(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162455
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】レーザ照射装置及び方法並びにレーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/046 20140101AFI20241114BHJP
【FI】
B23K26/046
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077969
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】金城 裕介
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD18
4E168AE01
4E168CA07
4E168CA15
4E168CB07
4E168CB13
4E168DA24
4E168DA43
4E168HA01
4E168JA12
4E168KA15
(57)【要約】
【課題】 ワークのレーザ照射面の検出結果にレーザ光の集光点を確実に追従させることが可能なレーザ照射装置及び方法を提供する。
【解決手段】 レーザ照射方法は、レーザ照射部(22)とともに主走査方向に移動可能に設けられ、レーザ照射部に対して副走査方向に先行する位置に設けられた測長部(24)から、照射ラインよりも副走査方向に先行する照射ラインである照射予定ラインに測距用レーザ光を集光させてワークのレーザ照射面の高さ位置を検出するステップと、測長部により検出したワークのレーザ照射面の高さ位置の検出結果から取得した照射予定ライン情報に基づいて、照射予定ラインを新たな照射予定ラインとしてレーザ照射部からレーザ光を照射する際に、レーザ照射部から照射するレーザ光の集光点の高さ位置を制御するステップとを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークのレーザ照射面において主走査方向に伸びる照射ラインにレーザ光を照射するレーザ照射部と、
前記レーザ照射部とともに主走査方向に移動可能に設けられ、前記レーザ照射部に対して副走査方向に先行する位置に設けられた測長部であって、前記照射ラインよりも前記副走査方向に先行する照射ラインである照射予定ラインに測距用レーザ光を集光させて前記ワークのレーザ照射面の高さ位置を検出する測長部と、
前記測長部により検出した前記ワークのレーザ照射面の高さ位置の検出結果から取得した照射予定ライン情報に基づいて、前記照射予定ラインを新たな照射予定ラインとして前記レーザ照射部から前記レーザ光を照射する際に、前記レーザ照射部から照射する前記レーザ光の集光点の高さ位置を制御する制御部と、
を備えるレーザ照射装置。
【請求項2】
前記照射ラインと前記照射予定ラインの間の間隔に応じて、前記レーザ照射部と前記測長部との間の前記副走査方向の間隔を調整するための移動軸を備える請求項1に記載のレーザ照射装置。
【請求項3】
前記レーザ照射部と前記測長部との間の前記副走査方向の間隔を調整するための移動軸を備え、
前記測長部により前記照射予定ラインの高さ位置を検出する際の主走査方向に沿う移動の向きが、前記照射予定ラインを新たな照射予定ラインとして前記レーザ照射部から前記レーザ光を照射する際の移動の向きと同じになるように、前記レーザ照射部と前記測長部との間の前記副走査方向の間隔を調整する、請求項1に記載のレーザ照射装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のレーザ照射装置を備え、
前記レーザ照射部は、前記ワークに加工用レーザ光を集光させて、前記照射ラインに沿ってレーザ加工を行う、レーザ加工装置。
【請求項5】
ワークのレーザ照射面において主走査方向に伸びる照射ラインにレーザ照射部からレーザ光を照射するステップと、
前記レーザ照射部とともに主走査方向に移動可能に設けられ、前記レーザ照射部に対して副走査方向に先行する位置に設けられた測長部から、前記照射ラインよりも前記副走査方向に先行する照射ラインである照射予定ラインに測距用レーザ光を集光させて前記ワークのレーザ照射面の高さ位置を検出するステップと、
前記測長部により検出した前記ワークのレーザ照射面の高さ位置の検出結果から取得した照射予定ライン情報に基づいて、前記照射予定ラインを新たな照射予定ラインとして前記レーザ照射部から前記レーザ光を照射する際に、前記レーザ照射部から照射する前記レーザ光の集光点の高さ位置を制御するステップと、
を備えるレーザ照射方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ照射装置及び方法並びにレーザ加工装置に係り、特にワーク(例えば、ウェーハ)に対してレーザ光を集光させてレーザ加工等を行う際のレーザ光の照射制御に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスの製造プロセスでは、半導体デバイス又は電子部品が形成されたウェーハを分割予定ラインに沿って切断することにより、ウェーハを個々のデバイスのチップに分割する。ウェーハを分割する方法としては、ウェーハの分割予定ラインに沿ってレーザ光を照射してウェーハを切断する方法(レーザ加工方法又はレーザダイシング方法)がある。
【0003】
