(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162739
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】配向処理装置及び液晶光学素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078595
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井桁 幸一
(72)【発明者】
【氏名】樋口 絢香
(72)【発明者】
【氏名】小橋 淳二
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 安
(72)【発明者】
【氏名】岡 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 浩之
【テーマコード(参考)】
2H149
【Fターム(参考)】
2H149AA00
2H149AB22
2H149BA04
2H149BA05
2H149BB28
2H149DA02
2H149DA12
2H149EA03
2H149FA27W
(57)【要約】
【課題】液晶光学素子の大面積化を可能とする。
【解決手段】一実施形態によれば、配向処理装置は、光源と、前記光源から出射された光を第1直線偏光及び第2直線偏光に分割する偏光ビームスプリッターと、前記第1直線偏光を露光領域に案内する第1光学系と、前記第2直線偏光を前記露光領域に案内する第2光学系と、前記第1直線偏光を第1円偏光に変換する第1位相差板と、前記第2直線偏光を前記第1円偏光とは逆回りの第2円偏光に変換する第2位相差板と、透明基板の主面に薄膜が形成された処理基板を、前記主面に平行な方向に移動可能に構成された移動機構と、前記光源及び前記移動機構を制御する制御部と、を備え、前記第1円偏光及び前記第2円偏光は、前記露光領域に干渉光を形成し、前記制御部は、前記干渉光で前記薄膜の一部の領域を露光する工程と、前記処理基板を移動する工程と、を繰り返し行うように制御する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から出射された光を第1直線偏光及び第2直線偏光に分割する偏光ビームスプリッターと、
前記第1直線偏光を露光領域に案内する第1光学系と、
前記第2直線偏光を前記露光領域に案内する第2光学系と、
前記第1直線偏光を第1円偏光に変換する第1位相差板と、
前記第2直線偏光を前記第1円偏光とは逆回りの第2円偏光に変換する第2位相差板と、
透明基板の主面に薄膜が形成された処理基板を、前記主面に平行な方向に移動可能に構成された移動機構と、
前記光源及び前記移動機構を制御する制御部と、を備え、
前記第1円偏光及び前記第2円偏光は、前記露光領域に干渉光を形成し、
前記制御部は、前記干渉光で前記薄膜の一部の領域を露光する工程と、前記処理基板を移動する工程と、を繰り返し行うように制御する、
配向処理装置。
【請求項2】
前記処理基板の移動距離は、前記露光領域の幅より小さい、請求項1に記載の配向処理装置。
【請求項3】
さらに、前記光源と前記露光領域との間に配置された少なくとも1つのマスクを備え、
前記マスクは、多角形状に形成された開口を有している、請求項1に記載の配向処理装置。
【請求項4】
前記開口の形状は、四角形または六角形である、請求項3に記載の配向処理装置。
【請求項5】
さらに、前記露光領域に対向する開口を有するマスクを備え、
前記マスクは、多角形状に形成された開口を有している、請求項1に記載の配向処理装置。
【請求項6】
さらに、前記光源と前記偏光ビームスプリッターとの間に配置されたマスクを備え、
前記マスクは、多角形状に形成された開口を有している、請求項1に記載の配向処理装置。
【請求項7】
さらに、
前記偏光ビームスプリッターと前記第1位相差板との間に配置された第1マスクと、
前記偏光ビームスプリッターと前記第2位相差板との間に配置された第2マスクと、を備え、
前記第1マスク及び前記第2マスクの各々は、多角形状に形成された開口を有している、請求項1に記載の配向処理装置。
【請求項8】
さらに、
前記第1位相差板と前記露光領域との間に配置された第1マスクと、
前記第2位相差板と前記露光領域との間に配置された第2マスクと、を備え、
前記第1マスク及び前記第2マスクの各々は、多角形状に形成された開口を有している、請求項1に記載の配向処理装置。
【請求項9】
前記光源は、紫外線の波長帯の光を出射するレーザー光源である、請求項1に記載の配向処理装置。
【請求項10】
前記光源は、青成分の波長帯の光を出射するレーザー光源である、請求項1に記載の配向処理装置。
【請求項11】
透明基板の主面に薄膜を形成した処理基板を用意し、
前記薄膜に配向軸のパターンを形成するための配向処理を行い、
前記薄膜をベークして配向膜を形成し、
前記配向膜の上にコレステリック液晶を有する液晶層を形成し、
前記配向処理は、
前記処理基板を第1位置に設置し、
互いに逆回りの第1円偏光及び第2円偏光の干渉光で前記薄膜の第1領域を露光し、
前記処理基板を移動して第2位置に設置し、
前記干渉光で前記薄膜の第2領域を露光する、
液晶光学素子の製造方法。
【請求項12】
前記第1位置から前記第2位置までの前記処理基板の移動距離は、前記干渉光が形成される露光領域の幅より小さい、請求項11に記載の液晶光学素子の製造方法。
