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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161097
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】硬化物およびプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20241108BHJP
   G03F 7/075 20060101ALI20241108BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/075 501
H05K3/28 D
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024144090
(22)【出願日】2024-08-26
(62)【分割の表示】P 2023570295の分割
【原出願日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2022052565
(32)【優先日】2022-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 勉
(72)【発明者】
【氏名】加藤 文崇
(72)【発明者】
【氏名】徳光 香代子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 那月
(72)【発明者】
【氏名】岡本 大地
(72)【発明者】
【氏名】志村 優之
(57)【要約】
【課題】無機フィラーを含有しながらも解像性に優れ、且つ、電子部品実装時の基板の反りを抑制することができる感光性樹脂組成物の硬化物を提供する。
【解決手段】アルカリ可溶性樹脂と光重合開始剤と無機フィラーとを少なくとも含んでなる感光性樹脂組成物の硬化物であって、前記無機フィラーが、感光性樹脂組成物全体に対して85質量%以下の割合で含まれ、前記硬化物の弾性率が、4~12GPaであり、前記硬化物を25℃、相対湿度10%の環境下に60分間放置した後の前記硬化物の吸水率をA(%)、25℃、相対湿度60%の環境下に60分間放置した後の前記硬化物の吸水率をB(%)、とした場合に、A≦0.3%、かつB-A≦0.3、を満足する硬化物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ可溶性樹脂と光重合開始剤と無機フィラーとを少なくとも含んでなる感光性樹脂組成物の硬化物であって、
前記無機フィラーが、感光性樹脂組成物全体に対して85質量%以下の割合で含まれ、
前記硬化物の弾性率が、4~12GPaであり、
前記硬化物を、
25℃、相対湿度10%の環境下に60分間放置した後の前記硬化物の吸水率をA(%)、
25℃、相対湿度60%の環境下に60分間放置した後の前記硬化物の吸水率をB(%)、とした場合に、
A≦0.3%、かつ
B-A≦0.3
を満足することを特徴とする、硬化物。
【請求項2】
前記無機フィラーが、感光性樹脂組成物全体に対して45~65質量%含まれる、請求項1に記載の硬化物。
【請求項3】
前記無機フィラーは、シランカップリング剤により表面処理されたものである、請求項1に記載の硬化物。
【請求項4】
前記感光性樹脂組成物は、前記感光性樹脂組成物全体に対して0.01~10質量%の配合量の増感剤をさらに含む、請求項1に記載の硬化物。
【請求項5】
前記増感剤が、エステル結合を有するアントラキノン系増感剤である、請求項4に記載の硬化物。
【請求項6】
基板と、前記基板上に設けられた、請求項1~5のいずれか一項に記載の硬化物からなる被膜と、を備えたプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化物に関し、より詳細には、ソルダーレジスト等の絶縁層として好適に使用できる感光性樹脂組成物の硬化物、および硬化物を用いたプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子機器などに用いられるプリント配線板において、プリント配線板に電子部品を実装する際のはんだリフローなどの工程においてプリント配線板の不要な部分にはんだが付着するのを防止するために、回路パターンの形成された基板上の接続孔を除く領域にソルダーレジスト層が形成されている。ソルダーレジスト層は、基板に感光性樹脂組成物を塗布、乾燥し、露光、現像によりパターン形成した後、パターン形成された樹脂を加熱ないし光照射によって本硬化させる、いわゆるフォトソルダーレジストによって形成されるのが主流となっている。また、上記したような液状の感光性樹脂組成物を使用することなく、感光性のドライフィルムを使用してソルダーレジスト層を形成することも提案されている。
【0003】
これら感光性樹脂組成物や感光性ドライフィルムには、露光、現像が可能なようにアルカリ可溶性の感光性樹脂成分が含まれており、必要に応じてその他の光重合性モノマーや、耐熱性や基板密着性等を考慮してエポキシ等の熱硬化性成分が含まれている。また、線膨張係数を低減してソルダーレジスト層の剥離や基板の反りを抑制するため、感光性樹脂組成物には無機フィラーが配合されることがある(特許文献1等)。
【0004】
一方、無機フィラーの配合量が増えるに従い、線膨張係数が低い硬化物が得られるものの、露光時の解像性が低下する傾向にある。そのため、無機フィラーを含有しながらも解像性の高い感光性樹脂組成物として、特定の光重合開始剤を用いたり、増感剤を併用することが行われている(特許文献2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-72834号公報
【特許文献2】国際公開第2015-16362号パンフレット
【発明の概要】
【0006】
上記のようにして製造されたプリント配線板は、パウチ包装等によって低湿度環境下におかれ、電子部品を実装する段階でパウチ包装から取り出されて使用される。パウチ包装から基板を取り出し、基板に電子部品を実装するまでに一定の時間が経過すると、基板の反りが発生し実装不良が生じることがあった。一方、上記したような無機フィラーの配合量が多い感光性樹脂組成物を用いたものは、電子部品実装時の基板の反りは生じにくいが、解像性が低下する傾向にある。
【0007】
したがって、本発明の目的は、解像性が高く、且つ、電子部品実装時の基板の反りを抑制することができる感光性樹脂組成物の硬化物を提供することである。
【0008】
上記の課題に対して本発明者らが検討を行ったところ、感光性樹脂組成物中に含まれる無機フィラーの含有量を一定値以下とし、かつ所定硬化条件にて硬化させた硬化物の吸水率が一定値以下となるような感光性樹脂組成物とすることにより、優れた解像性を維持しながら、プリント配線基板とした場合であっても反りの低減が可能であるとの知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。即ち、本発明の要旨は以下のとおりである。
【0009】
[1] アルカリ可溶性樹脂と光重合開始剤と無機フィラーとを少なくとも含んでなる感光性樹脂組成物の硬化物であって、
前記無機フィラーが、感光性樹脂組成物全体に対して85質量%以下の割合で含まれ、
前記硬化物の弾性率が、4~12GPaであり、
