、NAは、膜貫通ドメインでの最後の残基の後の1~10残基に1つ以上のアミノ酸残基の挿入を持つように選択され、この挿入はNA四量体を安定化させる。一実施態様では、NAは、膜貫通ドメインでの最後の残基の後の10~20残基に1つ以上のアミノ酸残基の挿入を持つように選択され、この挿入はNA四量体を安定化させる。一実施態様では、NAは、膜貫通ドメインでの最後の残基の後の20~30残基に1つ以上のアミノ酸残基の挿入を持つように選択され、この挿入はNA四量体を安定化させる。一実施態様では、NAは、膜貫通ドメインでの最後の残基の後の30~40残基に1つ以上のアミノ酸残基の挿入を持つように選択され、この挿入はNA四量体を安定化させる。一実施態様では、NAは、膜貫通ドメインでの最後の残基の後の40~50残基に1つ以上のアミノ酸残基の挿入を持つように選択され、この挿入はNA四量体を安定化させる。一実施態様では、この挿入は、ストーク領域内に1、2、3、4、または5残基の挿入を含む。一実施態様では、この挿入は、ストーク領域内に6、7、8、または9残基の挿入を含む。一実施態様では、この挿入は、ストーク領域内に10、11、12、13、14、または15残基の挿入を含む。一実施態様では、この挿入は、ストーク領域内に16、17、18、または19残基の挿入を含む。一実施態様では、この挿入は、ストーク領域内に20、21、22、23、24、または25残基の挿入を含む。一実施態様では、この挿入は、ストーク領域内に26、27、28、または29残基の挿入を含む。
【0073】
一実施態様では、NAは、膜貫通ドメインでの最後の残基の後の1~10残基に1つ以上のアミノ酸残基の置換を持つように選択され、この置換はNA四量体を安定化させる。一実施態様では、NAは、膜貫通ドメインでの最後の残基の後の10~20残基に1つ以上のアミノ酸残基の置換を持つように選択され、この置換はNA四量体を安定化させる。一実施態様では、NAは、膜貫通ドメインでの最後の残基の後の20~30残基に1つ以上のアミノ酸残基の置換を持つように選択され、この置換はNA四量体を安定化させる。一実施態様では、NAは、膜貫通ドメインでの最後の残基の後の30~40残基に1つ以上のアミノ酸残基の置換を持つように選択され、この置換はNA四量体を安定化させる。一実施態様では、NAは、膜貫通ドメインでの最後の残基の後の40~50残基に1つ以上のアミノ酸残基の置換を持つように選択され、この置換はNA四量体を安定化させる。一実施態様では、システインへの置換は、別のNA分子中、例えば二量体、三量体、または四量体中のNAのストーク領域に対向する残基に存在する。
【0074】
一実施態様では、NAは、膜貫通ドメインでの最後の残基の後の1~10残基のうちの1つ以上に1つ以上のシステインを持つように選択され、このシステインはNA四量体を安定化させる。一実施態様では、NAは、膜貫通ドメインでの最後の残基の後の10~20残基のうちの1つ以上に1つ以上のシステインを持つように選択され、このシステインはNA四量体を安定化させる。一実施態様では、NAは、膜貫通ドメインでの最後の残基の後の20~30残基のうちの1つ以上に1つ以上のシステインを持つように選択され、このシステインはNA四量体を安定化させる。一実施態様では、NAは、膜貫通ドメインでの最後の残基の後の30~40残基のうちの1つ以上に1つ以上のシステインを持つように選択され、このシステインはNA四量体を安定化させる。一実施態様では、NAは、膜貫通ドメインでの最後の残基の後の40~50残基のうちの1つ以上に1つ以上のシステインを持つように選択され、このシステインはNA四量体を安定化させる。例えば、7アミノ酸の細胞質尾部、26アミノ酸の膜貫通ドメイン、および48残基にあるCysを持つNAを有するウイルスは、膜貫通ドメインでの最後の残基の後の10~20残基(NAの付番はN1に基づく)にある1つの残基にシステインを有するウイルスである。一実施態様では、本開示は、PR8UWなどのワクチンインフルエンザウイルス由来の6つの「内部」ウイルス断片、特定の修飾のうちの1つ以上を有するNAウイルス断片、および例えばH1~H18のうちのいずれかであるHAウイルス断片を有する、例えば循環インフルエンザウイルス由来の単離された組換え合併結合変異インフルエンザウイルスを提供する。この組換えインフルエンザウイルスを含む組成物、ワクチンなどの医薬組成物もまた提供される。
【0075】
このように、卵などの細胞内で増殖または継代されるワクチンウイルスについて、例えば膜貫通ドメインでの最後の残基の後の1~60残基のうちのいずれか1つの残基でのシステインなどの特定のアミノ酸によるNA中のNAウイルス断片の変異または選択によって、NAにおける膜貫通ドメインでの最後の残基の後の1~60残基のうちのいずれか1つの残基での置換、膜貫通ドメインでの最後の残基の後の1~60残基のうちの1つ以上の残基での挿入、または膜貫通ドメインでの最後の残基の後の1~60残基のうちの1つ以上の残基での欠失、あるいはこれらの任意の組み合わせ、NAにおける膜貫通ドメインでの最後の残基の後の1~60残基のうちの1つ以上の残基での挿入、または膜貫通ドメインでの最後の残基の後の1~60残基のうちの1つ以上の残基での欠失、あるいはこれらの任意の組み合わせは、NAの安定化および/または高いウイルス力価をもたらすことができ、ここで付番はN1に基づく。
【0076】
一実施態様では、本開示は、PA、PB1、PB2、NP、NS、M、HAの各ウイルス断片およびNAウイルス断片を含む単離された組換えインフルエンザウイルスを提供し、このNAウイルス断片は、膜貫通ドメインでの最後の残基の後の1~60残基のうちのいずれか1つの残基にシステインなどの特定のアミノ酸をコードする、膜貫通ドメインでの最後の残基の後の1~60残基のうちの1つ以上の残基に挿入をコードする、あるいは膜貫通ドメインでの最後の残基の後の1~60残基のうちの1つ以上の残基に欠失をコードするように選択されたNAをコードし、ここで付番はN1に基づき、この組換えインフルエンザウイルスにより、例えばワクチンの製造中に鳥類の卵内での複製が増強でき、あるいはNA四量体の安定性が増強できる。
【0077】
一実施態様では、本開示は、PA、PB1、PB2、NP、NS、M、HAの各ウイルス断片およびNAウイルス断片を含む単離された組換えインフルエンザウイルスを提供し、このNAウイルス断片は、例えば変異によって、膜貫通ドメインでの最後の残基の後の1~60残基のうちのいずれか1つに残基の置換を有するNA、膜貫通ドメインでの最後の残基の後の1~60残基のうちの1つ以上の残基に挿入を有するNA、あるいは膜貫通ドメインでの最後の残基の後の1~60残基のうちの1つ以上の残基に欠失を有するNA、あるいはこれらの任意の組み合わせをコードし、ここで付番はN1に基づき、この組換えインフルエンザウイルスにより、例えばワクチンの製造中に鳥類の卵内での複製が増強でき、あるいはNA四量体の安定性が増強できる。
【0078】