【請求項13】
前記配向処理は、多角形状に形成された開口を有するマスクを介して行う、請求項11に記載の液晶光学素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、配向処理装置及び液晶光学素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶材料を用いた液晶偏光格子が提案されている。このような液晶偏光格子では、格子周期、液晶層の屈折率異方性Δn(液晶層の異常光に対する屈折率neと常光に対する屈折率noとの差分)、及び、液晶層の厚さdといったパラメータの調整が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態の目的は、大面積化が可能な液晶光学素子を製造するための配向処理装置及び液晶光学素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係る配向処理装置は、
光源と、前記光源から出射された光を第1直線偏光及び第2直線偏光に分割する偏光ビームスプリッターと、前記第1直線偏光を露光領域に案内する第1光学系と、前記第2直線偏光を前記露光領域に案内する第2光学系と、前記第1直線偏光を第1円偏光に変換する第1位相差板と、前記第2直線偏光を前記第1円偏光とは逆回りの第2円偏光に変換する第2位相差板と、透明基板の主面に薄膜が形成された処理基板を、前記主面に平行な方向に移動可能に構成された移動機構と、前記光源及び前記移動機構を制御する制御部と、を備え、前記第1円偏光及び前記第2円偏光は、前記露光領域に干渉光を形成し、前記制御部は、前記干渉光で前記薄膜の一部の領域を露光する工程と、前記処理基板を移動する工程と、を繰り返し行うように制御する。
【0006】
一実施形態に係る液晶光学素子の製造方法は、
透明基板の主面に薄膜を形成した処理基板を用意し、前記薄膜に配向軸のパターンを形成するための配向処理を行い、前記薄膜をベークして配向膜を形成し、前記配向膜の上にコレステリック液晶を有する液晶層を形成し、前記配向処理は、前記処理基板を第1位置に設置し、互いに逆回りの第1円偏光及び第2円偏光の干渉光で前記薄膜の第1領域を露光し、前記処理基板を移動して第2位置に設置し、前記干渉光で前記薄膜の第2領域を露光する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、液晶層3に含まれるコレステリック液晶CLの一例を説明するための図である。
【
図3】
図3は、液晶光学素子100を模式的に示す平面図である。
【
図4】
図4は、液晶光学素子100の製造方法を説明するための図である。
【
図5】
図5は、配向膜2の形成工程を説明するための図である。
【
図6】
図6は、配向処理装置200の一構成例を示す図である。
【
図7】
図7は、露光領域EAにおいて処理基板SUBの薄膜20を露光する工程を説明するための図である。
【
図8】
図8は、マスクMKの一例を示す平面図である。
【
図9】
図9は、
図8に示したマスクMKを介して露光される薄膜20の領域を説明するための図である。
【
図10】
図10は、露光された領域S1における配向軸AAのパターンの一例を示す図である。
【
図11】
図11は、第2方向A2において互いに隣接する領域S1及び領域S2の重畳領域OLを説明するための図である。
【
図12】
図12は、第3方向A3において互いに隣接する領域S1及び領域S6の重畳領域OLを説明するための図である。
【
図13】
図13は、第2方向A2において互いに隣接する領域S1及び領域S2の重畳領域OLを説明するための図である。
【
図15】
図15は、
図14に示したマスクMKを介して露光される薄膜20の領域を説明するための図である。
【
図17】
図17は、
図16に示したマスクMKを介して露光される薄膜20の領域を説明するための図である。
【
図19】
図19は、
図18に示したマスクMKを介して露光される薄膜20の領域を説明するための図である。
【
図20】
図20は、配向処理装置200の他の一構成例を示す図である。
【
図21】
図21は、配向処理装置200の他の一構成例を示す図である。
【
図22】
図22は、配向処理装置200の他の一構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸、及び、Z軸を記載する。Z軸に沿った方向をZ方向または第1方向A1と称し、Y軸に沿った方向をY方向または第2方向A2と称し、X軸に沿った方向をX方向または第3方向A3と称する。X軸及びY軸によって規定される面をX-Y平面と称し、X軸及びZ軸によって規定される面をX-Z平面と称し、Y軸及びZ軸によって規定される面をY-Z平面と称する。
【0010】
図1は、液晶光学素子100を模式的に示す断面図である。
液晶光学素子100は、透明基板1と、配向膜2と、液晶層3と、を備えている。
【0011】
透明基板1は、例えば、透明なガラス板または透明な合成樹脂板によって構成されている。透明基板1は、例えば、可撓性を有する透明な合成樹脂板によって構成されていてもよい。透明基板1は、任意の形状を取り得る。例えば、透明基板1は、湾曲していてもよい。
【0012】
