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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162737
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】汚泥焼却設備および汚泥焼却方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/30 20060101AFI20241114BHJP
   C02F 11/06 20060101ALI20241114BHJP
   F23G 5/50 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
F23G5/30 J
C02F11/06 B ZAB
F23G5/30 D
F23G5/30 Q
F23G5/50 E
F23G5/50 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078592
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100093388
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 喜三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206302
【弁理士】
【氏名又は名称】落志 雅美
(72)【発明者】
【氏名】伊東 賢洋
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 均
(72)【発明者】
【氏名】古閑 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】神谷 秀博
(72)【発明者】
【氏名】岡田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】堀口 元規
【テーマコード(参考)】
3K062
4D059
【Fターム(参考)】
3K062AA11
3K062AC02
3K062DB02
4D059AA04
4D059AA05
4D059BB01
4D059BB13
4D059BD00
4D059BE00
4D059CA14
4D059DA03
4D059DA04
4D059DA05
4D059DA08
4D059DA15
4D059DA16
4D059DA22
4D059DA23
4D059EA06
4D059EA20
4D059EB06
4D059EB11
(57)【要約】
【課題】下水汚泥を焼却したときに発生する焼却灰が煙道に付着、堆積することに起因した煙道の閉塞を確実に防止するとともに、焼却灰が流動砂表面に付着し、流動砂粒子同士が結合、造粒することに起因する流動不良も確実に防止する。
【解決手段】本発明の汚泥焼却設備は、下水汚泥を焼却する焼却炉と、前記下水汚泥を焼却したときに生成される焼却灰を用いた灰の成分と引張強度を測定する薬剤種類・量決定プロセスと、前記高温条件下での灰の成分測定と引張強度測定の結果に基づいて、汚泥焼却設備の機器や要素への焼却灰の付着堆積を防止する薬剤の前記下水汚泥への供給の開始又は停止をする指示を行う制御部と、を有する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水汚泥を焼却する焼却炉と、
前記下水汚泥を焼却したときに生成される焼却灰を用いた高温条件下での灰の成分測定と引張強度測定を行う高温粉体層強度測定装置と、
前記高温条件下での灰の成分測定と引張強度測定の結果に基づいて、汚泥焼却設備の機器や要素への灰の付着堆積を防止する薬剤の前記下水汚泥への供給の開始又は停止をする指示を行う制御部と、
を有することを特徴とする汚泥焼却設備。
【請求項2】
下水汚泥を焼却する焼却炉と、
前記下水汚泥を焼却したときに生成される焼却灰を用いた高温条件下での灰の成分測定と引張強度測定を行う高温粉体層強度測定装置と、
前記高温条件下での灰の成分測定と引張強度測定の結果に基づいて、汚泥焼却設備の機器や要素への灰の付着堆積を防止する薬剤の前記下水汚泥への供給量を調整する指示を行う制御部と、
を有することを特徴とする汚泥焼却設備。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の汚泥焼却設備において、
前記制御部は、前記高温条件下での引張強度測定を行う高温粉体層強度測定装置で測定した引張強度と予め設定した引張強度の目標値とを比較することで、前記指示を行うことを特徴とする汚泥焼却設備。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の汚泥焼却設備において、
