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特開2024-162171電子部品加工フィルム及び電子部品加工方法
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  • 特開-電子部品加工フィルム及び電子部品加工方法 図1
  • 特開-電子部品加工フィルム及び電子部品加工方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162171
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】電子部品加工フィルム及び電子部品加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20241114BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20241114BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/78 W
C09J7/38
C09J133/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077471
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蛯名 直輝
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5F063
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA05
4J004CE01
4J004FA08
4J040DF001
4J040JA09
4J040JB09
4J040MA04
4J040NA20
5F063AA18
5F063DG03
5F063EE02
5F063EE05
5F063EE07
5F063EE22
5F063EE27
5F063EE43
5F063EE44
5F063EE73
(57)【要約】
【課題】延伸時のフィルム破れが抑制される電子部品加工フィルム、及びこの電子部品加工フィルムを用いた電子部品加工方法を提供する。
【解決手段】粘着層と基材層とを備え、下記(1)及び(2)の要件を満たす、電子部品加工フィルム。
(1)50%モジュラスが9MPa以下である
(2)引っ張り強さが22MPa以上である
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着層と基材層とを備え、下記(1)及び(2)の要件を満たす、電子部品加工フィルム。
(1)50%モジュラスが9MPa以下である
(2)引っ張り強さが22MPa以上である
【請求項2】
23℃下で延伸した際の延伸率が150%以上である、請求項1に記載の電子部品加工フィルム。
【請求項3】
前記粘着層はアクリル粘着剤を含む、請求項1に記載の電子部品加工フィルム。
【請求項4】
前記基材層はポリ塩化ビニルを含む、請求項1に記載の電子部品加工フィルム。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の電子部品加工フィルムの前記粘着層の上に、個片化された電子部品が配置された状態で前記電子部品加工フィルムを延伸する工程を含む、電子部品加工方法。
【請求項6】
前記電子部品加工フィルムを延伸する工程の後、前記電子部品加工フィルムの上で電子部品の加工を行う工程を含む、請求項5に記載の電子部品加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品加工フィルム及び電子部品加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップ、セラミックコンデンサ等の電子部品の製造方法において、延伸性を有するフィルムの上に配置したウエハを所望のサイズに個片化(ダイシング)し、次いで、フィルムを延伸してチップ間の距離を広げ、チップをピックアップする工程がある。
【0003】
近年、電子部品の加工技術の多様化が進み、個片化されたチップの電子部品としての加工を延伸したフィルムの上で行う技術が検討されている。このため、チップのピックアップを目的とする場合よりもチップ間の間隔を拡げることができるフィルムの開発が行われている。例えば、特許文献1には、フィルム上の個片化されたチップの間隔を100μm以下の距離から300μm以上の距離に拡げる工程を備える半導体装置の製造方法、及びこの方法に用いられるフィルムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/216621号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