本明細書において、『光』は、可視光及び不可視光を含むものである。例えば、可視光域の下限の波長は360nm以上400nm以下であり、可視光域の上限の波長は760nm以上830nm以下である。可視光は、第1波長帯(例えば400nm~500nm)の第1成分(青成分)、第2波長帯(例えば500nm~600nm)の第2成分(緑成分)、及び、第3波長帯(例えば600nm~700nm)の第3成分(赤成分)を含んでいる。不可視光は、第1波長帯より短波長である紫外線の波長帯、及び、第3波長帯より長波長である赤外線の波長帯を含んでいる。
本明細書において、『透明』は、無色透明であることが好ましい。ただし、『透明』は、半透明又は有色透明であってもよい。
【0013】
透明基板1は、X-Y平面に沿った平板状に形成され、第1主面(外面)F1と、第2主面(内面)F2と、側面SSと、を有している。第1主面F1及び第2主面F2は、X-Y平面に略平行な面であり、第1方向A1において、互いに対向している。側面SSは、第1方向A1に沿って延びた面である。
図1に示す例では、側面SSは、X-Z平面と略平行な面であるが、側面SSは、Y-Z平面と略平行な面を含んでいる。
【0014】
配向膜2は、第2主面F2に配置されている。配向膜2は、X-Y平面に沿って配向規制力を有する水平配向膜である。配向膜2は、例えば、光照射により配向処理される光配向膜である。
【0015】
液晶層3は、第1方向A1において、配向膜2に重なっている。つまり、配向膜2は、透明基板1と液晶層3との間に位置し、また、透明基板1及び液晶層3に接している。
【0016】
液晶層3は、拡大して模式的に示すように、コレステリック液晶CLを有している。コレステリック液晶CLは、第1方向A1にほぼ平行な螺旋軸AXを有し、また、第1方向A1に沿った螺旋ピッチPを有している。螺旋ピッチPは、螺旋の1周期(液晶分子が360度回転するのに要する螺旋軸AXに沿った層厚)を示す。
【0017】
このような液晶層3は、液晶光学素子100に入射した光LTiのうち、螺旋ピッチP及び液晶層3の屈折率異方性Δnに応じて決定する選択反射帯域の円偏光を反射するように構成されている。なお、本明細書において、液晶層3における「反射」とは、液晶層3の内部における回折を伴うものである。
【0018】
液晶層3は、選択反射帯域のうち、コレステリック液晶CLの旋回方向に対応した円偏光を反射する反射面3Rを有している。反射面3Rは、X-Y平面に対して傾斜している。なお、本明細書において、円偏光は、厳密な円偏光であってもよいし、楕円偏光に近似した円偏光であってもよい。
【0019】
図1に示す例では、液晶層3は、第1主面F1の側から入射した光LTiの一部を透明基板1に向けて反射するように構成されている。
【0020】
なお、液晶光学素子100において、
図1に示した液晶層3に、他のコレステリック液晶を有する液晶層が積層されていてもよい。他のコレステリック液晶とは、例えば、螺旋ピッチPとは異なる螺旋ピッチを有するコレステリック液晶や、図示したコレステリック液晶CLの旋回方向とは逆回りに旋回したコレステリック液晶などである。
【0021】
次に、
図1に示す液晶光学素子100の光学作用について説明する。
【0022】
液晶光学素子100に入射する光LTiは、例えば、可視光、紫外線、及び、赤外線を含んでいる。
図1に示す例では、理解を容易にするために、光LTiは、透明基板1に対して略垂直に入射するものとする。なお、透明基板1に対する光LTiの入射角度は、特に限定されない。
【0023】
光LTiは、透明基板1及び配向膜2を透過し、液晶層3に入射する。そして、液晶層3は、反射面3Rにおいて光LTiの一部を反射し、その他の光LTtを透過する。反射された光LTrは、波長λの円偏光である。
一例では、光LTrは、赤外線の波長帯の左回りの円偏光である。また、光LTtは、可視光及び紫外線の他に、赤外線の波長帯の右回りの円偏光を含んでいる。
【0024】
液晶層3で反射された光LTrの進入角θは、光導波条件を満足するように設定されている。ここでの進入角θとは、液晶層3と空気との界面で全反射を起こす臨界角以上の角度に相当する。進入角θは、透明基板1の法線Nに対する角度を示す。
【0025】
透明基板1、配向膜2、及び、液晶層3が同等の屈折率を有している場合、これらの積層体が単体の導光素子となり得る。この場合、光LTrは、透明基板1と空気との界面、及び、液晶層3と空気との界面において、反射を繰り返しながら、側面SSに向けて導光される。
【0026】
このような液晶光学素子100は、例えば、太陽電池装置の導光素子として適用することができる。太陽電池装置は、液晶光学素子100と、
図1において点線で示す太陽電池PVと、を備えている。太陽電池PVは、側面SSに対向するように設けられている。太陽電池PVは、側面SSから出射された光LTrを受光して、発電することができる。
【0027】
なお、ここでは液晶層3において赤外線が反射される例について説明したが、液晶層3は、可視光を反射するように構成されてもよいし、紫外線を反射するように構成されてもよいし、複数の波長帯の光を反射するように構成されてもよい。
【0028】
図2は、液晶層3に含まれるコレステリック液晶CLの一例を説明するための図である。
【0029】
なお、
