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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162871
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】圧電素子
(51)【国際特許分類】
   H10N 30/853 20230101AFI20241114BHJP
   H10N 30/30 20230101ALI20241114BHJP
   H10N 30/50 20230101ALI20241114BHJP
   H10N 30/80 20230101ALI20241114BHJP
   H10N 30/87 20230101ALI20241114BHJP
   H04R 17/02 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H10N30/853
H10N30/30
H10N30/50
H10N30/80
H10N30/87
H04R17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078820
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 貴史
(72)【発明者】
【氏名】榎本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山田 英雄
(72)【発明者】
【氏名】川合 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】臼井 孝英
【テーマコード(参考)】
5D004
【Fターム(参考)】
5D004AA01
5D004BB02
5D004CD08
5D004DD03
5D004EE01
(57)【要約】
【課題】コストの低減を図ることができる圧電素子を提供する。
【解決手段】圧電素子は、基板10と、基板10に積層された下部電極、圧電膜、上部電極を含んで構成され、基板10に片持ち支持された薄膜部181~184、231~234と、薄膜部181~184の自由端同士を連結する伸縮膜20と、薄膜部231~234の自由端同士を連結する伸縮膜25と、を備え、薄膜部181~184と薄膜部231~234は剛性が互いに異なり、伸縮膜20と伸縮膜25は剛性が互いに異なる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子であって、
基板(10)と、
前記基板に積層された下部電極(12)、圧電膜(13、15)、上部電極(16)を含んで構成され、前記基板に片持ち支持された複数の薄膜部(181、182、183、184、231、232、233、234)と、
複数の前記薄膜部の自由端同士を連結する伸縮膜(20、25)と、を備え、
複数の前記薄膜部および前記伸縮膜で構成された振動領域(21、26)が複数形成されており、
複数の前記振動領域のうち少なくとも2つは、前記薄膜部の剛性が互いに異なるとともに、前記伸縮膜の剛性が互いに異なる圧電素子。
【請求項2】
該少なくとも2つの前記振動領域のうち一方における前記薄膜部は、他方における前記薄膜部と、長さ、幅、厚さ、材料、ヤング率、質量、梁応力、隣接する前記薄膜部との距離のいずれか1つまたは複数が異なる請求項1に記載の圧電素子。
【請求項3】
複数の前記薄膜部は、前記下部電極、前記圧電膜、前記上部電極を貫通する貫通孔(19、24)を挟んで配置されており、
前記伸縮膜は、前記貫通孔を覆って複数の前記薄膜部を連結しており、
前記貫通孔のうち前記伸縮膜で覆われた部分の幅は、前記伸縮膜から露出した部分の幅の最小値よりも大きい請求項1に記載の圧電素子。
【請求項4】
該少なくとも2つの前記振動領域のうち一方における前記伸縮膜は、他方における前記伸縮膜と、幅、厚さ、材料、ヤング率、質量、膜応力のいずれか1つまたは複数が異なる請求項1に記載の圧電素子。
【請求項5】
該少なくとも2つの前記振動領域のうち一方における前記薄膜部は、他方における前記薄膜部よりも剛性が低く、該一方における前記伸縮膜は、該他方における前記伸縮膜よりも剛性が高い請求項1に記載の圧電素子。
【請求項6】
前記薄膜部は、上面が三角形状とされている請求項1に記載の圧電素子。
【請求項7】
前記薄膜部は、上面が台形状とされている請求項1に記載の圧電素子。
【請求項8】
前記伸縮膜は感光性樹脂材料で構成されている請求項1に記載の圧電素子。
【請求項9】
前記伸縮膜はポリイミドで構成されている請求項8に記載の圧電素子。
【請求項10】