前記下水汚泥を焼却する焼却炉は、吹き込まれる空気により流動媒体による流動床を形成して、投入される前記下水汚泥を前記流動床中で焼却する流動焼却炉であることを特徴とする汚泥焼却設備。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の汚泥焼却設備において、
前記薬剤は、前記下水汚泥が発生してから前記下水汚泥を焼却する前記焼却炉に投入されるまでの間に前記下水汚泥に供給されることを特徴とする汚泥焼却設備。
【請求項6】
請求項5に記載の汚泥焼却設備において、
前記薬剤は、前記下水汚泥を濃縮処理する前、前記下水汚泥を脱水処理する前、前記下水汚泥を乾燥処理する前、前記下水汚泥を焼却する前、又は前記下水汚泥を焼却する焼却炉に投入する前のいずれか1のタイミングで、前記下水汚泥に供給されることを特徴とする汚泥焼却設備。
【請求項7】
下水汚泥を焼却する焼却炉を用いて下水汚泥を焼却する工程と、
前記下水汚泥の焼却により得られる焼却灰を用いた高温条件下での灰の成分測定と引張強度測定を行う行程と、
前記高温条件下での灰の成分測定と引張強度測定の結果に基づいて、汚泥焼却設備の機器や要素への灰の付着堆積を防止する薬剤の前記下水汚泥への供給の開始又は停止をする指示する工程と、
を有することを特徴とする汚泥焼却方法。
【請求項8】
下水汚泥を焼却する焼却炉を用いて下水汚泥を焼却する工程と、
前記下水汚泥の焼却により得られる焼却灰を用いた高温条件下での灰の成分測定と引張強度測定を行う行程と、
前記高温条件下での灰の成分測定と引張強度測定の結果に基づいて、汚泥焼却設備の機器や要素への灰の付着堆積を防止する薬剤の前記下水汚泥への供給量を調整する指示を行う行程と、
を有することを特徴とする汚泥焼却方法。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の汚泥焼却方法において、
前記指示を行う行程は、前記高温条件下での引張強度測定の結果と予め設定した引張強度の目標値とを比較する行程とを含むことを特徴とする汚泥焼却方法。
【請求項10】
請求項7又は8項に記載の汚泥焼却方法において、
前記下水汚泥を焼却する行程は、流動焼却炉内に吹き込まれる空気により流動砂による流動床を形成して、
前記流動焼却炉に投入される前記下水汚泥を前記流動床中で焼却する行程であることを、
特徴とする汚泥焼却方法。
【請求項11】
請求項7又は8項に記載の汚泥焼却方法において、
前記下水汚泥が前記下水汚泥を焼却する焼却炉に投入されるまでの間に、前記薬剤を供給する行程をさらに有することを、
特徴とする汚泥焼却方法。
【請求項12】
請求項11に記載の汚泥焼却方法において、
前記薬剤を供給する工程は、前記下水汚泥を濃縮処理する前、前記下水汚泥を脱水処理する前、前記下水汚泥を乾燥処理する前、前記下水汚泥を焼却する前、又は前記下水汚泥を焼却する焼却炉に投入する前の少なくともいずれか1のタイミングですることを特徴とする汚泥焼却方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥焼却設備及び汚泥焼却方法に関するものである。
具体的には、下水汚泥を焼却する下水汚泥焼却炉で発生する焼却灰の付着性に起因する排気ガスダクトの閉塞、流動床式焼却炉での流動不良、空気予熱器等の熱交換器での伝熱効率低下、集塵装置でのフィルタ性能低下を抑制する焼却炉の不具合発生を防止する汚泥焼却設備及び汚泥焼却方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水処理場において下水を浄化する際に発生する下水汚泥は、脱水後、下水汚泥焼却炉で焼却処理される下水汚泥を焼却する焼却炉において、焼却炉の排気ガスダクトや熱交換器等に焼却灰が付着することがある。
また、流動焼却炉においては、焼却場の流動床をなす流動砂に焼却灰が付着する。
この焼却灰の付着により、排気ガスダクトや熱交換器等を閉塞させてしまったり、流動床の流動砂同士が固着して肥大化するクリンカに起因する流動不良現象による不完全燃焼を引き起こしてしまったりする場合があり、焼却炉の運転に大きな支障をきたすことがある。
【0003】
近年は、下水汚泥焼却炉において発生する焼却灰の付着性に起因する排気ガスダクトの閉塞や流動床における流動不良といった不具合(以下、不具合)の発生が多くなっている。
その原因として、下水の高度処理により汚泥に含まれるリンの濃度が高くなり、当該リンが焼却灰の付着性を助長したことが一因と考えられている。
その不具合対策として、汚泥中に無機系薬品(消石灰、炭酸カルシウム、ポリ硫酸第二鉄、ポリ塩化アルミニウムなど)を添加して、焼却灰の付着性を抑制している下水汚泥焼却炉もある。
