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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162554
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】半導体増幅器
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/02 20060101AFI20241114BHJP
   H03F 3/68 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H03F1/02
H03F3/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078161
(22)【出願日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】能村 健一
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA51
5J500AC02
5J500AC36
5J500AC41
5J500AC92
5J500AF18
5J500AH02
5J500AH09
5J500AH25
5J500AH29
5J500AH33
5J500AH39
5J500AM08
5J500AS13
5J500AT01
5J500LV07
(57)【要約】
【課題】多段階の信号増幅器において増幅機能の停止中の意図しない信号の入力による不要な消費電流の増大を、増幅器の特性劣化や大型化を伴わずに防止する。
【解決手段】実施形態の半導体増幅器100は、第1制御端子1aと、第1高位側端子1b及び第1低位側端子1cと、を有していて第1制御端子1aで受け取る入力信号を増幅する第1トランジスタ1と、直流を遮断するように第1高位側端子1bに接続されている第2制御端子2aと、第2高位側端子2b及び第2低位側端子2cとを有していて、第2制御端子2aで受け取る信号を増幅して出力する第2トランジスタ2と、を含み、第2低位側端子2cと第1高位側端子1bとの間に直流電流の通電経路Pを備えている。半導体増幅器100は、さらに、第2高位側端子2bと第2低位側端子2cとの間に接続されている抵抗素子81と、通電経路Pの導通状態を切り替える第1スイッチ30と、を含んでいる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1制御端子と、前記第1制御端子の状態に応じた電流が流れる第1高位側端子及び第1低位側端子と、を有していて前記第1制御端子で受け取る入力信号を増幅する第1トランジスタと、
直流を遮断するように前記第1高位側端子に接続されている第2制御端子と、前記第2制御端子の状態に応じた電流が流れる第2高位側端子及び第2低位側端子とを有していて、前記第2制御端子で受け取る信号を増幅して得られる出力信号を前記第2高位側端子から出力する第2トランジスタと、
を含んでいて、前記第2低位側端子と前記第1高位側端子との間に直流電流の通電経路を備える半導体増幅器であって、さらに、
前記第2高位側端子と前記第2低位側端子との間に接続されている抵抗素子と、
前記通電経路の導通状態を切り替える第1スイッチと、
を含んでいる半導体増幅器。
【請求項2】
前記第1スイッチは、前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタの少なくとも一方が遮断領域へと制御されるときに前記通電経路を非導通にするようにバイアスされる第3制御端子を有している、請求項1記載の半導体増幅器。
【請求項3】
前記第1スイッチは、前記第3制御端子と、前記第2低位側端子からの電流を流入させる第3高位側端子と、前記第1高位側端子へと流れる電流を流出させる第3低位側端子と、を有する第3トランジスタを含み、
前記第3制御端子と前記第3低位側端子との間に接続されている容量素子を、さらに備える請求項2記載の半導体増幅器。
【請求項4】
前記第1スイッチと前記第2低位側端子との間の前記通電経路に設けられている第2スイッチをさらに含んでいる請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体増幅器。
【請求項5】
前記第2スイッチは、第4制御端子と、前記第2低位側端子からの電流が流れる二つの端子と、を有する第4トランジスタを含み、
前記二つの端子の間に接続されている抵抗素子をさらに含んでいる請求項4記載の半導体増幅器。
【請求項6】
前記第1スイッチと前記第2低位側端子との間の前記通電経路に設けられていて、第4制御端子、及び前記第2低位側端子からの電流が流れる二つの端子を有する第4トランジスタと、
前記二つの端子の間に接続されている抵抗素子と、をさらに含み、
前記第3制御端子と前記第4制御端子とが共通のノードに接続されている、請求項2又は3記載の半導体増幅器。
【請求項7】
第5制御端子を有し、前記第1スイッチと前記第1高位側端子との間の前記通電経路に設けられていて前記第1スイッチからの電流が流れる第5トランジスタをさらに含み、
前記第5制御端子と、前記第4制御端子と、前記第3制御端子とが、共通のノードに接続されている、請求項6記載の半導体増幅器。
【請求項8】
前記第1スイッチが前記通電経路を非導通にするときに、前記第1スイッチと前記第5トランジスタとの間のノードを定電位に接続するスイッチをさらに含んでいる、請求項7記載の半導体増幅器。
【請求項9】
前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタを制御すると共に、前記第1スイッチを制御する制御回路をさらに含み、
前記制御回路は、前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタの少なくとも一方を遮断領域へと制御するときに、前記通電経路を非導通にするように前記第1スイッチを制御するように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信などに使用される高周波信号、例えば数GHz以上の周波数を有する高周波信号の増幅器では、大きなゲインを得るべく多段階の増幅が行われることがある。また多段階の信号増幅には、より少ない消費電流で複数段の増幅が可能なように、所謂カレントリユース方式の増幅回路が用いられることがある(例えば非特許文献1参照)。カレントリユース方式の多段階増幅回路では、後段の増幅回路に流れる電流が前段の増幅回路にも利用される。すなわち、各段の増幅回路を構成するトランジスタの動作点を決めるバイアス電流が各段の増幅回路間で共用(再利用)される。そうすることによって、各段の増幅回路毎に電流を供給する必要がなく電流を効率的に利用することができるので、増幅器全体の消費電力を抑制することができる。また、消費電力の抑制により自己発熱も低減されるため、温度ドリフトなどによる特性変動も抑制することができる。
【0003】
図7には、従来のカレントリユース方式の2段増幅回路900が示されている。2段増幅回路900は、いずれも電界効果トランジスタである前段トランジスタ901及び後段トランジスタ902と、キャパシタ903、904、905、906と、抵抗907、908と、インダクタ909、910と、を含んでいる。電源端子911に電源電圧VDDが印加され、第1バイアス端子912及び第2バイアス端子913に、前段トランジスタ901又は後段トランジスタ902の閾値を超える適度な電圧が印加されると、電源端子911から後段トランジスタ902のドレインに電流Ibが流れる。後段トランジスタ902のソースから流出した電流Ibの直流成分は、キャパシタ905があるためGNDには流れずに、インダクタ909を通って前段トランジスタ901のドレインへと流れ込み、そのソースから流出してGNDに流れ込む。このように、前段トランジスタ901及び後段トランジスタ902それぞれの所定の動作点での動作に必要なドレイン電流(電流Ib)が、前段トランジスタ901と後段トランジスタ902とで共用される。なお、電流Ibに重畳している高周波成分はキャパシタ905を介してGNDへと流れる。
