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特開2024-161113転写型及び被転写物、並びにそれら製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161113
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】転写型及び被転写物、並びにそれら製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 59/02 20060101AFI20241108BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20241108BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
B29C59/02 B
B32B27/30 A
B32B27/26
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024144329
(22)【出願日】2024-08-26
(62)【分割の表示】P 2023209440の分割
【原出願日】2020-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 嘉秀
(72)【発明者】
【氏名】川崎 泰史
(57)【要約】
【課題】艶消し性に優れる転写型及び被転写物、並びにそれら製造方法を提供する。
【解決手段】硬化性組成物の硬化膜を有し、前記硬化膜の表面が転写面を構成する転写型であって、前記硬化性組成物が二官能(メタ)アクリレートと三官能以上の多官能(メタ)アクリレートとを含み、真空紫外線の照射によって前記硬化性組成物の塗膜の表面側を硬化させて硬化被膜を形成した後、真空紫外線以外の活性エネルギー線の照射によって塗膜の内部を硬化させることにより、表面側の硬化被膜が座屈して形成されてなるしわ状の凹凸構造を前記転写面に有し、当該転写面のJIS B0601:2013に従う粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が1~1000μmであり、かつISO25178で定義される算術平均高さ(Sa)が0.1~1000μmである、転写型。転写型の転写面が有するしわ状の凹凸構造が転写されてなるしわ状の凹凸構造を被転写面に有する被転写物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性組成物の硬化膜を有し、前記硬化膜の表面が転写面を構成する転写型であって、
硬化性組成物が二官能(メタ)アクリレートと三官能以上の多官能(メタ)アクリレートとを含み、
真空紫外線の照射によって前記硬化性組成物の塗膜の表面側を硬化させて硬化被膜を形成した後、真空紫外線以外の活性エネルギー線の照射によって塗膜の内部を硬化させることにより、表面側の硬化被膜が座屈して形成されてなるしわ状の凹凸構造を前記転写面に有し、
当該転写面のJIS B0601:2013に従う粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が1~1000μmであり、かつISO25178で定義される算術平均高さ(Sa)が0.1~1000μmである、転写型。
【請求項2】
前記転写面の局部傾斜角度の平均値(θa)が2°以上である請求項1に記載の転写型。
【請求項3】
前記転写面の60°グロスが50以下である請求項1または2に記載の転写型。
【請求項4】
前記硬化性組成物が(メタ)アクリレートを含有する請求項1~3のいずれか1項に記載の転写型。
【請求項5】
前記硬化膜を基材上に有する請求項1~4のいずれか1項に記載の転写型。
【請求項6】
前記基材がフィルムである、請求項5に記載の転写型。
【請求項7】
転写型の転写面が有するしわ状の凹凸構造が転写されてなるしわ状の凹凸構造を被転写面に有する被転写物であって、
前記転写面が有するしわ状の凹凸構造は、真空紫外線の照射によって硬化性組成物の塗膜の表面側を硬化させて硬化被膜を形成した後、真空紫外線以外の活性エネルギー線の照射によって塗膜の内部を硬化させることにより、表面側の硬化被膜が座屈して形成されてなる凹凸構造であり、
前記硬化性組成物が二官能(メタ)アクリレートと三官能以上の多官能(メタ)アクリレートとを含み、
前記被転写面のJIS B0601:2013に従う粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が1~1000μmであり、かつISO25178で定義される算術平均高さ(Sa)が0.1~1000μmである、被転写物。
【請求項8】
前記被転写面の局部傾斜角度の平均値(θa)が2°以上である請求項7に記載の被転写物。
【請求項9】
前記被転写面の60°グロスが50以下である請求項7または8に記載の被転写物。
【請求項10】
前記被転写物が硬化性組成物の硬化膜である請求項7~9のいずれか1項に記載の被転写物。
【請求項11】
前記被転写物を構成する硬化性組成物が(メタ)アクリレートを含有する請求項10に記載の被転写物。
【請求項12】
前記硬化膜を基材上に有する請求項10又は11に記載の被転写物。
【請求項13】
前記基材がフィルムである、請求項12に記載の被転写物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写型及び被転写物、並びにそれら製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
壁紙等の建築建材、ディスプレイ用部材、加飾フィルム等の部材に、艶消し性等を付与するために、基材の表面に微細な凹凸を付与することがある。
特許文献1には、建材用化粧シート、冷蔵庫や洗濯機などの家電製品の各種部品、パソコンなどのOA製品の各種部品、包装容器などを成型により製造する際の転写箔用フィルムに、ヘアーライン加工、サンドブラスト加工、梨地加工等により微細な凹凸形状を設ける方法が開示されている。
特許文献2には、液晶ディスプレイのバックライトユニットに用いられる光拡散フィルムの表面凹凸の形成方法として、樹脂バインダーにアクリル系粒子を分散させる方法が開示されている。
特許文献3には、アンチニュートンリング防止として相分離による表面凹凸の形成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-231727号公報
【特許文献2】特開平7-218705号公報
【特許文献3】特開2011-2820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の凹凸形成方法では、十分な艶消し効果が得られない。また、サンドブラスト加工では、フィルム中に残った砂が品質上の問題となることがある。
特許文献2に記載の方法では、アクリル系粒子が使用中に脱落することで、ディスプレイ等に使用する場合に、視認性に支障をきたすことがある。
特許文献3に記載の方法では、互いに非相溶な化合物を使用することで凹凸構造を形成するため、凹凸構造を形成する層において成分が均一とならない。そのため硬度や耐擦傷性が局所的に不均一となり、それらの性能が劣る場所が生じてしまうし、強度が不均一なことから、転写工程において部分的に欠けやすいという欠点もある。また、屈折率も使用する材料によっては面内で変ってしまうという欠点もある。加えて、硬化に寄与しないポリマーを使用してしまうと、凹凸構造全体の硬度や耐擦傷性が落ちてしまうという欠点もあり、転写用途には不向きである。
また、相分離による方法の場合は、互いに非相溶とするために、セルロースエステル類などの極性の高い官能基を有する材料を使用することが必要で、当該材料を使用すると耐湿熱性が悪化し、寸法安定性に劣ることとなり、転写用途には不向きなものとなってしまう。
さらに相分離させるという特性上、レベリングしてしまうために離型剤を入れることができず、転写のためには離型層を設けなければならない(2層構成となる)という欠点もある。
【0005】
本発明は、艶消し性に優れる転写型及び被転写物、並びにそれら製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
[1] 転写面がしわ状の凹凸構造を有しており、当該転写面のJIS B0601:2013に従う粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が1~1000μmであり、かつISO25178で定義される算術平均高さ(Sa)が0.1~1000μmである、転写型。
[2] 前記転写面の局部傾斜角度の平均値(θa)が2°以上である前記[1]に記載の転写型。
[3] 前記転写面の60°グロスが50以下である前記[1]または[2]に記載の転写型。
[4] 前記転写面が硬化性組成物の硬化膜である前記[1]~[3]のいずれかに記載の転写型。
[5] 前記硬化性組成物が(メタ)アクリレートを含有する前記[4]に記載の転写型。
[6] 前記硬化膜を基材上に有する前記[4]又は[5]に記載の転写型。
[7] 前記基材がフィルムである、前記[6]に記載の転写型。
[8] 基材上に硬化性組成物を積層し、真空紫外線を照射して硬化する前記[6]又は[7]に記載の転写型の製造方法。
[9] 被転写面がしわ状の凹凸構造を有しており、当該被転写面のJIS B0601:2013に従う粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が1~1000μmであり、かつISO25178で定義される算術平均高さ(Sa)が0.1~1000μmである、被転写物。
[10] 前記被転写面の局部傾斜角度の平均値(θa)が2°以上である前記[9]に記載の被転写物。
[11] 前記被転写面の60°グロスが50以下である前記[9]または[10]に記載の被転写物。
[12] 前記被転写面が硬化性組成物の硬化膜である前記[9]~[11]のいずれかに記載の被転写物。
[13] 前記硬化性組成物が(メタ)アクリレートを含有する前記[12]に記載の被転写物。
[14] 前記硬化膜を基材上に有する前記[12]又は[13]に記載の被転写物。
[15] 前記基材がフィルムである、前記[14]に記載の被転写物。
[16] 前記[1]~[7]のいずれかに記載の転写型の転写面のしわ状の凹凸構造をネガパターンとして写し取る、前記[9]~[15]のいずれかに記載の被転写物の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の転写型及び被転写物は艶消し性に優れる。本発明の転写型及び被転写物の製造方法によれば、艶消し性に優れる転写型および被転写物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートの総称である。「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの総称である。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0009】
〔転写型〕
本発明の転写型は、転写面がしわ状の凹凸構造を有しており、当該転写面のJIS B0601:2013に従う粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が1~1000μmであり、かつISO25178で定義される算術平均高さ(Sa)が0.1~1000μmである。これにより転写型は艶消し性を有する。本発明の転写型は、艶消し性に優れることから、防眩膜の製造に好適である。
【0010】
転写型は、表面の凹凸構造が硬化膜によるものであることが、耐久性や製造容易性を考慮すると好ましい。
【0011】
(転写型の厚み)
転写型の凹凸構造を形成する層の厚み(硬化膜(凹凸層)の厚み)は、好ましくは0.1~100μm、より好ましくは0.2~20μm、さらに好ましくは0.3~10μm、特に好ましくは0.3~7μmの範囲である。硬化物の厚みが上記範囲内であれば、所望の艶消し性を実現しやすい。
硬化膜の厚みは、凹凸層の最大厚みを示し、電子顕微鏡による断面観察により求められる。
【0012】
(粗さ曲線要素の平均長さ)
硬化膜の凹凸構造における粗さ曲線要素の平均長さは、JIS B0601:2013に従う粗さ曲線要素の平均長さ(RSm、以下単に「RSm」ともいう)である。RSmを算出する際の評価長さは236.87μmとした。RSmの好ましい範囲は、1~1000μmであり、好ましくは1.5~150μm、より好ましくは2~100μm、さらに好ましくは3~60μm、特に好ましくは4~50μm、最も好ましくは5~35μmの範囲である。上記範囲であると艶消し性に優れ、被転写物をディスプレイ等に用いた時の視認性や耐擦傷性も優れ、性能のバランスがとれたものとなる。
【0013】
(算術平均高さ)
硬化膜の凹凸構造における算術平均高さは、ISO25178で定義される算術平均高さ(Sa、以下単に「Sa」ともいう)である。Saを算出する際の評価領域は177.60μm×236.87μmである。Saは、0.1~1000μmであり、好ましくは0.1~100μm、より好ましくは0.15~20μm、さらに好ましくは0.2~10μm、特に好ましくは0.3~5μm、最も好ましくは0.4~3μmの範囲である。上記範囲であると艶消し性に優れ、被転写物をディスプレイ等に用いた時の視認性や耐擦傷性も優れ、性能のバランスがとれたものとなる。
【0014】
(凹凸構造の傾斜角の平均値)
硬化膜の凹凸構造における局部傾斜角度の平均値(θa、以下単に「θa」ともいう)は、後述する実施例の記載の方法により測定することができる。θaを算出する際の評価長さは236.87μmとした。θaは、好ましくは2°以上、より好ましくは4°以上、さらに好ましくは7°以上、特に好ましくは10°以上、最も好ましくは12°以上の範囲であり、上限としては、90°でもよい。θaが高い方が艶消し性に優れる。
【0015】
(ヘイズ)
転写型が硬化膜を有する場合、後述する実施例に記載の方法により測定される硬化膜のヘイズ(haze)は、好ましくは1%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上、特に好ましくは10%以上、最も好ましくは20%以上の範囲であり、上限としては、例えば99%である。ヘイズが上記下限値以上であれば、艶消し性を良好なものとしやすい。
また、特に各種ディスプレイのアンチグレア用に使用する場合は、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上の範囲であり、上限としては、例えば99%である。また用途によっては、高いほど好ましい用途もある。上記下限値以上であれば、アンチグレア性が良好なものとしやすい。
【0016】
(グロス)
後述する実施例に記載の方法により測定される転写面の60°グロス(60°鏡面光沢度)は、好ましくは50以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下、特に好ましくは15以下、最も好ましくは11以下の範囲であり、低いほど好ましい。上記上限値以下であると艶消し性に優れる。
また、同様に20°グロスは、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは10以下、特に好ましくは5以下、最も好ましくは2以下の範囲であり、低いほど好ましい。上記上限値以下であると艶消し性に優れる。
【0017】
(全光線透過率)
転写型の凹凸構造の部分の欠陥を探索する場合、透過性を有することが好ましい。後述する実施例に記載の方法により測定される全光線透過率は、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上の範囲であり、高いほど好ましい(上限値は100%である)。上記範囲であると透過性に優れる。
【0018】
(鉛筆硬度)
後述する実施例に記載の方法により測定される転写面の鉛筆硬度は、F以上であることが好ましく、より好ましくはH以上、さらに好ましくは2H以上である。上記範囲であると耐擦傷性に優れ、転写前後の工程での傷付き防止性に優れ、転写型の傷付きによる欠陥の少ない被転写物が得られる。
【0019】
〔転写型の製造方法〕
本発明の転写型の一例として、硬化膜によるものが挙げられ、活性エネルギー線硬化性の化合物を含む硬化性組成物の硬化物からなるものが挙げられる。
本発明の転写型は、例えば、基材上に硬化性組成物を積層し、真空紫外線を照射して硬化することにより製造できる。 硬化性組成物は、活性エネルギー線硬化性の化合物を含むものが好ましい。硬化性組成物に活性エネルギー線を照射することにより、硬化性組成物の塗膜の表面側が先に硬化して硬化被膜が形成される。その後、塗膜の内部が硬化すると、表面側の硬化塗膜が座屈することで、表面にしわ状の凹凸を有する硬化膜が形成される。硬化性組成物及びこれを用いた硬化膜の製造方法については後で詳しく説明する。
【0020】
(転写型の硬化性組成物)
硬化性組成物は、活性エネルギー線硬化性の化合物の他に、有機溶剤、その他の成分をさらに含むことができる。
【0021】
(活性エネルギー線硬化性の化合物)
活性エネルギー線硬化性の化合物としては、(メタ)アクリレートが好適な材料である。(メタ)アクリレートとしては特に限定はなく、単官能(メタ)アクリレート、二官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレートを一種類以上混合したもの、硬化性樹脂材として市販されているもの、あるいはこれら以外に本実施形態の目的を損なわない範囲において、その他の成分をさらに添加したものを用いることができる。これらの中でも、しわ状の凹凸構造を形成しやすいという観点から、単官能あるいは二官能(メタ)アクリレートが好ましい。また耐擦傷性が必要な用途には、二官能(メタ)アクリレートがより好ましい。多官能(メタ)アクリレートを使用することで耐擦傷性や硬度が向上するという点では好ましい形態であるが、使用する化合物によっては、しわ状の凹凸構造が形成しにくくなる場合があるため、使用する化合物種や配合割合には注意を要する。
【0022】
