(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161938
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】研磨装置および研磨方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/30 20120101AFI20241114BHJP
B24B 37/10 20120101ALI20241114BHJP
B24B 37/005 20120101ALI20241114BHJP
B24B 21/04 20060101ALI20241114BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20241114BHJP
B24B 57/02 20060101ALI20241114BHJP
B24B 37/013 20120101ALI20241114BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B24B37/30 E
B24B37/10
B24B37/005 A
B24B21/04
B24B37/00 K
B24B57/02
B24B37/013
H01L21/304 621D
H01L21/304 622R
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077012
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】鍋谷 治
(72)【発明者】
【氏名】塩川 陽一
【テーマコード(参考)】
3C047
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C047FF08
3C047GG01
3C158AA05
3C158AA07
3C158AA11
3C158AB01
3C158AB04
3C158AC02
3C158AC04
3C158BA02
3C158BA04
3C158BA05
3C158BA07
3C158BB02
3C158BB06
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3C158BB09
3C158BC01
3C158BC02
3C158CB01
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EA13
3C158EA23
3C158EB01
5F057AA16
5F057BA15
5F057CA12
5F057DA03
5F057FA20
5F057GA16
5F057GB02
5F057GB13
(57)【要約】
【課題】複雑な機構を有することなく、複数の押圧アクチュエータのそれぞれを制御して、基板の膜厚プロファイルを精度よく制御することができる研磨装置が提供される。
【解決手段】研磨装置1は、研磨構造体20と、研磨ヘッド10と、所定の回転角度の範囲内で研磨ヘッド10を回転させるヘッド回転機構15と、を備えている。研磨ヘッド10は、複数の押圧アクチュエータ11を備えている。研磨構造体20は、研磨テーブル21、または研磨ベルト60を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨面を有する研磨構造体と、
基板を前記研磨面に押し付ける研磨ヘッドと、
所定の回転角度の範囲内で前記研磨ヘッドを回転させるヘッド回転機構と、を備え、
前記研磨ヘッドは、そのアクチュエータ保持面の全体に敷き詰められ、かつ前記基板の特定部位を独立して押圧する複数の押圧アクチュエータを備えており、
前記研磨構造体は、円軌道に沿って並進運動するスクロール式の研磨テーブル、または進行方向に沿って直線運動する研磨ベルトを備えている、研磨装置。
【請求項2】
前記複数の押圧アクチュエータは、前記基板に押圧力を付与する複数のエアバッグを備えており、
前記複数のエアバッグは、複数の流体供給ラインに接続されている、請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
前記複数の押圧アクチュエータは、前記基板に押圧力を付与する複数の圧電素子を備えており、
前記複数の圧電素子は、前記複数の圧電素子の動作を制御するための複数の制御ラインに接続されている、請求項1に記載の研磨装置。
【請求項4】
前記研磨構造体が前記研磨テーブルである場合、前記研磨装置は、前記研磨テーブルに形成された流通孔を通じて、液体を前記研磨面に供給する液体供給ノズルを備えている、請求項1に記載の研磨装置。
【請求項5】
前記複数の押圧アクチュエータは、
前記基板に押圧力を付与し、かつ複数の流体供給ラインに接続された複数のエアバッグと、
前記基板に押圧力を付与し、かつ複数の制御ラインに接続された複数の圧電素子と、を備えている、請求項1に記載の研磨装置。
【請求項6】
前記研磨装置は、前記複数の押圧アクチュエータの動作を制御する各種装置を収容する制御ボックスを備えており、
前記制御ボックスは、前記研磨ヘッドとともに、回転する、請求項1に記載の研磨装置。
【請求項7】
前記ヘッド回転機構は、所定の回転角度の範囲内で前記研磨ヘッドを往復回転させる、請求項1に記載の研磨装置。
【請求項8】
前記ヘッド回転機構は、
モータと、
前記モータに接続されたモータプーリと、
前記研磨ヘッドの外周面に形成された歯車と、
前記モータプーリと前記歯車との間に掛け渡されたタイミングベルトと、を備えている、請求項1に記載の研磨装置。
