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特開2024-161751無線送信装置および無線送信方法、並びに無線受信装置および無線受信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161751
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】無線送信装置および無線送信方法、並びに無線受信装置および無線受信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 7/06 20060101AFI20241113BHJP
   H04L 27/227 20060101ALI20241113BHJP
   H04L 27/20 20060101ALI20241113BHJP
   H04W 56/00 20090101ALI20241113BHJP
【FI】
H04L7/06
H04L27/227 100
H04L27/20 Z
H04W56/00 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076738
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】518212241
【氏名又は名称】公立大学法人公立諏訪東京理科大学
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】稲本 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100168686
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 勇介
(72)【発明者】
【氏名】中尾 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】小林 誠司
(72)【発明者】
【氏名】米山 悠介
(72)【発明者】
【氏名】北山 嗣也
【テーマコード(参考)】
5K047
5K067
【Fターム(参考)】
5K047HH52
5K067AA43
5K067DD25
5K067EE02
(57)【要約】
【課題】無線受信装置において、簡単な構成で、伝送路においてマルチパス・フェーディングや混信等が発生した場合であっても正確な同期処理を実現することができるようにする。
【解決手段】チャープ信号生成部は、無線受信装置において同期処理に用いられる、異なる変化レートで周波数が時間変化するダウンチャープ信号とアップチャープ信号からなるVチャープ信号を生成する。加算部53は、そのVチャープ信号と送信データとを合成してベースバンド信号を生成する。ミキサ82は、そのベースバンド信号を搬送波に重畳する。本技術は、例えば、Vチャープ信号を同期処理に用いる無線受信装置に送信データを送信する無線送信装置等に適用できる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線受信装置において同期処理に用いられる、異なる変化レートで周波数が時間変化する複数のチャープ信号からなる同期チャープ信号を生成するチャープ信号生成部と、
前記チャープ信号生成部により生成された前記同期チャープ信号と送信データとを合成してベースバンド信号を生成するベースバンド信号生成部と、
前記ベースバンド信号生成部により生成された前記ベースバンド信号を搬送波に重畳する重畳部と
を備える無線送信装置。
【請求項2】
前記同期チャープ信号の期間は、前記送信データのフレーム期間である
ように構成された
請求項1に記載の無線送信装置。
【請求項3】
前記複数のチャープ信号は、第1のチャープ信号と第2のチャープ信号からなり、
前記第1のチャープ信号の前記変化レートである第1の変化レートと前記第2のチャープ信号の前記変化レートである第2の変化レートの絶対値は等しく、符号は異なる
ように構成される
請求項2に記載の無線送信装置。
【請求項4】
前記第1のチャープ信号の期間は、前記フレーム期間の前半の期間であり、前記第2のチャープ信号の期間は、前記フレーム期間の後半の期間である
ように構成された
請求項3に記載の無線送信装置。
【請求項5】
前記第1のチャープ信号および前記第2のチャープ信号の両方の期間は前記フレーム期間である
ように構成された
請求項3に記載の無線送信装置。
【請求項6】
前記送信データを符号化して変調する変調部
をさらに備え、
前記ベースバンド信号生成部は、前記同期チャープ信号と前記変調部により変調された前記送信データとを合成して前記ベースバンド信号を生成する
ように構成された
請求項1に記載の無線送信装置。
【請求項7】
無線送信装置が、
無線受信装置において同期処理に用いられる、異なる変化レートで周波数が時間変化する複数のチャープ信号からなる同期チャープ信号を生成するチャープ信号生成ステップと、
前記チャープ信号生成ステップの処理により生成された前記同期チャープ信号と送信データとを合成してベースバンド信号を生成するベースバンド信号生成ステップと、
前記ベースバンド信号生成ステップの処理により生成された前記ベースバンド信号を搬送波に重畳する重畳ステップと
を含む無線送信方法。
【請求項8】
異なる変化レートで周波数が変化する複数のチャープ信号からなる同期チャープ信号と送信データとを合成することにより生成されたベースバンド信号が重畳された搬送波である受信信号から前記ベースバンド信号を抽出するベースバンド信号抽出部と、
前記ベースバンド信号抽出部により抽出された前記ベースバンド信号をIQ信号に変換する変換部と、
前記変換部により変換された前記IQ信号から同期信号を生成する同期信号生成部と、
前記同期信号生成部により生成された前記同期信号に基づいて、前記IQ信号に対して同期処理を行う同期処理部と
を備える無線受信装置。
【請求項9】
前記同期チャープ信号の期間は、前記送信データのフレーム期間である
ように構成された
請求項8に記載の無線受信装置。
【請求項10】
前記複数のチャープ信号は、第1のチャープ信号と第2のチャープ信号からなり、
前記第1のチャープ信号の前記変化レートである第1の変化レートと前記第2のチャープ信号の前記変化レートである第2の変化レートの絶対値は等しく、符号は異なる
ように構成される
請求項9に記載の無線受信装置。
【請求項11】
前記第1のチャープ信号の期間は、前記フレーム期間の前半の期間であり、前記第2のチャープ信号の期間は、前記フレーム期間の後半の期間である
ように構成された
請求項10に記載の無線受信装置。
【請求項12】
前記第1のチャープ信号および前記第2のチャープ信号の両方の期間は前記フレーム期間である
ように構成された
請求項10に記載の無線受信装置。
【請求項13】
前記複数のチャープ信号は、第1のチャープ信号と第2のチャープ信号からなり、
前記同期信号生成部は、
前記第1のチャープ信号の前記変化レートである第1の変化レートを用いて前記IQ信号に対してデチャープ処理を行うことにより、前記第1のチャープ信号に対応する前記同期信号である第1のチャープ同期信号を生成する第1のデチャープ部と、
前記第2のチャープ信号の前記変化レートである第2の変化レートを用いて前記IQ信号に対してデチャープ処理を行うことにより、前記第2のチャープ信号に対応する前記同期信号である第2のチャープ同期信号を生成する第2のデチャープ部と
を備える
請求項8に記載の無線受信装置。
【請求項14】
前記同期信号生成部は、
前記第1のデチャープ部により生成された前記第1のチャープ同期信号と前記第2のデチャープ部により生成された前記第2のチャープ同期信号に基づいて、前記受信信号における時間の遅れを検出する検出部
をさらに備え、
前記同期処理部は、前記検出部により検出された前記時間の遅れに基づいて、前記IQ信号に対して前記同期処理を行う
ように構成された
請求項13に記載の無線受信装置。
【請求項15】
前記検出部は、
前記第1のチャープ同期信号から第1のピーク周波数の候補を抽出する第1のピーク抽出部と、
前記第2のチャープ同期信号から第2のピーク周波数の候補を抽出する第2のピーク抽出部と、
前記第1のピーク抽出部により抽出された前記第1のピーク周波数の候補の中から1つの第1のピーク周波数を選択し、前記第2のピーク抽出部により抽出された前記第2のピーク周波数の中から1つの第2のピーク周波数を選択するピーク選択部と、
前記ピーク選択部により選択された前記第1のピーク周波数と前記第2のピーク周波数とに基づいて、前記時間の遅れを検出する時間遅れ検出部と
を備える
請求項14に記載の無線受信装置。
【請求項16】
前記同期処理部による前記同期処理が行われた前記IQ信号から前記送信データを復元する復元部と、
前記復元部により復元された前記送信データの誤りを検出する誤り検出部と
をさらに備え、
前記ピーク選択部は、前記誤り検出部による誤り検出結果に基づいて、前記第1のピーク周波数と前記第2のピーク周波数の選択をやり直す
ように構成された
請求項15に記載の無線受信装置。
【請求項17】
前記同期信号生成部は、
前記第1のデチャープ部により生成された前記第1のチャープ同期信号と前記第2のデチャープ部により生成された前記第2のチャープ同期信号に基づいて、前記受信信号における位相回転を検出する検出部
をさらに備え、
前記同期処理部は、前記検出部により検出された前記位相回転に基づいて、前記IQ信号に対して前記同期処理を行う
ように構成された
請求項13に記載の無線受信装置。
【請求項18】
前記検出部は、
前記第1のチャープ同期信号から第1のピーク周波数の候補を抽出する第1のピーク抽出部と、
前記第2のチャープ同期信号から第2のピーク周波数の候補を抽出する第2のピーク抽出部と、
前記第1のピーク抽出部により抽出された前記第1のピーク周波数の候補の中から1つの第1のピーク周波数を選択し、前記第2のピーク抽出部により抽出された前記第2のピーク周波数の中から1つの第2のピーク周波数を選択するピーク選択部と、
前記ピーク選択部により選択された前記第1のピーク周波数と前記第2のピーク周波数とに基づいて、前記位相回転を検出する位相回転検出部と
を備える
請求項17に記載の無線受信装置。
【請求項19】
前記同期処理部による前記同期処理が行われた前記IQ信号から前記送信データを復元する復元部と、
前記復元部により復元された前記送信データの誤りを検出する誤り検出部と
をさらに備え、
前記ピーク選択部は、前記誤り検出部による誤り検出結果に基づいて、前記第1のピーク周波数と前記第2のピーク周波数の選択をやり直す
ように構成された
請求項18に記載の無線受信装置。
【請求項20】
無線受信装置が、