前記硬化物を、
25℃、相対湿度10%の環境下に60分間放置した後の前記硬化物の吸水率をA(%)、
25℃、相対湿度60%の環境下に60分間放置した後の前記硬化物の吸水率をB(%)、とした場合に、
A≦0.3%、かつ
B-A≦0.3
を満足することを特徴とする、硬化物。
[2] 前記無機フィラーが、感光性樹脂組成物全体に対して45~65質量%含まれる、[1]に記載の硬化物。
[3] 前記無機フィラーは、シランカップリング剤により表面処理されたものである、[1]に記載の硬化物。
[4] 前記感光性樹脂組成物は、前記感光性樹脂組成物全体に対して0.01~10質量%の配合量の増感剤をさらに含む、[1]に記載の硬化物。
[5] 前記増感剤が、エステル結合を有するアントラキノン系増感剤である、[4]に記載の硬化物。
[6] 基板と、前記基板上に設けられた、[1]~[5]のいずれか一項に記載の硬化物からなる被膜と、を備えたプリント配線板。
【0010】
本発明によれば、無機フィラーが所定量以下の割合で含まれ、かつ所定の吸水率特性を有する硬化物とすることにより、無機フィラーを含有しながらも解像性が高く、且つ、電子部品実装時の基板の反りを抑制することができる感光性樹脂組成物の硬化物を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[硬化物]
本発明は、アルカリ可溶性樹脂と光重合開始剤と無機フィラーとを少なくとも含む感光性樹脂組成物の硬化物であって、硬化物の弾性率が、4~12GPaであり、前記硬化物を25℃、相対湿度10%の環境下に60分間放置した後の前記硬化物の25℃、相対湿度10%の環境下に60分間放置した後の吸水率をA(%)、25℃、相対湿度60%の環境下に60分間放置した後の前記硬化物の吸水率をB(%)、とした場合に、
A≦0.3、かつ
B-A≦0.3
を満たすような硬化物を提供するものである。無機フィラーを感光性樹脂組成物全体に対して85質量%以下の割合で含み、その硬化物の吸水率が上記のように所定範囲となるように感光性樹脂組成物の組成や硬化条件を調整することで、解像性が高く、且つ、電子部品実装時の基板の反りを抑制することができる。この理由は定かではないが以下のように考えられる。
【0012】
感光性樹脂組成物を硬化させた際の硬化物の吸水率は、感光性樹脂組成物を構成する成分にもよるが、成分種の吸水性のみならず架橋の程度といった硬化物を構成する成分の相互作用も関係するものと考えられる。本発明においては、弾性率が4~12GPaの範囲にある硬化物とし、硬化物の吸水率が低いほどプリント配線板の反りが抑制され、また、このような硬化物とした際の吸水率が低くなるような感光性樹脂組成物を使用することで、感光性樹脂組成物を基板に塗布、ないし感光性樹脂組成物の乾燥塗膜(ドライフィルム)を基板に貼合した際に生じる基板の反りも低減される。その結果、基板の反りの影響による解像性の低下が抑制されたものと考えられる。すなわち、硬化物の弾性率が所定の範囲にあり、吸水率が一定値以下となるように感光性樹脂組成物の組成の調整と硬化条件の調整によって、感光性樹脂組成物の硬化前の基板の反りと、硬化後の基板の反りの両方を同時に低減することができるものと考えられる。
【0013】
本発明の硬化物は、解像性と基板の反り抑制の観点から、弾性率は6~12GPaの範囲であることが好ましく、7~9GPaの範囲であることがより好ましい。なお、本発明において硬化物の弾性率は、JIS K 7127に準拠して測定された応力-ひずみ曲線から算出された値を意味し、具体的には、硬化物について引張試験機を用いて25℃の環境下で引張速度1mm/分の条件で引張試験を行い、得られた応力-ひずみ曲線から、応力が2N~7Nの間で算出される直線の傾きを弾性率とする。
【0014】
本発明の硬化物は、解像性と基板の反り抑制の観点から、Aの値は0.25%以下であることがこのましく、0.2%以下であることが好ましい。すなわち、乾燥状態(相対湿度10%)での硬化物の吸水率は低い方が好ましい。また、B-Aの値は0.25%以下であることが好ましく、0.2%であることがより好ましい。なお、本発明において、硬化物の吸水率は、具体的には、以下のように測定することができる。
【0015】
先ず、感光性樹脂組成物を、支持体として、厚み200μm、サイズ100×100mmの銅張積層板(MCL-E-770G、昭和電工株式会社製、銅厚18μm)上に、硬化後の膜厚が20μmとなるように全面に塗布して乾燥塗膜を形成し、その後、乾燥塗膜に露光を行い、次いで加熱して塗膜を硬化させた後、支持体から硬化した塗膜を剥離することで硬化物を得る。剥離した硬化物を秤量皿に取り分け、硬化物を100℃の環境下で1時間放置した状態(絶乾状態)での硬化物の質量をWとする。なお、秤量皿に取り分ける試料の量としては10~50mg程度であってもよい。
次いで、硬化物を、25℃、相対湿度10%の環境下に60分間放置した後の硬化物の質量を測定する(この時の質量をW10とする)。
また、硬化物を、25℃、相対湿度60%の環境下に60分間放置した後の硬化物の質量を測定する(この時の質量をW60とする)。
硬化物の吸水率AおよびBは以下のように定義される。
吸水率A(%)=(W10-W)/W×100
吸水率B(%)=(W60-W)/W×100
【0016】
上記で例示した測定は、感光性樹脂組成物から硬化物を形成する場合の硬化物の吸水率を測定する手順を示すものであり、予め銅張積層板等の支持体上に硬化物の被膜が設けられている場合も同様に測定できることは言うまでもない。例えば、予め支持体上に硬化物の被膜が設けられている場合は、硬化物被膜の表面を剥離ないし削り取ったものを試料として使用し、上記のとおり、W0、10、60のそれぞれの値を測定することで、吸水率Aおよび吸水率Bを測定することができる。
【0017】
硬化物の弾性率および吸水率は、感光性樹脂組成物の構成成分、当該各成分の配合割合、および硬化条件等を適宜調整することにより制御することができる。以下、本発明による感光性樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0018】
<アルカリ可溶性樹脂>
アルカリ可溶性樹脂は、アルカリ可溶される樹脂であれば何れでもよく、公知慣用のものが使用される。アルカリ可溶性樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。例示としては、カルボキシル基含有樹脂や、フェノール性水酸基含有樹脂のような水溶性樹脂等が挙げられる。なかでも現像性に優れることより、カルボキシル基含有樹脂やフェノール性水酸基含有樹脂が好ましく、カルボキシル基含有樹脂がより好ましい。アルカリ可溶性樹脂が、カルボキシル基を含むことにより、アルカリ現像性とすることができる。また、感光性の観点から、カルボキシル基の他に、分子内にエチレン性不飽和二重結合を有することが好ましいが、エチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のみを使用してもよい。カルボキシル基含有樹脂がエチレン性不飽和二重結合を有さない場合は、組成物を光硬化性とするために光重合性モノマーを併用する必要がある。エチレン性不飽和二重結合としては、アクリル酸もしくはメタアクリル酸またはそれらの誘導体由来のものが好ましい。
【0019】
カルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下のような化合物(オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよい)を挙げることができる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0020】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0021】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキサイド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0022】
(3)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸等のエチレン性不飽和二重結合を有するモノカルボン酸化合物との反応物の部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0023】
(4)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子内に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0024】
(5)前記(2)または(3)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子内に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0025】
(6)2官能またはそれ以上の多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0026】
(7)2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0027】
(8)2官能オキセタン樹脂にアジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0028】
(9)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0029】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0030】
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0031】
(12)前記(1)~(11)の樹脂にさらに1分子内に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0032】
これらカルボキシル基含有樹脂は、前記列挙したもの限らず使用することができ、1種類を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0033】
カルボキシル基含有樹脂の酸価は、40~150mgKOH/gであることが好ましい。カルボキシル基含有樹脂の酸価が40mgKOH/g以上とすることにより、アルカリ現像が良好になる。また、酸価を150mgKOH/gを以下とすることで、良好なレジストパターンの描画をし易くできる。より好ましくは、50~130mgKOH/gである。
【0034】
カルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000~150,000であることが好ましい。重量平均分子量が2,000以上とすることにより、タックフリー性能や解像度を向上させることができる。また、重量平均分子量が150,000以下とすることで、現像性や貯蔵安定性を向上させることができる。より好ましくは、5,000~15,000である。なお、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0035】
カルボキシル基含有樹脂の配合量は、感光性樹脂組成物中において、固形分換算で、10~50質量%であることが好ましい。10質量%以上とすることにより塗膜強度を向上させることができる。また50質量%以下とすることで粘性が適当となり印刷性が向上する。より好ましくは、10~30質量%である。
【0036】
<光重合開始剤>
本発明による感光性樹脂組成物は、光重合させるために光重合開始剤を含む。光重合開始剤としては、公知のものを用いることができ、例えば、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のα-アミノアセトフェノン系光重合開始剤:1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤;ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn-プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル等のベンゾイン系光重合開始剤;ベンゾインアルキルエーテル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、p-メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系光重合開始剤;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン等のアセトフェノン系光重合開始剤;チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤;アントラキノン、クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン系光重合開始剤;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール系光重合開始剤;エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p-ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル系光重合開始剤;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル系光重合開始剤;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(2-(1-ピル-1-イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン系光重合開始剤;等を挙げることができる。これら光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
市販されるα-アミノアセトフェノン系光重合開始剤としては、IGM Resins社製のOmnirad 907、369、369E、379等が挙げられる。
市販されるアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、IGM Resins社製のOmnirad 819等が挙げられる。
市販されるチタノセン系光重合開始剤としては、Yueyang Kimoutain Sci-tech Co.,Ltd.製のJMT-784、湖北固潤科技股分有限公司製のGR-FMT等が挙げられる。
