(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162757
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】スイッチング電源の制御装置、及びスイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078625
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三添 公義
(72)【発明者】
【氏名】宮島 一之
(72)【発明者】
【氏名】久保田 仁史輝
(72)【発明者】
【氏名】海瀬 兼介
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS01
5H730BB43
5H730BB57
5H730DD04
5H730EE02
5H730EE07
5H730EE59
5H730FD25
5H730FG01
5H730VV01
(57)【要約】
【課題】スイッチング電源装置のトランスの2次側に誘起されるフライバック電圧が低下を始めるまでの時間が短くても出力電圧の安定した制御を可能にする。
【解決手段】実施形態のスイッチング電源装置1は、トランスTの補助巻線Taで生じるフライバック電圧Vbaに基づく帰還電圧Vfbを保持する電圧保持回路2と、スイッチング素子Qの非導通期間におけるトランスTの2次巻線Tsでの通電を帰還電圧Vfbに基づいて判別する検出回路3と、2次巻線Tsでの通電時間に対応する電気量を生じさせる計時回路4と、計時回路4から得られる2次巻線Tsの通電時間に基づいて、電圧保持回路2による帰還電圧Vfbの保持時期を検出する保持時期制御回路5と、電圧保持回路2で保持されている電圧Vfbhを用いてスイッチング素子Qの導通時期を決定する導通時間制御回路6と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスの1次側に2次巻線と磁気的に結合するように巻回されている補助巻線の電圧を用いて、前記1次巻線に接続されているスイッチング素子の導通時間を調整することにより出力電圧が制御されるフライバック式絶縁型スイッチング電源の制御装置であって、
前記補助巻線で生じるフライバック電圧に基づく帰還電圧を保持する電圧保持回路と、
前記スイッチング素子の非導通期間における前記トランスの2次巻線での通電を前記帰還電圧に基づいて判別する検出回路と、
前記2次巻線での通電時間に対応する電気量を生じさせる計時回路と、
前記計時回路から得られる前記2次巻線の通電時間に基づいて、前記電圧保持回路による前記帰還電圧の保持時期を検出する保持時期制御回路と、
前記電圧保持回路で保持されている電圧を用いて前記スイッチング素子の導通時期を決定する導通時間制御回路と、
を備えている、スイッチング電源の制御装置。
【請求項2】
前記保持時期制御回路は、前記2次巻線の通電時間に関する1以上の閾値を設定し、前記スイッチング素子の非導通期間における前記2次巻線の通電開始からの経過時間に応じて前記計時回路が生じさせる前記電気量と前記1以上の閾値から前記保持時期を検出するように構成されている、請求項1記載のスイッチング電源の制御装置。
【請求項3】
前記保持時期制御回路は、前記1以上の閾値として複数の閾値を設定するように構成されている、請求項2記載のスイッチング電源の制御装置。
【請求項4】
前記保持時期制御回路は、
前記1以上の閾値として、前記スイッチング素子の第1の非導通期間において前記電気量として前記計時回路が生じさせる電圧よりも小さい1以上の閾値電圧を設定し、
前記第1の非導通期間後の前記スイッチング素子の第2の非導通期間において前記2次巻線の通電開始から前記電気量として前記計時回路が生じさせる電圧が前記1以上の閾値電圧それぞれに達する時点を前記保持時期として検出する、請求項2又は3記載のスイッチング電源の制御装置。
【請求項5】
前記計時回路は、前記第2の非導通期間において前記検出回路によって前記2次巻線の通電が判別されると充電される第1キャパシタと、前記第1の非導通期間における前記2次巻線の通電時間に相当する充電電圧を保持する第2キャパシタと、を備え、
前記保持時期制御回路は、前記第2キャパシタの充電電圧を分圧して前記1以上の閾値電圧を生じさせ、前記第1キャパシタの充電電圧が前記1以上の閾値電圧それぞれに達するときに、前記電圧保持回路に前記帰還電圧を保持させる時期を示す信号を生成するように構成されている、請求項4記載のスイッチング電源の制御装置。
【請求項6】
前記保持時期制御回路は、
前記第2キャパシタの充電電圧を分圧して前記1以上の閾値電圧を生じさせる抵抗の直列回路と、
前記第1キャパシタの充電電圧と、前記1以上の閾値電圧それぞれとを比較する比較器と、
前記比較器の出力に基づいて前記信号を生成して前記電圧保持回路に出力するゲート回路と、
を備え、
前記ゲート回路は、前記スイッチング素子の非導通期間において最初に前記検出回路によって前記2次巻線の通電が判別されている期間以外の期間に前記信号を出力しないように構成されている、請求項5記載のスイッチング電源の制御装置。
【請求項7】
前記計時回路は、さらに、
前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタそれぞれに定電流を供給する定電流源と、
前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタそれぞれと前記定電流源とを接続又は分離する第1スイッチと、
前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタそれぞれとグランド電位とを接続又は分離する第2スイッチと、
前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタそれぞれと前記比較器とを接続又は分離する第3スイッチと、
前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタそれぞれと前記直列回路とを接続又は分離する第4スイッチと、
前記第1スイッチ、前記第2スイッチ、前記第3スイッチ、及び前記第4スイッチを制御するスイッチ制御回路と、を備え、
前記スイッチ制御回路は、前記スイッチング素子の非導通期間毎に、前記定電流源で充電されるキャパシタ、前記比較器と接続されるキャパシタ、及び前記直列回路と接続されるキャパシタそれぞれを、前記第1キャパシタと前記第2キャパシタとの間で切り替えるように構成されている、請求項6記載のスイッチング電源の制御装置。
【請求項8】
前記スイッチ制御回路は、前記スイッチング素子の非導通期間において最初に前記検出回路によって判別された前記2次巻線の通電期間の終了時だけ、前記第1スイッチ、前記第3スイッチ、及び前記第4スイッチの導通状態を同時に切り替えるように構成されている、請求項7記載のスイッチング電源の制御装置。
【請求項9】
前記電圧保持回路は、
複数の電圧保持キャパシタと、
前記複数の電圧保持キャパシタそれぞれの一端と前記帰還電圧が入力される端子との間にそれぞれ配置されている複数の入力側スイッチと、
前記複数の電圧保持キャパシタそれぞれの前記一端と前記導通時間制御回路との間に配置されている複数の出力側スイッチと、
前記保持時期制御回路からの信号に基づいて前記複数の入力側スイッチ及び前記複数の出力側スイッチを制御する充電制御回路と、を含み、
前記充電制御回路は、前記保持時期制御回路で前記保持時期が検出される毎に、前記複数の電圧保持キャパシタのうちの前記帰還電圧で充電されるキャパシタ、及び前記導通時間制御回路に接続されるキャパシタを順次切り替えるように構成されている、請求項3記載のスイッチング電源の制御装置。
【請求項10】
前記検出回路は、前記帰還電圧が印加される非反転入力端子と、基準電圧が印加される反転入力端子とを有する比較器を備えている、請求項1~3及び9のいずれか1項に記載のスイッチング電源の制御装置。
【請求項11】
請求項1~3及び9のいずれか1項に記載のスイッチング電源の制御装置と、
前記制御装置に導通時間を制御されるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子と接続されている1次巻線、前記1次巻線と磁気的に結合されている2次巻線、及び前記2次巻線と磁気的に結合するように1次側に巻回されている補助巻線を備えるトランスと、
前記補助巻線に誘起されるフライバック電圧を分圧して、前記制御装置に入力される帰還電圧を生成する帰還抵抗と、
前記トランスの2次側に接続されていて、前記2次巻線に誘起される電圧を整流及び平滑化する平滑回路と、を備えるスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源の制御装置、及びスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トランスなどの絶縁性のエネルギー伝達素子を用いるスイッチング電源は、入力側と出力側とが電気的に分離可能なことによる安全性、グランド分離によるノイズ波及範囲の限定性、さらにフローティング出力がもたらす出力側での基準電位の選択自由度の高さ、などの利点を有し、多様なアプリケーションに用いられている。そのうち、フライバック式の絶縁型スイッチング電源は、フォワード式と比べて部品点数が少なく、昇圧及び降圧のいずれも可能で、比較的低デューティでも高い出力電圧が得られるなどの利点があり、例えば200W程度までの小型から中型の直流電力の供給源として用いられている。
【0003】
図8には、従来のフライバック式絶縁型スイッチング電源の概略構成の一例が示されている。トランス90Tの1次巻線90Tpに接続されたトランジスタ90Qの通電状態が制御装置901によって駆動電圧Vdrで制御される。トランス90Tの1次巻線90Tpには入力電圧Vinが印加される。トランス90Tの2次巻線90Tsから、ダイオードとキャパシタとで構成される平滑回路90Saを介して出力電圧Voutが出力される。入力電圧Vinが印加されると、起動抵抗90Rsを介して供給される電力により制御装置901が起動する。トランジスタ90Qがオン状態のときには、1次巻線90Tpに励磁電流が流れて2次巻線90Tsの両端間に電圧が誘起される。その誘起電圧は平滑回路90Saのダイオードにとって逆バイアスとなるため2次巻線90Tsに電流は流れず、トランス90Tに電磁エネルギーが蓄えられる。そしてトランジスタ90Qがオフ状態に遷移すると、オン状態の時とは逆方向のフライバック電圧が2次巻線90Tsに誘起され、トランス90Tに蓄えられていた電磁エネルギーが二次側において放出される。トランジスタ90Qのターンオンとターンオフとが繰り返され、ターンオフ時に2次巻線90Tsに生じる電圧が平滑回路90Saで平滑されて、出力電圧Voutとして出力される。トランジスタ90Qがオン状態のときに1次巻線90Tpに流れる電流は、電流検出抵抗90Riによって電圧に変換され、変換された電圧は制御装置901に入力される。制御装置901は、電流検出抵抗90Riから入力される電圧を用いてトランジスタ90Qをターンオフさせる時期を制御する。