異なる変化レートで周波数が変化する複数のチャープ信号からなる同期チャープ信号と送信データとを合成することにより生成されたベースバンド信号が重畳された搬送波である受信信号から前記ベースバンド信号を抽出するベースバンド信号抽出ステップと、
前記ベースバンド信号抽出ステップの処理により抽出された前記ベースバンド信号をIQ信号に変換する変換ステップと、
前記変換ステップの処理により変換された前記IQ信号から同期信号を生成する同期信号生成ステップと、
前記同期信号生成ステップの処理により生成された前記同期信号に基づいて、前記IQ信号に対して同期処理を行う同期処理ステップと
を含む無線受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、無線送信装置および無線送信方法、並びに無線受信装置および無線受信方法に関し、特に、無線受信装置において、簡単な構成で、伝送路においてマルチパス・フェーディングや混信等が発生した場合であっても正確な同期処理を実現することができるようにした無線送信装置および無線送信方法、並びに無線受信装置および無線受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信では、一般的にデータが所定の塊に分割して送信される。このようなデータの塊は、ブロック、パケット、またはフレーム等の様々な名称で呼ばれている。本明細書では、このデータの塊を「フレーム」と呼ぶ。
【0003】
無線送信装置が送信データをフレーム単位で電波(搬送波)に重畳して送信する場合、無線受信装置は、受信信号の受信タイミング、周波数オフセット、および搬送波位相を無線受信装置の内部信号と合致させること、即ち同期が必要となる。従って、フレーム単位の送信データの先頭または途中に、この同期に用いられる同期信号を配置することが一般的である。この同期信号は、「プリアンブル」、「基準信号」、「フレームシンク」等の様々な名称で呼ばれている。
【0004】
フレーム単位の送信データの先頭に同期信号が配置される場合、同期信号が時間的に集中する。従って、マルチパス・フェーディングまたは他の無線送信装置からの電波による混信が発生した場合、無線受信装置は、送信データを受信することができない可能性がある。マルチパス・フェーディングとは、無線送信装置により送信された電波が複数の異なる経路を経て無線受信装置に到来した場合に無線受信装置において生じる現象であり、マルチパス・フェーディングにより受信信号は劣化する。
【0005】
そこで、疑似乱数を用いて同期信号をフレーム単位の送信データ内に時間的に均等に分散して挿入する方法が考案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、同期信号が時間的に均等に分散して挿入されるため、マルチパス・フェーディングまたは混信が発生した場合であっても、無線受信装置は、送信データを受信することができる可能性が高い。
【0006】
しかしながら、無線受信装置は、同期信号を用いて同期をとるために、均等に分散して挿入された同期信号を復号する必要があり、この同期信号を復号するためには同期をとる必要がある。即ち、同期に必要な同期信号を検出するために同期が必要になるというパラドックスが存在している。特許文献1に記載されている方法は、このパラドックスを解くために無線受信装置の構成が複雑になり、無線受信装置の消費電力が大きくなる。
【0007】
そこで、フレームの全期間に連続して狭帯域同期信号を配置する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。この方法では、狭帯域同期信号を高速フーリエ変換(FFT(Fast Fourier Transform))を用いて検出することができるので、無線受信装置は、簡易な構成で上述したパラドックスを解き、容易に同期処理を行うことができる。
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載されている方法では、周波数オフセットが存在している場合、無線受信装置は周波数探索を行う必要があるため、同期処理部の構成が複雑になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2016-46618号公報
【特許文献2】特許第6821231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、無線受信装置において、簡単な構成で、伝送路においてマルチパス・フェーディングや混信等が発生した場合であっても正確な同期処理を実現する手法の提供が要望されているが、そのような要望に十分にこたえられていない状況である。
【0011】
本技術は、このような状況に鑑みてなされたものであり、無線受信装置において、簡単な構成で、伝送路においてマルチパス・フェーディングや混信等が発生した場合であっても正確な同期処理を実現することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本技術の第1の側面の無線送信装置は、無線受信装置において同期処理に用いられる、異なる変化レートで周波数が時間変化する複数のチャープ信号からなる同期チャープ信号を生成するチャープ信号生成部と、前記チャープ信号生成部により生成された前記同期チャープ信号と送信データとを合成してベースバンド信号を生成するベースバンド信号生成部と、前記ベースバンド信号生成部により生成された前記ベースバンド信号を搬送波に重畳する重畳部とを備える無線送信装置である。
【0013】
本技術の第1の側面の無線送信方法は、無線送信装置が、無線受信装置において同期処理に用いられる、異なる変化レートで周波数が時間変化する複数のチャープ信号からなる同期チャープ信号を生成するチャープ信号生成ステップと、前記チャープ信号生成ステップの処理により生成された前記同期チャープ信号と送信データとを合成してベースバンド信号を生成するベースバンド信号生成ステップと、前記ベースバンド信号生成ステップの処理により生成された前記ベースバンド信号を搬送波に重畳する重畳ステップとを含む無線送信方法である。
【0014】
本技術の第1の側面においては、無線受信装置において同期処理に用いられる、異なる変化レートで周波数が時間変化する複数のチャープ信号からなる同期チャープ信号が生成され、前記同期チャープ信号と送信データとを合成してベースバンド信号が生成され、前記ベースバンド信号が搬送波に重畳される。
【0015】
本技術の第2の側面の無線受信装置は、異なる変化レートで周波数が変化する複数のチャープ信号からなる同期チャープ信号と送信データとを合成することにより生成されたベースバンド信号が重畳された搬送波である受信信号から前記ベースバンド信号を抽出するベースバンド信号抽出部と、前記ベースバンド信号抽出部により抽出された前記ベースバンド信号をIQ信号に変換する変換部と、前記変換部により変換された前記IQ信号から同期信号を生成する同期信号生成部と、前記同期信号生成部により生成された前記同期信号に基づいて、前記IQ信号に対して同期処理を行う同期処理部とを備える無線受信装置である。
【0016】
本技術の第2の側面の無線受信方法は、異なる変化レートで周波数が変化する複数のチャープ信号からなる同期チャープ信号と送信データとを合成することにより生成されたベースバンド信号が重畳された搬送波である受信信号から前記ベースバンド信号を抽出するベースバンド信号抽出ステップと、前記ベースバンド信号抽出ステップの処理により抽出された前記ベースバンド信号をIQ信号に変換する変換ステップと、前記変換ステップの処理により変換された前記IQ信号から同期信号を生成する同期信号生成ステップと、前記同期信号生成ステップの処理により生成された前記同期信号に基づいて、前記IQ信号に対して同期処理を行う同期処理ステップとを含む無線受信方法である。
【0017】
本技術の第2の側面においては、異なる変化レートで周波数が変化する複数のチャープ信号からなる同期チャープ信号と送信データとを合成することにより生成されたベースバンド信号が重畳された搬送波である受信信号から前記ベースバンド信号が抽出され、前記ベースバンド信号がIQ信号に変換され、前記IQ信号から同期信号が生成され、前記同期信号に基づいて、前記IQ信号に対して同期処理が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】同期信号の配置の一例を示すグラフである。
図2】同期信号の配置の他の一例を示すグラフである。
図3】本技術を適用した無線送信装置の第1実施の形態の構成例を示すブロック図である。
図4】パルス生成部の構成例を示すブロック図である。
図5】ダウンチャープ生成部の構成例を示すブロック図である。
図6】送信処理を説明するフローチャートである。
図7】無線送信装置における各信号を模式的に説明するタイミングチャートである。
図8】BPSK変調信号、ダウンチャープ信号、およびアップチャープ信号の周波数の時間変化の例を示すグラフである。
図9】フレーム単位の送信信号のスペクトルの周波数の時間変化の例を示すグラフである。
図10】本技術を適用した無線受信装置の第1実施の形態の構成例を示すブロック図である。
図11】同期信号生成部の詳細構成例を示すブロック図である。
図12】Vチャープ除去部の構成例を示すブロック図である。
図13】受信処理を説明するフローチャートである。
図14】受信処理を説明するフローチャートである。
図15】コンスタレーションの例を示す。
図16】実験の結果の例を示す図である。
図17】第2実施の形態におけるフレーム単位の送信信号のスペクトルの周波数の時間変化の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本技術を実施するための形態(以下、実施の形態という)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.同期信号の一般的な配置
2.第1実施の形態(フレーム期間の前半の期間のチャープ信号と後半の期間のチャープ信号を送受信する無線送信装置と無線受信装置)
3.第2実施の形態(フレーム期間の2つのチャープ信号を送受信する無線送信装置と無線受信装置)
【0020】
<同期信号の一般的な配置>
<同期信号の配置の一例>
図1は、同期信号の配置の一例を示すグラフである。
【0021】
図1のグラフの横軸は、時間を表し、縦軸は周波数を表す。このことは、後述する図2においても同様である。
【0022】
