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  • -硬化性フルオロシリコーンゴム組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162385
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】硬化性フルオロシリコーンゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20241114BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20241114BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20241114BHJP
   C08L 83/06 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K3/36
C08L83/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077833
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林田 修
(72)【発明者】
【氏名】荒木 正
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 貴文
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP04X
4J002CP06Y
4J002CP141
4J002DJ016
4J002FD016
4J002GF00
(57)【要約】
【課題】ジメチルシリコーンゴムとの界面の接着性に優れたフルオロシリコーンゴムを与えるフルオロシリコーンゴム組成物の提供。
【解決手段】
(A)1分子中に1個以上のフルオロアルキル基又はフルオロポリエーテル基、及び1分子中に1個以上の炭素数2~8のアルケニル基を有する、平均重合度1,000以上の生ゴム状オルガノポリシロキサン:100質量部
(B)BET比表面積が50m2/g以上である微粉末シリカ:10~60質量部
(C)メチルトリフルオロプロピルシロキサン単位及びメチルハイドロジェンシロキサン単位をそれぞれ1分子中に1個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1~30質量部
(D)重合度1~30のα,ω-オルガノポリシロキサンジオール:0.5~30質量部、及び
(E)有機過酸化物硬化剤:必要量
を含む硬化性フルオロシリコーンゴム組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に1個以上のフルオロアルキル基又はフルオロポリエーテル基、及び1分子中に1個以上の炭素数2~8のアルケニル基を有する、平均重合度1,000以上の生ゴム状オルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)BET比表面積が50m2/g以上である微粉末シリカ:10~60質量部、
(C)下記式(1)及び(2)
【化1】
で示されるシロキサン単位をそれぞれ1分子中に1個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1~30質量部、
(D)下記式(3)
【化2】
(式(3)中、R1はそれぞれ独立に、炭素数1~8のアルキル基及び炭素数6~10のアリール基から選ばれる基であり、pは1≦p≦30の数である。)で示されるα,ω-オルガノポリシロキサンジオール:0.5~30質量部、及び
(E)有機過酸化物硬化剤:必要量
を含む硬化性フルオロシリコーンゴム組成物。
【請求項2】
(A)成分が、式(4)~(6)のいずれかで表される生ゴム状オルガノポリシロキサンである請求項1に記載の硬化性フルオロシリコーンゴム組成物。
【化3】
(式(4)~(6)中、R2はそれぞれ独立に、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基であり、Rfはそれぞれ独立に、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基又は炭素数3~30のパーフルオロポリエーテル基であり、Xはそれぞれ独立に、2価の有機基であり、mはそれぞれ独立に、0~200の数であり、nはそれぞれ独立に、1,000~10,000の数であり、1,000≦m+n≦10,000である。ただし、式(6)中のR2のうち1個以上は炭素数2~8のアルケニル基である。)
【請求項3】
(C)成分が、下記式(15)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンである請求項1に記載の硬化性フルオロシリコーンゴム組成物。
【化4】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にジメチルシリコーンゴムとの接着に優れるフルオロシリコーンゴムを与えるフルオロシリコーンゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロシリコーンゴムは、耐熱性、耐寒性、耐油性、耐燃料油性、圧縮復元性等に優れており、自動車、航空機等の輸送機部品や石油海運機器部品として広く使用されている。自動車用、特にターボホース用材として使用される場合に、ジメチルシリコーンゴム組成物とフルオロシリコーンゴム組成物との2層構造で成型される事例がある。ターボホース内層側は、特に耐油性が要求されるためフルオロシリコーンゴムが選択され、一方ターボホース外層側はジメチルシリコーンゴムの持つ高反撥性、耐しごき性がフルオロシリコーンゴムよりも優れており、ホース材全体としてジメチルシリコーンゴムとフルオロシリコーンゴムの2層構造となる。しかしながら、両組成物の相溶性の違いにより、フルオロシリコーンゴム組成物とジメチルシリコーンゴム組成物とを積層して硬化しても界面での接着具合は非常に悪く、剥離しやすい。
【0003】
そこで、特許文献1では、25℃における粘度が2,000mPa・s以下である、分岐構造(T単位)を有するオルガノポリシロキサンを、フルオロシリコーンゴム組成物に添加することで、ジメチルシリコーンゴムとフルオロシリコーンゴム間の接着性を改善した発明が記載されている。しかし、特許文献1の発明では上記オルガノポリシロキサンを比較的大量に添加することが必要であるため、最終的にゴム自体が目的とする物理的強度や伸びを得られないことがある。
【0004】
特許文献2では、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有したフルオロシリコーンゴム組成物とジメチルシリコーンゴム組成物とを共加硫する発明が記載されているが、フルオロシリコーンゴム組成物とジメチルシリコーンゴム組成物との間の接着力は十分とは言えなかった。
【0005】
特許文献3では、フロオロシリコーンゴムとシリコーンゴムとの積層体の製造方法として、予めフルオロシリコーンゴムをヒドロシリル化反応で硬化させ、さらにその表面に、フッ素原子を含有しないオルガノポリシロキサン及び有機過酸化物を含むシリコーンゴム組成物を積層し、該シリコーンゴム組成物を硬化させる発明が記載されている。しかしこの方法では予めフルオロシリコーンゴムを硬化させなければならず工程が複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-328303号公報
【特許文献2】特開2010-126712号公報
【特許文献3】国際公開2020-022406号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は、ジメチルシリコーンゴム組成物とフルオロシリコーンゴム組成物とを積層して硬化した場合に、ジメチルシリコーンゴムとの界面の接着性に優れたフルオロシリコーンゴムを与えるフルオロシリコーンゴム組成物、並びに該フルオロシリコーンゴム組成物の硬化物からなるフルオロシリコーンゴムとジメチルシリコーンゴムとの積層体(積層構造物)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、トリフルオロプロピル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとフッ素原子を有さないα,ω-オルガノポリシロキサンジオールとをそれぞれ特定量フルオロシリコーンゴム組成物に添加することで、ジメチルシリコーンゴムとの界面の接着性に優れるフルオロシリコーンゴムが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
従って、本発明は下記フルオロシリコーンゴム組成物、及び該フルオロシリコーンゴム組成物の硬化物からなるフルオロシリコーンゴムとジメチルシリコーンゴムとの積層体を提供する。

