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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162850
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】可燃性ガス希釈システム
(51)【国際特許分類】
   A62C 2/00 20060101AFI20241114BHJP
   A62C 3/16 20060101ALI20241114BHJP
   A62C 35/02 20060101ALI20241114BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20241114BHJP
【FI】
A62C2/00 A
A62C3/16 C
A62C35/02 A
H01M8/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078786
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 裕太
(72)【発明者】
【氏名】下田 英介
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 成輝
(72)【発明者】
【氏名】前田 哲彦
【テーマコード(参考)】
2E189
5H127
【Fターム(参考)】
2E189BA03
2E189BB08
2E189GA05
5H127AC02
5H127DB96
5H127DC91
5H127EE27
5H127FF20
(57)【要約】
【課題】可燃性ガス燃焼の危険性を低くし易く、高い安全性や高い信頼性を実現し易い、可燃性ガス希釈システムを提供すること。
【解決手段】可燃性ガス希釈システム1は、水素を検知する検知センサ20と、検知センサ20からの出力に基づいて窒素を噴霧する噴霧装置30と、を備える。噴霧装置30は、水素の濃度を希釈するように局所的に窒素を噴霧することが可能でもよい。検知センサ20及び噴霧装置30における窒素の噴霧口47が空間10内に設置され、噴霧装置30が噴霧した窒素によって空間10内のガスが排気可能でもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性ガスを検知する検知センサと、
前記検知センサからの出力に基づいて不活性ガスを噴霧する噴霧装置と、を備える、可燃性ガス希釈システム。
【請求項2】
前記噴霧装置は、前記可燃性ガスの濃度を希釈するように局所的に前記不活性ガスを噴霧することが可能である、請求項1に記載の可燃性ガス希釈システム。
【請求項3】
前記検知センサ及び前記噴霧装置における前記不活性ガスの噴霧部が空間内に設置され、
前記噴霧装置が噴霧した前記不活性ガスによって前記空間内のガスが排気可能になっている、請求項1又は2に記載の可燃性ガス希釈システム。
【請求項4】
前記噴霧装置が、前記不活性ガスを噴霧することで消火を行う消火装置に含まれる、請求項1又は2に記載の可燃性ガス希釈システム。
【請求項5】
前記検知センサ及び前記噴霧装置における前記不活性ガスの噴霧部が空間内に設置され、
前記可燃性ガスは、空気よりも軽く、
前記検知センサは、前記空間の天井に設置され、
前記噴霧装置の1以上の噴霧口が、前記空間の天井に設置されて前記不活性ガスを案内する経路に設けられる、請求項1又は2に記載の可燃性ガス希釈システム。
【請求項6】
前記可燃性ガスは、水素であり、
前記不活性ガスは、窒素である、請求項5に記載の可燃性ガス希釈システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可燃性ガス希釈システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水素ステーションとしては、特許文献1に記載されているものがある。この水素ステーションは、水素を圧縮する水素圧縮装置、水素圧縮装置を取り囲むように配置される防音カバー、及び防音カバー内のガスを換気するファンを備える。