(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162161
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】送信装置、受信装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H03M 13/19 20060101AFI20241114BHJP
H04L 1/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H03M13/19
H04L1/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077453
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】小泉 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】小島 政明
(72)【発明者】
【氏名】亀井 雅
(72)【発明者】
【氏名】岡野 正寛
【テーマコード(参考)】
5J065
5K014
【Fターム(参考)】
5J065AB03
5J065AC02
5J065AD07
5J065AE06
5J065AH01
5K014BA05
(57)【要約】
【課題】超低受信C/N下においても安定的な衛星伝送を実現する。
【解決手段】ISDB-S3に規定される検査行列を用いて、符号化率がISDB-S3に規定されるLDPC符号化率よりも低いLDPC符号を生成できるように、情報ビットに所定のビットパターンのパディングビットを付加するPB付加部113と、パディングビットが付加された情報ビットを、記検査行列を用いて符号化し、符号化率が前記LDPC符号化率よりも低いLDPC符号化信号を生成するLDPC符号化部114と、LDPC符号化信号を変調して主信号の変調シンボルを生成する変調部115と、主信号の変調シンボルに、フレーム同期信号、パイロット信号、及び制御信号を付加し、ISDB-S3に規定される変調信号フレームを構成する変調信号フレーム構成部13と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ISDB-S3に規定される検査行列を用いて、符号化率がISDB-S3に規定されるLDPC符号化率よりも低いLDPC符号を生成できるように、情報ビットに所定のビットパターンのパディングビットを付加するPB付加部と、
前記パディングビットが付加された情報ビットを、前記検査行列を用いて符号化し、符号化率が前記LDPC符号化率よりも低いLDPC符号化信号を生成するLDPC符号化部と、
前記LDPC符号化信号を変調し、主信号の変調シンボルを生成する変調部と、
前記主信号の変調シンボルに、フレーム同期信号、パイロット信号、及び制御信号を付加し、ISDB-S3に規定される変調信号フレームを構成する変調信号フレーム構成部と、
を備える送信装置。
【請求項2】
前記変調信号フレーム構成部は、前記パディングビットを変調したシンボルを、前記変調信号フレームの各変調スロット内の先頭に位置する主信号の変調シンボル領域に割り当てる、請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記変調信号フレーム構成部は、前記パディングビットを変調したシンボルを、前記変調信号フレームの先頭の変調スロット内の主信号の変調シンボル領域に割り当てる、請求項1に記載の送信装置。
【請求項4】
前記変調信号フレーム構成部は、前記パディングビットを変調したシンボルの全てを前記主信号の変調シンボル領域へ割り当てる、請求項2又は3に記載の送信装置。
【請求項5】
所定の符号長のLDPC符号化信号であるLDPCブロックの前記パディングビットのビットパターンを決定し前記PB付加部に指示するPBパターン指示部を更に備え、
前記ビットパターンは一定ではない、請求項1に記載の送信装置。
【請求項6】
前記PBパターン指示部は、前記変調信号フレームに最初に割り当てられるLDPCブロックと、残りのLDPCブロック群とで、前記ビットパターンを異なるものとする、請求項5に記載の送信装置。
【請求項7】
請求項1に記載の送信装置から前記変調信号フレームを受信する受信装置であって、
前記フレーム同期信号、及び前記パディングビットを変調したPBシンボルを用いて、前記変調信号フレームの先頭を検出し、フレーム同期を行うフレーム同期部と、
前記フレーム同期が行われた前記主信号の復調を行い、復調シンボルを生成する復調部と、
前記復調シンボル及び前記パイロット信号による基準点を用いて、LDPCブロック単位でLDPC復号に必要なLLRを算出するLLR計算部と、
前記LLRに対して、前記パディングビットに相当するLLRを、前記パディングビットが0である場合には第1の所定値よりも大きい正の値に差し替え、前記パディングビットが1である場合には第2の所定値よりも小さな負の値に差し替えるLLR差替部と、
前記差し替えられたLLRを元に、ISDB-S3に規定される前記検査行列を用いて復号を行い、復号ビット列を生成するLDPC復号部と、
前記復号ビット列から前記パディングビットを除去するPB除去部と、
を備える受信装置。
【請求項8】
前記フレーム同期部は、前記フレーム同期信号、及び前記変調信号フレームの各変調スロットの先頭に位置する主信号の変調シンボル領域に割り当てられた前記PBシンボルを用いて、前記変調信号フレームの先頭を検出する、請求項7に記載の受信装置。
【請求項9】
前記フレーム同期部は、前記フレーム同期信号、及び前記変調信号フレームの先頭の変調スロット内の主信号の変調シンボル領域に割り当てられた前記PBシンボルを用いて、前記変調信号フレームの先頭を検出する、請求項7に記載の受信装置。
【請求項10】
コンピュータを、請求項1に記載の送信装置として機能させるためのプログラム。
【請求項11】
コンピュータを、請求項7に記載の受信装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信装置、受信装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
