(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001620
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】カルボキシル基含有重合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 2/14 20060101AFI20231227BHJP
C08F 220/04 20060101ALI20231227BHJP
C08L 33/02 20060101ALI20231227BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20231227BHJP
C08F 216/12 20060101ALN20231227BHJP
【FI】
C08F2/14
C08F220/04
C08L33/02
C08L71/02
C08F216/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100392
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 秀平
(72)【発明者】
【氏名】田中 聡美
(72)【発明者】
【氏名】石井 沙弥
【テーマコード(参考)】
4J002
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BG011
4J002CF18X
4J002CH02Y
4J002ED036
4J011HA03
4J011HB14
4J011HB16
4J011HB27
4J011HB28
4J100AE71Q
4J100AG63Q
4J100AG70Q
4J100AH07Q
4J100AH31Q
4J100AJ01P
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4J100AL75Q
4J100AR18Q
4J100CA04
4J100DA38
4J100DA62
4J100EA05
4J100FA03
4J100FA20
4J100FA30
4J100JA43
4J100JA61
(57)【要約】
【課題】従来提案されている架橋型カルボキシル基含有重合体に比べ、水への溶解性が更に優れ、且つ、水に溶解させて得られる組成物の透明性も更に優れる、新規な架橋型カルボキシル基含有重合体を提供すること。
【解決手段】α,β-不飽和カルボン酸(a1)とエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物(a2)とを共重合させてなるカルボキシル基含有重合体を製造する方法であって、
(a1)と(a2)とを、乳化剤を含む不活性溶媒存在下で共重合させることを備え、
前記乳化剤が脂肪酸アルキレンオキサイド付加物及びポリオキシアルキレン変性物を含み、
前記脂肪酸アルキレンオキサイド付加物量が、(a1)100質量部に対し3.5~4.5質量部であり、
前記ポリオキシアルキレン変性物量が、(a1)100質量部に対し1質量部以上である、
製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α,β-不飽和カルボン酸(a1)とエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物(a2)とを共重合させてなるカルボキシル基含有重合体を製造する方法であって、
(a1)と(a2)とを、乳化剤を含む不活性溶媒存在下で共重合させることを備え、
前記乳化剤が脂肪酸アルキレンオキサイド付加物及びポリオキシアルキレン変性物を含み、
前記脂肪酸アルキレンオキサイド付加物量が、(a1)100質量部に対し3.5~4.5質量部であり、
前記ポリオキシアルキレン変性物量が、(a1)100質量部に対し1質量部以上である、
製造方法。
【請求項2】
前記不活性溶媒が、炭素数2~8の脂肪族炭化水素及び酢酸アルキルエステルを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
以下の(A)~(C):
(A)α,β-不飽和カルボン酸(a1)とエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物(a2)とを共重合させてなる重合体
(B)脂肪酸アルキレンオキサイド付加物
(C)ポリオキシアルキレン変性物
を含み、
以下の測定条件で測定した無攪拌膨潤時間が10分未満であり、且つ、以下の測定条件で測定した透過率が90%以上である、カルボキシル基含有重合体組成物。
[無攪拌膨潤時間測定条件]
25℃の水100gにカルボキシル基含有重合体組成物3gを加えて静置し、当該組成物が全て濡れきるのに要する時間を目視で測定する。
[透過性測定条件]
25℃の水495gにカルボキシル基含有重合体組成物5gを加えて分散させ、これに水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和して得た中和粘稠液ついて、分光光度計で測定波長425nmにおける透過率(イオン交換水の透過率を100%とした時の割合)を測定する。
【請求項4】
(B)の含有量が、(a1)100質量部に対し3.5質量部~4.5質量部であり、
(C)の含有量が、(a1)100質量部に対し1質量部以上である、
