(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161086
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241108BHJP
B41J 2/17 20060101ALI20241108BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20241108BHJP
B41J 2/04 20060101ALI20241108BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20241108BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
B41J2/01 303
B41J2/17 207
B41J2/165 301
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/04
B05C5/00 101
B05C11/10
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024143219
(22)【出願日】2024-08-23
(62)【分割の表示】P 2020050844の分割
【原出願日】2020-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】北岡 聡
(57)【要約】
【課題】吐出口を液体受け面または接触部側に移動させることなく、吐出口から液体受け面に液体を吐出できるまたは吐出口に接触部を接触できるとともに、液体受け面または接触部が対象物に衝突することを回避する液体吐出装置を提供すること。
【解決手段】液体吐出装置1000は、被描画物100に向けてインクを吐出するノズル302と、ノズル302から吐出されたインクを受けるインク受け面24およびノズル302に接触するワイパ3を保持し、インク受け面24またはワイパ3がノズル302に対向する位置と、インク受け面24およびワイパ3がノズル302に対向しない位置の間で、移動可能なワイパユニット4と、ノズル302をZ軸方向に移動可能に保持するZ軸レール103または筐体8と、を備える。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に向けて液体を吐出する吐出口と、
前記吐出口から吐出された前記液体を受ける液体受け面または前記吐出口に接触する接触部を保持し、前記液体受け面または前記接触部が前記吐出口に対向する位置と、前記液体受け面または前記接触部が前記吐出口に対向しない位置の間で、移動可能な移動部と、
前記吐出口を前記吐出する方向に移動可能に保持する保持部と、
を備えた液体吐出装置。
【請求項2】
前記移動部は、前記液体受け面および前記接触部を保持する請求項1記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記吐出口を保持し、前記移動部を移動可能に支持する筐体を備えた請求項1または2記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記筐体は、前記保持部であって、前記吐出する方向において、前記移動部に対して前記吐出口を移動可能に保持する請求項3記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記吐出口と前記移動部とを有する液体吐出ユニットを備え、
前記保持部は、前記液体吐出ユニットを前記吐出する方向および前記吐出する方向と直交する方向に移動可能に保持する請求項1~3の何れか記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記吐出口と前記移動部と前記保持部とを有する液体吐出ユニットを備え、
前記液体吐出ユニットを前記吐出する方向と直交する方向に移動可能に保持するガイド部を備える請求項1~4の何れか記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記吐出口を前記吐出する方向と直交する移動方向に移動させながら、前記吐出口から前記液体を吐出させる制御部を備え、
前記制御部は、前記吐出口を前記移動方向に移動させている途中で、第1の条件を満たす場合、前記吐出口を前記移動方向に移動させることを停止するとともに、前記吐出口から前記液体を吐出させることを停止し、その後、第2の条件を満たす場合、前記吐出口が前記移動方向に移動することを停止した停止位置から、前記吐出口を前記移動方向に移動させることを再開するとともに、前記吐出口から前記液体を吐出させることを再開する請求項1~6の何れか記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記吐出口を移動させることを停止した場合、前記吐出口を前記吐出する方向と反対方向に移動させるとともに、前記液体受け面または前記接触部が前記吐出口に対向する位置になるように、前記移動部を移動させる請求項7記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記吐出口を有するヘッドを備え、
前記ヘッドは、液室と、前記液室と前記吐出口の間の流路を開閉する開閉部材と、前記開閉部材を駆動する圧電素子と、を収納するハウジングを備える請求項1~8の何れか記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、原動歯車33を回転すると、キャリッジ退避機構12は退避するとともにキャッピングレバ-16は回動して、クリ-ナ20は印字ヘッド7のノズル表面に付着したインク及びくず等の付着物をクリ-ニングし、キャップは該ノズルに当接してインク乾燥を防止するインクジェットプリンタが記載されている。
【0003】
特許文献2には、キャリッジ5は、被記録媒体Pとの接触を検出するジャム検出センサ16と、記録ヘッド10を移動させて、記録ヘッド10と被記録媒体Pの間の距離を可変する昇降手段と、を有し、検出手段が、接触を検出した場合に、走査手段によるキャリッジ5の走査を停止させる動作と、昇降手段により記録ヘッド10を被記録媒体Pとの間の距離を大きくさせる動作と、を同時に行う液体を吐出する装置が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、吐出口を液体受け面または接触部側に移動させることなく、吐出口から液体受け面に液体を吐出できるまたは吐出口に接触部を接触できるとともに、液体受け面または接触部が対象物に衝突することを回避する液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る液体吐出装置は、対象物に向けて液体を吐出する吐出口と、吐出口から吐出された液体を受ける液体受け面または吐出口に接触する接触部を保持し、液体受け面または接触部が吐出口に対向する位置と、液体受け面または接触部が吐出口に対向しない位置の間で、移動可能な移動部と、吐出口を吐出する方向に移動可能に保持する保持部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、吐出口を液体受け面または接触部側に移動させることなく、吐出口から液体受け面に液体を吐出できるまたは吐出口に接触部を接触できるとともに、液体受け面または接触部が対象物に衝突することを回避する液体吐出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る液体吐出装置の説明図である。
【
図2】同実施形態におけるキャリッジの正面説明図である。
【
図3】同実施形態におけるキャリッジの平面説明図である。
【
図4】同実施形態におけるキャリッジの側面説明図である。
【
図6】同実施形態におけるヘッドの一例の説明に供する1つのノズル部分の断面説明図である。
【
図7】同実施形態におけるヘッドの動作説明に供する駆動電圧の一例の説明図である。
【
図8】同実施形態におけるヘッドに対する液体供給系の説明図である。
【
図9】同実施形態における描画動作の制御の説明に供するフロー図である。
【
図10】同実施形態におけるキャリッジの移動経路の説明図である。
【
図11】同実施形態における走査中の制御の説明に供するフロー図である。
【
図12】同実施形態におけるワイパユニットの説明図である。
【
図13】同実施形態におけるワイパユニットの一部説明図である。
【
図14】同実施形態におけるメンテ動作の制御の説明に供するフロー図である。
【
図15】同実施形態におけるメンテ動作の説明に供する図である。
【
図16】同実施形態の変形例に係るワイパユニットの斜視図である。
【
図17】変形例におけるキャリッジの斜視図である。
【
図18】変形例におけるキャリッジの平面図である。
【
図20】変形例におけるメンテ動作時のキャリッジの斜視図である。
【
図21】変形例におけるメンテ動作開始時のキャリッジの平面図である。
【
図22】変形例におけるメンテ動作中のキャリッジの平面図である。
【
図23】同実施形態の第2の変形例に係るワイパユニットの斜視図である。
【
図24】第2の変形例におけるメンテ動作の制御の説明に供するフロー図である。
【
図25】第2の変形例におけるメンテ動作の説明に供する図である。
【
図26】第2の変形例におけるメンテ動作の説明に供する他の図である。
【
図27】本発明の実施形態の第3の変形例に係る液体吐出装置で航空機を描画対象物として描画するときの斜視説明図である。
【
図28】第3の変形例に係る液体吐出装置の斜視説明図である。
【
図29】本発明の実施形態の第4の変形例に係る液体吐出装置の斜視説明図である。
【
図30】第4の変形例に係る液体吐出装置の駆動部の斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係る液体吐出装置の説明図である。
図1(a)は、液体吐出装置の右側面図、
図1(b)は、液体吐出装置の平面図である。
【0010】
液体吐出装置1000は、対象物の一例である被描画物100に対向して設けられ、被描画物100に向けて液体の一例であるインクを吐出するキャリッジ1を備える。キャリッジ1は、対象物に向けて液体を吐出する液体吐出ユニットの一例である。
【0011】
液体吐出装置1000は、キャリッジ1をZ軸方向に移動可能に保持するZ軸レール103と、Z軸レール103をX軸方向に移動可能に保持するX軸レール101と、X軸レール101をY軸方向に移動可能に保持するY軸レール102を備える。X軸レール101、Y軸レール102、およびZ軸レール103は、キャリッジ1を移動可能に保持するガイド部および保持部の一例である。
【0012】