衛星放送は、全国一律に同一の信号を伝送可能な同報性に優れた伝送システムである。そして、放送衛星は地球から36,000km離れた宇宙空間で運用されることから、地上放送網や通信回線と比較して災害にも強く、有事においても信号伝送を継続可能な伝送手段の一つである。日本では衛星放送の規格として、ISDB-S3(非特許文献1参照)が採用されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式(ISDB-S3) 標準規格 ARIB STD-B442.1版」、一般社団法人 電波産業会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
災害などの有事において安定的に衛星放送を継続するためには、受信C/Nのマージンを大きく取り、受信環境の変化による受信C/Nの低下に対応する必要がある。ISDB-S3規格においては、受信C/Nが-4.0dB程度の場合まで受信可能である。しかし、有事に衛星放送を受信することを考慮すると、受信アンテナは携帯可能な小型なものが望ましく、高い受信C/Nを確保することが難しい状況が考えられる。そのため、ISDB-S3規格では受信できないような超低受信C/N下においても、安定的に衛星伝送を実現することが求められている。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、ISDB-S3規格では受信できないような超低受信C/N下においても、安定的な衛星伝送を実現することが可能な送信装置、受信装置、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の要旨は、以下のとおりである。
【0007】
(1)ISDB-S3に規定される検査行列を用いて、符号化率がISDB-S3に規定されるLDPC符号化率よりも低いLDPC符号を生成できるように、情報ビットに所定のビットパターンのパディングビットを付加するPB付加部と、前記パディングビットが付加された情報ビットを、前記検査行列を用いて符号化し、符号化率が前記LDPC符号化率よりも低いLDPC符号化信号を生成するLDPC符号化部と、前記LDPC符号化信号を変調し、主信号の変調シンボルを生成する変調部と、前記主信号の変調シンボルに、フレーム同期信号、パイロット信号、及び制御信号を付加し、ISDB-S3に規定される変調信号フレームを構成する変調信号フレーム構成部と、を備える送信装置。
【0008】
(2)前記変調信号フレーム構成部は、前記パディングビットを変調したシンボルを、前記変調信号フレームの各変調スロット内の先頭に位置する主信号の変調シンボル領域に割り当てる、(1)に記載の送信装置。
【0009】
(3)前記変調信号フレーム構成部は、前記パディングビットを変調したシンボルを、前記変調信号フレームの先頭の変調スロット内の主信号の変調シンボル領域に割り当てる、(1)に記載の送信装置。
【0010】
(4)前記変調信号フレーム構成部は、前記パディングビットを変調したシンボルの全てを前記主信号の変調シンボル領域へ割り当てる、(2)又は(3)に記載の送信装置。
【0011】
(5)所定の符号長のLDPC符号化信号であるLDPCブロックの前記パディングビットのビットパターンを決定し前記PB付加部に指示するPBパターン指示部を更に備え、前記ビットパターンは一定ではない、(1)~(4)のいずれかに記載の送信装置。
【0012】
(6)前記PBパターン指示部は、前記変調信号フレームに最初に割り当てられるLDPCブロックと、残りのLDPCブロック群とで、前記ビットパターンを異なるものとする、(5)に記載の送信装置。
【0013】
(7)(1)~(6)に記載の送信装置から前記変調信号フレームを受信する受信装置であって、前記フレーム同期信号、及び前記パディングビットを変調したPBシンボルを用いて、前記変調信号フレームの先頭を検出し、フレーム同期を行うフレーム同期部と、前記フレーム同期が行われた前記主信号の復調を行い、復調シンボルを生成する復調部と、前記復調シンボル及び前記パイロット信号による基準点を用いて、LDPCブロック単位でLDPC復号に必要なLLRを算出するLLR計算部と、前記LLRに対して、前記パディングビットに相当するLLRを、前記パディングビットが0である場合には第1の所定値よりも大きい正の値に差し替え、前記パディングビットが1である場合には第2の所定値よりも小さな負の値に差し替えるLLR差替部と、前記差し替えられたLLRを元に、ISDB-S3に規定される前記検査行列を用いて復号を行い、復号ビット列を生成するLDPC復号部と、前記復号ビット列から前記パディングビットを除去するPB除去部と、を備える受信装置。
【0014】
(8)前記フレーム同期部は、前記フレーム同期信号、及び前記変調信号フレームの各変調スロットの先頭に位置する主信号の変調シンボル領域に割り当てられた前記PBシンボルを用いて、前記変調信号フレームの先頭を検出する、(7)に記載の受信装置。
【0015】
(9)前記フレーム同期部は、前記フレーム同期信号、及び前記変調信号フレームの先頭の変調スロット内の主信号の変調シンボル領域に割り当てられた前記PBシンボルを用いて、前記変調信号フレームの先頭を検出する、(7)に記載の受信装置。
【0016】
(10)コンピュータを、(1)~(6)のいずれかに記載の送信装置として機能させるためのプログラム。
【0017】
(11)コンピュータを、(7)~(9)のいずれかに記載の受信装置として機能させるためのプログラム。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ISDB-S3規格では受信できないような超低受信C/N下においても、安定的に衛星伝送を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1の実施形態に係る送信装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態に係る送信装置におけるPB付加部とLDPC符号化部の処理例を示す図である。
【
図3】符号化率Rの検査行列の一例を示す図である。
【
