(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162342
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】粉体分離装置
(51)【国際特許分類】
B03C 5/02 20060101AFI20241114BHJP
B24B 57/00 20060101ALI20241114BHJP
B24B 55/12 20060101ALI20241114BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20241114BHJP
B03C 5/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B03C5/02
B24B57/00
B24B55/12
B23Q11/00 U
B03C5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077743
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】佐野 寿幸
(72)【発明者】
【氏名】杉山 聡
【テーマコード(参考)】
3C011
3C047
4D054
【Fターム(参考)】
3C011BB34
3C047FF04
3C047GG17
4D054FA08
4D054FB02
4D054FB17
4D054FB18
(57)【要約】
【課題】清掃にかかるオペレータの負担を小さく抑えることができる粉体分離装置を提供する。
【解決手段】粉体分離装置は、液体を溜める液槽と、液体から分離された粉体を収容する容器と、液槽内の液体に接触した状態で第1電位が付与されることにより粉体が付着する第1電極板と、液槽内の液体に接触した状態で第1電位とは異なる第2電位が付与される第2電極板と、第1電極板に付着している粉体を第1電極板から削ぎ取って落下させるために用いられる削ぎ取り部材と、削ぎ取り部材により削ぎ取られ落下する粉体を受け止めて容器へと搬送する粉体搬送機構と、削ぎ取り部材により粉体が削ぎ取られて落下する際に経路から外れる方向に飛散する粉体の一部を受ける内側壁と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に混合された粉体を該液体から分離する際に用いられる粉体分離装置であって、
該液体を溜める液槽と、
該液体から分離された該粉体を収容する容器と、
該液槽内の該液体に接触した状態で第1電位が付与されることにより該粉体が付着する第1電極板と、
該液槽内の該液体に接触した状態で該第1電位とは異なる第2電位が付与される第2電極板と、
該液槽内の該液体に接触させるように該第1電極板を該液槽に挿入し又は該第1電極板を該液槽から抜き取る電極板搬送機構と、
該液槽から抜き取られた該第1電極板に付着している該粉体を該第1電極板から削ぎ取って落下させるために用いられる削ぎ取り部材と、
該削ぎ取り部材により削ぎ取られ落下する該粉体を受け止めて該容器へと搬送する粉体搬送機構と、
該削ぎ取り部材により削ぎ取られ該粉体搬送機構へと向かって落下する該粉体の落下の経路の外に配置される外側壁と、
該外側壁よりも該経路側に配置され、該削ぎ取り部材により該粉体が削ぎ取られて落下する際に該経路から外れる方向に飛散する該粉体の一部を受ける内側壁と、を含む粉体分離装置。
【請求項2】
該内側壁を変形させることにより該内側壁の該経路側の表面に付着した該粉体の一部を該粉体搬送機構へと落下させる内側壁変形機構を更に含む請求項1に記載の粉体分離装置。
【請求項3】
該内側壁は、樹脂によりフィルム状に構成される請求項2に記載の粉体分離装置。
【請求項4】
該内側壁変形機構は、振動発生器であり、該内側壁を振動させることにより該内側壁の該経路側の表面に付着した該粉体の一部を該粉体搬送機構へと落下させる請求項2に記載の粉体分離装置。
【請求項5】
該内側壁の該経路側の表面は、樹脂により構成される請求項4に記載の粉体分離装置。
【請求項6】
該粉体は、シリコン粉であり、該液体は、シリコンを含む被加工物を加工する際に発生する廃液であり、該第2電位は、該第1電位よりも低い請求項1から請求項5のいずれかに記載の粉体分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体に混合された粉体を液体から分離する際に用いられる粉体分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池に代表される蓄電池の更なる大容量化や充放電の高速化を実現するために、シリコン粉(微細な粉末状のシリコン)を用いて負極を形成する技術が注目されている。負極の材質にシリコンが適用されることで、一般的な炭素系の材質が適用される場合に比べて蓄電池の容量が高められ、更に、微細な粉末状の材料で負極が形成されることにより、蓄電池の充放電に要する時間が短縮される。
【0003】
