(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161389
(43)【公開日】2024-11-19
(54)【発明の名称】金属製圧延シート、及び金属製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21B 1/40 20060101AFI20241112BHJP
C22C 9/00 20060101ALN20241112BHJP
C22C 9/01 20060101ALN20241112BHJP
C22C 9/02 20060101ALN20241112BHJP
C22C 9/04 20060101ALN20241112BHJP
C22C 9/05 20060101ALN20241112BHJP
C22C 9/06 20060101ALN20241112BHJP
C22C 9/10 20060101ALN20241112BHJP
C22C 18/02 20060101ALN20241112BHJP
【FI】
B21B1/40
C22C9/00
C22C9/01
C22C9/02
C22C9/04
C22C9/05
C22C9/06
C22C9/10
C22C18/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024118009
(22)【出願日】2024-07-23
(62)【分割の表示】P 2023082504の分割
【原出願日】2019-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】辻江 健太
(57)【要約】
【課題】オイルピットに起因する破断に対する抵抗性と屈曲に対する耐久性とのバランスに優れた金属製品を切り出すのに好適な金属製圧延シートを提供する。
【解決手段】第1の方向に延びる辺と、前記第1の方向に直交する第2の方向に延びる辺を有する矩形状の金属製圧延シートであって、オイルピットの長手方向と前記第1の方向との間の角度A
1及びオイルピットの長手方向と前記第2の方向との間の角度A
2が何れも非直角である金属製圧延シート。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に延びる辺と、前記第1の方向に直交する第2の方向に延びる辺を有する矩形状の金属製圧延シートであって、オイルピットの長手方向と前記第1の方向との間の角度A1及びオイルピットの長手方向と前記第2の方向との間の角度A2が何れも非直角である金属製圧延シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は金属製圧延シートに関する。また、本発明は金属製圧延シートから金属製品を切り出すことを含む金属製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
板ばね、コネクタ及び端子等の金属製品は、所定の板厚に圧延加工した金属シートを所定の形状にプレス打ち抜き加工する工程を経て製造されるのが一般的である。プレス打ち抜き加工は、後工程(プレスによる折り曲げや他部品との接続)を容易にするために、
図3に示すように、金属製品(301)の長手方向が金属シート(300)の長手方向(典型的には圧延方向)に直交するように実施されることが通常である(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-206942号公報
【特許文献2】特開2015-60770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属シート(300)を圧延加工によって製造する場合、生産効率の観点から、金属シート(300)の長手方向が圧延方向と一致するのが一般的である。この場合、金属シート(300)から切り出す金属製品(301)の長手方向が、金属シート(300)の長手方向に直交すると、当該長手方向に延びる部分を、曲げ軸が当該長手方向に直交するように屈曲させたときの耐久性、たとえばプレス加工においてBADWAYの曲げ性が低下しやすいという問題がある。このため、金属製品(301)の長手方向に延びる部分の屈曲性を向上させるためには、金属シート(300)から切り出す金属製品(301)の長手方向が、金属シート(301)の長手方向に平行であることが望ましいと考えられる。
【0005】
