(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162026
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 77/42 20060101AFI20241114BHJP
C08G 77/388 20060101ALI20241114BHJP
C08G 77/06 20060101ALI20241114BHJP
C08G 77/34 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C08G77/42
C08G77/388
C08G77/06
C08G77/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077172
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】秦 龍ノ介
(72)【発明者】
【氏名】橋本 龍太
(72)【発明者】
【氏名】森谷 浩幸
【テーマコード(参考)】
4J246
【Fターム(参考)】
4J246AA11
4J246AA15
4J246AB12
4J246BA020
4J246BA02X
4J246BB020
4J246BB021
4J246BB02X
4J246BB140
4J246BB143
4J246BB14X
4J246CA010
4J246CA01U
4J246CA01X
4J246CA240
4J246CA24X
4J246CA260
4J246CA26M
4J246CA26X
4J246CA720
4J246CA72M
4J246CA72X
4J246EA28
4J246FA222
4J246FA322
4J246FA452
4J246FC162
4J246FC232
4J246FE04
4J246FE26
4J246GB11
4J246GC23
4J246GC45
4J246GD08
(57)【要約】
【課題】高分子量でありながらも溶剤に可溶である非架橋の環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを製造するに当たり、未反応の環状オリゴ糖を除く効率的な方法を提供する。
【解決手段】 [工程1]下記(A)~(D)を含む組成物のヒドロシリル化によりオリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを得る工程
(A)25℃の動粘度が50mm2/s以上でかつ数平均分子量が8,000以上である、1分子中に1個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B)下記一般式(1)で表される不飽和基を有する環状オリゴ糖誘導体
(C)ヒドロシリル化触媒
(D)有機溶媒
[工程2]工程1で得られた環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを、25℃での比誘電率が23以上の洗浄用有機溶媒、又はこれらの混合物で洗浄、ろ過する工程
[工程3]前記工程1及び工程2で用いた有機溶媒を除去する工程
を含むことを特徴とする環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを製造する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
[工程1]下記(A)~(D)を含む組成物のヒドロシリル化によりオリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを得る工程
(A)25℃の動粘度が50mm
2/s以上でかつ数平均分子量が8,000以上である、1分子中に1個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B)下記一般式(1)で表される不飽和基を有する環状オリゴ糖誘導体
(C)ヒドロシリル化触媒
(D)有機溶媒
[工程2]工程1で得られた環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを、25℃での比誘電率が23以上の洗浄用有機溶媒、又はこれらの混合物で洗浄、ろ過する工程
[工程3]前記工程1及び工程2で用いた有機溶媒を除去する工程
を含むことを特徴とする環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを製造する方法。
【化1】
(式中、Aは炭素数2~12のアルケニル基、R
1は独立して、炭素数1~4のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、及び炭素数7~10のアラルキル基から選ばれる基であり、R
2は炭素数1~4のアルキレン基、R
3は独立して、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアシル基から選ばれる基であり、aは0~8の整数,bは5~7の整数、xは0または1である。)
【請求項2】
前記工程1において、前記(A)(B)のヒドロシリル化反応の後に、更に炭素数2~16のα-オレフィンをヒドロシリル化により付加することを特徴とする請求項1に記載の環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを製造する方法。
【請求項3】
前記一般式(1)において、R1がメチル基、R3がアセチル基である、請求項1に記載の環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを製造する方法。
【請求項4】
前記一般式(1)において、xが1である、請求項1に記載の環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを製造する方法。
【請求項5】
前記環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンの動的粘弾性測定によって測定されるガラス転移温度が50~100℃である、請求項1に記載の環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを製造する方法。
【請求項6】
前記工程2で用いる洗浄用有機溶媒を、メタノール、エタノール、及びアセトニトリルから選ばれる1種以上とする請求項1に記載の環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オルガノポリシロキサンは、末端又は側鎖に様々な化学構造を変性することで、多様な機能を持つことができる。一方、環状オリゴ糖は、その分子構造が有する空孔が、様々な化合物と相互作用することが知られている。その特徴を利用して、食品や化粧品といった工業分野で使用されており、機能性材料を開発するために様々な高分子材料への導入が検討されている。実際に、オルガノポリシロキサンへの環状オリゴ糖の導入は検討されており、環状オリゴ糖誘導体で架橋したゲル材料が開示されている(特許文献1)。