請求項3に記載のカルボキシル基含有重合体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カルボキシル基含有重合体及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧品等の増粘剤、パップ剤等の保湿剤、乳化剤、懸濁物等の懸濁安定剤、電池等のゲル基剤等には、架橋型カルボキシル基含有重合体が広く使用されている。このような架橋型カルボキシル基含有重合体としては、例えば、アクリル酸などのα,β-不飽和カルボン酸とポリアリルエーテルとの共重合体(特許文献1)、α,β-不飽和カルボン酸とヘキサアリルトリメチレントリスルホンとの共重合体(特許文献2)、α,β-不飽和カルボン酸とリン酸トリアリルとの共重合体(特許文献3)、α,β-不飽和カルボン酸とグリシジルメタクリレートなどとの共重合体(特許文献4)などが知られている。
【0003】
これらの架橋型カルボキシル基含有重合体は、水に溶解させた後、アルカリ性化合物などの中和剤で中和した中和粘稠液として、上記のような用途に用いられている。
【0004】
架橋型カルボキシル基含有重合体をこれらの用途に使用するためには、その均一な水溶液を調製する必要がある。ところが、架橋型カルボキシル基含有重合体は、通常、粉末として生成され、架橋型カルボキシル基含有重合体の粉末を水に溶解させる際に、塊状物(ママコ)が生成しやすい。いったんママコが生成すると、その表面にゲル状の層が形成され、その内部への水の浸透速度が遅くなるため、均一な溶液を得ることが困難となる。従って、架橋型カルボキシル基含有重合体を用いる場合には、ママコの生成を防ぐために、高速攪拌下で徐々に架橋型カルボキシル基含有重合体を水中に添加するという、生産効率の悪い操作を必要とし、場合によってはママコの生成を防止するために特殊な溶解装置を必要とする場合もある。
【0005】
前述のようなママコの生成が抑制された架橋型カルボキシル基含有重合体として、例えば、特許文献5には、α,β-不飽和カルボン酸等を重合してカルボキシル基含有重合体を作製する際、多価アルコール脂肪酸エステル及び多価アルコール脂肪酸エステルアルキレンオキサイド付加物のうちの少なくとも1種の化合物を特定量添加する技術が提案されている。また、特許文献6には、特定のオレフィン系不飽和カルボン酸又は無水物と特定の立体安定化剤とを含む共重合体が優れた水分散性を有すると記載されている。また、特許文献7には、特定のカルボキシル基含有重合体に加え、特定の多価アルコール脂肪酸エステルアルキレンオキサイド付加物と特定のポリオキシアルキレン変性物とを含む組成物が、水への溶解性及び増粘性に優れ、また水に溶解し、中和させた際に得られる組成物の透明性も高いと記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第2923692号明細書
【特許文献2】米国特許第2958679号明細書
【特許文献3】米国特許第3426004号明細書
【特許文献4】特開昭58-84819号公報
【特許文献5】特開2000-355614号公報
【特許文献6】米国特許第5468797号明細書
【特許文献7】国際公開第2016/056591号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、従来提案されている架橋型カルボキシル基含有重合体に比べ、水への溶解性が更に優れ、且つ、水に溶解し、中和させて得られる組成物の透明性も更に優れる、新規な架橋型カルボキシル基含有重合体を得るため、検討を行った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、α,β-不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物とを、乳化剤を含む不活性溶媒存在下で共重合させること、特に、当該乳化剤として脂肪酸アルキレンオキサイド付加物及びポリオキシアルキレン変性物を、それぞれ特定量用いること、により、水への溶解性が優れ、且つ、水に溶解し、中和させて得られる組成物の透明性も優れる、カルボキシル基含有重合体組成物を調製し得る可能性を見いだし、さらに改良を重ねた。
【0009】
本開示は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
α,β-不飽和カルボン酸(a1)とエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物(a2)とを共重合させてなるカルボキシル基含有重合体を製造する方法であって、
(a1)と(a2)とを、乳化剤を含む不活性溶媒存在下で共重合させることを備え、
前記乳化剤が脂肪酸アルキレンオキサイド付加物及びポリオキシアルキレン変性物を含み、
前記脂肪酸アルキレンオキサイド付加物量が、(a1)100質量部に対し3.5~4.5質量部であり、
前記ポリオキシアルキレン変性物量が、(a1)100質量部に対し1質量部以上である、
製造方法。
項2.
前記不活性溶媒が、炭素数2~8の脂肪族炭化水素及び酢酸アルキルエステルを含む、項1に記載の製造方法。
項3.
以下の(A)~(C):
(A)α,β-不飽和カルボン酸(a1)とエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物(a2)とを共重合させてなる重合体
(B)脂肪酸アルキレンオキサイド付加物
(C)ポリオキシアルキレン変性物
を含み、
以下の測定条件で測定した無攪拌膨潤時間が10分未満であり、且つ、以下の測定条件で測定した透過率が90%以上である、カルボキシル基含有重合体組成物。
[無攪拌膨潤時間測定条件]
25℃の水100gにカルボキシル基含有重合体組成物3gを加えて静置し、当該組成物が全て濡れきるのに要する時間を目視で測定する。
[透過性測定条件]
25℃の水495gにカルボキシル基含有重合体組成物5gを加えて分散させ、これに水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和して得た中和粘稠液ついて、分光光度計で測定波長425nmにおける透過率(イオン交換水の透過率を100%とした時の割合)を測定する。
項4.
