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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161233
(43)【公開日】2024-11-15
(54)【発明の名称】光学式濃度測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/61 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
G01N21/61
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024153024
(22)【出願日】2024-09-05
(62)【分割の表示】P 2020155820の分割
【原出願日】2020-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2019180753
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】一色 翔太
(72)【発明者】
【氏名】古屋 貴明
(57)【要約】
【課題】SNRが高く且つSNRの高いロバスト性を実現することの可能な光学式濃度測定装置を提供する。
【解決手段】LED光源21と、矩形の受光面を有し受光した光の強度を表す単一の検出信号を出力する受光部22と、LED光源21が発光した光を受光部22に導く導光部24,25と、を備え、矩形の受光面に照射された光の受光面における形状は矩形であり、受光部22から出力される検出信号に基づき、導光部24,25により形成される光路に介在する測定対象物の濃度を検出する光学式濃度測定装置1であって、導光部24,25は、矩形の受光面における光の面積が矩形の受光面の面積の1/2以下となるように、回折限界以上で導光する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED光源と、
一様の感度を有する矩形の受光面を有し、受光した光の強度を表す単一の検出信号を出力する受光部と、
前記LED光源が発光した光を前記受光部に導く導光部と、
を備え、
前記矩形の受光面に照射された光の当該受光面における形状は矩形であり、
前記受光部から出力される前記検出信号に基づき、前記導光部により形成される光路に介在する測定対象物の濃度を測定する光学式濃度測定装置であって、
前記導光部は、前記矩形の受光面における前記光の面積が前記矩形の受光面の面積の1/2以下となるように、回折限界以上で導光する光学式濃度測定装置。
【請求項2】
前記導光部は、前記矩形の受光面における前記光の面積が前記矩形の受光面の面積の1/4以下となるように、前記回折限界以上で導光する請求項1に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項3】
前記導光部は、前記矩形の受光面における前記光の面積が前記矩形の受光面の面積の1/6以下となるように、前記回折限界以上で導光する請求項1に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項4】
LED光源と、
一様の感度を有する矩形の受光面を有し、受光した光の強度を表す単一の検出信号を出力する受光部と、
前記LED光源が発光した光を前記受光部に導く導光部と、
を備え、
前記矩形の受光面に照射された光の当該受光面における形状は矩形であり、
前記受光部から出力される前記検出信号に基づき、前記導光部により形成される光路に介在する測定対象物の濃度を測定する光学式濃度測定装置であって、
前記導光部は、前記矩形の受光面における前記光の面積が前記矩形の受光面の面積の2倍以上となるように、導光する光学式濃度測定装置。
【請求項5】
前記導光部は、前記矩形の受光面における前記光の面積が前記矩形の受光面の面積の4倍以下となるように導光する請求項4に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項6】
前記導光部は、前記矩形の受光面における前記光の面積が前記矩形の受光面の面積の3倍以下となるように導光する請求項4に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項7】
前記導光部は、反射のみにより導光する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項8】
前記LED光源の発光面の上部または前記受光部の受光面の上部に、予め設定した波長帯の光のみを透過する光学フィルタを有する請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項9】