【0003】
しかし、上記環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンは架橋物であるため、溶剤で膨潤はするが難溶性であり、皮膜形成剤やコーティング材料への適用には限りがあった。
【0004】
特許文献2、及び非特許文献1には、環状オリゴ糖の一つの水酸基だけを、反応性の官能基で変性した誘導体を用いた、架橋物ではない環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンの製造方法が開示されている。
【0005】
しかし、一般的に環状オリゴ糖とオルガノポリシロキサンの相溶性は良くないので、高分子量のオルガノポリシロキサンへの付加は十分に検討されていなかった。実際、特許文献2,非特許文献1で用いられているオルガノポリシロキサンの数平均分子量は1,000~7,500程度と、比較的低分子量のものである。
【0006】
また、皮膜形成剤やコーティング材料への展開を考えると、未反応の環状オリゴ糖誘導体が残存していると皮膜表面のべたつき等が問題となる。未反応の環状オリゴ糖誘導体としては、原料に含まれる反応性官能基を有さない環状オリゴ糖誘導体や、未反応の反応性官能基を有する環状オリゴ糖誘導体が挙げられる。
【0007】
特許文献2の製造例には、環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンをイソドデカンに溶解し、難溶性の未反応の環状オリゴ糖誘導体を酢酸エチル抽出で除く精製方法が開示されている。しかしながら、オルガノポリシロキサンの数平均分子量が8,000以上である場合、この方法では環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンの純度を高めることが困難であった。
【0008】
非特許文献1には、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで未反応の環状オリゴ糖誘導体を除く精製方法が開示されている。しかし、工業スケールへの展開を考えると効率の良い方法とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2022-503533号公報
【特許文献2】国際公開第2021/172468号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Ahlem Noomen et al., Emulsions of β-cyclodextrins grafted to silicone for the transport of antifungal drugs,Materials Science and Engineering C,2008,28,p.705-715
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情を鑑みなされたもので、高分子量でありながらも溶剤に可溶である非架橋の環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを製造するに当たり、未反応の環状オリゴ糖を除く効率的な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するために、下記環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを製造する方法を提供する。
【0013】
即ち、本発明は、[工程1]下記(A)~(D)を含む組成物のヒドロシリル化によりオリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを得る工程
(A)25℃の動粘度が50mm
2/s以上でかつ数平均分子量が8,000以上である、1分子中に1個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B)下記一般式(1)で表される不飽和基を有する環状オリゴ糖誘導体
(C)ヒドロシリル化触媒
(D)有機溶媒
[工程2]工程1で得られた環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを、25℃での比誘電率が23以上の洗浄用有機溶媒、又はこれらの混合物で洗浄、ろ過する工程
[工程3]前記工程1及び工程2で用いた有機溶媒を除去する工程
を含むことを特徴とする環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを製造する方法を提供する。
【化1】
(式中、Aは炭素数2~12のアルケニル基、R
1は独立して、炭素数1~4のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、及び炭素数7~10のアラルキル基から選ばれる基であり、R
2は炭素数1~4のアルキレン基、R
3は独立して、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアシル基から選ばれる基であり、aは0~8の整数,bは5~7の整数、xは0または1である。)
【0014】
本発明の製造方法により、ヒドロシリル化反応によって高分子量のオルガノポリシロキサンと環状オリゴ糖を付加させた後に、25℃での比誘電率が23以上の洗浄用有機溶媒で洗浄することで、効率的に未反応の環状オリゴ糖を除くことができる。未反応の環状オリゴ糖を除くことで、透明でべたつきがなく、柔軟かつ強靭な皮膜が得られ、皮膜形成剤やコーティング材料として有用なものとなる。
【0015】
この場合、前記工程1において、前記(A)(B)のヒドロシリル化反応の後に、更に炭素数2~16のα-オレフィンをヒドロシリル化により付加反応を追加することが好ましい。
このような環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンでは環状オリゴ糖との相溶性が増している。
【0016】
また、前記一般式(1)において、R1がメチル基、R3がアセチル基である環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを製造する方法であることが好ましい。
【0017】
前記一般式(1)において、xが1である環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを製造する方法であることがさらに好ましい。
