(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162758
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】離型フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20241114BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20241114BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20241114BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B27/36
C08J7/04 Z CER
C08J7/04 CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078626
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】大関 陽介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 碧衣
(72)【発明者】
【氏名】相田 尚也
【テーマコード(参考)】
4F006
4F100
【Fターム(参考)】
4F006AA35
4F006AB39
4F006BA11
4F006CA05
4F006EA05
4F100AK36C
4F100AK42B
4F100AK52A
4F100AT00
4F100BA03
4F100BA04
4F100CA22D
4F100CA22H
4F100DD07B
4F100GB90
4F100JK06
4F100JL14
(57)【要約】
【課題】各種の粘着剤に対し超軽剥離性を実現しながらも、ブロッキングにより離型層の剥離特性が変化しにくい離型フィルム、及びその該離型フィルムを用いた粘着シート(フィルム積層体)を提供すること。
【解決手段】基材フィルムの一方の面に樹脂層(A)を備えた離型フィルムであって、前記樹脂層(A)は、シリコーン樹脂系離型剤を含み、乾燥後の厚みが0.2~2.0μmであり、樹脂層(A)の反対側のフィルム表面が下記(1)および(2)を満足する、離型フィルムである。
(1)平均表面粗さSa(B)が30nm以上であること
(2)表面積比Sdr(B)が3.5×10-2%以上であること
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの一方の面に樹脂層(A)を備えた離型フィルムであって、前記樹脂層(A)は、シリコーン樹脂系離型剤を含み、かつ乾燥後の厚みが0.2~2.0μmであり、該樹脂層(A)の反対側のフィルム表面が下記(1)および(2)を満足する、離型フィルム。
(1)平均表面粗さSa(B)が30nm以上であること
(2)表面積比Sdr(B)が3.5×10-2%以上であること
【請求項2】
樹脂層(A)が設けられていない側のフィルム表面に樹脂層(B)を備えた、請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項3】
前記樹脂層(B)が非シリコーン系離型剤を含む、請求項2に記載の離型フィルム。
【請求項4】
前記樹脂層(A)のナノインデンター装置を用いて測定した、25℃における弾性率が500MPa以下である、請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項5】
前記非シリコーン系離型剤が、ワックス、長鎖アルキル基含有化合物、及びフッ素化合物からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項3に記載の離型フィルム。
【請求項6】
前記樹脂層(B)の不揮発成分中における、離型剤の含有量が10~70質量%である、請求項3に記載の離型フィルム。
【請求項7】
前記樹脂層(B)が粒子を実質的に含有しない、請求項2に記載の離型フィルム。
【請求項8】
下記評価方法で測定した、樹脂層(A)の常態剥離力が5g/inch以下である、請求項1に記載の離型フィルム。
<評価方法>
前記離型フィルムの樹脂層(A)面にアクリル系粘着テープ(Tesa製の「No.7475」)を貼り付けた後、25mm×150mmのサイズにカットし、室温にて1時間放置する。剥離力は引張速度0.3m/minの条件下で180°で剥離を行う。
【請求項9】
前記樹脂層(A)あるいは樹脂層(B)の少なくとも一方の層と前記基材フィルムとの間に下引き層を備える、請求項2に記載の離型フィルム。
【請求項10】
前記下引き層が帯電防止層である、請求項9に記載の離型フィルム。
【請求項11】
前記下引き層が下記化合物(a)~(c)を含有する、請求項9に記載の離型フィルム。
(a)チオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物に、他の陰イオン化合物によりドーピングされた重合体、またはチオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物中に陰イオン基を持ち自己ドープされた重合体
(b)ポリヒドロキシ化合物
(c)ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選ばれる1種以上の化合物
【請求項12】
前記樹脂層(A)あるいは樹脂層(B)の少なくとも一方の表面の表面固有抵抗率が1×1012Ω/□以下である、請求項2に記載の離型フィルム。
【請求項13】
前記基材フィルムがポリエステルフィルムである、請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項14】
前記ポリエステルフィルムが3層構成である、請求項13に記載の離型フィルム。
【請求項15】
樹脂層(A)を設ける側とは反対側のフィルム表面層の厚み(t)と粒子の平均粒径(r)との関係(t/r)が2.0以下である、請求項14に記載の離型フィルム。
【請求項16】
以下の方法で評価した前記樹脂層(A)のプレス後重剥離化率が100%以下である、請求項1に記載の離型フィルム。
<評価方法>
前記樹脂層(A)面にアクリル系粘着テープ(Tesa製の「No.7475」)を貼り付けた後、25mm×150mmのサイズにカットし、室温にて1時間放置する。引張速度0.3m/minの条件下で180°で剥離した剥離力を(F1)とする。
次に、前記樹脂層(A)面に接触するように積層し、温度40℃、湿度90%RH、荷重1MPaで20時間プレス処理を行う。処理後の前記樹脂層(A)面に、アクリル系粘着テープ(Tesa製の「No.7475」)を貼り付けた後、25mm×150mmのサイズにカットし、室温にて1時間放置する。引張速度0.3m/minの条件下で180°で剥離した剥離力を(F2)とする。
次式によってプレス後重剥離化率を求める。
プレス後重剥離化率(%)=(F2-F1)/F1×100
【請求項17】
前記樹脂層(B)面の平均表面粗さ(Sa(B))が60nm以下である、請求項2に記載の離型フィルム。
【請求項18】
前記樹脂層(B)面の二乗平均平方根粗さ(Sq(B))が100nm以下である、請求項2に記載の離型フィルム。
【請求項19】
請求項1~18の何れかに記載の離型フィルムと、粘着層を介して、他の離型フィルムを備えた、粘着シート。
【請求項20】
前記粘着層がアクリル系粘着層組成物から形成される、請求項19に記載の粘着シート。
【請求項21】
光学用透明粘着シート用である、請求項19に記載の粘着シート。
【請求項22】
請求項19に記載の粘着シートにおいて、前記他の離型フィルムを剥がした後、露出する粘着層表面を光学部材に貼り合わせる、粘着シートの使用方法。
【請求項23】
前記光学部材が偏光板またはタッチセンサーである、請求項22に記載の粘着シートの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルム、粘着シート及び粘着シートの使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステルフィルムを基材とする離型フィルムは、機械的強度、寸法安定性、耐薬品性、光学特性等に優れた特性を有し、コストパフォーマンスに優れるため、各種用途に使用されている。例えば、液晶ディスプレイ(以下、「LCD」と略記する。)用偏光板、位相差板製造用、プラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」と略記する。)構成部材製造用、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」と略記する。)構成部材製造用等、各種ディスプレイ構成部材製造用等、各種光学用途等に使用されている。
【0003】
近年、光学用透明粘着シート(OCA)/有機EL(OLED)向けの粘着シート部材において、粘着剤設計の強粘着化、低弾性率化、薄膜化が進められている。それに伴い、粘着シートを保護するためのシリコーン離型フィルムに対しても従来よりも一層軽剥離なものが求められている。
シリコーン離型フィルムを軽剥離化する方法としては、硬化後にもシリコーン層内に残留する官能基の量が少なくなるような配合としたり、シリコーン層の厚さを厚塗りしたりする方法が挙げられる。
一方、上記のような方法によってシリコーン離型フィルムを軽剥離化させた場合、フィルムを巻き取ってロール状にした際、シリコーン層と反対面が貼り付く、ブロッキングが起こり、シリコーン層のダメージによる重剥離化、剥離帯電、フィルムの変形、粘着剤の濡れ性に不均一性を生じるなどの不具合を生じる場合があった。特に反対面に帯電防止層などのコート層(インラインコート層)を形成した場合、さらにブロッキングが酷くなる傾向にあった。そのため、ブロッキング防止対策として、例えば、基材フィルムに大きな粒子(滑剤)を含有させたり、フィルム上の樹脂層(コート層)に粒子を含有させる方法が用いられてきた(特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-255704号公報
【特許文献2】特開2017-61081号公報
【特許文献3】特開2016-165825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、基材フィルムに大きな粒子を含有させた場合、異物検査の障害になったり、大きい粒子に起因する突起によってキズが発生したり、粒子が脱落して異物が発生する場合があった。
【0006】
本発明は上記実状に鑑みなされたものであって、その解決課題は、各種の粘着剤に対し超軽剥離性を実現しながらも、ブロッキングにより離型層の剥離特性が変化しにくい離型フィルム、該離型フィルムを用いた粘着シート(フィルム積層体)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記実状に鑑み、鋭意検討した結果、特定の構成からなる離型フィルムを用いることにより、上記課題が解決されることを見いだし、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の[1]~[23]を提供するものである。
[1]基材フィルムの一方の面に樹脂層(A)を備えた離型フィルムであって、前記樹脂層(A)は、シリコーン樹脂系離型剤を含み、かつ乾燥後の厚みが0.2~2.0μmであり、該樹脂層(A)の反対側のフィルム表面が下記(1)および(2)を満足する、離型フィルム。
(1)平均表面粗さSa(B)が30nm以上であること
(2)表面積比Sdr(B)が3.5×10-2%以上であること
[2]樹脂層(A)が設けられていない側のフィルム表面に樹脂層(B)を備えた、上記[1]に記載の離型フィルム。
[3]前記樹脂層(B)が非シリコーン系離型剤を含む、上記[2]に記載の離型フィルム。
[4]前記樹脂層(A)のナノインデンター装置を用いて測定した、25℃における弾性率が500MPa以下である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の離型フィルム。
[5]前記非シリコーン系離型剤が、ワックス、長鎖アルキル基含有化合物、及びフッ素化合物からなる群から選択される少なくとも1種である、上記[3]又は[4]に記載の離型フィルム。
[6]前記樹脂層(B)の不揮発成分中における、離型剤の含有量が10~70質量%である、上記[3]~[5]のいずれかに記載の離型フィルム。
[7]前記樹脂層(B)が粒子を実質的に含有しない、上記[2]~[6]のいずれかに記載の離型フィルム。
[8]下記評価方法で測定した、樹脂層(A)の常態剥離力が5g/inch以下である、上記[1]~[7]のいずれかに記載の離型フィルム。
<評価方法>
前記離型フィルムの樹脂層(A)面にアクリル系粘着テープ(Tesa製の「No.7475」)を貼り付けた後、25mm×150mmのサイズにカットし、室温にて1時間放置する。剥離力は引張速度0.3m/minの条件下で180°で剥離を行う。
[9]前記樹脂層(A)あるいは樹脂層(B)の少なくとも一方の層と前記基材フィルムとの間に下引き層を備える、上記[2]~[8]のいずれかに記載の離型フィルム。
[10]前記下引き層が帯電防止層である、上記[9]に記載の離型フィルム。
[11]前記下引き層が下記化合物(a)~(c)を含有する、上記[9]又は[10]に記載の離型フィルム。
(a)チオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物に、他の陰イオン化合物によりドーピングされた重合体、またはチオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物中に陰イオン基を持ち自己ドープされた重合体
(b)ポリヒドロキシ化合物
(c)ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選ばれる1種以上の化合物
[12]前記樹脂層(A)あるいは樹脂層(B)の少なくとも一方の表面の表面固有抵抗率が1×1012Ω/□以下である、上記[2]~[11]のいずれかに記載の離型フィルム。
[13]前記基材フィルムがポリエステルフィルムである、上記[1]~[12]のいずれかに記載の離型フィルム。
[14]前記ポリエステルフィルムが3層構成である、上記[13]に記載の離型フィルム。
[15]樹脂層(A)を設ける側とは反対側のフィルム表面層の厚み(t)と粒子の平均粒径(r)との関係(t/r)が2.0以下である、上記[14]に記載の離型フィルム。
[16]以下の方法で評価した前記樹脂層(A)のプレス後重剥離化率が100%以下である、上記[1]~[15]のいずれかに記載の離型フィルム。
<評価方法>
前記樹脂層(A)面にアクリル系粘着テープ(Tesa製の「No.7475」)を貼り付けた後、25mm×150mmのサイズにカットし、室温にて1時間放置する。引張速度0.3m/minの条件下で180°で剥離した剥離力を(F1)とする。
次に、前記樹脂層(A)面に接触するように積層し、温度40℃、湿度90%RH、荷重1MPaで20時間プレス処理を行う。処理後の前記樹脂層(A)面に、アクリル系粘着テープ(Tesa製の「No.7475」)を貼り付けた後、25mm×150mmのサイズにカットし、室温にて1時間放置する。引張速度0.3m/minの条件下で180°で剥離した剥離力を(F2)とする。
次式によってプレス後重剥離化率を求める。
プレス後重剥離化率(%)=(F2-F1)/F1×100
[17]前記樹脂層(B)面の平均表面粗さ(Sa(B))が60nm以下である、上記[2]~[16]のいずれかに記載の離型フィルム。
[18]前記樹脂層(B)面の二乗平均平方根粗さ(Sq(B))が100nm以下である、上記[2]~[16]のいずれかに記載の離型フィルム。
[19]上記[1]~[18]の何れかに記載の離型フィルムと、粘着層を介して、他の離型フィルムを備えた、粘着シート。
[20]前記粘着層がアクリル系粘着剤組成物から形成される、上記[19]に記載の粘着シート。
[21]光学用透明粘着シート用である、上記[19]又は[20]に記載の粘着シート。
[22]上記[19]~[21]のいずれかに記載の粘着シートにおいて、前記他の離型フィルムを剥がした後、露出する粘着層表面を光学部材に貼り合わせる、粘着シートの使用方法。