(B)の含有量が、(a1)100質量部に対し3.5質量部~4.5質量部であり、
(C)の含有量が、(a1)100質量部に対し1質量部以上である、
項3に記載のカルボキシル基含有重合体組成物。
【発明の効果】
【0010】
従来提案されている架橋型カルボキシル基含有重合体に比べ、水への溶解性が更に優れ、且つ、水に溶解し、中和させて得られる組成物の透明性も更に優れる、新規な架橋型カルボキシル基含有重合体組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。本開示は、特定のカルボキシル基含有重合体及びその製造方法等を好ましく包含するが、これらに限定されるわけではなく、本開示は本明細書に開示され当業者が認識できる全てを包含する。
【0012】
本開示に包含されるカルボキシル基含有重合体の製造方法は、α,β-不飽和カルボン酸(a1)とエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物(a2)とを共重合させてなる(A)カルボキシル基含有重合体を製造する方法であって、(a1)と(a2)とを、乳化剤を含む不活性溶媒存在下で共重合させることを備える。当該乳化剤は(B)脂肪酸アルキレンオキサイド付加物及び(C)ポリオキシアルキレン変性物を含む。以下、本開示に包含される当該製造方法を「本開示の製造方法」ということがある。なお本開示の製造方法によれば、(A)カルボキシル基含有重合体はもちろんのこと、当該(A)カルボキシル基含有重合体に加え、(B)脂肪酸アルキレンオキサイド付加物及び(C)ポリオキシアルキレン変性物を含む、カルボキシル基含有重合体組成物を調製できる。
【0013】
本開示の製造方法においては、上記の通り、α,β-不飽和カルボン酸(a1)とエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物(a2)とを共重合させて(A)カルボキシル基含有重合体を製造する。
【0014】
α,β-不飽和カルボン酸(a1)としては、(A)カルボキシル基含有重合体を形成できるものであれば特に制限されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の炭素数3~5のオレフィン系不飽和カルボン酸等が挙げられる。これらのα,β-不飽和カルボン酸(a1)の中でも、安価で入手が容易であり、得られるカルボキシル基含有重合体組成物を用いた水溶液の透明性が高い観点から、アクリル酸、メタクリル酸が好適に用いられる。α,β-不飽和カルボン酸(a1)は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
分子内にエチレン性不飽和基を少なくとも2つ以上有する化合物(a2)は、α,β-不飽和カルボン酸(a1)と共重合して、(A)カルボキシル基含有重合体を形成する。本発明において、分子内にエチレン性不飽和基を少なくとも2つ以上有する化合物(a2)は、(A)カルボキシル基含有重合体の架橋剤として機能する。
【0016】
なお、本開示の製造方法について、上記の通り、(a1)と(a2)とを共重合させて(A)カルボキシル基含有重合体を製造すると説明しているところ、本明細書において、(A)カルボキシル基含有重合体は、(a1)と(a2)とが重合している化合物(言い換えれば、(a2)で架橋されている化合物)を包含する概念である。つまり、(A)カルボキシル基含有重合体は、(a1)重合体が(a2)で架橋されている化合物を包含する。
【0017】
分子内にエチレン性不飽和基を少なくとも2つ以上有する化合物(a2)としては、α,β-不飽和カルボン酸(a1)と共重合して(A)カルボキシル基含有重合体を形成できるものであれば特に制限されず、例えば、ポリオールの2置換以上のアクリル酸エステル類;ポリオールの2置換以上のメタクリル酸エステル類;ポリオールの2置換以上のアリルエーテル類;フタル酸ジアリル、リン酸トリアリル、メタクリル酸アリル、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌレート、アジピン酸ジビニル、クロトン酸ビニル、1,5-ヘキサジエン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。なお、前記ポリオールとは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、サッカロース、ソルビトール等が挙げられる。これらの中でも、得られるカルボキシル基含有重合体組成物を用いた中和粘稠液の粘度調整が容易である観点から、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスルトールジアリルエーテル、テトラアリルオキシエタン、リン酸トリアリル、ポリアリルサッカロースが好適に用いられる。分子内にエチレン性不飽和基を少なくとも2つ以上有する化合物(a2)は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
分子内にエチレン性不飽和基を少なくとも2つ以上有する化合物(a2)の使用量としては、α,β-不飽和カルボン酸(a1)100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部であり、より好ましくは0.05~10質量部であり、さらに好ましくは0.05~3質量部である。分子内にエチレン性不飽和基を少なくとも2つ以上有する化合物(a2)の使用量がこのような範囲にあることにより、得られるカルボキシル基含有重合体組成物を用いた中和粘稠液の粘度調整効果をより一層好適に発現させることができると共に、水に好適に溶解させることができる。
【0019】
(A)カルボキシル基含有重合体は、α,β-不飽和カルボン酸(a1)及び分子内にエチレン性不飽和基を少なくとも2つ以上有する化合物(a2)の他に、さらに他のモノマーを共重合させたものであってもよい。他のモノマーとしては、上記の(a1)または(a2)とは異なるα,β-不飽和化合物(α,β-不飽和結合を有する化合物)が挙げられる。
【0020】