【請求項9】
前記研磨装置は、前記基板の被研磨面の膜厚プロファイルに基づいて、前記複数の押圧アクチュエータのそれぞれの動作を制御する制御装置を備えており、
前記制御装置は、現在の膜厚プロファイルと目標の膜厚プロファイルとの比較結果に基づいて、前記基板の特定部位を特定し、前記基板の特定部位に対応する対象押圧アクチュエータを決定する、請求項1に記載の研磨装置。
【請求項10】
円軌道に沿って並進運動するスクロール式の研磨テーブル、または進行方向に沿って直線運動する研磨ベルトを備える研磨構造体を動作させ、
研磨ヘッドのアクチュエータ保持面の全体に敷き詰められ、かつ基板の特定部位を独立して押圧する複数の押圧アクチュエータを動作させて、前記基板の特定部位を前記研磨構造体の研磨面に押し付け、
所定の回転角度の範囲内で前記研磨ヘッドを回転させる、研磨方法。
【請求項11】
前記研磨方法は、前記複数の押圧アクチュエータとしての複数のエアバッグに接続された複数の流体供給ラインを通じて、前記複数のエアバッグを動作させる、請求項10に記載の研磨方法。
【請求項12】
前記研磨方法は、前記複数の押圧アクチュエータとしての複数の圧電素子に接続された複数の制御ラインを通じて、前記複数の圧電素子を動作させる、請求項10に記載の研磨方法。
【請求項13】
前記研磨構造体が前記研磨テーブルである場合、前記研磨方法は、前記研磨テーブルに形成された流通孔を通じて、液体供給ノズルから液体を前記研磨面に供給する、請求項10に記載の研磨方法。
【請求項14】
前記研磨方法は、
前記複数の押圧アクチュエータとしての複数のエアバッグに接続された複数の流体供給ラインを通じて、前記複数のエアバッグを動作させ、
前記複数の押圧アクチュエータとしての複数の圧電素子に接続された複数の制御ラインを通じて、前記複数の圧電素子を動作させる、請求項10に記載の研磨方法。
【請求項15】
前記研磨方法は、所定の回転角度の範囲内で前記研磨ヘッドを往復回転させる、請求項10に記載の研磨方法。
【請求項16】
前記研磨方法は、現在の膜厚プロファイルと目標の膜厚プロファイルとの比較結果に基づいて、前記基板の特定部位を特定し、前記特定部位に対応する対象押圧アクチュエータを決定する、請求項10に記載の研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨装置および研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造では、基板の一例であるウェハ上に様々な種類の膜が形成される。配線・コンタクトの形成工程では、成膜工程の後には、膜の不要な部分や表面凹凸を除去するために、ウェハが研磨される。化学機械研磨(CMP)は、ウェハを研磨するための代表的な技術である。
【0003】
CMPは、研磨液を研磨面上に供給しながら、ウェハを研磨面に摺接させることにより行われる。ウェハに形成された膜は、研磨液に含まれる砥粒または研磨パッドによる機械的作用と、研磨液の化学成分による化学的作用との複合により研磨される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CMPでは、ウェハを全面に亘って均一に研磨する技術を磨いてきたが、微細化が進むにつれて、研磨後のウェハの膜厚のばらつきをより一層、低減することが求められている。このような要求に対して、特許文献1は、複数のアクチュエータ(圧電素子など)を有する研磨ヘッドを開示している。研磨ヘッドは、各アクチュエータの動作を制御することにより、ウェハの複数の領域に対して個別に押付力を付与して、ウェハの膜厚プロファイルを制御する。
【0006】
しかしながら、各アクチュエータの動作を制御するために、複数のアクチュエータのそれぞれに対して、配線を接続する必要がある。特に、より精度よく膜厚プロファイルを制御するためには、多数のアクチュエータを配置する必要があるが、配線の数はアクチュエータの数に応じて、多くなる。
【0007】
一般的な研磨装置では、ウェハの被研磨面全体における相対速度を均一にするために、研磨ヘッドを研磨テーブルと同一の回転方向に連続的に回転させる必要がある。しかしながら、多数の配線を接続した状態で、研磨ヘッドを回転させることは困難である。
【0008】
このような問題を解決するために、継手(例えば、ロータリーコネクタ)を各配線に接続したり、各アクチュエータを無線通信手段によって制御する方法が考えられる。しかしながら、このような方法では、機構が複雑になり、結果として、装置全体のサイズが大きくなったり、コストが増大するという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、複雑な機構を有することなく、複数の押圧アクチュエータのそれぞれを制御して、基板の膜厚プロファイルを精度よく制御することができる研磨装置および研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様では、研磨面を有する研磨構造体と、基板を前記研磨面に押し付ける研磨ヘッドと、所定の回転角度の範囲内で前記研磨ヘッドを回転させるヘッド回転機構と、を備える研磨装置が提供される。前記研磨ヘッドは、そのアクチュエータ保持面の全体に敷き詰められ、かつ前記基板の特定部位を独立して押圧する複数の押圧アクチュエータを備えており、前記研磨構造体は、円軌道に沿って並進運動するスクロール式の研磨テーブル、または進行方向に沿って直線運動する研磨ベルトを備えている。
【0011】
