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特開2024-161909バッテリー断熱シート用エアロゲル組成物、その製造方法、これを用いて形成したバッテリー断熱シート、及びこれを含むバッテリーモジュール
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  • 特開-バッテリー断熱シート用エアロゲル組成物、その製造方法、これを用いて形成したバッテリー断熱シート、及びこれを含むバッテリーモジュール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161909
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】バッテリー断熱シート用エアロゲル組成物、その製造方法、これを用いて形成したバッテリー断熱シート、及びこれを含むバッテリーモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/658 20140101AFI20241113BHJP
   C09K 21/12 20060101ALI20241113BHJP
   C09K 21/10 20060101ALI20241113BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20241113BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20241113BHJP
【FI】
H01M10/658
C09K21/12
C09K21/10
H01M10/651
H01M50/204 401F
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024075389
(22)【出願日】2024-05-07
(31)【優先権主張番号】10-2023-0059100
(32)【優先日】2023-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヘ ジン
(72)【発明者】
【氏名】ウ,ミョン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】リュ,ボ ギョン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,スン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ラ,ハ ナ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジェ ヒョン
【テーマコード(参考)】
4H028
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
4H028AA35
4H028AA38
4H028AB04
4H028BA03
5H031AA09
5H031CC01
5H031EE01
5H031EE03
5H031EE04
5H031HH08
5H040AA37
5H040AS07
5H040AY06
5H040JJ03
5H040LL01
5H040LL04
5H040LL06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れた断熱性及び耐火性を有するバッテリー断熱シート用エアロゲル組成物、その製造方法、これを用いて形成したバッテリー断熱シート及びこれを含むバッテリーモジュールを提供する。
【解決手段】バッテリー断熱シート100は、第1基材110、第1基材110上に形成されたエアロゲル層120及びエアロゲル層120上に形成された第2基材130を含む構造を有する。第1基材と第2基材はそれぞれ、隣接するセルと対面するように配置され、互いに同一の又は互いに異なる物質で形成される。エアロゲル層を形成するエアロゲル組成物は、エアロゲル組成物の固形分総量に対して、55重量%~75重量%のエアロゲル、20重量%~40重量%のバインダー及び0.1重量%~8重量%のホスホラス系物質を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゲルと、
バインダー、又は前記バインダー及び分散剤を含む機能性物質と、
ホスホラス系物質を含む難燃剤と、
溶媒と、を含む、バッテリー断熱シート用エアロゲル組成物。
【請求項2】
前記エアロゲルは、BET比表面積が500m/g~1,000m/gである、請求項1に記載のバッテリー断熱シート用エアロゲル組成物。
【請求項3】
前記エアロゲルは、前記エアロゲル組成物の固形分総量に対して30重量%~90重量%で含まれる、請求項1に記載のバッテリー断熱シート用エアロゲル組成物。
【請求項4】
前記バインダーは、水系高分子バインダーを含む、請求項1に記載のバッテリー断熱シート用エアロゲル組成物。
【請求項5】
前記機能性物質が前記分散剤を含む場合、
前記分散剤は、界面活性剤及びホスフェート系塩からなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項1に記載のバッテリー断熱シート用エアロゲル組成物。
【請求項6】
前記機能性物質は、前記エアロゲル組成物の固形分総量に対して5重量%~55重量%で含まれる、請求項1に記載のバッテリー断熱シート用エアロゲル組成物。
【請求項7】
前記ホスホラス系物質は、ホスフェート系アンモニウム塩、赤リン、下記の式(1)及び式(2)で表示される化合物のいずれか1つ以上を含む、請求項1に記載のバッテリー断熱シート用エアロゲル組成物。
【化1】

式(1)中、Ar~Arは、それぞれ独立に、置換又は非置換されたC6~C20アリール基であり、
【化2】

式(2)中、Ar~Ar10は、それぞれ独立に、置換又は非置換されたC6~C20アリール基である。
【請求項8】
前記ホスフェート系アンモニウム塩は、無水リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、及びリン酸モノアンモニウムからなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項7に記載のバッテリー断熱シート用エアロゲル組成物。
【請求項9】
前記難燃剤は、前記エアロゲル組成物の固形分総量に対して0.01重量%~20重量%で含まれる、請求項1に記載のバッテリー断熱シート用エアロゲル組成物。