前記LED光源及び前記受光部は、表面実装型の素子である請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項10】
前記受光部から出力される前記検出信号に基づき、前記導光部により形成される光路に介在する測定対象物の濃度を算出する演算部を備える請求項1から請求項9のいずれか一
項に記載の光学式濃度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、大気中の測定対象ガスの濃度測定を行うガス測定装置として、ガスの種類によって吸収される赤外線の波長が異なることを利用し、この吸収量を検出することによりそのガス濃度を測定する非分散赤外吸収型(Non-Dispersive Infrared)光学式濃度測定
装置が知られている。
例えば、特許文献1に記載の光学式濃度測定装置は、ガスセルにおいて、発光部が発光した光を集光部と反射部とを経由して受光部に入射し、その際、測定対象ガスをガスセルに導入することにより、受光部の出力信号に応じて測定対象ガスの濃度を検出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-15567号公報
【特許文献2】特開平6-21485号公報
【特許文献3】特開2010-122614号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】古屋貴明、「室温動作量子型中赤外センサー・LEDを組み合わせた低消費電力CO2ガスセンサーによる空調の効率化」、第7回 JACI/GSCシンポジウム、2018/6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、光学式濃度測定装置は、小型且つ安価である一方、実使用環境下において、数ppm~数百ppmの精度で出力が安定し続けることが要求される。高精度を実現するために、光学式濃度測定装置において重要な特性として、SNR(signal-noise ratio)がある。また、実使用環境の温度、湿度が高い場合、若しくは車載センサとして用いられる等、振動にさらされることが多い環境下で使用される場合には、SNRのロバスト性が高い光学式濃度測定装置でないと、高精度を保つことが困難である。
【0006】
例えば、温度、湿度が高い環境下又は振動にさらされる環境下等といった劣悪な使用環境下において、高温、吸湿、振動等により導光部を支持する部材が変形すること、又は発光部、受光部が実装されている基板が膨張、収縮することによって、発光部、導光部、及び受光部の相対位置関係にずれ等が生じ、その結果、受光部に到達する光量が変化すると、SNRが出荷時の値から変化し、測定対象物の濃度測定結果に誤差が生じてしまう。高SNR及びSNRのロバスト性が高い光学式濃度測定装置の実現は、光学式濃度測定装置の精度を実使用環境下で保つ上で非常に重要である。
【0007】
光学式の受光装置において、精度向上を図る方法として、入射光のスポット径を受光素子の受光径に対する割合がある程度以上となるように規定することによって、受光素子の増幅率の低下による受光信号の歪みを抑制するようにした受光装置も提案されている(例えば、特許文献2及び特許文献3参照。)。しかしながら、これら受光装置は、入射光の単位面積当たりの光強度を小さくするためにスポット径が広くなるようにしたものであるため、例えば発光部、導光部及び受光部の相対位置関係のずれ量が大きいと受光量が低下
し、やはりSNRが低下するという問題がある。
【0008】
また、光学式濃度測定装置は、これまで光源としてランプが使用されてきたが、近年(2018年以降)、SMD型(Surface Mount Device 表面実装型)の中赤外LED光源が開発・量産され、光源サイズがランプに比べて著しく小型で、光源形状が矩形の光源を使用するようになってきている(例えば、非特許文献1参照。)。これまでのランプではスポットサイズは受光素子サイズに比べて十分大きく、スポット形状は回転対称な形状で広がっていたが、LED光源を使うことにより、そのスポットサイズは受光部の受光面のサイズに対して同等もしくはそれ以下で、光源形状に合わせてスポット形状は矩形となり、スポットの矩形角部が受光面から外れることによって受光部のSNRが低下するという問題がある。
【0009】