図4】第1の実施形態に係る送信装置における変調信号フレーム構成部の第1の処理例を示す図である。
【
図5】第1の実施形態に係る送信装置における変調信号フレーム構成部の第2の処理例を示す図である。
【
図6】第1の実施形態に係る受信装置の構成例を示すブロック図である。
【
図7】第1の実施形態に係る受信装置におけるLLR差替部の処理例を示す図である。
【
図8】第1の実施形態に係る送信装置において、符号化率R=61/120の検査行列を用いて生成された、符号化率R
Low≒1/7のLDPCブロックを示す図である。
【
図9】第1の実施形態に係る送信装置における、
図8に示すLDPCブロックを用いた変調信号フレーム構成部の処理例を示す図である。
【
図10】第1の実施形態に係る送信装置において、符号化率R=41/120の検査行列を用いて生成された、符号化率R
Low≒1/7のLDPCブロックを示す図である。
【
図11】第1の実施形態に係る送信装置における、
図10に示すLDPCブロックを用いた変調信号フレーム構成部の処理例を示す図である。
【
図12】第2の実施形態に係る送信装置の構成例を示すブロック図である。
【
図13】第2の実施形態に係る送信装置におけるPBパターン指示部の処理例を示す図である。
【
図14】第2の実施形態に係る送信装置における変調信号フレーム構成部の第1の処理例を示す図である。
【
図15】第2の実施形態に係る送信装置における変調信号フレーム構成部の第2の処理例を示す図である。
【
図16】第2の実施形態に係る送信装置における、
図8に示すLDPCブロックを用いた変調信号フレーム構成部の処理例を示す図である。
【
図17】第2の実施形態に係る送信装置における、
図10に示すLDPCブロックを用いた変調信号フレーム構成部の処理例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、
図1から
図11を参照して詳細に説明する。送信装置について説明した後、受信装置について説明する。
【0021】
<<送信装置>>
図1に、第1の実施形態に係る送信装置の構成ブロックを示す。
図1に示す送信装置1は、主信号部11と、同期・制御信号生成部12と、変調信号フレーム構成部13と、を備える。主信号部11は、BCH符号化部111と、電力拡散部112と、PB付加部113と、LDPC符号化部114と、変調部115と、を備える。
【0022】
送信装置1は、ISDB-S3に規定される誤り訂正符号の検査行列とパディングビット(以下、「PB」という。)を用いて、ISDB-S3に規定のない低符号化率の信号を生成するとともに、PBをフレーム同期信号として利用するような変調信号フレームを構築する。PB付加部113を除く各ブロックは、ISDB-S3に規定される処理を行う。
【0023】
BCH符号化部111は、送信装置1に入力された送信ビット列から、ISDB-S3に規定されるLDPC符号化率に応じたビット数の送信ビットを取得し、ISDB-S3に規定されるBCH符号化を行う。BCH符号化部111は、取得した送信ビットを電力拡散部112に出力する。
【0024】
電力拡散部112は、BCH符号化部111によりBCH符号化された送信ビットに対して、ISDB-S3に規定される電力拡散(エネルギー拡散)を施し、情報ビットを生成する。電力拡散部112は、生成した情報ビットをPB付加部113に出力する。
【0025】
PB付加部113は、ISDB-S3に規定される検査行列を用いて、符号化率がISDB-S3に規定されるLDPC符号化率よりも低いLDPC符号を生成できるように、電力拡散部112から入力した情報ビットに、不足分の情報ビットとして、所定のビットパターンのPBを付加する。PB付加部113は、PBが付加された情報ビットをLDPC符号化部114に出力する。
【0026】
LDPC符号化部114は、PB付加部113によりPBが付加された情報ビットを、ISDB-S3に規定される検査行列を用いて符号化し、符号化率がISDB-S3で規定するよりも低いLDPC符号化信号を生成する。LDPC符号化部114は、生成したLDPC符号化信号を変調部115に出力する。
【0027】
図2に、PB付加部113とLDPC符号化部114の処理を示し、
図3に符号化率Rの検査行列の一例を示す。LDPC符号化部114は、ISDB-S3に規定される符号化率Rの検査行列を用いて、符号化率Rよりも低い符号化率R
Low(R>R
Low)のLDPC符号化信号を生成する。ISDB-S3に規定されるLDPC符号の符号長は44880ビットである。以下、所定の符号長(実施形態では44880ビット)のLDPC符号化信号を「LDPCブロック」と称する。符号化率RのLDPCブロックの情報ビットのビット数をi、パリティビットのビット数をpとすると、i+p=44880である。ここではビット数iは、前述のBCH符号化及び電力拡散後のビット列のビット数である。
【0028】
図3に示すように、符号化率Rの検査行列のサイズはp×44880となる。p×iの長方行列においてはランダムに1が配置され、正方行列においては斜めに1が配置され、他の部分には0が配置される。なお、パリティビットが多くなる(符号化率が小さくなる)と、パリティが正方行列という条件により行数が増えるため、検査行列のサイズは大きくなる。
【0029】
符号化率R
LowのLDPCブロックにおける情報ビットのビット数をi_
Low(i>i_
Low)とする。ここで、符号化率Rの検査行列を用いて符号化率R
Lowに変換する際、情報ビットが(i-i_
Low)ビット不足する。この不足するビットを、既知のビットパターンを持つPBで埋めることで、符号化率Rの検査行列を用いて符号化率R
LowとなるLDPC符号化を行うことが可能となる。なお、本明細書において「既知」とは、送受信間で既知という意味である。以下、PBのビット数(i-i_
Low)をn_
PBと表記する。従来は、iビットの情報ビット、及び符号化率Rの検査行列を用いて、
図2の上側に示す符号化率RのLDPCブロックを生成する。一方、LDPC符号化部114は、n_
PBビットのPB、iビットの情報ビット、及び符号化率Rの検査行列を用いて、
図2の下側に示す符号化率R
LowのLDPCブロックを生成する。
【0030】
