(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161690
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】ナノセルロース組成物、繊維及びシート、並びに繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08B 37/00 20060101AFI20241113BHJP
D01F 2/00 20060101ALI20241113BHJP
C08B 15/04 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
C08B37/00 P
D01F2/00 Z
C08B15/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076584
(22)【出願日】2023-05-08
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、未来社会創造事業「ポリマーグラフトによるNFBCの表面修飾」委託研究、産業技術力強化法第17 条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】田島 健次
(72)【発明者】
【氏名】辻崎 晴人
【テーマコード(参考)】
4C090
4L035
【Fターム(参考)】
4C090AA01
4C090AA03
4C090BA24
4C090BA34
4C090BA36
4C090BC15
4C090CA18
4L035AA04
4L035BB46
4L035DD13
(57)【要約】
【課題】優れた引張特性を有するシート若しくは繊維を得ることが可能なナノセルロース組成物、かかるナノセルロース組成物を紡糸してなる繊維、及びかかる繊維の製造方法、又はかかるナノセルロース組成物を成形してなるシートを提供すること。
【解決手段】平均繊維長が10μm以上であるナノセルロース、及び平均繊維長が1μm以下であるナノセルロースを含有するナノセルロース組成物であって、前記ナノセルロース組成物における平均繊維長が10μm以上であるナノセルロース及び平均繊維長が1μm以下であるナノセルロースの質量比が98:2~2:98である、ナノセルロース組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均繊維長が10μm以上であるナノセルロース、及び平均繊維長が1μm以下であるナノセルロースを含有するナノセルロース組成物であって、
前記ナノセルロース組成物における平均繊維長が10μm以上であるナノセルロース及び平均繊維長が1μm以下であるナノセルロースの質量比が98:2~2:98である、ナノセルロース組成物。
【請求項2】
前記平均繊維長が10μm以上であるナノセルロースが、バクテリア合成セルロースを含む、請求項1に記載のナノセルロース組成物。
【請求項3】
前記平均繊維長が10μm以上であるナノセルロース、及び前記平均繊維長が1μm以下であるナノセルロースが、表面にカルボキシ基を有する、請求項1に記載のナノセルロース組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のナノセルロース組成物を紡糸してなる繊維。
【請求項5】
広角X線回折法におけるセルロースIα型結晶の(110)面及びセルロースIβ型結晶の(200)面の回析強度から求める、紡糸方向の配向度が65%以上である、請求項4に記載の繊維。
【請求項6】
価数が2価以上の陽イオンを含有する凝固液を用いる、湿式紡糸法による請求項4に記載の繊維の製造方法。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか一項に記載のナノセルロース組成物を成形してなるシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノセルロース組成物、繊維及びシート、並びに繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノセルロースは、セルロースを主成分とする、ナノサイズの材料である。ナノセルロースは、軽量且つ高強度である等といった特性を有するため、種々の工業的な応用が期待されている。
【0003】
ナノセルロースには、機械的処理法、TEMPO酸化法、水中対向衝突法等によりパルプ等を解繊処理して得ることができるセルロースナノファイバーや、発酵法により得ることができるバクテリア合成ナノセルロース等、様々な種類が存在する。例えば、特許文献1には、機械強度等に優れるバクテリア合成ナノセルロースが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ナノセルロースは他の材料と組み合わせて用いることもできるが、ナノセルロースを主成分とした繊維やシートを形成することができれば、工業的に利用できる可能性がある。そこで、本発明者らが種々のナノセルロースについて検討したところ、従来知られている一種類のナノセルロースから形成される繊維やシートでは、強度の点で改善の余地があることが明らかとなった。
