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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162540
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】コーティング剤及び硬化物
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/04 20060101AFI20241114BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20241114BHJP
【FI】
C09D133/04
C09D7/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078131
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 直也
(72)【発明者】
【氏名】老田 一生
(72)【発明者】
【氏名】福本 隆司
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG141
4J038GA03
4J038HA066
4J038JB01
4J038KA03
4J038KA06
4J038KA08
4J038MA10
4J038MA13
4J038MA14
4J038NA11
4J038NA14
4J038PA19
4J038PB08
4J038PC02
4J038PC08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】硬度及び付着性が高く、かつ透明性及び耐環境性に優れた硬化物が得られるコーティング剤及びその硬化物を提供する。
【解決手段】共重合体(X)、無機/有機顔料粒子から選ばれる少なくとも1種の粒子(Y)、硬化剤(Z)を含むコーティング剤。(X)は、(i)(I)を有し、(II)を有しない共重合体(A)と、(II)を有し、(I)を有しない共重合体(B)との混合物、及び、(ii)(I)及び(II)を有する共重合体(AB)、から選ばれる1種。


【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合体(X)、無機粒子及び有機顔料粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種の粒子(Y)、及び硬化剤(Z)を含むコーティング剤であって、
共重合体(X)は、
(i)下記一般式(I)で表される構造単位(1)を有しかつ下記一般式(II)で表される構造単位(2)を有しない共重合体(A)と、構造単位(2)を有しかつ構造単位(1)を有しない共重合体(B)との混合物、及び、
(ii)構造単位(1)及び構造単位(2)を有する共重合体(AB)、
からなる群から選択される少なくとも1種である、
コーティング剤。
【化1】

[一般式(I)中、Rは炭素数1~3のアルキル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す。nは2~7の任意の整数である。]
【化2】

[一般式(II)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。mは2~7の任意の整数である。]
【請求項2】
溶媒を更に含む、請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項3】
硬化剤(Z)がメラミン誘導体化合物である、請求項1又は2に記載のコーティング剤。
【請求項4】
前記一般式(I)において、R、R、及びRがメチル基であり、nが2である、請求項1~3のいずれか1項に記載のコーティング剤。
【請求項5】
共重合体(A)、共重合体(B)、及び共重合体(AB)のうち少なくとも一つがイオン性基を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のコーティング剤。
【請求項6】
粒子(Y)が金属粒子である、請求項1~5のいずれか1項に記載のコーティング剤。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のコーティング剤を硬化してなる、硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコーティング剤及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コーティング剤を塗布及び硬化させて得られる硬化膜に、機械物性、耐薬品性、高屈折率、帯電防止性、紫外線・赤外線遮断性、耐擦傷性等の各種の物性を付与する目的で、あるいは、顔料として、金属粒子をコーティング剤に分散させることが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、イオン性基を有し、所定の物性を備えた(メタ)アクリルポリマーからなる分散剤によって金属粒子が分散されてなる金属粒子分散液を含有するコーティング剤が記載されている。特許文献1の実施例には、(メタ)アクリルポリマーとして、第1級水酸基のみを有する2-ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、「HEMA」と略記する場合がある)に由来する構造単位からなる共重合体を用いたコーティング剤が記載されている。特許文献1においては、上記分散剤を用いることにより、金属粒子の分散性の向上を図ることができるとされている。
なお、コーティング剤を開示するものではないが、特許文献2には、粘着剤として用いられる組成物であって、第3級水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を含む(メタ)アクリル系共重合体を含む組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/094394号
【特許文献2】国際公開第2019/230407号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コーティング剤には、用途によって様々な性質が求められ、硬度及び付着性が高いことに加えて、透明性が高いことが求められる場合がある。また、湿熱耐性が高いことも求められる場合があり、この場合は、高温高湿環境下に置かれた場合にも透明性の低下が抑えられることが求められる。しかしながら、上述した特許文献1に記載されたコーティング剤を含め、従来のコーティング剤には、これらの性能を全て十分に満たすものではなく、改善の余地があった。特に、本発明者らの検討によれば、特許文献1の実施例のように、第1級水酸基のみを有する(メタ)アクリル系共重合体を用いた場合は、ヘイズが大きくなり、透明性を高めることができないことが判った。
【0006】
本発明は上記従来の課題を鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、硬度及び付着性が高く、かつ透明性及び耐環境性に優れた硬化物が得られるコーティング剤及びその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、「HEMA」と略記することがある)等の特定の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルに由来する第1級水酸基と、3-ヒドロキシ-3-メチルブチルメタクリレート(以下、「IPDMA」と略記することがある)等の特定の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルに由来する第3級水酸基とを、共重合体中に同時に存在させることで、上記課題を解決し得ることを見出し、当該知見に基づいて更に検討を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明は、下記[1]~[7]に関する。
[1]共重合体(X)、無機粒子及び有機顔料粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種の粒子(Y)、及び硬化剤(Z)を含むコーティング剤であって、
共重合体(X)は、
(i)下記一般式(I)で表される構造単位(1)を有しかつ下記一般式(II)で表される構造単位(2)を有しない共重合体(A)と、構造単位(2)を有しかつ構造単位(1)を有しない共重合体(B)との混合物、及び、
(ii)構造単位(1)及び構造単位(2)を有する共重合体(AB)、
からなる群から選択される少なくとも1種である、
コーティング剤。
【化1】

[一般式(I)中、Rは炭素数1~3のアルキル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す。nは2~7の任意の整数である。]
【化2】