【0004】
図8のフライバック式絶縁型スイッチング電源が備えるトランス90Tは、さらに、補助巻線90Taを備えている。補助巻線90Taは、1次巻線90Tpと逆極性になるように1次側に巻回されている。補助巻線90Taには、トランジスタ90Qのターンオフ時にフライバック電圧Vbaが誘起される。フライバック電圧Vbaは、平滑回路90Sbで整流及び平滑化されて、起動後の制御装置901に供給される。また、フライバック電圧Vbaは、帰還抵抗90Rで分圧され、さらにダイオード90Dで負電圧側をクランプされて帰還電圧Vfbとして制御装置901に入力される。補助巻線90Taは、2次巻線90Tsに誘起されるフライバック電圧に比例したフライバック電圧Vbaが誘起されるように設けられる。そのため、制御装置901は、帰還電圧Vfbに基づいて、所望の大きさの出力電圧Voutが出力されるように、トランジスタ90Qを適切にターンオンさせることができる。補助巻線90Taを用いることによって、トランス90Tの2次側からのフィードバックを用いることなく、1次側だけで出力電圧Voutを精度よく制御することができる。
【0005】
図8の補助巻線90Taのような1次側に巻回された補助巻線には、1次側電流の遮断に応じて断続的にフライバック電圧が生じる。そのため、
図8のように補助巻線のフライバック電圧を用いてスイッチングトランジスタが制御される場合、フライバック電圧に基づく帰還電圧が1次側電流の遮断期間毎に所定のタイミングで保持され、この保持された電圧を用いて、スイッチングトランジスタが制御される。特許文献1には、このようにトランスの補助巻線のフライバック電圧に基づく電圧を保持してスイッチングトランジスタの制御に用いるスイッチング電源が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図9には、
図8のスイッチング電源の駆動電圧Vdr及び帰還電圧Vfbのタイミング図が示されている。駆動電圧Vdrのハイレベルは、
図8のトランジスタ90Qがオン状態であることを示している。一方、駆動電圧Vdrのロウレベルはトランジスタ90Qがオフ状態であることを示しており、この期間に、帰還電圧Vfbをもたらすフライバック電圧が補助巻線に誘起され、グランド電位に対して正の帰還電圧Vfbが生じる。特許文献1に開示のスイッチング電源では、補助巻線のフライバック電圧に基づく帰還電圧は、スイッチングトランジスタがターンオフしてから所定のブランク期間が経過した時点で保持されている。すなわち、
図9において、駆動電圧Vdrがロウレベルに遷移してから、駆動電圧Vdrのハイレベル期間と同じ時間tonが経過した時点T91の電圧V91で帰還電圧Vfbが保持される。スイッチングトランジスタがターンオフしてから一定時間経過後の帰還電圧Vfbを保持してスイッチングトランジスタの制御に用いることで、スイッチングトランジスタのターンオフ直後の過渡的な電圧変化の影響を回避している。
【0008】
一方、
図8のようなスイッチング電源の2次側に誘起されるフライバック電圧は、スイッチングトランジスタの直前のオン期間中に蓄えられたエネルギーが放出されると消滅する。そして、この2次側のフライバック電圧の消滅までの時間は、例え、スイッチングトランジスタの直前のオン期間の長さが一定であっても、入力電圧や負荷の変動に応じて変化する。例えば負荷が重い方に(出力電流が多く流れる方に)変動すると、2次側のフライバック電圧の消滅までの時間が短くなる。2次側のフライバック電圧が消滅すると、補助巻線に誘起されるフライバック電圧も消滅する。すなわち、
図9に二点鎖線L1で示されるように、帰還電圧Vfbの低下が早まる。そして、帰還電圧Vfbの低下が時点T91よりも早まると、すなわち、2次側に誘起されるフライバック電圧が時点T91よりも早く低下を始めると、スイッチングトランジスタの制御に用いるのに適した電圧値が保たれている時点で帰還電圧Vfbが保持されないことになる。すなわち、2次側の出力電圧を正確に検出できないことがある。その結果、スイッチング電源の出力電圧が正確に制御されないことがある。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑み、フライバック方式の絶縁型スイッチング電源において、トランスの2次側に誘起されるフライバック電圧が低下を始めるまでの時間が短くなっても、帰還電圧の適切な保持による出力電圧の安定した制御を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態のスイッチング電源の制御装置は、トランスの1次側に2次巻線と磁気的に結合するように 巻回されている補助巻線の電圧を用いて、前記1次巻線に接続されているスイッチング素子の導通時間を調整することにより出力電圧が制御されるフライバック式絶縁型スイッチング電源の制御装置であって、前記補助巻線で生じるフライバック電圧に基づく帰還電圧を保持する電圧保持回路と、前記スイッチング素子の非導通期間における前記トランスの2次巻線での通電を前記帰還電圧に基づいて判別する検出回路と、前記2次巻線での通電時間に対応する電気量を生じさせる計時回路と、前記計時回路から得られる前記2次巻線の通電時間に基づいて、前記電圧保持回路による前記帰還電圧の保持時期を検出する保持時期制御回路と、前記電圧保持回路で保持されている電圧を用いて前記スイッチング素子の導通時期を決定する導通時間制御回路と、を備えている。
【0011】
本発明の一実施形態の、スイッチング電源装置は、前記スイッチング電源の制御装置と、前記制御装置に導通時間を制御されるスイッチング素子と、前記スイッチング素子と接続されている1次巻線、前記1次巻線と磁気的に結合されている2次巻線、及び前記2次巻線と磁気的に結合するように1次側に巻回されている補助巻線を備えるトランスと、前記補助巻線に誘起されるフライバック電圧を分圧して、前記制御装置に入力される帰還電圧を生成する帰還抵抗と、前記トランスの2次側に接続されていて、前記2次巻線に誘起される電圧を整流及び平滑化する平滑回路と、を備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明のスイッチング電源の制御装置及スイッチング電源装置によれば、フライバック方式の絶縁型スイッチング電源において、トランスの2次側に誘起されるフライバック電圧が低下を始めるまでの時間が短くなっても、帰還電圧の適切な保持により出力電圧を安定して制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態のスイッチング電源の制御装置及びスイッチング電源装置の一例を示す回路図である。
【
図2】一実施形態のスイッチング電源の制御装置における検出回路、計時回路、及び保持時期制御回路それぞれの一具体例を示す回路図である。
【
図3】一実施形態のスイッチング電源の制御装置における計時回路の動作の一例を示すタイミング図である。
【
図4】一実施形態のスイッチング電源の制御装置における保持時期制御回路及び電圧保持回路それぞれの一具体例を示す回路図である。
【
図5】一実施形態のスイッチング電源の制御装置における保持時期制御回路及び電圧保持回路の動作の一例を示すタイミング図である。
【
図6】一実施形態のスイッチング電源の制御装置における各回路の動作の他の例を示すタイミング図である。
【
図7】一実施形態のスイッチング電源の制御装置におけるオン/オフ制御回路の一具体例を示す回路図である。
【
図8】従来のスイッチング電源の一例を示す回路図である。
【
図9】
図8のスイッチング電源の駆動電圧及び帰還電圧の変化を示すタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照しながら本発明のスイッチング電源の制御装置及びスイッチング電源装置を説明する。なお、本発明は、以下に説明される実施形態に限定されない。また、各図面に示される各回路の具体例は、それぞれ、単なる一例に過ぎず、実施形態のスイッチング電源の制御装置及びスイッチング電源装置が含む各回路の構成は、各図面に示される回路構成に限定されない。
【0015】
<一実施形態のスイッチング電源装置の全体構成>
図1には、一実施形態のスイッチング電源装置の一例であるスイッチング電源装置100、及び、一実施形態のスイッチング電源装置の制御装置の一例である制御装置1が示されている。
図1に示されるようにスイッチング電源装置100は制御装置1を備えている。スイッチング電源装置100は、さらに、トランスTと、スイッチング素子Qと、直列接続された帰還抵抗R1、R2と、トランスTの2次側Tβに接続されている平滑回路Saと、を備えている。スイッチング電源装置100は、トランスTの1次側Tαに電流が流れているときにトランスTに電磁エネルギーを蓄え、1次側Tαに流れていた電流が遮断されたときに、蓄えていたエネルギーを2次側Tβにおいて放出するフライバック式の絶縁型スイッチング電源である。
【0016】
トランスTは、磁気的に互いに結合するように共通のコアに巻回された1次巻線Tp及び2次巻線Tsを備えている。1次巻線Tpは、スイッチング素子Qに接続されている。トランスTは、さらに、2次巻線Tsと磁気的に結合するように1次側Tαに巻回されている補助巻線Taを備えている。補助巻線Taは、2次巻線Tsの巻き数に対して所定の比率の巻き数で巻回されている。一例として、補助巻線Taの巻き数は2次巻線Tsの巻き数と同じであってもよい。制御装置1内の抵抗値などの定数設定が容易なことがある。
【0017】
スイッチング電源装置100の入力端子INの正極側の端子が、トランスTの1次巻線Tpの一端に接続されている。入力端子INの負極側の端子は1次側Tαのグランド電位(GND)に接続されている。1次巻線Tpの他端はスイッチング素子Qに接続されている。スイッチング素子Qは、制御端子と二つの被制御端子とを有している。スイッチング素子Qは、制御装置1によって二つの被制御端子間の導通時間を制御される。
【0018】
図1の例において、スイッチング素子Qは、n型MOSFETで構成されており、スイッチング素子Qの制御端子、二つの被制御端子の一方及び他方は、それぞれ、n型MOSFETのゲート、ドレイン及びソースである。1次巻線Tpの他端はスイッチング素子Qを構成するn型MOSFETのドレインに接続され、そのソース及びゲートは、それぞれ、後述する電流検出抵抗Rsの一端、及び制御装置1の出力端子GATEに接続されている。制御装置1から送られる信号によって、スイッチング素子Qを構成するn型MOSFETのドレイン-ソース間の導通状態と非導通状態とが切り替えられる。
【0019】