[1]
(A)1分子中に1個以上のフルオロアルキル基又はフルオロポリエーテル基、及び1分子中に1個以上の炭素数2~8のアルケニル基を有する、平均重合度1,000以上の生ゴム状オルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)BET比表面積が50m2/g以上である微粉末シリカ:10~60質量部、
(C)下記式(1)及び(2)
【化1】
で示されるシロキサン単位をそれぞれ1分子中に1個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1~30質量部、
(D)下記式(3)
【化2】
(式(3)中、R1はそれぞれ独立に、炭素数1~8のアルキル基及び炭素数6~10のアリール基から選ばれる基であり、pは1≦p≦30の数である。)で示されるα,ω-オルガノポリシロキサンジオール:0.5~30質量部、及び
(E)有機過酸化物硬化剤:必要量
を含む硬化性フルオロシリコーンゴム組成物。

[2]
(A)成分が、式(4)~(6)のいずれかで表される生ゴム状オルガノポリシロキサンである[1]に記載の硬化性フルオロシリコーンゴム組成物。
【化3】
(式(4)~(6)中、R2はそれぞれ独立に、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基であり、Rfはそれぞれ独立に、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基又は炭素数3~30のパーフルオロポリエーテル基であり、Xはそれぞれ独立に、2価の有機基であり、mはそれぞれ独立に、0~200の数であり、nはそれぞれ独立に、1,000~10,000の数であり、ただし、1,000≦m+n≦10,000である。)

[3]
(C)成分が、下記式(15)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンである[1]又は[2]に記載の硬化性フルオロシリコーンゴム組成物。
【化4】