図2では、液晶層3を第1方向A1に拡大して図示している。また、簡略化のため、コレステリック液晶CLを構成する液晶分子として、X-Y平面に平行な同一平面に位置する複数の液晶分子のうちの1つの液晶分子LMを図示している。図示した液晶分子LMの配向方向は、同一平面に位置する複数の液晶分子の平均的な配向方向に相当する。
【0030】
点線で囲んだ1つのコレステリック液晶CLに着目すると、コレステリック液晶CLは、旋回しながら第1方向A1に沿って螺旋状に積み重ねられた複数の液晶分子LMによって構成されている。複数の液晶分子LMは、配向膜2と液晶層3との界面の近傍に位置する液晶分子LM11を有している。
【0031】
図2に示す例の液晶層3において、第2方向A2に沿って隣接する複数のコレステリック液晶CLの配向方向は、互いに異なっている。また、第2方向A2に沿って隣接するコレステリック液晶CLの各々の空間位相は、互いに異なっている。
第2方向A2に沿って隣接する液晶分子LM11の配向方向は、互いに異なっている。複数の液晶分子LM11の配向方向は、第2方向A2に沿って連続的に変化している。
【0032】
図中に一点鎖線で示す液晶層3の反射面3Rは、X-Y平面に対して傾斜している。反射面3RとX-Y平面とのなす角度θαは、鋭角である。反射面3Rは、液晶分子LMの配向方向が揃った面、あるいは、空間位相が揃った面(等位相面)に相当する。
【0033】
このような液晶層3は、液晶分子LMの配向方向が固定された状態で硬化している。つまり、液晶分子LMの配向方向は、電界に応じて制御されるものではない。このため、液晶光学素子100は、液晶層3に電界を形成するための電極を備えていない。
【0034】
一般的に、コレステリック液晶CLを有する液晶層3において、垂直入射した光に対する選択反射帯域Δλは、コレステリック液晶CLの螺旋ピッチP、液晶層3の屈折率異方性Δn(異常光に対する屈折率neと常光に対する屈折率noとの差分)に基づいて、次の式(1)で示される。
Δλ=Δn*P …(1)
選択反射帯域Δλの具体的な波長範囲は、(no*P)以上、(ne*P)以下の範囲である。
【0035】
選択反射帯域Δλの中心波長λmは、コレステリック液晶CLの螺旋ピッチP、液晶層3の平均屈折率nav(=(ne+no)/2)に基づいて、次の式(2)で示される。
λm=nav*P …(2)
【0036】
図3は、液晶光学素子100を模式的に示す平面図である。
図3には、コレステリック液晶CLの空間位相の一例が示されている。ここに示す空間位相は、コレステリック液晶CLに含まれる液晶分子LMのうち、配向膜2の近傍に位置する液晶分子LM11の配向方向として示している。
【0037】
第2方向A2に沿って並んだコレステリック液晶CLの各々について、液晶分子LM11の配向方向は互いに異なる。つまり、コレステリック液晶CLの空間位相は、第2方向A2に沿って異なる。
一方、第3方向A3に沿って並んだコレステリック液晶CLの各々について、液晶分子LM11の配向方向は略一致する。つまり、コレステリック液晶CLの空間位相は、第3方向A3において略一致している。
【0038】
特に、第2方向A2に並んだコレステリック液晶CLに着目すると、各液晶分子LM11の配向方向は、一定角度ずつ異なっている。つまり、第2方向A2に沿って並んだ複数の液晶分子LM11の配向方向は、線形に変化している。したがって、第2方向A2に沿って並んだ複数のコレステリック液晶CLの空間位相は、第2方向A2に沿って線形に変化している。その結果、
図2に示した液晶層3のように、X-Y平面に対して傾斜する反射面3Rが形成される。ここでの「線形に変化」は、例えば、液晶分子LM11の配向方向の変化量が1次関数で表されることを示す。なお、ここでの液晶分子LM11の配向方向とは、X-Y平面における液晶分子LM11の長軸方向に相当する。このような液晶分子LM11の配向方向は、配向膜2になされた配向処理によって制御される。
【0039】
ここで、一平面内において、第2方向A2に沿って液晶分子LM11の配向方向が180度だけ変化するときの2つの液晶分子LM11の間隔を周期Tと定義する。なお、
図3においてDPは、液晶分子LM11の旋回方向を示している。
図2に示した反射面3Rの傾斜角度θαは、周期T及び螺旋ピッチPによって適宜設定される。周期Tは、一例では、1000nm~3000nmであり、また、別の一例では、300nm~700nmである。
【0040】
次に、液晶光学素子100の製造方法について、
図4を参照しながら説明する。
【0041】
まず、透明基板1を洗浄する(ステップST1)。
そして、透明基板1の第2主面F2に配向膜2を形成する(ステップST2)。配向膜2は、第2主面F2に形成した薄膜に配向処理(光配向処理)を行うことで形成される。このような配向処理によって形成された配向膜2は、所定のパターンの配向軸を有する。配向膜2の形成工程については後述する。
そして、配向膜2の上に液晶材料(コレステリック液晶を形成するためのモノマー材料を含む溶液)を塗布する(ステップST3)。その後、チャンバ内を減圧することで乾燥し(ステップST4)、さらに、液晶材料をベークする(ステップST5)。このような工程を経ることにより、液晶材料に含まれる液晶分子は、配向膜2の配向軸に応じて所定の方向に配向する。そして、液晶材料を室温程度まで冷却し(ステップST6)、その後、液晶材料に紫外線を照射して液晶材料を硬化する(ステップST7)。これにより、コレステリック液晶CLを有する液晶層3が形成される。