以下の説明において、スイッチング素子Qの「導通」及び「非導通」は、それぞれ「オン」及び「オフ」とも称される。また、以下の説明において、特段の説明なく用いられる「オン時間」(又は「オン期間」)は、スイッチング素子Qがオン状態に遷移(「ターンオン」とも称される)してからオフ状態に遷移(「ターンオフ」とも称される)するまでの時間(又は期間)を意味する。また、特段の説明なく用いられる「オフ時間」(又は「オフ期間」)は、スイッチング素子Qがオフ状態に遷移してからオン状態に遷移するまでの時間(又は期間)を意味する。なお、実施形態のスイッチング電源装置に備えられるスイッチング素子Qは、制御装置1の構成次第で、n型MOSFET以外のトランジスタであってもよい。スイッチング素子Qは、制御装置1の制御の下で1次巻線Tpの通電を断続させ得るものであればよく、トランジスタにも限定されない。
【0020】
トランスTの2次巻線Tsの一端は、平滑回路Saを介して、出力端子OUTの正極側の端子に接続されている。2次巻線Tsの他端は、出力端子OUTの負極側の端子、すなわち、2次側Tβの基準電位(
図1の例においてGNDs)に接続されている。平滑回路Saは、2次巻線Tsの一端と出力端子VOUTとの間に2次巻線Ts側にアノードが位置するように接続されているダイオードDsa、及びダイオードDsaのカソードとGNDsとの間に接続されているキャパシタCsaによって構成されている。平滑回路Saは、ダイオードDsa及びキャパシタCsaによって、2次巻線Tsに誘起される電圧を整流及び平滑化する。平滑回路Saで平滑化された電圧が、出力電圧Voutとして取り出され、出力端子OUTの正負両極間に接続される負荷(図示せず)に供給される。
【0021】
補助巻線Taの一端は、直列接続されている帰還抵抗R1及び帰還抵抗R2の一端に接続され、補助巻線Taの他端、並びに直列接続の帰還抵抗R1及び帰還抵抗R2の他端はGND(1次側Tαのグランド電位)に接続されている。帰還抵抗R1及び帰還抵抗R2は、補助巻線Taに誘起されるフライバック電圧Vbaを分圧して、帰還抵抗R1と帰還抵抗R2との接続点に帰還電圧Vfbを生成する。帰還電圧Vfbは、制御装置1が有する入力端子FBに入力される。
【0022】
なお、入力端子INに接続されている1次巻線Tpの一端、平滑回路Saを介して出力端子OUTの正極側の端子に接続されている2次巻線Tsの一端、及び、帰還抵抗R1を介して制御装置1に接続されている補助巻線Taの一端は、それぞれ、以下の説明において「正極」と称されることもあり、その反対側の他端は「負極」と称されることもある。
【0023】
図1の例においてスイッチング電源装置100は、さらに、スイッチング電源装置100の入力端子INの正負両極間に接続されている入力キャパシタCin、入力端子INの正極側の端子と制御装置1の電源端子VDDとの間に接続されている起動抵抗Rsを含んでいる。スイッチング電源装置100は、さらに、トランスTの補助巻線Taの一端と制御装置1の電源端子VDDとの間に接続されている平滑回路Sb、帰還抵抗R2と並列に接続されているダイオードDc、及び、スイッチング素子Qを構成するn型MOSFETのソースとGNDとの間に接続されている電流検出抵抗Rsを含んでいる。ダイオードDcは、補助巻線Taに誘起されるフライバック電圧VbaのGNDに対する負電圧側をクランプする。平滑回路Sbは、補助巻線Taと制御装置1の電源端子VDDとの間に接続されているダイオードDsb及びダイオードDsbのカソードとGNDとの間に接続されているキャパシタCsbを含んでいる。
【0024】
入力端子INに直流電圧Vinが印加されると、入力キャパシタCinで安定化された電圧がトランスTの1次巻線Tpに印加される。制御装置1が、起動抵抗Rsを介して供給される電力により起動する。スイッチング素子Qがオン状態のときには、1次巻線Tpに、逓増する励磁電流が流れ、その電流は、スイッチング素子Q及び電流検出抵抗Rsを通ってGNDへと流れる。1次巻線Tpに流れる電流は、電流検出抵抗Rsによって、その大きさに応じた信号Vsnsに変換され、信号Vsnsが制御装置1の入力端子SENSEに入力される。好ましくは、制御装置1において、信号Vsnsを用いて、スイッチング素子Qをオフ状態にする時期が決定される。
【0025】
スイッチング素子Qがオン状態のときには、GNDに接続された負極側が高電位となる電圧が補助巻線Taに誘起されるが、その電圧による影響は、ダイオードDsb及びダイオードDcの整流作用及びクランプ作用により制御装置1に実質的には及ばない。充電状態にあるキャパシタCsbから制御装置1に電力が供給される。一方、2次巻線Tsにも、1次巻線Tpでの通電に伴って負極側が高電位となる電圧が誘起される。しかし、ダイオードDsaに対して逆バイアスとなるため、2次巻線Tsに電流は流れず、トランスTに電磁エネルギーが蓄えられる。充電状態にあるキャパシタCsaから、図示しない負荷に電流が供給される。
【0026】
スイッチング素子Qがオフ状態へと制御されると、1次巻線Tpに流れていた励磁電流が遮断される。それに伴って、2次巻線Tsには、正極側が高電位となるフライバック電圧が誘起され、ダイオードDsaが順方向にバイアスされるため2次側Tβに電流が流れ、トランスTに蓄えられていた電磁エネルギーが2次側Tβにおいて放出される。2次側Tβに流れる電流は、キャパシタCsaを充電すると共に、図示されない負荷に供給される。
【0027】
補助巻線Taにおいても、スイッチング素子Qのオフ状態への遷移に応じて、正極側が負極側に対して高電位となるフライバック電圧Vbaが誘起される。理論上、2次巻線Tsの巻き数に対する補助巻線Taの巻き数の比率に、2次巻線Tsで生じるフライバック電圧を乗じた大きさのフライバック電圧Vbaが誘起される。フライバック電圧Vbaは、平滑回路Sbで整流及び平滑化されて、制御装置1に電力を供給する。また、フライバック電圧Vbaは帰還抵抗R1、R2で分圧されて、帰還電圧Vfbとして制御装置1の入力端子FBに入力される。スイッチング素子Qのオフ時のフライバック電圧Vbaは、GNDに対して正電圧であるため、ダイオードDcは帰還電圧Vfbに実質的に作用しない。制御装置1では、後述されるように、帰還電圧Vfbを用いて、スイッチング素子Qをオン状態又はオフ状態にする時期が調整される。帰還電圧Vfbはフライバック電圧Vbaに基づいている。フライバック電圧Vbaは、2次側Tβに誘起しているフライバック電圧に対応する大きさで補助巻線Taに誘起される。そのため、スイッチング電源100の出力電圧Voutを所望の大きさへと制御することができる。
【0028】
<一実施形態のスイッチング電源の制御装置の全体構成>
図1に例示される制御装置1のように、本実施形態のスイッチング電源の制御装置は、
図1のスイッチング電源100のようなフライバック式絶縁型スイッチング電源を制御する制御装置である。すなわち、本実施形態のスイッチング電源の制御装置に制御されるスイッチング電源の出力電圧は、
図1に付されている符号を用いて述べれば、トランスTの1次巻線Tpに接続されているスイッチング素子Qの導通時間を調整することにより制御される。そして、スイッチング素子Qの導通時間の調整には、トランスTの1次側Tαに2次巻線Tsと磁気的に結合するように巻回されている補助巻線Taのフライバック電圧Vbaが用いられる。
図1の制御装置1を例に、本実施形態のスイッチング電源の制御装置の構成が、以下に詳述される。
【0029】
図1に示されるように、制御装置1は、電圧保持回路2と、トランスTの2次巻線Tsの通電を検出する検出回路3と、2次巻線Tsの通電時間の計測機能を有する計時回路4と、保持時期制御回路5と、スイッチング素子Qの導通時間制御回路6と、を備えている。
図1の制御装置1は、さらに、電圧レギュレータ11及びバッファ12を備えている。電圧レギュレータ11には、入力端子IN又はトランスTの補助巻線Taから、電源端子VDDを介して電力が供給される。電圧レギュレータ11は、所望の電圧値で安定化された直流電圧Vregを制御装置1内の上述した各回路に供給する。
図1の例ではバッファ12は非反転バッファであり、導通時間制御回路6から出力される駆動信号Vdrの波形整形などを行うと共に駆動能力を高めた信号を、制御装置1の出力端子GATEを介してスイッチング素子Qに出力する。
【0030】
電圧保持回路2及び検出回路3は、それぞれ制御装置1の入力端子FBに接続されている。これら両回路に帰還電圧Vfbが入力される。電圧保持回路2は、トランスTの補助巻線Taで生じるフライバック電圧Vbaに基づく電圧であって時間と共に変化する帰還電圧Vfbを保持する。電圧保持回路2は、保持時期制御回路5から送られる信号(時期信号)Vshxが示す、帰還電圧Vfbを保持すべき時点(保持時期)の帰還電圧Vfbを保持する。電圧保持回路2で保持されている電圧(保持電圧)Vfbhは導通時間制御回路6に入力される。
【0031】
検出回路3は、スイッチング素子Qの非導通期間におけるトランスTの2次巻線Tsにおける通電を帰還電圧Vfbに基づいて判別する。すなわち、検出回路3によって、スイッチング素子Qがオフ状態にある期間中の任意の時点において2次巻線Tsに電流が流れているか否かが判別される。オフ期間中の2次巻線Tsには、その正極側が高電位となるフライバック電圧が生じている間、電流が流れる。補助巻線Taには、2次巻線Tsにフライバック電圧が生じている間、フライバック電圧Vbaが誘起される。従って、検出回路3は、フライバック電圧Vbaが抵抗分圧された電圧である帰還電圧Vfbに基づいて、スイッチング素子Qのオフ時間中の任意の時点で2次巻線Tsに電流が流れているか否かを判別することができる。検出回路3の検出結果は、検出信号Venとして、計時回路4及び保持時期制御回路5に送られる。
【0032】
計時回路4は、2次巻線Tsの通電時間を、直接計測するというよりもむしろ間接的に計測する。計時回路4は、2次巻線Tsにおける通電時間に対応する電気量を生じさせることによって、その電気量の大きさに基づいて2次巻線Tsの通電時間を計測し、その電気量の大きさを、2次巻線Tsでの通電時間を示す情報として保持時期制御回路5に提供する。計時回路4が2次巻線Tsの通電時間として生じさせる電気量は、一例として計時回路4内で発生する電圧や計時回路4の内部に蓄積される電荷量であり得る。この電気量は電圧や電荷量に限定されず、計時回路4及び保持時期制御回路5の構成次第で、例えば電流などの他の電気量であってもよい。
【0033】
保持時期制御回路5は、計時回路4から得られる2次巻線Tsの通電時間に基づいて、電圧保持回路2による帰還電圧Vfbの保持時期を検出する。すなわち保持時期制御回路5は、計時回路4から入力される、スイッチング素子Qのオフ期間における2次巻線Tsの通電開始からの経過時間を示す特定の電気量に基づいて、帰還電圧Vfbを保持すべき時期を検出する。例えば、保持時期制御回路5は、計時回路4から得られる2次巻線Tsの通電時間に対応する電気量が所定の大きさに等しくなるとき、又は超えるとき若しくは下回るときを、帰還電圧Vfbを保持すべき時期として検出してもよい。保持時期制御回路5は、帰還電圧Vfbの保持時期を示す信号Vshxを電圧保持回路2へと送出する。なお、保持時期制御回路5によって検出される帰還電圧Vfbの保持時期は、後述されるように複数存在してもよく、複数の保持時期のいずれか一つをそれぞれが示す複数の時期信号Vshxが、順次、電圧保持回路2へと送出されてもよい。