そこで、この発明は、上記従来の未解決の課題に着目してなされたものであり、SNRが高く且つSNRの高いロバスト性を実現することの可能な光学式濃度測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係る光学式濃度測定装置は、LED光源と、一様の感度を有する矩形の受光面を有し受光した光の強度を表す単一の検出信号を出力する受光部と、前記LED光源が発光した光を前記受光部に導く導光部と、を備え、前記矩形の受光面に照射された光の当該受光面における形状は矩形であり、前記受光部から出力される前記検出信号に基づき、前記導光部により形成される光路に介在する測定対象物の濃度を測定する光学式濃度測定装置であって、前記導光部は、前記矩形の受光面における前記光の面積が前記矩形の受光面の面積の1/2以下となるように、回折限界以上で導光することを特徴としている。
【0011】
また、本発明の他の実施形態に係る光学式濃度測定装置は、LED光源と、一様の感度を有する矩形の受光面を有し受光した光の強度を表す単一の検出信号を出力する受光部と、前記LED光源が発光した光を前記受光部に導く導光部と、を備え、前記矩形の受光面に照射された光の当該受光面における形状は矩形であり、前記受光部から出力される前記検出信号に基づき、前記導光部により形成される光路に介在する測定対象物の濃度を測定する光学式濃度測定装置であって、前記導光部は、前記矩形の受光面における前記光の面積が前記矩形の受光面の面積の2倍以上となるように導光することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、高いSNR及びSNRの高いロバスト性を実現することができ、測定精度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る光学式濃度測定装置の一例を示す概略構成図である。
図2】光学式濃度測定装置のその他の例である。
図3】光学式濃度測定装置のその他の例である。
図4】受光部の構成を説明するための説明図である。
図5】受光面の感度を説明するための説明図である。
図6】受光面とスポットとSNRとの関係を説明するための説明図である。
図7図6の関係を説明するための説明図である。
図8図6の関係を説明するための説明図である。
図9図6の関係を説明するための説明図である。
図10図6の関係を説明するための説明図である。
図11図6の関係を説明するための説明図である。
図12図6の関係を説明するための説明図である。
図13】受光面に照射したスポットの一例である。
図14】(7)式により計算したスポットのx方向切断面における放射照度の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、様々な変更を加えることができる。
【0015】
<光学式濃度測定装置の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る光学式濃度測定装置1の一例を示す概略構成図である。ここでは、測定対象物がガスである場合について説明するが、測定対象物は、ガス(気体)であってもよく、また、液体であってもよい。LED光源21が発光する、2μm以上10μm以下の波長帯の光を吸収する特性を有する気体または液体であれば適用することができる。
【0016】
光学式濃度測定装置1は、受発光装置11と、受発光装置11を収容する筐体12と、を備える。受発光装置11は、図1に示すように、直方体形状のLED(light‐emitting diode)光源21と、フォトダイオード等で構成される直方体形状の受光部22と、L
ED光源21及び受光部22が実装された基板23と、導光部24及び導光部25と、を備える。LED光源21は、2μm以上10μm以下の波長帯の光を発光する。
【0017】
導光部24は、LED光源21が発光した光を、受光部22に向けて反射する。導光部25は、LED光源21から入射した光を集光するLED光源21用の集光部25aと、導光部24で反射された光を集光する受光部22用の集光部25bと、を備える。
これら導光部24及び25は、反射面を有し、LED光源21が発光した光を、反射のみによって受光部22まで導光するようになっている。なお、図1に示す光学式濃度測定装置1では、導光部24及び25によって、反射のみで導光するようにしているが、レンズで集光する等、他の光学素子を用いてもよい。
【0018】
光学式濃度測定装置1では、導光部25を備えることによって、LED光源21が発光したより多くの光を集光部25aで集光して導光部24に向けて反射し、導光部24が反射したより多くの光を集光部25bで集光して受光部22に入射するようになっている。
そして、筐体12に設けられた図示しないガス導入口から測定対象ガスを筐体12内に導入し、LED光源21及び受光部22と導光部24及び25とを結ぶ光路を通過させて図示しないガス排出口から測定対象ガスを筐体12外に排出させると共に、駆動部13によりLED光源21を駆動し、このときの受光部22の出力信号に基づき、演算部14により測定対象ガスの濃度を演算する。
