(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162843
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】作物体の状態推定方法、状態推定プログラム及び状態推定装置
(51)【国際特許分類】
G06T 7/60 20170101AFI20241114BHJP
G06T 7/215 20170101ALI20241114BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20241114BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G06T7/60 110
G06T7/215
A01G7/00 603
H04N7/18 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078772
(22)【出願日】2023-05-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 公開日 令和4年12月1日 公開場所 ビジョン技術の実利用ワークショップ2022のウェブサイト(https://view.tc-iaip.org/view/2022/)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 集会名 情報電気電子工学特別演習(国立大学法人熊本大学大学院自然科学教育部情報電気電子工学専攻での講義) 開催日 令和5年1月23日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 集会名 第4回Life Mechatronics Symposium(LMS)専門委員会 開催日 令和4年12月25日 開催場所 ばんこ旅館(福井県坂井市三国町宿3丁目7-25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 発行者名 公益社団法人 精密工学会 画像応用技術専門委員会 刊行物名 ビジョン技術の実利用ワークショップ2022 予稿集 発行年月日 令和4年12月1日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 集会名 ビジョン技術の実利用ワークショップ2022 開催日 令和4年12月8~9日 開催場所 完全オンライン開催(https://view.tc-iaip.org/view/2022/)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センター「イノベーション創出強化研究推進事業(うち、センシングおよびシミュレーション技術を活用した果菜類の栽培支援ネットワークサービスの社会実装)」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(71)【出願人】
【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】礒▲崎▼ 真英
(72)【発明者】
【氏名】王 蕊
(72)【発明者】
【氏名】杉山 智美
(72)【発明者】
【氏名】本間 優
(72)【発明者】
【氏名】守行 正悟
(72)【発明者】
【氏名】戸田 真志
【テーマコード(参考)】
5C054
5L096
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054FC12
5C054FC13
5C054FE13
5C054HA11
5L096BA08
5L096CA02
5L096DA02
5L096FA52
5L096FA67
5L096FA69
5L096HA04
5L096MA07
(57)【要約】
【課題】作物体が有する新葉の数を自動的に推定する。
【解決手段】画像取得部は、複数の作物体が存在する領域を異なるタイミングで撮影した複数の画像を取得し、動き情報抽出部34は、複数の画像を繋いだ動画からオプティカルフローを求め、領域内における動き情報を抽出する。また、範囲特定部36は、抽出した動き情報の分布に基づいて、領域内における作物体それぞれに対応する範囲を特定し、クラスタ生成部は、範囲ごとに、動き情報それぞれの位置と向きに基づいて動き情報をクラスタリング処理してクラスタを生成する(
図8)。そして、新葉数推定部は、範囲ごとのクラスタの数を作物体それぞれにおける新葉の数と推定する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の作物体が存在する領域を異なるタイミングで撮影した複数の画像を取得し、
前記複数の画像からオプティカルフローを求め、前記領域内における動き情報を抽出し、
抽出した前記動き情報の分布に基づいて、前記領域内における前記作物体それぞれに対応する範囲を特定し、
特定した前記範囲ごとに、前記動き情報それぞれの位置と向きに基づいて前記動き情報をクラスタリング処理してクラスタを生成し、
