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特開2024-161120睡眠促進用組成物及び組成物を含む食品、医薬品、飼料
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  • 特開-睡眠促進用組成物及び組成物を含む食品、医薬品、飼料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161120
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】睡眠促進用組成物及び組成物を含む食品、医薬品、飼料
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/135 20160101AFI20241108BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20241108BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20241108BHJP
   A23K 10/18 20160101ALI20241108BHJP
   A23L 2/52 20060101ALN20241108BHJP
   A23C 9/123 20060101ALN20241108BHJP
【FI】
A23L33/135
A61K35/747
A61P25/20
A23K10/18
A23L2/00 F
A23L2/52
A23C9/123
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024145198
(22)【出願日】2024-08-27
(62)【分割の表示】P 2020018139の分割
【原出願日】2020-02-05
(71)【出願人】
【識別番号】711002926
【氏名又は名称】雪印メグミルク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】神 太郎
(72)【発明者】
【氏名】石元 広志
(72)【発明者】
【氏名】上川内 あづさ
(72)【発明者】
【氏名】森 郁恵
(57)【要約】
【課題】
本発明は、夜間の睡眠の導入を促進させることができ、安定性及び安全性に優れた睡眠促
進用組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、該睡眠促進用組成物を含有す
る食品、医薬品、飼料を提供することを課題とする。
【解決手段】
ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、ロイコノストック属、ペディオコッカス属、ワイ
セラ属、ビフィドバクテリウム属のいずれかに属する微生物又はその培養物を有効成分と
して含有する睡眠促進用組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス・サリバリウス 亜種 サリシニウス(Lactobacillus salivarius subsp. salicinius)種に属する1つ以上の微生物を有効成分として含む睡眠促進用組成物。
【請求項2】
前記睡眠促進用組成物が、睡眠導入促進用組成物である請求項1に記載の睡眠促進用組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の睡眠促進用組成物を含む睡眠促進用食品、睡眠促進用医薬品又は睡眠促進用飼料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠を促進させることができ、安定性及び安全性に優れた睡眠促進用組成物に
関する。また、本発明は、該睡眠促進用組成物を含有する、食品、医薬品、飼料に関する
【背景技術】
【0002】
睡眠は動物が生きていく上で必要な行動であり、哺乳類のみならず、魚類、ハエ、線虫な
どの非哺乳類においても、睡眠状態又は睡眠様状態が存在する。近年、ライフスタイルの
変化により、生活リズムが乱れ、不眠などの睡眠障害の罹患率が上昇している。厚生労働
省の調査によると5人に1人は何らかの睡眠に関する悩みを抱えている(非特許文献1)
。睡眠障害は、眠気などによる労働生産性の低下だけでなく、認知症やうつ病などの精神
疾患、肥満や糖尿病などの生活習慣病と密接に関連することが明らかとなった。この睡眠
不足による経済損失は約3.5兆円になると試算されている(非特許文献2)。
【0003】
不眠などの睡眠障害を持つ人に対しては、医薬品の睡眠薬の使用が考えられる。睡眠薬と
しては、バルビツール酸系睡眠薬やベンゾジアゼピン系睡眠薬、非ベンゾジアゼピン系睡
眠薬が主として用いられている。しかしながら、バルビツール酸系睡眠薬は依存性などの
副作用が強く、ベンゾジアゼピン系睡眠薬による睡眠は、ベンゾジアゼピン速波と呼ばれ
る異常な周波数領域を示す睡眠を誘発するため、生理的で良質な睡眠を導かないことが知
られている。
【0004】
このことから、医薬品に代わり日常的に摂取することができ、生理的な睡眠を誘発するこ