二官能の多官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ) アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等のビスフェノール変性ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、エポキシジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの中でもしわ状の凹凸構造の形成のしやすさを考慮すると分岐のない構造であることが好ましく、アルキルジオールジ(メタ)アクリレートがより好ましく、炭素数が4~18であるアルキルジオールジ(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0023】
単官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート、ジアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリール(メタ)アクリレート、フェニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート等のエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0024】
三官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー等のウレタンアクリレートが挙げられる。これらの中でも、しわ状の凹凸構造の形成のしやすさを考慮するとエチレンオキサイド変性タイプや、三官能(メタ)アクリレートが好ましい。
【0025】
また、硬化性組成物には、(メタ)アクリレート以外の活性エネルギー線硬化性の化合物を使用することも可能である。例えば、(メタ)アクリル酸、スチレン、ハロゲン化ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物、ハロゲン化ビニリデン、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン化合物等が挙げられる。
【0026】
転写型の形成において、活性エネルギー線硬化性の化合物を使用する場合、転写型中の活性エネルギー線硬化性の化合物由来の化合物の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上、最も好ましくは60質量%以上の範囲である。上限は特になく100質量%でもよいが、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下の範囲である。上記範囲の場合、しわ状の凹凸構造が形成しやすくなり、また硬度や傷付き防止性にも優れる硬化膜を形成することができ、適切な転写型を得ることができる。
【0027】
(樹脂)
転写型として、基材との密着性の向上などを目的に、さらに各種の樹脂を使用することも可能である。樹脂としては従来公知の各種の樹脂を使用することができ、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニル樹脂等が挙げられ、これらの中でも、特に透明性や(メタ)アクリレートとの親和性に優れるという点において、アクリル樹脂が好ましい。
【0028】
また転写型に使用する樹脂として、特に硬化膜による転写型の場合、耐擦傷性や硬度の向上を考慮すると炭素-炭素二重結合等の活性エネルギー線硬化性の官能基を有することが好ましい。活性エネルギー線硬化性の官能基としては、(メタ)アクリロイル基や、ビニルエーテル化合物が挙げられる。これらの中でも導入のしやすさや反応性を考慮すると(メタ)アクリロイル基、特にアクリロイル基が好ましい。
【0029】
さらに検討を進める中で、活性エネルギー線硬化性の官能基を有する樹脂を使用したところ、耐擦傷性や硬度の向上といった、活性エネルギー線硬化性の官能基が直接関与する特性の向上のみならず、しわ状の凹凸形状が小さくなることを見出した。すなわち、転写面のRsmが小さくなり、Saも小さくなることが判明した。加えて、ヘイズが高くなる場合や、グロスが低くなる場合も見られた。これらの特性は、艶消し性に対して相乗的に効果を発揮することができ、特にディスプレイ用途など視認性が重視される用途においては、重要な特性である。
【0030】
炭素-炭素二重結合等の活性エネルギー線硬化性の官能基を有するアクリル樹脂として、例えば、当該二重結合を導入する方法としては、エポキシ基を有するアクリル樹脂に二重結合及びカルボキシル基を有する化合物を反応させる方法(方法1)、カルボキシル基を有するアクリル樹脂に二重結合及びエポキシ基を有する化合物を反応させる方法(方法2)、水酸基を有するアクリル樹脂に二重結合及びカルボキシル基を有する化合物を反応させる方法(方法3)、カルボキシル基を有するアクリル樹脂に二重結合及び水酸基を有する化合物を反応させる方法(方法4)、イソシアネート基を有するアクリル樹脂に二重結合及び水酸基を有する化合物を反応させる方法(方法5)、水酸基を有するアクリル樹脂に二重結合及びイソシアネート基を有する化合物を反応させる方法(方法6)等が挙げられる。また、以上の方法は組み合わせて使用してもよい。なお、以下において、炭素-炭素二重結合を有するラジカル重合可能なモノマーをビニルモノマーと称することがある。
【0031】
前記方法1において、エポキシ基を有するアクリル樹脂を得るために用いられるエポキシ基を有するビニルモノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でも、特に反応性の良好性、材料の使用のしやすさを考慮するとグリシジル(メタ)アクリレートが好ましく、グリシジルメタクリレートが特に好ましい。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0032】
また、前記方法1における二重結合及びカルボキシル基を有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレートと無水コハク酸の付加物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと無水コハク酸の付加物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと無水フタル酸の付加物が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと無水コハク酸の付加物が好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましく、アクリル酸がさらに好ましい。なお、二重結合及びカルボキシル基を有する化合物は1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0033】
前記方法2において、カルボキシル基を有するアクリル樹脂を得るために用いられるカルボキシル基を有するビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、多塩基酸変性(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0034】
また、前記方法2において、二重結合及びエポキシ基を有する化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルが挙げられる。これらの中でもグリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0035】
前記方法3において、水酸基を有するアクリル樹脂を得るために用いられる水酸基を有するビニルモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0036】
また、前記方法3において、二重結合及びカルボキシル基を有する化合物としては、前記方法1における化合物と同様のものを用いることができる。
【0037】
前記方法4において、カルボキシル基を有するアクリル樹脂としては、前記方法2と同様のものを用いることができる。
【0038】
また、前記方法4において、二重結合及び水酸基を有する化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0039】
前記方法5において、イソシアネート基を有するアクリル樹脂を得るために用いられるイソシアネート基を有するビニルモノマーとしては、例えば、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
また、前記方法5において、二重結合及び水酸基を有する化合物としては、例えば、前記方法4において挙げた化合物と同様のものを用いることができる。
【0041】
前記方法6において、水酸基を有するアクリル樹脂としては、前記方法3における化合物と同様のものを用いることができる。
【0042】
また、前記方法6において、二重結合及びイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、イソシアネートエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0043】
以上の方法の中でも、反応を制御しやすいので方法1が好ましい。方法1では、二重結合は、エポキシ基を有するアクリル樹脂のエポキシ基と、二重結合及びカルボキシル基を有する化合物におけるカルボキシル基との間の開環・付加反応により導入される。
【0044】
前記方法1において、エポキシ基を有するアクリル樹脂中の、エポキシ基を有するモノマーは、エポキシ基を有するアクリル樹脂を構成するモノマー全量のうち、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは15重量%以上の範囲である。また上限としては特に制限はないが、好ましくは99.9重量%以下、より好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは70重量%以下、特に好ましくは50重量%以下、最も好ましくは40重量%以下の範囲である。当該範囲で使用することで、硬化膜の基材との密着性、耐擦傷性、硬度の向上のみならず、しわ状の凹凸形状を細かくすることができる傾向にあり、RSmの低下、Saの低下や、場合によってはヘイズの増加や、グロスの低下を達成することができる。
【0045】
また、前記方法1において、二重結合及びカルボキシル基を有する化合物は、エポキシ基を有するアクリル樹脂中のエポキシ基に対する、二重結合及びカルボキシル基を有する化合物の割合として、好ましくは10~150モル%であり、より好ましくは30~130モル%、さらに好ましくは50~110モル%である。当該範囲で使用することで、反応を過不足なく進行させ、また原料の残渣を少なくする観点から好ましい。
【0046】
さらに、上述したエポキシ基を有するアクリル樹脂など、アクリル樹脂は、上述した以外の(メタ)アクリレートやその他のビニルモノマーを共重合したものであってもよい。なお、これらの原料の重合反応は通常、ラジカル重合であり、従来公知の条件で重合することができる。
【0047】
原料として併用することのできるモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシ(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;エチル(メタ)アクリルアミド、n-ブチル(メタ)アクリルアミド、i-ブチル(メタ)アクリルアミド、t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド;スチレン、p-クロロスチレン、p-ブロモスチレン等のスチレン系モノマーが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0048】
アクリル樹脂は、上記の原料ビニルモノマーを用いてラジカル重合反応により製造することができる。ラジカル重合反応は、有機溶媒中でラジカル重合開始剤の存在下で実施することが好ましい。
【0049】
ラジカル重合に用いる有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン系溶媒;エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、イソブタノール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2-エトキシエチルアセタート等のエステル系溶媒;トルエン等の芳香族炭化水素溶媒が挙げられる。これらの有機溶媒は1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
ラジカル重合に用いるラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシド等の有機過酸化物;2,2’-アゾビスブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。ラジカル重合開始剤は原料のビニルモノマーの合計100重量部に対して0.01~5重量部の範囲で用いることが好ましい。
【0051】
また、ラジカル重合の際には、アクリル樹脂の重量平均分子量を制御するなどの目的で、連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、例えば、ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、2-メルカプトプロピオン酸オクチル、3-メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシルエステル、チオグリコール酸2-エチルへキシル、ブチル-3-メルカプトプロピオネート、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチル-3-メルカプトプロピオネート、2,2-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、エタンチオール、4-メチルベンゼンチオール、オクタン酸2-メルカプトエチルエステル、1,8-ジメルカプト-3,6-ジオキサオクタン、デカントリチオール、ドデシルメルカプタン、ジフェニルスルホキシド、ジベンジルスルフィド、2,3-ジメチルカプト-1-プロパノ-ル、メルカプトエタノール、チオサリチル酸、チオグリセロール、チオグリコール酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、メルカプト酢酸、メルカプト琥珀酸、2-メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系化合物が挙げられる。これらは、1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
連鎖移動剤の使用量は、原料のビニルモノマーの合計100重量部に対して0.1~25重量部が好ましく、0.5~20重量部がより好ましく、1.0~15重量部がさらに好ましい。
【0053】
ラジカル重合の反応時間は、1~20時間が好ましく、3~12時間がより好ましい。また、反応温度は、40~120℃が好ましく、50~100℃がより好ましい。
【0054】
アクリル樹脂に二重結合及びカルボキシル基を有する化合物等を反応させるには、上記のようにして得られたアクリル樹脂に、二重結合及びカルボキシル基を有する化合物等を添加して、トリフェニルホスフィン、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルアミン等の触媒の1種又は2種以上存在下に通常90~140℃、好ましくは100~120℃の温度で、通常3~9時間程度反応されればよい。ここで、触媒は、原料の(メタ)アクリル酸エステル系重合体と二重結合及びカルボキシル基を有する化合物等の化合物との合計100重量部に対して0.5~3重量部程度の割合で用いることが好ましい。この反応は、アクリル樹脂を重合反応で製造した後、引き続き行ってもよく、反応系からアクリル樹脂を一旦分取した後、二重結合及びカルボキシル基を有する化合物等の化合物等を添加して行ってもよい。
【0055】
アクリル樹脂における二重結合量は、好ましくは0.1~10mmol/g、より好ましくは0.2~7.0mmol/g、さらに好ましくは0.5~5.0mmol/g、特に好ましくは0.8~4.0mmol/g、最も好ましくは1.0~3.0mmol/gの範囲である。当該範囲で使用することで、硬化膜の基材との密着性、耐擦傷性、硬度の向上のみならず、しわ状の凹凸形状を細かくすることができる傾向にあり、Rsmの低下、Saの低下や、場合によってはヘイズの増加や、グロスの低下を達成することができる。なお、二重結合量とは、アクリル樹脂中の(メタ)アクリロイル基濃度、すなわち(メタ)アクリロイル基の導入量を意味する。
【0056】
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、硬化性組成物の用途に応じて適宜選択されるべきであるが、通常、5000以上であり、好ましくは7000以上であり、より好ましくは9000以上であり、通常200000以下であり、好ましくは100000以下であり、より好ましくは70000以下であり、更に好ましくは50000以下である。上記範囲内であると、表面凹凸を形成し易くなる。なお、樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン標準による換算値として決定することができる。具体的な測定条件は後掲の実施例に示す。
【0057】
転写型中に樹脂を含有する場合、その含有量は、硬化膜の外観や密着性の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下の範囲である。樹脂の含有量が多すぎると硬化膜の硬度が低下する懸念がある。
【0058】
(粒子)