[23]前記光学部材が偏光板またはタッチセンサーである、上記[22]に記載の粘着シートの使用方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の離型フィルムによれば、各種の粘着剤に対し超軽剥離性を実現しながらも、ブロッキングにより離型層の剥離特性が変化しにくい離型フィルム、該離型フィルムを用いた粘着シート(フィルム積層体)を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。ただし、本発明は次に説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
【0010】
<<<離型フィルム>>>
本発明の実施形態の一例に係る離型フィルム(以下、「本離型フィルム」と称することがある。)は、基材フィルムの一方の面に樹脂層(A)を備えた離型フィルムである。該離型フィルムは、巻き取られたロール状の離型フィルム(離型フィルムロール)とされ、離型フィルムロールの形態で保管などされるのがよい。その場合、樹脂層(A)(離型層)はロールの内側および外側のどちら側に配置してもよい。
【0011】
本離型フィルムにおいて、一方の面の樹脂層(A)はシリコーン樹脂系離型剤を含み、かつ乾燥後の厚みが0.2~2.0μmである。また、ナノインデンター装置を用いて測定した、前記樹脂層(A)の25℃における弾性率は500MPa以下であることが好ましい。さらに、樹脂層(A)の反対側のフィルム表面が下記(1)および(2)を満足することを特徴とする。
(1)平均表面粗さSa(B)が30nm以上であること
(2)表面積比Sdr(B)が3.5×10-2%以上であること
以上の構成を有する離型フィルムは、ロール状とされると、樹脂層(A)の面が、樹脂層(A)の反対側のフィルム表面と重ね合わされるが、その際、樹脂層(A)表面への密着によるダメージを軽減することができ、ブロッキングを抑制し、よりフィルムに圧力が加わるロールの下巻き部分での樹脂層(A)の重剥離化および表面の外観の悪化を防ぐことができる。また、樹脂層(A)は、超軽剥離性を実現しながらも、好ましくは、粒子を実質的に含有しないことで基材フィルムに対する密着性も良好で、さらには粒子脱落もないため粘着テープ等への移行性を低減することもできる。
【0012】
上記(1)、(2)を両立するための具体的手段として、例えば、以下に示す(X)~(Z)の要件を満足するのが好ましい。
(X)樹脂層(A)を設ける面とは反対側の表面層を形成するポリエステル層において、該ポリエステル層は粒子を含み、ポリエステル層厚み(t)と該粒子の平均粒径(r)との関係(t/r)は、2.0以下、好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.0以下、その中でも特に0.8以下であること。一方、下限については、0.2以上、好ましくは0.4以上である。
(Y)表面層のポリエステル層の厚み(t)が0.5~5.0μmの範囲、好ましくは1.0~4.0μm、さらに好ましくは1.5~3.0μmであること。
(Z)表面層を形成するポリエステル層中に添加する粒子の含有量は2000ppm以上、好ましくは3000ppm以上、さらに好ましくは4000ppm以上であること。
一方、上限に関しては、ロール状に巻き取った際の樹脂層(A)へのダメージを考慮して、10000ppm以下、好ましくは8000ppm以下がよい。
さらに好ましくは、上記(X)から(Z)の要件をすべて満足するのがよい。
【0013】
本発明においては、粒子を含有するポリエステル層において、粒子をポリエステル層で固定することで、フィルム表面に極端に粒子が突出することを抑制しながら、適度に凹凸形成することが可能となる。さらに粒子をポリエステル層で固定することによる、他の効果として、ポリエステル層中に粒子を一部、埋没させることで、粒子添加量が多いにも関わらず、フィルムヘーズの極端な上昇を抑制できることもわかった。
上述のような、従来には見られなかった、特異的な挙動を示す領域が存在することを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0014】
<<基材フィルム>>
本離型フィルムにおける基材フィルムは、フィルム状を呈するものであれば、その材料を特に限定するものではない。例えば、紙製、樹脂製、金属製などであってもよい。これらの中でも、機械的強度および柔軟性の観点から、樹脂製であることが好ましい。
樹脂製の基材フィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミドなどの高分子を膜状に形成したフィルムを挙げることができる。また、フィルム化が可能であれば、これらの材料を混合したもの(ポリマーブレンド)や構成単位を複合化したもの(共重合体)であっても構わない。
上記例示したフィルムの中でも、耐熱性、平面性、光学特性、強度などの物性が優れている点から、ポリエステルを主成分樹脂とするポリエステルフィルムであることが特に好ましい。
なお、本発明における基材フィルムは、粒子を含むポリエステル層を有することが好ましい。したがって、基材フィルムがポリエステルにより構成される場合を除いて、ポリエステル層を形成するためのポリエステル樹脂組成物を基材フィルムに塗布し、ポリエステル層を形成するとよい。
また、基材フィルムが後述する、単層のポリエステルフィルムである場合には、基材フィルム自体が粒子を有していればよく、その場合には粒子を含むポリエステル層を別途設ける必要はない。一方、後に詳述する多層のポリエステルフィルムが基材フィルムである場合には、最外層がポリエステル層であることが好ましい。
【0015】
<ポリエステルフィルム>
本発明の積層フィルムを構成するポリエステルフィルムは単層構成であっても多層構成であってもよく、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。本発明においては、少なくとも3層構成からなるポリエステルフィルムであることが好ましい。また、ポリエステルフィルムとしては二軸延伸ポリエステルフィルムが、薄膜化や寸法安定性の点などから好ましい。
【0016】
本発明において使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。
一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p-オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の1種または2種以上が挙げられる。
【0017】
共重合ポリエステルからなる場合、ジカルボン酸成分と、グリコール成分とを重縮合させて得られるものが挙げられる。ジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p-オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の1種または2種以上が挙げられる。共重合ポリエステルは、ジカルボン酸成分とグリコール成分の合計に対して、30モル%以下の第三成分を含有した共重合体であることが好ましい。
なお、主成分樹脂とは、本ポリエステルフィルムを構成する樹脂の中で最も質量割合の大きい樹脂の意味であり、本ポリエステルフィルムを構成する樹脂の50質量%以上、或いは75質量%以上、或いは90質量%以上、或いは100質量%を占める場合である。
【0018】
上記ポリエステルフィルムの重合触媒としては、特に制限はなく、従来公知の化合物を使用することができ、例えば、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、マンガン化合物、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等が挙げられる。この中でも、触媒活性が高く、少量で重合を行うことが可能であり、フィルム中に残留する金属量が少なくフィルムの輝度が高くなることから、チタン化合物やゲルマニウム化合物が好ましい。また、ゲルマニウム化合物は高価であることから、チタン化合物が更に好ましい。
【0019】
チタン化合物を用いたポリエステルの場合、チタン元素含有量は、好ましくは50ppm以下、より好ましくは1~20ppm、更に好ましくは2~10ppmの範囲である。チタン化合物の含有量が多すぎる場合は、ポリエステルを溶融押出する工程でポリエステルの劣化が促進され黄色味が強いフィルムとなる場合がある。また、含有量が少なすぎる場合は、重合効率が悪くコストアップや十分な強度を有するフィルムが得られない場合がある。
また、チタン化合物によるポリエステルを用いる場合、溶融押出する工程での劣化抑制の目的で、チタン化合物の活性を下げるためにリン化合物を使用することが好ましい。リン化合物としては、ポリエステルの生産性や熱安定性を考慮すると正リン酸が好ましい。リン元素含有量は、溶融押出するポリエステル量に対して、好ましくは1~300質量ppm、より好ましくは3~200質量ppm、さらに好ましくは5~100質量ppmの範囲である。リン化合物の含有量が上記上限値以下であると、ゲル化や異物の原因となることがなく、また、上記下限値以上であると、チタン化合物の活性を十分に下げることができ、着色を抑制できて、黄色味のあるフィルムとなることがない。
【0020】
オリゴマー成分の析出量を抑えるために、オリゴマー成分の含有量が少ないポリエステルを原料としてフィルムを製造してもよい。オリゴマー成分の含有量が少ないポリエステルの製造方法としては、種々公知の方法を用いることができ、例えばポリエステル製造後に固相重合する方法等が挙げられる。
【0021】
また、ポリエステルフィルムを3層以上の構成とし、ポリエステルフィルムの最外層を、オリゴマー成分の含有量が少ないポリエステル原料を用いた層とすることで、オリゴマー成分の析出量を抑えてもよい。また、ポリエスエルは、エステル化もしくはエステル交換反応をした後に、さらに反応温度を高くして減圧下で溶融重縮合して得てもよい。
【0022】
ポリエステルフィルム中にはフィルムの耐候性の向上、被着体(例えば液晶)などの劣化防止のために、紫外線吸収剤を含有させることも可能である。紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する化合物で、ポリエステルフィルムの製造工程で付加される熱に耐えうるものであれば特に限定されない。
【0023】
紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤があるが、透明性の観点から有機系紫外線吸収剤が好ましい。有機系紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、環状イミノエステル系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系などが挙げられる。耐久性の観点からは環状イミノエステル系、ベンゾトリアゾール系がより好ましい。また、紫外線吸収剤を2種類以上併用して用いることも可能である。
【0024】
本離型フィルムは、基材フィルム(ポリエステルフィルム)がポリエステル層を有し、該ポリエステルフィルムのポリエステル層中には、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することも可能である。粒子を配合する場合、配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。これらの中でも特に少量で効果が出やすいという点でシリカ粒子や炭酸カルシウム粒子が好ましい。
【0025】
また、粒子の平均粒径は、好ましくは0.01~5μmの範囲、より好ましくは0.03~4μm、さらに好ましくは0.05~3.0μm範囲である。平均粒径が上記上限以下であると、フィルムのヘーズが低く抑えられ、かつフィルムの滑り性を備えたフィルムとなる。
【0026】
さらにポリエステルフィルムのポリエステル層中の粒子含有量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは1~8質量%の範囲であり、さらに好ましくは2~8質量%、特に好ましくは3~8質量%である。粒子がない場合、あるいは少ない場合は、フィルムの透明性が高くなり良好なフィルムとなるが、滑り性が低下することを防止するため、塗布層中に粒子を入れることにより滑り性を向上させる等の工夫が必要な場合がある。また、また、粒子含有量が上記上限値以下であると、ヘーズが高くなることがなく、十分なフィルムの透明性を確保できる。
【0027】
使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いることもでき、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0028】
ポリエステル層中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのがよい。
【0029】
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
【0030】
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、好ましくは10~300μm、より好ましくは15~200μm、更に好ましくは25~125μm、最も好ましくは38~75μmである。
【0031】
<ポリエステルフィルムの製造方法>
次にポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。例えば、二軸延伸ポリエステルフィルムを製造する場合、まず先に述べたポリエステル原料を、押出機を用いてダイから溶融押し出しし、溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法や液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70~120℃、好ましくは80~110℃であり、延伸倍率は通常2.5~7倍、好ましくは3.0~6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に、通常70~170℃で、延伸倍率は通常2.5~7倍、好ましくは3.0~6倍で延伸する。引き続き180~270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る方法が挙げられる。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0032】
また、ポリエステルフィルムの製造に関しては同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70~120℃、好ましくは80~110℃で温度コントロールされた状態で機械方向及び幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で通常4~50倍、好ましくは7~35倍、より好ましくは10~25倍である。そして、引き続き、170~270℃の温度で緊張下又は30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
【0033】
<<樹脂層(A)>>
次に本発明における離型フィルムを構成する樹脂層(A)の形成について説明する。
【0034】
樹脂層(A)は、シリコーン樹脂系離型剤を含み、かつ乾燥後の厚みが0.2~2.0μmである。樹脂層(A)の厚みが0.2μm未満となると、後述する通り、樹脂層(A)の弾性率を所定の範囲としても、樹脂層(A)を軽剥離化することが難しい。また、2.0μmより厚くすると、樹脂層(A)成分が粘着テープ等へ移行する移行性の増大をおこす場合や、ブロッキングが十分に防止できない場合がある。
以上の観点から好ましくは0.4~1.5μm、より好ましくは0.4~1.2μm、さらに好ましくは0.4~1.0μmの範囲である。
【0035】
シリコーン樹脂系離型剤としては、硬化型シリコーン樹脂が挙げられ、樹脂層(A)は、硬化型シリコーン樹脂を主成分樹脂とする樹脂層(A)組成物が硬化してなる層であって、上記した基材フィルムの少なくとも片面側に配置される。樹脂層(A)は、樹脂層(A)組成物が硬化してなる硬化物を含有する離型層であるとも言うことができる。
【0036】
なお、上記「主成分樹脂」とは、樹脂層(A)組成物を構成する樹脂の中で最も質量割合の大きい樹脂の意味であり、本樹脂層(A)組成物を構成する樹脂の50質量%以上、或いは75質量%以上、或いは90質量%以上、或いは100質量%を占める場合が想定される。
【0037】
硬化型シリコーン樹脂としては、硬化型シリコーン樹脂を主成分とする樹脂でもよいし、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーン等を使用してもよい。また粘着層がシリコーン粘着剤などである場合はフルオロシリコーン樹脂等を含有することが好ましい。