図1の例では、フレーム単位の送信データ10のキャリア周波数はf1´であり、データ帯域幅はBw1´である。送信データ10は、先頭から、同期信号11、実データ12が順に配置されることにより構成される。同期信号11は、先頭から、プリアンブル21、フレームの先頭を示すフレームシンク22が順に配置されることにより構成される。図面が煩雑になるため図示は省略するが、実データ12には、ヘッダ、誤り検出・訂正符号等が含まれる。
【0023】
以上のように、送信データ10では同期信号11が先頭に時間的に集中している。従って、マルチパス・フェーディングや混信等が発生し、同期信号11が乱されると、無線受信装置は実データ12を受信することができない可能性がある。
【0024】
<同期信号の配置の他の一例>
図2は、同期信号の配置の他の一例を示すグラフである。
【0025】
図2の例では、フレーム単位の送信データ30のキャリア周波数はf2´であり、データ帯域幅はBw2´である。送信データ30は、フレーム単位の実データ31内に同期信号32が時間的に均等に分散して挿入されることにより構成される。従って、マルチパス・フェーディングや混信等が発生した場合であっても、送信データ30内の全ての同期信号32を受信することができない可能性は低いため、無線受信装置は、実データ31を受信することができる可能性が高い。
【0026】
しかしながら、無線受信装置は、同期信号32を用いて同期をとるために同期信号32を復号する必要があり、この同期信号32を復号するためには同期をとる必要がある。即ち、同期に必要な同期信号32を検出するために同期が必要になるというパラドックスが存在している。従って、このパラドックスを解くために無線受信装置の構成が複雑になる。
【0027】
次に、本技術を適用した無線送信装置および無線受信装置の第1実施の形態および第2の形態について順に説明する。第1実施の形態および第2実施の形態では、シンボルレートfが100kspsであるBPSK(Binary Phase Shift Keying)が変調方式として用いられ、フレーム期間Tが0.5秒間であり、キャリア周波数fが920MHzであるものとする。シンボルレートf、変調方式、フレーム期間、およびキャリア周波数fは、勿論、これらに限定されない。
【0028】
<1.第1実施の形態>
<無線送信装置の構成例>
図3は、本技術を適用した無線送信装置の第1実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【0029】
図3の無線送信装置50は、変調部51、チャープ信号生成部52、加算部53、高周波信号生成部54、およびアンテナ55により構成される。無線送信装置50は、プリアンブルの代わりにVチャープ信号を送信する。
【0030】
具体的には、変調部51は、パルス生成部61とLPF(Low Pass filter)62により構成される。変調部51は、無線送信装置50に入力されたフレーム単位の送信データを符号化して変調する。
【0031】
より詳細には、変調部51のパルス生成部61には、無線送信装置50に入力されたフレーム単位の送信データがシンボルクロック(SYCLK)の周期ごとに入力されるとともに、シンボルクロックが入力される。パルス生成部61は、送信データとシンボルクロックに基づいてシンボルごとに1発の両極性パルスを生成することにより送信データを符号化し、LPF62に供給する。パルス生成部61は、この両極性パルスの生成の際に生成された、シンボルクロックの周波数を16逓倍したクロックX16を、チャープ信号生成部52に供給する。
【0032】
LPF62は、パルス生成部61から供給される両極性パルスの低域を濾過することにより両極性パルスを変調し、BPSK変調信号を生成する。LPF22の特性としては、例えば符号間干渉を抑圧することができるRRC(Root Raised Cosine)特性を用いることができる。この場合、LPF62の通過帯域幅Bwは、シンボルレートfに対応する周波数の約1.5倍、即ち150kHzである。LPF62は、BPSK変調信号を加算部53に供給する。
【0033】
チャープ信号生成部52は、ダウンチャープ生成部71、アップチャープ生成部72、および加算部73により構成される。チャープ信号生成部52は、図示せぬシステムコントローラから入力される送信の開始を指示する開始パルス信号(Start Pulse)とパルス生成部61から供給されるクロックX16とに基づいてVチャープ信号(同期チャープ信号)を生成する。
【0034】
より詳細には、ダウンチャープ生成部71は、開始パルス信号とクロックX16に基づいて、フレーム期間Tの前半のT/2期間の、変化レートβ1(第1の変化レート)で周波数が時間変化するダウンチャープ信号(第1のチャープ信号)をフレーム単位で生成する。ダウンチャープ生成部71は、そのダウンチャープ信号を加算部73に供給する。
【0035】
アップチャープ生成部72は、開始パルス信号とクロックX16に基づいて、フレーム期間Tの後半のT/2期間の、変化レートβ2(第2の変化レート)で周波数が時間変化するアップチャープ信号(第2のチャープ信号)をフレーム単位で生成する。アップチャープ生成部72は、そのアップチャープ信号を加算部73に供給する。
【0036】
なお、変化レートβ1とβ2の絶対値は等しく、符号は異なる。第1実施の形態では、変化レートβ1の符号は負であり、変化レートβ2の符号は正であるが、変化レートβ1の符号は負であり、変化レートβ2の符号が正であってもよい。
【0037】
加算部73は、ダウンチャープ生成部71から供給されるダウンチャープ信号とアップチャープ生成部72から供給されるアップチャープ信号を合成してフレーム期間TのVチャープ信号をフレーム単位で生成し、加算部53に供給する。
【0038】
加算部53(ベースバンド信号生成部)は、LPF62から供給されるBPSK変調信号とVチャープ信号を合成してベースバンド信号を生成し、高周波信号生成部54に供給する。
【0039】
高周波信号生成部54は、局部発振器81、ミキサ82、BPF(Band Pass Filter)83、およびリニアアンプ84により構成される。高周波信号生成部54は、ベースバンド信号を搬送波に重畳して増幅し、アンテナ55を介して送信する。
【0040】
より詳細には、局部発振器81は、キャリア周波数fの搬送波(キャリア)を生成し、ミキサ82に供給する。ミキサ82(重畳部)は、高周波信号生成部54から供給されるベースバンド信号を局部発振器81から供給される搬送波に重畳し、BPF83に供給する。BPF83は、ミキサ82から供給されるベースバンド信号が重畳された搬送波に含まれる不要な周波数成分を除去し、リニアアンプ84に供給する。リニアアンプ84は、BPF83から供給される不要な周波数成分が除去された搬送波を増幅して送信信号を生成し、アンテナ55から空中に送信する。
【0041】
<パルス生成部の構成例>
図4は、図3のパルス生成部61の構成例を示すブロック図である。
【0042】
図4に示すように、パルス生成部61は、マッパ101、立ち上がり検出部102、および乗算部103により構成される。
【0043】
マッパ101には、送信データの各シンボル(ビット)値がシンボルクロックの周期ごとに入力される。マッパ101は、その送信データの各シンボル値を両極性パルスに変換する。具体的には、マッパ101は、送信データのシンボル値「1」を正の極性のパルスに変換し、シンボル値「0」を負の極性のパルスに変換する。マッパ101は、その両極性パルスを乗算部103に供給する。
【0044】
立ち上がり検出部102は、PLL(Phase Locked Loop)111、Dフリップフロップ112、NOTゲート113、およびANDゲート114により構成される。立ち上がり検出部102にはシンボルクロックが入力され、立ち上がり検出部102は、そのシンボルクロックが0から1に立ち上がったタイミングで立ち上がりパルスを発生させる。
【0045】
具体的には、PLL111は、シンボルクロックに基づいてクロックX16を発生する。本実施の形態では、シンボルレートfが100kspsであるので、クロックX16は、周波数が1.6MHzである高速なクロックである。PLL111は、クロックX16をDフリップフロップ112のCLK端子並びに図3のダウンチャープ生成部71およびアップチャープ生成部72に供給する。
【0046】
Dフリップフロップ112のD端子にはシンボルクロックが入力される。Dフリップフロップ112は、クロックX16とシンボルクロックに基づいて、Q端子からNOTゲート113にクロックを供給する。
【0047】
NOTゲート113は、Dフリップフロップ112から供給されるクロックを反転した反転クロックをANDゲート114に供給する。ANDゲート114は、シンボルクロックとNOTゲート113から供給される反転クロックの論理積を演算する。これにより、ANDゲート114は、シンボルクロックが0から1に立ち上がったタイミングで立ち上がりパルスを生成し、乗算部103に供給する。
【0048】
乗算部103は、マッパ101から供給される両極性パルスとANDゲート114から供給される立ち上がりパルスを乗算する。これにより、乗算部103は、シンボルクロックの立ち上がりに同期してシンボルごとに1発の両極性パルスを生成する。乗算部103は、その両極性パルスを図3のLPF62に供給する。
【0049】
<ダウンチャープ生成部の構成例>
図5は、図3のダウンチャープ生成部71の構成例を示すブロック図である。
【0050】
図5に示すように、ダウンチャープ生成部71は、カウンタ240、不揮発メモリ241、指数関数部242、および増幅部243により構成される。
【0051】
カウンタ240は、入力された開始パルス信号に応じて、図4のPLL111から供給されるクロックX16の1周期ごとにカウント値nをインクリメントするカウントを開始する。本実施の形態では、クロックX16の周波数は1.6MHzであるので、カウンタ240のカウント値nは、フレームの開始時の0から、フレーム期間Tである0.5秒後のフレームの終了時の800,000まで変化する20ビットの整数である。カウンタ240は、カウント値nを不揮発メモリ241に供給する。
【0052】
不揮発メモリ241は、例えばATMEL社の半導体(AT27C080)により構成される。不揮発メモリ241は、20ビットの各アドレスに、そのアドレスをカウント値nとしたときの8ビットの位相θ(n)を記憶している。位相θ(n)は、変化レートβ1とカウント値nを用いて以下の式(1)で求められる。
【0053】
【数1】
【0054】
式(1)において、modは剰余演算関数を表す。ΔはクロックX16の周波数の逆数であり、本実施の形態では0.625μ秒(=1/1.6×10)である。Nは定数である。fは初期周波数である。式(1)によれば、位相θ(n)は、負の初期周波数-fから変化レートβ1で周波数が時間変化するダウンチャープ信号である。