【0038】
また、分子内に2個のオキシムエステル基を有する光重合開始剤も好適に用いることができ、具体的には、下記一般式(I)で表されるカルバゾール構造を有するオキシムエステル化合物が挙げられる。
【0039】
【化1】
【0040】
上記式中、Xは、水素原子、炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、フェニル基、フェニル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)を表し、Y、Zはそれぞれ、水素原子、炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、ハロゲン基、フェニル基、フェニル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、ナフチル基(炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~8のアルキル基を持つアルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基により置換されている)、アンスリル基、ピリジル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基を表し、Arは、炭素数1~10のアルキレン、ビニレン、フェニレン、ビフェニレン、ピリジレン、ナフチレン、チオフェン、アントリレン、チエニレン、フリレン、2,5-ピロール-ジイル、4,4’-スチルベン-ジイル、4,2’-スチレン-ジイルを表し、nは0または1の整数である。
【0041】
特に、上記式中、X、Yが、それぞれ、メチル基またはエチル基であり、Zがメチルまたはフェニルであり、nが0であり、Arが、フェニレン、ナフチレン、チオフェンまたはチエニレンであるオキシムエステル系光重合開始剤が好ましい。
【0042】
感光性樹脂組成物における光重合開始剤の配合量は、カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、固形分換算で1~50質量部であることが好ましく、1~20質量部であることがより好ましい。これにより、深部の硬化性を向上することができる。
【0043】
<増感剤>
本発明の感光性樹脂組成物は、上記した光重合開始剤と併用して増感剤を含むことが好ましい。増感剤を併用することにより、後記する無機フィラーの配合量を増やさずとも硬化物の吸水率を低減でき、且つ解像性の硬い硬化物を得ることができる。
【0044】
増感剤としては、従来公知のものを使用することができ、例えばベンゾイン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、およびキサントン化合物などを挙げることができる。これらのなかでも、チオキサントン化合物やアントラキノン系化合物が深部硬化性の観点から好ましく使用することができる。
【0045】
また、上記した増感剤のなかでも、エステル基、アミノ基といった官能基を有する化合物は、上記したアルカリ可溶性樹脂や後記する光重合性モノマーと反応すると考えられ、感光性樹脂組成物を硬化させた硬化物は、部分的に架橋構造が形成される。その結果、硬化物の吸水率をより一層、低減することができる。このような官能基を有する増感剤としては、例えば、下記式で表されるアントラキノン系増感剤が挙げられる。
【0046】
【化2】
【0047】
上記アントラキノン系増感剤は市販のものを使用してもよく、例えばアントラキュア UVS-581」(川崎化成工業株式会社製)が挙げられる。
【0048】
増感剤の配合量は、感光性樹脂組成物全体に対して0.01~10質量%であることが好ましく、0.01~3質量%であることがより好ましい。これにより、優れた解像性を維持しながら、硬化物の吸水性を低減することができる。
【0049】
<無機フィラー>
本発明による感光性樹脂組成物は、無機フィラーを含む。無機フィラーの配合により、硬化物の吸水率を低減するとともに、硬化物に必要が強度を付与し、熱膨張係数を低減することができる。無機フィラーとしては、公知のものを使用でき、特に、シリカ、タルク、マイカ、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、フライアッシュ、脱水汚泥、カオリン、クレー、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、燐酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、シリカバルーン、ガラスフレーク、ガラスバルーン、製鉄スラグ、銅、鉄、酸化鉄、センダスト、アルニコ磁石、各種フェライト等の磁性粉、セメント、ガラス粉末、ノイブルグ珪土、珪藻土、三酸化アンチモン、マグネシウムオキシサルフェイト、水和アルミニウム、水和石膏、ミョウバンおよび硫酸バリウム等が挙げられる。これら無機フィラーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記したなかでも、シリカが好ましい。
【0050】
無機フィラーは、分散性等の観点から、平均粒径(D50)が0.1~100μmであることが好ましく、0.1~50μmであることがより好ましい。なお、平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法を用いて得られる体積累積50%における粒径を意味する。また、フィラーの平均粒径は、感光性樹脂組成物を調製(予備攪拌、混練)する前のフィラーを上記のようにして測定した値をいうものとする。
【0051】
感光性樹脂組成物における無機フィラーの配合量は、硬化物の弾性率および吸水率と解像性との両立の観点から、感光性樹脂組成物全体に対して85質量%以下とする必要がある。85質量%を超えると、硬化物とした場合の吸水率は低減し反りが抑制されるものの、解像性が不十分となる。無機フィラーの配合量は、45~85質量%であることが好ましく、45~65質量%であることがより好ましい。
【0052】
上記したフィラーは、感光性樹脂組成物中での分散性を高めるために表面処理されたものであってもよい。表面処理がされている無機フィラーを使用することで、硬化物の吸水率をより低減することができ、その結果、プリント配線基板の反りを低減することができる。表面処理方法は特に限定されず、公知慣用の方法を用いればよいが、硬化性反応基を有する表面処理剤、例えば、硬化性反応基を有機基として有するカップリング剤等で無機フィラーの表面を処理することが好ましい。
【0053】
硬化性反応基としては光硬化性反応基や熱硬化性反応基が挙げられる。光硬化性反応基としては、ビニル基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基等のエチレン性不飽和基が挙げられる。中でも、ビニル基および(メタ)アクリル基の少なくともいずれか1種 が好ましい。熱硬化性反応基としては、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、アミノ基、イミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、メルカプト基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、オキサゾリン基等が挙げられる。中でも、アミノ基およびエポキシ基のいずれか少なくとも1種が好ましい。なお、表面処理された無機フィラーは、熱硬化性反応基に加え、光硬化性反応基を有していてもよい。
