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特開2024-161836ウェーハの熱処理方法及びウェーハの熱処理炉
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161836
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】ウェーハの熱処理方法及びウェーハの熱処理炉
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20241113BHJP
   H01L 21/22 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
H01L21/31 E
H01L21/22 501N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076922
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】桑野 嘉宏
【テーマコード(参考)】
5F045
【Fターム(参考)】
5F045AA20
5F045AB32
5F045AC11
5F045AD01
5F045AE29
5F045AF03
5F045BB02
5F045BB03
5F045DP20
5F045DQ06
5F045EK02
5F045EK06
5F045GB05
5F045GB17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ウェーハ表面に形成された酸化膜の厚さのばらつきを低減する、熱処理方法及び熱処理炉を提供す。
【解決手段】ウェーハの熱処理炉1において、制御部4は、処理空間2に格納された半導体ウェーハの上方及び下方の夫々において半導体ウェーハが並ぶ方向に沿って区画された複数の領域温度を制御するように複数の加熱部3の出力を制御し、計測部5により、各領域の温度を計測し、制御部により、複数の領域の各々における原料ガスの濃度と、計測した各領域の温度とのいずれかに基づいて、複数の加熱部の出力を制御する。加熱部は、処理空間に格納された半導体ウェーハの上方及び下方の夫々において、半導体ウェーハが並ぶ方向に沿って複数配置され、制御部は、処理空間に格納された半導体ウェーハの上方及び下方の夫々において半導体ウェーハが並ぶ方向に沿って区画された複数の領域の温度を制御するように複数の加熱部の出力を制御する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理の対象である複数枚の半導体ウェーハを格納する処理空間と、前記処理空間を加熱する複数の加熱部と、前記複数の加熱部の出力を制御する制御部と、前記処理空間内の温度を計測する計測部と、前記処理空間に原料ガスを導入する導入部と、を備えた熱処理炉を用いて行う、ウェーハの熱処理方法であって、
前記加熱部は、前記処理空間に格納された前記半導体ウェーハの上方及び下方のそれぞれにおいて、前記半導体ウェーハが並ぶ方向に沿って複数配置されており、
前記制御部は、前記処理空間に格納された前記半導体ウェーハの上方及び下方のそれぞれにおいて前記半導体ウェーハが並ぶ方向に沿って区画された複数の領域の温度を各別に制御するように前記複数の加熱部の出力を各別に制御するように構成され、
前記計測部により、各前記領域の温度を各別に計測する工程と、
前記制御部により、前記複数の領域の各々における前記原料ガスの濃度と、計測した各前記領域の温度との少なくともいずれかに基づいて、前記複数の加熱部の出力を各別に制御する工程と、を含むことを特徴とする、ウェーハの熱処理方法。
【請求項2】
前記制御部は、
前記半導体ウェーハが並ぶ方向において、前記導入部からの距離が大きくなるにつれて温度が高くなることと、
上下方向における下方ほど温度が高くなることと、
のうち少なくともいずれか一方を満たすように、前記複数の加熱部の出力を各別に制御するように構成された、請求項1に記載のウェーハの熱処理方法。
【請求項3】
前記処理空間内の前記原料ガスの濃度は、シミュレーションによって計算され、