転写型のしわ状の凹凸構造による艶消し性をさらに向上させるため、粒子を使用することも可能である。粒子は、特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。具体例としては、シリカ、中空シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。無機粒子は(メタ)アクリロイル基等の反応性基を有するシランカップリング剤で表面修飾された粒子であってもよい。有機粒子は形状維持のために架橋タイプが好ましく、架橋アクリル樹脂粒子、架橋スチレン樹脂粒子がより好ましい。これらの粒子は2種以上を併用してもよい。
【0059】
粒子の平均一次粒子径としては、好ましくは0.01~30μm、より好ましくは0.05~10μm、さらに好ましくは0.1~5μm、特に好ましくは0.5~3μmの範囲である。当該範囲の場合、艶消し性の向上に優れる。
【0060】
転写型中に粒子を含有する場合、その含有量は、艶消し性の向上の観点から、不揮発分に対して、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは8質量%以下の範囲である。下限は特にないが、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上の範囲である。粒子の量が多すぎると脱落しやすくなるため注意が必要である。
【0061】
(帯電防止剤)
転写型には帯電防止剤を使用することも可能である。帯電防止剤を含有することで、転写型に帯電防止剤性を付与でき、例えば、剥離帯電等による塵埃等の異物の付着防止に寄与することができ、転写による欠点を低減させ、設計通りの被転写物を得ることができる。
【0062】
帯電防止剤としては、特に制限はなく、従来公知の帯電防止剤を使用することが可能である。高分子タイプ、界面活性剤タイプ等の有機化合物や、金属酸化物等の無機化合物が挙げられる。これらの中でも凹凸構造の形成のしやすさから、有機化合物である帯電防止剤が好ましい。また、耐熱性、耐湿熱性、耐久性が良好であることから、高分子タイプの帯電防止剤であることがより好ましい。高分子タイプの帯電防止剤としては、例えば、アンモニウム基を有する化合物、ポリエーテル化合物、スルホン酸基を有する化合物、ベタイン化合物、導電ポリマー等が挙げられる。これらの中でも塗工外観を考慮するとアンモニウム基を有する化合物がより好ましい。
【0063】
また、帯電防止剤は、活性エネルギー線硬化性の官能基を有する化合物とすることも可能である。活性エネルギー線硬化性の官能基とは、例えば(メタ)アクリロイル基が挙げられる。当該官能基を含有することで、凹凸構造の形成に寄与できるし、耐擦傷性などの特性の向上にも寄与できる。
【0064】
アンモニウム基を有する化合物とは、分子内にアンモニウム基を有する化合物であり、脂肪族アミン、脂環族アミンや芳香族アミンのアンモニウム化物等が挙げられる。アンモニウム基を有する化合物は、高分子タイプのアンモニウム基を有する化合物であることが好ましく、当該アンモニウム基は、カウンターイオンとしてではなく、高分子の主鎖や側鎖中に組み込まれている構造であることが好ましい。また、高分子の中でも、効果的に帯電防止性を付与するために、アンモニウム基の濃度を高くできるものが好ましく、そのために(メタ)アクリル系の高分子であることが好ましい。例えば、付加重合性のアンモニウム基またはアミン等のアンモニウム基の前駆体を含有する単量体を重合した重合体からアンモニウム基を有する高分子化合物とするものが挙げられ、好適に用いられる。重合体としては、付加重合性のアンモニウム基またはアミン等のアンモニウム基の前駆体を含有する単量体を単独で重合しても良いし、これらを含有する単量体と他の単量体との共重合体であっても良い。
【0065】
アンモニウム基またはアミン等のアンモニウム基の前駆体単量体としては、例えば、アミノアルコールの(メタ)アクリル酸エステル、具体的には、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N-ジヒドロキシエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、特にN,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好適に使用される。N,N-ジアルキルアミノ基の2つアルキル基は異なっていてもよい。
【0066】
N,N-ジアルキルアミノ基含有単量体のアンモニウム基としては、例えば、市販のN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライドによる4級化物[例えば、商品名「ライトエステル(登録商標)DQ-100」、共栄社化学株式会社製]などが挙げられる。N,N-ジアルキルアミノ基含有単量体のアンモニウム基は、例えば、アミノアルコールの(メタ)アクリル酸エステルの4級化反応によって製造することもできる。
【0067】
(メタ)アクリル系の高分子による場合、アンモニウム基またはアミン等のアンモニウム基の前駆体単量体以外の重合性単量体単位を含んでいてもよく、このような重合性単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;前記のアミノアルコールの(メタ)アクリル酸エステル;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。これらの中で、疎水性の高い長鎖アルキル基を有する重合性単量体を含有する場合は、硬化膜の空気界面に偏析させて、硬化膜の帯電防止性を高めることができるので好ましい形態である。このような長鎖アルキル基を有する重合性単量体としては、好ましくは炭素数が8~30のアルキル(メタ)アクリレート、より好ましくは炭素数が12~22のアルキル(メタ)アクリレートであり、例えばラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0068】
アンモニウム基を有する化合物を(メタ)アクリル系の高分子(重合体)で実現する場合、重合体中のアンモニウム基含有単量体単位の割合は、好ましくは5~95質量%、より好ましくは10~90質量%、さらに好ましくは20~80質量%、特に好ましくは30~70質量%の範囲である。この割合は多いほど帯電防止性が高くなり、少ないほど硬化物層の塗布後の外観が向上する傾向があり、上記範囲で使用することでバランスが取れたものとなる。
また、長鎖アルキル基を併用する場合において、重合体中の長鎖アルキル基含有単量体単位の割合は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下の範囲である。上記範囲で使用することで、帯電防止性を発現しやすくなる。
【0069】
アンモニウム基を有する化合物を(メタ)アクリル系の高分子(重合体)で実現する場合、重合体の重量平均分子量は、800~120,000が好ましく、2,000~60,000がより好ましい。
【0070】
アンモニウム基を有する化合物を(メタ)アクリル系の高分子(重合体)で実現する場合、重合体は、上記の原料単量体を用いてラジカル重合反応により製造することができる。ラジカル重合反応は、有機溶媒中でラジカル重合開始剤の存在下で実施することが好ましい。
【0071】
ラジカル重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン系溶媒;エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、イソブタノール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2-エトキシエチルアセタート等のエステル系溶媒;トルエン等の芳香族炭化水素溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
ラジカル重合反応に用いるラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキシド等の有機過酸化物;2,2’-アゾビスブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。ラジカル重合開始剤は、原料単量体の合計100質量部に対して0.01~5質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0073】
また、ラジカル重合反応の際には、重合体の重量平均分子量を制御する目的で連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、例えば、ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、2-メルカプトプロピオン酸オクチル、3-メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシルエステル、チオグリコール酸2-エチルへキシル、ブチル-3-メルカプトプロピオネート、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチル-3-メルカプトプロピオネート、2,2-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、エタンチオール、4-メチルベンゼンチオール、オクタン酸2-メルカプトエチルエステル、1,8-ジメルカプト-3,6-ジオキサオクタン、デカントリチオール、ドデシルメルカプタン、ジフェニルスルホキシド、ジベンジルスルフィド、2,3-ジメチルカプト-1-プロパノ-ル、メルカプトエタノール、チオサリチル酸、チオグリセロール、チオグリコール酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、メルカプト酢酸、メルカプト琥珀酸、2-メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系化合物等が挙げられる。これらは、1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
連鎖移動剤の使用量は、原料単量体の合計100重量部に対して0.1~25重量部が好ましく、0.5~20重量部がより好ましく、1.0~15重量部がさらに好ましい。
【0075】
ラジカル重合反応の反応時間は1~20時間が好ましく、3~12時間がより好ましい。また、反応温度は40~120℃が好ましく、50~100℃がより好ましい。
【0076】
帯電防止剤としてポリエーテル化合物としては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリエーテルエステルアミド、ポリエチレングリコールを側鎖に有するアクリル樹脂等が挙げられる。
【0077】
帯電防止剤としてスルホン酸基を有する化合物とは、分子内にスルホン酸あるいはスルホン酸塩を含有する化合物のことであり、例えば、ポリスチレンスルホン酸等、スルホン酸あるいはスルホン酸塩が多量に存在する化合物が好適に用いられる。
【0078】
帯電防止剤として導電ポリマーとしては、例えば、ポリチオフェン系、ポリアニリン系、ポリピロール系、ポリアセチレン系等が挙げられ、その中でも例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)をポリスチレンスルホン酸と併用するような、ポリチオフェン系が好適に用いられる。導電ポリマーは抵抗値が低くなるという点において、上述の他の帯電防止剤に比べて好適である。しかし、一方で、着色やコストが気になる用途では使用量を低減するなどの工夫が必要となってくる。
【0079】
帯電防止剤として界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤が挙げられる。これらの中でも、帯電防止性が良好になるという観点、各種の樹脂との相溶性という観点において、アニオン系界面活性剤や非イオン系界面活性剤が好ましく、特にアニオン系界面活性剤が好ましい。
【0080】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、エステルスルホン酸塩等のスルホン酸型、アルキルリン酸エステルまたはその塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩等のリン酸型、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩等の硫酸エステル型、アルキル脂肪酸塩等のカルボン酸塩型等が挙げられる。これらの中でも、帯電防止性に優れるという観点から、スルホン酸型が好ましい。
【0081】
スルホン酸型アニオン系界面活性剤としては、例えば、デシルスルホン酸塩、ドデシルスルホン酸塩、テトラデシルスルホン酸塩、ヘキサデシルスルホン酸塩、オクタデシルスルホン酸塩等のアルキルスルホン酸塩、ブチルベンゼンスルホン酸塩、ヘキシルベンゼンスルホン酸塩、オクチルベンゼンスルホン酸塩、デシルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、テトラデシルベンゼンスルホン酸塩、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸塩、オクタデシルベンゼンスルホン酸塩、ジブチルナフタレンスルホン酸塩、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸塩等のアルキルアリールスルホン酸塩、ジブチルスルホコハク酸エスエル塩、ジオクチルスルホコハク酸エステル塩、ドデシルスルホ酢酸エステル塩、ノニルフェノキシポリエチレングリコールスルホ酢酸エステル塩等のエステルスルホン酸塩が挙げられる。これらの中でも帯電防止性に優れるという観点において、アルキル基の炭素数は8以上、好ましくは10~22、さらに好ましくは12~18の範囲のものである。また、塩としては金属塩が好ましく、特にリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩がより好ましく、ナトリウム塩がさらに好ましい。種類としては、帯電防止性の観点から、アルキルスルホン酸塩が好ましい。
【0082】
リン酸型アニオン系界面活性剤としては、例えば、ブチルリン酸エステル、ブチルリン酸エステル塩、ヘキシルリン酸エステル、ヘキシルリン酸エステル塩、オクチルリン酸エステル、オクチルリン酸エステル塩、デシルリン酸エステル、デシルリン酸エステル塩、ラウリルリン酸エステル、ラウリルリン酸エステル塩、テトラデシルリン酸エステル、テトラデシルリン酸エステル塩、ヘキサデシルリン酸エステル、ヘキサデシルリン酸エステル塩、ステアリルリン酸エステル、ステアリルリン酸エステル塩等のアルキルリン酸エステルまたはその塩、ポリオキシエチレンブチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンブチルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンヘキシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンヘキシルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンオクチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンオクチルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンデシルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシプロピレンオクチルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンオクチルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシプロピレンデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンデシルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシプロピレンラウリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシプロピレンラウリルエーテルリン酸エステル塩等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩等が挙げられる。
【0083】
これらの中でも、界面活性剤としての性能、帯電防止性能の観点から、アルキルリン酸エステル塩やポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩が好ましい。
【0084】
また、アルキルリン酸エステル塩に関しては、アルキル基の炭素数は4以上、好ましくは4~22、さらに好ましくは6~12の範囲のものであり、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩に関しては、アルキル基の炭素数は4以上、好ましくは6~22、さらに好ましくは8~18の範囲のものである。また、塩としては金属塩やアミン塩が好ましく、特にリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アルキルアミン塩、アルコールアミン塩がより好ましく、ナトリウム塩やモノエタノールアミン塩がさらに好ましい。
【0085】
転写型に帯電防止性を付与するために、帯電防止剤を使用する場合、転写型中の帯電防止剤の含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1.0質量%以上、最も好ましくは2.0質量%以上の範囲である。上限は特に制限はなく、100質量%でもよいが、硬化膜の硬度を考慮した場合、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下、最も好ましくは8質量%以下の範囲である。上記下限値以上であると帯電防止性に優れる。
【0086】
(離型剤)