個片化された電子部品が配置された状態のフィルムを延伸する際、必要な寸法まで延伸できずにフィルムが破けてしまう場合がある。電子部品加工の作業性及び生産性を考慮すると、延伸工程の間にフィルムが破けにくいことが望ましい。
【0006】
本開示の一実施態様は、延伸時のフィルム破れが抑制される電子部品加工フィルム、及びこの電子部品加工フィルムを用いた電子部品加工方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1>粘着層と基材層とを備え、下記(1)及び(2)の要件を満たす、電子部品加工フィルム。
(1)50%モジュラスが9MPa以下である
(2)引っ張り強さが22MPa以上である
<2>23℃下で延伸した際の延伸率が150%以上である、<1>に記載の電子部品加工フィルム。
<3>前記粘着層はアクリル粘着剤を含む、<1>に記載の電子部品加工フィルム。
<4>前記基材層はポリ塩化ビニルを含む、<1>に記載の電子部品加工フィルム。
<5><1>~<4>のいずれか1項に記載の電子部品加工フィルムの前記粘着層の上に、個片化された電子部品が配置された状態で前記電子部品加工フィルムを延伸する工程を含む、電子部品加工方法。
<6>前記電子部品加工フィルムを延伸する工程の後、前記電子部品加工フィルムの上で電子部品の加工を行う工程を含む、<5>に記載の電子部品加工方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施態様によれば、延伸時のフィルム破れが抑制される電子部品加工フィルム、及びこの電子部品加工フィルムを用いた電子部品加工方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】電子部品加工フィルムの構成の一例を概略的に示す断面図である。
図2】電子部品加工フィルムの引っ張り試験に使用する試験片の形状を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において、「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味する。
【0011】
<電子部品加工フィルム>
本開示の電子部品加工フィルムは、粘着層と基材層とを備え、下記(1)及び(2)の要件を満たす、電子部品加工フィルムである。
(1)50%モジュラスが9MPa以下である
(2)引っ張り強さが22MPa以上である
【0012】
本発明者らの検討の結果、上記の電子部品加工フィルムは、延伸時のフィルム破れが抑制され、十分な延伸率を確保できることがわかった。その理由は、例えば、下記のように考えられる。
【0013】
電子部品加工フィルムの50%モジュラスが9MPa以下であると、延伸時に電子部品加工フィルムが引き伸ばされやすい。その結果、電子部品加工フィルムにかかる負荷も減り、延伸時のフィルム破れが抑制されると考えられる。同様に、電子部品加工フィルムの引っ張り強さが22MPa以上であると、延伸時に容易に電子部品加工フィルムが破れるのが抑制されると考えられる。
【0014】
本開示においては、電子部品加工フィルムのMD方向及びTD方向における50%モジュラスがいずれも9MPa以下である場合に(1)の要件を満たすと判断する。
本開示においては、電子部品加工フィルムのMD方向及びTD方向における引っ張り強さがいずれも22MPa以上である場合に(2)の要件を満たすと判断する。
本開示において電子部品加工フィルムのMD方向及びTD方向は、電子部品加工フィルムに使用されている基材の製造時のMD方向(Machine Direction)及びTD方向(MD方向と直角をなす方向)を意味する。
【0015】
本開示において、電子部品加工フィルムの50%モジュラスは9MPa以下であればよく、8.8MPa以下であってもよい。電子部品加工フィルムの50%モジュラスの下限は特に限定されないが、延伸時の電子部品加工フィルムの引き伸ばしやすさの観点からは4MPa以上又は6MPa以上であってもよい。
【0016】
本開示において、電子部品加工フィルムの引っ張り強さは22MPa以上であればよく、24MPa以上又は25MPa以上であってもよい。電子部品加工フィルムの引っ張り強さの上限は特に限定されないが、延伸時のフィルム破れの抑制の観点からは30MPa以下又は29MPa以下であってもよい。
【0017】
本開示において、電子部品加工フィルムの50%モジュラス及び引っ張り強さの測定は、JIS K 7127に準拠した方法で実施する。具体的には、株式会社オリエンテック製テンシロン引っ張り試験機「RTA-100型」又はこれに類似した試験機であって、試験片の両端をつかむ治具を有するものを使用する。
【0018】
測定は、図2に示すような形状の試験片を作製し、この試験片の両端を試験機の治具でつかんで引っ張り試験を実施する。治具によるつかみ位置の間の距離は40mmとする。試験は、23±5℃の環境下、引張速度は500mm/分として行う。