【0038】
硬化型シリコーン樹脂の種類としては、付加型・縮合型等の熱硬化型や、紫外線硬化型等の電子線硬化型等、既存の何れの硬化反応タイプでも用いることができ、また複数種類の硬化型シリコーン樹脂を併用して使用してもよい。さらに樹脂層(A)を形成する際の硬化型シリコーン樹脂の塗工形態にも特に制限は無く、有機溶剤に溶解している形態、無溶剤の形態、水系エマルジョンの形態の何れであってもよい。
【0039】
無溶剤型の硬化型シリコーンは、溶剤に希釈せずとも塗工できる粘度のシリコーンであり、短いポリシロキサン鎖よりなっており、比較的低分子量のシリコーン樹脂である。
一方、溶剤型の硬化型シリコーンとは、溶剤に希釈しなければ塗工できない程度に粘度の高いシリコーン樹脂であり、無溶剤型の硬化型シリコーンに比べると、比較的高い分子量を有するシリコーンである。
基材フィルムへの密着性が良好となり、且つ、コートムラがない均一なコート外観、且つ、樹脂層(A)の厚みの調整もし易いという観点から、溶剤型硬化型シリコーンであるのが好ましい。
【0040】
本発明で用いるシリコーン樹脂の種類には制限はないが、軽剥離性特性等優れた離型特性の観点から本発明においてはアルケニル基を含む硬化型シリコーン樹脂の使用が好ましい。アルケニル基を含む硬化型シリコーン樹脂は、ジオルガノポリシロキサンとして、下記一般式(1)で示されるものが例示できる。
R(3-a)XaSiO-(RXSiO)m-(R2SiO)n-SiXaR(3-a) ・・・(1)
【0041】
一般式(1)において、Rは炭素数1~10の1価炭化水素基であり、Xはアルケニル基含有の有機基である。aは0~3の整数で1が好ましく、mは0以上であるが、a=0の場合、mは2以上であり、mおよびnは、それぞれ100≦m+n≦20000を満足する数であり、また上記式はブロック共重合体を意味している訳ではない。Rは炭素数1~10の1価炭化水素基であり、具体的には、メちル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、トリル基などのアリール基などが挙げられるが、特にメチル基、フェニル基が好ましい。Xはアルケニル基含有の有機基で炭素数2~10のものが好ましく、具体的にはビニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、アクリロイルプロピル基、アクリロイルメチル基、メタクリロイルプロピル基、シクロヘキセニルエチル基、ビニルオキシプロピル基等が挙げられるが、特にビニル基、ヘキセニル基などが好ましい。具体的に例示すると、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位96モル%、メチルヘキセニルシロキサン単位4モル%)、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位97モル%、メチルヘキセニルシロキサン単位3モル%)、分子鎖両末端ジメチルヘキセニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位95モル%、メチルヘキセニルシロキサン単位5モル%)が挙げられる。
【0042】
次にアルケニル基を含む硬化型シリコーン樹脂と反応し、より強固なシリコーン離型層を形成するために必要な、SiH基を含有するポリオルガノシロキサンとしては、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個、好ましくは3個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンで、直鎖状、分岐状、環状のものなどを使用することができ、下記一般式(2)で表される化合物を挙げることができるが、これらのものには限定されない。
HbR1
(3-b)SiO-(HR1SiO)x-(R1
2SiO)y-SiR1
(3-b)Hb ・・・(2)
【0043】
一般式(2)において、R1は炭素数1~6の脂肪族不飽和結合を含有しない1価炭化水素基である。bは0~3の整数、x,yはそれぞれ整数である。具体的に例示すると、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体が挙げられる。
【0044】
次に本発明に用いることが可能な市販されている様々なタイプのシリコーン樹脂の具体例を挙げると、信越化学工業(株)製として、KS-774、KS-775、KS-778、KS-779H、KS-847H、KS-856、X-62-2422、X-62-2461、X-62-1387、X-62-2888L、X-62-5039、X-62-5040、KNS-3051、X-62-1496、KNS320A、KNS316、X-62-1574A/B、X-62-7052、X-62-7028A/B、X-62-7619、X-62-7213、X-41-3035、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製として、YSR-3022、TPR-6700、TPR-6720、TPR-6721、TPR6500、TPR6501、UV9300、UV9425、XS56-A2775、XS56-A2982、UV9430、TPR6600、TPR6604、TPR6605、東レ・ダウコ-ニング(株)製として、SRX357、SRX211、SD7220、SD7292、LTC750A、LTC760A、LTC303E、SP7259、BY24-468C、SP7248S、BY24-452、DKQ3-202、DKQ3-203、DKQ3-204、DKQ3-205、DKQ3-210、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製のDEHESIVEシリーズのうち、DEHESIVE 636、919、920、921、924、929等が例示されるが、これらのものには限定されない。
【0045】
樹脂層(A)は付加型の反応を促進する白金系触媒を用いることが好ましい。本成分としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とオレフィンとの錯体、塩化白金酸とアルケニルシロキサンとの錯体等の白金系化合物、白金黒、白金担持シリカ、白金担持活性炭が例示される。
【0046】
樹脂層(A)における硬化触媒の含有量は、硬化型シリコーン樹脂に対して、金属換算量として、0.5~500質量ppmであるのが好ましく、中でも5質量ppm以上がより好ましく、その中でも10質量ppm以上であることがさらに好ましく、また、300質量ppm以下がより好ましく、200質量ppm以下であるのがさらに好ましい。離型層中の白金系触媒含有量が上記下限値以上であると、十分な剥離力が得られ、硬化反応が十分に進み、コート面状の悪化等の不具合を生じることがない。一方、樹脂層(A)中の白金系触媒含有量が上記上限値以下であると、コスト的に有利であることに加え、反応性が高まりゲル異物が発生する等の工程上の不具合が生じない。
【0047】
また、付加型の反応は非常に反応性が高いため、場合によっては、反応抑制剤としてアセチレンアルコールを添加することがある。その成分は炭素-炭素3重結合と水酸基を有する有機化合物であるが、好ましくは、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オールおよびフェニルブチノールからなる群から選択される化合物である。
【0048】
反応制御剤の含有量は、樹脂層(A)組成物合計量(不揮発成分基準)100質量部あたり、好ましくは0.001~5.0質量部、より好ましくは0.01~2.0質量部、更に好ましくは0.05~1.5質量部、最も好ましくは0.1~0.5質量部である。上記範囲内とすることで、反応活性を低下することなく、硬化型シリコーン樹脂が硬化阻害を受けず、離型フィルムの軽剥離性を担保することができる。
【0049】
離型フィルムを構成する樹脂層(A)には、加水分解・縮合反応促進を目的として、触媒を併用することが可能である。触媒の具体例としては、酢酸、酪酸、マレイン酸、クエン酸などの有機酸類、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸などの無機酸類、トリエチルアミンなどの塩基性化合物類、テトラブチルチタネート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジオレート、ジフェニル錫ジアセテート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジメトキサイド、ジブチルビス(トリエトキシシロキシ)錫、ジブチル錫ベンジルマレート等の有機金属塩類、KF、NH4Fなどのフッ素元素含有化合物などを挙げることができる。上記触媒は単独で使用してもよくあるいは2種類以上を併用してもよい。その中でも、特に塗膜耐久性が良好となる点で有機金属塩類が好ましい。
【0050】
樹脂層(A)の剥離性等を調整するため、各種剥離コントロール剤を併用してもよい。剥離力を重剥離化させる場合は、一般的にオルガノポリシロキサンレジンやシリカ粒子、重剥離力のシリコーン種等を所望の剥離力を得るために樹脂層(A)に適当な含有量調整を行う。
【0051】
市販されている重剥離化剤の具体例を挙げると、信越化学工業(株)製KS-3800、X-92-183、東レダウコーニング(株)製SD7292、BY24-843、BY24-4980が例示される。
【0052】
剥離力を軽剥離化させる場合は、低分子シロキサンを種々選択し、樹脂層(A)に適当な含有量調整を行い、シロキサン移行成分が離型性能を発揮する様にする。低分子シロキサン化合物の例としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。また、これら低分子環状シロキサンの他の化合物としては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー;分子鎖両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー等があり、必要に応じてこれらの化合物は混合して使用してもよい。
【0053】
上記の通り樹脂層(A)組成物は、必要に応じて、軽剥離化剤を含有していてもよく、下記式(3)で示されるジメチルシロキサン骨格(DM)および下記式(4)で示されるメチルフェニルシロキサン骨格(MP)を有するシリコーンオイルが好ましい。軽剥離化剤がジメチルシロキサン骨格(DM)およびメチルフェニルシロキサン骨格(MP)を有することで、貼り合わせる粘着剤層へ移行しても、粘着層内部に侵入することが可能となり、粘着力の低下を軽減できる。下記式(3)で示されるジメチルシロキサン骨格(DM)および下記式(4)で示されるメチルフェニルシロキサン骨格(MP)の比率(DM:MP)は、モル比で98:2~70:30の範囲であることが好ましく、95:5~80:20の範囲であることがさらに好ましく、92:8~85:15の範囲であることが特に好ましい。DM:PMを上記範囲内とすることで、本離型フィルムの剥離性を担保することができる。
また、軽剥離化剤の質量平均分子量は1万未満であることが好ましい。軽剥離化剤の質量平均分子量が1万未満であると移行性および軽剥離性の点で有利である。
【0054】
【0055】
【0056】
これら低分子シロキサン化合物は、移行成分としてシリコーン樹脂中に通常0.1~15.0質量%、好ましくは0.5~10.0質量%、さらに好ましくは0.5~5.0質量%含有することで所望の軽剥離を達成することができる。0.1質量%以上であると、移行性成分が十分であるために離型性が十分発揮され、低分子シロキサンの含有量が、15.0質量%以下であると、移行性成分が過剰に析出することがなく、工程汚染の懸念がない。
【0057】
樹脂層(A)組成物は、必要に応じて、希釈溶剤を含有することができる。希釈溶剤としては、例えば、トルエン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン(MEK)、イソブチルメチルケトン等のケトン類、エタノール、2-プロパノール等のアルコール類、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類などを挙げることができる。これらは、溶解性、塗工性や沸点等を考慮して単独または複数混合して使用するのが好ましい。
【0058】
また、樹脂層(A)には、フィルムとの塗膜密着性を良好とするために下記一般式(5)で表される有機珪素化合物を併用することが好ましい。
Si(X)d(Y)e(R1)f・・・(5)
[上記式中、Xはエポキシ基、メルカプト基、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基、ハロアルキル基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種を有する有機基、R1は一価炭化水素基であり、かつ炭素数1~10のものであり、Yは加水分解性基であり、dは1または2の整数、eは2または3の整数、fは0または1の整数であり、d+e+f=4である]
【0059】
前記一般式(5)で表される有機珪素化合物は、加水分解・縮合反応によりシロキサン結合を形成しうる加水分解性基Yを2個有するもの(D単位源)あるいは3個有するもの(T単位源)を使用することができる。
【0060】
一般式(5)において、一価炭化水素基R1は、炭素数が1~10のもので、特にメチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。
【0061】
一般式(5)において、加水分解性基Yとしては、以下のものを例示できる。すなわち、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソプロペノキシ基、アセトキシ基、ブタノキシム基およびアミノ基等である。これらの加水分解性基は、単独あるいは複数種を使用してもよい。メトキシ基あるいはエトキシ基を適用すると、コーティング材に良好な保存安定性を付与でき、また適当な加水分解性があるため、特に好ましい。
【0062】
樹脂層(A)に含有する有機珪素化合物の具体例として、ビニルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、5-ヘキセニルトリメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン等を例示することができる。
【0063】
樹脂層(A)は、粒子を実質的に含有しないことが好ましい。樹脂層(A)に粒子を実質的に含有しないことで、剥離特性を安定化しつつ、移行性を低くすることができる。なお、実質的に含有しないとは、本発明の効果を阻害しない程度に少量であれば樹脂層(A)が粒子を含有してもよいことを意味し、例えば不可避的に混入される粒子が含まれてもよい。具体的な本樹脂層(A)(A層)における粒子の含有量は、不揮発成分基準で、例えば0.05質量%未満、好ましくは0.01質量%未満、より好ましくは0.0001質量%未満である。なお、不揮発成分基準の本樹脂層(A)組成物における粒子の含有量の範囲も、上記粒子の含有量と同じである。
【0064】
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、樹脂層(A)組成物には必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等が含有されてもよい。
【0065】
硬化型シリコーン樹脂の数平均分子量(Mn)は1000以上1000000以下であるのが好ましい。硬化型シリコーン樹脂の数平均分子量(Mn)を上記下限値以上とすると、離型フィルムに粘着層を積層した際、低分子量のシリコーン樹脂が粘着層へ溶出乃至移行する量を低減させることができ、また、樹脂層(A)を厚塗りすることで軽剥離化効果を得やすくなる。他方、硬化型シリコーン樹脂の数平均分子量(Mn)を上記上限値以下とすると、粘度が高くなって樹脂層(A)組成物の流動性が低下することを防止する。そのため、樹脂層(A)組成物を塗布した際に、筋状のコートムラが生じたりすることを防止して、樹脂層(A)表面を平滑にしやすくなる。
かかる観点から、硬化型シリコーン樹脂の数平均分子量(Mn)は、1000以上であるのが好ましく、中でも3000以上であるのがより好ましく、中でも5000以上がさらに好ましく、その中でも特に10000以上であるのがさらに好ましい。他方、1000000以下であることが好ましく、200000以下であるのがより好ましく、中でも100000以下であることがさらに好ましい。
【0066】