【0006】
上記事情に鑑み本発明は、優れた引張特性を有するシート若しくは繊維を得ることが可能なナノセルロース組成物、かかるナノセルロース組成物を紡糸してなる繊維、及びかかる繊維の製造方法、又はかかるナノセルロース組成物を成形してなるシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、以下の[1]~[3]に記載のナノセルロース組成物、[4]、[5]に記載の繊維、[6]に記載の繊維の製造方法、[7]に記載のシートを提供する。
[1]
平均繊維長が10μm以上であるナノセルロース、及び平均繊維長が1μm以下であるナノセルロースを含有するナノセルロース組成物であって、
上記ナノセルロース組成物における平均繊維長が10μm以上であるナノセルロース及び平均繊維長が1μm以下であるナノセルロースの質量比が98:2~2:98である、ナノセルロース組成物。
[2]
上記平均繊維長が10μm以上であるナノセルロースが、バクテリア合成セルロースを含む、[1]に記載のナノセルロース組成物。
[3]
上記平均繊維長が10μm以上であるナノセルロース、及び上記平均繊維長が1μm以下であるナノセルロースが、表面にカルボキシ基を有する、[1]又は[2]に記載のナノセルロース組成物。
[4]
[1]~[3]のいずれかに記載のナノセルロース組成物を紡糸してなる繊維。
[5]
広角X線回折法におけるセルロースIα型結晶の(110)面及びセルロースIβ型結晶の(200)面の回析強度から求める、紡糸方向の配向度が65%以上である、[4]に記載の繊維。
[6]
価数が2価以上の陽イオンを含有する凝固液を用いる、湿式紡糸法による[4]又は[5]に記載の繊維の製造方法。
[7]
[1]~[3]のいずれかに記載のナノセルロース組成物を成形してなるシート。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた引張特性を有するシート若しくは繊維を得ることが可能なナノセルロース組成物、かかるナノセルロース組成物を紡糸してなる繊維、及びかかる繊維の製造方法、又はかかるナノセルロース組成物を成形してなるシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】各種ナノセルロースの繊維長及び繊維径の分布曲線である。
【
図2】各種ナノセルロース組成物を紡糸してなる繊維の二次元広角X線回析像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、数値範囲をX~Yと示すときは、X以上Y以下を意味する。例えば、「5~100nm」は5nm以上100nm以下を意味する。また、本明細書において例示する材料、成分又は方法は特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。平均繊維長及び平均繊維径は、特に断らない限り、それぞれ長さ加重平均繊維長及び長さ加重平均繊維径を意味する。
【0011】
[ナノセルロース組成物]
本実施形態に係るナノセルロース組成物は、平均繊維長が10μm以上であるナノセルロース、及び平均繊維長が1μm以下であるナノセルロースを含有する。本実施形態に係るナノセルロース組成物における平均繊維長が10μm以上であるナノセルロースと、平均繊維長が1μm以下であるナノセルロースとの含有量の質量比は、2:98~98:2である。
【0012】
かかるナノセルロース組成物によれば、優れた引張特性を有する繊維及び/又はシートを得ることができる。その理由は、必ずしも明らかでないが、本発明者らは、平均繊維長が10μm以上であるナノセルロースの三次元構造の隙間に、平均繊維長が1μm以下であるナノセルロースが充填されることで、密な構造が形成されることがその一因であると考えている。
【0013】
本実施形態に係るナノセルロース組成物における平均繊維長が10μm以上であるナノセルロースと、平均繊維長が1μm以下であるナノセルロースとの含有量の質量比は、ナノセルロース組成物から得られる繊維及び/又はシートの引張特性をより向上させる観点から、5:95~95:5であることが好ましく、10:90~90:10であることがより好ましく、20:80~80:20であることがさらに好ましく、40:60~60:40であることが特に好ましい。
【0014】
本実施形態に係るナノセルロース組成物は、平均繊維長が10μm以上であるナノセルロース、及び平均繊維長が1μm以下であるナノセルロースからなるものであってもよく、分散媒、及びその他の成分を含むものであってもよい。本実施形態に係るナノセルロース組成物は、分散媒を含む場合、ゲル状であってもよい。
【0015】