【請求項10】
前記難燃剤は、前記機能性物質100重量部に対して0.1重量部~20重量部で含まれる、請求項1に記載のバッテリー断熱シート用エアロゲル組成物。
【請求項11】
前記溶媒は、極性溶媒及び無極性溶媒からなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項1に記載のバッテリー断熱シート用エアロゲル組成物。
【請求項12】
前記溶媒と前記エアロゲル組成物の固形分総量との重量比が1:1~1:90である、請求項1に記載のバッテリー断熱シート用エアロゲル組成物。
【請求項13】
前記エアロゲル組成物は、前記エアロゲル組成物の固形分総量に対して、前記エアロゲルは55重量%~75重量%、前記バインダーは20重量%~40重量%、前記ホスホラス系物質は0.1重量%~8重量%を含む、請求項1に記載のバッテリー断熱シート用エアロゲル組成物。
【請求項14】
前記機能性物質が前記分散剤を含む場合、
前記エアロゲル組成物は、前記エアロゲル組成物の固形分総量に対して、前記エアロゲルは55重量%~75重量%、前記バインダーは20重量%~40重量%、前記分散剤は0.1重量%~5重量%、前記ホスホラス系物質は0.1重量%~8重量%を含む、請求項1に記載のバッテリー断熱シート用エアロゲル組成物。
【請求項15】
溶媒に、バインダー、又は前記バインダー及び分散剤を含む機能性物質、及びホスホラス系物質を含む難燃剤を混合して溶媒混合液を製造する段階と、
前記溶媒混合液及びエアロゲルを混合してエアロゲル組成物を製造する段階と、を含む、バッテリー断熱シート用エアロゲル組成物の製造方法。
【請求項16】
第1基材と、
第2基材と、
前記第1基材及び前記第2基材の間に形成されたエアロゲル層と、を含み、
前記エアロゲル層は、請求項1~14に記載のいずれか一項に記載のエアロゲル組成物を用いて形成された、バッテリー断熱シート。
【請求項17】
複数のセルと、
前記複数のセル間にそれぞれ配置される請求項16に記載のバッテリー断熱シートを含み、
前記第1基材及び第2基材はそれぞれ、隣接するセルと対面するように配置されている、バッテリーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリー断熱シート用エアロゲル組成物、その製造方法、これを用いて形成したバッテリー断熱シート、及びこれを含むバッテリーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、電気エネルギーを化学エネルギーの形態に変えて貯蔵できる優れたエネルギー密度を提供する電力貯蔵システムである。再充電が不可能な一次電池に比べて二次電池は再充電が可能であり、スマートフォン、セルラーフォン、ノートパソコン、タブレットPCなどのIT機器に多く用いられている。近年、環境汚染の防止のために電気自動車への関心が高まっており、電気自動車には高容量の二次電池が採択されている。このような二次電池は、高密度、高出力、安定性などの特性が要求されている。
【0003】
一方、リチウムイオン二次電池のような高容量のセルを多数含む場合に、いずれかの理由で一つのセルが過熱によって熱暴走し、隣接する他のセルに悪影響を及ぼすことがあるため、隣接し合うセル同士が熱的に断熱されることが要求される。
【0004】
そこで、従来は、セル同士の間に板材や絶縁性樹脂板などを配置し、隣接するセル間における絶縁と断熱を図った。
【0005】
このような発明の背景になる技術に開示された上述した情報は、本発明の背景に対する理解度を向上させるためのものに過ぎず、したがって、従来技術を構成しない情報を含んでもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一実施形態は、優れた断熱性及び耐火性を有するバッテリー断熱シート用エアロゲル組成物、その製造方法、これを用いて形成したバッテリー断熱シート、及びこれを含むバッテリーモジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態は、エアロゲルと、バインダー、又は前記バインダー及び分散剤を含む機能性物質と、ホスホラス系物質を含む難燃剤と、溶媒と、を含むバッテリー断熱シート用エアロゲル組成物を提供する。
【0008】
前記エアロゲルは、BET比表面積が500m/g~1,000m/gであってよい。
【0009】
前記エアロゲルは、前記エアロゲル組成物の固形分総量に対して30重量%~90重量%で含まれてよい。
【0010】
前記バインダーは、水系高分子バインダーを含むことができる。
【0011】
前記水系高分子バインダーは、水性高分子、陰イオン水溶性高分子、陽イオン水溶性高分子、及び水分散性高分子からなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。
【0012】
前記機能性物質が前記分散剤を含む場合、前記分散剤は、界面活性剤及びホスフェート系塩からなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。
【0013】
前記機能性物質は、前記エアロゲル組成物の固形分総量に対して5重量%~55重量%で含まれてよい。
【0014】
前記ホスホラス系物質は、ホスフェート系アンモニウム塩、赤リン、下記の式(1)及び式(2)で表示される化合物のいずれか1つ以上を含むことができる。
【0015】
【化1】
【0016】
式(1)中、Ar~Arは、それぞれ独立に、置換又は非置換されたC6~C20アリール基である。
【0017】
【化2】
【0018】
式(2)中、Ar~Ar10は、それぞれ独立に、置換又は非置換されたC6~C20アリール基である。
【0019】
前記ホスフェート系アンモニウム塩は、無水リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、及びリン酸モノアンモニウムからなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。
【0020】
前記難燃剤は、前記エアロゲル組成物の固形分総量に対して0.01重量%~20重量%で含まれてよい。
【0021】
前記難燃剤は、前記機能性物質100重量部に対して0.1重量部~20重量部で含まれてよい。
【0022】
前記溶媒は、極性溶媒及び無極性溶媒からなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。
