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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161153
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】二次電池材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20241108BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241108BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20241108BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20241108BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20241108BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241108BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20241108BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M4/58
H01M4/48
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/485
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024146456
(22)【出願日】2024-08-28
(62)【分割の表示】P 2021502034の分割
【原出願日】2020-02-18
(31)【優先権主張番号】P 2019029693
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】忰山 高大
(72)【発明者】
【氏名】小高 一利
(72)【発明者】
【氏名】加藤 博和
(72)【発明者】
【氏名】伊左治 忠之
(57)【要約】
【課題】リチウムイオン二次電池等の電池を形成する材料として好適に使用でき、電池のレート特性を向上し得る二次電池材料の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】カーボンナノ構造体、活物質、導電性炭素およびバインダーを配合してなる二次電池材料の製造方法であって、多価カルボン酸または糖類と、アミン類(ただし、システインを除く。)と、溶媒とを混合して加熱することによりカーボンナノ構造体を合成する工程を含み、上記カーボンナノ構造体が、非導電性であり、かつ窒素を含むカーボン量子ドットであり、当該窒素が、アミン類(ただし、システインを除く。)からなる窒素源を原料とするものであり、300~800nmのいずれかの波長で励起した際に発光するものであることを特徴とする二次電池材料の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノ構造体、活物質、導電性炭素およびバインダーを配合してなる二次電池材料の製造方法であって、
多価カルボン酸または糖類と、アミン類(ただし、システインを除く。)と、溶媒とを混合して加熱することによりカーボンナノ構造体を合成する工程を含み、
上記カーボンナノ構造体が、非導電性であり、かつ窒素を含むカーボン量子ドットであり、当該窒素が、アミン類(ただし、システインを除く。)からなる窒素源を原料とするものであり、300~800nmのいずれかの波長で励起した際に発光するものであることを特徴とする二次電池材料の製造方法。
【請求項2】
上記カーボンナノ構造体の絶対量子収率が、10%以上である請求項1記載の二次電池材料の製造方法。
【請求項3】
上記カーボンナノ構造体の絶対量子収率が、30%以上である請求項2記載の二次電池材料の製造方法。
【請求項4】
上記窒素が、脂肪族アミンからなる窒素源を原料とするものである請求項1~3のいずれか1項記載の二次電池材料の製造方法。
【請求項5】
上記カーボンナノ構造体に含まれる炭素が、多価カルボン酸または糖類からなる炭素源を原料とするものである請求項1~4のいずれか1項記載の二次電池材料の製造方法。
【請求項6】
上記活物質が、金属、半金属、金属合金、金属酸化物、半金属酸化物、金属リン酸化物、金属硫化物および金属窒化物から選ばれる請求項1~5のいずれか1項記載の二次電池材料の製造方法。
【請求項7】
上記活物質が、FeS2、TiS2、MoS2、LiFePO4、V26、V613、MnO2、LiCoO2、LiMnO2、LiMn24、LiMo24、LiV38、LiNiO2、LizNiy1-y2(ただし、Mは、Co、Mn、Ti、Cr、V、Al、Sn、Pb、およびZnから選ばれる少なくとも1種以上の金属元素を表し、0.05≦z≦1.10、0.5≦y≦1.0)、Li(NiaCobMnc)O2(ただし、0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)、Li4Ti512、Si、SiOx、AlOx、SnOx、SbOx、BiOx、GeOx、AsOx、PbOx、ZnOx、CdOx、InOx、TiOxおよびGaOx(ただし、0<x≦2)から選ばれる少なくとも1種である請求項6記載の二次電池材料の製造方法。
【請求項8】
上記二次電池材料が、電極形成用である請求項1~7のいずれか1項記載の二次電池材料の製造方法。
【請求項9】
上記カーボンナノ構造体の配合量が、固形分中0.01~1.0質量%である請求項1~8のいずれか1項記載の二次電池材料の製造方法。
【請求項10】
上記合成をソルボサーマル合成により行う請求項1~9のいずれか1項記載の二次電池材料の製造方法。
【請求項11】
上記合成を水熱合成により行う請求項1~9のいずれか1項記載の二次電池材料の製造方法。
【請求項12】
水熱合成により得られたカーボンナノ構造体水溶液の溶媒を有機溶媒に置換する工程を含む請求項11記載の二次電池材料の製造方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項記載の二次電池材料の製造方法であって、
活物質とカーボンナノ構造体とを含む溶液または分散液を調製した後、溶媒を除去して、活物質-カーボンナノ構造体の複合物を作製する工程を含む二次電池材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノ構造体を含む二次電池材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化および軽量化が進められ、その電源となる電池も小型化および軽量化が求められている。小型で軽量、かつ高容量の充放電可能な電池として、リチウムイオン電池等の非水電解質系の二次電池が実用化されており、小型ビデオカメラ、携帯電話、ノートパンコン等のポータブル電子機器や通信機器などに用いられている。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、高いエネルギー密度を有し、他の電池に比べ容量や作動電圧が高い等の優れた長所を有している。しかし、そのエネルギー密度の高さから、使用状況によっては過熱する危険性や、発火などの事故につながるおそれがあり、高い安全性が求められている。特に、最近脚光を浴びているハイブリッド自動車では、より高いエネルギー密度と出力特性が求められるので、更に高い安全性が必要となる。
【0004】
一般的にリチウムイオン二次電池は、正極、負極および電解質で構成され、充電時には、正極活物質からリチウムイオンが電解質中に抜け出し、カーボン粒子等の負極活物質内に挿入される。放電時には、負極活物質からリチウムイオンが電解質中に抜け出し、正極活物質内に挿入されることで、外部回路に電流を取り出すことができる。このように、リチウムイオン二次電池の内部で、リチウムイオンが電解質を介して正極~負極間を行き来することで充放電が行われる。
【0005】
一方、ポータブル電子機器等の性能向上に伴い、より高容量の電池が求められており、負極活物質として、既存の炭素より単位重さ当たりの容量が遥かに高いSnやSi等が活発に研究されている。しかし、SiやSi合金を負極活物質として用いた場合、体積膨脹が大きくなり、サイクル特性が悪くなる問題がある。これを解決するために、黒鉛を混合するが、混合の際に黒鉛が不均一に分布した場合、サイクル特性(寿命)が低下することがある。
【0006】
また、近年、プラグインハイブリッド自動車やハイブリッド自動車、電動工具等の高出力電源等のリチウムイオン二次電池の多用途化に伴い、更なるレート特性の向上が求められている。これらの高出力電源として用いられる電池には、充放電を高速で行えるようにすることが求められる。
【0007】
現在実用化されている正極活物質においては、負極活物質の理論容量と比較して正極活物質の理論容量が遥かに低い。そのため、リチウムイオン電池の高容量化、高出力化を実現するためには、正極に高い導電性およびイオン伝導性を持たせることが必要である。そこで、正極中の電子伝導性を向上するために、導電助剤として、炭素材料を電極に添加する方法が用いられている。このような炭素材料としては、黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、近年では、カーボンナノチューブやグラフェンを用いる例が報告されている。しかしながら、このような導電助剤の量を増やすと電極中の活物質量が減少し、電池の容量が低下してしまう。