【0019】
試験片の50%モジュラスは、試験前の試験片の厚さ(mm)及び幅(本試験では10mm)と、試験片が50%の倍率まで(本試験では40mmから60mmまで)伸びた際の最大荷重量(N)とから、下式より算出する。
【0020】
【数1】
【0021】
試験片の引っ張り強さは、試験前の試験片の厚さ(mm)及び幅(本試験では10mm)と、試験片が切断するまでの最大荷重量(N)とから、下式により算出する。
【0022】
【数2】
【0023】
電子部品加工フィルムの50%モジュラス及び引っ張り強さは、例えば、電子部品加工フィルムに含まれる基材層又は粘着層の厚み、基材層に含まれる成分(熱可塑性樹脂、可塑剤など)の種類及び量、粘着層に含まれる成分(高分子材料、ポリイソシアネート、可塑剤など)の種類及び量、基材層の製造条件(延伸倍率等)などを変更することにより調整することができる。
【0024】
図1は電子部品加工フィルムの構成の一例を概略的に示す断面図である。図1に示す電子部品加工フィルム40は、基材層10と、基材層10の主面上に設けられた粘着層30と、粘着層20の基材層10とは反対側の面を覆うセパレータ20と、を備える。
電子部品加工フィルムを平面視したときの形状は、特に制限されない。たとえば、電子部品を個片化する工程に一般的に用いられるフィルムのように円形であってもよい。
【0025】
電子部品加工フィルムの延伸率は特に制限されず、電子部品加工フィルムの用途等に応じて選択できる。電子部品の加工時に電子部品間の間隔を充分に確保する観点からは、電子部品加工フィルムの延伸率は高いほど好ましい。
電子部品加工フィルムの延伸率は、例えば、110%以上、130%以上、又は150%以上であってもよい。
【0026】
本開示において、電子部品加工フィルムの延伸率は、電子部品加工フィルムの中央部の寸法変化率に基づく。電子部品加工フィルムを延伸すると中央部付近のほうが周縁部よりも伸びにくい傾向にある。このため本開示では、電子部品加工フィルムの中央部における延伸率を測定している。
【0027】
後述する実施例の結果に示すように、本開示の電子部品加工フィルムは、常温下で延伸した際にもフィルム破れが効果的に抑制される。このため、延伸時に電子部品加工フィルムを加温するための設備を省略でき、製造コストを低減することができる。
本開示の電子部品加工フィルムは、常温下(例えば、23℃)で延伸した際の延伸率が110%以上、130%以上、又は150%以上であってもよい。
【0028】
(基材層)
電子部品加工フィルムの基材層の材質は、特に制限されない。良好な延伸性を得る観点からは、基材層は樹脂を含むことが好ましく、熱可塑性樹脂を含むことがより好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。延伸性の観点からは、ポリ塩化ビニルが好ましい。
【0029】
基材層に柔軟性を付与する観点から、基材層は可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤の種類は特に制限されず、粘着層に含まれている可塑剤から選択してもよい。基材の延伸性及び粘着層への移行性の観点からは、ポリエステル可塑剤が好ましい。
【0030】
基材層に含まれる可塑剤の含有量は、例えば、基材層に含まれる樹脂100質量部に対して10質量部~55質量部であってもよく、20質量部~50質量部であってもよく、25質量部~45質量部であってもよい。可塑剤の含有量を上記数値範囲とすることにより、電子部品加工フィルムの延伸性を向上させることができる。
【0031】
加工の際の視認性向上の観点から、基材層は着色剤を含んでいてもよい。着色剤としては、染料、顔料等が挙げられ、耐久性の観点からは顔料が好ましい。着色剤の色としては、黒以外の色であることが好ましく、青色であることがより好ましい。着色剤として具体的には、アルカリブルー、ジスアゾエロー、フタロシアニンブルー、紺青、群青、コバルト青等が挙げられる。
【0032】
着色剤が粒子状である場合、その最大粒子径が基材層の延伸時の厚みより小さいことが好ましい。基材層に含まれる着色剤の最大径が基材層の延伸時の厚みより小さいと、基材層を延伸した時の着色剤の基材層からの脱落が抑制され、電子部品加工装置のメンテナンスの点で有利である。例えば、着色剤の最大粒子径は25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。
本開示において着色剤の最大粒子径は、着色剤の粒子(好ましくは100個以上)の投影像から得られる個々の粒子の最大径(投影像の径が最長となる時の長さ)の最大値とする。
【0033】
基材層に含まれる着色剤の含有率は、例えば、基材層の固形分全体の0.1質量%~2.0質量%であることが好ましく、0.2質量%~1.5質量%であることがより好ましく、0.3質量%~1.0質量%であることがさらに好ましい。