この水素ステーションは、ファンを駆動することで、防音カバー内に漏れた水素を防音カバー外に排気することで、可燃性を有する水素が防音カバー内に滞留することを抑制し、安全性が向上するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-132876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ファンで可燃性ガスを換気する場合、ファンの駆動源となるモーターやスイッチで発生した火花等が引き金となって可燃性ガスが燃焼する虞がある。係る背景において、漏れた可燃性ガス燃焼の危険性を低くできれば、高い安全性や高い信頼性を実現できる。そこで、本開示の目的は、可燃性ガス燃焼の危険性を低くし、高い安全性や高い信頼性を実現した、可燃性ガス希釈システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本開示に係る可燃性ガス希釈システムは、可燃性ガスを検知する検知センサと、前記検知センサからの出力に基づいて不活性ガスを噴霧する噴霧装置と、を備える。
【0006】
本開示によれば、可燃性ガスを検知する検知センサからの出力に基づいて噴霧装置が不活性ガスを噴霧(噴射)するので、不活性ガスの噴霧によって可燃性ガスを拡散させたり、希釈することで、可燃性ガスの濃度を可燃性ガスが燃焼する虞がない濃度まで下げることができる。また、ファンを用いる場合と比較して、ファンの駆動源となるモーターを用いることがないため、モーター内で発生した火花が引き金となって可燃性ガスが燃焼することもない。よって、可燃性ガス燃焼の危険性を低くし、高い安全性や高い信頼性を実現することができる。
【0007】
また、前記噴霧装置は、前記可燃性ガスの濃度を希釈するように局所的に前記不活性ガスを噴霧してもよい。
【0008】
可燃性ガスの濃度が局所的に高くなることがある。本構成によれば、可燃性ガスの濃度が局所的に高くなっている場合に、可燃性ガスの濃度の効率的な希釈を実現できると共に、不活性ガスの噴霧量を低減できる。
【0009】
また、前記検知センサ及び前記噴霧装置における前記不活性ガスの噴霧部が空間内に設置され、前記噴霧装置が噴霧した前記不活性ガスによって前記空間内のガスが排気可能になっていてもよい。
【0010】
本構成によれば、空間内のガスの排気に基づいて空間内の可燃性ガスの濃度を低減できる。したがって、可燃性ガス燃焼の危険性を更に低くでき、安全性や信頼性を更に高くできる。
【0011】
また、前記噴霧装置が、前記不活性ガスを噴霧することで消火を行う消火装置に含まれてもよい。
【0012】
本構成によれば、不活性ガスを噴霧することで消火を行う既存の消火装置に含まれる不活性ガスの噴霧装置を利用して可燃性ガス希釈システムを格段に容易かつ安価に構築できる。
【0013】
また、前記検知センサ及び前記噴霧装置における前記不活性ガスの噴霧部が空間内に設置され、前記可燃性ガスは、空気よりも軽く、前記検知センサは、前記空間の天井に設置され、前記噴霧装置の1以上の噴霧口が、前記空間の天井面に沿うように設置されて前記不活性ガスを案内する経路に設けられてもよい。
【0014】
本構成によれば、空気よりも軽い可燃性ガスの濃度を効果的に希釈でき、可燃性ガス希釈システムが設置された施設の安全性が高くなる。
【0015】
また、前記可燃性ガスは、水素でもよく、前記不活性ガスは、窒素でもよい。
【0016】
本構成によれば、水素を用いた施設に、安価な窒素を用いた可燃性ガス希釈システムを構築できる。
【発明の効果】
【0017】
本開示に係る可燃性ガス希釈システムによれば、可燃性ガス燃焼の危険性を低くし、高い安全性や高い信頼性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示の一実施形態に係る可燃性ガス希釈システムの概略構成図である。
図2】可燃性ガス希釈システムの制御装置が空間内での水素の燃焼を抑制するために行う制御の一例を示すフロ―チャートである。
図3】可燃性ガス希釈システムの制御装置が空間内での水素の燃焼を抑制するために行う制御の他の例を示すフロ―チャートである。