α,β-不飽和化合物としては、上記の(a1)または(a2)とは異なるものであれば、特に限定されず、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、ラウロイルアクリレート、ステアリルアクリレ-ト、エイコサニルアクリレート、ベヘニルアクリレート、テトラコサニルアクリレート、グリシジルアクリレート、等のアクリル酸エステル類;前記アクリル酸エステル類に相当するメタクリル酸エステル類;ビニルグリシジルエーテル、イソプロペニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブテニルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類;アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド等のアクリルアミド類;前記アクリルアミド類に相当するメタクリルアミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類等が挙げられる。これらのα,β-不飽和化合物の中でも、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類が好適に用いられ、とりわけ、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸エイコサニル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸テトラコサニルが好適に用いられる。なお、α,β-不飽和化合物は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類としては、例えば、日油株式会社製の商品名ブレンマーVMA70等の市販品を用いることができる。
【0021】
α,β-不飽和化合物の使用量としては、α,β-不飽和カルボン酸(a1)100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部であり、より好ましくは1~10質量部である。α,β-不飽和化合物の使用量がこのような範囲にあることにより、得られるカルボキシル基含有重合体組成物を用いた中和粘稠液の粘度調整効果をより一層好適に発現させることができる。
【0022】
(B)脂肪酸アルキレンオキサイド付加物
脂肪酸アルキレンオキサイド付加物は、脂肪酸とアルキレンオキサイドとの共重合体が好ましい。当該共重合体は、ランダム共重合体又はブロック共重合体が好ましく、ブロック共重合体が特に好ましい。
【0023】
当該共重合体中、脂肪酸ユニット数は2以上であり、2~30程度が好ましい。当該範囲の上限又は下限は例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、又は29であってもよい。例えば当該範囲は1~25又は2~25であってもよい。
【0024】
当該脂肪酸としては、ヒドロキシ基で置換されていてもよい、炭素数8~20の直鎖若しくは分岐鎖脂肪酸が好ましい。当該炭素数の上限又は下限は9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、又は19であってもよく、例えば担当数は10~18であってもよい。また、直鎖脂肪酸がより好ましい。また、上記の通り、当該脂肪酸はヒドロキシ基で置換されていてもよく、置換されている場合は、1、2、又は3個のヒドロキシ基で置換されていることが好ましく、1個のヒドロキシ基で置換されていることがより好ましい。
【0025】
また、当該共重合体中、アルキレンオキサイドユニット数は1~100程度が好ましい。当該範囲の上限又は下限は例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99であってもよい。例えば当該範囲は2~80又は2~40であってもよい。
【0026】
また、当該共重合体中のアルキレンオキサイドユニットとしては、式:
-(CH2-CHR1-O)-
(式中、R1は、水素原子、メチル基、又はエチル基を示す。)で表わされるユニットが好ましく挙げられる。なお、上記の通り、当該ユニットは共重合体中に好ましくは1~100程度存在するところ、当該ユニットが複数存在する場合、各ユニットにおける上記式のR1は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、中でも好ましくは、各ユニットにおける上記式のR1が全て同一であって水素原子、メチル基、又はエチル基を示し、特に好ましくは、各ユニットにおける上記式のR1が全て同一であって水素原子を示す。
【0027】
脂肪酸アルキレンオキサイド付加物としては、ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数8~20の直鎖若しくは分岐鎖脂肪酸のエチレンオキサイド付加物が中でも好ましく、ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数10~18の直鎖脂肪酸のエチレンオキサイド付加物がより好ましい。より具体的には例えば、12-ヒドロキシステアリン酸/PEG(12-ヒドロキシステアリン酸/エチレングリコール ブロック共重合体)、ジステアリン酸/PEG、ジラウリン酸/PEG等が挙げられ、さらに具体的には例えば、ジステアリン酸/PEG-12、ジラウリン酸/PEG-8等や、12-ヒドロキシステアリン酸ユニット数が8~10、エチレンオキサイドユニット数が27~33の12-ヒドロキシステアリン酸/PEG ブロック共重合体等が挙げられる。このような脂肪酸とアルキレンオキサイドとの共重合体は、市販品を購入して用いることもできる。
【0028】
脂肪酸アルキレンオキサイド付加物は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