このようなものであれば、より確実に本発明の効果を奏する。
【0018】
動的粘弾性測定によって測定されるガラス転移温度が50~100℃である前記環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを製造する方法であることが好ましい。
【0019】
このような方法であれば、室温において十分な機械的特性および柔軟な皮膜形成能を有する環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを得ることができる。
【0020】
前記工程2における洗浄用有機溶媒を、メタノール、エタノール、及びアセトニトリルから選ばれる1種以上とする前記環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを製造する方法であることがさらに好ましい。
このような溶媒で洗浄すれば、より確実に未反応の環状オリゴ糖を効率的に除去することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の製造方法によれば、ヒドロシリル化反応によって高分子量のオルガノポリシロキサンと環状オリゴ糖を付加させた後に、25℃での比誘電率が23以上の洗浄用有機溶媒で洗浄することで、効率的に未反応の環状オリゴ糖を除くことができる。未反応の環状オリゴ糖を除くことで、高分子量でありながら、透明でべたつきがなく、柔軟かつ強靭な皮膜が得られ、皮膜形成剤やコーティング材料として有用なものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、ヒドロシリル化反応によって高分子量のオルガノポリシロキサンと環状オリゴ糖を付加させた後に、メタノール、エタノール、アセトニトリル、又はこれらの混合物で洗浄することで、効率的に未反応の環状オリゴ糖を除けることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0024】
即ち、本発明は、[工程1]下記(A)~(D)を含む組成物のヒドロシリル化によりオリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを25℃の動粘度が50mm
2/s以上でかつ数平均分子量が8,000以上である、1分子中に1個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B)下記一般式(1)で表される不飽和基を有する環状オリゴ糖誘導体
(C)ヒドロシリル化触媒
(D)有機溶媒
[工程2]工程1で得られた環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを、25℃での比誘電率が23以上の洗浄用有機溶媒、又はこれらの混合物で洗浄、ろ過する工程
[工程3]前記工程1及び工程2で用いた有機溶媒を除去する工程
を含むことを特徴とする環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを製造する方法である。
【化2】
(式中、Aは炭素数2~12のアルケニル基、R
1は独立して、炭素数1~4のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、及び炭素数7~10のアラルキル基から選ばれる基であり、R
2は炭素数1~4のアルキレン基、R
3は独立して、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアシル基から選ばれる基であり、aは0~8の整数,bは5~7の整数、xは0または1である。)
【0025】
[工程1]
本発明の製造方法における工程1は、下記(A)~(D)を含む組成物のヒドロシリル化によりオリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを得る工程である。
(A)25℃の動粘度が50mm2/s以上でかつ数平均分子量が8,000以上である、1分子中に1個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B)上記一般式(1)で表される不飽和基を有する環状オリゴ糖誘導体
(C)ヒドロシリル化触媒
(D)有機溶媒
以下、前記組成物の各成分について詳述する。
【0026】
[(A)オルガノハイドロジェンポリシロキサン]
前記(A)において、25℃の動粘度は50mm2/s以上であり、取り扱いやすさの観点から50~25,000mm2/sであることが好ましく、50~10,000mm2/sであることがより好ましい。なお、本発明において動粘度は、JIS Z8803:2011記載のキャノン-フェンスケ粘度計により測定した25℃における値である。
【0027】
また、オルガノハイドロジェンポリシロキサン1分子中に含まれるヒドロシリル基数は1個以上であり、得られる皮膜物性の観点から1~40個であることが好ましく、1~20個であることがより好ましい。さらに、数平均分子量は8,000以上であり、取り扱いやすさの観点から8,000~50,000であることが好ましく、8,000~35,000であることがより好ましい。なお、本発明において、数平均分子量は、下記条件によるポリスチレンを標準物質としたGPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)分析による値である。
【0028】
[測定条件]
展開溶媒:トルエン
流量:0.6mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcolumn SuperH-H
TSKgel SuperH5000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH4000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH3000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH2000(6.0mmI.D.×15cm×1)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:50μL(濃度0.3質量%のトルエン溶液)
【0029】
[(B)環状オリゴ糖誘導体]