図4】変形例の可燃性ガス希釈システムにおいて天井に設置された複数の水素検知センサを鉛直下方から見たときの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本開示に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜、組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。また、以下の実施例では、図面において同一構成に同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下で説明される構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素であり、必須の構成要素ではない。
【0020】
図1は、本開示の一実施形態に係る可燃性ガス希釈システム1の概略構成図である。図1を参照して、可燃性ガス希釈システム1は、可燃性ガスの一例としての水素ガス(以下、単に水素という)が漏れる虞がある装置5が配置された空間10内で水素が燃焼することを抑制するものである。空間10は、鉛直上方に設けられた天井11と、天井11と空間10を介して対向するように鉛直下方に設けられた床12と、天井11と床12を接続し、空間10を取り囲むように設けられた壁18と、によって、外部と隔てられている。装置5は、例えば、水素吸蔵合金を用いた水素貯蔵装置や、水素を生成する水素生成装置等である。
【0021】
可燃性ガス希釈システム1は、水素を検知する複数の検知センサ20、及び不活性ガスの一例としての窒素ガス(以下、単に窒素という)を噴霧(噴射)する噴霧装置30を備える。検知センサ20は、空間10の天井11に設置される。検知センサ20は、天井11に固定手段、例えば、接着剤や締結手段を用いて直接固定されてもよい。又は、検知センサ20は、天井11に取り付けられた天井取付部材に固定され、天井11に間接的に固定されてもよい。複数の検知センサ20の詳しい設置位置については後で説明する。
【0022】
噴霧装置30は、窒素を供給する供給装置35と、供給装置35の供給口に接続され、窒素を案内する経路40を含む。図1に示す例では、供給装置35は、1以上の窒素のボンベ32で構成され、空間10の床12に配置される。なお、窒素を供給する供給装置は、窒素を供給できる如何なる装置で構成されてもよく、例えば、空気を原料に窒素を生成する生成部と、生成した窒素を吐出する吐出部とを有する窒素の生成装置で構成されてもよい。
【0023】
経路40は、供給装置35の1以上の供給口に繋がる上流側経路25と、上流側経路25の下流側に設けられ、複数の系統へ窒素を供給可能とする分岐経路24と、分岐経路24に繋がり、噴霧口47へ窒素を供給する複数の下流側経路43と、を有する。経路40は、空間10内に配置されている。空間10は、壁18などに設けられた換気口15を介して、空間外のスペースに連通可能とされている。図1に示す例では、空間10は、直方体の空間であり、換気口15は、空間10の長手方向に対向する一対の壁18aの一方に設けられている。
【0024】
分岐経路24は、一方向に沿って延びる主経路24aと、主経路24aに一方向に間隔をおいて繋がると共に鉛直方向(鉛直方向に傾斜する方向でもよい)に延びる複数の副経路24bを含む。主経路24aにおいて隣り合う副経路24bが接続する2つの接続部の間に位置して隣り合う副経路24bを連結する連結経路は、制御弁45を有する。また、各副経路24bも、制御弁45を有する。
【0025】
複数の下流側経路43は、複数の副経路24bと一対一に対応し、各下流側経路43は、1つの副経路24bに繋がる。複数の下流側経路43は、互いに換気口15からの距離が異なるように一方向に間隔をおいた状態で天井11に沿うように設置される。なお、図1に示す例では、一方向が、直方体の空間10の長手方向に一致しているが、空間10は、直方体の空間以外の如何なる形状の空間でもよくて、例えば、円柱状の空間等でもよく、一方向は、空間10の長手方向に限らない。
【0026】
下流側経路43は、端を有さない環状経路43aでもよく、1以上の端を有する経路43bでもよく、又は、1以上の環状経路と、1以上の端を有する1以上の経路とが繋がった経路でもよい。下流側経路43は、それぞれ1以上の噴霧口47を有する。各下流側経路43が互いに間隔をおいて位置する複数の噴霧口47を有することが好ましく、更には、複数の噴霧口47が略等間隔に設けられることが好ましい。図1に示す例にように、各副経路24bが、それに含まれる制御弁45よりも下流側経路43側に噴霧口47を有してもよい。
【0027】