【0034】
基材層の厚みは、十分な強度を確保する観点からは10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましい。 基材層の厚みは、十分な延伸性を確保する観点からは500μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることがさらに好ましい。
【0035】
必要に応じ、基材層の粘着層を塗布する反対側の面にはマット加工、帯電防止加工などが施されていてもよい。
【0036】
(粘着層)
粘着層は、例えば、樹脂等の高分子材料を含有する。
電子部品加工フィルムの延伸性等の特性の観点からは、粘着層に含まれる高分子材料は(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、天然ゴム、合成ゴム及び熱可塑性エラストマーからなる群より選択される1種以上を含むことが好ましい。
【0037】
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン-イソプレンブロック共重合体(SIS)等のスチレン系熱可塑性エラストマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)等の水添スチレン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0038】
(メタ)アクリル樹脂及びウレタン樹脂は、架橋剤で架橋されていてもよい。天然ゴム及び合成ゴムは、過酸化物、硫黄等で加硫されていてもよい。
【0039】
上記した中でも、電子部品加工フィルムの延伸性、及び延伸した状態での電子部品の脱落を抑制する観点から、粘着層は(メタ)アクリル樹脂を含むことが好ましく、ポリイソシアネートにより架橋される(メタ)アクリル樹脂を含むことがより好ましい。
【0040】
電子部品に対する粘着性を確保する観点から、(メタ)アクリル樹脂としては、ガラス転移温度が低い(例えば、-20℃以下)モノマーを共重合成分に含む共重合体(アクリル共重合体)が好ましい。ガラス転移温度が-20℃以下のモノマーとしては、n-ブチルアクリレート(-54℃)、エチルアクリレート(-22℃)、2-エチルヘキシルアクリレート(-70℃)等が挙げられる。モノマーの上記ガラス転移温度は、当該モノマーを用いて得られるホモポリマーの示差走査熱量測定(DSC)により測定される値である。
(メタ)アクリル樹脂は、ガラス転移温度が-20℃以下のモノマーをモノマー全体の50量%以上含むことが好ましい。
(メタ)アクリル樹脂は、ガラス転移温度が-20℃以下のモノマーと、アクリロニトリルとを共重合成分として含む共重合体であってもよい。
【0041】
(メタ)アクリル樹脂の架橋剤は、1分子中に2個以上の(メタ)アクリル樹脂と反応し得る官能基を有する化合物を意味し、具体的にはポリイソシアネート、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤等が挙げられる。
基材層との投錨性の確保のしやすさ、及び使用量による特性の制御しやすさの観点から、架橋剤としてはポリイソシアネートが好ましい。
【0042】
本開示においてポリイソシアネートとは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物を意味し、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、及び芳香族ポリイソシアネートが挙げられる。
【0043】
ポリイソシアネートとしては、多官能イソシアネート化合物(1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する化合物)が好ましい。多官能イソシアネート化合物としては、2官能イソシアネート化合物の三量体、2官能イソシアネート化合物の三量体を分子中に有する高分子化合物などが挙げられる。
【0044】
2官能イソシアネート化合物の三量体としては、2官能イソシアネート化合物のイソシアヌレート体、2官能イソシアネート化合物のアダクト体、2官能イソシアネート化合物のビウレット体等が挙げられる。
2官能イソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、イソホロンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、水素化4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物などが挙げられる。
ポリイソシアネートの中でも脂肪族ジイソシアネート化合物のアダクト体が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体がより好ましい。
【0045】