本発明で用いる(B)環状オリゴ糖誘導体は、前記一般式(1)で示されるものである。上記(B)の式(1)において、Aは炭素数2~12のアルケニル基であり、合成原料の調達の観点から炭素数2~4のアルケニル基が好ましく、ビニル基がより好ましい。R1は独立して、炭素数1~4のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、及び炭素数7~10のアラルキル基から選ばれる基であり、合成原料の調達の観点からメチル基またはエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。R2は炭素数1~4のアルキレン基であり、合成原料の調達の観点から炭素数2~3のアルキレン基が好ましく、プロピレン基がより好ましい。R3は独立して、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数の1~4のアシル基から選ばれる基であり、反応条件の観点から炭素数の1~4のアシル基が好ましく、アセチル基がより好ましい。aは0~8の整数であり、合成原料の調達の観点から0~2が好ましく、0がより好ましい。bは5~7の整数である。xは0または1であり、前記(A)成分との相溶性に優れるため、xが1であることが好ましい。
(B)成分の配合量としては、前記(A)成分中のヒドロシリル基1モルに対して、(B)成分中のアルケニル基の量が0.01~5モルとなるような量であることが好ましい。より好ましくは0.5~3モルであり、さらに好ましくは、0.8~1.2モルである。この範囲内であれば、反応が円滑に進行するため好ましい。
【0030】
[(C)ヒドロシリル化触媒]
本発明で用いる(C)ヒドロシリル化触媒は、前記(A)成分中のヒドロシリル基と、前記(B)成分中のアルケニル基とのヒドロシリル化反応を促進するためのものである。
前記(C)のヒドロシリル化触媒は、白金触媒又はロジウム触媒であることが好ましい。具体的には塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸-ビニルシロキサン錯体等の触媒が好適に使用される。なお、触媒の使用量は触媒量とすることができるが、(A)~(D)成分の配合量の合計に対して、白金又はロジウム量で100ppm以下であることが好ましく、特に50ppm以下であることが好ましい。この範囲内であれば、環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンの外観が着色することがないため好ましい。
【0031】
[(D)有機溶媒]
本発明で用いる(D)有機溶媒は、前記(A)~(C)成分を均一に相溶し、反応を促進したり、組成物の粘度を下げて攪拌効率を上げたりするためのものである。
前記(D)の有機溶媒は、例えばメタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール等の脂肪族アルコール、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、n-ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
(D)成分としては、前記(A)及び(B)成分と相溶することが好ましく、この中でも、原料との相溶性の観点からトルエンが好ましい。
(D)成分の配合量としては、(A)~(D)成分の配合量の合計に対して、10~90質量%が好ましく、30~70質量%がより好ましい。
【0032】
ヒドロシリル化反応条件は、特に限定されるものではないが、70~110℃で反応を行い、1~10時間反応させることが好ましい。
なお、この工程1を終えて次工程の工程2に移る前に、前記(D)成分の有機溶媒を除去してから工程2に移ってもよい。前記(D)成分を除去する際の内圧は常圧でも減圧下でも良い。温度は特に限定されるものではないが、20℃~100℃であることが好ましい。
【0033】
本発明の環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを製造する方法は、上記のヒドロシリル化反応の後に、炭素数2~16のα-オレフィンを付加する工程を追加することもできる。炭素数2~16のαーオレフィンは、上記で得られた環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンとの相溶性の観点から炭素数5~12のアルキル基が好ましく、6~8のアルキル基がより好ましく、オクチル基がさらに好ましい。
前記(A)オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のヒドロシリル基1モルに対して、(B)環状オリゴ糖誘導体中のアルケニル基が、0.02~1.2モルであり、α-オレフィン中のアルケニル基が、0.02~1.98であることが好ましい。ただし、前記(B)及びα-オレフィンの成分の合計が、前記(A)のヒドロシリル基1モルに対して0.8~2.0モルの範囲であることが好ましい。
【0034】
[工程2]
本発明の製造方法における工程2は、前記工程1で得られた環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを25℃での比誘電率が23以上の洗浄用有機溶媒、又はこれらの混合物で洗浄、ろ過する工程である。
有機溶媒の比誘電率は、溶媒の極性を示す指標として知られている。25℃での比誘電率が23以上の洗浄用有機溶媒を用いることで、未反応の前記(B)成分のみを溶解させ、目的の環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを濾過で回収することができる。洗浄用有機溶媒の比誘電率は、23以上であることが特徴であり、23~50が好ましく、23~40がより好ましい。本発明において、25℃での比誘電率は、化学便覧基礎編改訂5版(日本化学会編、2004年発行)に記載の数値を引用した。
25℃での比誘電率が23以上の洗浄用有機溶媒の例としては、メタノール(32.66)、エタノール(24.55)、エチレングリコール(37.7)、プロピレングリコール(32.0)、N,N-ジメチルホルミアミド(36.71)、N,N-ジメチルアセトアミド(37.78)、アセトニトリル(35.94)などが挙げられる(以上、カッコ内は比誘電率の値)。中でもメタノール、エタノール、アセトニトリルが好ましく用いられる。これらの有機溶媒は、1種単独でも2種以上を混合して用いてもよい。混合して用いる場合の比誘電率は、加重平均値を混合物の比誘電率とみなす。
溶解時の温度は特に限定されるものではなく、溶媒の沸点以下であれば良いが、20℃~70℃であることが好ましい。また、皮膜形成剤として用いる場合に透明性が高いことが要求されるため、前記(B)成分の残存量は、得られた環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサン中の10%以下が好ましく、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは1%以下である。前記(B)成分の残存は、皮膜のべたつきやの機械的特性低下をもたらすことが本発明により明らかとなった。