[4]
[1]~[3]のいずれか1項に記載の硬化性フルオロシリコーンゴム組成物から構成されるフルオロシリコーンゴム層、及び
ジメチルシリコーンゴム組成物から構成されるジメチルシリコーンゴム層
を有する積層体。
【発明の効果】
【0010】
本発明の硬化性フルオロシリコーンゴム組成物の硬化物は、プレス加硫した場合、更にスチーム加硫及び常圧熱気加硫のような成型時の圧力が低い場合においても、フルオロシリコーンとジメチルシリコーンゴムとの界面との接着に優れるため、自動車用、特にフルオロシリコーンゴムとジメチルシリコーンゴムとの2層構造で成型されるターボホース用材として好適に使用することができる。
また、本発明の硬化性フルオロシリコーンゴム組成物は、ジメチルシリコーンゴム組成物との相溶性が、通常のフルオロシリコーンゴム組成物よりも優れているため、オルガノシリコーンゴム組成物とのブレンドにも、層間剥離を発生することなく使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明におけるフルロフルオロシリコーンゴムとジメチルシリコーンゴムとの2層構造の積層体の接着力を測定する方法を図示した概念図である。図1(A)は接着力測定前の試験片の端面図であり、図1(B)は接着力測定時の様子を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、「ベースコンパウンド」とは、(A)成分、(B)成分及び(D)成分の混合物のことをいう。
【0013】
[(A)生ゴム状オルガノポリシロキサン]
本発明において、(A)成分は、組成物における主剤(ベースポリマー)であり、1分子中に1個以上のフルオロアルキル基又はフルオロポリエーテル基、及び1分子中に1個以上の炭素数2~8のアルケニル基を有する生ゴム状オルガノポリシロキサンである。なお、(A)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子を有さない点で、後記の(C)成分と相違する。
【0014】
(A)成分の生ゴム状オルガノポリシロキサンは、平均重合度1,000以上であり、特に平均重合度が1,000~100,000の範囲が好ましく、2,000~50,000の範囲がより好ましく、2,000~10,000の範囲が特に好ましい。平均重合度が1,000未満であると、本発明のシリコーンゴム組成物がミラブルゴムとしての性状を満たさなくなり、ロール混練性等が著しく悪化してしまうため好ましくない。なお、本発明において平均重合度は、下記条件で測定したGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)分析におけるポリスチレン換算の重量平均分子量から算出される重合度である。
【0015】
[測定条件]
・展開溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
・流量:1mL/min
・検出器:示差屈折率検出器(RI)
・カラム:TSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-H 4本((株)東ソー社製)
・カラム温度:25℃
・試料注入量:10μL(濃度0.1質量%のTHF溶液)
本発明において(A)成分は、高重合度(高粘度)であって、室温(25℃)において自己流動性のない非液状のオルガノポリシロキサン生ゴムであるのが好ましい。
【0016】
(A)成分は、全シロキサン単位数に対する、フルオロアルキル基又はフルオロポリエーテル基を有するシロキサン単位数の割合が、40%以上であるものが好ましく、45%以上であるものがより好ましい。該フルオロアルキル基又はフルオロポリエーテル基を有するシロキサン単位数の割合の上限は特に制限されなく100%以下であればよく、好ましくは100%未満、より好ましくは99.8%以下であり、98%以下であってもよい。
【0017】
(A)成分としては、下記式(4)~(6)のいずれかで表される生ゴム状オルガノポリシロキサンが好ましいものとして挙げられる。
【0018】
【化5】
【0019】
式(4)~(6)中、R2はそれぞれ独立に、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基であり、Rfはそれぞれ独立に、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基又は炭素数3~30のパーフルオロポリエーテル基であり、Xは2価の有機基であり、mは0~200の数であり、nは1,000~10,000の数であり、m+nは1,000~10,000である。ただし、式(6)中のR2のうち1個以上は炭素数2~8のアルケニル基である。
【0020】
2の炭素数1~8のアルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基があげられ、炭素数2~8のアルケニル基としてはビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等があげられる。R2は、なかでもアルキル基の場合はメチル基、アルケニル基の場合はビニル基が好ましい。
【0021】
Rfの炭素数1~10のパーフルオロアルキル基としては、下記式
k2k+1- (kは1~10の整数である)
が例示される。
また、Rfの炭素数3~30のパーフルオロポリエーテル基としては、下記式
【化6】
(s、tはそれぞれ1~9の整数である)
が例示される。
Xの2価の有機基の例としては、下記式で示される基が例示される。
【化7】
(*はRf基との結合箇所であり、**はケイ素原子との結合箇所である。)
【0022】
本発明の硬化性フルオロシリコーンゴム組成物中、(A)成分の含有量は50~90質量%であることが好ましく、60~90質量%であることがより好ましく、65~85質量%であることが更に好ましい。
【0023】
[(B)微粉末シリカ]
(B)成分の微粉末シリカは、機械的強度の優れた硬化性フルオロシリコーンゴム組成物を得るために必須とされる補強性充填剤である。この微粉末シリカはBET比表面積が50m2/g以上であることを特徴とし、好ましくは100~400m2/gである。この微粉末シリカの例としては、煙霧質シリカ(乾式シリカ)、焼成シリカ、沈殿シリカ(湿式シリカ)が例示される。また、これら微粉末シリカの表面をオルガノポリシロキサン、オルガノポリシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン等で疎水化処理してもよい。これらの微粉末シリカは単独でも2種類以上併用してもよい。
【0024】
この微粉末シリカの配合量は、(A)成分100質量部に対し10~60質量部であることを特徴とし、好ましくは20~50質量部である。該配合量が10質量部未満では少なすぎて十分な補強効果が得られず、60質量部より多いと加工性が悪くなり、また、得られるシリコーンゴムの物理特性が低下するので好ましくない。