(B)脂肪酸アルキレンオキサイド付加物は、HLB値が9未満の範囲にある脂肪酸アルキレンオキサイド付加物を含むことが好ましく、HLB値が3~8、3~7、又は3~6の範囲にある脂肪酸アルキレンオキサイド付加物を含むことがより好ましい。なお、(B)脂肪酸アルキレンオキサイド付加物は、効果を損なわない範囲においては、これらのHLB値を有する脂肪酸アルキレンオキサイド付加物を含む場合にも、これらのHLB値を有しない脂肪酸アルキレンオキサイド付加物を含んでいてもよい。(B)脂肪酸アルキレンオキサイド付加物としてのHLB値(複数種類の脂肪酸アルキレンオキサイド付加物が含まれる場合には、(B)脂肪酸アルキレンオキサイド付加物全体としてのHLB値)が、前述のHLB値となることが特に好ましい。
【0030】
(C)ポリオキシアルキレン変性物
ポリオキシアルキレン変性物は、ポリオキシアルキレンの変性物であり、脂肪族アルコールとポリオキシアルキレンからなるエーテル(c1)及びポリオキシアルキレン脂肪酸エステル(c2)の少なくとも一方であり、(c1)は用いられることが好ましい。
【0031】
(c1)及び(c2)において、脂肪族アルコールの脂肪族基及び脂肪酸エステルの脂肪族基の好的な例としては、それぞれ、炭素数8~20の直鎖状または分岐状のアルキル基またはアルケニル基が挙げられる。脂肪族基は、それぞれ、1種類単独であってもよいし、2種類以上の組み合わせであってもよい。
【0032】
脂肪族アルコールとポリオキシアルキレンからなるエーテル(c1)の脂肪族アルコールの好ましい具体例としては、炭素数8以上の1価の高級アルコールであり、とりわけラウリルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコールが特に好ましい具体例として挙げられる。
【0033】
ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル(c2)の脂肪酸の好ましい具体例としては、炭素数8以上のモノカルボン酸であり、とりわけラウリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸が特に好ましい具体例として挙げられる。
【0034】
脂肪族アルコールとポリオキシアルキレンからなるエーテル(c1)及びポリオキシアルキレン脂肪酸エステル(c2)のポリオキシアルキレン鎖の好適な例としては、下記式:
-(CH2-CHRc2-O)n-
(式中、n個のRc2は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、またはエチル基を示し、nは、1~100の整数を示す。)で表わされるオキシアルキレン鎖が挙げられる。Rc2は、全て同一であることがより好ましい。
【0035】
脂肪族アルコールとポリオキシアルキレンからなるエーテル(c1)の具体例としては、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(6)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(5)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(5)イソステアリルエーテルなどが挙げられる。
【0036】
ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル(c2)の具体例としては、ラウリン酸ポリエチレングリコール4付加物、ラウリン酸ポリエチレングリコール8付加物、オレイン酸ポリエチレングリコール8付加物、イソステアリン酸ポリエチレングリコール6付加物などが挙げられる。
【0037】
(C)ポリオキシアルキレン変性物は、HLB値が9~15の範囲にあるポリオキシアルキレン変性物を含むことが好ましい。なお、(C)ポリオキシアルキレン変性物は、効果を損なわない範囲においては、これらのHLB値を有するポリオキシアルキレン変性物を含む場合にも、これらのHLB値を有しないポリオキシアルキレン変性物を含んでいてもよい。(C)ポリオキシアルキレン変性物としてのHLB値(複数種類のポリオキシアルキレン変性物が含まれる場合には、(C)ポリオキシアルキレン変性物全体としてのHLB値)が、前述のHLB値となることが特に好ましい。
【0038】
(C)ポリオキシアルキレン変性物は、大気圧下、25℃で液体であるポリオキシアルキレン変性物を含むことが好ましい。なお、(C)ポリオキシアルキレン変性物は、大気圧下、25℃で液体であるポリオキシアルキレン変性物を含む場合にも、大気圧下、25℃で液体でないポリオキシアルキレン変性物を含んでいてもよい。本発明のカルボキシル基含有重合体組成物に含まれる(C)ポリオキシアルキレン変性物(複数種類のポリオキシアルキレン変性物が含まれる場合には、(C)ポリオキシアルキレン変性物全体)として、大気圧下、25℃で液体であることが特に好ましい。
【0039】
本開示の製造方法においては、(B)脂肪酸アルキレンオキサイド付加物は、α,β-不飽和カルボン酸(a1)100質量部に対して3.5~4.5質量部用いられる。当該範囲の上限又は下限は例えば3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、又は4.4質量部であってもよい。
【0040】
また、本開示の製造方法においては、(C)ポリオキシアルキレン変性物は、α,β-不飽和カルボン酸(a1)100質量部に対して1質量部以上用いられ、1~10質量部用いられることが好ましく、1~8、1~6、又は1~5質量部用いられることがより好ましい。
【0041】
また、本開示の製造方法においては、上記(B)又は(C)単独での使用量の範囲は守られつつ、(B)及び(C)の合計使用量が、α,β-不飽和カルボン酸(a1)100質量部に対して4.5~10質量部であることがより好ましい。
【0042】
反応溶媒