分散媒としては特に制限されず、本実施形態に係るナノセルロース組成物の用途等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、水道水、蒸留水、イオン交換水、超純水(Milli-Q水(Milli-Q水製造装置により得られる超純水、メルク社)を含む)等の水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2-メチルプロピルアルコール、2-メチル-2-プロパノール等のアルコール系分散媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系分散媒;酢酸エチル等のエステル系分散媒;ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系分散媒;N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系分散媒;ジメチルスルホキシド等の含硫黄系分散媒;ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系分散媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン等の脂環族炭化水素系分散媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系分散媒等が挙げられる。これらの中で、取り扱い性等の観点から、水が好ましく、超純水がより好ましい。
【0016】
本実施形態に係るナノセルロース組成物が分散媒を含む場合、本実施形態に係るナノセルロース組成物における固形分の含有量は、特に制限されず、本実施形態に係るナノセルロース組成物の用途に応じて適宜決定すればよいが、例えば、0.001~20質量%であってもよく、0.01~10質量%であってもよい。
【0017】
その他の成分としては、特に制限されず、本実施形態に係るナノセルロース組成物の用途等に応じて適宜決定すればよく、例えば、上述のナノセルロース以外のナノセルロース;ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾエート系化合物、トリアゾール系化合物、トリアジン系化合物等の紫外線吸収剤;フェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;4-ターシャリーブチルカテコール(TBC)、ヒドロキノン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(4H-TEMPO)等の重合禁止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤を含む帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;有機フィラーや無機フィラー;樹脂改質剤;有機充填剤や無機充填剤;メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール等の防腐剤;クエン酸、リン酸、乳酸、リンゴ酸、アンモニア水、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のpH調整剤等が挙げられる。本実施形態に係るナノセルロース組成物がその他の成分を含む場合、その含有量は、固形分全量を基準として、例えば、10質量%以下であってもよく、5質量%以下であってもよい。
【0018】
本実施形態に係るナノセルロースは、セルロースを主成分とした、繊維状のナノサイズの材料である。ここで繊維状のナノサイズの材料とは、平均繊維径が1~100nmであり、且つ平均アスペクト比が5以上である材料をいう。ナノセルロースにおいては、複数のセルロース分子鎖が束になっているミクロフィブリルが形成されていてもよい。ナノセルロースとしては、特に制限されないが、例えば、セルロースナノファイバー、セルロースナノクリスタル(セルロースナノウィスカーを含む)、バクテリア合成セルロース等が挙げられる。なお、平均アスペクト比とは、平均繊維径と平均繊維長との比(平均繊維長/平均繊維径)で表される値である。平均繊維長、及び平均繊維径は、原子間力顕微鏡を用いて求めてもよい。
【0019】
セルロースナノファイバーは、パルプ等のセルロース源を解繊処理することにより得ることができる。パルプとしては、特に制限されないが、例えば、針葉樹木材パルプ、広葉樹木材パルプ、エスパルトパルプ、マニラ麻パルプ、サイザル麻パルプ、コットンパルプ、古紙再生パルプ等が挙げられる。また、解繊処理の方法としては、特に制限されないが、例えば、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル)酸化法、化学修飾法(リン酸化法、硫酸化法、カルボキシメチル化法等)等の化学的処理法;グラインダー法、水中対向衝突(ACC)法、高圧ホモジナイザー法、ディスクミル法、ビーズミル法、ボールミル法等の物理的処理法等が挙げられる。
【0020】