とができる素材の開発が盛んに実施されており、天然成分や食品成分などから様々なもの
が提案されている。例えば、アミノ酸であるグリシンによる熟眠障害改善剤(特許文献1
)や、テアニンによる睡眠促進組成物(特許文献2)などがある。また、古くから発酵食
品に利用されており、生体への安全性が高い乳酸菌においても、非病原性乳酸菌であるラ
クトバチルス・アシドフィラス、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ストレプトコッカス
・サーモフィラスの特定の菌株による催眠活性(レム睡眠増加とノンレム睡眠減少による
睡眠の質改善)(特許文献3)やラクトバチルス・カゼイによる睡眠の質改善剤(特許文
献4)ラクトバチルス・ブレビスによる概日リズム改善剤(特許文献5)などがある。
【0005】
しかしながら、消費者の多様なニーズを満たすためには、未だ充分な選択肢が存在すると
は言えない。
【0006】
キイロショウジョウバエDrosophila melanogaster(以下、ショ
ウジョウバエと言う)は、生物学の様々な分野でモデル生物として用いられている。20
00年には全ゲノム配列が決定され、ヒトの疾患に関連する遺伝子の約75%がショウジ
ョウバエにも存在すると推定され、近年ではアルツハイマー病やパーキンソン病、メタボ
リックシンドロームなど疾患モデルのショウジョウバエが開発されており、実際に疾患発
症メカニズムの解明や、治療薬剤のスクリーニングに用いられている(非特許文献3、4
)。
【0007】
睡眠研究の分野においてもショウジョウバエを用いた研究は数多くなされており、ショウ
ジョウバエがヒトと類似した睡眠様行動を示すことのみならず、その特徴や分子基盤の多
くが哺乳類の睡眠と共通することが明らかになっている(非特許文献5、6)。具体例と
しては、齢に依存した睡眠様式の変化(非特許文献7)、睡眠の恒常性機構(失った睡眠
を補償する睡眠行動(非特許文献8)、カフェインによる覚醒作用(非特許文献9)、グ
リシンによる睡眠促進作用(非特許文献10)、ドパミンやセロトニン、GABAなどの
神経伝達物質、並びにEGFの睡眠覚醒制御作用(非特許文献11、12、13)が、シ
ョウジョウバエと哺乳類において共通することが報告されている。更に、哺乳類の視床下
部と発生学的及び機能的に類似する、ショウジョウバエの脳間部(pars inter
cerebralis)が、睡眠に重要な役割を果たしていることや、覚醒促進神経回路
と睡眠促進神経回路が、ショウジョウバエにおいても哺乳類と同様に、相互に連絡してい
ることなど、神経系の構造の違いにもかかわらず、睡眠に関係する神経回路が進化上で保
存されていることが知られている(非特許文献5、6)。
【0008】
これらのことから、ショウジョウバエは睡眠研究のモデル生物として適しており、睡眠制
御に関わる物質の探索にも有用であると考えられている(非特許文献5、6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013-121961号公報
【特許文献2】特開WO01/074352号公報
【特許文献3】特許第4527922号公報
【特許文献4】特許第6279714号公報
【特許文献5】特許第5943342号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】平成29年度国民健康・栄養調査,厚生労働省 <https://www.mhlw.go.jp/content/000451755.pdf>
【非特許文献2】内山 真,日本精神科病院協会雑誌31(11), 1163-1169, 2012-11,2012
【非特許文献3】Pandey, U. B. & Nichols, C. D. Human Disease Models in Drosophila melanogaster and the Role of the Fly in Therapeutic Drug Discovery. Drug Deliv. 63, 411-436 (2011)
【非特許文献4】Ugur, B., Chen, K. & Bellen, H. J. Drosophila tools and assays for the study of human diseases. Dis. Model. Mech. 9, 235-244 (2016).
【非特許文献5】Zimmerman, J. E., Naidoo, N., Raizen, D. M. & Pack, A. I. Conservation of sleep: insights from non-mammalian model systems. Trends Neurosci. 31, 371-376 (2008).
【非特許文献6】Ly, S., Pack, A. I. & Naidoo, N. The neurobiological basis of sleep: Insights from Drosophila. Neurosci. Biobehav. Rev. 87, 67-86 (2018).