各下流側経路43には、その下流側経路43からの窒素噴霧動作に関係する1以上の検知センサ20が紐づけられる。例えば、下流側経路43は、環状経路43aで構成される場合には、鉛直方向下側から見た平面図において、環状経路43aで囲まれた箇所に1以上の検知センサ20が設置されてもよい。そして、当該1以上の検知センサ20の検知結果に基づき、環状経路43aの窒素噴霧動作を行うものとしてもよい。
【0028】
又は、下流側経路43は、鉛直方向下側から見たときの平面図で略U字形状を有する経路43bの場合、鉛直方向下側から見た平面図において、経路43bで三方が囲まれた領域に1以上の検知センサ20が設置されてもよい。そして、当該1以上の検知センサ20の検知結果に基づき、経路43bの窒素噴霧動作を行うものとしてもよい。
【0029】
噴霧装置30は、更に弁制御装置50を備える。弁制御装置50は、空間10内に設置されてもよく、空間10外に設置されてもよい。弁制御装置50は、可燃性ガス希釈システム1が備える各制御弁45の開閉をそれ以外の制御弁45と無関係に制御できるようになっている。可燃性ガス希釈システム1が備える複数の制御弁45の夫々は、識別可能になっており、可燃性ガス希釈システム1が備える複数の検知センサ20の夫々も識別可能になっている。弁制御装置50は、1以上の検知センサ20の検知結果に基づいて各制御弁45の開閉制御を行うようになっている。
【0030】
弁制御装置50は、通信部51と、制御装置52を備える。通信部51は、各検知センサ20からの検知結果(信号)を有線又は無線で受信可能にすると共に各制御弁45に有線又は無線で開閉指示(信号)を送信可能にするインターフェースで構成される。また、制御装置52は、コンピュータ、例えば、マイクロコンピュータによって好適に構成され、制御部53と、記憶部54を含む。
【0031】
制御部53、すなわち、プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む。また、記憶部54は、ハードディスクドライブ(HDD)や、ソリッドステートドライブ(SSD)等で構成され、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリや、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリを含んでもよい。
【0032】
記憶部54は、一つのみの記憶媒体で構成されてもよく、複数の異なる記憶媒体で構成されてもよい。CPUは、記憶部54に予め記憶されたプログラム等を読み出して実行する。また、不揮発性メモリは、制御プロラムや所定の閾値等を予め記憶する。また、揮発性メモリは、読み出したプログラムや処理データを一時的に記憶する。
【0033】
弁制御装置50は、施設に設置された複数の機器を管理する情報処理装置に含まれてもよい。弁制御装置50は、検知センサ20及び制御弁45と無線通信する場合、可燃性ガス希釈システム1の設置の自由度を高くできる。
【0034】
図2は、制御装置52が空間10内での水素の燃焼を抑制するために行う制御の一例を示すフロ―チャートである。なお、以下の説明では、下流側経路43がN個存在する場合について説明する。以下では、複数の下流側経路43は、換気口15から近い順に、第1下流側経路43、第2下流側経路43、・・・、第N下流側経路43と、第1番目から第N番目まで順次、番号を付し、説明する。また、第1下流側経路43に対応する検知センサ20を第1検知センサ20、第2下流側経路43に対応する検知センサ20を第2検知センサ20、・・・、第N下流側経路43に対応する検知センサ20を第N検知センサ20と、第1番目から第N番目まで下流側経路43に対応する検知センサ20に同一の番号を付している。
【0035】
可燃性ガス希釈システム1の制御装置52は、初期状態として全ての制御弁45を閉じた状態にする。そして、可燃性ガス希釈システム1が備える、N個の下流側経路43において、変数KをNとして設定し、順繰りに制御をスタートする。具体的には、ステップS1では、K番目の第K検知センサ20、つまりスタート時は変数KをNとして設定しているため、N番目の第N検知センサ20が所定濃度以上の水素を検知したか否かを制御装置52は判定する。ここで、所定濃度は、例えば、水素の爆発下限濃度の1/4等に設定することができる。
【0036】