本開示の製造方法において用いる反応溶媒としては、上記の重合反応に対して不活性な溶媒(不活性溶媒)であれば、特に限定されないが、α,β-不飽和カルボン酸(a1)を主成分とするモノマーを溶解するが、得られるカルボキシル基含有重合体組成物を溶解しにくい溶媒であることが好ましく、例えば、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、イソオクタン等の炭素数2~8の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン、エチレンジクロライド等のハロゲン化合物;酢酸エチル、酢酸イソプロピル等の酢酸アルキルエステル;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン化合物等が挙げられる。これらの反応溶媒の中でも、品質が安定しており、入手が容易である観点から、炭素数2~8の脂肪族炭化水素及び酢酸C1~4アルキルエステルが好ましく、より具体的には、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルヘプタン、エチレンジクロライド、酢酸エチルが好適に用いられる。反応溶媒は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
反応溶媒の使用量としては、α,β-不飽和カルボン酸(a1)100質量部に対して、好ましくは200~10000質量部であり、より好ましくは300~2000質量部である。反応溶媒の使用量がこのような範囲にあることにより、反応系の均一な攪拌を好適に行うことができ、反応の制御が容易になる。また、重合1バッチあたりのカルボキシル基含有重合体組成物の製造量が少なくなることを抑制し、経済性を向上させることができる。
【0044】
本開示の製造方法としては、α,β-不飽和カルボン酸(a1)及び分子内にエチレン性不飽和基を少なくとも2つ以上有する化合物(a2)の共重合体である(A)カルボキシル基含有重合体と、(B)脂肪酸アルキレンオキサイド付加物と、(C)ポリオキシアルキレン変性物とを含む組成物が得られれば、特に制限されない。例えば、本開示の製造方法は、例えば以下の方法(1)~方法(4)を包含しており、これらの方法により好適に実施することができる。
【0045】
方法(1)
α,β-不飽和カルボン酸(a1)及び分子内にエチレン性不飽和基を少なくとも2つ以上有する化合物(a2)を重合させる際に、所定量の(B)脂肪酸アルキレンオキサイド付加物、及び(C)ポリオキシアルキレン変性物を重合初期から共存させる方法
【0046】
方法(2)
α,β-不飽和カルボン酸(a1)及び分子内にエチレン性不飽和基を少なくとも2つ以上有する化合物(a2)を混合した後、所定量の(B)脂肪酸アルキレンオキサイド付加物、及び(C)ポリオキシアルキレン変性物を添加しながら、α,β-不飽和カルボン酸(a1)と分子内にエチレン性不飽和基を少なくとも2つ有する化合物(a2)とを重合させる方法
【0047】
方法(3)
α,β-不飽和カルボン酸(a1)及び分子内にエチレン性不飽和基を少なくとも2つ以上有する化合物(a2)を先に重合させ、その重合が終了した後、得られたスラリーに(B)脂肪酸アルキレンオキサイド付加物、及び(C)ポリオキシアルキレン変性物を添加する方法
【0048】
方法(4)
α,β-不飽和カルボン酸(a1)、(B)脂肪酸アルキレンオキサイド付加物、及び(C)ポリオキシアルキレン変性物を混合した後、得られた混合物に、分子内にエチレン性不飽和基を少なくとも2つ以上有する化合物(a2)を添加しながら重合させる方法
【0049】
本開示の製造方法について、上記の方法(1)を例に、より詳細に次に説明する。なお、上記(2)~(4)の方法及びその他の方法についても、当該方法(1)の詳細を参考に実施することができる。まず、攪拌機、温度計、窒素ガス吹込管及び冷却管を備えた反応容器に、それぞれ予め所望量で秤量された、α,β-不飽和カルボン酸(a1)、分子内にエチレン性不飽和基を少なくとも2つ以上有する化合物(a2)、(B)脂肪酸アルキレンオキサイド付加物、(C)ポリオキシアルキレン変性物、及び反応溶媒(不活性溶媒)、並びに必要に応じてラジカル重合開始剤、を仕込む。次に、反応容器内の内容物を攪拌し、均一な組成となるように混合した後、反応容器の上部空間に含まれている酸素ガス及び内容物中に溶解している溶存酸素を除去するために、内容物中に窒素ガスを吹き込む。重合反応は、温浴などで20~120℃、好ましくは30~90℃に加熱することによって行なうことができる。重合反応は、通常2~10時間で終了する。重合反応終了後、減圧または常圧下、加熱することにより、反応溶液から反応溶媒(不活性溶媒)を留去することにより、カルボキシル基含有重合体組成物を白色微粉末として得ることができる。
【0050】
ラジカル重合開始剤
本開示の製造方法においてラジカル重合開始剤を用いる場合、ラジカル重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、α,α’-アゾビスイソブチロニトニル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビスメチルイソブチレート、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、第3級ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
ラジカル重合開始剤の使用量としては、α,β-不飽和カルボン酸(a1)100質量部に対して、好ましくは0.01~0.45質量部であり、より好ましくは0.01~0.35質量部である。ラジカル重合開始剤の使用量がこのような範囲にあることにより、重合反応速度の低下を抑制し、目的のカルボキシル基含有重合体組成物を経済的に製造することが可能となる。また、重合反応速度が速くなり過ぎることを抑制し、反応の制御を好適に行うことができる。
【0052】
不活性ガス
本開示の製造方法において、重合反応系の雰囲気は、通常、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。また、重合時の反応温度は、反応溶液の粘度上昇を抑制することで反応制御を容易にする観点、及び得られるカルボキシル基含有重合体組成物の嵩密度を制御する観点から、50~90℃に設定するのが好ましく、55~80℃に設定するのがより好ましい。重合のための反応時間は、反応温度によって異なるので一概に決定することができないが、通常、0.5~10時間である。目的のカルボキシル基含有重合体組成物は、反応終了後に溶媒を乾燥させる乾燥工程を行い、反応溶液を80~120℃に加熱して溶媒を除去することにより、白色の微粉末として単離することができる。