[一般式(II)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。mは2~7の任意の整数である。]
[2]溶媒を更に含む、上記[1]に記載のコーティング剤。
[3]硬化剤(Z)がメラミン誘導体化合物である、上記[1]又は[2]に記載のコーティング剤。
[4]前記一般式(I)において、R、R、及びRがメチル基であり、nが2である、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載のコーティング剤。
[5]共重合体(A)、共重合体(B)、及び共重合体(AB)のうち少なくとも一つがイオン性基を有する、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載のコーティング剤。
[6]粒子(Y)が金属粒子である、上記[1]~[5]のいずれか一つに記載のコーティング剤。
[7]上記[1]~[6]のいずれか一つに記載のコーティング剤を硬化してなる、硬化物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、硬度及び付着性が高く、かつ透明性及び耐環境性に優れた硬化物が得られるコーティング剤及びその硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本明細書における記載事項を任意に選択した態様又は任意に組み合わせた態様も本発明に含まれる。
本明細書において、好ましいとする規定は任意に選択でき、好ましいとする規定同士の組み合わせはより好ましいといえる。
本明細書において、「XX~YY」との記載は、「XX以上YY以下」を意味する。
本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは30~60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10~60」とすることもできる。
【0011】
[コーティング剤]
本発明の実施形態に係るコーティング剤は、共重合体(X)、無機粒子及び有機顔料粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種の粒子(Y)、及び硬化剤(Z)を含むコーティング剤であって、共重合体(X)は、
(i)下記一般式(I)で表される構造単位(1)を有しかつ下記一般式(II)で表される構造単位(2)を有しない共重合体(A)と、構造単位(2)を有しかつ構造単位(1)を有しない共重合体(B)との混合物、及び、
(ii)構造単位(1)及び構造単位(2)を有する共重合体(AB)、からなる群から選択される少なくとも1種である。
【化3】

[一般式(I)中、Rは炭素数1~3のアルキル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す。nは2~7の任意の整数である。]
【化4】

[一般式(II)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。mは2~7の任意の整数である。]
【0012】
上記コーティング剤においては、共重合体(X)の一部がバインダー樹脂としての役割を果たすため、良好な塗工性を確保しやすく、良質な皮膜を得やすい。また、共重合体(X)の他の一部が分散剤の役割も果たすため、コーティング剤中において粒子(Y)を良好に分散させることができ、表面硬度等の各種物性を向上させることができる。
また、共重合体(X)中に、第3級水酸基又は第2級水酸基を有する構造単位(1)と、第1級水酸基を有する構造単位(2)とが存在することにより、硬化剤(Z)に対する共重合体(X)の反応性が適度なものになると考えられる。また、構造単位(1)は、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピルメタクリレート(以下、「HBMA」略記することがある)に由来する構造単位に比べて、第3級水酸基がポリマー主鎖から離れた位置に存在すること、及び、構造単位(1)は、4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-イル=メタクリレート(以下、「HGMA」と略記することがある)に由来する構造単位に含まれるような側鎖の分岐構造が存在しないことから、HBMAに由来する第3級水酸基を有する構造単位及びHGMAに由来する第3級水酸基を有する構造単位よりも硬化剤(Z)に対する反応性が高くなるものと考えられる。これらのことから、上記コーティング剤を硬化する際に気泡の発生や粒子(Y)の凝集が抑制され、結果的に、硬度や付着性を確保しつつ、透明性及び耐環境性に優れた硬化膜が形成されるものと推測される。
なお、本明細書において、「第3級水酸基」とは「第3級炭素原子に結合した水酸基」を意味し、「第2級水酸基」とは「第2級炭素原子に結合した水酸基」を意味し、「第1級水酸基」とは「第1級炭素原子に結合した水酸基」を意味する。
【0013】
上記コーティング剤は、塗工性の観点から、溶媒を更に含むことが好ましく、共重合体(X)が当該溶媒に溶解していることがより好ましい。溶媒の詳細については後述する。
【0014】
以下、上記コーティング剤に含まれる各成分について説明する。
【0015】
<共重合体(X)>
共重合体(X)は、上述したように、下記(i)及び(ii)からなる群から選択される少なくとも1種である。
(i)下記一般式(I)で表される構造単位(1)を有しかつ下記一般式(II)で表される構造単位(2)を有しない共重合体(A)と、構造単位(2)を有しかつ構造単位(1)を有しない共重合体(B)との混合物
(ii)構造単位(1)及び構造単位(2)を有する共重合体(AB)
【化5】

【化6】
【0016】
上記共重合体(A)と共重合体(B)との混合物は、コーティング剤を調製する前に予め混合物として作製されたものであってもよいし、コーティング剤を調製する際に、共重合体(A)及び共重合体(B)のうち一方と他方とを同時又は順次添加してコーティング剤中に両者を併存させることにより、結果的に混合物となるものであってもよい。
【0017】
一般式(I)中、Rは炭素数1~3のアルキル基を表し、上記コーティング剤をより簡便に調製しやすくすると共に、硬化剤(Z)に対する反応性を適度なものにしやすくする観点から、Rはメチル基又はエチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0018】
一般式(I)中、Rは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。上記コーティング剤をより簡便に調製しやすくすると共に、硬化剤(Z)に対する反応性を適度なものにしやすくする観点から、Rはメチル基又はエチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0019】
一般式(I)中、Rは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。上記コーティング剤をより簡便に調製しやすくすると共に、硬化剤(Z)に対する反応性を適度なものにしやすくする観点から、から、Rはメチル基であることが好ましい。
【0020】
一般式(I)におけるnは2~7の任意の整数であり、上記コーティング剤をより簡便に調製しやすくすると共に、硬化剤(Z)に対する反応性を適度なものにしやすくする観点から、nは5以下の整数が好ましく、3以下の整数がより好ましく、2であることが最も好ましい。
【0021】
一般式(I)において、硬化剤(Z)に対する反応性をより適度なものにしやすくする観点から、R、R、及びRがメチル基であり、nが2であることが好ましい。
【0022】
一般式(II)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、硬化剤(Z)に対する反応性をより適度なものにしやすくする観点からメチル基であることが好ましい。
一般式(II)中、mは2~7の任意の整数であり、硬化剤(Z)に対する反応性をより適度なものにしやすくする観点から、好ましくは5以下の整数であり、より好ましくは3以下の整数であり、最も好ましくは2である。
一般式(II)において、硬化剤(Z)に対する反応性をより適度なものにしやすくする観点から、Rがメチル基であり、mが2であることが好ましい。
【0023】
共重合体(X)は、共重合体(A)及び共重合体(B)の混合物(以下、「共重合体混合物(X1)」ともいう)のみからなるものであってもよいし、共重合体(AB)のみからなるものであってもよいし、共重合体(A)及び共重合体(B)のうち少なくとも一方と共重合体(AB)との混合物からなるものであってもよい。
共重合体(X)が共重合体(A)及び共重合体(B)のうち少なくとも一方と共重合体(AB)との混合物である場合、前者の質量W1と後者の質量W2との比(W1/W2)は、硬化剤(Z)に対する反応性をより適度なものにしやすくする観点から、好ましくは70/30~30/70、より好ましくは60/40~40/60、更に好ましくは55/45~45/55である。
