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特開2024-162923流体の温度状況把握装置、及び、流体の温度状況把握方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162923
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】流体の温度状況把握装置、及び、流体の温度状況把握方法
(51)【国際特許分類】
   G01P 5/22 20060101AFI20241114BHJP
   G01P 13/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G01P5/22 H
G01P13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078932
(22)【出願日】2023-05-11
(71)【出願人】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】植田 翔多
(72)【発明者】
【氏名】新井 崇洋
【テーマコード(参考)】
2F034
【Fターム(参考)】
2F034AA01
2F034AB01
2F034AB02
(57)【要約】
【課題】溶融金属11の内部の温度の状況を直接計測し、温度分布や速度分布(速さ)流速分布(速さ及び方向)を把握する。
【解決手段】溶融金属11の温度を検出するための光ファイバーセンサー2と、光ファイバーセンサー2の検出情報に基づいて溶融金属11の流れ場での温度の状況を導出する制御手段4とを備え、光ファイバーセンサー2により溶融金属11の温度の状態を検出し、検出情報に基づいて溶融金属11の温度分布、速さ分布、流速分布を求める。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流れ場に配され、前記流体の温度を検出するための光ファイバーセンサーと、
前記光ファイバーセンサーの検出情報に基づいて前記流体の流れ場での温度の状況を導出する流体挙動導出手段とを備えた
ことを特徴とする流体の温度状況把握装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体の温度状況把握装置において、
前記流体挙動導出手段は、
前記流体の流れ場での温度の状況により前記流体の界面の温度分布を導出する機能を有している
ことを特徴とする流体の温度状況把握装置。
【請求項3】
請求項2に記載の流体の温度状況把握装置において、
前記光ファイバーセンサーは間隔を開けて複数備えられ、互いに交差するように配され、
前記流体挙動導出手段は、
複数の前記光ファイバーセンサーの検出の状況により前記光ファイバーセンサーの配置面内での前記流体の界面の温度分布を導出する
ことを特徴とする流体の温度状況把握装置。
【請求項4】
請求項1に記載の流体の温度状況把握装置において、
前記流体挙動導出手段は、
前記流体の流れ場での温度の状況により、前記流体の流れ状態の分布を導出する機能を有している
ことを特徴とする流体の温度状況把握装置。
【請求項5】
請求項4に記載の流体の温度状況把握装置において、
上流、下流における非透明流体の温度を不均一にする温度付与手段を備え、
前記流体挙動導出手段は、
上流、下流で不均一にされた前記流体の流れ場での温度の状況により、前記流体の流れ状態の分布を導出する
ことを特徴とする流体の温度状況把握装置。
【請求項6】
請求項5に記載の流体の温度状況把握装置において、
前記光ファイバーセンサーは、
前記流体の上流側から下流側にかけて複数備えられ、
上流側に配される前記光ファイバーセンサーには、
前記流体をパルス状に加熱する加熱手段が設けられ、
前記流体挙動導出手段は、
下流側の前記光ファイバーセンサーの検出のパルス形状により、前記流れ状態の分布として、前記流体の流れの速さと方向である流速の分布を導出する
ことを特徴とする流体の温度状況把握装置。
【請求項7】
請求項5に記載の流体の温度状況把握装置において、
前記光ファイバーセンサーは前記非透明流体よりも高い温度に維持され、
前記流体挙動導出手段は、
前記流体の流れ場での降温変化により、前記流れ状態の分布として、前記流体の流れの速さの分布を導出する