【0023】
前記溶媒と前記エアロゲル組成物の固形分総量との重量比が1:1~1:90であってよい。
【0024】
前記エアロゲル組成物は、前記エアロゲル組成物の固形分総量に対して、前記エアロゲルは55重量%~75重量%、前記バインダーは20重量%~40重量%、前記ホスホラス系物質は0.1重量%~8重量%を含むことができる。
【0025】
前記機能性物質が前記分散剤を含む場合、前記エアロゲル組成物は、前記エアロゲル組成物の固形分総量に対して、前記エアロゲルは55重量%~75重量%、前記バインダーは20重量%~40重量%、前記分散剤は0.1重量%~5重量%、前記ホスホラス系物質は0.1重量%~8重量%を含むことができる。
【0026】
他の一実施形態は、溶媒に、バインダー、又は前記バインダー及び分散剤を含む機能性物質、及びホスホラス系物質を含む難燃剤を混合して溶媒混合液を製造する段階と、前記溶媒混合液及びエアロゲルを混合してエアロゲル組成物を製造する段階と、を含む、バッテリー断熱シート用エアロゲル組成物の製造方法を提供することができる。
【0027】
さらに他の一実施形態は、第1基材と、第2基材と、前記第1基材及び前記第2基材の間に形成されたエアロゲル層と、を含み、前記エアロゲル層は前記エアロゲル組成物を用いて形成されている、バッテリー断熱シートを提供することができる。
【0028】
さらに他の一実施形態は、複数のセルと、前記複数のセル間にそれぞれ配置される前記バッテリー断熱シートと、を含み、前記第1基材及び第2基材はそれぞれ、隣接するセルと対面するように配置されている、バッテリーモジュールを提供することができる。
【発明の効果】
【0029】
一実施形態によるバッテリー断熱シートは、断熱性及び耐火性を有することができる。また、一実施形態によるバッテリー断熱シートを含むバッテリーモジュールは、セルの熱暴走による隣接セルの熱及び火炎の伝播を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】一実施形態によるバッテリー断熱シートの構造を示す模式図である。
図2】複数のセル間に形成された一実施形態によるバッテリー断熱シートを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、実施形態について、技術の分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。ただし、実施形態は様々な異なる形態で実現されてよく、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0032】
断熱材とは、熱が温度の高い所から低い所へ移動するその流れを防ぐための材料であり、冷蔵庫、冷凍倉庫、及び建物の他、航空機、電子部品、自動車産業などを含む様々な産業分野にも使用されている。
【0033】
このような断熱材は、低い熱伝導度による優れた断熱性能が備えられるべきであり、このような断熱性を保持し続けるための機械的強度も要求される。
【0034】
一方、エアロゲルは、ナノ多孔構造の透明又は半透明の先端素材であり、密度が非常に低く、低い熱伝導度の特性を有することから、断熱材として高い潜在力があるだけでなく、様々な産業分野で使用可能な非常に効率的な超断熱材として評価されている。
【0035】
また、エアロゲルの最大の長所は、従来のスチロフォームなどの有機断熱材に比べて低い熱伝導率を示す点と、有機断熱材の致命的な弱点である火災脆弱性と火災時の有害ガス発生の問題を解決できるという点である。
【0036】
一実施形態によるバッテリー断熱シート用エアロゲル組成物は、エアロゲルと、バインダー、又はバインダー及び分散剤を含む機能性物質と、ホスホラス系物質を含む難燃剤と、溶媒と、を含むことができる。
【0037】
これらの成分からなるエアロゲル組成物で製造されたバッテリー断熱シートは、断熱性及び耐火性に優れ、セルの熱暴走による隣接セルの熱及び火炎の伝播を抑制することができる。
【0038】
一実施形態において、エアロゲルは、BET比表面積が500m/g~1,000m/gであってよい。例えば、エアロゲルは、BET比表面積が500m/g~950m/g、550m/g~950m/g、又は600m/g~900m/gであってよい。上述した範囲内のBET比表面積値を有するエアロゲルを含むことにより、複数のセル間の熱伝達及び熱伝播を効果的に防止できる断熱シートを提供することができる。
【0039】
エアロゲルの平均粒径(D50)は、5μm~200μm、10μm~100μm、又は20μm~50μmであってよい。上述した範囲内の粒径を有するエアロゲルを含むことにより、断熱特性を改善し、複数のセル間で熱伝達を遅延させることができる。
【0040】
平均粒径(D50)は、例えば、レーザー回折法(laser diffraction method)又は走査電子顕微鏡(SEM)写真を用いて測定でき、粒子の平均粒径(D50)は、粒径分布の50%基準における粒径(粒度分布の体積累積50%に相当する粒径)と定義できる。
【0041】
エアロゲルの含有量は、エアロゲル組成物の固形分総量に対して、30重量%~90重量%、55重量%~75重量%、又は60重量%~70重量%であってよい。上述した範囲内でエアロゲルを含むエアロゲル組成物を用いてバッテリー断熱シートを製造することにより、バッテリー断熱シートの断熱性を改善することができる。
【0042】
一実施形態において、バインダーは、水系高分子バインダーを含むことができる。例えば、水系高分子バインダーは、水性高分子、陰イオン水溶性高分子、陽イオン水溶性高分子、及び水分散性高分子からなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。
【0043】
水性高分子は、例えば、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、ポリアクリルアミド(polyacrylamide)、及びポリビニルピリリドン(polyvinylpyrilidone)からなる群から選ばれる1種以上を含むことができるが、これに限定しない。
【0044】
陰イオン水溶性高分子は、カルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル、リン酸エステル、及びこれらの塩類の官能基を有する高分子からなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。例えば、陰イオン水溶性高分子は、カルボン酸基を有する高分子であってあってよく、具体的な例として、ポリマレイン酸(polymaleic acid)を含むことができるが、これに限定しない。