一実施態様では、単離された組換えインフルエンザウイルスは合併結合変異体である。一実施態様では、NAウイルス断片は、配列番号1~9、15~18、37、または44~50のうちのいずれか1つに対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%のアミノ酸配列同一性を有するNA、あるいは配列番号19~29のうちのいずれか1つによってコードされたポリペプチドを有するNA、あるいは配列番号1~9、15~18、37、または44~50のうちのいずれか1つでのストーク領域に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%のアミノ酸配列同一性を有するNA、あるいは配列番号19~29のうちのいずれか1つによってコードされたNAをコードする。一実施態様では、NAウイルス断片は、特定の修飾によってN2、N3、N7、またはN9、およびN3、N7、またはN9内の位置をコードする。一実施態様では、NAウイルス断片は、特定の修飾によってN1、N4、N5、N6、N8、N10、またはN11をコードする。一実施態様では、PA、PB1、PB2、NP、M、およびNSの各ウイルス断片は、配列番号30~35または38~43に対して少なくとも85%の核酸配列同一性を有するポリペプチド、あるいは配列番号30~35または38~43によってコードされるポリペプチドに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、または99%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドをコードする。一実施態様では、ウイルスはB型インフルエンザウイルスである。
【0079】
さらに安定化されたNA四量体を有するインフルエンザウイルスを調製する方法が提供される。この方法は、細胞を感染性インフルエンザウイルスを産生するのに有効な量で以下のベクターに接触させる工程を含み、このベクターは、転写終結配列に連結されたインフルエンザウイルスPA DNAに作動可能に連結されたプロモーターを含むvRNA産生用ベクター、転写終結配列に連結されたインフルエンザウイルスPB1 DNAに作動可能に連結されたプロモーターを含むvRNA産生用ベクター、転写終結配列に連結されたインフルエンザウイルスPB2 DNAに作動可能に連結されたプロモーターを含むvRNA産生用ベクター、転写終結配列に連結されたインフルエンザウイルスHA DNAに作動可能に連結されたプロモーターを含むvRNA産生用ベクター、転写終結配列に連結されたインフルエンザウイルスNP DNAに作動可能に連結されたプロモーターを含むvRNA産生用ベクター、転写終結配列に連結されたインフルエンザウイルスNA DNAに作動可能に連結されたプロモーターを含むvRNA産生用ベクター、転写終結配列に連結されたインフルエンザウイルスM DNAに作動可能に連結されたプロモーターを含むvRNA産生用ベクター、および転写終結配列に連結されたインフルエンザウイルスNS DNAに作動可能に連結されたプロモーターを含むvRNA産生用ベクターを含み、ここでvRNA産生用ベクター中のPB1、PB2、PA、NP、NS、およびMの各DNAは、1種以上のインフルエンザワクチンウイルス単離株由来であり、vRNA産生用ベクター中のNA DNAは、本明細書に記載のようにストーク領域内に修飾を有し、NA残基に対する付番はN1に対する付番であり;かつこのベクターは、インフルエンザウイルスPAをコードするDNA断片に作動可能に連結されたプロモーターを含むmRNA産生用ベクター、インフルエンザウイルスPB1をコードするDNA断片に作動可能に連結されたプロモーターを含むmRNA産生用ベクター、インフルエンザウイルスPB2をコードするDNA断片に作動可能に連結されたプロモーターを含むmRNA産生用ベクター、およびインフルエンザウイルスNPをコードするDNA断片に作動可能に連結されたプロモーターを含むmRNA産生用ベクターを含み;場合によっては、このベクターは、インフルエンザウイルスHAをコードするDNA断片に作動可能に連結されたプロモーターを含むmRNA産生用ベクター、インフルエンザウイルスNAをコードするDNA断片に作動可能に連結されたプロモーターを含むmRNA産生用ベクター、インフルエンザウイルスM1をコードするDNA断片に作動可能に連結されたプロモーターを含むmRNA産生用ベクター、インフルエンザウイルスM2をコードするDNA断片に作動可能に連結されたプロモーターを含むmRNA産生用ベクター、インフルエンザウイルスNS1をコードするDNA断片に作動可能に連結されたプロモーターを含むmRNA産生用ベクター、またはインフルエンザウイルスNS2をコードするDNA断片に作動可能に連結されたプロモーターを含むmRNA産生用ベクターのうちの1種以上を含む。一実施態様では、NAウイルス断片は、配列番号1~9、15~18、37、または44~50うちのいずれか1つに対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%のアミノ酸配列同一性を有するNA、あるいは配列番号1~9、15~18、37、または44~50うちのいずれか1つでのストーク領域に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%のアミノ酸配列同一性を有するNAをドープする。一実施態様では、NAは、N1、N4、N5、N6、N8、N10、またはN11である。
【0080】
一実施態様では、HAは、H1、H3、H5、H7、またはH9である。一実施態様では、ウイルスは、A型インフルエンザウイルスである。一実施態様では、PA、PB1、PB2、NP、M、およびNSの各ウイルス断片は、配列番号30~35または38~43に対して少なくとも85%、85%、90%、95%、または99%の核酸配列同一性を有するポリペプチド、あるいは配列番号30~35または38~43によってコードされるポリペプチドに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、または99%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドをコードする。一実施態様では、HAは、H2、H4、H5、H6、H8、またはH10~H18のうちのいずれかである。
【0081】
一実施態様では、ウイルスは、B型インフルエンザウイルスである。
【0082】
さらに、本明細書に記載のウイルスの有効量を有する組成物で鳥類または哺乳類を免疫化する方法が提供される。一実施態様では、組成物は、少なくとも1つの他の異なるインフルエンザウイルスを含む。一実施態様では、哺乳類はヒトである。一実施態様では、組成物は、鼻腔内にまたは注射によって投与される。
【0083】
一実施態様では、本開示は、本明細書に記載のNAでの特有の残基、挿入、および/または欠失、あるいはそれらの組合せを有する単離されたA型インフルエンザウイルスを提供する。一実施態様では、特有の残基、挿入および/または欠失、またはそれらの組合せを有する単離されたA型インフルエンザウイルスは、配列番号1~9、15~18、37、もしくは44~50、または配列番号19~29のうちのいずれか1つによってコードされるポリペプチドのうちのいずれか1つに対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%のアミノ酸配列同一性を有するNA、あるいは配列番号1~9、15~18、37、または44~50うちのいずれか1つでのストーク領域に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%のアミノ酸配列同一性を有するNA、あるいは配列番号19~29のうちのいずれか1つによってコードされるNAを有する。