このようなレーザ加工方法としては、例えば、ウェーハの内部にレーザ光を集光させてウェーハの内部に切断の起点となるレーザ加工領域を形成し、エキスパンド又はブレーキング等の割断プロセスによってウェーハを切断する方法(ステルスダイシング)がある。また、別の例として、レーザアブレーション加工によりウェーハを切断する方法(フルカット又はグルービング)がある。また、レーザアブレーション加工によりウェーハの表面の積層膜(Low-k膜)を除去した後に、レーザにより溝を形成して割断プロセスによって分割予定ラインでウェーハを切断するか、又は残りの部分をレーザによりフルカットする方法等がある。
【0004】
また、レーザダイシングとブレードダイシングとを組み合わせた方法もある。例えば、レーザアブレーション加工によりウェーハの表面の積層膜を除去した後に、ブレードダイサにより溝を形成して割断プロセスにより分割予定ラインでウェーハを切断するか、又は残りの部分をブレードによりフルカットする方法等がある。
【0005】
上記のようなレーザ加工を行う場合には、ウェーハにおいてレーザ光が照射される側の面(以下、レーザ照射面という。)の位置(高さ)を検出し、ウェーハのレーザ照射面の位置に応じてレーザ光の集光点の位置を制御する。このとき、ウェーハのレーザ照射面の位置の検出精度がチップの加工品質に影響を与える。特に、シリコンウェーハの内部にレーザ光を集光させる内部集光の場合、ウェーハのレーザ照射面の位置の検出結果に誤差があると、大気とシリコンとの間の屈折率差(シリコンの屈折率は大気の4倍程度)の影響によりレーザ光の集光点が劣化する場合がある。例えば、ウェーハのレーザ照射面の検出位置と実際のレーザ照射面の位置との間に誤差のためにレーザ光が入射して屈折する位置がずれてしまい、レーザ光の集光位置が高さ方向に拡がる場合がある。このような集光点の劣化を防止するためには、ウェーハのレーザ照射面の位置を正確に検出して、この検出結果に応じてレーザ光の集光点の位置を精密に制御する必要がある。
【0006】
特許文献1には、加工方向(X方向)において集光レンズユニットの両側に配置され、集光レンズユニットを介さずに加工対象物のレーザ光照射面の変位データを取得する別軸測距センサと、集光レンズユニットを介して変位データを取得する同軸測距センサとを備えるレーザ加工装置が開示されている。特許文献1によれば、加工対象物のレーザ光入射面の変位の検出結果に追従して加工用レーザ光の集光点を制御することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、レーザ加工の加工速度の高速化に伴い、ウェーハのレーザ照射面の位置の検出結果に追従して、リアルタイムで加工用レーザ光の集光点を制御することは困難になっている。例えば、特許文献1では、加工方向に先行する別軸測距センサ及び同軸測距センサにより変位データを取得しているが、タクトアップのために加工用レーザ光のスキャン速度を速くすると、変位データに応じて加工用レーザ光の集光点を制御する場合に遅れが生じる。
【0009】
図7は、加工用レーザ光と同軸の測距センサを用いて集光点の高さ制御を行った例を示すグラフである。
図7のグラフ(a)~(c)の横軸は加工用レーザ光のスキャン方向(X方向)の位置であり、縦軸は高さ(Z)である。図中の点線の曲線Da、Db及びDcは同軸の測距センサを用いて検出したウェーハのレーザ照射面の高さを示している。また、実線の曲線Ta、Tb及びTcはそれぞれウェーハのレーザ照射面の高さの検出結果Da、Db及びDcに加工用レーザ光の集光点を追従させた場合の波形を示している。
【0010】
図7の(a)に示すように、ウェーハのレーザ照射面の高さDaに対して、加工用レーザ光の集光点の追従波形Daに遅れが生じている。このような追従の遅れは、加工用レーザ光のスキャン速度の上昇に伴って拡大すると考えられる。
【0011】
図7の(b)に示すように、ウェーハのレーザ照射面の高さDbが周期的に変化する場合には、追従の遅れに起因して、ウェーハのレーザ照射面の高さDbと追従波形Tbとの間に位相のズレが生じる。この場合、追従の遅れにより、ウェーハのレーザ照射面の高さDbに対して追従波形Tbが逆位相になると、加工用レーザ光の集光点の劣化の程度がより大きくなる。
【0012】
上記のような追従の遅れを短縮するためには、例えば、ウェーハのレーザ照射面の検出と集光レンズの制御のための通信周期を短縮するか、又は集光レンズ制御用のアクチュエータの性能(例えば、応答速度)を向上させることが考えられる。しかしながら、通信周期の短縮及びアクチュエータの性能向上には限界がある。
【0013】
また、加工方向に先行する別軸測距センサ及び同軸測距センサを用いる場合、
図7の(c)に示すように、ウェーハのレーザ照射面に異常がある場合(例えば、異物の付着等により凹凸の変化の割合が大きい箇所がある場合)、その異常がある分割予定ラインの加工を実施するまで異常を検出することができない。このため、レーザ加工に無駄が生じ、レーザ加工の効率が低下してしまう。