【0035】
[工程3]
本発明の製造方法における工程3は、前記工程1及び工程2で用いた有機溶媒を除去する工程である。工程3において、有機溶媒を除去する際の内圧は常圧でも減圧下でも良い。温度は特に限定されるものではないが、20℃~100℃であることが好ましい。
【0036】
本発明の方法で得られる環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンのガラス転移温度は50~100℃であることが好ましく、形成する皮膜の特性の観点から、60~95℃がより好ましく、65~90℃が更に好ましい。上記範囲内であれば、室温において十分な機械的特性を持ちながら、柔軟な皮膜を形成する。なお、本発明におけるガラス転移温度は、後述の実施例に示す条件で動的粘弾性測定により求めた値である。
【0037】
[皮膜形成剤]
本発明の方法で得られる環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンは、透明性が高く、柔軟でべたつきがなく強靭な皮膜を形成するため、皮膜形成剤として用いることができる。
【0038】
皮膜形成剤としては、上記環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサン単独でも用いることができるが、皮膜形成性や作業性などの観点から、有機溶剤で希釈して用いることが好ましい。
【0039】
有機溶剤としては、揮発性シロキサン、飽和脂肪族炭化水素、飽和脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、塩化炭化水素、塩化フッ化炭化水素、アルコール類などの中から選択される。特に好ましくは、常圧(1013hPa)における沸点が100~270℃である揮発性オルガノシロキサン及び軽質流動イソパラフィンである。 揮発性シロキサンとしては、例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリエチルシクロトリシロキサン、ヘキサエチルトリシクロシロキサン、ジエチルテトラメチルシクロトリシロキサン、ジメチルテトラエチルシクロトリシロキサン、ジエチルヘキサメチルシクロテトラシロキサン、テトラエチルテトラメチルシクロテトラシロキサンなどの環状シロキサン;ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、オクタエチルトリシロキサンなどの直鎖状シロキサン;並びにメチルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、フェニルトリス(トリメチルシロキシ)シランなどの分岐状シロキサンなどである。また、軽質流動イソパラィンとしては、炭素数8~16のイソパラフィンを主成分とするものが例示される。
【0040】
有機溶剤を使用する場合の環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンの成分量としては0.1~80%であることが好ましく、より好ましくは0.5~20%である。
【0041】
塗工方法としては、塗工基材の種類に応じた公知の方法を採用することができる。
【0042】
本発明の方法で得られる環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサン皮膜形成剤の用途として化粧品、塗料、紙、プラスチックシート、ゴム物品の損傷保護剤,撥水剤,剥離剤、布の損傷保護剤,撥水剤,防水剤,風合い改良剤,目止め剤、コンクリート、モルタル、木材の撥水剤,防水剤,剥離剤等が挙げられ、化粧持続性、滑り性、撥水性等を付与する目的で使用できる。
【実施例0043】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0044】
[測定方法]
各種測定は以下の方法にて行った。
【0045】
<ガラス転移温度>
ガラス転移温度は、厚さ0.25mmの皮膜を作成し、日立ハイテクサイエンス社製「DMA7100」にて、引っ張りモード、周波数1Hzの条件で、25~120℃の範囲で昇温速度5℃/分で測定した動的粘弾性データを解析することによって得られる。E’’(損失弾性率)/E’(貯蔵弾性率)で表される、tanδ(損失正接)が最大となる温度を特定し、その温度をガラス転移温度とする。
【0046】
<1H-NMR>
AVANCE-III 400MHz(BRUKER製)を用い、測定溶媒として重クロロホルムを用いて測定した。
【0047】
[合成例1:不飽和結合をもつ環状オリゴ糖誘導体の合成]
撹拌装置、温度計、還流冷却器及び滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコに、モノ-6-O-(p-トルエンスルホニル)-β-シクロデキストリン(C6-Ts-β-CD)50.0g、アリルアミン500.0gを仕込んだ。フラスコ内を窒素置換した後、53℃で7時間撹拌し、室温まで冷却して一晩撹拌した。エバポレーターで濃縮し、得られた固体にアセトニトリル1,000mLを加え、沈降物を濾過で回収した。得られた沈降物に蒸留水1,000mLを加えて溶解し、その溶解液をアセトニトリル1,000mLに滴下して、沈降物を濾過で回収した。沈降物をアセトンで洗浄した後、40℃の真空乾燥機で乾燥することで、ビニル変性化合物A(白色固体、42.7g)を得た。
【0048】
【0049】
[合成例2:不飽和結合をもつ環状オリゴ糖誘導体の合成]
撹拌装置、温度計、還流冷却器及び滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコに、前記ビニル変性化合物A30.0g、無水酢酸110.0g、ピリジン170.0gを仕込んだ。フラスコ内を窒素置換した後、60℃で7時間撹拌し、室温まで冷却して一晩撹拌した。フラスコ内の溶液にトルエン170mLを加え、1mM塩酸170mLで2回、飽和食塩水170mLで1回洗浄し、分液して得られた溶液をエバポレーターで濃縮した。その後、回収した固体をアセトン50mLに溶解し、その溶解液を蒸留水500mLに滴下して、沈降物を濾過で回収した。沈降物を40℃の真空乾燥機で乾燥することで、ビニル変性化合物B(白色固体、31.8g)を得た。
【0050】
【0051】
[合成例3:不飽和結合をもつ環状オリゴ糖誘導体の合成]