【非特許文献7】Koh, K., Evans, J. M., Hendricks, J. C. & Sehgal, A. A Drosophila model for age-associated changes in sleep:wake cycles. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 103(37), 13843-13847 (2006)
【非特許文献8】Huber, R. et al. Sleep homeostasis in Drosophila melanogaster. Sleep 27, 628-639 (2004)
【非特許文献9】Wu, M. N. et al. The effects of caffeine on sleep in Drosophila require PKA activity, but not the adenosine receptor. J Neurosci 29(35), 11029-11037 (2009)
【非特許文献10】粂 和彦、ショウジョウバエを用いた新規の睡眠制御機構の探索、上原記念生命科学財団研究報告集、 30(2016)
【非特許文献11】Ueno, T. et al. Identification of a dopamine pathway that regulates sleep and arousal in Drosophila. Nat. Neurosci. 15, 1516-1523 (2012)
【非特許文献12】Sehgal, A. & Mignot, E. Genetics of sleep and sleep disorders. Cell. 146, 194-207 (2011).
【非特許文献13】Foltenyi, K et al. Neurohormonal and neuromodulatory control of sleep in Drosophila. Cold Spring Harb Symp Quant Biol. 72, 565-571 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、睡眠を促進させることができ、安定性及び安全性に優れた睡眠促進用組成物を
提供することを課題とする。また、本発明は、該睡眠促進用組成物を含有する食品、医薬
品、飼料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討を進めたところ、複数の微生物が睡眠
を促進することを見出した。
すなわち本発明は、以下の態様を含むものである。
(1)ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、ビフィドバクテリウム属のいずれかに属す
る1つ以上の微生物を含む睡眠促進用組成物。
(2)前記睡眠促進用組成物が、睡眠導入促進用組成物である(1)に記載の睡眠促進用
組成物。
(3)前記ラクトバチルス属が、ラクトバチルス・パラカゼイ 亜種 トレランス(Lac
tobacillus paracasei subsp. tolerans)種、ラ
クトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)種、
ラクトバチルス・サリバリウス 亜種 サリシニウス(Lactobacillus sa
livarius subsp. salicinius)種から選択される1つ以上で
ある(1)又は(2)のいずれかに記載の睡眠促進用組成物。
(4)前記ラクトコッカス属が、ラクトコッカス・ラクティス 亜種 ラクティス(Lac
tococcus lactis subsp. lactis)種、ラクトコッカス・
ラフィノラクティス(Lactococcus raffinolactis)種から選
択される1つ以上である(1)又は(2)に記載の睡眠促進用組成物。
(5)前記ビフィドバクテリウム属が、ビフィドバクテリウム・フェカーレ(Bifid
obacterium faecale)種、ビフィドバクテリウム・ロングム 亜種 ロ
ングム(Bifidobacterium longum subsp. longum
)種、ビフィドバクテリウム・ロングム 亜種 インファンティス(Bifidobact
erium longum subsp. infantis)種、ビフィドバクテリウ
ム・シュードカテヌラツム(Bifidobacterium pseudocaten
ulatum)種、ビフィドバクテリウム・シュードロングム 亜種 グロボーサム(Bi
fidobacterium pseudolongum subsp. globos
um)種、ビフィドバクテリウム・サーモフィルム(Bifidobacterium
thermophilum)種から選択される1つ以上である(1)又は(2)に記載の
睡眠促進用組成物。
(6)(1)乃至(5)のいずれかに記載の睡眠促進用組成物を含む睡眠促進用食品、睡
眠促進用医薬品又は睡眠促進用飼料。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、睡眠を促進させることができる睡眠促進用組成物を提供するものであり、本願