【0024】
共重合体(A)及び共重合体(B)は、それぞれ、少なくとも1種の、水酸基を含有する(メタ)アクリル酸エステルである第1モノマー(a)と、第1モノマー(a)とは異なる第2モノマー(b)との共重合体であることが好ましい。
また、共重合体(AB)は、少なくとも2種の第1モノマー(a)と、少なくとも1種の第2モノマー(b)との共重合体であることが好ましい。
【0025】
(共重合体の混合物(X1))
上述したように、共重合体の混合物(X1)は、構造単位(1)を有しかつ構造単位(2)を有しない共重合体(A)と、構造単位(2)を有しかつ構造単位(2)を有しない共重合体(B)との混合物である。
共重合体の混合物(X1)において、共重合体(A)の質量WAと共重合体(B)の質量WBとの比(WA/WB)は、硬化剤(Z)に対する反応性を適度なものにしやすくする観点から、好ましくは70/30~30/70、より好ましくは60/40~40/60、更に好ましくは55/45~45/55、より更に好ましくは55/45~50/50である。
【0026】
(共重合体(A))
共重合体(A)は、第3級水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル(a1)(以下、「モノマー(a1)」ともいう)、及び第2級水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル(a2)(以下、「モノマー(a2)」ともいう)からなる群より選ばれる少なくとも一つを第1モノマー(a)として用い、第1モノマー(a)と第2モノマー(b)とを共重合させて得られる。なお、共重合体(A)の製造に当たっては、後述するモノマー(a3)は使用されない。
製造容易性及び硬化剤(Z)に対する反応性を適度なものにしやすくする観点から、共重合体(A)は、第1モノマー(a)としてモノマー(a1)を用いて製造されることにより、当該モノマー(a1)に由来する構造単位を構造単位(1)として含むことが好ましい。
【0027】
(第3級水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル(モノマー(a1)))
モノマー(a1)としては、下記一般式(I’)で表される化合物が挙げられる。
【0028】
【化7】
【0029】
一般式(I’)中、R、R、R、及びnは上記一般式(I)で定義したとおりである。
【0030】
具体的なモノマー(a1)としては、3-ヒドロキシ-3-メチルブチルメタクリレート、3-ヒドロキシ-3-メチルブチルアクリレート等が挙げられる。硬化剤(Z)に対する反応性を適度に緩和させやすくする観点から、3-ヒドロキシ-3-メチルブチルメタクリレートが好ましい。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
(第2級水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル(モノマー(a2)))
モノマー(a2)としては、下記一般式(I’’)で表される化合物が挙げられる。
【化8】
【0032】
一般式(I’’)中、R、R、及びnは上記一般式(I)で定義したとおりである。
【0033】
具体的なモノマー(a2)としては、3-ヒドロキシブチルメタクリレート、及び3-ヒドロキシブチルアクリレート等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
(モノマー(a1)及び(a2)以外の第1モノマー)
共重合体(A)中に、第1モノマー(a)として、モノマー(a1)及びモノマー(a2)以外の水酸基を含有する(メタ)アクリル酸エステルを含んでいてもよい。
モノマー(a1)及びモノマー(a2)以外の第1モノマーとしては、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピルメタクリレート(略称「HBMA」)、4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-イル=メタクリレート(略称「HGMA」)、3-ヒドロキシ-1,3-ジメチルブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(2-ヒドロキシイソブチレート)モノ(メタ)アクリレート、ピナコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシフェニル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシ-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル等が挙げられる。
【0035】
(共重合体(A)中の構造単位(1)の量)
共重合体(A)中の構造単位(1)の量(換言すれば、モノマー(a1)に由来する構造単位及びモノマー(a2)に由来する構造単位の合計量)は、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましく、そして、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。共重合体(A)中の構造単位(1)の量が前記範囲内であると、水と接触した後の粘着力の低下をより効果的に防ぐことが可能になる。
なお、構造単位(1)中のモノマー(a1)に由来する構造単位の量は、硬化剤(Z)に対する反応性を適度なものにしやすくする観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくいは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0036】
モノマー(a1)及びモノマー(a2)以外の第1モノマーに由来する構造単位は、全ての第1モノマーに由来する構造単位全体に対して、本発明の効果を得やすくする観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下であり、特に好ましくは0質量%である。
【0037】
(共重合体(B))
共重合体(B)は、第1級水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル(a3)(以下、「モノマー(a3)」ともいう)の少なくとも一種を第1モノマー(a)として用い、このモノマー(a3)と第2モノマー(b)とを共重合させて得られる。なお、共重合体(B)の製造に当たっては、上述したモノマー(a1)及びモノマー(a2)は使用されない。
【0038】
(第1級水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル(a3))
モノマー(a3)としては、下記一般式(II’)で表される化合物が挙げられる。
【化9】
【0039】
一般式(II’)中、R及びmは上記一般式(II)で定義したとおりである。
【0040】
具体的なモノマー(a3)としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリアルキレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。硬化剤(Z)に対して必要な反応性を確保しやすくする観点から、2-ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
(共重合体(AB))
共重合体(AB)は、上述したように、構造単位(1)及び構造単位(2)を有する共重合体である。共重合体(AB)を構成する構造単位(1)は、共重合体(A)で説明したのと同様であり、また、共重合体(AB)を構成する構造単位(1)は、共重合体(A)で説明したのと同様である。
共重合体(AB)は、上述したモノマー(a1)及びモノマー(a2)からなる群より選ばれる少なくとも一つ、並びに、上述したモノマー(a3)を第1モノマー(a)として用い、当該第1モノマー(a)と上記第2モノマー(b)とを共重合させて得られる。
共重合体(AB)において、構造単位(1)と構造単位(2)は、交互に配置していてもよいし、ブロック状に繰り返して配置していてもよいし、ランダムに配置していてもよい。
【0042】
共重合体(AB)において、構造単位(1)のモル量M1と構造単位(2)のモル量M2との比(M1/M2)は、硬化剤(Z)に対する反応性を適度なものにしやすくする観点から、好ましくは70/30~30/70、より好ましくは65/35~40/60、更に好ましくは60/40~50/50である。
【0043】
(第2モノマー(b))
共重合体(A)、(B)、及び(AB)を得るために用いられる第2モノマー(b)は、第1モノマー(a)と共重合可能なモノマーであり、コーティング剤の硬化物に所定の硬度や付着性を確保させやすくする目的や、イオン性基を導入する目的で用いられる。