硬化型シリコーン樹脂の質量平均分子量(Mw)は、数平均分子量と同様の観点から、2000~2000000であるのが好ましく、中でも5000以上がより好ましく、中でも10000以上がさらに好ましく、その中でも特に15000以上であることが好ましく、また、250000以下であることがより好ましく、その中でも100000以下であることがさらに好ましい。
【0067】
硬化型シリコーン樹脂は、数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率(Mw/Mn)は、好ましくは1.0~5.0、より好ましくは1.5~3.5、中でも2.0~3.0がさらに好ましい。この範囲を満足することで、架橋反応を効率よく進行させることが期待できる。
【0068】
硬化型シリコーン樹脂は、2種類以上の硬化型シリコーン樹脂の組み合わせからなるものであってもよく、その場合、2種類以上の硬化型シリコーン樹脂の数平均分子量(Mn)及び質量平均分子量(Mw)の平均が上記範囲内であるのが好ましい。なお、ここでいう平均とは、各樹脂の質量により重み付けをした加重平均である。また、硬化型シリコーン樹脂として、主剤とシリコーン架橋剤を使用する場合には、主剤の質量平均分子量(Mn)、数平均分子量(Mw)、Mw/Mnが上記範囲内であるとよい。
【0069】
硬化型シリコーン樹脂は、n-ヘプタン溶媒希釈にて15質量%に調整した際の25℃における粘度は、好ましくは1~400mcps、より好ましくは5~300mcps、更に好ましくは10~200mcpsである。
硬化型シリコーン樹脂の当該粘度が1mcps以上であれば、塗布液の適度な粘度によりハジキが抑制され、視認性の高い均一なコート外観が得られるため好ましく、400mcps以下であれば、樹脂層(A)組成物の流動性を維持することができ、樹脂層(A)組成物を塗布した際に、筋状のコートムラが生じるのを抑制でき、樹脂層(A)表面を平滑にすることができる。
【0070】
硬化型シリコーン樹脂が、シリコーン樹脂中にアルケニル基を有する場合、アルケニル基の含有量は、全シロキサン成分量に対して好ましくは0.4~2.5mol%、より好ましくは、0.5~2.0mol%、更に好ましくは0.5~1.5mol%である。この範囲を満足することで、アルケニル基が一定量以上含有されるため離形層が十分に硬化し、一方でアルケニル基量が過剰にならないことで、空気暴露後の剥離力が重くなることを防止できる。
【0071】
硬化型シリコーン樹脂が、シリコーン樹脂中にSi-H基を有する場合、Si-H基の含有量は、全シロキサン成分量に対して好ましくは0.8~2.5mol%、より好ましくは0.8~2.0mol%、更に好ましくは1.0~2.0mol%である。この範囲を満足することで、Si-H基が一定量以上含有されるため離形層が十分に硬化し、一方でSi-H基量が過剰にならないことで、粘着層と反応することが防止され、離型フィルムの重剥離化が抑制できる。
【0072】
硬化型シリコーン樹脂は、同一構造中にシロキサン結合からなる主鎖の側鎖および/又は末端にアルケニル基及びSi-H基(単に「H基」とも称する。)を含んでいてもよい。その場合、アルケニル基及びSi-H基の含有量が上記範囲内であるのが好ましい。
【0073】
樹脂層(A)の25℃における弾性率は、好ましくは500MPa以下であり、より好ましくは65~400MPa、更に好ましくは80~300MPaである。これら範囲を満足することで、粘着層に対し良好な剥離性を示すことができる。なお、樹脂層(A)の弾性率は、使用するシリコーン樹脂の種類、樹脂層(A)の厚みなどにより調整でき、例えば樹脂層(A)が薄くなると、弾性率が高くなる傾向がある。また、ここでいう弾性率は、ナノインデンターにより測定された値である。
【0074】
樹脂層(A)の常態剥離力は、好ましくは10g/inch以下であり、より好ましくは0.1~5g/inch、更に好ましくは0.5~3g/inchの範囲である。常態剥離力が10g/inch以下となると、光学部材の大型化・薄膜化に伴い弾性率が低くなっている粘着層に対しても、良好な剥離性を示すことができる。一方、常態剥離力が10g/inchを超えると、粘着層から剥離する際に剥離困難になることがあり、粘着層の変形や破断により離型フィルム側へ粘着剤層が転写してしまう場合がある。
【0075】
樹脂層(A)の残留接着率は、樹脂層(A)由来の移行成分が貼り合わせる粘着テープ等へ移行する移行性の指標となるものである。移行性の大きな樹脂層(A)では、重ねた評価フィルムに多くの移行成分が付着するため、その評価フィルムに貼り合わせる粘着テープの剥離力が小さくなり、残留接着率(%)も低下する。そのため、残留接着率(%)は高いことが良く、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。
【0076】
樹脂層(A)のプレス後の重剥離化率は、好ましくは100%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは20%以下である。プレス後重剥離化率が100%以下であれば、本離型フィルムをロール状に巻き取った際、フィルムにより圧力が加わるロールの下巻き部分での樹脂層(A)の重剥離化が小さく抑えられ、重剥離化による不具合を生じない。プレス後の重剥離化率の算定方法は、実施例に記載の通りである。
【0077】
樹脂層(A)の形成については、フィルムの製膜工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用してもよいが、より好ましくはオフラインコーティングにより形成されるものである。
【0078】
フィルムに樹脂層(A)を設ける方法として、リバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
【0079】
本発明における離型フィルムを構成するフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0080】
樹脂層(A)を形成する際の硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、オフラインコーティングにより樹脂層(A)を設ける場合、通常、80℃以上で10秒以上、好ましくは100~200℃で3~40秒間、より好ましくは120~190℃で3~40秒間、更に好ましくは150~180℃で3~40秒間を目安として熱処理を行うのがよい。
【0081】
また、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。なお、活性エネルギー線照射による硬化のためのエネルギー源としては、公知の装置,エネルギー源を用いることができる。例えば、光源として、フュージョン(H)ランプ、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ(オゾン発生タイプ、オゾンレスタイプ)、UV-LEDなどが例示される。
【0082】
活性エネルギー線照射としては特に限定されるわけではないが、紫外線照射である場合、積算光量換算として、10~3000mJ/cm2、好ましくは50~2000mJ/cm2、更に好ましくは100~1000mJ/cm2の範囲がよい。紫外線照射の積算光量換算を上記範囲内とすることで、樹脂層(A)の硬化が促進され、一方で過剰に照射しすぎないことで、樹脂層(A)が破壊されず照射後の剥離力が重くなることを防止できる。
【0083】
本発明の離型フィルムは、樹脂層(A)あるいは樹脂層(B)の少なくとも一方の表面の表面固有抵抗率が1×1012Ω/□以下であることが好ましい。樹脂層(A)又は樹脂層(B)の表面固有抵抗率が低いほど、帯電防止性が良好であり、工程内でのフィルムの帯電を抑え異物等の付着を防止することができる。
【0084】
<<樹脂層(B)>>
本離型フィルムは、樹脂層(A)が設けられていない側のフィルム表面に樹脂層(B)を備えることが好ましい。
本発明における樹脂層(B)に関して、以下に説明する。
【0085】
本発明における離型フィルムを構成する樹脂層(B)は、基材フィルムの樹脂層(A)を設けた面とは反対の表面に設けられ、非シリコーン系離型剤を含む樹脂層(B)であればよく、より好ましくは、非シリコーン系離型剤を含み、かつ帯電防止性能を有する樹脂層(B)であることが好ましい。
【0086】
樹脂層(B)に用いられる非シリコーン系離型剤は、シリコーン化合物を除く離型剤であれば特に制限はなく、従来公知の離型剤を使用することが可能であり、例えば、長鎖アルキル基含有化合物、フッ素化合物、ワックス等が挙げられる。
これらの中でも汚染性が少なく、ブロッキング軽減に優れるという点からは長鎖アルキル化合物やワックスが好ましく、特にブロッキング軽減の観点で長鎖アルキル化合物がより好ましい。これらの離型剤は単独で用いてもよいし、複数種使用してもよい。
【0087】
シリコーン化合物とは、分子内にシロキサン結合を有する化合物のことであり、シロキサン結合からなる主鎖の側鎖および/又は末端に各種の官能基を有するものも含まれる。例えば、エーテル基、水酸基、アミノ基、エポキシ基、カルボン酸基、フッ素等のハロゲン基、パーフルオロアルキル基、炭化水素基(アルキル基、アルケニル基、アリール基、各種芳香族基等)等が挙げられる。樹脂層(B)がシリコーン化合物を含む場合は、樹脂層(A)と強くブロッキングし、樹脂層(A)の表面が変形するなどして樹脂層(A)の剥離特性が悪化するため、本離型フィルムにおいては使用することが困難である。
【0088】
長鎖アルキル基含有化合物とは、炭素数が通常6以上、好ましくは8以上、さらに好ましくは12以上の直鎖または分岐のアルキル基を有する化合物のことである。アルキル基としては、例えば、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基、オクタデシル基、ベヘニル基等が挙げられる。アルキル基を有する化合物とは、例えば、各種の長鎖アルキル基含有高分子化合物、長鎖アルキル基含有アミン化合物、長鎖アルキル基含有エーテル化合物、長鎖アルキル基含有4級アンモニウム塩等が挙げられる。耐熱性、汚染性を考慮すると高分子化合物であることが好ましい。また、効果的に離型性を得られるという観点から、長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物であることがより好ましい。
【0089】
長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物とは、反応性基を有する高分子と、当該反応性基と反応可能なアルキル基を有する化合物とを反応させて得ることができる。上記反応性基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、酸無水物等が挙げられる。これらの反応性基を有する化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリエチレンアミン、反応性基含有ポリエステル樹脂、反応性基含有ポリ(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも離型性や取り扱い易さを考慮するとポリビニルアルコールであることが好ましい。
【0090】
上記の反応性基と反応可能なアルキル基を有する化合物とは、例えば、ヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、デシルイソシアネート、ラウリルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、ベヘニルイソシアネート等の長鎖アルキル基含有イソシアネート、ヘキシルクロライド、オクチルクロライド、デシルクロライド、ラウリルクロライド、オクタデシルクロライド、ベヘニルクロライド等の長鎖アルキル基含有酸クロライド、長鎖アルキル基含有アミン、長鎖アルキル基含有アルコール等が挙げられる。これらの中でも離型性や取り扱い易さを考慮すると長鎖アルキル基含有イソシアネートが好ましく、オクタデシルイソシアネートが特に好ましい。
【0091】
また、長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物は、長鎖アルキル(メタ)アクリレートの重合物や長鎖アルキル(メタ)アクリレートと他のビニル基含有モノマーとの共重合によって得ることもできる。長鎖アルキル(メタ)アクリレートとは、例えば、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0092】
ワックスとは、天然ワックス、合成ワックス、それらの配合したワックスの中から選ばれたワックスである。天然ワックスとは、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、石油ワックスである。植物系ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油等が挙げられる。動物系ワックスとしては、みつろう、ラノリン、鯨ロウ等が挙げられる。鉱物系ワックスとしてはモンタンワックス、オゾケライト、セレシン等が挙げられる。石油ワックスとしてはパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等が挙げられる。合成ワックスとしては、合成炭化水素、変性ワックス、水素化ワックス、脂肪酸、酸アミド、アミン、イミド、エステル、ケトン等が挙げられる。合成炭化水素としては、例えば、フィッシャー・トロプシュワックス(別名サゾワールワックス)、ポリエチレンワックスが挙げられ、このほかに低分子量の高分子(具体的には粘度数平均分子量500から20000の高分子)である以下のポリマー、すなわち、ポリプロピレン、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックまたはグラフト結合体等が挙げられる。変性ワックスとしてはモンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体等が挙げられる。ここでの誘導体とは、精製、酸化、エステル化、ケン化のいずれかの処理、またはそれらの組み合わせによって得られる化合物である。水素化ワックスとしては硬化ひまし油、および硬化ひまし油誘導体が挙げられる。
【0093】
上記ワックスの中でも特性が安定するという観点から、合成ワックスが好ましく、その中でもポリエチレンワックスがより好ましく、酸化ポリエチレンワックスが更に好ましい。合成ワックスの数平均分子量(Mn)としては、ブロッキング等の特性の安定性、取扱い性の観点から、好ましくは500~30000、より好ましくは1000~15000、さらに好ましくは2000~8000の範囲である。
【0094】
フッ素化合物とは、化合物中にフッ素原子を含有している化合物である。インラインコーティングによる塗布外観の点で有機系フッ素化合物が好適に用いられ、例えば、パーフルオロアルキル基含有化合物、フッ素原子を含有するオレフィン化合物の重合体、フルオロベンゼン等の芳香族フッ素化合物等が挙げられる。離型性の観点からパーフルオロアルキル基を有する化合物であることが好ましい。さらにフッ素化合物には後述するような長鎖アルキル化合物を含有している化合物も使用することができる。
【0095】
パーフルオロアルキル基を有する化合物とは、例えば、パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート、パーフルオロアルキルメチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロアルキルエチル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロアルキルプロピル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロアルキル-1-メチルプロピル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロアルキル-2-プロペニル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートやその重合物、パーフルオロアルキルメチルビニルエーテル、2-パーフルオロアルキルエチルビニルエーテル、3-パーフルオロプロピルビニルエーテル、3-パーフルオロアルキル-1-メチルプロピルビニルエーテル、3-パーフルオロアルキル-2-プロペニルビニルエーテル等のパーフルオロアルキル基含有ビニルエーテルやその重合物などが挙げられる。耐熱性、汚染性を考慮すると重合物であることが好ましい。重合物は単一化合物のみでも複数化合物の重合物でもよい。また、離型性の観点からパーフルオロアルキル基は炭素原子数が3~11であることが好ましい。さらに後述するような長鎖アルキル化合物を含有している化合物との重合物であってもよい。また、基材との密着性の観点から、塩化ビニルとの重合物であることも好ましい。
