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特開2024-162623ヘッダー付散気装置、膜分離活性汚泥装置、及び水処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162623
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ヘッダー付散気装置、膜分離活性汚泥装置、及び水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/20 20230101AFI20241114BHJP
   C02F 3/12 20230101ALI20241114BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20241114BHJP
【FI】
C02F3/20 Z
C02F3/12 S
C02F1/44 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078329
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】木子 胤制
【テーマコード(参考)】
4D006
4D028
4D029
【Fターム(参考)】
4D006GA06
4D006GA07
4D006HA01
4D006HA21
4D006HA41
4D006HA77
4D006HA93
4D006JA31A
4D006KA31
4D006KA43
4D006KB22
4D006MA01
4D006MA02
4D006MA03
4D006MC03
4D006MC11
4D006MC22
4D006MC29
4D006MC30
4D006MC62
4D006PA01
4D006PB08
4D006PC62
4D028BC17
4D028BC24
4D028BD06
4D028BD17
4D029AA01
4D029AB05
(57)【要約】
【課題】運転時に設定値以上の気体をヘッダーに供給した場合であってもヘッダーの変形や破損を抑制し、より安定な運転を可能とするヘッダー付散気装置、及びそれを用いた膜分離活性汚泥装置、及び水処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】被処理水中に浸漬される散気装置及びヘッダー114を備え、ヘッダー114が、下部に被処理水流入口が形成された空気を貯留する空気貯留部140と、空気貯留部140内に空気を送り込む給気部142と、空気貯留部140内の空気が送り出される送気部144とを備え、送気部144と前記散気装置とが接続され、ヘッダー114から送られた空気が前記散気装置により散気されるヘッダー付散気装置において、空気貯留部140に、空気貯留部140の下部を補強する補強部材160が、補強部材160の両端部がそれぞれ空気貯留部140の側壁に連結されるように設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水中に浸漬される散気装置及びヘッダーを備え、
前記ヘッダーは、空気を貯留する空気貯留部と、前記空気貯留部内に空気を送り込む給気部と、前記空気貯留部内の空気が送り出される送気部と、を備え、
前記送気部と前記散気装置とが接続され、前記ヘッダーから送られた空気が前記散気装置により散気され、
前記給気部と前記送気部は前記空気貯留部の上部に設けられ、
前記空気貯留部の下部に被処理水流入口が形成され、
前記空気貯留部には前記空気貯留部を補強する補強部材が設けられ、前記補強部材の両端部はそれぞれ前記空気貯留部の側壁に連結されている、ヘッダー付散気装置。
【請求項2】
前記被処理水流入口の開口形状が長方形であり、前記補強部材の両端部が前記被処理水流入口の2つの長辺を形成する対向する側壁にそれぞれ連結されている、請求項1に記載のヘッダー付散気装置。
【請求項3】
前記空気貯留部の高さ方向において前記補強部材を前記被処理水流入口の開口面に投影したとき、前記開口面の面積に対して前記補強部材が占める面積の割合Pが1~50%である、請求項1に記載のヘッダー付散気装置。
【請求項4】
前記被処理水流入口の開口形状が長方形であり、前記空気貯留部の高さ方向において前記補強部材を前記被処理水流入口の開口面に投影したとき、前記被処理水流入口の開口面の長辺上において、前記被処理水流入口の長辺の端と当該端に最も近い前記補強部材との距離が1000mm以下であり、前記補強部材が複数設けられているときの隣り合う前記補強部材同士の距離が1000mm以下である、請求項1に記載のヘッダー付散気装置。
【請求項5】
前記補強部材が板状で、かつ両端部がそれぞれ同じ側に直角に折り曲げられた形状であり、
前記補強部材の折り曲げられた両端部の内面と、対向する側壁の外面とがそれぞれ接するように前記補強部材の両端部が前記対向する側壁に連結されている、請求項1に記載のヘッダー付散気装置。
【請求項6】
前記送気部の前記空気貯留部内に開口した送気口が、前記給気部の前記空気貯留部内に開口した給気口よりも上側に位置している、請求項1に記載のヘッダー付散気装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のヘッダー付散気装置と、活性汚泥を含む汚泥含有処理水を膜分離する膜モジュールと、を備える膜分離活性汚泥装置。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載のヘッダー付散気装置を用いて、活性汚泥を含む汚泥含有処理水を処理する、水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッダー付散気装置、膜分離活性汚泥装置、及び水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業廃水や生活廃水は、廃水中に含まれる有機物等を取り除く処理が施されてから、工業用水として再利用されるか、もしくは河川等に放流される。工業廃水等の処理方法としては、例えば活性汚泥法が挙げられる。活性汚泥法は、曝気して好気的な微生物に有機物等を分解させる方法である。
【0003】