【0004】
前記不具合が発生するのは、灰が高温場で付着性が高まることが主要因である。これは、灰に含まれる成分が高温場において部分溶融して液相を生成し、それが灰粒子間で液架橋することで灰が付着性を増すためである。
したがって、高温場で付着性が増す灰は、不具合発生リスクも高いといえる。
【0005】
上記の不具合対策として、下水汚泥焼却炉における焼却灰の付着を予測する方法が開示されている。
例えば、特開2010-12425号公報では、酸化雰囲気下で焼却して得られる焼却灰中のFe23、CaO、Na2O、K2O、MgO、SiO2、Al23、TiO2、及びP25の成分について、それぞれの含有量を特定し、特定された各焼却灰成分の元素組成に基づき、特定の式により指標を算出する技術が開示されている(特許文献1参照)。
また、特開2016-190238号公報では、焼却炉への灰付着を防止するための所定の金属元素を含む付着防止薬剤の添加が必要であると判断される閉塞抑制指標に対応する焼却灰の色を特定する基準色特定ステップと、色センサにより焼却炉から排出される焼却灰の色を検出する焼却灰色特定ステップと、基準色特定ステップにより予め特定されている基準色と、色センサから通知される焼却灰の色とを比較して、色センサから通知された色が基準色よりも、リン濃度の高い色であるか否か若しくは指標値が低い色であるか否かを判定する添加判定ステップと、添加判定ステップの判定結果に従がって、付着防止薬剤を下水汚泥に添加する添加ステップと、を有する技術が公開されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-12425号公報
【特許文献2】特開2016-190238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1では算出される指標(数値)には明確な意味はなく、本発明のように明確な意味(単位)を持つ指標である付着力(引張強度/kPa)を用いて焼却灰の付着を予測する方法は開示されていない。更に焼却灰の粒子径を要因として付着性(付着力)を算出する技術は開示されていない。
特許文献1の技術の他に従来より粉体層の付着力を測定する装置はいくつかあるが、いずれも粉体サンプルを採取して室温環境下(10~30℃付近)において分析装置で測定する手法が採られ、焼却設備の排気ガスダクトや流動焼却炉の流動床等の高温場での粉体層の付着力を直接測定することはできなかった。
特許文献1の技術は、焼却灰の付着を予測する方法の1つに用いられる指標ではあるが、〔0027〕に記述されているように、ブリケット試験は1100度で行われ、ブリケットの灰表面の溶融軟化性を評価して灰付着性を評価している。通常800度付近の温度域である下水汚泥焼却炉の灰付着性の環境とはかけ離れている。
特許文献2の技術では、指標とする値が経験に基づくものであった。また、灰の付着性に影響すると想定される指標から間接的に把握するものであって、実際の焼却炉の高温場の条件を直接的に再現して把握するものではないため、実際の焼却設備では必ずしも期待した効果が得られない場合もあった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、下水汚泥を焼却する下水汚泥焼却炉で発生する焼却灰の付着性に起因する排気ガスダクトの閉塞、流動床式焼却炉での流動不良、空気予熱器等の熱交換での伝熱効率低下、集塵装置でのフィルタ性能低下を抑制する焼却炉の不具合発生を防止する汚泥焼却設備及び汚泥焼却方法を提供することにある。
なお、本発明における排気ガスダクトは、燃焼ガス(排気ガス)が煙突から排出されるまでの通路を意味し、焼却設備中の熱交換器等、各種設備中の燃焼ガスの通路部分を含んでいる。
また、本発明の詳細な説明においては、灰の付着力と引張強度とは同じであり状況に応じて、「付着力」、「引張強度」、「引張強度(付着力)」を用いている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的達成のため、 本発明者らは上記課題を下記の手段により解決した。
〔1〕下水汚泥を焼却する焼却炉と、
前記下水汚泥を焼却したときに生成される焼却灰を用いた高温条件下での灰の成分測定と引張強度測定を行う高温粉体層強度測定装置と、
前記高温条件下での灰の成分測定と引張強度測定の結果に基づいて、汚泥焼却設備の機器や要素への灰の付着堆積を防止する薬剤の前記下水汚泥への供給の開始又は停止をする指示を行う制御部と、
を有することを特徴とする汚泥焼却設備。
〔2〕下水汚泥を焼却する焼却炉と、
前記下水汚泥を焼却したときに生成される焼却灰を用いた高温条件下での灰の成分測定と引張強度測定を行う高温粉体層強度測定装置と、