【0025】
[(C)オルガノハイドロジェンポリシロキサン]
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、ジメチルシリコーン界面との接着性を発現させるために最も重要な成分である。本発明において、(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一般的な付加硬化型シリコーンゴム組成物に配合される架橋剤とは使用目的が異なるものである。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記式(1)及び(2)で示されるユニット(2官能性シロキサン単位)をそれぞれ1分子中に1個以上有し、好ましくはそれぞれ2個以上(例えば、2~100個)、より好ましくは3~50個有するものである。
【0026】
【化8】
【0027】
上記式(1)で示されるシロキサン単位(メチルトリフルオロプロピルシロキサン単位)はフルオロシリコーンとの親和性を高め、式(2)で示されるシロキサン単位(メチルハイドロジェンシロキサン単位)はジメチルシリコーンとの親和性を高めるのに作用する。従って(C)成分をフルオロシリコーン中に配合することにより、界面に優先的に上記式(2)で示されるシロキサン単位が存在するため、フルオロシリコーン界面においてジメチルシリコーンとの親和性が大きくなる。
一般的に、プレス加硫等、ある一定圧を成型時にかけられる成型方法では、界面が共加硫することで強密着となり、界面での剥離は起こりにくくなる。しかしながら、ホース材を成型するには、スチーム加硫及び常圧熱気加硫等の方が適しているため、(C)成分を配合する本発明の組成物はこの様な成型時の圧力が低い場合にも、(C)成分により界面での剥離を起こりにくくさせ、より効果的である。(C)成分は25℃における粘度が2,000mPa・s以下となるものが好ましい。(C)成分の該粘度が2,000mPa・s超だと、ベースコンパウンドに添加した場合の分散性が悪くなったり、表面に優先的に一方の官能基を有した部分が存在しなくなったりすることで、界面の接着性に効果を発現しにくくなる。
【0028】
上記式(1)で示されるメチルトリフルオロプロピルシロキサン単位の1分子中の割合(即ち、1分子中の全シロキサン単位数に対する式(1)で示されるメチルトリフルオロプロピルシロキサン単位数の比率、以下同様)は好ましくは1~90%、より好ましくは5~80%である。該比率が1%未満では接着性に効果が出にくくなるおそれがあり、また90%を超えても接着性が出にくくなるおそれがある。また上記式(2)で示されるハイドロジェンシロキサン単位の1分子中の比率は好ましくは1~90%、より好ましくは5~80%である。これも該比率が1%未満では接着性に効果が出にくくなるおそれがあり、また90%を超えても接着性が出にくくなるおそれがある。
【0029】
更に、接着性を向上させる目的で、(C)成分は、下記式(7)、(8)又は(9)の1官能性シロキサン単位(ビニルジメチルシロキシ単位、ジビニルメチルシロキシ単位又はトリビニルシロキシ単位)、あるいは下記式(10)の2官能性シロキサン単位(ビニルメチルシロキサン単位)を有していてもよい。
【0030】
【化9】
式(7)~(10)中のビニル基が、オルガノシリコーンゴム或いはフルオロシリコーンゴムの架橋の中に取り込まれることで、式(7)~(10)で示される基のいずれかを有する(C)成分を含む組成物の接着性はより向上する。
【0031】
(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、代表的には、分子鎖両末端が、トリメチルシロキシ基、ビニルジメチルシロキシ基、ジビニルメチルシロキシ基、トリビニルシロキシ基等のトリオルガノシロキシ基で封鎖され、2官能性シロキサン単位の繰返しから構成される主鎖部分が、式(1)で示されるメチルトリフルオロプロピルシロキサン単位と式(2)で示されるメチルハイドロジェンシロキサン単位との組合せ、あるいは、式(1)で示されるメチルトリフルオロプロピルシロキサン単位と式(2)で示されるメチルハイドロジェンシロキサン単位とビニルメチルシロキサン単位との組合せからなる、直鎖状のシロキサン共重合体が挙げられる。また、これらのシロキサン共重合体は、1分子中のケイ素原子数(又は重合度)が4~200個、好ましくは8~100個、より好ましくは20~50個のものであれば好適に使用できる。
(C)成分としては、下記式(15)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましいものとして挙げられる。
【化10】
式(15)中、R2はそれぞれ独立に、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基であり、xは1以上の数であり、yは1以上の数である。
式(15)中のR2の炭素数1~8のアルキル基としては、式(4)~(6)と同様、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基があげられる。
式(15)中のR2の炭素数2~8のアルケニル基としては、式(4)~(6)と同様、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等があげられる。R2は、なかでもアルキル基の場合はメチル基、アルケニル基の場合はビニル基が好ましい。
式(15)中のxは、1~50の数であることが好ましく、3~30の数であることが好ましい。式(15)中のyは、1~50の数であることが好ましく、3~30の数であることが好ましい。また、4≦x+y≦200であることが好ましく、8≦x+y≦100であることがより好ましく、20≦x+y≦50であることが更に好ましい。
【0032】
(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対し、0.1~30質量部であり、好ましくは0.5~20質量部であり、より好ましくは1.0~10質量部である。
【0033】
[(D)α,ω-オルガノポリシロキサンジオール]
(D)成分は下記式(3)
【化11】
(式中、R1はそれぞれ独立に、炭素数1~8のアルキル基及び炭素数6~10のアリール基から選ばれる基であり、pは1≦p≦30の数である。)
で示されるα,ω-オルガノポリシロキサンジオールである。
【0034】
ここで、R1としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、フェニル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基等などのアリール基が挙げられるが、中でもメチル基、フェニル基が好ましい。