【0042】
次に、配向膜2の形成工程について、
図5を参照しながら説明する。
【0043】
まず、透明基板1の上に配向膜溶液を塗布する(ステップST21)。配向膜溶液は、配向膜2を形成するためのモノマー材料を含む溶液である。配向膜溶液を塗布する手法については、特に限定されない。一例では、透明基板1の上に配向膜溶液を滴下した後に透明基板1を高速回転させるスピンコートであってもよいし、配向膜溶液をフレキソ印刷により塗布してもよいし、配向膜溶液をインクジェットにより塗布してもよい。
【0044】
その後、塗布した配向膜溶液を乾燥する(ステップST22)。これにより、配向膜溶液に含まれる溶媒が除去される。このようなステップST21及びステップST22を経ることにより、透明基板1の第2主面F2に薄膜を形成した処理基板が用意される。
【0045】
その後、薄膜に対して配向軸のパターンを形成するための配向処理を行う(ステップST23)。配向処理は、以下の手順で行う。
まず、処理基板を第1位置に設置する(ステップST231)。
その後、処理基板に向けて、互いに逆回りの第1円偏光及び第2円偏光の干渉光を照射し、薄膜の第1領域を露光する(ステップST232)。干渉光は、第1円偏光及び第2円偏光の干渉縞のパターンを有する光である。1回の露光時間は、例えば90秒である。
その後、処理基板を移動し(ステップST233)、ステップST231に戻り、第1位置とは異なる第2位置に処理基板を設置する。
その後、ステップST232で説明したように、干渉光で薄膜の第2領域を露光する。
このように、ステップST231乃至ステップST233を繰り返し行うことにより、干渉光が形成される露光領域の面積の数倍の面積を有する薄膜を順次露光することができる。露光された薄膜には、干渉縞のパターンに応じた配向軸のパターンが形成される。
【0046】
その後、薄膜をベークする(ステップST24)。このような配向処理及びベークを経ることにより、薄膜に含まれるモノマー材料がポリマー化し、しかも、配向軸が固定された状態で薄膜が硬化する。これにより、所定の配向軸のパターンを有する配向膜2が形成される。
【0047】
次に、上記の配向処理に適用される配向処理装置200について説明する。
【0048】
図6は、配向処理装置200の一構成例を示す図である。
【0049】
配向処理装置200は、光源201と、拡大光学系202と、偏光ビームスプリッター203と、第1光学系204Aと、第2光学系204Bと、第1位相差板205Aと、第2位相差板205Bと、移動機構210と、コントローラCTRと、を備えている。
【0050】
光源201は、例えば、紫外線の波長帯の光を出射するレーザー光源である。なお、配向処理の対象である薄膜の種類によっては、紫外線とは異なる波長帯の光を出射する光源201が適用される場合があり得る。
【0051】
偏光ビームスプリッター203は、光源201からの出射光を第1直線偏光及び第2直線偏光に分割する。拡大光学系202は、光源201と偏光ビームスプリッター203との間の光路OPに配置され、出射光のビームスポットを拡大する。
【0052】
第1光学系204Aは、偏光ビームスプリッター203で反射された第1直線偏光の光路OPAに配置され、第1直線偏光を露光領域EAに案内する。
第2光学系204Bは、偏光ビームスプリッター203を透過した第2直線偏光の光路OPBに配置され、第2直線偏光を露光領域EAに案内する。図示した第1光学系204A及び第2光学系204Bは、それぞれ平面鏡によって構成されているが、複数の平面鏡で構成されてもよい。
【0053】
第1位相差板205Aは、光路OPAに配置され、第1直線偏光を第1円偏光に変換する。
第2位相差板205Bは、光路OPBに配置され、第2直線偏光を第2円偏光に変換する。第2円偏光は、第1円偏光とは逆回りの円偏光である。これらの第1位相差板205A及び第2位相差板205Bは、例えば、1/4波長板である。
【0054】
露光領域EAに到達した第1円偏光及び第2円偏光は、干渉光を形成する。
【0055】
図6に示す例では、配向処理装置200は、露光領域EAに対向する開口APを有するマスクMKを備えている。なお、マスクMKは、光源201と露光領域EAとの間の光路OP、光路OPA及びOPBのいずれかに配置されていればよい。
【0056】
移動機構210は、露光領域EAと重畳するように処理基板SUBを保持し、処理基板SUBを移動可能に構成されている。ここでの処理基板SUBとは、
図5のステップST21及びステップST22を経て形成されたものであり、配向膜2を形成するための薄膜を備えている。
【0057】
コントローラCTRは、光源201及び移動機構210を制御する。例えば、コントローラCTRは、光源201から光が出射されるタイミング、光を出射する時間、光のパワーなどを制御する。また、コントローラCTRは、移動機構210による処理基板SUBの移動距離、移動方向、移動のタイミングなどを制御する。そして、コントローラCTRは、光源201からの出射光による干渉光で処理基板SUBの薄膜の一部の領域を露光する工程と、移動機構210により処理基板SUBを移動する工程と、を繰り返し行うように制御する。
【0058】
図7は、露光領域EAにおいて処理基板SUBの薄膜20を露光する工程を説明するための図である。
【0059】