ステップS1で所定濃度以上の水素を検知した場合(Y:Yes)、ステップS2に移行して、制御装置52は、K番目のグループの第K下流側経路43、つまりスタート時はN番目のグループの第N下流側経路43から窒素を所定時間噴霧する制御を行う。この制御は、例えば、換気口15から最も離れている第N下流側経路43から窒素を噴霧する場合、制御装置52は、供給装置35から第N下流側経路43の噴霧口47に至る経路に設けられたすべての制御弁のみ、この場合では制御弁VN-1のみを開制御し、それ以外の制御弁45を閉制御する。
【0037】
続くステップS3では、制御装置52は、Kに代入されている値が1であるか否かを判定する。ステップS3で、否定判定されると、ステップS4に移行して、制御装置52が、Kに代入されている値を1小さくし、その後、ステップS2以下を繰り返す。他方、ステップS3で肯定判定されると、制御装置52は、スタートに戻り、制御処理を繰り返す。
【0038】
一方、ステップS1で否定判定されると、ステップS6に移行して、制御装置52は、Kに代入されている値が1であるか否かを判定する。ステップS6で否定判定されると、ステップS7に移行して、制御装置52は、Kに代入されている値を1小さくし、その後、ステップS1以下を繰り返す。他方、ステップS6で肯定判定されると、ステップS8に移行して、制御装置52は、全ての制御弁45が閉じているか否かを判定する。
【0039】
ステップS8で肯定判定されると、制御装置52が窒素噴霧を行っていないと判定して、その後、ステップS1以下が繰り返される。他方、ステップS8で否定判定されると、制御装置52が窒素噴霧を行ったと判定して、ステップS10で、全ての制御弁45を閉制御した後、制御がエンドになる。
【0040】
なお、ステップS10を行った場合、制御がエンドになるまでに、制御装置52は、窒素噴霧を行ったことを表す信号を、予め定められた1以上の情報処理装置、例えば、サーバ、パーソナルコンピュータ、携帯電話、タブレット等に送信してもよい。そして、1以上の情報処理装置は、可燃性ガス希釈システム1が窒素噴霧を行ったことを表す情報を報知してもよく、例えば、1以上の情報処理装置の夫々は、可燃性ガス希釈システム1が窒素噴霧を行ったことを表す情報を表示部に表示させてもよい。また、上記所定時間は、窒素の貯蔵量を急激に減少させないようにするために、10分以下の時間に設定することが好ましい。
【0041】
図2に示す制御では、水素検知したグループの検知センサ20に対応する下流側経路43から窒素を噴出し、その後換気口15に対して最短経路となる順番に下流側経路43から窒素を噴霧し、この動作を全ての検知センサ20が所定濃度以上の水素を検知しなくなるまで繰り返す。図2に示す制御によれば、水素を拡散させて希釈できると共に、水素を効率的に換気口15に導くことができる。
【0042】
なお、図2に示す制御では、検知センサ20で所定濃度の水素を検知した場合、この検知センサ20と同一のグループの下流側経路43から窒素を噴霧する構成としたが、これに限らない。例えば所定濃度の水素を検知した検知センサ20と同一のグループの下流側経路43に加え、異なるグループの下流側経路43から窒素を噴霧してもよい。図3は、そのような制御装置52の制御の一例を示すフロ―チャートである。制御装置52は、初期状態として、全ての制御弁45を閉じた状態にすると共に、変数Kを可燃性ガス希釈システム1が備える下流側経路43の数であるNに設定し、制御をスタートする。制御装置52は、ステップS11で、第K検知センサ20、つまりスタート時は変数KをNとして設定しているため、N番目の第N検知センサ20は、所定濃度以上の水素を検知したか否かを判定する。
【0043】
ステップS11で肯定判定されると、ステップS12に移行して、制御装置52は、K番目のグループの第K下流側経路43、つまりスタート時はN番目のグループNの第N下流側経路43から窒素を所定時間噴霧する制御を行う。続くステップS13では、制御装置52が、Kに代入されている値が1であるか否かを判定する。ステップS13で、否定判定されると、ステップS14に移行して、制御装置52は、Kに代入されている値を1小さくし、その後、ステップS12以下を繰り返す。
【0044】
他方、ステップS13で肯定判定されると、制御装置52は、ステップS16で、全ての制御弁45を所定時間だけ開制御して、全ての下流側経路43から窒素を所定時間噴霧する制御を行って、その後、ステップS17で、制御装置52は、全ての制御弁45を閉制御し、制御がエンドになる。