【0035】
pは1≦p≦30の数であるが、1~25が好ましく、特に1~20が好ましい。pが30を超える数であるとジメチルシリコーンとの接着性を出すために、(D)成分を大量に添加する必要があり、フルオロシリコーンゴム本来の耐油性、耐燃料油性などを損なうことになる。
【0036】
また、(D)成分は、(A)成分のRf基のようなフッ素原子含有基(フルオロアルキル基)を有さないことが特徴であり、この(D)成分が(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンをジメチルシリコーンとの界面に移行させ、接着性を改善すると考えられる。
(D)成分の配合量は(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.5~30質量部であり、さらには1~20質量部が好ましい。(D)成分の配合量が、0.5質量部未満では本発明の目的であるジメチルシリコーンゴムとの接着力が発現せず、30質量部超ではフルオロシリコーンゴム本来の耐油性、耐燃料油性を損なうことになる。
【0037】
[(E)有機過酸化物硬化剤]
(E)成分の有機過酸化物硬化剤は、本発明の硬化性フルオロシリコーンゴム組成物を構成する他の成分と混合し、常法により硬化させることで硬化物を与える成分である。具体的には、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーベンゾエート、o-メチルベンゾイルパーオキサイド、p-メチルベンゾイルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)へキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)へキシン等が挙げられる。これらは単独でも2種類以上を組み合わせて用いてもよい。上記有機過酸化物硬化剤の配合量は、組成物を硬化するのに必要量であればよく、例えば、上記(A)、(B)、(C)及び(D)成分の合計100質量部に対して、0.1~5質量部とすることが好ましい。
【0038】
[その他の任意成分]
本発明の硬化性フルオロシリコーンゴム組成物には、必要に応じて、粉砕石英、珪藻土等の非補強性シリカ、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック、炭酸カルシウム等の充填剤、着色剤、耐熱向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導向上剤等の添加剤や離型剤、アルコキシシラン、ジフェニルシランジオール、カーボンファンクショナルシランを添加してもよい。
【0039】
更に、本発明ではアクリロキシ基、メタクリロキシ基、3-アミノプロピル基、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピル基、エポキシ基等接着に有効とされる官能基を持った公知のアルコキシシランを添加してもよい。
【0040】
[製造方法]
本発明の硬化性フルオロシリコーンゴム組成物は、上記した各成分を2本ロール、バンバリーミキサー、ドューミキサー(ニーダー)などのゴム混練り機を用いて均一に混合することにより得ることができる。本発明の硬化性フルオロシリコーンゴム組成物の製造方法としては、例えば、まず(A)成分、(B)成分及び(D)成分を混合してベースコンパウンドを調製し、次にこのベースコンパウンドに(C)成分を混合し、最後に(E)成分を混合する方法が好ましい方法としてあげられる。
【0041】
本発明の硬化性フルオロシリコーンゴム組成物の成型方法に特に制限はなく、圧縮成型、移送成型、射出成型、押出成型、カレンダー成型等の一般のゴム成型法に準じて所望の形状に成型でき、O-リング、ダイヤフラム、パッキン、ガスケット等のゴム成型品とすることができる。この場合、本発明の目的とする成型方法には、押出成型やカレンダー成型による、スチーム加硫、常圧熱気加硫のような加硫方法が適している。
また、必要に応じ、180~250℃で1~10時間程度二次加硫してもよい。
【0042】
[積層体]
本発明の硬化性フルオロシリコーンゴム組成物は、ジメチルシリコーンゴム組成物と積層して硬化した場合に、ジメチルシリコーンゴムと良好な接着性を有するフルオロシリコーンゴムを形成することができ、従って、フルオロシリコーンゴムとジメチルシリコーンゴムとの積層構造物(積層体)の形成に好適に用いられる。
すなわち、本発明の積層体は、本発明の硬化性フルオロシリコーンゴム組成物から構成されるフルオロシリコーンゴム層及びジメチルシリコーンゴム組成物から構成されるジメチルシリコーンゴム層を有する。
【0043】
ここで、ジメチルシリコーンゴム組成物としては、例えば、アルケニル基含有ジメチルポリシロキサンを主剤(ベースポリマー)とし、シリカ系無機質充填剤(補強性充填剤)及び有機過酸化物(硬化触媒)等を含有する有機過酸化物硬化型ジメチルシリコーンゴム組成物が挙げられるが、これに限定されない。
ジメチルシリコーンゴム組成物は、前記(C)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有していてもよい。
【0044】
また、フルオロシリコーンゴムとジメチルシリコーンゴムとの積層構造物(積層体)を製造する方法としては、例えば、フルオロシリコーンゴム組成物、ジメチルシリコーンゴム組成物をそれぞれカレンダーロールにてシート状に分出しし、次いでマンドレルに積層して巻きつけ、スチーム加硫あるいは常圧熱気加硫(HAV)する方法が挙げられる。また、別法として、成型用の型内に上記組成物を積層して仕込み(充填し)、これを圧縮成型することもできる。加硫条件は、スチーム加硫の場合、100~200℃で10分間~2時間、常圧熱気加硫(HAV)の場合、150~500℃で10秒間~1時間、圧縮成型の場合、100~200℃、圧力5.0~15.0MPaで1分間~1時間程度とすることができる。
【実施例0045】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0046】
(実施例1~2、比較例1~3)
まず、ベースコンパウンドを下記方法で作製した。
【0047】
[ベースコンパウンドA]
下記式(11)で示されるトリフルオロプロピルメチルポリシロキサンA-1を100質量部、乾式シリカA(日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジル200、BET比表面積200m2/g)40質量部、及び分散剤として下記式(12)で示されるジメチルポリシロキサンジオールD-1 7質量部を加えて均一に混練りし、150℃で4時間熱処理した後、2本ロールで釈解、可塑化し、ベースコンパウンドAを得た。