前記制御部は、前記シミュレーションによって計算した前記原料ガスの濃度に基づいて、前記複数の加熱部の出力を各別に制御する、請求項1に記載のウェーハの熱処理方法。
【請求項4】
熱処理の対象である複数枚の半導体ウェーハを格納する処理空間と、
前記処理空間を加熱する複数の加熱部と、
前記複数の加熱部の出力を制御する制御部と、
前記処理空間内の温度を計測する計測部と、
前記処理空間に原料ガスを導入する導入部と、を備え、
前記加熱部は、前記処理空間に格納された前記半導体ウェーハの上方及び下方のそれぞれにおいて、前記半導体ウェーハが並ぶ方向に沿って複数配置され、
前記制御部は、前記処理空間に格納された前記半導体ウェーハの上方及び下方のそれぞれにおいて前記半導体ウェーハが並ぶ方向に沿って区画された複数の領域の温度を各別に制御するように前記複数の加熱部の出力を各別に制御するように構成されていることを特徴とする、ウェーハの熱処理炉。
【請求項5】
前記制御部は、前記複数の領域の各々における前記原料ガスの濃度と、前記計測部により計測した各前記領域の温度との少なくともいずれかに基づいて、前記複数の加熱部の出力を各別に制御するように構成されている、請求項4に記載のウェーハの熱処理炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの熱処理方法及びウェーハの熱処理炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウェーハの表面に酸化膜を形成するために、熱処理炉にウェーハを搬入し、石英ボートにウェーハを載置し、酸素ガスを導入しながらヒーター等により熱処理を行うことがなされている(例えば特許文献1)。
【0003】
図1は、従来の横型熱処理炉の構造を示す図である。入口から流入した酸素ガスがウェーハ表面と反応することによりウェーハ表面に酸化膜が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2553550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように形成されたウェーハの酸化膜は、ウェーハ間(上記熱処理に供する同一ロットのウェーハ間)及びウェーハ面内において厚さのばらつきが生じてしまう場合があった。
【0006】
図2は、従来例におけるウェーハ間の酸化膜の厚さのばらつきを示す図である。図3は、従来例におけるウェーハ間及びウェーハ面内における酸化膜の厚さのばらつきを示す図である。図1に示した熱処理炉を用いて図7に示すような熱処理シーケンスで熱処理を行った。図2図3では、ウェーハ間で酸化膜の厚さのばらつきが生じたことが示されている。なお、図2におけるH7、H13、H31とは、それぞれ、炉口側のボードに載置されたウェーハを炉口側から1番目と数えるときの、7番目、13番目、31番目のウェーハである(図6参照)。また、図2におけるS10、S28、S34とは、それぞれ、炉奥側のボードに載置されたウェーハを炉口側から1番目と数えるときの、10番目、28番目、34番目のウェーハである(図6参照)。図2に示すように、酸素ガスの導入口に近い炉奥側から酸素ガスの排出口に近い炉口側に向かって酸化膜がより薄くなる傾向が見て取れる。膜厚の変動係数(CV値)は、H7で0.009、H13で0.011、H31で0.010、S10で0.007、S28で0.008、S34で0.007であった。図3では、各ウェーハのウェーハ面内で酸化膜の厚さのばらつきが生じたことが示されている。図3においては色が濃い領域ほど酸化膜がより厚いことを示しており、いずれのウェーハにおいても下方から上方に向かって酸化膜がより厚くなる傾向が見て取れる。
【0007】
そこで、本発明は、ウェーハ表面に形成された酸化膜の厚さのばらつきを低減し得る、ウェーハの熱処理方法及びウェーハの熱処理炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)熱処理の対象である複数枚の半導体ウェーハを格納する処理空間と、前記処理空間を加熱する複数の加熱部と、前記複数の加熱部の出力を制御する制御部と、前記処理空間内の温度を計測する計測部と、前記処理空間に原料ガスを導入する導入部と、を備えた熱処理炉を用いて行う、ウェーハの熱処理方法であって、