シリコン粉を得るための技術として、シリコンウェーハ等の被加工物を加工する加工装置の廃液からシリコン粉を分離して回収するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、廃液が溜められた液槽内に一対の電極板を配置した上で、各電極板に対して異なる電位が付与される。これにより、負に帯電したシリコン粉が高電位側の電極板に吸着され、廃液から分離される。その後、電極板に吸着されたシリコン粉は、スクレーパ等で削ぎ落とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した技術に用いられる粉体分離装置では、例えば、電極板から削ぎ落とされたシリコン粉が搬送用のベルトの上に落下し、シリコン粉を溜めるための容器へと搬送される。一方で、電極板から削ぎ落とされたシリコン粉の一部は、ベルトの上に落下する際に周囲に飛散し、粉体分離装置を構成する壁の隙間のような清掃が難しい部分に付着してしまうことがあった。この場合には、粉体分離装置の清掃にかかるオペレータの負担が大きくなってしまう。
【0006】
よって、本発明の目的は、清掃にかかるオペレータの負担を小さく抑えることができる粉体分離装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によれば、液体に混合された粉体を該液体から分離する際に用いられる粉体分離装置であって、該液体を溜める液槽と、該液体から分離された該粉体を収容する容器と、該液槽内の該液体に接触した状態で第1電位が付与されることにより該粉体が付着する第1電極板と、該液槽内の該液体に接触した状態で該第1電位とは異なる第2電位が付与される第2電極板と、該液槽内の該液体に接触させるように該第1電極板を該液槽に挿入し又は該第1電極板を該液槽から抜き取る電極板搬送機構と、該液槽から抜き取られた該第1電極板に付着している該粉体を該第1電極板から削ぎ取って落下させるために用いられる削ぎ取り部材と、該削ぎ取り部材により削ぎ取られ落下する該粉体を受け止めて該容器へと搬送する粉体搬送機構と、該削ぎ取り部材により削ぎ取られ該粉体搬送機構へと向かって落下する該粉体の落下の経路の外に配置される外側壁と、該外側壁よりも該経路側に配置され、該削ぎ取り部材により該粉体が削ぎ取られて落下する際に該経路から外れる方向に飛散する該粉体の一部を受ける内側壁と、を含む粉体分離装置が提供される。
【0008】
好ましくは、該粉体分離装置は、該内側壁を変形させることにより該内側壁の該経路側の表面に付着した該粉体の一部を該粉体搬送機構へと落下させる内側壁変形機構を更に含む。好ましくは、該内側壁は、樹脂によりフィルム状に構成される。
【0009】
好ましくは、該内側壁変形機構は、振動発生器であり、該内側壁を振動させることにより該内側壁の該経路側の表面に付着した該粉体の一部を該粉体搬送機構へと落下させる。好ましくは、該内側壁の該経路側の表面は、樹脂により構成される。
【0010】
好ましくは、該粉体は、シリコン粉であり、該液体は、シリコンを含む被加工物を加工する際に発生する廃液であり、該第2電位は、該第1電位よりも低い。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一側面にかかる粉体分離装置は、第1電極板から削ぎ取られ粉体搬送機構に向かって落下する粉体の落下の経路の外に配置される外側壁に加えて、この粉体の経路から外れる方向に飛散する粉体の一部を受ける内側壁を含むので、粉体搬送機構に向かう経路から外れる方向に飛散した粉体は、内側壁で止められ、例えば、外側壁により形成される隙間のような清掃の難しい部分に付着し難くなる。したがって、本発明の一側面にかかる粉体分離装置によれば、清掃にかかるオペレータの負担を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、シリコン粉分離装置を含む加工システムを模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、シリコン粉分離装置の斜視図である。
【
図3】
図3は、廃液槽の一部を拡大した断面図である。
【
図4】
図4は、挿入口を通じて筐体の内部に陽極板が挿入された状態を示す断面図である。
【
図5】
図5は、陽極板の表面に各削ぎ取り部材の先端部が接触した状態を示す断面図である。
【
図6】
図6は、挿入口を通じて筐体の外部に陽極板が引き出された状態を示す断面図である。
【
図7】
図7は、削ぎ取り部材が初期位置に戻った状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照ながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、液体から粉体を分離する際に用いられる粉体分離装置の一例であるシリコン粉分離装置2を含む加工システム4を模式的に示す図である。なお、以下の説明で用いられるX軸(第1水平軸)、Y軸(第2水平軸)、及びZ軸(鉛直軸)は、互いに垂直である。
【0014】
図1に示されるように、加工システム4は、シリコンを含む板状又は柱状の被加工物11を研削加工できるように構成された研削装置(加工装置)6と、研削装置6から排出される廃液(液体)13を貯留する廃液タンク8と、を含んでいる。廃液タンク8の下流側には、この廃液タンク8から供給される廃液13に含まれるシリコン粉(粉体)15を廃液13から分離することのできる本実施形態のシリコン粉分離装置(粉体分離装置)2が接続されている。
【0015】
