(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162897
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】樹脂粒子分散液の製造方法、トナー粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/08 20060101AFI20241114BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20241114BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20241114BHJP
C08J 3/07 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G03G9/08 381
G03G9/087 331
G03G9/097 365
C08J3/07 CFD
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078875
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】荒屋 大樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 甲介
(72)【発明者】
【氏名】荒木 太郎
【テーマコード(参考)】
2H500
4F070
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA08
2H500BA12
2H500BA22
2H500CA06
2H500EA39B
4F070AA47
4F070AB09
4F070AC12
4F070AC43
4F070AC50
4F070AE14
4F070AE28
4F070CA03
4F070CB03
4F070CB12
(57)【要約】
【課題】粗大粒子の発生を抑制する樹脂粒子分散液の製造方法を提供する。
【解決手段】有機溶媒に結着樹脂を溶解または分散させた油相を作製する工程と、前記油相に水系媒体を添加して転相乳化させ、樹脂粒子の分散液を得る工程を含み、前記転相乳化において、前記油相と前記水系媒体の混合液を撹拌するとともに、前記混合液を循環させ、循環中に樹脂粒子を微細化することを特徴とする、樹脂粒子分散液の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒に結着樹脂を溶解または分散させた油相を作製する工程と、前記油相に水系媒体を添加して転相乳化させ、樹脂粒子の分散液を得る工程を含み、前記転相乳化において、前記油相と前記水系媒体の混合液を撹拌するとともに、前記混合液を循環させ、循環中に前記樹脂粒子を微細化することを特徴とする、樹脂粒子分散液の製造方法。
【請求項2】
槽の中で前記混合液の撹拌を行うとともに、前記槽の外で前記混合液を循環させ、循環中に前記樹脂粒子を微細化することを特徴とする、請求項1に記載の樹脂粒子分散液の製造方法。
【請求項3】
前記結着樹脂がポリエステル樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂粒子分散液の製造方法。
【請求項4】
前記油相をアルカリ性水溶液で中和することを特徴とする、請求項1に記載の樹脂粒子分散液の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1項に記載の方法により得られた樹脂粒子分散液を用いた、トナー粒子の製造方法。
【請求項6】
結晶性ポリエステル樹脂及び離型剤を添加することを特徴とする、請求項5に記載のトナー粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粒子分散液の製造方法、トナー粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂粒子は、オフィス等、様々な場所において、複合機(MFP)及びプリンタ等の画像形成装置のトナーとして広く利用されている。環境への負荷低減を図るため、例えば、トナー自体の低温定着性の向上による消費電力の低減、及びトナーの製造工程で使用するエネルギーの削減等が検討されている。
【0003】
トナーの低温定着性を向上させる方法としては、樹脂のガラス転移温度や軟化点を下げる方法や、結晶性樹脂を添加する方法などが広く知られている。高画質を達成する方法としては、小粒径及び狭粒度分布のトナーによる細線の再現性や、着色剤の分散向上による色再現性や着色度の向上が知られている。また、トナーの製造方法としては粉砕法が用いられていたが、製造で使用するエネルギーが多い上にトナー小径化の流れもあり、懸濁重合などのケミカルトナーも主流になってきている。
【0004】
トナー製造時に用いる薬剤の使用量を低減する方法の一つとして、界面活性剤の使用量を低減できる転相乳化法が挙げられる。ただし、転相乳化法を用いるトナーの製造過程において、粗大粒子が発生することがあり、高画質を実現するためにはトナー粒子の粒径分布をシャープにすることが重要である。
【0005】
例えば特許文献1では、転相乳化の際の撹拌槽内の最大撹拌動力を調整することにより、樹脂粒子の粒径分布のシャープ化が図られている。
【0006】
特許文献2では、転相乳化に用いる撹拌槽内の撹拌翼の形状を調整することにより、樹脂粒子の粒径分布のシャープ化が図られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、粗大粒子の発生を抑制する樹脂粒子分散液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、樹脂粒子分散液の製造方法であって、
有機溶媒に結着樹脂を溶解または分散させた油相を作製する工程と、前記油相に水系媒体を添加して転相乳化させ、樹脂粒子の分散液を得る工程を含み、前記転相乳化において、前記油相と前記水系媒体の混合液を撹拌するとともに、前記混合液を循環させ、循環中に樹脂粒子を微細化することを特徴とする、
樹脂粒子分散液の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、粗大粒子の発生を抑制する樹脂粒子分散液の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の樹脂粒子分散液の製造方法に使用される撹拌槽及び槽外の循環経路の一例を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の樹脂粒子分散液の製造方法に使用される撹拌槽及び槽内の循環経路の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、実施形態は以下の記述によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、本明細書において数値範囲を示す「~」は、別段の断わりがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0012】