ことを特徴とする流体の温度状況把握装置。
【請求項8】
請求項1に記載の流体の温度状況把握装置において、
前記流体挙動導出手段は、
前記流体の流れ場での温度の状況により前記流体の温度分布を導出する機能と、前記流体の流れ場での温度の状況により、前記流体の流れ状態の分布を導出する機能とを有している
ことを特徴とする流体の温度状況把握装置。
【請求項9】
請求項8に記載の流体の温度状況把握装置において、
前記光ファイバーセンサーは間隔を開けて複数備えられ、互いに交差するように配され、
前記流体挙動導出手段は、
複数の前記光ファイバーセンサーの検出の状況により前記光ファイバーセンサーの配置面内での前記流体の温度分布を導出すると共に、前記流体の流れ場の上流、下流での温度の拡散状況により、前記流体の流れ状態の分布を導出する
ことを特徴とする流体の温度状況把握装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の流体の温度状況把握装置において、
前記流体は、非透明流体である溶融金属である
ことを特徴とする流体の温度状況把握装置。
【請求項11】
温度を検出するための光ファイバーセンサーにより流体の流れ場の複数個所の温度の状況を検出し、複数個所での温度の状況に基づいて前記流体の流れ場での温度の分布、及び、流れの分布を把握する
ことを特徴とする流体の温度状況把握方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の温度状況把握装置、及び、流体の温度状況把握方法に関し、例えば、金属精錬技術における非透明流体である溶融金属の内部の流動状況を把握するために適用して好適である。
【背景技術】
【0002】
流体としての非透明流体(例えば、溶融金属)の流況である温度分布と速度分布(速さ、方向)を把握することは、金属精錬工場における品質管理や原子力発電所の安全設計にて肝要である。溶融金属などの非透明流体の流況を的確に把握するためには、非透明流体の任意の位置における多くの点の非透明流体の温度と速度の情報を収集する必要がある。
【0003】
非透明流体(流体)の流況を時系列で的確に計測する技術として、熱画像カメラによる温度計測手法や、熱電対による温度計測手法が知られている。また、鋳造金属の温度を計測する技術として、鋳型の温度を計測することで溶融金属の温度を把握する技術が従来から知られている(例えば、特開2021-41453号公報)。
【0004】
しかし、熱画像カメラによる温度計測手法や、熱電対による温度計測手法を用いた場合であっても、非透明流体(流体)の内部の温度分布や速度分布を計測することができないのが実情であり、点計測であるため、分布として温度場や速度場を捉えることが困難であった。
【0005】
また、特許文献1の技術は、鋳型の温度を多数箇所で計測しているので、溶融金属の直接の温度は計測していない。このため、溶融金属の内部の温度分布や速度分布を計測することができないのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-41453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、流体(例えば、非透明流体)の内部の温度の状況を直接計測し、流体(例えば、非透明流体)の温度分布や速度分布(速さ、方向)を把握することができる流体の温度状況把握装置、及び、流体の温度状況把握方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の流体の温度状況把握装置は、流体の流れ場に配され、前記流体の温度を検出するための光ファイバーセンサーと、前記光ファイバーセンサーの検出情報に基づいて前記流体の流れ場での温度の状況を導出する流体挙動導出手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項1に係る本発明では、光ファイバーセンサーにより流体(非透明流体である溶融金属)の温度の状態を検出し、検出情報に基づいて流体の流れ場での温度の状況(温度分布、流れの速度、流れの方向)を求めることができる。
【0010】
これにより、流体(非透明流体、透明流体)の内部の温度の状況を直接計測し、流体(非透明流体、透明流体)の温度分布や速さ分布(速さ)流速分布(速さ及び方向)を把握することが可能になる。
【0011】