前記圧電膜は窒化スカンジウムアルミニウムで構成されている請求項1に記載の圧電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)マイクロフォン等を構成する圧電素子は、基板と、基板に積層された下部電極、圧電膜、上部電極とを備え、基板上に音圧を検出する振動領域が形成された構成とされている。振動領域においては、基板の一部が除去されるとともに、下部電極、圧電膜、上部電極を貫通するスリットが形成されており、これにより基板に片持ち支持された薄膜部が形成されている。
【0003】
振動領域は狭帯域の周波数特性を有するため、振動領域を1つのみ備える圧電素子では、広帯域の音圧を検出することが困難である。これについて、例えば特許文献1に記載の圧電素子は、複数の振動領域を備えている。そして、各振動領域の薄膜部の長さを変えることにより、各振動領域の共振周波数を異なるものとし、複数の帯域における音圧の検出を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-7879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
薄膜部の長さを変えると、振動領域の共振周波数に加えて、感度も大きく変化する。そのため、特許文献1に記載の圧電素子では、使用する振動領域の切り替えに伴いシステム側の補正が必要となり、システムとして高コストになる。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、コストの低減を図ることができる圧電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、圧電素子であって、基板(10)と、基板に積層された下部電極(12)、圧電膜(13、15)、上部電極(16)を含んで構成され、基板に片持ち支持された複数の薄膜部(181、182、183、184、231、232、233、234)と、複数の薄膜部の自由端同士を連結する伸縮膜(20、25)と、を備え、複数の薄膜部および伸縮膜で構成された振動領域(21、26)が複数形成されており、複数の振動領域のうち少なくとも2つは、薄膜部の剛性が互いに異なるとともに、伸縮膜の剛性が互いに異なる。
【0008】
このように伸縮膜を設けることにより、振動領域の共振周波数と感度が薄膜部の剛性および伸縮膜の剛性によって変化するようになる。そして、各振動領域の共振周波数を異なる値としながら感度を揃えることが可能となり、システムのコストの低減を図ることができる。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態にかかる圧電素子の上面図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3】薄膜部と伸縮膜の剛性について説明するための図である。
図4】共振周波数と感度との関係を示す図である。
図5】比較例の上面図である。
図6】第2実施形態にかかる圧電素子の上面図である。
図7図6のVII-VII断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。本実施形態の圧電素子は、マイクロフォンとして用いられるものであり、図1図2に示すように、基板10、絶縁膜11、下部電極12、第1圧電膜13、中間電極14、第2圧電膜15、上部電極16を備えている。基板10は、例えばシリコン(Si)で構成されている。絶縁膜11は、基板10の上面に積層されている。絶縁膜11は、例えばシリコン酸化膜(SiO)で構成されている。
【0013】
絶縁膜11の上面には、下部電極12、第1圧電膜13、中間電極14、第2圧電膜15、上部電極16が順に積層されている。下部電極12、中間電極14、上部電極16は、例えばモリブデン(Mo)等の導電性金属で構成されている。第1圧電膜13、第2圧電膜15は、例えば、窒化スカンジウムアルミニウム(ScAlN)や、窒化アルミニウム(AlN)等の鉛フリーの圧電セラミックス等を用いて構成されている。また、第1圧電膜13、第2圧電膜15は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等を用いて構成される。
【0014】
基板10には、凹部17が形成されている。凹部17は、基板10の一部を除去して絶縁膜11のうち基板10側の下面を露出させるように形成されている。基板10の上面に平行で互いに垂直な2方向をそれぞれX方向、Y方向とする。凹部17は、基板10の下面において、X方向に平行な2辺とY方向に平行な2辺とで構成された四角形状に開口している。凹部17が形成されることにより、圧電素子の一部は薄膜化されている。この薄膜化された部分を薄膜部18とする。
【0015】