前記加熱部は、前記処理空間に格納された前記半導体ウェーハの上方及び下方のそれぞれにおいて、前記半導体ウェーハが並ぶ方向に沿って複数配置されており、
前記制御部は、前記処理空間に格納された前記半導体ウェーハの上方及び下方のそれぞれにおいて前記半導体ウェーハが並ぶ方向に沿って区画された複数の領域の温度を各別に制御するように前記複数の加熱部の出力を各別に制御するように構成され、
前記計測部により、各前記領域の温度を各別に計測する工程と、
前記制御部により、前記複数の領域の各々における前記原料ガスの濃度と、計測した各前記領域の温度との少なくともいずれかに基づいて、前記複数の加熱部の出力を各別に制御する工程と、を含むことを特徴とする、ウェーハの熱処理方法。
【0009】
(2)前記制御部は、
前記半導体ウェーハが並ぶ方向において、前記導入部からの距離が大きくなるにつれて温度が高くなることと、
上下方向における下方ほど温度が高くなることと、
のうち少なくともいずれか一方を満たすように、前記複数の加熱部の出力を各別に制御するように構成された、前記(1)に記載のウェーハの熱処理方法。
【0010】
(3)前記処理空間内の前記原料ガスの濃度は、シミュレーションによって計算され、
前記制御部は、前記シミュレーションによって計算した前記原料ガスの濃度に基づいて、前記複数の加熱部の出力を各別に制御する、前記(1)に記載のウェーハの熱処理方法。
【0011】
(4)熱処理の対象である複数枚の半導体ウェーハを格納する処理空間と、
前記処理空間を加熱する複数の加熱部と、
前記複数の加熱部の出力を制御する制御部と、
前記処理空間内の温度を計測する計測部と、
前記処理空間に原料ガスを導入する導入部と、を備え、
前記加熱部は、前記処理空間に格納された前記半導体ウェーハの上方及び下方のそれぞれにおいて、前記半導体ウェーハが並ぶ方向に沿って複数配置され、
前記制御部は、前記処理空間に格納された前記半導体ウェーハの上方及び下方のそれぞれにおいて前記半導体ウェーハが並ぶ方向に沿って区画された複数の領域の温度を各別に制御するように前記複数の加熱部の出力を各別に制御するように構成されていることを特徴とする、ウェーハの熱処理炉。
【0012】
(5)前記制御部は、前記複数の領域の各々における前記原料ガスの濃度と、前記計測部により計測した各前記領域の温度との少なくともいずれかに基づいて、前記複数の加熱部の出力を各別に制御するように構成されている、前記(4)に記載のウェーハの熱処理炉。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ウェーハ表面に形成された酸化膜の厚さのばらつきを低減し得る、ウェーハの熱処理方法及びウェーハの熱処理炉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】従来のウェーハの熱処理炉の構造を示す図である。
図2】従来例におけるウェーハ間の酸化膜の厚さのばらつきを示す図である。
図3】従来例におけるウェーハ間及びウェーハ面内における酸化膜の厚さのばらつきを示す図である。
図4】本発明の一実施形態にかかるウェーハの熱処理炉の構造を示す図である。
図5】変形例にかかるウェーハの熱処理炉の構造を示す図である。
図6】ボート上のウェーハの位置を示す図である。
図7】熱処理シーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
【0016】
<ウェーハの熱処理炉>
まず、本発明の一実施形態にかかるウェーハの熱処理炉について例示説明する。図4は、本発明の一実施形態にかかるウェーハの熱処理炉の構造を示す図である。本例では、ウェーハの熱処理炉は、横型熱処理炉である。
【0017】
図4に示すように、このウェーハの熱処理炉1は、熱処理の対象である複数枚の半導体ウェーハWを格納する処理空間2と、処理空間2を加熱する複数の加熱部3と、複数の加熱部3の出力を制御する制御部4と、処理空間2内の温度を計測する計測部5と、処理空間2に原料ガス(酸素ガス等)を導入する導入部6と、原料ガス(酸素ガス等)を排出する排出部7と、を備えている。
【0018】