【0019】
受発光装置11は、例えば、基板23を筐体12の底面に樹脂製の接着剤で固定し、導光部24及び25を、筐体12の上面及び側面に樹脂製の接着剤で固定することで筐体12に固定される。
なお、駆動部13及び演算部14は、筐体12内に設けられていてもよく、配線等を介して筐体12外に設けられていてもよい。
【0020】
また、導光部24、25に代えて、複数の反射鏡を設け、反射鏡を組み合わせることによって、LED光源21が発光した光を受光部22まで導光する光路を形成してもよい。反射鏡、また、導光部24、25において、反射面として用いられる部分の材料は、金属、または多層膜誘電体であることが好ましい。
また、導光部24、25において、光が反射または透過する部分の材料は、反射率または透過率が90%以上であることが好ましい。
【0021】
図2は、光学式濃度測定装置1の変形例である。
本発明の一実施形態に係る光学式濃度測定装置1は、図2(a)に示すように、受光部22の受光面の直上に光学フィルタ22aを備えていてもよい。つまり、測定対象ガスにより吸収される波長帯の光のみを透過するバンドパスフィルタ等の光学フィルタ22aを設け、測定対象ガスにより吸収される波長帯の光のみを受光部22に入射するようにしてもよい。
【0022】
また、本発明の一実施形態に係る光学式濃度測定装置1は、受光部22の受光面の直上ではなく、図2(b)に示すように、LED光源21の直上に光学フィルタ21aを備えていてもよい。つまり、測定対象ガスにより吸収される波長帯の光のみを透過するバンドパスフィルタ等の光学フィルタ21aを設け、測定対象ガスにより吸収される波長帯の光のみを導光部24、25に入射するようにしてもよい。なお、図2(a)、(b)は、光
学式濃度測定装置1の光学系のみを示したものであり、光学系を除く部分は、図1に示す光学式濃度測定装置1の構成と同様である。
また、グレーティングを導光部の一部として設け、測定対象ガスにより吸収される波長帯の光のみを導光するようにしてもよい。
【0023】
また、光学式濃度測定装置1は、図3に示すように、図2における導光部25に代えて、LED光源21と受光部22との間に、導光部26を設けてもよい。つまり、導光部26の両側にLED光源21及び受光部22を設けると共に、LED光源21が発光した光を集光するレンズ27を設け、導光部26の反射面、LED光源21の発光面、及び受光部22の受光面を、導光部24の反射面に向けて配置する。LED光源21が発光した光を、レンズ27で集光して導光部24に入射し、導光部24で反射して導光部26に入射する。導光部26は、入射した光を導光部24に向けて反射し、導光部24は、入射した光を受光部22に向けて反射する。
なお、図3は、光学式濃度測定装置1の光学系のみを示したものであり、光学系を除く部分は、図1に示す光学式濃度測定装置1の構成と同様である。
【0024】
<矩形の受光面の面積と矩形の受光面における光の面積との関係>
次に、受光部22の受光面の面積と、受光部22の受光面に照射された光の受光面における光の面積との関係を説明する。なお、以下、受光面の面積をセンサ面積ともいう。また、受光部22の受光面に照射される光をスポットといい、受光面に照射される光つまりスポットの面積をスポット面積ともいう。
【0025】
本実施形態に係る光学式濃度測定装置1では、受光部22の受光面に照射された光の受光面における光の形状が、矩形となるように形成される。ここでいうスポットサイズとは、受光部22の受光面に照射された矩形の光の大きさをいう。例えば、LED光源21として、単位面積当たりの密度が大きくなるように配置し、複数のLEDが形成する発光面が矩形となるように複数のLEDを配置すること、または、LED光源21と受光部22との間の光路において、例えば、LED光源21と集光部25aとの間、または受光部22と集光部25bとの間、または導光部24と導光部25との間等に、スポットサイズを規定するための視野角制限体(図示せず)を設けることにより、受光面に照射される光の受光面における形状を矩形にすればよい。
【0026】
また、受光部22は、図4に示すように、複数のフォトダイオードPDが直列に接続されて形成され、複数のフォトダイオードPDは、これら複数のフォトダイオードPD全体で矩形の受光面22Aを形成するように配置されている。そして、複数のフォトダイオードPDの出力の総和が、受光部22の単一の検出信号として出力される。したがって、例えば、図4に示すように、受光面22Aにおけるスポットサイズが矩形領域S1であるときと、矩形領域S1と同一形状の領域である矩形領域S2であるときとでは、受光部22の検出信号は同一となる。すなわち受光部22は一様の感度を有する受光面22Aを有している。