転写型には防汚性や、転写性の向上のために、離型剤、例えば、フッ素原子を有する化合物またはシリコーン化合物を含有することも可能である。当該化合物を転写型に含有させることで、汚染による転写異常を低減させることができる。また、転写の際に、転写材料が転写型から容易に剥離することにも繋がり、例えば転写型に離型層を設ける(2層構成とする)必要がなくなることによる生産性の向上や、転写型に転写材料が残ることにより発生する異物欠陥が少ない被転写物の製造にも寄与でき好ましい形態である。
【0087】
フッ素原子を有する化合物としては、化合物中にフッ素原子を含有している化合物である。フッ素原子を有する化合物としては、有機系フッ素化合物が好適に用いられ、例えば、パーフルオロアルキル基含有化合物、パーフルオロポリエーテル化合物、フッ素原子を含有するオレフィン化合物の重合体、フルオロベンゼン等の芳香族フッ素化合物等が挙げられる。防汚性の観点からパーフルオロアルキル基を有する化合物やパーフルオロポリエーテル化合物であることが好ましい。さらにフッ素化合物にはシリコーン化合物や、長鎖アルキル化合物を含有している化合物も使用することができる。
【0088】
パーフルオロアルキル基を有する化合物とは、例えば、パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート、パーフルオロアルキルメチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロアルキルエチル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロアルキルプロピル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロアルキル-1-メチルプロピル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロアルキル-2-プロペニル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートやその重合物、パーフルオロアルキルメチルビニルエーテル、2-パーフルオロアルキルエチルビニルエーテル、3-パーフルオロプロピルビニルエーテル、3-パーフルオロアルキル-1-メチルプロピルビニルエーテル、3-パーフルオロアルキル-2-プロペニルビニルエーテル等のパーフルオロアルキル基含有ビニルエーテルやその重合物等が挙げられる。耐熱性、汚染性を考慮すると重合物であることが好ましい。重合物は単一化合物のみでも複数化合物の重合物でもよい。また、防汚性の観点からパーフルオロアルキル基は炭素原子数が3~11であることが好ましい。さらにシリコーン化合物や長鎖アルキル化合物を含有している化合物との重合物であってもよい。
【0089】
シリコーン化合物としては、分子内にシリコーン構造を有する化合物のことであり、例えば、ジメチルシリコーン、ジエチルシリコーン等のアルキルシリコーン、また、フェニル基を有するフェニルシリコーン、メチルフェニルシリコーン等が挙げられる。シリコーンには各種の官能基を有するものも使用することができ、例えば、エーテル基、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボン酸基、フッ素等のハロゲン基、パーフルオロアルキル基、各種アルキル基や各種芳香族基等の炭化水素基等が挙げられる。他の官能基として、ビニル基を有するシリコーンや水素原子が直接ケイ素原子に結合したハイドロゲンシリコーンも一般的で、両者を併用して、付加型(ビニル基とハイドロゲンシランの付加反応による型)のシリコーンとして使用することも可能である。また、アクリロイル基等の二重結合を導入し、当該二重結合部で反応させる方法も好ましい。
【0090】
また、シリコーン化合物として、アクリルグラフトシリコーン、シリコーングラフトアクリル、アミノ変性シリコーン、パーフルオロアルキル変性シリコーン等の変性シリコーンを使用することも可能である。耐熱性、汚染性を考慮すると、硬化型シリコーン樹脂を使用することが好ましく、硬化型の種類としては、縮合型、付加型、活性エネルギー線硬化型等いずれの硬化反応タイプでも用いることができる。
【0091】
また、上述したフッ素原子を有する化合物またはシリコーン化合物は、活性エネルギー線硬化性の官能基を有する化合物であることも好ましい形態である。活性エネルギー線硬化性の官能基とは、例えば(メタ)アクリロイル基や、ビニルエーテル化合物が挙げられる。これらの中でも導入のしやすさや反応性を考慮すると(メタ)アクリロイル基、特にアクリロイル基が好ましい。当該官能基を含有することで、凹凸構造の形成に寄与できるし、耐擦傷性などの特性の向上にも寄与できる。
【0092】
転写型中のフッ素原子を有する化合物またはシリコーン化合物の含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上、最も好ましくは0.7質量%以上の範囲である。上限は特に制限はなく、100質量%でもよいが、硬化膜の硬度を考慮した場合、好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下、最も好ましくは3質量%以下の範囲である。上記下限値以上であると転写性や防汚性に優れる。
【0093】
(光重合開始剤)
転写型を硬化膜(活性エネルギー線硬化性の化合物)で形成する場合、硬化膜の硬化性促進として、光重合開始剤を使用してもよい。光重合開始剤の分子量は1000以下が好ましい。具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンジルジフェニルジスルフィド、ジベンジル、ジアセチル、アントラキノン、ナフトキノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ベンゾフェノン、p,p’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ピバロインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1,1-ジクロロアセトフェノン、p-t-ブチルジクロロアセトフェノン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、フェニルグリオキシレート、α-ヒドロキシイソブチルフェノン、ジベンゾスパロン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパノン、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、トリブロモフェニルスルホン、トリブロモメチルフェニルスルホン等が挙げられる。これらの光重合開始剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0094】
転写型中に光重合開始剤を使用する場合、その由来の化合物の含有量は、硬化性促進や硬化膜の硬度の観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下、特に好ましくは6質量%以下の範囲である。
【0095】
(レベリング剤)
転写型の外観を向上させるため、レベリング剤を使用することができる。
レベリング剤としては、アクリル系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤等が挙げられる。これらのレベリング剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0096】
転写型膜中にレベリング剤を含有する場合、その含有量は、硬化膜の外観向上の観点から、不揮発分に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下の範囲である。
【0097】
(各種添加剤)
転写型は、本発明の効果を損なわない範囲で、チオール基を含有する化合物等の重合促進剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を使用してもよい。
【0098】
(有機溶剤)
また、転写型を硬化膜で形成する場合において、硬化性組成物中に基材上に塗布する際の作業性を向上させる目的で、有機溶剤を必要に応じて使用することもできる。
有機溶剤としてはトルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フェネトール等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテート等のエステル系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶剤;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤;等が挙げられる。これらの有機溶剤は1種を単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。これらの有機溶剤のうち、塗布における作業性を向上させやすい点で、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤及びケトン系溶剤が好ましい。
【0099】
硬化性組成物の不揮発分100質量部に対する有機溶剤の割合は、塗布操作における操作性の向上の観点から、10質量部以上1900質量部以下が好ましく、40質量部以上400質量部以下がより好ましい。
なお、硬化性組成物の不揮発分とは、有機溶剤等の溶媒以外の成分の合計質量である。硬化性組成物の不揮発分は、従来公知の方法で測定することができ、例えば、1gの組成物を広げて、100℃で1時間加熱することで有機溶剤を揮発させたときの重さの変化により測定される。
【0100】
(塗膜の形成)
転写型の形成方法としては、硬化膜による転写型形成の場合、硬化性組成物を基材又は物品の面上に塗布して塗膜を形成し、必要に応じて乾燥した後、塗膜に活性エネルギー線を照射することにより形成できる。
硬化性組成物の塗布方法は特に限定されない。例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、スピンコート法、ローラーコート法、バーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スプレーコート等の公知の方法により塗布することができる。
【0101】
硬化性組成物が有機溶剤を含む場合、活性エネルギー線を照射する前に予め加熱乾燥することが好ましい。予め加熱乾燥することにより、塗膜中の溶媒を効果的に除去することができる。
加熱乾燥の乾燥温度は、30℃以上200℃以下が好ましく、40℃以上150℃以下がより好ましい。乾燥時間は、0.01分以上30分以下が好ましく、0.1分以上10分以下がより好ましい。
【0102】
(活性エネルギー線の照射)
活性エネルギー線としては、膜の表面を効果的に硬化させるためエネルギーが高いことが重要であるため、真空紫外線(波長200nm以下の紫外線)が好ましい。それらの中でも半値幅が50nm以下であるエキシマ光が最適であり、例えば、アルゴン(126nm)、クリプトン(146nm)、キセノン(172nm)、アルゴン・フッ素(193nm)が挙げられる。これらの中でも、使用のしやすさや、効果的な凹凸形成、硬化膜の硬化性等を考慮すると、キセノンエキシマ光が好適である。
【0103】
真空紫外線を用いる場合、照射の積算光量としては、好ましくは1~3000mJ/cm、より好ましくは3~1000mJ/cm、さらに好ましくは5~500mJ/cm、特に好ましくは10~100mJ/cmの範囲である。また、照度としては好ましくは1~500mW/cm、より好ましくは2~300mW/cm、さらに好ましくは3~100mW/cmの範囲である。
【0104】
また、真空紫外線照射時の雰囲気として、窒素雰囲気下など酸素が少ない環境で行うことが好ましい。酸素濃度としては、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下の範囲である。
【0105】
上記の真空紫外線照射後、硬化膜を深部まで硬化させるために真空紫外線以外の活性エネルギー線を照射することが好ましい。真空紫外線以外の活性エネルギー線としては紫外線、電子線等が挙がられ、これらの中でも硬化膜の硬化性を考慮すると紫外線がより好ましい。
照射する紫外線の積算光量は、好ましくは1~5000mJ/cm、より好ましくは50~3000mJ/cm、さらに好ましくは100~1000mJ/cm、特に好ましくは200~700mJ/cmの範囲である。また、照度としては好ましくは1~1000mW/cm、より好ましくは50~500mW/cm、さらに好ましくは80~300mW/cmの範囲である。
【0106】
〔被転写物〕
本発明の被転写物は、上述した転写型をネガパターンとして、転写型の形状を転写により製造された物である。被転写物は、被転写面がしわ状の凹凸構造を有しており、当該被転写面のJIS B0601:2013に従う粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)が1~1000μmであり、かつISO25178で定義される算術平均高さ(Sa)が0.1~1000μmである。これにより被転写物は艶消し性を有し、ディスプレイ用部材等の光学用途に好適に使用できる。
【0107】
(被転写物の厚み)
被転写物の厚み(被転写物の凹凸構造を形成する層)としては、好ましくは0.1~1000μm、より好ましくは0.2~200μm、さらに好ましくは0.3~100μm、特に好ましくは0.5~30μmの範囲である。被転写物の厚みが上記範囲内であれば、所望の艶消し性を実現しやすく、また硬度の調整がしやすくなる。
なお、被転写物の厚みは、凹凸層の最大厚みを示し、電子顕微鏡による断面観察により求められる。
【0108】
(被転写物のRSm、Sa、θa)
被転写物の被転写面のRSm、Sa、θaは、前述した転写型と同様の範囲が好ましい範囲である。本発明の被転写物の特徴として、転写型と類似の構造となることも大きな特徴である。すなわち、転写型の構造が、高さ方向についてゼロ面を中心に上下で近い形状をしており、その転写型による被転写物も、転写型と類似の形状となる。これにより、転写型の形状が確定すれば、そのままの形状が想定される被転写物の形状であり、被転写物の設計が容易となる。また、通常、転写型と同じ形状を作成するには、転写を2回繰り返さないといけないが(つまり、転写型を転写した被転写物を作成し、その被転写物を今度は転写型として、さらなる被転写物を作成しなければ、最初の転写型と同一の形状とならない)、本発明の転写型によれば、1回の転写で転写型と同様な形状のものが製造でき、コスト的にも、また欠陥不具合発生確率論的にも優位なものとなる。
【0109】
本発明の被転写物の上記RSm、Sa、θaは、転写型の同特性値の-50~50%の範囲であることが好ましく、より好ましくは-30~30%の範囲、さらに好ましくは-20~20%の範囲、特に好ましくは-10~10%の範囲である。当該範囲内であれば、上述した被転写物の設計が容易なものとなり、また2回の転写をせずとも所望の形状を得ることができる。
【0110】
また、各特性の被転写物と転写型の差であれば、当該差の絶対値で、RSmの場合は、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下、最も好ましくは5μm以下の範囲であり、Saの場合は、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下、さらに好ましくは2μm以下、特に好ましくは1μm以下、最も好ましくは0.5μm以下の範囲であり、θaの場合は、好ましくは5°以下、より好ましくは3°以下、さらに好ましくは2°以下、特に好ましくは1°以下の範囲である。当該範囲内であれば、上述した被転写物の設計が容易なものとなり、また2回の転写をせずとも所望の形状を得ることができる。
【0111】
(被転写物のヘイズ,60°グロス、20°グロス)
被転写物のヘイズ(例えば、硬化膜により形成する場合は、当該硬化膜のヘイズ)、60°グロス、20°グロスに関しても、転写型と同様の範囲が好ましい範囲となる。
60°グロスにおいては、転写型の同特性の-50~50%の範囲であることが好ましく、より好ましくは-30~30%の範囲、さらに好ましくは-20~20%の範囲、特に好ましくは-10%~10%の範囲、最も好ましくは-5%~5%の範囲である。当該範囲内であれば、上述した被転写物の設計が容易なものとなる。
【0112】
また、各特性の被転写物と転写型の差であれば、当該差の絶対値で、60°グロスの場合は、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下、特に好ましくは4以下、最も好ましくは1以下の範囲であり、20°グロスの場合は、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下、特に好ましくは1以下の範囲である。当該範囲内であれば、上述した被転写物の設計が容易なものとなる。
【0113】
(被転写物の全光線透過率)
また、被転写物の全光線透過率は、特に限定されるものではないが、アンチグレアフィルムなど、ディスプレイ用などの光学用のフィルムに使用する場合には、高い透過性を有することが好ましい。基材も含めた全光線透過率として、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上の範囲であり、高いほど好ましい(上限値は100%である)。
【0114】
(被転写物の鉛筆硬度)
被転写物の硬度に関しては、特に限定されるものではない。例えば、粘着剤の場合は粘着剤の性能を落とさないようなものが好ましい。一方、アンチグレアやブロッキング防止など、ディスプレイ用などの光学用に使用する場合は、硬度は高い方が好ましい場合もある。当該、硬度が高い方が好ましい用途に使用する場合には、鉛筆硬度が、F以上、より好ましくはH以上、さらに好ましくは2H以上、特に好ましくは3H以上である。上記範囲であると耐擦傷性に優れ、被転写物の傷付き防止性に優れ、欠陥の少ないものとすることができる。
【0115】