【0014】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ウェーハのレーザ照射面の検出結果にレーザ光の集光点を確実に追従させることが可能なレーザ照射装置及び方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、レーザ加工の効率の低下を防止することが可能なレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係るレーザ照射装置は、ワークのレーザ照射面において主走査方向に伸びる照射ラインにレーザ光を照射するレーザ照射部と、レーザ照射部とともに主走査方向に移動可能に設けられ、レーザ照射部に対して副走査方向に先行する位置に設けられた測長部であって、照射ラインよりも副走査方向に先行する照射ラインである照射予定ラインに測距用レーザ光を集光させてワークのレーザ照射面の高さ位置を検出する測長部と、測長部により検出したワークのレーザ照射面の高さ位置の検出結果から取得した照射予定ライン情報に基づいて、照射予定ラインを新たな照射予定ラインとしてレーザ照射部からレーザ光を照射する際に、レーザ照射部から照射するレーザ光の集光点の高さ位置を制御する制御部とを備える。
【0016】
本発明の第2の態様に係るレーザ照射装置は、第1の態様において、照射ラインと照射予定ラインの間の間隔に応じて、レーザ照射部と測長部との間の副走査方向の間隔を調整するための移動軸を備える。
【0017】
本発明の第3の態様に係るレーザ照射装置は、第1の態様において、レーザ照射部と測長部との間の副走査方向の間隔を調整するための移動軸を備え、測長部により照射予定ラインの高さ位置を検出する際の主走査方向に沿う移動の向きが、照射予定ラインを新たな照射予定ラインとしてレーザ照射部からレーザ光を照射する際の移動の向きと同じになるように、レーザ照射部と測長部との間の副走査方向の間隔を調整する。
【0018】
本発明の第4の態様に係るレーザ加工装置は、第1から第3の態様のいずれかに係るレーザ照射装置を備え、レーザ照射部は、ワークに加工用レーザ光を集光させて、照射ラインに沿ってレーザ加工を行う。
【0019】
本発明の第5の態様に係るレーザ照射方法は、ワークのレーザ照射面において主走査方向に伸びる照射ラインにレーザ照射部からレーザ光を照射するステップと、レーザ照射部とともに主走査方向に移動可能に設けられ、レーザ照射部に対して副走査方向に先行する位置に設けられた測長部から、照射ラインよりも副走査方向に先行する照射ラインである照射予定ラインに測距用レーザ光を集光させてワークのレーザ照射面の高さ位置を検出するステップと、測長部により検出したワークのレーザ照射面の高さ位置の検出結果から取得した照射予定ライン情報に基づいて、照射予定ラインを新たな照射予定ラインとしてレーザ照射部からレーザ光を照射する際に、レーザ照射部から照射するレーザ光の集光点の高さ位置を制御するステップとを備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、照射ラインへのレーザ光の照射と、副走査方向に先行する照射ラインである照射予定ラインの変位検出とを並行して行うことにより、照射予定ライン情報を予め取得することができる。これにより、ワークのレーザ照射面の検出結果にレーザ光の集光点を確実に追従させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係るレーザ加工装置を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るレーザ加工装置の制御系を示すブロック図である。
【
図3】ウェーハのレーザ照射面の検出結果にレーザ光の集光点を確実に追従させた例(追従例1)を示すグラフである。
【
図4】ウェーハのレーザ照射面の検出結果にレーザ光の集光点を確実に追従させた例(追従例2)を示すグラフである。
【
図5】本発明の一実施形態に係るレーザ照射方法を示すシーケンス図である。
【
図6】本発明の変形例に係るレーザ加工装置を示す図である。
【
図7】加工用レーザ光と同軸の測距センサを用いて集光点の高さ制御を行った例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に従って本発明に係るレーザ照射装置及び方法並びにレーザ加工装置の実施の形態について説明する。
【0023】
以下の実施形態では、本発明に係るレーザ光の照射制御の適用例として、ウェーハの内部にレーザ光を集光(内部集光)させてウェーハの内部に切断の起点となるレーザ加工領域を形成するレーザ加工装置(ステルスダイシング)について説明するが、これに限定されない。本発明に係るレーザ光の照射制御は、レーザ照射面にレーザ光を集光させるレーザ加工装置(例えば、レーザアブレーション加工を行うレーザ加工装置)にも適用可能である。また、本発明に係るレーザ光の照射制御は、ウェーハの表面又は裏面を検出し、ウェーハの内部にレーザ光を集光させてレーザ加工領域から進展した亀裂の表面又は裏面からの位置を検出するための亀裂検出装置にも適用可能である。
【0024】
なお、ステルスダイシングの場合、ウェーハにおいてデバイスが形成されているデバイス面(表面)の反対側の裏面にレーザ光を照射する場合があるのに対し、レーザアブレーション加工の場合、デバイス面にレーザ光を照射する場合がある。このため、レーザ照射面は、ウェーハのデバイス面とその裏面のいずれの場合もある。
【0025】
[レーザ加工装置]
図1は、本発明の一実施形態に係るレーザ加工装置を示す図である。なお、以下の説明では、ステージSTがXY方向に対して平行かつZ方向に垂直な3次元直交座標系を用いる。
【0026】
本実施形態に係るレーザ加工装置1は、ステージSTに吸着保持されたウェーハWの内部に加工用レーザ光L