【0027】
一様の感度を有する受光面22Aについて図5を参酌して説明する。一様の感度を有する受光面22Aとは、大きさの等しい各フォトダイオードが、各フォトダイオードの短辺PDLの70%以下の間隔(PDS1、PDS2)で上下左右に整列されている、または、各フォトダイオードの外周を含む最小の凸多角形の面積22Bが受光面22Aの面積の50%以上を占めることを指す。
そして、設計思想では、受光面22Aに照射された矩形のスポットの中心と矩形の受光面22Aの中心とが重なり、且つ受光面22Aの各辺とスポットの各辺とが平行となるように、LED光源21が発光した光を受光部22に導光するようにしている。
【0028】
スポットサイズは、受光部22の受光面22Aが、一辺がA(μm)の矩形(以下、受光面サイズがA(μm)ともいう。)であるとき、一辺が、図6(a)に示す領域AR1及び領域AR2内の値となるように設定される。
図6において、(a)は、受光面サイズがA(μm)であるときの、スポットサイズの一辺とSNRとの関係を示したものであり、横軸は、スポットサイズの一辺の長さ(μm)、縦軸はSNR(a.u.)である。
【0029】
受光面サイズがA(μm)である場合、スポットサイズが受光面サイズ以下であるときには、SNRは略一定となる。つまり、受光部22に向けて照射された光は全て受光面に入射されると予測され、受光量は一定となるため、SNRも一定となる。一方、スポットサイズが受光面サイズよりも大きくなると、受光部22では、受光面に向けて照射される光全てを受光することができないため、受光量が減少し、これに伴いSNRも低下する。スポットサイズが受光面サイズよりも大きくなるほど受光面に照射される光は、少なくなるため、スポットサイズの増加に伴いSNRは低下する。なお、LED光源21が発光する光の光量は一定である。
【0030】
図6(a)に示す特性を有する光学式濃度測定装置1において、スポットサイズは、受光面サイズであるA(μm)よりも小さいb1以下の領域AR1内の値、又は、受光面サイズであるA(μm)よりも大きいb2以上の領域AR2内の値に設定される。
図6(b)は、領域AR1と、領域AR2とを、受光面の面積であるセンサ面積とスポットの面積であるスポット面積とで表した図であって、横軸はスポット面積(cm)、縦軸はセンサ面積(cm)である。
図6(b)に示すように、領域AR1は特性線L1と特性線L2とで囲まれた領域に対応し、領域AR2は特性線L3と特性線L4とで囲まれた領域に対応する。
特性線L1~L4は以下のように決定される。
【0031】
<特性線L1>
特性線L1は、スポットサイズが最小となるとき、すなわち、回折限界であるときを表す。つまり、スポットサイズが最小であれば、スポットがある程度ずれたとしてもスポットは受光面内に収まり、受光量は減少しないと予測される。したがって、所望のSNRを確保することができ、また、高いロバスト性を確保することができる。以上から、スポッ
トサイズ(スポットの一辺)をbとすると、特性線L1、つまり最小のスポットサイズとなるときの「b」の値は次式(1)で表される。式(1)中において、λは波長(2μm以上10μm以下)、NAは開口数である。
b=2×(0.61×λ)/(NA) ……(1)
【0032】
<特性線L2>
特性線L2は、図7に示すように、受光面22Aに対し、スポットSPが回転した場合を想定したものであり、受光面22Aに対しスポットSPが回転しても、所望のSNRを維持することのできる条件を示す。つまり、仮に受光面22Aに対しスポットSPが360度回転したとしても、受光面22Aに対しスポットSPが45度回転したときに、スポットSPが受光面22A内に収まれば、受光量は変化しないと予測される。したがって、所望のSNRを確保することができ、また、高いロバスト性を確保することができる。以上から、受光面22Aの一辺を2aとすると、スポットサイズと受光面サイズとが、次式(2)を満足すればよい。
b=21/2×a ……(2)
【0033】
ここで、センサ面積は4aと表され、スポット面積はbと表される。
したがって、(2)式から、特性線L2は次式(3)で表すことができる。
スポット面積/センサ面積=b/4a=1/2 ……(3)
また、図8に示すように、受光面22Aに対し、スポットSPが回転せずに上下左右にずれたとしても、(3)式を満足するように設定すれば、ある程度のずれが生じた場合でもスポットSPを受光面22A内に収めることができる。すなわち、所望のSNRを確保することができると共に、比較的高いロバスト性を確保することができる。
【0034】
<特性線L3>