前記範囲ごとの前記クラスタの数を前記作物体それぞれにおける新葉の数と推定する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする、作物体の状態推定方法。
【請求項2】
前記作物体それぞれにおける前記新葉の数の変化に基づいて、前記作物体それぞれにおける展開葉数を算出する、処理を前記コンピュータが実行することを特徴とする請求項1に記載の作物体の状態推定方法。
【請求項3】
前記クラスタを生成する処理において、前記動き情報のうち動きの大きさが所定以上である動き情報をクラスタリング処理する、ことを特徴とする請求項1に記載の作物体の状態推定方法。
【請求項4】
複数の作物体が存在する領域を異なるタイミングで撮影した複数の画像を取得し、
前記複数の画像からオプティカルフローを求め、前記領域内における動き情報を抽出し、
抽出した前記動き情報の分布に基づいて、前記領域内における前記作物体それぞれに対応する範囲を特定し、
特定した前記範囲ごとに、前記動き情報それぞれの位置と向きに基づいて前記動き情報をクラスタリング処理してクラスタを生成し、
前記範囲ごとの前記クラスタの数を前記作物体それぞれにおける新葉の数と推定する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする、作物体の状態推定プログラム。
【請求項5】
複数の作物体が存在する領域を異なるタイミングで撮影した複数の画像を取得する取得部と、
前記複数の画像からオプティカルフローを求め、前記領域内における動き情報を抽出する抽出部と、
抽出した前記動き情報の分布に基づいて、前記領域内における前記作物体それぞれに対応する範囲を特定する特定部と、
特定した前記範囲ごとに、前記動き情報それぞれの位置と向きに基づいて前記動き情報をクラスタリング処理してクラスタを生成する生成部と、
前記範囲ごとの前記クラスタの数を前記作物体それぞれにおける新葉の数と推定する推定部と、
を備える作物体の状態推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作物体の状態推定方法、状態推定プログラム及び状態推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
農作物(例えばトマト)の生育状態を把握する方法として、展開葉数を把握する方法がある。展開葉数を把握する場合、新葉の数を調査するのが一般的であるが、新葉の数の調査は目視により行うため、手間がかかる。
【0003】
従来、生育特性に基づく分割基準により、画像を複数の分割領域に分割し、分割領域それぞれにおいてオプティカルフローを用いて統計量を算出し、算出した統計量に基づいて生育状態を求める技術が知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1を用いても、新葉の数や展開葉数を自動的に調査することはできない。
【0006】
本発明は、作物体が有する新葉の数を自動的に推定することが可能な作物体の状態推定方法、状態推定プログラム及び状態推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の作物体の状態推定方法は、複数の作物体が存在する領域を異なるタイミングで撮影した複数の画像を取得し、前記複数の画像からオプティカルフローを求め、前記領域内における動き情報を抽出し、抽出した前記動き情報の分布に基づいて、前記領域内における前記作物体それぞれに対応する範囲を特定し、特定した前記範囲ごとに、前記動き情報それぞれの位置と向きに基づいて前記動き情報をクラスタリング処理してクラスタを生成し、前記範囲ごとの前記クラスタの数を前記作物体それぞれにおける新葉の数と推定する、処理をコンピュータが実行する方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の作物体の状態推定方法、状態推定プログラム及び状態推定装置は、作物体が有する新葉の数を自動的に推定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る農業システムの構成を示す図である。
【
図2】カメラが撮影する画像の一例を示す図である。
【
図3】
図1の処理装置のハードウェア構成を示す図である。
【
図5】作物体テーブルのテーブル構造の一例を示す図である。
【
図6】動き情報抽出部が領域Xの動画から抽出した動き情報を模式的に示す図である。
【
図7】範囲特定部の処理を説明するための図である。
【
図8】
図8(a)、
図8(b)は、クラスタ生成部の処理を説明するための図である。
【
図9】
図9(a)は、新葉数推定部の処理について説明するための図であり、
図9(b)は、展開葉数推定部の処理について説明するためのグラフである。
【
図10】処理装置の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、農業システムの一実施形態について、
図1~
図10に基づいて詳細に説明する。