<樹脂粒子分散液の製造装置>
転相乳化において粗大粒子が発生する一つの要因として、転相乳化中のせん断力の不足により転相が偏在することで粗大粒子が生成することが挙げられる。そこで、本実施形態に係る樹脂粒子分散液の製造方法では、油相と水系媒体の混合液の撹拌に加えて、前記混合液を循環させ、循環中に樹脂粒子の微細化を行う。これにより、撹拌のみではせん断力が不足する場合においても、微細化により粗大粒子の発生を抑制し、粒径分布がシャープな樹脂粒子分散液を作製することができる。
【0013】
図1は、本実施形態に係る樹脂粒子分散液の製造方法に使用される撹拌槽及び槽外の循環経路の一例を示す概略構成図である。
図1において、撹拌槽1の槽内には撹拌モーター3で駆動される撹拌翼2が設けられている。撹拌モーター3は一方向に回転、あるいは一方向及び/又は反対方向に回転する、あるいは所定の回転角で一方向及び逆方向に回転(搖動)して混合液8を撹拌することができる。
撹拌槽1には、撹拌槽の底面側から混合液を槽外へ取出し、撹拌槽1の上面側に混合液を送りだす循環ライン5が設けられている。循環ライン5には、
図1の例では、送液ポンプ6及び粉砕機7が設けられている。このように循環中に微細化を行う機構を設けることにより、粗大粒子の発生を抑制することができる。
また、
図1に示す循環に伴う混合液の循環流は、撹拌槽に対し上下方向になっているがこの循環流の方向は、上下方向に限らず、例えば、撹拌槽の径方向の流れでもよい。しかし、上下方向の流れの方が、撹拌翼の回転に伴う混合液の周方向の流れと、流れが交差するので分散効果をより高めることができる。
【0014】
撹拌槽内の撹拌翼2については、特に制限がないが、例えばパドル翼、アンカー翼、ヘリカルリボン翼、スクリュー翼、MAXBLEND(住友重機械プロセス機器社製)、スーパーミックス(佐竹化学機械工業社製)、フルゾーン(神鋼環境ソリューション社製)などの撹拌翼を用いることができる。
【0015】
粉砕機7については、混合液中の樹脂粒子の微細化及び/又は分散を行うことができるものであれば特に制限はなく、例えばスターミルLMZ(アシザワ・ファインテック社製)などのビーズミルやエバラマイルダー(太平洋機工社製)などの高能率分散機を用いることができる。
【0016】
また、
図2に例示したように、循環経路は槽内に備えていてもよい。
図2において、撹拌槽1の槽内には撹拌モーター3で駆動される撹拌翼2が設けられている。撹拌モーター3は一方向に回転、あるいは一方向及び/又は反対方向に回転する、あるいは所定の回転角で順方向及び逆方向に回転(搖動)して混合液8を撹拌することができる。
撹拌槽1には、混合液を下部から吸出し、撹拌槽1の上面側に混合液を送りだす循環ライン5が槽内に設けられている。循環ライン5には、
図2の例では、送液ポンプ6及び粉砕機7が設けられている。なお、液送ポンプ6及び粉砕機7をユニット化してユニットボックス内に配置し、当該ユニットボックスを槽内壁に着脱自在の構造として、撹拌層で撹拌する混合液の量、あるいは混合液の種類によりユニットボックスを装着するあるいは取り外す構造としても良い。
【0017】
以下、本実施形態に係る樹脂粒子分散液の製造方法及びトナー粒子の製造方法について詳細に説明する。本実施形態に係るトナー粒子の製造方法は、油相作製工程、水相作製工程、転相乳化工程、脱溶媒工程、凝集工程及び融着工程を含み、更に必要に応じて、シェル化工程、洗浄工程、乾燥工程、アニーリング工程及び外添工程等のその他の工程を含む。まず、トナー粒子の原料について詳細に説明する。
【0018】
<有機溶媒>
有機溶媒としては、適宜選択することができ、例えば沸点が100℃未満の揮発性であることが、後の工程で有機溶媒を除去する場合、容易に除去できる点から好ましい。このような有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。これらは単独あるいは2種以上を組合せて用いることができる。
【0019】
有機溶媒中に溶解あるいは分散させる樹脂がポリエステル骨格を有する樹脂である場合、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系の溶媒、もしくはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系の溶媒が、溶解性が高い点で好ましい。これらの中では、溶媒除去性の高い酢酸メチル、酢酸エチル又はメチルエチルケトンがより好ましい。これらの中でも、マスターバッチや油相を作製する際の材料の選択性が上がるため、酢酸エチルが更に好ましい。
【0020】
<結着樹脂>
結着樹脂としては、適宜選択することができ、有機溶媒に可溶で、かつ水に不溶又はほとんど溶解しない樹脂であることが好ましい。用いられる樹脂としては、例えば、ポリスチレン、スチレンアクリル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、パラフィンワックス等が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数であってもよい。良好な定着性を得られるという観点から、ポリエステル樹脂がより好ましい。
【0021】
[ポリエステル樹脂]
電子写真における静電潜像現像用トナーを製造する場合には、ポリエステル骨格を有する樹脂を用いることにより、定着性に優れたトナーが得られる。ポリエステル骨格を有する樹脂としては、ポリエステル樹脂や、ポリエステルと他の骨格を有する樹脂とのブロックポリマー等が挙げられる。中でも、ポリエステル樹脂を用いる場合、得られるトナー粒子の均一性が向上するため好ましい。
【0022】
ポリエステル樹脂としては、ラクトン類の開環重合物、ヒドロキシカルボン酸の縮重合物、多価アルコールと多価カルボン酸との縮重合物などが挙げられ、設計の自由度の観点から多価アルコールと多価カルボン酸との縮重合物が好ましい。
【0023】
ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、通常、1,000~30,000であり、好ましくは3,000~15,000であり、さらに好ましくは5,000~12,000である。1,000未満では耐熱保存性が悪化することがあり、30,000を超えると良好な低温定着性が得られない場合がある。
【0024】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、35~80℃が好ましく、40~70℃がより好ましく、45~65℃がさらに好ましい。35℃未満では得られるトナーの耐熱保存性が悪化する場合があり、80℃を超えるような場合では、良好な定着性が得られない場合がある。
【0025】