【0004】
一方、入力端子914に入力される高周波信号RFは、キャパシタ903を通過して前段トランジスタ901のゲートに与えられ、前段トランジスタ901で増幅される。増幅された高周波信号RFは、前段トランジスタ901のドレインから出力され、キャパシタ904を通って後段トランジスタ902のゲートに与えられ、後段トランジスタ902で再度増幅される。その増幅後の信号が、後段トランジスタ902のドレインからキャパシタ906を通って出力端子915から、2段増幅器900の外部へと出力される。なお、前段トランジスタ901で増幅された高周波信号RFは、インダクタ909によって遮断されるため、後段トランジスタ902やキャパシタ905には伝わらない。
【0005】
図7に示される2段増幅器900では、前段トランジスタ901及び後段トランジスタ902の少なくとも一方を遮断領域に置くことで、高周波信号RFの増幅、並びに、入力端子914から出力端子915への高周波信号RFの伝播を阻止することができる。さらに、2段増幅器900を電流Ibが流れない状態にすることができる。すなわち、高周波信号RFの増幅が行われないときの電力消費を抑制することができる。例えば第1バイアス端子912及び第2バイアス端子913の少なくとも一方に0Vを印加することで、2段増幅器900を、内部に直流電流が流れないスタンバイモードにすることができる。
【0006】
図7の2段増幅器900のような高周波信号の増幅器は、一例において無線通信の送受信機に好適に用いられる。具体的には、図8に構成の概略が示される、アンテナ921を送信系922と受信系923とで共用する無線送受信機のフロントエンド920において受信系923の低雑音増幅器(LNA:Low Noise Amplifier)924として、2段増幅器900のような増幅器が用いられることがある。図8のフロントエンド920では、サーキュレータ925を用いて、アンテナ921が送信系922と受信系923との間で共用されている。フロントエンド920において受信モードでは、アンテナ921で受信された信号は、サーキュレータ925で受信系923に出力されてLNA924で増幅される。一方、送信モードでは、パワーアンプ926で増幅された送信信号Ssは、サーキュレータ925によってアンテナ921側に出力される。そのため、送信信号Ssは理想的には受信系923には略出力されない。例えばサーキュレータ925の逆方向損失(アイソレーション)が40dBで、パワーアンプ926による増幅後の送信信号Ssの電力が30dBmである場合、受信系923には、-10dBm程度の電力のリーク信号Seしか出力されない。この程度の電力の信号がLNA924に入力されても、LNA924を構成する例えば図7の2段増幅器900において第1バイアス端子912又は第2バイアス端子913に0Vが印加されていると、リーク信号Seの増幅は行われず、LNA924の内部にも電流は流れない。
【0007】
しかし、サーキュレータ925のアイソレーションが十分でない場合、例えば20dB程度である場合、上記30dBmの送信信号Ssについて10dBmのリーク信号SeがLNA924に入力される。また、アンテナ921が故障した場合には、上記30dBmの送信信号Ssがアンテナ921で反射する。そして、略30dBmのままの電力を有する反射信号Srが、サーキュレータ925を介してLNA924に入力される。
【0008】
図9A図9Dには、図7に示される2段増幅器900がスタンバイモードにあるときに、0dBm、10dBm、20dBmの電力Pinを有する約3.8GHzの入力信号が入力端子914に与えられた場合のシミュレーション結果が示されている。図9Aは前段トランジスタ901のゲート端子の電圧振幅Vga1、図9Bは後段トランジスタ902のゲート端子の電圧振幅Vga2、図9Cは後段トランジスタ902のゲート-ソース間の電圧振幅Vgsa、そして図9Dは入力信号の電力に対する電流Ib、それぞれのシミュレーション結果を示している。
【0009】
図9A図9Cに示されるように、入力信号の電力Pinが0dBm程度であれば、前段トランジスタ901のゲートの電圧振幅Vga1は0.5V未満程度であり、そのため、前段トランジスタ901は遮断状態のままである。また、後段トランジスタ902のゲートの電圧振幅Vga2及びそのゲート-ソース間の電圧振幅Vgsaも0.5Vよりも遥かに小さく、後段トランジスタ902も遮断状態のままなので、図9Dに示されるように、電流Ibは略流れない。
【0010】
しかし、入力信号の電力Pinが10dBm程度であると、電圧振幅Vga1が1Vを超える程になり、前段トランジスタ901の閾値を超えるときに前段トランジスタ901がオン状態となる。そして、前段トランジスタ901がオン状態となることで、後段トランジスタ902のゲート電圧にも振幅が生じ、0.5Vを超えるような電圧振幅Vga2が生じている。その結果、後段トランジスタ902の閾値を超えるような電圧振幅Vgsaが生じて後段トランジスタ902がオン状態となり、図9Dに示されるように電流Ibが流れ始める。入力信号の電力Pinが20dBmであると各部の電圧振幅はさらに増大し、より多くの電流Ibが流れる。すなわち、スタンバイモードであるにも関わらず、2段増幅器900に不要な電流Ibが流れて消費電力が増大することになる。
【0011】
このように多段増幅器の用途として好適な、高周波機器に用いられるLNAへの大電力信号の入力を回避する技術として、特許文献1には、高周波機器のフロントエンド回路において、入力される高周波信号(RF信号)のバイパス経路を設けることが開示されている。特許文献1の開示では、入力されるRF信号の電力が一定以上に大きいときには、RF信号の伝播経路が、LNAを通らないバイパス経路へと切り替えスイッチを用いて切り替えられる。
【0012】
また、特許文献2には、図10に示されるように、切り替えスイッチなどを介さずにRF信号をRF信号増幅用トランジスタ931に入力しながら、RF信号のバイパス時には、RF信号増幅用トランジスタ931をオフ状態にすることが開示されている。すなわち、図10の利得可変増幅回路930では、スイッチ用トランジスタ932が設けられている。そして、入力端子933に入力されるRF信号にRF信号増幅用トランジスタ931をバイパスさせるときには、制御端子934にロウレベルの電圧が印加される。スイッチ用トランジスタ932がオフ状態となり、RF信号増幅用トランジスタ931のソースとドレインとが直流的に略同電位となる。そのため、そのゲート電圧が閾値を超えなくなってRF信号増幅用トランジスタ931がオフ状態を維持する。その間、入力端子933に与えられたRF信号は、制御端子934へのロウレベル電圧の印加によってバイパス回路935内のトランジスタがオン状態となるためバイパス回路935を通って、増幅されずに(ゲイン0dBで)出力端子936から出力される。
【0013】
一方、RF信号増幅用トランジスタ931にRF信号を増幅させる場合は、制御端子934にハイレベル電圧が入力される。バイパス回路935内のトランジスタがオフ状態にンなると共に、スイッチ用トランジスタ932がオン状態となる。そのため、RF信号増幅用トランジスタ931のソース電圧が低下し、そのゲート電圧が閾値を超えることとなってRF信号の増幅が行われる。増幅されたRF信号は出力端子936から出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平10-84300号公報
【特許文献2】特許第3983511号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Zhe-Yang Huang et al.,“A 0.18um CMOS Current Reused Low-Noise Amplifier with Gain Compensated for Ultra-Wideband Wireless Receiver”ITC-CSCC 2008 pp.437-440