【0053】
本開示の製造方法により得られるカルボキシル基含有重合体組成物は、高濃度で水に溶解させる際にも、水への溶解性に優れ、さらに、水と混合して得られる中和粘稠液の透明性が高い、という特徴を有する。本開示の製造方法により得られる当該カルボキシル基含有重合体組成物を本開示の重合体組成物ということがある。
【0054】
本開示の重合体組成物は、(A)α,β-不飽和カルボン酸(a1)とエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物(a2)とを共重合させてなる重合体、(B)脂肪酸アルキレンオキサイド付加物、及び(C)ポリオキシアルキレン変性物を含む。これら(A)~(C)については、上述した内容がそのまま当てはまる。
【0055】
また、本開示の重合体組成物においては、(B)の含有量が、(A)を構成するα,β-不飽和カルボン酸(a1)100質量部に対し3.5質量部~4.5質量部であることが好ましい。当該範囲の上限又は下限は例えば3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、又は4.4質量部であってもよい。
【0056】
また、本開示の重合体組成物においては、(C)の含有量が、(A)を構成するα,β-不飽和カルボン酸(a1)100質量部に対し1質量部以上であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましく、1~8、1~6、又は1~5質量部であることがさらに好ましい。
【0057】
また、上記(B)又は(C)の含有量範囲は守られつつ、(B)及び(C)の合計含有量が、α,β-不飽和カルボン酸(a1)100質量部に対して4.5~10質量部であることがより好ましい。
【0058】
なお、(A)は(a1)と(a2)とを共重合させてなる重合体であるから、(A)を構成する(a1)とは、より正確にいえば、(A)を構成する(a1)由来部分(α,β-不飽和カルボン酸ユニット)ということになるが、本明細書では、本開示の重合体組成物の説明においては、α,β-不飽和カルボン酸ユニットをα,β-不飽和カルボン酸(a1)とも表記する。
【0059】
本開示の重合体組成物は、以下の測定条件で測定した無攪拌膨潤時間が10分未満であり、且つ、以下の測定条件で測定した透過率が90%以上である。
[無攪拌膨潤時間測定条件]
25℃の水100gにカルボキシル基含有重合体組成物3gを加えて静置し、当該組成物が全て濡れきるのに要する時間を目視で測定する。
[透過性測定条件]
25℃の水495gにカルボキシル基含有重合体組成物5gを加えて分散させ、これに水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和して得た中和粘稠液ついて、分光光度計で測定波長425nmにおける透過率(イオン交換水の透過率を100%とした時の割合)を測定する。
【0060】
上記無攪拌膨潤時間は、9.5分以下であることが好ましく、9分以下であることがより好ましい。また、上記透過率は、91%以上又は92%以上であることがより好ましい。
【0061】
本開示の重合体組成物は、特に限定はされないが、上記の本開示の製造方法で調整されることにより、(A)の粒子の表面に(B)及び(C)が付着している(もっといえば、(A)の粒子の表面を(B)及び(C)がコーティングしている)形態であることが好ましい。この場合において、(B)及び(C)以外の成分が(A)の粒子の表面に付着(コーティング)していてもよい。
【0062】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件の任意の組み合わせを全て包含する。
【0063】
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例0064】
以下、例を示して本開示の実施形態をより具体的に説明するが、本開示の実施形態は下記の例に限定されるものではない。
【0065】
実施例1
攪拌機、温度計、窒素吹き込み管及び冷却管を備えた500mL(ミリリットル)容の四つ口フラスコに、α,β―不飽和カルボン酸(a1)としてアクリル酸40g、α,β―不飽和カルボン酸(a1)としてメタクリル酸ステアリル(日油株式会社製、ブレンマーSMA)0.4g、分子内にエチレン性不飽和基を少なくとも2個有する化合物(a2)としてペンタエリスリトールアリルエーテル0.27 g、ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)0.096g、及び反応溶媒としてノルマルヘプタン 198.6gと酢酸エチル 49.6gを仕込んだ。引き続き、溶液を均一に攪拌、混合した後、反応容器(四つ口フラスコ)の上部空間、原料及び反応溶媒中に存在している酸素を除去するために、溶液中に窒素ガスを吹き込んだ。次いで、窒素雰囲気下、70 ℃まで加熱したところで、ノルマルヘプタン1.3gと酢酸エチル0.3gに脂肪酸アルキレンオキサイド付加物(B)として 12-ヒドロキシステアリン酸とポリオキシエチレンのブロック共重合体(クローダ製、Cithrol DPHS)1.6g、ポリオキシアルキレン変性物(C)としてポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(花王製、エマルゲン104P) 0.4gを溶解させたものを、反応容器に投入し、70℃で3時間保持した。その後、生成したスラリーを 105℃ に加熱して、ノルマルヘプタンと酢酸エチルを留去し、さらに117 ℃、20mmHgの条件で、9時間減圧乾燥することにより、白色微粉末のカルボキシル基含有重合体組成物38gを得た。
【0066】
実施例2
実施例1において、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテルの添加量を0.8gに変更した以外は、実施例1と同様にして、白色微粉末のカルボキシル基含有重合体組成物38gを得た。