【0045】
一方、ステップS11で否定判定されると、ステップS18に移行して、制御装置52が、Kに代入されている値が1であるか否かを判定する。ステップS18で否定判定されると、ステップS19に移行して、制御装置52が、Kに代入されている値を1小さくし、その後、ステップS11以下を繰り返す。他方、ステップS18で肯定判定されると、スタートに戻り、制御処理を繰り返す。
【0046】
なお、図2及び図3に示す制御では、最も速く所定濃度以上の水素を検知した検知センサ20に対応する下流側経路43から最初に窒素を噴霧する場合について説明し、異なるグループの検知センサ20が、所定濃度以上の水素を同時に検知した場合には、換気口15から最も遠い検知センサ20に対応する下流側経路43から優先的に窒素を噴霧する場合について説明した。
【0047】
しかし、異なるグループの2以上の検知センサ20が、所定濃度以上の水素を同時に検知した場合、当該異なる複数のグループの2以上の検知センサ20に対応する2以上の下流側経路43から同時に窒素を噴霧するようにしてもよい。
【0048】
又は、いずれか1つの検知センサ20が、所定濃度以上の水素を検知すると、全ての下流側経路43から窒素を所定時間噴霧するようにしてもよい。このようにすると、危険な状態を迅速に解消することができる。
【0049】
以上、可燃性ガス希釈システム1は、水素を検知する検知センサ20と、検知センサ20からの出力に基づいて窒素を噴霧する噴霧装置30と、を備える。
【0050】
本開示によれば、水素を検知する検知センサ20からの出力に基づいて噴霧装置30が窒素を噴霧するので、窒素の噴霧によって水素を拡散させたり、希釈することで、水素の濃度を水素が燃焼する虞がない濃度まで下げることができる。また、ファンを用いる場合と比較して、ファンの駆動源となるモーターを用いることがないため、モーター内で発生した火花が引き金となって水素が燃焼することもない。よって、水素燃焼の危険性を低くし、高い安全性や高い信頼性を実現することができる。
【0051】
また、所定濃度以上の水素を検知した検知センサ20に対応する下流側経路43から局所的に窒素を噴霧する場合について説明した。このように、噴霧装置30は、水素の濃度を希釈するように局所的に窒素を噴霧することを可能としてもよい。
【0052】
本構成によれば、水素の濃度が局所的に高くなっている場合に、水素の濃度の効率的な希釈を実現できると共に窒素の噴霧量を低減できる。
【0053】
また、検知センサ20及び噴霧装置30における窒素の噴霧口47が空間10内に設置され、噴霧装置30が噴霧した窒素によって空間10内のガスが排気可能になっていてもよい。ここで、空間10内のガスは換気口15を介して排気可能になっていてもよい。
【0054】
本構成によれば、空間10内のガスの排気に基づいて空間10内の水素の濃度を低減できる。したがって、水素燃焼の危険性を更に低くでき、安全性や信頼性を更に高くできる。
【0055】
また、検知センサ(例えば、水素の検知センサ20)及び不活性ガスの噴霧装置(例えば、窒素の噴霧装置30)における不活性ガスの噴霧口(例えば、噴霧口47)が空間(例えば、空間10)内に設置されてもよい。また、検知センサは、空間10の天井11に設置され、噴霧装置の1以上の噴霧口が、空間の天井面(例えば、天井11の天井面)に沿うように設置(天井面に沿って略水平方向に延在するように設置)されて不活性ガスを案内する経路(例えば、下流側経路43)に設けられてもよい。
【0056】
本構成によれば、空気よりも軽い可燃性ガスの濃度を効果的に希釈でき、可燃性ガス希釈システムが設置された施設の安全性が高くなる。
【0057】
また、可燃性ガスは、水素でもよく、不活性ガスは、窒素でもよい。本構成によれば、水素を用いた施設に、安価な窒素を用いた可燃性ガス希釈システム1を構築できる。
【0058】
可燃性ガス希釈システム1では、制御弁45が検知センサ20に連動して、ガス検知した箇所に対して窒素を選択的に噴出することができるので、より迅速に水素を希釈でき、安全性を確保できる。
【0059】
また、可燃性ガス希釈システム1では、空間10内の天井11に複数の検知センサ20を配置し、ガス検知された箇所に窒素を優先的に噴射できる。
【0060】