研削装置6は、シリコンウェーハに代表される板状(代表的には、円盤状)の、又はシリコンインゴットに代表される柱状(代表的には、円柱状)の被加工物11を保持できるように構成された1又は複数のチャックテーブル10を備える。このチャックテーブル10は、例えば、セラミックス等を用いて形成された円盤状の枠体12と、枠体12の上面側の凹部に固定された多孔質状の保持板(不図示)と、を含んでいる。
【0016】
保持板の上面は、例えば、円錐の側面に相当する形状に構成されており、枠体12の上面とともに、被加工物11を保持する保持面10aとなる。なお、円錐の頂点に相当する保持板の上面の中心と、保持板の上面の外縁と、の高さの差(高低差)は、10μm~30μm程度である。
【0017】
保持板の下面側は、枠体12の内部に設けられた流路(不図示)や、枠体12の外部に配置されたバルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。そのため、チャックテーブル10の保持面10aに被加工物11が載せられた状態でバルブを開き、この保持面10aを構成する保持板の上面に吸引源の負圧を作用させることで、被加工物11は、チャックテーブル10により吸引され、保持される。
【0018】
枠体12の下部には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。チャックテーブル10は、この回転駆動源が生じる力により、保持板の上面の中心(保持面10aの中心)が回転の中心となるように、Z軸に対して平行な回転軸、又はZ軸に対して僅かに傾いた回転軸の周りに回転する。
【0019】
また、枠体12は、上述した回転駆動源とともに、ボールねじ式又はターンテーブル回転式のチャックテーブル移動機構(不図示)に支持されている。チャックテーブル10及びチャックテーブル10に連結された回転駆動源は、このチャックテーブル移動機構が生じる力により、例えば、X軸及びY軸に対して概ね平行な平面(水平面)に沿って移動する。
【0020】
チャックテーブル10よりも上方の位置には、研削ユニット(加工ユニット)14が配置されている。研削ユニット14は、例えば、筒状のスピンドルハウジング16を含む。スピンドルハウジング16の内側の空間には、柱状のスピンドル18が収容されている。スピンドル18の下端部は、スピンドルハウジング16の下端から外部に露出しており、この露出したスピンドル18の下端部には、円盤状のマウント20が固定されている。
【0021】
マウント20の下面には、マウント20と概ね直径(外径)が等しい円環状の研削ホイール(砥石工具)22が装着されている。研削ホイール22は、ステンレス鋼又はアルミニウム等の金属を用いて形成された円環状のホイール基台24を含む。ホイール基台24の円環状の下面には、このホイール基台24の周の方向に沿って、複数の直方体状の研削砥石26が固定されている。各研削砥石26は、例えば、ダイヤモンド等でなる砥粒が樹脂等でなるボンド材に固定された構造を有している。
【0022】
スピンドル18の上端側には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。研削ホイール22は、この回転駆動源が生じる力により、Z軸に対して平行な回転軸、又はZ軸に対して僅かに傾いた回転軸の周りに回転する。スピンドルハウジング16は、例えば、ボールねじ式の研削ユニット移動機構(不図示)により支持されており、研削ユニット14は、この研削ユニット移動機構が生じる力により、Z軸に沿って移動する。
【0023】
研削ホイール22の傍及び研削ホイール22の内部には、被加工物11及び研削砥石26に対して研削加工用の液体(代表的には、水)を供給できるように構成されたノズル(不図示)が設けられている。被加工物11を研削加工する際には、このノズルから供給される研削加工用の液体により、研削砥石26が冷却され、また、被加工物11等から発生するシリコン粉15等が洗い流される。
【0024】
チャックテーブル10よりも下方の位置には、例えば、チャックテーブル10の移動の経路に沿う形状のウォーターケース28が配置されている。ウォーターケース28は、上端部が開口した槽であり、被加工物11の研削加工に使用された後にチャックテーブル10等から流れ落ちるシリコン粉15を含む廃液13を受け止める。
【0025】
ウォーターケース28の底部28aには、排液口28bが設けられている。シリコン粉15等が混合しているウォーターケース28内の液体(廃液)13は、この排液口28bから、排液口28bに一端が接続されている排液管30等を通じて、廃液タンク8へと送られる。
【0026】
上述した研削装置6の種々の構成要素には、必要に応じてコントローラ(不図示)が接続されている。コントローラは、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置を有する記憶装置と、を含むコンピュータにより構成され、被加工物11が適切に研削加工されるように、各構成要素の動作等を制御する。
【0027】
このコントローラの機能は、任意のプログラム(ソフトウェア)に従いコンピュータが動作することにより実現される。なお、コントローラの機能を実現するプログラムは、記憶装置に含まれることがあるハードディスクドライブ又はフラッシュメモリ等の補助記憶装置に記憶されてもよいし、コンピュータ等による読み取りが可能な光ディスク等の非一時的な記録媒体に記憶されてもよいし、コントローラとなるコンピュータの外部から通信回線等を介して供給されてもよい。