【0045】
陽イオン水溶性高分子は、アミン、アンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム、及びこれらの塩類の官能基を有する高分子からなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。例えば、陽イオン水溶性高分子は、アミン基を有する高分子であってよく、具体的な例として、ポリエチレンアミン(polyethylene amine)及びポリアミン(polyamine)からなる群から選ばれる1種以上を含むことができるが、これに限定しない。
【0046】
水分散性高分子は、水分散性ポリウレタン(polyurethane)及び水分散性ポリエステル(polyester)からなる群から選ばれる1種以上を含むことができるが、これに限定しない。
【0047】
バインダーは、水性高分子及び水分散性高分子を含むことができる。例えば、バインダー特性とともに分散特性を有する水性高分子、及び耐火特性を有する水分散性ポリウレタンを含んでよく、具体的な例として、ポリビニルアルコール及び水分散性ポリウレタンを含むことができる。
【0048】
水性高分子及び水分散性高分子の重量比は、1:1~1:5、1:1~1:4、又は1:2~1:3であってよい。水性高分子及び水分散性高分子の重量比を上述した範囲内で混用することにより、断熱シートの断熱性、粉塵性、圧縮特性の他に耐火性及び機械的物性もより改善することができる。
【0049】
バインダーの含有量は、エアロゲル組成物の固形分総量に対して、5重量%~55重量%、20重量%~40重量%、又は25重量%~35重量%であってよい。上述した範囲内でバインダーを含むエアロゲル組成物を用いてバッテリー断熱シートを製造することにより、バッテリー断熱シートの耐久性及び粉塵特性を改善することができる。
【0050】
一実施形態において、分散剤は、界面活性剤及びホスフェート系塩からなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。具体的な例として、分散剤は、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、レシチンなどのような天然界面活性剤、及びリン酸塩のいずれか1つ以上を含むことができるが、これに限定しない。
【0051】
分散剤をさらに含むと、組成物中でエアロゲルの分散がより改善されてエアロゲルが均一に分散し、断熱性を改善することができる。
【0052】
分散剤の含有量は、エアロゲル組成物の固形分総量に対して、0.1重量%~6重量%、0.1重量%~5重量%、又は0.1重量%~3重量%であってよい。上述した範囲内で分散剤を含むことにより、低コストでエアロゲル組成物を製造でき、これを用いて断熱性、耐久性及び粉塵特性に優れたバッテリー断熱シートを製造することができる。
【0053】
一実施形態において、バインダー及び分散剤は、1:0.001~1:0.67、1:0.001~1:0.5、又は1:0.001~1:0.3の重量比で含まれてよい。上述した範囲内の重量比でバインダーと分散剤を混用すると、エアロゲル層でエアロゲルがより均一に分散させることができる。
【0054】
機能性物質は、エアロゲル組成物の固形分総量に対して、5重量%~55重量%、15重量%~50重量%、又は20重量%~40重量%で含まれてよい。
【0055】
一実施形態において、ホスホラス系物質は、難燃性を有し、リンを含有するいかなる物質をも含むことができる。
【0056】
ホスホラス系物質は、例えば、ホスフェート系アンモニウム塩、赤リン(red phosphorus)、下記の式(1)及び式(2)で表示される化合物のいずれか1つ以上を含むことができる。
【0057】
ホスフェート系アンモニウム塩は、無水リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、及びリン酸モノアンモニウムからなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。具体的な例として、ホスホラス系物質は無水リン酸アンモニウムを含むことができる。上記のようなホスフェート系アンモニウム塩を含むと、セルの熱暴走によって周辺温度が増加する際にリン酸化反応(phosphorylation)によってチャー(Char)を形成し、他のセルへの熱の伝播を遮断できる。
【0058】
赤リンは、商業的に入手可能ないかなる赤リンも難燃剤として使用可能である。例えば、赤リンは、元素リン(P)の同素体であり、赤紫色の無定形粉末として得られる。
【0059】
赤リンは、例えば、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂のような重合体にマイクロカプセル化されたものであってよい。マイクロカプセル化は、赤リンが触媒成分の一つと共に貯蔵される場合に赤リンと外部成分との直接的な接触を防止し、貯蔵時間を延ばすことができる。マイクロカプセル化された赤リンは、ホスフィンのような不安定な揮発性化合物に加水分解されることを防止できる。
【0060】
【化3】
【0061】
式(1)中、Ar~Arは、それぞれ独立に、置換又は非置換されたC6~C20アリール基である。例えば、Ar~Arは、それぞれ独立に、置換又は非置換されたC6~C18アリール基又はC6~C12アリール基である。
【0062】
【化4】
【0063】
式(2)中、Ar~Ar10は、それぞれ独立に、置換又は非置換されたC6~C20アリール基である。例えば、Ar~Ar10は、それぞれ独立に、置換又は非置換されたC6~C18アリール基又はC6~C12アリール基である。
【0064】
上記の式1及び式2で表示されるホスホラス系物質は、周辺温度の増加時にポリリン酸を形成し、ポリリン酸は、エステル化及び脱水素化反応を経て炭素層を形成し、このように生成された炭素層は、酸素及び潜熱を遮断することによって難燃効果を奏することができる。
【0065】
本発明において、「アリール基」は、芳香族炭化水素から誘導された1価の置換基と定義される。
【0066】