図1には、一実施形態に係る農業システム100の構成が概略的に示されている。本実施形態の農業システム100は、一例として、トマトを栽培する生産者(以下、作業者と呼ぶ)が利用可能なシステムである。
【0011】
農業システム100は、
図1に示すように、状態推定装置としての処理装置10と、撮影装置としての複数のカメラ70と、を備える。処理装置10と各カメラ70は、インターネットやLAN(Local Area Network)などのネットワークに接続されており、処理装置10は、各カメラ70によって撮像された画像を取得することが可能となっている。
【0012】
複数のカメラ70は、圃場(温室等)で栽培されているトマトの株(作物体)の上方に敷設された梁状部材74に、所定間隔をあけて設置(固定)されている。複数のカメラ70それぞれの画角(撮影可能範囲)は固定されており、圃場内の全てのカメラ70によって、圃場内で栽培されている全ての作物体を撮影できるようになっている。
【0013】
各カメラ70は、所定時間ごとに撮影を行い、撮影した画像を処理装置10に送信する。例えば、1つのカメラ70が撮影可能な画像は、
図2に示すような画像である。
【0014】
処理装置10は、作業者が利用可能なPCやスマートフォンなどの情報処理装置であり、圃場に設置されたカメラ70により所定時間間隔で撮影された画像を取得し、取得した画像を用いた情報処理を実行して、圃場内で栽培されている作物体における新葉の数や展開葉数を推定する。また、処理装置10は、推定した結果を表示することで、作業者に提供する。
【0015】
図3には、処理装置10のハードウェア構成が概略的に示されている。
図3に示すように、処理装置10は、CPU(Central Processing Unit)90、ROM(Read Only Memory)92、RAM(Random access memory)94、記憶部(例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)など)96、ネットワークインタフェース97、表示部93、入力部95、及び可搬型記憶媒体用ドライブ99等を備えている。表示部93は、液晶ディスプレイ等を含み、入力部95は、キーボードやマウス、タッチパネル等を含む。これら処理装置10の構成各部は、バス98に接続されている。処理装置10では、ROM92あるいはHDD96に格納されているプログラム(作物の状態推定プログラムを含む)、或いは可搬型記憶媒体用ドライブ99が可搬型記憶媒体91から読み取ったプログラムをCPU90が実行することにより、
図4に示す各部の機能が実現される。なお、
図4の各部の機能は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。
【0016】
図4には、処理装置10の機能ブロック図が示されている。処理装置10においては、CPU90がプログラムを実行することにより、
図4に示すように、取得部としての画像取得部30、動画生成部32、抽出部としての動き情報抽出部34、特定部としての範囲特定部36、生成部としてのクラスタ生成部38、推定部としての新葉数推定部40、展開葉数推定部42、としての機能が実現されている。なお、
図4には、記憶部96等に格納されている画像DB50や作物体テーブル52も図示されている。なお、詳細については後述するが、作物体テーブル52は、一例として
図5に示すようなテーブル構造を有する。
【0017】
画像取得部30は、各カメラ70から送信されてくる画像(画像データ)を取得し、各カメラの識別情報(カメラID)と紐づけて画像データを画像DB50に格納する。
【0018】
動画生成部32は、同一のカメラ70で撮影された所定枚数の画像(所定時間内に撮影された画像)を繋ぎ、動画を生成する。動画生成部32は、生成した動画を動き情報抽出部34に送信する。なお、各カメラで撮影された画像から生成された動画は、圃場内の異なる領域を撮影した動画であると言える。
【0019】
動き情報抽出部34は、動画生成部32が生成した動画(異なる領域の動画)それぞれからオプティカルフローを求め、各領域内における動き情報を抽出する。動き情報抽出部34は、抽出した動き情報を範囲特定部36やクラスタ生成部38に送信する。ここで、オプティカルフローを求める方法としては、例えば、‘B. D. Lucas and T. Kanade (1981), An iterative image registration technique with an application to stereo vision. Proceedings of Imaging Understanding Workshop, pages 121-130’に記載されている方法を採用することができる。
【0020】
図6は、動き情報抽出部34が領域Xの動画から抽出した動き情報を模式的に示す図である。
図6の破線円内を拡大して示す図からわかるように、本実施形態においては、動き情報を矢印(ベクトル)で表現することとし、矢印の向きが動きの方向を示し、矢印の長さが動きの大きさを示すものとする。なお、動き情報は矢印以外で表現してもよい。例えば、動き情報を色分け表示し、色の種類が動きの方向を示し、輝度が動きの大きさを示していてもよい。