【0008】
また、電極材料の電子伝導性を高めるために、電極活物質の粒子表面を炭素源である有機化合物で覆った後、有機化合物を炭化させて電極活物質の表面に炭素質被膜を形成し、この炭素質被膜の炭素を電子伝導性物質として介在させた電極材料も提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、上記炭化工程は、不活性ガス雰囲気下、500℃以上の高温で長時間の熱処理を必要とし、この熱処理によって電極の容量が低下してしまう。また、炭化処理時には500~800℃の高温で、還元性雰囲気または不活性雰囲気で加熱していることから、正極活物質自身も還元されてしまう可能性があるため、使用可能な正極活物質が、リン酸鉄リチウム、リン酸ニッケルリチウム、リン酸コバルトリチウム、リン酸マンガンリチウム等に限定されていた。それ以外の正極活物質の場合の炭素源は導電性を有する高分子材料に限定されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001-15111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、リチウムイオン二次電池等の電池を形成する材料として好適に使用でき、電池のレート特性を向上し得る二次電池材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、特定のアミン類からなる窒素源を原料として合成した発光性のカーボンナノ構造体(カーボン量子ドット)を含む二次電池材料を用いて製造した電池が、レート特性に優れるものとなることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、下記の二次電池材料の製造方法を提供する。
1. カーボンナノ構造体、活物質、導電性炭素およびバインダーを配合してなる二次電池材料の製造方法であって、
多価カルボン酸または糖類と、アミン類(ただし、システインを除く。)と、溶媒とを混合して加熱することによりカーボンナノ構造体を合成する工程を含み、
上記カーボンナノ構造体が、非導電性であり、かつ窒素を含むカーボン量子ドットであり、当該窒素が、アミン類(ただし、システインを除く。)からなる窒素源を原料とするものであり、300~800nmのいずれかの波長で励起した際に発光するものであることを特徴とする二次電池材料の製造方法。
2. 上記カーボンナノ構造体の絶対量子収率が、10%以上である1の二次電池材料の製造方法。
3. 上記カーボンナノ構造体の絶対量子収率が、30%以上である2の二次電池材料の製造方法。
4. 上記窒素が、脂肪族アミンからなる窒素源を原料とするものである請求項1~3のいずれかの二次電池材料の製造方法。
5. 上記カーボンナノ構造体に含まれる炭素が、多価カルボン酸または糖類からなる炭素源を原料とするものである1~4のいずれかの二次電池材料の製造方法。
6. 上記活物質が、金属、半金属、金属合金、金属酸化物、半金属酸化物、金属リン酸化物、金属硫化物および金属窒化物から選ばれる1~5のいずれかの二次電池材料の製造方法。
7. 上記活物質が、FeS2、TiS2、MoS2、LiFePO4、V26、V613、MnO2、LiCoO2、LiMnO2、LiMn24、LiMo24、LiV38、LiNiO2、LizNiy1-y2(ただし、Mは、Co、Mn、Ti、Cr、V、Al、Sn、Pb、およびZnから選ばれる少なくとも1種以上の金属元素を表し、0.05≦z≦1.10、0.5≦y≦1.0)、Li(NiaCobMnc)O2(ただし、0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)、Li4Ti512、Si、SiOx、AlOx、SnOx、SbOx、BiOx、GeOx、AsOx、PbOx、ZnOx、CdOx、InOx、TiOxおよびGaOx(ただし、0<x≦2)から選ばれる少なくとも1種である6記載の二次電池材料の製造方法。
8. 上記二次電池材料が、電極形成用である1~7のいずれかの二次電池材料の製造方法。
9. 上記カーボンナノ構造体の配合量が、固形分中0.01~1.0質量%である1~8のいずれかの二次電池材料の製造方法。
10. 上記合成をソルボサーマル合成により行う1~9のいずれかの二次電池材料の製造方法。
11. 上記合成を水熱合成により行う1~9のいずれかの二次電池材料の製造方法。
12. 水熱合成により得られたカーボンナノ構造体水溶液の溶媒を有機溶媒に置換する工程を含む11の二次電池材料の製造方法。
13. 1~12のいずれかの二次電池材料の製造方法であって、
活物質とカーボンナノ構造体とを含む溶液または分散液を調製した後、溶媒を除去して、活物質-カーボンナノ構造体の複合物を作製する工程を含む二次電池材料の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法により得られた二次電池材料を用いることで、レート特性に優れる電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1-1で得られた水溶液A1の蛍光スペクトルを示す図である。
図2】実施例1-2で得られた水溶液A2の蛍光スペクトルを示す図である。
図3】実施例1-3で得られた水溶液A3の蛍光スペクトルを示す図である。
図4】実施例1-4で得られた水溶液A4の蛍光スペクトルを示す図である。
図5】比較例1-1で得られた水溶液A5の蛍光スペクトルを示す図である。
図6】比較例1-2で得られた水溶液A6の蛍光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の電池材料は、カーボンナノ構造体を含有するものであり、当該カーボンナノ構造体が、300~800nmのいずれかの波長で励起した際に発光するものであることを特徴とするものである。本発明では、このような特性を有するカーボンナノ構造体を使用することにより、レート特性やサイクル特性に優れる電池を得ることができる。上記カーボンナノ構造体の発光は、公知の測定装置を用いて確認することができる。本発明では、例えば、得られたカーボンナノ構造体水溶液について、(株)日立ハイテクサイエンス製の分光蛍光光度計F-7000で、励起波長を300~800nmのいずれかの波長に固定して測定することにより確認することができる。なお、上記励起波長は、吸収スペクトル測定における極大吸収波長により決定することができる。
【0016】
カーボンナノ構造体とは、一般に、炭素原子を主たる成分として構成された構造体であり、当該構造体の三次元寸法のうち少なくとも1つの寸法がナノメートルの領域にあるもの、例えば、数nm~数100nm程度のオーダーを有するものである。
【0017】
上記カーボンナノ構造体の絶対量子収率は、得られる電池の放電容量をより向上させる観点から、10%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、50%以上がより一層好ましい。また、絶対量子収率の上限は、特に限定されるものではないが、通常90%以下である。上記絶対量子収率は、公知の測定装置を用いて確認することができる。本発明では、例えば、得られたカーボンナノ構造体水溶液について、浜松ホトニクス(株)製の絶対PL量子収率計で、吸収スペクトル測定による極大吸収波長を励起波長として測定することにより確認することができる。
【0018】
カーボンナノ構造体としては、上述した発光特性を有する、カーボン量子ドット、グラフェン量子ドット、繊維状のπ共役系の高分子やグラフェンの部分構造である縮環構造を含む炭素材料等が挙げられるが、これらの中でも、平均粒径が20nm以下の炭素材料であるカーボン量子ドットが好ましい。
なお、上記の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)により測定される値である。
【0019】
また、上記カーボンナノ構造体は、得られる電池の放電容量をより向上させる観点から、非導電性であることが好ましい。本発明において「非導電性」とは、得られたカーボンナノ構造体の粉末について、(株)三菱ケミカルアナリテック製の低抵抗計ロレスタ-GPで測定される導電率が検出限界以下(抵抗値が107Ωより大きい)であることを意味するものとする。
【0020】
上記カーボンナノ構造体は、窒素を含有することが好ましい。当該カーボンナノ構造体の窒素含有量は、窒素を含有していれば特に限定されるものではないが、得られる電池の放電容量をより向上させることを考慮すると、5~30質量%が好ましく、10~25質量%がより好ましく、10~20質量%がより一層好ましい。
【0021】
上記カーボンナノ構造体は、公知の方法で製造でき、例えば、多価カルボン酸または糖類からなる炭素源と、アミン類からなる窒素源とを原料とし、これらを溶媒と混合して、加熱することにより得ることができる。
【0022】