多価アルコールとしては、ジオール、3価以上の多価アルコール等が挙げられ、ジオール単独、又はジオールと少量の3価以上の多価アルコールの混合物が好ましい。
【0026】
ジオールとしては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;3,3’-ジフルオロ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、等の4,4’-ジヒドロキシビフェニル類;ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)メタン、1-フェニル-1,1-ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:テトラフルオロビスフェノールA)、2,2-ビス(3-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等のビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類;ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)エーテル等のビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル類;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。中でも、炭素数2~12のアルキレングリコール及びビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物が好ましく、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、及びこれと炭素数2~12のアルキレングリコールとの併用が特に好ましい。
【0027】
3価以上の多価アルコールとしては、3~8価又はそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0028】
多価カルボン酸としては、ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸等が挙げられ、ジカルボン酸単独、又はジカルボン酸と少量の3価以上の多価カルボン酸の混合物が好ましい。
【0029】
ジカルボン酸としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸など)、3-フルオロフタル酸、2-フルオロイソフタル酸、2-フルオロテレフタル酸、2,4,5,6-テトラフルオロイソフタル酸、2,3,5,6-テトラフルオロテレフタル酸、5-トリフルオロメチルイソフタル酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ビフェニルジカルボン酸、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ビフェニルジカルボン酸、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-3,3’-ビフェニルジカルボン酸などが挙げられる。中でも、炭素数4~20のアルケニレンジカルボン酸及び炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。
【0030】
3価以上の多価カルボン酸としては、炭素数9~20の芳香族多価カルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。
【0031】
なお、多価カルボン酸としては、上述のものの酸無水物又は低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いて多価アルコールと反応させてもよい。
【0032】
多価アルコールと多価カルボン酸の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1~1/2、好ましくは1.5/1~1/1.5、さらに好ましくは1.3/1~1/1.3である。
【0033】
<着色剤>
本発明に用いられる着色剤としては公知の染料及び顔料が使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロムバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトポン及びそれらの混合物が使用できる。
【0034】
着色剤については、着色剤と樹脂を混練してマスターバッチを作製し、結着樹脂とともに有機溶媒に溶解又は分散させて油相を作製するようにしてもよい。
【0035】
マスターバッチの作製に用いられる樹脂としては、適宜選択することができるが、有機溶媒に可溶で、かつ水に不溶又はほとんど溶解しない樹脂であることが好ましい。用いられる樹脂としては、例えば、ポリスチレン、スチレンアクリル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、パラフィンワックス等が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数であってもよい。良好な定着性を得られるという観点から、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0036】
マスターバッチは上記の着色剤と上記の樹脂を混練することで作製できる。例えば、混練処理に用いられる混練機は、二軸押出混練機、三本ロール、ラボプラストミルなどの一般の混練機を使用できる。また、混練処理の際に内添剤を添加してもよい。混練の際には加熱することが好ましく、この際の加熱条件は適宜設定できる。
【0037】
マスターバッチの作製における樹脂と着色剤の割合としては、適宜選択することが可能である。
【0038】
<結晶性ポリエステル樹脂>
本実施形態に係るトナー粒子には、低温定着性の向上のために、結晶性樹脂を添加することが好ましい。中でも、結晶性ポリエステル樹脂は、高い結晶性をもつために、定着開始温度付近において急激な粘度変化を示す熱溶融特性を示す(シャープメルト性)。このような特性を有する前記結晶性ポリエステル樹脂は、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステルなどの多価カルボン酸又はその誘導体から得られる。
【0039】
なお、本発明において結晶性ポリエステル樹脂とは、上記のように、多価アルコールと、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステル等の多価カルボン酸又はその誘導体とを用いて得られるものを指し、ポリエステル樹脂を変性したもの、例えばプレポリマー、及びそのプレポリマーを架橋及び/又は伸長反応させて得られる樹脂は、前記結晶性ポリエステル樹脂には属さない。
【0040】