第2モノマー(b)としては、水酸基を含まない(メタ)アクリル系エステル化合物;芳香族エチレン性不飽和モノマー;イオン性基含有モノマー;イタコン酸ジメチルなどのイタコン酸エステル;マレイン酸ジメチルなどのマレイン酸エステル;フマル酸ジメチルなどのフマル酸エステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル;酢酸ビニル;アクリルアミド等が挙げられる。イオン性基含有モノマーについては後述する。
【0044】
水酸基を含まない(メタ)アクリル系エステル化合物としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、及びメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
芳香族エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレンなどが挙げられる。芳香族エチレン性不飽和モノマーを用いれば、(メタ)アクリルポリマーのガラス転移点を所望の範囲に調整することができ、後述する金属粒子分散液にバインダー樹脂としての共重合体(X)が配合される場合に、それらとの相溶性の向上を図ることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
(共重合体(A)、(B)、(AB)中のイオン性基)
共重合体(A)、共重合体(B)、及び共重合体(AB)はそれぞれ、粒子(Y)を吸着させやすくする観点から、イオン性基を有することが好ましい。
上記イオン性基としては、特に制限されず、公知のイオン性基が挙げられる。
イオン性基として、具体的には、例えば、カルボキシル基、リン酸基などのアニオン性基、例えば、3級アミノ基、4級アンモニウム基などのカチオン性基などが挙げられる。
【0047】
3級アミノ基としては、特に制限されないが、例えば、N,N-ジメチルアミノ、N,N-ジエチルアミノ、N,N-ジプロピルアミノ、N,N-ジイソプロピルアミノ、N,N-ジブチルアミノ、N,N-ジ-イソブチルアミノ、N,N-ジ-s-ブチルアミノ、N,N-ジ-t-ブチルアミノなどの、N,N-ジアルキルアミノなどが挙げられる。
【0048】
また、4級アンモニウム基としては、上記3級アミノ基に、例えば、エピハロヒドリン、ハロゲン化ベンジル、ハロゲン化アルキルなどの4級化剤を作用させたものが挙げられる。
【0049】
これらイオン性基は、1種類であってもよく、また、2種類以上が併用されていてもよい。
イオン性基として、好ましくは、アニオン性基が挙げられ、より好ましくは、カルボキシル基が挙げられる。
なお、イオン性基の平均含有量は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0050】
また、イオン性基としてアニオン性基が採用される場合には、アニオン性基の少なくとも一部が中和剤(後述)により中和されていてもよい。中和剤(後述)によりアニオン性基の少なくとも一部が中和されていれば、アニオン性基の塩が形成されるため、水性分散媒に対する分散性の向上を図ることができる。
【0051】
上述した第1モノマー(a)及び第2モノマー(b)のうち少なくとも一つ、好ましくは第2モノマー(b)のうち少なくとも1種を、上記イオン性基を有するモノマー(イオン性基含有モノマー)とし、このイオン性基含有モノマーを用いて共重合体を作製することにより、共重合体(A)、共重合体(B)、及び共重合体(AB)にイオン性基を導入することができる。
なお、第1モノマー(a)がイオン性基含有モノマーである場合、当該モノマーは上記モノマー(a1)、モノマー(a2)、及びモノマー(a3)とは異なる構造を持つ、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルであり、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレートと酸無水物とのハーフエステル化物である。
【0052】
イオン性基含有モノマーとしては、例えば、カルボキシル基含有モノマー、リン酸基含有モノマーなどのアニオン性基含有モノマー、例えば、3級アミノ基含有モノマー、4級アンモニウム基含有モノマーなどのカチオン性基含有モノマーなどが挙げられる。
【0053】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのα,β-不飽和カルボン酸またはその塩などが挙げられ、好ましくは、α,β-不飽和カルボン酸、より好ましくは、(メタ)アクリル酸が挙げられる。
【0054】
リン酸基含有モノマーとしては、例えば、アシッドホスフォオキシエチル(メタ)アクリレート、モノ(2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)ホスフェートなどのリン酸基含有(メタ)アクリレートが挙げられ、好ましくは、モノ(2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)ホスフェートが挙げられる。
【0055】
3級アミノ基含有モノマーとしては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジ-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレートなどのN,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのN,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられ、好ましくは、N,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、より好ましくは、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0056】
4級アンモニウム基含有モノマーは、例えば、上記3級アミノ基含有モノマーに4級化剤(例えば、エピハロヒドリン、ハロゲン化ベンジル、ハロゲン化アルキルなど)を作用させたものであって、具体的には、例えば、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムブロマイド、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムジメチルホスフェートなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウム塩、例えば、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムブロマイドなどの(メタ)アクリロイルアミノアルキルトリアルキルアンモニウム塩、例えば、テトラブチルアンモニウム(メタ)アクリレートなどのテトラアルキル(メタ)アクリレート、例えば、トリメチルベンジルアンモニウム(メタ)アクリレートなどのトリアルキルベンジルアンモニウム(メタ)アクリレートなどが挙げられ、好ましくは、(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウム塩が挙げられ、より好ましくは、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライドが挙げられる。
【0057】
これらイオン性基含有モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
イオン性基含有モノマーとして、好ましくは、アニオン性基含有モノマーが挙げられ、より好ましくは、カルボキシル基含有モノマーが挙げられる。
【0058】
共重合体(A)、(B)、及び(AB)中の第2モノマー(b)に由来する構造単位の量は、50~95質量%が好ましく、55~90質量%がより好ましく、60~88質量%が更に好ましい。
【0059】
<共重合体(A)、(B)、(AB)の製造方法>
共重合体(A)、(B)、(AB)の製造方法に特に制限はなく、例えば、溶液重合法、溶液分散重合法、塊状重合法等の方法に従って、ラジカル重合、イオン重合、光重合等により重合することができる。これらの中でも、簡便に重合を行う観点から、溶液ラジカル重合法により重合することが好ましい。
【0060】