【0021】
ここで、本発明者らは、トマトの株において、新しい葉(新葉)が旋回運動など三次元的で極めて複雑な動きをすること、及び新葉以外の葉はほとんど動かないことに着目した。また、本発明者らは、新葉1枚1枚は同じ動きをするが、新葉ごとに異なる動きをするため、同一の動きをしている範囲が1枚の新葉を示していることに着目し、動き情報を利用して、新葉の数や展開葉数を推定することとした。なお、トマトの株(作物体)においては、複数枚(例えば7枚)の小葉をまとめて、1枚の新葉を形成しているが、
図6では、説明及び図示の便宜上、3枚の小葉が1枚の新葉を形成しているものとしている。
【0022】
図4に戻り、範囲特定部36は、動き情報抽出部34が抽出した各領域内(各動画内)における動き情報に基づいて、各領域内に存在する複数の作物体それぞれに対応する範囲を特定する。範囲特定部36は、特定した範囲の情報をクラスタ生成部38に送信する。例えば、
図6の領域Xの動画の場合、範囲特定部36は、
図7において太線枠で示すように、動き情報の分布に基づいて範囲1~4を特定する。そして、範囲特定部36は、これらの範囲1~4に異なる作物体が存在するとみなし、各範囲に存在する作物体に識別情報(作物体ID)1~4を割り当てる。
【0023】
クラスタ生成部38は、範囲特定部36が特定した範囲ごと(作物体ごと)に、動き情報それぞれの位置と向きに基づいて動き情報をクラスタリング処理して、クラスタを生成する。
【0024】
具体的には、クラスタ生成部38は、例えば、
図7の範囲1内に存在する動き情報のうち、大きさが所定未満である動き情報(微小な動き情報)を除去する。また、クラスタ生成部38は、
図8(a)に示すXY座標系において、各動き情報の始点のXY座標と、各動き情報の向きZ(Angle)とを取得し、
図8(b)に示すようなXYZ座標系にプロットする。そして、クラスタ生成部38は、
図8(b)のXYZ座標系上で各点をクラスタリング処理し、破線円で示すようにクラスタを生成する。なお、クラスタリング処理としては、例えばk-means法などを用いることができる。また、クラスタ生成部38は、生成したクラスタの数を特定し、新葉数推定部40に送信する。なお、クラスタ数を特定する方法としては、例えばエルボー法などを用いることができる。
【0025】
新葉数推定部40は、クラスタ生成部38が生成した各範囲内のクラスタの数を各範囲に対応する作物体が有する新葉の数と推定する。新葉数推定部40は、推定した新葉の数を作物体テーブル52に格納する。ここで、作物体テーブル52は、
図5に示すように、作物体IDごとに、栽培開始からの経過日数ごとの新葉の数の推定結果と展開葉数の推定結果とを格納するテーブルである。新葉数推定部40は、例えば、範囲1においてn日目のクラスタ数が3であった場合には、
図9(a)に示すように作物体ID=1の作物体のn日目の新葉の数が3であると推定されるので、その旨を作物体テーブル52に格納する。
【0026】
図4に戻り、展開葉数推定部42は、作物体テーブル52に格納された新葉の数の推移を参照し、いつ何枚の葉が展開したかを推定する。例えば、
図5の作物体ID=1の作物体の新葉の数の変化をグラフに表すと、
図9(b)に示すようになる。この場合、n+3日目とn+4日目の間に新葉の数が1増えているので、展開葉数推定部42は、n+4日目の展開葉数が+1であるという情報を
図5の作物体テーブル52に格納する。
【0027】
(処理装置10の処理について)
次に、処理装置10の処理について、
図10のフローチャートに沿って、説明する。
【0028】
図10の処理が開始されると、まず、ステップS10において、画像取得部30が、画像が送信されてきたか否かを判断する。このステップS10の判断が肯定されると、ステップS12に移行し、画像取得部30は、画像(画像データ)をカメラIDと紐づけて画像DB50に格納する。その後は、ステップS14に移行する。なお、ステップS10の判断が否定された場合には、ステップS12を経ずに、ステップS14に移行する。
【0029】
ステップS14に移行すると、動画生成部32は、所定タイミングになったか否かを判断する。なお、所定タイミングとは、例えば所定時間ごと(1日ごと、半日ごと、1時間ごとなど)のタイミング等であるものとする。なお、所定タイミングは、葉数の変化が確認できるようなタイミング(短すぎず、長すぎないタイミング)であることが好ましい。したがって、所定タイミングを設定する際には、過去に得られた葉数の時間変化を示すデータ等に基づいて適切なタイミングを設定することが好ましい。このステップS14の判断が否定された場合には、ステップS10に戻り、画像取得部30は、画像が送信されてくるたびに画像を画像DB50に格納する処理を繰り返す。一方、ステップS14の判断が肯定された場合には、ステップS16に移行する。
【0030】
ステップS16に移行すると、動画生成部32は、同一領域を撮影した複数の画像から動画を生成する。例えば、直前の一定時間の間に各カメラで撮影された複数の画像をつなぎ合わせて動画を生成する。