Mを集光(内部集光)させてウェーハWの内部に切断の起点となるレーザ加工領域を形成するレーザ加工を行うための装置である。
図1に示すように、ウェーハWのレーザ照射面は分割予定ラインL(i)によって格子状に区画されており、各区画の中にはデバイスが形成されている。なお、
図1では、図面の簡略化のため、X方向に沿って伸びる分割予定ラインL(i)のみを図示している。ウェーハWは、不図示の真空源(例えば、エジェクタ、ポンプ等)によりステージSTの表面に吸着保持される。
【0027】
ウェーハWは、分割予定ラインL(i)に沿ってレーザ加工領域が形成された後、エキスパンド又はブレーキング等の割断プロセスによって分割予定ラインL(i)で切断されて個々のチップが形成される。
【0028】
図1に示すように、レーザ加工装置1は、制御部10及び光学ユニット20を含んでいる。
【0029】
制御部10は、レーザ加工装置1の各部を統括制御する装置である。制御部10は、プロセッサ(例えば、CPU(Central Processing Unit)等)、メモリ(例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等)及びストレージ(例えば、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等)を含んでいる。
【0030】
制御部10は、後述するライン検出機能(異常判定、周波数フィルタリング又はゲイン設定)と、レーザ加工の加工制御機能(例えば、追従限界速度算出又は加工条件変更)を有する。
【0031】
図1に示すように、光学ユニット20は、レーザ加工部22、測長部24及び受光部26を含んでいる。
【0032】
レーザ加工部22は、加工用レーザ光LMをパルス発振するレーザ発振器と、レーザ発振器から出力された加工用レーザ光LMをウェーハWのレーザ照射面を介してウェーハWの内部の所定の深さ位置に集光させるための集光レンズ22Aを含むレーザ光学系を含んでいる。レーザ発振器としては、例えば、半導体レーザ励起Nd:YAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザ、又はNd:YVO4レーザ等を用いることができる。レーザ発振器は、ウェーハW(例えば、シリコンウェーハ)に対して吸収性を有する波長の加工用レーザ光LMを出力可能となっている。レーザ光学系は、ウェーハWのレーザ照射面の加工点における加工用レーザ光LMのスポット径を調整可能となっている。レーザ加工部22はレーザ照射部の一例である。
【0033】
制御部10は、レーザ加工部22を制御して加工用レーザ光LMをウェーハWの内部に集光させ、ステージSTを加工送り方向(主走査方向、X方向)に移動させることにより、分割予定ラインL(i)のレーザ加工を行う。そして、分割予定ラインL(i)のレーザ加工が終了すると、光学ユニット20を光学ユニット移動軸(Y1軸)に沿ってインデックス方向(副走査方向、Y方向)に移動させて分割予定ラインL(i+1)のレーザ加工を行う。レーザ加工を繰り返してY方向に並ぶ分割予定ラインL(i)のレーザ加工が終了すると、次に、ステージSTをZ軸周りに90°回転させて上記の制御を繰り返す。これにより、ウェーハWのレーザ照射面に格子状に配置された分割予定ラインL(i)に沿ってレーザ加工領域を形成することができる。
【0034】
測長部24は、ウェーハWのレーザ照射面までの距離を測定する測距センサを含んでいる。測長部24は、例えば、ウェーハWのレーザ照射面に測距用レーザ光LAを照射し、ウェーハWのレーザ照射面によって反射された測距用レーザ光LAの反射光を検出してウェーハWのレーザ照射面の変位(Z方向高さ)を検出する。なお、測長部24を用いた測距方式は特に限定されず、例えば、三角測距方式、レーザ共焦点方式、白色共焦点方式、分光干渉方式又は非点収差方式等を採用することができる。
【0035】
測長部24は、レーザ加工部22の集光レンズ22Aに対してY方向に先行する位置に配置されており、レーザ加工部22と一緒にX方向に走査される。これにより、分割予定ラインL(i)のレーザ加工と並行して、Y方向に先行する位置にある加工予定の分割予定ライン(以下、加工予定ラインという。)L(j)に沿うウェーハWのレーザ照射面の変位を検出することができる。本実施形態ではj=i+1として、分割予定ラインL(i)のレーザ加工と並行して、1本先の加工予定ラインL(i+1)の変位の検出を行うものとする。
【0036】
なお、本実施形態では、簡単のため、測長部24がレーザ加工部22とX方向位置(X座標)が同じであるとして説明するが、レーザ加工部22と測長部24のX方向位置を揃える必要はない。
【0037】
測長部24は、加工予定ラインL(j)に沿うウェーハWのレーザ照射面の変位の検出信号を制御部10に送信する。制御部10は、測長部24から受信した検出信号に基づいて、加工予定ラインL(j)に沿う位置ごとのウェーハWの変位を算出し、算出したウェーハWの変位を含む加工予定ライン情報を取得する。加工予定ライン情報は、制御部10のストレージに格納される。ここで、加工予定ライン情報は照射予定ライン情報の一例である。
【0038】