セルロースナノクリスタルは、パルプ等のセルロース源を加水分解処理することにより得ることができる。パルプとしては、特に制限されないが、例えば、上述したセルロースナノファイバーにおいて例示したものを用いることができる。また、加水分解の方法としては、酸・酵素加水分解法等が挙げられる。
【0021】
バクテリア合成セルロースは、発酵法により得ることができる。発酵法は、セルロース生産菌を培養することを含む。セルロース生産菌としては、特に制限されないが、例えば、グルコンアセトバクター属、アグロバクテリウム属、リゾビウム属、サルシナ属、シュードモナス属、アクロモバクター属、アルカリゲネス属、エアロバクター属、アゾトバクター属等が挙げられる。また、バクテリア合成セルロースの他の材料との混合性を向上させる観点から、培地に多糖類を添加することで、表面に多糖類が吸着したバクテリア合成セルロースを得てもよい。多糖類としては、特に制限されないが、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。カルボキシメチルセルロースが吸着したバクテリア合成セルロースにおける、カルボキシメチルセルロースの含有量(吸着量)は、特に制限されないが、例えば、10~20質量%であってもよい。また、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが吸着したバクテリア合成セルロースにおける、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量(吸着量)は、特に制限されないが、例えば、20~40質量%であってもよい。
【0022】
ナノセルロースは、表面にカルボキシ基を有することが好ましい。表面にカルボキシ基を有するナノセルロースを用いると、価数が2価以上の陽イオンを含有する凝固液を用いる、湿式紡糸法により紡糸される場合、価数が2価以上の陽イオンにより架橋されることができ、得られる繊維の引張特性をさらに向上させることができる。表面にカルボキシ基を有するナノセルロースは、例えば、TEMPO酸化法、カルボキシメチル化法、カルボキシメチルセルロースを含有する培地を用いた発酵法等により得ることができる。
【0023】
本実施形態に係るナノセルロース組成物は、そのまま用いてもよいが、シート(フィルムを含む)、繊維、成型体、封入体等の形状に加工して用いることが好ましい。
【0024】
(平均繊維長が10μm以上であるナノセルロース)
本実施形態に係る平均繊維長が10μm以上であるナノセルロースは、平均繊維長が10μm~100μmであることが好ましく、10μm~50μmであることがより好ましく、10μm~30μmであることがさらに好ましく、15μm~20μmであることが特に好ましい。また、本実施形態に係る平均繊維長が10μm以上であるナノセルロースは、平均繊維径が、1~30nmであってもよく、5~15nmであってもよく、また、平均アスペクト比が、100以上であってもよく、500以上であってもよく、1000以上であってもよい。なお、平均アスペクト比とは、平均繊維径と平均繊維長との比(平均繊維長/平均繊維径)で表される値である。平均繊維長、及び平均繊維径は、原子間力顕微鏡を用いて求めてもよい。
【0025】
本実施形態に係る平均繊維長が10μm以上であるナノセルロースは、バクテリア合成セルロースを含むことが好ましい。また、本実施形態に係る平均繊維長が10μm以上であるナノセルロースは、本実施形態に係るナノセルロース組成物が、価数が2価以上の陽イオンを含有する凝固液を用いる、湿式紡糸法により紡糸される場合、得られる繊維の引張特性をさらに向上できる観点から、表面にカルボキシ基を有するナノセルロースを含むことが好ましく、表面にカルボキシメチルセルロースが吸着したバクテリア合成セルロースを含むことがより好ましい。
【0026】
本実施形態に係る平均繊維長が10μm以上であるナノセルロースは、他の材料との混合性を向上させる観点から、平均繊維長が10μm以上であるナノセルロースを0.1質量%含有する水分散液とした場合の波長500nmの光の透過率が35%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。光透過率は、吸光光度計によって測定されてもよい。
【0027】
(平均繊維長が1μm以下であるナノセルロース)
本実施形態に係る平均繊維長が1μm以下であるナノセルロースは平均繊維長が0.05μm~1μmであることが好ましく、0.1μm~0.8μmであることがより好ましく、0.3μm~0.7μmであることがさらに好ましい。また、本実施形態に係る平均繊維長が1μm以下であるナノセルロースは、平均繊維径が、0.5nm~20nmであってもよく、1nm~10nmであってもよく、また、平均アスペクト比が、10以上であってもよく、100以上であってもよい。なお、平均アスペクト比とは、平均繊維径と平均繊維長との比(平均繊維長/平均繊維径)で表される値である。平均繊維長、及び平均繊維径は、原子間力顕微鏡を用いて求めてもよい。
【0028】