活性汚泥法に分離膜モジュールによる膜ろ過を組み合わせた膜分離活性汚泥(MBR)法も知られている。MBR法による処理では、膜ろ過を継続するにしたがって分離膜表面に有機物等が堆積することにより、ろ過流量の低下や、膜間差圧の上昇が生じることがある。そこで、MBR法による処理では、膜モジュールの下方に設置した散気装置から発生される気泡が膜表面に接触する際の衝撃や、前記気泡に伴う水流によって膜自体を振動させ、膜表面への有機物の堆積を抑制している。
【0004】
通常、散気装置に空気を供給するブロア近傍は気密な接続となっていない。そのため、メンテナンス等の目的で散気装置の運転を停止した場合には、散気管内の空気がブロア側へと逆流し、散気孔から散気管内に被処理水が浸入し、運転を再開した際に散気管内で汚泥が乾燥して硬化することがある。散気装置の運転と停止を繰り返し行うと、散気管内で乾燥汚泥が徐々に大きくなり、散気管が詰まるおそれがある。
【0005】
特許文献1には、下部に被処理水流入口が形成された空気貯留部、ブロアと繋がった給気部、及び散気装置と繋がった送気部を備えるヘッダーを、散気装置の上流側に被処理水に浸漬した状態で設けたヘッダー付散気装置が開示されている。前記ヘッダー付散気装置では、運転を停止した際、給気部の開口が水面によって塞がれるまで被処理水流入口から空気貯留部内に被処理水が流入し、散気装置内には空気が残留したままとなる。そのため、運転と停止を繰り返しても散気装置内に汚泥を含む被処理水が浸入せず、乾燥した汚泥によって散気管が詰まることが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6740475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のようなヘッダー付散気装置において、運転時に設定値以上の気体をヘッダーに供給した場合に、空気貯留部の被処理水流入口から空気が吹き出て気泡が発生すると、その気泡発生によって空気貯留部の側壁が振動することで、空気貯留部に変形や破損が生じるおそれがある。
【0008】
本発明の主たる目的は、運転時に設定値以上の気体をヘッダーに供給した場合であってもヘッダーの変形や破損を抑制し、より安定な運転を可能とするヘッダー付散気装置、及び前記ヘッダー付散気装置を用いた膜分離活性汚泥装置、及び水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の構成を含む。
[1]被処理水中に浸漬される散気装置及びヘッダーを備え、
前記ヘッダーは、空気を貯留する空気貯留部と、前記空気貯留部内に空気を送り込む給気部と、前記空気貯留部内の空気が送り出される送気部と、を備え、
前記送気部と前記散気装置とが接続され、前記ヘッダーから送られた空気が前記散気装置により散気され、
前記給気部と前記送気部は前記空気貯留部の上部に設けられ、
前記空気貯留部の下部に被処理水流入口が形成され、
前記空気貯留部には前記空気貯留部を補強する補強部材が設けられ、前記補強部材の両端部はそれぞれ前記空気貯留部の側壁に連結されている、ヘッダー付散気装置。
[2]前記被処理水流入口の開口形状が長方形であり、前記補強部材の両端部が前記被処理水流入口の2つの長辺を形成する対向する側壁にそれぞれ連結されている、[1]に記載のヘッダー付散気装置。
[3]前記空気貯留部の高さ方向において前記補強部材を前記被処理水流入口の開口面に投影したとき、前記開口面の面積に対して前記補強部材が占める面積の割合Pが1~50%である、[1]又は[2]に記載のヘッダー付散気装置。
[4]前記被処理水流入口の開口形状が長方形であり、前記空気貯留部の高さ方向において前記補強部材を前記被処理水流入口の開口面に投影したとき、前記被処理水流入口の開口面の長辺上において、前記被処理水流入口の長辺の端と当該端に最も近い前記補強部材との距離が1000mm以下であり、前記補強部材が複数設けられているときの隣り合う前記補強部材同士の距離が1000mm以下である、[1]~[3]のいずれかに記載のヘッダー付散気装置。
[5]前記補強部材が板状で、かつ両端部がそれぞれ同じ側に直角に折り曲げられた形状であり、
前記補強部材の折り曲げられた両端部の内面と、対向する側壁の外面とがそれぞれ接するように前記補強部材の両端部が前記対向する側壁に連結されている、[1]~[4]のいずれかに記載のヘッダー付散気装置。
[6]前記送気部の前記空気貯留部内に開口した送気口が、前記給気部の前記空気貯留部内に開口した給気口よりも上側に位置している、[1]~[5]のいずれかに記載のヘッダー付散気装置。
[7][1]~[6]のいずれかに記載のヘッダー付散気装置と、活性汚泥を含む汚泥含有処理水を膜分離する膜モジュールと、を備える膜分離活性汚泥装置。
[8][1]~[6]のいずれかに記載のヘッダー付散気装置を用いて、活性汚泥を含む汚泥含有処理水を処理する、水処理方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、運転時に設定値以上の気体をヘッダーに供給した場合であってもヘッダーの変形や破損を抑制し、より安定な運転を可能とするヘッダー付散気装置、及び前記ヘッダー付散気装置を用いた膜分離活性汚泥装置、及び水処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】膜分離活性汚泥装置を備える水処理装置の一例を示した概略模式図である。
図2】実施形態に係るヘッダー付散気装置の一例を示した正面図である。
図3図2のヘッダー付散気装置におけるヘッダーの断面図である。
図4図2のヘッダー付散気装置におけるヘッダーの底面図である。
図5図4のヘッダーにおける補強部材の斜視図である。
図6】ヘッダーにおける補強部材の設置状態の他の例を示した底面図である。
図7】ヘッダーにおける補強部材の設置状態の他の例を示した底面図である。
図8】ヘッダーにおける空気貯留部の内側に補強部材が配置された一例を示した断面図である。
図9図4のヘッダーにおいて補強部材を被処理水流入口の開口面に投影した状態を示す投影図である。
図10】ヘッダーにおける補強部材の設置状態の他の例を示した図であって、図10(A)は底面図であり、図10(B)は補強部材を被処理水流入口の開口面に投影した状態を示す投影図である。
図11】補強部材の他の例を示した斜視図である。
図12図2のヘッダー付散気装置における散気装置の平面図である。
図13図12の散気装置のI-I断面図である。
図14】散気装置の作動機構を説明する断面図である。