また、液体吐出装置1000は、キャリッジ1をZ軸レール103に沿ってZ軸方向に移動させるZ方向駆動部92と、Z軸レール103をX軸レール101に沿ってX軸方向に移動させるX方向駆動部72と、X軸レール101をY軸レール102に沿ってY軸方向に移動させるY方向駆動部82と、を備える。
【0013】
これにより、液体吐出装置1000は、キャリッジ1をX軸、Y軸、およびZ軸方向に移動させながら、被描画物100にインクを吐出して描画することができる。なお、被描画物100は、
図1においては平面板の形態として記載しているが、車やトラック、航空機などの車両のボディなどのように鉛直に近い面もしくは曲率半径の大きい面であれば曲面でもよい。
【0014】
図2は、本実施形態におけるキャリッジの正面説明図である。
図3は、同実施形態におけるキャリッジの平面説明図である。
図4は、同実施形態におけるキャリッジの側面説明図である。
【0015】
キャリッジ1は、Y、M、C、Kの各色のインクを吐出するヘッド300Y、300M、300C、および300Kを備える。ヘッド300Y、300M、300C、および300Kのそれぞれは、複数のノズル302を有するノズル面302aを備える。ノズル302は、対象物に向けて液体を吐出する吐出口の一例であり、ノズル面302は液体吐出面の一例である。
【0016】
キャリッジ1は、ノズル面302aが水平面と交差するように、かつ複数のノズル302の配列方向がX軸方向に対して傾斜するように、ヘッド300Y、300M、300C、および300Kを固定するヘッド固定板7を備える。これにより、ノズル302は、重力方向と交差する方向にインクを吐出する。
【0017】
具体的には、ヘッド300Y、300M、300C、および300Kは、ノズル面302aが水平面と直交するように配置され、これにより、ノズル302は水平方向にインクを吐出する。
【0018】
キャリッジ1は、さらに、インク受け面24、ワイパ3、洗浄液供給部5、および洗浄液回収部材6を有するワイパユニット4を備える。
【0019】
インク受け面24は、ノズル302から吐出されたインクを受ける液体受け面の一例である。
【0020】
ワイパ3は、インク受け面24がノズル302に対向する状態で、ワイパユニット4が移動するときに、ノズル302およびノズル面302aに接触し、ノズル面302aに平行な方向に延びる接触部の一例である。ワイパ3は、また、インク受け面24がノズル302に対向する状態で、インク受け面24よりもノズル302側に突出し、インク受け面24に平行な方向に延びる突出部の一例でもある。
【0021】
洗浄液供給部5は、可撓性の管である洗浄液供給チューブ11から洗浄液を供給され、ワイパ3およびインク受け面24に上方から洗浄液を供給する。洗浄液回収部材6は、インク受け面24の下方に配置され、インク受け面24が受けたインクを保持する液体保持部の一例である。洗浄液回収部材6は、また、ワイパ3およびインク受け面24に供給された洗浄液を保持する洗浄液保持部の一例でもある。そして、洗浄液回収部材6は、可撓性の管である洗浄液回収チューブ12を介してインクおよび洗浄液を排出する。
【0022】
キャリッジ1は、ヘッド固定板7の上部に固定された上部ガイド板8Hと、ヘッド固定板7の下部に固定された下部ガイド板8Lと、ワイパユニット4の上部に固定された上部板4Hと、ワイパユニット4の下部に固定された下部板4Lと、を備える。ヘッド固定板7、ガイド板8Hおよび8Lは、ノズル302を保持し、ワイパユニット4を移動可能に支持する筐体の一例である。
【0023】
上部ガイド板8Hには、ガイド溝9が形成されており、下部ガイド板8Lにも同様のガイド溝が形成されている。上部板4Hおよび下部板4Lには、それぞれ上部ガイド板8Hおよび下部ガイド板8Lに向けて突出するピン10が設けられている。
【0024】
さらに、キャリッジ1は、モータ13と、モータ13と同軸で回転するローラ13Aと、ローラ13Aに掛け回されたベルト14Aと、ベルト14Aが掛け回されたローラ16Aと、ローラ16Aを同軸で支持する回転軸16と、回転軸16に同軸で支持されるローラ16Bと、ローラ16Bに掛け回されたベルト14Bと、ベルト14Bが掛け回されたローラ15Bおよびローラ18Bと、ワイパユニット4の上部板4Hとベルト14Bを連結する上部取付部4Bと、を備える。
【0025】
また、キャリッジ1は、回転軸16に同軸で支持されるローラ16Cと、ローラ16Cに掛け回されたベルト14Cと、ベルト14Cが掛け回されたローラ15Cおよびローラ18Cと、ワイパユニット4の下部板4Lとベルト14Cを連結する下部取付部4Cと、を備える。
【0026】
そして、キャリッジ1は、上部取付部4Bが右側(X軸方向負側)端部に位置することを検知するセンサ17aと、下部取付部4Cが左側(X軸方向正側)端部に位置することを検知するセンサ17bと、を備える。本実施形態では、センサ17aによりワイパユニット4が待機位置(ホームポジション)にあることを検知し、センサ17bによりワイパユニット4が移動終了位置(折返し位置)にあることを検知する。
【0027】
以上の構成により、モータ13を駆動すると、ベルト14Aを介してベルト14Bおよびベルト14Cに回転駆動力が伝達され、ベルト14Bおよびベルト14Cに連結されたワイパユニット4が移動する。その際、ピン10が、ガイド溝9の内側を摺動して移動することにより、ガイド溝9の形状に沿った軌跡でワイパユニット4が移動する。
【0028】
図2に示すように、ワイパユニット4は、左右方向(X軸方向)に移動する際に、姿勢が変化しないように、水平方向に(Y軸方向の位置を変えないように)移動する。すなわち、ワイパユニット4は、水平面に対する傾きが変化しないように、かつ高さが変化しないように、左右方向(X軸方向)に移動する。ここで、洗浄液回収部材6はワイパユニット4に対して位置が固定されているため、ワイパユニット4が左右方向(X軸方向)に移動する際、洗浄液回収部材6は、水平面に対する傾きが変化せず、かつ高さが変化しない。
【0029】
そして、
図3に示すように、ワイパユニット4が右側から左側(X軸方向正側)に移動するのに伴い、ワイパユニット4が奥側から前側(Z軸方向正側)に移動するように、ガイド溝9が形成されている。
【0030】
ワイパユニット4は、待機位置ではノズル302よりも奥側(Z軸方向負側)に位置しており、ノズル302には対向していない。
【0031】
そして、ワイパユニット4は、左側(X軸方向正側)に移動するのに伴い、ノズル302よりも前側(Z軸方向正側)に移動し、さらに左側(X軸方向正側)に移動することにより、ノズル302に対向する。この状態で、ワイパ3はノズル面302aに接触し、インク受け面24は、ノズル302から吐出されたインクを受けることが可能になる。
【0032】
ワイパユニット4が、ノズル302に対向する状態で左側(X軸方向正側)に移動することにより、ワイパ3がノズル面302aおよびノズル302をワイピングしてクリーニングする。
【0033】
さらに、ワイパユニット4は、左側(X軸方向正側)に移動すると、ノズル302に対向しなくなる。
【0034】
そして、ワイパユニット4は、移動終了位置まで移動すると、今度は右側(X軸方向負側)に移動して待機位置に戻る。
【0035】
すなわち、ワイパユニット4は、ワイパ3およびインク受け面24がノズル302に対向する位置と、ワイパ3およびインク受け面24がノズル302に対向しない位置の間で、移動可能な移動部の一例である。さらに、ワイパユニット4は、ワイパ3がノズル面302aに対向する位置において、ワイパ3が水平方向に移動するように、移動可能である。
【0036】
以上のように、キャリッジ1は、被描画物100に向けてインクを吐出するノズル302と、ノズル302から吐出されたインクを受けるインク受け面24と、インク受け面が受けたインクを保持する洗浄液回収部材6と、インク受け面24および洗浄液回収部材6を保持し、インク受け面24がノズル302に対向する位置と、インク受け面24がノズル302に対向しない位置の間で、水平面に対する洗浄液回収部材6の傾きが変化しないように、移動可能なワイパユニット4と、を備える。
【0037】
これにより、インク受け面24がノズル302に対向する位置に移動することにより、ノズル302がインク受け面24側に移動することなく、ノズル302からインク受け面24にインクを吐出できる。また、インク受け面24がノズル302に対向しない位置に移動するときに、インク受け面24が受けたインクが揺れて洗浄液回収部材6から溢れることを低減できる。
【0038】
そして、液体吐出装置1000は、キャリッジ1と、
図1で説明したように、キャリッジ1を移動可能に保持するX軸レール101、Y軸レール102、およびZ軸レール103を備える。
【0039】
これにより、キャリッジ1は、X軸、Y軸、およびZ軸方向に移動しながら、被描画物100に向けてインクを吐出することができる。また、液体吐出装置1000内でのキャリッジ1の位置にかかわらず、必要なときに、インク受け面24がノズル302に対向する位置に移動することにより、ノズル302がインク受け面24側に移動することなく、すなわちキャリッジ1が移動することなく、ノズル302からインク受け面24にインクを吐出できる。
【0040】
すなわち、位置が固定されたインク受け面24に向けてキャリッジ1が移動する場合に比べて、キャリッジ1が移動する時間を短縮できるため、少ないダウンタイムで、高品質描画を継続して行うことができる。
【0041】
ワイパユニット4は、洗浄液回収部材6の高さが変化しないように、移動可能である。これにより、ワイパユニット4が移動するときに、洗浄液回収部材6が保持するインクは、高さ方向の力を受けないため揺れにくく、洗浄液回収部材6から溢れにくくなる。
【0042】
ノズル302は、重力方向と交差する方向にインクを吐出し、洗浄液回収部材6は、インク受け面24の下方に配置される。これにより、洗浄液回収部材6は、インク受け面に向けて吐出された後に重力により落下したインクを保持することができる。
【0043】
洗浄液回収部材6は、インク受け面24に供給された洗浄液を保持する。これにより、インク受け面24を洗浄することができるとともに、インク受け面24がノズル302に対向しない位置に移動するときに、インク受け面2が受けた洗浄液が洗浄液回収部材6から溢れないようにすることができる。
【0044】
ワイパユニット4は、インク受け面24に洗浄液を供給する洗浄液供給部5を備える。これにより、インク受け面24に洗浄液を確実に供給して、インク受け面24を確実に洗浄することができる。
【0045】
また、キャリッジ1は、被描画物100に向けてインクを吐出するノズル302を有するノズル面302aと、ノズル面302aに接触し、ノズル面302aに平行な方向に延びるワイパ3と、ワイパ3に供給された洗浄液を保持する洗浄液回収部材6と、ワイパ3および洗浄液回収部材6を保持し、ワイパ3がノズル面302aに対向する位置と、ワイパ3がノズル面302aに対向しない位置の間で、水平面に対する洗浄液回収部材6の傾きが変化しないように、移動可能なワイパユニット4と、を備える。