前記多価アルコールとしては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール、及び3価以上のアルコールが挙げられる。
【0041】
前記ジオールとしては、例えば、飽和脂肪族ジオールなどが挙げられる。前記飽和脂肪族ジオールとしては、例えば直鎖飽和脂肪族ジオール、分岐飽和脂肪族ジオールが挙げられるが、これらの中でも、直鎖飽和脂肪族ジオールが好ましく、炭素数が2~12の直鎖飽和脂肪族ジオールがより好ましい。前記飽和脂肪族ジオールが分岐型であると、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が低下してしまうことがある。また、前記飽和脂肪族ジオールの炭素数が12を超えると、実用上の材料の入手が困難となる。
【0042】
前記飽和脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,20-エイコサンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、前記結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が高く、シャープメルト性に優れる点で、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが好ましい。
【0043】
前記3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記多価カルボン酸としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2価のカルボン酸、及び3価以上のカルボン酸が挙げられる。
【0045】
前記2価のカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;などが挙げられる。更に、これらの無水物やこれらの低級(炭素数1~3)アルキルエステルも挙げられる。
【0046】
前記3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物やこれらの低級(炭素数1~3)アルキルエステルなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
前記結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数4~12の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸と、炭素数2~12の直鎖飽和脂肪族ジオールとから構成されることが好ましい。これにより、結晶性が高く、シャープメルト性に優れるため、優れた低温定着性を発揮できる。
【0048】
また、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性及び軟化点を制御する方法として、ポリエステル合成時にアルコール成分にグリセリン等の3価以上の多価アルコールや、酸成分に無水トリメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸を追加して縮重合を行った非線状ポリエステルなどを設計、使用するなどの方法が挙げられる。
【0049】
本実施形態における結晶性ポリエステル樹脂の分子構造は、溶液や固体によるNMR測定の他、X線回折、GC/MS、LC/MS、IR測定などにより確認することができる。簡便には赤外線吸収スペクトルにおいて、965±10cm-1もしくは990±10cm-1にオレフィンのδCH(面外変角振動)に基づく吸収を有するものを例として挙げることができる。
【0050】
結晶性ポリエステル樹脂の分子量については、上記の分子量分布がシャープで低分子量のものが低温定着性に優れ、分子量が低い成分が多いと耐熱保存性が悪化するという観点から、鋭意検討した結果、例えば以下のようにすることが好ましい。オルトジクロロベンゼンの可溶分のGPCによる分子量分布で、横軸をlog(M)、縦軸を重量%で表した分子量分布図のピーク位置が3.5~4.0の範囲にあり、ピークの半値幅が1.5以下であり、重量平均分子量(Mw)で3,000~30,000、数平均分子量(Mn)で1,000~10,000、Mw/Mnが1~10であることが好ましい。更には、重量平均分子量(Mw)で5,000~15,000、数平均分子量(Mn)で2,000~10,000、Mw/Mnが1~5であることが好ましい。
【0051】
結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、紙と樹脂との親和性の観点から、目的とする低温定着性を達成するためにはその酸価が5mgKOH/g以上であることが好ましい。また、転相乳化法による微粒子の作製のためには、7mgKOH/g以上であることがより好ましい。一方、耐ホットオフセット性を向上させるには45mgKOH/g以下のものであることが好ましい。また、結晶性ポリエステル樹脂の水酸基価については、所定の低温定着性を達成し、かつ良好な帯電性を達成するためには0~50mgKOH/gが好ましく、5~50mgKOH/gがより好ましい。
【0052】
<離型剤>
離型剤としてワックスを用いることができる。ワックスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、融点が50℃~120℃の低融点の離型剤が好ましい。低融点の離型剤は、前記樹脂と分散されることにより、離型剤として効果的に定着ローラとトナー界面との間で働き、これによりオイルレス(定着ローラにオイルの如き離型剤を塗布しない)でも耐ホットオフセット性が良好となる。
【0053】
離型剤としては、例えば、ロウ類、ワックス類等が好適に挙げられる。ロウ類及びワックス類としては、例えば、カルナウバワックス、綿ロウ、木ロウ、ライスワックス等の植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン等の動物系ワックス;オゾケライト、セルシン等の鉱物系ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラタム等の石油ワックス;などの天然ワックスが挙げられる。また、これら天然ワックスのほか、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス;エステル、ケトン、エーテル等の合成ワックス;などが挙げられる。更に、12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド;低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリ-n-ステアリルメタクリレート、ポリ-n-ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体あるいは共重合体(例えば、n-ステアリルアクリレート-エチルメタクリレートの共重合体等);側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子などを用いてもよい。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