【0055】
不揮発メモリ241は、カウンタ240から入力されたカウント値nに応じて、そのカウント値nで表されるアドレスに記憶されている位相θ(n)を指数関数部242に供給する。
【0056】
指数関数部242は不揮発メモリなどにより構成され、8ビットの位相θ(n)に対応付けて、cosθ(n)とsinθ(n)を記憶している。指数関数部242は、不揮発メモリ241から供給される位相θ(n)に応じて、cosθ(n)とsinθ(n)を読み出す。指数関数部242は、そのcosθ(n)を実部とし、sinθ(n)を虚部として増幅部243に供給する。
【0057】
増幅部243は、指数関数部242から供給される実部および虚部に定数αを乗算することにより、以下の式(2)で表されるダウンチャープ信号Ca(t)を演算する。
【0058】
【数2】
【0059】
式(2)において、rectは矩形関数を表し、fは初期周波数である。
【0060】
増幅部243は、このダウンチャープ信号Ca(t)を図3の加算部73に供給する。
【0061】
アップチャープ生成部72は、変化レートβ1が変化レートβ2に代わる点、および動作期間がフレーム期間Tの前半ではなく後半のT/2期間である点が、ダウンチャープ生成部71と異なっており、その他はダウンチャープ生成部71と同様に構成されている。従って、詳細な説明は省略するが、アップチャープ生成部72により生成されるアップチャープ信号Cb(t)は、以下の式(3)で表される。
【0062】
【数3】
【0063】
式(3)において、rectは矩形関数を表し、fは初期周波数である。定数αとしては、混信等により同期が乱される場合に大きな値が採用される。これにより、同期性能を向上させることができる。
【0064】
<送信処理の説明>
図6は、無線送信装置50による送信処理を説明するフローチャートである。
【0065】
図6のステップS11において、パルス生成部61は、入力された送信データとシンボルクロックに基づいてシンボルごとに1発の両極性パルスを生成することにより送信データを符号化し、LPF62に供給する。パルス生成部61は、この両極性パルスの生成の際に生成されたクロックX16を、ダウンチャープ生成部71とアップチャープ生成部72に供給する。
【0066】
ステップS12において、LPF62は、ステップS11の処理により生成された両極性パルスの低域を濾過することにより両極性パルスを変調し、BPSK変調信号を生成する。LPF62は、そのBPSK変調信号を加算部53に供給する。
【0067】
ステップS13において、ダウンチャープ生成部71は、入力された開始パルス信号とクロックX16に基づいてダウンチャープ信号Ca(t)を生成し、加算部73に供給する。ステップS14において、アップチャープ生成部72は、入力された開始パルス信号とクロックX16に基づいてアップチャープ信号Cb(t)を生成し、加算部73に供給する。
【0068】
ステップS15において、加算部73は、ステップS13の処理により生成されたダウンチャープ信号Ca(t)とステップS14の処理により生成されたアップチャープ信号Cb(t)を合成してVチャープ信号を生成し、加算部53に供給する。
【0069】
ステップS16において、加算部53は、ステップS12の処理により生成されたBPSK変調信号とステップS15の処理により生成されたVチャープ信号を合成してベースバンド信号を生成し、高周波信号生成部54に供給する。
【0070】
ステップS17において、ミキサ82は、ステップS16の処理により生成されたベースバンド信号を局部発振器81から供給される搬送波に重畳し、BPF83に供給する。ステップS18において、BPF83は、ステップS17の処理によりベースバンド信号が重畳された搬送波に含まれる不要な周波数成分を除去し、リニアアンプ84に供給する。ステップS19において、リニアアンプ84は、ステップS18の処理により不要な周波数成分が除去された搬送波を増幅して送信信号を生成し、アンテナ55から空中に送信する。そして送信処理は終了する。
【0071】
<無線送信装置の各信号の例>
図7は、無線送信装置50における各信号を模式的に説明するタイミングチャートである。
【0072】
図7の横軸は時間を表し、縦軸は信号値を表す。
【0073】
図7の例では、図7のAに示すように、無線送信装置50に入力される送信データの各シンボル値は順に1,0,1,1,0,1,・・・である。各シンボル値は、図7のBに示すシンボルクロックsyclkの周期Tsごとに入力される。
【0074】
図7のAの送信データと図7のBのシンボルクロックsyclkがパルス生成部61に入力されると、パルス生成部61は、図7のCに示す両極性パルスMod Pulseを出力する。両極性パルスMod Pulseは、送信データのシンボルごとに発生する、シンボル値に応じて極性が変化する両極性のパルス列である。具体的には、シンボル値が1である場合、両極性パルスMod Pulseの値は「+1」であり、シンボル値が0である場合、両極性パルスMod Pulseの値は「-1」である。両極性パルスMod Pulseは、シンボルクロックの立ち上がりに同期しているので、周期Tsの中央で発生する。
【0075】
図7のCに示す両極性パルスMod PulseがLPF62に入力されると、低域が濾過され、図7のDに示すBPSK変調信号mod(t)が生成される。
【0076】
一方、無線送信装置50には、図7のEに示す開始パルス信号Start Pulseが入力される。この開始パルス信号Start Pulseは、送信データの入力が開始されるときに、送信の開始を指示しない0から送信の開始を指示する1に変化する。
【0077】
図7のEに示す開始パルス信号Start Pulseがダウンチャープ生成部71に入力されると、カウンタ240は、その開始パルス信号Start Pulseが0から1に変化したタイミングでカウントを開始する。その結果、不揮発メモリ241から図7のFに示す位相θ(n)が出力される。
【0078】
図7のFに示すように、位相θ(n)は時間Δ×nに比例して初期値から増加し、所定の周期ごとに初期値に戻るが、その周期は時間Δ×nが経過するにつれて長くなる。その周期の変化の度合は2次関数で表される。
【0079】
図7のFに示す位相θ(n)が指数関数部242に入力されると、指数関数部242は実部として、図7のGに示すcosθ(n)を出力する。図7のGに示すように、cosθ(n)の周波数は時間Δ×nが経過するにつれて低下する。増幅部243は、図7のGに示すcosθ(n)を用いてダウンチャープ信号Ca(t)を生成する。
【0080】
アップチャープ生成部72は、ダウンチャープ生成部71と同様の処理を行うことにより、アップチャープ信号Cb(t)を生成する。そして、加算部73は、ダウンチャープ信号Ca(t)とアップチャープ信号Cb(t)を加算し、Vチャープ信号Cr(t)を生成する。
【0081】
加算部53は、図7のDに示すBPSK変調信号mod(t)とVチャープ信号Cr(t)を加算してベースバンド信号を生成する。高周波信号生成部54は、このベースバンド信号をキャリア周波数fの搬送波に重畳して増幅し、以下の式(4)で表される送信信号TX(t)を生成する。
【0082】
【数4】
【0083】
式(4)において、εTxは無線送信装置50から送信する搬送波の周波数の偏差である。
【0084】
この送信信号TX(t)のうちの、BPSK変調信号mod(t)から生成された成分であるBPSK変調信号mod(t)成分は、図7のHに示すようになる。Vチャープ信号Cr(t)から生成された成分であるVチャープ信号Cr(t)成分は、図7のIに示すようになる。
【0085】
<BPSK変調信号、ダウンチャープ信号、およびアップチャープ信号の周波数の時間変化の例>
図8は、BPSK変調信号mod(t)、ダウンチャープ信号Ca(t)、およびアップチャープ信号Cb(t)の周波数の時間変化の例を示すグラフである。
【0086】
図8のAは、BPSK変調信号mod(t)の周波数の時間変化を表し、図8のBは、ダウンチャープ信号Ca(t)の周波数の時間変化を表し、図8のCは、アップチャープ信号Cb(t)の周波数の時間変化を表す。図8において、横軸は時間を表し、縦軸は周波数を表している。
【0087】
図8のAに示すように、フレーム単位の送信データはフレームシンク261と実データ262により構成される。図面を簡略化するため、図示は省略するが、実データ262には誤り訂正符号や認証情報等も含まれる。この送信データに対応するBPSK変調信号mod(t)が占める帯域幅は、時間によらず、負の初期周波数-fから正の初期周波数fまでの通過帯域幅Bwである。なお、一般的には、フレームシンク261の変調方式は実データ262の変調方式と同一であるが、異なっていてもよい。
【0088】
図8のBにおいて実線271で示すように、フレーム単位のダウンチャープ信号Ca(t)の期間は、フレーム期間Tの前半のT/2期間である。ダウンチャープ信号Ca(t)の周波数は、正の初期周波数fから変化レートβ1で負の初期周波数-fまで下降する。図8の例では、初期周波数fは75khzであり、変化レートβ1は-600kHz/秒(=(-75-75)/(0.5/2))である。
【0089】
図8のCにおいて実線272で示すように、フレーム単位のアップチャープ信号Cb(t)の期間は、フレーム期間Tの後半のT/2期間である。アップチャープ信号Cb(t)の周波数は、負の初期周波数-fから変化レートβ2で正の初期周波数fまで上昇する。図8の例では、初期周波数fは75khzであるので、変化レートβ2は600kHz/秒(=(75-(-75))/(0.5/2))である。
【0090】
<送信信号のスペクトルの周波数の時間変化の例>
図9は、フレーム単位の送信信号TX(t)のスペクトルの周波数の時間変化の例を示すグラフである。
【0091】
図9において、横軸は時間を表し、縦軸は周波数を表している。なお、図9において、図8と同一のものには同一の符号を付してある。これらのことは、後述する図17においても同様である。
【0092】
図9に示すように、フレーム単位の送信信号TX(t)のうちの送信データに対応するBPSK変調信号mod(t)成分は、キャリア周波数fを中心とした周波数f-fから周波数f+fまでの通過帯域幅Bwのフラットな周波数特性を有する。
【0093】
ダウンチャープ信号Ca(t)成分は、実線271で示す、時間の経過に伴って周波数f+fから周波数f-fまで変化レートβ1で下降する周波数特性を有する、フレーム期間Tの前半のT/2期間の信号である。アップチャープ信号Cb(t)成分は、実線272で示す、時間の経過に伴って周波数f-fから周波数f+fまで変化レートβ2で上昇する周波数特性を有する、フレーム期間Tの後半のT/2期間の信号である。