図15】散気装置の作動機構を説明する断面図である。
図16】ヘッダーの作動機構を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の一例について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0013】
〔水処理装置〕
図1は、実施形態に係る膜分離活性汚泥装置100(以下、「MBR装置100」と称することがある。)を備える水処理装置1000の一例を示した概略模式図である。
水処理装置1000は、活性汚泥処理槽11と、活性汚泥処理槽11の後段に設けられた膜分離槽21と、膜分離槽21の後段に設けられた処理水槽41とを備えている。さらに、水処理装置1000は、図示を省略するが、活性汚泥処理槽11に流入する原水の流量を調整する流量調整槽、膜分離槽21から余剰汚泥を引く抜く引抜ポンプ、膜分離槽21に薬液や希釈水を送液する送液手段、及び処理水槽41から工場や河川等に処理水を放流する放流手段等を備えている。
【0014】
活性汚泥処理槽11は、活性汚泥処理を行うために活性汚泥を充填するものである。
活性汚泥処理槽11には、第一の流路12と第二の流路13とが接続されている。第一の流路12は、工場や家庭等から排出された原水を活性汚泥処理槽11に流入させる流路である。第二の流路13は、活性汚泥処理槽11から排出された汚泥含有処理水(被処理水)を膜分離槽21に流入させる流路である。
【0015】
活性汚泥処理槽11内には槽内を好気条件に維持するために曝気装置14が設置されている。
曝気装置14は、活性汚泥処理槽11内で曝気する曝気管14aと、曝気管14aに空気を供給する導入管14bと、空気を送気するブロア14cとを備えている。
曝気管14aとしては、ブロア14cから供給される空気を上方へ吐出できるものであれば特に限定されず、例えば、穴あきの単管やメンブレンタイプのものが挙げられる。
【0016】
膜分離槽21は、活性汚泥処理槽11から送られてきた、活性汚泥及び生物処理水を含む汚泥含有処理水を溜めるものである。
膜分離槽21は、本発明の一態様を適用したMBR装置100を備えている。MBR装置100については後述する。
【0017】
膜分離槽21と活性汚泥処理槽11には汚泥返送手段30が接続されている。汚泥返送手段30は、膜分離槽21から活性汚泥処理槽11に、汚泥含有処理水の一部を返送するものである。
汚泥返送手段30は、第四の流路31を備えている。第四の流路31は、汚泥含有処理水の一部を膜分離槽21から排出し、活性汚泥処理槽11に流入させる流路である。
第四の流路31には、ポンプ31aが設置されている。これにより、膜分離槽21内の汚泥含有処理水の一部を膜分離槽21から活性汚泥処理槽11に返送することができる。
【0018】
処理水槽41は、汚泥含有処理水を膜分離した後の処理水を貯留するものである。
【0019】
<膜分離活性汚泥装置>
MBR装置100は、複数の膜モジュール22と、それら膜モジュール22の下方に設けられたヘッダー付散気装置110と、を備えている。
【0020】
膜モジュール22は、活性汚泥を含む汚泥含有処理水を膜分離するものである。膜モジュール22は分離膜を備え、この分離膜により汚泥含有処理水が生物処理水と活性汚泥とに固液分離(膜分離)される。
【0021】
分離膜としては、分離能を有するものであれば特に限定されず、例えば、中空糸膜、平膜、チューブラ膜、モノリス型膜が挙げられる。これらの中でも、容積充填率が高いことから、中空糸膜が好ましい。
【0022】
分離膜として中空糸膜を用いる場合、その材質としては、例えば、セルロース、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデンフロライド(PVDF)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)が挙げられる。これらの中でも、中空糸膜の材質としては、耐薬品性やpH変化に強い点から、PVDF、PTFEが好ましい。
分離膜としてモノリス型膜を用いる場合は、セラミック製の膜を用いることが好ましい。
【0023】
分離膜に形成される微細孔の平均孔径としては、一般に限外分離膜と呼ばれる膜で0.001~0.1μm程度であり、一般に精密分離膜と呼ばれる膜で0.1~1μm程度である。本実施形態においては平均孔径が前記範囲内である分離膜を用いることが好ましい。
【0024】
膜モジュール22には、第三の流路33が接続されている。第三の流路33は、分離膜を透過した処理水を膜分離槽21から排出し、処理水槽41に流入させる流路である。
第三の流路33には、ポンプ33aが設置されている。これにより、膜モジュール22の分離膜を透過した処理水を膜分離槽21から排出できるようになっている。
【0025】
[ヘッダー付散気装置]
ヘッダー付散気装置110は、図1及び図2に示すように、散気装置112と、散気装置112の上流側に設けられたヘッダー114とを備えている。散気装置112及びヘッダー114は、膜分離槽21内において、いずれも汚泥含有処理水(被処理水)中に浸漬された状態で設けられる。
【0026】
(ヘッダー)
ヘッダー114は、図2及び図3に示すように、空気貯留部140と、給気部142と、送気部144とを備えている。
【0027】
空気貯留部140は、空気を貯留する部分であり、筒状の胴部146と、胴部146の上側の開口端を閉じるように設けられた上板部148とを備えている。空気貯留部140における胴部146の下端側は開口している。すなわち、空気貯留部140は、下部に被処理水流入口140aが形成されている。
空気貯留部140の形状は、特に限定されず、円筒状、多角筒状等が挙げられる。
図4に示す例では、空気貯留部140は四角筒状であり、被処理水流入口140aが長方形状になっている。
【0028】
空気貯留部140を水平方向に切断したときの空気の貯留部分の断面積は、10,000mm以上が好ましく、20,000mm以上1,000,000mm以下がより好ましい。空気貯留部140の前記断面積が前記範囲の下限値以上であれば、空気貯留部140が汚泥で閉塞しにくい。空気貯留部140の前記断面積が前記範囲の上限値以下であれば、散気装置112がコンパクトとなる。
【0029】