制御部10は、加工予定ラインL(j)を新たに加工対象としてレーザ加工を行う際に、この加工予定ライン情報をストレージから読み出して、加工用レーザ光LMの集光点のZ方向位置を調整する。具体的には、制御部10は、加工予定ライン情報に基づいて集光レンズ22AをZ方向に移動させる微動指令を出力し、加工用レーザ光LMの集光点のZ方向位置を調整する。このように、予め算出した加工予定ライン情報を用いることにより、ウェーハWのレーザ照射面の変位の検出に対する加工用レーザ光LMの集光点のZ位置調整の遅延をなくすことができる。ここで、分割予定ラインL(i)及び加工予定ラインL(j)は、それぞれ照射ライン及び照射予定ラインの一例である。また、制御部10、レーザ加工部22及び測長部24はレーザ照射装置の一例である。
【0039】
測長部24は、測長部移動軸(Y2軸)に沿ってY方向に移動可能となっており、レーザ加工部22と測長部24との間のY方向距離を変更可能となっている。ウェーハWの種類に応じて分割予定ラインL(i)の間隔が異なる場合があるが、本実施形態では、測長部移動軸(Y2軸)を備えたことにより、ウェーハWの分割予定ラインL(i)の間隔に応じてレーザ加工部22と測長部24との間の間隔を変更することができる。これにより、ウェーハWの種類に関わらず、分割予定ラインL(i)のレーザ加工と加工予定ラインL(j)の変位の検出とを並行して行うことが可能になる。
【0040】
なお、説明の簡略化のため、ウェーハWのレーザ照射面において分割予定ラインL(i)の間隔が均等であるものとして説明するが、分割予定ラインL(i)の間隔が不均等であっても、分割予定ラインL(i)の間隔に応じて測長部24をY2軸に沿って移動させれば、レーザ加工と変位検出とを並行して行うことが可能である。
【0041】
また、本実施形態では、測長部24を移動させるようにしたが、レーザ加工部22と測長部24が相対移動して両者のY方向距離を変更可能であればどちらが移動してもよい。
【0042】
受光部26は、加工用レーザ光LMと光路を一部共有する測距用レーザ光LBを用いて、ウェーハWの加工位置(加工用レーザ光LMの照射位置)におけるレーザ照射面までの距離を測定する測距センサを含んでいる。受光部26は、レーザ加工部22の集光レンズ22Aを介して、ウェーハWのレーザ照射面に測距用レーザ光LBを照射し、ウェーハWのレーザ照射面によって反射された測距用レーザ光LBの反射光を検出してウェーハWのレーザ照射面の変位を検出する。なお、受光部26を用いた測距方式は特に限定されず、例えば、非点収差方式等を採用することができる。
【0043】
受光部26は、ウェーハWの加工位置におけるレーザ照射面の変位の検出信号を制御部10に送信する。制御部10は、測長部24から受信した検出信号に基づいて、ウェーハWの加工位置におけるレーザ照射面の変位を算出し、算出したウェーハWの加工位置におけるレーザ照射面の変位を含む現在地情報を取得する。現在地情報は、制御部10のストレージに格納してもよい。なお、現在地情報を加工用レーザ光LMの集光点のZ位置調整等に使用しない場合には、受光部26を省略することも可能である。
【0044】
図2は、本発明の一実施形態に係るレーザ加工装置の制御系を示すブロック図である。
【0045】
図2に示すように、制御部10には、ユーザからの操作入力を受け付けるための入力部12(例えば、操作盤等)と、レーザ加工装置1の操作のためのGUI(Graphical User Interface)等を表示するディスプレイを含む出力部14とを含んでいる。制御部10は、レーザ加工装置1の光学ユニット20、Xθ駆動部50、Y1駆動部52、Y2駆動部54及びZ駆動部56を含む各部を制御する。
【0046】
Xθ駆動部50は、ステージSTを加工送り方向(主走査方向、X方向)及び回転方向(θ方向)に移動させる装置である。Xθ駆動部50は、ステージSTをX方向に移動させるための機構(例えば、ボールねじ機構及びモータを含む機構、又はガイド軸とスライダーとの間に気体軸受を設けるエアガイド機構等の往復直線運動のための機構)を含んでいる。また、Xθ駆動部50は、ステージSTをθ方向に回転させるための機構(モータ等)を含んでいる。
【0047】
Y1駆動部52は、光学ユニット20を光学ユニット移動軸(Y1軸)に沿ってインデックス方向(副走査方向、Y方向)に移動させるための機構(例えば、ボールねじ機構及びモータを含む機構、又はガイド軸とスライダーとの間に気体軸受を設けるエアガイド機構等の往復直線運動のための機構)を含んでいる。
【0048】
Y2駆動部54は、測長部24を測長部移動軸(Y2軸)に沿ってインデックス方向(副走査方向、Y方向)に移動させるための機構(例えば、ボールねじ機構及びモータを含む機構、又はガイド軸とスライダーとの間に気体軸受を設けるエアガイド機構等の往復直線運動のための機構)を含んでいる。
【0049】
Z駆動部56は、制御部10からの微動指令に応じて、レーザ加工部22の集光レンズ22AをZ方向に移動させるためのアクチュエータを含んでいる。
【0050】
なお、本実施形態では、ステージSTをXθ方向に移動可能としたが、光学ユニット20をXθ方向に移動可能としてもよいし、両者を移動可能としてもよい。また、光学ユニット20ではなく、ステージSTがY方向に移動してもよい。すなわち、光学ユニット20とステージSTとを相対移動可能であればよい。
【0051】
[追従例1]
図3は、ウェーハのレーザ照射面の検出結果にレーザ光の集光点を確実に追従させた例を示すグラフである。
図3のグラフの横軸は加工用レーザ光のスキャン方向(X方向)の位置であり、縦軸は高さ(Z)である。
【0052】