でいう「睡眠を促進させる(睡眠促進)」とは、睡眠導入の促進(夜間初期の睡眠量の増
加)をもたらすことが出来ることを指している。即ち、本発明は、一態様において、睡眠
導入促進組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】コントロール群の睡眠量の中央値に対する各試験群の睡眠量の中央値の相対値(睡眠量増加率)を微生物の属の違いで比較した図である。
図2】各微生物を投与した群の入眠潜時を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の睡眠促進用組成物について説明する。本発明の有効成分はラクトバチルス属、ラ
クトコッカス属、ロイコノストック属、ペディオコッカス属、ワイセラ属、ビフィドバク
テリウム属に属する微生物であって、睡眠導入の促進効果を有するものであればいずれも
利用することができる。
【0016】
ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、ロイコノストック属、ペディオコッカス属、ワイ
セラ属、ビフィドバクテリウム属であればその種は特に限定されないが、好ましい例とし
てはラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophi
lus)種、ラクトバチルス・アミロボラス(Lactobacillus amylo
vorus)種、ラクトバチルス・デルブレッキイ 亜種 ブルガリカス(Lactoba
cillus delbrueckii subsp. Bulgaricus)種、ラ
クトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)種
、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)種、ラクト
バチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)種、
ラクトバチルス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)種
、ラクトバチルス・ムコーサエ(Lactobacillus mucosae)種、ラ
クトバチルス・オリス(Lactobacillus oris)種、ラクトバチルス・
パラブフネリー(Lactobacillus parabuchneri)種、ラクト
バチルス・パラカゼイ 亜種 トレランス(Lactobacillus paracas
ei subsp. Tolerans)種、ラクトバチルス・プランタルム(Lact
obacillus plantarum)種、ラクトバチルス・ロイテリー(Lact
obacillus reuteri)種、ラクトバチルス・ラムノーサス(Lacto
bacillus rhamnosus)種、ラクトバチルス・サケイ(Lactoba
cillus sakei)種、ラクトバチルス・サリバリウス 亜種 サリシニウス(L
actobacillus salivarius subsp.salicinius
)種、ラクトバチルス・バギナリス(Lactobacillus vaginalis
)種、ラクトコッカス・ラクティス 亜種 ラクティス(Lactococcus lac
tis subsp. Lactis)種、ラクトコッカス・ラフィノラクティス(La
ctococcus raffinolactis)種、ロイコノストック・シトレウム
(Leuconostoc citreum)種、ロイコノストック・メセンテロイデス
亜種 デキストラニカム(Leuconostoc mesenteroides su
bsp. dextranicum)種、ロイコノストック・シュードメセンテロイデス
(Leuconostoc pseudomesenteroides)種、ペディオコ
ッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)種
、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceu
s)種、ペディオコッカス・スティレシィイ(Pediococcus stilesi
i)種、ワイセラ・シバリア(Weissella cibaria)種、ワイセラ・コ
ンフューザ(Weissella confusa)種、ワイセラ・パラメセンテロイデ
ス(Weissella paramesenteroides)種、ビフィドバクテリ
ウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis
)種、ビフィドバクテリウム・フェカーレ(Bifidobacterium faec
ale)種、ビフィドバクテリウム・ロングム 亜種 ロングム(Bifidobacte
rium longum subsp. Longum)種、ビフィドバクテリウム・ロ
ングム 亜種 インファンティス(Bifidobacterium longum su
bsp. infantis)種、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラツム(Bi
fidobacterium pseudocatenulatum)種、ビフィドバク