ヘッダー114では、空気貯留部140の上板部148に給気部142及び送気部144が設けられている。このように、給気部142及び送気部144は空気貯留部140の上部に設けられている。
ヘッダー114においては、空気貯留部140における送気部144よりも散気装置112から遠い側に給気部142が設けられている。これにより、レイアウトがより単純になり、ヘッダー付散気装置110がよりコンパクトになる。
【0030】
給気部142は、筒状であり、この例では空気貯留部140の上板部148を貫通するように設けられている。給気部142は、配管113を介してブロア115と接続されている。これにより、ブロア115から配管113を通じて送られてきた空気が給気部142から空気貯留部140内に送り込まれるようになっている。
給気部142の形状は、特に限定されず、円筒状、多角筒状等が挙げられる。
【0031】
送気部144は、空気貯留部140内の空気が送り出される部分であり、この例では空気貯留部140の上板部148から上方に突出するように筒状に設けられている。ヘッダー114の送気部144は、連結管150を介して後述の散気装置112の水平管116と接続されている。これにより、空気貯留部140に貯留されていた空気は送気部144から散気装置112の水平管116へと送られるようになっている。
送気部144の形状は、特に限定されず、円筒状、多角筒状等が挙げられる。
【0032】
ヘッダー114においては、この例のように、送気部144の空気貯留部140内に開口した送気口144aが、給気部142の空気貯留部140内に開口した給気口142aよりも上側に位置していることが好ましい。これにより、空気貯留部140から散気装置112の水平管116へと汚泥が侵入しにくくなり、水平管116や接続管部119が汚泥で詰まることが抑制されやすくなる。
送気部144の送気口144aと給気部142の給気口142aの高さの差は、50mm以上500mm以下が好ましく、100mm以上300mm以下がより好ましい。
【0033】
図3及び図4に示すように、空気貯留部140の下部には、空気貯留部140の下部を補強する補強部材160が設けられている。
図5に示す例の補強部材160は、長方形状の基板部161と、基板部161の両端からそれぞれ同じ側に垂直に立ち上がる側板部162,163と、を備えている。すなわち、補強部材160は、板状で、かつ両端部がそれぞれ同じ側に直角に折り曲げられた形状である。補強部材160は、加工しやすい点から、このような長方形の板状部材が折り曲げられたものであることが好ましいが、限定はされない。
【0034】
この例では、図4に示すように、補強部材160の折り曲げられた両端部の内面、すなわち補強部材160の両方の側板部162,163の内面と、被処理水流入口140aの開口形状が長方形である空気貯留部140の胴部146において2つの長辺を形成している対向する側壁146a,146bの外面とがそれぞれ接するように、補強部材160の両端部が空気貯留部140の対向する側壁に連結されている。
【0035】
このように、補強部材160の両端部が空気貯留部140の対向する側壁146a,146bに連結されていることにより、運転時に設定値以上の気体をヘッダー114に供給した場合に、被処理水流入口140aから空気が吹き出て気泡が発生しても、その気泡発生によって空気貯留部140の側壁146a,146bが大きく振動することが抑制される。これにより、例えば空気貯留部140の胴部146において隣り合う側壁同士の接続部分に亀裂が生じるといった破損や、空気貯留部140の変形が抑制されることで、より安定な運転が可能となる。
【0036】
補強部材160の両端部を空気貯留部140の側壁に連結する方法は、特に限定されず、補強部材160や空気貯留部140の材質に応じて適宜選択することができ、例えば、溶接、接着剤、固定用金具部材による接着が挙げられる。
【0037】
被処理水流入口140aの開口形状が長方形である場合、空気貯留部140の胴部146では2つの長辺を形成する対向する側壁146a,146bの方が、2つの短辺を形成する対向する側壁146b,146dに比べて、被処理水流入口140aから空気が吹き出たときに大きく振動しやすい。この場合には、空気貯留部140に変形や破損が生じることを抑制する効果がより高くなることから、空気貯留部140において2つの長辺を形成している対向する側壁146a,146bに補強部材160の両端部が連結されていることが好ましい。
【0038】
なお、図4に示す例の態様には限定されない。例えば、図6(A)に示すように、空気貯留部140において隣り合う側壁(側壁146aと側壁146c、側壁146bと側壁146c、側壁146bと側壁146d、側壁146dと側壁146a)に補強部材160の両端部が連結されていてもよい。また、図6(B)に示すように、空気貯留部140において隣り合う側壁に両端部が連結された補強部材160と、2つの長辺を形成する対向する側壁146a,146bに両端部が連結された補強部材160とを組み合わせてもよい。これらの態様でも、空気貯留部140において2つの長辺を形成している側壁146a,146bの振動を抑制できることから、空気貯留部140の変形や破損を抑制する効果が得られやすい。
また、空気貯留部140において2つの短辺を形成している対向する側壁146c,146dに補強部材160の両端部が連結されていてもよい。
【0039】
図4に示す例では、空気貯留部140の下部において、空気貯留部140の外側に補強部材160が配置されているが、補強部材160は空気貯留部140の内側に配置されていてもよい。例えば、図7に示すように、図5の補強部材160の折り曲げられた両端部の外面、すなわち補強部材160の両方の側板部162,163の外面と、被処理水流入口140aの開口形状が長方形である空気貯留部140の胴部146において2つの長辺を形成している対向する側壁146a,146bの内面とがそれぞれ接するように、補強部材160の両端部が空気貯留部140の対向する側壁に連結されていてもよい。
補強部材160が空気貯留部140の内側に配置される場合、補強部材160は両端部の高さが異なるように斜めに設けられていてもよい。
【0040】
補強部材160は空気貯留部140の内側に配置される場合、空気貯留部140に変形や破損が生じることを抑制する効果がより高くなる点では、空気貯留部140の高さ方向における補強部材160の位置はできるだけ被処理水流入口140aに近いことが好ましいが、被処理水流入口140aから上方に離れた位置にあっていてもよい。