【0096】
樹脂層(B)の形成には、異物等の付着を防止するという観点から、帯電防止剤を含有することが好ましく、例えば、チオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物に、他の陰イオン化合物によりドーピングされた重合体、またはチオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物中に陰イオン基を持ち自己ドープされた重合体、あるいは、アルキルスルホン酸イオンを対イオンとする単量体を成分として含む重合体等を用いることができる。中でも、優れた帯電防止性能が得られる観点から、チオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物を含有することがより好ましい。
【0097】
チオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物としては、チオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物の他の陰イオン化合物によりドーピングされた重合体、または、チオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物中に陰イオン基を持ち自己ドープされた重合体としては、例えば下記式(6)もしくは下記式(7)の化合物を、ポリ陰イオンの存在下で重合して得られるものが例示される。
【0098】
【0099】
上記式(6)中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数が1~20の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基などを表す。
【0100】
【0101】
上記式(7)中、nは1~4の整数を表す。
【0102】
重合時に使用するポリ陰イオンとしては、例えばポリ(メタ)アクリル酸、ポリマレイン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸などが例示される。かかる重合体の製造方法としては、例えば特開平7-90060号公報に示されるような方法が採用できる。
【0103】
本発明においては、上記式(7)の化合物においてnが2であり、ポリ陰イオンとしてポリスチレンスルホン酸を用いたものが好適に用いられる。
【0104】
またこれらのポリ陰イオンが酸性である場合、一部または全てが中和されていてもよい。中和に用いる塩基としてはアンモニア、有機アミン類、アルカリ金属水酸化物が好ましい。
【0105】
アルキルスルホン酸イオンを対イオンとする単量体を成分として含む重合体の具体的な例としては、例えば下記式(8)で示される構成要素を繰返し単位として有する重合体が挙げられる。これらの単独重合体や共重合体、さらに、その他の複数の成分を共重合していても構わない。帯電防止性を向上させる観点から、単独重合体であることが好ましい。
【0106】
【0107】
重合体の構造としては、例えば上記式中で置換基R1が水素原子または炭素数が1~3のアルキル基、R2が-O-または-NH-、R3が炭素数1~6のアルキレン基または式(8)の構造を成立しうるその他の構造、R4、R5、R6が少なくとも1つが水素原子であり、他の置換基は炭素数1~3のアルキル基、またはアルキル基の炭素数が2~3のヒドロキシアルキル基、X-が炭素数1~4のアルキル基を有するアルキルスルホン酸イオンのものが挙げられる。
【0108】
樹脂層(B)の形成には、塗布外観や帯電防止性能を良好にする目的で、ポリヒドロキシ化合物を含むことが好ましい。ポリヒドロキシ化合物としては、ポリグリセリン、及びポリグリセリンへのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる1種以上の化合物またはその誘導体を用いることが好ましい。ポリグリセリンとは、下記一般式(9)で表される化合物である。
【0109】
【0110】
上記式中のnは2以上であり、本発明においては、式中のnは通常2~20、好ましくは3~15、より好ましくは3~12の範囲である。
【0111】
ポリグリセリンへのアルキレンオキサイド付加物とは、上記一般式(9)で表されるポリグリセリンのヒドロキシル基にアルキレンオキサイドを付加重合した構造を有するものである。
【0112】
ここで、ポリグリセリン骨格のヒドロキシル基ごとに、付加されるアルキレンオキサイドの構造は異なっていても構わない。また、少なくとも分子中一つのヒドロキシル基に付加されていればよく、全てのヒドロキシル基にアルキレンオキサイドまたはその誘導体が付加されている必要はない。
【0113】
ポリグリセリンに付加されるアルキレンオキサイドとして好ましいものは、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドである。アルキレンオキサイドのアルキレン鎖が長くなりすぎると、疎水性が強くなり、塗布液中での分散性が悪化し、樹脂層(B)の帯電防止性や透明性が悪化する傾向がある。特に好ましいものはエチレンオキサイドである。また、その付加数は、最終的な化合物としての数平均分子量(Mn)で200~2000の範囲になるものが好ましく、300~1000の範囲がより好ましく、400~900の範囲ものがさらに好ましい。
【0114】
上記ポリグリセリン、またはポリグリセリンへのアルキレンオキサイド付加物は、1種を単独で又は2種以上を複数併用してもよい。
【0115】
樹脂層(B)の形成には、塗布外観や透明性の向上の観点からバインダー成分として従来公知の各種のポリマーを併用することができ、ポリマーの具体例としては、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。樹脂層(B)をより強固にし、ブロッキングを軽減するという観点から、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂を使用することが好ましい。
【0116】
ポリエステル樹脂としては、主な構成成分として例えば、下記のような多価カルボン酸及び多価ヒドロキシ化合物からなるものが挙げられる。すなわち、多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸および、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2-カリウムスルホテレフタル酸、5-ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム塩及びそれらのエステル形成性誘導体などを用いることができる。多価ヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオ-ル、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオ-ル、2-メチル-1,5-ペンタンジオ-ル、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノ-ル、p-キシリレングリコ-ル、ビスフェノ-ルA-エチレングリコ-ル付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコ-ル、ポリプロピレングリコ-ル、ポリテトラメチレングリコ-ル、ポリテトラメチレンオキシドグリコ-ル、ジメチロ-ルプロピオン酸、グリセリン、トリメチロ-ルプロパン、ジメチロ-ルエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロ-ルプロピオン酸カリウムなどを用いることができる。
ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸と多価ヒドロキシ化合物との重縮合物である。上記した化合物の中から、多価カルボン酸及び多価ヒドロキシ化合物それぞれを適宜1つ以上選択し、常法の重縮合反応によりポリエステル樹脂を合成すればよい。また、ポリエステル樹脂は、水分散体としてもよく、その場合、ポリエステル樹脂には適宜親水性官能基などを導入してもよい。
【0117】
ウレタン樹脂とは、ウレタン結合を分子内に有する高分子化合物のことである。通常ウレタン樹脂はポリオールとイソシアネートの反応により作成される。ポリオールとしては、ポリカーボネートポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類が挙げられ、これらの化合物は単独で用いても、複数種用いてもよい。
【0118】
ポリカーボネートポリオール類は、多価アルコール類とカーボネート化合物とから、脱アルコール反応によって得られる。多価アルコール類としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン等が挙げられる。カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等が挙げられ、これらの反応から得られるポリカーボネート系ポリオール類としては、例えば、ポリ(1,6-ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。
【0119】
ポリエステルポリオール類としては、多価カルボン酸(マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等)またはそれらの酸無水物と多価アルコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-ヘキシル-1,3-プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、ジメタノールベンゼン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、アルキルジアルカノールアミン、ラクトンジオール等)の反応から得られるものが挙げられる。
【0120】
ポリエーテルポリオール類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0121】
各種の機能層との密着性を向上させるために、上記ポリオール類の中でもポリカーボネートポリオール類およびポリエステルポリオール類がより好適に用いられる。
【0122】
ウレタン樹脂を得るために使用されるポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が例示される。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。
【0123】
ウレタン樹脂を合成する際に鎖延長剤を使用してもよく、鎖延長剤としては、イソシアネート基と反応する活性基を2個以上有するものであれば特に制限はなく、一般的には、水酸基またはアミノ基を2個有する鎖延長剤を主に用いることができる。
【0124】
水酸基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の脂肪族グリコール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート等のエステルグリコールといったグリコール類を挙げることができる。また、アミノ基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、イソプロビリデンシクロヘキシル-4,4’-ジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1 ,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。
【0125】
本発明におけるウレタン樹脂は、溶剤を媒体とするものであってもよく、好ましくは水を媒体とするものである。ウレタン樹脂を水に分散または溶解させるには、乳化剤を用いる強制乳化型、ウレタン樹脂中に親水性基を導入する自己乳化型あるいは水溶型等がある。特に、ウレタン樹脂の構造中にイオン基を導入しアイオノマー化した自己乳化タイプが、液の貯蔵安定性や得られる塗布層の耐水性、透明性、密着性に優れており好ましい。
【0126】
また、導入するイオン基としては、カルボキシル基、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、第4級アンモニウム塩等、種々のものが挙げられるが、カルボキシル基が好ましい。ウレタン樹脂にカルボキシル基を導入する方法としては、重合反応の各段階の中で種々の方法が取り得る。例えば、プレポリマー合成時に、カルボキシル基を持つ樹脂を共重合成分として用いる方法や、ポリオールやポリイソシアネート、鎖延長剤などの一成分としてカルボキシル基を持つ成分を用いる方法がある。特に、カルボキシル基含有ジオールを用いて、この成分の仕込み量によって所望の量のカルボキシル基を導入する方法が好ましい。例えば、ウレタン樹脂の重合に用いるジオールに対して、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ビス-(2-ヒドロキシエチル)プロピオン酸、ビス-(2-ヒドロキシエチル)ブタン酸等を共重合させることができる。またこのカルボキシル基はアンモニア、アミン、アルカリ金属類、無機アルカリ類等で中和した塩の形にするのが好ましい。特に好ましいものは、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンである。かかるポリウレタン樹脂は、塗布後の乾燥工程において中和剤が外れたカルボキシル基を、他の架橋剤による架橋反応点として用いることが出来る。これにより、塗布前の液の状態での安定性に優れる上、得られる塗布層の耐久性、耐溶剤性、耐水性、耐ブロッキング性等をさらに改善することが可能となる。
【0127】
アクリル樹脂は、アクリル系、メタクリル系のモノマーを含む重合性モノマーからなる重合体である。これらは、単独重合体あるいは共重合体、さらにはアクリル系、メタクリル系のモノマー以外の重合性モノマーとの共重合体のいずれでもよい。また、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタン等)との共重合体も含まれる。例えば、ブロック共重合体、グラフト共重合体である。すなわち、アクリル樹脂は、アクリル変性ポリエステル樹脂や、アクリル変性ポリウレタン樹脂であってもよい。さらには、ポリエステル溶液、またはポリエステル分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にポリウレタン溶液、ポリウレタン分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にして他のポリマー溶液、または分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれ、これらも本明細書では、アクリル変性ポリエステル樹脂や、アクリル変性ポリウレタン樹脂とする。なお、アクリル樹脂において使用される上記したポリエステル、ポリウレタンは、上記したバインダー成分としてのポリエステル、ポリウレタンとして例示されたものから適宜選択して使用できる。
また、アクリル樹脂は、基材フィルムとの密着性をより向上させるために、ヒドロキシル基、アミノ基を含有してもよい。
【0128】
上記重合性モノマーとしては、特に限定はしないが、代表的な化合物として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸のような各種カルボキシル基含有モノマー類、及びそれらの塩;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネートのような各種の水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミドまたは(メタ)アクリロニトリル等のような種々の窒素含有化合物;スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンのような各種スチレン誘導体、プロピオン酸ビニルのような各種のビニルエステル類;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等の種々の珪素含有重合性モノマー類;燐含有ビニル系モノマー類;塩化ビニル、塩化ビリデンのような各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエンのような各種共役ジエン類が挙げられる。