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1に開示の構成では、RF信号がバイパス経路へとバイパスされずにLNAによって増幅されるときにも、RF信号は、LNAに入力される前に、RF信号の伝播経路の切り替えスイッチを通過する。切り替えスイッチは、電界効果トランジスタなどで構成される。そのため、LNAによるRF信号の増幅時には、この切り替えスイッチに用いられるトランジスタのオン抵抗により、増幅器全体の雑音指数(NF:Noise Figure)が劣化するという問題がある。一方、特許文献2に開示の構成では、図10に示されるRF信号増幅用トランジスタ931の入力側(ゲート側)にはトランジスタは配置されていない。しかし、RF信号増幅用トランジスタ931のソースとGNDとの間には、スイッチ用トランジスタ932、さらに、トランジスタ937及び抵抗938が配置されている。RF信号増幅用トランジスタ931は利得可変増幅器930の初段の増幅回路を構成しているので、そのソースに接続された抵抗成分は、やはり利得可変増幅器930のNFを劣化させる。特許文献2では、高周波成分がスイッチ用トランジスタ932などをバイパスするように、RF信号増幅用トランジスタ931のソースとGNDとの間にキャパシタ939が配置されている。しかし、NFの劣化を防止するには、キャパシタ939において、スイッチ用トランジスタ932などの抵抗成分がRF信号の周波数帯において無視できるほど大きなキャパシタンスが必要になる。すなわち、大きなサイズのキャパシタを設ける必要があるため、高周波増幅器の小型化が阻害されることがある。特に、半導体チップ上で高周波増幅器を実現する場合、そのような大型のキャパシタは、非常に大きな専有面積を必要としてチップ面積を増大させるため、問題となり易い。
【0017】
本発明は、このような問題に鑑み、高周波信号を多段階に増幅する半導体増幅器において、増幅機能の停止中の意図しない信号の入力による不要な消費電流の増大を、増幅器のNFなどの特性劣化や大型化を伴わずに防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一実施形態の半導体増幅器は、第1制御端子と、前記第1制御端子の状態に応じた電流が流れる第1高位側端子及び第1低位側端子と、を有していて前記第1制御端子で受け取る入力信号を増幅する第1トランジスタと、直流を遮断するように前記第1高位側端子に接続されている第2制御端子と、前記第2制御端子の状態に応じた電流が流れる第2高位側端子及び第2低位側端子とを有していて、前記第2制御端子で受け取る信号を増幅して得られる出力信号を前記第2高位側端子から出力する第2トランジスタと、を含んでいて、前記第2低位側端子と前記第1高位側端子との間に直流電流の通電経路を備えている。一実施形態の半導体増幅器は、さらに、前記第2高位側端子と前記第2低位側端子との間に接続されている抵抗素子と、前記通電経路の導通状態を切り替える第1スイッチと、を含んでいる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の半導体増幅器によれば、高周波信号を多段階に増幅する半導体増幅器において、増幅機能の停止中の意図しない信号の入力による不要な消費電流の増大を、増幅器の雑音指数などの特性劣化や大型化を伴わずに防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態の半導体増幅器の一例を示す回路図である。
図2】本発明の第2実施形態の半導体増幅器の一例を示す回路図である。
図3】シミュレーションによる第1及び第2の実施形態の半導体増幅器の効果を示すプロット図である。
図4】本発明の第3実施形態の半導体増幅器の一例を示す回路図である。
図5A】シミュレーションによる第1~第3の実施形態の半導体増幅器のゲインの周波数特性を示すプロット図である。
図5B】シミュレーションによる第1~第3の実施形態の半導体増幅器の雑音指数の周波数特性を示すプロット図である。
図6】本発明の第1実施形態の半導体増幅器の変形例を示す回路図である。
図7】従来のカレントリユース方式の2段増幅回路を示す回路図である。
図8】高周波信号の増幅器の用途の一例である無線送受信機のフロントエンドを示す回路図である。
図9A図7の従来の2段増幅器についてのシミュレーション結果を示すプロット図である。
図9B図7の従来の2段増幅器についてのシミュレーション結果を示すプロット図である。
図9C図7の従来の2段増幅器についてのシミュレーション結果を示すプロット図である。
図9D図7の従来の2段増幅器についてのシミュレーション結果を示すプロット図である。
図10】従来の利得可変増幅回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面を参照しながら本発明の半導体増幅器の幾つかの実施形態を説明する。しかし、本発明の半導体増幅器は、以下に説明される実施形態に限定されない。
【0022】
<第1実施形態>
図1には、第1実施形態の半導体増幅器の一例である半導体増幅器100が示されている。なお、図1は、第1実施形態の半導体増幅器が備え得る主要な回路要素の一部だけを示している場合があり、第1実施形態の半導体増幅器は、図1に示されていない回路要素を含むこともある。これは、後に参照する図2図4、及び図6に示される各実施形態の半導体増幅器にも該当する。
【0023】
図1に示されるように、本実施形態の半導体増幅器100は、第1トランジスタ1と、第2トランジスタ2と、を含んでいる。第1トランジスタ1は、制御端子1a(第1制御端子)と、高位側端子1b(第1高位側端子)と、低位側端子1c(第1低位側端子)と、を有している。第1トランジスタ1の高位側端子1b及び低位側端子1cには、制御端子1aの状態に応じた電流が流れる。第1トランジスタ1は、制御端子1aで受け取る入力信号を増幅する。第2トランジスタ2は、制御端子2a(第2制御端子)と、高位側端子2b(第2高位側端子)と、低位側端子2c(第2低位側端子)と、を有している。第2トランジスタ2の高位側端子2b及び低位側端子2cには、制御端子2aの状態に応じた電流が流れる。第2トランジスタ2は、制御端子2aで受け取る信号を増幅して得られる出力信号を高位側端子2bから出力する。
【0024】
本実施形態の半導体増幅器100は、さらに、抵抗素子(第1抵抗素子)81と、第1スイッチ30と、容量素子7と、抵抗素子83と、を含んでいる。図1の例の半導体増幅器100において第1スイッチ30は、第3トランジスタ3を含んでいる。第3トランジスタ3は、制御端子3a(第3制御端子)と、高位側端子3b(第3高位側端子)と、低位側端子3c(第3低位側端子)と、を有している。高位側端子3bと低位側端子3cとの間の導通状態が制御端子3aによって制御される。高位側端子3bと低位側端子3cとが導通しているときに、高位側端子3bは、第2トランジスタ2の低位側端子2cからの電流を第3トランジスタ3に流入させ、低位側端子3cは、第1トランジスタ1の高位側端子1bへと流れる電流を第3トランジスタ3から流出させる。容量素子7は、制御端子3aと低位側端子3cとの間に接続されている。
【0025】
図1の例の半導体増幅器100は、さらに、容量素子7a、7b、7c、7d、及び抵抗素子8a、8b、誘導素子9a、9bを含んでいる。また、半導体増幅器100には、第1バイアス端子11、第2バイアス端子12、電源端子13、入力端子14、出力端子15、及び第1スイッチ端子16が備えられている。容量素子7a、7b、7c、7d、及び抵抗素子8a、8b、誘導素子9a、9bは、それぞれ、図7のキャパシタ903、904、905、906、抵抗907、908、インダクタ909、901と同様の機能を有する。第1トランジスタ1、第2トランジスタ2は、それぞれ、図7の前段トランジスタ901、後段トランジスタ902と同様の機能を有し得る。本実施形態の半導体増幅器100は、主に、抵抗素子81及び第1スイッチ30を備えている点で、図7の2段増幅器900と異なる。