【0054】
カップリング剤としては、シラン系、チタネート系、アルミネート系およびジルコアルミネート系等のカップリング剤が使用できる。中でもシラン系カップリング剤が好ましい。かかるシラン系カップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N-(2-アミノメチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができ、これらは単独で、あるいは併用して使用することができる。これらのシラン系カップリング剤は、あらかじめフィラーの表面に吸着あるいは反応により固定化されていることが好ましい。ここで、球状シリカ100質量部に対するカップリング剤の処理量は、0.5~10質量部であることが好ましい。
【0055】
表面処理がされた無機フィラーは、表面処理された状態で前記樹脂層に含有されていればよく、感光性樹脂組成物に無機フィラーとシランカップリング剤とを別々に配合して組成物中で無機フィラーが表面処理されてもよいが、予め表面処理した無機フィラーを配合することが好ましい。予め表面処理した無機フィラーを配合することによって、別々に配合した場合に残存しうる表面処理で消費されなかったシランカップリング剤によるクラック等の発生を抑制することができる。予め表面処理する場合は、アルカリ可溶性樹脂や溶剤等に無機フィラーを予備分散した予備分散液を配合することが好ましく、表面処理した無機フィラーを溶剤に予備分散し、該予備分散液を組成物に配合するか、表面未処理の無機フィラーを溶剤に予備分散する際に十分に表面処理した後、予備分散液を組成物に配合することがより好ましい。
【0056】
<光重合性モノマー>
本発明の感光性樹脂組成物は、光重合性モノマーが含まれていてもよい。光重合性モノマーは、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーである。このような光重合性モノマーとしては、例えば、慣用公知のポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カーボネート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。具体的には、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート類;2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート等のヒドロキシアルキルアクリレート類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレンオキサイド誘導体のモノまたはジアクリレート類;N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリレート等のアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコールまたはこれらのアルキレンオキサイド付加物あるいはε-カプロラクトン付加物等の多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート等のフェノール類またはこれらのアルキレンオキサイド付加物等の多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等のグリシジルエーテルのアクリレート類;前記に限らず、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端ポリブタジエン、ポリエステルポリオール等のポリオールを直接アクリレート化、もしくは、ジイソシアネートを介してウレタンアクリレート化したアクリレート類およびメラミンアクリレート、および前記アクリレートに対応する各メタクリレート類の少なくともいずれか1種から適宜選択して用いることができる。このような光重合性モノマーは、反応性希釈剤としても用いることができる。
【0057】
光重合性モノマーは、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。光重合性モノマーの配合量は、カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、固形分換算で0.5~30質量部であることが好ましい。配合量が0.5質量部以上であると、光硬化性が良好であり、活性エネルギー線照射後のアルカリ現像において、パターン形成がしやすい。また、配合量が30質量部以下であると、ハレーションが生じにくく良好な解像性が得られる。
【0058】
<熱硬化性成分>
本発明の感光性樹脂組成物は、熱硬化性成分が含まれていてもよい。熱硬化性成分としては、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、アミノ樹脂、マレイミド化合物、ベンゾオキサジン樹脂、カルボジイミド樹脂、シクロカーボネート化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂などの公知慣用のものが挙げられる。これらの中でも好ましい熱硬化性成分は、エポキシ樹脂である。
【0059】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
市販されるエポキシ樹脂としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製のjER 828、806、807、YX8000、YX8034、834、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製のYD-128、YDF-170、ZX-1059、ST-3000、DIC株式会社製のEPICLON 830、835、840、850、N-730A、N-695および日本化薬株式会社製のRE-306等が挙げられる。
【0061】
感光性樹脂組成物におけるエポキシ樹脂のエポキシ基の当量は、カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基の当量1に対して、固形分換算で0.5~2.5であることが好ましい。0.5当量以上とすることで、硬化物におけるカルボキシル基の残存を防止して、良好な耐熱性や耐アルカリ性、電気絶縁性等を得ることができる。また、上記配合量を2.5当量以下とすることで、低分子量の環状(チオ)エーテル基が乾燥塗膜に残存することを防止して、硬化物の強度等を良好に確保することができる。
【0062】
<熱硬化触媒>
本発明の感光性樹脂組成物は、上記した熱硬化性成分の硬化を促進するための熱硬化触媒を含んでいてもよい。熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルフォスフィン等のリン化合物等が挙げられる。また、市販されているものとしては、例えば四国化成工業株式会社製の2MZ-A、2MZ-OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU-CAT 3513N(ジメチルアミン系化合物の商品名)、DBU、DBN、U-CAT SA 102(いずれも二環式アミジン化合物およびその塩)などが挙げられる。