変調部115は、PBを用いて符号化率RLowに変換されたLDPC符号化信号を、ISDB-S3に規定された変調方式で変調し、主信号の変調シンボルを生成する。
【0031】
同期・制御信号生成部12は、ISDB-S3に規定されるフレーム同期信号、パイロット信号、及び制御信号であるTMCC(Transmission & Multiplexing Configuration Control)信号を生成する。同期・制御信号生成部12は、生成した信号を変調信号フレーム構成部13に出力する。
【0032】
変調信号フレーム構成部13は、変調部115により生成された主信号の変調シンボルに、同期・制御信号生成部12により生成されたフレーム同期信号、パイロット信号、及びTMCC信号を付加し、ISDB-S3に規定される変調信号フレームを構成する。変調信号フレーム構成部13は、生成した変調信号フレームを、送信アンテナを介して送信する。
【0033】
図4、
図5に変調信号フレーム構成部13の処理例を示す。ここでは、変調方式がBPSKである場合について説明する。変調信号フレーム構成部13は、1つの変調信号フレームに24スロット分のLDPCブロックを、主信号の変調シンボルとして割り当てる。変調信号フレーム構成部13により構成される各変調信号フレームは、120の変調スロットからなる。各変調スロットの主信号の変調シンボル数は、44880×24/120=8966となる。136シンボルの主信号の変調シンボルごとに4シンボルのTMCC信号を挿入すると、各変調スロットは、この組を66組有する(8966/136=66)。さらに各変調スロットは、先頭に24シンボルのフレーム同期信号(FSync,!FSync)又はスロット同期信号(SSync)を有し、次に32シンボルのパイロット信号を有する。なお、!FSyncはFSyncの反転パターンである。以下、136シンボルの主信号の変調シンボルが配置される領域を「主信号の変調シンボル領域」と称する。
【0034】
図4に示す処理では、変調信号フレーム構成部13は、既知のPBを変調したシンボル(以下、「PBシンボル」という。)を、変調信号フレームの各変調スロット内の先頭に位置する主信号の変調シンボル領域へ、先頭の変調スロット#1から順に割り当てる。これにより、フレーム同期に用いる既知パターンを24シンボルから160シンボル(=24+136シンボル)に増加することが可能であり、超低受信C/Nの環境下においてもフレーム同期を確立することが可能となる。
図4ではn_
PB=136×120の場合を示しているが、n_
PBの値はこれに限られない。n_
PB<136×120の場合には、主信号の変調シンボル領域にPBシンボルが割り当てられていない変調スロットが存在することになる。
【0035】
図5に示す処理では、変調信号フレーム構成部13は、PBシンボルを、変調信号フレームの先頭の変調スロット#1内の主信号の変調シンボル領域へ順に割り当てる。これにより、変調スロット#1内の既知パターンの変調シンボル数を増加させ、変調スロット#1の同期性能を向上することが可能となる。受信側では、変調スロット#1から受信処理を開始するため、変調信号フレームの先頭に位置する変調スロット#1の同期を向上することは、超低受信C/Nにおける受信処理において有効な手法である。
図5ではn_
PB=136×66の場合を示しているが、n_
PBの値はこれに限られない。n_
PB<136×66の場合には、変調信号フレームの先頭の変調スロット#1に、PBシンボルが割り当てられていない主信号の変調シンボル領域が存在することになる。
【0036】
このように、PBシンボルを各変調スロット内の先頭、又は変調信号フレームの先頭の変調スロット#1に配置することにより、ISDB-S3の変調信号フレーム構成を維持したまま、フレーム同期性能を向上することが可能となる。また、PBを符号化率の変換に用いるだけでなく、フレーム同期性能の向上にも活用することで、PBを誤り訂正及びフレーム同期の両方に有効活用することが可能となる。
【0037】
図4に示す手法は、各変調スロットの同期性能が向上しており、どの変調スロットからでもフレーム同期を確立することが可能であるが、
図5に示す手法と比較して同期性能は低くなる。一方、
図5に示す手法は、受信処理を開始する変調スロット#1の同期性能を大幅に向上することが可能であるが、変調スロット#1を受信するタイミングでしか高精度で同期を確立できないため、同期確立に時間を要するといったトレードオフの関係が生じる。そのため、伝送システムの要求条件に応じて、いずれかの手法を選択するようにしてもよい。
【0038】
変調信号フレーム構成部13は、PBシンボルの全てを主信号の変調シンボル領域へ割り当ててもよい。すなわち、24スロットのLDPCブロックのうちのスロット#1のPBシンボルだけでなく、24スロット全てのPBシンボルを主信号の変調シンボル領域へ割り当てることにより、ISDB-S3規格に準拠した既存の送信装置及び受信装置から構成を大きく変更することなく、互換性を維持することが可能となる。
【0039】
<<受信装置>>
次に、第1の実施形態に係る受信装置について説明する。
図6に、一実施形態に係る受信装置の構成ブロックを示す。
図6に示す受信装置2は、周波数粗調部21と、マッチドフィルタ適用部22と、シンボル同期部23と、フレーム同期部24と、周波数微調部25と、復調部26と、同期・制御信号取得部27と、LDPC復号部28と、PB除去部29と、電力逆拡散部30と、BCH復号部31と、を備える。LDPC復号部28は、LLR(対数尤度比;Log-likelihood ratio)計算部281と、LLR差替部282と、LDPC復号部283と、を備える。
【0040】
受信装置2は、送信装置1から変調信号フレームを受信する。フレーム同期部24を除く各ブロックは、ISDB-S3に規定される処理を行う。
【0041】
周波数粗調部21は、送信装置1から受信アンテナを介して受信した信号に対して、シンボル同期以降の処理を行うために必要な初期段階のキャリア再生を行い、IQシンボルを生成する。周波数粗調処理は、例えばBalanced quadricorrelatorなどの手法により行われる。周波数粗調部21は、生成したIQシンボルをマッチドフィルタ適用部22に出力する。