【0026】
第2トランジスタ2の制御端子2aは、容量素子7bを介して第1トランジスタ1の高位側端子1bに接続されている。そのため、第1トランジスタ1の高位側端子1bから第2トランジスタ2の制御端子2aには、時間と共にレベルを変化させる信号だけが伝播し、直流成分は遮断される。すなわち、制御端子2aは、直流を遮断するように高位側端子1bに接続されている。
【0027】
第2トランジスタ2の低位側端子2cと第1トランジスタ1の高位側端子1bとは、誘導素子9aと第1スイッチ30とを介して接続されている。一定以上の周波数を有する高周波信号は、第1スイッチ30の開閉状態に依らず、誘導素子9a及び容量素子7cの作用により、第2トランジスタ2の低位側端子2cから第1トランジスタ1の高位側端子1bに略伝播しない。しかし、直流電流は、第1スイッチ30が閉状態でさえあれば、低位側端子2cから高位側端子1bへと流れることができる。半導体増幅器100は、このように、第2トランジスタ2の低位側端子2cと第1トランジスタ1の高位側端子1bとの間に直流電流の通電経路Pを備えている。第1スイッチ30は、第2トランジスタ2の低位側端子2cと第1トランジスタ1の高位側端子1bとの間、すなわち、通電経路Pの経路上に配置されている。従って、第1スイッチ30は、自身の開閉状態を遷移させることによって、直流電流が流れる通電経路Pの導通状態を切り替える。
【0028】
抵抗素子81は、第2トランジスタ2の高位側端子2bと低位側端子2cとの間に接続されている。そのため、低位側端子2cから第2トランジスタ2の外側(GND側)をみたときのインピーダンスが高ければ高い程、低位側端子2cの電位は高位側端子2bの電位へと近づく。例えば低位側端子2cが実質的にオープンの状態であれば、低位側端子2cの電位は高位側端子2bの電位と略等しい。本実施形態の半導体増幅器100では、低位側端子2cは、容量素子7cを介してGNDに接続されると共に通電経路Pに接続されている。従って、通電経路Pが導通していない場合には、低位側端子2cは直流的にはオープン状態となって、低位側端子2cの電位は高位側端子2bの電位と略同じになる。低位側端子2cの電位が高いと、制御端子2aの電位が意図せず高まっても、第2トランジスタ2がオン状態になり難くなる。
【0029】
そして、本実施形態の半導体増幅器100は、前述したように、通電経路Pの導通状態を制御する第1スイッチ30を備えている。すなわち、第1スイッチ30を開状態にすることによって、通電経路Pを非導通の状態にすることができる。本実施形態の半導体増幅器100は、このような抵抗素子81及び第1スイッチ30を含んでいるので、後述するように、第1トランジスタ1及び第2トランジスタ2に流れる電流を抑制することができる。
【0030】
<各構成要素同士の接続>
入力端子14には、半導体増幅器100で増幅される高周波信号が入力される、入力端子14は容量素子7aの一端に接続されており、容量素子7aの他端は第1トランジスタ1の制御端子1a及び抵抗素子8aの一端に接続され、抵抗素子8aの他端は第1バイアス端子11に接続されている。第1トランジスタ1の低位側端子1cはGNDに接続されており、高位側端子1bは容量素子7bの一端に接続され、容量素子7bの他端は第2トランジスタ2の制御端子2aに接続されている。第2トランジスタ2の制御端子2aには、抵抗素子8bを介して第2バイアス端子12が接続されている。
【0031】
第1トランジスタ1の高位側端子1bは、誘導素子9aの一端にも接続されており、誘導素子9aの他端は第3トランジスタ3の低位側端子3c(第1スイッチ30の一端)に接続されている。第3トランジスタ3の制御端子3aは抵抗素子83の一端に接続されており、抵抗素子83の他端は第1スイッチ端子16に接続されている。前述したように第3トランジスタ3の制御端子3aと低位側端子3cとの間に容量素子7が接続されている。
【0032】
第3トランジスタ3の高位側端子3b(第1スイッチ30の他端)は、容量素子7cの一端と第2トランジスタ2の低位側端子2cに接続されており、容量素子7cの他端はGNDに接続されている。第2トランジスタ2の高位側端子2bは、誘導素子9bを介して電源端子13に接続されると共に、容量素子7dを介して出力端子15に接続されている。前述したように第2トランジスタ2の高位側端子2bと低位側端子2cとの間に抵抗素子81が接続されている。出力端子15から、半導体増幅器100によって増幅された高周波信号が出力される。
【0033】
第1トランジスタ1、第2トランジスタ2、及び第3トランジスタ3は、図1の例では、全てn型電界効果トランジスタ(n型FET)である。従って、図1の例において、制御端子1a、制御端子2a、及び制御端子3aはゲート端子(又は半導体チップ上のゲート領域)である。また、「高位側端子」は、第1~第3の各トランジスタの三つの端子のうち、「制御端子」以外の二つの端子のうちの高電位側の端子であり、「低位側端子」は、その二つの端子のうちの低電位側の端子である。従って、図1の例において、高位側端子1b、高位側端子2b、及び高位側端子3bは、いずれもドレイン端子(又は半導体チップ上のドレイン領域)であり、低位側端子1c、低位側端子2c、及び低位側端子3cは、いずれもソース端子(又は半導体チップ上のソース領域)である。
【0034】
第1トランジスタ1、第2トランジスタ2、及び第3トランジスタ3は、図1の例と異なり、p型電界効果トランジスタ(p型FET)であってもよい。その場合、高位側端子1b、高位側端子2b、及び高位側端子3bは、いずれもソース端子(又は半導体チップ上のソース領域)であり得、低位側端子1c、低位側端子2c、及び低位側端子3cは、いずれもドレイン端子(又は半導体チップ上のドレイン領域)であり得る。
【0035】
また、第1トランジスタ1、第2トランジスタ2、及び第3トランジスタ3は、全てバイポーラ(接合型)トランジスタであってもよい。その場合、制御端子1a、制御端子2a、及び制御端子3aはベース端子(又は半導体チップ上のベース領域)であり得る。そしてこれら各トランジスタがnpnトランジスタである場合は、高位側端子1b、高位側端子2b、及び高位側端子3bは、いずれもコレクタ端子(又は半導体チップ上のコレクタ領域)であり得、低位側端子1c、低位側端子2c、及び低位側端子3cは、いずれもエミッタ端子(又は半導体チップ上のエミッタ領域)であり得る。一方、これら各トランジスタがpnpトランジスタである場合は、高位側端子1b、高位側端子2b、及び高位側端子3bは、いずれもエミッタ端子(又は半導体チップ上のエミッタ領域)であり得、低位側端子1c、低位側端子2c、及び低位側端子3cは、いずれもコレクタ端子(又は半導体チップ上のコレクタ領域)であり得る。
【0036】
第1スイッチ30は、上記の通り、図1の例では、電界効果トランジスタ(FET)を含んでおり、略FETだけで構成されている。しかし、第1スイッチ30は、FET又はバイポーラトランジスタなどのトランジスタでなくてもよく、通電経路Pの導通状態を切り替えられるものであって、意図されるときに通電経路Pを非導通にできるものであればよい。なお通電経路Pの「非導通」は、一例として、第1スイッチ30を挟む通電経路Pの二つのノード間の抵抗が10MΩ以上であることを意味する。
【0037】
容量素子7、容量素子7a~7dは、任意の特性を有するキャパシタ(コンデンサ)などのような、主に容量性リアクタンスを有する受動素子であり得、誘導素子9a、9bは、任意の特性を有するインダクタ(コイル)などのような、主に誘導性リアクタンスを有する受動素子であり得る。
【0038】
<本実施形態の半導体増幅器の作用>