トリフルオロプロピルメチルポリシロキサン A-1
【化12】
(m及びnは、m+n=4,000、m/(m+n)=0.001~0.002を満たす数である。)

ジメチルポリシロキサンジオール D-1
【化13】
【0048】
[ベースコンパウンドB]
ベースコンパウンドAの調製において、分散剤として前記式(12)で示されるジメチルポリシロキサンジオールに代えて、下記式(13)で示されるジメチルポリシロキサンジオールD-2 10質量部を加えて均一に混練りし、150℃で4時間熱処理した後、2本ロールで釈解、可塑化し、ベースコンパウンドBを得た。

ジメチルポリシロキサンジオールD-2
【化14】
【0049】
[ベースコンパウンドC]
ベースコンパウンドAの調製において、分散剤として前記式(12)で示されるジメチルポリシロキサンジオールに代えて、下記式(14)で示されるトリフルオロプロピルメチルポリシロキサンジオールD-3 7質量部を加えて均一に混練りし、150℃で4時間熱処理した後、2本ロールで釈解、可塑化し、ベースコンパウンドCを得た。

トリフルオロプロピルメチルポリシロキサンジオールD-3
【化15】
【0050】
次に、上記ベースコンパウンドA、B及びCそれぞれに、下記式(15-1)に示すオルガノハイドロジェンシロキサンC-1を表2に示す量で二本ロールを用いて配合し、(A)~(D)成分を含む各混合物を得た。
オルガノハイドロジェンポリシロキサンC-1
【化16】

(A)~(D)成分を含む各混合物100質量部に、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)へキサン80質量%含有ペースト0.5質量部を2本ロールで配合して各硬化性フルオロシリコーンゴム組成物を調製した。
得られた各硬化性フルオロシリコーンゴム組成物について、下記の方法で初期物性及び接着性の試験をおこなった。
【0051】
初期物性:
得られた硬化性フルオロシリコーンゴム組成物を165℃で10分間の加圧成型を行った後、200℃で4時間ポストキュアーし、物性測定用の2mm厚のシートを作製した。測定方法はJIS K6249:2003に準じた。
【0052】
接着性試験:
まず、得られた硬化性フルオロシリコーンゴム組成物は、2本ロールにて1.0~1.2mm厚、25mm×175mmの短冊状に分出しした。(以下、「(短冊状の)フルオロシリコーンゴム」という。)