【0031】
次いで、ステップS18において、動き情報抽出部34は、圃場内の全領域(各カメラ70が撮影した領域)の中からを未選択の領域を1つ選択する。
【0032】
次いで、ステップS20において、動き情報抽出部34は、選択した領域の動画から動き情報を抽出する。この場合、動き情報抽出部34は、前述したように選択した領域の動画においてオプティカルフローを求め、各領域内における動き情報を抽出する(
図6参照)。
【0033】
次いで、ステップS22において、範囲特定部36は、動き情報の分布から作物体に対応する範囲を特定する。
図6の例では、動き情報の分布具合に基づいて、
図7において太線枠で示すような範囲1~4を特定する。また、範囲特定部36は、範囲1~4それぞれに存在する作物体に作物体ID=1~4を割り当てる。
【0034】
次いで、ステップS24において、クラスタ生成部38は、範囲特定部36が特定した範囲の中から、未選択の範囲を1つ選択する。ここでは、一例として、クラスタ生成部38が、範囲1を選択するものとする。
【0035】
次いで、ステップS26において、クラスタ生成部38は、選択した範囲(範囲1)内の動き情報をクラスタリング処理し、クラスタを生成する。この結果、例えば
図9に示すように3つのクラスタ数が生成されると、クラスタ生成部38は、クラスタ数=3を新葉数推定部40に送信する。
【0036】
次いで、ステップS28において、新葉数推定部40は、クラスタ数を新葉の数と推定する。すなわち、新葉数推定部40は、クラスタ生成部38から範囲1(作物体ID=1)のクラスタ数が3であるという情報を受信すると、作物体ID=1の作物体には、新葉が3枚あると推定する。新葉数推定部40は、推定結果を
図5の作物体テーブル52に格納する。
【0037】
次いで、ステップS30において、展開葉数推定部42は、展開葉数を推定する。例えば、ステップS14の判断が1日ごとに肯定される場合には、前日における作物体ID=1の作物体の新葉の数と、本日の新葉の数とを比較し、新葉の数がm枚増えていれば、新葉が本日m枚展開したと推定する。展開葉数推定部42は、推定結果を
図5の作物体テーブル52に格納する。なお、ステップS14の判断が半日ごとに肯定される場合には、半日前における作物体ID=1の作物体の新葉の数と、現在の新葉の数とを比較し、新葉の数がm枚増えていれば、新葉が半日の間にm枚展開したと推定する。この場合、
図5の作物体テーブル52には、半日ごとの展開葉数が格納される。また、ステップS14の判断が1時間ごとに肯定される場合には、1時間前における作物体ID=1の作物体の新葉の数と、現在の新葉の数とを比較し、新葉の数がm枚増えていれば、新葉が1時間の間にm枚展開したと推定する。この場合、
図5の作物体テーブル52には、1時間ごとの展開葉数が格納される。
【0038】
次いで、ステップS32において、クラスタ生成部38は、全ての範囲を選択済みか否かを判断する。
図7に示す4つの範囲のうち1つでも選択していない範囲がある場合には、ステップS32の判断が否定され、ステップS24に戻る。
【0039】
その後は、ステップS24において範囲2、3、4が順次選択され、ステップS26~S30の処理が繰り返し実行される。これにより、作物体1~4の新葉の数及び展開葉数が推定され、作物体テーブル52に格納されるようになっている。そして、ステップS32の判断が肯定されると、ステップS34に移行する。
【0040】
ステップS34に移行すると、動き情報抽出部34は、全ての領域を選択済みか否かを判断する。すなわち、圃場内の全ての領域(全てのカメラ70)をステップS18において選択したか否かを判断する。このステップS34の判断が否定された場合には、ステップS18に戻り、次の領域について、ステップS18以降の処理が実行されることになる。この場合、次の領域に含まれる範囲に対して作物体ID=5、6、…が割り当てられ、作物体ID=5、6、…の作物体の新葉の数や展開葉数が推定されるようになっている。
【0041】
その後、ステップS34の判断が肯定されると、圃場内の全ての作物体についての新葉の数及び展開葉数の推定が完了したことを意味するので、ステップS10に戻る。そして、これ以降は、上述したステップS10以降の処理が繰り返し実行されるようになっている。
【0042】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によると、画像取得部30は、複数の作物体が存在する領域を異なるタイミングで撮影した複数の画像を取得し(S10)、動き情報抽出部34は、複数の画像を繋いだ動画からオプティカルフローを求め、領域内における動き情報を抽出する(S20)。また、範囲特定部36は、抽出した動き情報の分布に基づいて、領域内における作物体それぞれに対応する範囲を特定し(S22)、クラスタ生成部38は、範囲ごとに、動き情報それぞれの位置と向きに基づいて動き情報をクラスタリング処理してクラスタを生成する(S26)。そして、新葉数推定部40は、範囲ごとのクラスタの数を作物体それぞれにおける新葉の数と推定する(S28)。これにより、本実施形態では、異なる動きをする新葉それぞれが存在する範囲を動き情報をクラスタリング処理することで特定し、クラスタの数を新葉の数と推定するため、新葉の数を自動的に推定することができる。このように新葉の数を自動的に推定することで、作業者は新葉の数を目視で確認する作業を行わなくてもよいため、作業者の作業負担を軽減することができる。