空気貯留部140の高さ方向における、空気貯留部140の内側に配置される補強部材160の下端と空気貯留部140の被処理水流入口140aの開口面との距離H(図8)は、200mm以下が好ましく、100mm以下がより好ましく、50mm以下がさらに好ましく、30mm以下が特に好ましい。補強部材は空気貯留部の下部に設置されること(Hは略0mmの時)が最も好ましい。
【0041】
図4に示す例では、空気貯留部140に2つの補強部材160が設けられているが、補強部材160の数は2つには限定されない。空気貯留部140に設ける補強部材160の数は、1つであってもよく、3つ以上であってもよく、例えば1~4個とすることができる。
【0042】
空気貯留部140の高さ方向において補強部材160を被処理水流入口140aの開口面に投影したとき、被処理水流入口140aの開口面の面積に対して1以上の補強部材160が占める合計面積の割合Pは、1%以上が好ましく、2%以上がより好ましく、3%以上がさらに好ましく、5%以上が特に好ましい。割合Pが前記下限値以上であれば、空気貯留部140に変形や破損が生じることを抑制する効果が得られやすい。また、割合Pは、50%以下が好ましく、45%以下がより好ましく、40%以下がさらに好ましく、30%以下が特に好ましい。割合Pが前記上限値以下であれば、被処理水中の汚泥は、空気貯留部140への出入りや循環が容易になる。割合Pの好ましい下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば1~50%が好ましい。
【0043】
図4に示す例において、1以上の補強部材160を被処理水流入口140aの開口面140bに投影した状態を図9に示す。割合Pは、被処理水流入口140aの開口面140bの面積をS(mm)、被処理水流入口140aの開口面140bに投影した1以上の補強部材160の合計投影面の面積をS(mm)としたとき、割合Pは下記式から算出される。
P=(S/A)×100
なお、図9に示す例ではS=SA1+SA2である。
【0044】
被処理水流入口140aの開口形状が長方形である空気貯留部140の場合、空気貯留部140の高さ方向において補強部材160を被処理水流入口140aの開口面140bに投影したとき、被処理水流入口140aの開口面140bの長辺上における、被処理水流入口140aの短辺の端と当該端に最も近い補強部材160との距離d図9)は、1000mm以下が好ましく、700mm以下がより好ましく、600mm以下がさらに好ましく、400mm以下が特に好ましい。空気貯留部140において、側壁同士の接続部分は通常は溶接等で結合されており、構造的に弱くなりやすい部分であるが、距離dが前記上限値以下であれば、側壁同士の接続部分に亀裂等の破損が生じることを抑制する効果が得られやすい。距離dの下限は0mmとすることができる。
距離dは、換言すると、被処理水流入口140aの開口面の長辺上における、短辺を形成している側壁と当該側壁に最も近い補強部材160との距離である。空気貯留部140においては、すべての距離dが前記範囲を満たすように補強部材160が設けられることが好ましい。
【0045】
被処理水流入口140aの開口形状が長方形である空気貯留部140の場合、空気貯留部140の高さ方向において補強部材160を被処理水流入口140aの開口面140bに投影したとき、被処理水流入口140aの開口面140bの長辺上における、隣り合う補強部材160同士の距離d図9)は、1000mm以下が好ましく、700mm以下がより好ましく、600mm以下がさらに好ましく、400mm以下が特に好ましい。距離dが前記上限値以下であれば、空気貯留部140に変形や破損が生じることを抑制する効果が得られやすい。距離dの下限は0mmとすることができる。
空気貯留部140においては、すべての距離dが前記範囲を満たすように補強部材160が設けられることが好ましい。
【0046】
図10(A)に示すように、被処理水流入口140aの開口形状が長方形である空気貯留部140に対し、下方から見た場合に被処理水流入口140aの開口面140bの短辺に対して傾斜するような補強部材160を設けてもよい。この場合も、割合P、距離d、距離d図10(B))が前記した範囲内となるように補強部材160を設けることが好ましい。
【0047】
板状の補強部材160の厚さは、補強部材160の材質や運転条件によって適宜設計することができ、例えば0.5~10mmが好ましく、1~5mmがより好ましい。
【0048】
補強部材160の材質は、特に限定されず、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレスが挙げられる。なかでも、腐食しにくい点では、ステンレスが好ましい。
【0049】
(散気装置)
図2に示すように、散気装置112は、水平方向に延びる水平管116と、水平管116の長さ方向に間隔をあけて設けられ、水平管116から空気が分配される3つの分配部118と、水平方向に一列に並んで配置された6つのサイフォン式散気管120とを備えている。
各分配部118は、接続管部119を介して水平管116と接続されて、水平管116から下方に延びるように設けられている。6つのサイフォン式散気管120は、水平管116の下側に、それぞれの分配部118の両側に2つのサイフォン式散気管120が位置するように、水平管116の長さ方向に並んで設けられている。
【0050】
サイフォン式散気管120は、複数の板状部材を組み合わせてなる箱状の筐体である。サイフォン式散気管120は、図2図12図13図14(A)及び図14(B)に示すように、上板部120Aと、2枚の側板部120Bと、2枚の側板部120Cと、底板部120Dと、第一仕切壁122と、第二仕切壁124と、を備えている。
【0051】
各サイフォン式散気管120を形成する2枚の側板部120Bと2枚の側板部120Cは、それぞれ矩形状であり、側板部120Bが側板部120Cよりも幅が広くなっている。各サイフォン式散気管120を形成する2枚の側板部120Bと2枚の側板部120Cは、側板部120Bの面同士が対向し、側板部120Cの面同士が対向するように、それぞれ上板部120Aの下面から下方に延びるように設けられている。2枚の側板部120Bと2枚の側板部120Cとで、断面長方形状の四角筒が形成されている。各サイフォン式散気管120においては、側板部120Bの面方向が水平管116の長さ方向と平行になっている。