ワックスの融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50℃~120℃が好ましく、60℃~90℃がより好ましい。融点が50℃以上であれば、ワックスが耐熱保存性に悪影響を与えるのを防止でき、120℃以下であれば、低温での定着時にコールドオフセットを起こすという問題を有効に防止できる。
【0055】
ワックスの溶融粘度としては、該ワックスの融点より20℃高い温度での測定値として、5cps~1,000cpsが好ましく、10cps~100cpsがより好ましい。溶融粘度が、5cps以上であれば、離型性の低下を防止でき、1,000cps以下であれば、耐ホットオフセット性、低温定着性の効果が十分発揮できる。
【0056】
ワックスの前記トナーにおける含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0質量%~40質量%が好ましく、3質量%~30質量%がより好ましい。前記含有量が40質量%以下であれば、トナーの流動性悪化を防止することができる。
【0057】
<外添剤>
外添剤は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。外添剤としては、例えば、無機微粒子及び高分子系微粒子等を用いることができる。
【0058】
無機微粒子の一次粒子径は、5nm~2μmであることが好ましく、特に5nm~500nmであることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20~500m2/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01~5質量%であることが好ましい。
【0059】
無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などが挙げられる。
【0060】
高分子系微粒子としては、例えばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの縮重合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子などが挙げられる。
【0061】
このような外添剤は表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動性や帯電性の悪化を防止することができる。例えばシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコンオイル、変性シリコンオイルなどが好ましい表面処理剤として挙げられる。
【0062】
上記の他にも外添剤としてクリーニング性向上剤を用いてもよい。感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など脂肪酸金属塩、例えばポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子などのソープフリー乳化重合などによって製造された、ポリマー微粒子などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01μmから1μmのものが好ましい。
【0063】
<トナー粒子の製造方法>
以下、本実施形態に係るトナー粒子の製造方法について詳細に説明する。
【0064】
[油相作製工程]
油相作製工程では、結着樹脂を有機溶媒に溶解または分散させて、油相を作製する。また、油相にはさらに着色剤などを添加してもよい。
【0065】
油相の作製方法としては、有機溶媒を撹拌しながら有機溶媒中に結着樹脂、着色剤などを徐々に添加していき、溶解又は分散させればよい。分散に際しては公知のものが使用でき、例えばビーズミルやディスクミルなどの分散機を用いることができる。
【0066】
前記油相の作製後、アルカリ性水溶液で中和してもよい。アルカリ性水溶液としては、例えばアンモニア水溶液や水酸化ナトリウム等が挙げられる。油相を中和することで、樹脂の水分散性が向上し、転相乳化が容易になるという利点が得られる。
【0067】
[転相乳化工程]
転相乳化工程では、前記油相に水系媒体を添加して転相乳化させて樹脂粒子分散液を作製する。油中水滴型分散液から水中油滴型分散液に転相させる工程を経ることで、界面活性剤の使用量を低減した造粒が可能となる。
【0068】
前記水系媒体としては、転相乳化が生じれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、水と混和可能な溶媒、これらの混合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水が好ましい。
【0069】
水と混和可能な溶媒としては、転相乳化が生じれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セロソルブ類、低級ケトン類などが挙げられる。前記アルコールとしては、例えば、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなどが挙げられる。前記低級ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
【0070】
転相乳化の際には樹脂粒子分散液の撹拌に加えて、
図1及び
図2に示したような、前記樹脂粒子分散液を循環させ、循環中に樹脂粒子の微細化を行う製造装置を用いることで、粗大粒子の発生を抑制し、シャープな粒径分布の樹脂粒子分散液を得ることができる。
【0071】
[脱溶媒工程]
脱溶媒工程では、得られた樹脂粒子分散液から有機溶媒を除去する。
【0072】
得られた樹脂粒子分散液から有機溶媒を除去するためには、系全体を撹拌しながら徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を蒸発除去する方法を採用することができる。
【0073】
または、得られた樹脂粒子分散液を撹拌しながら乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の有機溶媒を完全に除去する方法も可能である。もしくは、樹脂粒子分散液を撹拌しながら減圧し、有機溶媒を蒸発除去する方法も可能である。
【0074】
これらの手段は、単独で用いてもよいし、併用してもよい。
【0075】