【0028】
廃液タンク8は、排液管30の他端側に接続されており、この排液管30等を通じて供給される廃液13を、内部の空間に貯留する。廃液タンク8には、送液用のポンプ32を介して送液管34の一端が接続されており、シリコン粉15が混合している廃液タンク8内の廃液13は、このポンプ32により、送液管34等を通じてシリコン粉分離装置2へと送られる。
【0029】
図2は、シリコン粉分離装置2の斜視図である。
図1及び
図2に示されるように、シリコン粉分離装置2は、上端部が開口した直方体状の廃液槽(液槽)36を含む。この廃液槽36は、例えば、樹脂等の絶縁体により構成される。廃液槽36の上端部には、送液管34の他端側が接続されており、廃液槽36は、送液管34等を通じて廃液タンク8から供給される廃液13を、その内側の空間に溜める。
【0030】
廃液槽36の上端部には、送液管34に加えて、オーバーフロー管(不図示)の一端が接続されている。オーバーフロー管の他端は、廃液タンク8に接続されており、廃液槽36の容量を超える廃液13が廃液槽36に供給されると、このオーバーフロー管を通じて廃液13の一部が廃液タンク8へと戻される。これにより、廃液槽36の上端部から廃液13が溢れ出ることが防止される。
【0031】
図3は、廃液槽36の一部を拡大した断面図である。
図3に示されるように、廃液槽36の内側の空間には、板状に構成された複数の陰極ユニット38が、Y軸に沿って概ね一定の間隔をあけて配置されている。各陰極ユニット38は、所定の電位(第2電位)が付与される一対の陰極板(第2電極板)40と、一対の陰極板40を支持する陰極筐体42と、を含む。
【0032】
陰極板40は、例えば、ステンレス鋼(SUS)等の材料で、網目を有する矩形の板状に構成される。ただし、陰極板40は、電気化学的に貴である金、白金、銀、銅等の材料で、網目を有する板状に構成されてもよい。陰極筐体42は、代表的には、矩形の開口を有する枠状に構成され、一対の陰極板40は、この陰極筐体42の開口を閉じるように、互いに間隔をあけて陰極筐体42に固定されている。各陰極ユニット38は、この陰極板40の外側の表面40aがY軸に沿った方向を向くように、廃液槽36内に配置される。
【0033】
各陰極ユニット38の内側には、一対の陰極板40と、陰極筐体42と、により囲まれる空間が形成されている。陰極筐体42の上部には、排液管44が接続されており、陰極板40の網目を通じて陰極ユニット38の内側の空間に流れ込んだ廃液13は、この排液管44を通じて、廃液槽36の外部に排出される。なお、各陰極ユニット38の下端部と廃液槽36の底部との間には、廃液13が流れる所定の隙間が設けられている。
【0034】
この廃液槽36には、複数の陰極ユニット38に対して複数の陽極板(第1電極板)46が交互に配置されるように陽極板46が挿入される複数の溝(不図示)が設けられている。複数の溝は、各溝に挿入される陽極板46と、これに隣接する陰極ユニット38(陰極板40)と、の距離が概ね一定になるように形成されている。また、廃液槽36は、各溝に挿入された状態の陽極板46の下端部と廃液槽36の底部との間に隙間が生じ、この隙間を廃液13が流れることができるように構成されている。
【0035】
各溝に挿入される陽極板46は、例えば、ステンレス鋼(SUS)等の材料で、矩形の平板状に構成される。ただし、陽極板46は、電気化学的に貴である金、白金、銀、銅等の材料で、矩形の平板状に構成されてもよい。この陽極板46は、互いに概ね平行な一対の表面46aがY軸に沿った方向を向くように、溝に挿入される。
【0036】
溝に挿入された状態で上に位置づけられる陽極板46の上端部には、互いに間隔をあけるように、一対の突起部46bが設けられている。具体的には、この一対の突起部46bは、陽極板46が溝に挿入された状態で、X軸に沿って互いに間隔をあけるように形成されている。各突起部46bには、各突起部46bを貫通する孔46cが設けられている。この孔46cは、陽極板46が溝に挿入された状態で、突起部46bをX軸に沿って貫通するように形成されている。
【0037】
各陽極板46には、陰極板40に付与される電位(第2電位)よりも高い電位(第1電位)が付与される。言い換えると、陰極板40には、陽極板46に付与される電位(第1電位)よりも低い電位(第2電位)が付与される。よって、廃液13中で負に帯電しているシリコン粉15は、陰極板40と陽極板46とにより発生する電界からの力を受けて、高電位側の陽極板46へと向かって移動し、陽極板46の表面46aに吸着される。
【0038】
なお、各陰極ユニット38の外部で負に帯電しているシリコン粉15は、低電位側の陰極板40から斥力を受け、この陰極板40に設けられている網目を通過できない。そのため、各陰極ユニット38の内側の空間には、シリコン粉15が混合していない廃液13のみが存在する。このようにしてシリコン粉15が除去された廃液13は、上述の通り、排液管44等を通じて、廃液槽36の外部に設けられた清水タンク48(
図2)へと送られる。ただし、陰極ユニット38の形状、構造等は、上述した態様に限定されない。
【0039】
図1及び