処理空間2は、図示例では、反応管8で囲われた空間である。反応管8は、本例では、石英からなる。反応管8は、前述の導入部6を炉奥側に有しており、前述の排出部7を炉口側に有している。反応管8は、本例では、チューブ9で囲われている。チューブ9は、本例では、SiCからなる。処理空間2内には、熱処理の対象である半導体ウェーハWを載置するためのボート10が設けられる。本例では、ボート10は、石英からなる。図示例では、半導体ウェーハWの軸方向が水平方向(紙面左右方向)となるように、複数枚の半導体ウェーハWがボート10上に載置されている。なお、図4において、ボート10の搬送口は、図示を省略している。
【0019】
加熱部3は、本例では、ヒーターである。本実施形態において、加熱部3は、処理空間2に格納された半導体ウェーハWの上方及び下方のそれぞれにおいて、半導体ウェーハWが並ぶ方向(前述のように水平方向)に沿って複数配置されている。図示例では、半導体ウェーハWの上方には、3つのヒーター3a、3c、3eが配置されており、半導体ウェーハWの下方には、3つのヒーター3b、3d、3fが配置されている。図示例では、ヒーター3a、3bの水平方向の位置及び大きさがほぼ揃っている。また、ヒーター3c、3dの水平方向の位置及び大きさがほぼ揃っている。また、ヒーター3e、3fの水平方向の位置及び大きさがほぼ揃っている。加熱部3の半導体ウェーハWが並ぶ方向に沿って配置される個数は、図示例では上方及び下方のそれぞれで3つずつであるが、2つずつ又は4つ以上ずつとすることもできる。
【0020】
制御部4は、処理空間2に格納された半導体ウェーハWの上方及び下方のそれぞれにおいて半導体ウェーハWが並ぶ方向に沿って区画された複数の領域の温度を各別に制御するように複数の加熱部3の出力を各別に制御するように構成されている。本例では、ヒーター3a、3bが位置する領域と、ヒーター3c、3dが位置する領域と、ヒーター3e、3fが位置する領域と、の3つの領域の各々を各別に制御するように構成されている。すなわち、本例では、制御部4は、少なくとも、ヒーター3a、3bと、ヒーター3c、3dと、ヒーター3e、3fと、を各別に制御するように構成されている。制御部4は、ヒーター3a~3fの6つの各々を各別に制御するように構成されていることがより好ましい。制御部4としては、既知のプロセッサを用いることができる。
【0021】
計測部5は、本例では、温度計である。図示例では、6つの計測部5a~5fが、半導体ウェーハWの上方及び下方のそれぞれにおいて半導体ウェーハWが並ぶ方向に沿って3つずつ、各領域のそれぞれに配置されており、これにより、計測部5により、前記各領域の温度を各別に計測することができる。計測部5の個数は、図示例では、6個であるが、領域の数(半導体ウェーハWの上方及び下方で加熱部3の半導体ウェーハWが並ぶ方向に沿って配置される個数の合計)と同じとすることができ、2~5個又は7個以上であり得る。
【0022】
原料ガスは、導入部6から導入されて整流板(バッフル)6aにより整流され、処理空間2内を炉奥側から炉口側に流れていく。
【0023】
図5は、変形例にかかるウェーハの熱処理炉の構造を示す図である。図4の例は、原料ガスの導入部6を加熱部3(3e、3f)により加熱する構成になっていたのに対し、図5の例では、加熱部3(3e、3f)とは別に、ガス用加熱部11を設けている。図5の例によれば、領域ごとの加熱とは独立した加熱温度や加熱時間により原料ガスを加熱することができる。本例では、ガス用加熱部11もヒーターである。
【0024】
<ウェーハの熱処理方法>
本発明の一実施形態にかかるウェーハの熱処理方法は、一例としては、上記の実施形態(図4)及び変形例(図5)にかかるウェーハの熱処理炉を用い、原料ガスとして酸素ガスを用いてウェーハ表面に酸化膜を形成する熱処理工程として実行することができる。本実施形態のウェーハの熱処理方法では、計測部5により、各前記領域の温度を各別に計測する工程と、制御部4により、複数の領域の各々における原料ガスの濃度と、計測した各前記領域の温度との少なくともいずれかに基づいて、複数の加熱部3の出力を各別に制御する工程と、を含む。
【0025】
<作用効果>