特に被転写物においては、転写型からの形状の転写による作成のため、転写材料の制約が少ない。そのため、転写型よりも硬度を高く設計することも可能であり、光学用途等、より高い硬度を必要とする場合には、本発明の手法による被転写物が好適である。
【0116】
(被転写物の硬化性組成物)
本発明の被転写物の一例として、硬化膜によるものが挙げられ、活性エネルギー線硬化性の化合物を含む硬化性組成物の硬化物からなるものが挙げられる。
【0117】
本発明の被転写物は、艶消し性に優れることから、防眩膜に好適である。
【0118】
被転写物は上記の構造を有していれば、被転写物の材料に関しては特に制約はない。硬化物を転写型と未硬化の状態(流動性がある状態)で接触させ、その後、硬化させることで被転写物を作成する方法や、転写型を被転写材料(例えば、粘着剤)に押し付けて被転写物を作成する方法等が挙げられる。これら方法の中でも、被転写物の耐久性や安定性、また製造容易性等を考慮すると、被転写物は硬化性の化合物から形成されること(すなわち、硬化膜であること)が好ましい。具体的には、硬化性組成物の塗膜を形成し、前記塗膜を硬化させる方法が挙げられる。
【0119】
硬化性の化合物としては、活性エネルギー線硬化や熱硬化等、従来公知の化合物を使用することができる。これらの中でも、製造容易性や、転写型の繰り返し使用、被転写物の耐久性等を考慮すると活性エネルギー線硬化性の化合物が好ましく、特に紫外線硬化性の化合物によるものあることがより好ましい。
【0120】
活性エネルギー線硬化性の化合物としては、転写型において使用することが可能な(メタ)アクリレートが、被転写物においても好適な材料である。硬度を高くしたい用途には、(メタ)アクリレートの中でも三官能以上の多官能(メタ)アクリレートを使用することが好ましく、六官能以上の(メタ)アクリレートがより好ましい。例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートや三官能以上のウレタン(メタ)アクリレートが好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートや六官能以上のウレタン(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0121】
また、硬化性組成物には、(メタ)アクリレート以外の活性エネルギー線硬化性の化合物を使用することも可能である。例えば、スチレン、ハロゲン化ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物、ハロゲン化ビニリデン、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン化合物等が挙げられる。
【0122】
被転写物の形成において、活性エネルギー線硬化性の化合物を使用する場合、被転写物の凹凸構造を形成する層中の活性エネルギー線硬化性の化合物由来の化合物の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上、最も好ましくは60質量%以上の範囲である。上限は特になく100質量%でもよいが、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下の範囲である。上記範囲の場合、硬度に優れる被転写物(硬化膜)を形成することができる。
特に、被転写物の硬度や耐擦傷性の向上が必要な用途においては、三官能以上の多官能(メタ)アクリレートの含有量が多いことが好ましく、三官能以上の多官能(メタ)アクリレートの由来の化合物の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上であり、上限は100質量%の範囲である。
また、より硬度を重視する用途においては、六官能以上の多官能(メタ)アクリレートを使用することが好ましく、その場合の六官能以上の多官能(メタ)アクリレート由来の化合物の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上であり、上限は100質量%の範囲である。
【0123】
また、被転写物の形成において、転写型の形成と同様に、各種の樹脂、粒子、帯電防止剤、防汚剤、光重合開始剤、レベリング剤、有機溶剤等を使用することも可能である。
【0124】
(被転写物の製造方法)
被転写物の形成方法としては、硬化膜による被転写物形成の場合、硬化性組成物を基材又は物品の面上に塗布して塗膜を形成し、必要に応じて乾燥した後、塗膜を硬化させることで形成できる。塗布方法は特に限定されず、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、スピンコート法、ローラーコート法、バーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スプレーコート等の公知の方法により塗布することができる。
【0125】
硬化性組成物が有機溶剤を含む場合、予め加熱乾燥することが好ましい。予め加熱乾燥することにより、塗膜中の溶媒を効果的に除去することができる。
加熱乾燥の乾燥温度は、30℃以上200℃以下が好ましく、40℃以上150℃以下がより好ましい。乾燥時間は、0.01分以上30分以下が好ましく、0.1分以上10分以下がより好ましい。
【0126】
活性エネルギー線硬化性の化合物による被転写物の形成においては、活性エネルギー線を照射することで硬化させて硬化膜による被転写物を形成する。活性エネルギー線としては深部まで硬化させるために真空紫外線以外の活性エネルギー線であることが好ましく、紫外線、電子線等が挙がられ、これらの中でも硬化膜の硬化性を考慮すると紫外線がより好ましい。
【0127】
照射する紫外線の積算光量は、好ましくは1~5000mJ/cm、より好ましくは50~3000mJ/cm、さらに好ましくは100~1000mJ/cm、特に好ましくは200~700mJ/cmの範囲である。また、照度としては好ましくは1~1000mW/cm、より好ましくは50~500mW/cm、さらに好ましくは80~300mW/cmの範囲である。
【0128】
〔転写型の凹凸層以外の層〕
本発明の転写型は、転写面を形成する凹凸構造を有する層(凹凸層)に加えて基材層を有していてもよい。また、転写型は、凹凸層と基材層との間に設けられたプライマー層、前記基材層の前記凹凸層側とは反対側の面上に設けられた裏面機能層からなる群から選ばれる1つ以上の層を有してもよい。また、本発明の効果を損なわないものであれば、前記凹凸層の前記基材層側とは反対側の面上に設けられた表面機能層を有してもよい。
【0129】
(転写型の基材層)
基材層としては、公知のものを使用でき、例えば樹脂基材、金属基材、紙基材が挙げられる。これらの中では、加工性の観点から、樹脂基材が好ましい。
樹脂基材は、単層構成であっても2層以上の多層構成であってもよく、特に限定されるものではない。樹脂基材を2層以上の多層構成とし、それぞれの層に特徴を持たせ、多機能化を図ることが好ましい。
【0130】
樹脂基材としては、各種の樹脂フィルム(シート)を使用でき、例えばポリエステルフィルム、ポリ(メタ)アクリレートフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ナイロンフィルム等が挙げられる。
本積層体をディスプレイ用途へ展開する場合には、ポリエステルフィルム、ポリ(メタ)アクリレートフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセチルセルロースフィルムが好ましい。これらの中でも、アンチグレア用途においては、ポリエステルフィルム、ポリ(メタ)アクリレートフィルム、ポリオレフィンフィルムが好ましく、さらに透明性や成形性、汎用性を考慮すると、ポリエステルフィルムがより好ましい。
ポリエステルフィルムは、無延伸フィルムであっても延伸フィルムであってもよく、延伸フィルムが好ましい。中でも、一軸方向に延伸された一軸延伸フィルム、又は二軸方向に延伸された二軸延伸フィルムが好ましく、力学特性のバランスや平面性に優れる観点から、二軸延伸フィルムがより好ましい。
【0131】
基材層として用いられうるポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。
ホモポリエステルとしては、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られたものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸、脂肪族グリコールはそれぞれ1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸等が挙げられる。グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。ジカルボン酸成分、グリコール成分はそれぞれ1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが例示される。
【0132】
ポリエステルフィルムとしては、機械的強度や耐熱性を考慮すると、前記の中でも、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートから形成されたフィルムがより好ましく、製造のしやすさ、表面保護フィルム等の用途としての取扱い性を考慮すると、ポリエチレンテレフタレートから形成されたフィルムがより好ましい。
【0133】
基材層として用いられうるポリ(メタ)アクリレートフィルムを構成するポリ(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリレートに基づく単位を有するものであればよく、各種のアクリル樹脂を使用することができる。(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の炭素数が1~4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、より炭素数が大きいアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ポリ(メタ)アクリレートは、透明性、加工性、耐薬品性を考慮すると、炭素数が1~4のアルキル(メタ)アクリレートに基づく単位を主成分とすることが好ましく、メチル(メタ)アクリレートに基づく単位及びエチル(メタ)アクリレートに基づく単位からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とすることがより好ましく、メチル(メタ)アクリレートに基づく単位を主成分とすることが特に好ましい。
ポリ(メタ)アクリレートに、アルキル(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレートに基づく単位や、その他の単量体に基づく単位を含有させて柔軟性等の特性を付与することも可能である。
ポリ(メタ)アクリレートの総質量に対する炭素数が1~4のアルキル(メタ)アクリレートに基づく単位の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
【0134】
基材層は、易滑性の付与、各工程での傷発生防止、耐ブロッキング特性の向上を目的として、粒子を含むことができる。
粒子の種類は、目的に応じて適宜選定でき、特に限定されない。具体例としては、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。さらに、基材層がポリエステルフィルムを含む場合、ポリエステル製造工程で触媒等の金属化合物の一部を析出させた析出粒子を用いることもできる。これらの中でも特に少量で効果が出やすいという点で、シリカ粒子や炭酸カルシウム粒子が好ましい。
粒子の形状は特に限定されるものではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。
これらの粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0135】
粒子の平均粒径は、好ましくは10μm以下、より好ましくは0.01~5μm、さらに好ましくは0.01~3μmの範囲である。平均粒径が10μm以下であれば、基材層の透明性の低下による不具合が生じにくい。
粒子の平均粒径は、遠心沈降式粒度分布測定装置により測定される等価球形分布における積算(質量基準)50%の値である。
【0136】
基材層が粒子を含む場合、基材層中の粒子の含有量は、粒子の平均粒径との兼ね合いもあるので一概にはいえないが、基材層中の粒子を含有する層の総質量に対し、好ましくは5質量%以下、より好ましくは0.0003~3質量%の範囲、さらに好ましくは0.0005~1質量%の範囲である。粒子の含有量が5質量%以下であれば、粒子の脱落や基材層の透明性の低下等の不具合が生じにくい。
【0137】
基材層は、必要に応じて、上述の粒子以外の添加剤を含むことができる。添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等の公知の添加剤を用いることができる。
【0138】
基材層の厚みは、製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、好ましくは2~350μm、より好ましくは5~250μm、さらに好ましくは10~100μmの範囲である。
【0139】
(転写型のプライマー層)
プライマー層は、基材層と凹凸層との間に各種の機能を付与するために設けられる。
プライマー層としては、密着向上層、帯電防止層等が挙げられる。
プライマー層は、複数の機能を有していてもよい。
【0140】
好ましい一態様において、プライマー層は密着向上層である。基材層と凹凸層との密着性が不十分であると、用途によっては積層体を使用できない場合がある。密着向上層を有することで、基材層と凹凸層との密着性が向上し、転写工程の際に凹凸層が基材層から剥離しにくくなる。
プライマー層が密着向上層である場合、プライマー層は、基材層と凹凸層との密着性向上等の観点から、樹脂及び架橋剤由来の化合物のいずれか一方又は両方を含有することが好ましい。
【0141】
好ましい他の一態様において、プライマー層は帯電防止層である。プライマー層が帯電防止層であれば、積層体の最表面、特に基材層に対して凹凸層が存在する側の最表面に対する、剥離帯電や摩擦帯電による塵埃等の付着を軽減できる。これにより、転写工程の際の異物混入による欠陥を低減させることができる。
プライマー層を帯電防止層とするには、例えば、プライマー層に帯電防止剤を含有させればよい。
【0142】
樹脂としては、従来公知の樹脂を使用することができる。樹脂の具体例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル樹脂(ポリビニルアルコール、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等)等が挙げられる。その中でも、密着性能やコーティング性を考慮すると、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂が好ましい。
基材層が樹脂フィルムである場合、基材層の樹脂としては、プライマー層と基材層との親和性の観点から、樹脂フィルムの樹脂と同種の樹脂が好ましい。例えば基材層がポリエステルフィルムの場合には、プライマー層はポリエステル樹脂を含有することが好ましい。基材層がポリ(メタ)アクリレートフィルムの場合には、プライマー層はアクリル樹脂を含有することが好ましい。
【0143】
ポリエステル樹脂としては、主な構成成分が多価カルボン酸及び多価ヒドロキシ化合物からなるものが挙げられる。
多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸及び、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2-カリウムスルホテレフタル酸、5-ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、トリメリット酸モノカリウム塩及びそれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
多価ヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、p-キシリレングリコール、ビスフェノールA-エチレングリコール付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール、ジメチロールプロピオン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジメチロールエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロールプロピオン酸カリウム等が挙げられる。
これらの化合物の中から、それぞれ適宜1つ以上を選択し、常法の重縮合反応によりポリエステル樹脂を合成すればよい。
【0144】
アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル系モノマーを含む重合性モノマーの重合体である。
アクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系モノマーの単独重合体及び共重合体、(メタ)アクリル系モノマーと(メタ)アクリル系モノマー以外の重合性モノマーとの共重合体等が挙げられる。
アクリル樹脂は、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタン等)との共重合体であってもよい。このような共重合体は、例えば、ブロック共重合体、グラフト共重合体である。又は、ポリエステルの溶液又は分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様に、ポリウレタンの溶液又は分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様に、他のポリマーの溶液又は分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれる。
【0145】