図2に示されるように、廃液槽36の上方には、陽極板46を搬送できるように構成された陽極板搬送機構(電極板搬送機構)50が設けられている。この陽極板搬送機構50は、移動機構52を含んでいる。移動機構52は、支持構造(不図示)に固定されY軸に沿って長い棒状の一対のY軸ガイドレール54を備えている。一対のY軸ガイドレール54のY軸に沿う方向の長さは、代表的には、廃液槽36のY軸に沿う方向の長さよりも長い。
【0040】
一対のY軸ガイドレール54の上面側には、X軸に沿って長い板状のY軸移動部材56がY軸に沿ってスライドできる態様で取り付けられている。Y軸移動部材56には、ボールねじを構成するナット部58が設けられている。ナット部58には、Y軸に沿って長いねじ軸60が回転できる態様で連結されている。ねじ軸60の一端部には、パルスモータ62が接続されている。パルスモータ62でねじ軸60を回転させることにより、Y軸移動部材56は、Y軸ガイドレール54(Y軸)に沿って移動する。
【0041】
Y軸移動部材56の下部には、Y軸に対して概ね垂直な表面を有する板状部材64が固定されている。この板状部材64の表面には、Z軸に沿って長い棒状の一対のZ軸ガイドレール66が固定されている。一対のZ軸ガイドレール66には、X軸に沿って長い板状のZ軸移動部材68がZ軸に沿ってスライドできる態様で取り付けられている。
【0042】
Z軸移動部材68には、ボールねじを構成するナット部(不図示)が設けられている。このナット部には、Z軸に沿って長いねじ軸70が回転できる態様で連結されている。ねじ軸70の一端部には、パルスモータ72が接続されている。パルスモータ72でねじ軸70を回転させることにより、Z軸移動部材68は、Z軸ガイドレール66(Z軸)に沿って移動する。
【0043】
Z軸移動部材68の下部には、陽極板46を保持するための保持機構74が配置されている。保持機構74は、X軸に沿って間隔をあけるようにZ軸移動部材68の下方に配置された一対のアクチュエータ76を含む。アクチュエータ76は、代表的には、エアシリンダであり、Z軸移動部材68の下部に固定された固定部76aと、固定部76aに供給されるエアの圧力等によりX軸に沿ってスライドできる可動部76bと、を含む。
【0044】
この一対のアクチュエータ76は、一方のアクチュエータ76の可動部76bと他方のアクチュエータ76の可動部76bとが互いに対面するように配置されており、各可動部76bは、互いの距離が近づく接近位置と、互いの距離が離れる離隔位置と、の間を移動する。また、各可動部76bの互いに対面する面側(つまり、内向きの面側)には、柱状のピン76cが設けられている。
【0045】
陽極板搬送機構50が陽極板46を搬送する際には、各可動部76bが離隔位置に位置づけられた状態で、陽極板46の一対の突起部46bを外側から一対のアクチュエータ76で挟み込むように、移動機構52によって保持機構74の位置が調整される。その後、一対のアクチュエータ76が各可動部76bを接近位置に移動させると、陽極板46の一対の突起部46bのそれぞれの孔46cにピン76cが挿入され、陽極板46は、保持機構74により保持される。
【0046】
陽極板46を保持した状態の保持機構74を移動機構52によりZ軸に沿って移動させれば、陽極板46を廃液槽36から抜き取ったり、陽極板46を廃液槽36に挿入して廃液槽36内に溜められている廃液13に接触させたりすることができる。なお、廃液槽36から抜き取られシリコン粉15が付着している陽極板46は、この陽極板搬送機構50によりY軸に沿って搬送される。
【0047】
Y軸に沿って廃液槽36と隣接する位置には、陽極板搬送機構50により廃液槽36から搬送された陽極板46に付着しているシリコン粉15を削ぎ取って回収するための回収機構78が配置されている。回収機構78は、例えば、廃液槽36と干渉しないように一対のY軸ガイドレール54の下方に配置された削ぎ取り機構80を含む。
【0048】
削ぎ取り機構80は、筐体82を備えている。筐体82の上端を構成する蓋板82aには、挿入口82bが設けられており、陽極板搬送機構50により廃液槽36から抜き取られた陽極板46は、挿入口82bを通じて筐体82の内側に挿入される。この筐体82の内側には、挿入口82bを通じて挿入される陽極板46をY軸に沿って挟むように、一対のアクチュエータ(内側壁変形機構)84が配置されている。
【0049】
アクチュエータ84は、代表的には、エアシリンダであり、筐体82の内側に固定される固定部84aと、固定部84aに供給されるエアの圧力等によりY軸に沿ってスライドできる可動部84bと、を含む。具体的には、各可動部76bは、互いの距離が近づく接近位置と、互いの距離が離れる離隔位置と、の間を移動する。
【0050】
各可動部84bには、例えば、X軸に沿う方向の長さが陽極板46に比べて十分に長い板状の削ぎ取り部材(スクレーパ)86が連結されている。一対のアクチュエータ84が各可動部76bを接近位置に移動させると、各削ぎ取り部材86の先端部は、挿入口82bに挿入された陽極板46と接触する位置に位置づけられる。つまり、各可動部76bが接近位置に移動すると、一対の削ぎ取り部材86によって陽極板46が挟み込まれる。
【0051】
例えば、陽極板46が挿入口82bに挿入され、各可動部76bが接近位置に位置づけられた状態で、陽極板搬送機構50により陽極板46を挿入口82bから引き抜くように上方に移動させると、陽極板46に付着している廃液13を含んだシリコン粉15は、一対の削ぎ取り部材86により削ぎ取られる。そして、陽極板46から削ぎ取られた廃液13を含むシリコン粉15は、重力により落下する。