図1図4図5にかかるウェーハの熱処理炉において、導入部6から流入した酸素ガスは、半導体ウェーハWの表面と反応して酸化膜を形成しながら炉奥側から炉口側へと向かうため炉奥側の半導体ウェーハWとの反応で酸素ガスが消費された分、炉口側の半導体ウェーハWと接触する酸素ガスは濃度が低下したものとなっている。このため、高濃度の酸素ガスは、炉奥側(導入部6側)の半導体ウェーハWを酸化しやすく、炉口側においては比較的低濃度の酸素ガスによる酸化となるため、その他の熱処理条件等が同じであれば、炉奥側の酸化膜厚は炉口側の酸化膜厚よりも厚くなる傾向となり、図2に示したようにウェーハ間で酸化膜厚のばらつきが生じていた。
また、図3に示したように、ウェーハ面内においては、ウェーハ上方と比較して下方の方が、酸化膜厚が薄くなる傾向があるという問題点がある。これは、導入部6から導入された原料ガスの温度が炉内雰囲気よりも低いために密度差によって炉の下方に流れやすく、炉の上方と下方とで温度差が発生している(上方の方が、温度が高めとなる)ためだと考えられる。
【0026】
これに対し、本実施形態のウェーハの熱処理炉1では、加熱部3は、処理空間2に格納された半導体ウェーハWの上方及び下方のそれぞれにおいて、半導体ウェーハWが並ぶ方向に沿って複数配置され、制御部4は、処理空間2に格納された前記半導体ウェーハWの上方及び下方のそれぞれにおいて半導体ウェーハWが並ぶ方向に沿って区画された複数の領域の温度を各別に制御するように複数の加熱部3の出力を各別に制御するように構成されている。
これにより、制御部4により、上記のような炉奥側と炉口側との膜厚の差を低減するように複数の領域の温度を各別に制御し、及び/又は、上記のようなウェーハ上方と下方との膜厚の差を低減するように複数の領域の温度を各別に制御することができる。
以上のように、本実施形態のウェーハの熱処理炉1によれば、ウェーハ表面に形成された酸化膜の厚さのばらつきを低減することができる。
【0027】
ここで、本実施形態のウェーハの熱処理炉1では、制御部4は、複数の領域の各々における原料ガスの濃度と、計測部5により計測した各前記領域の温度との少なくともいずれかに基づいて、複数の加熱部3の出力を各別に制御するように構成されていることが好ましい。これにより、ウェーハ表面に形成された酸化膜の厚さのばらつきを有効に低減することができる。
【0028】
例えば、制御部4が、原料ガスの濃度が低い領域の温度を高くするように制御可能であるように構成されていることにより、膜厚の均一化を図ることができる。原料ガスの濃度は、上述のように、通常は、炉奥側(導入部6側)ほど高濃度であることから、制御部4は、半導体ウェーハWが並ぶ方向において、導入部6からの距離が大きくなるにつれて温度が高くなるように制御することができる。あるいは、処理空間2内の(領域ごとの)原料ガスの濃度は、シミュレーションによって計算され又は実測され、制御部4は、シミュレーションによって計算した又は実測された原料ガスの濃度に基づいて(原料ガスの濃度が低い領域ほど温度を高くするように)、複数の加熱部3の出力を各別に制御するように構成されていることも好ましい。このような手法は、特に、ウェーハ間の酸化膜の厚さのばらつきを低減するのに好ましい。原料ガスの濃度の差に応じて、どの程度加熱温度に差を設けるかについては、理論やシミュレーションや過去のデータ等を用いて適宜設定することができる。
【0029】
また、例えば、制御部4が、温度が低い領域の温度を高くするように(温度差を低減するように)加熱するように制御可能であるように構成されていることにより、膜厚の均一化を図ることができる。温度は、上述のように、通常は、ウェーハの上方の温度が高めとなることから、上下方向における下方ほど温度が高くなるように制御することができる。あるいは、制御部4は、シミュレーションによって計算した又は実測された、領域ごとの温度に基づいて、温度が低い領域ほど温度を高くするように加熱するように制御するように構成されていることも好ましい。処理空間2内の(領域ごとの)温度は、シミュレーションによって計算され又は実測され、制御部4は、シミュレーションによって計算した又は実測された温度に基づいて(温度差を低減するように)、複数の加熱部3の出力を各別に制御することもできる。このような手法は、特に、ウェーハ面内の酸化膜の厚さのばらつきを低減するのに好ましい。
【0030】
制御部4は、半導体ウェーハWが並ぶ方向において、導入部6からの距離が大きくなるにつれて温度が高くなるように、且つ、上下方向における下方ほど温度が高くなるように、複数の加熱部3の出力を各別に制御するように構成されていることがより好ましい。これにより、ウェーハ間及びウェーハ面内における、ウェーハ面内の酸化膜の厚さのばらつきを低減することができる。