前記高温条件下での灰の成分測定と引張強度測定の結果に基づいて、汚泥焼却設備の機器や要素への灰の付着堆積を防止する薬剤の前記下水汚泥への供給量を調整する指示を行う制御部と、
を有することを特徴とする汚泥焼却設備。
〔3〕前記〔1〕又は〔2〕に記載の汚泥焼却設備において、
前記制御部は、前記高温条件下での引張強度測定を行う高温粉体層強度測定装置で測定した引張強度と予め設定した引張強度の目標値とを比較することで、前記指示を行うことを特徴とする汚泥焼却設備。
〔4〕前記〔1〕又は〔2〕に記載の汚泥焼却設備において、
前記下水汚泥を焼却する焼却炉は、吹き込まれる空気により流動媒体による流動床を形成して、投入される前記下水汚泥を前記流動床中で焼却する流動焼却炉であることを特徴とする汚泥焼却設備。
〔5〕前記〔1〕又は〔2〕に記載の汚泥焼却設備において
請求項1又は2に記載の汚泥焼却設備において、
前記薬剤は、前記下水汚泥が発生してから前記下水汚泥を焼却する前記焼却炉に投入されるまでの間に前記下水汚泥に供給されることを特徴とする汚泥焼却設備。
〔6〕前記〔5〕に記載の汚泥焼却設備において
前記薬剤は、前記下水汚泥を濃縮処理する前、前記下水汚泥を脱水処理する前、前記下水汚泥を乾燥処理する前、前記下水汚泥を焼却する前、又は前記下水汚泥を焼却する焼却炉に投入する前のいずれか1のタイミングで、前記下水汚泥に供給されることを特徴とする汚泥焼却設備。
〔7〕下水汚泥を焼却する焼却炉を用いて下水汚泥を焼却する工程と、
前記下水汚泥の焼却により得られる焼却灰を用いた高温条件下での灰の成分測定と引張強度測定を行う行程と、
前記高温条件下での灰の成分測定と引張強度測定の結果に基づいて、汚泥焼却設備の機器や要素への灰の付着堆積を防止する薬剤の前記下水汚泥への供給の開始又は停止をする指示する工程と、
を有することを特徴とする汚泥焼却方法。
〔8〕下水汚泥を焼却する焼却炉を用いて下水汚泥を焼却する工程と、
前記下水汚泥の焼却により得られる焼却灰を用いた高温条件下での灰の成分測定と引張強度測定を行う行程と、
前記高温条件下での灰の成分測定と引張強度測定の結果に基づいて、汚泥焼却設備の機器や要素への灰の付着堆積を防止する薬剤の前記下水汚泥への供給量を調整する指示を行う行程と、
を有することを特徴とする汚泥焼却方法。
〔9〕前記〔7〕又は〔8〕に記載の汚泥焼却方法において、
前記指示を行う行程は、前記高温条件下での引張強度測定の結果と予め設定した引張強度の目標値とを比較する行程とを含むことを特徴とする汚泥焼却方法。
〔10〕前記〔7〕又は〔8〕に記載の汚泥焼却方法において
前記下水汚泥を焼却する行程は、流動焼却炉内に吹き込まれる空気により流動砂による流動床を形成して、
前記流動焼却炉に投入される前記下水汚泥を前記流動床中で焼却する行程であることを、
特徴とする汚泥焼却方法。
〔11〕前記〔7〕又は〔8〕に記載の汚泥焼却方法において
前記下水汚泥が前記下水汚泥を焼却する焼却炉に投入されるまでの間に、前記薬剤を供給する行程をさらに有することを、
特徴とする汚泥焼却方法。
〔12〕前記〔11〕に記載の汚泥焼却方法において
前記薬剤を供給する工程は、前記下水汚泥を濃縮処理する前、前記下水汚泥を脱水処理する前、前記下水汚泥を乾燥処理する前、前記下水汚泥を焼却する前、又は前記下水汚泥を焼却する焼却炉に投入する前の少なくともいずれか1のタイミングですることを特徴とする汚泥焼却方法。
【0010】
本発明によれば、実際に稼働している下水汚泥焼却炉において高温条件下で下水汚泥を焼却したときに生成される焼却灰を用いて灰の成分測定と引張強度測定を行うことで灰の付着性を直接的かつ定量的に評価することができるので、その値を指標として薬剤の供給、停止、供給量の調整を行うことができるので下水汚泥を焼却する際における下水汚泥焼却炉の排気ガスダクトの閉塞及び流動床の流動不良を有効に防止することができる
また、適量の薬剤を供給することができるので薬剤のコストを大幅に削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】下水処理プロセスの一例を示す模式図である。
図2】汚泥処理設備及び汚泥焼却設備の一例を示す模式図である。
図3】高温条件下での灰の成分測定と引張強度測定に用いる高温粉体層強度測定装置の概要を示す模式図である。
図4】灰の引張強度と薬剤添加量の関係を示す図である。
図5】薬剤の種類と薬剤の供給量を決定するプロセスの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1図5に基づいて本発明の灰の成分と付着性評価方法について説明する。
以下、第1 実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
< 第1 実施形態>