また、ジメチルシリコーンゴム組成物(KE-561-U、信越化学工業(株)製)100質量部に、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ターシャリーtert-ブチルパーオキシ)へキサン80%含有ペースト0.4質量部を2本ロールで配合して硬化性ジメチルシリコーンゴムを調製した。得られたジメチルシリコーンゴムは、2本ロールにて1.0~1.2mm厚、25mm×175mmの短冊状に分出しした。(以下、「(短冊状の)ジメチルシリコーンゴム」という。)

次に、0.2mm厚、25mm×30mmのポリテトラフルオロエチレン樹脂製シートを、短冊状のジメチルシリコーンゴムの短辺の一方に、端部を揃えて置いた。
更にその上から短冊状のジメチルシリコーンゴムに重なるように、短冊状のフルオロシリコーンゴムを置いた。これを表2に示した成型条件でプレス加硫を行い、フルオロシリコーンゴムとジメチルシリコーンゴムとの2層構造の積層体(試験片)を得た。この2層構造の積層体の端面図を図1(A)に示す。該積層体は、ジメチルシリコーンゴム1とフルオロシリコーンゴム2とを有し、ジメチルシリコーンゴム1及びフルオロシリコーンゴム2の短辺の一方の間に、ポリテトラフルオロエチレン樹脂製シート3が介在している。

次に、ポリテトラフルオロエチレン樹脂製シート3を積層体から剥がし、図1(B)に示すようにフルオロシリコーンゴム2を固定治具4で固定し、ジメチルシリコーンゴム1を50mm/minの定速で引っ張った時の強度を接着力とした。なお、図1(B)中の矢印は、ジメチルシリコーンゴム1を引っ張った方向を示すものである。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
接着力試験後の試験片の様子を観察した結果を、表2の剥離の様子の欄に示す。表2中、剥離の様子で、Aは全部凝集破壊、Bは一部凝集破壊、Cは界面剥離(接着性不良)を示す。剥離の様子がA又はBを接着性良好と評価し、剥離の様子がCを接着性不良と評価した。
【0056】
実施例及び比較例から、本発明の硬化性フルオロシリコーンゴム組成物は、同一成型条件で、ジメチルシリコーンゴム組成物と共加硫した場合に、本発明の(D)成分の代わりにトリフルオロプロピルメチルポリシロキサンジオールを用いた組成物、本発明の(C)成分及び(D)成分を含まない組成物並びに本発明の(C)成分を含まない組成物のいずれに対しても、ジメチルシリコーンゴムとの界面の接着力が優れるものであることがわかった。
【符号の説明】
【0057】
10 積層体
1 ジメチルシリコーンゴム
2 フルオロシリコーンゴム
3 ポリテトラフルオロエチレン樹脂製シート
4 固定治具
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-05-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に1個以上のフルオロアルキル基又はフルオロポリエーテル基、及び1分子中に1個以上の炭素数2~8のアルケニル基を有する、平均重合度1,000以上の生ゴム状オルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)BET比表面積が50m2/g以上である微粉末シリカ:10~60質量部、
(C)下記式(1)及び(2)
【化1】
で示されるシロキサン単位をそれぞれ1分子中に1個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1~30質量部、
(D)下記式(3)
【化2】
(式(3)中、R1はそれぞれ独立に、炭素数1~8のアルキル基及び炭素数6~10のアリール基から選ばれる基であり、pは1≦p≦30の数である。)で示されるα,ω-オルガノポリシロキサンジオール:0.5~30質量部、及び
(E)有機過酸化物硬化剤:必要量
を含む硬化性フルオロシリコーンゴム組成物。
【請求項2】
(A)成分が、式(4)~(6)のいずれかで表される生ゴム状オルガノポリシロキサンである請求項1に記載の硬化性フルオロシリコーンゴム組成物。
【化3】
(式(4)~(6)中、R2はそれぞれ独立に、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基であり、Rfはそれぞれ独立に、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基又は炭素数3~30のパーフルオロポリエーテル基であり、Xはそれぞれ独立に、2価の有機基であり、mはそれぞれ独立に、0~200の数であり、nはそれぞれ独立に、1,000~10,000の数であり、1,000≦m+n≦10,000である。ただし、式(6)中のR2のうち1個以上は炭素数2~8のアルケニル基である。)
【請求項3】
(C)成分が、下記式(15)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンである請求項1に記載の硬化性フルオロシリコーンゴム組成物。
【化4】
(式(15)中、R 2 はそれぞれ独立に、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基であり、xは1以上の数であり、yは1以上の数である。)
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
従って、本発明は下記フルオロシリコーンゴム組成物、及び該フルオロシリコーンゴム組成物の硬化物からなるフルオロシリコーンゴムとジメチルシリコーンゴムとの積層体を提供する。