一方、圧延加工によって製造される金属シート(300)には潤滑油に起因する、オイルピット(306)と呼ばれる圧延方向に直交する方向に延びた筋状の窪みが不可避的に発生する。この場合に、金属シート(300)から切り出す金属製品(301)の長手方向が、金属シート(300)の長手方向に平行だと、金属製品(301)の長手方向がオイルピット(306)の長手方向と直交するようになる。しかしながら、金属製品(301)の長手方向がオイルピット(306)の長手方向と直交すると、今度はオイルピット(306)を起点として破断しやすくなるという問題がある。オイルピットを起点とする破断として、たとえば、電子機器を地上に落下させたときの衝撃による破断、たわみを繰り返し与えたときの金属疲労による破断などを挙げることができる。
【0006】
近年では、板ばね、コネクタ及び端子等の電子機器用の金属製品の小型化に対する要求が著しく、金属製品の薄肉化が進展するにつれて当該問題も大きくなっていくと考えられる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、一側面において、オイルピットに起因する破断に対する抵抗性と屈曲に対する耐久性とのバランスに優れた金属製品を切り出すのに好適な金属製圧延シートを提供することを課題とする。また、本発明の目的は別の一側面において、本発明に係る金属製圧延シートを用いて長手方向を有する金属製品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下に例示される。
(1)
第1の方向に延びる辺と、前記第1の方向に直交する第2の方向に延びる辺を有する矩形状の金属製圧延シートであって、オイルピットの長手方向と前記第1の方向との間の角度A1及びオイルピットの長手方向と前記第2の方向との間の角度A2が何れも非直角である金属製圧延シート。
(2)
厚みが5~100μmである(1)に記載の圧延シート。
(3)
角度A1及び角度A2が何れも5~85°である(1)又は(2)に記載の圧延シート。
(4)
銅又は銅合金製である(1)~(3)の何れか一項に記載の圧延シート。
(5)
圧延方向の引張強さが500MPa以上である(1)~(4)の何れか一項に記載の圧延シート。
(6)
長手方向を有する金属製品の製造方法であって、(1)~(5)の何れか一項に記載の圧延シートから、長手方向を第1の方向又は第2の方向に平行に切り出すことを含む長手方向を有する金属製品の製造方法。
(7)
金属製品が板ばね、コネクタ又は端子である(6)に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態に係る金属製圧延シートによれば、金属製品の長手方向が当該圧延シートの第1の方向又は第2の方向に平行になるように、当該圧延シートから金属製品を切り出したときに、金属製品の長手方向が圧延方向(オイルピットの長手方向に直交な方向)と直交しない。換言すれば、圧延方向は、金属製品の長手方向に対して斜めになる。このため、金属製品の長手方向に延びる部分を、曲げ軸が当該長手方向に直交するように屈曲させたときの耐久性が向上する。
【0010】
また、当該金属製圧延シートによれば、金属製品の長手方向が当該圧延シートの第1の方向又は第2の方向に平行になるように、当該圧延シートから金属製品を切り出したとき、金属製品の長手方向がオイルピットの長手方向と直交しない。換言すれば、オイルピットの延びる方向は、金属製品の長手方向に対して斜めになる。このため、切り出された金属製品は、オイルピットに起因する破断を受けにくくなる。
【0011】
つまり、当該金属製圧延シートを用いれば、従来行われてきたプレス打ち抜き加工等の切り出し方法を変更することなく、オイルピットに起因する破断に対する抵抗性と屈曲に対する耐久性とのバランスに優れた金属製品を製造することができるという格別の効果が得られる。また、切り出す方法に変更がないため、後工程(プレスによる折り曲げや他部品との接続)に影響を与えることもない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】金属圧延板から本発明の一実施形態に係る金属製圧延シートを切り出す方法の一例を示す模式図である。
【
図2】本発明に係る金属製圧延シートから金属製品を切り出す方法の一例を示す模式図である。
【
図3】金属製圧延シートから金属製品を切り出す従来の方法の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜、設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0014】