【0084】
一実施態様では、特有の残基および/または欠失、またはそれらの組合せを有する本発明の単離されたA型インフルエンザウイルスは、HAの亜型1~18のうちのいずれか1つからのHAを有する。一実施態様では、特有の残基は保存的置換である。保存的アミノ酸置換は、類似の側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸群は、セリンおよびスレオニンであり、アミド含有側鎖を有するアミノ酸群は、アスパラギンおよびグルタミンであり、芳香族側鎖を有するアミノ酸群は、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンであり、塩基性側鎖を有するアミノ酸群は、リジン、アルギニン、およびヒスチジンであり、ならびに硫黄含有側鎖を有するアミノ酸群は、システインおよびメチオニンである。一実施態様では、保存的アミノ酸置換基は、スレオニン-バリン-ロイシン-イソロイシン-アラニン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、およびアスパラギン-グルタミンである。一実施態様では、特有の残基は、非保存的置換である。
【0085】
一実施態様では、変異は、例えば、部位特異的変異誘発を含む組換えDNA技術、またはNAコード配列の一部分を特有の残基、挿入、または欠失を含む一部分での置換によって、インフルエンザウイルス単離株のNAウイルス断片中に導入される。一実施態様では、本明細書に記載の特有の残基、挿入、および/または欠失を有するNAウイルス断片は、HA断片、およびインフルエンザワクチンウイルスの内部ウイルス断片と組み合わされる。
【0086】
本開示は、本発明の複数のインフルエンザウイルスベクター、例えば、6:1:1の合併結合変異体、6:2の合併結合変異体、および7:1の合併結合変異体などの合併結合変異ウイルスを調製するのに有用なインフルエンザウイルスベクターを提供する。6:1:1の合併結合変異体は、ワクチンウイルス由来の6つの内部ウイルス断片、ワクチンウイルスとは異なる(第2の)ウイルス単離株由来のHAウイルス断片、および本明細書に記載のように特有の残基、挿入、および/または欠失、またはそれらの組合せを有しかつHA断片およびワクチンウイルスとは異なるウイルス源由来のNAウイルス断片をもつインフルエンザウイルスであり、6:2の合併結合変異体は、ワクチンウイルス由来の6つの内部ウイルス断片、HA断片と同じ供給源に由来する特有の残基、挿入、および/または欠失、またはそれらの組合せを有するNAウイルス断片、およびワクチンウイルスとは異なるウイルス分離株由来のHAウイルス断片を持つインフルエンザウイルスであり、また7:1合併結合変異体は、一実施態様では、6つの内部ウイルス断片とワクチンウイルス由来のHA断片、および特有の残基、および/または欠失、またはそれらの組合せを含むように修飾され、ワクチンウイルスとは異なるウイルス源由来のNA断片を持つインフルエンザウイルスである。
【0087】
本発明の一実施態様では、複数のベクターは、転写終結配列に連結されたインフルエンザウイルスPA DNAに作動可能に連結されたプロモーターを含むベクター、転写終結配列に連結されたインフルエンザウイルスPB1 DNAに作動可能に連結されたプロモーターを含むベクター、転写終結配列に連結されたインフルエンザウイルスPB2 DNAに作動可能に連結されたプロモーターを含むベクター、転写終結配列に連結されたインフルエンザウイルスHA DNAに作動可能に連結されたプロモーターを含むベクター、転写終結配列に連結されたインフルエンザウイルスNP DNAに作動可能に連結されたプロモーターを含むベクター、転写終結配列に連結されたインフルエンザウイルスNA DNAに作動可能に連結されたプロモーターを含むベクター、転写終結配列に連結されたインフルエンザウイルスM DNAに作動可能に連結されたプロモーターを含むベクター、および転写終結配列に連結されたインフルエンザウイルスNS DNAに作動可能に連結されたプロモーターを含むベクターから選択されるvRNA産生用ベクターを含む。一実施態様では、PB1、PB2、PA、NP、M、およびNSのvRNA産生用のDNAは、MDCK細胞、Vero細胞、またはPER.C6(登録商標)細胞などの培養哺乳類細胞内あるいは胚発育卵内で高力価まで複製するインフルエンザウイルス由来の配列を有し、および/またはワクチンウイルス、例えばヒトで重大な疾患を引き起こさないワクチンウイルス由来の配列を有する。NAのvRNA産生用のDNAは、任意のNA、例えばN1~N11のいずれかに由来してもよく、HAのvRNA産生用のDNAは、任意のHA、例えばH1~H18に由来してもよい。一実施態様では、vRNA産生用のDNAは、B型またはC型インフルエンザウイルス向けであってよい。例えばvRNA産生用のDNAは、B型インフルエンザウイルスのPA、PB1、PB2、NP、NS、およびM、あるいはB型インフルエンザウイルスのPA、PB1、PB2、NP、NS、M、およびNAを含み、ここでNA用のvRNAは、本明細書に記載のような特有の残基、挿入、および/または欠失を有するNAを持つ。NAおよびHAのvRNA産生用のDNAは、異なる株または単離株(6:1:1の合併結合変異体)由来であってもよく、あるいは同じ株または単離株(6:2の合併結合変異体)由来であってもよく、あるいはNAまたはHAは、内部遺伝子用の株と同じ株または単離株(7:1の合併結合変異体)由来であってもよい。複数のベクターはまた、インフルエンザウイルスPAをコードするベクター、インフルエンザウイルスPB1をコードするベクター、インフルエンザウイルスPB2をコードするベクター、およびインフルエンザウイルスNPをコードするベクター、ならびに場合によってはNP、NS、M1およびM2などのM、HA、またはNAをコードする1種のベクターから選択されるmRNA産生用ベクターを含む。ウイルスタンパク質をコードするベクターは、転写終結配列をさらに含んでもよい。
【0088】
本発明の範囲内の合併結合変異体の内部遺伝子を提供し得るウイルスは、高い力価を有するウイルス、例えば少なくとも約105 PFU/mL、例えば少なくとも106 PFU/mL、107 PFU/mL、または108 PFU/mLの力価を有するウイルス、胚発育卵中で高い力価を有するウイルス、例えば少なくとも約107 EID50/mL、例えば少なくとも108 EID50/mL、109 EID50/mL、または1010 EID50/mLの力価を有するウイルス、MDCK細胞中で高い力価を有するウイルス、例えば少なくとも約107 PFU/mL、例えば少なくとも108 PFU/mLの力価を有するウイルス、またはこれらの宿主細胞の2つ以上で高い力価を有するウイルスを含む。