薄膜部18には、絶縁膜11、下部電極12、第1圧電膜13、中間電極14、第2圧電膜15、上部電極16を貫通する貫通孔19が形成されている。貫通孔19は、凹部17の中心部から各角部に向かって延設されており、薄膜部18は貫通孔19によって4分割されている。
【0016】
貫通孔19が形成されることによって、薄膜部18を含む絶縁膜11、下部電極12、第1圧電膜13、中間電極14、第2圧電膜15、上部電極16の積層体は、凹部17の開口端部において基板10に片持ち支持されている。
【0017】
4分割された薄膜部18をそれぞれ薄膜部181~184とする。薄膜部181~184は、薄膜部181と薄膜部183とが対向し、薄膜部182と薄膜部184とが対向するように配置されている。具体的には、薄膜部181、183は、それぞれ、薄膜部18のうち凹部17の中心に対してX方向の一方側、他方側に配置された部分である。また、薄膜部182、184は、それぞれ、薄膜部18のうち凹部17の中心に対してY方向の一方側、他方側に配置された部分である。
【0018】
薄膜部181~184は、自由端同士が伸縮膜20によって連結されている。伸縮膜20は、例えばポリイミド等の感光性樹脂材料で構成されている。伸縮膜20は、上面形状が四角形状とされており、貫通孔19の中心部を埋め込むとともに薄膜部181~184の自由端における上部電極16を覆うように形成されている。
【0019】
貫通孔19のうち伸縮膜20で覆われた部分の幅は、伸縮膜20から露出した部分の幅の最小値よりも大きくされている。具体的には、貫通孔19は、凹部17の角部から中心部に向かって延設された4つのスリット状の貫通孔191と、凹部17の中心部に形成された矩形状の2つの貫通孔192とで構成されている。一方の貫通孔192は、凹部17の一方の対角線に平行な方向を長手方向とする矩形状とされており、他方の貫通孔192は、凹部17の他方の対角線に平行な方向を長手方向とする矩形状とされている。2つの貫通孔192は凹部17の中心部で交差しており、それぞれ長手方向の両端部において貫通孔191に連結されている。貫通孔191と貫通孔192はそれぞれ幅が一定とされており、貫通孔192は貫通孔191よりも幅が広くされている。
【0020】
薄膜部181~184の上面は、凹部17の四辺のいずれかに平行な2辺を有する台形状とされている。詳細には、前述した貫通孔19の形状により、薄膜部181~184の上面は、貫通孔191および貫通孔192の外縁によって自由端側の辺に凹凸が形成された略台形状とされている。圧電素子のうち凹部17、薄膜部18、貫通孔19、伸縮膜20が形成された部分を振動領域21とする。
【0021】
基板10のうち振動領域21から離れた部分には、凹部22が形成されており、凹部22によって圧電素子の一部が薄膜部23とされている。薄膜部23は貫通孔24によって4分割されており、薄膜部231~234が形成されている。薄膜部231~234は、自由端同士が伸縮膜25によって連結されている。圧電素子のうち凹部22、薄膜部23、貫通孔24、伸縮膜25が形成された部分を振動領域26とする。
【0022】
振動領域26は、振動領域21とほぼ同様の構成とされている。しかしながら、薄膜部23の梁長さおよび伸縮膜25の厚さは、薄膜部18の梁長さおよび伸縮膜20の厚さと異なっている。ここでの厚さとは、基板10の上面に垂直な方向の幅である。
【0023】
このような圧電素子では、振動領域21の薄膜部18に音圧が印加され、薄膜部181~184が振動すると、例えば薄膜部181~184の自由端側が上方に変位した場合、第1圧電膜13には引張応力が発生し、第2圧電膜15には圧縮応力が発生する。このとき下部電極12と上部電極16との間に発生する電圧を測定することにより、音圧が検出される。また、振動領域26においても同様に音圧が検出される。
【0024】
前述したように、薄膜部18、23は梁長さが互いに異なっている。そのため、振動領域21、26は互いに共振周波数が異なっており、広い帯域で音圧を検出することができる。このように広い帯域で音圧を検出する場合に、帯域によって検出感度が異なると、振動領域21、26の出力信号を処理する際に必要な補正が多くなり、システムとして高コストになる。これに対して、本実施形態では、振動領域21と振動領域26の感度を揃えるための構成が設けられている。
【0025】
具体的には、片持ち支持梁の共振周波数frと剛性定数k、質量mとの関係は、円周率をπとして、数式1で示される。ここで、質量mは、梁の重心から先端までの質量である。
【0026】
【数1】
そして、前述したように、振動領域21には伸縮膜20が配置されている。このような構成では、振動領域21の共振周波数fr、感度Sは、数式2、数式3のようになる。
【0027】
【数2】
【0028】
【数3】