【0052】
散気装置112では、6つのサイフォン式散気管120の上板部120Aが一枚の平板で一体に形成され、6つのサイフォン式散気管120の両側の側板部118Bがそれぞれ一枚の平板で一体に形成されている。6つのサイフォン式散気管120は、隣り合うサイフォン式散気管120の互いの側板部120Cの面が向かい合うように連なっている。
【0053】
平面視で各上板部120Aにおける水平管116から遠い側の側板部120B寄りの部分には、その側板部120Bに沿うように延びる長方形状の散気穴126が形成されている。
底板部120Dは、散気穴126が形成されている側の側板部120Bの下端寄りの部分から内側に延びるように設けられている。側板部120Cからの底板部120Dの面方向の長さは、上板部120Aよりも短くなっている。底板部120Dにより、2枚の側板部120Bと2枚の側板部120Cで形成された四角筒の下方の開口部分のほぼ半分が塞がれ、前記開口部分における底板部120Dで塞がれていない部分が処理水流入部127となっている。
【0054】
第一仕切壁122は、正面視形状が矩形状であり、散気穴126を挟んで側板部120Bと互いの面が向かい合うようにして、上板部120Aから下方に延びるように設けられている。第一仕切壁122の下端122aは底板部120Dから離間している。処理水流入部127は、第一仕切壁122の下端122aよりも下方に位置している。
【0055】
第二仕切壁124は、底板部120Dにおける第一仕切壁122の散気穴126とは反対側に位置する端部から上方に延びるように設けられている。第一仕切壁122と第二仕切壁124とは互いの面が対向している。第二仕切壁124の上端124aは上板部120Aから離間している。第二仕切壁124の上端124aは、第一仕切壁122の下端122aよりも上方に位置している。
【0056】
サイフォン式散気管120の内部には、サイフォン室128が形成されている。サイフォン室128は、空気を貯留する部分である。サイフォン室128は、サイフォン式散気管120内の第一仕切壁122よりも処理水流入部127側における、第二仕切壁124の上端124aから第一仕切壁122の下端122aまでの高さを有する空間を指す。サイフォン室128は、第二仕切壁124により第一サイフォン室128Aと第二サイフォン室128Bとに区切られている。
【0057】
第一サイフォン室128Aの上方、及び第二サイフォン室128Bの上方は、連通部125で連通されている。サイフォン式散気管120内の第二サイフォン室128Bから散気穴126までの部分が経路123となっている。
サイフォン式散気管120においては、処理水流入部127から散気穴126へ向かう被処理水の流れを想定したときの処理水流入部127側を「上流」とし、散気穴126側を「下流」とする。
【0058】
サイフォン式散気管120の材質は、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、AS樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂(PMMA)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリカーボネート樹脂(PC)、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)、ポリフェニレンスルファイド樹脂(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリスルフォン樹脂(PSf)、ポリエーテルスルフォン樹脂(PES)が挙げられる。サイフォン式散気管120の材質は、1種であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。また、ステンレス(SUS304系、SUS316系)等の金属製であってもよい。
【0059】
水平管116の流路断面積は、接続管部119の流路断面積よりも大きい。水平管116の形状は、特に限定されず、円筒状、多角筒状等が挙げられる。例えば、水平管116の断面形状が円形である場合、水平管116の内径は、10mm以上が好ましい。
【0060】
水平管116の流路断面積は、100mm以上が好ましく、300mm以上2000mm以下がより好ましい。水平管116の流路断面積が前記範囲の下限値以上であれば、水平管116内が汚泥で閉塞しにくい。水平管116の流路断面積が前記範囲の上限値以下であれば、散気装置112がコンパクトとなる。
なお、水平管116の流路断面積は、水平管116を水平管116の長さ方向に垂直な方向(鉛直方向)に切断したときの流路断面の面積の最小値である。
【0061】
水平管116としては、特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、PTFE、PVDF、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素系樹脂、ナイロン、ポリウレタン等の樹脂製の配管やチューブ、ステンレス(SUS304系、SUS316系)等の金属製配管が挙げられる。水平管116の材質は、1種であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0062】
この例の分配部118は、両隣のサイフォン式散気管120における対向する2枚の側板部120Cと、それら側板部120Cの端部同士を繋ぐように設けられた2枚の側板部130と、2枚の側板部120C及び2枚の側板部130からなる四角筒の上側の開口端を塞ぐように設けられた天板部132とで形成された筒状の部分である。
この例の分配部118は、両隣のサイフォン式散気管120と側板部120Cを共有している。また、分配部118を形成する一対の側板部130及び天板部132は、隣り合うサイフォン式散気管120と一体になっている。
【0063】
分配部118の水平管116と反対側には開口部118aが形成されている。開口部118aは、分配部118の下端の開口端と、分配部118におけるサイフォン式散気管120と共有している側板部120Cの下端部に形成された切欠部134とからなる。分配部118の開口部118aは、サイフォン式散気管120に空気を供給する空気供給口として機能する。