上記重合性モノマーとしては、特に限定されないが、特に代表的な化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸等のカルボキシル基含有モノマー及びそれらの塩;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネート等の水酸基含有モノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等の窒素含有モノマー;スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン等のスチレン系化合物、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等の珪素含有モノマー;燐含有ビニル系モノマー;塩化ビニル、塩化ビリデン等のハロゲン化ビニル;ブタジエン等の共役ジエンが挙げられる。
【0146】
ウレタン樹脂とは、ウレタン結合を分子内に有する高分子化合物のことであり、典型的には、ポリオールとポリイソシアネート化合物との反応により合成される。ウレタン樹脂を合成する際に鎖延長剤を使用してもよい。
ウレタン樹脂を得るために使用されるポリオールとしては、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール等が挙げられる。これらの化合物は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0147】
ポリカーボネートポリオールは、多価アルコールとカーボネート化合物との反応(脱アルコール反応)により得られる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン等が挙げられる。カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールの具体例としては、ポリ(1,6-ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。
【0148】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0149】
ポリエステルポリオールとしては、多価カルボン酸又はその酸無水物と、多価アルコールとの反応により得られるもの、ポリカプロラクトン等のラクトン化合物の誘導体ユニットを有するもの等が挙げられる。
多価カルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-ヘキシル-1,3-プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、ジメタノールベンゼン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、アルキルジアルカノールアミン、ラクトンジオール等が挙げられる。
【0150】
ポリオールとしては、密着性能を考慮すると、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールが好ましく、ポリエステルポリオールが特に好ましい。
【0151】
ウレタン樹脂を得るために使用されるポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0152】
鎖延長剤としては、イソシアネート基と反応する活性基を2個以上有するものであれば特に制限はなく、一般的には、水酸基又はアミノ基を2個有する鎖延長剤を主に用いることができる。
水酸基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の脂肪族グリコール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート等のエステルグリコール等のグリコール化合物が挙げられる。
アミノ基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、イソプロビリチンシクロヘキシル-4,4’-ジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。
【0153】
ウレタン樹脂は、典型的には、分散液又は溶液の形態で使用される。分散液又は溶液の媒体としては、溶剤であってもよいが、水が好ましい。
ウレタン樹脂の水分散液又は水溶液としては、乳化剤を用いた強制乳化型、ウレタン樹脂の構造中に親水性基を導入した自己乳化型又は水溶型等がある。特に、ウレタン樹脂の構造中にイオン基を導入しアイオノマー化した自己乳化型が、液の貯蔵安定性や、得られるプライマー層の耐水性、透明性に優れており好ましい。
【0154】
ウレタン樹脂の構造中に導入されるイオン基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、第4級アンモニウム塩基等、種々のものが挙げられるが、カルボキシル基が好ましい。
カルボキシル基はアンモニア、アミン、アルカリ金属類、無機アルカリ類等の中和剤で中和した塩の形にするのが好ましい。特に好ましい中和剤は、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンである。中和剤で中和されたカルボキシル基を有するウレタン樹脂は、塗布後の乾燥工程において中和剤が外れたカルボキシル基を、架橋剤による架橋反応点として用いることが出来る。これにより、コーティング前の液の状態での安定性に優れる上、得られるプライマー層の耐久性、耐溶剤性、耐水性、耐ブロッキング性等をさらに改善することが可能となる。
【0155】
ウレタン樹脂にカルボキシル基を導入する方法としては、重合反応の各段階の中で種々の方法が取り得る。例えば、プレポリマー合成時に、カルボキシル基を持つ樹脂を共重合成分として用いる方法や、ポリオールやポリイソシアネート化合物、鎖延長剤等の一成分としてカルボキシル基を持つ成分を用いる方法がある。特に、カルボキシル基含有ジオールを用い、この成分の仕込み量によって所望の量のカルボキシル基を導入する方法が好ましい。例えば、ウレタン樹脂の合成に用いるジオールに対してカルボキシル基含有ジオールを共重合させることができる。
カルボキシル基含有ジオールとしては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ビス-(2-ヒドロキシエチル)プロピオン酸、ビス-(2-ヒドロキシエチル)ブタン酸、それらのカルボキシル基が中和剤で中和された塩等が挙げられる。
【0156】
プライマー層は、プライマー層をより強固にして密着性等の性能を向上させるため、架橋剤由来の化合物を含有することが好ましい。
架橋剤としては、公知の材料を使用することができ、例えば、メラミン化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート系化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド系化合物、シランカップリング化合物、ヒドラジド化合物、アジリジン化合物等が挙げられる。それらの中でも、メラミン化合物、イソシアネート系化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド系化合物、シランカップリング化合物が好ましく、密着性及び耐久性をさらに向上させる観点からは、メラミン化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート系化合物やエポキシ化合物がより好ましく、メラミン化合物、オキサゾリン化合物やイソシアネート系化合物が特に好ましい。これらの架橋剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。2種以上を併用することでさらに密着性や耐久性が向上して良好となる場合もある。
【0157】
メラミン化合物とは、化合物中にメラミン骨格を有する化合物のことであり、例えば、アルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的又は完全にエーテル化した化合物、及びこれらの混合物が挙げられる。エーテル化に用いるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブタノール等が挙げられる。メラミン化合物としては、単量体、又は2量体以上の多量体のいずれであってもよく、又はこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できるし、メラミン化合物の反応性を上げるために触媒を使用することも可能である。
メラミン化合物としては、各種化合物との反応性を考慮すると、水酸基を有するものが好ましい。
【0158】
イソシアネート系化合物とは、イソシアネート化合物、又はブロックイソシアネート化合物に代表されるイソシアネート誘導体構造を有する化合物のことである。
イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート化合物;α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族イソシアネート化合物;メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート化合物;シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族イソシアネート化合物等が挙げられる。また、これらイソシアネート化合物のビュレット化物、イソシアヌレート化物、ウレトジオン化物、カルボジイミド変性体等の重合体や誘導体も挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。上記イソシアネート化合物の中でも、紫外線による黄変を避ける観点から、芳香族イソシアネート化合物よりも脂肪族イソシアネート化合物又は脂環族イソシアネート化合物がより好ましい。
【0159】
ブロックイソシアネート化合物としては、上記イソシアネート系化合物のイソシアネート基がブロック剤でブロックされたものが挙げられる。ブロック剤としては、例えば重亜硫酸塩類、フェノール、クレゾール、エチルフェノール等のフェノール系化合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール等のアルコール系化合物、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、イソブタノイル酢酸メチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系化合物、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等のメルカプタン系化合物、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム等のラクタム系化合物、ジフェニルアニリン、アニリン、エチレンイミン等のアミン系化合物、アセトアニリド、酢酸アミド等の酸アミド化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系化合物が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ブロックイソシアネート化合物としては、プライマー層が破壊されにくいという観点から、活性メチレン系化合物によりブロックされたイソシアネート化合物が好ましい。
【0160】
イソシアネート系化合物は単体で用いてもよいし、各種ポリマーとの混合物や結合物として用いてもよい。イソシアネート系化合物の分散性や架橋性を向上させるという意味において、ポリエステル樹脂やウレタン樹脂との混合物や結合物を用いることが好ましい。
【0161】
オキサゾリン化合物とは、分子内にオキサゾリン基を有する化合物である。
オキサゾリン化合物としては、オキサゾリン基を含有する重合体が好ましい。オキサゾリン基を含有する重合体は、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独又は他のモノマーとの重合によって得られる。
付加重合性オキサゾリン基含有モノマーとしては、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも2-イソプロペニル-2-オキサゾリンが、工業的にも入手しやすく好適である。
他のモノマーとしては、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば特に制限はなく、例えばアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基)等の(メタ)アクリレート;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲンα,β-不飽和モノマー;スチレン、α-メチルスチレン、等のα,β-不飽和芳香族モノマー等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0162】
オキサゾリン化合物1g当たりのオキサゾリン基量は、好ましくは0.5~10mmol/g、より好ましくは1~9mmol/g、さらに好ましくは3~8mmol/g、特に好ましくは4~6mmol/gの範囲である。オキサゾリン基量が上記範囲内であれば、塗膜の耐久性が向上し、密着性の調整がしやすくなる。
【0163】
エポキシ化合物とは、分子内にエポキシ基を有する化合物である。
エポキシ化合物としては、例えば、エピクロロヒドリンと水酸基又はアミノ基を有する化合物(エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ビスフェノールA等)との縮合物が挙げられ、ポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、モノエポキシ化合物、グリシジルアミン化合物等がある。ポリエポキシ化合物としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルが挙げられる。ジエポキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテルが挙げられる。モノエポキシ化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルが挙げられる。グリシジルアミン化合物としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノ)シクロヘキサンが挙げられる。
【0164】
カルボジイミド系化合物とは、分子内にカルボジイミド構造又はカルボジイミド誘導体構造を1つ以上有する化合物である。
カルボジイミド系化合物としては、より良好なプライマー層の強度等のために、分子内にカルボジイミド構造又はカルボジイミド誘導体構造を2つ以上有するポリカルボジイミド系化合物がより好ましい。
【0165】
カルボジイミド系化合物は、公知の技術で合成することができ、一般的には、ジイソシアネート化合物の縮合反応が用いられる。ジイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではなく、芳香族系、脂肪族系いずれも使用することができ、具体的には、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0166】
ポリカルボジイミド系化合物の水溶性や水分散性を向上させるために、本発明の効果を消失させない範囲において、界面活性剤を添加してもよいし、ポリアルキレンオキシド、ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩、ヒドロキシアルキルスルホン酸塩等の親水性モノマーを添加してもよい。
【0167】
シランカップリング化合物とは、1つの分子中に有機官能基とアルコキシ基等の加水分解基を有する有機ケイ素化合物である。
シランカップリング化合物としては、例えば、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有化合物、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有化合物、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン等のスチリル基含有化合物、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有化合物、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基含有化合物、トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス(トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のイソシアヌレート基含有化合物、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等のメルカプト基含有化合物等が挙げられる。
【0168】
シランカップリング化合物としては、上記化合物の中でも、プライマー層の強度の観点から、エポキシ基含有シランカップリング化合物、ビニル基や(メタ)アクリル基等の二重結合含有シランカップリング化合物、アミノ基含有シランカップリング化合物がより好ましい。
【0169】
なお、これら架橋剤は、乾燥過程や製膜過程において反応し、プライマー層の性能を向上させる。形成されるプライマー層中には、架橋剤由来の化合物として、架橋剤の未反応物、反応後の化合物、又はそれらの混合物が存在しているものと推測できる。
【0170】
プライマー層に含有させる帯電防止剤としては、特に制限はなく、公知の帯電防止剤を使用することが可能であり、例えば、アンモニウム基を有する化合物、ポリエーテル化合物、スルホン酸基を有する化合物、ベタイン化合物、導電性有機高分子等が挙げられる。
【0171】
プライマー層は、ブロッキングや滑り性改良のために粒子を含有していてもよい。