ここで、kは薄膜部181~184の剛性定数であり、kb1は伸縮膜20の剛性定数である。mは、薄膜部181~184の重心から先端までの質量である。t11は薄膜部181~184の厚さであり、t21は伸縮膜20の厚さである。L11は薄膜部181~184の梁長さであり、L21は伸縮膜20の幅である。L21は、具体的には、XY平面における薄膜部181~184の自由端側面から伸縮膜20の中心部までの距離である。c、cはその他の因子の係数である。
【0029】
振動領域26においても、同様に、共振周波数fr、感度Sが薄膜部231~234の剛性定数k、伸縮膜25の剛性定数kb2、質量mによって定まる。そして、剛性定数k、kb2は、薄膜部231~234の厚さt12、伸縮膜25の厚さt22、薄膜部231~234の梁長さL12、伸縮膜25の幅L22、および、その他の因子の係数によって定まる。
【0030】
なお、伸縮膜20、25の厚さは場所によって変化してもよい。ここでは、伸縮膜20、25のうち、凹部17、22の中心部における厚さをt21、t22とする。
【0031】
例えば、L11=690μm、L12=490μmとして、厚さt21、t22を変化させると、図4に示すようになる。なお、図4のグラフは、有限要素法による解析結果である。
【0032】
すなわち、振動領域21においては、厚さt21が大きくなるにつれて共振周波数frが高くなり、感度Sが低くなる。同様に、振動領域26においては、厚さt22が大きくなるにつれて共振周波数frが高くなり、感度Sが低くなる。ただし、振動領域21、26のグラフは全体として共振周波数がずれており、厚さt21、t22を所定の値に設定することにより、振動領域21、26を異なる共振周波数で同じ感度とすることができる。例えば、図4に示すように、t21=0.8μm、t22=0.4μmとすることにより、fr<frかつS≒Sとすることができる。
【0033】
共振周波数fr、frと感度S、Sを調整する際には、薄膜部181~184の剛性および伸縮膜20の剛性の大小関係が、薄膜部231~234の剛性および伸縮膜20の剛性の大小関係と逆になるように、梁長さL11、L12、厚さt21、t22を設定する。
【0034】
すなわち、k<kの場合にはkb1>kb2となり、k>kの場合にはkb1<kb2となるように、L11>L12の場合にはt21>t22とし、L11<L12の場合にはt21<t22とする。これにより、薄膜部181~184と薄膜部231~234との剛性差が、伸縮膜20と伸縮膜25との剛性差で相殺され、S≒Sとすることができる。
【0035】
図5に示すように、振動領域21が伸縮膜20を備えない場合には、共振周波数fr、感度Sは剛性定数kによって定まり、数式4、数式5のようになる。同様に、振動領域26が伸縮膜25を備えない場合には、共振周波数fr、感度Sは剛性定数kによって定まる。
【0036】
【数4】
【0037】
【数5】
このように圧電素子が伸縮膜20、25を備えない構成では、図4の2つのグラフのように梁長さL11、L12を一定としたまま感度S、Sを変化させることができず、振動領域21、26それぞれにおいて共振周波数と感度の組み合わせが1つのみに定まる。そのため、異なる共振周波数で同じ感度を得ることが困難になる。
【0038】
これに対して本実施形態では、前述したように、梁長さL11、L12と厚さt21、t22によって剛性定数k、kと剛性定数kb1、kb2とを別々に変化させ、fr≠frかつS=Sとすることができる。
【0039】
なお、幅L21、L22を大きくすることにより、感度S、Sを揃えながら図5に示す比較例よりも感度S、Sを高くすることができる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態では、薄膜部181~184と薄膜部231~234の剛性が互いに異なるとともに、伸縮膜20と伸縮膜25の剛性が互いに異なる。これによれば、共振周波数fr、frを異なる値としながら感度S、Sを揃えることが可能となり、システムのコストの低減を図ることができる。
【0041】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0042】
(1)貫通孔19、24のうち伸縮膜20、25で覆われた部分の幅は、伸縮膜20、25から露出した部分の幅の最小値よりも大きい。これによれば、圧電素子の感度を向上させることができる。
【0043】
(2)薄膜部181~184は薄膜部231~234よりも剛性が低く、伸縮膜20は伸縮膜25よりも剛性が高い。これによれば、薄膜部181~184と薄膜部231~234との剛性差が、伸縮膜20と伸縮膜25との剛性差で相殺され、S=Sとすることができる。
【0044】
(3)伸縮膜20、25は感光性樹脂材料で構成されている。例えば、伸縮膜20、25はポリイミドで構成されている。これによれば、簡易な工程で伸縮膜20、25を形成することができる。