【0046】
これにより、ワイパ3がノズル面302aに対向する位置に移動することにより、ノズル面302aがワイパ3側に移動することなく、洗浄液が供給されたワイパ3が接触してノズル面302aをワイピングしてクリーニングできる。また、ワイパ3がノズル面302aに対向しない位置に移動するときに、洗浄液が揺れて洗浄液回収部材6から溢れることを低減できる。
【0047】
そして、液体吐出装置1000は、キャリッジ1と、
図1で説明したように、キャリッジ1を移動可能に保持するX軸レール101、Y軸レール102、およびZ軸レール103を備える。
【0048】
これにより、キャリッジ1は、X軸、Y軸、およびZ軸方向に移動しながら、被描画物100に向けてインクを吐出することができる。また、液体吐出装置1000内でのキャリッジ1の位置にかかわらず、必要なときに、ワイパ3がノズル面302aに対向する位置に移動することにより、ノズル面302aがワイパ3側に移動することなく、すなわちキャリッジ1が移動することなく、洗浄液が供給されたワイパ3が接触してノズル面302aをワイピングしてクリーニングできる。
【0049】
すなわち、位置が固定されたワイパ3に向けてキャリッジ1が移動する場合に比べて、キャリッジ1が移動する時間を短縮できるため、少ないダウンタイムで、高品質描画を継続して行うことができる。
【0050】
ワイパユニット4は、洗浄液回収部材6の高さが変化しないように、移動可能である。これにより、ワイパユニット4が移動するときに、洗浄液回収部材6が保持する洗浄液は、高さ方向の力を受けないため揺れにくく、洗浄液回収部材6から溢れにくくなる。
【0051】
ワイパユニット4は、洗浄液回収部材6の高さが変化しないように、移動可能である。これにより、ワイパユニット4が移動するときに、洗浄液回収部材6が保持する洗浄液は、高さ方向の力を受けないため、洗浄液回収部材6から溢れにくくなる。
【0052】
キャリッジ1は、ノズル面302aを保持し、ワイパユニット4を移動可能に支持するヘッド固定板7、ガイド板8Hおよび8L(筐体の一例)を備える。
【0053】
ワイパユニット4は、ワイパ3に洗浄液を供給する洗浄液供給部5を備える。これにより、ワイパ3に洗浄液を確実に供給して、ノズル面302aを確実にワイピングしてクリーニングできる。
【0054】
ノズル面302aは、水平面と交差する向きに配置され、ワイパ3は、下方に延びており、洗浄液供給部5は、ワイパ3の上方から洗浄液を供給する。これにより、重力を用いてワイパ3の下方にも洗浄液を確実に供給して、ノズル面302aの下方を確実にワイピングしてクリーニングできる。
【0055】
【0056】
液体吐出装置1000は、加圧された空気を供給するコンプレッサ230およびエアーレギュレータ332と、インク311を貯留するインクタンク330を備える。これにより、コンプレッサ230およびエアーレギュレータ332からインクタンク330へ加圧空気が供給可能である。ここで、コンプレッサ230は加圧空気供給部の一例であり、インクタンク330は液体保持部の一例である。
【0057】
また、液体吐出装置1000は、コンプレッサ230と接続されるエアーレギュレータ232と、洗浄液220を貯留する洗浄液タンク221と、洗浄液タンク221と洗浄液供給部5の間に設けられる開閉弁234を備える。これにより、コンプレッサ230およびエアーレギュレータ232から洗浄液タンク221へ加圧空気が供給可能である。
【0058】
さらに、液体吐出装置1000は、真空発生器242と、コンプレッサ230および真空発生器242の加圧ポートに接続される電磁弁244と、真空発生器242のドレンポートに接続される廃液タンク240を備え、真空発生器242の吸引ポートには、洗浄液回収チューブ12が接続される。真空発生器242は負圧発生部の一例であり、廃液タンク240は洗浄液回収部の一例である。
【0059】
そして、液体吐出装置1000は、
図2~4に示したように、センサ17aおよび17bの検知信号に基づきモータ13を制御する制御部500と、インクに含まれるアセトン等の引火性の溶媒の蒸気濃度を検出する濃度検出部335と、を備える。制御部500は、濃度検出部335により検出される溶媒の蒸気濃度を入力し、
図1に示したX方向駆動部72、Y方向駆動部82およびZ方向駆動部92を制御してキャリッジ1をX軸、Y軸、およびZ軸方向に移動させるとともに、ヘッド300、開閉弁234および電磁弁244を制御する。
【0060】
制御部500は、例えば、全体の制御を司るCPUと、CPUに描画動作等の制御を実行させるためのプログラム、その他の固定データを格納するROMと、描画データ等を一時格納するRAMと、PC等のホストから描画データ等を受信するときに使用するデータ及び信号の送受を行うためのI/Fと、により構成される。
【0061】
以上の構成において、制御部500がヘッド300を制御することにより、インクタンク330からヘッド300へ加圧されたインクが供給される。
【0062】
また、制御部500が開閉弁234を開くことにより、洗浄液タンク221から洗浄液供給部5へ加圧された洗浄液が供給される。
【0063】
そして、制御部500が電磁弁244を開くことにより、コンプレッサ230が真空発生器242に加圧空気を送り込むと、真空発生器242の吸引ポートに負圧が発生し、洗浄液回収部材6内の液体が、洗浄液回収チューブ12を介して吸引されて廃液タンク240に排出される。
【0064】
以上のように、液体吐出装置1000は、洗浄液回収チューブ12を介して洗浄液回収部材6と接続される廃液タンク240を備える。これにより、被描画物100に対するキャリッジ1の位置にかかわらず、洗浄液回収部材6が保持する洗浄液を廃液タンク240により回収することができる。
【0065】
液体吐出装置1000は、洗浄液回収チューブ12と廃液タンク240の間に、負圧を発生させる真空発生器242を備える。これにより、洗浄液回収部材6が保持する洗浄液を廃液タンク240により確実に回収することができる。
【0066】
液体吐出装置1000は、加圧された空気を供給するコンプレッサ230と、コンプレッサ230から供給される加圧空気を受けて、ノズル302に対して加圧されたインクを供給するインクタンク330と、を備え、真空発生器242は、コンプレッサ230から受けた加圧空気により負圧を発生させる。これにより、インクを供給するためのコンプレッサ230を用いて、洗浄液回収部材6が保持する洗浄液を廃液タンク240により確実に回収することができる。
【0067】
図6は、本実施形態におけるヘッドの一例の説明に供する1つのノズル部分の断面説明図である。なお、
図6(a)はノズルが閉じている状態、(b)はノズルが開いている状態をそれぞれ示している。
【0068】
ヘッド300は、先端部に液体を吐出するノズル302が設けられ、ノズル302の近傍に液体が注入される注入口303が設けられた中空状のハウジング304を備えている。
【0069】
ハウジング304内には、外部からの電圧の印加に応じて伸縮する圧電素子305と、ノズル302を開閉する弁体307と、弁体307と圧電素子305との間に配置され、弁体307をノズル302に対して進退させる弁体移動手段308とが配置されて収納されている。
【0070】
圧電素子305はケース315内に収容され、電圧印加用の一対の配線部材310a,310bが接続されて外部に引き出されている。圧電素子305は、弁体移動手段308を介して弁体307を駆動する。
【0071】
弁体307とハウジング304との間には、注入口303から注入される加圧液体の圧電素子305側への侵入を阻止する封止部材306が配置されている。これにより、注入口303から加圧液体が注入される液室309が形成される。すなわち、液室309は、ハウジング304に収納される。また、弁体307は、液室309とノズル302の間の流路を開閉する開閉部材の一例である。
【0072】
ハウジング304は、円筒状、角筒状などの筒状体であり、ノズル302及び注入口303以外は閉じられている。ノズル302は、ハウジング304の先端部に開けられた開口であり、インク311を吐出する。注入口303は、ノズル302の近傍のハウジング304の側面に設けられ、加圧された液体が連続的に供給される。
【0073】
圧電素子305は、ジルコニアセラミックス等を用いて形成されている。圧電素子305には、配線部材310a、310bを介して駆動波形(駆動電圧)が与えられる。
【0074】
封止部材306は、例えばパッキン、Oリング等であり、封止部材306を弁体307に外嵌することで、注入口303側から圧電素子305側へ液体が流入することを防止している。
【0075】
弁体移動手段308は、ゴム、軟質樹脂、薄い金属板等で形成された復元可能に変形可能な弾性部材で形成された断面略台形状の変形部308aを有する。変形部308aの断面略台形状の上辺に相当する連結部308eは弁体307の基端側の面に固定されている。変形部308aの断面略台形状の底辺に相当する長辺側は屈曲辺部308dと連結されている。屈曲辺部308dは、径方向中央部がガイド部308cと連結され、径方向中央部と端部との間が、一端がケース315に連結された固定部312と連結されている。
【0076】
この弁体移動手段308は、圧電素子305に所定の電圧が印加されて圧電素子305が伸張することにより、
図6(b)に示すように、ガイド部308cがノズル302側へ例えば距離eだけ移動し、屈曲辺部308dの中央部付近が押し込まれる。
【0077】
このとき、屈曲辺部308dは、ガイド部308cの外周側が固定部312に連結されているので、固定部312との連結部と起点として矢印方向に変位する。屈曲辺部308dが矢印方向に変位することで、変形部308aは拡開するので、弁体307との連結部308eが矢印方向に引き込まれる。
【0078】
この弁体移動手段308の変形部308aの変形により、変形部308aの連結部308eに固定された弁体307が距離dだけ引き込まれて、ノズル302が開かれる。
【0079】
つまり、圧電素子305の伸張によってガイド部308cがノズル302側へ距離eだけ移動することで、弁体307はガイド部308の移動方向(圧電素子305の伸長方向)と逆方向に距離でだけ移動する。
【0080】
ここで、弁体移動手段308の変形部308aにおける弁体307との連結部308eと屈曲辺部308dとの距離や屈曲辺部308dの長さを調整することにより、弁体307の移動量を圧電素子305の変位量よりも長くすることができる。
【0081】
つまり、弁体移動手段308は圧電素子305の変位量を増幅することができ、圧電素子305の変位量を少なくすることができるため、圧電素子305を小型化することができる。
【0082】
図7は、本実施形態におけるヘッドの動作説明に供する駆動電圧の一例の説明図である。