テリウム・シュードロングム 亜種 グロボーサム(Bifidobacterium p
seudolongum subsp. Globosum)種、ビフィドバクテリウム
・サーモフィルム(Bifidobacterium thermophilum)種が
挙げられる。
【0017】
これら微生物は、単独で用いることもできるし、適宜2種以上の微生物を組み合わせて用
いても良い。
【0018】
微生物の培養は、各微生物に適した条件を採用すればよい。例えば、培地には乳培地又は
乳成分を含む培地、これを含まない半合成培地、化学的に規定された合成培地等種々の培
地を用いることができる。このような培地としては、還元脱脂乳やMRS培地などを例示
することができる。
【0019】
得られた培養物から遠心分離などの集菌手段によって分離された菌体をそのまま本発明の
有効成分として用いることができる。生菌体が好ましいが、菌体に何らかの処理を加えて
も良く、濃縮、乾燥、凍結乾燥などした菌体を用いることもできるし、加熱乾燥などによ
り死菌体にしても良く、その処理方法は特に限定されるものではない。
菌体として純粋に分離されたものだけでなく、培養物、懸濁物、その他の菌体含有物や、
菌体を酵素や物理的手段を用いて処理した細胞質や細胞壁画分も用いることができる。
培養物などの形態としては、合成培地であるMRS培地(DIFCO社製)、還元脱脂乳
培地など一般的に乳酸菌の培養に用いられる培地を用いた培養物だけでなく、チーズ、発
酵乳、乳製品乳酸菌飲料などの乳製品などを例示することができるが、特に限定されるも
のではない。
【0020】
本発明の睡眠促進用組成物は、食品、医薬品、飼料等に添加することができる。その際、
本発明の睡眠促進用組成物はそのまま使用してもよいが、食品、医薬品、及び飼料に通常
含まれる他の原材料とともに使用できることから、常法に従い、粉末剤、顆粒剤、錠剤、
カプセル剤、ドリンク剤等に用いることも出来る。また、ヨーグルト、乳飲料、ウエハー
ス等の飲食品、及び飼料に配合することも可能である。
【0021】
本発明の睡眠促進用組成物を食品、医薬品、飼料等に配合する場合、微生物の配合割合は
特に限定されず、製造の容易性や好ましい一日投与量にあわせて適宜調節すればよい。投
与対象者の症状、年齢などを考慮してそれぞれ個別に決定されるが、通常成人の場合、微
生物の培養物などを10~200g、20~200g、50~200g、100~200
g、150~200g、20~150g、50~150g、100~150g、又は50
~100g、あるいはその菌体自体を0.1~5,000mg、0.2~5000mg、
0.5~5,000mg、1~5,000mg、2~5,000mg、5~5,000m
g、10~5,000mg、20~5,000mg、50~5,000mg、100~5
,000mg、200~5,000mg、500~5,000mg、1,000~5,0
00mg、2,000~5,000mg、0.2~2,000mg、0.5~2,000
mg、1~2,000mg、2~2,000mg、5~2,000mg、10~2,00
0mg、20~2,000mg、50~2,000mg、100~2,000mg、20
0~2,000mg、500~2,000mg、1,000~2,000mg、0.5~
1,000mg、1~1,000mg、2~1,000mg、5~1,000mg、10
~1,000mg、20~1,000mg、50~1,000mg、100~1,000
mg、200~1,000mg、500~1,000mg、1~500mg、2~500
mg、5~500mg、10~500mg、20~500mg、50~500mg、10
0~500mg、200~500mg、2~200mg、5~200mg、10~200
mg、20~200mg、50~200mg、100~200mg、5~100mg、1
0~100mg、20~100mg、50~100mg、10~50mg、又は20~5
0mg摂取できるように配合量などを調整すればよい。このようにして摂取することによ
り所望の効果を発揮することができる。
【0022】
(睡眠促進用組成物の睡眠促進作用の評価方法)
本発明の睡眠促進用組成物の睡眠促進作用は、実施例に記載したショウジョウバエを対象
とした動物試験により確認することができる。
【0023】
以下に実施例、試験例を示し、本発明について詳細に説明するが、これらは単に例示する
のみであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【実施例0024】
(試験例1)微生物の睡眠促進作用
ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、ロイコノストック属、ペディオコッカス属、スト
レプトコッカス属、ワイセラ属、ビフィドバクテリウム属に属する各種微生物について、
ショウジョウバエを用いて睡眠促進作用を評価した。
1.試験方法
(1)供与菌
表1に示したラクトバチルス属の21菌種、ラクトコッカス属2菌種、ロイコノストック
属4菌種、ペディオコッカス属3菌種、ストレプトコッカス属4菌種、ワイセラ属3菌種
、ビフィドバクテリウム属の9菌種を1菌株ずつを供与菌とした。
(2)供与菌体の調製