一態様では、前記複数の押圧アクチュエータは、前記基板に押圧力を付与する複数のエアバッグを備えており、前記複数のエアバッグは、複数の流体供給ラインに接続されている。
一態様では、前記複数の押圧アクチュエータは、前記基板に押圧力を付与する複数の圧電素子を備えており、前記複数の圧電素子は、前記複数の圧電素子の動作を制御するための複数の制御ラインに接続されている。
一態様では、前記研磨構造体が前記研磨テーブルである場合、前記研磨装置は、前記研磨テーブルに形成された流通孔を通じて、液体を前記研磨面に供給する液体供給ノズルを備えている。
【0012】
一態様では、前記複数の押圧アクチュエータは、前記基板に押圧力を付与し、かつ複数の流体供給ラインに接続された複数のエアバッグと、前記基板に押圧力を付与し、かつ複数の制御ラインに接続された複数の圧電素子と、を備えている。
一態様では、前記研磨装置は、前記複数の押圧アクチュエータの動作を制御する各種装置を収容する制御ボックスを備えており、前記制御ボックスは、前記研磨ヘッドとともに、回転する。
一態様では、前記ヘッド回転機構は、所定の回転角度の範囲内で前記研磨ヘッドを往復回転させる。
【0013】
一態様では、前記ヘッド回転機構は、モータと、前記モータに接続されたモータプーリと、前記研磨ヘッドの外周面に形成された歯車と、前記モータプーリと前記歯車との間に掛け渡されたタイミングベルトと、を備えている。
一態様では、前記研磨装置は、前記基板の被研磨面の膜厚プロファイルに基づいて、前記複数の押圧アクチュエータのそれぞれの動作を制御する制御装置を備えており、前記制御装置は、現在の膜厚プロファイルと目標の膜厚プロファイルとの比較結果に基づいて、前記基板の特定部位を特定し、前記基板の特定部位に対応する対象押圧アクチュエータを決定する。
【0014】
一態様では、円軌道に沿って並進運動するスクロール式の研磨テーブル、または進行方向に沿って直線運動する研磨ベルトを備える研磨構造体を動作させ、研磨ヘッドのアクチュエータ保持面の全体に敷き詰められ、かつ基板の特定部位を独立して押圧する複数の押圧アクチュエータを動作させて、前記基板の特定部位を前記研磨構造体の研磨面に押し付け、所定の回転角度の範囲内で前記研磨ヘッドを回転させる、研磨方法が提供される。
【0015】
一態様では、前記研磨方法は、前記複数の押圧アクチュエータとしての複数のエアバッグに接続された複数の流体供給ラインを通じて、前記複数のエアバッグを動作させる。
一態様では、前記研磨方法は、前記複数の押圧アクチュエータとしての複数の圧電素子に接続された複数の制御ラインを通じて、前記複数の圧電素子を動作させる。
一態様では、前記研磨構造体が前記研磨テーブルである場合、前記研磨方法は、前記研磨テーブルに形成された流通孔を通じて、液体供給ノズルから液体を前記研磨面に供給する。
【0016】
一態様では、前記研磨方法は、前記複数の押圧アクチュエータとしての複数のエアバッグに接続された複数の流体供給ラインを通じて、前記複数のエアバッグを動作させ、前記複数の押圧アクチュエータとしての複数の圧電素子に接続された複数の制御ラインを通じて、前記複数の圧電素子を動作させる。
一態様では、前記研磨方法は、所定の回転角度の範囲内で前記研磨ヘッドを往復回転させる。
一態様では、前記研磨方法は、現在の膜厚プロファイルと目標の膜厚プロファイルとの比較結果に基づいて、前記基板の特定部位を特定し、前記特定部位に対応する対象押圧アクチュエータを決定する。
【発明の効果】
【0017】
ヘッド回転機構は、研磨ヘッドを連続的に回転させることなく、所定の回転角度の範囲内で回転させる。したがって、複数の押圧アクチュエータに接続されたライン(すなわち、制御ライン、流体供給ライン)の捻れを防止しつつ、基板の膜厚プロファイルを精度よく制御することができる。さらに、このような構成により、複雑な機構を有することなく、各押圧アクチュエータを制御することができる。
【0018】
研磨ヘッドに保持された基板を研磨構造体に押し付けることにより、基板の被研磨面全体における相対速度を均一にするための相対運動を研磨ヘッド側で生じさせることなく、基板を研磨することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図4】研磨ヘッドのアクチュエータ保持面の全体に敷き詰められた押圧アクチュエータを示す図である。
【
図5】偏心回転運動を行う研磨パッド(および研磨テーブル)を示す図である。
【
図7】各押圧アクチュエータの動作を制御する制御フローの一実施形態を示す図である。
【
図8】ウェハのノッチ位置を検出する膜厚センサを示す図である。
【
図10】押圧アクチュエータの他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下で説明する図面において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。以下で説明する複数の実施形態において、特に説明しない一実施形態の構成は、他の実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0021】
図1は、研磨装置の一実施形態を示す図である。研磨装置1は、基板の一例であるウェハWを化学機械的に研磨する装置である。
図1に示すように、研磨装置1は、研磨構造体20と、ウェハWを保持する研磨ヘッド10と、液体(例えば、研磨液または純水)を供給する液体供給ノズル31と、を備えている。
【0022】