【0089】
他のPR8分離株またはワクチンウイルス由来の内部遺伝子を有するその他の合併結合変異体を、組換え合併結合変異ウイルスに用いてもよい。
【0090】
一実施態様では、PB1、PB2、PA、NP、M、およびNSの内部遺伝子用のDNAは、配列番号30~35または38~43のうちの1つによってコードされた対応するポリペプチドと実質的に同一の活性を有するタンパク質をコードする。本明細書で使用される「実質的に同一の活性」は、対応する全長ポリペプチドの活性水準またはタンパク質水準のそれぞれ約0.1%、1%、10%、30%、50%、90%、例えば最大100%またはそれ以上である活性、あるいは約80%、90%またはそれ以上である検出可能なタンパク質水準を含む。一実施態様では、核酸は、配列番号30~35または38~43のうちの1つによってコードされたポリペプチドに対して、実質的に同一であるポリペプチド、例えば80~99の間の任意の整数を含む少なくとも80%、例えば90%、92%、95%、97%、または99%の連続するアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドをコードする配列を含む。一実施態様では、単離かつ/あるいは精製された核酸分子は、配列番号30~35または38~43のうちの1つに対して、実質的に同一であるヌクレオチド配列、例えば50~100の間の任意の整数を含む少なくとも50%、例えば60%、70%、80%、90%、またはそれ以上の連続する核酸配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、一実施態様では、単離かつ/あるいは精製された核酸分子はまた、配列番号30~35または38~43のうちの1つによってコードされたポリペプチドに対して、80~99の間の任意の整数を含む少なくとも80%、例えば90%、92%、95%、97%、または99%の連続するアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドをコードする。一実施態様では、インフルエンザウイルスポリペプチドは、配列番号30~35または38~43のいずれか1つによってコードされたポリペプチドに対して、1つ以上、例えば、2、5、10、15、20、またはそれ以上の保存的アミノ酸置換、例えば最大10%または20%の残基の保存的置換を有する。保存的アミノ酸置換は、類似の側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸群は、セリンおよびスレオニンであり、アミド含有側鎖を有するアミノ酸群は、アスパラギンおよびグルタミンであり、芳香族側鎖を有するアミノ酸群は、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンであり、塩基性側鎖を有するアミノ酸群は、リジン、アルギニン、およびヒスチジンであり、および硫黄含有側鎖を有するアミノ酸群は、システインおよびメチオニンである。一実施態様では、保存的アミノ酸置換基は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、およびアスパラギン-グルタミンである。一実施態様では、インフルエンザウイルスポリペプチドは、配列番号30~35のいずれか1つによってコードされたポリペプチドに対して、1つ以上の、例えば、2、3、または4つの非保存的アミノ酸置換を有する。
【0091】
一実施態様では、核酸は、その配列が参照によって本明細書に組み込まれる受託番号ACP41107.1 (N1)、AIK26357.1 (N7)、ALH21372.1 (N9)、またはBAK86313.1 (N2)のうちのいずれか1つまたは少なくともそのストーク領域に対して、実質的に同一である、例えば80~99の間の任意の整数を含む少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、例えば90%、92%、95%、97%、または99%の連続するアミノ酸配列同一性を有するNAポリペプチドをコードする配列である。一実施態様では、単離かつ/あるいは精製された核酸分子は、その配列が参照によって本明細書に組み込まれる受託番号ACP41107.1 (N1)、AIK26357.1 (N7)、ALH21372.1 (N9)、またはBAK86313.1 (N2)のうちのいずれか1つまたは少なくともそのストーク領域に対して、80~99の間の任意の整数を含む少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、例えば90%、92%、95%、97%、または99%の連続するアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドをコードする。一実施態様では、インフルエンザウイルスポリペプチドは、1つ以上の、例えば、2、5、10、15、20、またはそれ以上の保存的アミノ酸置換、例えば配列番号1~18または受託番号ACP41107.1 (N1)、AIK26357.1 (N7)、ALH21372.1 (N9)、またはBAK86313.1 (N2)のうちのいずれか1つまたは少なくともそのストーク領域に対して、最大10または20%の残基の保存的置換を有する。保存的アミノ酸置換とは、類似の側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり、脂肪族水酸基側鎖を有するアミノ酸群は、セリンおよびスレオニンであり、アミド含有側鎖を有するアミノ酸群は、アスパラギンおよびグルタミンであり、芳香族側鎖を有するアミノ酸群は、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンであり、塩基性側鎖を有するアミノ酸群は、リジン、アルギニン、およびヒスチジンであり、および硫黄含有側鎖を有するアミノ酸群は、システインおよびメチオニンである。一実施態様では、保存的アミノ酸置換基は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、およびアスパラギン-グルタミンである。一実施態様では、インフルエンザウイルスポリペプチドは、配列番号1~18、3、または受託番号ACP41107.1 (N1)、AIK26357.1 (N7)、ALH21372.1 (N9)、またはBAK86313.1 (N2)のうちのいずれか1つまたは少なくともそのストーク領域のうちのいずれか1つを有するポリペプチドに対して、1つ以上の、例えば2、3、または4つの非保存的アミノ酸置換を有する。
【0092】
従って本発明は、インフルエンザウイルスタンパク質を発現またはコードする、あるいは天然vRNAおよび組換えvRNAの両方のインフルエンザvRNAを発現またはコードする、単離かつ精製されたベクターまたはプラスミドの使用を含む。ベクターは、インフルエンザcDNA、例えばA型インフルエンザのDNA(例えば、18 HAまたは11 NA亜型のいずれかを含む任意のA型インフルエンザ遺伝子)、B型のDNA、またはC型のDNAを含む(参照により本明細書に具体的に組み込まれる、Fields Virology (Fields et al. (eds.), Lippincott, Williams and Wickens (2013)を参照)。任意の適切なプロモーターまたは転写終結配列は、タンパク質またはペプチド、例えばウイルスタンパク質またはペプチド、非ウイルス病原体のタンパク質またはペプチド、あるいは治療用タンパク質またはペプチドを発現するために用いられてもよい。