樹脂粒子分散液が噴霧される乾燥雰囲気としては、例えば空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体、特に使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。このような方法では、スプレードライヤー、ベルトドライヤー、ロータリーキルンなどを用いた短時間の処理で十分目的とする品質が得られる。
【0076】
[凝集工程]
得られた樹脂粒子分散液を撹拌しながら任意の粒径になるまで凝集させて、凝集粒子を得る。
【0077】
凝集させるためには、凝集剤を添加、pH調整等、既存の方法が使用できる。凝集剤を添加する場合、そのまま添加してもよいが、凝集剤の水溶液にしたほうが局所的な高濃度化を避けることができるため好ましい。また、凝集剤は樹脂粒子の粒径を見ながら、徐々に添加することが好ましい。
【0078】
凝集時の分散液の温度は、使用する樹脂のガラス転移温度Tg付近であることが好ましい。樹脂粒子分散液の液温が低すぎると凝集があまり進まないため効率が悪い。樹脂粒子分散液の液温が高すぎると、凝集速度が速くなり、粗大粒子が発生する等、粒径分布が悪化する。
【0079】
狙いの粒径に達したら、凝集を停止させる。凝集を停止させる方法としては、イオン価数の低い塩やキレート剤を添加する方法や、pHを調整する方法、分散液の温度を下げる方法、水系媒体を多量に添加して濃度を薄める方法等が使用できる。
【0080】
以上の方法により、凝集粒子の分散液を得ることができる。
【0081】
凝集剤としては、公知のものが使用できる。例えば、ナトリウム、カリウム等の1価の金属の金属塩や、カルシウム、マグネシウム等の2価の金属の金属塩、鉄、アルミニウム等の3価の金属の金属塩などが使用できる。凝集剤の添加量としては、特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。
【0082】
[融着工程]
次に、得られた前記凝集粒子を熱処理によって融着させて凹凸を減らし、球形化を行う。融着は、凝集粒子の分散液を撹拌しながら加熱すればよい。液の温度は、使用している樹脂のガラス転移温度Tgを超えた温度付近が好ましい。
【0083】
以上の方法により、トナー粒子分散液を得ることができる。
【0084】
[洗浄工程]
上記の方法で得られたトナー粒子分散液には、トナー粒子の他に、凝集剤などの副材料が含まれ得るため、分散液からトナー粒子のみを取り出すために洗浄を行う。
【0085】
トナー粒子の洗浄方法としては、例えば遠心分離法、減圧濾過法、フィルタープレス法などの方法があるが、本発明においては特に限定されるものではない。いずれの方法によってもトナー粒子のケーキ体が得られるが、一度の操作で十分に洗浄できない場合は、得られたケーキを再度水系媒体に分散させてスラリーにして上記のいずれかの方法でトナー粒子を取り出す工程を繰り返してもよい。また、減圧濾過法やフィルタープレス法によって洗浄を行うのであれば、水系媒体をケーキに貫通させてトナー粒子が抱き込んだ副材料を洗い流す方法を採ってもよい。
【0086】
この洗浄に用いる水系媒体は、水あるいは水にメタノール、エタノールなどのアルコールを混合した混合溶媒を用いることができる。コストや排水処理などによる環境負荷を考えると、水を用いるのが好ましい。
【0087】
[乾燥工程]
洗浄されたトナー粒子は水系媒体を多く抱き込んでいるため、乾燥を行い、水系媒体を除去することでトナー粒子のみを得ることができる。
【0088】
乾燥方法としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動槽乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機などの乾燥機を使用することができる。
【0089】
乾燥されたトナー粒子は最終的に水分が1%未満になるまで乾燥を行うのが好ましい。また、乾燥後のトナー粒子は軟凝集をしている場合があり、使用に際して不都合が生じる場合には、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、コーヒーミル、オースターブレンダー、フードプロセッサーなどの装置を利用して解砕を行い、軟凝集をほぐしてもよい。
【0090】
[アニーリング工程]
本実施形態では、アニーリングを行ってもよい。結晶性樹脂を添加した場合、乾燥後にアニーリング処理を行うことで、非結晶性樹脂と結晶性樹脂とが相分離し、定着性が向上する。具体的には、樹脂のガラス転移温度Tg付近の温度で10時間以上保管すればよい。
【0091】
[外添工程]
本実施形態で得られたトナー粒子には、流動性、帯電性、クリーニング性などを持たせるために、無機微粒子や高分子系微粒子、クリーニング助剤などの外添剤を添加、混合してもよい。
【0092】
具体的な混合手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。
【0093】
装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などが挙げられる。
【0094】
以上の工程を経て、トナー粒子を得ることができる。
【0095】
<測定方法>
[分散液の粒径]
本発明における樹脂粒子分散液の粒径は、例えば、ナノトラック粒度分布測定装置UPA-EX150(日機装株式会社、動的光散乱法/レーザードップラー法)を用いて測定することができる。具体的な測定方法としては、樹脂粒子が分散された分散液を測定濃度範囲に調整して測定する。その際、あらかじめ分散液の分散溶媒のみでバッククラウンド測定をしておく。この測定法により、本発明で用いられる樹脂微粒子の体積平均粒径範囲である、数十nm~数μmまでを測定することが可能である。
本発明における粒径とは、体積平均粒径(体積平均径)をいう。
【0096】
[融点及びガラス転移温度Tg]
融点及びガラス転移温度Tgは、例えば、DSCシステム(示差走査熱量計)(「Q-200」、TAインスツルメント社製)を用いて測定することができる。
具体的には、対象試料の融点、ガラス転移温度は、下記手順により測定できる。
まず、対象試料約5.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットする。次いで、窒素雰囲気下、-80℃から昇温速度10℃/minで150℃まで加熱する(昇温1回目)。その後、150℃から降温速度10℃/minで-80℃まで冷却させ、更に昇温速度10℃/minで150℃まで加熱(昇温2回目)する。この昇温1回目、及び昇温2回目のそれぞれにおいて、示差走査熱量計(「Q-200」、TAインスツルメント社製)を用いてDSC曲線を計測する。
得られるDSC曲線から、Q-200システム中の解析プログラムを用いて、1回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温1回目におけるガラス転移温度を求めることができる。同様に、2回目の昇温時におけるDSC曲線を選択し、対象試料の昇温2回目におけるガラス転移温度を求めることができる。