また、可燃性ガス希釈システム1は、制御弁45の制御により所定濃度以上の水素検出箇所に最も近い下流側経路43から窒素を噴霧させることができる。
【0061】
また、可燃性ガス希釈システム1は、検知センサ20による所定濃度以上の水素検知に応じて複数の下流側経路43のうちで窒素を噴霧する下流側経路43を切り替えることができる。
【0062】
また、可燃性ガス希釈システム1は、漏洩水素の排気経路が換気口15までの最短経路となる順に下流側経路43から窒素を順次噴霧させることができる。
【0063】
また、可燃性ガス希釈システム1では、複数の検知センサ20による水素漏洩場所の特定と、制御弁45の制御による窒素の噴霧により、特定した水素漏洩場所付近の水素拡散(希釈)を行うことができる。
【0064】
また、空間10は、換気口15を有している場合、換気口15の位置に連動した窒素噴出動作を行うことで、空間内に漏洩した水素を迅速に排気することが可能になる。
【0065】
また、噴霧装置30が1以上の窒素のボンベ32を含む場合、ボンベ32の圧力を利用して水素を拡散(希釈)するため、コンプレッサーの設置が必要なく、可燃性ガス希釈システム1の省電力での運用が可能になる。
【0066】
また、可燃性ガス希釈システム1は、天井に向かう縦経路(例えば、縦配管)と天井面に沿って配置されセンサ周囲を囲む横経路(例えば、横配管)とを含む噴霧装置30を備えるようにしてもよい。
【0067】
なお、本開示は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0068】
例えば、水素を検知する複数の検知センサ20の配置は、図1に示す配置と異なってもよい。図4は、変形例の可燃性ガス希釈システム101において天井111に設置された複数の検知センサ20を鉛直下方から見たときの平面図である。
【0069】
図4に示すように、複数の検知センサ20を設置するにあたり、空間内の天井111の天井面を半径10m以内のブロックに分け、複数の検知センサ20を、空間内全域をカバーするように天井面に沿うように設置してもよい。そして、最も近い検知センサ20同士の間隔が20m以内となるようにしてもよい。
【0070】
また、可燃性ガスが水素である場合について説明した。可燃性ガスは、水素以外の可燃性ガスでもよく、例えば、空気よりも軽い都市ガス、空気よりも重いメタンガスやプロパンガスであってもよい。本実施例では、可燃性ガスが空気より軽い水素であったため、不活性ガスも空気より軽い窒素を用いた。不活性ガスは、可燃性ガスである水素と同様に空気より軽いだけではなく、化学的に反応しない、より具体的には、急激な酸化反応である燃焼をしない、ガスであれば、窒素でなくてもよい。なお、空気よりも重いメタンガスやプロパンガスを可燃性ガスとして用いた場合にあっては、不活性ガスは、可燃性ガスと同様に空気より重いだけではなく、化学的に反応しない、より具体的には、急激な酸化反応である燃焼をしない、アルゴンや二酸化炭素などのガスが用いられる。なお、可燃性ガスが、空気よりも重い可燃性ガスである場合、不活性ガスの噴霧装置における不活性ガスの噴霧口の1以上が、空間の床に沿うように配置されることが好ましい。
【0071】
また、火災が生じた際に不活性ガスを噴射することで酸欠状態にして火災の継続を中断させて消火する消火装置が知られている。当該消火装置は、酸素の遮断にて消火するので、火災現場を水や泡や粉末などの消火薬剤で汚損することなく消火することができる。
【0072】
係る背景において、本開示の可燃性ガス希釈システムの不活性ガスの噴霧装置は、当該消火装置、すなわち、不活性ガスを噴霧することで消火を行う消火装置に含まれてもよい。そのようにすれば、不活性ガスを噴霧することで消火を行う既存の消火装置に含まれる不活性ガスの噴霧装置を利用して可燃性ガス希釈システムを格段に容易かつ安価に構築できる。
【符号の説明】
【0073】
1,101 可燃性ガス希釈システム、 10 空間、 11,111 天井、 12 床、 15 換気口、 18 壁、 20 検知センサ、 24 分岐経路、 24a 主経路、 24b 副経路、 25 上流側経路、 30 噴霧装置、 32 ボンベ、 35 供給装置、 40 経路、 43 下流側経路、 45 制御弁、 47 噴霧口、 50 弁制御装置、 51 通信部、 52 制御装置、 53 制御部、 54 記憶部。
図1
図2
図3
図4