【0094】
従って、ダウンチャープ信号Ca(t)成分とアップチャープ信号Cb(t)成分からなるVチャープ信号Cr(t)成分の周波数の変化レートは、フレーム期間Tの先頭からT/2期間後にβ1からβ2に切り替わる。即ち、Vチャープ信号Cr(t)成分は、周波数の時間変化を表す直線の形状が実線271および272からなるV字形状であり、かつ、フレーム期間Tの信号である。
【0095】
以上のように、送信信号TX(t)において周波数の変化レートが異なるダウンチャープ信号Ca(t)成分とアップチャープ信号Cb(t)成分の両方が同時刻に存在しない。従って、ダウンチャープ信号Ca(t)成分とアップチャープ信号Cb(t)成分の間で干渉が発生せず、3次高調波歪みが抑制される。その結果、リニアアンプ84として、良好なリニアリティ特性を有しない低価格のリニアアンプを用いることができる。
【0096】
<無線受信装置の構成例>
図10は、本技術を適用した無線受信装置の第1実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【0097】
図10の無線受信装置300は、アンテナ301、フロントエンド部302、同期信号生成部303、同期処理部304、および復号部305により構成される。
【0098】
アンテナ301は、図3の無線送信装置50のアンテナ55から送信されてくる送信信号TX(t)を受信信号RX(t)として取得する。この受信信号RX(t)は、以下の式(5)で表される。
【0099】
【数5】
【0100】
なお、式(5)において、t´=t-δである。δは、無線伝送により生じる時間の遅れである。εTxは無線送信装置50から送信する搬送波の周波数の偏差である。φ(t´)は、時刻t´において無線伝送により発生する位相回転である。この位相回転は、多くの場合、その周波数成分が数Hz程度である緩やかな変化である。アンテナ301は、受信信号RX(t)をフロントエンド部302に供給する。
【0101】
フロントエンド部302は、増幅部311、BPF312、局部発振器313、ミキサ314、およびAD変換部315により構成される。
【0102】
増幅部311は、アンテナ301から供給される受信信号RX(t)を増幅し、BPF312に供給する。BPF312は、増幅部311から供給される受信信号RX(t)の不要な周波数成分を除去し、ミキサ314に供給する。局部発振器313は、キャリア周波数fの搬送波を生成し、ミキサ314に供給する。
【0103】
ミキサ314(ベースバンド信号抽出部)は、局部発振器313から供給される搬送波に基づいて、BPF312から供給される受信信号RX(t)から搬送波成分を除去し、ベースバンド信号を抽出する。ミキサ314は、そのベースバンド信号をAD変換部315に供給する。
【0104】
AD変換部315は、外部から入力されるシステムクロックCLKに基づいて、ミキサ314から供給されるベースバンド信号をIQ信号(複素デジタル信号)IQ(n)に変換する。このIQ信号IQ(n)は、以下の式(6)で表される。
【0105】
【数6】
【0106】
式(6)において、ΔはAD変換部315のサンプリング間隔、即ちシステムクロックCLKの周波数の逆数である。システムクロックCLKの周波数は、例えば1.5MHzであり、シンボルレートfに対応する周波数100kHzと比較して充分高く設定される。δは、無線伝送により生じる時間の遅れである。αは定数であり、εは、無線送信装置50から送信する搬送波の周波数の偏差εTxと局部発振器313により生成される搬送波の周波数の偏差εRxの和であり、無線伝送により生じる周波数の偏差である。φは、無線伝送により生じる位相回転である。
【0107】
式(6)によれば、IQ信号IQ(n)には、時間の遅れδ、周波数の偏差ε、および位相回転φの3種類の偏差が生じている。周波数の偏差εと位相回転φとをまとめて位相回転φ(n)とすると、位相回転φ(n)は以下の式(7)で表すことができる。
【0108】
【数7】
【0109】
式(7)において、ΔはAD変換部315のサンプリング間隔である。AD変換部315は、IQ信号IQ(n)を同期信号生成部303と同期処理部304に供給する。
【0110】
同期信号生成部303は、カウンタ320、デチャープ部321、デチャープ部322、および検出部323により構成される。同期信号生成部303は、AD変換部315から供給されるIQ信号IQ(n)に基づいて、時間の遅れδと位相回転φ(n)を伝送路特性として検出する。
【0111】
具体的には、カウンタ320は、図示せぬシステムコントローラから入力される検出の開始を指示する検出開始信号に応じて、図5のカウンタ240と同様に、システムクロックCLKの1周期ごとにカウント値nをインクリメントするカウントを開始する。カウンタ320は、カウント値nを、デチャープ部321、デチャープ部322、および復号部305に供給する。
【0112】
デチャープ部321(第1のデチャープ部)は、カウンタ320から供給されるカウント値nと変化レートβ1とを用いて、AD変換部315から供給されるIQ信号IQ(n)に対してデチャープ処理を行う。これにより、デチャープ部321はダウンチャープ信号に対応する同期信号であるダウンチャープ同期信号Q(n)(第1のチャープ同期信号)を生成する。デチャープ部321は、そのダウンチャープ同期信号Q(n)を検出部323に供給する。
【0113】
デチャープ部322(第2のデチャープ部)は、カウンタ320から供給されるカウント値nと変化レートβ2とを用いて、AD変換部315から供給されるIQ信号IQ(n)に対してデチャープ処理を行う。これにより、デチャープ部321はアップチャープ同期信号Q(n)(第2のチャープ同期信号)を生成する。デチャープ部322は、そのアップチャープ同期信号Q(n)を検出部323に供給する。
【0114】
検出部323は、ダウンチャープ同期信号Q(n)およびアップチャープ同期信号Q(n)並びに復号部305から供給される誤り検出結果信号ERFに基づいて、時間の遅れδと位相回転φ(n)を検出し、同期処理部304に供給する。
【0115】
同期処理部304は、遅延部331と位相回転補正部332により構成される。同期処理部304は、検出部323から供給される時間の遅れδと位相回転φ(n)に基づいて、AD変換部315から供給されるIQ信号IQ(n)に対して同期処理を行う。
【0116】
具体的には、遅延部331は、時間の遅れδに基づいてIQ信号IQ(n)を遅延させることにより時間同期をとり、時間同期がとれたIQ信号IQ(n)を位相回転補正部332に供給する。
【0117】
位相回転補正部332は、位相回転φ(n)に基づいて、遅延部331から供給されるIQ信号IQ(n)の位相をφ(n)だけ逆回転させることにより、位相同期および周波数同期をとる。これにより、位相回転補正部332は、無線伝送により生じた時間の遅れδ、周波数の偏差ε、および位相回転φの3種類の偏差が除去されたIQ信号IQ(n)を生成し、復号部305に供給する。
【0118】
復号部305は、Vチャープ除去部341、デマッパ342、および誤り訂正部343により構成される。復号部305は、位相回転補正部332から供給されるIQ信号IQ(n)に基づいて送信データを復元する。
【0119】
具体的には、Vチャープ除去部341は、カウンタ320から供給されるカウント値nに基づいて、位相回転補正部332から供給されるIQ信号IQ(n)に含まれるVチャープ信号Cr(t)を除去する。Vチャープ除去部341は、その結果得られるIQ信号IQ(n)をデマッパ342に供給する。
【0120】
デマッパ342(復元部)は、Vチャープ除去部341から供給されるIQ信号IQ(n)から送信データを復元する。具体的には、デマッパ342は、IQ信号IQ(n)のI軸成分の極性に基づいて1または0のデジタル信号を生成し、送信データとする。デマッパ342は、その送信データを誤り訂正部343に供給する。
【0121】
誤り訂正部343(誤り検出部)は、デマッパ342から供給される送信データの誤りを、伝送路で発生した誤りとして検出する。誤り訂正部343は、検出された誤りの量に基づいて誤りの検出の有無を表す検出結果信号ERFを生成し、検出部323に供給する。誤り訂正部343は、誤りが検出された送信データに対して誤り訂正を行い、送信データを復元して出力する。
【0122】
<同期信号抽出部の構成例>
図11は、図10の同期信号生成部303の詳細構成例を示すブロック図である。
【0123】
図11に示すように、同期信号生成部303のデチャープ部321は、不揮発メモリ351と位相逆回転部352により構成される。
【0124】
不揮発メモリ351は、20ビットの各アドレスに、そのアドレスをカウント値nとしたときの8ビットの位相θ(n)を記憶している。位相θ(n)は、変化レートβ1とカウント値nを用いて以下の式(8)で求められる。
【0125】
【数8】
【0126】
式(8)において、modは剰余演算関数を表す。ΔはAD変換部315のサンプリング間隔であり、Nは定数である。fは初期周波数である。式(8)によれば、位相θ(n)は、正の初期周波数+fから変化レートβ1で周波数が時間変化するダウンチャープ信号である。
【0127】
不揮発メモリ351は、カウンタ320から入力されたカウント値nに応じて、そのカウント値nで表されるアドレスに記憶されている位相θ(n)を位相逆回転部352に供給する。
【0128】
位相逆回転部352は、例えば不揮発メモリにより構成される。位相逆回転部352は、不揮発メモリ351から供給される位相θ(n)に基づいて、AD変換部315から供給されるIQ信号IQ(n)に対して位相を逆回転するデチャープ処理を行う。これにより、位相逆回転部352は、正の初期周波数+fから変化レートβ1で時間変化する周波数が補正されたダウンチャープ同期信号Q(n)を生成する。このダウンチャープ同期信号Q(n)は、以下の式(9)で表される。
【0129】
【数9】
【0130】
式(9)において、ΔはAD変換部315のサンプリング間隔である。位相逆回転部352は、ダウンチャープ同期信号Q(n)を検出部323に供給する。
【0131】
デチャープ部322は、不揮発メモリ361と位相逆回転部362により構成される。
【0132】
不揮発メモリ361は、20ビットの各アドレスに、そのアドレスをカウント値nとしたときの8ビットの位相θ(n)を記憶している。位相θ(n)を表す式は、変化レートβ1がβ2に代わる点、正の初期周波数+fが負の初期周波数-fに代わる点、および定数Nの値が式(8)と異なっており、その他は式(8)と同様である。即ち、位相θ(n)は、負の初期周波数-fから変化レートβ2で周波数が時間変化するアップチャープ信号である。