溶液ラジカル重合法に用いる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、ブタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n-ヘキサン、オクタン等の炭化水素系溶媒;酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、エチルエトキシプロピオネート、2-エトキシエチルアセテート、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジブチルエーテル、2-エトキシエチルエーテル、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジメトキシエタン、ジメトキシメタン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;等が挙げられる。これらの溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、本発明の実施形態に係るコーティング剤をより簡便に調製することができると共に、上述した粒子分散液と同じ媒体を用いることによりコーティング剤の製造コストを抑えることができること等から、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒が好ましく、アルコール系溶媒がより好ましい。
また、重合反応が終了した後に、水などの親水性溶媒を希釈溶媒として追加で添加してもよい。
【0061】
重合に用いる重合開始剤としては、特に限定されず、目的および用途に応じて適宜選択される。重合開始剤として、具体的には、ラジカル重合開始剤が挙げられる。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ系化合物、パーオキサイド系化合物、スルフィド類、スルフィン類、スルフィン酸類、ジアゾ化合物、レドックス系化合物などが挙げられ、好ましくは、アゾ系化合物、パーオキサイド系化合物が挙げられる。
【0062】
アゾ系化合物としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート、4,4’-アゾビス-4-シアノバレリン酸などが挙げられる。
【0063】
パーオキサイド系化合物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、カプリエルパーオキサイド、2,4-ジクロルベンゾイルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシビパレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ-t-ヘキシルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、イソプロピルパーオキシジカーボネート、イソブチルパーオキシジカーボネート、s-ブチルパーオキシジカーボネート、n-ブチルパーオキシジカーボネート、2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサエノート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-エチルヘキサノエート、1,1,2-トリメチルプロピルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-アミルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、t-ブチルパーオキシアリルカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,2-トリメチルプロピルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシイソノナエート、1,1,2-トリメチルプロピルパーオキシ-イソノナエート、t-ブチルパーオキシベンゾエートなどの有機過酸化物などが挙げられる。
【0064】
これら重合開始剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
重合開始剤の使用量は、原料モノマー、溶媒、及び重合開始剤によっても異なるが、原料モノマー100質量部に対して、0.5~10質量部が好ましく、1~9質量部がより好ましく、2~8質量部が更に好ましい。
重合温度及び重合時間に特に制限はないが、30~100℃程度で1~10時間反応を行うことが好ましい。
【0065】
イオン性基含有モノマーとして、アニオン性基含有モノマーが用いられる場合には、好ましくは、上記の重合の後、中和剤を添加してアニオン性基の少なくとも一部を中和し、アニオン性基の塩を形成させる。
【0066】
中和剤としては、公知の塩基性化合物が挙げられ、具体的には、例えば、アミン化合物(アンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミンなどのモノアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、N,N-ジメチルアミノエタノール、N,N-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノ-2-メチル-1-プロパノール、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミンなどのアルカノールアミン)、水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、モルホリンなどが挙げられる。
これら中和剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0067】
中和剤によりアニオン性基の少なくとも一部が中和されていれば、アニオン性基の塩が形成されるため、分散媒である溶媒に対する分散性の向上を図ることができる。
粒子(Y)の分散性を高やすくする観点から、中和剤添加後の共重合体(A)、(B)、及び(AB)の酸価は、80~200mgKOH/gであることが好ましく、90~170mgKOH/gであることがより好ましく、100~150mgKOH/gであることがより好ましい。
上記酸価は、JIS-K-5601-2-1:1999に記載の滴定法に準拠して測定され、より詳しくは実施例に記載の方法で測定される。
【0068】
これにより、共重合体(A)、共重合体(B)、又は共重合体(AB)の分散液が得られる。なお、必要により、上記した溶媒を添加または除去して、共重合体(A)、共重合体(B)、又は共重合体(AB)の分散液の濃度を調製することができる。
【0069】
<共重合体(A)、(B)、(AB)の重量平均分子量>
共重合体(A)、(B)、(AB)の重量平均分子量は、それぞれ、4,000~100,000が好ましく、5,000~50,000がより好ましく、6,000~30,000が更に好ましく、7,000~15,000がより更に好ましい。
【0070】
<共重合体(A)、(B)、(AB)のガラス転移温度>
共重合体(A)、(B)、(AB)のガラス転移温度は、-20~+50℃が好ましく、-10~+45℃がより好ましく、0~40℃が更に好ましく、10~40℃がより更に好ましい。
(メタ)アクリル系共重合体(A)、(B)、(AB)のガラス転移温度が前記範囲内であると、常態における粘着性が向上すると共に、水と接触した後の粘着力も向上する。更に再接着性能も向上する。
【0071】
<コーティング剤中の共重合体(X)の量>
本発明の実施形態に係るコーティング剤中の共重合体(X)の量(共重合体(A)、共重合体(B)、及び共重合体(AB)のうち複数種類が含まれる場合はそれらの合計質量)は、0.5~20質量%が好ましく、1~15質量%がより好ましく、1.5~10質量%が更に好ましい。共重合体(X)の量が前記範囲内であると、上記コーティング剤をより簡便に調製することができると共に、本発明の効果がより得やすくなる。
【0072】
<粒子(Y)>
粒子(Y)は、無機粒子及び有機顔料粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種の粒子である。
上記無機粒子としては、金属粒子、並びに、ガラス、タルク、クレイ、マイカ、カーボンブラック、及びホワイトカーボン等の粒子が挙げられる。
上記有機顔料粒子としては、フタロシアニン系顔料粒子、及びアゾ系顔料粒子等が挙げられる。
【0073】
粒子(Y)は、透明性、又は、意匠性及び塗膜強度を高めやすくする観点から、金属粒子であることが好ましい。
金属粒子としては、特に制限されないが、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化イットリウム、酸化ビスマス、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化インジウムなどの金属酸化物の微粒子や、例えば、それら金属酸化物に、例えば、ガリウム、アンチモン、スズ、フッ素、リン、アルミニウムなどの異種元素をドープして得られる異種元素ドープ金属酸化物の微粒子などが挙げられる。これら金属酸化物の結晶構造は、特に制限されず、例えば、立方晶系、正方晶系、斜方晶系、単斜晶系、三斜晶系、六方晶系、三方晶系などのいずれであってもよい。