上記(1)の各供与菌を表1に示した条件で培養をした後(OD600=0.7以上)、
遠心分離(7,000×g、4℃、20min)により菌体を分離した。菌体は生理食塩
水で2回洗浄した後、培養量の1/10量の12.5%トレハロース溶液に懸濁した。さ
らにこの懸濁液を2%アガー、10%スクロース溶液と等量混合して供与菌体を含有する
飼料を作製した。
(3)試験手順
野生型のショウジョウバエCS2202u系統を、温度25℃で12時間ごとの明暗周期
下で飼育した、羽化後5日の未交尾のメスの個体を評価に用いた。ショウジョウバエを、
上記(2)の飼料(試験群)または乳酸菌を含まない1%アガー、5%スクロースから構
成される飼料(コントロール群)とともに直径5mmのガラスチューブに入れ、ショウジ
ョウバエの行動を測定するDrosophila activity monitori
ng system(Trikinetics社製)で3日間行動を測定した。ショウジ
ョウバエでは、不動期間(動かない期間)が5分以上の場合を“睡眠”と定義されている
。そこで、測定3日目の夜間の最初の3時間(概日時間でZT12~15)の睡眠量につ
いて試験群とコントロール群を比較した。各群、約96匹のショウジョウバエを用いて評
価し、ウィルコクソンの順位和検定を行った後ホルム法で補正し、p<0.05で有意差
ありと判定した。
【0025】
【表1】
【0026】
2.試験結果
表2より、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acido
philus)種、ラクトバチルス・アミロボラス(Lactobacillus am
ylovorus)種、ラクトバチルス・デルブレッキイ 亜種 ブルガリカス(Lact
obacillus delbrueckii subsp. Bulgaricus)
種、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentu
m)種、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)種、
ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus
)種、ラクトバチルス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsoni
i)種、ラクトバチルス・ムコーサエ(Lactobacillus mucosae)
種、ラクトバチルス・オリス(Lactobacillus oris)種、ラクトバチ
ルス・パラブフネリー(Lactobacillus parabuchneri)種、
ラクトバチルス・パラカゼイ 亜種 トレランス(Lactobacillus para
casei subsp. Tolerans)種、ラクトバチルス・プランタルム(L
actobacillus plantarum)種、ラクトバチルス・ロイテリー(L
actobacillus reuteri)種、ラクトバチルス・ラムノーサス(La
ctobacillus rhamnosus)種、ラクトバチルス・サケイ(Lact
obacillus sakei)種、ラクトバチルス・サリバリウス 亜種 サリシニウ
ス(Lactobacillus salivarius subsp.salicin
ius)種、ラクトバチルス・バギナリス(Lactobacillus vagina
lis)種、ラクトコッカス・ラクティス 亜種 ラクティス(Lactococcus
lactis subsp. Lactis)種、ラクトコッカス・ラフィノラクティス
(Lactococcus raffinolactis)種、ロイコノストック・シト
レウム(Leuconostoc citreum)種、ロイコノストック・メセンテロ
イデス 亜種 デキストラニカム(Leuconostoc mesenteroides
subsp. dextranicum)種、ロイコノストック・シュードメセンテロ
イデス(Leuconostoc pseudomesenteroides)種、ペデ
ィオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactic
i)種、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosa
ceus)種、ペディオコッカス・スティレシィイ(Pediococcus stil
esii)種、ワイセラ・シバリア(Weissella cibaria)種、ワイセ
ラ・コンフューザ(Weissella confusa)種、ワイセラ・パラメセンテ
ロイデス(Weissella paramesenteroides)種、ビフィドバ
クテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescen
tis)種、ビフィドバクテリウム・フェカーレ(Bifidobacterium f
aecale)種、ビフィドバクテリウム・ロングム 亜種 ロングム(Bifidoba
cterium longum subsp. Longum)種、ビフィドバクテリウ
ム・ロングム 亜種 インファンティス(Bifidobacterium longum