【0083】
ヘッド300は、圧電素子305に電圧が印加されていない状態においては、圧電素子305は収縮状態にあるので、弁体移動手段308には圧電素子305による力が加わらない状態にある。このとき、弁体移動手段308の変形部308aは、
図7(a)に示すように、膨らんだ状態(通常状態)になっており、弁体307は変形部308aの弾性力によってノズル302方向に付勢されている。したがって、ノズル302は弁体307の端面によって閉じられており、ノズル302からインク311が吐出されることはない。
【0084】
ここで、圧電素子305に対し、
図7(a)に示すように、波形P1の電圧(+EV)を印加することで、圧電素子305が伸長し、前述したように、弁体移動手段308の変形部308aが変形して、弁体307を
図6(b)に示す矢印方向に引き込む。これにより、弁体307がノズル302を開くので、注入口303から注入されている加圧液体がノズル302から吐出される。
【0085】
一方、
図7(b)に示すように、圧電素子305に対する波形P2の電圧(+EV)が途中で消失した波形P2が印加されたり、また、
図7(c)に示すように印加されるべき波形の電圧が停電等によって圧電素子305に印加されなかったりすることがある。
【0086】
このとき、圧電素子305は収縮した状態を保持するので、弁体移動手段308の変形部308aは
図6(a)に示す通常状態に戻っている。したがって、弁体307はノズル302を閉じた状態を維持するので、インク311がノズル302から吐出されることはない。
【0087】
これにより、停電等の場合であっても、インク311がノズル302から不用意に漏れ出したり、ノズル詰まりを生じたりすることを低減できる。
【0088】
図8は、本実施形態におけるヘッドに対する液体供給系の説明図である。
【0089】
次に、ヘッド300に対する液体供給系について
図8を参照して説明する。
図8は同液体供給系の説明図である。
【0090】
ここでは、各ヘッド300(300Y~300K)から吐出する各色のインク311が収容された密閉容器としてのインクタンク330(330Y~330K)を備えている。インクタンク330とヘッド300の注入口303とはそれぞれチューブ333を介して接続されている。
【0091】
一方、インクタンク330は、エアーレギュレータ332を含むパイプ331を介してコンプレッサ230と接続され、コンプレッサ230からの加圧空気が供給される。
【0092】
これにより、各ヘッド300の注入口303には各色の加圧されたインク311が供給され、前述したように、弁体307の開閉に応じてノズル302からインク311が吐出される。
【0093】
図9は、同実施形態における描画動作の制御の説明に供するフロー図である。
図10は、同実施形態におけるキャリッジの移動経路の説明図である。
図10(a)は正面図で、
図10(b)は平面図である。キャリッジ1の移動軌跡を1Rで示す。
【0094】
制御部500は、描画命令を受けると、
図1に示したX方向駆動部72、Y方向駆動部82およびZ方向駆動部92を制御して、キャリッジ1を
図10(a)に示す描画開始待機位置110に移動させる(PS1)。
【0095】
この描画開始待機位置110は、被描画物100の描画領域より-X方向に一定距離外れた位置で、被描画物100の描画面に対して描画時よりもZ方向に離れた位置となっている。
【0096】
制御部500は、この位置でメンテ動作を行う(PS2)。メンテ動作の詳細については後述する。
【0097】
制御部500は、その後、X方向駆動部72およびZ方向駆動部92を制御して、
図10(b)に示すようにキャリッジ1を描画面に接近させながら+X方向に移動させ、画像情報に基づいた描画動作を行う(PS3)。すなわち、制御部500は、キャリッジ1を+X方向に移動させながら、ノズル302からインクを吐出させる。
【0098】
制御部500は、キャリッジ1が描画領域を外れると、X方向駆動部72およびZ方向駆動部92を制御して、キャリッジ1を描画面から離れる方向(-Z方向)に移動させながら+X方向に移動させ、反転位置111で停止させる。
【0099】
ここで、制御部500は、描画終了かどうかを判定し(PS4)、描画データがあれば、Y方向駆動部82を制御してーY方向にキャリッジ1を移動させ(PS5)、PS2~PS4の動作を再び行う
【0100】
制御部500は、このPS2~PS5の動作を描画終了まで継続する。制御部500は、ステップPS4で描画終了と判定した場合、ステップPS2と同様にメンテ動作を行う(PS6)。これにより、ノズル面302aから残留インク等を除去できた状態で動作終了させることができる。
【0101】
図11は、同実施形態における走査中の制御の説明に供するフロー図である。
【0102】
制御部500は、
図9のステップPS3において、キャリッジ1を描画面に接近させながら+X方向に移動させ、画像情報に基づいた描画動作を行う際に、以下の制御を行う。
【0103】
制御部500は、濃度検出部335により検出されたアセトンの蒸気濃度が基準値1以上か確認し(PS31)、基準値1未満の場合は処理を終了する。基準値1は第1の閾値の一例である。
【0104】
制御部500は、アセトンの蒸気濃度が基準値1以上の場合は、X方向駆動部72を制御して、キャリッジ1を+X方向に移動させることを停止するとともに、ヘッド300を制御してノズル302からインクを吐出させることを停止する(PS32)。アセトンの蒸気濃度が基準値1以上であることは、第1の条件を満たすことの一例である。
【0105】
次に、制御部500は、Z方向駆動部92を制御してーZ方向にキャリッジ1を移動させることにより、ヘッド300およびワイパユニット4を一体でーZ方向に移動させる(PS33)。
【0106】
制御部500は、この位置で
図9のステップPS2と同様にメンテ動作を行う(PS33)。
【0107】
制御部500は、
図2および
図3で説明したように、モータ13を駆動してワイパユニット4を移動させ、ワイパ3がノズル面302aに対向し、かつインク受け面24がノズル302に対向する位置に、ワイパユニット4を移動させる。そして、制御部500は、ワイパ3がノズル面302aに対向する状態で、さらにワイパユニット4を移動させて、ワイパ3によりノズル面302aをワイピングするとともに、ノズル302からインク受け面24に向けてインクを吐出させる。なお、メンテ動作の詳細については後述する。
【0108】
制御部500は、濃度検出部335により検出されたアセトンの蒸気濃度が基準値2未満か確認する(PS35)。基準値2は、第2の閾値の一例であり、基準値1よりも低い値に設定される。
【0109】
制御部500は、アセトンの蒸気濃度が基準値2未満になっていない場合は、メンテ動作後所定時間経過したか確認し(PS36)、所定時間経過した場合には、ステップPS33に戻って再度メンテ動作を行う。
【0110】
制御部500は、アセトンの蒸気濃度が基準値2未満になった場合は、Z方向駆動部92を制御して+Z方向にキャリッジ1を移動させることにより、ヘッド300およびワイパユニット4を一体で+Z方向に移動させる(PS37)。アセトンの蒸気濃度が基準値2未満であることは、第2の条件を満たすことの一例である。
【0111】
そして、制御部500は、X方向駆動部72を制御して、ステップPS32でキャリッジ1が移動することを停止した停止位置から、キャリッジ1を+X方向に移動させることを再開するとともに、ヘッド300を制御してノズル302からインクを吐出させることを再開する(PS38)。
【0112】
本実施形態では、キャリッジ1は、
図2および
図3で説明したように、インク受け面24およびワイパ3を保持し、インク受け面24またはワイパ3がノズル302に対向する位置と、インク受け面24またはワイパ3がノズル302に対向しない位置の間で、移動可能なワイパユニット4を備え、液体吐出装置1000は、
図1で説明したように、ノズル302を含むキャリッジ1をZ軸方向に移動可能に保持するZ軸レール103と、を備える。
【0113】
これにより、ステップPS24で説明したように、インク受け面24がノズル302に対向する位置に移動することにより、ノズル302がインク受け面24側に移動することなく、ノズル302から乾燥インクを排出して吐出されたインクを受けることができる。また、ワイパ3がノズル302に対向する位置に移動することにより、ノズル302がワイパ3側に移動することなく、ワイパ3が接触してノズル302をワイピングしてクリーニングできる。
【0114】
そして、インク受け面24およびワイパ3がノズル302に対向する位置に移動するときに、ステップPS33で説明したように、予めノズル302およびワイパユニット4を一体で吐出する方向と反対方向に移動させておくことにより、インク受け面24およびワイパ3が被描画物100に衝突することを回避できる。
【0115】
液体吐出装置1000は、
図1で説明したように、X軸レール101、Y軸レール102、およびZ軸レール103を備え、キャリッジ1をZ軸方向、X軸方向およびY軸方向に移動可能に保持する。
【0116】
これにより、キャリッジ1は、X軸方向に移動しながら、被描画物100に向けてインクを吐出することができる。そして、被描画物100に対するキャリッジ1の位置にかかわらず、必要なときに、インク受け面24がノズル302に対向する位置に移動することにより、ノズル302がインク受け面24側に移動することなく、ノズル302から乾燥インクを排出して吐出されたインクを受けることができる。
【0117】
また、被描画物100に対するキャリッジ1の位置にかかわらず、必要なときに、ワイパ3がノズル面302aに対向する位置に移動することにより、ノズル面302aがワイパ3側に移動することなく、ワイパ3が接触してノズル面302aをワイピングしてクリーニングできる。
【0118】
すなわち、位置が固定されたインク受け面24やワイパ3に向けてキャリッジ1が移動する場合に比べて、キャリッジ1が移動する時間を短縮できるため、少ないダウンタイムで、高品質描画を継続して行うことができる。そして、予めキャリッジ1をZ軸方向負側に移動させておくことにより、インク受け面24やワイパ3がノズル302に向けて移動するときに、被描画物100に衝突することを回避できる。
【0119】
制御部500は、ノズル302をX軸方向に移動させている途中で、濃度検出部335により検出されるアセトンの蒸気濃度が基準値1以上になった場合(第1の条件を満たす場合の一例)、ノズル302をX軸方向に移動させることを停止するとともに、ノズル302からインクを吐出させることを停止し、その後、濃度検出部335により検出されるアセトンの蒸気濃度が基準値2未満になった場合(第2の条件を満たす場合の一例)、ノズル302がX軸方向に移動することを停止した停止位置から、ノズル302をX軸方向に移動させることを再開するとともに、ノズル302からインクを吐出させることを再開する。