【0042】
マッチドフィルタ適用部22は、IQシンボルに対して、フィルタ処理を施す。フィルタ処理は、例えばルートロールオフフィルタリングなどの手法により行われる。マッチドフィルタ適用部22は、フィルタ処理したIQシンボルをシンボル同期部23に出力する。
【0043】
シンボル同期部23は、フィルタ処理されたIQシンボルに対して、シンボル同期を行う。シンボル同期は、例えばG-TED(Gardner timing error detector)、ZC-TED(Zero-Crossing timing error detector)などの手法により行われる。シンボル同期部23は、シンボル同期したIQシンボル(受信シンボル)をフレーム同期部24に出力する。
【0044】
フレーム同期部24は、
図4、
図5に示した、フレーム同期信号及びPBシンボルを用いて受信シンボルとの相関を取ることにより、変調信号フレームの先頭を検出し、フレーム同期を行う。PBシンボルも既知のシンボル遷移を持つため、フレーム同期信号として用いることができる。そのため、既存のISDB-S3方式よりもフレーム同期性能を向上でき、超低受信C/N下においてもフレーム同期が可能となる。
【0045】
送信装置1の変調信号フレーム構成部13において
図4に示す処理が行われていた場合、フレーム同期部24は、フレーム同期信号、及び変調信号フレームの各変調スロット内の先頭に位置する主信号の変調シンボル領域に割り当てられたPBシンボルを用いて、変調信号フレームの先頭を検出し、フレーム同期を行う。
【0046】
送信装置1の変調信号フレーム構成部13において
図5に示す処理が行われていた場合、フレーム同期部24は、フレーム同期信号、及び変調信号フレームの先頭の変調スロット内の主信号の変調シンボル領域に割り当てられたPBシンボルを用いて、変調信号フレームの先頭を検出し、フレーム同期を行う。
【0047】
周波数微調部25は、フレーム同期信号、TMCC信号、及び主信号の変調シンボルのπ/2BPSK変調シンボルを用いて、受信信号の復調に必要な精度のキャリア再生を行う。周波数微調部25は、再生したキャリア信号を復調部26に出力する。
【0048】
同期・制御信号取得部27は、TMCC信号から主信号の変調方式、誤り訂正符号化率などの伝送パラメータ情報、及び誤り訂正復号に用いるパイロット信号を取得し、復調部26、LDPC復号部28、PB除去部29、電力逆拡散部30、及びBCH復号部31に通知する。
【0049】
復調部26は、再生されたキャリア信号を用いて主信号の復調を行い、復調シンボルを生成する。復調部26は、生成した復調シンボルをLLR計算部281に出力する。
【0050】
LLR計算部281は、復調シンボル及びパイロット信号による基準点を用いて、LDPCブロック単位でLDPC復号に必要なLLRを算出する。LLRは、伝送されたビットが0であるか1であるかの尤もらしさを示す。LLR計算部281は、算出したLLRをLLR差替部282に出力する。
【0051】
LLR差替部282は、LLR計算部281で求めたLLRに対して、PB部に相当するLLRを、PBが0である場合には第1の所定値よりも大きい正の値に差し替え、PBが1である場合には第2の所定値よりも小さな負の値に差し替える。LLR差替部282は、差し替え後のLLRをLDPC復号部283に出力する。
【0052】
図7に、LLR差替部282の処理を示す。LLR差替部282は、PB部に相当するLLRを、PBの0又は1に応じて+∞又は-∞に差し替える。PBは、送信装置1と受信装置2との間でビットパターンが共有された既知の値のため、PB部においては正しいビット列を確定することができる。ここで、差し替えるLLRを±∞としたが、以降のLDPC復号処理が発散しない程度に絶対値が十分に大きな値(所定値より大きな値)を設定することが望ましい。例えば、下記の参考文献では、処理の発散を抑え、且つ復号性能を引き出すために十分な値として、±15としている。
[参考文献]小泉雄貴、他4名、「衛星放送の降雨減衰補償を目的とした通信回線の誤り訂正用エンコーダ/デコーダ開発」、電子情報通信学会技術研究報告SAT衛星通信、vol.121、no.128、SAT2021-25、pp.30-35、2021年7月
【0053】
LDPC復号部283は、LLR差替部282により差し替えられたLLRを元に、LDPCブロック単位で、ISDB-S3に規定される符号化率Rの検査行列を用いて復号を行い、復号ビット列を生成する。復号処理は、例えばsum-product法により行われる。LDPC復号部283は、生成した復号ビット列をPB除去部29に出力する。
【0054】
PB除去部29は、LDPC復号部283により生成された復号ビット列から、送信側で付加されたPBを除去する。PB除去部29は、PBを除去した復号ビット列を電力逆拡散部30に出力する。
【0055】
電力逆拡散部30は、PB除去部29によりPBが除去された復号ビット列に対して、ISDB-S3に規定される電力逆拡散(エネルギー逆拡散)を施す。電力逆拡散部30は、電力逆拡散した復号ビット列をBCH復号部31に出力する。
【0056】
BCH復号部31は、電力逆拡散部30により電力逆拡散された復号ビット列に対して、ISDB-S3に規定されるBCH復号を行い、復号ビット列を受信装置2の外部に出力する。
【0057】
<第1の実施形態の具体例>
第1の実施形態の具体例として、超低受信C/N下において受信可能な衛星伝送システムについて示す。主信号の変調方式はπ/2シフトBPSKとし、PBにより低符号化率R
Low≒1/7を設計する場合について示す。また、誤り訂正符号は、ISDB-S3準拠の符号長448880ビットのLDPC符号とする。具体例1では、符号化率R=61/120の検査行列を用いてR
Low≒1/7の低符号化率を実現し、
図4で示したように各変調スロット#1~#120へPBを割り当てる手法を示す。具体例2では、符号化率R=41/120の検査行列を用いてR
Low≒1/7の低符号化率を実現し、
図5で示したように先頭の変調スロット#1へPBを割り当てる手法を示す。
【0058】
<<具体例1>>
図8に、符号化率R=61/120の検査行列を用いて生成された、符号化率R