【0034】
導通時間制御回路6は、電圧保持回路2で保持されている保持電圧Vfbhを用いてスイッチング素子Qの導通時期を決定する。導通時間制御回路6は、スイッチング素子Qをターンオンさせるとき、及びターンオフさせるときにレベルを遷移する駆動信号Vdrを出力する。
図1の例においてスイッチング素子Qはn型MOSFETであるので、導通時間制御回路6は、スイッチング素子Qをターンオンさせるときにハイレベルとなり、ターンオフさせるときにロウレベルとなる駆動信号Vdrを出力してもよい。駆動信号Vdrは、バッファ12に入力されると共に、計時回路4及び保持時期制御回路5に入力される。
【0035】
図1の例の導通時間制御回路6は、オン/オフ制御回路61と、基準電圧Vrefを生成する基準電圧源63と、エラーアンプ64と、エラーアンプ64の動作を安定させる抵抗及びキャパシタからなる容量性リアクタンス回路66と、を含んでいる。基準電圧源63は、電圧レギュレータ11の電圧変動や温度変化の影響をほとんど受けない一定の基準電圧Vrefを生成し、基準電圧Vrefを基にフライバック電圧Vbaの帰還抵抗R1、R2の抵抗の値で所望の出力電圧Voutが決定される。基準電圧Vrefは、オペレーショナルアンプにより構成されるエラーアンプ64の非反転入力に印加される。エラーアンプ64の反転入力には、電圧保持回路2から保持電圧Vfbhが入力される。エラーアンプ64は、保持電圧Vfbhと基準電圧Vrefとの差を増幅する。
【0036】
図1の例においてエラーアンプ64は増幅結果をオン/オフ制御回路61に出力する。オン/オフ制御回路61には、制御装置1の入力端子SENSEから信号Vsnsも入力される。オン/オフ制御回路61は、スイッチング素子Qをターンオンさせるべき時期及びターンオフさせる時期を決定する。そしてオン/オフ制御回路61は、ターンオンさせるべき時期にハイレベルに遷移し、ターンオフさせるべき時期にロウレベルに遷移する駆動信号Vdrを、バッファ12に向けて出力する。バッファ12から、駆動信号Vdrに基づいた、好ましくはスイッチング素子Qを直接駆動し得る駆動信号が、スイッチング素子Qに(
図1の例ではスイッチング素子Qを構成するn型MOSFETのゲートに)出力される。オン/オフ制御回路61は、好ましくは、後述されるようにエラーアンプからの入力電圧又は入力電流と、1次巻線Tpに流れる電流の大きさに応じた信号Vsnsを用いて、スイッチング素子Qをターンオフさせるべき時期を決定する。
【0037】
導通時間制御回路6は、例えば、保持電圧Vfbhが大きければ大きいほど、スイッチング素子Qをターンオンさせる時間のデューティ比を小さくし、保持電圧Vfbhが小さければ小さいほど、このデューティ比を大きくする。すなわち、導通時間制御回路6は、補助巻線Taに誘起されるフライバック電圧Vbaが大きければ大きいほどデューティ比が小さくなり、フライバック電圧Vbaが小さければ小さいほど、デューティ比が大きくなるように、スイッチング素子Qの導通時間を調整する。例えば、導通時間制御回路6は、保持電圧Vfbhが小さければ小さいほど、スイッチング素子Qをターンオフさせる時期を遅らせ、保持電圧Vfbhが大きければ大きいほど、スイッチング素子Qをターンオフさせる時期を早めてもよい。
【0038】
フライバック電圧Vbaは、2次巻線Tsに誘起されるフライバック電圧が大きければ大きく、2次巻線Tsに誘起されるフライバック電圧が小さければ小さい。従って、検出回路3、計時回路4、及び保持時期制御回路5の作用の下で、導通時間制御回路6、トランスT、及び電圧保持回路2を通る負帰還回路が形成され、スイッチング電源装置100の出力電圧Voutが所望の値へと収束し、且つ、その値で安定するように制御される。
【0039】
特に本実施形態の制御装置1は、計時回路4を備え、計時回路4によって把握される2次巻線Tsにおける通電時間に応じて、スイッチング素子Qの導通時間の制御に用いられる帰還電圧Vfbが保持される。例えば、2次巻線Tsにおける通電時間が任意の特定時間に達する又は超えるときに、帰還電圧Vfbが保持されてその保持電圧Vfbhがスイッチング素子Qの制御に用いられる。そのため、本実施形態の制御装置1では、2次巻線での通電時間から独立して固定的に定められた時期に補助巻線のフライバック電圧に基づく電圧を保持する従来の制御装置と比べて、2次巻線における通電時間が短い場合でも、適切な電圧を保持し得ることがある。そして、その適切な保持電圧を用いてスイッチング素子の導通時間を制御することができる。すなわち、従来のスイッチング電源の制御装置よりも、正確且つ安定的に、フライバック式絶縁型スイッチング電源の出力電圧を制御することができると考えられる。
【0040】
<制御装置内の各回路の具体例>
図2には、本実施形態の制御装置1における検出回路3、計時回路4、及び、保持時期制御回路5それぞれの具体的な回路構成の一例が示されている。これら各回路の概略動作を説明すると、計時回路4は、二つのキャパシタCa、Cbの一方の定電流充電によって、スイッチング素子Qのオフ期間開始後の2次巻線Tsにおける通電時間を計測し、他方においてスイッチングサイクルの前周期のオフ期間における2次巻線Tsの通電時間に相当する電圧を保持する。二つのキャパシタCa、Cbの役割は、スイッチング周期ごとに入れ替わる。保持時期制御回路5は、電圧保持回路2による帰還電圧Vfbの保持時期設定のための閾値を二つのキャパシタCa、Cbの他方が保持している電圧に基づいて設定する。
図2の例では、帰還電圧Vfbの保持時期設定のための閾値として、閾値電圧が設定される。そして、2次巻線Tsの通電時間を計測している充電中の一方のキャパシタの充電電圧と閾値電圧とが比較され、電圧保持回路2による電圧保持時期が検出される。
図2の例では、前周期の2次巻線Tsの通電時間に相当する電圧を4分割して三つの閾値電圧(電圧VTM1~VTM3)が設定されている。各閾値電圧との比較結果に基づいて、帰還電圧Vfbの保持時期を示す時期信号が生成される。
【0041】
<検出回路の構成及び作用>
図2の例において検出回路3は、コンパレータからなる比較器31と、例えばバンドギャップリファレンスで構成される基準電圧源32とを備えている。比較器31は非反転入力と反転入力とを有している。比較器31の非反転入力端子には帰還電圧Vfbが印加される。比較器31の反転入力端子には基準電圧源32によって生成される基準電圧Vref0が印加される。比較器31は、帰還電圧Vfbと基準電圧Vref0とを比較して、帰還電圧Vfbの方が大きいときにハイレベルであり、基準電圧Vref0の方が大きいときにはロウレベルとなる検出信号Venを出力する。
【0042】
トランスTの2次巻線Tsに電流が流れているときには、GNDに対して正電圧のフライバック電圧Vba(
図1参照)がトランスTの補助巻線Taに誘起され、よってGNDに対して正電圧の帰還電圧Vfbが検出回路3に印加される。基準電圧源32は、GNDよりも僅かに大きい、例えば0.2~0.5V程度の基準電圧Vref0を生成する。従って検出回路3は、トランスTの2次巻線Tsにおける通電の有無を帰還電圧Vfbに基づいて判別することができる。
【0043】
<計時回路の構成及び作用>
計時回路4は、第1キャパシタCaと、第2キャパシタCbと、定電流源Icと、第1スイッチSW1と、第2スイッチSW2と、第3スイッチSW3と、第4スイッチSW4と、を備えている。第1キャパシタCaと第2キャパシタCbは、少なくともキャパシタンスについて略同じ特性値を有する。好ましくは、第1キャパシタCaと第2キャパシタCbは、全ての特性について略同じ特性値を有する。計時回路4は、さらに、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3、及び第4スイッチSW4を制御するスイッチ制御回路40を備えている。第1スイッチSW1は、スイッチSW1AとスイッチSW1Bとを含んでいる。第2スイッチSW2は、スイッチSW2AとスイッチSW2Bとを含んでいる。同様に、第3スイッチSW3はスイッチSW3AとスイッチSW3Bとを含み、第4スイッチSW4はスイッチSW4AとスイッチSW4Bとを含んでいる。
【0044】
スイッチSW1Aの一端及びスイッチSW1Bの一端は定電流源Icに接続されている。スイッチSW1Aの他端は、スイッチSW2Aの一端に接続されると共に第1キャパシタCaの一端に接続され、さらにスイッチSW3Aの一端及びスイッチSW4Aの一端に接続されている。スイッチSW1Bの他端は、スイッチSW2Bの一端に接続されると共に第2キャパシタCbの一端に接続され、さらにスイッチSW3Bの一端及びスイッチSW4Bの一端に接続されている。スイッチSW2Aの他端、第1キャパシタCaの他端、スイッチSW2Bの他端、及び第2キャパシタCbの他端は、いずれもGNDに接続されている。スイッチSW3Aの他端及びスイッチSW3Bの他端は、共に、保持時期制御回路5と共有の比較ノードNcに接続されている。スイッチSW4Aの他端及びスイッチSW4Bの他端は、共に、保持時期制御回路5と共有の参照ノードNrに接続されている。比較ノードNcには、後述される保持時期制御回路5が備える比較器COMP3、比較器COMP2、及び比較器COMP1それぞれの反転入力が接続されている。参照ノードNrには、保持時期制御回路5が備える、例えばボルテージフォロアのようなバッファ51の入力が接続されている。
【0045】
スイッチ制御回路40は、検出回路3から送られる検出信号Ven及び導通時間制御回路6(
図1参照)から送られる駆動信号Vdrに基づいて、計時回路4内の各スイッチに対する制御信号SSW1A/3A、SSW1B/3B、SSW2A、SSW2B、SSW4A、及びSSW4Bを生成する。
図2の例において計時回路4内の各スイッチの両端子間は、上記各制御信号がハイレベルのときに導通状態(閉状態)となり、各制御信号がロウレベルのときに非導通状態(開状態)となる。
【0046】
スイッチSW1Aは、制御信号SSW1A/3Aに基づいて第1キャパシタCaと定電流源Icとを接続又は分離し、スイッチSW1Bは、制御信号SSW1B/3Bに基づいて第2キャパシタCbと定電流源Icとを接続又は分離する。スイッチSW2Aは、制御信号SSW2Aに基づいて第1キャパシタCaの一端とグランド電位(GND)とを接続又は分離し、スイッチSW2Bは、制御信号SSW2Bに基づいて第2キャパシタCbの一端とグランド電位(GND)とを接続又は分離する。
【0047】
スイッチSW3Aは、制御信号SSW1A/3Aに基づいて、第1キャパシタCaと、保持時期制御回路5が備える比較器COMP1~COMP3それぞれの反転入力とを接続又は分離する。スイッチSW3Bは、制御信号SSW1B/3Bに基づいて、第2キャパシタCbと比較器COMP1~COMP3それぞれの反転入力とを接続又は分離する。スイッチSW4Aは、制御信号SSW4Aに基づいて、第1キャパシタCaと、保持時期制御回路5内の抵抗の直列回路52とをバッファ51を介して接続又は分離する。スイッチSW4Bは、制御信号SSW4Bに基づいて、第2キャパシタCbと、抵抗の直列回路52とをバッファ51を介して接続又は分離する。