【0120】
これにより、アセトンの蒸気濃度が上昇した場合に、インクを吐出させることを停止することにより、アセトンの蒸気濃度が上昇することを抑止できるとともに、アセトンの蒸気濃度が低下した場合に、停止位置からノズル302の移動とインクの吐出を再開することにより、少ないダウンタイムで、高品質描画を継続して行うことができる。
【0121】
なお、本実施形態では、第1の条件を満たす場合の一例として、アセトンの蒸気濃度が基準値1以上になった場合を例示したが、何らかの不具合が生じた場合を、第1の条件を満たす場合としてもよい。そして、何らかの不具合が解消した場合を、第2の条件を満たす場合としてもよい。
【0122】
これにより、何らかの不具合が生じた場合に、インクを吐出させることを停止して不具合の解消を図るとともに、不具合が解消した場合に、停止位置からノズル302の移動とインクの吐出を再開することにより、少ないダウンタイムで、高品質描画を継続して行うことができる。
【0123】
制御部500は、ノズル302をX軸方向に移動させることを停止した場合、ノズル302をZ軸方向負側に移動させるとともに、インク受け面24およびワイパ3がノズル302に対向する位置になるように、ワイパユニット4を移動させ、ノズル302からインク受け面24に向けてインクを吐出させる。
【0124】
これにより、ノズル302がX軸方向に移動停止している期間を有効活用して、ノズル302から乾燥インクを排出し、ノズル302をクリーニングすることができる。また、インク受け面24やワイパ3が被描画物100に衝突することを回避しつつ、位置が固定されたインク受け面24やワイパ3に向けてノズル302が移動する場合に比べて、ノズル302が移動する時間を短縮できるため、少ないダウンタイムで、高品質描画を継続して行うことができる。
【0125】
図12は、同実施形態におけるワイパユニットの説明図である。
図13は、同実施形態におけるワイパユニットの一部説明図である。
【0126】
図12(a)はワイパユニットの背面図、
図12(b)はワイパユニットの側面図、
図13(a)はワイパユニットの上部正面図、
図13(b)はワイパユニットの下部正面斜視図、
図13(c)はワイパユニットの下部背面斜視図である。
【0127】
ワイパユニット4は、インク受け面24よりもインク受け面24の法線方向に突出し、インク受け面24に平行な方向かつ鉛直方向の下方に延びる凸部23と、ワイパ3を背面側から加圧する加圧機構3Pを備える。ここで、ワイパ3および凸部23は、インク受け面24がノズル302に対向する状態で、インク受け面24よりもノズル302側に突出する突出部の一例である。
【0128】
また、ワイパ3および凸部23は、水平方向においてインク受け面24を挟んで配置され、ともに鉛直方向の下方に延びるように形成されている。ここで、
図2~4で説明したように、ワイパユニット4は水平方向に移動することから、ワイパ3および凸部23は、ワイパユニット4が移動する方向においてインク受け面24を挟んで配置され、ワイパユニット4が移動する方向に直交する方向に延びる第1、第2の突出部の一例である。
【0129】
そして、ワイパ3はノズル面302aに対向する側の面を最高点として4辺が傾斜した形状とされている。
【0130】
洗浄液供給部5は、ワイパ3およびインク受け面24の上方に配置されており、ワイパ3の上方から洗浄液を供給するワイパ側供給口21と、インク受け面24の上方から洗浄液を供給する受け面側供給口22を備える。洗浄液回収部材6は、ワイパ3およびインク受け面24の下方に配置されており、底面の上方の空間を囲む壁面6Wを有し、上部に開口6Aが形成されている。
【0131】
以上のように、ワイパユニット4は、インク受け面24がノズル302に対向する状態で、インク受け面24よりもノズル302側に突出し、インク受け面24に平行な方向に延びる凸部23またはワイパ3を備える。これにより、インク受け面24が受けたインクが、インク受け面24周囲に飛散することを低減できる。
【0132】
また、ワイパユニット4は、ワイパユニット4が移動する方向においてインク受け面24を挟んで配置される凸部23およびワイパ3を備え、第1、第2の突出部は、ワイパユニット4が移動する方向に直交する方向に延びる。これにより、インク受け面24が受けたインクが、インク受け面24周囲に飛散することを確実に低減できる。
【0133】
図14は、同実施形態におけるメンテ動作の制御の説明に供するフロー図である。
図15は、同実施形態におけるメンテ動作の説明に供する図である。
【0134】
制御部500は、センサ17aの検知信号に基づき、ワイパユニット4がホームポジションにあるかどうか確認する(MS1)。
【0135】
制御部500は、開閉弁234を開いて洗浄液供給部5から洗浄液220を供給すると共に、電磁弁244を開いて真空発生器242を起動し、洗浄液回収部材6を吸引状態にする(MS2)。
【0136】
制御部500は、モータ13を駆動してワイパユニット4を
図2および
図3に示すように+X方向に移動させて、ワイパ3がノズル面302aに対向する位置に、ワイパユニット4を移動させる(MS3)。
【0137】
制御部500は、ワイパ3がノズル面302aに対向する状態で、さらにワイパユニット4を+X方向に移動させて、ワイパ3によりノズル面302aをワイピングする(MS4)。
【0138】
制御部500は、センサ17bの検知信号に基づき、ワイパユニット4が移動終了位置に達したと判断すると、モータ13を停止してワイパユニット4の移動を停止する(MS5)。
【0139】
次に制御部500は、モータ13を逆方向に駆動してワイパユニット4を逆方向(-X方向)に移動させて、ワイパ3がノズル面302aに対向し、かつインク受け面24がノズル302に対向する位置に、ワイパユニット4を移動させる(MS6)。
【0140】
制御部500は、ワイパ3がノズル面302aに対向する状態で、さらにワイパユニット4をーX方向に移動させて、ワイパ3によりノズル面302aをワイピングするとともに、ワイパ3が通過した後のノズル302からインク受け面24に向けてインクを吐出させる(MS7)。なお、制御部500は、
図11のステップPS34におけるメンテ動作を行う場合は、アセトンの蒸気濃度が上昇することを抑止するために、ワイパ3によりノズル面302aをワイピングするだけで、ノズル302からインク受け面24に向けてインクを吐出させない。
【0141】
具体的には、
図15に示すように、制御部500は、ワイパ3がノズル302Cを通過した後、かつ凸部23がノズル302Cを通過する前に、矢印Aで示すように、ノズル302Cからインク受け面24に向けてインクを吐出させる。一方、
図15の状態では、ノズル302Bはワイパ3によるワイピング中であり、ノズル302Aはワイパ3によるワイピング前であり、いずれもインク受け面24に対向していないので、制御部500は、ノズル302Aおよびノズル302Bからはインクを吐出させない。
【0142】
制御部500は、センサ17aの検知信号に基づき、ワイパユニット4がホームポジションに達したと判断すると、モータ13を停止してワイパユニット4の移動を停止する(MS8)。
【0143】
制御部500は、開閉弁234を閉じて、洗浄液供給部5からの洗浄液220の供給を停止するとともに、電磁弁244を閉じて、洗浄液回収部材6の吸引状態を停止する(MS9)。
【0144】
以上のように、ワイパ3は、インク受け面24がノズル302に対向する状態で、ワイパユニット4が移動するときに、ノズル302およびノズル302を有するノズル面302aに接触する。これにより、ワイパユニット4が移動するときに、ワイパ3が接触することにより、ノズル302およびノズル面302aをワイピングしてクリーニングすることができる。
【0145】
また、液体吐出装置1000は、ワイパユニット4が移動するときに、ワイパ3がノズル302を通過した後に、ノズル302からインク受け面24に向けてインクを吐出させる制御部500を備える。これにより、ノズル302から異物等を取り除いて、ノズル302からインク受け面24に向けて確実にインクを吐出することができる。
【0146】
図16は、本実施形態の変形例に係るワイパユニットの斜視図である。
【0147】
図3に示した実施形態では、ワイパユニット4は、ガイド溝9の形状に沿った軌跡で移動したが、
図16に示す変形例では、ワイパユニット4は、枠体80に固定されたガイドレール9Rに沿ってX軸方向に平行な方向に移動する。
【0148】
変形例においても、
図3に示したように、モータ13を駆動すると、ガイドレール9Rに沿った軌跡でワイパユニット4が移動する。
【0149】
図17は、変形例におけるキャリッジの斜視図である。
図18は、変形例におけるキャリッジの平面図である。
図19は、変形例におけるシリンダの斜視図である。
【0150】
本変形例では、キャリッジ1は、左側壁部7L、右側壁部7Rおよびヘッド固定板7が固定されるヘッドユニット70と、ヘッドユニット70をZ軸方向に移動可能に保持する筐体8と、筐体8に対してヘッドユニット70をZ軸方向に移動させるシリンダ93と、を備える。
【0151】
左側壁部7Lは、ヘッド固定板7よりもX軸方向正側に配置され、右側壁部7Rは、ヘッド固定板7よりもX軸方向負側に配置される。Z軸方向正側において、左側壁部7Lおよび右側壁部7Rの端部の位置は、ヘッド300の端部の位置と同じになるように形成されている。
【0152】
筐体8は、ヘッド固定板7に設けられたヘッド300のノズル302をZ軸方向に移動可能に保持する保持部の一例であり、ワイパユニット4は、
図16で示した枠体80を介して、X軸方向に移動可能に筐体8に保持される。
【0153】
シリンダ93は、シリンダ本体93Aと、シリンダ本体93Aに対してZ軸方向に進退可能なピストン93Bと、シリンダ本体93Aを筐体8に取り付ける取り付け部93Cを備え、ピストン93Bは、ヘッドユニット70を支持する支持板70Aに固定されている。シリンダ93は、制御部500により制御され、ピストン93BをZ軸方向に進退させることにより、ヘッドユニット70およびヘッド300をワイパユニット4に対してZ軸方向に移動させる。
【0154】
図17および
図18は、ワイパユニット4よりもヘッド300がZ軸方向正側に位置する状態を示している。この状態で、制御部500は、
図9のフロー図のステップPS3で説明したように、キャリッジ1を+X方向に移動させながら、ノズル302からインクを吐出させる。
【0155】
制御部500は、キャリッジ1を+X方向に移動させているときに、左側壁部7Lまたは右側壁部7Rが被描画物100に衝突したことを検知した場合、シリンダ93を制御して、ピストン93Bと一体でヘッドユニット70をZ軸方向負側に移動させて、左側壁部7Lまたは右側壁部7Rの被描画物100との衝突を回避する。