本実施形態では、研磨構造体20は、研磨面22aを有する研磨パッド22と、研磨パッド22を支持する研磨テーブル21と、を備えている。研磨テーブル21は、その内部に形成された流通孔21aを有している。流通孔21aは、研磨パッド22に向かって延びており、研磨パッド22に形成された開口部22bに接続されている。
【0023】
液体供給ノズル31は、研磨テーブル21の下部に接続されており、研磨テーブル21の流通孔21aに連通している。液体供給ノズル31は、液体(例えば、研磨液または純水)を供給するための液体供給ライン30に接続されている。液体供給ライン30を通じて液体供給ノズル31から液体が供給されると、液体は、流通孔21aおよび開口部22bを通じて、研磨面22a上から噴出(湧出)する。
【0024】
図1に示すように、研磨装置1は、研磨ヘッド10に連結された揺動アーム2と、揺動アーム2を支持する揺動軸3と、揺動軸3を中心として揺動アーム2を旋回させる旋回モータ4と、揺動アーム2および揺動軸3を通じて研磨ヘッド10を昇降させる昇降機構5と、を備えている。
【0025】
図2は、揺動する研磨ヘッドを示す図である。
図3は、昇降する研磨ヘッドを示す図である。
図2に示すように、旋回モータ4が揺動軸3を中心として揺動アーム2を旋回させると、研磨ヘッド10は、研磨構造体20の上方の研磨位置と、研磨構造体20の外側のロード・アンロード位置との間を移動することができる。
【0026】
研磨対象のウェハWは、ロード・アンロード位置でロボットハンドRHにより、研磨ヘッド10に取り付けられ、その後、研磨ヘッド10によって研磨位置に移動される。研磨されたウェハWは、研磨ヘッド10によって研磨位置からロード・アンロード位置に移動され、ロード・アンロード位置でロボットハンドRHにより研磨ヘッド10から取り外される。
【0027】
図3に示すように、研磨ヘッド10(および揺動軸3、揺動アーム2)は、昇降機構5により、研磨構造体20に対して相対的に上下動するように構成されている。昇降機構5は、昇降モータ5aと、昇降モータ5aに接続されたボールねじ5bと、ボールねじ5bが螺合する突起部5cと、を有している。突起部5cは、揺動軸3に固定されている。
【0028】
昇降モータ5aが駆動すると、ボールねじ5bの回転とともに、研磨ヘッド10(および揺動軸3、揺動アーム2)は、突起部5cを通じて、研磨構造体20に近接(または離間)する。昇降機構5は、研磨ヘッド10の、研磨構造体20に対する相対的な高さを調整するための位置決め機構として機能する。ウェハWを研磨するとき、昇降機構5は、研磨ヘッド10を所定の高さに配置する。この状態で、研磨ヘッド10は、その下面に保持されたウェハWを研磨面22aに押し付ける。
【0029】
図4は、研磨ヘッドのアクチュエータ保持面の全体に敷き詰められた押圧アクチュエータを示す図である。
図1および
図4に示すように、研磨ヘッド10は、揺動アーム2に連結されたキャリア13と、キャリア13に保持された複数の押圧アクチュエータ11と、押圧アクチュエータ11の外側に配置されたリテーナリング17と、を備えている。リテーナリング17は、ウェハWおよび押圧アクチュエータ11を囲むように配置されており、ウェハWの研磨中にウェハWが研磨ヘッド10から飛び出すことを防止している。
【0030】
複数の押圧アクチュエータ11は、研磨ヘッド10に保持されたウェハWの裏側に位置している。キャリア13は、複数の押圧アクチュエータ11を保持するアクチュエータ保持面8を有している。複数の押圧アクチュエータ11は、アクチュエータ保持面8の全体に敷き詰められており、ウェハWの特定部位を独立して押圧するように構成されている。言い換えれば、複数の押圧アクチュエータ11は、ウェハWの複数の領域を異なる押圧力で、研磨面22aに押し付けるように構成されている。
【0031】
本実施形態では、複数の押圧アクチュエータ11のそれぞれは、ウェハWに押圧力を付与する圧電素子を備えている。以下、本明細書において、押圧アクチュエータ11を圧電素子11と呼ぶことがある。
【0032】
研磨装置1は、複数の圧電素子11の動作を制御するための複数の制御ライン12と、複数の圧電素子11の動作を制御するために必要な装置を収容する制御ボックス14と、を備えている(
図1参照)。複数の制御ライン12は、複数の圧電素子11の動作を制御するための制御用配線であり、複数の圧電素子11の数に対応する数を有している。
【0033】
複数の制御ライン12は、キャリア13に収容されており、制御ボックス14に接続されている。制御ボックス14は、各圧電素子11に印加される電力(すなわち、電流、電圧)を制御するための各種装置(例えば、インバータ)を収容している。制御ボックス14は、キャリア13に装着されており、圧電素子11の上方に配置されている。
【0034】
研磨装置1は、制御ボックス14に接続された複数の集約線16を備えている。集約線16は、電力や制御信号などの動作信号を制御ボックス14内の各種装置に送るための配線であり、揺動アーム2に形成された貫通孔2aを通じて外部に延びている。集約線16を通じて制御ボックス14内の各種装置に送られた動作信号は、各種装置によって調整され、各圧電素子11に送られる。
【0035】
本実施形態では、集約線16は、制御ライン12よりも少ない数を有しており、制御ライン12よりも太い直径を有している。このような構造により、集約線16は、揺動アーム2の旋回動作に起因する繰り返しの曲げに対する耐久性を向上させることができる。
【0036】
一実施形態では、研磨装置1は、必ずしも、集約線16を備えなくてもよい。この場合、押圧アクチュエータ11の数に対応する数を有する制御ライン12は、制御ボックス14に接続されており、揺動アーム2の貫通孔2aを通じて外部に延びている。