【0048】
定電流源Icは、スイッチSW1Aが導通状態のときにスイッチSW1Aを介して第1キャパシタCaに定電流を供給する。第1キャパシタCaが、定電流源Icから供給される一定の電流で充電される。定電流源Icは、スイッチSW1Bが導通状態のときにスイッチSW1Bを介して第2キャパシタCbに定電流を供給する。第2キャパシタCbが、定電流源Icから供給される定電流で充電される。
【0049】
スイッチ制御回路40は、
図2の例において、駆動信号Vdrが入力される否定論理ゲートINV2と、検出信号Venが入力される否定論理ゲートINV1と、検出信号Venが一方の入力端子に入力される否定論理積ゲートNAND1と、DフリップフロップFF1と、DフリップフロップFF2と、否定論理ゲートINV3と、四つの論理積ゲートAND1~AND4とを備えている(以下、これら論理回路素子は、それぞれ単に、「INV2」、「INV1」、「NAND1」、「D-FF1」、「D-FF2」、「INV3」、及び「AND1~4」と称される。
図2に示される他の論理回路素子、及び
図2以外の各図面に示される論理回路素子も同様の方法で称される)。
【0050】
INV1の出力はD-FF1のポジティブエッジトリガタイプのクロック端子に接続され、INV2の出力端子はD-FF1のロウアクティブのクリア端子に接続され、D-FF1のD入力にはハイレベル電位が印加されている。D-FF1の出力Qは、D-FF2のポジティブエッジトリガタイプのクロック端子に接続されている。D-FF2のD入力はその反転出力QBに接続され、その出力QはAND2及びAND4それぞれの一方の入力に接続されている。D-FF2の出力Qから制御信号SSW4Aが出力される。D-FF2の反転出力QBは、AND1及びAND3それぞれの一方の入力に接続されている。D-FF2の反転出力QBから制御信号SSW4Bが出力される。一方、D-FF1の反転出力QBは、NAND1の他方の入力に接続され、NAND1の出力はINV3の入力、並びにAND3及びAND4それぞれの他方の入力に接続されている。INV3の出力は、AND1及びAND2それぞれの他方の入力に接続されている。AND1からは制御信号SSW1A/3Aが出力され、AND2からは制御信号SSW1B/3Bが出力される。さらに、AND3からは制御信号SSW2Aが出力され、AND4からは制御信号SSW2Bが出力される。
【0051】
スイッチ制御回路40は、スイッチング素子Q(
図1参照)のオフ期間中にトランスTの2次巻線Tsにおいて通電が始まると、第1キャパシタCa及び第2キャパシタCbのいずれか一方が定電流源Icからの定電流で充電され、他方では既に蓄えられた電荷による充電電圧がそのまま保持されるように、第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2を制御する。従って、第1キャパシタCa又は第2キャパシタCbのうちの充電中の一方には、2次巻線Tsで通電が開始されてからの経過時間に相当する充電電圧が発生する。
【0052】
また、スイッチ制御回路40は、スイッチング素子Qのオフ期間中で且つトランスTの2次巻線Tsの通電期間中に、第1及び第2のキャパシタCa、Cbのうちの充電中の一方が比較ノードNcに接続され、充電電圧を保持している他方が参照ノードNrに接続されるように、第3スイッチSW3及び第4スイッチSW4を制御する。さらに、スイッチ制御回路40は、スイッチング素子Qのオン期間中には、第1及び第2のキャパシタCa、Cbのうちの直前のオフ期間に充電されていない方を放電させるように第2スイッチSW2を制御する。
【0053】
そして、スイッチ制御回路40は、スイッチング素子Qの非導通期間毎に、定電流源Icで充電されるキャパシタを第1キャパシタCaと第2キャパシタCbとの間で切り替える。それに伴いスイッチング制御回路40は、スイッチング素子Qの導通期間毎に、放電させるキャパシタを第1キャパシタCaと第2キャパシタCbとの間で切り替える。さらに、スイッチ制御回路40は、スイッチング素子Qの非導通期間毎に、比較器COMP1~COMP3と接続されるキャパシタを第1キャパシタCaと第2キャパシタCbとの間で切り替え、同様に、抵抗の直列回路52と接続されるキャパシタを第1キャパシタCaと第2キャパシタCbとの間で切り替える。
【0054】
すなわち、スイッチ制御回路40は、スイッチング素子Qのオン期間とオフ期間とで構成される単位周期毎に、オフ期間中に充電されるキャパシタと充電電圧を保持するキャパシタが第1キャパシタCaと第2キャパシタCbとで入れ替わるように、計時回路4内の各スイッチを制御する。スイッチ制御回路40は、さらに、比較ノードNcに接続されるキャパシタと参照ノードNrに接続されるキャパシタが、単位周期毎に、第1キャパシタCaと第2キャパシタCbとで入れ替わるように、計時回路4内の各スイッチを制御する。従って、第1キャパシタCaと第2キャパシタCbは、スイッチング素子Qのオフ期間毎に交互に充電され、オフ期間毎に交互に、既に有している電圧を保持する。また、第1キャパシタCaと第2キャパシタCbは、オフ期間毎に交互に、比較ノードNc、すなわち比較器COMP1~COMP3と接続され、オフ期間毎に交互に、参照ノードNr、すなわち抵抗の直列回路52と接続される。
【0055】
例えば、スイッチング素子Qにおける先行するオフ期間及び後続のオフ期間のうちの後続のオフ期間(第2の非導通期間)において検出回路3によって2次巻線Tsの通電が判別されると、第1キャパシタCaが充電される。一方、第2キャパシタCbは、そのオフ期間(第2の非導通期間)において、先行するオフ期間(第1の非導通期間)における2次巻線Tsの通電時間に相当する充電電圧を保持する。
【0056】
<計時回路の作用の具体例>
図3を参照して、計時回路4の作用の一例を説明する。
図3には、
図1に示されるスイッチング電源装置100における駆動信号Vdrと、駆動信号Vdrに応じてそれぞれ変化する、補助巻線Taのフライバック電圧Vba、帰還電圧Vfb、検出信号Ven、制御信号SSW2Aなどの計時回路4内の各制御信号のタイミング図が示されている。
図3には、さらに、第1キャパシタCa及び第2キャパシタCbそれぞれの端子間の電圧(充電電圧)Vca、Vcb、並びに、比較ノードNcの対GND電位である電圧Vnc、及び参照ノードNrの対GND電位である電圧Vnrが示されている。なお、
図3は、トランスの1次巻線及び2次巻線のいずれにも電流が流れない期間が存在する電流不連続モードでの例である。
【0057】
図3に示されるように、駆動信号Vdrがハイレベルとなっているオン期間では、フライバック電圧VbaはGND(0V)に対して負電圧であり、帰還電圧Vfbは0Vよりも僅かに低い電圧でクランプされている。そのため検出信号Venはロウレベルである。例えば、オフ期間Pf1の直前のオン期間では、第1キャパシタCaは、直前のオフ期間Pf0において端子間の電圧Vcaが電圧VH1Aとなるまで充電されており、計時回路4では、各スイッチのうち、スイッチSW2BとスイッチSW4Aだけが導通している。そのため、参照ノードNrの電圧Vnrは第1キャパシタCaの電圧Vcaと略同じ電圧VH1Aである。一方、第2キャパシタCbは放電されており、いずれのキャパシタにも接続されていない比較ノードNcの電圧Vncは、オフ期間Pf0の終了時の電圧を維持している。
【0058】
駆動信号Vdrがロウレベルに転じてスイッチング素子Qのオフ期間が始まると、1次側の電流の遮断によりGNDに対して正電圧のフライバック電圧Vbaが誘起される。帰還電圧VfbがGNDに対して正電圧に転じ、検出信号Venがハイレベルに遷移する。駆動信号Vdr及び検出信号Venのレベル遷移に伴って、計時回路4内の特定のスイッチの導通状態が切り換わる。
【0059】
例えば時点T1から始まるオフ期間Pf1(第1の非導通期間)では、スイッチSW2Bが開状態となり、一方、スイッチSW1B、SW3Bが閉状態となる。そのため、第2キャパシタCbの定電流充電が開始され、その端子間電圧Vcbが略リニアに上昇する。そのため、2次巻線での通電開始からの時間に対応する電気量である電圧Vcbが第2キャパシタCbの端子間において得られる。すなわち、電圧Vcbを計測値として2次巻線での通電時間を計測することができる。
【0060】
比較ノードNcと第2キャパシタCbとが接続されるため、電圧Vncが電圧Vcbに伴って上昇する。一方、第1キャパシタCaは、充電も放電もされないので、オフ期間Pf0での電圧VH1Aをそのまま維持しており、第1キャパシタCaに接続されたままの参照ノードNrの電圧Vnrも電圧Vcaと略同じ電圧のままである。
【0061】
その後、第2キャパシタCbの充電が継続されて電圧Vcbが継続して上昇する。一方、トランスに蓄えられていた電磁エネルギーが2次側で全て放出されると、フライバック電圧Vfbの極性反転と共に、時点T2において帰還電圧Vfbが基準電圧Vref0以下となって検出信号Venがロウレベルに遷移する。これに伴ってスイッチSW4A、SW1B、SW3Bが開状態となる一方、スイッチSW4Bが閉状態となる。その結果第2キャパシタCbの充電が終了し、時点T2までの充電による電圧VH2Bが第2キャパシタCbで保持される。
【0062】
開状態となるスイッチSW4Aによって参照ノードNrと分離される第1キャパシタCaに代わり、閉状態となるスイッチSW4Bによって第2キャパシタCbが参照ノードNrと接続される。参照ノードNrは、第2キャパシタCbの電圧VH2Bと略同じ大きさの電圧Vnrを有する。
図3の例は、オフ期間Pf1における2次巻線の通電時間(時点T1から時点T2までの時間)が、オフ期間Pf0における2次巻線の通電時間と略同じ例であるため、電圧VH2Bと電圧VH1Aとは略同じ大きさである。なお、比較ノードNcはいずれのキャパシタとも分離されるため、電圧Vncも時点T2まで接続されていた第2キャパシタCbの電圧VH2Bと略同じ電圧のままである。
【0063】
その後、時点T3で次のオン期間に移ると、ハイレベルとなる駆動信号VdrによってスイッチSW2Aが閉状態となって第1キャパシタCaが放電され、電圧Vcaは略0Vに低下する。一方、第2キャパシタCbと接続されているスイッチSW1B、SW2B、SW3B、及びSW4Bの状態に変化はないため、第2キャパシタCbの電圧Vcbは電圧VH2Bのままであり、参照ノードNrの電圧Vnrも電圧VH2Bのままである。
【0064】
そして、時点T4でオフ期間Pf2(第2の非通電期間)に移ると、駆動信号Vdr及び検出信号Venのレベル遷移に伴って、スイッチSW2Aが開状態となり、一方、スイッチSW1A、SW3Aが閉状態となって、第1キャパシタCaの定電流充電が開始される。第1キャパシタCaが比較ノードNcと接続される。第1キャパシタCaの電圧Vcaが、電圧Vncと共に略リニアに上昇し、オフ期間Pf2における2次巻線での通電開始からの時間が、オフ期間Pf1と同様に、しかし今度は第1キャパシタCaの電圧Vcaを計測値として計測される。一方、第2キャパシタCbは、充電も放電もされないので、オフ期間Pf1での電圧VH2Bをそのまま維持しており、第2キャパシタCbに接続されたままの参照ノードNrの電圧Vnrも電圧Vcbと略同じ電圧のままである。