流体(非透明流体)の流体力に対向するため、光ファイバーセンサーは光ファイバーが保護管に入れられた状態で構成され、流体(非透明流体)が通過する位置に張り巡らされる。保護管に対する光ファイバーの長手方向の位置は、予め所望の位置に位置決めされている。光ファイバーの反射光の状態変化(強度変化、位相変化、周波数変化など)の位置が検出され、任意の位置での反射光の状態変化により温度が検出される。
【0012】
所定の位置での温度が計測されることにより、保護管に接触する流体(非透明流体)の流れ場における界面の温度が計測されて温度分布を把握したり、保護管を所望の温度に調整し、流体(非透明流体)の流れ場における温度の変化により流れ場における流れ状況(速さ、速さと方向である流速)の分布を把握したりすることができる。
【0013】
そして、請求項2に係る本発明の流体の温度状況把握装置は、請求項1に記載の流体の温度状況把握装置において、前記流体挙動導出手段は、前記流体の流れ場での温度の状況により前記流体の界面の温度分布を導出する機能を有していることを特徴とする。
【0014】
請求項2に係る本発明では、温度の状況により流体(非透明流体)の流れ場での界面(温度の上昇起点の広がり)の分布(温度分布:界面の移動速度)を把握することができる。
【0015】
また、請求項3に係る本発明の流体の温度状況把握装置は、請求項2に記載の流体の温度状況把握装置において、前記光ファイバーセンサーは間隔を開けて複数備えられ、互いに交差するように配され、前記流体挙動導出手段は、複数の前記光ファイバーセンサーの検出の状況により前記光ファイバーセンサーの配置面内での前記流体の界面の温度分布を導出することを特徴とする。
【0016】
請求項3に係る本発明では、光ファイバーセンサーは間隔を開けて複数が互いに交差するように配されているため、温度の状況により流体(非透明流体)の流れ場での2次元、3次元での界面(温度の上昇起点の広がり)の分布(温度分布)を把握することができる。
【0017】
また、請求項4に係る本発明の流体の温度状況把握装置は、請求項1に記載の流体の温度状況把握装置において、前記流体挙動導出手段は、前記流体の流れ場での温度の状況により、前記流体の流れ状態の分布を導出する機能を有していることを特徴とする。
【0018】
請求項4に係る本発明では、流体(非透明流体)の流れ場での温度の状況により、流体(非透明流体)の流れ場での温度変化を把握して流れの状態(速さ、速さと方向)の分布を把握することができる。
【0019】
また、請求項5に係る本発明の流体の温度状況把握装置は、請求項4に記載の流体の温度状況把握装置において、上流、下流における非透明流体の温度を不均一にする温度付与手段を備え、前記流体挙動導出手段は、上流、下流で不均一にされた前記流体の流れ場での温度の状況により、前記流体の流れ状態の分布を導出することを特徴とする。
【0020】
請求項5に係る本発明では、流体(非透明流体)の流れ場での上流、下流で温度を不均一にすることで、下流側での状態の変化により、流体(非透明流体)の流れ状態の分布を把握する。
【0021】
例えば、上流側でパルス状に熱を印加し、下流側でのパルスの状態により、流れの速さと方向である流速を把握することができる。また、上流側で流体(非透明流体)よりも高い温度に熱を印加し、下流側での温度の低下の状態により局所的な流れの速さを把握することができる。
【0022】
また、請求項6に係る本発明の流体の温度状況把握装置は、請求項5に記載の流体の温度状況把握装置において、前記光ファイバーセンサーは、前記流体の上流側から下流側にかけて複数備えられ、上流側に配される前記光ファイバーセンサーには、前記流体をパルス状に加熱する加熱手段が設けられ、前記流体挙動導出手段は、下流側の前記光ファイバーセンサーの検出のパルス形状(温度の拡散状況)により、前記流れ状態の分布として、前記流体の流れの速さと方向である流速の分布を導出することを特徴とする。
【0023】
請求項6に係る本発明では、上流側でパルス状に熱を印加し、下流側でのパルスの状態により、流体(非透明流体)の流れの速さと方向である流速を把握することができる。
【0024】
また、請求項7に係る本発明の流体の温度状況把握装置は、請求項5に記載の流体の温度状況把握装置において、前記光ファイバーセンサーは前記非透明流体よりも高い温度に維持され、前記流体挙動導出手段は、前記流体の流れ場での降温変化により、前記流れ状態の分布として、前記流体の流れの速さの分布を導出することを特徴とする。