電源端子13には、直流電源(図示せず)から電源電圧VDDが供給される。例えば3V~20V程度の電源電圧VDDが供給される。半導体増幅器100に入力信号を増幅させるとき(例えば先に参照した図8のフロントエンド920のLNA924として半導体増幅器100が用いられ、フロントエンド920が受信モードで動作するとき)は、第1バイアス端子11及び第2バイアス端子12に、FETである第1及び第2トランジスタ1、2を飽和領域内の動作点で動作させる電圧が印加される。さらに、第1スイッチ端子16には、第3トランジスタ3をオン状態にする電圧が印加される。
【0039】
一例として電源電圧VDDが5Vであるとき、第1バイアス端子11、第2バイアス端子12に、0.5V、2.5Vが、それぞれ印加され、第1スイッチ端子16に5Vが印加される。なおFETである第1及び第2のトランジスタ1、2の「飽和領域」(第1及び第2のトランジスタ1、2がバイポーラトランジスタである場合は「活性領域」)は、各制御端子1a、2aの電圧に応じて、高位側端子1b、低位側端子1c、高位側端子2b、及び低位側端子2cに流れる電流が変化する領域である。
【0040】
第1トランジスタ1及び第2トランジスタ2が飽和領域で動作するので、各トランジスタにおいて、それぞれの制御端子1a、1bに入力される信号の増幅が行われる。すなわち、入力端子14に入力された高周波信号は、第1トランジスタ1で増幅されて高位側端子1bから出力される。その増幅後の信号は、誘導素子9aが介在するため通電経路Pには略伝播せずに、容量素子7bを通って第2トランジスタ2の制御端子2aに入力される。制御端子2aに入力された信号は、さらに第2トランジスタ2で増幅されて高位側端子2bから出力され、誘導素子9bで遮断されるため電源端子13には伝播せずに、容量素子7dでカップリングされた出力端子15から出力される。このようにして、半導体増幅器100によって2段階の増幅が行われる。
【0041】
この増幅動作において、電源端子13から半導体増幅器100内を流れる直流電流は、第2トランジスタ2の高位側端子2bから低位側端子2cへと流れ、容量素子7cでカップリングされたGNDには略流れずに、オン状態の第3トランジスタ3に流入する。第3トランジスタ3から流出した電流は、誘導素子9aを通り、さらに第1トランジスタ1の高位側端子1b及び低位側端子1cを経てGNDに流れる。このように、半導体増幅器100において増幅が行われている間、電源端子13からの電流が第1トランジスタ1と第2トランジスタ2との間で共用される。換言すると、第2トランジスタ2の増幅動作に用いられた電流が第1トランジスタ1での増幅動作に再利用される。そのため、半導体増幅器100の消費電力を少なくすることができる。
【0042】
一方、半導体増幅器100に入力信号の増幅をさせないとき(例えば先に参照した図8のフロントエンド920のLNA924として半導体増幅器100が用いられ、フロントエンド920が送信モードで動作するとき)は、第1バイアス端子11及び第2バイアス端子12に、第1及び第2トランジスタ1、2を遮断領域へと制御する電圧が印加される(半導体増幅器100が入力信号を増幅しないモードは、以下では「スタンバイモード」とも称される)。一例として、第1バイアス端子11及び第2バイアス端子12それぞれに0V(GND電位)が印加される。なお、第1バイアス端子11及び第2バイアス端子12のいずれか一方だけに、第1トランジスタ1又は第2トランジスタ2を遮断領域へと制御する電圧が印加されてもよい。これら両トランジスタの一方だけを遮断領域へと制御するだけでも、半導体増幅器100に増幅動作をさせないようにすることができる。
【0043】
そして、第1スイッチ端子16には、第1スイッチ30を開状態にする、すなわち、通電経路Pを非導通の状態にする電圧が印加される。具体的には、第1スイッチ30を構成する第3トランジスタ3をオフ状態にする電圧が、第1スイッチ端子16から抵抗素子83を介して第3トランジスタ3の制御端子3aに印加される。一例として、第1スイッチ端子16に0V(GND電位)が印加される。このように、図1の半導体増幅器100において第1スイッチ30は、第1トランジスタ1及び第2トランジスタ2の少なくとも一方、又は両方が遮断領域へと制御されるときに通電経路Pを非導通にするようにバイアスされる第3トランジスタ3の制御端子3aを有している。なお、第3トランジスタ3をオフ状態にすべく第1スイッチ端子16に与えられる電気量は、電圧に限定されず、例えば第3トランジスタ3がバイポーラトランジスタである場合には、電流であってもよい。
【0044】
スタンバイモードにおいて、高周波信号が入力端子14から入力されると、第1トランジスタ1の制御端子1aに電圧振幅が発生する。第1トランジスタ1は遮断領域にあるため、容易にはオン状態にならない。しかし、入力端子14に大きな振幅を有する大電力の高周波信号が入力されると、制御端子1a(ゲート端子)と低位側端子1c(ソース端子)との電位差が第1トランジスタ1の閾値を越えて第1トランジスタ1がオン状態になることがある。そのオン状態の第1トランジスタ1の高位側端子1b(ドレイン端子)から漏れた高周波信号は、第2トランジスタ2制御端子2a(ゲート端子)に電圧振幅を発生させる。しかし、通電経路Pが第1スイッチ30によって非導通状態になっているため、第2トランジスタ2の低位側端子2c(ソース端子)の電位は、前述したように抵抗素子81を介して接続されている高位側端子2b(ドレイン端子)の電位と略同電位となるほど高まっている。そのため、制御端子2aと低位側端子2cとの間の電位差は、第2トランジスタ2の閾値電圧を越えるほど大きくなり難く、第2トランジスタ2がオン状態となることが抑制される。
【0045】
このように、スタンバイモード時に、第1スイッチ30を開状態(第3トランジスタ3をオフ状態)にすることで、第2トランジスタ2の低位側端子2cの電位の低下を抑制して第2トランジスタ2がオン状態になるのを防ぐと共に、第2トランジスタ2から流出した電流が第1トランジスタ1へと向かう流路(通電経路P)を遮断することができる。
【0046】
なお、第1トランジスタ1の高位側端子1bから漏れた高周波信号が、誘導素子9aを通過して第3トランジスタ3の低位側端子3c(ソース端子)まで伝播して、低位側端子3cに電圧振幅を発生させることがある。この電圧振幅によって、第3トランジスタ3の制御端子3a(ゲート端子)と低位側端子3cとの間の電位差が第3トランジスタ3の閾値電圧を越えると、第3トランジスタ3がオン状態(第1スイッチ30が閉状態)になってしまう。その防止のために、容量素子7が、制御端子2aと低位側端子2cとの間に接続されている。容量素子7でこれら両端子間を高周波的に容量結合することによって、高周波信号が第1トランジスタ1から第3トランジスタ3へと伝播してきても、第3トランジスタ3の制御端子3aと低位側端子3cとの間の電位差の増大が防止され、第3トランジスタ3のオフ状態が維持される。
【0047】
このように、スタンバイモード時に入力端子14から大きな電力の高周波信号が入力されても、第2トランジスタ2がオン状態にならないため、電源端子13から流れる電流は増加し難い。第2トランジスタ2に接続される抵抗素子81は、後述のように適度に高い抵抗値を有していれば、第2トランジスタ2、乃至半導体増幅器100における高周波信号の増幅特性に影響を与えない。第1スイッチ30も、直流電流の経路である通電経路Pに配置されているため、高周波信号の増幅特性に影響を及ぼさない。さらに、高周波信号が伝播する第1トランジスタ1の制御端子1a側、及び低位側端子1c側には何ら回路素子が追加されていないので、従来の半導体増幅器と比べて、雑音指数が劣化することもない。雑音指数の劣化の懸念がないため、大きなキャパシタンスを有するキャパシタのような、雑音指数劣化防止のための大型の部品を新たに配置する必要もない。従って、本実施形態の半導体増幅器によれば、高周波信号を多段階に増幅する半導体増幅器において、増幅機能の停止中の意図しない信号の入力による不要な消費電流の増大を、増幅器の雑音指数などの特性劣化や、大型化を伴わずに防ぐことができる。
【0048】
容量素子7、容量素子7a~7d、誘導素子9a、9b、抵抗素子81、83、及び抵抗素子8a~8bは、半導体増幅器100に求められる特性や半導体増幅器100に入力される高周波信号の信号レベルや周波数に応じた適切な範囲の任意のキャパシタンス、インダクタンス、又は抵抗値を有し得る。