【0063】
上記した化合物に限られるものではなく、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基およびオキセタニル基の少なくとも何れか1種とカルボキシル基の反応を促進するものであればよく、単独でまたは2種以上を混合して使用してもよい。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS-トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を熱硬化触媒と併用する。
【0064】
熱硬化触媒は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。熱硬化触媒の配合量は、樹脂組成物の保存安定性や硬化被膜の耐熱性の観点から、カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して固形分換算で0.01~30質量部であることが好ましく、0.1~20質量部であることがより好ましい。
【0065】
<その他の成分>
本発明による感光性樹脂組成物は、上記した成分以外にも必要に応じて、着色剤、エラストマー、メルカプト化合物、ウレタン化触媒、チキソ化剤、密着促進剤、ブロック共重合体、連鎖移動剤、重合禁止剤、銅害防止剤、酸化防止剤、防錆剤、有機ベントナイト、モンモリロナイト等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤およびレベリング剤の少なくともいずれか1種、フォスフィン酸塩、燐酸エステル誘導体、フォスファゼン化合物等のリン化合物等の難燃剤などの成分を配合することができる。これらは、電子材料の分野において公知の物を使用することができる。
【0066】
本発明の感光性樹脂組成物には、調製のし易さや塗布性の観点から有機溶剤を配合してもよい。有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤など、公知慣用の有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
感光性樹脂組成物における有機溶剤の配合量は、感光性樹脂組成物を構成する材料に応じ適宜変更することができ、例えば、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して固形分換算で30~300質量部とすることができる。
【0068】
本発明の感光性樹脂組成物は、ドライフィルム化して用いても液状として用いてもよい。また、液状として用いる場合は、1液性でも2液性以上でもよい。
【0069】
<ドライフィルム>
上記した感光性樹脂組成物は、第一のフィルムと、当該第一のフィルム上に形成された感光性樹脂組成物からなる樹脂層とを備えたドライフィルムの形態とすることもできる。本発明の硬化物は、上記した感光性樹脂組成物、または上記したドライフィルムの樹脂層を硬化して得られるものである。
【0070】
本発明によるドライフィルムにおける第一のフィルムとは、基板等の基材上に、ドライフィルム上に形成された感光性樹脂組成物からなる樹脂層側が接するように加熱等によりラミネートして一体成形する際には少なくとも樹脂層に接着しているものをいう。第一のフィルムは、ラミネート後の工程において、樹脂層から剥離しても良い。特に、本発明においては露光後の工程において、樹脂層から剥離することが好ましい。
【0071】
ドライフィルムを作製するには、本発明の感光性樹脂組成物を有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等で第一のフィルム上に均一な厚さに塗布し、通常、50~130℃の温度で1~30分間乾燥して膜を得ることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、1~150μm、好ましくは10~60μmの範囲で適宜選択される。
【0072】
第一のフィルムとしては、公知のものであれば特に制限なく使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等の熱可塑性樹脂からなるフィルムを好適に使用することができる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度、取扱性等の観点から、ポリエステルフィルムが好ましい。また、これらフィルムの積層体を第一のフィルムとして使用することもできる。
【0073】
また、上記したような熱可塑性樹脂フィルムは、機械的強度向上の観点から、一軸方向または二軸方向に延伸されたフィルムであることが好ましい。
【0074】
第一のフィルムの厚さは、特に制限されるものではないが、例えば、10μm~150μmとすることができる。
【0075】
第一のフィルム上に本発明の感光性樹脂組成物の樹脂層を形成した後、さらに、樹脂層の表面に塵が付着するのを防ぐなどの目的で、樹脂層の表面に剥離可能な第二のフィルムを積層することが好ましい。本発明によるドライフィルムにおける第二のフィルムとは、基板等の基材上にドライフィルムの樹脂層側が接するように加熱等によりラミネートして一体成形する際、ラミネート前に樹脂層から剥離するものをいう。
【0076】
樹脂層から剥離可能な第二のフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができ、第二のフィルムを剥離するときに樹脂層と第一のフィルムとの接着力よりも樹脂層と第二のフィルムとの接着力がより小さいものであればよい。
【0077】
第二のフィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、10μm~150μmとすることができる。
【0078】
[プリント配線版]
本発明のプリント配線板は、基板と、前記基板上に設けられた硬化物からなる硬化被膜とを備えるものである。本発明の硬化物は、上述のとおり、感光性樹脂組成物またはドライフィルムの樹脂層から得ることができる。本発明のプリント配線板の製造方法としては、例えば、本発明の感光性樹脂組成物を、上記有機溶剤を用いて塗布方法に適した粘度に調整して、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコート法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布した後、60~100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることで、タックフリーの樹脂層を形成する。また、ドライフィルムの場合、ラミネーター等により樹脂層が基材と接触するように基材上に貼り合わせた後、第一のフィルムを剥がすことにより、基材上に樹脂層を形成する。
【0079】