本実施形態に係る平均繊維長が1μm以下であるナノセルロースは、セルロースナノファイバーを含むことが好ましい。また、本実施形態に係る平均繊維長が1μm以下であるナノセルロースは、ナノセルロース組成物が、価数が2価以上の陽イオンを含有する凝固液を用いる、湿式紡糸法により紡糸される場合、得られる繊維の引張特性をさらに向上できる観点から、表面にカルボキシ基を有するナノセルロースを含むことが好ましく、TEMPO酸化法又はカルボキシメチル化法により得られたセルロースナノファイバーを含むことがより好ましく、TEMPO酸化法により得られたセルロースナノファイバー(すなわち、TEMPO酸化セルロースナノファイバー)を含むことがさらに好ましい。
【0029】
[ナノセルロース組成物を紡糸してなる繊維]
本実施形態に係る繊維は、特に制限されないが、例えば、本実施形態の一側面に係るナノセルロース組成物を紡糸してなる繊維であってもよい。本実施形態に係る繊維の繊維径は、特に制限されないが、例えば、0.1mm~10mmであってもよく、1mm~5mmであってもよい。
【0030】
本実施形態に係る繊維の配向度は、繊維の引張特性をより向上させる観点から、65%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。繊維の配向度は、広角X線回析法におけるセルロースIα型結晶の(110)面及びセルロースIβ型結晶の(200)面の回析強度から求めることができる。通常、二次元広角X線回析像において、セルロースIα型結晶の(110)面及びセルロースIβ型結晶の(200)面に由来する回析は、同一の位置に観察される。なお、セルロースIα型結晶は三斜晶であり、セルロースIβ型結晶は単斜晶である。また、二次元広角X線回析像における、セルロースIα型結晶の(110)面及びセルロースIβ型結晶の(200)面の回析は、Moon, Robert J., et al. "Cellulose nanomaterials review:structure, properties and nanocomposites" Chemical Society Reviews 40.7(2011): 3941-3994.に準拠して求めることができる。
【0031】
本実施形態に係る繊維の配向度の求め方について、より具体的には、まず、紡糸方向に対し垂直にX線を照射して得られる二次元広角X線回析像から、セルロースIα型結晶の(110)面及びセルロースIβ型結晶の(200)面の回析強度について、方位角に対する分布曲線を求める。
次に、分布曲線におけるセルロースIα型結晶の(110)面及びセルロースIβ型結晶の(200)面の回析に由来するピークに対して、ガウス分布フィッティングを行った後、半値幅(Wh)を求め、以下の式から配向度を算出する。
配向度(%)={(180-Wh)/180}×100
【0032】
本実施形態に係る繊維は、特に制限されないが、例えば、撚糸、布地、編物、ストランド、ロープ、漉紙、不織布、フェルト、繊維強化樹脂材、粘着材、チョップドストランド、樹脂組成物フィラー、流動性調整材等に好適に用いられる。布地及び編物は、撚糸を製織することで得てもよい。ストランドは撚糸を撚ることで得てもよく、ロープはストランド等を撚ることで得てもよい。また、繊維強化樹脂材及び粘着材は、本実施形態に係る繊維と樹脂を複合化させることで得てもよい。チョップドストランド及び樹脂組成物フィラーは、撚糸等を裁断することで得てもよい。
【0033】
(ナノセルロース組成物を紡糸してなる繊維の製造方法)
本実施形態の一側面に係るナノセルロース組成物を紡糸する方法は、特に制限されず、例えば、湿式紡糸法、乾式紡糸法、乾式ジェット湿式紡糸法、溶融紡糸法等が挙げられ、湿式紡糸法が好ましい。
【0034】
湿式紡糸法は、特に制限されないが、例えば、ナノセルロース組成物を含有する紡糸液を調製し、ノズルを通じて紡糸液を凝固浴槽中の凝固液に押し出し、固化する方法であってもよい。
【0035】
紡糸液としては、特に制限されないが、例えば、分散媒が水である本実施形態に係るナノセルロース組成物を用いることができ、必要に応じて、本実施形態に係るナノセルロース組成物における固形分全量の含有量が0.1~5質量%となるように水を添加してもよい。
【0036】
紡糸液は、脱気されてもよい。脱気の方法は特に制限されないが、例えば、70℃~90℃に加熱しながら、又は70℃~90℃に加熱した後に、2500Pa~4000Paの減圧下で1分間~10分間脱気してもよい。脱気中、紡糸液を必要に応じて撹拌してもよい。脱気後は、室温(例えば25℃)まで放冷してもよい。
【0037】
ノズルを通じて紡糸液を凝固浴槽中の凝固液に押し出す際は、繊維の引張特性をさらに向上させる観点から、ナノセルロース組成物をノズルから凝固液中に鉛直下向きに押し出し、かつ、ノズルの押し出し部から凝固浴槽の底までの距離を0.5m以上、又は1m以上とすることが好ましい。
【0038】
ノズルの直径及びノズルからの射出速度は、特に制限されないが、例えば、ノズルの内径を1mm~3mmとした場合、ノズルからの射出速度を0.5mL/min~2.5mL/minとすることが好ましい。