【0074】
金微粒子として、好ましくは、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、ガリウムドープ酸化亜鉛、アンチモンドープ酸化錫が挙げられ、より好ましくは、酸化アルミニウムが挙げられる。
また、金属粒子は、必要により、公知の方法によって表面処理されていてもよい。
これら金属粒子は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0075】
金属粒子の形状は、特に制限されず、例えば、塊状、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、不定形状およびそれらの混合物などが挙げられる。
また、金属粒子の粒径は、金属微粒子自体の平均一次粒子径として測定され、例えば、200nm以下、好ましくは、90nm以下であり、通常、1nm以上、好ましくは、3nm以上である。
金属粒子の平均一次粒子径が上記範囲であれば、金属微粒子の入手が容易であり、また、金属粒子分散液の保存安定性や、硬化膜の透明性の向上を図ることができる。
【0076】
コーティング剤を調製する際に、粒子(Y)は予め、分散剤とともに溶媒中に分散された粒子分散液の状態にしておくことが望ましい。粒子分散液の詳細については後述する。
上記粒子分散液中における粒子(Y)の平均粒子径は、例えば、300nm以下、好ましくは150nm以下であり、通常、20nm以上、好ましくは30nm以上である。
【0077】
なお、粒子分散液中の粒子(Y)の平均粒子径は動的光散乱法によって測定され、具体的には、実施例に記載した方法で測定される。また、コーティング剤を調製する際に用いられる粒子(Y)の平均一次粒子径は、BET法で測定される比表面積から推定する方法で算出される。また、粒子(Y)として市販品を用いる場合は、カタログ値を採用してもよい。
【0078】
上記コーティング剤中の粒子(Y)の含有量は、透明性及び所期の物性を確保しやすくする観点から、好ましくは1~30質量%、より好ましくは2~20質量%、更に好ましくは3~10質量%である。
【0079】
<硬化剤(Z)>
本実施形態のコーティング剤は、硬化剤(Z)を含む。硬化剤(Z)は、コーティング剤の塗膜を加熱したときに、例えば樹脂と反応するなどして、当該塗膜を硬化させるものである限り、任意のものを用いることができる。換言すると、コーティング剤が硬化剤(Z)を含む場合、コーティング剤は、通常は熱硬化性となる。
【0080】
硬化剤(Z)としては、コーティング剤の分野で公知のものを適宜用いることができる。樹脂が有する官能基などを考慮して、適切な硬化剤(Z)を選択すればよい。
好ましい硬化剤(Z)の一例として、メラミン樹脂等のメラミン誘導体化合物を挙げることができる。メラミン誘導体化合物としては、コーティング剤の分野で公知のものを特に制限なく挙げることができる。
具体的には、以下一般式(M)で表される、ヒドロキシメチル基および/またはアルコキシメチル基を有する化合物に由来する構造単位を含む樹脂が挙げられる。
【0081】
【化10】
【0082】
一般式(M)中、R11~R16はそれぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基を表す。ただし、通常、R1~R6の少なくとも1つはヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基であり、好ましくはR1~R6のうち2以上はヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基である。R1~R6の全てがヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基であってもよい。
R1~R6のアルコキシメチル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、n-ブトキシメチル基、イソブトキシメチル基などが挙げられる。
【0083】
メラミン樹脂の市販品としては、例えば、サイメル300、サイメル301、サイメル303LF、サイメル350、サイメル370N、サイメル771、サイメル325、サイメル327、サイメル703、サイメル712、サイメル701、サイメル266、サイメル267、サイメル285、サイメル232、サイメル235、サイメル236、サイメル238、サイメル272、サイメル212、サイメル253、サイメル254、サイメル202、サイメル207、マイコート506(以上、オルネクスジャパン株式会社製)、ニカラックMW-30M、ニカラックMW-30、ニカラックMW-30HM、ニカラックMW-390、ニカラックMW-100LM、ニカラックMX-750LM、ニカラックMW-22、ニカラックMS-21、ニカラックMS-11、ニカラックMW-24X、ニカラックMS-001、ニカラックMX-002、ニカラックMX-730、ニカラックMX-750、ニカラックMX-708、ニカラックMX-706、ニカラックMX-042、ニカラックMX-035、ニカラックMX-45、ニカラックMX-43、ニカラックMX-417、ニカラックMX-410(以上、株式会社三和ケミカル製)、ユーバン20SB、ユーバン20SE60、ユーバン21R、ユーバン22R、ユーバン122、ユーバン125、ユーバン220、ユーバン225、ユーバン228、ユーバン2020(以上、三井化学株式会社製)、アミディアJ-820-60、アミディアL-109-65、アミディアL-117-60、アミディアL-127-60、アミディア13-548、アミディアG-821-60、アミディアL-110-60、アミディアL-125-60、アミディアL-166-60B(以上、DIC株式会社製)等が挙げられる。
【0084】
好ましい硬化剤(Z)の別の一例として、エポキシ化合物を挙げることができる。エポキシ化合物としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものが好ましい。
エポキシ化合物の具体例としては、公知のエポキシ樹脂を挙げることができる。具体的には、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0085】
硬化剤(Z)としては、イソシアネート化合物(ブロックイソシアネート化合物を含む)も挙げることができる。イソシアネート化合物は、特に、樹脂がヒドロキシ基を有する場合に硬化性が良好である。保存安定性の点では、ブロックイソシアネート化合物がより好ましい。
イソシアネート化合物は、好ましくは多官能イソシアネートである。多官能イソシアネートは、好ましくは2~6官能(つまり、1分子あたり2~6個の反応性イソシアネート基を有する)、より好ましくは2~4官能である。
【0086】
本実施形態のコーティング剤は、硬化剤(Z)を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。例えばメラミン樹脂とエポキシ化合物とを併用することで、塗膜の基本物性を一層高めることができる。
コーティング剤中の硬化剤(Z)の含有量は、コーティング剤の不揮発成分全体を基準(100質量%)として、好ましくは3~40質量%、より好ましくは5~30質量%、さらに好ましくは5~20質量%である。
【0087】
<溶媒>
上記コーティング剤に含まれていてもよい溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、ブタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n-ヘキサン、オクタン等の炭化水素系溶媒;酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、エチルエトキシプロピオネート、2-エトキシエチルアセテート、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジブチルエーテル、2-エトキシエチルエーテル、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジメトキシエタン、ジメトキシメタン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;水等が挙げられる。これらの溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、上記コーティング剤をより簡便に調製することができること等から、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、水が好ましく、アルコール系溶媒、水がより好ましい。
また、共重合体(A)、(B)、又は(AB)を製造する際に用いる溶媒と同じ種類の溶媒を、粒子分散液を作製する際に用いる溶媒としてもよい。
【0088】
(コーティング剤中の溶媒の量)