上記基材としては、あらかじめ銅等により回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキサイド・シアネート等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので、全てのグレード(FR-4等)の銅張積層板、その他、金属基板、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0080】
ドライフィルムの形態である場合には、基材上への貼合は、真空ラミネーター等を用いて、加圧および加熱下で行うことが好ましい。このような真空ラミネーターを使用することにより、回路形成された基板を用いた場合に、回路基板表面に凹凸があっても、ドライフィルムが回路基板に密着するため、気泡の混入がなく、また、基板表面の凹部の穴埋め性も向上する。加圧条件は、0.1~2.0MPa程度であることが好ましく、また、加熱条件は、40~120℃であることが好ましい。
【0081】
本発明の感光性樹脂組成物が有機溶剤を含む場合、基材表面に感光性樹脂組成物を塗布した後、揮発乾燥を行うことが好ましい。揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより基材に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0082】
基材上に樹脂層を形成後、所定のパターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば、0.3~3質量%炭酸ソーダ水溶液)により現像して硬化物のパターンを形成する。ドライフィルムの場合には、露光後、ドライフィルムから第一のフィルムを剥離して現像を行うことにより、基材上にパターニングされた硬化物を形成する。なお、ドライフィルムの形態である場合、特性を損なわない範囲であれば、露光前にドライフィルムから第一のフィルムを剥離して、露出した樹脂層を露光および現像しても良い。さらに、硬化物に活性エネルギー線を照射後に加熱硬化(例えば、100~220℃)、もしくは加熱硬化後に活性エネルギー線を照射、または、加熱硬化のみで最終仕上げ硬化(本硬化)させることにより、密着性、硬度等の諸特性に優れた硬化被膜を形成することができる。
【0083】
上記のようにして硬化物を作製した場合において、硬化物の弾性率は硬化条件によっても調整することができる。弾性率は硬化物の変形のしにくさを表す物性値であり、例えば、光硬化および熱硬化の条件によって、反応性基の架橋反応の進行度合いが変化し、その結果、硬化物の弾性率にも影響を与える。すなわち、架橋反応の進行度合いが異なると、応力をかけた際の硬化物のひずみ量が変化し、弾性率の値が異なる。
【0084】
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350~450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のランプ光源またはレーザー光源としては、最大波長が350~450nmの範囲にあるものでよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には10~1000mJ/cm、好ましくは20~800mJ/cmの範囲内とすることができる。
【0085】
上記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液が使用できる。
【0086】
上記のようにして基材上に硬化被膜を形成した後、基材上に電子素子等の部品がはんだリフロー処理により実装される。はんだリフロー処理は従来公知の方法により行うことができる。また、はんだリフローは、例えば245~260℃で5~10秒の処理条件により行うのが一般的である。
【0087】
本発明の感光性樹脂組成物またはドライフィルムは、プリント配線板等の電子部品製造用として好適に使用され、より好適には、永久被膜を形成するために使用される。その際、本発明の感光性樹脂組成物またはドライフィルムを用いて、上記した方法等により硬化物を形成する。本発明の感光性樹脂組成物またはドライフィルムの樹脂層が絶縁性である場合、好適には、ソルダーレジストまたはカバーレイまたは層間絶縁層を形成するために使用される。なお、本発明による感光性樹脂組成物は、ソルダーダムを形成するために使用してもよい。
【実施例0088】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0089】
<合成例1(カルボキシル基含有樹脂Aの合成)>
温度計、窒素導入装置、アルキレンオキサイド導入装置、および撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(商品名「ショウノールCRG951」、アイカ工業株式会社製、OH当量:119.4)119.4質量部、水酸化カリウム1.19質量部、およびトルエン119.4質量部を導入し、撹拌しながら系内を窒素置換し、昇温した。次に、プロピレンオキサイド63.8質量部を徐々に滴下し、125~132℃、0~4.8kg/cmで16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56質量部を添加および混合しながら水酸化カリウムを中和して、ノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキサイド反応溶液[固形分:62.1%;水酸基価:182.2mgKOH/g(307.9g/eq.)]を得た。このプロピレンオキサイド反応溶液は、フェノール性水酸基1当量当りプロピレンオキサイドが平均1.08モル付加したものであった。
得られたノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキサイド反応溶液293.0質量部、アクリル酸43.2質量部、メタンスルホン酸11.53質量部、メチルハイドロキノン0.18質量部およびトルエン252.9質量部を、撹拌機、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に導入し、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら110℃で12時間反応させた。反応により生成した水12.6質量部を、トルエンとの共沸混合物として留出させた。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35質量部で中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118.1質量部でトルエンを置換しながら留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。
次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5質量部およびトリフェニルフォスフィン1.22質量部を、撹拌器、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に導入し、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8質量部を徐々に加え、95~101℃で6時間反応させ、冷却後、取り出した。
このようにして、カルボキシル基含有樹脂Aの溶液(固形分:65%;固形分の酸価:87.7mgKOH/g)を得た。
【0090】