特性線L3は、図9に示すように、受光面サイズよりもスポットサイズの方が大きい場合を想定したものであり、スポットSPが回転したとしても、所望のSNRを維持することのできる条件を示す。つまり、仮に、受光面22Aに対してスポットSPが360度回転したとしても、受光面22Aに対し、スポットSPが45度回転したときに、受光面22A全体がスポットSP内に収まれば、受光量は変化しないと予測される。つまり、所望のSNRを確保することができ、また、高いロバスト性を確保することができる。以上から、スポットサイズと受光面サイズとが次式(4)を満足すればよい。
b=2×21/2×a ……(4)
【0035】
ここで、センサ面積は4aと表され、スポット面積はbと表される。
したがって、(4)式から、特性線L3は次式(5)で表すことができる。
スポット面積/センサ面積=b/4a=2 ……(5)
また、図10に示すように、受光面22Aに対し、スポットSPが回転せずに上下左右にずれたとしても、(5)式を満足するように設定すれば、ある程度のずれが生じた場合でも受光面22A全体をスポットSP内に収めたままとすることができる。すなわち、所望のSNRを確保することができると共に、比較的高いロバスト性を確保することができる。
【0036】
<特性線L4>
特性線L4は、図11に示すように、SNRが、(5)式で表される特性線L3のときのSNRの半分になる条件を想定したものである。つまり、SNRが、特性線L3のときのSNRの半分の値までをSNRの取り得る許容範囲とすると、特性線L4は、SNRが特性線L3のときのSNRの半分の値となるときの条件を示す。SNRが特性線L3のときのSNRの半分ということは、受光量が半分になったことと同等である。そのため、スポットSP全体の光量はスポットSPの大きさに関わらず一定であるため、図11に示す
ように、スポット面積は、特性線L3を求めたときのスポット面積の2倍となり、受光面22A全体がスポットSP内に収まった状態となる。
したがって、特性線L4は、(5)式から、次式(6)で表すことができる。
スポット面積/センサ面積=4 ……(6)
【0037】
また、図12に示すように、受光面22Aに対し、スポットSPが回転せずに上下左右にずれたとしても、(6)式を満足するように設定すれば、ある程度のずれが生じた場合でも、受光面22A全体がスポットSP内に収まった状態とすることができると予測される。すなわち、所望のSNRを確保することができると共に、比較的高いロバスト性を確保することができる。
【0038】
以上から、図6の領域AR1に対応する、「SNRが一定でありSNRのロバスト性が比較的高い領域」、つまり、特性線L1とL2とで囲まれた領域は、受光面に光が照射されたスポットが形成されるスポットの回折限界以上であって、スポット面積/センサ面積が1/2以下であればよい。
領域AR1はスポットの総光量が一定であると、スポット面積を小さくすればするほど、ロバスト性が向上する。
そのため、領域AR1に対応する領域は、スポットの回折限界以上であり、スポット面積/センサ面積=1/4以下であることが好ましく、スポットの回折限界以上であり、スポット面積/センサ面積=1/6以下であることがさらに好ましい。
【0039】
各条件は図6の特性線L2の状態からスポットの一辺の長さがそれぞれ1/21/2倍、
1/31/2倍になり、よりSNRのロバスト性が高いため好ましい。
また、図6の領域AR2に対応する、SNRのロバスト性は高いがSNRが一定ではない領域、つまり、特性線L3とL4とで囲まれた領域は、スポット面積とセンサ面積とが、「スポット面積/センサ面積=2以上4以下」であればよい。
領域AR2はスポットの総光量が一定であると、スポット面積を大きくするほど、ロバスト性は向上するが、受光部に入る光量は減少する。LED光源、受光部の光学性能が使用温度範囲の温度特性で劣化し、それによりSNRが劣化することを考慮すると、図6(b)において、領域AR2に対応する領域は、「スポット面積/センサ面積=2以上3以下」であることがさらに好ましい。
【0040】
なお、特性線L1~L4は、受光面が略正方形であり、受光面に到達したスポットが略正方形であるとして、スポット面積とセンサ面積との条件を設定しているが受光面及びスポットは必ずしも正方形に限らず、矩形であればよい。受光面22A及びスポットSPが矩形の場合、つまりスポットSPが受光面22A内に収まるようにすることで、一定のSNRを実現する場合には、受光面22Aの短辺を「a」、スポットSPの長辺を「b」として、特性線L1及びL2を規定すればよい。逆に、受光面22AがスポットSP内に収まるようにすることで、SNRを比較的高い状態に維持する場合には、受光面22Aの長辺を「a」、スポットの短辺を「b」として、特性線L3及びL4を規定すればよい。
【0041】
<スポットサイズの定義>
次に、スポットサイズの定義を説明する。