多価カルボン酸は、カルボキシ基を2つ以上有するカルボン酸であれば特に限定されない。その具体例としては、キナ酸、ガラクタル酸、グリセリン酸、グルコン酸、グルクロン酸、アスコルビン酸、没食子酸等が挙げられる。これらのうち、クエン酸、コハク酸およびシュウ酸が好ましく、クエン酸がより好ましい。上記多価カルボン酸は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
糖類としては、単糖類、二糖類および多糖類を挙げることができる。これらの糖類は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
単糖類としては、炭素数3~9、特に炭素数5~6のものが好ましい。具体的には、キシロース等のペントース;グルコース、マンノース、ガラクトース等のヘキソース;フコース等のデオキシヘキソース;グルコサミン、ガラクトサミン等のヘキソサミン;N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン等のヘキソサミン誘導体;ノイラミン酸、N-アセチルノイラミン酸、N-グリコリルノイラミン酸等のシアル酸;グルクロン酸、イズロン酸等のウロン酸等が挙げられる。これらのうち、ヘキソースが好ましく、グルコースがより好ましい。上記単糖類は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
二糖類としては、スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース等が挙げられる。上記二糖類は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
多糖類としては、デンプン、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、セルロース、キチン、アガロース、カラギーナン、ヘパリン、ヒアルロン酸、ペクチン、キシログルカン、グルコマンナン等が挙げられる。これらのうち、合成の観点から水に溶解するものが好ましい。上記多糖類は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
アミン類としては、脂肪族アミン、芳香族アミン、ヒドロキシアミン、ポリアミン、複素環式アミン、アミノ酸およびアミノ基含有ポリアルキレングリコール等が挙げられる。これらのうち、脂肪族アミン、芳香族アミンおよびアミノ酸が好ましい。上記アミン類は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
脂肪族アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、s-ブチルアミン、t-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、1-メチル-n-ブチルアミン、2-メチル-n-ブチルアミン、3-メチル-n-ブチルアミン、1,1-ジメチル-n-プロピルアミン、1,2-ジメチル-n-プロピルアミン、2,2-ジメチル-n-プロピルアミン、1-エチル-n-プロピルアミン、n-ヘキシルアミン、1-メチル-n-ペンチルアミン、2-メチル-n-ペンチルアミン、3-メチル-n-ペンチルアミン、4-メチル-n-ペンチルアミン、1,1-ジメチル-n-ブチルアミン、1,2-ジメチル-n-ブチルアミン、1,3-ジメチル-n-ブチルアミン、2,2-ジメチル-n-ブチルアミン、2,3-ジメチル-n-ブチルアミン、3,3-ジメチル-n-ブチルアミン、1-エチル-n-ブチルアミン、2-エチル-n-ブチルアミン、1,1,2-トリメチル-n-プロピルアミン、1,2,2-トリメチル-n-プロピルアミン、1-エチル-1-メチル-n-プロピルアミン、1-エチル-2-メチル-n-プロピルアミン、2-エチルヘキシルアミン、2-アミノエタノール、1-アミノ-2-プロパノール、2-アミノ-1-プロパノール、2-アミノエタンチオール等のモノアミン;エチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、N-エチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、N-イソプロピルエチレンジアミン、N-イソプロピル-1,3-ジアミノプロパン、トリエチレンテトラミン、N,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、2-メチル-2,3-プロパンジアミン、1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン、3,3’-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジアミン、3,3’-ジアミノジプロピルアミン、N,N-ビス(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン、トリエチレンテトラミン、2,2’-オキシビス(エチルアミン)、テトラメチレンジアミン、1,4-ジアミノブタン、2,2’-チオビス(エチルアミン)、1,5-ジアミノペンタン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘプタン、1,7-ジアミノペンタン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、1,14-ジアミノ-3,6,9,12-テトラオキサテトラデカン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン等のジアミンが挙げられる。これらの中でも、アミノ基を2個以上有する化合物が好ましく、さらに、アミノ基とアミノ基との間の炭素数が2であるジアミンがより好ましい。
【0029】
芳香族アミンとしては、例えば、ベンジルアミン、p-メトキシカルボニルベンジルアミン、p-エトキシカルボニルフェニルベンジル、p-メチルベンジルアミン、m-メチルベンジルアミン、o-メトキシベンジルアミンなどのアラルキルモノアミン、アニリン、p-メトキシカルボニルアニリン、p-エトキシカルボニルアニリン、p-メトキシアニリン、1-ナフチルアミン、2-ナフチルアミン、アントラニルアミン、1-アミノピレン、4-ビフェニリルアミン、o-フェニルアニリン、4-アミノ-p-ターフェニル、2-アミノフルオレン等のアリールモノアミン;1,2-フェニレンジアン、1,3-フェニレンジアミン、1,4-フェニレンジアミン、3-ニトロ-1,2-フェニレンジアミン、4-ニトロ-1,2-フェニレンジアミン、3-メチル-1,2-フェニレンジアミン、4-メチル-1,2-フェニレンジアミン、1,2,4-ベンゼントリアミン、3,4-ジメチル-1,2-フェニレンジアミン、4,5-ジメチル-1,2-フェニレンジアミン、3-フルオロ-1,2-フェニレンジアミン、4-フルオロ-1,2-フェニレンジアミン、3,4-ジフルオロ-1,2-フェニレンジアミン、3,5-ジフルオロ-1,2-フェニレンジアミン、4,5-ジフルオロ-1,2-フェニレンジアミン、3-クロロ-1,2-フェニレンジアミン、4-クロロ-1,2-フェニレンジアミン、3,4-ジクロロ-1,2-フェニレンジアミン、3,5-ジクロロ-1,2-フェニレンジアミン、4,5-ジクロロ-1,2-フェニレンジアミン、3-ブロモ-1,2-フェニレンジアミン、4-ブロモ-1,2-フェニレンジアミン、3,4-ジブロモ-1,2-フェニレンジアミン、3,5-ジブロモ-1,2-フェニレンジアミン、4,5-ジブロモ-1,2-フェニレンジアミン、2,3-ナフタレンジアミン、ベンジジン、3,3’-ジアミノベンジジン、3,4-ジアミノ安息香酸、3,4-ジアミノ安息香酸メチル、3,4-ジアミノ安息香酸エチル、4-(4-アミノフェノキシ)-1,2-ベンゼンジアミン、3,4-ジアミノベンゾフェノン、5,6-ジアミノ-1,3-ジヒドロ-2H-ベンゾイミダゾール-2-オン等のアリールジアミンが挙げられる。
【0030】
複素環式アミンとしては、例えば、バルビツール酸、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、アゼパン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ベンゾオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、ベンゾチアゾール、トリアジン、アゼピン、ジアゼピン、ベンゾジアゼピン、ピロール、イミダゾリン、モルホリン、チアジン、インドール、イソインドール、プリン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、プテリジン、アクリジン、カルバゾール、シンノリン、ベンゾ-C-シンノリン、ポルフィリン、クロリン、コリン、トリアミノトリアジン、トリクロロトリアジンおよびこれらの誘導体が挙げられる。
【0031】
アミノ酸としては、システイン、グリシン、アラニン、バリン、フェニルアラニン、スレオニン、リシン、アスパラギン、トリプトファン、セリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、オルニチン、チロキシン、シスチン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、メチオニン、トレオニン等が挙げられる。アミノ基含有ポリアルキレングリコールとしては、アミノ基含有ポリエチレングリコール、アミノ基含有ポリプロピレングリコール等が挙げられる。なお、上記アミノ酸が光学異性体を有するものである場合、上記アミノ酸はD体でもL体でもよいし、ラセミ体でもよい。