処理基板SUBは、上記の通り、透明基板1の第2主面F2に、配向膜を形成するための薄膜20を備えている。
【0060】
移動機構210は、保持した処理基板SUBを、第2主面F2に平行な方向D1及びD2に移動可能に構成されている。方向D1及びD2は、互いに交差(あるいは直交)する方向である。例えば、方向D1は
図3に示したY軸に沿った方向(第2方向A2)に平行であり、方向D2はX軸に沿った方向(第3方向A3)に平行である。
移動機構210は、処理基板SUBと対向する開口210OPを有している。開口210OPは、薄膜20のうち、露光される領域の全体(後に
図9などに示す領域S1、S2、…Sn)に重畳している。
【0061】
マスクMKは、処理基板SUBから離間し、開口APが露光領域EAに対向するように配置されている。
【0062】
第1円偏光CP1及び第2円偏光CP2の各々のビームスポットは、周縁部(光軸から離れた拡散成分)がマスクMKによって遮光される。これにより、ビームスポットは、開口APの形状に対応するように整形される。第1円偏光CP1及び第2円偏光CP2は、マスクMKの開口APを通過した後に、露光領域EAに到達し、干渉光を形成する。薄膜20の一部の領域は、干渉光によって露光される。
図示した例では、第1円偏光CP1は右回りの円偏光であり、第2円偏光CP2は左回りの円偏光である。
上述したように、移動機構210が開口210OPを有しているため、処理基板SUBを透過した第1円偏光CP1及び第2円偏光CP2が移動機構210で反射されることがなく、移動機構210での不所望な反射光に起因した配向パターンの乱れを抑制することができる。
【0063】
処理基板SUBが第1位置P1に設置された状態において、薄膜20のうち、露光領域EAに重畳する領域が干渉光によって露光された後に、処理基板SUBは方向D1に沿って移動し、第2位置P2に設置される。そして、処理基板SUBが第2位置P2に設置された状態において、薄膜20のうち、露光領域EAに重畳する領域が干渉光によって露光される。このとき、処理基板SUBの第1位置P1から第2位置P2までの方向D1に沿った移動距離LSUBは、方向D1に沿った露光領域EAの幅WEAより小さい。このため、隙間(未露光領域)が形成されることなく、薄膜20の複数の領域を露光することができる。
【0064】
なお、開口APの方向D1に沿った幅WAPは、露光領域EAの幅WEAより大きい。
【0065】
図8は、マスクMKの一例を示す平面図である。
マスクMKは、正方形状の開口APを有している。開口APの面積は、点線で示したビームスポットBSの面積より小さい。このため、ビームスポットBSのうちの周縁部がマスクMKで遮光される。
図7に示した露光領域EAは、開口APの形状に対応して正方形状に形成される。
一例では、ビームスポットBSの直径が10cmであり、開口APの一辺の長さが7cmである。
【0066】
図9は、
図8に示したマスクMKを介して露光される薄膜20の領域を説明するための図である。
【0067】
薄膜20は、図示したように、複数の領域Snに分割して露光される。
図8に示したマスクMKが適用された場合、正方形状の露光領域EAが形成されるため、1回の露光工程で露光される領域Snの形状も正方形状である。各領域Snの幅WSnは、露光領域EAの幅WEAと同等である。
【0068】
例えば、第1露光工程で薄膜20の領域S1が露光される。その後、処理基板SUBは、第2方向A2に沿って移動し、第2露光工程で薄膜20の領域S2が露光される。この繰り返しで領域S5まで露光された後、処理基板SUBは、第2方向A2及び第3方向A3に沿って移動し、領域S6が露光される。
【0069】
図10は、露光された領域S1における配向軸AAのパターンの一例を示す図である。ここでは、領域S1において、X-Y平面に平行な面内での配向軸AAのパターンを示している。配向軸AAは、配向膜に液晶分子が接触した際に、液晶分子に対して配向規制力を発揮する方向に平行であり、X-Y平面において、配向した液晶分子の長軸と平行である。
【0070】
第2方向A2に並んだ配向軸AAの向きは、互いに異なる。図示した例では、第2方向A2に並んだ配向軸AAの向きは、図の左から右に向かって、時計回りに一定角度ずつ変化している。なお、第3方向A3に並んだ配向軸AAの向きは略一致している。
これにより、
図3に示したような液晶分子LM11の配向パターンが得られる。
【0071】
配向軸AAの向きが180度だけ変化するときの2つの配向軸AAの間隔を周期TAAと定義すると、周期TAAは、
図3に示した液晶分子LM11の周期Tと同等である。
【0072】
なお、周期TAAは、処理基板SUBへの第1円偏光CP1及び第2円偏光CP2の入射角及び波長で決定される。
図6に示した第1光学系204Aにおける第1直線偏光の反射角度及び第2光学系204Bにおける第2直線偏光の反射角度を調整することで、処理基板SUBへの第1円偏光CP1及び第2円偏光CP2の入射角が変化し、周期TAAを調整することができる。
【0073】
図11は、第2方向A2において互いに隣接する領域S1及び領域S2の重畳領域OLを説明するための図である。
【0074】
例えば、
図7の第1位置P1での第1露光工程により、薄膜20の領域S1が露光領域EAで露光される。その後、第2方向A2に沿って処理基板SUBを移動し、