図1には、金属圧延板から本発明の一実施形態に係る金属製圧延シート(100)を切り出す方法の一例を示す模式図が示されている。金属圧延板(110)は、圧延方向に延びる長辺(112)と、圧延方向に直角な方向に延びる短辺(114)を有する。本実施形態に係る金属製圧延シート(100)は、金属圧延板(110)から、四辺が、長辺(112)及び短辺(114)の何れに対しても平行にならないように矩形状に切り出すことで得ることができる。金属圧延板(110)の表面には、圧延方向に直交する方向に延びるオイルピット(106)が複数形成されている。
【0015】
金属製圧延シート(100)は、第1の方向に延びる辺(102)と、前記第1の方向に直交する第2の方向に延びる辺(104)を有する矩形状の金属製圧延シートであって、オイルピット(106)の長手方向と前記第1の方向との間の角度A1(0~90°の範囲とする。)、及びオイルピットの長手方向と前記第2の方向との間の角度A2(0~90°の範囲とする。)が何れも非直角である。第1の方向に延びる辺(102)の長さは、第2の方向に延びる辺(104)の長さと同じであるかそれよりも長くすることができる。金属製圧延シート(100)の第1の方向に延びる辺と第2の方向に延びる辺よりも長いことで、長尺の金属製圧延シート(100)となるため、一枚の金属製圧延シート(100)から得られる金属製品の数を増加させやすいという利点が得られる。なお、A1+A2=90°である。
【0016】
金属製圧延シート(100)から金属製品(108)を切り出す場合、金属製品(108)の長手方向に延びる部分(108a)は、第1の方向又は第2の方向に平行な方向に延びるように、金属製品の外形をパターニングすることが多い。例えば、金属製品(108)の長手方向に延びる部分(108a)が、第1の方向に平行な方向に延びている場合、オイルピットに起因する破断に対する抵抗性を向上させるには、角度A1はできるだけ小さい方がよいが、屈曲に対する耐久性を向上させるには、角度A1はできるだけ大きい方がよい。また、金属製品(108)の長手方向に延びる部分(108a)が、第2の方向に平行な方向に延びている場合、オイルピットに起因する破断に対する抵抗性を向上させるには、角度A2はできるだけ小さい方がよいが、屈曲に対する耐久性を向上させるには、角度A2はできるだけ大きい方がよい。
【0017】
このため、オイルピットに起因する破断に対する抵抗性と屈曲に対する耐久性のバランスに優れた金属製品を製造するためには、角度A1及び角度A2は、何れも5~85°の範囲にあることが好ましく、10~80°の範囲にあることがより好ましく、20~70°の範囲にあることが更により好ましく、30~60°の範囲にあることが更により好ましく、40~50°の範囲にあることが最も好ましい。また、角度A1及び角度A2をこのような範囲にすることによって、金属製品の長手方向に延びる主要部分について、オイルピットに起因する破断に対する抵抗性と屈曲に対する耐久性のバランスが向上するのはもちろんのこと、金属製品が長手方向に直角な方向に延びる副次部分を有する場合にも、当該副次部分について、オイルピットに起因する破断に対する抵抗性と屈曲に対する耐久性のバランスが向上する。
【0018】
なお、本開示において、金属製品の長手方向とは、切り出した後の当該金属製品を取り囲むことのできる最大の長方形における長手方向(長辺の延びる方向)を指す。
【0019】
金属製圧延シート(100)の厚みは、薄い方がオイルピットによる破断の影響が大きくなるため、本発明による効果が大きくなる。このことから、金属製圧延シート(100)の厚みの上限は、100μm以下とすることが好ましく、80μm以下とすることがより好ましく、60μm以下とすることが更により好ましく、40μm以下とすることが更により好ましい。但し、金属製圧延シート(100)の厚みは、薄すぎるとハンドリング性が悪化することから、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、15μm以上であることが更により好ましい。
【0020】