【0064】
分配部118の材質は、特に限定されず、例えば、サイフォン式散気管120で挙げたものと同じものが挙げられる。分配部118の材質は、1種であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0065】
分配部118の流路断面積は、300mm以上が好ましく、500mm以上3000mm以下がより好ましい。分配部118の流路断面積が前記範囲の下限値以上であれば、分配部118内が汚泥で閉塞しにくい。分配部118の流路断面積が前記範囲の上限値以下であれば、散気装置112がコンパクトとなる。
なお、分配部118の流路断面積は、分配部118を分配部118内の流路の長さ方向に垂直な方向(水平方向)に切断したときの流路断面の面積の最小値である。
【0066】
水平管116と分配部118とは、水平管116内の流路と分配部118内の流路が繋がるように、分配部118よりも流路断面積が小さい接続管部119を介して接続されている。
接続管部119の形状は、特に限定されず、円筒状、多角筒状等が挙げられる。
【0067】
接続管部119の流路断面積は、20mm以上350mm以下が好ましく、28mm以上200mm以下がより好ましく、35mm以上100mm以下がさらに好ましく、40mm以上60mm以下が特に好ましい。接続管部119の流路断面積が前記範囲の下限値以上であれば、接続管部119内が汚泥で閉塞しにくい。接続管部119の流路断面積が前記範囲の上限値以下であれば、各サイフォン式散気管120に空気が均等に分配されやすくなる。
なお、接続管部119の流路断面積は、接続管部119を接続管部119内の流路の長さ方向に垂直な方向に切断したときの流路断面の面積の最小値である。接続管部119は、少なくとも一部の流路断面の面積が20mm以上350mm以下であることが好ましい。
【0068】
接続管部119の材質は、特に限定されず、例えば、水平管116で挙げたものと同じものが挙げられる。接続管部119の材質は、1種であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0069】
散気装置112においては、このように交互に並ぶサイフォン式散気管120と各分配部118が一体になっている。このような態様の散気装置112は、分配部118の開口部118aの上下方向の位置合わせや、各サイフォン式散気管120の上下方向の位置合わせが不要になるため、各サイフォン式散気管120から均等に散気させることが容易になる。また、散気装置112の組み立て作業が容易になるうえ、部品点数が減らせるためコスト的にも有利である。
【0070】
散気装置112では、各サイフォン式散気管120が水平管116の下側に設けられている。水平管116が各サイフォン式散気管120よりも上方に位置することで、各分配部118の開口部118aから各サイフォン式散気管120に均等に空気を供給できるため、各サイフォン式散気管120から均等に散気させることができる。また、水平管の上側に部材が存在する散気装置を用いる場合に比べて、MBR装置100の高さをより低くできるため、MBR装置100がコンパクトになる。
【0071】
散気装置112は、膜分離槽21を平面視したときに、膜モジュール22における隣り合う分離膜の間と各サイフォン式散気管120の散気穴126とが重なり合う位置に設けられていることが好ましい。なお、散気装置112は、膜分離槽21を平面視したときに、各サイフォン式散気管120の散気穴126が膜モジュール22と交差するように設けられていてもよい。
【0072】
ヘッダー114の送気部144と散気装置112の水平管116は連結管150で連結されている。連結管150は、可撓性を有していることが好ましい。これにより、運転時に散気装置112やヘッダー114が振動した場合でも、その振動が連結管150で吸収されて緩和されるため、散気装置112やヘッダー114に損傷が生じにくくなる。
なお、「連結管が可撓性を有する」とは、最小曲げ半径1000mm以下であることを意味する。
【0073】
可撓性を有する連結管150の材質としては、連結管150が可撓性を有する管となる範囲であればよく、例えば、PVCホース、シリコーンホース、フッ素ホースが挙げられる。連結管150の材質は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0074】
連結管150の流路断面積は、100mm以上が好ましく、300mm以上2000mm以下がより好ましい。連結管150の流路断面積が前記範囲の下限値以上であれば、連結管150が汚泥で閉塞しにくい。連結管150の流路断面積が前記範囲の上限値以下であれば、散気装置112がコンパクトとなる。
なお、連結管150の流路断面積は、連結管150を連結管150内の流路の長さ方向に垂直な方向に切断したときの流路断面の面積の最小値である。
【0075】
ヘッダー114における給気部142の給気口142aは、散気装置112における分配部118の開口部118aよりも上側に位置している。水平管から下方に延びる分配部が設けられた態様の散気装置を備える場合、ヘッダーの給気部の給気口の高さ方向の位置が分配部の開口部の位置と同じか、それよりも上側であることが好ましい。これにより、運転を停止した際に空気貯留部内における水面の上昇が給気部の給気口に達したところで止まるため、ヘッダーから散気装置への汚泥の侵入を抑制する効果が十分に得られやすくなる。
【0076】
ヘッダー114における給気部142の給気口142aは、散気装置112の接続管部119の下端119aよりも下側に位置している。このように、本発明では、水平管と分配部が、分配部よりも流路断面積が小さい接続管部で接続されている態様の散気装置を備える場合、ヘッダーの給気部の給気口が接続管部の下端よりも上側に位置していることが好ましい。これにより、接続管部に汚泥が詰まることを抑制しやすい。
【0077】
(作用機構)
以下、ヘッダー付散気装置110の作用機構について説明する。
運転開始前においては、図14(A)に示すように、サイフォン式散気管120内におけるサイフォン室128、連通部125及び経路123は汚泥含有処理水B(被処理水)で満たされている。ブロア115から配管113を通じて送気し、図16(A)に示すように、給気部142から空気貯留部140内に空気Aを送り込む。ヘッダー114では空気貯留部140内で空気Aが一時的に貯留されて水面S1を押し下げつつ、空気Aの一部が送気部144から連結管150を通じて散気装置112の水平管116へと送られる。