アリール基の具体的な例としては、フェニル基(phenyl group)、ナフチル基(naphthyl group)、アントラセニル基(anthracenyl group)、フェナントリル基(phenanathryl group)、ナフタセニル基(naphthacenyl group)、トリル基(tolyl group)、ビフェニル基(biphenylyl group)、テルフェニル基(terphenylyl group)、フルオランテニル基(fluoranthenyl group)、フルオレニル基(fluorenyl group)、ペリレニル基(perylenyl group)、インデニル基(indenyl group)、アズレニル基(azulenyl group)、ヘプタレニル基(heptalenyl group)、フェナレニル基(phenalenyl group)、フェナントレニル基(phenanthrenyl group)などを挙げることができる。
【0067】
上記の式1及び式2において、Ar~Ar10はそれぞれ、炭素数1~8を有するアルキル基、炭素数1~8を有するアルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、又はトリメチルシリル基で置換又は非置換されてよい。
【0068】
本発明において、「#」が正の整数である「C#」という用語は、#個の炭素原子を有するあらゆる炭化水素のことを指す。したがって、「C6」という用語は、6個の炭素原子を有する炭化水素化合物を表し、「C20」という用語は、20個の炭素原子を有する炭化水素化合物を表す。
【0069】
難燃剤は、エアロゲル組成物の固形分総量に対して0.01重量%~20重量%、0.1重量%~10重量%、又は0.25重量%~5重量%で含まれてよい。前記範囲内でホスホラス系物質を含むと、断熱シートの断熱性の他に耐火性も改善され、セル間の熱伝播を遮断することができる。
【0070】
難燃剤は、機能性物質100重量部に対して0.1重量部~20重量部、0.5重量部~17重量部、又は1重量部~10重量部で含まれてよい。前記範囲内に機能性物質含有量に対するホスホラス系物質の含有量を制御すると、断熱シートが高い温度環境に露出される際にチャー(Char)を形成し、これは火炎遮蔽材(flame shield)として働き得るので、断熱シートの耐火性に優れ、セルの熱暴走による隣接セルの熱及び火炎の伝播を遮断することができる。
【0071】
一実施形態において、溶媒は、極性溶媒及び無極性溶媒からなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。
【0072】
極性溶媒は、水、アルコール系溶媒、又はこれらの組合せを含むことができる。
【0073】
水は、例えば、精製水、超純水(deionized water)、又はこれらの組合せを含むことができる。
【0074】
アルコール系溶媒は、例えば、メタノール(methanol)、エタノール(ethanol)、プロパノール(propanol)、ペンタノール(pentanol)、ブタノール(butanol)、ヘキサノール(hexanol)、エチレングリコール(ethylene glycol)、プロピレングリコール(propylene glycol)、ジエチレングリコール(diethylene glycol)、及びグリセロール(glycerol)からなる群から選ばれる1種以上を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0075】
無極性溶媒は、炭化水素系溶媒を含むことができる。例えば、炭化水素系溶媒は、ヘキサン(hexane)、ペンタン(pentane)、ヘプタン(heptane)、トルエン(toluene)、及びベンゼン(benzene)からなる群から選ばれる1種以上を含んでよく、ヘキサンのようなアルカン(alkane)溶媒、又はアルカン溶媒を含む混合物がより好ましいか、これに限定されるものではない。
【0076】
溶媒は水を含むことができる。水を溶媒として使用すると、原料費用及び後処理費用を効果的に節減できる。ただし、水を溶媒として使用する場合に、疎水性であるエアロゲルとの混合が容易でない問題があるが、一実施形態では、混合段階設計、混合条件、バインダーと分散剤の添加及び添加量などを制御し、エアロゲルを均一に分散させている。このように組成物中にエアロゲルを均一に分散させると、バインダーを多量使用しなくとも、薄い厚さで断熱性、耐久性、低粉塵特性に優れたバッテリー断熱シートを形成することができる。
【0077】
溶媒は、エアロゲル組成物の固形分総量との重量比が1:1~1:90となるように含まれてよい。例えば、溶媒とエアロゲル組成物の固形分総量との重量比は、1:50~1:70、1:20~1:30、又は1:2~1:10で含まれてよい。溶媒と固形分総量との重量比を前記範囲内に制御することにより、粘度を制御することができ、エアロゲル層をコートすることができる。
【0078】
一実施形態において、エアロゲル組成物は、エアロゲル組成物の固形分総量に対して、エアロゲルは55重量%~75重量%、バインダーは20重量%~40重量%、ホスホラス系物質は0.1重量%~8重量%を含むことができる。
【0079】
具体的な例として、エアロゲル組成物の固形分総量に対して、エアロゲルは60重量%~70重量%、バインダーは25重量%~35重量%、ホスホラス系物質は0.25重量%~5重量%を含むことができる。前記範囲内でエアロゲル組成物を構成すると、優れた断熱性を実現すると同時に耐火性を改善することができ、よって、セル間の熱伝播を遮断することができる。
【0080】
一実施形態において、機能性物質が分散剤を含む場合、エアロゲル組成物の固形分総量に対して、エアロゲルは55重量%~75重量%、バインダーは20重量%~40重量%、分散剤は0.1重量%~5重量%、ホスホラス系物質は0.1重量%~8重量%を含むことができる。
【0081】
具体的な例として、機能性物質が分散剤を含む場合、エアロゲル組成物の固形分総量に対して、エアロゲルは60重量%~70重量%、バインダーは25重量%~35重量%、分散剤は0.1重量%~3重量%、ホスホラス系物質は0.25重量%~5重量%を含むことができる。前記範囲内でエアロゲル組成物を構成すると、エアロゲルの分散性を向上させ、優れた断熱性を実現すると同時に耐火性を改善することができ、よって、セル間の熱伝播をより効果的に遮断することができる。
【0082】