図1は、下水処理プロセスの一例を示す模式図である。図1に示すように、下水処理プロセスを、例えば生活排水などの下水を浄化処理する下水処理プロセス1を用いて説明する。
下水処理プロセス1は、下水浄化設備2 、汚泥処理設備3及び汚泥焼却設備4とからなる。
下水浄化設備2は、例えば活性汚泥法を用いて下水を浄化する設備である。詳細には、下水浄化設備2は、沈砂池5、最初沈殿池(第一沈殿池)6、反応タンク(曝気槽)7、最終沈殿池(第二沈殿池)8を含む。沈砂池5は、下水とともに流入する土砂や比較的大きなごみを除去する。最初沈殿池8は、沈砂池5から送り出される下水に含まれる汚れを沈殿させる。最初沈殿池6で沈殿した汚れは、生汚泥9aとして回収される。反応タンク7は、最初沈殿池6からの下水と活性汚泥とを混合し、反応タンク7の内部を曝気・攪拌し、活性汚泥に含まれる微生物の働きによって下水に含まれる汚れ(有機物)を分解する。
【0014】
最終沈殿池8は、反応タンク7から送り出された下水に含まれる活性汚泥を沈殿させる。最終沈殿池8で沈殿した活性汚泥の一部は、反応タンク7に戻され、残りの活性汚泥は、余剰汚泥9bとして回収される。最終沈殿池8により活性汚泥が分離された下水は、塩素接触槽(図示しない)において塩素消毒された後、処理水として海や河川に放流される。
【0015】
図1に示す汚泥処理設備3は、下水浄化設備2において発生する下水汚泥9を濃縮、脱水、或いは、更に乾燥によって減量化する設備の例である。なお、下水汚泥9は被処理物の一例であり、下水汚泥9は、最初沈殿池6から取り除かれた生汚泥9aと、最終沈殿池8で取り除かれた余剰汚泥9bと含むものである。汚泥処理設備3は、濃縮装置10、脱水機11、乾燥機12を含む。
【0016】
濃縮装置10は、下水汚泥9を上澄み水と汚泥成分とに分離、つまり下水汚泥9の固形分を濃縮する。脱水機11は、濃縮された下水汚泥9を例えば含水率75~80%程度まで脱水する。乾燥機12は、脱水機11で脱水された下水汚泥9を例えば含水率20~30%程度まで乾燥させる。汚泥処理工程を経た下水汚泥9は、汚泥焼却設備4によって焼却される。汚泥焼却設備4によって下水汚泥9を焼却したときに発生する焼却灰は、埋め立て処分されるか、資源として再利用される。なお、図1においては、濃縮装置10、脱水機11、乾燥機12を含む汚泥処理設備3としているが、必要に応じて改質等の、その他工程や機器を追加した汚泥処理設備としてもよい。
【0017】
図2は、汚泥処理設備3及び汚泥焼却設備4の一構成を模式的に示す図である。なお、図2中実線で示す矢印は、下水汚泥9や燃焼用空気等の供給路の他、焼却排ガスや焼却灰の排出路を示し、図2中一点鎖線で示す矢印は、焼却灰の設備機器や流動床などの要素への付着堆積を防止する前記薬剤の供給路を、図2中二点鎖線で示す矢印は信号を示す。
【0018】
汚泥焼却設備4は、流動焼却炉(流動床式焼却炉)20、空気予熱器(熱交換器)21、集じん装置22、排煙処理装置23及び制御装置50を含む。周知のように、流動焼却炉20は、炉内に吹き込んだ燃焼用空気により流動化した流動砂をバーナ等による昇温装置により加熱し、炉内に投入された下水汚泥9を高温加熱された流動砂により加熱焼却する設備である。なお、流動焼却炉9としては、気泡式流動焼却炉、循環式流動焼却炉及び過給式流動焼却炉などがあるが、いずれの流動焼却炉であってもよい。また、焼却炉として流動焼却炉を例に挙げているが、例えば階段式ストーカ炉(ストーカ末端の灰ホッパまたは煙道への飛灰などから灰を回収可能)や、立型多段焼却炉(各段からの飛灰を回収可能)など、炉内の燃焼により発生する高温条件下での灰の成分および引張強度を計測できれば、他の焼却炉であってもよい。図示は省略するが、流動焼却炉20は、設備起動時に炉内を高温加熱する昇温バーナ、炉内を高温加熱する際や、汚泥を焼却する際に不足する熱力を補うために炉内に補助燃料を投入する補助燃料装置を有し、炉内に燃焼用空気を送り込む送風機24を有する。なお、図2中符号26は、流動焼却炉20から排出される燃焼排ガスを空気予熱器21に送り出す排出路である。
【0019】
流動焼却炉20は、図示は省略するが、排出口を下部に有する。例えば流動焼却炉9に投入される下水汚泥9は不燃物を含んでいる。下水汚泥中の不燃物は焼却されずに流動焼却炉20の下部に残留する。したがって、排出口から流動砂を排出することで、流動砂に含まれる不燃物をも回収する。なお、排出された流動砂は、不燃物が除去された後、流動焼却炉に再度送り込まれる。
【0020】