プライマー層は、本発明の主旨を損なわない範囲において、必要に応じて、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等の添加剤を含有していてもよい。
【0172】
プライマー層100質量%中の樹脂の割合は、例えば5質量%以上、好ましくは10~99質量%、より好ましくは20~95質量%、さらに好ましくは30~90質量%の範囲である。樹脂の割合が上記範囲内であれば、密着性能、プライマー層の外観がより優れる。
【0173】
プライマー層100質量%中の架橋剤由来の化合物の割合は、例えば80質量%以下、好ましくは0.5~65質量%、より好ましくは3~50質量%、さらに好ましくは5~40質量%の範囲である。架橋剤由来の化合物の割合が上記範囲内であれば、密着性能、プライマー層の強度がより優れる。
【0174】
プライマー層の厚みは、プライマー層に使用する材料や発現させる性能にも依存するため一概にはいえないが、好ましくは0.001~10μm、より好ましくは0.01~4μm、さらに好ましくは0.02~1μmの範囲である。
プライマー層は、公知の方法で形成できる。
【0175】
(転写型の表面機能層)
転写型の表面機能層は、転写型表面(凹凸層の基材層側とは反対側の面上)に各種の機能を付与するために設けることができる。
転写型の表面機能層としては、離型層や帯電防止層等が挙げられる。
【0176】
離型層は、転写性を向上させるために設けるものである。離型層に用いられる材料としては、シリコーン化合物、フッ素化合物、長鎖アルキル基含有化合物等、従来公知のものを用いることができる。これらの中でもより強力な離型性能の発現には、シリコーン化合物やフッ素化合物が好ましく、また、被転写物を汚染しないという観点からはフッ素化合物や長鎖アルキル基含有化合物が好ましい。
【0177】
シリコーン化合物としては、分子内にシリコーン構造を有する化合物のことであり、例えば、ジメチルシリコーン、ジエチルシリコーン等のアルキルシリコーン、また、フェニル基を有するフェニルシリコーン、メチルフェニルシリコーン等が挙げられる。シリコーンには各種の官能基を有するものも使用することができ、例えば、エーテル基、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボン酸基、フッ素等のハロゲン基、パーフルオロアルキル基、各種アルキル基や各種芳香族基等の炭化水素基等が挙げられる。他の官能基として、ビニル基を有するシリコーンや水素原子が直接ケイ素原子に結合したハイドロゲンシリコーンも一般的で、両者を併用して、付加型(ビニル基とハイドロゲンシランの付加反応による型)のシリコーンとして使用することも可能である。また、アクリロイル基等の二重結合を導入し、当該二重結合部で反応させる方法も好ましい。
【0178】
また、シリコーン化合物として、アクリルグラフトシリコーン、シリコーングラフトアクリル、アミノ変性シリコーン、パーフルオロアルキル変性シリコーン等の変性シリコーンを使用することも可能である。耐熱性、汚染性を考慮すると、硬化型シリコーン樹脂を使用することが好ましく、硬化型の種類としては、縮合型、付加型、活性エネルギー線硬化型等いずれの硬化反応タイプでも用いることができる。
【0179】
フッ素化合物としては、化合物中にフッ素原子を含有している化合物である。フッ素化合物としては、有機系フッ素化合物が好適に用いられ、例えば、パーフルオロアルキル基含有化合物、フッ素原子を含有するオレフィン化合物の重合体、フルオロベンゼン等の芳香族フッ素化合物等が挙げられる。離型性の観点からパーフルオロアルキル基を有する化合物であることが好ましい。さらにフッ素化合物には後述するような長鎖アルキル化合物を含有している化合物も使用することができる。
【0180】
パーフルオロアルキル基を有する化合物とは、例えば、パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート、パーフルオロアルキルメチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロアルキルエチル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロアルキルプロピル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロアルキル-1-メチルプロピル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロアルキル-2-プロペニル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートやその重合物、パーフルオロアルキルメチルビニルエーテル、2-パーフルオロアルキルエチルビニルエーテル、3-パーフルオロプロピルビニルエーテル、3-パーフルオロアルキル-1-メチルプロピルビニルエーテル、3-パーフルオロアルキル-2-プロペニルビニルエーテル等のパーフルオロアルキル基含有ビニルエーテルやその重合物等が挙げられる。耐熱性、汚染性を考慮すると重合物であることが好ましい。重合物は単一化合物のみでも複数化合物の重合物でもよい。また、防汚性の観点からパーフルオロアルキル基は炭素原子数が3~11であることが好ましい。さらに後述するような長鎖アルキル化合物を含有している化合物との重合物であってもよい。
【0181】
長鎖アルキル基含有化合物とは、炭素数が通常6以上、好ましくは8以上、さらに好ましくは12以上の直鎖または分岐のアルキル基を有する化合物のことである。アルキル基としては、例えば、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基、オクタデシル基、ベヘニル基等が挙げられる。アルキル基を有する化合物とは、例えば、各種の長鎖アルキル基含有高分子化合物、長鎖アルキル基含有アミン化合物、長鎖アルキル基含有エーテル化合物、長鎖アルキル基含有4級アンモニウム塩等が挙げられる。耐熱性、汚染性を考慮すると高分子化合物であることが好ましい。また、効果的に防汚性を得られるという観点から、長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物であることがより好ましい。
【0182】
長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物とは、反応性基を有する高分子と、当該反応性基と反応可能なアルキル基を有する化合物とを反応させて得ることができる。上記反応性基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、酸無水物等が挙げられる。これらの反応性基を有する化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリエチレンアミン、反応性基含有ポリエステル樹脂、反応性基含有ポリ(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも防汚性や取り扱い易さを考慮するとポリビニルアルコールであることが好ましい。
【0183】
上記の反応性基と反応可能なアルキル基を有する化合物とは、例えば、ヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、デシルイソシアネート、ラウリルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、ベヘニルイソシアネート等の長鎖アルキル基含有イソシアネート、ヘキシルクロライド、オクチルクロライド、デシルクロライド、ラウリルクロライド、オクタデシルクロライド、ベヘニルクロライド等の長鎖アルキル基含有酸クロライド、長鎖アルキル基含有アミン、長鎖アルキル基含有アルコール等が挙げられる。これらの中でも離型性や取り扱い易さを考慮すると長鎖アルキル基含有イソシアネートが好ましく、オクタデシルイソシアネートが特に好ましい。
【0184】
また、長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物は、長鎖アルキル(メタ)アクリレートの重合物や長鎖アルキル(メタ)アクリレートと他のビニル基含有モノマーとの共重合によって得ることもできる。長鎖アルキル(メタ)アクリレートとは、例えば、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0185】
表面機能層中の上述した離型性能を発現するための離型剤の含有量は、使用する材料にも依存するので一概にはいえないが、シリコーン化合物やフッ素化合物の場合は通常0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上の範囲であり、上限は100質量%であってもかまわない。また、長鎖アルキル基含有化合物を使用する場合は、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上の範囲であり、上限は100質量%であってもかまわない。上記範囲で使用することで効果的な離型性能を有することができる。
【0186】
表面機能層としてほこり付着防止等のために帯電防止層を形成する際に使用する帯電防止剤としては、従来公知の各種の帯電防止剤を使用することができる。
【0187】
転写型の表面機能層の厚みは、凹凸層で形成された、凹部から凸部までの高さの5倍以下であることが好ましい。当該凹凸の高さの5倍以上になると凹凸による艶消し性能が低減するためである。表面機能層の厚みは、凹凸の高さによるので一概にはいえないが、通常0.001~3μm、好ましくは0.005~2μm、より好ましくは0.01~1μm、さらに好ましくは0.02~0.5μm、特に好ましくは0.03~0.2μmの範囲である。上記範囲で使用することで、表面機能層による機能の発現と、凹凸層の凹凸による艶消し性の両立が可能となる。
表面機能層は、公知の方法で形成できる。
【0188】
(転写型の裏面機能層)
転写型の裏面機能層は、転写型の転写させる側とは反対側の面(基材層の凹凸層側とは反対側の面)に各種の機能を付与するために設けることができる。
裏面機能層としては、粘着層、帯電防止層、アンチブロッキング層等が挙げられる。
【0189】
転写型の裏面機能層の厚みは、裏面機能層に使用する材料や発現させる性能にも依存するため一概にはいえないが、例えば0.001~30μmである。裏面機能層が粘着層である場合は、好ましくは0.01~30μm、より好ましくは0.1~20μmである。裏面機能層が帯電防止層である場合は、好ましくは0.001~10μm、より好ましくは0.01~5μmである。
裏面機能層は、公知の方法で形成できる。
【0190】
〔被転写物の凹凸層以外の層〕
本発明の被転写物は、被転写物の凹凸構造を有する層(凹凸層)に加えて基材層を有していてもよい。また、被転写物は、凹凸層と基材層との間に設けられたプライマー層、前記基材層の前記凹凸層側とは反対側の面上に設けられた裏面機能層からなる群から選ばれる1つ以上の層を有してもよい。また、本発明の効果を損なわないものであれば、前記凹凸層の前記基材層側とは反対側の面上に設けられた表面機能層を有してもよい。
【0191】
(被転写物の基材層)
被転写物の基材層としては、転写型の基材層と同様なものを使用することができる。
【0192】
(被転写物のプライマー層)
被転写物のプライマー層としては、転写型のプライマー層と同様なものを使用することができる。例えば、密着向上層であれば、基材層と被転写物との密着性を十分なものとして、被転写物使用時に剥がれなくすることができるし、帯電防止層であれば、被転写物表面に付着するほこりを低減させることができる。
【0193】
(被転写物の表面機能層)
被転写物の表面機能層は、被転写物表面(凹凸層の基材層側とは反対側の面上)に各種の機能を付与するために設けることができる。
被転写物の表面機能層としては、防汚層、帯電防止層、屈折率調整層(反射防止層、低反射層等)、赤外線吸収層、紫外線吸収層、色補正層等が挙げられる。
【0194】
防汚層は、凹凸層に撥水性や撥油性を付与することで防汚性能を向上させるために設けるものである。防汚層に用いられる材料としては、シリコーン化合物、フッ素化合物、長鎖アルキル基含有化合物等、従来公知のものを用いることができる。これらの中でもより強力な防汚性能の発現には、シリコーン化合物やフッ素化合物が好ましく、また、防汚層が接触する相手を汚染しないという観点からはフッ素化合物や長鎖アルキル基含有化合物が好ましい。具体的な化合物に関しては、転写型の表面機能層としての離型層に用いられる材料と同様なものが挙げられる。
【0195】
被転写物の表面機能層として帯電防止層を形成する際に使用する帯電防止剤としては、従来公知の各種の帯電防止剤を使用することができる。
【0196】
屈折率調整層としては、例えば、高屈折率層、低屈折率層及びそれらの積層物が挙げられる。
被転写物の表面機能層として屈折率調整層を形成する際に使用する材料として、高屈折率化を目的とする場合は、例えば、ベンゼン構造、ビスフェノールA構造、メラミン構造、フルオレン構造のような芳香族含有化合物、また、芳香族の中でも高屈折率化合物と考えられるナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ナフタセン、ベンゾ[a]アントラセン、ベンゾ[a]フェナントレン、ピレン、ベンゾ[c]フェナントレン、ペリレン構造のような縮合多環式芳香族化合物、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化イットリウム、酸化インジウム、酸化セリウム、ATO(アンチモン・スズ酸化物)、ITO(インジウム・スズ酸化物)等の金属酸化物や、チタンキレートやジルコニウムキレート等の金属キレート化合物等の金属含有化合物、硫黄元素を含有する化合物、ハロゲン元素を含有する化合物等が挙げられる。
【0197】
金属酸化物は、使用形態によっては密着性が低下する懸念があるため、粒子の状態で使用することが好ましく、また、その平均粒径は塗布外観等の観点から、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは25nm以下の範囲である。
【0198】
被転写物の表面機能層として屈折率調整層を形成する際に使用する材料として、低屈折率化を目的とする場合は、従来公知の材料を使用することができ、例えば、アクリル樹脂やウレタン樹脂は一般的には屈折率が低いために可能である。また、特にフッ素原子が樹脂の中に組み込まれた化合物、例えば、フッ素樹脂や、主種骨格にフッ素樹脂を含有する化合物、側鎖にパーフルオロアルキル基を含有する化合物が挙げられる。また、無機材料としては、中空シリカ粒子や、フッ化マグネシウムやフッ化カルシウム等フッ素原子含有無機化合物や、それらの中空粒子やナノポーラス粒子等も挙げられる。
【0199】
被転写物の表面機能層の厚みは、凹凸層で形成された、凹部から凸部までの高さの5倍以下であることが好ましい。当該凹凸の高さの5倍以上になると凹凸による艶消し性能が低減するためである。表面機能層の厚みは、凹凸の高さによるので一概にはいえないが、通常0.001~3μm、好ましくは0.005~2μm、より好ましくは0.01~1μm、さらに好ましくは0.02~0.5μm、特に好ましくは0.03~0.2μmの範囲である。上記範囲で使用することで、表面機能層による機能の発現と、凹凸層の凹凸による艶消し性の両立が可能となる。
表面機能層は、公知の方法で形成できる。
【0200】
(被転写物の裏面機能層)
被転写物の裏面機能層は、基材層の凹凸層側(被転写物側)とは反対側の面に各種の機能を付与するために設けることができる。
被転写物の裏面機能層としては、粘着層、帯電防止層、屈折率調整層、アンチブロッキング層等が挙げられる。
粘着層は、積層体を各種の被着体に接合するために設けられる。帯電防止層は、積層体の最表面、特に基材層の凹凸層側とは反対側の最表面に対する、剥離帯電や摩擦帯電による周囲のゴミ等の付着、それによる欠陥等を防止するために設けられる。屈折率調整層は、例えば、積層体の全光線透過率を向上させるために設けられる。アンチブロッキング層は、積層体のブロッキングを軽減するために設けられる。
【0201】
粘着層を形成する粘着剤としては、公知のものを使用でき、アクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ゴム系等が挙げられる。それらの中でも汎用性を考慮すると、アクリル系が好ましい。
帯電防止層、屈折率調整層はそれぞれ、表面機能層としての帯電防止層、屈折率調整層と同様である。
【0202】
被転写物の裏面機能層の厚みは、裏面機能層に使用する材料や発現させる性能にも依存するため一概にはいえないが、例えば0.001~30μmである。裏面機能層が粘着層である場合は、好ましくは0.01~30μm、より好ましくは0.1~20μmである。裏面機能層が帯電防止層である場合は、好ましくは0.001~10μm、より好ましくは0.01~5μmである。
裏面機能層は、公知の方法で形成できる。
【0203】
(表面機能層および裏面機能層の形成)
転写型および被転写物の双方において、表面機能層および裏面機能層の形成に関して、上述の一連の化合物を溶液または溶媒の分散体として、固形分濃度が0.1~80質量%程度を目安に調整した液を基材上にコーティングする要領にて積層体を製造することが好ましい。
【0204】
転写型および被転写物の双方において、表面機能層および裏面機能層を形成する方法としては、例えば、グラビアコート、リバースロールコート、ダイコート、エアドクターコート、ブレードコート、ロッドコート、バーコート、カーテンコート、ナイフコート、トランスファロールコート、スクイズコート、含浸コート、キスコート、スプレーコート、カレンダコート、押出コート等、従来公知のコーティング方式を用いることができる。
【0205】