一実施形態において、エアロゲル組成物はシラン系化合物をさらに含むことができる。シラン系化合物は、例えば、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(3-(trimethoxysilyl)propylmethacrylate)、メチルトリエトキシシラン(methyltriethoxysilane)、メチルトリメトキシシラン(methyltrimethoxysilane)、エチルトリメトキシシラン(ethyltrimethoxysilane)、オクタデシルトリメトキシシラン(octadecyltrimethoxysilane)、エチルトリエトキシシラン(ethyltriethoxysilane)、及び3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(3-glycidoxypropyltrimethoxysilane)からなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。シラン系化合物をさらに含むと、分散性がより改善され得る。
【0083】
一実施形態において、湿潤剤、乳化剤、相溶化剤、粘度調節剤、pH調節剤、安定化剤、抗酸化剤、酸性又は塩基性の捕獲剤、金属非活性剤、消泡剤、帯電防止剤、増粘剤、接着改善剤、結合剤、難燃剤、衝撃改質剤、顔料、染料、着色剤、脱臭剤などの添加剤を選択的にさらに含むことができる。
【0084】
一実施形態によるエアロゲル組成物の製造方法は、溶媒に、バインダー、又はバインダー及び分散剤を含む機能性物質、及びホスホラス系物質を含む難燃剤を混合して溶媒混合液を製造する段階と、溶媒混合液及びエアロゲルを混合してエアロゲル組成物を製造する段階と、を含むことができる。
【0085】
溶媒に機能性物質及び難燃剤を混合して溶媒混合液を製造する段階では、溶媒に機能性物質としてバインダーを混合するか、バインダー及び分散剤を混合することができる。ここで、溶媒、バインダー、分散剤、ホスホラス系物質に関する具体的な説明は、上述した通りとすることができる。
【0086】
溶媒混合液及びエアロゲルを混合してエアロゲル組成物を製造する段階においてエアロゲルは粉末形態で投入されてよく、エアロゲルに関する具体的な説明は、上述した通りとすることができる。
【0087】
溶媒に、バインダー、又はバインダー及び分散剤を含む機能性物質、及びホスフェート系物質を含む難燃剤を混合して溶媒混合液を製造する段階と、溶媒混合液及びエアロゲルを混合してエアロゲル組成物を製造する段階のそれぞれにおいては、混合時にミキサー(mixer)を用いて混合することができる。例えば、ミキサーは、プラネタリーミキサー(planetary mixer)及びシンキーミキサー(thinky mixer)などを含んでよく、これに限定しない。
【0088】
具体的な例として、溶媒混合液及びエアロゲルを混合する時にプラネタリーミキサーを使用することができる。プラネタリーミキサーを用いて溶媒混合液及びエアロゲルを混合すると、エアロゲルを溶媒中に均一に分散させることができる。
【0089】
プラネタリーミキサーは、均質な混合物を製造するために互いに異なる物質を混合又は撹拌することに使用できる装備であってよい。これは、遊星運動(planetary motion)ができるブレード(blade)を含むことができる。
【0090】
一実施形態において、プラネタリーミキサーは、1つ以上のプラネタリーブレード及び1つ以上の高速分散ブレードのいずれか1つ以上を含むことができる。具体的な例として、前記プラネタリーミキサーは、1つ以上のプラネタリーブレード及び1つ以上の高速分散ブレードを含むことができる。
【0091】
プラネタリーブレード及び高速分散ブレードは、それらの軸を中心にして連続回転する。回転速度は、毎分回転数(rotations per minute,rpm)の単位で表現されてよい。
【0092】
一実施形態において、プラネタリーミキサーは、回転軸が互いに異なる第1ブレード及び第2ブレードを含むことができる。例えば、第1ブレードは低速ブレードであり、第2ブレードは高速ブレードであってよい。ここで、低速と高速は、第1ブレードと第2ブレードとの相対的な回転速度を意味する。具体的な例として、第1ブレードはオープンブレード(Open blade)であってよく、第2ブレードはデスパブレード(Despa blade)であってよい。
【0093】
第1ブレードの回転速度は、例えば、10rpm~100rpm、10rpm~60、又は30rpm~70rpmであってよい。また、第2ブレードの回転速度は、例えば、100rpm~2000rpm、100rpm~1000rpm、300rpm~1700rpm、又は500rpm~1700rpmであってよい。
【0094】
溶媒に機能性物質を投入して混合する時に、ミキサーの第1ブレードの回転速度は10rpm~60rpm、20rpm~50rpm、又は30rpm~40rpmであってよく、第2ブレードの回転速度は300rpm~1700rpm、600rpm~1000rpm、又は700rpm~800rpmであってよい。上述したように溶媒と機能性物質を混合すると、バインダー、又はバインダー及び分散剤が均一に分散した溶媒混合液を製造し、後続段階でエアロゲル混合がより容易に行われ得る。
【0095】
溶媒混合液及びエアロゲルを混合する時に、ミキサーの第1ブレードの回転速度は30rpm~70rpm、40rpm~70rpm、又は60rpm~70rpmであってよく、第2ブレードの回転速度は500rpm~1700rpm、600rpm~1600rpm、又は800rpm~1500rpmであってよい。上述したように溶媒混合液にエアロゲルを投入して混合すると、エアロゲルが互いに凝集することを防止し、均一な分散を誘導することができる。
【0096】
一実施形態によるバッテリー断熱シートは、第1基材と、第2基材と、第1基材及び第2基材の間に形成されたエアロゲル層と、を含み、エアロゲル層は、上述したエアロゲル組成物を用いて形成されたものであってよい。
【0097】
図1は、一実施形態によるバッテリー断熱シートの構造を示す模式図である。
【0098】
図1を参照すると、一実施形態において、バッテリー断熱シート100は、第1基材110、第1基材110上に形成されたエアロゲル層120、及びエアロゲル層120上に形成された第2基材130を含む構造を有することができる。ここで、第1基材と第2基材はそれぞれ、隣接するセルと対面するように配置されてよい。この場合、第1基材と第2基材は、互いに同一の又は互いに異なる物質で形成されてよい。
【0099】