【0065】
その後、トランスの2次側での電磁エネルギーの放出完了に伴って、時点T5において帰還電圧Vfbが基準電圧Vref0以下になると、第1キャパシタCaの充電が終了し、時点T5までの充電による電圧VH3Aが第1キャパシタCaで保持される。閉状態となるスイッチSW4Aによって第1キャパシタCaと接続される参照ノードNrの電圧Vnrが、第1キャパシタCaの電圧VH3Aと略同じ大きさに変化する。一方、比較ノードNcはいずれのキャパシタとも分離されるため、電圧Vncは、時点T5まで接続されていた第1キャパシタCaの電圧VH3Aと略同じ電圧のままである。
【0066】
図3の例は、オフ期間Pf2における2次巻線の通電時間(時点T4から時点T5までの時間)が、オフ期間Pf1における2次巻線の通電時間(時点T1から時点T2までの時間)よりも短いので、電圧VH3Aは電圧VH2Bよりも小さい。すなわち、各オフ期間における2次巻線の通電時間が、第1及び第2のキャパシタCa、Cbの電圧によって計測されている。第1キャパシタCaの電圧Vcaは、次のオフ期間の終了まで電圧VH3Aのまま維持される。参照ノードNrの電圧Vnrは、少なくとも次のオフ期間における2次巻線の通電終了まで電圧VH3Aのまま維持される。
【0067】
なお、時点T2や時点T5のあと、トランスTの寄生容量、寄生インダクタンス、及び抵抗等により、トランスの1次側で共振現象が起こり、
図3に示されるように、1次側に正負に振動する電圧が発生することがある。これに伴って、基準電圧Vref0を跨いで増減する帰還電圧Vfbが生じ、検出信号Venがハイレベルとロウレベルとの間の遷移を繰り返すことがある。
【0068】
しかし、
図2の例のような回路構成のスイッチ制御回路40では、D-FF2のトリガ入力に立ち上がりエッジが入力されるのは、駆動信号Vdrがロウレベルで安定している状態(すなわち非導通期間)であって検出信号Venがハイレベルからロウレベルに転じるときだけである。また、一旦立ち上がったD-FF2のトリガ入力のレベルは、次に駆動信号Vdrがハイレベルになるまでロウレベルに下がらない。
【0069】
そのため、一のオフ期間における2次巻線の最初の通電期間の終了後は、第1及び第2のキャパシタCa、Cbそれぞれと、定電流源Ic、比較ノードNc、及び参照ノードNrそれぞれとの接続は、そのオフ期間中に切り替わらない。そのため、時点T2や時点T5の後の共振現象によって、第1及び第2のキャパシタCa、Cbにおける充填状態や比較ノードNc及び参照ノードNrとの接続状態は変動しない。従って、共振現象による影響を回避して、各オフ期間の2次巻線での通電時間を、第1及び第2のキャパシタCa、Cbの電圧で適切に計測することができる。スイッチ制御回路40は、好ましくは、このようにスイッチング素子の非導通期間において最初に検出回路3によって判別された2次巻線の通電期間の終了時だけ、第1スイッチSW1、第3スイッチSW3、及び第4スイッチSW4の導通状態を同時に切り替えるように構成される。
【0070】
<保持時期制御回路の構成>
図4には、本実施形態における電圧保持回路2の具体的な回路構成の一例と共に、
図2の例の保持時期制御回路5が、より多くの符号を添えて再度示されている。
図4に示されるように、保持時期制御回路5は、抵抗の直列回路52と、比較器(比較器COMP1~COMP3)と、ゲート回路50と、参照ノードNrが属する経路のインピーダンスを変換するバッファ51と、を備えている。ゲート回路50は、比較器COMP1~COMP3それぞれの出力に基づいて時期信号Vsh1~Vsh3を生成し、生成した各信号を電圧保持回路2に出力する。時期信号Vsh1~Vsh3は、複数であってもよいと前述された
図1の時期信号Vshxのうちの個々の信号である。従って時期信号Vsh1~Vsh3は、電圧保持回路2による帰還電圧Vfbの保持時期を示す。ゲート回路50は、さらに、駆動信号Vdrと検出信号Venから、時期信号Vsh0を生成して電圧保持回路2に出力する。
【0071】
図4において抵抗の直列回路52は、直列接続された四つの抵抗RTM1~抵抗RTM4によって構成されている。直列回路52の一端はバッファ51の出力に接続され(すなわち、バッファ51を介して参照ノードNrに接続され)、他端はGNDに接続されている。そのため、直列回路52を構成する各抵抗同士の接続点において、参照ノードNrの電圧(対GND電位)の各抵抗での抵抗分圧による電圧(対GND電位)VTM1~VTM3が現れる。
【0072】
図4の保持時期制御回路5は複数の比較器COMP1~COMP3を備えており、各比較器はコンパレータによって構成されている。各比較器を構成するコンパレータの反転入力は、共に比較ノードNcに接続されている。そして、比較器COMP1の非反転入力には、抵抗RTM1と抵抗RTM2との接続点から電圧VTM1が入力され、比較器COMP2の非反転入力には、抵抗RTM2と抵抗RTM3との接続点から電圧VTM2が入力され、比較器COMP1の非反転入力には、抵抗RTM3と抵抗RTM4との接続点から電圧VTM3が入力される。
【0073】
そのため、比較器COMP1~COMP3それぞれは、参照ノードNrの電圧の抵抗分圧によって直列回路52の各抵抗の端子に現れる電圧VTM1~VTM3と、比較ノードNcの電圧(対GND電位)とを比較する。電圧VTM1~VTEM3は、比較器COMP1~COMP3それぞれでの比較結果が反転する境界を提供する閾値である。保持時期制御回路5において直列回路52は、このように参照ノードNrの電圧を分圧して閾値電圧VTM1~VTM3を生じさせる。比較器COMP1は、比較ノードNcの電圧が電圧VTM1よりも小さい間だけ、比較器COMP2は、比較ノードNcの電圧が電圧VTM2よりも小さい間だけ、そして、比較器COMP3は、比較ノードNcの電圧が電圧VTM3よりも小さい間だけハイレベルを出力する。
【0074】
なお、
図4の例では、四つの抵抗RTM1~RTM4が設けられ、三つの閾値電圧VTM1~VTM3が生成されている。しかし、本実施形態のスイッチング電源の制御装置における保持時期制御回路5が備える抵抗の直列回路52は、任意の数の抵抗を含み得る。保持時期制御回路5には、少なくとも二つの抵抗からなる直列回路が備わっていればよい。そして、各比較器COMP1~COMP3の比較結果が反転する境界を提供する閾値として、参照ノードNrの電圧よりも低い、少なくとも一つの閾値電圧が生成されればよい。生成される閾値電圧が例え一つであっても、その閾値電圧に基づいて、後述されるように、電圧保持回路2に帰還電圧を保持させる適切な時期を検出し得ることがある。
【0075】
また、直列回路52を構成する複数の抵抗の抵抗値は全て同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、2次巻線での通電期間中の帰還電圧Vfbの変動速度に応じて、個々の閾値電圧の電位差が大きく、又は小さくなるように各抵抗の抵抗値が個別に設定されてもよい。
【0076】
そして保持時期制御回路5は、比較器COMP1~COMP3のような比較器を、閾値電圧VTM1~VTM3のような閾値の数と等しい任意の数で備え得る。
【0077】
参照ノードNrには、前述したようにスイッチング素子Qのオフ期間毎に第1キャパシタCaと第2キャパシタCbが交互に接続される。従って直列回路52は、第1キャパシタCaが参照ノードNrに接続されているオフ期間では、第1キャパシタCaの充電電圧を分圧して複数の閾値電圧VTM1~VTM3を生じさせる。そして、直列回路52は、第2キャパシタCbが参照ノードNrに接続されているオフ期間では、第2キャパシタCbの充電電圧を分圧して複数の閾値電圧VTM1~VTM3を生じさせる。
【0078】
一方、比較ノードNcには、前述したように、スイッチング素子Qのオフ期間毎に、第1キャパシタCaと第2キャパシタCbが交互に接続される。従って、比較器COMP1~COMP3それぞれは、第1キャパシタCaが比較ノードNcに接続されているオフ期間では、第1キャパシタCaの充電電圧と、直列回路52が生じさせる複数の閾値電圧それぞれとを比較する。そして、比較器COMP1~COMP3それぞれは、第2キャパシタCbが比較ノードNcに接続されているオフ期間では、第2キャパシタCbの充電電圧と、直列回路52が生じさせる複数の閾値電圧それぞれとを比較する。
【0079】
ゲート回路50は、
図4の例において、駆動信号Vdrが入力されるINV12と、検出信号Venが入力されるINV11と、検出信号Venが一方の入力端子に入力されるAND11と、DフリップフロップFF3(D-FF3)と、三つのAND12~AND14とを備えている。INV11の出力端子はD-FF3のポジティブエッジトリガタイプのクロック端子に接続され、INV12の出力端子はD-FF3のロウアクティブのクリア端子に接続され、D-FF3のD入力にはハイレベル電位が印加されている。D-FF3の反転出力QBは、AND11の他方の入力端子に接続されている。AND11から時期信号Vsh0が出力される。時期信号Vsh0は、AND12~AND14それぞれの一方の入力端子に入力されると共に、電圧保持回路2へと送られる。AND12~14それぞれの他方の入力端子は、それぞれ、比較器COMP1~COMP3の出力端子と接続されている。
【0080】
AND12は比較器COMP1の出力と時期信号Vsh0との論理積である時期信号Vsh1を生成し、AND13は比較器COMP2の出力と時期信号Vsh0との論理積である時期信号Vsh2を生成し、AND14は比較器COMP3の出力と時期信号Vsh0との論理積である時期信号Vsh3を生成する。時期信号Vsh1~Vsh3は電圧保持回路2へと送られる。
【0081】
時期信号Vsh0は、
図4に示されるように結線されるINV12、INV11、AND11、及びD-FF3によって生成される。このような論理回路で生成される時期信号Vsh0は、スイッチング素子Qのオフ期間の開始でハイレベルに遷移し、そのオフ期間中に最初に検出信号Venがロウレベルに遷移するとロウレベルとなり、その後はそのオフ期間中ロウレベルを維持する。従って、ゲート回路50は、スイッチング素子Qの非導通期間において最初に検出回路3によって2次巻線の通電が判別されている期間以外の期間に時期信号Vsh1~Vsh3を出力しない。そのため、電圧保持回路2による不適切な時点での帰還電圧Vfbの保持が防がれることがある。
【0082】
なお、INV11、INV12、D-FF3、及びAND11が省略されて、
図2に示される計時回路4内のINV3から出力される信号が、時期信号Vsh0として用いられてもよい。部品点数を削減できると考えられる。
【0083】
<電圧保持回路の構成>