【0093】
本発明の組成物または複数のベクターはまた、目的の異種遺伝子またはオープンリーディングフレーム、例えば、ワクチンとしてまたは遺伝子置換に有用な免疫原性ペプチドまたはタンパク質をコードする外来遺伝子を含んでもよく、例えば、癌治療またはワクチンに有用なエピトープ、または遺伝子治療に有用なペプチドまたはポリペプチドをコードしてもよい。ウイルスを調製する場合に、目的の遺伝子またはcDNAを含むベクターまたはプラスミドは、インフルエンザウイルス遺伝子用のベクターまたはプラスミドに置換してもよく、あるいは全てのインフルエンザウイルス遺伝子用のベクターまたはプラスミドに付加してもよい。従って本発明の別の実施態様は、上述のような組成物または複数のベクターを含み、これらベクターのうちの1つは、場合によっては3’インフルエンザウイルスコード配列またはその一部を含む3’インフルエンザウイルス配列に連結された所望の核酸配列、例えば所望のcDNAに連結された、場合によっては5’インフルエンザウイルスコード配列またはその一部を含む5’インフルエンザウイルス配列で置換されている、あるいはその5’インフルエンザウイルス配列をさらに含む。一実施態様では、cDNAなどの所望の核酸配列は、アンチセンス(アンチゲノム)配向となっている。このようなベクターを上述の他のベクターと組み合わせて、インフルエンザウイルス複製が許容される宿主細胞に導入すると、ベクターの異種配列に対応するvRNAを含む組換えウイルスが得られる。
【0094】
vRNA産生用のベクター中のプロモーターは、RNA重合酵素Iプロモーター、RNA重合酵素IIプロモーター、RNA重合酵素IIIプロモーター、T7プロモーター、またはT3プロモーターであってもよく、場合によってはベクターは、RNA重合酵素I転写終結配列、RNA重合酵素II転写終結配列、RNA重合酵素III転写終結配列、またはリボザイムなどの転写終結配列を含む。本発明の範囲内のリボザイムには、限定はされないが、テトラヒメナリボザイム、RNA分解酵素P、ハンマーヘッド型リボザイム、ヘアピン型リボザイム、肝炎リボザイム、ならびに合成リボザイムが含まれる。一実施態様では、RNA重合酵素Iプロモーターは、ヒトRNA重合酵素Iプロモーターである。
【0095】
vRNAまたはウイルスタンパク質発現ベクター中のプロモーターまたは転写終結配列は、他のベクターのプロモーターに対して同一であっても異なっていてもよい。一実施態様では、インフルエンザvRNAを発現するベクターまたはプラスミドは、少なくとも1種の特定の宿主細胞、例えば、鳥類宿主細胞、あるいはイヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジの各細胞、またはヒト細胞を含む霊長類細胞などの哺乳類宿主細胞での発現、または2種以上の宿主での発現に適するプロモーターを含む。
【0096】
一実施態様では、vRNA用の少なくとも1つのベクターは、別のリボザイム配列に連結されたウイルスコード配列に連結されたリボザイム配列に連結された、場合によってはRNA重合酵素II転写終結配列に連結されたRNA重合酵素IIプロモーターを含む。一実施態様では、少なくとも2つ、例えば、3、4、5、6、7、または8つのvRNA産生用のベクターは、RNA重合酵素IIプロモーターである第1のリボザイム配列を含み、この配列は、ウイルスコード配列を含むウイルス配列に対応する配列の5’であり、第2のリボザイム配列の5’であり、転写終結配列の5’である。各vRNAベクター中の各RNA重合酵素IIプロモーターは、他の任意のvRNAベクター中のRNA重合酵素IIプロモーターと同じであっても異なっていてもよい。同様に、各vRNAベクター中の各リボザイム配列は、他の任意のvRNAベクター中のリボザイム配列と同じであっても異なっていてもよい。一実施態様では、単一のベクター中のリボザイム配列は同一ではない。
【0097】
一実施態様では、少なくとも1つのベクターは、PB1、PB2、PA、NP、M、またはNS、あるいはその一部をコードする配列に対応する配列を含み、配列番号30~35のいずれか1つによってコードされた対応するポリペプチドと実質的に同じ活性を有する、例えば配列番号30~35のいずれか1つによってコードされたポリペプチドに対して、例えば80~100の間の任意の整数を含む少なくとも80%、例えば、85%、90%、92%、95%、98%、99%、または100%のアミノ酸同一性を有するポリペプチドをコードする配列を含む。場合によっては、転写終結配列に連結されたインフルエンザウイルスM cDNAに作動可能に連結されたプロモーターを含むベクターの代わりに、2つのベクター、例えば、転写終結配列に連結されたインフルエンザウイルスM1 cDNAに作動可能に連結されたプロモーターを含むベクター、および転写終結配列に連結されたインフルエンザウイルスM2 cDNAに作動可能に連結されたプロモーターを含むベクターを用いてもよい。
【0098】
本発明の複数のベクターは、物理的に連結されていてもよく、あるいは各ベクターは、個々のプラスミド表面、または他の部分、例えば鎖状の核酸送達媒体表面に存在してもよい。一実施態様では、各vRNA産生ベクターは、個別のプラスミド表面に存在する。一実施態様では、各mRNA産生ベクターは、別々のプラスミド表面に存在する。
【0099】
本発明はまた、インフルエンザウイルスを調製する方法を提供する。この方法は、感染性インフルエンザウイルスを得るのに有効な量で、本発明の複数のベクターを、例えば順番にまたは同時に細胞に接触させる工程を含む。本発明はまた、複数のベクターと接触させた細胞からウイルスを単離することを含む。従って、本発明はさらに、単離されたウイルス、ならびに本発明の複数のベクターまたはウイルスと接触させた宿主細胞を提供する。別の実施態様では、本発明は、細胞をvRNAまたはタンパク質産生ベクターのいずれかである1つ以上のベクターに、vRNAまたはタンパク質産生ベクターのいずれかである他のベクターに先立って接触させることを含む。一実施態様では、この方法に用いられるvRNAベクターのプロモーターは、RNA重合酵素Iプロモーター、RNA重合酵素IIプロモーター、RNA重合酵素IIIプロモーター、T3プロモーター、またはT7プロモーターである。一実施態様では、RNA重合酵素Iプロモーターは、ヒトRNA重合酵素Iプロモーターである。一実施態様では、この方法に用いられる各vRNAベクターは、別々のプラスミド表面に存在する。一実施態様では、この方法に用いられるvRNAベクターは、1つのプラスミド表面、あるいは2つまたは3つの異なるプラスミド表面に存在する。一実施態様では、この方法に用いられる各mRNAベクターは、別々のプラスミド表面に存在する。一実施態様では、この方法に用いられるPA、PB1、PB2、およびNPのmRNAベクターは、1つのプラスミド表面、あるいは2つまたは3つの異なるプラスミド表面に存在する。