subsp. infantis)種、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラツム
(Bifidobacterium pseudocatenulatum)種、ビフィ
ドバクテリウム・シュードロングム 亜種 グロボーサム(Bifidobacteriu
m pseudolongum subsp. Globosum)種、ビフィドバクテ
リウム・サーモフィルム(Bifidobacterium thermophilum
)種を投与した群はコントロール群と比較して夜間初期の睡眠量が有意に増加しているこ
とが分かった。同様に、試験した殆どの種で、入眠潜時も有意に減少していた(図2も参
照)。
【0027】
コントロール群の睡眠量の中央値に対する各試験群の睡眠量の中央値の相対値を睡眠増加
率とし、属の違いで比較した結果を図1に示す。非特許文献3からストレプトコッカス・
サーモフィラスは催眠活性を有するとのことであるため、ストレプトコッカス属の睡眠増
加率に対して各属の睡眠増加率を比較したところ、ビフィドバクテリウム属は大きい傾向
が、ラクトバチルス属とロイコノストック属、ペディオコッカス属は有意に大きいことが
認められた。すなわち、ビフィドバクテリウム属とラクトバチルス属、ロイコノストック
属、ペディオコッカス属は特に顕著な睡眠促進作用を有することが示された。
【0028】
【表2】
【0029】
(実施例1)睡眠促進剤(顆粒)の製造
ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)M
SN16株を食用可能な合成培地(0.5%酵母エキス、0.1%トリプチケースペプト
ン添加)に5重量%接種し、38℃で15時間培養後、遠心分離で菌体を回収した。回収
した菌体を凍結乾燥し、前期菌体の凍結乾燥粉末を得た。この凍結乾燥粉末1gを乳糖5
gと混合し、顆粒状に成形して本発明の睡眠促進剤を得た。
【0030】
(実施例2)睡眠促進剤(散剤)の製造
第13改正日本薬局方解説書製剤総則「散剤」の規定に準拠し、上記実施例1で得られた
MSN16株の凍結乾燥粉末10gに乳糖(日局)400g、バレイショデンプン(日局
)600gを加えて均一に混合し、本発明の睡眠促進剤を製造した。
【0031】
(実施例3)睡眠促進用栄養組成物の製造
ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)M
SN16株を食用可能な合成培地(0.5%酵母エキス、0.1%トリプチケースペプト
ン添加)に5重量%接種し、38℃で15時間培養後、遠心分離で菌体を回収し、回収し
た菌体を凍結乾燥した。ビタミンC40gまたはビタミンCとクエン酸の等量混合物40
g、グラニュー糖100g、コーンスターチと乳糖の等量混合物60gに、この凍結乾燥
粉末の凍結乾燥粉末40gを加えて混合した。混合物を袋に詰め、本発明の睡眠促進用栄
養組成物を製造した。
【0032】
(実施例4)睡眠促進用飲料の製造
上記実施例3で得られたMSN16株1gを699gの脱イオン水に溶解した後、40℃
まで加熱後、ウルトラディスパーサー(ULTRA-TURRAX T-25;IKAジ
ャパン社製)にて、9,500rpmで20分間撹拌混合した。マルチトール100g、
酸味料2g、還元水飴20g、香料2g、脱イオン水176gを添加した後、100ml
のガラス瓶に充填し、95℃、15秒間殺菌後、密栓し、本発明の飲料10本(100m
l入り)を製造した。
【0033】
(実施例5)睡眠促進用飼料の製造
大豆粕12kg、脱脂粉乳14kg、大豆油4kg、コーン油2kg、パーム油23.2
kg、トウモロコシ澱粉14kg、小麦粉9kg、ふすま2kg、ビタミン混合物5kg
、セルロース2.8kg、ミネラル混合物2kgを配合し、120℃、4分間殺菌して、
実施例3で得られMSN16株10kgを配合して、本発明の飼料を製造した。
【0034】
(実施例6)発酵乳の製造
ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)M
SN16株を食用可能な合成培地(0.5%酵母エキス、0.1%トリプチケースペプト
ン添加)に5重量%接種し、37℃で17時間培養後、遠心分離で菌体を回収し、凍結乾
燥した。この凍結乾燥菌体5g、脱脂粉乳1700g、グルコース300g、脱イオン水
7695gを混合し、95℃で2時間保持することで加熱殺菌した。これを37℃まで冷
却し、乳酸菌スターター(Lb.casei)を300g植菌し、撹拌混合後、37℃に
保持したインキュベーター内でpH4.0まで発酵させた。pH4.0到達後、10℃以
下まで冷却し、本発明の発酵乳10kgを製造した。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、睡眠を促進する組成物として、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、ロイコ
ノストック属、ペディオコッカス属、ワイセラ属、ビフィドバクテリウム属に属する微生
物、該微生物を含む組成物と該組成物を含む食品、医薬品、及び飼料を提供するものであ
る。本発明の組成物等を摂取することにより睡眠を促進できる。
図1
図2