転写型および被転写物の双方において、基材フィルム上に表面機能層および裏面機能層を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては特に限定されるものではないが、コーティングによる方法の場合、コーティング液に使用している水等の溶媒の乾燥に関しては、通常50~150℃、好ましくは80~130℃、さらに好ましくは90~120℃の範囲である。乾燥の時間としては、目安として3~200秒、好ましくは5~120秒の範囲である。また、表面機能層および裏面機能層の強度を向上させるため、フィルム製造工程において行う場合は、通常150~270℃、好ましくは170~230℃、さらに好ましくは180~210℃の範囲の熱処理工程を経ることである。当該熱処理工程の時間としては、目安として3~200秒、好ましくは5~120秒の範囲である。
【実施例0206】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
本発明で用いた測定方法及び評価方法は次のとおりである。
【0207】
(1)ポリエステルの極限粘度
ポリエステルに非相溶な成分を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0208】
(2)平均一次粒子径(d50:μm)
島津製作所社製、遠心沈降式粒度分布測定装置 SA-CP3型を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均一次粒子径とした。
【0209】
(3)樹脂の重量平均分子量(Mw)
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)「HLC-8120」(東ソー社製)を用いて測定した。カラムとしては、TSKgel G5000HXL*GMHXL-L(東ソー社製)を使用した。また、標準ポリスチレンとして、F288/F80/F40/F10/F4/F1/A5000/A1000/A500(東ソー社製)及びスチレンを使用して検量線を作成した。測定は、重合体をテトラヒドロフランに濃度が0.4%になるように溶解した溶液100μlを使用してカラムオーブン温度40℃で行った。重量平均分子量(Mw)は標準ポリスチレン換算にて算出した。
【0210】
(4)RSm、Sa及びθa
表面形状計測システム(日立ハイテクサイエンス社製 走査型白色干渉顕微鏡「VS1330」)を用い、硬化膜の表面の236.9μm×177.6μmの領域について、表面形状を光干渉法にて測定し、補完およびベースライン補正を行い、データを読み取った。測定時における対物レンズの倍率は20倍に設定して測定した。なお、本評価にてしわ状の凹凸構造の有無も確認した。
また、転写型および被転写物の各物性の比較に関しては、パーセントの比較においては、被転写物の物性値から転写型の物性値を引き算して得た値を、転写型の物性値で割って算出した。各物性の差においては、被転写物の物性値から転写型の物性値を引き算して得た値の絶対値を算出した。
【0211】
(5)全光線透過率・ヘイズ
基材上に硬化膜を形成した積層体を測定対象とした。全光線透過率及びヘイズは、JIS Z8722:2009(透過物体の照射及び受光の幾何条件)及びJIS K7361-1:1997(プラスチック-透明材料の全光線透過率の試験方法)JIS K7136:2000(プラスチック-透明材料のヘ-ズの求め方)に準拠し、日本電色工業製ヘーズメーター「SH7000」を用いて測定した。
ヘイズに関しては、基材のみのヘイズを測定し、積層体のヘイズ測定値から引き算することにより、転写型または被転写物による凹凸構造層(硬化膜)のみのヘイズを評価した。
【0212】
(6)20°および60°グロス・艶消し性
基材上に硬化膜を形成した積層体を測定対象とした。20°および60°グロス(20°および60°鏡面光沢度)を、JIS Z 8741-1997に準拠し、日本電色工業社製グロスメーター「VG2000」を用いて測定した。グロスの値が低いほど艶消し性に優れる。
【0213】
(7)鉛筆硬度
JIS K5600-5-4:1999 塗料一般試験法-第5部:塗膜の機械的性質-第4節:引っかき硬度(鉛筆法)に従って、硬化膜の鉛筆硬度を測定した。
【0214】
(8)表面抵抗値の測定方法
三菱ケミカルアナリテック社製、高抵抗率計:ハイレスタ MCP-HP450を使用し、印過電圧100V、23℃、50%RHの測定雰囲気でサンプルを30分間調湿後の表面抵抗率を測定した。表面抵抗値がOVERと出る場合は、測定できないほど表面抵抗値が高いことを示す。
【0215】
(9)艶消し性
白色で直線状の蛍光灯を灯した室内に、積層体を設置し、蛍光灯と積層体の距離を2.5mに設定して目視外観にて凹凸層側の艶消し性(蛍光灯の映り込み)を以下の評価基準A~Dで評価した。評価A~Cにおいては艶消し性が確認できる判定である。
A:蛍光灯の反射像が強くぼやけており、蛍光灯の輪郭が確認できない。
B:蛍光灯の反射像がぼやけているが、うっすらと輪郭を確認することができる。
C:蛍光灯の反射像が少しぼやけており、輪郭を確認することもできるが、波打った形状で観察され、暗い白色に映る。
D:蛍光灯の反射像が鮮明ではっきりと輪郭を確認することができ、また直線状で白色に映る。
【0216】
(10)マジック防汚性(撥油性・防汚性)
凹凸層に、ゼブラ株式会社製 油性黒マジック「マッキー細」で筆記した後、目視で観察し評価した。インキをはじく方が撥油性(防汚性)に優れる結果であり、評価AおよびBは防汚性が確認できる判定である。
A:インキがはじかれている。
B:インキが筆記した端の方のみわずかにはじかれている。
C:インキがはじかれていない。
【0217】
実施例および比較例において使用した材料は、以下の通りである。
(基材)
・ポリエステル(S1):重合触媒として酢酸マグネシウム・四水和物およびテトラブチルチタネートを用いて得られる、極限粘度が0.63dl/gのポリエチレンテレフタレートホモポリマー。
・ポリエステル(S2):重合触媒として酢酸マグネシウム・四水和物、正リン酸および二酸化ゲルマニウムを用いて得られる、極限粘度が0.64dl/gのポリエチレンテレフタレートホモポリマー。
・ポリエステル(S3):平均一次粒子径2μmのシリカ粒子を0.3質量%含有する、ポリエチレンテレフタレートホモポリマー。
【0218】
(活性エネルギー線硬化性の官能基を有するアクリル樹脂(b1)の製造)
次の方法で活性エネルギー線硬化性の官能基を有するアクリル樹脂(b1)を製造した。
温度計、攪拌機及び還流冷却管を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル(178質量部)、グリシジルメタクリレート(20質量部)、メチルメタクリレート(79質量部)、エチルアクリレート(1.0質量部)、及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(0.6質量部)を加えて、65℃で3時間反応させた。その後、さらに2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(0.3質量部)を加えて3時間反応させた後、プロピレングリコールモノメチルエーテル(48質量部)とp-メトキシフェノール(0.5質量部)を加え100℃まで加熱した。次に、アクリル酸(10質量部)、及びトリフェニルホスフィン(1.6質量部)を添加して、110℃で6時間反応させることで、二重結合量(アクリロイル基濃度(アクリロイル基の導入量))1.2mmol/gの側鎖にラジカル重合可能な二重結合を有するアクリル樹脂(b1)を得た。重量平均分子量(Mw)は48800であった。
【0219】
(活性エネルギー線硬化性の官能基を有するアクリル樹脂(b2)の製造)
次の方法で活性エネルギー線硬化性の官能基を有するアクリル樹脂(b2)を製造した。
温度計、攪拌機及び還流冷却管を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル(157質量部)、グリシジルメタクリレート(98質量部)、メチルメタクリレート(1.0質量部)、エチルアクリレート(1.0質量部)、メルカプトプロピルトリメトキシシラン(1.9質量部)、及び2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(1.0質量部)、γ-トリメトキシシリルプロパンチオール(信越化学工業株式会社製 KBM-803)を1.9質量部加えて、65℃で3時間反応させた。その後、さらに2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(0.5質量部)を加えて3時間反応させた後、プロピレングリコールモノメチルエーテル(138質量部)とp-メトキシフェノール(0.45質量部)を加え100℃まで加熱した。
次に、アクリル酸(51質量部)、及びトリフェニルホスフィン(3.1質量部)を添加して、110℃で6時間反応させることで、二重結合量(アクリロイル当量(アクリロイル基の導入量))4.6mmol/gの側鎖にラジカル重合可能な二重結合を有するアクリル樹脂(b2)を得た。重量平均分子量(Mw)は17700であった。
【0220】
(転写型硬化性組成物の製造)
以下に示す各材料を表1に示す量(質量部、不揮発分換算)で混合した。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、PGM)とメチルエチルケトン(以下、MEK)の混合溶剤(PGM:MEK(質量比)が7:3)を固形分濃度が30質量%になるように添加し、均一になるまで撹拌して塗布液(転写型硬化性組成物)を得た。
・(メタ)アクリレート(a1):ウレタンアクリレート(三菱ケミカル社製 紫光 UV-1700B)(3官能以上)
・(メタ)アクリレート(a2):変性エポキシアクリレート(ダイセル・オルネクス社製 EBECRYL 3708)(2官能)
・(メタ)アクリレート(a3):1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(2官能)
・(メタ)アクリレート(a4):ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学社製 ライトアクリレート DCP-A)(2官能)
・(メタ)アクリレート(a5):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(6官能)
・(メタ)アクリレート(a6):ペンタエリスリトールトリアクリレート(三官能)およびペンタエリスリトールテトラアクリレート(四官能)の混合物(大阪有機化学工業社製 ビスコート#300)
・(メタ)アクリレート(a7):ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレート(三菱ケミカル社製 紫光 UT-6042 (2官能)
・(メタ)アクリレート(a8):メトキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業社製 2-MTA)(単官能)
・アクリル樹脂(b1):上記の方法で製造した活性エネルギー線硬化性の官能基を有するアクリル樹脂(b1)
・アクリル樹脂(b2):上記の方法で製造した活性エネルギー線硬化性の官能基を有するアクリル樹脂(b2)
・アクリル樹脂(b3):三菱ケミカル株式会社製 BR-80(アクリル系共重合体)
・離型剤(フッ素原子を有する化合物)(c1):活性エネルギー線硬化性の官能基を有するパーフルオロポリエーテル化合物(信越化学工業社製 KY-1203)
・離型剤(シリコーン化合物)(c2):シリコーン含有ポリマー(共栄社化学社製 GL-04R)
・離型剤(シリコーン化合物)(c3): シリコーンヘキサアクリレート(ダイセル・オルネクス社製 EBECRYL 1360)
・粒子(d):平均粒子径1.8μmの架橋アクリル粒子(綜研化学社製 MX-180TA)
・光重合開始剤(e):IGM Resins B.V.社製 Omnirad 184
・帯電防止剤(f):4級アンモニウム塩基含有(メタ)アクリル系の高分子 (三菱ケミカル社製 ニッカタイボー 数平均分子量:28,000)
【0221】
【表1】
【0222】
【表2】
【0223】
(プライマー層形成用組成物)
以下に示すポリエステル樹脂(P1)、ウレタン樹脂(P2)、メラミン化合物(P3)、粒子(P4)をポリエステル樹脂(P1)/ウレタン樹脂(P2)/メラミン化合物(P3)/粒子(P4)(固形分質量比)=60/25/10/5で混合してプライマー層形成用組成物を得た。
・ポリエステル樹脂(P1):下記組成からなるポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/5-ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/1,4-ブタンジオール/ジエチレングリコール=56/40/4//70/20/10(mol%)
・ウレタン樹脂(P2):下記組成からなるポリエステル系ウレタン樹脂の水分散体
イソホロンジイソシアネート:テレフタル酸:イソフタル酸:エチレングリコール:ジエチレングリコール:ジメチロールプロパン酸=12:19:18:21:25:5(mol%)
・メラミン化合物(P3):ヘキサメトキシメチロールメラミン
・粒子:(P4):平均一次粒子径0.07μmのシリカ粒子
【0224】
(ポリエステルフィルム基材)
ポリエステル(S1)、(S2)、(S3)をそれぞれ91質量%、3質量%、6質量%の割合で混合した原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(S1)、(S2)をそれぞれ97質量%、3質量%の割合で混合した原料を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層=1:8:1の吐出量)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。
次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.1倍延伸した後、この縦延伸フィルムの片面に、プライマー層形成用組成物を塗布し、テンターに導き、95℃で10秒間乾燥させた後、横方向に120℃で4.2倍延伸し、230℃で10秒間熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、片面に厚み0.1μmのプライマー層を有する厚み(乾燥後)50μmのポリエステルフィルム基材を得た。
【0225】
[実施例1~6]
ポリエステルフィルムのプライマー層上に、表1に示す塗布液(転写型硬化性組成物)を塗布し、70℃で1分間乾燥し、キセノン(波長172nm)によるエキシマ光(半値幅14nm)を照射量15mJ/cm、照度5mW/cm(ウシオ電機社製 キセノンエキシマ172nm光照射機、ランプユニット型式:SUS05(ランプハウス型式:H0011、点灯電源型式:B0005)、窒素フロー(酸素濃度1%以下))で表1の塗布液からなる塗膜に照射し、さらに空気雰囲気中にて高圧水銀灯で積算光量400mJ/cm、照度200mW/cm(アイグラフィックス社製 高出力UV装置(型式:US5-X1802-X1202)のUVコンベア)にて紫外線を照射し、表3に示す厚み(乾燥後)が5μmのしわ状の凹凸構造を有する硬化膜(転写型)を得た。得られた転写型はしわ状の凹凸構造を有し、艶消し性が良好なものであった。この転写型の特性を表3に示す。
【0226】
[比較例1]
実施例1において、エキシマ光を使用せず、高圧水銀灯による紫外線照射のみで硬化したこと以外は、実施例1と同様にして製造し、硬化膜(転写型(T-7))を得た。得られた硬化膜を評価したところ、表3に示す通り、しわ状の凹凸構造は形成されず、平滑な表面であり、艶消し性はみられなかった。
【0227】
[比較例2]
実施例1において、転写型硬化性組成物の組成を表1に示す組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、硬化膜(転写型(T-8))を得た。得られた硬化膜を評価したところ、表3に示す通り、しわ状の凹凸構造は形成されず、凸型の表面形状を有するものであった。
【0228】
【表3】
【0229】
[実施例7]
実施例1で得た転写型(T-1)上に、被転写物との離型性を付与するために、表1のB-1液を塗布し、70℃で1分間乾燥し、空気雰囲気中にて高圧水銀灯で積算光量400mJ/cm、照度200mW/cm(アイグラフィックス社製 高出力UV装置(型式:US5-X1802-X1202)のUVコンベア)にて紫外線を照射し、厚み(乾燥後)が0.1μmの離型層を形成した。
離型層上に、表2に示す無溶剤の塗布液(被転写物硬化性組成物 C-1)を塗布し、実施例1で得た転写型形成前のポリエステルフィルムを、ポリエステルフィルムのプライマー層と被転写物硬化性組成物が接するように配置し、空気雰囲気中にて高圧水銀灯で積算光量400mJ/cm、照度200mW/cm(アイグラフィックス社製 高出力UV装置(型式:US5-X1802-X1202)のUVコンベア)にて紫外線を照射し、厚み(乾燥後)が9μmの硬化膜を形成した。得られた硬化膜を、転写型(T-1)から剥離することで、ポリエステルフィルムのプライマー層上に被転写物が形成された積層体を得た。
得られた被転写物はしわ状の凹凸構造を有し、艶消し性が良好なものであった。この被転写物の特性を表4~6に示す。
【0230】
[実施例8~13]
実施例7において、被転写物硬化性組成物の組成を表2に示す組成に変更する以外は実施例7と同様にして製造し、硬化膜による被転写物を得た。得られた被転写物の特性を表4~6に示す。
【0231】
[実施例14]
実施例7において、離型層を設けず、転写型上に直接、表2に示す被転写物硬化性組成物を塗布する以外は実施例7と同様にして製造し、硬化膜による被転写物を得た。得られた被転写物の特性を表4~6に示す。
【0232】
[実施例15~19]
実施例14において、被転写物硬化性組成物の組成を表2に示す組成に変更する以外は実施例14と同様にして製造し、硬化膜による被転写物を得た。得られた被転写物の特性を表4~6に示す。
【0233】
[比較例3]
実施例7において、被転写物硬化性組成物の組成を表2に示す組成に変更する以外は実施例7と同様にして製造し、硬化膜による被転写物を得た。得られた被転写物は凹型であり、転写型とは異なる形状であった。その他の特性を表4~6に示す。
【0234】
【表4】
【0235】
【表5】
【0236】
【表6】