図7の第2位置P2での第2露光工程により、薄膜20の領域S2が露光領域EAで露光される。このとき、上記の通り、処理基板SUBを移動する移動距離LSUBは、露光領域EAの幅WEAより小さい。このため、領域S1及び領域S2は、多重露光される重畳領域OLを有している。
【0075】
重畳領域OLにおいては、第1露光工程で領域S1に形成された配向軸AAのパターンと、第2露光工程で領域S2に形成された配向軸AAのパターンとが一致していることが望ましい。このため、重畳領域OLの幅WOLは、配向軸AAの周期TAAの整数倍であることが望ましい。但し、重畳領域OLの形成に際して、配向軸AAの不一致が生じたとしても、液晶光学素子としての反射特性に大きな影響を及ぼすものではない。
【0076】
図12は、第3方向A3において互いに隣接する領域S1及び領域S6の重畳領域OLを説明するための図である。
【0077】
薄膜20の領域S1が露光領域EAで露光された後に、薄膜20の領域S6が露光領域EAで露光される際にも、
図11を参照して説明したのと同様に、領域S1及び領域S6は、多重露光される重畳領域OLを有している。
【0078】
重畳領域OLにおいては、領域S1に形成された配向軸AAのパターンと、領域S6に形成された配向軸AAのパターンとが一致していることが望ましい。但し、重畳領域OLの形成に際して、配向軸AAの不一致が生じたとしても、液晶光学素子としての反射特性に大きな影響を及ぼすものではない。
【0079】
図13は、第2方向A2において互いに隣接する領域S1及び領域S2の重畳領域OLを説明するための図である。
【0080】
薄膜20の領域S1が露光領域EAで露光された後に、薄膜20の領域S2が露光領域EAで露光される。
図13に示す例では、各露光工程において、露光領域EAが処理基板SUBに対して第3方向A3に沿って移動する。このため、領域S1及び領域S2は、それぞれ第3方向A3に延びた長方形状に形成される。なお、各露光工程においては、固定された処理基板SUBに対して露光領域EAが第3方向A3に移動してもよいし、固定された露光領域EAに対して処理基板SUBが第3方向A3に移動してもよい。
【0081】
このようにして形成された領域S1及び領域S2は、
図11を参照して説明したのと同様に、多重露光される重畳領域OLを有している。
【0082】
重畳領域OLにおいては、領域S1に形成された配向軸AAのパターンと、領域S2に形成された配向軸AAのパターンとが一致していることが望ましい。但し、重畳領域OLの形成に際して、配向軸AAの不一致が生じたとしても、液晶光学素子としての反射特性に大きな影響を及ぼすものではない。
【0083】
ところで、液晶光学素子100を大面積化するに際しては、大面積の配向膜2を必要とする。しかも、配向膜2は、
図3に示したような液晶分子LM11の配向パターンを形成するために、特殊な配向軸AAのパターンを有するように形成する必要がある。そこで、互いに逆回りの円偏光で干渉光を形成し、配向膜2を形成するための薄膜20を干渉光で露光する干渉露光法が適用される。しかしながら、1回の露光工程で形成可能な露光領域EAの面積は限られている。このため、薄膜20を複数の領域に分割して各領域を露光することで、大面積の配向膜2を容易に形成することができる。加えて、液晶光学素子100の大面積化も容易に実現することができる。
【0084】
また、多角形状の開口APを有するマスクMKを適用することで、露光領域EAに到達する円偏光のビームスポットBSが開口APの形状に応じて整形され、隙間(未露光領域)が形成されることなく大面積の薄膜20を露光することができる。
【0085】
また、
図6に示した配向処理装置200によれば、使用するマスクMKは1個であり、複数のマスクを使用する場合と比較して、コストを低減することができる。
【0086】
また、マスクMKは、処理基板SUBに近接して配置されているため、ビームスポットの輪郭を鮮明にすることができる。
【0087】
また、配向軸AAの周期TAAを調整するために、処理基板SUBへの第1円偏光CP1及び第2円偏光CP2の入射角が変化した場合であっても、マスクMKが露光領域EAに近接して配置されているため、マスクMKの位置を変更する必要がない。
【0088】
図14は、マスクMKの他の例を示す平面図である。
図14に示す例は、
図8に示した例と比較して、マスクMKが長方形状の開口APを有している点で相違している。開口APの面積は、点線で示したビームスポットBSの面積より小さい。このため、ビームスポットBSのうちの周縁部がマスクMKで遮光される。
図7に示した露光領域EAは、開口APの形状に対応して長方形状に形成される。
【0089】
図15は、
図14に示したマスクMKを介して露光される薄膜20の領域を説明するための図である。
【0090】
薄膜20は、図示したように、複数の領域Snに分割して露光される。
図14に示したマスクMKが適用された場合、長方形状の露光領域EAが形成されるため、1回の露光工程で露光される領域Snの形状も長方形状である。
【0091】
同等の面積を有する薄膜20を露光するに際して、
図14に示した長方形状の開口APを有するマスクMKを適用した場合には、
図8に示した正方形状の開口APを有するマスクMKを適用した場合と比較して、露光工程の回数を低減できる場合がある。
例えば、