撹拌装置、温度計、還流冷却器及び滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコに、モノ-6-O-(p-トルエンスルホニル)-β-シクロデキストリン(C6-Ts-β-CD)48.0g、1-ビニル,3-(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン300.0g、N,N-ジメチルホルムアミド60.0gを仕込んだ。フラスコ内を窒素置換した後、75℃で7時間撹拌し、室温まで冷却して一晩撹拌した。フラスコ内の溶液をアセトニトリル1,200mLに滴下し、沈降物を濾過で回収した。得られた沈降物にN,N-ジメチルホルムアミド60.0gを加えて溶解し、その溶解液をトルエン1,200mLに滴下して、沈降物を濾過で回収した。沈降物をアセトンで洗浄した後、40℃の真空乾燥機で乾燥することで、ビニル変性化合物C(白色固体、42.5g)を得た。
【0052】
【0053】
[合成例4:不飽和結合をもつ環状オリゴ糖誘導体の合成]
撹拌装置、温度計、還流冷却器及び滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコに、前記ビニル変性化合物C42.0g、無水酢酸134.4g、ピリジン210.0gを仕込んだ。フラスコ内を窒素置換した後、60℃で7時間撹拌し、室温まで冷却して一晩撹拌した。フラスコ内の溶液にトルエン210mLを加え、1mM塩酸210mLで2回、飽和食塩水210mLで1回洗浄し、分液して得られた溶液をエバポレーターで濃縮した。その後、回収した固体をトルエン150mLに溶解し、その溶解液をヘキサン300mLに滴下して、沈降物を濾過で回収した。沈降物を40℃の真空乾燥機で乾燥することで、ビニル変性化合物D(白色固体、50.1g)を得た。
【0054】
【0055】
[実施例1]
撹拌装置、温度計、還流冷却器及び滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコに、下記式(2)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサン100.0g(動粘度:3,340mm2/s、数平均分子量:31,100、ヒドロシリル基量:0.040mol)、前記のビニル変性化合物B24.9g(ビニル基量:0.012mol)、トルエン200.0gを仕込んだ。フラスコ内を窒素置換した後、90℃まで昇温し、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金濃度0.5wt%)1.3gを前記フラスコ中に添加し、90℃で4時間撹拌した。ここで1H-NMRにより、ビニル基のピーク(5.6~6.1ppm)が消失したことで反応の進行を確認した。その後、1-オクテン6.4g(0.057mol)、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金濃度0.5wt%)0.7gを前記フラスコ中に添加し、90℃で4時間撹拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、エバポレーターでトルエンを減圧留去した。得られた固体にメタノール250gを加え、50℃で固体を洗浄する工程を3回繰り返した。最後に40℃の真空乾燥機で乾燥することで、環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンE(薄茶色固体、119.7g)を得た。
【0056】
【0057】
[実施例2]
撹拌装置、温度計、還流冷却器及び滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコに、下記式(2)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサン128.3g(ヒドロシリル基量:0.052mol)、前記のビニル変性化合物D45.0g(ビニル基量:0.016mol)、トルエン256.0gを仕込んだ。フラスコ内を窒素置換した後、90℃まで昇温し、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金濃度0.5wt%)1.7gを前記フラスコ中に添加し、90℃で2時間撹拌した。ここで1H-NMRにより、ビニル基のピーク(5.6~6.1ppm)が消失したことで反応の進行を確認した。その後、1-オクテン8.2g(0.073mol)、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金濃度0.5wt%)0.9gを前記フラスコ中に添加し、90℃で4時間撹拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、エバポレーターでトルエンを減圧留去した。得られた固体にメタノール300gを加え、50℃で固体を洗浄する工程を3回繰り返した。最後に40℃の真空乾燥機で乾燥することで、環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンF(薄茶色固体、148.3g)を得た。
【0058】
【0059】
[実施例3]
撹拌装置、温度計、還流冷却器及び滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコに、下記式(2)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサン128.3g(ヒドロシリル基量:0.052mol)、前記のビニル変性化合物D45.0g(ビニル基量:0.016mol)、トルエン256.0gを仕込んだ。フラスコ内を窒素置換した後、90℃まで昇温し、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金濃度0.5wt%)1.7gを前記フラスコ中に添加し、90℃で2時間撹拌した。ここで1H-NMRにより、ビニル基のピーク(5.6~6.1ppm)が消失したことで反応の進行を確認した。その後、1-オクテン8.2g(0.073mol)、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金濃度0.5wt%)0.9gを前記フラスコ中に添加し、90℃で4時間撹拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、エバポレーターでトルエンを減圧留去した。得られた固体にエタノール300gを加え、50℃で固体を洗浄する工程を3回繰り返した。最後に40℃の真空乾燥機で乾燥することで、環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンG(薄茶色固体、147.8g)を得た。
【0060】
【0061】
[実施例4]