図13(a)に示すように、矩形状の受光面22Aの中心を原点(x0,y0)とし、受光面22A上の各点の位置を、原点(x0,y0)とする(x,y)座標で表したとき、受光面22A上の各座標位置の放射照度は、次式(7)で近似することができる。なお、図13(a)において、領域c1は、受光面22Aに照射されたスポットを表し、領域c2は、受光面22Aのスポットが照射されていない領域を表し、領域c3は、受光面22Aの、スポットが照射された領域とスポットが照射されていない領域との境界の領域を表す。
【0042】
【数1】
……(7)
【0043】
図13(b)は、図13(a)のx方向切断面における放射照度のシミュレーション値、図13(c)は、図13(a)のy方向切断面における放射照度のシミュレーション値を示したものである。図13(b)において、横軸は図13(a)のx方向切断面における、原点(x0,y0)からのx方向の距離(μm)を示し、縦軸は、放射照度(W/cm)を示す。図13(c)において、横軸は、図13(a)のy方向切断面における、原点(x0,y0)からのy方向の距離(μm)を示し、縦軸は、放射照度(W/cm)を示す。
【0044】
図13(b)、(c)に示す各座標位置における放射照度と(7)式から、(7)式中の各変数を求めることができる。例えば、図13(b)、(c)に示すような放射照度のシミュレーション値と(7)式とから最小自乗法等を用いて各変数を求め、x軸方向の半幅β及びy軸方向の半幅γとから、矩形のスポットSPのx軸方向の長さ及びy軸方向の長さを求めればよい。
【0045】
(7)式中の「α:エッジの急峻加減」は、例えば図14に示すように、エッジが急峻に変化するか否かを規定する変数であり、エッジの急峻加減αが小さい方(図14(a))が、エッジの急峻加減αが大きい方(図14(b))に比較して、エッジがより急峻に変化する。図14(a)、(b)において、横軸は、図13(b)の横軸に対応する原点(x0,y0)からのx方向の距離(μm)を示し、縦軸は、x方向切断面における放射照度であるf(y)を示す。
【0046】
<効果>
上述のように、本発明の一実施形態に係る光学式濃度測定装置1では、受光部22の矩形状の受光面であるセンサ面積と矩形状のスポットであるスポット面積との比を規定し、受光面とスポットとの相対位置関係がずれた場合であっても、所望のSNRを確保することができ、且つ、比較的高いロバスト性を確保することができると予測される比を設定している。そのため、仮に、温度、湿度などの環境の変化や振動等によって、受光面とスポットとの相対位置関係が、出荷時の状態からずれたとしても、所望のSNRを維持することができる。また、受光面とスポットとの位置関係が、矩形の受光面の中心と矩形のスポットの中心とが一致し、且つ受光面の各辺とスポットの各辺とが平行であること、を設計思想とし、設計思想における位置関係とは異なる位置関係になってしまった場合を想定し、受光面に対しスポットが上下左右にずれたり、受光面に対してスポットが回転したりした場合であっても、比較的高いロバスト性を確保できるようにセンサ面積とスポット面積との比を決定している。そのため、SNRが低下することを抑制することができる。つまり、所望のSNRを確保し、且つ比較的高いロバスト性を有する光学式濃度測定装置1を実現することができる。また、温度、湿度等の環境の変化だけでなく、振動等による受光
面とスポットとの相対位置関係のずれ等が生じた場合でも、SNRの低下を抑制することができるため、光学式濃度測定装置を、車載センサ等に適用した場合でも、SNRの低下を抑制することができ、汎用性をより高めることができる。
また、このように比較的高いロバスト性を確保することができるため、製造時において組立誤差等が生じた場合であっても、所望のSNRを実現することができる。
【0047】
また、特に、LED光源21及び受光部22がSMD型(Surface Mount Device 表面実装型)の素子である場合、基板に実装する際のハンダ量が挿入型(例えばメタルCAN)に比べ、比較的少なくてすみ、実装時の高さ方向の公差成分が小さい。高さ方向の理想の実装位置と実際の実装位置との誤差は、SNRに与える影響が比較的大きい。そのため上記実施形態に示すように、SNRの高いロバスト性を実現するには、挿入型(例えばメタ
ルCAN)の素子ではなく、SMD型の素子を実装することが望ましい。SMD型の素子
を選択することにより高さ方向の公差を抑え、SNRの変動を抑制することができる。ここで、高さというのは素子実装の接地面に対する厚み方向である
【0048】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 光学式濃度測定装置
11 受発光装置
12 筐体
21 LED光源