【0129】
樹脂層(B)の強度を向上させるために、架橋剤を併用することも可能である。架橋剤とは従来公知の材料を使用することができ、例えば、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、メラミン化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、有機珪素化合物等が挙げられる。樹脂層(B)の強度を高くするという観点においては、メラミン化合物がより好ましい。また、2種類以上の架橋剤を併用することも可能である。
【0130】
本離型フィルムにおける樹脂層(B)には、フィルムの易滑性を向上させる目的で、粒子を含有することができるが、より好ましい形態は粒子を実質的に含有しないことである。樹脂層(B)に粒子を実質的に含有しないことで、剥離特性を安定化しつつ、離型成分の移行性を低くすることができる。
【0131】
なお、実質的に含有しないとは、本発明の効果を阻害しない程度に少量であれば樹脂層(B)が粒子を含有してもよいことを意味し、例えば不可避的に混入される粒子が含まれてもよい。具体的な樹脂層(B)における粒子の含有量は、不揮発成分基準で、例えば0.05質量%未満、好ましくは0.01質量%未満、より好ましくは0.0001質量%未満である。なお、不揮発成分基準の樹脂層(B)における粒子の含有量の範囲も、上記粒子の含有量と同じである。
【0132】
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、樹脂層(B)には、必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等を含有してもよい。
【0133】
樹脂層(B)において、不揮発成分中における離型剤の含有量は10~70質量%であることが好ましい。離型剤の含有量が10質量%以上であると、良好なブロッキング防止性能が得られる。
樹脂層(B)において、非シリコーン系離型剤として長鎖アルキル基含有化合物を用いる場合、樹脂層(B)組成物中の全不揮発成分に占める割合として、長鎖アルキル基含有化合物は好ましくは5~90質量%、より好ましくは10~70質量%、更に好ましくは20~60質量%、最も好ましくは20~40質量%の範囲である。長鎖アルキル基含有化合物の割合が上記範囲であると、良好なブロッキング防止性能が得られ、ブロッキングによる離型層の剥離特性の変化を軽減することで、よりフィルムに圧力が加わるロールの下巻き部分での離型層の重剥離化を大きく抑制できる。
【0134】
樹脂層(B)において、非シリコーン系離型剤としてワックスを用いる場合、樹脂層(B)中の全不揮発成分に占める割合として、ワックスは好ましくは5~90質量%、より好ましくは10~80質量%、さらに好ましく25~70質量%の範囲である。ワックスの割合が上記範囲であると、良好なブロッキング防止性能が得られ、ブロッキングによる離型層の剥離特性の変化を軽減することで、よりフィルムに圧力がかるロールの下巻き部分での離型層の重剥離化を大きく抑制できる。また、メラミン化合物と組み合わせて用いた場合には、重剥離化が進む場合がある。したがって、ワックスを用いる場合には、架橋剤等との組合せに注意する必要がある。一方、長鎖アルキル基含有化合物は以下のような問題がなく、より好ましいといえる。
【0135】
非シリコーン系離型剤として、ワックスが長鎖アルキル基含有化合物より、架橋剤との組合せによっては、重剥離化率が大きくなる要因(推定)に関しては、以下のように考えられる。
ワックスは撥水性以外にも、撥油性を有する特徴をもつ。それにより、組み合わせるメラミン化合物との相性が悪く、メラミン化合物がさらにはじきやすい状態になる。
一方、本願発明の重剥離化率評価は、高温(40℃)、高湿度(90%RH)下において、水分が介在した状態でプレス処理されるため、ワックスとメラミン化合物を組み合わせた樹脂層(B)表面には凝集物が生成しやすくなり、反対面のシリコーン離型層との接着性を向上させた結果、重剥離化率が大きくなったものと推察される。
上述の通り、従来の非シリコーン系離型剤では注目していなかった、撥油効果にも着目して、離型剤を選択し、樹脂層(B)を備えた、離型フィルムを構成している点に本願発明の特徴がある。
【0136】
樹脂層(B)において、帯電防止剤としてチオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物を用いる場合、樹脂層(B)の全不揮発成分に占める割合として、チオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物は、好ましくは5~50質量%、より好ましくは5~40質量%、更に好ましくは5~30質量%の範囲である。上記範囲であると、良好な帯電防止性が得ることができる。
【0137】
樹脂層(B)において、ポリヒドロキシ化合物は、樹脂層(B)の全不揮発成分に占める割合として、好ましくは10~80質量%、より好ましくは20~70質量%、更に好ましくは30~65質量%の範囲である。上記範囲であると、良好な帯電防止性を得ることができる。
【0138】
樹脂層(B)の全不揮発成分に占める割合として、バインダー成分は好ましくは5~50質量%、より好ましくは5~40質量%、さらに好ましくは5~30質量%の範囲である。バインダー成分の割合が上記範囲であると、樹脂層(B)の強度が良好となり、ブロッキングを軽減することができる。
【0139】
樹脂層(B)の全不揮発成分に占める割合として、架橋剤は、好ましくは5~70質量%、好ましくは10~60質量%、さらに好ましくは15~50質量%の範囲である。架橋剤の割合が上記範囲であると、樹脂層(B)の強度が良好となり、ブロッキングを軽減することができる。
【0140】
<樹脂層(B)の特性>
本発明における樹脂層(B)は、以下の特性を有することができる。
【0141】
本離型フィルムにおける、樹脂層(A)の反対側のフィルム表面、すなわち、樹脂層(B)を備える側のフィルムの平均表面粗さ(Sa(B))は、30nm以上である。Sa(B)が30nm以上であると、離型層を設けたあとにロールの状態で、ブロッキングが発生し難くなる。一方、Sa(B)は60nm以下であることが好ましい。Sa(B)が60nm以下であると、本離型フィルムをロール状に巻き取った際、フィルムの凹凸が離型層に転写することがなく、離型層の剥離特性が維持される。
以上の観点から、Sa(B)は、好ましくは30nm以上55nm以下であり、更に好ましくは35nm以上50nm以下の範囲である。
なお、樹脂層(B)が設けられている場合には、樹脂層(B)のSa(B)が上記範囲であることが好ましい。
【0142】
平均表面粗さ(Sa)とは、面粗さパラメーター(ISO 25178)の一つであり、二次元のRaを三次元に拡張したもので、表面形状曲面と平均面で囲まれた部分の体積を測定面積で割ったものであり、以下の式(i)から求められる。
表面をXY面,高さ方向をZ軸とした時、A:定義された領域(画像全体とする)、Z(x,y):画像点(x,y)の高さ0の面からの高さとすると、以下の式(i)のように表される。
【0143】
【0144】
樹脂層(B)を備える側のフィルム表面の二乗平均平方根粗さ(Sq(B))は、100nm以下であることが好ましい。Sq(B)が100nm以下であると、本離型フィルムをロール状に巻き取った際、フィルムの凹凸が離型層に転写することがなく、離型層の剥離特性が維持される。一方、Sq(B)は40nm以上であることが好ましい。40nm以上であると、離型層を設けたあとにロールの状態で、ブロッキングが発生し難くなる。
以上の観点から、Sq(B)は、より好ましくは40nm以上90nm以下であり、さらに好ましくは40nm以上80nm以下の範囲である。
なお、樹脂層(B)表面の二乗平均平方根粗さ(Sq(B2))も前記範囲を満足することが好ましい。
【0145】
上記式中、Sqとは、二次元のRq(RMS)を三次元に拡張したものであり、これは統計学で標準偏差σを表している。表面形状曲面と平均面との距離を二乗した曲面と,平均面によりはさまれる部分の体積を測定面積で割った後に平方根を求めた二乗平均平方根偏差であり、以下の式(ii)から求めることができる。
【0146】
【0147】
樹脂層(B)を備える側のフィルム表面の表面積比Sdr(B)が3.5×10-2%以上であることが必須である。Sdr(B)が3.5×10-2%以上であると、樹脂層(B)を備える側のフィルム表面に適度に微細な凹凸形状を付与することができる。
以上の観点から、Sdr(B)は、好ましくは4.0×10-2%以上であり、さらに好ましくは4.5×10-2%以上、その中でも特に5.0×10-2%以上がよい。上限に関しては、6.0×10-2%を目安とするのがよい。上限に関しては、5.0×10-1%以下であることが好ましく、2.0×10-1%以下であることが好ましく、その中でも1.0×10-1%以下であることが特に好ましい。
さらに、樹脂層(B)表面の表面積比Sdr(B2)も前記範囲を満足することが好ましい。
なお、表面積比Sdr(B2)はISO 25178によって定義され、これに準じて測定した値である。
【0148】
樹脂層(B)を備える側のフィルム表面の最大山高さ(Sp)は、880nm以上であり、好ましくは900nm以上、さらに好ましくは950nm以上がよい。より好ましくは80nm以下である。最大山高さ(Sp)の上限については特に制限はされないが、離型面へのダメージ低減の観点から、好ましくは1500nm以下、より好ましくは1300nm以下、その中でも特に1100nm以下である。
なお、最大山高さ(Sp)とは、面粗さパラメーター(ISO 25178)の一つであり、表面の平均面からの高さの最大値を表し、以下の式(iii)により表される。
【0149】
【0150】
樹脂層(B)の厚みは、好ましくは0.005~0.25μm、より好ましくは0.008~0.15μm、更に好ましくは0.01~0.10μmである。樹脂層(B)の厚みを0.25μm以下とすることで、本離型フィルムをロール状に巻き取った際に樹脂層(B)中の非シリコーン系離型剤成分が離型層へ移行することが抑えられ、樹脂層(B)の厚みが0.005μm以上であれば、良好なブロッキング防止性を付与できる。なお、樹脂層(B)中には、各種化合物の未反応物、反応後の化合物、あるいはそれらの混合物が存在しているものと推測できる。
【0151】
樹脂層(B)表面の表面固有抵抗率は、好ましくは1×1012Ω/□以下、より好ましくは1×1010Ω/□以下、さらに好ましくは1×108Ω/□以下、最も好ましくはである1×106Ω/□以下である。表面固有抵抗率の下限は特にないが、帯電防止剤のコストを勘案すると1×104Ω/□以上とするのが好ましい。樹脂層(B)の表面固有抵抗率が低いほど、帯電防止性が良好であり、工程内でのフィルムの帯電を抑え異物等の付着を防止することができる。
【0152】
樹脂層(B)の常態剥離力は、好ましくは400~2000g/inch、より好ましくは400~1500g/inch、更に好ましくは400~1000g/inchである。樹脂層(B)の常態剥離力が2000g/inch以下とすることで、良好なブロッキング防止性が付与でき、本離型フィルムをロール状に巻き取った際、フィルムにより圧力が加わるロールの下巻き部分での樹脂層(A)の重剥離化を抑制することができる。
【0153】
樹脂層の表面自由エネルギーは、好ましくは50mN/m以下、より好ましくは40mN/m以下、更に好ましくは30mN/m以下である。樹脂層の表面自由エネルギーが50mN/m以下とすることで、良好なブロッキング防止性が付与でき、本離型フィルムをロール状に巻き取った際、フィルムにより圧力が加わるロールの下巻き部分での離型層(A)の重剥離化を抑制することができる。表面自由エネルギーの詳細は、実施例に記載の通りである。
【0154】
樹脂層(B)の25℃における弾性率は、500MPa以上であることが好ましい。ここでいう弾性率は、ナノインデンターにより測定された値である。弾性率が500MPa以上であると、本離型フィルムをロール状に巻き取った際、フィルムにより圧力が加わるロールの下巻き部分でも樹脂層(A)の重剥離化が生じない。
【0155】
<下引き層>
本離型フィルムは、基材フィルムと樹脂層(A)あるいは樹脂層(B)との間に下引き層を備えることが好ましい。
【0156】
下引き層は、基材フィルムと樹脂層(A)あるいは樹脂層(B)との密着性を向上させる目的で用いられるだけではなく、離型フィルムに各種の機能を付与する目的に用いられる。下引き層としては、例えば、樹脂層(A)上に設けられた粘着剤層などの機能層を剥離する工程における剥離帯電を抑え、異物等の付着を防止するための帯電防止性能、高温長時間で熱処理を行う場合に、ポリエステルフィルムからのオリゴマーの析出を封止するオリゴマー封止性能等が挙げられる。本離型フィルムにおいては、帯電防止性能を有する下引き層であることが好ましい。なお、前記下引き層は、単層であっても、2層以上の構成でも構わない。
下引き層としては、下記化合物(a)~(c)を含有することが好ましい。
(a)チオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物に、他の陰イオン化合物によりドーピングされた重合体、またはチオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物中に陰イオン基を持ち自己ドープされた重合体
(b)ポリヒドロキシ化合物
(c)ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選ばれる1種以上の化合物
【0157】
帯電防止性能を有する下引き層には、帯電防止剤として、例えば上記(a)成分として記載したチオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物に、他の陰イオン化合物によりドーピングされた重合体、またはチオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物中に陰イオン基を持ち自己ドープされた重合体、あるいは、アルキルスルホン酸イオンを対イオンとする単量体を成分として含む重合体を用いることができる。
また、塗布外観や帯電防止性能を良好にする目的で、上記(b)成分を用いることができる。
なお、本離型フィルムにおいては、良好な帯電防止性能を有する観点から、チオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物を含有する下引き層であることがより好ましい。
【0158】
帯電防止性能を有する下引き層の形成には、帯電防止性能を良好にする目的で、前記一般式(9)で示されるポリグリセリン、及びポリグリセリンへのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる1種以上の化合物またはその誘導体を用いることが好ましい。
【0159】
また、帯電防止性能を有する下引き層は、バインダー成分を含有してもよい。バインダーとしては、従来公知の各種のポリマー、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等を使用することができる。これらのうち、上記(c)成分として記載される、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、及びアクリル樹脂が好ましく、特に下引き層の透明性、帯電防止性向上の観点から、ポリウレタン樹脂が好ましい。
これらのバインダー成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0160】
下引き層の強度を向上させるために、架橋剤を併用することも可能である。架橋剤とは従来公知の材料を使用することができ、例えば、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、メラミン化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、有機珪素化合物等が挙げられる。下引き層の強度を高くするという観点においては、メラミン化合物がより好ましい。2種類以上の架橋剤を併用することも可能である。
【0161】
下引き層において、帯電防止剤としてチオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物を用いる場合、下引き層の全不揮発成分に占める割合として、チオフェンまたはチオフェン誘導体からなる化合物は、好ましくは5~50質量%、より好ましくは5~40質量%、更に好ましくは5~30質量%の範囲である。上記範囲であると、良好な帯電防止性が得ることができる。