【0100】
ヘルパーウイルス感染を必要としない本明細書に記載のウイルスを産生する方法は、ウイルス変異誘発研究、ならびにワクチン(例えば、AIDS、インフルエンザ、B型肝炎、C型肝炎、ライノウイルス、フィロウイルス、マラリア、ヘルペス、および口蹄疫用のワクチン)の生成、および遺伝子治療ベクター(例えば、癌、AIDS、アデノシンデアミナーゼ、筋ジストロフィー、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損、中枢神経系腫瘍用のベクター)の生成に有用である。従って、医学的治療(例えばワクチンまたは遺伝子治療)に用いるウイルスが提供される。
【0101】
本発明はまた、単離されたウイルスポリペプチド、および本発明の組換えウイルスを調製しかつ使用する方法を提供する。この方法は、哺乳類などの宿主生物に、例えば不活化ウイルス調製物などの有効量の本発明のインフルエンザウイルスを、場合によってはアジュバントおよび/または担体と組み合わせて、例えばそのウイルスすなわち抗原として密接に関連するウイルスによって哺乳類などの動物の感染を予防あるいは改善するのに有効な量で投与する工程を含む。一実施態様では、ウイルスは筋肉内に投与されるが、別の実施態様では、ウイルスは鼻腔内に投与される。投与手順によっては、全ての用量を筋肉内にまたは鼻腔内に投与してもよいが、他の投与手順によっては、筋肉内および鼻腔内の投与を組み合わせて用いる。ワクチンはさらに、例えば多価ワクチンを生成するために、組換えインフルエンザウイルスを含むインフルエンザウイルスの他の単離株、他の病原体、および追加の生物学的薬剤または微生物成分を含んでもよい。一実施態様では、例えば不活化インフルエンザウイルスおよび粘膜用アジュバントを含む鼻腔内ワクチン接種により、鼻咽頭にウイルス特異的IgAおよび中和抗体ならびに血清IgGを誘発できる。
【0102】
本発明のインフルエンザウイルスは、他の抗ウイルス剤、例えばアマンタジン、リマンタジン、および/またはノイラミニダーゼ阻害剤とともに使用してもよく、例えばそれらの抗ウイルス剤と組み合わせて別々に、それらの抗ウイルス剤の投与前に、投与中に、および/または投与後に投与してもよい。
【0103】
A型インフルエンザウイルス(A/Yokohama/2013/2003 (H3N2))ノイラミニダーゼタンパク質配列およびそのストーク領域の一例を以下に示す(ストーク領域には下線を付す)。
【化1】
【0104】
A型インフルエンザウイルス(A/Yokohama/47/2002 (H1N2))のノイラミニダーゼ配列およびそのストーク領域の別の例を以下に示す(ストーク領域には下線を付す)。
【化2】
【0105】
Singapore 0019 NAおよびそのストーク領域のアミノ酸配列は以下の通りである(ストーク領域には下線を付す)。
【化3】
【0106】
A/Alaska/232/2015のNAは、以下の配列を有する(ストーク領域には下線を付す)。
【化4】
【0107】
A/Singapore/GP1908/2015 (H1N1) pdm09のNAヌクレオチド配列。
【化5】
【0108】
A/Singapore/GP1908/2015 (H1N1) pdm09のNAのアミノ酸配列(ストークには下線を付す)。
【化6】
【0109】
場合によっては、1つ以上の修飾をさらに、HA、PA、PB1、PB2、NP、M1、M2、NS2、PB1-F2、PA-X、および/またはNS1の各タンパク質(およびこれらタンパク質をコードする核酸)に導入してもよい。
【0110】
ワクチン製造中の安定性の向上に加えて、胚発育鶏卵または培養細胞を通過させた際のウイルスの増殖の増強が、修飾NAタンパク質を発現させた場合に観察され、そのような発現により著しく高いウイルス力価を得ることができる。従って本発明は、細胞培養物または胚発育卵での複製が増強されたインフルエンザウイルスの生成方法を提供する。この方法は、インフルエンザワクチン製造に適する細胞を提供する工程;修飾ノイラミニダーゼを有するウイルスによって細胞に感染させる工程;および1つ以上の非修飾ウイルス単離株に比較して増殖が増強されたウイルス株を単離する工程を含む。場合によっては、細胞培養物中で複製が増強されたインフルエンザウイルスの生成方法は、1つ以上のインフルエンザウイルス単離株を胚発育鶏卵中で連続培養する工程;および連続培養前の1つ以上の単離株に比較して増殖が増強された連続培養ウイルスを単離する工程を含んでもよい。場合によっては、これらウイルスは、培養中の細胞、例えばMDCK細胞またはVero細胞内で増殖または継代させてもよい。
【0111】
本明細書で考察するように、修飾されたノイラミニダーゼは、様々なインフルエンザ株内で発現できる。例えば、A/Puerto Rico/8/34 (H1N1)である「PR8」ウイルスは、不活化インフルエンザワクチンの生成の遺伝子骨格として多くの場合に役立つものである。
【0112】
一実施態様では、vRNA産生用のベクターは、転写終結配列に連結された修飾NA DNAに作動可能に連結されたプロモーターを含むベクター、転写終結配列に連結されたインフルエンザウイルスPB1 DNAに作動可能に連結されたプロモーターを含むベクター、転写終結配列に連結されたインフルエンザウイルスPB2 DNAに作動可能に連結されたプロモーターを含むベクター、転写終結配列に連結されたインフルエンザウイルスHA DNAに作動可能に連結されたプロモーターを含むベクター、転写終結配列に連結されたインフルエンザウイルスNP DNAに作動可能に連結されたプロモーターを含むベクター、転写終結配列に連結されたインフルエンザウイルスNA DNAに作動可能に連結されたプロモーターを含むベクター、転写終結配列に連結されたインフルエンザウイルスM DNAに作動可能に連結されたプロモーターを含むベクター、および転写終結配列に連結されたインフルエンザウイルスNS DNAに作動可能に連結されたプロモーターを含むベクターを含んでもよい。一実施態様では、PB1、PB2、PA、NP、M、およびNSのvRNA産生用のDNAは、MDCK細胞、Vero細胞、またはPER.C6(登録商標)細胞などの培養哺乳類細胞、あるいは胚発育卵内で高力価まで複製するインフルエンザウイルス由来の配列、および/またはワクチンウイルス、例えばヒトで重大な疾患を引き起こさないワクチンウイルス由来の配列を有する。NAのvRNA産生用のDNAは、任意のNA、例えばN1~N11のいずれかの由来であってもよく、HAのvRNA産生用のDNAは、任意のHA、例えばH1~H18のいずれかの由来であってもよい。一実施態様では、vRNA産生用のDNAは、B型またはC型インフルエンザウイルス用であってよい。NAおよびHAのvRNA産生用のDNAは、異なる株または単離株(6:1:1合併結合変異体)由来、または同じ株または単離株(6:2合併結合変異体)由来であってもよく、あるいはNAは内部遺伝子用のDNAと同じ株または単離株由来(7:1合併結合変異体)であってもよい。mRNA産生用のベクターは、修飾NAをコードするベクター、インフルエンザウイルスPAをコードするベクター、インフルエンザウイルスPB1をコードするベクター、インフルエンザウイルスPB2をコードするベクター、およびインフルエンザウイルスNPをコードするベクター、場合によってはNP、NS、M1およびM2などのM、HA、またはNAをコードする1つ以上のベクターを含んでもよい。ウイルスタンパク質をコードするベクターはさらに、転写終結配列を含んでもよい。