【0049】
一例として、半導体増幅器100には、数MHz~数百GHzの周波数の高周波信号が入力される。入力信号の周波数が数GHz程度である場合、容量素子7のキャパシタンスは、例えば0.1pF~1pF程度であり得る。第3トランジスタ3の制御端子3aと低位側端子3cとを高周波信号に対して容量結合することができ、前述のように、第1トランジスタ1側から高周波信号が伝播してきても、第3トランジスタ3のオフ状態を維持することができる。また、入力信号の周波数が上記のように数MHz~数百GHzである場合、容量素子7a~7dは、0.1pF~数百pF程度であり得る。半導体増幅器100内を伝播する高周波信号に十分に低い伝播経路を提供しつつ直流成分を遮断することができ、しかも小さなサイズで形成されると考えられる。
【0050】
抵抗素子81の抵抗値は、一例として数十kΩ以上、1MΩ以下程度であり得る。第2トランジスタ2による増幅特性に略影響を与えずに、且つ、前述したように第2トランジスタ2の低位側端子2cが実質的にオープン状態の時の低位側端子2cの電位を高めることができる。なお抵抗素子83、及び抵抗素子8a、8bは、一例として10kΩ~100kΩ程度であり得、第1~第3のトランジスタ1~3それぞれの制御端子1a、2a、3aへの突入電流を制限する。
【0051】
第1トランジスタ1、第2トランジスタ2、及び第3トランジスタ3の特性は、上記の各受動素子同様、半導体増幅器100に求められる特性や半導体増幅器100に入力される高周波信号の信号レベルや周波数に応じた適切な特性を有している。例えばFETである第1~第3のトランジスタ1~3のオン抵抗が小さいと、ゲインロスが少なく、よって高いゲインを有すると共に、良好な雑音指数を有する半導体増幅器100が得られる。しかし、FETである各トランジスタのゲート幅を、低いオン抵抗を有するべく拡大することは、各トランジスタのオフ時の特性の劣化を招くことがある。例えばオフ時のゲート容量が増大してしまい、オフ状態の各トランジスタに伝播してくる高周波信号によって意図せずオン状態に転じることがある。従って、無暗にゲート幅が拡大されるのではなく、適度な大きさのゲート幅が選択される。例えば、数MHz~数百GHzの周波数の高周波信号が入力される半導体増幅器100を構成する第1~第3のトランジスタ1~3それぞれが半導体チップ上で実現される場合のゲート幅は、500μm以上、2000μm以下程度であり得る。
【0052】
なお、第1~第3のトランジスタ1~3は、それぞれエンハンスメント型のFETであってもよく、デプレッション型のFETであってもよい。しかし、各制御端子1a~3aへの入力にGND電位を用いることで容易に各トランジスタを遮断領域へと制御することが可能な点などから、エンハンスメント型が好ましいことがある。
【0053】
<第2実施形態>
図2には、第2実施形態の半導体増幅器の一例である半導体増幅器102が示されている。半導体増幅器102は、図1の半導体増幅器100が含む構成要素に加えて、さらに、第2スイッチ40、抵抗素子82(第2抵抗素子)、及び抵抗素子84を含んでいる。図2の半導体増幅器102は、第2スイッチ40、抵抗素子82、84を含んでいることを除いて、図1の半導体増幅器100と同じ構成を有していて同じ構成要素を含んでいる。半導体増幅器100に含まれる構成要素と同様の構成要素については図1において付されている符号と同じ符号が図2において付されるか適宜省略され、それら同様の構成要素についての重複する説明は省略される。
【0054】
第2スイッチ40は、第1スイッチ30と第2トランジスタ2の低位側端子2c(第2低位側端子)との間の通電経路Pに設けられている。図2の例において第2スイッチ40は、第4トランジスタ4を含んでいる。第4トランジスタ4は、制御端子4a(第4制御端子)と、制御端子4aによって互いの間の導通状態が制御される二つの端子(高位側端子4b及び低位側端子4c)とを有している。第4トランジスタ4の高位側端子4b(第2スイッチ40の一端)は、第2トランジスタ2の低位側端子2cに接続されている。そのため、第4トランジスタ4の高位側端子4b及び低位側端子4cには、第2トランジスタ2の低位側端子2cから流れてくる電流が流れる。第4トランジスタ4の低位側端子4c(第2スイッチ40の他端)は、第3トランジスタ3の高位側端子(第1スイッチ30の他端)に接続されている。抵抗素子82は、第4トランジスタ4の高位側端子4bと低位側端子4cとの間に接続されている。第4トランジスタ4の制御端子4aは、抵抗素子84の一端に接続され、抵抗素子84の他端は、一端が第3トランジスタ3の制御端子3aに接続されている抵抗素子83の他端と共に、第1スイッチ端子16に接続されている。すなわち、第3トランジスタ3の制御端子3aと第4トランジスタ4の制御端子4aとは、共通のノード(第1スイッチ端子16)に接続されている。
【0055】
第4トランジスタ4は、図2の例では、n型FETである。従って、図1の例において、制御端子4aはゲート端子であり、高位側端子4bはドレイン端子であり、低位側端子4cはソース端子である。第4トランジスタ4は、図2の例と異なり、p型FETであってもよい。その場合、高位側端子4bはソース端子であり得、低位側端子4cはドレイン端子であり得る。また、第4トランジスタ4はバイポーラトランジスタであってもよく、その場合、制御端子4aはベース端子であり得、高位側端子4b及び低位側端子4cは、第4トランジスタ4の接続型式(npn型又はpnp型)に応じて、コレクタ端子又はエミッタ端子であり得る。なお、後述の第5トランジスタ5及び第6トランジスタ6(図4参照)は、第1~第4の各トランジスタと同様に、n型又はp型のFETであり得、npn型又はpnp型のバイポーラトランジスタであってもよい。第5及び第6の各トランジスタの制御端子は、これら各トランジスタの形式に応じてゲート端子又はベース端子であり得、高位側端子及び低位側端子は、それぞれ、各トランジスタの形式や導電型若しくは接続型式に応じて、ドレイン端子、ソース端子、コレクタ端子、又はエミッタ端子であり得る。
【0056】
第2スイッチ40は、図2の例では、FETである第4トランジスタ4だけで構成されている。しかし、第2スイッチ40は、FET又はバイポーラトランジスタなどのトランジスタでなくてもよく、通電経路Pの導通状態を切り替えられるものであって、意図されるときに通電経路Pを非導通にできるものであればよい。
【0057】
半導体増幅器102に入力信号を増幅させるときは、第1スイッチ端子16には、第3トランジスタ3をオン状態にすると共に第4トランジスタ4をオン状態にする電圧が印加される。例えば電源電圧VDDが5Vであるとき、第1スイッチ端子16に5Vが印加される。図1の例の半導体増幅器100と同様に、半導体増幅器102によって2段階の増幅が行われる。また、第2トランジスタ2の増幅動作に用いられた電流が第1トランジスタ1での増幅動作に再利用される。
【0058】
そして、半導体増幅器102をスタンバイモードにするときは、第1スイッチ30が開状態にされ、さらに、第2スイッチ40を開状態にする(具体的には第2スイッチ40を構成する第4トランジスタ4をオフ状態にする)電圧が、第1スイッチ端子16から抵抗素子84を介して第4トランジスタ4の制御端子4aに印加される。一例として、第1スイッチ端子16に0V(GND電位)が印加される。前述したように、第3トランジスタ3の制御端子3aと第4トランジスタ4の制御端子4aとは、共通のノード(第1スイッチ端子16)に接続されている。そのため、第1スイッチ30と第2スイッチ40の両方を容易に開状態にすることができる。なお、第4トランジスタ4をオフ状態にすべく第1スイッチ端子16に与えられる電気量は、電圧に限定されず、電流であってもよい。
【0059】