【0162】
下引き層において、ポリグリセリン、及びポリグリセリンへのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる1種以上の化合物またはその誘導体は、下引き層の全不揮発成分に占める割合として、好ましくは10~80質量%、より好ましくは20~70質量%、更に好ましくは30~65質量%の範囲である。上記範囲であると、良好な帯電防止性を得ることができる。
【0163】
下引き層の全不揮発成分に占める割合として、バインダー成分は好ましくは5~50質量%、より好ましくは5~40質量%、さらに好ましくは5~30質量%の範囲である。バインダー成分の割合が上記範囲であると、下引き層の強度が良好となり、帯電防止性を良好とすることができる。
【0164】
下引き層の全不揮発成分に占める割合として、架橋剤は、好ましくは5~70質量%、好ましくは10~60質量%、さらに好ましくは15~50質量%の範囲である。架橋剤の割合が上記範囲であると、下引き層の強度が良好となり、ブロッキングを軽減することができる。
【0165】
オリゴマー封止性能を有する下引き層には、アルミニウム、チタン、ジルコニウムから選ばれる1種または2種以上の金属元素を含む有機化合物を含有するオリゴマー封止性を有する下引き層を設けてもよい。
【0166】
オリゴマー封止性を有する下引き層は、基材フィルムの上に直接に設けられてもよいし、前記帯電防止性を有する下引き層の上に設けられてもよい。
【0167】
なお、下引き層中には、樹脂組成物の各種化合物の未反応物、反応後の化合物、あるいはそれらの混合物が存在しているものと推測できる。
【0168】
<下引き層の特性>
帯電防止性能を有する下引き層の厚みは、好ましくは0.005μm以上0.25μm以下、より好ましくは0.008μm以上0.15μm以下、さらに好ましくは0.01μm以上0.10μm以下である。下引き層の厚みが上記の範囲内であれば、良好な帯電防止性を付与できる。
【0169】
帯電防止性能を有する下引き層表面の表面固有抵抗率は、好ましくは1×1012Ω/□以下、より好ましくは1×1010Ω/□以下、さらに好ましくは1×108Ω/□以下、最も好ましくは1×106Ω/□以下である。表面固有抵抗率の下限は特にないが、帯電防止剤のコストを勘案すると1×104Ω/□以上とするのが好ましい。樹脂層(B)の表面固有抵抗率が低いほど、帯電防止性が良好であり、工程内でのフィルムの帯電を抑え異物等の付着を防止することができる。
【0170】
<樹脂層(B)および下引き層の形成方法>
次に樹脂層(B)および下引き層の形成方法について説明する。
【0171】
樹脂層(B)および下引き層の形成は、塗工液をフィルムにコーティングすることにより設けられ、フィルム製造工程内で行うインラインコーティングにより設けられても、また、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、いわゆるオフラインコーティングを採用してもよい。より好ましくはインラインコーティングである。
【0172】
インラインコーティングは、ポリエステルフィルム製造の工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、ポリエステルを溶融押し出ししてから延伸後熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融、急冷して得られる未延伸シート、延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルム、熱固定後で巻き上げ前のフィルムの何れかにコーティングする。
以下に限定するものではないが、例えば逐次二軸延伸においては、特に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルムにコーティングした後に横方向に延伸する方法が優れている。かかる方法によれば、製膜と樹脂層(B)の形成を同時に行うことができるため製造コスト上のメリットがあり、また、コーティング後に延伸を行うために、樹脂層(B)の厚みを延伸倍率により変化させることもでき、オフラインコーティングフィルムに比べ、薄膜コーティングをより容易に行うことができる。また、延伸前にフィルム上に樹脂層(B)を設けることにより、樹脂層(B)をポリエステルフィルムと共に延伸することができ、それにより樹脂層(B)をポリエステルフィルムに強固に密着させることができる。
さらに、二軸延伸ポリエステルフィルムの製造において、クリップ等によりフィルム端部を把持しつつ延伸することで、フィルムを縦及び横方向に拘束することができ、熱固定工程において、しわ等が入らず平面性を維持したまま高温をかけることができる。それゆえ、塗布後に施される熱処理が他の方法では達成されない高温とすることができるために、オフラインコートと比較して樹脂層(B)および下引き層の硬化がより進み、更に強固な塗膜を作ることができる。
【0173】
インラインコーティングによって樹脂層(B)を設ける場合は、上述の一連の化合物を水溶液または水分散体として、固形分濃度(全不揮発成分)が0.1~50質量%程度を目安に調整した樹脂層(B)組成物をポリエステルフィルム上に塗布する要領にて基材フィルムを製造するのが好ましい。
【0174】
フィルムに樹脂層(B)組成物、あるいは下引き層組成物を塗布する方法としては、例えば、エアドクターコート、ブレードコート、ロッドコート、バーコート、ナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファロールコート、グラビアコート、キスロールコート、キャストコート、スプレイコート、カーテンコート、カレンダコート、押出コート等従来公知の塗布方法を用いることができる。
【0175】
フィルム上に樹脂層(B)および下引き層を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては、特に限定されるわけではなく、インラインコーティングにより樹脂層(B)を設ける場合、好ましくは、70~270℃で3~200秒間、より好ましくは100~260℃、さらに好ましくは110~250℃で、10~100秒を目安として熱処理を行うのがよい。
【0176】
一方、例えば、オフラインコーティングにより樹脂層(B)を設ける場合、好ましくは、80~200℃で3~40秒間、より好ましくは100~180℃で3~40秒間を目安として熱処理を行うのがよい。
【0177】
オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本発明における離型フィルムを構成するフィルムにはあらかじめ、コロナ処理 、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0178】
<<粘着シート>>
本発明における離型フィルムは、積層構成としてもよく、本離型フィルムと、粘着層を介して、他の離型フィルムを備えた粘着シート(以下「本粘着シート」と記載することがある。)が好適に挙げられる。
好ましい形態としては、本離型フィルムの樹脂層(A)側の面に粘着層を積層した形態が挙げられる。より好ましい形態としては、本離型フィルムを第一離型フィルムとし、本離型フィルムの樹脂層(A)側に粘着層、本離型フィルムの樹脂層(A)が貼り合わされた粘着層の他方の面に本離型フィルムとは剥離力の異なる離型フィルムを第二離型フィルムとし、貼り合わされたものが挙げられる。さらに好ましい形態としては、粘着層が光学用透明粘着シート(OCA)であり、本離型フィルムを剥離力の軽い側の離型フィルムとして使用し、貼り合わされたものが挙げられる。なお、粘着層は、単層であっても、2層以上の構成であってもよい。
また、上記「本離型フィルムとは剥離力の異なる離型フィルム」とは、実施例に記載の通りの測定方法で評価した離型フィルムの剥離力が本離型フィルムの樹脂層(A)側の剥離力とは異なることを意味する。また、本離型フィルムとは剥離力の異なる離型フィルムとしては、本離型フィルムの樹脂層(A)の剥離力より大きいことが好ましく、具体的には、剥離力が1.5~10倍のものが好ましく、1.5~8倍のものがより好ましく、1.5~6倍程度のものが更に好ましい。前記剥離力を満足することで、本離型フィルムの樹脂層(A)が本来剥離する必要のない場面において剥離する不具合を低減することができる。
【0179】
<粘着層>
粘着層に関して、以下に説明する。
粘着層は、粘着剤組成物からなる層であり、アクリル系樹脂を主成分樹脂とするアクリル系粘着剤組成物であっても、ゴムを主成分とするゴム系粘着剤組成物であっても、ウレタン系樹脂を主成分とするウレタン系粘着剤組成物であっても、シリコーン樹脂を主成分とするシリコーン系粘着剤組成物であってもよい。中でも、粘着剤組成物は、粘着力と剥離力をバランス良く調整することができ、且つ、安価である点から、アクリル系樹脂を主成分とするアクリル系粘着剤組成物が好ましい。
なお、上記「主成分樹脂」とは、粘着剤組成物を構成する樹脂の中でも最も質量割合の高い樹脂を意味する。例えば、粘着剤組成物を構成する樹脂全量の50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上を占める成分を意味する。なお、上限としては100質量%であるが、通常99.99質量%である。
【0180】
(アクリル系樹脂)
粘着剤組成物の主成分樹脂であるアクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル系重合体を挙げることができる。
(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主な構成単位とする重合体である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸4-t-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタエニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル等を挙げることができる。これらは1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル系重合体を構成する他の(メタ)アクリレートとの相溶性、硬化樹脂層(B)(B)の耐熱性の点から、(メタ)アクリル酸メチルが好ましい。(メタ)アクリル系重合体を形成する単量体中における(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有割合は、例えば50質量%以上であるが、好ましくは60~99.99質量%、より好ましくは75~98.9質量%、さらに好ましくは87~97.8質量%である。なお、(メタ)アクリル系重合体はラジカル重合可能な二重結合を有するものであってもよい。
【0181】
(メタ)アクリル系重合体は、ガラス転移温度、機械物性、相溶性等を良好にすることを目的として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、その他ビニル基を有する化合物を共重合することができる。
共重合成分として使用できる前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、後述する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸γ-ブチロラクトン等を挙げることができる。
前記ビニル基を有する化合物としては、ジメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のアクリルアミド系化合物、スチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン等のスチレン系化合物、無水マレイン酸等を挙げることができる。
また、これら以外の後述する(a1)成分、(a2)成分も適宜使用することができる。
【0182】
本発明において、(メタ)アクリル系重合体を構成する単量体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに加えて、共重合成分としては、後述する架橋剤との反応点となる点でアクリルモノマー(a1)を含有してもよい。
【0183】
アクリルモノマー(a1)は、その他の共重合成分と共重合されアクリル系樹脂となった際に、架橋構造の反応点となるものであり、後述する架橋剤の含有する官能基と反応しうる官能基を含有するモノマーを用いればよい。このようなアクリルモノマー(a1)としては、例えば、水酸基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、アセトアセチル基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー等を挙げることができる。これらの中でも、架橋剤と効率的に架橋反応ができる点で水酸基含有モノマーが好ましく用いられる。アクリルモノマー(a1)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0184】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性モノマー;ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性モノマー;2-アクリロイロキシエチル2-ヒドロキシエチルフタル酸、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等の1級水酸基含有モノマー;2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有モノマー;2,2-ジメチル2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有モノマーを挙げることができる。
【0185】
上記水酸基含有モノマーの中でも、架橋剤との反応性に優れる点で1級水酸基含有モノマーが好ましく、更には、2-ヒドロキシエチルアクリレートを使用することが、ジ(メタ)アクリレート等の不純物が少なく、製造しやすい点で特に好ましい。
【0186】
なお、本発明で使用する水酸基含有モノマーとしては、不純物であるジ(メタ)アクリレートの含有割合が、0.5質量%以下のものを用いることも好ましく、更に0.2質量%以下、殊には0.1質量%以下のものを使用することが好ましい。水酸基含有モノマーとしては、具体的には、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートなどが特に好ましく、これらは低分子量であるため精製しやすい点で好ましい。
【0187】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0188】
アセトアセチル基含有モノマーとしては、例えば、2-(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート等を挙げることができる。
【0189】
イソシアネート基含有モノマーとしては、例えば、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートやそれらのアルキレンオキサイド付加物等を挙げることができる。
【0190】
グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アリルグリシジル等を挙げることができる。
【0191】
(メタ)アクリル系重合体を構成する単量体中におけるアクリルモノマー(a1)の含有量は、好ましくは0.01~20質量%、更に好ましくは0.1~10質量%、その中でも特に0.2~3質量%である。アクリルモノマー(a1)が上記下限値以上とすると、架橋時の架橋点が適切となるため、架橋後の凝集力が良好となる。また、上記上限値以下とすると、(a1)成分に起因して粘着力が低下することを防止できる。
【0192】
また、(メタ)アクリル系重合体を構成する単量体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(a1)成分に加えて、必要に応じて、共重合成分として、(a1)以外の共重合性モノマー(a2)を含有することもできる。