【0045】
(4)圧電膜13、15はScAlNで構成されている。これによれば、圧電素子の感度を向上させることができる。
【0046】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して貫通孔19、24の形状を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0047】
図6に示すように、本実施形態では貫通孔19がスリット状の4つの貫通孔191のみによって構成されており、幅が一定とされている。これにより、薄膜部181~184の上面は三角形状とされている。なお、薄膜部181~184の上面が略三角形状とされていてもよい。
【0048】
振動領域26においても、振動領域21と同様に薄膜部23および貫通孔24が構成されている。すなわち、貫通孔24は幅が一定の4つのスリットで構成されており、薄膜部231~234の上面が三角形状または略三角形状とされている。
【0049】
このような構成の本実施形態においても、共振周波数fr、fr、感度S、Sを第1実施形態と同様に薄膜部181~184、伸縮膜20、薄膜部231~234、伸縮膜25の剛性によって調整し、fr≠frかつS=Sとすることができる。
【0050】
本実施形態は、第1実施形態と同様の構成および作動からは第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0051】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0052】
圧電素子が3つ以上の振動領域を備えていてもよい。すなわち、振動領域21、26に加えて他の振動領域を1つ以上備えていてもよい。振動領域21、26が基板10によって片持ち支持された薄膜部をそれぞれ2つまたは3つのみ備えていてもよいし、5つ以上備えていてもよい。
【0053】
第1実施形態では、梁長さL11、L12、厚さt21、t22によって剛性定数k、kb1、k、kb2を調整した。しかしながら、薄膜部181~184と薄膜部231~234の他の要素を異なるものとすることによって、fr≠frかつS=Sとなるように剛性定数k、kを調整してもよい。また、伸縮膜20、25の他の要素を異なるものとすることによって、fr≠frかつS=Sとなるように剛性定数kb1、kb2を調整してもよい。
【0054】
例えば、薄膜部181~184と薄膜部231~234の幅を互いに異なる値として剛性定数k、kを調整してもよい。具体的には、薄膜部181、183、231、233についてはY方向の幅で剛性定数k、kを調整し、薄膜部182、184、232、234についてはX方向の幅で剛性定数k、kを調整してもよい。
【0055】
また、t11≠t12として剛性定数k、kを調整してもよい。また、薄膜部18、23を構成する材料のヤング率を互いに異なる値として剛性定数k、kを調整してもよい。例えば、剛性定数kは、k=α×(8/3)×t11 ×E/L11 となる。ここで、Eは薄膜部181~184を構成する材料のヤング率、αは薄膜部18の形状で定まるパラメータである。
【0056】
また、m≠mとして剛性定数k、kを調整してもよい。また、薄膜部181~184、231~234の梁応力を互いに異なる値として剛性定数k、kを調整してもよい。また、隣接する2つの薄膜部の距離、すなわち、貫通孔19、24の幅を互いに異なる値として剛性定数k、kを調整してもよい。例えば、図3に示す貫通孔192の短手方向の幅wによって剛性定数kを調整することができる。同様に、XY平面における貫通孔191、241、242の延設方向に垂直な方向の幅によって剛性定数k、kを調整することができる。
【0057】
また、L21≠L22として剛性定数kb1、kb2を調整してもよい。また、伸縮膜20、25を構成する材料のヤング率を互いに異なる値として剛性定数kb1、kb2を調整してもよい。また、伸縮膜20、25の質量または膜応力を互いに異なる値として剛性定数kb1、kb2を調整してもよい。
【0058】
また、薄膜部181~184、231~234の梁長さ、幅、厚さ、材料、ヤング率、質量、梁応力、隣接する薄膜部との距離のうち2つ以上を用いて剛性定数k、kを調整してもよい。また、伸縮膜20、25の幅、厚さ、材料、ヤング率、質量、膜応力のうち2つ以上を用いて剛性定数kb1、kb2を調整してもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 基板
181、182、183、184 薄膜部
20 伸縮膜
21 振動領域
231、232、233、234 薄膜部
25 伸縮膜
26 振動領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7