【0037】
一実施形態では、制御ライン12はエア配管であり、圧電素子11は分割されたエアバックでもよい。集約線16は制御ボックス14に格納された圧力制御ユニットの電気的制御に用いられ、集約線16にはエアバックに供給するエア配管が含まれる。
【0038】
図1に示すように、研磨テーブル21は、円軌道に沿って並進運動するスクロール式の研磨テーブルである。より具体的には、研磨装置1は、研磨テーブル21を支持する支持機構25A,25Bを備えている。支持機構25A,25Bは、研磨テーブル21の偏心回転運動を許容しつつ、研磨テーブル21を水平に支持している。
【0039】
図1に示す実施形態では、2つの支持機構25A,25Bが配置されているが、支持機構の数は本実施形態には限定されない。一実施形態では、3つ以上の支持機構が研磨テーブル21の円周方向に沿って等間隔に配置されてもよい。支持機構25A,25Bは、同一の構造を有しているため、以下、支持機構25Aの構造について説明する。
【0040】
支持機構25Aは、研磨テーブル21の下面に固定された軸受29と、軸受29に回転自在に支持された偏心軸28と、偏心軸28を回転させるモータ23と、を備えている。偏心軸28は、所定の偏心量(すなわち、オフセット量)だけずれた2つの軸部27,26を有している。軸部27は軸受29に回転自在に支持されており、軸部26はモータ23に固定されている。
【0041】
図5は、偏心回転運動を行う研磨パッド(および研磨テーブル)を示す図である。モータ23が駆動すると、研磨テーブル21(および研磨パッド22)は、偏心軸28の回転とともに、所定の偏心量を半径とした円軌道に沿って並進運動(すなわち、スクロール運動)を行う(
図5参照)。
【0042】
図1に示すように、研磨装置1は、所定の回転角度の範囲内で研磨ヘッド10を回転させるヘッド回転機構15を備えている。ヘッド回転機構15は、モータ15aと、モータ15aに接続されたモータプーリ15bと、研磨ヘッド10のキャリア13の外周面に形成された歯車15cと、モータプーリ15bと歯車15cとの間に掛け渡されたタイミングベルト15dと、を備えている。
【0043】
図6は、往復回転する研磨ヘッドを示す図である。モータ15aは、例えば、サーボモータやステッピングモータなどの精密モータである。モータ15aが駆動すると、モータプーリ15bおよびタイミングベルト15dの回転とともに、歯車15cが回転する。
図6に示すように、研磨ヘッド10は、歯車15cの回転によって、その中心軸線CLを中心として所定の回転角度の範囲内で往復回転する。論理的に平均化処理に必要となる所定の回転角度は、360度の整数倍である。一実施形態では、ヘッド回転機構15は、研磨ヘッド10を往復回転させることなく、研磨時間内で一方向に回転させてもよい。
【0044】
図1に示すように、研磨装置1は、揺動アーム2とキャリア13との間に配置された軸受18A,18Bを備えている。軸受18A,18Bは、同一の構造を有しており、上下方向に配置されている。研磨ヘッド10は、軸受18A,18Bに回転自在に支持されている。軸受18A,18Bの数は、本実施形態には限定されない。
【0045】
このような構成により、研磨ヘッド10は、揺動アーム2に対して相対的に回転可能である。キャリア13に収容されている制御ボックス14は、研磨ヘッド10とともに回転する。
【0046】
本実施形態によれば、ヘッド回転機構15は、複数の押圧アクチュエータ11を備える研磨ヘッド10を連続的に回転させることなく、所定の回転角度の範囲内で回転させる。したがって、研磨ヘッド10は、その連続回転に起因する制御ライン12の捻れを防止し、集約線16にロータリーコネクタなどの追加を不要にすることができる。
【0047】
所定の回転角度は、制御ライン12が捻れない程度(または、制御ライン12の捻れに起因して、制御ライン12が断線しない程度)の回転角度に決定される。例えば、研磨ヘッド10の回転角度は、0度~1080度の範囲内の回転角度に決定される。したがって、「連続回転」は、このように決定された回転角度の上限を超えて、ウェハWの研磨中に一方向に回転することを意味する。
【0048】
さらに、本実施形態によれば、継手(例えば、ロータリーコネクタ)を各制御ライン12に接続する必要はなく、各押圧アクチュエータ11を無線通信手段によって制御する必要もない。したがって、研磨ヘッド10のサイズが大きくなったり、研磨装置1のコストが増大するといった問題は生じない。このように、本実施形態によれば、研磨ヘッド10は、制御ライン12の捻れを防止することができるため、複雑な機構を有することなく、各押付アクチュエータ11を制御することができる。
【0049】
円軌道に沿って並進運動する研磨テーブル21は、その全体で、ウェハWの被研磨面に対して、同一の相対移動量を生じさせることができる。したがって、研磨圧力が同一である条件下において、理論上、均一な研磨レートでウェハWを研磨することができる。このような構成により、研磨ヘッド10に保持されたウェハWを、円軌道に沿って並進運動する研磨テーブル21上の研磨パッド22の研磨面22aに押し付けることにより、ウェハWの被研磨面全体における相対速度を均一にするための相対運動を研磨ヘッド10側で生じさせることなく、ウェハWを研磨することができる。
【0050】