【0032】
アミン類の使用量は、窒素導入効率の点から、炭素源100質量部に対して10~300質量部が好ましく、20~150質量部がより好ましい。
【0033】
原料として、更に、上記炭素源および窒素源以外の有機化合物を使用してもよい。このような有機化合物としては、本発明の効果を妨げないものであれば、特に限定されない。
【0034】
溶媒は、使用する原料を溶解できるものであれば特に限定されない。このような溶媒としては、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ヘキサメチルリン酸トリアミド、アセトニトリル、アセトン、アルコール類(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等)、グリコール類(エチレングリコール、トリエチレングリコール等)、セロソルブ類(エチルセロソルブ、メチルセロソルブ等)、多価アルコール類(グリセリン、ペンタエリスリトール等)、テトラヒドロフラン、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ヘキサデカン、ベンジルアルコールおよびオレイルアミン等が挙げられる。本発明では、これらの中でも、水が好ましい。上記溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
溶媒の使用量は、均一な粒子サイズを有するカーボンナノ構造体を得る点から、原料100質量部に対して100~10,000質量部が好ましく、400~2,500質量部がより好ましい。
【0036】
上記カーボンナノ構造体を合成する際には、必要に応じて、更に酸触媒や界面活性剤を含んでもよい。
【0037】
酸触媒は、均一酸触媒でも不均一酸触媒でもよいが、量子収率を向上させる観点から不均一酸触媒が好ましい。均一酸触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、スルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸が挙げられる。一方、不均一酸触媒としては、固体酸触媒が好ましく、例えば、カチオン性のイオン交換樹脂、カチオン性のイオン交換膜、Nature 438, p. 178 (2005)に記載された固体酸触媒等が挙げられる。固体酸触媒としては、市販品を使用することができ、例えば、ロームアンドハース社製イオン交換樹脂のAMBERLYST(登録商標)15、16、31、35等、AMBERLITE(登録商標)IR120B、IR124、200CT、252等、デュポン社製イオン交換膜のNAFION(登録商標)、ゼオライトやポリリン酸等の無機系固体酸触媒等が挙げられる。前記酸触媒は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
均一酸触媒を用いる場合、通常、原料100質量部に対して0.01~10質量部添加するが、0.1~5質量部がより好ましく、0.5~1質量部がより一層好ましい。
【0039】
不均一酸触媒は、生成したカーボンナノ構造体を内包できる細孔を有する多孔質体であることが好ましい。この細孔の大きさにより生成するカーボンナノ構造体の粒子径またはディスク径を制御することができる。一般的には、20nmまでの細孔径を有する多孔質体の固体酸触媒により、20nmまでの粒子径(ディスク径)のカーボン量子ドットを製造するのが好ましい。
【0040】
不均一酸触媒を用いる場合、原料100質量部に対して概ね0.1~100質量部の添加が好ましく、1.0~50質量部の添加がより好ましく、5.0~10質量部の添加がより一層好ましい。
【0041】
界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0042】
カチオン性界面活性剤としては、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
界面活性剤の使用量は、原料の分散性と、合成条件での臨界ミセル濃度の点から、原料100質量部に対して10~2,000質量部が好ましく、50~500質量部がより好ましい。
【0044】
上記カーボンナノ構造体を合成する際は、上記の成分を任意の順で混合すればよい。また、合成は、連続式で行っても、バッチ式で行ってもよい。本発明においては、均一な粒子サイズを有するカーボンナノ構造体を連続的に効率よく大量に製造できる点から、連続式を好適に採用し得る。
【0045】
連続式としては、例えば、流通式反応装置(フローリアクター)を好適に採用することができる。フローリアクターとしては、公知の装置を使用することができ、例えば、Thales Nanotechnology Inc.製のフロー式高温反応システムPhoenix Flow Reactor等を挙げることができる。フローリアクターを使用することで、高温かつ加圧下での反応(ソルボサーマル合成、水熱合成)を連続的に効率よく行うことができる。
【0046】
反応温度は、原料溶液に使用する溶媒の種類等の条件に応じて適宜調整し得、特に限定されるものではないが、反応を効率よく行う観点から、概ね100~450℃が好ましく、150~400℃がより好ましく、250~350℃がより一層好ましい。反応温度が高すぎると、反応溶媒に不溶な炭化物が生成することがある。
また、反応時間(滞留時間)は、反応を完全に進行させるとともに、反応溶媒に不溶な炭化物の生成を抑制する観点から、1~30分が好ましく、1.5~20分が好ましく、2~16分がより好ましい。
【0047】
バッチ式を採用する場合、加熱は、常圧(大気圧)下で行っても、加圧下(ソルボサーマル合成、水熱合成)で行ってもよい。
【0048】
常圧で反応させる場合、反応温度は、使用する溶媒の沸点にもよるが、通常、40~250℃程度が好ましく、60~200℃がより好ましく、100~150℃がより一層好ましい。加熱は、通常水浴や油浴でなされるが、マイクロ波で加熱することもできる。これによって、例えば、溶媒として水を用いる場合は、水浴や油浴で加熱する場合に比べて、短時間で生成物を得ることができる。
【0049】
常圧で反応させる場合、反応時間は、1分~240時間程度が好ましく、10分~48時間程度がより好ましく、12~30時間程度がより一層好ましい。
【0050】
加圧する場合は、例えば、オートクレーブを好適に使用することができる。オートクレーブを使用することで、常圧での沸点以上に反応温度を上げることができる。例えば、溶媒として水を使用する場合でも、オートクレーブを用いて反応させることで、200℃程度の反応温度は容易に達成できる。
【0051】
反応温度は、常圧で反応させる場合と同様、使用する溶媒の沸点にもよるが、通常、100~450℃程度が好ましく、150~400℃がより好ましく、250~350℃がより一層好ましい。また、反応時間は、30秒~24時間程度が好ましく、1分~1時間程度がより好ましく、2分~10分程度がより一層好ましい。
【0052】
加圧は、所望の反応温度を達成できるものであれば特に限定されないが、概ね200kPa~20.0MPa程度が好ましく、500kPa~15.0MPa程度がより好ましい。
【0053】
また、バッチ式において固体酸触媒を用いる場合は、攪拌して反応させることが好ましく、固体触媒が砕けない範囲で、攪拌速度を上げると良い結果が得られる。攪拌速度は、10~500rpm程度が好ましく、50~300rpm程度がより好ましい。
【0054】
上記の各方式で得られるカーボンナノ構造体の平均粒径は、20nm以下が好ましく、15nm以下がより好ましく、10nm以下がより一層好ましい。また、粒径の下限は特に制限されないが、通常1nm以上である。粒径が上記範囲内であると、溶媒中で凝集することがなく、電極形成用組成物(電極スラリー等)の調製時や塗工時においても凝集物が生じることがない。また、カーボンナノ構造体の粒径は、活物質のサイズに対して十分に小さいため、活物質へのコーティング性に優れる。
【0055】
得られた生成物は、透析や限外ろ過等で低分子量の不純物を除いた後、遠心分離等で高分子量の不純物を除くことで精製することができる。透析膜や限外ろ過膜の孔径、遠心分離時の遠心力は、除去するものの分子量に合わせて適宜設定すればよい。
【0056】
更に高純度に精製するためには、カラム精製を行えばよい。この場合のカラム充填剤は、順相でも逆相でもよい。順相充填剤としては、シリカ粒子、アルミナ粒子等が使用できる。一方、逆相充填剤としては、長鎖アルキル基で表面修飾されたシリカ粒子等が使用できる。また、時間短縮の点から、カラム精製中に加圧してもよい。
【0057】
上記カーボンナノ構造体を用いて電池材料を調製する際、反応後の溶液の状態で用いても、溶媒を除去して単離したものを用いてもよい。電池材料を調製する際に、カーボンナノ構造体の合成時に使用した溶媒とは異なる溶媒を使用する場合は、溶媒置換して目的とする溶媒系としてもよい。
【0058】
本発明の電池材料は、電極のアンダーコート層および活物質層の形成や、電解質の作製等に使用できるものであるが、特に、電極の活物質層を形成するための材料として好適に使用することができる。