【0156】
図20は、変形例におけるメンテ動作時のキャリッジの斜視図である。
図21は、変形例におけるメンテ動作開始時のキャリッジの平面図である。
【0157】
図11で説明したフロー図のステップPS33では、制御部500は、Z方向駆動部92を制御してーZ方向にキャリッジ1を移動させることにより、ヘッド300およびワイパユニット4を一体でーZ方向に移動させたが、本変形例では、制御部500は、
図17および
図18の状態から、シリンダ93を制御してZ軸方向負側にピストン93Bと一体でヘッドユニット70を移動させることにより、ワイパユニット4に対してヘッド300をZ方向負側に移動させる。これにより、キャリッジ1全体を移動させる場合に比べて、応答性よくワイパユニット4に対してヘッド300をZ方向負側に移動させることができる。
【0158】
図20および
図21は、ワイパユニット4に対してヘッド300をZ方向負側に移動させた後に、ワイパユニット4よりもヘッド300がZ軸方向負側に位置する状態を示している。
【0159】
図22は、変形例におけるメンテ動作中のキャリッジの平面図である。
【0160】
図11で説明したフロー図のステップPS34と同様に、制御部500は、モータ13を駆動してワイパユニット4をX軸方向に移動させ、ワイパ3がノズル面302aに対向し、かつインク受け面24がノズル302に対向する位置に、ワイパユニット4を移動させる。
図22は、
図20および
図21の状態から、ワイパユニット4がX軸方向正側に移動した状態を示している。
【0161】
そして、制御部500は、ワイパ3がノズル面302aに対向する状態で、さらにワイパユニット4を移動させて、ワイパ3によりノズル面302aをワイピングするとともに、ノズル302からインク受け面24に向けてインクを吐出させる。
【0162】
そして、
図11で説明したフロー図のステップPS37では、制御部500は、Z方向駆動部92を制御して+Z方向にキャリッジ1を移動させることにより、ヘッド300およびワイパユニット4を一体で+Z方向に移動させたが、本変形例では、制御部500は、
図20および
図21の状態から、シリンダ93を制御してZ軸方向正側にピストン93Bと一体でヘッドユニット70を移動させることにより、ワイパユニット4に対してヘッド300をZ方向正側に移動させて、
図17および
図18の状態に戻す。これにより、キャリッジ1全体を移動させる場合に比べて、応答性よくワイパユニット4に対してヘッド300をZ方向正側に移動させることができる。
【0163】
以上のように、本変形例では、キャリッジ1は、インク受け面24およびワイパ3を保持し、インク受け面24またはワイパ3がノズル302に対向する位置と、インク受け面24またはワイパ3がノズル302に対向しない位置の間で、移動可能なワイパユニット4と、ノズル302をZ軸方向に移動可能に保持する筐体8と、を備える。
【0164】
これにより、インク受け面24がノズル302に対向する位置に移動することにより、ノズル302がインク受け面24側に移動することなく、ノズル302から乾燥インクを排出して吐出されたインクを受けることができる。また、ワイパ3がノズル302に対向する位置に移動することにより、ノズル302がワイパ3側に移動することなく、ワイパ3が接触してノズル302をワイピングしてクリーニングできる。
【0165】
そして、インク受け面24およびワイパ3がノズル302に対向する位置に移動するときに、
図20および
図21に示したように、予めワイパユニット4に対してノズル302をZ軸方向負側に移動させておくことにより、ワイパユニット4を吐出する方向に移動させる必要がなく、インク受け面24およびワイパ3がノズル302に向けて移動するときに、被描画物100に衝突することを回避できる。
【0166】
図23は、本実施形態の第2の変形例に係るワイパユニットの斜視図である。
【0167】
図13に示した実施形態では、ワイパユニット4は、水平方向においてインク受け面24を挟んで配置されるワイパ3および凸部23を備えたが、
図23に示す変形例では、ワイパユニット4は、水平方向においてインク受け面24を挟んで配置される第1のワイパ3Aおよび第2のワイパ3Bを備える。
【0168】
第1のワイパ3Aおよび第2のワイパ3Bは、ワイパユニット4が移動する方向においてインク受け面24を挟んで配置され、ワイパユニット4が移動する方向に直交する方向に延びる第1、第2の突出部の一例である。第1、第2の突出部は、第1のワイパ3Aおよび第2のワイパ3Bのように別々の部材ではなく、1部材のワイパ3に設けられても良い。
【0169】
第1のワイパ3Aおよび第2のワイパ3Bは、ノズル面302a側よりもインク受け面24側が上方に位置するように傾斜して形成される上端面3Hをそれぞれ備える。すなわち、上端面3Hは、ノズル面302aに直交する面よりも、ノズル面302a側が下方に位置するように傾斜して形成される。
【0170】
ワイパ側供給口21は、第1のワイパ3Aの上端面3Hに対向する第1の供給口21Aと、および第2のワイパ3Bの上端面3Hに対向する第2の供給口21Bを備える。これにより、洗浄液がワイパ3のノズル面302a側に流れやすい。
【0171】
第1の供給口21Aおよび第2の供給口21Bは、ワイパユニット4が移動する方向において受け面側供給口22を挟んで配置される。
【0172】
以上のように、ワイパ3の上端面3Hは、インク受け面24側よりもノズル面302a側が下方に位置するように傾斜して形成される。これにより、ワイパ3の上端面3Hが受けた洗浄液をワイパ3のノズル面302a側に確実に供給して、ノズル面302aを確実にワイピングしてクリーニングできる。
【0173】
図24は、第2の変形例におけるメンテ動作の制御の説明に供するフロー図である。
図25は、第2の変形例におけるメンテ動作の説明に供する図である。
【0174】
制御部500は、センサ17aの検知信号に基づき、ワイパユニット4がホームポジションにあるかどうか確認する(MS11)。
【0175】
制御部500は、開閉弁234を開いて洗浄液供給部5から洗浄液220を供給すると共に、電磁弁244を開いて真空発生器242を起動し、洗浄液回収部材6を吸引状態にする(MS12)。
【0176】
制御部500は、モータ13を駆動してワイパユニット4を+X方向に移動させて、ワイパ3がノズル面302aに対向し、かつインク受け面24がノズル302に対向する位置に、ワイパユニット4を移動させる(MS13)。
【0177】
制御部500は、ワイパ3がノズル面302aに対向する状態で、さらにワイパユニット4を+X方向に移動させて、ワイパ3によりノズル面302aをワイピングするとともに、ワイパ3が通過した後のノズル302からインク受け面24に向けてインクを吐出させる(MS14)。なお、制御部500は、
図11のステップPS34におけるメンテ動作を行う場合は、アセトンの蒸気濃度が上昇することを抑止するために、ワイパ3によりノズル面302aをワイピングするだけで、ノズル302からインク受け面24に向けてインクを吐出させない。
【0178】
具体的には、
図25に示すように、制御部500は、第2のワイパ3Bがノズル302Bを通過した後、かつ第1のワイパ3Aがノズル302Bを通過する前に、矢印Aで示すように、ノズル302Bからインク受け面24に向けてインクを吐出させる。
【0179】
一方、
図25の状態では、ノズル302Aは第1のワイパ3Aによるワイピング後であり、ノズル302Cは第2のワイパ3Bによるワイピング前であり、いずれもインク受け面24に対向していないので、制御部500は、ノズル302Aおよびノズル302Cからはインクを吐出させない。
【0180】
制御部500は、センサ17bの検知信号に基づき、ワイパユニット4が移動終了位置に達したと判断すると、モータ13を停止してワイパユニット4の移動を停止する(MS15)。
【0181】
次に制御部500は、モータ13を逆方向に駆動してワイパユニット4を逆方向(-X方向)に移動させて、ワイパ3がノズル面302aに対向し、かつインク受け面24がノズル302に対向する位置に、ワイパユニット4を移動させる(MS16)。
【0182】
制御部500は、ステップMS14と同様に、ワイパ3がノズル面302aに対向する状態で、さらにワイパユニット4をーX方向に移動させて、ワイパ3によりノズル面302aをワイピングするとともに、ワイパ3が通過した後のノズル302からインク受け面24に向けてインクを吐出させる(MS17)。なお、制御部500は、
図11のステップPS34におけるメンテ動作を行う場合は、アセトンの蒸気濃度が上昇することを抑止するために、ワイパ3によりノズル面302aをワイピングするだけで、ノズル302からインク受け面24に向けてインクを吐出させない。
【0183】
制御部500は、センサ17aの検知信号に基づき、ワイパユニット4がホームポジションに達したと判断すると、モータ13を停止してワイパユニット4の移動を停止する(MS18)。
【0184】
制御部500は、開閉弁234を閉じて、洗浄液供給部5からの洗浄液220の供給を停止するとともに、電磁弁244を閉じて、洗浄液回収部材6の吸引状態を停止する(MS19)。
【0185】
図26は、第2の変形例におけるメンテ動作の説明に供する他の図である。
【0186】
図26(a)は、
図24に示したフロー図のステップMS13に対応しており、ワイパユニット4はノズル面302aに対向していない状態を示す。
【0187】
図26(b)~(d)は、
図24に示したフロー図のステップMS13に対応しており、ワイパユニット4はノズル面302aに対向している状態を示す。
【0188】
図26(b)の状態では、第2のワイパ3Bは、ノズル面302aおよびノズル302Aに対向しており、X軸正側方向に移動しながらノズル面302aおよびノズル302Aをワイピングしてクリーニングする。
【0189】
一方、ノズル302Bは第2のワイパ3Aが通過中であり、ノズル302Aは第2のワイパ3Bが通過する前であり、いずれもインク受け面24に対向していないので、制御部500は、ノズル302Aおよびノズル302Bからはインクを吐出させない。
【0190】
図26(c)の状態では、第2のワイパ3Bおよび第1のワイパ3Aは、ノズル面302aに対向しており、X軸正側方向に移動しながらノズル面302aをワイピングしてクリーニングする。また、ノズル302Aがインク受け面24に対向しているので、制御部500は、ノズル302Aからインクを吐出させる。
【0191】
一方、ノズル302Bは、第2のワイパ3Bが通過する前であり、インク受け面24に対向していないので、制御部500は、ノズル302Bからはインクを吐出させない。
【0192】