【0078】
水平管116に送られた空気は各分配部118に分配され、分配部118の開口部118aを通じて処理水流入部127から各サイフォン式散気管120に送られる。このようにサイフォン式散気管120に空気Aが連続的に供給されると、図14(B)に示すように、サイフォン室128内の汚泥含有処理水Bが散気穴126や処理水流入部127から押し出されて、サイフォン室128の液面S2が次第に降下する。
【0079】
さらに空気Aを供給し続け、液面S2の高さが第一仕切壁122の下端122aよりも低くなると、図15(A)に示すように、経路123内と第一サイフォン室128Aとの2つの気液界面高さの差によって空気Aが経路123に移動し、散気穴126から一挙に放出されて気泡200を形成する。散気穴126から散気されると、図15(B)に示すように、処理水流入部127から汚泥含有処理水Bが流入することで、液面S2の高さは第二仕切壁124の上端124a付近まで上昇する。そして、図14(B)、図15(A)、図15(B)の状態が繰り返されることで、間欠的に曝気される。
【0080】
ヘッダー114において予め設定されている量を超える空気Aを供給した場合、ヘッダー114では空気貯留部140内の水面S1が過度に押し下がり、被処理水流入口140aから空気Aが吹き出て気泡が発生し得る。しかし、実施形態に係るヘッダー付散気装置110では、ヘッダー114の空気貯留部140に補強部材160が設けられているため、空気Aの過度な供給によって被処理水流入口140aから空気Aが吹き出たとしても、空気貯留部140の側壁164a,164bが大きく振動することが抑制される。その結果、空気貯留部140に変形や破損が生じることが抑制されることで、より安定な運転が可能となる。
【0081】
運転を停止すると、通常はブロア115近傍の気密性が高くないことから、空気貯留部140内の空気Aが給気部142から逆流し、図16(B)に示すように、空気貯留部140内に溜まった空気Aが給気部142から逆流しつつ、下端の被処理水流入口140aから汚泥含有処理水B(被処理水)が流入して空気貯留部140内の水面S1が上昇する。そして、給気部142の給気口142aが水面S1で塞がれたところで水面S1の上昇が止まり、空気貯留部140内における給気部142の給気口142aよりも上側の部分と、散気装置112の内部は空気Aが溜まったままの状態となる。これにより、運転の停止と再開を繰り返しても、汚泥が送気部144から散気装置112に浸入することが抑制される。そのため、運転を再開したときでも、送気部144から汚泥が散気装置112に侵入しにくくなることから、水平管116等が乾燥汚泥で詰まることが抑制される。
【0082】
〔水処理方法〕
以下、前記した水処理装置1000を用いた水処理方法について説明する。本実施形態の水処理方法は、活性汚泥を用いて原水を活性汚泥処理する活性汚泥処理工程と、活性汚泥処理工程で得られた汚泥含有処理水を膜分離する膜分離工程と、を有している。
【0083】
(活性汚泥処理工程)
水処理装置1000による水処理方法では、工場や家庭等から排出された工業廃水や生活廃水等の廃水(原水)を第一の流路12を通じて活性汚泥処理槽11に流入させ、活性汚泥処理槽11で活性汚泥処理し、生物処理水とする。処理後の汚泥含有処理水(被処理水)は、第二の流路13を通じて膜分離槽21に流入させる。
【0084】
(膜分離工程)
膜分離槽21では、MBR装置100の膜モジュール22により、活性汚泥及び生物処理水を含む汚泥含有処理水(被処理水)を膜分離処理する。膜分離処理中においては、ヘッダー付散気装置110により曝気を行う。
【0085】
汚泥含有処理水Bの一部は、汚泥返送手段30によって膜分離槽21から活性汚泥処理槽11に返送する。膜モジュール22により汚泥含有処理水Bを膜分離した後の処理水は、第三の流路33を通じて処理水槽41に送って貯留する。処理水槽41で貯留する処理水は、工業用水として再利用したり、河川等に放流したりすることができる。
【0086】
なお、水処理方法は、活性汚泥処理槽11の中にMBR装置100が設けられた水処理装置を用いて、活性汚泥処理工程と膜分離工程とを同時に行ってもよい。
【0087】
なお、本発明のヘッダー付散気装置は、前記したヘッダー付散気装置110には限定されない。
図11に示すように、補強部材160は、基板部161の幅方向の一方の側端部から、側板部162,163とは反対側に垂直に立ち上がる側板部164がさらに設けられた形状であってもよい。図11に示す例の補強部材160は、図5に示す例の補強部材160に比べて強度がより高く、空気貯留部140の変形や破損を抑制する効果が得られやすくなる。
ヘッダー114において、補強部材160は水平方向に対して斜めに傾斜して設けられていてもよい。
また、補強部材は板状には限定されず、棒状であってもよい。
【0088】
ヘッダーの送気部と散気装置の水平管とが、金属製の配管等の可撓性を有しない連結管で連結されたヘッダー付散気装置であってもよい。この場合、送気部と連結管が同一の材質で一体に形成されていてもよい。
ヘッダーが備える給気部及び送気部の数は、1つには限定されない。例えば、1つの給気部と、2つ以上の送気部を有するヘッダーを備え、前記ヘッダーから2つ以上の散気装置に空気を送るヘッダー付散気装置であってもよい。
【0089】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0090】
100…膜分離活性汚泥装置、110…ヘッダー付散気装置、112…散気装置、114…ヘッダー、115…ブロア、116…水平管、118…分配部、118a…開口部、119…接続管部、120…サイフォン式散気管、140…空気貯留部、140a…被処理水流入口、142…給気部、142a…給気口、144…送気部、144a…送気口、146…胴部、146a~146d…側壁、148…上板部、150…連結管、160…補強部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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