実施例(a1)のグラフに示す点線の曲線Da1は本実施形態に係る測長部24を用いて検出したウェーハWのレーザ照射面の高さを示している。実線の曲線Ta1はウェーハWのレーザ照射面の高さの検出結果(加工予定ライン情報)Da1に加工用レーザ光LMの集光点を追従させた場合の波形を示している。
【0053】
比較例(a)のグラフは、
図7の(a)と同様、同軸の測距センサを用いて検出したウェーハWのレーザ照射面の高さDaに加工用レーザ光の集光点を追従させた場合の波形Taを示している。
【0054】
実施例(a1)と比較例(a)とを比較すると、実施例(a1)では、レーザ加工に先立って取得した加工予定ライン情報Da1に対して、加工用レーザ光LMの集光点のZ方向高さ(追従波形Ta1)を追従させているので、比較例(a)のような遅延が生じない。したがって、ウェーハWのレーザ照射面の検出結果に加工用レーザ光LMの集光点の集光点を確実に追従させることができる。
【0055】
また、
図7の(c)のように、ウェーハのレーザ照射面に異常がある場合には、その異常がある分割予定ラインL(i)の加工を実施する前に、制御部10のライン検出機能により異常を検出することができる。そして、制御部10のディスプレイ又はスピーカ等を介してユーザに異常を報知(警報を出力)したり、異常の原因(例えば、付着した異物の除去)に関するガイドをユーザに提示したり、又はレーザ加工の中断を行うことができる。これにより、無駄なレーザ加工の実施を防止することができ、レーザ加工の効率の低下を防止することができる。
【0056】
[追従例2]
追従例1では、予め取得した加工予定ライン情報Da1を用いることにより、ウェーハWのレーザ照射面の変位に対する加工用レーザ光LMの集光点の調整の遅延をなくしたが、より具体的な加工制御を追加して実施することも可能である。
【0057】
図4は、ウェーハのレーザ照射面の検出結果にレーザ光の集光点を確実に追従させた例を示すグラフである。
図4のグラフの横軸は加工用レーザ光のスキャン方向(X方向)の位置であり、縦軸は高さ(Z)である。
【0058】
実施例(b1)~(b2)のグラフに示す点線の曲線Db1及びDb2はそれぞれ本実施形態に係る測長部24を用いて検出したウェーハWのレーザ照射面の高さを示している。実線の曲線Tb1及びTb2はそれぞれウェーハWのレーザ照射面の高さの検出結果(加工予定ライン情報)Db1及びDb2に加工用レーザ光LMの集光点を追従させた場合の波形を示している。
【0059】
比較例(b)のグラフは、
図7の(b)と同様、同軸の測距センサを用いて検出したウェーハWのレーザ照射面の高さDbに加工用レーザ光の集光点を追従させた場合の波形Tbを示している。
【0060】
実施例(b1)では、
図3の追従例1と同様、レーザ加工に先立って取得した加工予定ライン情報Db1に対して、加工用レーザ光L
Mの集光点のZ方向高さ(追従波形Tb1)を追従させているので、比較例(b)のような遅延が生じない。したがって、加工予定ライン情報Db1と追従波形Tb1との間の位相ズレに起因する加工用レーザ光L
Mの集光点の劣化を防止することができる。
【0061】
さらに、制御部10は、追従波形Tb1に対してフィルタリング(周波数フィルタリング)又はゲインの設定を行い、追従波形Tb1においてステージ位置(X)に対する高さ(Z)の変化の割合(傾き)を調整することが可能となっている。
【0062】
追従波形Tb1の傾きが大きくなるほど、ウェーハWのレーザ照射面の変位に集光点を追従させるために集光レンズ22AのZ方向の位置調整の速度を速くする必要がある。また、集光レンズ22Aの位置調整の速度は、ステージSTのX方向の移動速度が速くなるほど早くする必要がある。しかしながら、Z駆動部56のアクチュエータの応答速度には限界があるため、追従波形Tb1の傾きとステージSTの移動速度(加工速度)との関係で、ウェーハWのレーザ照射面の変位に対して集光レンズ22Aを追従させられなくなる場合(以下、追従限界という。)が生じ得る。
【0063】
実施例(b1)では、ゲインの設定により、追従波形Tb1の傾きを小さくしている。これにより、ウェーハWのレーザ照射面の変位に対して集光レンズ22Aを確実に追従させることが可能になる。
【0064】
なお、実施例(b1)では、追従波形Tb1の傾きを小さくした結果、追従波形Tb1の振幅が加工予定ライン情報Db1よりも小さくなっている。すなわち、加工用レーザ光LMの集光点のZ方向高さとウェーハWのレーザ照射面との間に乖離が生じている。この乖離については、ゲインの設定により、許容可能な最小の乖離とすることが可能である。
【0065】
具体的には、追従波形Tb1の傾きを小さくしたことに起因する加工用レーザ光LMの集光点のZ方向高さとウェーハWのレーザ照射面との間の乖離を算出する。そして、この乖離に起因する加工用レーザ光LMの集光点の劣化の程度(例えば、集光点のZ方向の拡がり具合)を予測し、レーザ加工に必要な集光強度を得ることが可能な許容限度に収まるように、ゲインの設定を行う。ゲインの設定に当たっては、ウェーハWの材質、レーザ加工の種類(例えば、レーザアブレーション加工、レーザ加工領域の形成等)、加工用レーザ光LMのスポット径等を考慮してもよい。
【0066】
また、Z駆動部56のアクチュエータの性能等に応じてフィルタリング(周波数フィルタリング)を行って、追従制御時に発振の原因となる周波数を除去する(例えば、追従波形Tb1の周期を変更する)ことも可能である。
【0067】