【0039】
凝固液は、価数が2価以上の陽イオンを含むことが好ましく、価数が2価以上の陽イオンの飽和溶液であることがより好ましい。凝固液が価数が2価以上の陽イオンを含んでいる場合、ナノセルロース組成物が表面にカルボキシ基を有するナノセルロースを含んでいれば、これらが架橋されることで得られる繊維の引張特性をより向上することができる。価数が2価以上の陽イオンとしては、特に制限されないが、例えば、金属イオン、ポリカチオン等が挙げられる。金属イオンとしては、例えば、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン等のアルカリ土類金属イオン鉄(II)イオン、銅(II)イオン、テトラアンミン銅(II)イオン等の遷移金属に由来する価数が2価の陽イオン;アルミニウムイオン、鉄(III)イオン等の遷移金属に由来する価数が3価の陽イオン;チタン(IV)イオン等の遷移金属に由来する価数が4価以上の陽イオン等が挙げられる。ポリカチオンとしては、例えば、エチレンジアミン塩、ヘキサメチレンジアミン塩、エチルへキシルジアミン塩、ジエチレントリアミン塩、トリエチレンテトラミン塩、テトラエチレンペンタミン塩、ペンタメチルジエチレントリアミン塩、シクロヘキサンジアミン塩、イソホロンジアミン塩、ノルボルネンジアミン塩、ビスアミノメチルシクロヘキサン塩、キシレンジアミン塩、フェニレンジアミン塩、ビフェニルジアミン塩等の直鎖状、分岐状、又は環状の脂肪族又は芳香族炭化水素ポリアミン塩類;(メタ)アクリルアミド、ジアリルジメチルアンモニウム等の含窒素単量体を(共)重合させてなる(共)重合系ポリアミン塩類;アスパラギン、グルタミン、アルギニン、ヒスチジン、リジン等のアミノ基を一分子内に複数有するアミノ酸からなるペプチド類の塩;キトサン等のアミノ多糖類の塩等が挙げられる。凝固液の溶媒は、特に制限されず、脱溶媒できるものであってもよく、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール等の炭素数1~5の低級アルコール;アセトン等が挙げられる。凝固液としては、ナノセルロース組成物が表面にカルボキシ基を有するナノセルロースを含んでいる場合、得られる繊維の引張特性をより向上することができる観点から、塩化カルシウムの飽和エタノール溶液、硫酸アルミニウムの飽和エタノール溶液等が好ましい。
【0040】
固化された繊維は、洗浄及び乾燥されてもよい。洗浄では、例えば、Milli-Q水(Milli-Q水製造装置により得られる超純水、メルク社)を用いて、30分~2時間撹拌してもよい。乾燥では、60~80℃で6~18時間テフロン(登録商標)シート上に静置してもよい。
【0041】
[ナノセルロース組成物を成形してなるシート]
本実施形態の一側面に係るナノセルロース組成物を成形してなるシートは特に制限されないが、例えば、不織布であってもよい。また、本実施形態に係るシートの厚さは、例えば、5μm~250μmであってもよく、20μm~100μmであってもよい。また、本実施形態に係るシートの厚さは、250μm~5mmであってもよく、500μm~2mmであってもよい。
【0042】
本実施形態に係るシートは、特に制限されないが、例えば、抄紙材、記録媒体材、服飾材、断熱材、吸音材、ろ過材、吸着材、保護材、貼合材、粘着材、強度付与材、衝撃吸収材、摩擦防止材、摩耗防止材、防滑材等に用いることができる。
【0043】
(ナノセルロース組成物を成形してなるシートの製造方法)
本実施形態に係るナノセルロース組成物を成形してシートとする方法は、特に制限されず、例えば、湿式法(抄紙法を含む)、乾式法等が挙げられる。
【0044】
湿式法は、特に制限されないが、例えば、分散媒が水である本実施形態に係るナノセルロース組成物をろ過することでナノセルロース組成物から水分を減じた後、8~12MPa、室温(例えば25℃)の脱水プレス、及び8~12MPa、100~120℃の加熱プレスを施してもよい。例えば、厚さが5μm~250μmのシートを成形する場合、ナノセルロース組成物における固形分全量の含有量が0.05~0.5質量%となるようにナノセルロース組成物にMilli-Q水(Milli-Q水製造装置により得られる超純水、メルク社)を加え、15分~1時間撹拌した後、減圧ろ過を行い、3~10分の脱水プレスを2~3回行い、その後5~15分の加熱プレスを1~2回行ってもよい。また、厚さが250μm~5mmのシートを成形する場合、ナノセルロース組成物における固形分全量の含有量が0.5~5質量%となるように、必要に応じてナノセルロース組成物に水を添加することで調整した後、加圧ろ過を行い、5~15分の脱水プレスを3~5回行い、その後5~15分の加熱プレスを5~7回行ってもよい。
【実施例0045】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。また、特に断りのない限り、表中のシートの厚さ及びかさ密度、並びにシート及び繊維の引張特性は、「平均値±標準偏差」の形式で記載する。
【0046】