Low≒1/7のLDPCブロックを示す。符号化率R=61/120の情報ビットのビット数は22814ビットであり、パリティビットのビット数pは22066ビットである。PB付加部113は、符号化率R
Low≒1/7とするために、PBをn_
PB=16320ビット挿入する。LDPC符号化部114は、PBが付加された情報ビットに対して、符号化率R=61/120の検査行列を用いてLDPC符号化する。
【0059】
図9に、変調信号フレーム構成部13の処理を示す。変調信号フレーム構成部13は、PBをπ/2シフトBPSK変調したPBシンボルを、変調信号フレームの各変調スロット内の先頭に位置する主信号の変調シンボル領域に配置する。このようにPBを配置するため、変調シンボルは136シンボル×120変調スロット=16320シンボルが必要となる。この16320シンボルは、スロット#1のPB(n_
PB=16320ビット)に対応する。このように主信号の変調シンボル領域の先頭のシンボル数とPBシンボル数を合わせることで、各変調スロット内の既知シンボルパターンを増やし、フレーム同期に活用し、同期性能を向上することが可能である。この手法により、各変調スロットの同期に活用できる既知シンボルパターンは、既存のフレーム同期信号24シンボルに加え、PBを変調したπ/2シフトBPSK信号136シンボルによる合計160シンボルとなる。
【0060】
受信装置2側の処理では、フレーム同期部24は、160シンボルの既知のシンボルパターンをフレーム同期処理に用いて、変調信号フレームの先頭を検出する。相関によるフレーム同期を行うため、既知のシンボルパターンを従来の24シンボルから160シンボルに拡張することで、既存のISDB-S3よりも同期性能を向上させることが可能となる。
【0061】
LDPC復号部28は、PBの0,1に応じてLLRを+15,-15に差替え、符号化率R=61/120の検査行列によりLDPC復号を行う。
【0062】
<<具体例2>>
図10に、符号化率R=41/120の検査行列を用いて生成された、符号化率R
Low≒1/7のLDPCブロックを示す。符号化率R=41/120の情報ビットのビット数は15334ビットであり、パリティビットのビット数pは29546ビットである。PB付加部113は、符号化率R
Low≒1/7とするために、PBをn_
PB=8976ビット挿入する。LDPC符号化部114は、PBが付加された情報ビットに対して、符号化率R=41/120の検査行列を用いてLDPC符号化する。
【0063】
図11に、変調信号フレーム構成部13の処理を示す。変調信号フレーム構成部13は、PBをπ/2シフトBPSK変調したPBシンボルを、変調信号フレームの先頭の変調スロット#1内の主信号の変調シンボル領域1から順に配置する。本具体例では、PBのビット数n_
PB=8976ビットのため、変調スロット#1の主信号の変調シンボル領域1から66にPBシンボルを割り当てることが可能である。この手法により、変調信号フレームの同期に活用できる既知シンボルパターンは、既存のフレーム同期信号24シンボルに加え、PBを変調したπ/2シフトBPSK信号8976シンボルによる合計9000シンボルとなる。
【0064】
受信装置2側の処理では、フレーム同期部24は、9000シンボルの既知のシンボルパターンをフレーム同期処理に用いて、変調信号フレームの先頭を検出する。相関によるフレーム同期を行うため、既知のシンボルパターンを従来の24シンボルから9000シンボルに拡張することで、既存のISDB-S3よりも同期性能を向上させることが可能となる。
【0065】
LDPC復号部28は、PBの0,1に応じてLLRを+15,-15に差替え、符号化率R=41/120の検査行列によりLDPC復号を行う。
【0066】
このように、本発明は、ISDB-S3に規定される誤り訂正符号の検査行列と、既知のPBを用いて、ISDB-S3に規定される符号化率よりも低い符号化率を実現する。ISDB-S3に規定のない符号化率(例えば、1/7)を実現しようとした場合、従来は検査行列を一から設計する必要があったが、本発明ではPBを用いることで、ISDB-S3で規定されている検査行列を変更することなく、ISDB-S3に規定のない符号化率を実現することが可能となる。
【0067】
また、誤り訂正で用いたPBをフレーム同期信号に用いることで、フレーム同期に使用するパターン長を増やすことができるため、フレーム同期性能を向上させ、超低受信C/N下における安定的な受信を実現することが可能となる。また、誤り訂正符号構成及びフレーム構成に関する設計手法は、どちらもISDB-S3との互換性を維持する観点を備えているため、本発明により既存のISDB-S3規格に準拠した送信装置及び受信装置の構成を大きく変えず、超低受信C/Nに対応した伝送モードを実装することが可能となる。
【0068】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態に係る送信装置について、
図12から
図17を参照して詳細に説明する。受信装置については第1の実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0069】
<<送信装置>>
図12に、第2の実施形態に係る送信装置の構成ブロックを示す。
図12に示す送信装置1aは、主信号部11と、同期・制御信号生成部12と、変調信号フレーム構成部13と、を備える。主信号部11は、BCH符号化部111と、電力拡散部112と、PB付加部113と、LDPC符号化部114と、変調部115と、PBパターン指示部116と、を備える。第2の実施形態に係る送信装置1aは、第1の実施形態に係る送信装置1と比較して、更にPBパターン指示部116を備える点が相違する。その他の構成については第1の実施形態と同様であるため、同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0070】
PBパターン指示部116は、LDPCブロックのPBのビットパターンを決定し、PB付加部113に指示する。PBのビットパターンを一定としないことにより、フレームの途中で疑似同期してしまうことを防ぐことが可能となる。例えば、PBパターン指示部116は、変調信号フレームに最初に割り当てられるLDPCブロックと、残りのLDPCブロック群とで、PBのビットパターンを異なるものとする。