【0133】
不揮発メモリ361は、カウンタ320から入力されたカウント値nに応じて、そのカウント値nで表されるアドレスに記憶されている位相θ(n)を位相逆回転部352に供給する。
【0134】
位相逆回転部362は、例えば不揮発メモリにより構成される。位相逆回転部362は、不揮発メモリ361から供給される位相θ(n)に基づいて、AD変換部315から供給されるIQ信号IQ(n)の位相を逆回転するデチャープ処理を行う。これにより、位相逆回転部362は、負の初期周波数-fから変化レートβ2で時間変化する周波数が補正されたアップチャープ同期信号Q(n)を生成する。このアップチャープ同期信号Q(n)は、以下の式(10)で表される。
【0135】
【数10】
【0136】
式(10)において、ΔはAD変換部315のサンプリング間隔である。位相逆回転部362は、アップチャープ同期信号Q(n)を検出部323に供給する。
【0137】
検出部323は、FFT部371、ピーク抽出部372、FFT部373、ピーク抽出部374、ピーク選択部375、減算部376、除算部377、ピークフィルタ378、逆FFT部379、および逆正接演算部380を備える。検出部323はまた、ピークフィルタ381、逆FFT部382、逆正接演算部383、加算部384、および除算部385により構成される。
【0138】
FFT部371は、デチャープ部321から供給されるダウンチャープ同期信号Q(n)に高速フーリエ変換を施し、周波数応答を求める。FFT部371は、その周波数応答をピーク抽出部372とピークフィルタ378に供給する。
【0139】
ピーク抽出部372は、FFT部371から供給される周波数応答に基づいて、1番目に大きいピーク周波数Fd1、2番目に大きいピーク周波数Fd2、および3番目に大きいピーク周波数Fd3をピーク周波数Fd(第1のピーク周波数)の候補として抽出する。ピーク抽出部372は、そのピーク周波数Fd1乃Fd3をピーク選択部375に供給する。
【0140】
FFT部373は、デチャープ部322から供給されるアップチャープ同期信号Q(n)にフーリエ変換を施し、周波数応答を求める。FFT部373は、その周波数応答をピーク抽出部374とピークフィルタ381に供給する。
【0141】
ピーク抽出部374は、FFT部373から供給される周波数応答に基づいて、1番目に大きいピーク周波数Fu1、2番目に大きいピーク周波数Fu2、および3番目に大きいピーク周波数Fu3をピーク周波数Fu(第2のピーク周波数)の候補として抽出する。ピーク抽出部374は、そのピーク周波数Fu1乃至Fu3をピーク選択部375に供給する。
【0142】
ピーク選択部375は、図10の誤り訂正部343から供給される誤り検出結果信号ERFに基づいて、ピーク周波数Fd1乃至Fd3の中から1つのピーク周波数Fdを選択し、ピーク周波数Fu1乃至Fu3の中から1つのピーク周波数Fuを選択する。
【0143】
具体的には、ピーク選択部375は、最初に、1番目に大きいピーク周波数Fd1とFu1のペアを、ピーク周波数FdとFuのペアとして選択する。
【0144】
しかしながら、マルチパス・フェーディングや混信等による影響でピーク周波数Fd1とFu1のペアがピーク周波数FdとFuのペアとして適切ではない場合、図10のデマッパ342により復元された送信データには多くの誤りが含まれる。従って、誤り訂正部343は、その誤りの量が訂正可能な量を超えている場合、誤り検出の有りを表す1に設定された誤り検出結果信号ERFを検出部323に供給する。
【0145】
この場合、ピーク選択部375は、この誤り検出結果信号ERFに基づいて、2番目に大きいピーク周波数Fd2とFu2のペアをピーク周波数FdとFuのペアとして選択し直す。その結果、デマッパ342により復元される送信データが変更される。変更後の送信データにも訂正可能な量を超える誤りが含まれる場合、誤り検出結果信号ERFは1に設定され、3番目に大きいピーク周波数Fd3とFu3のペアがピーク周波数FdとFuのペアとして選択し直される。
【0146】
ピーク選択部375は、誤り検出結果信号ERFが誤りの検出の無しを表す0に設定される場合、ピーク周波数FdとFuのペアの選択の変更を行わない。
【0147】
以上により、マルチパス・フェーディングや混信等による影響でピーク周波数FdとFuのペアが誤検出されることにより発生する送信データの誤りを抑制することができる。
【0148】
ピーク選択部375は、選択されたピーク周波数Fdを減算部376とピークフィルタ378に供給する。ピーク選択部375は、選択されたピーク周波数Fuを減算部376とピークフィルタ381に供給する。
【0149】
減算部376と除算部377は、ピーク選択部375から供給されるピーク周波数Fdとピーク周波数Fuに基づいて時間の遅れδを検出する時間遅れ検出部として機能する。具体的には、減算部376は、ピーク周波数Fdとピーク周波数Fuの差分を求め、除算部377に供給する。除算部377は、減算部376から供給される差分を2βで除算することにより偏差εを除去し、以下の式(11)で表される時間の遅れδを検出する。
【0150】
【数11】
【0151】
式(11)において、βは変化レートβ1とβ2の絶対値の平均値である。具体的には、β1は負の値であるため、β=(β2-β1)÷2である。除算部377は、時間の遅れδを図10の遅延部331に供給する。
【0152】
ピークフィルタ378、逆FET379、逆正接演算部380、ピークフィルタ381、逆FET382、逆正接演算部383、加算部384、および除算部385は、ピーク周波数FdとFuに基づいて位相回転φ(n)を検出する位相回転検出部として機能する。
【0153】
具体的には、ピークフィルタ378は狭帯域フィルタである。ピークフィルタ378は、ピーク選択部375から供給されるピーク周波数Fdに基づいて、FFT部371から供給される周波数応答からピーク周波数Fd周辺のスペクトル成分を抽出する。ピークフィルタ378は、そのスペクトル成分を逆FFT部379に供給する。
【0154】
逆FFT部379は、ピークフィルタ378から供給されるスペクトル成分を逆フーリエ変換し、その結果得られる信号を逆正接演算部380に供給する。逆正接演算部380は、逆FFT部379から供給される信号の位相成分φ(n)を抽出し、加算部384に供給する。
【0155】
ピークフィルタ381は狭帯域フィルタである。ピークフィルタ381は、ピーク選択部375から供給されるピーク周波数Fuに基づいて、FFT部373から供給される周波数応答からピーク周波数Fu周辺のスペクトル成分を抽出する。ピークフィルタ381は、そのスペクトル成分を逆FFT部382に供給する。
【0156】
逆FFT部382は、ピークフィルタ381から供給されるスペクトル成分を逆フーリエ変換し、その結果得られる信号を逆正接演算部383に供給する。逆正接演算部383は、逆FFT部382から供給される信号の位相成分φ(n)を抽出し、加算部384に供給する。
【0157】
加算部384は、逆正接演算部380から供給される位相成分φ(n)と逆正接演算部383から供給される位相成分φ(n)を加算し、加算結果を除算部385に供給する。除算部385は、加算部384から供給される加算結果を2で除算することにより平均化し、これにより雑音が少ない位相回転φ(n)を検出する。除算部385は、この位相回転φ(n)を図10の位相回転補正部332に供給する。
【0158】
<Vチャープ除去部の構成例>
図12は、図10のVチャープ除去部341の構成例を示すブロック図である。
【0159】
図12のVチャープ除去部341は、デチャープ部401、ノッチフィルタ402、チャープ部403、デチャープ部404、ノッチフィルタ405、チャープ部406、タイミングジェネレータ407、および切り替えスイッチ部408により構成される。
【0160】
デチャープ部401は、図11のデチャープ部321と同様に構成される。デチャープ部401は、図11のカウンタ320から供給されるカウント値nと変化レートβ1とを用いて、位相回転補正部332から供給されるIQ信号IQ(n)に対してデチャープ処理を行う。これにより、デチャープ部401は、フレーム期間Tの前半のT/2期間の周波数成分がフラットである信号を抽出する。
【0161】
なお、IQ信号IQ(n)では、無線伝送により生じた3種類の偏差が補正されているため、デチャープ部401により抽出された信号におけるダウンチャープ信号は、周波数が0Hzである単一キャリアである。デチャープ部401は、抽出された信号をノッチフィルタ402に供給する。
【0162】
ノッチフィルタ402は、デチャープ部401から供給される信号から周波数が0Hzである成分だけを除去することにより、その信号からダウンチャープ信号を除去し、チャープ部403に供給する。
【0163】
チャープ部403は、変化レートβ1が変化レート-β1に代わる点がデチャープ部401と異なっており、その他はデチャープ部401と同様に構成されている。チャープ部403は、カウンタ320から供給されるカウント値nと変化レート-β1を用いて、ノッチフィルタ402から供給される信号に変化レートβ1のチャープ特性を付加する。これにより、チャープ部403は、ダウンチャープ信号Ca(t)が除去されたIQ信号IQ(n)を生成し、切り替えスイッチ部408に供給する。
【0164】
デチャープ部404は、図11のデチャープ部322と同様に構成される。デチャープ部404は、カウンタ320から供給されるカウント値nと変化レートβ2とを用いて、位相回転補正部332から供給されるIQ信号IQ(n)に対してデチャープ処理を行う。これにより、デチャープ部404は、フレーム期間Tの後半のT/2期間の周波数成分がフラットである信号を抽出する。
【0165】
なお、IQ信号IQ(n)では、無線伝送により生じた3種類の偏差が補正されているため、デチャープ部404により抽出された信号におけるアップチャープ信号は、周波数が0Hzである単一キャリアである。デチャープ部404は、抽出された信号をノッチフィルタ405に供給する。
【0166】
ノッチフィルタ405は、デチャープ部404から供給される信号から周波数が0Hzである成分だけを除去することにより、その信号からアップチャープ信号を除去し、チャープ部406に供給する。
【0167】
チャープ部406は、変化レートβ2が変化レート-β2に代わる点がデチャープ部404と異なっており、その他はデチャープ部404と同様に構成されている。チャープ部406は、カウンタ320から供給されるカウント値nと変化レート-β2を用いて、ノッチフィルタ405から供給される信号に変化レートβ2のチャープ特性を付加する。これにより、チャープ部406は、アップチャープ信号Cb(t)が除去されたIQ信号IQ(n)を生成し、切り替えスイッチ部408に供給する。