<無機フィラーの準備>
無機フィラーとして、以下の2種を準備した。
球状シリカ(デンカ株式会社製SFP-30M、平均粒径:600nm)70gと、溶剤として PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)28gと、メタクリル基 を有するシランカップリング剤(信越化学工業株式会社製KBM-503)2gとを均一分散させて、表面処理無機フィラー(固形分70%)を得た。
【0091】
球状シリカ(デンカ株式会社製SFP-30M、平均粒径:600nm)70gと、溶剤として PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)28gを均一分散させて、表面未処理無機フィラー(固形分70%)を得た。
【0092】
<感光性樹脂組成物の調製>
下記表1に記載の各成分を配合し、3本ロールミルを用いて室温にて混合することにより、同表に記載の各感光性樹脂組成物(実施例1~6、および比較例1~2)を得た。なお、表中の各数値は質量部を示す。
【0093】
なお、下記表1中の各成分*1~*7は、以下のとおりである。
*1:アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤(IGM Resins社製Omnirad 819)
*2:アントラキュア UVS-581(川崎化成工業株式会社製)
*3:KAYACURE DETX-S(日本化薬株式会社)
*4:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(三洋化成工業株式会社製)
*5:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製)
*6:メラミン(日産化学株式会社製、D50=0.5μm、固形分55%)
*7:ジシアンジアミド(三菱ケミカル株式会社製、固形分73%)
*8:フタロシアニンブルー、PIGMENT Yellow 147の混合物(含有割合57:43、固形分10%)
なお、表中の数値は、固形分と溶剤とを含む溶液での配合量を表す。
【0094】
<硬化物の吸水率の測定>
上記のようにして得られた感光性樹脂組成物(実施例1~6および比較例1~2)について、支持体として、厚み200μm、サイズ100×100mmの銅張積層板(MCL-E-770G、昭和電工株式会社製、銅厚18μm)上に、硬化後の膜厚が20μmとなるように全面に感光性樹脂組成物を塗布し、次いで、80℃の熱風循環式乾燥炉(ヤマト科学株式会社製DF610)に30分間乾燥して乾燥塗膜を形成し、その後、乾燥塗膜に、光源としてメタルハライドランプ搭載のUVコンベア炉(東芝株式会社製KUV-28351-XK-DM)を用いて365nmの波長における積算露光量が1000mJ/cm(38mW・cm×26s)となる条件にて露光を行い、次いで150℃の温度で60分間加熱して塗膜を硬化させた後、支持体から硬化した塗膜を剥離することで硬化物を得た。
また、実施例1の感光性樹脂組成物において、積算露光量を500mJ/cm(38mW・cm×13s)に変更し、加熱条件を120℃で60分間に変更した以外は実施例1と同様にして硬化した塗膜を形成し、硬化物(実施例7)を得た。
【0095】
得られた硬化物30mgを秤量皿に取り分け、100℃の環境下で1時間放置した状態(絶乾状態)での各硬化物の質量を測定した(このときの質量をWとする)。
次いで、硬化物を、25℃、相対湿度10%の環境下に60分間放置した後の各硬化物の質量を測定した(このときの質量をW10とする)。
また、硬化物を、25℃、相対湿度60%の環境下に60分間放置した後の各硬化物の質量を測定した(このときの質量をW60とする)。
得られた質量から、下記式により吸水率AおよびBを算出した。
吸水率A(%)=(W10-W)/W×100
吸水率B(%)=(W60-W)/W×100
吸水率AとBの差(B-A)は、下記の表1に示すとおりであった。
【0096】
<硬化物の弾性率の測定>
上記のようにして得られた各硬化物について、10mm×80mmのサイズに裁断した試験片を作製し、引張試験機を用いて、JIS K 7127に準拠して、治具間距離40mm、引張速度1mm/分、25℃の条件にて、応力-ひずみ曲線を得た。得られた曲線について、応力が2N~7Nの間で算出された直線の傾きを、硬化物の弾性率とした。各硬化物の弾性率は、表1に示すとおりであった。
【0097】
<硬化物の評価>
(1)基板の反り
上記と同様にして銅張積層板上に厚さ20μmの硬化被膜(硬化物)を形成した基板を、25℃、相対湿度60%の環境下に1時間放置し、基板の4隅をノギスを用いて反り量を測長し、以下の評価基準により反りの評価を行った。
○:反りの4隅の平均値が5.5mm未満
△:反りの4隅の平均値が5.5mm以上、7.5mm未満
×:反りの4隅の平均値が7.5mm以上
評価結果は下記表1に示されるとおりであった。
【0098】
(2)解像性(アンダーカット)
上記と同様にして銅張積層板上に、各感光性樹脂組成物を硬化後の膜厚が20μmとなるように全面に塗布し、次いで、80℃の熱風循環式乾燥炉(ヤマト科学株式会社製DF610)に30分間乾燥して乾燥塗膜を形成し、乾燥塗膜上に第一のフィルム(東レ株式会社製ルミラーT60 厚さ125μm)をラミネートした。
乾燥塗膜を、光源としてメタルハライドランプ搭載の露光装置(株式会社オーク製作所製HMW-680-GW20)を用いて、SRO80μmのネガマスクを介して、最適露光量でパターン露光した。ここで、最適露光量は、上記で得られた乾燥塗膜を、メタルハライドランプ搭載の露光装置を用いて感度が21段のステップタブレットを介して露光し、液温30℃の0.2質量%NaCO水溶液を用いてスプレー圧0.2MPaの条件で60秒間現像を行った際に残存するステップタブレットのパターンが6段となる露光量とした。
次いで、第一のフィルムを剥離し、液温30℃の濃度が0.2質量%のNaCO水溶液を用いて現像を行い、水洗した。最後に、150℃で60分間硬化させて解像性評価用試験片を作製した。
得られた試験片において、解像性を以下の基準にて評価した。
○:開口上部と底部の開口径との比が0.85以上
△:開口上部と底部の開口径との比が0.85未満、0.70以上
×:開口上部と底部の開口径との比が0.70未満
評価結果は下記表1に示されるとおりであった。
【0099】
【表1】
【0100】
表1からも明らかなように、無機フィラーの含有量が85質量%以下であり、硬化物の弾性率が4~12GPaの範囲にあり、吸水率Aが0.3質量%以下で、かつ吸水率差(B-A)が0.3質量%以下である感光性樹脂組成物(実施例1~7)では、解像性が高く、プリント配線基板の反りを抑制できることがわかる。
一方、無機フィラーの含有量が過剰な感光性樹脂組成物からなる硬化物(比較例1)は、吸水率Aが0.3質量%以下で、かつ吸水率差(B-A)が0.3質量%以下であるものの、弾性率が4~12GPaの範囲外であり、プリント配線基板の反りを抑制できるものの、解像性が不十分である。また、解像性を維持するために無機フィラーの配合量のみを低減した感光性樹脂組成物からなる硬化物(比較例2)は、解像性は改善されるものの、弾性率が12GPaを超え、また吸水率差(B-A)も0.3質量%超となり、基板の反りを抑制することができないことがわかる。