【0071】
図13に、PBパターン指示部116の処理例を示す。ISDB-S3に示されるとおりにBPSK変調を行う場合、変調信号フレームあたり符号化済みLDPCブロックは24スロット必要となる。この例では、PBパターン指示部116は、変調信号フレームに最初に割り当てられるLDPCブロック(スロット#1)と、残りのLDPCブロック群(スロット#2~#24)とで、PBのビットパターンを反転関係とする。すなわち、スロット#1のPBをPB_αとし、スロット#2~#24のPBをPB_βとすると、PB_β=!PB_α(!:反転パターン)となる。本実施形態では、PBパターン指示部116が指示するビットパターンは上記の2種類とするが、3種類以上のビットパターンを指示してもよいし、全スロット#1~#24について異なるビットパターンを指示してもよい。
【0072】
図14、
図15に変調信号フレーム構成部13の処理例を示す。ここでは、変調方式がBPSKである場合について説明する。
図14に示す処理では、変調信号フレーム構成部13は、最初のLDPCブロック(スロット#1)のPBシンボルを、変調信号フレームの各変調スロット内の先頭に位置する主信号の変調シンボル領域へ先頭の変調スロットから順に割り当てる。これにより、フレーム同期に用いる既知パターンを24シンボルから160シンボル(=24+136シンボル)に増加することが可能であり、超低受信C/Nの環境下においてもフレーム同期を確立することが可能となる。2つ目のLDPCブロック(スロット#2)以降のPBシンボルも変調信号フレームの途中に配置されるが、PB_αとPB_βのようにパターンの異なるシンボルのため、フレームの疑似同期は生じない。フレーム同期は、フレーム同期信号又はスロット同期信号と、PB_αとを連接したパターンで行うため、フレームの途中で同期することはない。
【0073】
図15に示す処理では、変調信号フレーム構成部13は、最初のLDPCブロック(スロット#1)のPBによる既知パターン(PB_α)のPBシンボルを、変調信号フレームの先頭の変調スロット#1内の主信号の変調シンボル領域へ順に割り当てる。これにより、変調スロット#1内の既知パターンの変調シンボル数を増加させ、変調スロット#1の同期性能を向上することが可能となる。受信装置2では、変調スロット#1から受信処理を開始するため、変調信号フレームの先頭に位置する当該変調スロットの同期を向上することは、超低受信C/Nにおける受信処理において有効な手法である。2つ目のLDPCブロック(スロット#2)以降もPBによる既知パターン(PB_β)の変調シンボルが変調信号フレームの途中に配置されるが、PB_αとPB_βのようにパターンの異なるシンボルのため、フレームの疑似同期は生じない。フレーム同期は、フレーム同期信号又はスロット同期信号と、PB_αとを連接したパターンで行うため、フレームの途中で同期することはない。
【0074】
<第2の実施形態の具体例>
第2の実施形態の具体例として、超低受信C/N下において受信可能な衛星伝送システムについて示す。主信号の変調方式はπ/2シフトBPSKとし、PBにより低符号化率R
Low≒1/7を設計する場合について示す。また、誤り訂正符号は、ISDB-S3準拠の符号長448880ビットのLDPC符号とする。具体例1では、符号化率R=61/120の検査行列を用いてR
Low≒1/7の低符号化率を実現し、
図8に示したLDPCブロックを用いて、
図14で示したように各変調スロット#1~#120へPBを割り当てる手法を示す。具体例2では、符号化率R=41/120の検査行列を用いてR
Low≒1/7の低符号化率を実現し、
図10に示したLDPCブロックを用いて、
図15で示したように先頭の変調スロット#1へPBを割り当てる手法を示す。
【0075】
<<具体例1>>
図16に、変調信号フレーム構成部13の処理を示す。変調信号フレーム構成部13は、PBをπ/2シフトBPSK変調したPBシンボルを、変調信号フレームの各変調スロット内の先頭に位置する主信号の変調シンボル領域に配置する。このようにPBを配置するため、変調シンボルは136シンボル×120変調スロット=16320シンボルが必要となる。この16320シンボルは、スロット#1のPB(n_
PB=16320ビット)に対応する。このように主信号の変調シンボル領域の先頭のシンボル数とPBシンボル数を合わせることで、各変調スロット内の既知シンボルパターンを増やし、フレーム同期に活用し、同期性能を向上することが可能である。この手法により、各変調スロットの同期に活用できる既知シンボルパターンは、既存のフレーム同期信号24シンボルに加え、PBを変調したπ/2シフトBPSK信号136シンボルによる合計160シンボルとなる。
【0076】
受信装置2側の処理では、フレーム同期部24は、160シンボルの既知のシンボルパターンをフレーム同期処理に用いて、変調信号フレームの先頭を検出する。相関によるフレーム同期を行うため、既知のシンボルパターンを従来の24シンボルから160シンボルに拡張することで、既存のISDB-S3よりも同期性能を向上させることが可能となる。フレーム途中に配置されたPB_βによる既知のシンボルパターンは、PB_αとパターンが異なるため、フレーム途中での疑似同期を防止することができる。
【0077】
<<具体例2>>
図17に、変調信号フレーム構成部13の処理を示す。変調信号フレーム構成部13は、PBをπ/2シフトBPSK変調したPBシンボルを、変調信号フレームの先頭の変調スロット#1内の主信号の変調シンボル領域1から順に配置する。本具体例では、PB数のビット数n_
PB=8976ビットのため、変調スロット#1の主信号の変調シンボル領域1から66にPBシンボルを割り当てることが可能である。この手法により、変調信号フレームの同期に活用できる既知シンボルパターンは、既存のフレーム同期信号24シンボルに加え、PBを変調したπ/2シフトBPSK信号8976シンボルによる合計9000シンボルとなる。
【0078】