実施例中、ナノセルロース等についての評価、並びにシート及び繊維の製造及び評価は以下に示す方法で行った。
【0047】
<ナノセルロースの繊維長、繊維径解析>
ナノセルロースの繊維長、及び繊維径の分布曲線、並びに平均繊維長、平均繊維径、及び平均アスペクト比は、原子間力顕微鏡(NanoNaviII L-trace、日立ハイテクサイエンス社)を用いて求めた。より具体的には、マイカ基板にナノセルロースの水分散液(1質量ppm)を50μL滴下し、自然乾燥した後、測定範囲90×90μm、ダイナミック・フォース・モードで顕微鏡観察を行い、得られた観察像に対して、解析ソフト「FiberApp」を用いて画像解析を行い、繊維長、及び繊維径の分布曲線、並びに平均繊維長及び平均繊維径を求めた。平均アスペクト比は(平均繊維長/平均繊維径)を算出することにより求めた。なお、繊維長の分布曲線及び平均繊維長は200本のナノセルロース、繊維径の分布曲線及び平均繊維径は600本のナノセルロースをそれぞれ観察像から無作為に抽出し求めた。
【0048】
<バクテリア合成セルロースにおける多糖類の吸着量の定量>
カルボキシメチルセルロース又はヒドロキシプロピルセルロースが吸着したバクテリア合成セルロースを凍結乾燥した後、30mgをバイアル瓶に秤量し、105℃で5時間乾燥させることで絶乾状態とした。その後、デシケーターで室温まで放冷した後、テトラブチルホスホニウムヒドリド(60質量%水溶液)を3mL加え、30℃で一晩撹拌し、バクテリア合成セルロースを完全に溶解させた。溶解液を100mLのMilli-Q水(Milli-Q水製造装置により得られる超純水、メルク社)に加え、30分撹拌することでセルロースを再析出させた。その後、減圧ろ過により残さを回収し、105℃で2時間乾燥させた後、残さの質量Wcel(mg)を測定し、以下の式によりバクテリア合成セルロースにおけるカルボキシメチルセルロース又はヒドロキシプロピルセルロースの吸着量を算出した。
吸着量(%)={(30-Wcel)/30}×100
【0049】
<ナノセルロースの透過率測定>
ナノセルロースを0.1質量%含有する水分散液を調製し、吸光光度計(U-2001、日立製作所社)を用いて波長500nmで一定とし、透過率測定を行った。なお、セルはポリスチレン製ディスポーザブルキュベット(セミミクロセル、光路長10mm、光路幅4mm)を用いた。
【0050】
<シートの製造>
後述のナノセルロース組成物30gに270gのMilliQ水(Milli-Q水製造装置により得られる超純水、メルク社)を加え30分撹拌した後、減圧ろ過装置(VT-500、ADVANTEC社)を用いて減圧ろ過を行った。その後、脱水プレス(室温、10MPa、5分×2回)、そして、熱プレス(105℃、10MPa、10分)を施すことでシートを製造した。なお、脱水プレスにおいては、下から、ろ紙(No.101、径125mm、ADVANTEC社)を3枚、テフロンシート(ニトフロン900UL、日東電工)を1枚、ナノセルロース組成物、メンブレンフィルター(A045A090C、ADVANTEC社)を1枚、及びろ紙を9枚重ねてプレスした。また、熱プレスにおいては、下から、ろ紙(No.101、径125mm、ADVANTEC社)を5枚、キムタオル(日本製紙クレシア)を1枚、メッシュシート(PF020、ADVANTEC社)を1枚、ナノセルロース組成物、メッシュシート(PF020、ADVANTEC社)を1枚、キムタオル(日本製紙クレシア)を1枚、ろ紙(No.101、径125mm、ADVANTEC社)を5枚重ねてプレスした。
【0051】
<シートの引張試験>
シートの引張特性は、万能試験機(34SC-1(500N)、INSTRON社)を用いた引張試験により評価した。より具体的には、シートを試験片打抜機(SDL-100、DUMBBELL社)により短冊状(40×6mm)に打ち抜き、105℃で2日間絶乾した後、つかみ具間が1cmとなるように固定し、万能試験機を用いて引張試験(cross-head speed:10mm/min)を行い、引張特性として破断応力、破断点伸び、ヤング率、及び靭性を求めた。なお、引張試験は各5回ずつ行い平均値を算出した。
【0052】
<シートの厚さ及びかさ密度測定>
シートの厚さはマイクロメータにより測定した。また、かさ密度は、シートの面積及びシートの厚さから求めたかさ容積(cm3)でシートの質量(g)を除して求めた。なお、厚さ及びかさ密度はそれぞれ5枚のシートの平均を求めた。
【0053】
<湿式紡糸法による繊維の製造>
後述のナノセルロース組成物をセパラブル丸底フラスコに加え、80℃のビーズバス(BBH-1、AS ONE社)中で小型撹拌機(SPZ-2000、東京理化器械)を用いて200rpmで加熱撹拌を行った。その後、減圧下(3333Pa)で5分間脱気した後、ナノセルロース組成物をシリンジ(20mL、テルモシリンジ、TERUMO)に加えて室温まで放冷した。続いて、シリンジポンプ(YSP-101、YMC社)を用いて射出速度1mL/minでシリンジからナノセルロース組成物を注射針(内径:2.40mm)に注入し、ラボランシリコンチューブ(30cm、2×4、アズワン)を通して鉛直方向に設置したCaCl2/EtOH飽和溶液入りのアクリル製筒(直径:1m、内径:2cm、コクゴ社)に射出した。その後、Milli-Q水(Milli-Q水製造装置により得られる超純水、メルク社)で1時間洗浄し、テフロンシート(TOMBO 9000、ニチアス社)に乗せてオーブンで70℃で12時間乾燥させることで繊維を製造した。