図4の例において電圧保持回路2は、複数の電圧保持キャパシタCs1~Cs3と、複数の入力側スイッチSWS1~SWS3と、複数の出力側スイッチSWH1~SWH3と、充電制御回路20と、を含んでいる。充電制御回路20は、保持時期制御回路5から送られる時期信号Vsh0~Vsh3に基づいて、複数の入力側スイッチSWS1~SWS3及び複数の出力側スイッチSWH1~SWH3を制御する。
【0084】
複数の入力側スイッチSWS1~SWS3は、それぞれ、複数の電圧保持キャパシタCs1~Cs3それぞれの一端と、帰還電圧Vfbが入力される制御装置1(
図1参照)の入力端子FBとの間にそれぞれ配置されている。従って、複数の入力側スイッチSWS1~SWS3それぞれにおける電圧保持キャパシタCs1~Cs3側と反対側の一端には、帰還電圧Vfbが入力される。一方、複数の出力側スイッチSWH1~SWH3は、複数の電圧保持キャパシタCs1~Cs3それぞれにおける入力側スイッチSWS1~SWS3が接続されている一端と、導通時間制御回路6(
図1参照)との間に配置されている。
【0085】
複数の電圧保持キャパシタCs1~Cs3それぞれの他端はGND接続されている。
図4の例の電圧保持回路2は、さらに、導通時間制御回路6との接続経路のインピーダンスを変換するバッファBUF14と、バッファBUF14の出力電圧を保持する出力保持キャパシタChと、をさらに含んでいる。複数の出力側スイッチSWH1~SWH3それぞれにおける電圧保持キャパシタCs1~Cs3側と反対側の一端は、バッファBUF14を介して導通時間制御回路6と接続される。
【0086】
充電制御回路20は、時期信号Vsh1が入力されるINV13と、時期信号Vsh2が入力されるINV14と、時期信号Vsh3が入力されるINV15と、時期信号Vsh0が一方の入力端子に入力されるAND17と、INV16と、AND15、16と、三つのバッファBUF11~BUF13と、を含んでいる。INV13の出力はINV16とAND15の一方の入力端子に接続され、INV16から、入力側スイッチSWS1を制御する制御信号SSWS1が出力される。AND15の他方の入力端子には時期信号Vsh2が入力され、AND15から、入力側スイッチSWS2を制御する制御信号SSWS2が出力される。AND15の出力はバッファBUF11にも入力され、バッファBUF11から、出力側スイッチSWH1を制御する制御信号SSWH1が出力される。
【0087】
INV14の出力は、AND16の一方の入力端子に接続され、AND16の他方の入力端子には時期信号Vsh3が入力される。AND16から、入力側スイッチSWS3を制御する制御信号SSWS3が出力される。AND16の出力はバッファBUF12にも入力され、バッファBUF12から、出力側スイッチSWH2を制御する制御信号SSWH2が出力される。INV15の出力はAND17の他方の入力端子に接続され、AND17の出力はバッファBUF13に入力される。バッファ13から、出力側スイッチSWH3を制御する制御信号SSWH3が出力される。
【0088】
図4の例のような回路構成を有する充電制御回路20は、帰還電圧Vfbを保持すべき保持時期が保持時期制御回路5で検出される毎に、複数の電圧保持キャパシタCs1~Cs3のうちの帰還電圧Vfbで充電されるキャパシタ、及び導通時間制御回路6に接続されるキャパシタを順次切り替えるように構成されている。
【0089】
なお、
図4の例の電圧保持回路2は、それぞれ3つの電圧保持キャパシタ、入力側スイッチ、及び出力側スイッチを備えている。しかし、電圧保持回路2は、電圧保持キャパシタ、入力側スイッチ、及び出力側スイッチそれぞれを、閾値電圧VTM1~VTM3のような閾値の数と等しい任意の数で備え得る。
【0090】
<保持時期制御回路及び電圧保持回路の作用>
図5を参照して、保持時期制御回路5及び電圧保持回路2の作用の一例を説明する。
図5には、
図3のタイミング図のように計時回路4が動作している
図1の制御装置1における各回路内の信号のタイミング図が示されている。具体的には、
図5は、
図4のような回路構成をそれぞれ有する、保持時期制御回路5の各時期信号Vsh0~Vsh3、並びに電圧保持回路2の各制御信号SSWS1~SSWS3及びSSWH1~SSWH3のタイミング図を示している。さらに
図5には、
図3に示されている駆動信号Vdr、帰還電圧Vfb、検出信号Ven、比較ノードの電圧Vnc、及び参照ノードの電圧Vnrも再掲されている。なお、
図5は、保持時期制御回路5において閾値電圧VTM1~VTM3の生成に用いられる抵抗RTM1~RTM3の抵抗値が全て同一である場合の例である。従って、
図5の電圧Vncに重ねて示されているように、保持時期制御回路5において、参照ノードVnrの電圧VH1A、VH2B、又はVH3Aを4等分した電位差を互いの間に有する三つの閾値電位VTM1~VTM3が生成されている。
【0091】
図5においてオフ期間Pf1(第1の非導通期間)の開始直後(時点T1)は、比較ノードNcの電圧Vncが略0Vであるため、電圧Vncは、閾値電圧VTM1~VTM3のいずれよりも小さい。そのため時期信号Vsh1~Vsh3は全てハイレベルであり、時期信号Vsh0もハイレベルのため、電圧保持回路2では、各制御信号のうち制御信号SSWS1だけがハイレベルである。すなわち、入力側スイッチSWS1だけが閉状態のため、電圧保持キャパシタCs1が、帰還電圧Vfbが入力される入力端子FB(
図1参照)と接続され、帰還電圧Vfbで充電又は放電される。なお、
図5の例では時点T1において参照ノードの電圧Vnrは、オフ期間Pf0の終了時の第1キャパシタCa(
図2参照)の電圧VH1Aである。保持時期制御回路5において、それぞれ電圧VH1Aの25%、50%、及び75%の大きさの閾値電圧VTM1~VTM3が生成されている。
【0092】
その後、第2キャパシタCb(
図2参照)が充電されて、第2キャパシタCbに接続されている比較ノードの電圧Vncが閾値電圧VTM1に達すると、各時期信号のうち時期信号Vsh1だけがロウレベルに転じ、電圧保持回路2では、制御信号SSWS1がロウレベルとなり、代わって制御信号SSWS2及びSSWH1がハイレベルに遷移する。従って、帰還電圧Vfbでの電圧保持キャパシタCs1の充放電が終了し、電圧保持キャパシタCs1の電圧が、バッファBUF14から出力されて出力保持キャパシタChで保持される。一方、帰還電圧Vfbで電圧保持キャパシタCs2が充電又は放電される。
【0093】
さらに第2キャパシタCbが充電されて、電圧Vncが閾値電圧VTM2に達すると、時期信号Vsh2がロウレベルに転じ、電圧保持回路2において制御信号SSWH1、SSWS2、SSWS3、及びSSWH2が反転する。従って、電圧保持キャパシタCs2の充放電が終了し、電圧保持キャパシタCs2の電圧が出力保持キャパシタChで保持されると共に、帰還電圧Vfbで電圧保持キャパシタCs3が充放電される。そして、さらに第2キャパシタCbが充電されて、電圧Vncが閾値電圧VTM3に達すると、時期信号Vsh3もロウレベルに転じ、電圧保持回路2において制御信号SSWH2、SSWS3、及びSSWH3が反転する。従って、電圧保持キャパシタCs3の充放電が終了し、電圧保持キャパシタCs3の電圧が、閉状態の出力側スイッチSWH3を介してバッファBUF14から出力されて出力保持キャパシタChで保持され、次に制御信号SSWH1が反転するまで持続する。
【0094】
その後、
図5のように、時点T2を過ぎて、帰還電圧Vfbが基準電圧Vref0を跨いで振動しても、駆動信号Vdrが一旦立ち上がって再度ロウレベルに転じるまで時期信号Vsh0がハイレベルにならないので、その間に電圧保持回路2内の状態は変化しない。従って、電圧Vncが閾値電圧VTM3を超えた時点T11での大きさの帰還電圧Vfbが、次のオフ期間Pf2の始期まで電圧保持回路2内で保持されて、保持電圧Vfbhとして導通時間制御回路6に入力され続ける。
【0095】
図5は、次のオフ期間Pf2(第2の非導通期間)において、トランスの2次巻線の通電時間がオフ期間Pf1における通電時間よりも短い例を示している。オフ期間Pf2の開始時点である時点T4では、参照ノードの電圧Vnrは、オフ期間Pf1の終了時に第2キャパシタCbが保持していた電圧VH2Bのままである。一方、第1キャパシタCaは、オフ期間Pf2の直前のオン期間で放電されているため、時点T4において比較ノードの電圧Vncは略0Vである。
【0096】
オフ期間Pf2においても、その開始直後は、オフ期間Pf1と同様に、制御信号Vsh0~Vsh3は全てハイレベルのため、電圧保持キャパシタCs1が帰還電圧Vfbで充電又は放電される。その後、第1キャパシタCaが充電されて、比較ノードの電圧Vncが閾値電圧VTM1に達すると、時期信号Vsh1がロウレベルに転じ、さらに閾値電圧VTM2に達すると、時期信号Vsh2がロウレベルに転じる。電圧保持回路2において制御信号SSWH1及びSSWS2がロウレベルとなり、制御信号SSWS3及びSSWH2がハイレベルとなる。従って、電圧保持キャパシタCs2の電圧が、閉状態の出力側スイッチSWH2を介してバッファBUF14から出力されて出力保持キャパシタChで保持され、オフ期間Pf1と同様に、次に制御信号SSWH1が反転するまで持続する。
【0097】
このように、
図5のオフ期間Pf2では、保持時期制御回路5は、オフ期間Pf1での第2キャパシタCbの充電電圧、すなわち参照ノードの電圧Vnrを分圧して1以上の閾値電圧VTM1~VTM3を生じさせている。そして、保持時期制御回路5は、オフ期間Pf2において第1キャパシタCaの充電電圧、すなわち比較ノードの電圧Vncが1以上の閾値電圧VTM1~VTM2それぞれに達するときに、電圧保持回路2に帰還電圧Vfbを保持させる時期を示す時期信号Vsh1、Vsh2を生成する。
【0098】
その後、オフ期間Pf2における2次巻線での通電時間が短い
図5の例では、比較ノードの電圧Vncが閾値電圧VTM3に達する前に2次巻線での通電が終了する。そのため、時期信号Vsh3が、計時回路4による2次巻線での通電時間の計測結果によってロウレベルになることはない。しかし、比較ノードの電圧Vncが閾値電圧VTM2を超えた時点T21での帰還電圧Vfb、すなわち2次巻線の通電期間中の帰還電圧Vfbの電圧値が、次のオフ期間Pf3の始期まで電圧保持回路2内で保持されて、保持電圧Vfbhとして導通時間制御回路6に入力され続ける。すなわち、2次巻線での通電時間が短い場合でも、例えば時点T5のような、振動している期間中の帰還電圧Vfbの不適切な電圧値が導通時間制御回路6に入力されることはない。従って、スイッチング電源の出力電圧を安定して制御することができる。
【0099】
なお、時期信号Vsh3は、時点T5での検出信号Venのロウレベルへの遷移に伴ってロウレベルに転じる。しかし、時期信号Vsh0がロウレベルになるため、電圧保持キャパシタCs1~Cs3のいずれも、バッファBUF14、乃至、導通時間制御回路6と接続されない。従って、時点T21から保持されている保持電圧Vfbhは影響を受けない。
【0100】