上記の通り、実施例(b1)によれば、追従波形Tb1の傾きを調整することにより、ウェーハWのレーザ照射面の変位に対して集光レンズ22Aを確実に追従させることが可能になる。また、追従波形Tb1の傾きの調整に起因する加工用レーザ光LMの集光点のZ方向高さとウェーハWのレーザ照射面との間の乖離を求めて、加工用レーザ光LMの集光点の劣化の程度を評価してフィルタリング又はゲインの設定を行うことにより、乖離を許容限度に収めることができる。
【0068】
また、レーザ加工では、先行のレーザ加工により周期的なうねりが生じることがある。このようなうねりが生じた分割予定ラインL(i)に対して2回目のレーザ加工(2nd CH)を行う場合にも、追従波形Tb1の傾きを調整することにより、うねりに対して集光レンズ22Aを確実に追従させることができる。
【0069】
また、追従波形Tb1の傾きに起因する追従限界に対して、加工速度を調整することにより、集光レンズ22Aを確実に追従させるようにしてもよい。
【0070】
制御部10は、加工予定ライン情報Db1に基づいて、追従限界を超える傾きがあるか否かを判定する。そして、追従限界を超える傾きが含まれている場合に、制御部10は、Xθ駆動部50を制御して、追従波形Tb2において追従限界を超える傾きがなくなるように加工速度を自動変更(遅く)する。これにより、実施例(b2)に示すように、集光レンズ22Aを確実に追従させることができる。この場合、加工用レーザ光LMの集光点のZ方向高さとウェーハWのレーザ照射面との間に乖離が生じない。また、この場合、加工速度の調整により、発振の原因となる周波数を除去することも可能である。
【0071】
なお、加工速度は、1本の分割予定ラインL(i)の加工時に一定に保つ必要はないため、加工予定ライン情報Db1に基づいて追従限界を超える傾きがある領域のみ加工速度を遅くするようにしてもよい。
【0072】
また、制御部10は、加工速度の自動変更に伴い、加工用レーザ光LMの周波数を調整してパルスピッチを揃えるようにしてもよい。例えば、加工速度を遅くしている間に加工用レーザ光LMの周波数小さくして、分割予定ラインL(i)の単位長さ当たりの加工用レーザ光LMに割り当てられるパルス数が一様になるようにしてもよい。これにより、加工速度の自動変更を行った場合にも、レーザ加工の仕上がりを揃えることが可能になる。
【0073】
本実施形態によれば、加工予定ライン情報に集光レンズ22Aを追従させる際に、追従限界に応じて、フィルタリング及びゲインの設定並びに加工速度のうちの少なくとも1つを調整することにより、レーザ加工の条件を最適化することができる。また、加工速度を調整する場合には、加工速度の変化に応じて加工用レーザ光LMの周波数を調整してパルスピッチを揃えることにより、レーザ加工の仕上がりを揃えることができ、レーザ加工を安定的に行うことができる。
【0074】
[レーザ照射方法]
図5は、本発明の一実施形態に係るレーザ照射方法を示すシーケンス図である。レーザ加工を行う際には、まず、ウェーハWをステージSTに吸着保持し、分割予定ラインL(i)がX方向に平行になるようにステージSTの位置が調整される。
【0075】
上記のように、本実施形態では、測長部24を用いて、レーザ加工の対象の分割予定ラインL(i)の1本先の分割予定ラインL(i+1)の変位検出を行う。このため、1本目の分割予定ラインL(1)の変位検出を行う際にはレーザ加工は実施しない。また、最後の分割予定ラインL(n)のレーザ加工を行う際には測長部24による測定は実施しない。
【0076】
まず、測長部24を1本目の分割予定ラインL(1)の直上に移動させて、ステージSTをX方向に移動させながら、分割予定ラインL(1)のZ方向高さを検出する(S10)。分割予定ラインL(1)のX方向位置ごとのZ方向高さの検出信号は制御部10に送信される。
【0077】
制御部10は、分割予定ラインL(1)のZ方向高さの検出信号から、分割予定ラインL(1)のX方向位置ごとのZ方向高さを算出する。制御部10は、分割予定ラインL(1)のX方向位置ごとのZ方向高さの情報を含む加工予定ライン情報Lp(1)をストレージに格納する(S12)。
【0078】
次に、分割予定ラインL(i)(i=1,…,n-1)のレーザ加工を行う(
図5のループ)。すなわち、光学ユニット20をY1軸に沿って移動させて測長部24を分割予定ラインL(i+1)の直上に移動させる。そして、ステージSTをX方向に移動させながら、測長部24により分割予定ラインL(i+1)のZ方向高さを検出する(S20)。制御部10は、分割予定ラインL(i+1)のX方向位置ごとのZ方向高さを算出し、加工予定ライン情報Lp(i+1)としてストレージに格納する(S22)。
【0079】
加工予定ラインである分割予定ラインL(i+1)の変位検出と並行して分割予定ラインL(i)のレーザ加工を行う。すなわち、制御部10は、ステージSTのX方向に移動に合わせて、加工予定ライン情報Lp(i)に基づいて集光レンズ22AのZ方向位置を調整しながら(S24)、分割予定ラインL(i)のレーザ加工を行う(S26)。
【0080】
ここで、分割予定ラインL(i)の間隔が不均一である場合には、測長部24をY2軸に沿って移動させて、分割予定ラインL(i)とL(i+1)との間隔に合わせてレーザ加工部22と測長部24との間隔を調整すればよい。
【0081】