【0168】
タイミングジェネレータ407は、T/2期間ごとに、フレーム期間の前半と後半の切り替えを表す切り替え信号を生成し、切り替えスイッチ部408に供給する。
【0169】
切り替えスイッチ部408は、タイミングジェネレータ407から供給される切り替え信号に応じて、チャープ部403から供給される信号とチャープ部403から供給される信号の出力を切り替える。これにより、切り替えスイッチ部408は、IQ信号IQ(n)からVチャープ信号Cr(t)が除去されたIQ信号IQ(n)を図10のデマッパ342に出力する。
【0170】
<受信処理の説明>
図13および図14は、無線受信装置300による受信処理を説明するフローチャートである。
【0171】
図13のステップS111において、増幅部311は、アンテナ55から送信されてくる送信信号TX(t)を、アンテナ301を介して受信信号RX(t)として取得し、増幅してBPF312に供給する。
【0172】
ステップS112において、BPF312は、ステップS111で増幅された受信信号RX(t)の不要な周波数成分を除去し、ミキサ314に供給する。ステップS113において、ミキサ314は、局部発振器313から供給される搬送波に基づいて、ステップS112で不要な周波数成分が除去された受信信号RX(t)から搬送波成分を除去し、ベースバンド信号を抽出する。ミキサ314は、そのベースバンド信号をAD変換部315に供給する。
【0173】
ステップS114において、AD変換部315は、外部から入力されるシステムクロックCLKに基づいて、ステップS113で抽出されたベースバンド信号をIQ信号IQ(n)に変換する。AD変換部315は、IQ信号IQ(n)をデチャープ部321、デチャープ部322、および遅延部331に供給する。
【0174】
ステップS115において、デチャープ部321は、カウント値nと変化レートβ1を用いて、ステップS114で得られたIQ信号IQ(n)に対してデチャープ処理を行い、ダウンチャープ同期信号Q(n)を生成する。デチャープ部321は、そのダウンチャープ同期信号Q(n)を検出部323に供給する。
【0175】
ステップS116において、デチャープ部322は、カウント値nと変化レートβ2を用いて、ステップS114で得られたIQ信号IQ(n)に対してデチャープ処理を行い、アップチャープ同期信号Q(n)を生成する。デチャープ部322は、そのアップチャープ同期信号Q(n)を検出部323に供給する。
【0176】
ステップS117において、検出部323は、ステップS115で生成されたダウンチャープ同期信号Q(n)とステップS116で生成されたアップチャープ同期信号Q(n)に基づいて、時間の遅れδと位相回転φ(n)を検出する。検出部323は、その時間の遅れδを遅延部331に供給し、位相回転φ(n)を位相回転補正部332に供給する。
【0177】
ステップS118において、遅延部331は、ステップS117で検出された時間の遅れδに基づいて、ステップS114で得られたIQ信号IQ(n)を遅延させることにより、時間同期をとる。
【0178】
ステップS119において、位相回転補正部332は、ステップS117で検出された位相回転φ(n)に基づいて、ステップS114で得られたIQ信号IQ(n)の位相を-φ(n)だけ逆回転させることにより、周波数同期および位相同期をとる。位相回転補正部332は、その結果得られるIQ信号IQ(n)をVチャープ除去部341に供給する。
【0179】
図14のステップS120において、Vチャープ除去部341は、カウンタ320によりカウントされたカウント値nに基づいて、ステップS119で生成されたIQ信号IQ(n)に含まれるVチャープ信号Cr(t)を除去する。Vチャープ除去部341は、その結果得られるIQ信号IQ(n)をデマッパ342に供給する。
【0180】
ステップS121において、デマッパ342は、ステップS120で生成されたIQ信号IQ(n)から送信データを復元し、その送信データを誤り訂正部343に供給する。
【0181】
ステップS122において、誤り訂正部343は、ステップS121で復元された送信データの誤りを検出する。
【0182】
ステップS123において、誤り訂正部343は、ステップS122で検出された誤りの量が訂正可能な量を超えているか否かを判定する。ステップS123で誤りの量が訂正可能な量を超えていると判定された場合、誤り訂正部343は、検出部323に供給する誤り検出結果信号ERFを1に設定する。これにより、ピーク選択部375は、ピーク周波数FdとFuのペアを選択し直す。
【0183】
そして、処理は図13のステップS117に戻り、検出部323は、選択し直されたピーク周波数FdとFuのペアに基づいて時間の遅れδと位相回転φ(n)を検出し、ステップS118乃至S123の処理が繰り返される。
【0184】
一方、ステップS123で誤りの量が訂正可能な量を超えていないと判定された場合、誤り訂正部343は、ピーク選択部375に供給する誤り検出結果信号ERFを0に設定し、処理をステップS124に進める。
【0185】
ステップS124において、誤り訂正部343は、直前のステップS121で復元された送信データに対して誤り訂正を行い、誤り訂正後の送信データを出力する。そして、受信処理は終了する。
【0186】
<コンスタレーションの例>
図15は、無線受信装置300において観測されるコンスタレーションの例を示す。
【0187】
図15のAに示すように、同期処理前のIQ信号IQ(n)のコンスタレーションは、無線伝送により生じた周波数の偏差εや位相回転φ(t)により、ぐるぐると回転している。
【0188】
これに対して、図15のBに示すように、同期処理部304による同期処理後のIQ信号IQ(n)のコンスタレーションでは、回転が停止している。従って、IQ信号IQ(n)は、Vチャープ信号Cr(t)を用いて同期がとられており、復号可能な状態になっていることがわかる。送信データに対してBPSK変調が行われているため、IQ信号IQ(n)のコンスタレーションのI軸は2つのレベルに分割されている。IQ信号IQ(n)のコンスタレーションでは、リング状のVチャープ信号Cr(t)が観測されている。
【0189】
図15のCに示すように、Vチャープ除去部341によりVチャープ信号Cr(t)が除去されたIQ信号IQ(n)のコンスタレーションでは、Vチャープ信号Cr(t)の影響が軽減され、BPSK変調による2つの点がより明確に観測される。従って、IQ信号IQ(n)を復号し、送信データを得ることができる。
【0190】
<実験結果の例>
図16は、無線送信装置50と無線受信装置300を用いて行った実験の結果の例を示す図である。
【0191】
図16の実験では、無線受信装置300から約4km離れた地点に配置された無線送信装置50が1秒ごとにフレーム単位の送信信号を送信し、移動中の車両に搭載された無線受信装置300が、その送信信号を受信する。
【0192】
図16では、地図上に無線受信装置300の位置を示すアイコン421が表されている。図16において、受信が成功したときの無線受信装置300の位置を表すアイコン421の色は、白色であり、失敗したときの無線受信装置300の位置を表すアイコン421の色は灰色である。
【0193】
図16のAは、ピーク周波数FdとFuのペアが1番目に大きいピーク周波数Fd1、とFu1のペアに固定された場合の実験結果を示している。この場合、図16のAに示すように、マルチパス・フェーディング等の影響により、無線受信装置300は受信に失敗する場合がある。
【0194】
これに対して、図16のBは、ピーク周波数FdとFuのペアが誤り検出結果信号ERFに基づいて変更される場合の実験結果を示している。この場合、図16のBに示すように、マルチパス・フェーディング等の影響による受信の失敗がほとんど発生しない。
【0195】
以上により、無線受信装置300は、誤り検出結果信号ERFに基づいてピーク周波数FdとFuのペアを選択し直すことにより、マルチパス・フェーディング等の影響を除去して、より安定的に受信を行うことができることがわかる。
【0196】
以上のように、無線送信装置50のチャープ信号生成部52は、無線受信装置300において同期処理に用いられるVチャープ信号Cr(t)を生成する。加算部53は、そのVチャープ信号Cr(t)と送信データとを合成してベースバンド信号を生成する。ミキサ82は、そのベースバンド信号を搬送波に重畳する。
【0197】
従って、無線受信装置300において、簡単な構成で、伝送路においてマルチパス・フェーディングや混信、雑音等が発生した場合であっても、Vチャープ信号Cr(t)を用いて正確な同期処理を実現することができる。その結果、安定した無線伝送を実現することができる。
【0198】
無線送信装置50は、プリアンブル等の代わりにVチャープ信号Cr(t)を送信するので、プリアンブル等の送信による電力の消費を削減し、消費電力を低下させることができる。
【0199】
無線受信装置300のミキサ314は、受信信号RX(t)からベースバンド信号を抽出し、AD変換部315は、そのベースバンド信号をIQ信号IQ(n)に変換する。デチャープ部321および322は、そのIQ信号IQ(n)からダウンチャープ同期信号Q(n)とアップチャープ同期信号Q(n)を生成する。同期処理部304は、そのダウンチャープ同期信号Q(n)とアップチャープ同期信号Q(n)に基づいて、IQ信号IQ(n)に対して同期処理を行う。
【0200】
従って、無線受信装置300は、簡単な構成で、伝送路においてマルチパス・フェーディングや混信、雑音等が発生した場合であっても正確な同期処理を実現することができる。その結果、安定した無線伝送を実現することができる。
【0201】
<2.第2実施の形態>
<送信信号のスペクトルの周波数の時間変化の例>
本技術を適用した無線送信装置および無線受信装置の第2実施の形態は、ダウンチャープ信号とアップチャープ信号の両方の期間がフレーム期間Tである点が、無線送信装置50および無線受信装置300と異なっている。その他は無線送信装置50および無線受信装置300と同様に構成されている。従って、以下では、第2実施の形態における送信信号についてのみ説明する。
【0202】
図17は、第2実施の形態におけるフレーム単位の送信信号のスペクトルの周波数の時間変化の例を示すグラフである。
【0203】