[1]
(A)1分子中に1個以上のフルオロアルキル基又はフルオロポリエーテル基、及び1分子中に1個以上の炭素数2~8のアルケニル基を有する、平均重合度1,000以上の生ゴム状オルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)BET比表面積が50m2/g以上である微粉末シリカ:10~60質量部、
(C)下記式(1)及び(2)
【化1】
で示されるシロキサン単位をそれぞれ1分子中に1個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1~30質量部、
(D)下記式(3)
【化2】
(式(3)中、R1はそれぞれ独立に、炭素数1~8のアルキル基及び炭素数6~10のアリール基から選ばれる基であり、pは1≦p≦30の数である。)で示されるα,ω-オルガノポリシロキサンジオール:0.5~30質量部、及び
(E)有機過酸化物硬化剤:必要量
を含む硬化性フルオロシリコーンゴム組成物。

[2]
(A)成分が、式(4)~(6)のいずれかで表される生ゴム状オルガノポリシロキサンである[1]に記載の硬化性フルオロシリコーンゴム組成物。
【化3】
(式(4)~(6)中、R2はそれぞれ独立に、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基であり、Rfはそれぞれ独立に、炭素数1~10のパーフルオロアルキル基又は炭素数3~30のパーフルオロポリエーテル基であり、Xはそれぞれ独立に、2価の有機基であり、mはそれぞれ独立に、0~200の数であり、nはそれぞれ独立に、1,000~10,000の数であり、ただし、1,000≦m+n≦10,000である。)

[3]
(C)成分が、下記式(15)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンである[1]又は[2]に記載の硬化性フルオロシリコーンゴム組成物。
【化4】
(式(15)中、R 2 はそれぞれ独立に、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基であり、xは1以上の数であり、yは1以上の数である。)
[4]
[1]~[3]のいずれか1項に記載の硬化性フルオロシリコーンゴム組成物から構成されるフルオロシリコーンゴム層、及び
ジメチルシリコーンゴム組成物から構成されるジメチルシリコーンゴム層
を有する積層体。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
接着性試験:
まず、得られた硬化性フルオロシリコーンゴム組成物は、2本ロールにて1.0~1.2mm厚、25mm×175mmの短冊状に分出しした。(以下、「(短冊状の)フルオロシリコーンゴム」という。)

また、ジメチルシリコーンゴム組成物(KE-561-U、信越化学工業(株)製)100質量部に、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)へキサン80%含有ペースト0.4質量部を2本ロールで配合して硬化性ジメチルシリコーンゴムを調製した。得られたジメチルシリコーンゴムは、2本ロールにて1.0~1.2mm厚、25mm×175mmの短冊状に分出しした。(以下、「(短冊状の)ジメチルシリコーンゴム」という。)

次に、0.2mm厚、25mm×30mmのポリテトラフルオロエチレン樹脂製シートを、短冊状のジメチルシリコーンゴムの短辺の一方に、端部を揃えて置いた。
更にその上から短冊状のジメチルシリコーンゴムに重なるように、短冊状のフルオロシリコーンゴムを置いた。これを表2に示した成型条件でプレス加硫を行い、フルオロシリコーンゴムとジメチルシリコーンゴムとの2層構造の積層体(試験片)を得た。この2層構造の積層体の端面図を図1(A)に示す。該積層体は、ジメチルシリコーンゴム1とフルオロシリコーンゴム2とを有し、ジメチルシリコーンゴム1及びフルオロシリコーンゴム2の短辺の一方の間に、ポリテトラフルオロエチレン樹脂製シート3が介在している。

次に、ポリテトラフルオロエチレン樹脂製シート3を積層体から剥がし、図1(B)に示すようにフルオロシリコーンゴム2を固定治具4で固定し、ジメチルシリコーンゴム1を50mm/minの定速で引っ張った時の強度を接着力とした。なお、図1(B)中の矢印は、ジメチルシリコーンゴム1を引っ張った方向を示すものである。