また、レーザ加工と並行して、レーザ加工部22と同軸の受光部26により分割予定ラインL(i)の変位検出を行う(S28)。制御部10は、受光部26からの分割予定ラインL(i)の検出信号に基づいて、分割予定ラインL(i)のX方向位置ごとのZ方向高さを算出し、現在地情報Lc(i)として取得する(S22)。
【0082】
制御部10は、現在地情報Lc(i)により加工用レーザ光LMの集光位置を監視する。なお、加工用レーザ光LMの集光状態についても監視するようにしてもよい。そして、制御部10は、集光位置における異常(例えば、変位の異常、加工予定ライン情報Lp(i)からの乖離)を検出した場合に、その旨の報知又はレーザ加工の中断を行うようにしてもよい。
【0083】
上記の工程を繰り返して
図5のループが終了すると、次に、分割予定ラインL(n)のレーザ加工を行う。すなわち、制御部10は、ステージSTのX方向に移動に合わせて、加工予定ライン情報Lp(n)に基づいて集光レンズ22AのZ方向位置を調整しながら(S30)、分割予定ラインL(n)のレーザ加工を行う(S32)。
【0084】
また、レーザ加工と並行して、レーザ加工部22と同軸の受光部26により分割予定ラインL(n)の変位検出を行う(S34)。制御部10は、受光部26からの分割予定ラインL(n)の検出信号に基づいて、分割予定ラインL(n)のX方向位置ごとのZ方向高さを算出し、現在地情報Lc(n)として取得する(S36)。
【0085】
分割予定ラインL(i)(i=1,…,n)のレーザ加工が終了すると、次に、ステージSTを90°回転させて上記の工程を繰り返す。これにより、ウェーハWの表面に格子状に配置された分割予定ラインL(i)に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域が形成される。
【0086】
本実施形態によれば、加工予定ライン情報を予め取得しておくことにより、レーザ加工の実施前に、加工予定ラインにおける形状又はレーザ照射面の異常を検出することができる。さらに、予め取得した加工予定ライン情報に応じて追従制御時にゲインを最適化することができ、発振を抑えることができる。また、ウェーハWのレーザ照射面の変位の周期性を事前に把握することができるので、追従制御時に発振の原因となる特定周波数を除去する等のフィルタリングを行うことが可能になる。
【0087】
[変形例]
図6は、変形例に係るレーザ加工装置を示す図である。
【0088】
上記の実施形態では、分割予定ラインL(i)のレーザ加工と並行して、1本先の加工予定ラインL(i+1)の変位検出を行ったが、変形例では、分割予定ラインL(i)のレーザ加工と並行して、2本先の加工予定ラインL(i+2)の変位検出を行う。
【0089】
例えば、分割予定ラインL(i)に対するレーザ加工を1回ずつ行い(1スキャン加工)、ステージSTを往復させながらレーザ加工を行う場合がある。この場合、分割予定ラインL(i)のレーザ加工と並行して2本先の加工予定ラインL(i+2)の変位検出を行うことにより、レーザ加工と同方向に測定を行うことができる。
【0090】
例えば、ステージSTをX方向に移動させる場合、移動の向きに応じてステージSTに生じる振動の状態が異なることが考えられる。変形例によれば、
図6に示すように、変位検出時とレーザ加工時でステージSTの移動の向きが一致するので、振動成分の補正を行うことが可能になる。
【0091】
なお、レーザ加工と同方向に測定を行うためには、偶数本先の加工予定ラインの測定を行えばよく、2本先に限定されない。
【0092】
また、1本又は2本先の場合に限定されず、レーザ加工と並行して変位検出を行う分割予定ラインは、レーザ加工部22と測長部24とのY方向間隔を調整することにより任意に設定することができる。例えば、分割予定ラインL(i)の間隔が狭くなるほど、レーザ加工部22と測長部24とのY方向間隔(ストロークサイズ)を短くする必要が生じる。このため、レーザ加工部22と測長部24のサイズを小さくする必要が生じることも考えられる。上記の実施形態では、Y2軸を備えたことにより、レーザ加工装置1の設計上の自由度を高める(レイアウトの制約を減らす)ことができる。
【0093】
また、特許文献1のように、別軸測距センサを集光レンズユニットの加工送り方向(X方向)に配置した場合、分割予定ラインごとにストロークサイズが拡大する場合がある。例えば、加工速度が高速になるほど、レーザ加工に先行して変位検出を行うためには処理時間を確保する必要があり、ストロークサイズを拡大する必要が生じる。これに対して、上記の実施形態及び変形例によれば、インデックス方向(Y方向)に1又は2ライン分の増加にとどまるので、レーザ加工装置1の設計上又は運用上有利である。
【0094】
なお、加工送り方向によっては、測長部24はレーザ加工部22(加工軸)を通過して(レーザ加工部22の前後に)移動可能としてもよい。例えば、レーザ加工の副走査を+Y側に向けて進行させる場合には、測長部24をレーザ加工部22の+Y側に移動させ、レーザ加工の副走査を-Y側に向けて進行させる場合には、測長部24をレーザ加工部22の-Y側に移動させてもよい。また、測長部24をレーザ加工部22の前後(±Y側)に1個ずつ(計2個)設置してもよい。
【符号の説明】
【0095】
1…レーザ加工装置、10…制御部、12…入力部、14…出力部、20…光学ユニット、22…レーザ加工部、24…測長部、26…受光部、Y1…光学ユニット移動軸、Y2…測長部移動軸、50…Xθ駆動部、52…Y1駆動部、54…Y2駆動部、56…Z駆動部