撹拌装置、温度計、還流冷却器及び滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコに、下記式(2)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサン128.3g(ヒドロシリル基量:0.052mol)、前記のビニル変性化合物D45.0g(ビニル基量:0.016mol)、トルエン256.0gを仕込んだ。フラスコ内を窒素置換した後、90℃まで昇温し、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金濃度0.5wt%)1.7gを前記フラスコ中に添加し、90℃で2時間撹拌した。ここで1H-NMRにより、ビニル基のピーク(5.6~6.1ppm)が消失したことで反応の進行を確認した。その後、1-オクテン8.2g(0.073mol)、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金濃度0.5wt%)0.9gを前記フラスコ中に添加し、90℃で4時間撹拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、エバポレーターでトルエンを減圧留去した。得られた固体にアセトニトリル300gを加え、50℃で固体を洗浄する工程を3回繰り返した。最後に40℃の真空乾燥機で乾燥することで、環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンH(薄茶色固体、148.0g)を得た。
【0062】
【0063】
[実施例5]
撹拌装置、温度計、還流冷却器及び滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコに、下記式(2)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサン77.0g(ヒドロシリル基量:0.031mol)、前記のビニル変性化合物D45.0g(ビニル基量:0.016mol)、トルエン154.0gを仕込んだ。フラスコ内を窒素置換した後、90℃まで昇温し、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金濃度0.5wt%)1.1gを前記フラスコ中に添加し、90℃で2時間撹拌した。ここで1H-NMRにより、ビニル基のピーク(5.6~6.1ppm)が消失したことで反応の進行を確認した。その後、1-オクテン3.5g(0.031mol)、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金濃度0.5wt%)0.6gを前記フラスコ中に添加し、90℃で4時間撹拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、エバポレーターでトルエンを減圧留去した。得られた固体にメタノール240gを加え、50℃で固体を洗浄する工程を3回繰り返した。最後に40℃の真空乾燥機で乾燥することで、環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンI(薄茶色固体、113.3g)を得た。
【0064】
【0065】
[実施例6]
撹拌装置、温度計、還流冷却器及び滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコに、下記式(2)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサン35.0g(ヒドロシリル基量:0.014mol)、前記のビニル変性化合物D45.0g(ビニル基量:0.016mol)、トルエン70.0gを仕込んだ。フラスコ内を窒素置換した後、90℃まで昇温し、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体体のトルエン溶液(白金濃度0.5wt%)0.6gを前記フラスコ中に添加し、90℃で2時間撹拌した。ここで1H-NMRにより、ビニル基のピーク(5.6~6.1ppm)が消失したことで反応の進行を確認した。その後、反応液を室温まで冷却し、エバポレーターでトルエンを減圧留去した。得られた固体にメタノール140gを加え、50℃で固体を洗浄する工程を3回繰り返した。最後に40℃の真空乾燥機で乾燥することで、環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンJ(薄茶色固体、64.3g)を得た。
【0066】
【0067】
[比較例1]
撹拌装置、温度計、還流冷却器及び滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコに、下記式(2)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサン128.3g(ヒドロシリル基量:0.052mol)、前記のビニル変性化合物D45.0g(ビニル基量:0.016mol)、トルエン256.0gを仕込んだ。フラスコ内を窒素置換した後、90℃まで昇温し、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金濃度0.5wt%)1.7gを前記フラスコ中に添加し、90℃で2時間撹拌した。ここで1H-NMRにより、ビニル基のピーク(5.6~6.1ppm)が消失したことで反応の進行を確認した。その後、1-オクテン8.2g(0.073mol)、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金濃度0.5wt%)0.9gを前記フラスコ中に添加し、90℃で4時間撹拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、エバポレーターでトルエンを減圧留去した。最後に40℃の真空乾燥機で乾燥することで、環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンK(薄茶色固体、159.7g)を得た。
【0068】
【0069】
[比較例2]