【0025】
請求項7に係る本発明では、上流側で非透明流体よりも高い温度に熱を印加し、温度の低下の状態により、流体(非透明流体)の局所的な流れの速さを把握することができる。
【0026】
また、請求項8に係る本発明の流体の温度状況把握装置は、請求項1に記載の流体の温度状況把握装置において、前記流体挙動導出手段は、前記流体の流れ場での温度の状況により前記流体の温度分布を導出する機能と、前記流体の流れ場での温度の状況により、前記流体の流れ状態の分布を導出する機能とを有していることを特徴とする。
【0027】
請求項8に係る本発明では、流体(非透明流体)の流れ場での温度の状況により流体(非透明流体)の流れ場での界面(温度の上昇起点の広がり)の分布(温度分布:界面の移動速度)を把握することができると共に、流体(非透明流体)の流れ場での温度変化を把握して流れの状態(速さ、速さと方向:流速)の分布を把握することができる。
【0028】
また、請求項9に係る本発明の流体の温度状況把握装置は、請求項8に記載の流体の温度状況把握装置の温度状況把握装置において、前記光ファイバーセンサーは間隔を開けて複数備えられ、互いに交差するように配され、前記流体挙動導出手段は、複数の前記光ファイバーセンサーの検出の状況により前記光ファイバーセンサーの配置面内での前記流体の温度分布を導出すると共に、前記流体の流れ場の上流、下流での温度の拡散状況により、前記流体の流れ状態の分布を導出することを特徴とする。
【0029】
請求項9に係る本発明では、光ファイバーセンサーは間隔を開けて複数が互いに交差するように配されているため、温度の状況により流体(非透明流体)の流れ場での2次元、3次元での界面(温度の上昇起点の広がり)の分布(温度分布)を把握することができると共に、流体(非透明流体)の流れ場での上流、下流で温度を不均一にすることで、下流側での状態の変化により、流体(非透明流体)の流れ状態の分布を把握することができる。
【0030】
また、請求項10に係る本発明の流体の温度状況把握装置は、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の流体の温度状況把握装置において、前記流体は、非透明流体である溶融金属であることを特徴とする。
【0031】
請求項10に係る本発明では、非透明流体である溶融金属の内部の温度の状況を直接計測し、溶融金属の温度分布や速さ分布、流速分布(速さ及び方向)を把握することができる。例えば、溶融金属の注湯口の相対位置を調整することで、金属の種類や製品の形状に応じて、温度分布が少ない条件を設定することができ、鋳造の技術分野において、製品の不良の発生頻度を大幅に低下させて歩留まりの向上に寄与することができる。
【0032】
上記目的を達成するための請求項11に係る本発明の流体の温度状況把握方法は、温度を検出するための光ファイバーセンサーにより流体の流れ場の複数個所の温度の状況を検出し、複数個所での温度の状況に基づいて前記流体の流れ場での温度の分布、及び、流れの分布(流れの速さ、流れの速さと方向:流速)を把握することを特徴とする。
【0033】
請求項11に係る本発明では、流体(非透明流体)の内部の温度の状況を直接計測し、流体(非透明流体)の温度分布や速度分布(速さ、方向)を把握することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の流体の温度状況把握装置、及び、流体の温度状況把握方法は、流体(特に、非透明流体)の内部の温度の状況を直接計測し、流体(特に、非透明流体)の温度分布や速度分布(速さ、方向)を把握することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の一実施例に係る流体の温度状況把握装置を有する鋳造機構の概念図である。
図2】本発明の一実施例に係る流体の温度状況把握装置の概略構成図である。
図3】光ファイバーセンサーの外観図である。
図4】溶融金属の注湯状況を表す平面図である。
図5】溶融金属の注湯状況を表す側面図である。
図6】温度状況把握装置の検出状況の一例の概念図である。
図7】温度状況把握装置の検出状況の一例の概念図である。
図8】温度状況把握装置の検出状況の一例の制御ブロック図である。