受信装置2側の処理では、フレーム同期部24は、9000シンボルの既知のシンボルパターンをフレーム同期処理に用いて、変調信号フレームの先頭を検出する。相関によるフレーム同期を行うため、既知のシンボルパターンを従来の24シンボルから9000シンボルに拡張することで、既存のISDB-S3よりも同期性能を向上させることが可能となる。フレーム途中に配置されたPB_βによる既知のシンボルパターンは、PB_αとパターンが異なるため、フレーム途中での疑似同期を防止することができる。
【0079】
このように、第2の実施形態においては、第1の実施形態における効果に加えて、さらにフレーム途中での疑似同期を防止することができるという効果を有する。
【0080】
<プログラム>
上述した送信装置1,1a及び受信装置2として機能させるために、それぞれプログラム命令を実行可能なコンピュータを用いることも可能である。ここで、コンピュータは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、ワークステーション、PC(Personal Computer)、電子ノートパッドなどであってもよい。プログラム命令は、必要なタスクを実行するためのプログラムコード、コードセグメントなどであってもよい。
【0081】
コンピュータは、プロセッサと、記憶部と、入力部と、出力部と、通信インターフェースとを備える。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、SoC(System on a Chip)などであり、同種又は異種の複数のプロセッサにより構成されてもよい。プロセッサは、記憶部からプログラムを読み出して実行することで、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。なお、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェアで実現することとしてもよい。入力部は、ユーザの入力操作を受け付けてユーザの操作に基づく情報を取得する入力インターフェースであり、ポインティングデバイス、キーボード、マウスなどである。出力部は、情報を出力する出力インターフェースであり、ディスプレイ、スピーカなどである。通信インターフェースは、外部の装置と通信するためのインターフェースであり、例えばLAN(Local Area Network)インターフェースである。
【0082】
プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。このような記録媒体を用いれば、プログラムをコンピュータにインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録された記録媒体は、非一過性(non-transitory)の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリなどであってもよい。また、このプログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0083】
例えば、送信装置1として機能させるためのプログラムは、ISDB-S3に規定される検査行列を用いて、符号化率がISDB-S3に規定されるLDPC符号化率よりも低いLDPC符号を生成できるように、情報ビットに所定のビットパターンのPBを付加するステップと、PBが付加された情報ビットを、ISDB-S3に規定される検査行列を用いて符号化し、符号化率がISDB-S3に規定されるLDPC符号化率よりも低いLDPC符号化信号を生成するステップと、LDPC符号化信号を変調し、主信号の変調シンボルを生成するステップと、主信号の変調シンボルに、フレーム同期信号、パイロット信号、及び制御信号を付加し、ISDB-S3に規定される変調信号フレームを構成するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0084】
例えば、受信装置2として機能させるためのプログラムは、フレーム同期信号、及びPBを変調したPBシンボルを用いて、変調信号フレームの先頭を検出し、フレーム同期を行うステップと、フレーム同期が行われた主信号の復調を行い、復調シンボルを生成するステップと、復調シンボル及びパイロット信号による基準点を用いて、LDPCブロック単位でLDPC復号に必要なLLRを算出するステップと、LLRに対して、PBに相当するLLRを、PBが0である場合には第1の所定値よりも大きい正の値に差し替え、PBが1である場合には第2の所定値よりも小さな負の値に差し替えるステップと、差し替えられたLLRを元に、ISDB-S3に規定される検査行列を用いて復号を行い、復号ビット列を生成するステップと、復号ビット列からPBを除去するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0085】
また、送信装置1,1a及び受信装置2は、それぞれ1つ又は複数の半導体チップにより構成されてもよく、該半導体チップは、送信装置1、受信装置2の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを実行するCPUを搭載してもよい。
【0086】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形又は変更が可能である。例えば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを統合したり、1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0087】
1,1a 送信装置
2 受信装置
11 主信号部
12 同期・制御信号生成部
13 変調信号フレーム構成部
21 周波数粗調部
22 マッチドフィルタ適用部
23 シンボル同期部
24 フレーム同期部
25 周波数微調部
26 復調部
27 同期・制御信号取得部
28 LDPC復号部
29 PB除去部
30 電力逆拡散部
31 BCH復号部
111 BCH符号化部
112 電力拡散部
113 PB付加部
114 LDPC符号化部
115 変調部
116 PBパターン指示部
281 LLR計算部
282 LLR差替部
283 LDPC復号部