撹拌装置、温度計、還流冷却器及び滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコに、下記式(3)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサン6.9g(動粘度:17mm2/s、数平均分子量:3,000、ヒドロシリル基量:0.052mol)、前記のビニル変性化合物D45.0g(ビニル基量:0.016mol)、トルエン100.0gを仕込んだ。フラスコ内を窒素置換した後、90℃まで昇温し、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金濃度0.5wt%)0.6gを前記フラスコ中に添加し、90℃で2時間撹拌した。ここで1H-NMRにより、ビニル基のピーク(5.6~6.1ppm)が消失したことで反応の進行を確認した。その後、1-オクテン8.2g(0.073mol)、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金濃度0.5wt%)0.3gを前記フラスコ中に添加し、90℃で4時間撹拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、エバポレーターでトルエンを減圧留去した。得られた固体にメタノール100gを加え、50℃で固体を洗浄する工程を3回繰り返した。最後に40℃の真空乾燥機で乾燥することで、環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンL(薄茶色固体、44.6g)を得た。
【0070】
【0071】
[比較例3]
撹拌装置、温度計、還流冷却器及び滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコに、下記式(2)で表されるポリオルガノハイドロジェンシロキサン128.3g(ヒドロシリル基量:0.052mol)、前記のビニル変性化合物D45.0g(ビニル基量:0.016mol)、トルエン256.0gを仕込んだ。フラスコ内を窒素置換した後、90℃まで昇温し、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金濃度0.5wt%)1.7gを前記フラスコ中に添加し、90℃で2時間撹拌した。ここで1H-NMRにより、ビニル基のピーク(5.6~6.1ppm)が消失したことで反応の進行を確認した。その後、1-オクテン8.2g(0.073mol)、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金濃度0.5wt%)0.9gを前記フラスコ中に添加し、90℃で4時間撹拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、エバポレーターでトルエンを減圧留去した。得られた固体にアセトン(比誘電率20.7)300gを加え50℃に加熱したところ、生成物も溶解してしまったため、以後の工程に進めず、評価を中断した。
上記実施例及び比較例で得られた化合物について、以下の方法で皮膜を作製し、各種評価を行った。
【0072】
[皮膜作製]
上記合成例、実施例及び比較例で得られた各種環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンをトルエンに溶解し30%溶液を調製した。縦5cm/横5cm/厚さ0.25mmの型が取られたテフロン(登録商標)コート板上に上記溶液を流し込み、25℃で1晩放置した後、80℃の乾燥機で1時間乾燥させ皮膜を作製した。得られた皮膜の外観を目視で観察し、手で触りべたつきの有無を調べた。また、動的粘弾性測定を行い、ガラス転位温度を特定した。
【0073】
【表1】
表1の結果から、本発明の製造方法で得られる環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンは、透明でべたつきがなく、柔軟かつ強靭な皮膜を形成できることが分かった。一方、工程2を省略した比較例1では白濁しべたつきを有するものであった。また比較例2は、低分子量であり、柔軟性、強靭性に欠けるものであった。
【0074】
本明細書は、以下の態様を包含する。
[1]:[工程1]下記(A)~(D)を含む組成物のヒドロシリル化によりオリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを得る工程
(A)25℃の動粘度が50mm
2/s以上でかつ数平均分子量が8,000以上である、1分子中に1個以上のヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B)下記一般式(1)で表される不飽和基を有する環状オリゴ糖誘導体
(C)ヒドロシリル化触媒
(D)有機溶媒
[工程2]工程1で得られた環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを、25℃での比誘電率が23以上の洗浄用有機溶媒、又はこれらの混合物で洗浄、ろ過する工程
[工程3]前記工程1及び工程2で用いた有機溶媒を除去する工程
を含むことを特徴とする環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを製造する方法。
【化15】
(式中、Aは炭素数2~12のアルケニル基、R
1は独立して、炭素数1~4のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、及び炭素数7~10のアラルキル基から選ばれる基であり、R
2は炭素数1~4のアルキレン基、R
3は独立して、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアシル基から選ばれる基であり、aは0~8の整数,bは5~7の整数、xは0または1である。)
[2]:前記工程1において、前記(A)(B)のヒドロシリル化反応の後に、更に炭素数2~16のα-オレフィンをヒドロシリル化により付加することを特徴とする[1]に記載の環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを製造する方法。
[3]:前記一般式(1)において、R
1がメチル基、R
3がアセチル基である、[1]又は[2]に記載の環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを製造する方法。
[4]:前記一般式(1)において、xが1である、[1]から[3]のいずれに記載の環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを製造する方法。
[5]:前記環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンの動的粘弾性測定によって測定されるガラス転移温度が50~100℃である、[1]から[4]のいずれに記載の環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを製造する方法。
[6]:前記工程2で用いる洗浄用有機溶媒を、メタノール、エタノール、及びアセトニトリルから選ばれる1種以上とする[1]から[5]のいずれに記載の環状オリゴ糖変性オルガノポリシロキサンを製造する方法。
【0075】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。