空気予熱器21は、流動焼却炉20から排出される燃焼排ガスと、送風機24から流動焼却炉20に向けて送り込まれる燃焼用空気との間で熱交換を行う。空気予熱器21による熱交換により、燃焼用空気は、例えば600~650℃に予熱される。流動焼却炉20から排出される燃焼排ガスの温度は、例えば、800~900℃であり、空気予熱器21から送り出される燃焼排ガスの温度は熱交換により500~700℃に低下する。ここで、図2中符号28は空気予熱器21にて熱交換された燃焼排ガスを集じん装置22に排出する排出路(煙道)である。また、図2中符号30は送風機24から送り出された空気を空気予熱器21に供給する供給路、図2中符号27は予熱された燃焼用空気を流動焼却炉20に供給する供給路である。
【0021】
集じん装置22は、空気予熱器21から排出される燃焼排ガスに含まれる焼却灰を分離・回収する装置である。集じん装置22としては、電気集塵機、バグフィルタやセラミックフィルタを用いた集じん装置が挙げられる。集じん装置22において分離・回収された焼却灰は、灰ホッパ25に集積される。なお、図2中符号29は、集じん装置22により焼却灰が取り除かれた燃焼排ガスを排煙処理装置23に送り出す排出路であり、符号31は集じん装置22により分離・回収された焼却灰を灰ホッパ25に排出する排出路である。
このように、下水汚泥(生汚泥+余剰汚泥)9は、汚泥処理設備3で濃縮され、脱水され、乾燥され汚泥焼却設備4に供給される。そして当該汚泥焼却設備4の焼却炉20に供給された下水汚泥9は焼却炉20で焼却され燃焼排ガスが空気予熱器21に送られ、空気予熱器21から集じん装置22に送られるので灰の付着は、焼却炉20、空気予熱器21、集じん装置22のそれぞれにおいて発生する。
【0022】
排煙処理装置23は、例えば燃焼排ガス中に含まれる硫黄酸化物及び塩化水素などの装置の腐食に対して害を及ぼす化合物を除去する。
【0023】
灰ホッパ25は、集じん装置22より集塵された焼却灰を集積し、例えば搬送トラックなどに排出するものである。
なお、前記流動焼却炉20には図示しないが、流動焼却炉の内部温度を測定する温度センサが設けられる。温度センサは、測定した焼却炉内部の温度を示す信号を、制御装置50に逐次送信する。
また、空気予熱器21排出口近傍には、図示しないが、空気予熱器21の排出口近傍の温度を測定する温度センサ が設けられる。温度センサは測定した空気予熱器21の排出口近傍の温度を示す信号を、制御装置50に逐次送信する。
【0024】
制御装置50は、例えば、PLC(programmable logic controller)などから構成される。制御装置50は、汚泥焼却設備4の各部を制御するのに使用する制御装置を兼用して使用してもよいし、本発明を実施するために専用の制御装置としてもよい。制御装置50は、後述する供給装置51により設備の機器や要素への焼却灰の付着堆積を防止する薬剤添加の開始や停止、薬剤添加量の調整などの制御を行う。
【0025】
制御装置50には、後述する薬剤種類・量決定プロセス40における焼却灰の成分測定を行う灰成分測定装置40aと高温条件下での引張強度測定を行う高温粉体層強度測定装置40bによる測定結果を示す信号が入力され、この測定結果に基づいて下水汚泥に薬剤を添加するか否かの判定や、添加する薬剤の種類と供給量を求めそれを供給装置51に送信する。
この送信を受け、供給装置51は、添加する薬剤の種類と供給量に基づいて下水汚泥9に薬剤を供給する。
この薬剤を下水汚泥に添加するタイミングは、前記下水汚泥を濃縮処理する前、前記下水汚泥を脱水処理する前、前記下水汚泥を乾燥処理する前、前記下水汚泥を焼却する前、又は前記下水汚泥を焼却する焼却炉に投入する前の少なくともいずれか1のタイミングで供給する。
【0026】
供給装置51は、設備の機器や要素への付着堆積を防止する薬剤を下水汚泥9に供給する装置である。一般的に、流動焼却炉で焼却する下水汚泥のリン含有率が高いほど、焼却灰が焼却炉の排出口以降の煙道や機器内部に付着、堆積して閉塞させたり、焼却灰が焼却炉の流動砂に付着したりする事象が生じやすい。
焼却灰中のリンやリンの化合物の含有率が高いほど、焼却灰が焼却炉の排出口以降の煙道や機器内部に付着し、焼却炉での流動砂粒子同士が結合、造粒し、適正な流動状態を維持できなくなる事象(流動不良)の発生しやすいことが経験的に知られている。その機構は、リンの揮散、凝縮によるとするものや、低融点のリン化合物が液状化することによるとするものなどがあるが、その機構の全てが明らかになっているわけではない。
【0027】
したがって、供給装置51により、例えば鉄(Fe)、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)の何れか1つを含む塩基系化合物を含む薬剤を下水汚泥9に添加することで、上記事象の発生を防止する。なお、Feを含む化合物としては、ポリ硫酸第二鉄などが挙げられる。また、Caを含む化合物としては、炭酸カルシウム、消石灰、生石灰などが挙げられる。また、Alを含む化合物としては、ポリ塩化アルミニウムなどが挙げられる。また、Mgを含む化合物としては、酸化マグネシウムなどが挙げられる。