図17に示すように、フレーム単位の送信信号のうちの送信データに対応するBPSK変調信号成分の周波数特性は、図9の場合と同様である。ダウンチャープ信号成分は、図17の実線471で示す、時間の経過に伴って周波数f+fから周波数f-fまで変化レートβ11で下降する周波数特性を有する、フレーム期間Tの信号である。アップチャープ信号成分は、図17の実線472で示す、時間の経過に伴って周波数f-fから周波数f+fまで変化レートβ12で上昇する周波数特性を有する、フレーム期間Tの信号である。
【0204】
従って、ダウンチャープ信号成分とアップチャープ信号成分からなるチャープ信号成分の周波数の変化レートは、フレーム期間Tの先頭からT/2期間後に交差する。即ち、チャープ信号成分は、周波数の時間変化を表す直線の形状が実線471および472からなるX字形状であり、かつ、フレーム期間Tの信号である。
【0205】
以上のように、ダウンチャープ信号とアップチャープ信号の両方の期間がフレーム期間Tである場合であっても、無線受信装置は、そのダウンチャープ信号とアップチャープ信号を用いて正確な同期処理を実現することができる。
【0206】
本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0207】
例えば、上述した複数の実施の形態の全てまたは一部を組み合わせた形態を採用することができる。
【0208】
また、上述のフローチャートで説明した各ステップは、1つの装置で実行する他、複数の装置で分担して実行することができる。
【0209】
さらに、1つのステップに複数の処理が含まれる場合には、その1つのステップに含まれる複数の処理は、1つの装置で実行する他、複数の装置で分担して実行することができる。
【0210】
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、本明細書に記載されたもの以外の効果があってもよい。
【0211】
本技術は、以下の構成を取ることができる。
(1)
無線受信装置において同期処理に用いられる、異なる変化レートで周波数が時間変化する複数のチャープ信号からなる同期チャープ信号を生成するチャープ信号生成部と、
前記チャープ信号生成部により生成された前記同期チャープ信号と送信データとを合成してベースバンド信号を生成するベースバンド信号生成部と、
前記ベースバンド信号生成部により生成された前記ベースバンド信号を搬送波に重畳する重畳部と
を備える無線送信装置。
(2)
前記同期チャープ信号の期間は、前記送信データのフレーム期間である
ように構成された
前記(1)に記載の無線送信装置。
(3)
前記複数のチャープ信号は、第1のチャープ信号と第2のチャープ信号からなり、
前記第1のチャープ信号の前記変化レートである第1の変化レートと前記第2のチャープ信号の前記変化レートである第2の変化レートの絶対値は等しく、符号は異なる
ように構成される
前記(2)に記載の無線送信装置。
(4)
前記第1のチャープ信号の期間は、前記フレーム期間の前半の期間であり、前記第2のチャープ信号の期間は、前記フレーム期間の後半の期間である
ように構成された
前記(3)に記載の無線送信装置。
(5)
前記第1のチャープ信号および前記第2のチャープ信号の両方の期間は前記フレーム期間である
ように構成された
前記(3)に記載の無線送信装置。
(6)
前記送信データを符号化して変調する変調部
をさらに備え、
前記ベースバンド信号生成部は、前記同期チャープ信号と前記変調部により変調された前記送信データとを合成して前記ベースバンド信号を生成する
ように構成された
前記(1)乃至(5)のいずれかに記載の無線送信装置。
(7)
無線送信装置が、
無線受信装置において同期処理に用いられる、異なる変化レートで周波数が時間変化する複数のチャープ信号からなる同期チャープ信号を生成するチャープ信号生成ステップと、
前記チャープ信号生成ステップの処理により生成された前記同期チャープ信号と送信データとを合成してベースバンド信号を生成するベースバンド信号生成ステップと、
前記ベースバンド信号生成ステップの処理により生成された前記ベースバンド信号を搬送波に重畳する重畳ステップと
を含む無線送信方法。
(8)
異なる変化レートで周波数が変化する複数のチャープ信号からなる同期チャープ信号と送信データとを合成することにより生成されたベースバンド信号が重畳された搬送波である受信信号から前記ベースバンド信号を抽出するベースバンド信号抽出部と、
前記ベースバンド信号抽出部により抽出された前記ベースバンド信号をIQ信号に変換する変換部と、
前記変換部により変換された前記IQ信号から同期信号を生成する同期信号生成部と、
前記同期信号生成部により生成された前記同期信号に基づいて、前記IQ信号に対して同期処理を行う同期処理部と
を備える無線受信装置。
(9)
前記同期チャープ信号の期間は、前記送信データのフレーム期間である
ように構成された
前記(8)に記載の無線受信装置。
(10)
前記複数のチャープ信号は、第1のチャープ信号と第2のチャープ信号からなり、
前記第1のチャープ信号の前記変化レートである第1の変化レートと前記第2のチャープ信号の前記変化レートである第2の変化レートの絶対値は等しく、符号は異なる
ように構成される
前記(9)に記載の無線受信装置。
(11)
前記第1のチャープ信号の期間は、前記フレーム期間の前半の期間であり、前記第2のチャープ信号の期間は、前記フレーム期間の後半の期間である
ように構成された
前記(10)に記載の無線受信装置。
(12)
前記第1のチャープ信号および前記第2のチャープ信号の両方の期間は前記フレーム期間である
ように構成された
前記(10)に記載の無線受信装置。
(13)
前記複数のチャープ信号は、第1のチャープ信号と第2のチャープ信号からなり、
前記同期信号生成部は、
前記第1のチャープ信号の前記変化レートである第1の変化レートを用いて前記IQ信号に対してデチャープ処理を行うことにより、前記第1のチャープ信号に対応する前記同期信号である第1のチャープ同期信号を生成する第1のデチャープ部と、
前記第2のチャープ信号の前記変化レートである第2の変化レートを用いて前記IQ信号に対してデチャープ処理を行うことにより、前記第2のチャープ信号に対応する前記同期信号である第2のチャープ同期信号を生成する第2のデチャープ部と
を備える
前記(8)乃至(12)のいずれかに記載の無線受信装置。
(14)
前記同期信号生成部は、
前記第1のデチャープ部により生成された前記第1のチャープ同期信号と前記第2のデチャープ部により生成された前記第2のチャープ同期信号に基づいて、前記受信信号における時間の遅れを検出する検出部
をさらに備え、
前記同期処理部は、前記検出部により検出された前記時間の遅れに基づいて、前記IQ信号に対して前記同期処理を行う
ように構成された
前記(13)に記載の無線受信装置。
(15)
前記検出部は、
前記第1のチャープ同期信号から第1のピーク周波数の候補を抽出する第1のピーク抽出部と、
前記第2のチャープ同期信号から第2のピーク周波数の候補を抽出する第2のピーク抽出部と、
前記第1のピーク抽出部により抽出された前記第1のピーク周波数の候補の中から1つの第1のピーク周波数を選択し、前記第2のピーク抽出部により抽出された前記第2のピーク周波数の中から1つの第2のピーク周波数を選択するピーク選択部と、
前記ピーク選択部により選択された前記第1のピーク周波数と前記第2のピーク周波数とに基づいて、前記時間の遅れを検出する時間遅れ検出部と
を備える
前記(14)に記載の無線受信装置。
(16)
前記同期処理部による前記同期処理が行われた前記IQ信号から前記送信データを復元する復元部と、
前記復元部により復元された前記送信データの誤りを検出する誤り検出部と
をさらに備え、
前記ピーク選択部は、前記誤り検出部による誤り検出結果に基づいて、前記第1のピーク周波数と前記第2のピーク周波数の選択をやり直す
ように構成された
前記(15)に記載の無線受信装置。
(17)
前記同期信号生成部は、
前記第1のデチャープ部により生成された前記第1のチャープ同期信号と前記第2のデチャープ部により生成された前記第2のチャープ同期信号に基づいて、前記受信信号における位相回転を検出する検出部
をさらに備え、
前記同期処理部は、前記検出部により検出された前記位相回転に基づいて、前記IQ信号に対して前記同期処理を行う
ように構成された
前記(13)に記載の無線受信装置。
(18)
前記検出部は、
前記第1のチャープ同期信号から第1のピーク周波数の候補を抽出する第1のピーク抽出部と、
前記第2のチャープ同期信号から第2のピーク周波数の候補を抽出する第2のピーク抽出部と、
前記第1のピーク抽出部により抽出された前記第1のピーク周波数の候補の中から1つの第1のピーク周波数を選択し、前記第2のピーク抽出部により抽出された前記第2のピーク周波数の中から1つの第2のピーク周波数を選択するピーク選択部と、
前記ピーク選択部により選択された前記第1のピーク周波数と前記第2のピーク周波数とに基づいて、前記位相回転を検出する位相回転検出部と
を備える
前記(17)に記載の無線受信装置。
(19)
前記同期処理部による前記同期処理が行われた前記IQ信号から前記送信データを復元する復元部と、
前記復元部により復元された前記送信データの誤りを検出する誤り検出部と
をさらに備え、
前記ピーク選択部は、前記誤り検出部による誤り検出結果に基づいて、前記第1のピーク周波数と前記第2のピーク周波数の選択をやり直す
ように構成された
前記(18)に記載の無線受信装置。
(20)
無線受信装置が、
異なる変化レートで周波数が変化する複数のチャープ信号からなる同期チャープ信号と送信データとを合成することにより生成されたベースバンド信号が重畳された搬送波である受信信号から前記ベースバンド信号を抽出するベースバンド信号抽出ステップと、
前記ベースバンド信号抽出ステップの処理により抽出された前記ベースバンド信号をIQ信号に変換する変換ステップと、
前記変換ステップの処理により変換された前記IQ信号から同期信号を生成する同期信号生成ステップと、
前記同期信号生成ステップの処理により生成された前記同期信号に基づいて、前記IQ信号に対して同期処理を行う同期処理ステップと
を含む無線受信方法。
【符号の説明】
【0212】
50 無線送信装置, 51 変調部, 52 チャープ信号生成部, 53 加算部, 82 ミキサ, 300 無線受信装置, 303 同期信号生成部, 304 同期処理部, 314 ミキサ, 315 AD変換部, 321,322 デチャープ部, 323 検出部, 342 デマッパ, 343 誤り訂正部, 372,374 ピーク抽出部, 375 ピーク選択部, 376 減算部, 377 除算部, 384 加算部, 385 除算部
図1
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