上記コーティング剤中の溶媒の量は、10~95質量%が好ましく、20~92質量%がより好ましく、30~90質量%が更に好ましい。コーティング剤中の溶媒の量が前記範囲内であると粘度の調整及びコーディング剤の取り扱い性が容易になる。
【0089】
<任意成分>
【0090】
粘着付与樹脂としては、ロジン樹脂、ロジンフェノール樹脂、及びそのエステル化合物等のロジン系樹脂;テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂等のテルペン系樹脂;等が挙げられる。
【0091】
上記コーティング剤が任意成分を含有する場合、任意成分の含有量は、共重合体(X)100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。
【0092】
<コーティング剤の製造方法>
上記コーティング剤は、共重合体(X)、粒子(Y)、及び硬化剤(Z)、並びに、必要に応じて溶媒と任意成分を適宜混ぜ合わせることにより製造することができる。
コーティング剤の製造に当たっては、上述したとおり、粒子(Y)を予め溶媒に分散させて粒子分散液を調製しておき、この粒子分散液を他の成分と混合することが好ましい。粒子分散液を用いることで、コーティング剤中の粒子(Y)の分散性を高めやすくなる。
粒子分散液を調製する際に分散剤を用いることが好ましい。この分散剤として、上述した共重合体(A)、(B)、(AB)のいずれかを用いることがより好ましい。上述した共重合体の混合物(X1)は、粒子分散液中に分散剤として共重合体(A)及び(B)のうち一方を含有させるとともに、上記共重合体(A)及び(B)のうち他方をバインダー成分として、硬化剤(Z)や他の任意成分とともに上記粒子分散液と混合することで得るようにしてもよい。
【0093】
[硬化物]
本発明の実施形態に係る硬化物は、上記コーティング剤を硬化してなる。
本実施形態のコーティング剤が硬化剤(Z)としてメラミン誘導体化合物を含有していれば、後述するように架橋および硬化させることができ、硬化膜を得ることができる。また、コーティング剤がバインダー樹脂を含有していれば、後述するように乾燥および硬化させた場合に、各種物性に優れる硬化膜を得ることができる。
上記コーティング剤から硬化膜を得る方法としては、例えば、コーティング剤が硬化剤(Z)として上記メラミン誘導体化合物を含有する場合には、コーティング剤を、公知の方法により基材に塗布した後、塗膜を加熱硬化(架橋硬化)させる方法が挙げられる。
【0094】
上記基材としては、特に制限されず、例えば、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートなど)、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ノルボルネン系樹脂などのプラスチックや、例えば、金属、木材、紙、ガラス、スレートなどが挙げられる。
塗布方法としては、特に制限されず、例えば、ロールコーター、バーコーター、ドクターブレード、メイヤーバー、エアナイフなど、塗布の際に、一般的に使用される機器を用いた塗布や、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、はけ塗り、スプレー塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工といった公知の塗布方法が採用される。
【0095】
硬化条件としては、加熱温度が、例えば、100℃以上、好ましくは、110℃以上であり、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下であり、加熱時間が、例えば、1分以上、好ましくは、3分以上であり、例えば、60分以下、好ましくは、30分以下である。
また、塗膜の硬化は、一段硬化であってもよく、多段硬化であってもよい。塗膜を多段硬化させる場合には、各段階における硬化条件は、それぞれ同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
このような加熱により、メラミン誘導体化合物を含むコーティング剤が架橋し、三次元構造の硬化膜を形成する。
【0096】
また、例えば、硬化剤(Z)として上記メラミン誘導体化合物以外の硬化剤を用いている場合には、コーティング剤を、上記の方法により基材に塗布した後、塗膜を乾燥硬化させる。
乾燥条件としては、乾燥温度が、例えば、100℃以上、好ましくは、110℃以上であり、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下であり、乾燥時間が、例えば、3分以上、好ましくは、5分以上であり、例えば、10分以下、好ましくは、7分以下である。
このような方法により、コーティング剤から溶媒が揮発し、金属粒子分散剤及びバインダー樹脂が、乾燥硬化され、硬化膜を形成する。
【0097】
このようにして得られる硬化膜は、表面硬度、付着性、透明性、耐湿熱性などの各種物性に優れる。そのため、上記硬化膜は、各種産業製品において、例えば、光学フィルムや、例えば、プラスチック、金属などの機能性被覆などの用途に、好適に用いられる。
【0098】
<硬化物の特性>
上記硬化物を形成するための、硬化前の塗布膜の厚さは、必要な表面硬度及び付着性を確保しやすくする観点から、好ましくは2~30μm、より好ましくは3~20μm、更に好ましくは4~15μmである。
塗膜を硬化して得られた硬化物の厚さは、必要な表面硬度及び付着性を確保しやすくする観点から、好ましくは0.1~20μm、より好ましくは0.3~10μm、更に好ましくは0.5~5μmである。
上記硬化物のヘイズは、高い透明性を得る観点から、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1.3%以下である。
上記ヘイズは、JIS-K7136:2000に準拠して測定され、具体的には、実施例に記載した方法で測定される。
【0099】
上記硬化物は、耐環境性に優れていることが望ましく、高湿・高温環境に曝されても上記ヘイズが低下しづらいことが望ましい。具体的には、上記硬化膜を85℃、85RH%(相対湿度)の条件下に250時間曝露させた後に測定される上記硬化物の耐湿熱ヘイズが、透明性の低下を抑制しやすくする観点から、好ましくは6.0%以下、より好ましくは5.5%以下、さらに好ましくは5.3%以下である。
上記耐湿熱ヘイズは、具体的には実施例に記載した方法で測定される。
【0100】
上記硬化物の表面硬度は、高い高度を確保する観点から、好ましくは鉛筆硬度F以上である。
上記表面硬度は、JIS-K5600-5-4:1999に準拠して測定され、具体的には、実施例に記載した方法で測定される。
【0101】
上記硬化物の付着性は、硬化物の剥がれを抑制しやすくする観点から、JIS-K5600-5-6:1999に準拠して評価を行ったときの評価点が、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1以下、より更に好ましくは0である。
上記付着性は、具体的には実施例に記載した方法で測定される。
【実施例0102】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0103】
[組成物の物性及び構成成分の比率]
後述する製造例で得られた組成物(粒子分散液)の各種物性の測定は、以下に示す方法に従って行った。
【0104】
<粒子分散液中の粒子(Y)の平均粒子径>
ゼータ電位・粒径測定システムELS-Z2(大塚電子株式会社製)を用い、以下の条件により粒子分散液中の粒子(Y)の平均粒子径の測定を行った。
・測定セル:粒径セルユニット
・散乱角度:165°
・測定温度:25℃
・測定試料:粒子分散液調製時に使用した分散媒で粒子分散液を50倍に希釈したもの
・測定法:動的光散乱法(光子相関法)
・粒径解析法:Contin法
【0105】
<第1モノマー比率>
硬化膜中の、共重合体の合成時に使用した第1モノマーのモル比率を仕込み量から算出した(第1モノマー比率)。なお、複数の共重合体が存在する場合は、各モノマーの使用量の合計値からモル比率を算出した。
【0106】
<酸価>
電位差滴定装置AT-710(京都電子工業株式会社製)を用い、JIS-K-5601-2-1:1999に記載の滴定法に準拠して、共重合体の酸価(mgKOH/g)を測定した。
【0107】
[評価]
後述する実施例及び比較例で得られた硬化膜が形成されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムについての各種評価は、以下の方法に従って行った。
【0108】
<表面硬度>
JIS-K5600-5-4:1999に準拠して行い、傷が付く鉛筆の芯の硬度で評価した。鉛筆硬度が高いほど塗膜表面の硬度が高く傷に強い。
【0109】
<付着性>
JIS-K5600-5-6:1999に準拠して行い、試験後の塗膜の剥がれをルーペにより観察して以下の基準で評価した。数字が小さいほど付着性に優れている。