ウェハWを研磨するとき、ウェハWを保持する研磨ヘッド10を下降させて、研磨パッド22の研磨面22aにウェハWを押し付けると同時に、液体供給ノズル31を通じて、研磨テーブル21の流通孔21aに研磨液を供給する。流通孔21aに供給された研磨液は、研磨パッド22の開口部22bを通じて、研磨面22a上に供給される。このようにして、研磨液の存在下で研磨パッド22の研磨面22aがウェハWの被研磨面を研磨する。
【0051】
ウェハWの研磨中において、ヘッド回転機構15は、所定の回転角度の範囲内で研磨ヘッド10を回転させる。研磨ヘッド10を回転させる理由は次の通りである。研磨パッド22の研磨面22aは、研磨パッド22に形成された開口部22bには存在しない。
【0052】
研磨ヘッド10の回転を停止した状態で、研磨テーブル21が並進運動すると、開口部22bは、一定の軌跡を描いて、ウェハWの被研磨面上を移動する。したがって、開口部22bの軌跡上のウェハWの被研磨面は研磨されず、開口部22bの軌跡上におけるウェハWの研磨の均一性が低下してしまう。
【0053】
そこで、ウェハWの研磨の均一性を高めるために、ヘッド回転機構15は、所定の回転速度で研磨ヘッド10を回転させる。一実施形態では、ヘッド回転機構15によって研磨ヘッド10を回転させるとともに、旋回モータ4によって研磨ヘッド10を揺動させてもよい。
【0054】
従来の連続回転する研磨テーブルを用いた研磨では、基板面内である程度均一な相対速度での相対運動を生じさせるには、研磨テーブルおよび研磨ヘッドを所定の回転速度で連続回転させる必要がある。その一方で、本実施形態では、研磨テーブル21のスクロール運動によって必要な相対速度を生じさせることができる。研磨ヘッド10は、研磨パッド22に形成された溝や開口部の軌跡の、研磨動作への転写を防ぐことを目的に回転する。
【0055】
したがって、研磨ヘッド10の回転速度は、相対的に小さくてもよい。このような構成により、制御ボックス14が複雑で繊細な装置を有していても、研磨ヘッド10の高速回転に起因する衝撃を受けることなく、制御ボックス14を研磨ヘッド10に搭載することができる。
【0056】
図1に示すように、研磨装置1は、その構成要素の動作を制御する制御装置50を備えている。制御装置50は、プログラムが格納された記憶部50aと、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行する演算部50bと、を備えている。記憶部50aは、RAMなどの主記憶部と、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などの補助記憶部と、を備えている。演算部50bの例としては、CPU(中央処理装置)、GPU(グラフィックプロセッシングユニット)が挙げられる。
【0057】
制御装置50は、少なくとも1台のコンピュータから構成されている。少なくとも1台のコンピュータは、1台のサーバまたは複数台のサーバであってもよい。制御装置50は、エッジサーバであってもよいし、インターネットまたはローカルエリアネットワークなどの通信ネットワークに接続されたクラウドサーバであってもよいし、あるいはネットワーク内に設置されたフォグコンピューティングデバイス(ゲートウェイ、フォグサーバ、ルーターなど)であってもよい。制御装置50は、インターネットまたはローカルエリアネットワークなどの通信ネットワークにより接続された複数のサーバであってもよい。例えば、制御装置50は、エッジサーバとクラウドサーバとの組み合わせであってもよい。
【0058】
制御装置50は、研磨装置1の構成要素(例えば、旋回モータ4、昇降モータ5a、モータ15a、およびモータ23)に電気的に接続されており、これら構成要素の動作を制御するように構成されている。
【0059】
さらに、制御装置50は、集約線16(および制御ライン12)に電気的に接続されており、複数の押圧アクチュエータ11のそれぞれの動作を制御するように構成されている。例えば、制御装置50は、ウェハWの被研磨面の膜厚プロファイルに基づいて、各押圧アクチュエータ11の動作を制御するように構成されている。
【0060】
図7は、各押圧アクチュエータの動作を制御する制御フローの一実施形態を示す図である。
図7のステップS101に示すように、まず、膜厚測定器(図示しない)でウェハW(より具体的には、被研磨面)の膜厚を測定する。制御装置50は、膜厚測定器で測定された膜厚に基づいて、ウェハWの膜厚プロファイルを作成する。膜厚プロファイルは、ウェハWの半径方向および円周方向におけるウェハWの膜厚分布である。
【0061】
例えば、膜厚測定器は、研磨装置1の外部に配置された、ウェハWが静止した状態でウェハWの膜厚を測定するスタンドアローン型の膜厚測定器である。一実施形態では、膜厚測定器は、研磨装置1の内部に配置された膜厚センサ40であってもよい。
【0062】
図1に示すように、研磨装置1は、研磨構造体20(より具体的には、研磨テーブル21)に隣接して配置された膜厚センサ40を備えている。
図1に示す膜厚センサ40は、光学式センサである。一実施形態では、膜厚センサ40は、研磨テーブル21に埋め込まれた渦電流センサであってもよい。膜厚センサ40は、そのセンサ部がウェハWの被研磨面に対向するように配置されている。制御装置50は、膜厚センサ40に電気的に接続されている。制御装置50は、揺動アーム2を動作させて、研磨ヘッド10に保持されたウェハWを膜厚センサ40の上方に配置させる。
【0063】
この状態で、ヘッド回転機構15(および/または揺動アーム2)を動作させることにより、膜厚センサ40は、ウェハWの膜厚に相当する信号を検出する。制御装置50は、膜厚センサ40によって検出された信号に基づいて、ウェハWの膜厚を測定し、膜厚プロファイルを作成する。