【0043】
また、本実施形態では、展開葉数推定部42は、作物体それぞれにおける新葉の数の変化に基づいて、作物体それぞれにおける展開葉数を推定するので、展開葉数を自動的に、精度よく推定することができる。展開葉数を自動的に精度よく推定できるため、作業者は、作物体の生育を適切に把握することができる。
【0044】
また、本実施形態では、クラスタ生成部38は、動き情報のうち動きの大きさが所定未満の動き情報を除外し、動きの大きさが所定以上である動き情報をクラスタリング処理する。これにより、ノイズを除去して、動き情報を精度よくクラスタリング処理することができ、新葉の数や展開葉数の推定を精度よく行うことが可能となる。
【0045】
なお、上記実施形態では、カメラ70が作物体の上方に設けられ、作物体の上方からカメラ70を用いて撮影した画像を用いて、新葉の数や展開葉数を推定する場合について説明したが、これに限られるものではない。すなわち、新葉が撮影できれば、カメラ70の撮影方向は任意である。例えば、カメラ70は、作物体を横方向から撮影してもよいし、斜め上側から撮影してもよい。また、カメラ70は、作物体を下側から撮影してもよい。
【0046】
なお、上記実施形態では、圃場内に複数のカメラ70が設けられる(固定される)場合について説明したが、これに限られるものではない。カメラ70は、圃場内を移動してもよい。
【0047】
なお、上記実施形態では、カメラ70が画像(静止画)を撮影する場合について説明したが、これに限らず、カメラ70は動画を撮影してもよい。この場合、動き情報抽出部34は、撮影した動画をそのまま用いて、動画から動き情報を抽出してもよい。また、画像取得部30が、動画から複数フレームを取得し、動画生成部32が、複数フレームを繋ぎ合わせて動画を生成し、動き情報抽出部34が、生成された動画から動き情報を抽出してもよい。
【0048】
なお、上記実施形態では、カメラ70が撮影する作物体がトマトの株である場合について説明したが、これに限らず、例えば、トマト以外のナス科の作物体であってもよい。また、ナス科に限らず、その他の農作物や樹木(例えば、ホウレンソウ、レタス、チャなど)のうち、新葉が各々異なる動きをする作物体であってもよい。
【0049】
なお、上記実施形態では、
図10の処理を処理装置10が行う場合について説明したが、これに限らず、処理装置10とネットワーク接続されている情報処理装置(サーバ等)が
図10の処理を行うこととしてもよい。また、複数の情報処理装置が、
図10の処理を分担して処理することとしてもよい。
【0050】
なお、上記実施形態では、カメラ70と処理装置10がネットワーク接続されている場合について説明したが、これに限らず、カメラ70と処理装置10はネットワーク接続されていなくてもよい。この場合、処理装置10は、カメラ70で撮影され、可搬型記憶媒体91(例えば、SDカードなど)に格納された画像を可搬型記憶媒体用ドライブ99から読み取り、上記実施形態と同様の処理(
図10の処理)を実行する。
【0051】
なお、上記の処理機能は、コンピュータによって実現することができる。その場合、処理装置が有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体(ただし、搬送波は除く)に記録しておくことができる。
【0052】
プログラムを流通させる場合には、例えば、そのプログラムが記録されたDVD(Digital Versatile Disc)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの可搬型記憶媒体の形態で販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【0053】
プログラムを実行するコンピュータは、例えば、可搬型記憶媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記憶媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。また、コンピュータは、サーバコンピュータからプログラムが転送されるごとに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。
【0054】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 処理装置(状態推定装置)
30 画像取得部(取得部)
32 動画生成部
34 動き情報抽出部(抽出部)
36 範囲特定部(特定部)
38 クラスタ生成部(生成部)
40 新葉数推定部(推定部)
42 展開葉数推定部
70 カメラ(撮影装置)
100 農業システム