本発明におけるTgは2回目の昇温時におけるガラス転移温度をいう。
【0097】
[分子量]
使用するポリエステル樹脂やビニル系共重合樹脂などの分子量は、特に断りがない場合は、GPC(gel permeation chromatography)によって以下の条件で測定する。
・装置:HLC-8220GPC(東ソー社製)
・カラム:TSKgel SuperHZM-Mx3
・温度:40℃
・溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
・流速:0.35mL/分
・試料:濃度0.05~0.6%の試料を0.01mL注入
以上の条件で測定したトナー樹脂の分子量分布から単分散ポリスチレン標準試料により作製した分子量校正曲線を使用して重量平均分子量Mwを算出する。
単分散ポリスチレン標準試料としては、5.8×102、1.085×104、5.95×104、3.2×105、2.56×106、2.93×103、2.85×104、1.48×105、8.417×105、7.5×106のものを10点使用した。
【実施例0098】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0099】
<ポリエステル樹脂1の作製>
冷却管、撹拌機及び窒素導入管を装備した反応槽中に、ジオール成分としてビスフェノールAのエチレンオキサイド2mol付加物/ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3mol付加物(モル比40/60)、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸/アジピン酸(モル比85/15)、全モノマー量に対して3.5mol%のトリメチロールプロパンを、水酸基とカルボン酸のモル比(OH/COOH)が1.2となるように投入した。更に、縮合触媒としてオルトチタン酸テトラブチルを全モノマー量に対して1,000ppmを入れ、窒素気流下にて2時間かけて230℃まで昇温し、生成する水を留去しながら5時間反応させた。その後、5mmHg~15mmHgの減圧下にて4時間反応させ、180℃まで冷却させた後、全モノマー量に対して1.0mol%の無水トリメリット酸と、全モノマー量に対して200ppmのオルトチタン酸テトラブチルを入れ、常圧にて180℃で1時間反応させた。その後、更に5mmHg~20mmHgの減圧下にて3時間反応させた。このようにして、DSCによる昇温1回目のDSC曲線から求められるガラス転移温度Tgが57℃、重量平均分子量が7,700の[ポリエステル樹脂1]を得た。
【0100】
純水1,150重量部に0.1モル/LのNa3PO4水溶液390重量部を投入し、機械式分散機CLEARMIX(登録商標)(エム・テクニック株式会社製)を用い、10,000rpmで撹拌処理した。これに1.0モル/LのCaCl2水溶液58重量部を徐々に添加して、Ca3(PO4)2を含有している分散液を調製した。
スチレン80重量部、n-ブチルアクリレート20重量部、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)2.7重量部を混合、溶解させた重合性単量体組成物を調製し、CLEARMIXを用いて8,000rpmで撹拌させた前記分散液中に添加し、さらに30分間撹拌処理を行った。これにより、重合性単量体組成物分散液を調製した。
【0101】
この重合性単量体組成物分散液を、撹拌装置、温度センサ、冷却管及び窒素導入管を備えた反応容器に投入し、窒素気流下で撹拌しながら反応容器内の温度60℃にして5時間の重合処理を行った。さらに、反応容器内の温度を80℃に昇温させて10時間の重合処理を行った後、反応容器を室温まで冷却した。これにより結着樹脂が生成され、生成された結着樹脂に塩酸を添加してCa3(PO4)2を溶解させた後、水洗、ろ過、乾燥処理を経て非晶性の[ビニル樹脂1]を作製した。[ビニル樹脂1]の重量平均分子量Mwは35,000であり、ガラス転移温度Tgは55℃であった。
【0102】
<マスターバッチの作製>
[ポリエステル樹脂1]とPigmentRed269を1:1の割合で、へンシェルミキサー(三井三池化工機株式会社製、FM20B)を用いて予備混合した後、二軸混練機(株式会社池貝製、PCM-30)を用いて130℃の温度で溶融、混練した。得られた混練物はローラにて2.7mmの厚さに圧延した後にベルトクーラーにて室温まで冷却し、ハンマーミルにて200μm~300μmに粗粉砕した。このようにして[マスターバッチ]を得た。
【0103】
<結晶性ポリエステル樹脂分散液C-1の作製>
窒素導入管、脱水管、熱伝対を装備した撹拌槽に、1,6-ヘキサンジオールとセバシン酸とを、OH基とCOOH基との比率(OH/COOH)が1.1となるように仕込んだ。仕込んだ原料の質量に対して500ppmのチタンテトライソプロポキシドとともに水を流出させながら反応させ、最終的に235℃に昇温して1時間反応させた。その後、10mmHg以下の減圧下で6時間反応させた。その後、185℃に設定し、無水トリメリット酸をCOOH基とのモル比が0.053となるように添加し、撹拌しながら2時間反応させ、[結晶性ポリエステル樹脂C-1]を得た。
撹拌槽に、[結晶性ポリエステル樹脂C-1]55重量部、メチルエチルケトン40重量部、及び2-プロピルアルコール5重量部を加えた。その後、[結晶性ポリエステル樹脂C-1]の融点温度で加熱しながら撹拌し、[結晶性ポリエステル樹脂C-1]を溶解させた。その後、28質量%アンモニア水溶液を、中和率400%になるように添加した。中和率は、[結晶性ポリエステル樹脂C-1]の酸価から計算した。さらに、イオン交換水130重量部を徐々に加えて、転相乳化を行った後、脱溶媒を行った。その後、イオン交換水を加えて固形分濃度(結晶性ポリエステル樹脂の濃度)を25質量%に調整し、トナー用結着樹脂分散物である[結晶性ポリエステル樹脂分散液C-1]を得た。[結晶性ポリエステル樹脂分散液C-1]における結晶性ポリエステル樹脂の粒径は200nmであった。
【0104】
<ワックスエマルジョン1の製造>
イオン交換水100重量部に、ワックスとしてHNP-9(日本精蝋製)28重量部、界面活性剤としてサニゾールB50を添加した。これを90℃に加熱しながらホモジナイザーで分散処理し、[ワックスエマルジョン1]を得た。固形分濃度は、30%であった。
【0105】
[実施例1]
<油相作製工程及び水相作製工程>
[ポリエステル樹脂1]90重量部、[マスターバッチ]20重量部に、酢酸エチル120重量部を加えて撹拌し、溶解乃至分散させた。その後、撹拌しながら28質量%アンモニア水溶液5重量部を添加して中和率500%になるようにして油相を作製した。
イオン交換水300重量部に、界面活性剤ABS(アルキルベンゼンスルホン酸塩)を、イオン交換水に対して1%となるように加え、水相を作製した。
【0106】