第2実施形態の半導体増幅器102は、第1スイッチ30に加えて第2スイッチ40も含んでいるので、スタンバイモード時に通電経路Pの遮断状態をより確実に維持することができ、第1トランジスタ1及び第2トランジスタ2に電流が流れることを、より強固に防ぐことができる。従って、第2実施形態の半導体増幅器102によれば、より大きな電力の高周波信号がスタンバイモード時に入力されても、不要な消費電流の増大を防ぐことができる。
【0060】
加えて、図2の例の半導体増幅器102は抵抗素子82を含んでいる。抵抗素子82によって、第1スイッチ30が開状態であって第4トランジスタ4もオフ状態であるスタンバイモード時における第4トランジスタ4の低位側端子4c(ソース端子)の電位は、高位側端子4b(ドレイン端子)と略同電位となるほど高められる。この作用は、前述した第2トランジスタ2に対する抵抗素子81の作用と同様である。そのため、制御端子4aと低位側端子4cとの間の電位差は、第4トランジスタ4の閾値電圧を越えるほど大きくなり難く、第4トランジスタ4がオン状態となることが抑制される。抵抗素子82の抵抗値は、一例として数十kΩ以上、1MΩ以下程度であり得る。前述したようにスタンバイモード時に第4トランジスタ4の低位側端子4cの電位を高めることができる。
【0061】
なお、第2実施形態において抵抗素子82が設けられないこともある。抵抗素子82が設けらず、第2スイッチ40を含んでいるだけでも、第2実施形態において第1実施形態よりも、スタンバイモード時の消費電流の増大をより強固に防ぎ得ることがある。
【0062】
なお、第2実施形態においても、第2スイッチ40は直流電流の経路である通電経路Pに配置されているため、高周波信号の増幅特性に影響を及ぼさない。さらに、高周波信号が伝播する第1トランジスタ1の制御端子1a側、及び低位側端子1c側には何ら回路素子が追加されていないので、従来の半導体増幅器と比べて、雑音指数が劣化することもない。
【0063】
図3には、シミュレーションによる、従来の半導体増幅器(比較例)に対する、図1の第1実施形態の半導体増幅器100及び図2の第2実施形態の半導体増幅器102それぞれの効果が示されている。すなわち、スタンバイモード時に入力される高周波信号の電力Pin(横軸)に対する、各半導体増幅器に流れる消費電流IDD(縦軸)のシミュレーション結果が示されている。比較例の半導体増幅器は、図1の半導体増幅器100に含まれる抵抗素子81、83、第1スイッチ30、及び容量素子7を含んでいない。シミュレーションに用いられた高周波信号の周波数は3.8GHzであり、電源電圧VDDは5V、抵抗素子81、82それぞれの抵抗値は500kΩ、容量素子7のキャパシタンスは0.5pF、第1~第3のトランジスタ1~3それぞれのゲート幅は1000μmであった。
【0064】
図3に示されるように、比較例では、入力信号の電力が10dBm程度になると、スタンバイモードであるにも拘わらず消費電流IDDが流れ始めるのに対し、第1実施形態及び第2実施形態では、18dBm以上の電力の高周波信号が入力されて、初めて消費電流IDDが流れ始める。また、同一の電力Pinでの比較において、第2実施形態の消費電流IDDは、第1実施形態の消費電流IDDよりも小さい。このように第1及び第2の実施形態では、従来の半導体増幅器に対して消費電流の抑制効果が得られることが解る。また、第1実施形態よりも第2実施形態の方が、その効果が大きいことが解る。
【0065】
<第3実施形態>
図4には、第3実施形態の半導体増幅器の一例である半導体増幅器103が示されている。半導体増幅器103は、図2の半導体増幅器102が含む構成要素に加えて、第5トランジスタ5、スイッチ60(第4スイッチ)、抵抗素子85、及び抵抗素子86を含んでいる。図4の半導体増幅器103は、第5トランジスタ5、スイッチ60、及び抵抗素子85、86を含んでいることを除いて、図2の半導体増幅器102と同じ構成を有していて同じ構成要素を含んでいる。半導体増幅器102に含まれる構成要素と同様の構成要素については図2において付されている符号と同じ符号が図4において付されるか又は適宜省略され、それら同様の構成要素についての重複する説明は省略される。
【0066】
第5トランジスタ5は、図4の例ではn型FETであって、制御端子5a(第5制御端子)と、制御端子5aによって互いの間の導通状態が制御される二つの端子(高位側端子5b及び低位側端子5c)とを有している。第5トランジスタ5は、第1スイッチ30と第1トランジスタ1の高位側端子1b(第1高位側端子)との間の通電経路Pに設けられている。すなわち、第5トランジスタ5の高位側端子5bは、第3トランジスタ3の低位側端子3c(第1スイッチ30の一端)に接続され、低位側端子5cは、誘導素子9aに接続されている。従って、第5トランジスタ5によって通電経路Pの導通状態を切り替えるスイッチ(第3スイッチ)が構成されている。第5トランジスタ5がオン状態にあって通電経路Pが導通状態にあるときには、第1スイッチ30から流れてくる電流が、第5トランジスタ5の高位側端子5b及び低位側端子5cを通って流れる。
【0067】
第5トランジスタ5の制御端子5aは、抵抗素子85の一端に接続されている。抵抗素子85の他端は、一端が第3トランジスタ3の制御端子3aに接続されている抵抗素子83及び、一端が第4トランジスタ4の制御端子4aに接続されている抵抗素子84の他端と共に、第1スイッチ端子16に接続されている。すなわち、第5トランジスタ5の制御端子5aと、第4トランジスタ4の制御端子4aと、第3トランジスタ3の制御端子3aとが、共通のノード(第1スイッチ端子16)に接続されている。
【0068】
スイッチ60は、図4の例ではn型FETである第6トランジスタ6を含んでいて主に第6トランジスタ6によって構成されている。第6トランジスタ6は、制御端子6a(第6制御端子)と、制御端子6aによって互いの間の導通状態が制御される高位側端子6b及び低位側端子6cとを有している。スイッチ60は、第1スイッチ30と第5トランジスタ5との間のノードNとGNDとの間に配置されている。すなわち、スイッチ60の一端(第6トランジスタ6の高位側端子6b)はノードNに接続され、スイッチ60の他端(第6トランジスタ6の低位側端子6c)はGNDに接続されている。第6トランジスタ6の制御端子6aは、抵抗素子86を介して第2スイッチ端子17に接続されている。制御端子6aによってスイッチ60の開閉状態が制御され、スイッチ60によって、ノードNとGNDとの間の接続と分離とが切り替えられる。なお、スイッチ60は、FET又はバイポーラトランジスタなどのトランジスタでなくてもよく、ノードNとGND電位のような定電位との間の接続と分離とを切り替えられるものであればよい。
【0069】
半導体増幅器103に入力信号を増幅させるときは、第1スイッチ端子16には、第3及び第4のトランジスタ3、4をオン状態にすると共に第5トランジスタ5をオン状態にする電圧が印加される。例えば電源電圧VDDが5Vであるとき、第1スイッチ端子16に5Vが印加される。また、第2スイッチ端子17には、スイッチ60を開状態(第6トランジスタ6をオフ状態)にする電圧が印加される。例えば第2スイッチ端子17に0V(GND電位)が印加される。図2の例の半導体増幅器102と同様に、半導体増幅器103によって2段階の増幅が行われる。また、第2トランジスタ2の増幅動作に用いられた電流が第1トランジスタ1での増幅動作に再利用される。
【0070】
そして、半導体増幅器103をスタンバイモードにするときは、第1及び第2のスイッチ30、40が開状態にされ、さらに、第5スイッチ5をオフ状態にする電圧が、第1スイッチ端子16から抵抗素子85を介して第5トランジスタ5の制御端子5aに印加される。一例として、第1スイッチ端子16に0V(GND電位)が印加される。前述したように、第3トランジスタ3の制御端子3a、第4トランジスタ4の制御端子4a、及び第5トランジスタ5の制御端子5aは、共通のノード(第1スイッチ端子16)に接続されている。そのため、第1及び第2のスイッチ30、40を開状態にすると共に容易に第5トランジスタ5をオフ状態にすることができる。
【0071】