【0052】
このシリコン粉15の落下の経路を囲むように、筐体82を構成する側壁が配置されている。この側壁は、陽極板46から削ぎ取られ直下に落ちるシリコン粉15と接触しないように、陽極板46から直下へと向かうシリコン粉15の落下の経路の外に配置されている。具体的には、側壁は、シリコン粉15の落下の経路をX軸に沿って挟むように配置される一対の第1側板82cと、シリコン粉15の落下の経路をY軸に沿って挟むように配置される一対の第2側板(外側壁)82dと、を含む。
【0053】
図1等に示されるように、各第2側板82dは、Z軸に対して概ね垂直でシリコン粉15の落下の経路から離れる方向に広がりを持つ上部と、Y軸に対して概ね垂直な方向に広がりを持つ下部と、上部と下部とを接続する曲面状の接続部と、を含む。削ぎ取り部材86は、この第2側板82dの上部と蓋板82aとの間の空間をY軸に沿って移動する。
【0054】
更に、本実施形態にかかる削ぎ取り機構80は、一対の第2側板82dよりも内側、すなわち、各第2側板82dよりもシリコン粉15の落下の経路側に配置される一対の内側壁88を含む。各内側壁88は、外部から力が加えられると容易に変形するように、例えば、樹脂等の材質でフィルム状に構成され、第2側板(外側壁)82dに沿って配置される。更に、この内側壁88の表面は、シリコン粉15が剥がれ易いように、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系の樹脂により構成されることが望ましい。
【0055】
各内側壁88の上端部は、アクチュエータ84の可動部84bに連結されている。一方で、各内側壁88の下端部は、筐体82等に固定されている。そのため、アクチュエータ84が可動部84bをY軸に沿ってスライドさせると、内側壁88の下端部の位置は変わらずに、内側壁88の上端部の位置がY軸に沿って変わる。そのため、樹脂等の材質でなるフィルム状の内側壁88は、可動部84bの移動に合わせて変形する。
【0056】
削ぎ取り機構80の下方には、シリコン粉15を乾燥させるための乾燥ボックス90が配置されている。乾燥ボックス90の内部には、削ぎ取り部材86により削ぎ取られ落下するシリコン粉15を受け止めて搬送するためのシリコン粉搬送機構(粉体搬送機構)92が配置されている。シリコン粉搬送機構92は、代表的には、ベルトコンベヤであり、X軸に対して概ね平行な回転軸を備えた2本のローラ94を含む。
【0057】
各ローラ94のX軸に沿う方向の長さは、例えば、陽極板46のX軸に沿う方向の長さに比べて十分に長い。また、少なくともいずれかのローラ94には、モータ等の回転駆動源が連結されている。更に、2本のローラ94は、Y軸に沿って互いに間隔をあけるように概ね同じ高さの位置に配置され、この2本のローラ94には、樹脂等の材質でなる無端のベルト96が巻きかけられている。
【0058】
ベルト96の表面は、シリコン粉15が剥がれ易いように、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系の樹脂で構成されることが望ましい。ただし、ベルト96の材質は、これに限定されない。ベルト96には、例えば、シリコン粉15を加熱するための熱が伝導し易い銅等の金属が用いられてもよい。ただし、この場合でも、ベルト96の表面は、シリコン粉15が剥がれ易いように、フッ素系の樹脂で構成されることが望ましい。
【0059】
2本のローラ94の間の位置には、ベルト96へと落下したシリコン粉15に熱を加えるためのヒータ98が配置されている。ヒータ98は、例えば、導体を電流が流れる際に発生するジュール熱を利用する抵抗加熱式のヒータであり、2本のローラ94に巻きかけられた状態のベルト96によって上下を挟まれる位置に配置される。ただし、ヒータ98の構造、配置等は、これらに限定されない。
【0060】
削ぎ取り部材86により陽極板46から削ぎ取られ、ベルト96上に落下したシリコン粉15は、ヒータ98の熱により乾燥させられる。例えば、シリコン粉15を乾燥させた後に、モータ等の回転駆動源がローラ94を回転させることで、ベルト96は2本のローラ94の周りを回転し、
図1に示されるように、ベルト96上のシリコン粉15がY軸に沿って搬送される。
【0061】
なお、本実施形態では、
図1に向かう方向に見てローラ94が時計回りに回転することにより、Y軸に沿うY1方向にシリコン粉15が搬送されている。シリコン粉搬送機構92のY1方向側の端部に到達したシリコン粉15は、シリコン粉搬送機構92から落下する。Y1方向側のローラ94の下方には、ベルト96からシリコン粉15を削ぎ取るためのスキージ100が、ベルト96に接触する態様で設けられている。
【0062】
シリコン粉搬送機構92のY1方向側の端部の下方には、上端が開口したシリコン粉回収ボックス(容器)102が配置されている。廃液13から分離され、シリコン粉搬送機構92により搬送されたシリコン粉15は、このシリコン粉回収ボックス102に収容される。なお、乾燥ボックス90の内部には、シリコン粉15の酸化等を防ぐために、窒素等の不活性ガスが供給されてもよい。
【0063】