【0064】
図2に示す実施形態では、研磨装置1は、研磨テーブル21の外側に配置された固定テーブル41を備えており、複数の膜厚センサ40は、固定テーブル41に埋め込まれている。これら複数の膜厚センサ40は、研磨テーブル21に沿って曲線状に配置されている。このように、複数の膜厚センサ40を配置することにより、制御装置50は、短時間で、ウェハWの膜厚を広範囲に亘って測定することができる。
【0065】
その後、制御装置50は、膜厚測定器(または膜厚センサ40)で測定された膜厚に基づいて作成した現在の膜厚プロファイルと目標の膜厚プロファイルとを比較し(ステップS102参照)、より積極的に(または、より消極的に)研磨すべきウェハWの特定部位を特定する(ステップS103参照)。目標の膜厚プロファイルは、予め記憶部50aに記憶されている。目標の膜厚プロファイルは、過去の実験データに基づいて作成されてもよく、理論データに基づいて作成されてもよい。
【0066】
制御装置50は、特定されたウェハWの特定部位に基づいて、特定部位に対応する押圧アクチュエータ11(すなわち、対象押圧アクチュエータ11)と、対象押圧アクチュエータ11の押圧力と、を決定する。
【0067】
例えば、制御装置50は、現在の膜厚プロファイルと目標の膜厚プロファイルとの比較結果に基づいて、ウェハWの目標研磨量の分布を算出し、所定の研磨時間以内における目標研磨量を達成するために、対象押圧アクチュエータ11を含む複数の押圧アクチュエータ11の押圧力を決定する。その後、制御装置50は、対象押圧アクチュエータ11を含む複数の押圧アクチュエータ11を動作させて、決定された押圧力をウェハWに印加し、膜厚のばらつきを解消する。
【0068】
アクチュエータ保持面8の全体に敷き詰められた複数の押圧アクチュエータ11は、研磨ヘッド10の半径方向および円周方向に沿って分布しており、ウェハWの特定部位を独立して押圧する。したがって、制御装置50は、複数の押圧アクチュエータ11を動作させて、ウェハWの膜厚プロファイルを精度よく制御することができる。
【0069】
複数の押圧アクチュエータ11は、研磨ヘッド10のアクチュエータ保持面8の全体に配置されていれば、格子状に配列されてもよく、同心円状に配列されてもよい。一実施形態では、複数の押圧アクチュエータ11は、ランダムに配列されてもよい。
【0070】
ウェハWの研磨を開始した後(ステップS104参照)、ウェハWの研磨中において、制御装置50は、固定テーブル41に配置された膜厚センサ40によって、ウェハWの膜厚を測定する(ステップS105参照)。より具体的には、制御装置50は、揺動アーム2を動作させて、研磨ヘッド10を膜厚センサ40の上方まで移動させる。膜厚センサ40は、研磨ヘッド10に保持されたウェハWの膜厚に相当する信号を検出し、制御装置50は、膜厚センサ40によって検出された信号に基づいてウェハWの膜厚を測定する。
【0071】
制御装置50は、測定されたウェハWの膜厚に基づいて、ウェハWの研磨終点に到達したか否かを決定する(ステップS106参照)。例えば、制御装置50は、ウェハWの膜厚における最も厚い部位と、最も薄い部位との差分が所定の範囲内に到達した時点で、研磨終点を決定する。
【0072】
制御装置50が研磨終点を決定した場合(ステップS106の「YES」参照)、制御装置50は、ウェハWの研磨を終了する(ステップS107参照)。その一方で、制御装置50が研磨終点を決定しない場合(ステップS106の「NO」参照)、制御装置50は、ウェハWの研磨を継続する。
【0073】
一般的な研磨装置の場合、ウェハWを研磨するために、研磨ヘッド10を高速で回転させる必要がある。この場合、摩擦力に起因して、ウェハWが研磨ヘッド10に対して円周方向にずれてしまう。結果として、制御装置50は、ウェハWのずれをリアルタイムで測定し、ウェハWのずれに応じて、ウェハWの特定部位を研磨するための対象押圧アクチュエータ11を常に変更しなければならない。
【0074】
本実施形態では、研磨装置1は、円軌道に沿って並進運動する研磨テーブル21上の研磨パッド22の研磨面22aにウェハWを押し付けることによってウェハWを研磨するように構成されている。このような構成により、研磨ヘッド10は、高速で回転する必要はないため、研磨パッド22とウェハWとの摩擦力に起因して、ウェハWが研磨ヘッド10に対して円周方向にずれることを防止することができる。
【0075】
図8は、ウェハのノッチ位置を検出する膜厚センサを示す図である。ウェハWが研磨ヘッド10に対して円周方向にずれた場合に備えて、制御装置50は、ウェハWの円周方向の角度を特定する基準位置(本実施形態では、ノッチ位置Nt)を測定するように構成されてもよい。ノッチ位置Ntは、ウェハWの周縁部(ウェハ円を形成するウェハWの最も外側の端部)に形成されている。
【0076】
例えば、ウェハWの研磨を開始した後、制御装置50は、揺動アーム2を動作させて、ウェハWの周縁部を研磨テーブル21の外側に配置させ、この状態で、ヘッド回転機構15を動作させて、研磨ヘッド10を回転させる。このような動作により、研磨テーブル21からはみ出したウェハWの周縁部が回転し、膜厚センサ40は、ウェハWのノッチ位置Ntを検出する。制御装置50は、膜厚センサ40の検出信号に基づいて、ウェハWのノッチ位置Ntを特定することができる。
【0077】
ノッチ位置Ntは、ウェハWの円周方向の角度の基準位置である。記憶部50aは、ウェハWの研磨開始時における研磨ヘッド10の回転角度と、ノッチ位置Ntと、の関係を記憶している。したがって、制御装置50は、研磨ヘッド10の回転角度と、ノッチ位置Ntと、の関係に基づいて、ウェハWのずれを決定する。