22 受光部
23 基板
24、25、26 導光部
25a、25b 集光部
27 レンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2024-09-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
源と、
一様の感度を有する矩形の受光面を有し、受光した光の強度を表す単一の検出信号を出力する受光部と、
記光源が発光した光を前記受光部に導く導光部と、
を備え、
前記矩形の受光面に照射された光の当該受光面における形状は矩形であり、
前記受光部から出力される前記検出信号に基づき、前記導光部により形成される光路に介在する測定対象物の濃度を測定する光学式濃度測定装置であって、
前記導光部は、前記矩形の受光面における前記光の面積が前記矩形の受光面の面積の1/2以下となるように、回折限界以上で導光する光学式濃度測定装置。
【請求項2】
前記導光部は、前記矩形の受光面における前記光の面積が前記矩形の受光面の面積の1/4以下となるように、前記回折限界以上で導光する請求項1に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項3】
前記導光部は、前記矩形の受光面における前記光の面積が前記矩形の受光面の面積の1/6以下となるように、前記回折限界以上で導光する請求項1に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項4】
源と、
一様の感度を有する矩形の受光面を有し、受光した光の強度を表す単一の検出信号を出力する受光部と、
記光源が発光した光を前記受光部に導く導光部と、
を備え、
前記矩形の受光面に照射された光の当該受光面における形状は矩形であり、
前記受光部から出力される前記検出信号に基づき、前記導光部により形成される光路に介在する測定対象物の濃度を測定する光学式濃度測定装置であって、
前記導光部は、前記矩形の受光面における前記光の面積が前記矩形の受光面の面積の2倍以上4倍以下となるように、導光する光学式濃度測定装置。
【請求項5】
前記導光部は、前記矩形の受光面における前記光の面積が前記矩形の受光面の面積の3倍以下となるように導光する請求項4に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項6】
前記導光部は、反射のみにより導光する請求項1から請求項のいずれか一項に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項7】
記光源の発光面の上部または前記受光部の受光面の上部に、予め設定した波長帯の光のみを透過する光学フィルタを有する請求項1から請求項のいずれか一項に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項8】
記光源及び前記受光部は、表面実装型の素子である請求項1から請求項のいずれか一項に記載の光学式濃度測定装置。
【請求項9】
前記受光部から出力される前記検出信号に基づき、前記導光部により形成される光路に介在する測定対象物の濃度を算出する演算部を備える請求項1から請求項のいずれか一項に記載の光学式濃度測定装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明の一実施形態に係る光学式濃度測定装置は、光源と、一様の感度を有する矩形の受光面を有し受光した光の強度を表す単一の検出信号を出力する受光部と、前記光源が発光した光を前記受光部に導く導光部と、を備え、前記矩形の受光面に照射された光の当該受光面における形状は矩形であり、前記受光部から出力される前記検出信号に基づき、前記導光部により形成される光路に介在する測定対象物の濃度を測定する光学式濃度測定装置であって、前記導光部は、前記矩形の受光面における前記光の面積が前記矩形の受光面の面積の1/2以下となるように、回折限界以上で導光することを特徴としている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
また、本発明の他の実施形態に係る光学式濃度測定装置は、光源と、一様の感度を有する矩形の受光面を有し受光した光の強度を表す単一の検出信号を出力する受光部と、前記光源が発光した光を前記受光部に導く導光部と、を備え、前記矩形の受光面に照射された光の当該受光面における形状は矩形であり、前記受光部から出力される前記検出信号に基づき、前記導光部により形成される光路に介在する測定対象物の濃度を測定する光学式濃度測定装置であって、前記導光部は、前記矩形の受光面における前記光の面積が前記矩形の受光面の面積の2倍以上4倍以下となるように導光することを特徴としている。