<転相乳化工程>
図1に例示した、アンカー翼を有する撹拌槽及び撹拌槽を循環する配管、ポンプ、ディスクミルを有する設備を用い、撹拌槽に油相を加え、油相に水相を徐々に加えて転相乳化を行った。
転送乳化の際、撹拌槽の撹拌に加え、油相と水相の混合液をポンプで循環運転し、ディスクミルによる微細化を実施した。
【0107】
転相乳化後、脱溶媒を行い、[樹脂粒子分散液1]を得た。また、固形分濃度を20%に調整した。
【0108】
[実施例2]
実施例1の油相作製工程において、[ポリエステル樹脂1]を[ビニル樹脂1]にした以外は、実施例1と同様にして、[樹脂粒子分散液2]を得た。
【0109】
[実施例3]
実施例1の油相作製工程において、28質量%アンモニア水溶液5重量部を加えないこと以外は、実施例1と同様にして、[樹脂粒子分散液3]を得た。
【0110】
[実施例4]
実施例1の転相乳化工程において、アンカー翼の代わりにパドル翼を有する撹拌槽を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、[樹脂粒子分散液4]を得た。
【0111】
[比較例1]
実施例1の転相乳化工程において、油相と水相の混合液を循環・微細化しないこと以外は、実施例1と同様にして、[樹脂粒子分散液5]を得た。
【0112】
[比較例2]
実施例2の転相乳化工程において、油相と水相の混合液を循環・微細化しないこと以外は、実施例2と同様にして、[樹脂粒子分散液6]を得た。
【0113】
[比較例3]
実施例3の転相乳化工程において、油相と水相の混合液を循環・微細化しないこと以外は、実施例3と同様にして、[樹脂粒子分散液7]を得た。
【0114】
[比較例4]
実施例4の転相乳化工程において、油相と水相の混合液を循環・微細化しないこと以外は、実施例4と同様にして、[樹脂粒子分散液8]を得た。
【0115】
各例の樹脂粒子分散液を使用し、次の通りトナー粒子を作製した。
【0116】
<凝集工程及び融着工程>
[樹脂粒子分散液1]100重量部、[結晶性ポリエステル樹脂分散液C-1]5.0重量部、[ワックスエマルジョン1]5.0重量部、イオン交換水300重量部を容器に入れて1分間撹拌した。次に、5%塩化マグネシウム溶液を固形分に対して20重量部を滴下して更に5分撹拌した後、60℃に昇温した。その後、粒径が5.0μmになったところで塩化ナトリウムを40重量部添加して凝集工程を終了し、[凝集スラリー1]を得た。そのまま[凝集スラリー1]を撹拌しながら70℃に加熱して、所望の円形度である0.96になったところで冷却し、[トナー分散液1]を得た。
【0117】
<洗浄工程及び乾燥工程>
(1):濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(2):(1)の濾過ケーキにイオン交換水900部を加え、超音波振動を付与してTKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。スラリー液の電気伝導度が10μC/cm以下となるようにこの操作を繰り返した後濾過して、[濾過ケーキ1]を得た。
[濾過ケーキ1]を循風乾燥機にて45℃で72時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、[着色樹脂粒子1]を得た。
【0118】
<外添工程>
[着色樹脂粒子1]100重量部に対して無機微粒子であるキャボジル社製TS530を2.5重量部添加し、ヘンシェルミキサーで40m/sで10分間混合処理し、実施例1のトナー粒子を得た。
【0119】
[実施例2~4、比較例2~4]
実施例1の凝集工程で、[樹脂粒子分散液1]を各樹脂粒子分散液に変更した以外は同様に作製して、実施例2~4及び比較例2~4のトナー粒子を得た。
【0120】
[実施例5]
実施例1の凝集工程において、[結晶性ポリエステル樹脂分散液C-1]5.0重量部を加えないことと以外は、実施例1と同様にして、実施例5のトナーを得た。
【0121】
[比較例5]
実施例5の転相乳化工程において、油相と水相の混合液を循環・微細化しないこと以外は、実施例5と同様にして、比較例5のトナーを得た。
【0122】
<評価方法>
[粗大粒子量]
レーザ回折式粒度分布測定器(LA-960)で測定し、粒径が2μm以上の粒子の個数%に応じて4段階で評価した。
(評価基準)
◎(優):1%以下
○(良):3%以下
△(可):5%以下
×(不可):6%以上
【0123】
[低温定着性]
カラー複合機(imagio MP C4500、リコー社製)の定着ユニットを用いて、普通紙に0.6mg/cm2の黒ベタ未定着画像を形成し、定着温度を変えて定着した。コールドオフセットの発生する温度を測定し、4段階で評価した。
(評価基準)
◎(優):120℃未満
○(良):120℃以上125℃未満
△(可):125℃以上130℃未満
×(不可):130℃以上
【0124】
実施例及び比較例のトナーの評価結果を表1に示す。
【0125】
【0126】
表1より、各実施例で得られた樹脂粒子において、粗大粒子の発生が抑制されていることが確認された。これに対して、各比較例で得られた樹脂粒子においては、いずれの条件においても粗大粒子の量が多く、実用上問題を有することが確認された。
【0127】
よって、各実施例で得られた樹脂粒子は、転相乳化工程において、油相と水系媒体の混合液を撹拌するとともに、前記混合液を循環させ、循環中に樹脂粒子を微細化することにより粗大粒子の発生が抑制されているため、高品質なトナー粒子として提供できるといえる。
【0128】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更等を行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0129】
なお、本発明の実施形態の態様は、例えば、以下の通りである。
<1> 有機溶媒に結着樹脂を溶解または分散させた油相を作製する工程と、前記油相に水系媒体を添加して転相乳化させ、樹脂粒子の分散液を得る工程を含み、前記転相乳化において、前記油相と前記水系媒体の混合液を撹拌するとともに、前記混合液を循環させ、循環中に前記樹脂粒子を微細化することを特徴とする、樹脂粒子分散液の製造方法。
<2> 槽の中で前記混合液の撹拌を行うとともに、前記槽の外で前記混合液を循環させ、循環中に前記樹脂粒子を微細化することを特徴とする、<1>に記載の樹脂粒子分散液の製造方法。
<3> 前記結着樹脂がポリエステル樹脂であることを特徴とする、<1>又は<2>に記載の樹脂粒子分散液の製造方法。
<4> 前記油相をアルカリ性水溶液で中和することを特徴とする、<1>~<3>の何れか一つに記載の樹脂粒子分散液の製造方法。
<5> <1>~<4>の何れか一つに記載の方法により得られた樹脂粒子分散液を用いた、トナー粒子の製造方法。
<6> 結晶性ポリエステル樹脂及び離型剤を添加することを特徴とする、<5>に記載のトナー粒子の製造方法。