金属製圧延シート(100)の材質には特に制限はない。例えば、銅、銅合金、アルミ、アルミ合金、鉄、鉄合金、ステンレス、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、金、金合金、銀、銀合金、白金族、白金族合金、クロム、クロム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、タングステン、タングステン合金、モリブデン、モリブデン合金、鉛、鉛合金、タンタル、タンタル合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金、錫、錫合金、インジウム、インジウム合金、亜鉛、又は、亜鉛合金等が挙げられ、さらに公知の金属材料も使用することができる。また、JIS規格やCDA等で規格されている金属材料も使用することができる。
【0021】
金属の中でも、板ばね、コネクタ及び端子等の電子部品を製造する場合、強度及び導電率のバランスを考慮すると、銅又は銅合金製であることが好ましい。
【0022】
銅としては、典型的には、JIS H0500やJIS H3100に規定されるリン脱酸銅(JIS H3100 合金番号C1201、C1220、C1221)、無酸素銅(JIS H3100 合金番号C1020)及びタフピッチ銅(JIS H3100 合金番号C1100)などの95質量%以上、より好ましくは99.90質量%以上の純度の銅が挙げられる。Sn、Ag、Au、Co、Cr、Fe、In、Ni、P、Si、Te、Ti、Zn、B、MnおよびZrの中の一種以上を合計で0.001~4.0質量%含有する銅又は銅合金とすることもできる。
【0023】
銅合金としては、更に、チタン銅、りん青銅、コルソン合金、丹銅、黄銅、洋白、その他銅合金等が挙げられる。また、銅または銅合金としてはJIS H 3100~JIS H3510、JIS H 5120、JIS H 5121、JIS C 2520~JIS C 2801、JIS E 2101~JIS E 2102に規格されている銅または銅合金も、本発明に用いることができる。なお、本明細書においては特に断らない限りは、金属の規格を示すために挙げたJIS規格は2001年度版のJIS規格を意味する。
【0024】
チタン銅は典型的には、Ti:0.5~5.0質量%を含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる組成を有する。チタン銅は更に、Fe、Co、V、Nb、Mo、B、Ni、P、Zr、Mn、Zn、Si、Mg及びCrの中の1種類以上を合計で2.0質量%以下含有しても良い。
【0025】
りん青銅は典型的には、りん青銅とは銅を主成分としてSn及びこれよりも少ない質量のPを含有する銅合金のことを指す。一例として、りん青銅はSnを3.5~11質量%、Pを0.03~0.35質量%含有し、残部銅及び不可避的不純物からなる組成を有する。りん青銅は、Ni、Zn等の元素を合計で1.0質量%以下含有しても良い。
【0026】
コルソン合金は典型的にはSiに加えてSiと化合物を形成する元素(例えば、Ni、Co及びCrの何れか一種以上)が添加され、母相中に第二相粒子として析出する銅合金のことをいう。一例として、コルソン合金はNiを1.0~5.0質量%、Siを0.2~1.6質量%含有し、残部銅及び不可避的不純物から構成される組成を有する。別の一例として、コルソン合金はNiを1.0~5.0質量%、Siを0.2~1.6質量%、Crを0.03~0.5質量%含有し、残部銅及び不可避的不純物から構成される組成を有する。更に別の一例として、コルソン合金はNiを1.0~5.0質量%、Siを0.2~1.6質量%、Coを0.1~3.5質量%含有し、残部銅及び不可避的不純物から構成される組成を有する。更に別の一例として、コルソン合金はNiを1.0~5.0質量%、Siを0.2~1.6質量%、Coを0.1~3.5質量%、Crを0.03~0.5質量%含有し、残部銅及び不可避的不純物から構成される組成を有する。更に別の一例として、コルソン合金はSiを0.2~1.6質量%、Coを0.1~3.5質量%含有し、残部銅及び不可避的不純物から構成される組成を有する。コルソン合金には随意にその他の元素(例えば、Mg、Sn、B、Ti、Mn、Ag、P、Zn、As、Sb、Be、Zr、Al及びFe)が添加されてもよい。これらその他の元素は総計で4.0質量%程度まで添加するのが一般的である。例えば、更に別の一例として、コルソン合金はNiを1.0~5.0質量%、Siを0.2~1.6質量%、Snを0.01~2.0質量%、Znを0.01~2.0質量%含有し、残部銅及び不可避的不純物から構成される組成を有する。
【0027】
本発明において、丹銅とは、銅と亜鉛との合金であり亜鉛を1~20質量%、より好ましくは亜鉛を1~10質量%含有する銅合金のことをいう。また、丹銅は錫を0.1~1.0質量%含んでも良い。
【0028】