第1基材及び第2基材の間に、一実施形態によるエアロゲル組成物でエアロゲル層を形成することにより、バッテリー断熱シートは断熱性の他に耐久性も改善され、優れた耐火性によってセル間の熱伝播を遮断することができる。
【0100】
バッテリー断熱シートにおいて、エアロゲル層を形成するエアロゲル組成物の具体的な説明は、上述した通りとすることができる。
【0101】
第1基材及び第2基材のそれぞれは、例えば、樹脂、金属、金属以外の無機材料、又はこれらの複合体などの様々な基材を使用することができ、その種類を限定しない。また基材の形態としてはフィルム、薄膜、シートなど、特に限定しない。
【0102】
樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、及びポリアミドからなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。
【0103】
金属は、例えば、銅、ニッケル、コバルト、鉄、クロミウム、バナジウム、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、モリブデニウム、タングステン、イリジウム、銀、金及び白金からなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。金属材質の基材を使用する場合に、基材は必要によって腐食防止処理、絶縁処理などが行われてよい。
【0104】
無機材料は、炭酸カルシウム(CaCO)、タルク(talc)、及びマイカ(mica)からなる群から選ばれる1種以上を含むことができる。
【0105】
具体的な例として、第1基材及び第2基材のそれぞれは無機材料を含んでよく、より具体的な例としてマイカを含むことができる。この場合、断熱シートの断熱性と耐久性などを改善することができる。
【0106】
一実施形態において、エアロゲル層は、単層構造又は複数層構造で形成されてよい。エアロゲル層が複数層構造で形成される場合に、エアロゲル層は2層~10層、2層~7層、又は2層~5層で形成されてよい。
【0107】
一実施形態のバッテリー断熱シートの製造方法は、第1基材上にエアロゲル組成物を塗布する段階と、塗布されたエアロゲル組成物上に第2基材を積層して積層体を製造する段階と、積層体を加圧する段階と、積層体を乾燥させる段階と、を含むことができる。
【0108】
バッテリー断熱シートの製造方法において第1基材及び第2基材に関する具体的な説明は、上述した通りとすることができる。
【0109】
第1基材上にエアロゲル組成物を塗布する段階において、第1基材上にエアロゲル組成物を直接に塗布できる。
【0110】
エアロゲル組成物を第1基材上に塗布する段階は、通常の基材上にスラリーを塗布する方法で行われてよい。
【0111】
エアロゲル組成物を第1基材上に塗布する段階は、1回又は2回以上反復して行われてよい。
【0112】
一実施形態において、第1基材上にエアロゲル組成物を塗布し、塗布されたエアロゲル組成物上に第2基材を積層し、第1基材、エアロゲル層、及び第2基材が順次積層された構造を形成できる。
【0113】
一実施形態において、積層体を加圧する段階は、通常の加圧方法で行われてよい。
【0114】
一実施形態において、積層体を乾燥させる段階において、乾燥は、例えば、25℃~100℃、45℃~90℃、又は60℃~85℃の温度条件で行われてよい。上述した温度条件で乾燥させることにより、基材とエアロゲル層との脱離を防止しながら、別の接着部材又は接着剤無しで基材上に堅固なエアロゲル層を形成することができる。
【0115】
一実施形態において、積層体を加圧する段階と積層体を乾燥させる段階は、別個の工程で行われてもよく、同時に行われてもよい。
【0116】
一実施形態によるバッテリーモジュールは、複数のセルと、複数のセル間にそれぞれ備えられるバッテリー断熱シートと、を含み、第1基材及び第2基材はそれぞれ、隣接するセルと対面するように配置されてよい。
【0117】
図2は、複数のセル間に形成された一実施形態によるバッテリー断熱シートを示す模式図である。
【0118】
図2を参照すると、一実施形態によるバッテリー断熱シート100は、複数個のセル200を含むバッテリーモジュール内で各セル200の間に形成されてよい。ここで、バッテリー断熱シートの第1基材が形成された一面、及び第2基材が形成された他面は、隣接するそれぞれのセルと対面するように配置されてよい。一実施形態によるバッテリー断熱シート100を複数のセル200の間にそれぞれ形成することにより、セル内部で先立って火炎を遮断して他のセルに火炎が伝播されることを極力抑制し、安全性をより高めたバッテリーモジュール及びこれを含むバッテリーパックを提供することができる。
【実施例0119】
以下では本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、以下に記載する実施例は、本発明を具体的に例示又は説明するためのものに過ぎず、これらに本発明が限定されてはならない。また、ここに記載されていない内容は、この技術の分野における熟練した者であれば技術的に十分に類推できるので、その説明を省略する。
【0120】
(バッテリー断熱シート製造)
実施例1
1.エアロゲル組成物製造
溶媒である超純水に、バインダーとしてポリビニルアルコール(Sigma Aldrich,Poly(vinyl alcohol))、及びホスホラス系物質として無水リン酸アンモニウム(Sigma Aldrich,7722-76-1)を投入し、オープンブレード30rpm、デスパブレード700rpmの条件で混合し、溶媒混合液を製造した。その後、溶媒混合液に、BET値が800m/gであるエアロゲルを投入し、オープンブレード70rpm、デスパブレード1500rpmの条件で混合し、エアロゲル組成物を製造した。ここで、混合時にはプラネタリーミキサー(ディーエヌテック,PT-005)を使用した。
【0121】
製造されたエアロゲル組成物の固形分含量は、エアロゲル69.75重量%、ポリビニルアルコール30重量%、無水リン酸アンモニウム0.25重量%と確認された。
【0122】
2.バッテリー断熱シート製造
0.1mm厚のマイカシート(Famica,Muscovite)上に、製造されたエアロゲル組成物をスラリー塗布した後、サンドウィッチタイプで0.1mm厚のマイカシートを積層し、ロール圧延方法でコートした。その後、60℃で24時間乾燥させてエアロゲル層を形成し、バッテリー断熱シートを製造した。製造されたバッテリー断熱シートの総厚は1.38mmと確認された。