さらに、第2スイッチ端子17には、スイッチ60を閉状態にする(具体的には第6トランジスタ6をオン状態にする)電圧が印加される。一例として第2スイッチ端子17に0.7Vが印加される。第6トランジスタ6がオン状態になるので、ノードNが、定電位であるGNDに接続される。すなわち、スイッチ60は、第1スイッチ30及び第2スイッチ40が通電経路Pを非導通にするときに、第1スイッチ30と第5トランジスタ5との間のノードNを定電位に接続する。なお、第5トランジスタ5をオフ状態にすべく第1スイッチ端子16に与えられる電気量、及びスイッチ60を閉状態にすべく第2スイッチ端子17に与えられる電気量は、いずれも電圧に限定されず、電流であってもよい。
【0072】
第3実施形態の半導体増幅器103は、第1及び第2のスイッチ30、40に加えて、通電経路Pを非導通状態にする第5トランジスタ5も含んでいるので、スタンバイモード時に通電経路Pの遮断状態をより確実に維持することができ、第1トランジスタ1及び第2トランジスタ2に電流が流れることを、一層強固に防ぐことができる。従って、第3実施形態の半導体増幅器103によれば、より大きな電力の高周波信号(例えば、図8のようなフロントエンド920における故障したアンテナ921からの反射信号)がスタンバイモード時に入力されても、不要な消費電流の増大を防ぐことができる。
【0073】
また、図4の例の半導体増幅器103は、スイッチ60も含んでいるので、第2実施形態に対して第5トランジスタ5だけが追加される場合と比べて、スタンバイモード時の不要な消費電流の増大を、より確実に防ぐことができる。すなわち、スイッチ60を閉状態にしてノードNをGND電位のような定電位に接続することによって、第1トランジスタ1側から伝播する高周波信号によって第1スイッチ30がオン状態になるのをより確実に防ぐことができる。
【0074】
なお、第3実施形態においても、第5スイッチ5は直流電流の経路である通電経路Pに配置されているため、高周波信号の増幅特性に影響を及ぼさない。さらに、高周波信号が伝播する第1トランジスタ1の制御端子1a側、及び低位側端子1c側には何ら回路素子が追加されていないので、従来の半導体増幅器と比べて、雑音指数が劣化することもない。
【0075】
図5A及び図5Bには、図1の第1実施形態の半導体増幅器100、図2の第2実施形態の半導体増幅器102、及び図4の第3実施形態の半導体増幅器103それぞれにおける高周波信号の増幅特性についてのシミュレーション結果が、従来の半導体増幅器(比較例)についてのシミュレーション結果と共に示されている。図5Aはゲインの周波数特性を示し、図5Bは雑音指数(NF)の周波数特性を示す。シミュレーションに用いられた電源電圧VDD、抵抗素子81、82それぞれの抵抗値、容量素子7のキャパシタンス、及び、第1~第3のトランジスタ1~3それぞれのゲート幅は、図3に結果が示されるシミュレーションに用いられた値と同じである。追加された第5トランジスタ5、第6トランジスタ6のゲート幅は、それぞれ、1000μm、100μmであった。
【0076】
図5A及び図5Bに示されるように、比較例及び第1~第3の実施形態それぞれについてのシミュレーション結果は、ゲインの周波数特性及びNFの周波数特性の何れにおいても全帯域に渡って略重なっている。すなわち、第1~第3の実施形態では従来の半導体増幅器に対して幾つかの回路素子が追加されているが、いずれの実施形態においても、従来の半導体増幅器と比べて高周波信号の増幅特性が劣化しないことが解る。
【0077】
<第1実施形態の変形例>
図6には、図1に一例が示される第1実施形態の半導体増幅器の変形例である半導体増幅器101が示されている。半導体増幅器101は、図1の半導体増幅器100が含む構成要素に加えて、制御回路20を含んでいる。図6の半導体増幅器101は、制御回路20を含んでいることを除いて、図1の半導体増幅器100と同じ構成を有していて同じ構成要素を含んでいる。半導体増幅器100に含まれる構成要素と同様の構成要素については図1において付されている符号と同じ符号が図6において付されるか適宜省略され、それら同様の構成要素についての重複する説明は省略される。
【0078】
制御回路20は、第1トランジスタ1及び第2トランジスタ2を制御すると共に、第1スイッチ30を制御するように構成されている。図6の例において制御回路20は、三つの出力端子21、22、23と、入力端子24とを備えている。出力端子21は、抵抗素子8aを介して第1トランジスタ1の制御端子1aに接続されている。出力端子22は、抵抗素子8bを介して第2トランジスタ2の制御端子2aに接続されている。一方、出力端子23は、抵抗素子83を介して、第1スイッチ30が有する制御端子3aに接続されている。制御回路20は、一例として、半導体増幅器101の動作モードに関して上位の制御装置(図示せず)から送られて入力端子24で受け取る指示に従って、第1及び第2トランジスタ1、2を制御すると共に、第1スイッチ30を通じて通電経路Pの導通状態を制御する。
【0079】
すなわち、半導体増幅器101が入力信号の増幅を行うように制御されるときは、制御回路20は、第1及び第2のトランジスタ1、2においてそれぞれの制御端子1a、2aに入力される高周波信号の増幅が可能になる電圧や電流を、制御端子1a及び制御端子2aに供給する。また、制御回路20は、第1スイッチ30を構成する第3トランジスタ3をオン状態にする電圧や電流を制御端子3aに供給する。
【0080】
一方、半導体増幅器101がスタンバイモードへと制御されるときは、制御回路20は、第1トランジスタ1及び第2トランジスタ2の少なくとも一方を遮断領域へと制御する電圧又は電流を、制御端子1a及び制御端子2aの一方又は両方に供給する。また、制御回路20は、通電経路Pを非導通にすべく、第1スイッチ30を構成する第3トランジスタ3をオフ状態にする電圧や電流を制御端子3aに供給する。このように制御回路20は、第1トランジスタ1及び第2トランジスタ2の少なくとも一方を遮断領域へと制御するときに、通電経路Pを非導通にするように第1スイッチ30を制御するように構成されている。
【0081】
制御回路20は、一例として、入力端子24に入力される信号に応じて所定の電圧や電流を出力するようにプログラムされる信号処理装置によって構成される。或いは制御回路20は、入力端子24の電圧などに応じて所定の電圧や電流を出力するように相互接続された、論理回路素子やアナログ回路素子及び/又は各種の受動素子の組み合わせで構成されてもよい。
【0082】
図6に例示の第1実施形態の変形例のように制御回路20を含むことによって、実施形態の半導体増幅回路における高周波信号を増幅するモードと増幅しないモードとの間の切り替えを容易に行うことができる。なお、制御回路20は、図2の第2実施形態の半導体増幅器、及び図4の第3実施形態の半導体増幅器に含められてもよい。
【符号の説明】
【0083】
100~103 半導体増幅器
1 第1トランジスタ
1a 制御端子(第1制御端子、ゲート端子)
1b 高位側端子(第1高位側端子、ドレイン端子)
1c 低位側端子(第1低位側端子、ソース端子)
2 第2トランジスタ
2a 制御端子(第2制御端子、ゲート端子)
2b 高位側端子(第2高位側端子、ドレイン端子)
2c 低位側端子(第2低位側端子、ソース端子)
20 制御回路
3 第3トランジスタ
3a 制御端子(第3制御端子、ゲート端子)
3b 高位側端子(第3高位側端子、ドレイン端子)
3c 低位側端子(第3低位側端子、ソース端子)
30 第1スイッチ
4 第4トランジスタ
4a 制御端子(第4制御端子、ゲート端子)
4b 高位側端子(ドレイン端子)
4c 低位側端子(ソース端子)
40 第2スイッチ
5 第5トランジスタ
5a 制御端子(第5制御端子、ゲート端子)
60 スイッチ
7、7a~7d 容量素子
81~86、8a、8b 抵抗素子
N 第1スイッチと第5トランジスタとの間のノード
P 通電経路
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10