共重合性モノマー(a2)としては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ化o-フェニルフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、スチレン等の芳香環含有モノマー、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド等のアミド系モノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、イタコン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、アリルアルコール、アクリルクロライド、メチルビニルケトン、N-アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン等を挙げることができる。
【0193】
(メタ)アクリル系重合体を形成する単量体中における共重合性モノマー(a2)の含有割合は、好ましくは0~20質量%、更に好ましくは1~15質量%、その中でも特に2~10質量%であり、共重合性モノマー(a2)の含有量が上記範囲内であると(a2)成分に起因して粘着特性が低下するのを防止できる。
【0194】
粘着剤組成物は、上記主成分樹脂以外、必要に応じて、架橋剤、その他(主成分樹脂及び架橋剤以外)の粘着剤成分を構成する樹脂(例えば、アクリル系樹脂、ゴム、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂)を含有してもよい。
【0195】
(架橋剤)
粘着剤組成物は、その硬化方法に応じて架橋剤を含有することができる。
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、アミン系架橋剤などを挙げることができる。中でも、基材との密着性向上、あるいはアクリル系樹脂との反応性の点で、イソシアネート系架橋剤が好適に用いられる。架橋剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
架橋剤の含有量は、主成分樹脂100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、更に好ましくは0.05~5質量部、その中でも0.1~3質量部である。架橋剤の含有量が上記範囲内であれば、凝集力が不足することもなく、所望する耐久性を得ることができる一方、柔軟性および粘着力が低下するのを防ぐことができる。
【0196】
なお、硬化反応に関して、活性エネルギー線を照射する光硬化による場合は、架橋剤として、粘着剤組成物に多官能(メタ)アクリレートを配合することが好ましい。かかる多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0197】
(その他の粘着剤成分を構成する樹脂)
粘着剤組成物は、上記主成分樹脂、架橋剤以外、必要に応じて、主成分樹脂及び架橋剤以外の粘着剤成分を構成する樹脂(例えば、アクリル系樹脂、ゴム、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂)を含有してもよい。
例えば、ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル、フェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂等の粘着付与剤、シランカップリング剤、帯電防止剤、着色剤、充填剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、機能性色素等の従来公知の添加剤や、紫外線あるいは放射線照射により呈色あるいは変色を起こすような化合物などの添加剤を配合することができる。
これら添加剤の配合量は、粘着剤組成物(不揮発成分基準)全体の10質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは5質量%以下であり、添加剤として分子量が1万よりも低い低分子成分は極力含まないことが耐久性に優れる点で好ましい。
【0198】
<粘着層の形成方法>
粘着層の形成方法は特に限定されず、上記粘着剤組成物を本剥離フィルムの樹脂層(A)上に塗布した後に、適宜乾燥し、硬化などすることで形成してもよい。また、上記粘着剤組成物を基材フィルムあるいは本剥離フィルムとは剥離力の異なる離型フィルム上に塗布し、適宜乾燥し、硬化などした後に、本剥離フィルムとは剥離力の異なる離型フィルムを備えた面とは反対の面に本剥離フィルムの離型層(A層)を貼り合わせることで形成してもよい。
粘着剤組成物は、架橋剤や、主成分樹脂に応じて硬化させればよく、加熱により硬化してもよいし、紫外線などの光照射により硬化してもよい。また、上記粘着剤組成物は、適宜有機溶剤などに希釈したうえで離型層などの上に塗布してもよい。
【0199】
<粘着層の特性>
(粘着層の厚み)
本粘着層の厚みは、特に限定するものではない。例えば、十分な粘着力を付与したり、粘着剤を貼り合わせる基材の凹凸や段差を埋めたりする点から、0.1μm以上であることが好ましく、中でも0.5μm以上、その中でも1μm以上であるのが更に好ましい。その一方、材料の使用効率や透過度、アウトガスの観点から、10000μm以下であるのが好ましく、中でも3000μm以下、その中でも1000μm以下であるのが更に好ましい。
【0200】
(粘着層の弾性率)
本発明において粘着層は、25℃における弾性率が、1×109Pa以下であることが好ましい。ここでいう弾性率は、ナノインデンターにより測定された値である。弾性率が1×109Pa以下となることで、粘着層は段差吸収性が良好となる。これらの観点から、粘着層の弾性率は、より好ましくは1×108Pa以下、さらに好ましくは1×107Pa以下である。また、粘着層の25℃における弾性率は、粘着層形成性の観点から、1×104Pa以上が好ましく、1×105Pa以上がより好ましく、1×106Pa以上がさらに好ましい。
【0201】
<<粘着シートの使用方法>>
本発明の粘着シートは、様々な積層構成として使用できる。例えば、粘着層付き離型フィルムは、粘着層表面に光学部材を貼り合わせたフィルム積層体としてもよい。このようなフィルム積層体は、本離型フィルムを剥がして、露出された粘着層により光学部材を被着体に貼り合わせることで作成することができる。光学部材としては、例えば、偏光板、タッチセンサーなどを挙げることができる。また、自動車に搭載されるタッチパネルなどの車載用光学部材であってもよい。
【0202】
(偏光板)
偏光板の材料および構成は任意であり、例えば、ヨウ素を配向色素として用いた延伸ポリビニルアルコールフィルムに保護フィルムとしてTAC(トリアセチルセルロース)フィルムを積層したものが、この種の偏光板として広く実用化されている。また、偏光板は、表面に、実質的に位相差を有しないハードコート、防眩、低反射、帯電防止などの機能を持つ層構成を有するものであってもよい。
【0203】
(タッチセンサー)
タッチセンサーは、ユーザが画面に表示される画像を指やタッチペンなどで接触する場合、この接触に反応してタッチ地点を把握する部材であり、センサー技術により、静電容量方式、抵抗膜方式、赤外線または超音波などを利用した表面波方式などの方法が例示される。
一般にタッチセンサーは液晶表示パネル、有機ELなどの表示装置に搭載される。
また、近年、ガラス基板の代替として、フレキシブル性に着目して、基材フィルムを用いる傾向にあり、タッチセンサーフィルムを使用することが好ましい。タッチセンサーフィルムは、感知電極の機能を実行するためのパターン化した透明導電層を設けるのが一般的である。
【0204】
<<<語句の説明など>>>
本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
また、画像表示パネル、保護パネル、タッチパネル等のように「パネル」と表現する場合、板体、シート及びフィルムを包含するものである。
【0205】
本発明において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
【実施例0206】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における評価方法は下記のとおりである。
【0207】
(1)ポリエステルの固有粘度の測定方法
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(質量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0208】
(2)平均粒径(d50:μm)の測定方法
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA-CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(質量基準)50%の値を平均粒径とした。
【0209】
(3)樹脂層(A)の膜厚の測定方法
裏面からの反射を抑えるために、あらかじめ、試料フィルムの測定裏面に黒テープ(ニチバン(株)製「ビニールテープVT―50」)を貼った。測定には、分光光度計(日本分光(株)製 紫外可視分光光度計「V-670」)を使用して、波長範囲300~800nmでの絶対反射率を、同期モード、入射角5°、N偏光、レスポンス Fast、データ取得間隔1.0nm、バンド幅10nm、走査速度1000m/minの条件で測定した。この測定で得られたデータと、シリコーンの屈折率を1.43として計算したデータとを比較することで、膜厚を求めた。
【0210】
(4)平均表面粗さの測定
ContourGT-I(Bruker社製)を用いて、樹脂層(A)の反対側のフィルム面の平均表面粗さ(Sa)、最大山高さ(Sp)、二乗平均平方根粗さ(Sq)、表面積比(Sdr)、突起高さごとの突起個数を測定した。
観察モード:VXI
SNR閾値:2
レンズ倍率: 外部:×20 内部:×1
測定視野:316μm(MD方向)×237μm(TD方向)×10視野(MD方向×5、TD方向×2)×同一面内3カ所=2.25mm2
【0211】
(5)硬化型シリコーン樹脂の分子量測定
GPC測定装置を使用して、クロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンを使用した検量線に基づいて数平均分子量(Mn)を求めた。具体的には、測定用の試料4mgを、4mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液100μLをGPC測定装置に注入して測定した。溶離液にはテトラヒドロフラン(T HF)を使用した。分析には東ソー(株)製「Ecosec8320」を使用し、ガードカラムには東ソー(株)製「TSKgel guardcolumn HXL-L」、カラムには東ソー(株)製「TSKgel GMHXL」を4本連結して使用した。また、オーブンの温度は40℃、THF流量1.0mL/分の条件で分析を行い、検出にはRIを用いた。
【0212】
(6)硬化型シリコーン樹脂の組成分析
実施例・比較例で用いた硬化型シリコーン樹脂の組成分析を、400MHz-NMR(Bruker Avance400M)を用いて行った。1H-NMR測定には、溶媒としてCDCl3を用い、ジメチルシロキサンのメチル基に由来するピークを化学シフトの基準として、温度30℃にて行った。
【0213】
(7)樹脂層(A)の常態剥離力の測定
試料フィルムの樹脂層(A)面に、ゴムローラー(2kg)で圧着(2往復)し、粘着テープ(Tesa製「No.7475」)を貼り付けた後、25mm×150mmのサイズにカットし、室温(23℃)にて1時間放置した後の剥離力を測定した。剥離力の測定は、(株)インテスコ製「インテスコモデル2001型」を使用し、引張速度0.3m/minの条件下、試料フィルムを180°で剥離して行った。
【0214】
(8)樹脂層(A)のプレス後重剥離化率(ブロッキング性の代替評価)
実施例及び比較例の離型フィルムの樹脂層(A)面にアクリル系粘着テープ(Tesa製の「No.7475」)を貼り付けた後、25mm×150mmのサイズにカットし、室温にて1時間放置する。引張速度0.3m/minの条件下で180°で剥離した剥離力を(F1)とする。
次に、実施例及び比較例の離型フィルムの樹脂層(A)面に、もう一方の面が対向するように配置し、温度40℃、湿度90%RH、荷重1MPaで20時間プレス処理を行う。処理後の前記樹脂層(A)面に、アクリル系粘着テープ(Tesa製の「No.7475」)を貼り付けた後、25mm×150mmのサイズにカットし、室温にて1時間放置する。引張速度0.3m/minの条件下で180°で剥離した剥離力を(F2)とする。
次式によってプレス後重剥離化率を求め、この時の重剥離化率を耐ブロッキング性の指標とした。なお、耐ブロッキング性は、当該重剥離化率が小さいほど良好であると判断される。
プレス後重剥離率(%)=(F2-F1)/F1×100
【0215】
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
【0216】
<ポリエステル(A)>
ホモポリエチレンテレフタレート(固有粘度=0.65dL/g)
【0217】
<ポリエステル(B)>
ホモポリエチレンテレフタレートに、平均粒径2.7μmのシリカ粒子を0.7質量%配合したマスターバッチ(固有粘度=0.59dL/g)
【0218】
実施例1
ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ40質量%、60質量%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)100質量%を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々290℃で溶融した後、25℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層=1:18:1の吐出量)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、テンターに導き、横方向に120℃で4.5倍延伸し、225℃で熱処理を行ったのち、横方向に2%弛緩し、厚さ50μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0219】
続いて、得られたポリエステルフィルムの片面に、樹脂層(A)として、表2に示す樹脂層(A)の塗布液1を、塗布量(乾燥後)の厚みが0.5μmになるようにNo.4バーを用いてバーコート方式により塗布した後、150℃で30秒乾燥させ、離型フィルムを得た。
表層/中間層の厚みは表3に記載のとおりである。また、上記方法にて測定した物性値を表3に示す。
【0220】
比較例1
ポリエステルフィルムの原料配合および表層/中間層の厚みが異なる以外は実施例1と同様に製造し、離型フィルムを得た。上記方法にて測定した物性値を表3に示す。
【0221】
樹脂層(A)を構成する化合物例は以下のとおりである。
a1:硬化型シリコーン樹脂(シロキサン結合からなる主鎖の側鎖および/又は末端に、ビニル基が導入されたシリコーン樹脂、数平均分子量:10600、n-ヘプタン溶媒希釈にて15質量%に調整した際の25℃における粘度:1.7mcps)
【0222】
硬化型シリコーン樹脂における官能基の含有割合(mol%)は以下の表1に記載のとおりである。
【0223】
【0224】
b1:シリコーン架橋剤(CL750:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製)
c1:付加型白金触媒(CM678:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製)
【0225】
樹脂層(A)を構成する塗布液1は以下の表2に記載のとおりである。
【0226】
【0227】
本発明の離型フィルムによれば、超軽剥離性を実現しながらも、ブロッキングにより離型層の剥離特性が変化しにくい離型フィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。また、本発明の離型フィルム、及びその離型フィルムを備えるフィルム積層体は、超軽剥離性および耐ブロッキング性を両立した特徴を有することから、離型層の剥離特性の変化および樹脂層(A)表面の外観の悪化を嫌う用途に好適であり、例えば、静電容量方式のタッチパネル製造用等、粘着剤層を介して、貼り合わせる各種用途、LCDに用いられる光学部材(偏光板、位相差板、プリズムシート、導電フィルム、樹脂フィルム、ガラス基板など)、有機EL構成部材製造用等、LCD及びPDP等の各種ディスプレイ構成部材製造用のほか、各種粘着剤層保護用途に好適に用いられる。