【0078】
仮に、ウェハWがずれていた場合、制御装置50は、ウェハWのずれに相当する補正量を算出し、算出された補正量に基づいて、ウェハWの研磨開始時に特定した初期の対象押圧アクチュエータ11を変更する。このような変更により、仮に、ウェハWの研磨に起因して、ウェハWがずれたとしても、制御装置50は、ウェハWの膜厚プロファイルを精度よく制御することができる。
【0079】
図9は、研磨装置の他の実施形態を示す図である。上述した実施形態では、研磨装置1は、研磨構造体20としてのスクロール式の研磨テーブル21を備えているが、
図9に示す実施形態では、研磨装置1は、研磨構造体20としての研磨ベルト60を備えている。
【0080】
研磨ベルト60は、2つのベルトローラ62A,62Bと、ベルトローラ62A,62Bの間に掛け渡されたベルト61と、を備えている。ベルトローラ62A,62Bは、同一の回転方向に回転するように構成されている。ベルト61は、ベルトローラ62A,62Bの駆動によって回転する。
【0081】
ベルト61は、その表面に形成された研磨面61aを有している。したがって、ウェハWを保持する研磨ヘッド10を下降させて、回転するベルト61の研磨面61aにウェハWを押し付けることにより、ウェハWは研磨される。ウェハWを研磨するとき、ウェハWの下方に位置するベルト61は、その進行方向に沿って直線運動する。
【0082】
研磨装置1は、ベルト61の進行方向において、研磨ヘッド10の上流側に配置された液体供給ノズル70を備えている。液体供給ノズル70は、液体供給ノズル31と同様に、液体(例えば、研磨液または純水)を供給するように構成されている。
【0083】
直線運動する研磨ベルト60は、ウェハWの被研磨面に対して、同一の相対移動量を生じさせることができる。したがって、研磨ヘッド10に保持されたウェハWを研磨面61aに押し付けることにより、ウェハWの被研磨面全体における相対速度を均一にするための相対運動を研磨ヘッド10側で生じさせることなく、ウェハWを研磨することができる。
【0084】
なお、他の実施形態として、研磨ベルトを巻出しローラに巻き回した研磨ベルトを巻取りローラで巻取る、いわゆるロール・ツー・ロール方式の機構を用いて、研磨ベルトを直線運動させるようにしてもよい。
【0085】
図10は、押圧アクチュエータの他の実施形態を示す図である。上述した実施形態では、押圧アクチュエータ11は、圧電素子を備えているが、
図10に示す実施形態では、複数の押圧アクチュエータ111は、ウェハWに押圧力を付与する複数のエアバッグを備えている。以下、本明細書において、押圧アクチュエータ111をエアバッグ111と呼ぶことがある。
【0086】
本実施形態においても、複数のエアバッグ111は、研磨ヘッド10のアクチュエータ保持面8の全体に配置されていれば、格子状に配列されてもよく、同心円状に配列されてもよい。一実施形態では、複数のエアバッグ111は、ランダムに配列されてもよい。
【0087】
研磨装置1は、複数のエアバッグ111に接続された複数の流体供給ライン112を備えている。複数の流体供給ライン112は、複数のエアバッグ111の数に対応する数を有している。制御ボックス14は、各エアバッグ111に供給される圧縮気体を制御するための各種装置(例えば、電空レギュレータ、バルブなど)を収容している。流体供給ライン112および制御ライン12(
図1参照)を総称して、単にラインと呼ばれてもよい。
【0088】
本実施形態においても、ヘッド回転機構15は、研磨ヘッド10を連続的に回転させることなく、所定の回転角度の範囲内で回転させるため、継手(例えば、ロータリージョイント)を各流体供給ライン112に接続する必要はない。したがって、研磨ヘッド10のサイズが大きくなったり、研磨装置1のコストが増大するといった問題は生じない。
【0089】
一実施形態では、
図1に示す実施形態と、
図10に示す実施形態と、を組み合わせてもよい。この場合、複数の押圧アクチュエータは、複数のエアバッグ111と、複数の圧電素子11と、を備えている。研磨装置1は、複数のエアバッグ111の数に対応する数を有する複数の流体供給ライン112と、複数の圧電素子11の数に対応する数を有する複数の制御ライン12と、を備えている。
【0090】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0091】
1 研磨装置
2 揺動アーム
2a 貫通孔
3 揺動軸
4 旋回モータ
5 昇降機構
5a 昇降モータ
5b ボールねじ
5c 突起部
8 アクチュエータ保持面
10 研磨ヘッド
11 押圧アクチュエータ(圧電素子)
13 キャリア
14 制御ボックス
15 ヘッド回転機構
15a モータ
15b モータプーリ
15c 歯車
15d タイミングベルト
16 集約線
18A,18B 軸受
21 研磨テーブル
21a 流通孔
22 研磨パッド
22a 研磨面
23 モータ
25A,25B 支持機構
26,27 軸部
28 偏心軸
29 軸受
30 液体供給ライン
31 液体供給ノズル
40 膜厚センサ
41 固定テーブル
50 制御装置
50a 記憶部
50b 演算部
60 研磨ベルト
61 ベルト
61a 研磨面
62A,62B ベルトローラ
70 液体供給ノズル
111 押圧アクチュエータ(エアバッグ)
112 流体供給ライン
RH ロボットハンド
CL 中心軸線
Nt ノッチ位置