【0028】
なお、薬剤が下水汚泥9に添加されるタイミングは、下水汚泥9を濃縮処理する前、濃縮処理された下水汚泥9を脱水処理する前、脱水処理された下水汚泥9を乾燥処理する前、又は乾燥処理された下水汚泥9を流動焼却炉20に投入する前の少なくともいずれか1つのタイミングが好ましいが、下水浄化設備のいずれかの箇所への供給や、図示しない汚泥処理設備や、汚泥焼却設備から下水浄化設備へ返送される返流水への供給でもよい。
【0029】
薬剤種類・量決定プロセス40は、集じん装置22 により集じんされた焼却灰の一部を取得し、取得した焼却灰を用いた灰成分測定装置40aと高温条件下での引張強度測定を行う高温粉体層強度測定装置40bからなる。
灰成分測定装置40aにはエネルギー分散型蛍光X線分析装置、原子吸光分光光度計、またはICP発光分析装置等が使用される。
図3は、高温条件下での引張強度測定に用いる高温粉体層強度測定装置40bの概要を示す模式図である。
該高温粉体層強度測定装置40bは、集じん装置22により集塵された焼却灰の一部を取得し、取得した焼却灰を用いた灰の引張強度測定を行う装置である
【0030】
図3(a)は、高温粉体層強度測定装置40bの概要を示す模式図、図3(b)は、高温粉体層強度測定装置40bの有底容器周辺の機構構成を示す分解図である。
図3(a)において、40bは高温粉体層強度測定装置で、基台41の横方向の左右端部には一対の門形支柱42a、42bが立設されている。また、該門形支柱42a、42b間に支持台43が、支持台43にはスライド可能に稼働台44が設けられている。46a、46bは、電気炉の一部をなす上下の半割体からなる断熱部材である。
電気炉は、実際の焼却炉の温度条件の800~850℃の高温場の条件を再現でき、有底容器45に圧密充填された焼却灰を加熱し焼却炉内の灰の状態を再現することができる。
バネ47は、前記稼働台44に接続されたバネ、48は引張強度のセンサ測定部である。
【0031】
図3(b)において、45は焼却灰を圧密充填するための有底容器であり真中から分割されていて一方の分割容器部分45aを支持台43の固定部43aに固定するとともに、他方の分割容器部分45bを稼働台44の固定部44aに固定してある。稼働台44は支持台43の上に接してスライド可能に設置され、稼働部44に対して向かって左に接続されたバネ47を左方向に引っ張るとスライドするようになっている。
【0032】
このように構成された高温粉体層強度測定装置40bにおいて、焼却灰を有底容器45内に圧密充填し断熱部材46a、46bで実際の燃焼温度まで加熱し焼却炉内の灰の状態を再現し、この状態でバネ47を向かって左方向に引っ張り稼働台44を左に引っ張ることで、固定部44a上に固定された分割容器部分45bと固定部43a上に固定された分割容器部分45aが引っ張られ、有底容器45に圧密充填された焼却灰の実際の燃焼温度での引張強度をセンサ測定部48で測定し、その測定結果を制御装置50へ送信する。
このような高温粉体層強度測定装置40bにおいて灰の引張強度の測定は、例えば12時間、1日、1週間など、所定の間隔を空けて実施される。
なお、本発明の実施態様においては、高温粉体層強度測定装置40bとして高温吊り下げ式付着力測定装置(ホソカワミクロン株式会社製、ARF1110-300-特KHC)を用いて各試料の焼却灰の付着力を測定した。
【0033】
図4は、下水汚泥に添加する薬剤の供給量と灰の付着力(引張強度)との関係を表す図である。
同図において、横軸が薬剤添加量V、縦軸が灰の引張強度σ(kPa)でこれにより灰の引張強度と薬剤添加量との関係を示している。
例えば、薬剤を添加しないとき(薬剤添加量が0のとき)には、引張強度がσ0、薬剤をV1(薬剤添加量)添加したときは、引張強度がσ1になることを表している。
このことから、例えば焼却炉から採取した灰の引張強度がσ0で引張強度が高くダクト等が閉塞する恐れがあると判断したときには、薬剤をV1(薬剤添加量)添加して引張強度をσ1に低下させることで焼却灰によるダクト等の閉塞を防止することができる。
【0034】
図5は制御フローで、焼却炉で汚泥を焼却しているときに灰の付着によるトラブルが確認されたときの対処フローである。
以下同図のフローチャートを用いて、薬剤の選定、薬剤の添加量の決定、薬剤の添加の開始や停止を行う場合の処理の流れの一例について、説明する。
ステップS1:焼却炉で汚泥を焼却しているときに灰の付着によるトラブルの発生を確認した場合である。トラブルを事前に予防する場合は省略する。
ステップS2:上記ステップS1で灰の付着によるトラブルの発生を確認した場合には、灰ホッパ25に堆積された焼却灰の試料を取出す。