【0059】
上記電池材料を活物質層を形成するための材料として用いる場合、上記カーボンナノ構造体に、以下の活物質、導電助剤、バインダー、および、必要に応じて溶媒(分散媒)を組み合わせることが好ましい。
【0060】
当該電池材料において、上記カーボンナノ構造体の配合量は、要求される電気的、熱的特性、材料の粘度や製造コストなどにおいて変化するものであるが、固形分中0.01~1.0質量%とすることが好ましく、0.01~0.75質量%とすることがより好ましく、0.05~0.5質量%とすることがより一層好ましい。カーボンナノ構造体の配合量を上記範囲とすることで、レート特性やサイクル特性に優れる電池を得ることができる。
なお、ここでいう固形分とは、本発明の電池材料に含まれる溶媒以外の成分を意味する。
【0061】
活物質としては、従来、二次電池等のエネルギー貯蔵デバイス用の電極に用いられている各種活物質を用いることができ、例えば、金属、半金属、金属合金、金属酸化物、半金属酸化物、金属リン酸化物、金属硫化物および金属窒化物が挙げられる。
【0062】
上記活物質の具体例としては、以下のものを挙げることができる。
金属の活物質としては、Al、SnおよびZn等が挙げられる。
半金属の活物質としては、Si、GeおよびAs等が挙げられる。
金属合金の活物質としては、Li-Al系合金、Li-Mg系合金、Li-Al-Ni系合金、Na-Hg系合金およびNa-Zn系合金等が挙げられる。
金属酸化物の活物質としては、AlOx、SnOx、SbOx、BiOx、PbOx、ZnOx、CdOx、InOx、TiOxおよびGaOx(ただし、0<x≦2)、V26、V613、MnO2、LiCoO2、LiMnO2、LiMn24、LiMo24、LiV38、LiNiO2、LizNiy1-y2(ただし、Mは、Co、Mn、Ti、Cr、V、Al、Sn、Pb、およびZnから選ばれる少なくとも1種以上の金属元素を表し、0.05≦z≦1.10、0.5≦y≦1.0)、三元系活物質(Li(NiaCobMnc)O2(ただし、0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1))、スズケイ素酸化物(SnSiO3)、リチウム酸化ビスマス(Li3BiO4)、リチウム酸化亜鉛(Li2ZnO2)ならびにリチウム酸化チタン(Li4Ti512)等が挙げられる。
半金属酸化物の活物質としては、SiOx、GeOxおよびAsOx(ただし、0<x≦2)等が挙げられる。
金属リン酸化物の活物質としては、LiFePO4等が挙げられる。
金属硫化物の活物質としては、FeS2、TiS2、MoS2、Li2S、リチウム硫化鉄(LixFeS2(ただし、0<x≦3))およびリチウム硫化銅(LixCuS(ただし、0<x≦3))等が挙げられる。
金属窒化物の活物質としては、LixyN(ただし、M=Co、Ni、Cu、0≦x≦3、0≦y≦0.5であり、xおよびyが同時に0になることはない)およびリチウム鉄窒化物(Li3FeN4)等が挙げられる。
【0063】
本発明においては、これらの中でも、FeS2、TiS2、MoS2、LiFePO4、V26、V613、MnO2、LiCoO2、LiMnO2、LiMn24、LiMo24、LiV38、LiNiO2、LizNiy1-y2(ただし、Mは、Co、Mn、Ti、Cr、V、Al、Sn、Pb、およびZnから選ばれる少なくとも1種以上の金属元素を表し、0.05≦z≦1.10、0.5≦y≦1.0)、Li(NiaCobMnc)O2(ただし、0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)、Li4Ti512、Si、SiOx、AlOx、SnOx、SbOx、BiOx、GeOx、AsOx、PbOx、ZnOx、CdOx、InOx、TiOxおよびGaOx(ただし、0<x≦2)が好ましく、TiOx(ただし、0<x≦2)がより好ましい。
【0064】
さらに、Li(NiaCobMnc)O2については、1/3≦a<1、0<b≦1/3、0<c≦1/3、a+b+c=1を満たすものがより一層好ましい。
なお、上記のLi(NiaCobMnc)O2は、市販品として入手することもでき、そのような市販品としては、例えば、NCM111(Beijing Easping Material Technology製、豊島製作所製、a=1/3、b=1/3、c=1/3)、NCM523(Beijing Easping Material Technology製、JIANGSU Easping Material Technology製a=0.5、b=0.2、c=0.3)、NCM622(Beijing Easping Material Technology製、a=0.6、b=0.2、c=0.2)、NCM811(Beijing Easping Material Technology製、a=0.8、b=0.1、c=0.1)等が挙げられる。
【0065】
活物質の配合量は、要求される電気的、熱的特性、組成物の粘度や製造コストなどにおいて変化するものであるが、固形分中80~99.8質量%とすることが好ましく、85~98.5質量%とすることがより好ましく、90~98質量%とすることがより一層好ましい。
【0066】
導電助剤としては、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラフェン等の炭素材料、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセン等の導電性高分子等が挙げられる。上記導電助剤は、それぞれ単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0067】
上記導電助剤の配合量は、特に限定されるものではないが、固形分中0.05~9質量%が好ましく、0.1~6質量%がより好ましく、0.2~3質量%がより一層好ましい。導電助剤の配合量を上記範囲内とすることにより、良好な電気伝導性を得ることができる。
【0068】
バインダーとしては、公知の材料から適宜選択して用いることができ、特に限定されるものではないが、本発明で使用できるバインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-塩化3フッ化エチレン共重合体、ポリビニルアルコール、ポリイミド、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体、スチレン-ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアニリン、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレンおよびポリプロピレン等が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
上記バインダーの配合量は、特に限定されるものではないが、固形分中0.14~10質量%が好ましく、0.5~7質量%がより好ましく、1~5質量%がより一層好ましい。バインダーの配合量を上記範囲内とすることにより、容量を低下させることなく、集電基板との良好な密着性が得られる。
【0070】
上記バインダーは、必要に応じて、混合前にあらかじめ後述する適宜な溶媒に溶解させたものを使用してもよい。
【0071】
溶媒は、使用する原料を分散または溶解できるものであれば特に限定されない。このような溶媒としては、カーボンナノ構造体の説明において例示したものと同様のものを挙げることができるが、より好適な具体例として、水、NMP、ジメチルスルホキシド、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。これらの溶媒は、使用する原料に応じて適宜選択すればよいが、PVdF等の非水溶性のバインダーを使用する場合はNMPが好適である。上記溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0072】
活物質を形成するための電池材料を調製する際、その調製法は特に限定されるものではなく、任意の順序で各成分を配合して調製すればよい。
なお、上記カーボンナノ構造体は、合成において使用した溶媒が上記で例示した溶媒と同じもの、もしくは、それらと混和する溶媒である場合は、得られた反応液をそのまま使用してもよい。一方、カーボンナノ構造体の合成に用いた溶媒が、上記で例示した溶媒と混和しない溶媒である場合は、得られた反応液から溶媒を除去して単離したものを用いたり、適宜な溶媒で溶媒置換したものを用いたりすることが好ましい。特に、上記カーボンナノ構造体の合成において、溶媒として水を用いた場合は、上記有機溶媒で溶媒置換することが好ましい。
【0073】
更に、本発明では、上記各成分を混合する前に、活物質とカーボンナノ構造体とを含む溶液または分散液を調製した後、溶媒を除去して、活物質-カーボンナノ構造体の複合物を作製することができる。この複合物を本発明の電池材料に使用することにより、レート特性やサイクル特性に優れる電池を得ることができる。
【0074】
本発明の電極は、集電体である基板上に上で説明した電池材料からなる活物質層(薄膜)を有するもの、または、当該電池材料を単独で薄膜化したものである。