一対のアクチュエータ84を含むシリコン粉分離装置2の種々の構成要素には、必要に応じてコントローラ(不図示)が接続されている。コントローラは、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置を有する記憶装置と、を含むコンピュータにより構成され、シリコン粉15が適切に回収されるように、各構成要素の動作等を制御する。
【0064】
このコントローラの機能は、任意のプログラム(ソフトウェア)に従いコンピュータが動作することにより実現される。なお、コントローラの機能を実現するプログラムは、記憶装置に含まれることがあるハードディスクドライブ又はフラッシュメモリ等の補助記憶装置に記憶されてもよいし、コンピュータ等による読み取りが可能な光ディスク等の非一時的な記録媒体に記憶されてもよいし、コントローラとなるコンピュータの外部から通信回線等を介して供給されてもよい。
【0065】
また、シリコン粉分離装置2に接続されるコントローラとして、研削装置6に接続されるコントローラが兼用されてもよい。すなわち、加工システム4の全体が、一つのコントローラによって制御されてもよい。
【0066】
次に、陽極板46からシリコン粉15が削ぎ取られる際の様子を詳細に説明する。陽極板46からシリコン粉15を削ぎ取る際には、まず、陽極板搬送機構50が、挿入口82bを通じて筐体82の内部に陽極板46を挿入する。
図4は、挿入口82bを通じて筐体82の内部に陽極板46が挿入された状態を示す断面図である。これにより、陽極板46は、一対の削ぎ取り部材86によって挟まれる位置に配置される。
【0067】
次に、一対のアクチュエータ84が各可動部76bを接近位置に移動させて、各削ぎ取り部材86の先端部を陽極板46の表面46aに接触させる。
図5は、陽極板46の表面46aに各削ぎ取り部材86の先端部が接触した状態を示す断面図である。なお、各可動部76bが接近位置に移動すると、Y軸に沿って内側壁88の上端部の位置が変わる。つまり、フィルム状の内側壁88が、この可動部84bの移動に合わせて変形する。
【0068】
その後、陽極板搬送機構50が、挿入口82bから筐体82の外部に陽極板46を引き出すように陽極板46を上昇させる。
図6は、挿入口82bを通じて筐体82の外部に陽極板46が引き出された状態を示す断面図である。各削ぎ取り部材86の先端部は、陽極板46の表面46aに接触しているので、この状態で陽極板搬送機構50が陽極板46を上昇させると、陽極板46の表面46aに付着していたシリコン粉15は、各削ぎ取り部材86により陽極板46から削ぎ落とされる。
【0069】
なお、陽極板46からシリコン粉15が削ぎ落とされ落下する際に、シリコン粉15の一部が、シリコン粉搬送機構92へと向かう落下の経路から外れる方向に飛散してしまうことがある。一方で、本実施形態にかかるシリコン粉分離装置2には、この経路から外れる方向に飛散するシリコン粉15の一部を受ける内側壁88が設けられているので、例えば、第2側板82dにより形成される隙間のような清掃の難しい部分にシリコン粉15が付着し難い。
【0070】
陽極板46からシリコン粉15が削ぎ落とされた後には、一対のアクチュエータ84が各可動部76bを離隔位置に移動させる。これにより、各削ぎ取り部材86は、初期位置に戻る。
図7は、削ぎ取り部材86が初期位置に戻った状態を示す断面図である。各可動部76bが離隔位置に移動すると、
図7に示されるように、内側壁88の上端部の位置がY軸に沿って変わる。つまり、フィルム状の内側壁88が、この可動部84bの移動に合わせて変形する。
【0071】
その結果、
図7に示されるように、内側壁88の落下の経路側の表面に付着したシリコン粉15の一部は、内側壁88から剥がれ、シリコン粉搬送機構92へと向かって落下する。本実施形態では、各可動部76bの接近位置と離隔位置との距離、つまり、各可動部76bの移動の距離(移動量)が、例えば、10mm~20mm、代表的には、15mmに設定される。これにより、内側壁88を十分に変形させて、内側壁88に付着したシリコン粉15を適切に落下させることができる。
【0072】
また、本実施形態では、接近位置と離隔位置との間を移動する各可動部76bの移動の速度が、10mm/s~20mm/s、代表的には、15mm/sに設定される。これにより、内側壁88を素早く変形させて、内側壁88に付着したシリコン粉15を適切に落下させることができる。
【0073】
その後、次の陽極板46からシリコン粉15を削ぎ取る際の各可動部76bの接近位置への移動によって、同様に、シリコン粉15は、内側壁88から剥がれ、シリコン粉搬送機構92へと向かって落下する。このように、本実施形態では、各可動部76bの離隔位置への移動と接近位置への移動とを1回ずつ行うことによって、つまり、各可動部76bを1往復させることによって、内側壁88に付着したシリコン粉15を適切に落下させることができる。
【0074】
ただし、各可動部76bの離隔位置への移動と接近位置への移動とは、何度か繰り返されてもよい。例えば、陽極板搬送機構50によって次の陽極板46が搬入されるまでの間に、離隔位置への移動と接近位置への移動とを2~10回、代表的には、5回ずつ繰り返すことにより、内側壁88からシリコン粉15をより確実に剥がして落下させることができる。
【0075】
以上のように、本実施形態にかかるシリコン粉分離装置(粉体分離装置)2は、陽極板(第1電極板)46から削ぎ取られシリコン粉搬送機構(粉体搬送機構)90に向かって落下するシリコン粉(粉体)15の落下の経路の外に配置される第2側板(外側壁)82dに加えて、このシリコン粉15の経路から外れる方向に飛散するシリコン粉15の一部を受ける内側壁88を含んでいる。