粘着層がポリイソシアネートで架橋された(メタ)アクリル樹脂を含む場合、(メタ)アクリル樹脂100質量部に対するポリイソシアネートの量は0.5質量部以上であることが好ましく、1.0質量部以上であることがより好ましく、2.0質量部以上であることがさらに好ましい。
ポリイソシアネートの含有量を上記数値範囲とすることにより、電子部品加工フィルムの延伸率を向上させることができる。
ポリイソシアネートの含有量の上限は、特に限定されるものはないが、例えば、(メタ)アクリル樹脂100質量部に対して4.0質量部以下とすることができる。
【0046】
粘着層は、可塑剤を含んでもよい。可塑剤の種類は特に制限されず、粘着剤の種類等に応じ選択できる。具体的には、アジピン酸ポリエステル等のポリエステル可塑剤、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)等のフタル酸エステル、テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)等のテレフタル酸エステル、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)等のアジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、リン酸エステル、クエン酸エステル、エポキシ化植物油等が挙げられる。
【0047】
上記可塑剤の中でもポリエステル可塑剤、テレフタル酸エステル及びフタル酸エステルが好ましく、生体及び環境への親和性の観点からは、ポリエステル可塑剤及びテレフタル酸エステルがより好ましい。粘着層に含まれる可塑剤は、1種のみでも2種以上であってもよい。
【0048】
粘着層が可塑剤を含む場合、高分子材料100質量部に対する可塑剤の含有量は0.1質量部以上であることが好ましく、1.0質量部以上であることがより好ましく、2.5質量部以上であることがさらに好ましい。
可塑剤の含有量は、高分子材料100質量部に対して50質量部以下であってもよく、40質量部以下であってもよく、30質量部以下であってもよく、20質量部以下であってもよい。
【0049】
必要に応じ、粘着層は界面活性剤、粘着付与剤、フィラー等を含んでもよい。
【0050】
電子部品に対する充分な粘着力を確保する観点からは、粘着層の厚みは1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。
経済性の観点からは、粘着層の厚みは100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。
【0051】
(セパレータ)
必要に応じ、粘着層の外表面(基材層に対向する側と反対側の面)にはセパレータを備えていてもよい。
【0052】
セパレータの材質は、特に制限されるものではないが、粘着層の塗工性及び形成される粘着層の平滑性の観点からは、樹脂フィルムの表面に離型処理を施したフィルムであることが好ましい。離型処理としては、離型材料を樹脂フィルム表面に塗布し、離型層を形成することなどが挙げられる。
【0053】
樹脂フィルムは、延伸フィルムであってもよく、無延伸フィルムであってもよい。電子部品加工フィルムの巻取り性及び加工性の観点からは、延伸フィルムであることが好ましい。
【0054】
樹脂フィルムを構成する樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ノルボルネン樹脂、ポリエーテルスルホン、セロファン、芳香族ポリアミド等が挙げられる。
【0055】
セパレータの厚みは、特に制限されないが、例えば10μm~300μmとすることができる。
【0056】
<電子部品加工方法>
本開示の電子部品加工方法は、上述した電子部品加工フィルムの上に個片化された電子部品が配置された状態で前記電子部品加工フィルムを延伸する工程(延伸工程)を含む。
【0057】
上記方法において、電子部品加工フィルムの上に配置された電子部品は、電子部品加工フィルムの上で個片化されたものであっても、電子部品加工フィルムの上に配置する前に個片化されたものであってもよい。
【0058】
電子部品加工フィルムの上に配置する前に電子部品が個片化されている場合、個片化された電子部品の電子部品加工フィルムへの配置は、例えば、別のフィルムの上で電子部品を個片化し、次いで、電子部品加工フィルムの粘着層を個片化された電子部品に貼り付けて、電子部品を電子部品加工フィルムに転写して行うことができる。
【0059】
延伸工程における電子部品加工フィルムの延伸率は特に制限されず、延伸後に行う加工の種類等に応じて選択できる。例えば、電子部品加工フィルムの延伸率が110%以上、130%以上、又は150%以上となるように延伸を行ってもよい。
【0060】