上記活物質層を基板上に形成する場合、当該活物質層の形成方法としては、溶媒を使用せずに調製した電極形成用組成物を基板上に加圧成形する方法(乾式法)、あるいは、溶媒を使用して電極形成用組成物を調製し、それを集電体に塗工、乾燥する方法(湿式法)が挙げられる。これらの方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の各種方法を用いることができる。例えば、湿式法としては、オフセット印刷、スクリーン印刷等の各種印刷法、ドクターブレード法、ディップコート法、スピンコート法、バーコート法、スリットコート法、インクジェット法等が挙げられる。
【0075】
上記電極に用いられる基板としては、例えば、白金、金、鉄、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、リチウム等の金属基板、これらの金属の任意の組み合わせからなる合金基板、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)等の酸化物基板、またはグラッシーカーボン、パイロリティックグラファイト、カーボンフェルト等の炭素基板等が挙げられる。
【0076】
上記電池材料を単独で薄膜化する場合は、薄膜形成後に剥離が可能な基板上に、上述した湿式法および乾式法を適宜用いて薄膜を形成すればよく、また、当該基板上に、ガラス棒等を用いて電池材料を薄く延ばす方法を採用することもできる。当該基板としては、ガラス板等の薄膜に対して密着性を有しない基板を用いることができ、また、薄膜に対して密着性を有する基板であっても、その表面に薄膜の剥離を可能とするための処理(剥離紙の貼付や剥離層の形成等)が施された基板であれば用いることができる。
【0077】
上記活物質層(薄膜)の膜厚は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01~1,000μm程度、より好ましくは1~100μm程度である。なお、薄膜を単独で電極とする場合は、その膜厚を10μm以上とすることが好ましい。
【0078】
また、上記電極に含まれる活物質の溶出を更に抑制するため、上記活物質層(薄膜)に更にポリアルキレンオキサイドおよびイオン伝導性塩を含ませてもよく、または電極を保護膜で被覆してもよい。上記保護膜は、ポリアルキレンオキサイドおよびイオン伝導性塩を含むことが好ましい。
ポリアルキレンオキサイドとしては、特に限定されないが、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等が好ましい。
上記ポリアルキレンオキサイドの数平均分子量は、300,000~900,000が好ましく、500,000~700,000がより好ましい。なお、数平均分子量は、溶媒としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算測定値である。
【0079】
また、上記イオン伝導性塩としては、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(LiBETI)、リチウムトリフルオロメタンスルホナート(LiCF3SO3)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)等が挙げられる。イオン伝導性塩は、ポリアルキレンオキサイド100質量部に対し、5~50質量部含まれることが好ましい。
【0080】
上記保護膜は、例えば、上記活物質層(薄膜)を形成した基板上に、ディップ法等の方法でポリアルキレンオキサイド、イオン伝導性塩および溶媒を含む組成物を塗布し、40~60℃で30~120分間乾燥させて形成できる。
上記溶媒としては、アセトニトリル、ジクロロメタン等が好ましい。
上記保護膜の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは10~1,000μm程度、より好ましくは50~500μm程度である。
【0081】
本発明の二次電池は、上述した電極を備えたものであり、より具体的には、少なくとも一対の正負極と、これら各極間に介在するセパレータと、電解質とを備えて構成され、正負極の少なくとも一方が、上述した電極から構成される。その他の電池素子の構成部材は従来公知のものから適宜選択して用いればよい。
【0082】
上記セパレータに使用される材料としては、例えば、多孔質ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル等が挙げられる。
【0083】
上記電解質としては、実用上十分な性能を容易に発揮させ得る観点から、イオン伝導の本体である電解質塩と溶媒等とから構成される電解液を好適に使用し得る。
【0084】
上記電解質塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiN(C25SO22、LiAsF6、LiSbF6、LiAlF4、LiGaF4、LiInF4、LiClO4、LiN(CF3SO22、LiCF3SO3、LiSiF6、LiN(CF3SO2)(C49SO2)等のリチウム塩、LiI、NaI、KI、CsI、CaI2等の金属ヨウ化物、4級イミダゾリウム化合物のヨウ化物塩、テトラアルキルアンモニウム化合物のヨウ化物塩および過塩素酸塩、LiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBr2等の金属臭化物等が挙げられる。これらの電解質塩は、単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
【0085】
上記溶媒としては、電池を構成する物質に対して腐食や分解を生じさせて性能を劣化させるものでなく、上記電解質塩を溶解するものであれば特に限定されない。例えば、非水系の溶媒として、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン等の環状エステル類、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状エステル類等が用いられる。これらの溶媒は、単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
【0086】
電極は、必要に応じてプレスしてもよい。このとき、プレス圧力は1kN/cm以上が好ましい。プレス法は、一般に採用されている方法を用いることができるが、特に金型プレス法やロールプレス法が好ましい。また、プレス圧力は、特に限定されないが、2kN/cm以上が好ましく、3kN/cm以上がより好ましい。プレス圧力の上限は、40kN/cm程度が好ましく、30kN/cm程度がより好ましい。
【0087】
本発明の電池材料を用いて製造した電池は、一般的な二次電池と比較してレート特性およびサイクル特性に優れたものとなる。
【0088】
二次電池の形態や電解質の種類は特に限定されるものではなく、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、マンガン電池、空気電池等のいずれの形態を用いてもよいが、リチウムイオン電池が好適である。ラミネート方法や生産方法についても特に限定されるものではない。
【0089】
また、セルの形態についても特に限定されるものではなく、円筒型、扁平巻回角型、積層角型、コイン型、扁平巻回ラミネート型、積層ラミネート型等の従来公知の各種形態のセルを採用することができる。
コイン型のセルに適用する場合、上述した本発明の電極を、所定の円盤状に打ち抜いて用いればよい。
例えば、リチウムイオン二次電池は、コインセルのワッシャーとスペーサーが溶接されたフタに、一方の電極を設置し、その上に、電解液を含浸させた同形状のセパレータを重ね、更に上から、活物質層を下にして本発明の電極を重ね、ケースとガスケットを載せて、コインセルかしめ機で密封して作製することができる。
【実施例0090】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、実施例で用いた各測定装置は以下のとおりである。
[流通式反応装置]
装置:Thales Nanotechnology Inc.製、フロー式高温反応システム Phoenix Flow Reactor
[蛍光スペクトル測定]
装置:(株)日立ハイテクサイエンス製、分光蛍光光度計F-7000
[絶対量子収率分析]
装置:浜松ホトニクス(株)製、絶対PL量子収率計
[導電性測定]
装置:(株)三菱ケミカルアナリテック製、低抵抗計ロレスタ-GP
[元素分析]
装置:パーキン・エルマー社製、全自動元素分析装置CHNS/Oアナライザー2400
分析は、得られた溶液をアルミカップ容器に入れ、ホットプレートにて150℃で乾燥させて得た粉末について行った。
[透過型電子顕微鏡(TEM)]
装置:日立製作所(株)製、H-8000
得られた溶液中にTEM基板を浸し、乾燥させたものを、加速電圧200kV、倍率20,000倍で観察し、10個の粒子の径を計測し、個数平均粒径を求めた。
[自転・公転ミキサー]
装置:(株)シンキー製、あわとり錬太郎ARE-310
[ロールプレス機]
装置:有限会社タクミ技研製、加圧/加熱ロールプレス機SA-602
[コインセルかしめ機]
装置:宝泉(株)製、手動コインカシメ機CR2032
[マイクロメーター]
装置:(株)ミツトヨ製、IR54
[充放電測定装置]
装置:東洋システム(株)製、TOSCAT 3100
【0091】