評価基準
・0:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥がれがない。
・1:カットの交差点における塗膜の小さな剥がれを生じている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。
・2:塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点において剥がれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
・3:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大剥がれを生じており、及び/又は目のいろいろな部分が、部分的又は全面的に剥がれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に15%を超えるが35%を上回ることはない。
・4:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大剥がれを生じており、及び/又は数か所の目が部分的又は全面的に剥がれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に35%を超えるが65%を上回ることはない。
・5:剥がれの程度が4を超える。
【0110】
<ヘイズ>
濁時計NDH2000(日本電色工業株式会社製)を用い、JIS-K7136:2000に準拠して評価した。値が小さいほど、透明性に優れている。
【0111】
<耐湿熱ヘイズ>
硬化膜を85℃、85RH%(相対湿度)の条件下に250時間曝露させた。その後、上記と同様にして硬化膜のヘイズを測定し、耐湿熱ヘイズとした。
【0112】
[各成分]
〈1〉共重合体の製造例において使用した成分は、以下のとおりである。
<第1モノマー>
・モノマー(a1):2-ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、HEMA):関東化学株式会社製
・モノマー(a3):3-ヒドロキシ-3-メチルブチルメタクリレート(以下、IPDMA):株式会社クラレ製
・その他のモノマー1:2-ヒドロキシ-2-メチルプロピルメタクリレート(以下、HBMA):株式会社クラレ製
・その他のモノマー2:4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-イル=メタクリレート(以下、HGMA):株式会社クラレ製
【0113】
<第2モノマー>
・メタクリル酸(以下、MAA):関東化学株式会社製
・メタクリル酸メチル(以下、MMA):関東化学株式会社製
・スチレン(以下、St):関東化学株式会社製
・ブチルアクリレート(以下、n-BA):関東化学株式会社製
<溶媒>
・イソプロパノール(以下、IPA):関東化学株式会社製
<重合開始剤>
・パーブチル(登録商標)O:2-(エチルヘキサノイル)(tert-ブチル)ペルオキシド、日油株式会社製
<中和剤>
・N,N-ジメチルエタノールアミン:関東化学株式会社製
【0114】
〈2〉組成物(微粒子分散液)の製造例において使用した成分は、以下のとおりである。
<共重合体>
・製造例1~7で製造した共重合体1~7
<粒子>
・酸化アルミニウム:商品名AEROXIDE(登録商標) AluC、平均一次粒子径13nm、EVONIK社製
<溶媒(分散媒)>
・イソプロパノール(以下、IPA):関東化学株式会社製
【0115】
〈3〉コーティング剤及び硬化膜に関する実施例及び比較例において使用した成分は以下のとおりである。
<共重合体>
・製造例1~7で製造した共重合体1~7
<粒子分散液>
・製造例8~12で製造した組成物1~5
<硬化剤>
・ニカラック(登録商標)MX-706:メラミン・ホルムアルデヒド・アルキルモノアルコール(C1~C12)重縮合物、日本カーバイド工業株式会社製
<溶媒>
・水
【0116】
≪共重合体の製造≫
[製造例1]共重合体1の合成
撹拌機、温度計及び還流管を備えた反応器に、窒素気流下、IPAを150.0g入れ80℃に昇温した。HEMAを22.5g、MAAを30.0g、MMAを7.5g、Stを7.5g、n-BAを82.5g、パーブチルOを9.0g混合した物を、ドライ窒素にてバブリングし、それを120分かけて滴下した。滴下終了の1時間後に、パーブチルOを1.5g添加し、180分間80℃で熟成した。その後、冷却し、N,N-ジメチルエタノールアミンを24.0g加えて撹拌させた。その後、希釈溶媒として水を51.0g添加し、共重合体1を含む溶液(以下、「共重合体溶液1」とも称する)を調製した。なお、共重合体1は上述した共重合体(B)に該当する。
【0117】
[製造例2~7]共重合体2~7の合成
表1に示す処方とした以外は製造例1と同様の方法で、共重合体2~7を含む共重合体溶液2~7を得た。なお、共重合体2は上述した共重合体(A)に該当し、共重合体3は上述した共重合体(AB)に該当する。
【0118】
各製造例の共重合体の組成を表1に示す。
【0119】
【表1】
【0120】
≪組成物の製造≫
[製造例8]組成物1の調製
分散剤として製造例1で得られた共重合体溶液1を6.75g、粒子として酸化アルミニウムを9.00g、分散媒としてIPAを1.35g、水を51.8g、分散メディアとして粒径50μmのジルコニアビーズを103.0g、自動攪拌脱泡機(AR-250、シンキー株式会社製)に入れ、3分間の撹拌を、3回実施した。その後、振とう機で7日間撹拌し、ジルコニアビーズをろ過にて取り除いた。ろ液を超音波ホモジナイザー ソニファイアModel450D(BRANSON社製)で、40分間分散させることにより、粒子分散液である組成物1を得た。
【0121】
[製造例9~12]組成物2~5の調製
表2に示す処方としたこと以外は製造例8と同様の方法で、粒子分散液である組成物2~5を得た。
【0122】
各製造例の組成物の組成と、粒子分散液中の粒子の平均粒子径とを表2に示す。
【0123】
【表2】
【0124】
≪コーティング剤及び硬化物の製造≫
[実施例1]
製造例9で得られた粒子分散液である組成物2を16.0g、バインダー樹脂として製造例1で得られた共重合体溶液1を1.5g、及び溶媒として水を40.0g、フラスコに入れ、超音波ホモジナイザー ソニファイアModel450D(BRANSON社製)で、5分間分散させた。その後、硬化剤としてニカラック(登録商標)MX-706を2.66g、フラスコに入れ、超音波ホモジナイザー ソニファイアModel450D(BRANSON社製)で、3分間分散させ、コーティング剤を調製した。
得られたコーティング剤を、PETフィルム(商品名A4300、東洋紡株式会社製)上に、バーコーターを用いて膜厚9μmで塗工し、120℃で10分間加熱して塗膜を硬化させることにより、PETフィルム上に厚さ0.7μmの硬化膜を形成した。
【0125】
[実施例2~4、比較例1~10]
表3、4に示す処方とした以外は実施例1と同様の方法で、コーティング剤及び実施例1と同様の厚さの硬化膜を得た。
【0126】
各実施例及び比較例の測定・結果を組成とともに表3及び表4に示す。
【0127】
【表3】
【0128】
【表4】
【0129】
表3、4に示すように、実施例1~4では、ヘイズの小さい、透明性に優れた硬化膜が得られた。また、耐湿熱ヘイズの値も比較例に比べて小さく、耐湿熱性に優れた硬化膜が得られた。表面硬度及び付着性も良好であった。実施例1~4の硬化膜中には、HEMAに由来する第1級水酸基とIPDMAに由来する第3級水酸基が存在し、硬化剤との反応性が適度であることが、気泡の発生や粒子の凝集を防ぎ、透明性に優れた硬化膜が形成されるものと考えられる。
【0130】
一方、比較例1では、透明性が不十分な硬化膜が得られた。この結果は、比較例1の硬化膜中にHEMAに由来する第1級水酸基のみが存在し、共重合体と硬化剤との反応性が過剰に高くなり、硬化中に気泡の発生や粒子が凝集することに起因するものと考えられる。
また、比較例2では、透明性が不十分な硬化膜が得られた。この結果は、比較例2の硬化膜中にIPDMAに由来する第3級水酸基のみが存在し、共重合体と硬化剤との反応性が不十分になり、粒子が凝集することに起因すると考えられる。
更に、比較例3~6では、透明性が不十分な硬化膜が得られた。この結果は、比較例3~6の硬化膜中にHBMAに由来する第3級水酸基が、IPDMAに由来する第3級水酸基に比べてポリマー主鎖のより近傍に存在するため、共重合体と硬化剤との反応性が低くなり、粒子が凝集することに起因すると考えられる。
更に、比較例7~10では、透明性が不十分な硬化膜が得られた。この結果は、比較例7~10の硬化膜中にはHGMAに由来する側鎖の分岐構造が存在するため、共重合体と硬化剤との反応性が低くなり、粒子が凝集することに起因すると考えられる。