【0113】
他のPR8分離株またはワクチンウイルスからの内部遺伝子を有する他の合併結合変異体は、本発明の組換え合併結合変異ウイルスに用いてもよい。特に、UW-PR8 PB1、PB2、PA、NP、およびM(「5」)とPR8 (Cam) NS(「1」)を有する5:1:2合併結合変異体;UW-PR8 (修飾) NA、PB1、PB2、PA、NP、およびM(「6」)とPR8 (Cam) NS(「1」)を有する6:1:1合併結合変異体;ならびにUW-PR8 PB1、PB2、PA、NP、M、(修飾) NA、およびNS(「7」)を有する7:1合併結合変異体を用いてもよい。
【0114】
修飾可能なノイラミニダーゼは、限定はされないが、本明細書に記載の配列を含む任意の配列を有してもよい。しかし場合によっては、修飾されたノイラミニダーゼは、本明細書で配列によって記載される対応するポリペプチドと実質的に同じ活性を有してもよい。本明細書で使用される「実質的に同じ活性」は、本明細書に記載の対応するタンパク質の約0.1%、1%、10%、30%、50%、90%、例えば最大100%、またはそれ以上の活性、あるいは約80%、90%、またはそれ以上のタンパク質濃度である検出可能なタンパク質濃度を含む。一実施態様では、核酸は、本明細書に記載の配列のうちの1つによってコードされたポリペプチドに対して、実質的に同一である、例えばそのポリペプチドに対して80~99の間の任意の整数を含む少なくとも80%、例えば90%、92%、95%、97%、98%、または99%の連続するアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドをコードする。一実施態様では、単離かつ/あるいは精製された核酸分子は、本明細書に記載の核酸配列のうちの1つに対して、実質的に同一である、例えばその核酸配列に対して50~100の間の任意の整数を含む少なくとも50%、例えば60%、70%、80%、または90%、あるいはそれ以上の連続する核酸配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。一実施態様では、核酸はまた、本明細書に記載のポリペプチドに対して、80~99の間の任意の整数を含む少なくとも80%、例えば90%、92%、95%、97%、98%、または99%の連続するアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドをコードする。
【0115】
マスターワクチン株(PR8UW)の例示的なウイルス配列は、以下の通りである。
【化7】
【0116】
【化8】
【0117】
【化9】
【0118】
【化10】
【0119】
【化11】
【0120】
【化12】
【0121】
別のマスター株(Cambridge)の内部断片の配列を以下に示す。
【化13】
【0122】
【化14】
【0123】
【化15】
【0124】
【化16】
【0125】
【化17】
【0126】
【化18】
【0127】
例示的な実施態様
一実施態様では、安定化NA四量体を有するウイルス粒子を形成するNA単量体をコードするノイラミニダーゼ(NA)ウイルス断片を含む単離された組換えインフルエンザウイルスが提供される。一実施態様では、組換えインフルエンザウイルスは、未修飾のNAストークを有するNAを有するインフルエンザウイルスに対比して、安定化された四量体を生成する修飾NAストークを有する。一実施態様では、修飾NAストークは欠失を有する。一実施態様では、修飾NAストークは挿入を有する。一実施態様では、修飾NAストークは、未修飾のストークに対比して少なくとも1つのアミノ酸置換を有する。一実施態様では、修飾ストークは、欠失、挿入、または少なくとも1つのアミノ酸置換のうちの2つ以上を有する。一実施態様では、修飾NAストーク中の少なくとも1つの置換はシステイン置換である。一実施態様では、修飾NAストークは少なくとも2つの置換を有する。一実施態様では、NAは、N1の付番に対して48位にシステインを有する。一実施態様では、NAは、N1の付番に対して50位にシステインを有する。一実施態様では、NAは、N1の付番に対して48位および50位にシステインを有する。一実施態様では、NAストークは、膜貫通ドメインのC末端から1~10残基の範囲内で修飾される。一実施態様では、NAストークは、膜貫通ドメインのC末端から10~20残基の範囲内で修飾される。一実施態様では、NAストークは、膜貫通ドメインのC末端から20~30残基の範囲内で修飾される。一実施態様では、NAストークは、膜貫通ドメインのC末端から30~50残基の範囲内で修飾される。
【0128】
例えば、組換えインフルエンザウイルスは、N1のNAを有してもよく、そのN2は、ストーク領域内に1つ、または例えば少なくとも1つの残基を間に入れて間隔をあけて配置された2つのシステインを有してもよく、例えば、そのストークは、以下の配列を有してもよく:
【化19】
例えば以下の配列に修飾される可能性がある:
【化20】
【0129】
一実施態様では、有効量の組換えインフルエンザウイルスまたはその一部を含むワクチンが提供される。一実施態様では、ワクチンは全ウイルスワクチンである。一実施態様では、ワクチンはスプリットウイルスワクチンである。一実施態様では、ワクチンはサブユニットワクチンである。一実施態様では、ワクチンはさらにアジュバントを含む。一実施態様では、ワクチンはさらに薬学的に許容可能な担体を含む。一実施態様では、担体は鼻腔内投与または筋肉内投与に適する。一実施態様では、ワクチンはさらに、少なくとも1つの他のインフルエンザウイルス単離株を含む。一実施態様では、ワクチンはさらに、少なくとも1つの他の微生物または微生物の抗原、例えば非インフルエンザウイルス、細菌または真菌の抗原を含む。
【0130】
一実施態様では、安定化NA四量体を有するインフルエンザウイルスを調製する方法が提供される。この方法は、安定化NA四量体を有するインフルエンザウイルスを生成するのに有効な量で、安定化NA四量体を有するウイルス粒子を形成するNA単量体をコードするインフルエンザウイルスNA断片用の核酸、インフルエンザウイルスPA断片用の核酸、インフルエンザウイルスPB1断片用の核酸、インフルエンザウイルスPB2断片用の核酸、インフルエンザウイルスNP断片用の核酸、インフルエンザウイルスNS断片用の核酸、インフルエンザウイルスM断片用の核酸、およびインフルエンザウイルスHA断片用の核酸を含む1種以上のベクターを細胞に接触させる工程を含む。一実施態様では、NAは、N1、N2、N3、またはN5である。一実施態様では、細胞は哺乳類細胞である。一実施態様では、細胞は、293T、PER.C6(登録商標)、MDCK、MvLu1、CHO、またはVeroの各細胞、あるいは鳥類の卵中の細胞である。