【0035】
ステップS3:上記ステップS2で取出された焼却灰を、灰成分測定装置40aにおいて当該取出された焼却灰の成分を測定し、高温粉体層強度測定装置40bにおいて当該取出された焼却灰の引張強度(σ0)を測定する。灰成分測定装置40aは灰の成分の測定値を制御装置50の薬剤種類決定部50a(図2)へ送信する。また、高温粉体層強度測定装置40bは焼却灰の引張強度の測定値を制御装置50の薬剤添加量決定部50b(図2)へ送信する。なお、灰成分測定装置40aの測定結果については人が端末で入力し、制御装置50の薬剤種類決定部50aへ送信してもよい。高温粉体層強度測定装置40bの測定結果についても、人が端末で入力し、制御装置50の薬剤添加量決定部50bへ送信してもよい。
ステップS4:灰成分測定装置40aの測定結果に基づいて、灰成分に応じて適切な薬剤種類を決定するルールを内部に組み込んだ制御装置50内部の薬剤種類決定部50a(図2)において、薬剤種類の選定を行う。または、灰成分測定装置40aの測定結果に基づいて、人の判断で適切と考えられる薬剤種類を決定し、端末で入力した薬剤種類の信号を制御装置50へ送信してもよい。
【0036】
ステップS5:S4で選定した薬剤の適当な量を焼却灰の試料に添加し、引張強度σ1を測定する。高温粉体層強度測定装置40bは焼却灰の引張強度の測定値を制御装置50の薬剤添加量決定部50bへ送信する。なお、高温粉体層強度測定装置40bの測定結果については、人が端末で入力し、制御装置50の薬剤添加量決定部50bへ送信してもよい。
ステップS6:引張強度σ1が目標引張強度σT以下(Yes)であればS8へ進み、σTを上回るとき(No)はS7へ進む。
ステップS7:薬剤の添加量を変更してS5へ戻る。
ステップS8:前記ステップS4で選定した汚泥に添加する薬剤の種類と前記ステップS5で決定した薬剤添加量(V1)を、汚泥処理設備3や汚泥焼却設備4での汚泥への供給に実装する。
【0037】
ステップS9:汚泥に薬剤が供給された結果トラブルが抑制されとき(Yes)は、ステップS10へ移る。汚泥に薬剤が供給された結果トラブルが抑制されないとき(No)は、ステップS4に戻り新たに薬剤の種類を選定する。
ステップS10:再び灰試料を採取する。
ステップS11:引張強度σ2を測定し、目標引張強度σT以下なら(Yes)ステップS12へ移る。目標引張強度σTを上回れば(No)ENDへ移る。高温粉体層強度測定装置40bは焼却灰の引張強度の測定値を制御装置50の薬剤添加量決定部50bへ送信する。なお、高温粉体層強度測定装置40bの測定結果については、人が端末で入力し、制御装置50の薬剤添加量決定部50bへ送信してもよい。
ステップS12:薬剤添加量を減少させて(V2)、汚泥処理設備3や汚泥焼却設備4での汚泥への供給に実装する。
ステップS13:薬剤添加量Vが0となったら(Yes)ENDへ移る。薬剤添加量Vが0でなければ(No)ステップS11へ移る。
【0038】
上記の例では、焼却炉で汚泥を焼却しているときに灰の付着によるトラブルが確認されたときのトラブル抑制で説明したが、焼却炉で汚泥を焼却しているときに、排気ガスダクトの圧力損失の増加、流動焼却炉内での圧力変動の増大、熱交換器での伝熱性低下、集塵装置での1次側圧力の増加等の事象が起きると付着が起き始めていることが分かるので、そのような症状の傾向が出たときに灰をサンプリングして灰の成分と引張強度を測定することでダクト等の閉塞を事前に防止することができる。
【0039】
本発明によれば、集塵装置22から搬出排出され灰ホッパ25に送られる灰の一部を採取して灰成分測定装置40aで灰の成分と高温粉体層強度測定装置40bで灰の付着性(引張強度)を定量評価した結果を制御装置50に送信し、当該制御装置50はこの測定結果に基づいて下水汚泥に薬剤を添加するか否かの判定や、添加する薬剤の種類と供給量を求めそれを供給装置51に送信する。
その結果、下水汚泥を焼却する下水汚泥焼却炉で発生する焼却灰の付着性に起因する排気ガスダクトの閉塞、流動床式焼却炉での流動不良、空気予熱器等の熱交換機での伝熱効率低下、集塵装置でのフィルタ性能低下を抑制する焼却炉の不具合発生を防止する汚泥焼却設備及び汚泥焼却方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 下水処理プロセス
2 下水浄化設備
3 汚泥処理設備
4 汚泥焼却設備
10 濃縮装置
11 脱水機
12 乾燥機
20 流動焼却炉
21 空気予熱器
22 集じん装置
23 排煙処理装置
25 灰ホッパ
40a 灰成分測定装置
40b 高温粉体層強度測定装置
50 制御装置
50a 薬剤種類決定部
50b 薬剤添加量決定部
51 供給装置
図1
図2
図3
図4
図5