図5は、次のオフ期間Pf3において、トランスの2次巻線の通電時間がオフ期間Pf2における通電時間と同じ例を示している。オフ期間Pf3では、オフ期間Pf1と同様に、比較ノードの電圧Vncが閾値電圧VTM3を超えた時点T31での帰還電圧Vfbの電圧値が、電圧保持回路2内で保持されて次のオフ期間(図示せず)の始期まで導通時間制御回路6に入力される。なお、オフ期間Pf3における閾値VTM1~VTM3は、それぞれ、オフ期間Pf2の終了時に第1キャパシタCaが保持していた電圧VH3Aの25%、50%、及び75%の大きさの電圧である。
【0101】
図2~
図5を参照して説明したように、本実施形態のスイッチング電源の制御装置1において保持時期制御回路5は、トランスTの2次巻線Ts(
図1参照)の通電時間に関する1以上の閾値(例えば閾値電圧VTM1~VTM3)を設定してもよい。そして保持時期制御回路5は、閾値電圧VTM1~VTM3のいずれかのような1以上の閾値と、2次巻線Tsでの通電時間に応じて計時回路4が生じさせる電気量から、電圧保持回路2による帰還電圧Vfbの保持時期を検出してもよい。計時回路4は、この電気量として、スイッチング素子Q(
図1参照)の非導通期間における2次巻線Tsの通電開始からの経過時間に応じて電圧を生じさせてもよい。例えば2次巻線Tsでの通電開始と共に開始される充電によって電圧を生じさせることで、2次巻線Tsでの通電時間を簡便に計測することができる。しかし、前述したように、計時回路4が生じさせる電気量は、電圧以外に電流などであってもよく、従って、保持時期制御回路5が設定する閾値に用いられる電気量も、閾値電圧VTM1~VTM3のような電圧に限られず、電流などであってもよい。
【0102】
保持時期制御回路5は、好ましくは、前述されたように、1以上の閾値として、閾値電圧VTM1~VTM3のような複数の閾値を設定するように構成される。より適切な保持時期に帰還電圧Vfbを電圧保持回路2に保持させ得ることがある。
【0103】
保持時期制御回路5は、1以上の閾値として、それぞれが、
図3及び
図5に示されるオフ期間Pf1のようなスイッチング素子Qの第1の非導通期間において計時回路4が生じさせる電圧VH2Bよりも小さい、閾値電圧VTM1~VTM3のような1以上の閾値電圧を設定してもよい。そして、保持時期制御回路5は、オフ期間Pf1の後のオフ期間Pf2のような、第1の非導通期間後の第2の非導通期間において2次巻線Tsの通電開始から計時回路2が生じさせる電圧が、1以上の閾値電圧それぞれに達する時点を、電圧保持回路2による帰還電圧Vfbの保持時期として検出してもよい。
【0104】
このように保持時期を検出することで、第2の非導通期間における2次巻線Tsでの通電時間が第1の非導通期間における2次巻線Tsでの通電時間よりも短い場合でも、適切な電圧値の帰還電圧を保持し得ることがある。なお、第1の非導通期間は、第2の非導通期間よりも前の非導通期間であればよいが、好ましくは、第2の非導通期間の直前の非導通期間である。連続する非導通期間の間では、2次巻線Tsでの通電時間にさほど大きな違いはないと考えられるため、適切な閾値が設定されると考えられる。
【0105】
上記のような構成及び作用を有する保持時期制御回路5、電圧保持回路2、検出回路3、計時回路4、及び導通時間制御回路6を備える実施形態のスイッチング電源の制御装置によれば、上述したように、トランスの2次側に誘起されるフライバック電圧が低下を始めるまでの時間が短くなっても、帰還電圧の適切な保持によりスイッチング電源の出力電圧を安定して制御することができると考えられる。また、このような実施形態の制御装置を備える実施形態のスイッチング電源装置においても同様に、出力電圧を安定して制御することができると考えられる。
【0106】
<他の動作モード>
図3及び
図5は、前述したように、
図1のスイッチング電源の制御装置1が電流不連続モードで動作する場合の例である。本実施形態のスイッチング電源の制御装置1は、電流不連続モード以外のモードで動作してもよい。
図6には、
図1のスイッチング電源の制御装置1が電流臨界モードで動作する場合の各内部回路の動作の一例を示すタイミング図が示されている。
図6は、
図3及び
図5と同様の態様で、駆動信号Vdr、1次巻線のフライバック電圧Vba、帰還電圧Vfb、第1及び第2のキャパシタの電圧Vca、Vcb、検出信号Ven、制御信号SSW2Aなどの計時回路4の各制御信号、及び時期信号Vsh1~Vsh3が示されている。
【0107】
電流臨界モードでは、
図6に示されるように、オフ期間Pf1~Pf3のようなスイッチング素子のオフ期間においてトランスの2次巻線での通電が終了すると、すなわち、フライバック電圧Vbaが反転すると、オン期間が開始する。そのため、検出信号Venのレベルは駆動信号Vdrと略同期して変化する。このような電流臨界モードにおいても、本実施形態のスイッチング電源の制御装置は、先に説明した電流不連続モードと同様に動作する。
【0108】
すなわち、
図6のオフ期間Pf1では、計時回路4(
図2参照)において充電される第2キャパシタの電圧Vcbが閾値電圧VTM3に達する時点T11での帰還電圧Vfbの電圧値が電圧保持回路2(
図4参照)内で保持される。保持された電圧値は、次のオフ期間Pf2の始期まで導通時間制御回路6(
図1参照)に入力される。一方、オフ期間Pf2では、充電される第1キャパシタの電圧Vcaが閾値電圧VTM3よりも低い閾値電圧VTM2に達する時点T21での帰還電圧Vfbの電圧値が、保持される。
【0109】
すなわち、オフ期間Pf2では、2次巻線での通電時間が短いため第1キャパシタの電圧Vcaが閾値電圧VTM3に達することは無いが、2次巻線の通電期間の終了後ではなく、その通電中の適切な帰還電圧Vfbの電圧値が保持される。このように本実施形態のスイッチング電源の制御装置は、電流臨界モードのような、電流不連続モード以外の動作モードにおいても、適切に帰還電圧を保持することができる。
【0110】
<オン/オフ制御回路>
図7には、
図1に例示される本実施形態のスイッチング電源の制御装置1の導通時間制御回路6が備えるオン/オフ制御回路61の具体的な回路構成の一例が示されている。
図7の例においてオン/オフ制御回路61は、アンプ611、コンパレータ612、重畳回路613、発振器614、及びSRフリップフロップ(SR-FF)615を含んでいる。発振器614からは、制御装置1のスイッチング周期と同じ周期でスイッチング素子Q(
図1参照)のオン時間よりも十分短いパルス幅を有する矩形波Wcが出力され、SR-FF615のS入力に入力される。発振器614からは、さらに、矩形波Wcの立ち上がりに同期して立ち下がると共に上昇を開始するランプ波Wrが出力され、重畳回路613に入力される。アンプ611には、トランスの1次巻線に流れる電流に応じた信号Vsns(
図1参照)が入力され、アンプ611の出力は重畳回路613に入力される。重畳回路613において、増幅後の信号Vsnsにランプ波Wrが重畳され、その重畳信号Vsがコンパレータ612の非反転入力に入力される。コンパレータ612の反転入力には、導通時間制御回路6内のエラーアンプ64(
図1参照)の出力電圧Verが入力され、コンパレータ612の出力はSR-FF615のR入力に入力される。SR-FF615は、S入力にハイレベルが入力されると立ち上がり、R入力にハイレベルが入力されると立ち下がる駆動信号Vdrを出力する。なおエラーアンプ64は、帰還電圧Vfbの保持電圧Vfbhが基準電圧Vref(
図1参照)よりも大きければ大きいほど低い出力電圧Verを出力し、保持電圧Vfbhが基準電圧Vrefよりも小さければ小さいほど高い出力電圧Verを出力する。
【0111】
図7の構成のオン/オフ制御回路61では、発振器614の矩形波Wcの立ち上がりで、駆動信号Vdrがハイレベルとなって、スイッチング素子Qがオン状態となる(立ち上がった矩形波Wcは、スイッチング素子Qがオン状態の間に立ち下がる)。スイッチング素子Qがオン状態になるとトランスの1次巻線に電流が流れ、信号Vsnsが上昇する。信号Vsnsの上昇に伴って重畳信号Vsが上昇し、重畳信号Vsがエラーアンプ64の出力電圧Verを超えると、コンパレータ612の出力が反転してハイレベル電圧がSR-FF615のR入力に入力される。R入力へのハイレベル電圧の入力によってSR-FF615の出力がロウレベルに転じ、すなわち、駆動信号Vdrがロウレベルとなって、スイッチング素子Qがオフ状態に遷移する。
【0112】
2次側Tβの出力電圧Vout(
図1参照)が高く、帰還電圧Vfbの保持電圧Vfbhが基準電圧Vrefよりも大きければ大きい程、上述の通りエラーアンプ64の出力電圧Verが低くなるので、コンパレータ612の出力をハイレベルに転じさせる重畳信号Vsのレベルは低くなる。すなわち、スイッチング素子Qがオフ状態となる時期が早まって、オン時間が短くなる。一方、出力電圧Voutが低く、保持電圧Vfbhが基準電圧Vrefよりも小さければ小さい程、エラーアンプ64の出力電圧Verが高くなるので、コンパレータ612の出力をハイレベルに転じさせる重畳信号Vsのレベルは高くなる。すなわち、スイッチング素子Qがオフ状態となる時期が遅くなって、オン時間が長くなる。
【0113】
すなわち、スイッチング素子Qのオン時間の開始時期は、発振器614の矩形波Wcの立ち上がりと同期して一定である一方、オン時間の終了時期は、帰還電圧Vfb(具体的にはその保持電圧Vfbh)の大きさに応じて前後するのでオン時間を調整することができる。そしてこのオン時間の調整によってスイッチング素子Qのデューティ比を変化させることで、出力電圧Voutを制御することができる。
【0114】
なお、2次側Tβの電流が小さく、よって出力電圧Voutが高く、そのためデューティ比が小さくなると、制御装置1の制御は電流不連続モードの制御となる。そして、2次側Tβの電流が増えて出力電圧Voutが低くなり、よってデューティ比が徐々に大きくなると、制御装置1の制御は電流臨界モードに達し、さらにデューティ比が大きくなると、制御モードは電流連続モードに変化する。このようにデューティ比が増大して50%より大きくなったときにサブハーモニック発振(低調波発振)が発生しないように、増幅後の信号Vsnsにランプ波Wrが重畳されている。すなわち、ランプ波Wrを重畳してスロープ補償を行うことによって、サブハーモニック発振を防止することができる。
【符号の説明】
【0115】
100 スイッチング電源装置
1 スイッチング電源の制御装置
2 電圧保持回路
20 充電制御回路
3 検出回路
31 比較器
4 計時回路
40 スイッチ制御回路
5 保持時期制御回路
50 ゲート回路
52 抵抗器の直列回路
6 導通時間制御回路
Ca 第1キャパシタ
Cb 第2キャパシタ
Ic 定電流源
Nc 比較ノード
Nr 参照ノード
Q スイッチング素子
R1、R2 帰還抵抗
Sa、Sb 平滑回路
T トランス
Tp 1次巻線
Ts 2次巻線
Ta 補助巻線
Tα 1次側
Tβ 2次側
Vba フライバック電圧
Ven 検出信号
Vfb 帰還電圧
Vfbh 保持電圧
Vout 出力電圧