[1]カーボンナノ構造体(カーボン量子ドット)の製造
(1)カーボンナノ構造体の水溶液の調製
[実施例1-1]
炭素源としてクエン酸(富士フイルム和光純薬(株)製)20.0g(0.1mol)を用い、窒素源としてエチレンジアミン(東京化成工業(株)製)12.5g(0.2mol)を水292gに溶解させ、原料濃度10質量%の水溶液を調製した。その水溶液を流通式反応装置を用いて、流速4mL/min.(滞留時間2分)、温度300℃の条件で連続合成を行いカーボンナノ構造体の水溶液A1を得た。
元素分析の結果、炭素38.8質量%、水素7.1質量%、窒素17.0質量%であった。また、粒径は5nmであった。
得られた水溶液A1から水を減圧留去して、茶褐色の固体D1を得た。固体D1を粉末用高抵抗プローブユニットに入れ、低抵抗計ロレスタ-GPにて20kNまで加圧して導電率を測定したところ、検出限界以下であった。
【0092】
[実施例1-2]
反応温度を340℃に変更した以外は実施例1-1と同じ方法で水溶液A2を調製した。
元素分析の結果、炭素46.0質量%、水素7.9質量%、窒素17.6質量%であった。また、粒径は5nmであった。
実施例1-1と同様にして、得られた水溶液A2から水を減圧留去して得た茶褐色の固体D2について導電性を測定したところ、検出限界以下であった。
【0093】
[実施例1-3]
原料のエチレンジアミンをN-エチルエチレンジアミンに変更した以外は実施例1-1と同じ方法で水溶液A3を調製した。
元素分析の結果、炭素57.5質量%、水素7.6質量%、窒素16.7質量%であった。また、粒径は14nmであった。
実施例1-1と同様にして、得られた水溶液A3から水を減圧留去して得た茶褐色の固体D3について導電性を測定したところ、検出限界以下であった。
【0094】
[実施例1-4]
原料のエチレンジアミンを2-(2-アミノエチルアミノ)エタノールに変更した以外は実施例1-1と同じ方法で水溶液A4を調製した。
元素分析の結果、炭素53.3質量%、水素7.0質量%、窒素16.0質量%であった。また、粒径は7nmであった。
実施例1-1と同様にして、得られた水溶液A4から水を減圧留去して得た茶褐色の固体D4について導電性を測定したところ、検出限界以下であった。
【0095】
[比較例1-1]
原料をクエン酸のみに変更した以外は実施例1-1と同じ方法で水溶液A5を調製した。
元素分析の結果、炭素44.5質量%、水素4.5質量%、窒素0.0質量%であった。また、粒径は10nmであった。
実施例1-1と同様にして、得られた水溶液A5から水を減圧留去して得た茶褐色の固体D5について導電性を測定したところ、検出限界以下であった。
実施例1-1と同様にして、得られた水溶液A3から水を減圧留去して得た茶褐色の固体D3について導電性を測定したところ、検出限界以下であった。
【0096】
[比較例1-2]
原料をグルコースのみとし、反応温度を250℃に変更した以外は実施例1-1と同じ方法で水溶液A6を調製した。
元素分析の結果、炭素41.9質量%、水素6.6質量%、窒素0.0質量%であった。また、粒径は200nmであった。
実施例1-1と同様にして、得られた水溶液A6から水を減圧留去して得た茶褐色の固体D6について導電性を測定したところ、検出限界以下であった。
【0097】
(2)蛍光スペクトルおよび量子収率の測定
実施例1-1~1-4および比較例1-1~1-2で得られた水溶液A1~A6について、それぞれ水にて1,000倍希釈し、蛍光スペクトルおよび絶対量子収率の測定を行った。測定の際、励起波長は360nmに固定した。結果を表1に示す。また、測定により得られた蛍光スペクトルを図1~6に示す。
【0098】
【表1】
*表中の極大蛍光波長は、測定装置が自動的に検出した値である。
【0099】
実施例1-1~1-4で合成したカーボンナノ構造体(カーボン量子ドット)は、440nm付近に極大蛍光波長を有し、量子収率も比較例に比べて高かった。
【0100】
(3)溶媒置換
[実施例2-1]
実施例1-1で得られた水溶液A1に適量のNMPを添加し、ロータリーエバポレーターに減圧留去することで水を除去した。得られた溶液を1.0μmのフィルターに通して凝集物を除去することによりNMP溶液B1を得た。固形分量を150℃で2時間乾燥した後の乾燥残分として測定したところ、6.9質量%であった。
【0101】
[実施例2-2]
水溶液A1の代わりに実施例1-2で得られた水溶液A2を使用した以外は、実施例2-1と同様にしてNMP溶液B2を得た。固形分量は6.2質量%であった。
【0102】
[実施例2-3]
水溶液A1の代わりに実施例1-3で得られた水溶液A3を使用した以外は、実施例2-1と同様にしてNMP溶液B3を得た。固形分量は6.2質量%であった。
【0103】
[実施例2-4]
水溶液A1の代わりに実施例1-4で得られた水溶液A4を使用した以外は、実施例2-1と同様にしてNMP溶液B4を得た。固形分量は6.2質量%であった。
【0104】
[比較例2-1]
水溶液A1の代わりに比較例1-1で得られた水溶液A5を使用した以外は、実施例2-1と同様にしてNMP溶液B5を得た。固形分量は5.4質量%であった。
【0105】
[比較例2-2]
水溶液A1の代わりに比較例1-2で得られた水溶液A6を使用した以外は実施例2-1と同様にしてNMP溶液B6を得た。固形分量は12.6質量%であった。
【0106】
[2]リチウムイオン電池の製造および評価
(1)電極の製造
[実施例3-1]
三元系正極活物質Li(Ni0.5Co0.2Mn0.3)O2(NCM523-5Y、Beijing Easping Material Technology製)2.781g、導電助剤としてアセチレンブラック(電気化学工業(株)製)0.052g、実施例2-1で調製した溶液B1 0.042g、およびバインダーとしてPVdF((株)クレハ製、#7300)のNMP溶液(固形分濃度5質量%)1.28gを混合し(固形分質量比 95.9:1.8:0.1:2.2)、更に全体の固形分濃度が58質量%になるようにNMP0.859gを混合した。これを自転・公転ミキサー(2,000rpm、10分間を3回)にて混合し、電極形成用スラリーを調製した。これをアルミ箔(1085、(株)UACJ製、基材厚み15μm)上にドクターブレード法(ウェット膜厚100μm)により均一に展開後、80℃で30分間、次いで120℃で30分間乾燥して、活物質層を形成した。これをロールプレス機にて圧着して電極C1(膜厚40μm)を製造した。
【0107】
[実施例3-2]
三元系正極活物質Li(Ni0.5Co0.2Mn0.3)O2(NCM523-5Y、Beijing Easping Material Technology製)2.770g、導電助剤としてアセチレンブラック(電気化学工業(株)製)0.052g、実施例2-1で調製した溶液B1 0.210g、およびバインダーとしてPVdF((株)クレハ製、#7300)のNMP溶液(固形分濃度5質量%)1.28gを混合し(固形分質量比 95.5:1.8:0.5:2.2)、更に全体の固形分濃度が58質量%になるようにNMP0.692gを混合した。これを自転・公転ミキサー(2,000rpm、10分間を3回)にて混合し、電極形成用スラリーを調製した。これをアルミ箔(1085、(株)UACJ製、基材厚み15μm)上にドクターブレード法(ウェット膜厚100μm)により均一に展開後、80℃で30分間、次いで120℃で30分間乾燥して、活物質層を形成した。これをロールプレス機にて圧着して電極C2(膜厚40μm)を製造した。
【0108】
[実施例3-3]
三元系正極活物質Li(Ni0.5Co0.2Mn0.3)O2(NCM523-5Y、Beijing Easping Material Technology製) 2.770g、導電助剤としてアセチレンブラック(電気化学工業(株)製)0.052g、実施例2-2で調製した溶液B2 0.233g、およびバインダーとしてPVdF((株)クレハ製、#7300)のNMP溶液(固形分濃度5質量%)1.28gを混合し(固形分質量比 95.5:1.8:0.5:2.2)、更に全体の固形分濃度が58質量%になるようにNMP0.669gを混合した。これを自転・公転ミキサー(2,000rpm、10分間を3回)にて混合し、電極形成用スラリーを調製した。これをアルミ箔(1085、(株)UACJ製、基材厚み15μm)上にドクターブレード法(ウェット膜厚100μm)により均一に展開後、80℃で30分間、次いで120℃で30分間乾燥して、活物質層を形成した。これをロールプレス機にて圧着して電極C3(膜厚37μm)を製造した。
【0109】
[実施例3-4]
三元系正極活物質Li(Ni0.5Co0.2Mn0.3)O2(NCM523-5Y、Beijing Easping Material Technology製) 2.770g、導電助剤としてアセチレンブラック(電気化学工業(株)製)0.052g、実施例2-3で調製した溶液B3 0.065g、およびバインダーとしてPVdF((株)クレハ製、#7300)のNMP溶液(固形分濃度5質量%)1.28gを混合し(固形分質量比 95.5:1.8:0.5:2.2)、更に全体の固形分濃度が58質量%になるようにNMP0.826gを混合した。これを自転・公転ミキサー(2,000rpm、10分間を3回)にて混合し、電極形成用スラリーを調製した。これをアルミ箔(1085、(株)UACJ製、基材厚み15μm)上にドクターブレード法(ウェット膜厚100μm)により均一に展開後、80℃で30分間、次いで120℃で30分間乾燥して、活物質層を形成した。これをロールプレス機にて圧着して電極C4(膜厚42μm)を製造した。