本発明において、黄銅とは、銅と亜鉛との合金で、特に亜鉛を20質量%以上含有する銅合金のことをいう。亜鉛の上限は特には限定されないが60質量%以下、好ましくは45質量%以下、あるいは40質量%以下である。
【0029】
本発明において、洋白とは銅を主成分として、銅を60質量%から75質量%、ニッケルを8.5質量%から19.5質量%、亜鉛を10質量%から30質量%含有する銅合金のことをいう。
【0030】
本発明において、その他銅合金とはZn、Sn、Ni、Mg、Fe、Si、P、Co、Mn、Zr、CrおよびTiの内一種または二種以上を合計で8.0質量%以下含み、随意的にその他の元素を20質量%以下含み、又は随意的にその他の元素を10質量%以下含み残部が不可避的不純物と銅からなる銅合金をいう。なお、その他の元素は特に制限されるものではない。
【0031】
アルミ及びアルミ合金としては、例えばAlを40質量%以上含む、あるいは80質量%以上含む、あるいは99質量%以上含むものを使用することができる。例えば、JIS H 4000~JIS H 4180、JIS H 5202、JIS H 5303あるいはJIS Z 3232~JIS Z 3263に規格されているアルミ及びアルミ合金を用いることができる。例えば、JIS H 4000に規格されているアルミニウムの合金番号1085、1080、1070、1050、1100、1200、1N00、1N30に代表される、Al:99.00質量%以上のアルミニウム又はその合金等を用いることができる。
【0032】
ニッケル及びニッケル合金としては、例えばNiを40質量%以上含む、あるいは80質量%以上含む、あるいは99.0質量%以上含むものを使用することができる。例えば、JIS H 4541~JIS H 4554、JIS H 5701またはJIS G 7604~JIS G 7605、JIS C 2531に規格されているニッケルまたはニッケル合金を用いることができる。また、例えば、JIS H4551に記載の合金番号NW2200、NW2201に代表される、Ni:99.0質量%以上のニッケル又はその合金等を用いることができる。
【0033】
鉄及び鉄合金としては、例えばステンレス、軟鋼、炭素鋼、鉄ニッケル合金、鋼等を用いることができる。例えばJIS G 3101~JIS G 7603、JIS C 2502~JIS C 8380、JIS A 5504~JIS A 6514またはJIS E 1101~JIS E 5402-1に記載されている鉄または鉄合金を用いることができる。ステンレスは、SUS 301、SUS 304、SUS 310、SUS 316、SUS 430、SUS 631(いずれもJIS規格)などを用いることができる。軟鋼は、炭素が0.15質量%以下の軟鋼を用いることができ、JIS G3141に記載の軟鋼等を用いることができる。鉄ニッケル合金は、Niを35~85質量%含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、具体的には、JIS C2531に記載の鉄ニッケル合金等を用いることができる。
【0034】
亜鉛及び亜鉛合金としては、例えばZnを40質量%以上含む、あるいは80質量%以上含む、あるいは99.0質量%以上含むものを使用することができる。例えば、JIS H 2107~JIS H 5301に記載されている亜鉛または亜鉛合金を使用することができる。
【0035】
鉛及び鉛合金としては、例えばPbを40質量%以上含む、あるいは80質量%以上含む、あるいは99.0質量%以上含むものを使用することができる。例えば、JIS H 4301~JIS H 4312、またはJIS H 5601に規格されている鉛または鉛合金を用いることができる。
【0036】
マグネシウム及びマグネシウム合金としては、例えばMgを40質量%以上含む、あるいは80質量%以上含む、あるいは99.0質量%以上含むものを使用することができる。例えば、JIS H 4201~JIS H 4204、JIS H 5203~JIS H 5303、JIS H 6125に規格されているマグネシウム及びマグネシウム合金を用いることができる。
【0037】
タングステン及びタングステン合金としては、例えばWを40質量%以上含む、あるいは80質量%以上含む、あるいは99.0質量%以上含むものを使用することができる。例えば、JIS H 4463に規格されているタングステン及びタングステン合金を用いることができる。
【0038】