【0131】
一実施態様では、インフルエンザワクチンを生成する方法が提供され、この方法は、組換えウイルスを提供する工程;およびウイルスをアジュバントと複合する工程、あるいはウイルスを不活化する薬剤でウイルスを処理する工程を含む。一実施態様では、この方法は、ウイルスの用量を容器に分注する工程を含む。一実施態様では、アジュバントは、免疫刺激性DNA配列、細菌由来成分、アルミニウム塩(ミョウバン)、またはMF59およびAS03などのスクアレン水中油型エマルジョン系を含む。一実施態様では、薬剤はウイルスを化学的に不活化する。一実施態様では、薬剤はホルマリンまたはβプロピオラクトンを含む。一実施態様では、薬剤は界面活性剤を含む。一実施態様では、界面活性剤は非イオン性界面活性剤である。一実施態様では、界面活性剤は陽イオン性界面活性剤である。一実施態様では、界面活性剤は陰イオン性界面活性剤である。一実施態様では、界面活性剤は、CTAB、デオキシコール酸アンモニウム、トリトン、SDS、ネオドール23-6、またはデオキシコール酸ナトリウムを含む。一実施態様では、薬剤はエーテルを含む。一実施態様では、この方法はさらに、HAおよびNAを他のウイルス成分から分離する工程を含む。
【0132】
一実施態様では、インフルエンザウイルスを調製する方法が提供され、この方法は、子孫ウイルスを生むのに有効な量で、組換えウイルスを細胞に接触させる工程を含む。一実施態様では、ウイルスを鳥類の卵に接触させる。一実施態様では、細胞は哺乳類細胞である。一実施態様では、ウイルスのHAは、H1、H3、H5またはH7である。
【0133】
さらに安定化NA四量体を調製する方法が提供される。この方法は、安定化NA四量体を有するウイルス粒子を形成するNA単量体をコードするインフルエンザウイルスNA断片用の核酸およびインフルエンザウイルスHA用の核酸を含む1つ以上のベクターを細胞に接触させる工程を含む。一実施態様では、この方法はさらに、細胞からNAおよびHAを単離する工程を含む。一実施態様では、細胞は昆虫細胞である。一実施態様では、細胞は、CHO、MDCK、Vero、またはEB66の各細胞である。
【0134】
また上記の方法によって調製された単離ウイルスが提供される。
【0135】
一実施態様では、鳥類または哺乳類を免疫化する方法が提供され、この方法は、鳥類または哺乳類に有効量の上述のウイルスを有する組成物を投与する工程を含む。一実施態様では、組成物は、少なくとも1つの他の異なるインフルエンザウイルスを含む。一実施態様では、哺乳類はヒトである。一実施態様では、組成物は、鼻腔内にまたは注射によって投与される。
【0136】
さらに卵中でウイルスを継代培養する工程を含む方法が提供される。
【実施例0137】
本発明は、以下の非限定的な実施例によって説明される。
【0138】
実施例1
ノイラミニダーゼ(NA)は、インフルエンザウイルスの主要な膜貫通糖タンパク質の1種である。NAに対する抗体は、インフルエンザウイルス感染の予防に重要な役割を果たすことが示唆されている。しかし卵で増殖させたインフルエンザウイルスを不活化しかつウイルス抗原を精製して生成された現状のインフルエンザワクチンでは、抗NA抗体の産生を効率的に誘発できない。抗NA抗体の産生が低い可能性のある理由として、ホモ四量体として機能するNAタンパク質の構造不安定性が考えられ、抗原精製の過程でNA四量体が破壊されるように見受けられる。従ってワクチン中に含まれるNAの量は、抗NA抗体の産生を誘発するのに不十分である。
【0139】
NAの四量体構造を安定化させる方法の構築により、この問題を解決できる。NA中のアミノ酸48Cおよび50Cが、過去に生体外でNAに導入されたこと(Silva et al., 2013)はあったが、これらのアミノ酸がインフルエンザウイルスの複製あるいは複製の効率に及ぼす影響は不明であった。本明細書に説明のように、NA-48C変異またはNA-50C変異のいずれか、あるいは両方の変異を含む組換えインフルエンザウイルスは、安定化NA四量体を発現しかつ効率的に複製された。
【0140】
方法
高収量のA/Puerto Rico/8/1934 (H1N1)の骨格中にA/Singapore/GP1908/2015 (H1N1) pdm09由来のHAおよびNA遺伝子断片を含む6+2合併結合変異インフルエンザウイルスを、逆遺伝学を用いて調製して37℃のhCK細胞中で増殖させた。NA-T48CあるいはNA-N50Cのいずれか、または両方の変異を有する変異ウイルスを生成した。hCK細胞に1のMOI(感染倍率)でこれらのウイルスを感染させた。細胞を、感染後9時間目にDTTの存在または不在の条件で溶解して、NAをウェスタンブロットによって検出した。
【0141】
結果
DTTの存在下では、NA単量体を表示するバンドのみが検出された。DTTの不在下では、WT-NA二量体を表示するバンドが検出された。変異ウイルスでは、四量体のNA-T48C、NA-N50C、NA-T48C/N50Cを表示するバンドが検出された。この結果は、NA-T48C、NA-N50C、またはその両方によって、四量体NAの比率が増大したことを示している。この安定化の検出は、シアリダーゼ活性などの任意の方法で実施してもよい。
【0142】
結論
NA-48C変異およびNA-50C変異は、単独でまたは組合せで、NA四量体構造を安定化させることができる。従ってこれらのアミノ酸変異は、現状のワクチン株によって誘発されるNA抗体の量に比較して、より多量のNA抗体を誘発できる新たなワクチン株を構築するのに有用である。
【0143】
参考文献
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【0144】
全ての刊行物、特許、および特許出願が、参照により本明細書に組み込まれる。上述の明細書では、本発明はその特定の好ましい実施態様に関連して述べられ、かつ多くの詳細な内容が説明の目的で提示されているが、この発明は、さらなる実施態様の影響を受け入れてもよく、本明細書に記載された詳細の一部分は、この発明の基本の原理から逸脱することなく相当な程度まで変更できることは、当業者には明白である。
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7-1】
図7-2】
図8-1】
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図9-1】
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図10
【配列表】
2024161055000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-08-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定化されたノイラミニダーゼ(NA)四量体を有するウイルス粒子を形成するNA単量体をコードするNAウイルス断片を含む、単離された組換えインフルエンザウイルス。
【外国語明細書】