延伸工程後の隣接する電子部品間の距離(距離が一定でない場合は、距離の最小値)は特に制限されず、延伸後に行う加工の種類などに応じて選択できる。例えば、電子部品間の距離が100μm以上となるように行ってもよく、200μm以上となるように行ってもよく、300μm以上となるように行ってもよい。
【0061】
電子部品の加工時の作業性の観点からは、延伸工程後の電子部品間の距離のばらつきが小さいことが好ましい。例えば、延伸工程後の電子部品間の距離の最大値の最小値に対する比(最大値/最小値)に100を乗じて得られる値が300以下であることが好ましく、200以下であることがより好ましく、150以下であることが更に好ましい。
【0062】
必要に応じ、延伸工程の後、電子部品加工フィルムの上で電子部品の加工(封止処理、熱処理等)を行ってもよい。
【0063】
延伸工程及び必要に応じて行われる電子部品の加工を行った後、電子部品加工フィルムから電子部品をピックアップする。ピックアップの方法は特に制限されず、公知の手法で行うことができる。
ピックアップを行う前に、粘着層の粘着力を低下させる為の処理(紫外線照射、熱処理など)を行ってもよい。
【0064】
上記方法で使用される電子部品の種類は、特に制限されない。例えば、各種の半導体チップ、セラミックコンデンサなどが挙げられる。
【実施例0065】
以下、実施例を挙げて本開示の一実施形態について更に具体的に説明する。ただし、本開示は、これら実施例に限定されるものではない。
【0066】
(粘着層用組成物の調製)
下記に示す成分(質量部、固形分換算)を混合して、粘着層用組成物を調製した。
高分子成分:アクリル系粘着剤(株式会社トウペ、XE-2644、n-ブチルアクリレート80質量~90質量%とアクリロニトリル10質量%~20質量%との共重合体):100質量部
可塑剤:アジピン酸ポリエステル(株式会社ADEKA、アデカサイザーP-200):20質量部
ポリイソシアネート:ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体(旭化成株式会社、デュラネートE405-80T):2質量部
【0067】
(基材の準備)
下記表1に示す物性を持つ厚み120μmのポリ塩化ビニルフィルムを基材として準備した。基材の50%モジュラス及び引張強さは、電子部品加工フィルムの50%モジュラス及び引張強さと同様にして測定した。
【0068】
【表1】
【0069】
(電子部品加工フィルムの作製)
片面が離型処理された厚み38μmのPETフィルムの離型処理された側の面に、粘着層用組成物を、乾燥後の厚みが20μmとなるように塗工し、乾燥して粘着層を形成した。次いで、基材の片面に上記PETフィルムの粘着層側を室温(25℃)にて貼り合わせ、ゴムロールで加圧して粘着層を基材上に転写した。その後、PETフィルムを剥離して、基材層と粘着層とを備える電子部品加工フィルムを作製した。
【0070】
(延伸性の評価)
電子部品加工フィルムを直径400mmの円形に切断して試験片を作成し、突き上げ方式の延伸装置を用いて試験片を延伸した。
具体的には、大宮工業株式会社製の延伸装置「OEX-1200」又はこれに類似した突き上げ方式の延伸装置の円形のステージ(直径216mm)に、ステージの中央と試験片の中央が一致するように試験片を配置した。次いで、23℃の環境下で、ステージを上昇速度10mm/sで130mmの高さまで突き上げた。突き上げ前後の試験片の中央部の寸法変化率(%)を下記式により算出し、算出された値を延伸率(%)とした。
【0071】
試験片の中央部の寸法変化率とは、試験片の中央を中心とした直径がD(216mm)である円に相当する領域の寸法変化率を意味する。
試験片の中央部の寸法変化率は、試験片のMD方向及びTD方向においてそれぞれ得られた測定値の平均値とする。
【0072】
延伸率(%)=中央部の寸法変化率(%)=(D1/D2)×100
D1:延伸後の直径Dの寸法
D2:延伸前の直径Dの寸法
【0073】
試験片の総数を10個として上述した延伸を実施し、延伸時にフィルム破れが発生しなかった試験片の延伸率の平均値を求めた。結果を表2に示す。また、延伸時にフィルム破れが発生した試験片の数を表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
表1中の「ND」は、すべての試験片で延伸中にフィルム破れが発生したため延伸率が測定できなかったことを示す。
表1に示すように、(1)及び(2)を満たす実施例で作製した電子部品加工フィルムは延伸時のフィルム破れが抑制されていた。(2)を満たすが(1)を満たさない比較例1、比較例2で作製した電子部品加工フィルムは、10個中10個の試験片において延伸中に破れが発生した。(1)を満たすが(2)を満たさない比較例3で作製した電子部品加工フィルムは、10個中5個の試験片において延伸中に破れが発生した。
【符号の説明】
【0076】
40…電子部品加工フィルム、10…基材層、30…粘着層、20…セパレータ
図1
図2