【0031】
また、本実施形態のウェーハの熱処理方法では、加熱部3は、処理空間2に格納された半導体ウェーハWの上方及び下方のそれぞれにおいて、半導体ウェーハWが並ぶ方向に沿って複数配置されており、制御部4は、処理空間2に格納された半導体ウェーハWの上方及び下方のそれぞれにおいて半導体ウェーハWが並ぶ方向に沿って区画された複数の領域の温度を各別に制御するように複数の加熱部3の出力を各別に制御するように構成され、計測部5により、各領域の温度を各別に計測する工程と、制御部4により、複数の領域の各々における原料ガスの濃度と、計測した各領域の温度との少なくともいずれかに基づいて、複数の加熱部の出力を各別に制御する工程と、を含む。本実施形態のウェーハの熱処理方法によれば、複数の領域の各々における原料ガスの濃度に基づいて上記のような炉奥側と炉口側との膜厚の差を低減するように複数の領域の各々の温度を各別に制御し、及び/又は、計測した各領域の温度に基づいて上記のようなウェーハ上方と下方との膜厚の差を低減するように複数の領域の各々の温度を各別に制御することができる。
以上のように、本実施形態のウェーハの熱処理方法によれば、ウェーハ表面に形成された酸化膜の厚さのばらつきを低減することができる。
【0032】
本実施形態のウェーハの熱処理方法では、制御部4は、半導体ウェーハWが並ぶ方向において、導入部6からの距離が大きくなるにつれて温度が高くなることと、上下方向における下方ほど温度が高くなることと、のうち少なくともいずれか一方を満たすように、複数の加熱部3の出力を各別に制御するように構成されていることが好ましい。半導体ウェーハWが並ぶ方向において、導入部6からの距離が大きくなるにつれて温度を高くすることで、炉奥側と炉口側との膜厚の差を低減するでき、また、上下方向における下方ほど温度を高くすることで、ウェーハ上方と下方との膜厚の差を低減することができる。本実施形態のウェーハの熱処理方法では、制御部4は、半導体ウェーハWが並ぶ方向において、導入部6からの距離が大きくなるにつれて温度が高くなることと、上下方向における下方ほど温度が高くなることと、の両方を満たすように、複数の加熱部3の出力を各別に制御するように構成されていることがより好ましい。ウェーハ間及びウェーハ面内における、ウェーハ面内の酸化膜の厚さのばらつきを低減することができるからである。
【0033】
本実施形態のウェーハの熱処理方法では、処理空間2内の原料ガスの濃度は、シミュレーションによって計算され又は実測され、制御部4は、シミュレーションによって計算した又は実測された原料ガスの濃度に基づいて、複数の加熱部3の出力を各別に制御することが好ましい。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、上記の実施形態では、処理空間2は上方及び下方のそれぞれにおいて半導体ウェーハが並ぶ方向に沿って3つの領域に区画されており、換言すると、処理空間2は、上方及び下方の両方で2行(上下方向の並びを行とする)、且つ、半導体ウェーハが並ぶ方向に3列(半導体ウェーハが並ぶ方向の並びを列とする)の合計6個の領域に区画されている。一方、処理空間2は、上下方向にm列(mは2以上の整数)、半導体ウェーハが並ぶ方向にn行(nは2以上の整数)に並ぶm×n個の領域に区画されていればよい。この場合も、例えば、計測部はm×n個の領域の温度を各別に計測し、制御部は、半導体ウェーハが並ぶ方向において、導入部からの距離が大きくなるにつれて温度が高くなることと、上下方向における下方ほど温度が高くなることと、のうち少なくともいずれか一方を満たすように、複数の加熱部の出力を各別に制御するように構成されていることが好ましい。
【符号の説明】
【0035】
1:ウェーハの熱処理炉、
2:処理空間、
3、3a、3b、3c、3d、3e、3f:加熱部、
4:制御部、
5:計測部、
6:導入部、
6a:整流板、
7:排出部、
8:反応管、
9:チューブ、
10:ボート、
11:ガス用加熱部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7