図9に示した例では、薄膜20は、20個の領域Snに分割され、20回の露光工程を必要としている。
これに対して、
図15に示す例では、薄膜20は、16個の領域Snに分割され、16回の露光工程を必要としている。このため、4回の露光工程を削減することができる。
【0092】
なお、各領域が長方形状に形成される場合であっても、上記の例と同様に、互いに隣接する領域は、重畳領域を有しており、未露光の隙間が形成されることはない。
【0093】
図16は、マスクMKの他の例を示す平面図である。
図16に示す例は、
図8に示した例と比較して、マスクMKが正六角形状の開口APを有している点で相違している。開口APの面積は、点線で示したビームスポットBSの面積より小さい。このため、ビームスポットBSのうちの周縁部がマスクMKで遮光される。
図7に示した露光領域EAは、開口APの形状に対応して正六角形状に形成される。ビームスポットBSが円形である場合、ビームスポットBSの中心と開口APの中心とを一致させることで、ビームスポットBSの周縁部をほぼ等方的に遮光することができる。
【0094】
図17は、
図16に示したマスクMKを介して露光される薄膜20の領域を説明するための図である。
薄膜20は、図示したように、複数の領域Snに分割して露光される。
図16に示したマスクMKが適用された場合、正六角形状の露光領域EAが形成されるため、1回の露光工程で露光される領域Snの形状も正六角形状である。
なお、各領域が正六角形状に形成される場合であっても、上記の例と同様に、互いに隣接する領域は、重畳領域を有しており、未露光の隙間が形成されることはない。
【0095】
図18は、マスクMKの他の例を示す平面図である。
図18に示す例は、
図8に示した例と比較して、マスクMKが横長の六角形状の開口APを有している点で相違している。開口APの面積は、点線で示したビームスポットBSの面積より小さい。このため、ビームスポットBSのうちの周縁部がマスクMKで遮光される。
図7に示した露光領域EAは、開口APの形状に対応して六角形状に形成される。
【0096】
図19は、
図18に示したマスクMKを介して露光される薄膜20の領域を説明するための図である。
薄膜20は、図示したように、複数の領域Snに分割して露光される。
図18に示したマスクMKが適用された場合、六角形状の露光領域EAが形成されるため、1回の露光工程で露光される領域Snの形状も六角形状である。
なお、各領域が六角形状に形成される場合であっても、上記の例と同様に、互いに隣接する領域は、重畳領域を有しており、未露光の隙間が形成されることはない。
【0097】
図20は、配向処理装置200の他の一構成例を示す図である。
図20に示す構成例は、
図6に示した構成例と比較して、マスクMKが光源201と偏光ビームスプリッター203との間の光路OPに配置された点で相違している。図示した例では、マスクMKは、拡大光学系202と偏光ビームスプリッター203との間に配置されている。マスクMKの開口APの形状は、多角形であり、
図8、
図14、
図16、
図18にそれぞれ示した形状のいずれを適用してもよい。
このような構成例においても、上記したのと同様の効果が得られる。
【0098】
図21は、配向処理装置200の他の一構成例を示す図である。
図21に示す構成例は、
図6に示した構成例と比較して、第1マスクMKAが偏光ビームスプリッター203と第1光学系204Aとの間の光路OPAに配置され、第2マスクMKBが偏光ビームスプリッター203と第2光学系204Bとの間の光路OPBに配置された点で相違している。第1マスクMKAの開口APAの形状、及び、第2マスクMKBの開口APBの形状は、同一である。また、開口APA及び開口APBの各々の形状は、多角形であり、
図8、
図14、
図16、
図18にそれぞれ示した形状のいずれを適用してもよい。
このような構成例においても、上記したのと同様の効果が得られる。
【0099】
図22は、配向処理装置200の他の一構成例を示す図である。
図22に示す構成例は、
図6に示した構成例と比較して、第1マスクMKAが第1位相差板205Aと露光領域EAとの間の光路OPAに配置され、第2マスクMKBが第2位相差板205Bと露光領域EAとの間の光路OPBに配置された点で相違している。第1マスクMKAの開口APAの形状、及び、第2マスクMKBの開口APBの形状は、同一である。また、開口APA及び開口APBの各々の形状は、多角形であり、
図8、
図14、
図16、
図18にそれぞれ示した形状のいずれを適用してもよい。
このような構成例においても、上記したのと同様の効果が得られる。
【0100】
以上説明したように、本実施形態によれば、大面積化が可能な液晶光学素子を製造するための配向処理装置及び液晶光学素子の製造方法を提供することができる。
【0101】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0102】
100…液晶光学素子
1…透明基板 F1…第1主面 F2…第2主面 SS…側面
2…配向膜 3…液晶層 CL…コレステリック液晶 3R…反射面
200…配向処理装置
201…光源 202…拡大光学系 203…偏光ビームスプリッター
204A…第1光学系 205A…第1位相差板
204B…第2光学系 205B…第2位相差板
210…移動機構 CTR…コントローラ
MK…マスク AP…開口