【0054】
<広角X線回析法>
繊維の配向状態の調査は、広角X線散乱装置(BL-6A、Photon Factory社)を用いて行った。より具体的には、繊維を1cmに切断して10本の束にし、瞬間接着剤で固定し、繊維の束の紡糸方向に対し垂直にX線を照射し、二次元広角X線回析像を得た。なお、X線波長は1.5Å、露光時間は60秒、検出器はPILATUS3 1M(Dectris Ltd.、Switzerland、981×1043pixels、172×172μm pixel size)とし、また、試料-検出器間距離(SDD=250.58265mm)は、silver behenateの回析パターンを用いて較正した。
得られた二次元広角X線回析像から、方位角90°~270°におけるセルロースIα型結晶の(110)面及びセルロースIβ型結晶の(200)面の回析強度の分布曲線を得た。得られた分布曲線におけるセルロースIα型結晶の(110)面及びセルロースIβ型結晶の(200)面の回析に由来するピークに対して、方位角90°~270°の範囲でガウス分布フィッティングを行った後、半値幅(Wh)を求め、以下の式から配向度を算出した。
配向度(%)={(180-Wh)/180}×100
【0055】
<繊維の引張試験>
繊維の引張特性は、万能試験機(AG-100kNXplus、島津製作所社)を用いた引張試験により評価した。より具体的には、繊維を3cmに切断し、つかみ具間が1cmとなるように固定し、引張試験(試験速度5mm/min)を行い、引張特性として、ヤング率、破断応力、及び破断ひずみを求めた。なお、引張試験は各5回ずつ行い平均値を算出した。
【0056】
<ナノセルロース>
ナノセルロースとして、TEMPO酸化セルロースナノファイバー(TOCN、日本製紙社)、表面にカルボキシメチルセルロースが吸着したバクテリア合成セルロース(CM-NFBC、草野作工社)、表面にヒドロキシプロピルセルロースが吸着したバクテリア合成セルロース(HP-NFBC、草野作工社)を用いた。上記ナノセルロースの繊維長、繊維径解析の方法に従って測定した、これらのナノセルロースの繊維長及び繊維径の分布曲線を
図1に、平均繊維長、平均繊維径、及び平均アスペクト比を表1に示す。
【0057】
【0058】
上記バクテリア合成セルロースにおける多糖類の吸着量の定量の方法に従って定量した、CM-NFBCにおけるカルボキシメチルセルロースの吸着量、及びHP-NFBCにおけるヒドロキシプロピルセルロースの吸着量、並びに上記ナノセルロースの透過率測定の方法に従って測定した、CM-NFBC、又はHP-NFBCを0.1質量%含有する水分散液の波長500nmの光の透過率を表2に示す。
【0059】
【0060】
<ナノセルロース組成物>
表1に示すそれぞれのナノセルロースの1.0質量%の水分散液を表3に示す割合で配合し、実施例1~5、及び比較例1~2のナノセルロース組成物を調製した。
【0061】
【0062】
<シート>
上記シートの製造の方法に従って、実施例1~5、及び比較例1~2のナノセルロース組成物から、それぞれ実施例1a~5a、及び比較例1a~2aのシートを製造した。
上記シートの引張試験の方法に従って測定した、シートの引張特性、並びに上記シートの厚さ及びかさ密度測定の方法に従って測定したシートの厚さ及びかさ密度を表4に示す。表4から明らかなように、実施例1a~5aのシートは、比較例1a~2aのシートと比べ破断応力及びヤング率が大きく、引張特性に優れていた。その中でも、実施例2a~4aのシートは、破断応力がより大きく、引張特性がより優れていた。また、実施例3aのシートは、破断応力、ヤング率、及び靭性がさらに大きく、引張特性がさらに優れていた。
【0063】
【0064】
<繊維>
上記湿式紡糸法による繊維の製造の方法に従って、実施例3、及び比較例2のナノセルロース組成物から、それぞれ実施例3b、及び比較例2bの繊維を製造した。
上記繊維の広角X線回析法の方法に従って得た、繊維の二次元広角X線回析像を
図2に示す。
図2より、実施例3b、及び比較例2bにおいて、セルロースI
α型結晶の(110)面及びセルロースI
β型結晶の(200)面の回析が確認された。また、上記繊維の広角X線回析測定の方法に従って、得た配向度を表5に示す。表5から明らかなように、実施例3bの配向度は比較例2bに比べ高かった。
【0065】
【0066】
上記繊維の引張試験の方法に従って得られた繊維の引張特性を表5に示す。表5から明らかなように、実施例3bの繊維は比較例2bの繊維と比べヤング率、破断応力及び破断ひずみが大きく、引張特性が優れていた。