【0067】
実施例3
実施例1において、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテルの添加量を1.2gに変更した以外は、実施例1と同様にして、白色微粉末のカルボキシル基含有重合体組成物39gを得た。
【0068】
実施例4
実施例1において、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテルをポリオキシエチレン(6)ラウリルエーテル(花王製、エマルゲン108)に変え、これの添加量を1.6gに変更した以外は、実施例1と同様にして、白色微粉末のカルボキシル基含有重合体組成物39gを得た。
【0069】
比較例1
実施例1において、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテルを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、白色微粉末のカルボキシル基含有重合体組成物 37gを得た。比較例1は(C)ポリオキシアルキレン変性物を含まないカルボキシル基含有重合体組成物である。
【0070】
比較例2
実施例4において、12-ヒドロキシステアリン酸とポリオキシエチレンのブロック共重合体(クローダ製、Cithrol DPHS)を添加せず、ポリオキシエチレン(6)ラウリルエーテル(花王製、エマルゲン108)をポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(花王製、エマルゲン104P)に変えた以外は、実施例4と同様にして、白色微粉末のカルボキシル基含有重合体組成物 37gを得た。比較例2は(B)脂肪酸アルキレンオキサイド付加物を含まないカルボキシル基含有重合体組成物である。
【0071】
比較例3
実施例4において、12-ヒドロキシステアリン酸とポリオキシエチレンのブロック共重合体(クローダ製、Cithrol DPHS)を添加しなかった以外は、実施例4と同様にして、白色微粉末のカルボキシル基含有重合体組成物38gを得た。
【0072】
比較例4
実施例2において、12-ヒドロキシステアリン酸とポリオキシエチレンのブロック共重合体(クローダ製、Cithrol DPHS)をトリイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(日本エマルジョン製、エマレックスRWIS-350)に変更した以外は、実施例2と同様にして、白色微粉末のカルボキシル基含有重合体組成物38gを得た。
【0073】
比較例5
比較例4において、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテルをポリオキシエチレン(6)ラウリルエーテル(花王製、エマルゲン108)に変えた以外は、比較例4と同様にして白色微粉末のカルボキシル基含有重合体組成物38gを得た。
【0074】
比較例6
実施例1において、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテルの添加量を0.2gに変更した以外は、実施例1と同様にして、白色微粉末のカルボキシル基含有重合体組成物38gを得た。
【0075】
比較例7
実施例1において、12-ヒドロキシステアリン酸とポリオキシエチレンのブロック共重合体の添加量を1.2gに変更した以外は、実施例1と同様にして、白色微粉末のカルボキシル基含有重合体組成物37gを得た。
【0076】
比較例8
実施例1において、12-ヒドロキシステアリン酸とポリオキシエチレンのブロック共重合体の添加量を2.0gに、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテルの添加量を0.8に変更した以外は、実施例1と同様にして、白色微粉末のカルボキシル基含有重合体組成物39gを得た。
【0077】
<評価方法>
(1)水への溶解性評価(無攪拌膨潤時間)
200mL容のビーカーにイオン交換水100gを入れ、イオン交換水の温度を25℃に調整した。このビーカーに、カルボキシル基含有重合体組成物3.0gを無攪拌条件下で一気に投入し、該カルボキシル基含有重合体組成物の膨潤状態を目視で観察して、該カルボキシル基含有重合体組成物が乾いた部分無く、すべて濡れきるのに要する時間(分)を測定した。膨潤するのに要する時間が 10分未満であれば膨潤性に優れ、ママコを作りにくく、高濃度での水分散性に優れていると判断した。なお、60分を超えても膨潤しきれずに、乾いた部分が残っていた場合は、膨潤時間を「60<」と評価した。
【0078】
(2)中和粘稠液の透明性評価
(2-1)中和粘稠液の作製
500mL容のビーカーに、イオン交換水495gを入れ、イオン交換水の温度を25℃に調整した。このビーカーを、四枚羽根パドル(翼径:50mm)を備えた攪拌機を用いて、回転速度200r/minで攪拌しながら、カルボキシル基含有重合体組成物5gを投入し、分散させた。得られた水分散液を、18質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和(つまり、pH=7に調整)し、評価用中和粘稠液とした。
【0079】
(2-2)光透過率の測定
島津製作所社製の分光光度計(型番:UV-1850)を用い、評価用中和粘稠液の透過率を測定した。具体的には、評価用中和粘稠液をUV測定用のセル(光路1cm)に入れ、遠心分離器にて毎分 2000回転で5分間の操作により脱泡し(脱泡が完了していない場合は遠心分離機にて同様の操作を行い、泡が完全に試料上部から抜けることを確認する)、その後、当該中和粘稠液を分光光度計にセットし、測定波長を425nmとして透過率を測定した。イオン交換水の光透過率を100%としたときの、当該中和粘稠液の光透過率が90%以上であれば透明性が高いと評価した。
【0080】
測定結果を以下の表1に示す。
【0081】
【0082】
実施例に記載した方法で得られたカルボキシル基含有重合体組成物は、(1)の無攪拌膨潤時間が10分未満、且つ(2)の中和粘稠液の透明性が90%以上を満たし、よって優れた特性を持つポリマーであった。