図26(d)の状態では、第2のワイパ3Bは、ノズル面302aおよびノズル302Bに対向しており、X軸正側方向に移動しながらノズル面302aおよびノズル302Bをワイピングしてクリーニングする。また、第1のワイパ3Aは、ノズル面302aおよびノズル302Aに対向しており、X軸正側方向に移動しながらノズル面302aおよびノズル302Aをワイピングしてクリーニングする。
【0193】
一方、ノズル302Bは、第2のワイパ3Bが通過中であり、ノズル302Aは、第1のワイパ3Aが通過中であり、いずれもインク受け面24に対向していないので、制御部500は、ノズル302Aおよびノズル302Bからはインクを吐出させない。
【0194】
以上のように、ワイパユニット4の移動に同期して、インク受け面24と対向したノズル302が順次インク受け面24に向けてインクを吐出する。
【0195】
そして、
図26(b)に示したように、インク受け面24にインクを吐出する前のノズル302Aをワイピングすることにより、ノズル302Aの表面環境の一時的な清浄化が図れる。
【0196】
続いて、
図26(c)に示したように、ノズル302Aからインク受け面24にインクを吐出させることにより、ノズル302Aから乾燥インクを排出する。
【0197】
そして、
図26(d)に示したように、インク受け面24にインクを吐出した後のノズル302Aをワイピングすることにより、排出された乾燥インクの除去とノズル302Aの最終的な清浄化が可能になる。更に、これを往路・復路の2回実施することで、より安定的にノズル302の正常状態を確保することができる。
【0198】
図27は、本発明の実施形態の第3の変形例に係る液体吐出装置で航空機を描画対象物として描画するときの斜視説明図である。
図28は、第3の変形例に係る液体吐出装置の斜視説明図である。
【0199】
液体吐出装置1000は、キャリッジ1を往復直線移動させるリニアレール404と、リニアレール404を適宜所定の位置へ移動させ、その位置で保持する多関節ロボット405とを備えている。
【0200】
多関節ロボット405は、複数の関節によって人間の腕のように自由な動きを可能としたロボットアーム405aを備えており、ロボットアーム405aの先端を自由に移動させ、且つ、正確な位置に配置することができる。
【0201】
多関節ロボット405としては、例えば、6つの軸、すなわち6つの関節を備えた6軸制御型の産業用ロボットを用いることができる。6軸型の多関節ロボットによれば予め動作に関する情報をティーチングしておくことできわめて正確、且つ、迅速にリニアレール404を描画対象物702(航空機)の所定位置に対峙させることができる。ロボット405は、6軸に限定されるものではなく、5軸、7軸など適宜の軸数を備えた多関節ロボットを用いることができる。
【0202】
このロボット405のロボットアーム405aに二股に枝分かれしたフォーク状の支持部材424を設け、この支持部材424の左側の枝部424aの先端に垂直リニアレール423aを、右側の枝部424bの先端に垂直リニアレール423bを平行になるようにして取り付けている。
【0203】
そして、キャリッジ1を移動可能に保持したリニアレール404の両端を、2つの垂直リニアレール423a,423bにそれぞれ架け渡すようにして支持させている。
【0204】
キャリッジ1は、
図2等で説明したヘッド300や、例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、ホワイトの各色の液体を吐出する複数のヘッド300、又は、複数のノズル列を有するヘッド300を備えている。このキャリッジ1の各ヘッド300又はヘッド300の各ノズル列に対しては、
図8で説明した液体供給系と同様にして、インクタンク330から各色の液体が加圧供給される。
【0205】
この液体吐出装置1000においては、ロボット405によってリニアレール404を描画対象物702の所要の描画領域に対向する位置に移動させ、描画データに応じてキャリッジ1をリニアレール404に沿って移動しながら、ヘッド300を駆動して、描画を行う。
【0206】
そして、1ライン分の描画が終了したときに、垂直リニアレール423a,423bを駆動することにより、キャリッジ1のヘッド300をあるラインから次のラインに移動させる。
【0207】
この動作を繰り返して、描画対象物702の所要の描画領域に描画することができる。
【0208】
このとき、キャリッジ1(ヘッド300)の移動距離が長くなるが、キャリッジ1はワイパ3を備えてヘッド300のノズル面302aを随時ワイピングしてクリーニングすることができる。
【0209】
本実施形態においても、1ラインの描画の前後でノズルワイピングを行う。
これにより、少ないダウンタイムで、高品質描画を継続して行うことができる。
【0210】
図29は、本発明の実施形態の第4の変形例に係る液体吐出装置の斜視説明図である。
図30は、第4の変形例に係る液体吐出装置の駆動部の斜視説明図である。
【0211】
液体吐出装置1000は、車両のボンネットなどの曲面を有する描画対象物702に対向させて据付けられる移動可能な枠ユニット802を備えている。枠ユニット802を構成する左右の枠部材810,811には、枠部材810,811に架け渡されるようにして、可動ユニット813が垂直方向(Y方向)へ昇降可能に取り付けられている。
【0212】
可動ユニット813には、可動ユニット813上を水平方向(X方向)に往復移動可能に配置されたモータを内蔵する駆動部803と、この駆動部803に取り付けられて描画対象物702へ向けて液体を吐出するキャリッジ1とが搭載されている。
【0213】
また、キャリッジ1からの液体の吐出、駆動部803の往復移動及び可動ユニット813の昇降を制御するコントローラ805と、このコントローラ805に対して指示を行うPC(パーソナルコンピュータ)などの情報処理装置806とを備えている。情報処理装置806には、形状や大きさなどの描画対象物702に関する情報を記録保存するデータベース部(DB部)807が接続されている。
【0214】
枠ユニット802は、金属柱状体等によって形成された上下左右の枠部材808,809,810,811と、枠ユニット802を自立させるために下側の枠部材809の両側に直角且つ水平に取り付けられた左右の脚部材812a,812bを備えている。
【0215】
そして、左右の枠部材810,811の間に架け渡された可動ユニット813は、駆動部803を支持した状態で昇降可能に構成されている。
【0216】
描画対象物702は、液体の吐出方向(Z方向)に直角に、すなわち、枠ユニット802の上下左右の枠部材808,809,810,811によって形成される平面に対向するようにして配置される。
【0217】
この場合、描画を行うべき所定の位置に描画対象物702を配置させるためには、例えば、多関節型アームロボットのアームの先端に取り付けたチャックによって描画対象物702の描画領域の裏側を吸着保持させることによって行うことができる。多関節型アームロボットを用いることで描画対象物702をプリント位置に正確に配置することが可能となり、描画対象物702の姿勢を適宜に変更することもできる。
【0218】
駆動部803は、
図30に示すように、可動ユニット813上を水平方向(X方向)に往復移動可能に配置されている。そして、可動ユニット813は、枠ユニット802の左右の枠部材810,811に架け渡されるようにして水平に配設されたレール830と、このレール830と平行となるように配設されたラックギヤ831と、レール830の一部に外嵌されてスライドしながら移動するリニアガイド832と、このリニアガイド832と連結されてラックギヤ831と噛合うピニオンギヤユニット833と、このピニオンギヤユニット833を回転駆動する減速機836付きのモータ834と、描画点位置検出用のロータリエンコーダ835を備えて構成されている。
【0219】
モータ834を駆動(正転又は逆転)することによってキャリッジ1を可動ユニット813に沿って右方向または左方向に移動させる。そして、駆動部803はキャリッジ1のX方向の駆動機構として機能する。なお、減速機836の筐体の両側にはリミットスイッチ837a,837bが取付けられている。
【0220】
キャリッジ1は、
図2等で説明したヘッド300や、例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、ホワイトの各色の液体を吐出する複数のヘッド300、又は、複数のノズル列を有するヘッド300を備えている。このキャリッジ1の各ヘッド300又はヘッド300の各ノズル列に対しては、
図8で説明した液体供給系と同様にして、インクタンク330から各色の液体が加圧供給される。
【0221】
この液体吐出装置1000においては、可動ユニット813をY方向に移動させ、キャリッジ1をX方向に移動させて、描画対象物702に所要の画像を描画する。
【0222】
このとき、キャリッジ1(ヘッド300)の移動距離が長くなるが、キャリッジ1はワイパ3を備えてヘッド300のノズル面302aを随時ワイピングしてクリーニングすることができる。
【0223】
これにより、少ないダウンタイムで、高品質描画を継続して行うことができる。
【0224】
【0225】
第4の変形例では、基材上に下塗り塗膜及び中塗り塗膜が順次形成されてなる自動車ボディ等の描画対象物702に、液体吐出装置1000により模様塗膜が形成される。
【0226】
使用される基材は、自動車ボディに使用できる基材であれば制限なく使用でき、例えば、鋼板、アルミニウム板、亜鉛メッキ鋼板、鉄-亜鉛合金メッキ鋼板などの金属基材、及びこれらの金属基材にクロメート処理、燐酸亜鉛処理、燐酸鉄処理などの化成処理を施した化成処理金属基材、FRPなどのプラスチックス基材などを挙げることができる。
【0227】
基材上に下塗り塗膜を形成するには、基材に下塗り塗料をスプレー塗装、浸漬塗装、ハケ塗などの公知の方法によって行うことができるが、基材が金属基材や化成処理金属基材などの導電性を有する基材である場合には、下塗り塗料として電着塗料を使用して電着塗膜を形成することが好適である(工程S1)。
【0228】
電着塗膜を形成するには、公知の方法により基材を電着浴中に浸漬し、電着塗装すればよい。電着浴としては、公知のアニオン型電着浴、カチオン型電着浴のいずれも使用することができる。
【0229】
電着浴の基体樹脂成分としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリブタジエン樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、シリコン樹脂などの1種または2種以上を挙げることができる。アニオン電着浴としては、基体樹脂成分がカルボキシル基などの酸基を有しており、カチオン電着浴としては、基体樹脂成分がアミノ基;アンモニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基などのオニウム塩基などの塩基性基を有していて、これらの基を中和し、イオン化することにより水性化できる。