【0076】
そのため、シリコン粉搬送機構92に向かう経路から外れる方向に飛散したシリコン粉15は、内側壁88で止められ、例えば、第2側板82dにより形成される隙間のような清掃の難しい部分に付着し難い。したがって、本実施形態にかかるシリコン粉分離装置2によれば、清掃にかかるオペレータの負担を小さく抑えることができる。
【0077】
また、本実施形態にかかるシリコン粉分離装置2は、内側壁88を変形させることにより内側壁88の落下の経路側の表面に付着したシリコン粉15の一部をシリコン粉搬送機構92へと落下させるアクチュエータ(内側壁変形機構)84を更に含む。そのため、内側壁88に付着したシリコン粉15を積極的にシリコン粉搬送機構92へと落下させることができる。これにより、清掃にかかるオペレータの負担が更に小さくなり、シリコン粉15の回収にかかる効率も高められる。
【0078】
また、本実施形態にかかるシリコン粉分離装置2は、内側壁88が樹脂によりフィルム状に構成されている。そのため、内側壁88を積極的に変形させて、この内側壁88に付着したシリコン粉15を効率よくシリコン粉搬送機構92へと落下させることができる。これにより、清掃にかかるオペレータの負担が更に小さくなり、シリコン粉15の回収にかかる効率も高められる。
【0079】
なお、本発明は、上述した実施形態の記載に制限されず種々変更して実施され得る。例えば、上述した実施形態では、削ぎ取り部材86を移動させるためのアクチュエータ84が内側壁変形機構として機能しているが、超音波振動を発生させる超音波振動子等を含む振動発生器が内側壁変形機構として用いられてもよい。この場合には、振動発生器が内側壁88を振動させることにより、内側壁88に付着したシリコン粉15のシリコン粉搬送機構92への落下が促進される。
【0080】
なお、この場合には、内側壁88は、少なくとも、振動発生器が発生する振動を伝播させるように構成されていればよい。そのため、内側壁88は、例えば、第2側板82d等と同様の材質(例えば、金属)で、ある程度の厚みをもって構成されてもよい。一方で、この場合にも、内側壁88の経路側の表面は、樹脂で構成されることが望ましく、フッ素系の樹脂で構成されることがより望ましい。
【0081】
また、内側壁88は、必要に応じて取り外すことができる態様で筐体82やアクチュエータ84等に取り付けられていてもよい。この態様では、内側壁88の汚損が深刻な場合等に、必要に応じて内側壁88を交換することができる。よって、シリコン粉分離装置(粉体分離装置)2のメンテナンスが容易になる。
【0082】
また、上述した実施形態では、被加工物11を研削する研削装置6が加工装置として加工システム4に組み込まれているが、加工システム4に組み込まれる加工装置は、シリコン粉(粉体)15を発生させる切削装置等の他の加工装置でもよい。
【0083】
また、上述した実施形態では、加工装置の廃液からシリコン粉を分離する際に用いられるシリコン粉分離装置について説明されたが、本発明にかかる粉体分離装置は、任意の粉体を液体から分離する際にも用いられ得る。ただし、その場合には、液体中において帯電する粉体の極性等に応じて、各電極板に付与される電位の関係が変更される。
【0084】
その他、上述した実施形態や変形例にかかる構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて変更して実施され得る。
【符号の説明】
【0085】
2 :シリコン粉分離装置(粉体分離装置)
4 :加工システム
6 :研削装置
8 :廃液タンク
10 :チャックテーブル
10a :保持面
12 :枠体
14 :研削ユニット
16 :スピンドルハウジング
18 :スピンドル
20 :マウント
22 :研削ホイール
24 :ホイール基台
26 :研削砥石
28 :ウォーターケース
28a :底部
28b :排液口
30 :排液管
32 :ポンプ
34 :送液管
36 :廃液槽(液槽)
38 :陰極ユニット
40 :陰極板(第2電極板)
40a :表面
42 :陰極筐体
44 :排液管
46 :陽極板(第1電極板)
46a :表面
46b :突起部
46c :孔
48 :清水タンク
50 :陽極板搬送機構(電極板搬送機構)
52 :移動機構
54 :Y軸ガイドレール
56 :Y軸移動部材
58 :ナット部
60 :ねじ軸
62 :パルスモータ
64 :板状部材
66 :Z軸ガイドレール
68 :Z軸移動部材
70 :ねじ軸
72 :パルスモータ
74 :保持機構
76 :アクチュエータ
76a :固定部
76b :可動部
76c :ピン
78 :回収機構
80 :削ぎ取り機構
82 :筐体
82a :蓋板
82b :挿入口
82c :第1側板
82d :第2側板(外側壁)
84 :アクチュエータ(内側壁変形機構)
84a :固定部
84b :可動部
86 :削ぎ取り部材(スクレーパ)
88 :内側壁
90 :乾燥ボックス
92 :シリコン粉搬送機構(粉体搬送機構)
94 :ローラ
96 :ベルト
98 :ヒータ
100 :スキージ
102 :シリコン粉回収ボックス(容器)
11 :被加工物
13 :廃液(液体)
15 :シリコン粉(粉体)