【0123】
実施例2
実施例1において、エアロゲル組成物の製造時に原料の投入量を調節し、固形分含量がエアロゲル69.5重量%、ポリビニルアルコール30重量%、無水リン酸アンモニウム0.5重量%であるエアロゲル組成物を製造した以外は、実施例1と同じ方法で製造した。
【0124】
実施例3
実施例1において、エアロゲル組成物の製造時に原料の投入量を調節し、固形分含量がエアロゲル67.5重量%、ポリビニルアルコール30重量%、無水リン酸アンモニウム2.5重量%であるエアロゲル組成物を製造した以外は、実施例1と同じ方法で製造した。
【0125】
実施例4
実施例1において、エアロゲル組成物の製造時に原料の投入量を調節し、固形分含量がエアロゲル65重量%、ポリビニルアルコール30重量%、無水リン酸アンモニウム5重量%であるエアロゲル組成物を製造した以外は、実施例1と同じ方法で製造した。
【0126】
実施例5
実施例1において、エアロゲル組成物の製造時に原料の投入量を調節し、固形分含量がエアロゲル69.95重量%、ポリビニルアルコール30重量%、無水リン酸アンモニウム0.05重量%であるエアロゲル組成物を製造した以外は、実施例1と同じ方法で製造した。
【0127】
実施例6
実施例1において、エアロゲル組成物の製造時に原料の投入量を調節し、固形分含量がエアロゲル60重量%、ポリビニルアルコール30重量%、無水リン酸アンモニウム10重量%であるエアロゲル組成物を製造した以外は、実施例1と同じ方法で製造した。
【0128】
実施例7
実施例1において、ホスホラス系物質として無水リン酸アンモニウムの代わりにリン酸水素二アンモニウム(diammonium hydrogen phosphate,ammonium phosphate dibasic)を投入した以外は、実施例1と同じ方法で製造した。
実施例8
実施例1において、ホスホラス系物質として無水リン酸アンモニウムの代わりにリン酸トリフェニルを投入した以外は、実施例1と同じ方法で製造した。
【0129】
実施例9
1.エアロゲル組成物製造
溶媒である超純水に、バインダーとしてポリビニルアルコール(Sigma Aldrich,Poly(vinyl alcohol))、分散剤として界面活性剤(Triton-X100,Sigma Aldrich)、及びホスホラス系物質として無水リン酸アンモニウム(Sigma Aldrich,7722-76-1)を投入した後、オープンブレード30rpm、デスパブレード700rpmの条件で混合し、溶媒混合液を製造した。その後、溶媒混合液にBET値が800m/gであるエアロゲルを投入し、オープンブレード70rpm、デスパブレード1500rpmの条件で混合し、エアロゲル組成物を製造した。ここで、混合時には、プラネタリーミキサー(ディーエヌテック,PT-005)を使用した。
【0130】
製造されたエアロゲル組成物の固形分含量は、エアロゲル69.75重量%、ポリビニルアルコール29.5重量%、分散剤0.5重量%、及び無水リン酸アンモニウム0.25重量%と確認された。
【0131】
2.バッテリー断熱シート製造
0.1mm厚のマイカシート(Famica,Muscovite)上に、製造されたエアロゲル組成物をスラリー塗布した後、サンドウィッチタイプで0.1mm厚のマイカシートを積層し、ロール圧延方法でコートした。その後、60℃で24時間乾燥させてエアロゲル層を形成し、バッテリー断熱シートを製造した。製造されたバッテリー断熱シートの総厚は1.38mmと確認された。
【0132】
比較例1
実施例1において、エアロゲル組成物の製造時に原料の投入量を調節し、固形分含量がエアロゲル70重量%、ポリビニルアルコール30重量%であるエアロゲル組成物を製造した以外は、実施例1と同じ方法で製造した。
【0133】
(実験例)
実験例1:断熱性評価
実施例1~9及び比較例1で製造された断熱シートを用いて断熱性を評価した。
具体的には、対向する一対の1mm厚のアルミニウムプレートの間にそれぞれの断熱シートを入れ、ヒートプレス上に載せ、ヒートプレス上板は350℃に加熱し、ヒートプレス下板は加熱せずに開始温度である40℃に保たせた。その後、ヒートプレス下板に20kNの圧力を加えて11分後のヒートプレス下板の温度を測定し、下記の表1に示した。
【0134】
実験例2:耐火性評価(Burn Through Resistance)
実施例1~9及び比較例1で製造された断熱シートを用いて溶落ち抵抗(Brun Through Resistance)を評価した。
【0135】
具体的には、断熱シートを5×8cmで準備した後、ガストーチを用いて断熱シートから約5cmで火炎を照射した時に、反対側の断熱シートが破損するまでの時間を測定することによって耐火性を確認した。
【0136】
【表1】
【0137】
上記の表1を参照すると、実施例1~9においていずれも断熱性に優れていることが確認できた。ここで、実施例1~6から、エアロゲル組成物の成分含有量に従う耐火性の変化が確認でき、バインダー全体100重量部に対して難燃剤を0.5重量部~10重量部で含む場合に、耐火性に非常に優れていることが確認できた。具体的には、実施例5において、ホスホラス系物質を含む難燃剤の含有量が少ないため、耐火性が多少低下していることが確認できた。また、実施例6において、ホスホラス系物質を含む難燃剤の含有量が高いため、断熱性が多少低下していることが確認できた。また、実施例1、7及び8から、難燃剤の種類による物性結果が確認でき、その結果、ホスホラス系物質を含む難燃剤を使用した場合に断熱性及び耐火性が改善されていることが確認できた。また、実施例9は、バインダーと分散剤を混用した場合であり、断熱性及び耐火性がより改善されていることが確認できた。
【0138】
一方、比較例1では、ホスホラス系物質を含む難燃剤を含まず、断熱性が非常に低下していることが確認できた。
【0139】
したがって、一実施形態によるエアロゲル組成物を使用する場合に、断熱性及び熱伝播遮断特性に優れていることが確認できた。
【0140】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はそれらに限定されず、特許請求の範囲、発明の詳細な説明、及び添付する図面の範囲内で様々に変形して実施することが可能であり、それらも本発明の範囲に属することは当然である。
【符号の説明】
【0141】
100 バッテリー断熱シート
110 第1基材
120 エアロゲル層
130 第2基材
200 セル
図1
図2