【0230】
下塗り塗膜の膜厚は、乾燥膜厚で通常5~40μm、好ましくは15~30μm程度である。
【0231】
下塗り塗装した後、必要に応じて水洗し、ついで風乾後又は焼付などによる硬化後、中塗り塗料が塗装される(工程S2)。中塗り塗料としては、水性塗料、有機溶剤型塗料、粉体塗料のいずれの形態であってもよく、樹脂系としては、アルキド樹脂系、ポリエステル樹脂系、アクリル樹脂系、ポリウレタン樹脂系、ビニル樹脂系など種々の樹脂系の塗料を使用することができる。 なかでもアルキド樹脂系が一般的である。
【0232】
第4の変形例では、上記下塗り塗膜及び中塗り塗膜が順次形成されてなる自動車ボディに、情報処理装置806に予め設定した所定の模様の塗膜を、液体吐出装置1000により塗装する(工程S3)。
【0233】
模様塗膜は、通常、1~10μm程度の薄膜であり、薄膜で隠蔽するためには顔料分を多く含有することが必要となるので、このままでは光沢が低くなって塗面外観が低下したり耐候性、耐薬品性が低下しやすいので第4の変形例においては、この模様塗膜上にクリヤ塗料を塗装してこれらの問題を解決するものである(工程S4)。
【0234】
上記クリヤ塗料としては、耐候性の良いクリヤ塗料であれば、有機溶剤型塗料、水系塗料、粉体塗料など制限なく使用することができる。樹脂系としては、アクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系、アルキド樹脂系、シリコーン樹脂系、フッ素樹脂系など種々の樹脂が使用でき、熱硬化型であってもよいし、紫外線や電子線などの活性光線によって硬化するものであってもよい。クリヤ塗料としては自動車の上塗りクリヤ塗料として使用されるものが好適に使用され、なかでもアクリル樹脂系の熱硬化型クリヤ塗料が適している。
【0235】
以上説明したように、本発明の一実施形態に係る液体吐出装置1000は、被描画物100(対象物の一例)に向けてインク(液体の一例)を吐出するノズル302(吐出口の一例)と、ノズル302から吐出されたインクを受けるインク受け面24(液体受け面の一例)およびノズル302に接触するワイパ3(接触部の一例)を保持し、インク受け面24またはワイパ3がノズル302に対向する位置と、インク受け面24およびワイパ3がノズル302に対向しない位置の間で、移動可能なワイパユニット4(移動部の一例)と、ノズル302をZ軸方向(吐出する方向の一例)に移動可能に保持するZ軸レール103または筐体8(保持部の一例)と、を備える。ワイパユニット4は、インク受け面24またはワイパ3の一方のみを保持してもよい。
【0236】
これにより、インク受け面24がノズル302に対向する位置に移動することにより、ノズル302がインク受け面24側に移動することなく、ノズル302から乾燥インクを排出して吐出されたインクを受けることができる。また、インク受け面24がノズル302に対向する位置に移動するときに、ノズル302を吐出する方向と反対方向に移動させておくことにより、インク受け面24が被描画物100に衝突することを回避できる。
【0237】
そして、ワイパ3がノズル302に対向する位置に移動することにより、ノズル302がワイパ3側に移動することなく、洗浄液が供給されたワイパ3が接触してノズル302をワイピングしてクリーニングできる。また、ワイパ3がノズル302に対向する位置に移動するときに、予めノズル302を吐出する方向と反対方向に移動させておくことにより、ワイパ3が被描画物100に衝突することを回避できる。
【0238】
液体吐出装置1000は、ノズル302を保持し、ワイパユニット4を移動可能に支持するヘッド固定板7、ガイド板8Hおよび8L(筐体の一例)または筐体8を備える。筐体8は、保持部であって、Z軸方向において、ワイパユニット4に対してノズル302を移動可能に保持する。
【0239】
これにより、ワイパユニット4と一体でノズル302をZ軸方向に移動させる場合に比べて、応答性よくノズル302をZ軸方向に移動させることができる。
【0240】
液体吐出装置1000は、ノズル302とワイパユニット4とを有するキャリッジ1(液体吐出ユニットの一例)を備え、X軸レール101、Y軸レール102、およびZ軸レール103(保持部の一例)は、キャリッジ1をZ軸方向(吐出する方向の一例)、X軸方向およびY軸方向(吐出する方向と直交する方向の一例)に移動可能に保持する。
【0241】
あるいは、液体吐出装置1000は、ノズル302とワイパユニット4と筐体8(保持部の一例)とを有するキャリッジ1(液体吐出ユニットの一例)を備え、X軸レール101およびY軸レール102(ガイド部の一例)は、キャリッジ1をX軸方向およびY軸方向(吐出する方向と直交する方向の一例)に移動可能に保持する。
【0242】
これにより、キャリッジ1は、X軸方向に移動しながら、被描画物100に向けてインクを吐出することができる。そして、被描画物100に対するキャリッジ1の位置にかかわらず、必要なときに、インク受け面24がノズル302に対向する位置に移動することにより、ノズル302がインク受け面24側に移動することなく、ノズル302から乾燥インクを排出して吐出されたインクを受けることができる。
【0243】
また、被描画物100に対するキャリッジ1の位置にかかわらず、必要なときに、ワイパ3がノズル面302aに対向する位置に移動することにより、ノズル面302aがワイパ3側に移動することなく、ワイパ3が接触してノズル面302aをワイピングしてクリーニングできる。
【0244】
すなわち、位置が固定されたインク受け面24やワイパ3に向けてキャリッジ1が移動する場合に比べて、キャリッジ1が移動する時間を短縮できるため、少ないダウンタイムで、高品質描画を継続して行うことができる。
【0245】
そして、予めノズル302をキャリッジ1と一体でまたはキャリッジ1に対してZ軸方向負側に移動させておくことにより、インク受け面24やワイパ3がノズル302に向けて移動するときに、被描画物100に衝突することを回避できる。
【0246】
液体吐出装置1000は、ノズル302をX軸方向(吐出する方向と直交する移動方向の一例)に移動させながら、ノズル302からインクを吐出させる制御部500を備え、制御部500は、ノズル302をX軸方向に移動させている途中で、濃度検出部335により検出されるアセトンの蒸気濃度が基準値1以上になった場合(第1の条件を満たす場合の一例)、ノズル302をX軸方向に移動させることを停止するとともに、ノズル302からインクを吐出させることを停止し、その後、濃度検出部335により検出されるアセトンの蒸気濃度が基準値2未満になった場合(第2の条件を満たす場合の一例)、ノズル302がX軸方向に移動することを停止した停止位置から、ノズル302をX軸方向に移動させることを再開するとともに、ノズル302からインクを吐出させることを再開する。
【0247】
これにより、何らかの不具合が生じた場合に、インクを吐出させることを停止して不具合の解消を図るとともに、不具合が解消した場合に、停止位置からノズル302の移動とインクの吐出を再開することにより、少ないダウンタイムで、高品質描画を継続して行うことができる。
【0248】
制御部500は、ノズル302を移動させることを停止した場合、ノズル302をZ軸方向負側(吐出する方向と反対方向の一例)に移動させるとともに、インク受け面24またはワイパ3がノズル302に対向する位置になるように、ワイパユニット4を移動させる。
【0249】
これにより、ノズル302が移動停止している期間を有効活用して、ノズル302から乾燥インクを排出し、ノズル302をクリーニングすることができる。また、インク受け面24やワイパ3が被描画物100に衝突することを回避しつつ、位置が固定されたインク受け面24やワイパ3に向けてノズル302が移動する場合に比べて、ノズル302が移動する時間を短縮できるため、少ないダウンタイムで、高品質描画を継続して行うことができる。
【0250】
キャリッジ1は、ノズル302を有するノズル面302aを備えたヘッド300を備え、ヘッド300は、液室309と、液室309とノズル302の間の流路を開閉する開閉部材の一例である弁体307と、弁体307を駆動する圧電素子305と、を収納するハウジング304を備える。
【符号の説明】
【0251】
1000 液体吐出装置
1 キャリッジ(液体吐出ユニットの一例)
3 ワイパ(突出部、接触部の一例)
3A 第1のワイパ(第1の突出部の一例)
3B 第2のワイパ(第2の突出部の一例)
3H 上端面
4 ワイパユニット(移動部の一例)
5 洗浄液供給部
6 洗浄液回収部材(液体保持部、洗浄液保持部の一例)
7 ヘッド固定板、8H、8L ガイド板(筐体の一例)
8 筐体(保持部の一例)
12 洗浄液回収チューブ(可撓性の管の一例)
23 凸部(突出部の一例)
24 インク受け面(液体受け面の一例)
93 シリンダ
100 被描画物(対象物の一例)
101 X軸レール、102 Y軸レール、103 Z軸レール(保持部、ガイド部の一例)
230 コンプレッサ(加圧空気供給部の一例)
240 廃液タンク(洗浄液回収部の一例)
242 真空発生器(負圧発生部の一例)
300 ヘッド
302 ノズル(吐出口の一例)
302a ノズル面(液体吐出面の一例)
330 インクタンク(液体保持部の一例)
335 濃度検出部
500 制御部
702 描画対象物
830 レール
【先行技術文献】
【特許文献】
【0252】
【特許文献1】特開平9-52372号公報
【特許文献2】特開2018‐001715号公報
【手続補正書】
【提出日】2024-09-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に向けて液体を吐出する吐出口と、
前記吐出口から吐出された前記液体を受ける液体受け面または前記吐出口に接触する接触部を保持し、前記液体受け面または前記接触部が前記吐出口に対向する位置と、前記液体受け面または前記接触部が前記吐出口に対向しない位置の間で、移動可能な移動部と、
前記吐出口と前記移動部とを有する液体吐出ユニットと、
前記液体吐出ユニットを移動可能に保持するガイド部と、
を備え、
前記移動部は、前記吐出口に対して前記吐出する方向と直交する方向に移動可能である液体吐出装置。
【請求項2】
前記移動部は、前記液体受け面および前記接触部を保持する請求項1記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記液体吐出ユニットは、前記吐出口を前記吐出する方向に移動可能に保持する保持部を更に有する請求項1記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記ガイド部は、前記液体吐出ユニットを前記吐出する方向と直交する方向に移動可能に保持する請求項1記載の液体吐出装置。