モリブデン及びモリブデン合金としては、例えばMoを40質量%以上含む、あるいは80質量%以上含む、あるいは99.0質量%以上含むものを使用することができる。
【0039】
チタン及びチタン合金としては、例えばTiを40質量%以上含む、あるいは80質量%以上含む、あるいは99.0質量%以上含むものを使用することができる。例えば、JIS H 4600~JIS H 4675、JIS H 5801に規格されているチタン及びチタン合金を用いることができる。
【0040】
タンタル及びタンタル合金としては、例えばTaを40質量%以上含む、あるいは80質量%以上含む、あるいは99.0質量%以上含むものを使用することができる。例えば、JIS H 4701に規格されているタンタル及びタンタル合金を用いることができる。
【0041】
ジルコニウム及びジルコニウム合金としては、例えばZrを40質量%以上含む、あるいは80質量%以上含む、あるいは99.0質量%以上含むものを使用することができる。例えば、JIS H 4751に規格されているジルコニウム及びジルコニウム合金を用いることができる。
【0042】
錫及び錫合金としては、例えばSnを40質量%以上含む、あるいは80質量%以上含む、あるいは99.0質量%以上含むものを使用することができる。例えば、JIS H 5401に規格されている錫及び錫合金を用いることができる。
【0043】
インジウム及びインジウム合金としては、例えばInを40質量%以上含む、あるいは80質量%以上含む、あるいは99.0質量%以上含むものを使用することができる。
【0044】
クロム及びクロム合金としては、例えばCrを40質量%以上含む、あるいは80質量%以上含む、あるいは99.0質量%以上含むものを使用することができる。
【0045】
銀及び銀合金としては、例えばAgを40質量%以上含む、あるいは80質量%以上含む、あるいは99.0質量%以上含むものを使用することができる。
【0046】
金及び金合金としては、例えばAuを40質量%以上含む、あるいは80質量%以上含む、あるいは99.0質量%以上含むものを使用することができる。
【0047】
白金族とはルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金の総称である。白金族及び白金族合金としては、例えばPt、Os、Ru、Pd、Ir及びRhの元素群から選択される少なくとも1種以上の元素を40質量%以上含む、あるいは80質量%以上含む、あるいは99.0質量%以上含むものを使用することができる。
【0048】
一実施形態において、金属製圧延シート(100)は、圧延方向の引張強さが500MPa以上であり、好ましくは800MPa以上であり、より好ましくは1100MPa以上である。圧延方向の引張強さが500MPa以上であることにより、高い接圧を有する板ばねを設計することができるという利点が得られる。金属製圧延シート(100)の引張強さに特段の上限は設定されないが、製造コストを考慮すると、2000MPa以下であるのが好ましく、1500MPa以下であることがより好ましい。本開示において、引張強さは、JIS Z2241:2011に規定する金属材料引張試験に準拠して測定する。
【0049】
金属製圧延シート(100)から、種々の金属製品を切り出して製造することが可能である。切り出し方法には特に制限はないが、プレス打ち抜き加工、エッチング加工、レーザー加工、ワイヤー放電加工(通称、「ワイヤーカット」ともいう。)が挙げられ、この中でも低いコストおよび高い生産性の理由によりプレス打ち抜き加工が好ましい。本発明の一実施形態によれば、金属製圧延シート(100)から、長手方向を第1の方向又は第2の方向に平行に切り出すことを含む長手方向を有する金属製品の製造方法が提供される。
【0050】
金属製品としては、例えば、板ばね、コネクタ(FPCコネクタ、サーバー用コネクタ等)、端子、スイッチ、ソケット、ジャック、リレーが挙げられる。
【0051】
金属製品には、必要に応じて、めっき、化学研磨、陽極酸化処理及び化成処理等の種々の表面処理を行うことができる。表面処理は金属製圧延シートから金属製品形状を切り出す前に行ってもよいし、金属製品形状を切り出した後に行ってもよい。
【符号の説明】
【0052】
100 金属製圧延シート
102 第1の方向に延びる辺
104 第2の方向に延びる辺
106 オイルピット
108 金属製品
108a 金属製品の長手方向に延びる部分
110 金属圧延板
112 長辺
114 短辺
300 シート
301 金属製品
306 オイルピット