【0110】
[実施例3-5]
三元系正極活物質Li(Ni0.5Co0.2Mn0.3)O2(NCM523-5Y、Beijing Easping Material Technology製) 2.770g、導電助剤としてアセチレンブラック(電気化学工業(株)製)0.052g、実施例2-4で調製した溶液B4 0.054g、およびバインダーとしてPVdF((株)クレハ製、#7300)のNMP溶液(固形分濃度5質量%)1.28gを混合し(固形分質量比 95.5:1.8:0.5:2.2)、更に全体の固形分濃度が58質量%になるようにNMP0.837gを混合した。これを自転・公転ミキサー(2,000rpm、10分間を3回)にて混合し、電極形成用スラリーを調製した。これをアルミ箔(1085、(株)UACJ製、基材厚み15μm)上にドクターブレード法(ウェット膜厚100μm)により均一に展開後、80℃で30分間、次いで120℃で30分間乾燥して、活物質層を形成した。これをロールプレス機にて圧着して電極C5(膜厚42μm)を製造した。
【0111】
[比較例3-1]
三元系正極活物質Li(Ni0.5Co0.2Mn0.3)O2(NCM523-5Y、Beijing Easping Material Technology製)2.784g、導電助剤としてアセチレンブラック(電気化学工業(株)製)0.052g、およびバインダーとしてPVdF((株)クレハ製、#7300)のNMP溶液(固形分濃度5質量%)1.28gを混合し(固形分質量比 96:1.8:2.2)、更に全体の固形分濃度が58質量%になるようにNMP0.888gを混合した。これを自転・公転ミキサー(2,000rpm、10分間を3回)にて混合し、電極形成用スラリーを調製した。これをアルミ箔(1085、(株)UACJ製、基材厚み15μm)上にドクターブレード法(ウェット膜厚100μm)により均一に展開後、80℃で30分間、次いで120℃で30分間乾燥して、活物質層を形成した。これをロールプレス機にて圧着して電極C6(膜厚40μm)を製造した。
【0112】
[比較例3-2]
三元系正極活物質Li(Ni0.5Co0.2Mn0.3)O2(NCM523-5Y、Beijing Easping Material Technology製)2.770g、導電助剤としてアセチレンブラック(電気化学工業(株)製)0.052g、比較例2-1で調製した溶液B3 0.271g、およびバインダーとしてPVdF((株)クレハ製、#7300)のNMP溶液(固形分濃度5質量%)1.28gを混合し(固形分質量比 95.5:1.8:0.5:2.2)、更に全体の固形分濃度が58質量%になるようにNMP0.635gを混合した。これを自転・公転ミキサー(2,000rpm、10分間を3回)にて混合し、電極形成用スラリーを調製した。これをアルミ箔(1085、(株)UACJ製、基材厚み15μm)上にドクターブレード法(ウェット膜厚100μm)により均一に展開後、80℃で30分間、次いで120℃で30分間乾燥して、活物質層を形成した。これをロールプレス機にて圧着して電極C7(膜厚40μm)を製造した。
【0113】
[比較例3-3]
三元系正極活物質Li(Ni0.5Co0.2Mn0.3)O2(NCM523-5Y、Beijing Easping Material Technology製)2.770g、導電助剤としてアセチレンブラック(電気化学工業(株)製)0.052g、比較例2-2で調製した溶液B4 0.115g、およびバインダーとしてPVdF((株)クレハ製、#7300)のNMP溶液(固形分濃度5質量%)1.28gを混合し(固形分質量比 95.5:1.8:0.5:2.2)、更に全体の固形分濃度が58質量%になるようにNMP0.787gを混合した。これを自転・公転ミキサー(2,000rpm、10分間を3回)にて混合し、電極形成用スラリーを調製した。これをアルミ箔(1085、(株)UACJ製、基材厚み15μm)上にドクターブレード法(ウェット膜厚100μm)により均一に展開後、80℃で30分間、次いで120℃で30分間乾燥して、活物質層を形成した。これをロールプレス機にて圧着して電極C8(膜厚41μm)を製造した。
【0114】
[比較例3-4]
三元系正極活物質Li(Ni0.5Co0.2Mn0.3)O2(NCM523-5Y、Beijing Easping Material Technology製)2.770g、導電助剤としてアセチレンブラック(電気化学工業(株)製)0.052g、ポリビニルピロリドン(東京化成工業(株)製、K15、分子量10,000)のNMP溶液(固形分濃度5質量%)0.290g、およびバインダーとしてPVdF((株)クレハ製、#7300)のNMP溶液(固形分濃度5質量%)1.28gを混合し(固形分質量比 95.5:1.8:0.5:2.2)、更に全体の固形分濃度が58質量%になるようにNMP0.612gを混合した。これを自転・公転ミキサー(2,000rpm、10分間を3回)にて混合し、電極形成用スラリーを調製した。これをアルミ箔(1085、(株)UACJ製、基材厚み15μm)上にドクターブレード法(ウェット膜厚100μm)により均一に展開後、80℃で30分間、次いで120℃で30分間乾燥して、活物質層を形成した。これをロールプレス機にて圧着して電極C9(膜厚44μm)を製造した。
【0115】
(2)リチウムイオン電池の製造
[実施例4-1]
実施例3-1で作製した電極C1を、直径10mmの円盤状に打ち抜き、質量を測定した後、120℃で12時間真空乾燥し、アルゴンで満たされたグローブボックスに移した。
2032型のコインセル(宝泉(株)製)のワッシャーとスペーサーが溶接されたフタに、直径14mmに打ち抜いたリチウム箔(本荘ケミカル(株)製、厚み0.17mm)を6枚重ねたものを設置し、その上に、電解液(キシダ化学(株)製、エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=1:1(体積比)、電解質であるリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF6)を1mol/L含む。)を24時間以上染み込ませた、直径16mmに打ち抜いたセパレータ(セルガード(株)製、2400)を一枚重ねた。更に上から、活物質を塗布した面を下にして電極C1を重ねた。電解液を1滴滴下した後、ケースとガスケットを載せて、コインセルかしめ機で密封した。その後24時間静置し、試験用の二次電池とした。
【0116】
[実施例4-2~4-5]
電極C1の代わりに、それぞれ実施例3-2~3-5で作製した電極C2~C5を用いた以外は、実施例4-1と同様にして試験用の二次電池を作製した。
【0117】
[比較例4-1~4-4]
電極C1の代わりに、それぞれ比較例3-1~3-4で作製した電極C6~C9を用いた以外は、実施例4-1と同様にして試験用の二次電池を作製した。
【0118】
実施例4-1~4-5および比較例4-1~4-4で製造したリチウムイオン二次電池について、充放電測定装置を用いて電極の物性を下記の条件で評価した。各二次電池の0.2C、10C放電時の放電レートにおける放電容量について、比較例4-1の放電容量を基準とした比率を表2に示す。
[測定条件]
・レート特性:
電流:0.2C定電流充電、0.2C、0.5C、3C、5C、10C定電流放電(Li(Ni0.5Co0.2Mn0.3)O2の容量を160mAh/gとし、2サイクルごとの放電レートを上昇させたのち、最後に放電レートを0.5Cにした)
・カットオフ電圧:4.20V-3.00V
・温度:室温
【0119】
【表2】
*表中、CAはクエン酸、EDAはエチレンジアミン、EEDAはN-エチルエチレンジアミン、AEAEは2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、ABはアセチレンブラックを表す。
【0120】
実施例4-1、4-4、4-5および比較例4-1で製造したリチウムイオン二次電池について、充放電測定装置を用いて電極の物性を下記の条件で評価した。各二次電池の0.2C、10C充電時の充電レートにおける充電容量について、比較例4-1の充電容量を基準とした比率を表2に示す。
[測定条件]
・レート特性:
電流:0.2C、0.5C、3C、5C、10C定電流充電、0.2C定電流放電(Li(Ni0.5Co0.2Mn0.3)O2の容量を160mAh/gとし、2サイクルごとの充電レートを上昇させたのち、最後に充電レートを0.5Cにした)
・カットオフ電圧:4.20V-3.00V
・温度:室温
【0121】
【表3】
*表中、CAはクエン酸、EDAはエチレンジアミン、EEDAはN-エチルエチレンジアミン、AEAEは2-(2-アミノエチルアミノ)エタノールを表す。
【0122】
表1、2の結果から、本発明で規定するカーボンナノ構造体を含む電池材料を用いることで、レート特性に優れる電池が得られることが確認された。また、充電(入力)、放電(出力)のいずれの場合にも効果があることが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6