図9】温度状況把握装置の検出状況の他の例の概念図である。
図10】温度状況把握装置の検出状況の他の例の制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1から図5に基づいて本発明の一実施例に係る流体(非透明流体)の温度状況把握装置を説明する。
【0037】
図1には本発明の一実施例に係る流体の温度状況把握装置を鋳造技術に適用した状況における鋳造機構の全体の概念状況、図2には温度状況把握装置の構成を概略的に示した状況、図3には光ファイバーセンサーの外観状況、図4には溶融金属が注湯されている状況の平面視、図5には溶融金属が注湯されている状況の側面視を示してある。
【0038】
図1図2図3に示すように、流体(非透明流体)の流れ場として、鋳造装置における溶融金属が注湯される鋳型を模擬した模擬鋳型1には、注湯される溶融金属(流体としての非透明流体)の温度を検出するための光ファイバーセンサー2が配されている。模擬鋳型1には、注湯手段3から所定量の溶融金属が所定条件(圧力)で流し込まれるようになっている。
【0039】
光ファイバーセンサー2で検出された温度の情報は、流体挙動導出手段としての制御手段4に入力され、制御手段4では、模擬鋳型1の内部の所定位置での(流れ場での)溶融金属の温度の状態が導出される。溶融金属の温度の状態に基づいて、制御手段4では、溶融金属の界面の温度の状況(温度分布)、溶融金属の流れの速さ(速度分布)、溶融金属の流れの速さ及び方向である流速(流速分布)が求められる。
【0040】
主に図3に示すように、溶融金属の流体力に対向するため、光ファイバーセンサー2は光ファイバー7が金属製の保護管8に入れられた状態で構成されている。光ファイバー7が挿入された保護管8は、模擬鋳型1の内部の溶融金属が通過する位置に張り巡らされる。
【0041】
図2に示すように、例えば、一つの平面に対して、1本の光ファイバー7が挿入された1本の保護管8がU字に折り返された状態で配され、複数の平面に1本の保護管8がU字に折り返された状態で張り巡らされる。つまり、光ファイバーセンサー2は間隔を開けて複数備えられ、互いに交差するように配されている。
【0042】
保護管8に対する光ファイバー7の長手方向の位置は、予め所望の位置に位置決めされている。光ファイバー7の反射光の状態変化(強度変化、位相変化、周波数変化など)の位置が検出され、任意の位置での反射光の状態変化により温度が検出され、溶融金属の温度が把握される。
【0043】
光ファイバー7の所定の位置での温度が計測されることにより、保護管8に接触する溶融金属の流れ場における界面の温度が計測されて温度分布を把握したり、保護管8を所望の温度に調整し、溶融金属の流れ場における温度の変化により流れ場における流れ状況(速さ、速さと方向である流速)の分布を把握したりすることができる。
【0044】
これにより、溶融金属の内部の温度の状況を直接計測し、溶融金属の温度分布や速度分布(速さ)流速分布(速さ及び方向)を把握することが可能になる。
【0045】
図4には溶融金属の注湯状況を表す平面視の状況、図5には溶融金属の注湯状況を表す側面視の状況を示してある。
【0046】
制御手段4は、溶融金属の流れ場での温度の状況により溶融金属の界面の温度分布を導出する機能を有している。つまり、図4図5に示すように、模擬鋳型1の内部に溶融金属11が流された際に、流れ場での界面(溶融金属11が光ファイバーセンサー2に接触し始める部位)の温度が検出され、温度の上昇起点の広がりの分布(温度分布:界面の移動速度)が把握される。
【0047】
光ファイバーセンサー2は間隔を開けて複数備えられ、互いに交差するように配されているので(図1図2参照)、光ファイバーセンサー2の配置面内での(3次元での)温度分布が導出される。
【0048】
また、制御手段4は、溶融金属11の流れ場での温度の状況により、溶融金属11の流れ状態の分布を導出する機能を有している。つまり、溶融金属11の流れ場での温度の状況により、溶融金属11の流れの状態(速さ、速さと方向である流速)の分布を把握することができる。
【0049】
図6図7図8に基づいて、溶融金属11の流れ状態の分布(流速分布)を導出する機能を説明する。
【0050】
図6図7には流れ状態の分布(流速分布)を導出する機能を説明する概念を示してあり、図6(a)、図7(a)は熱流束の状態、図6(b)、図7(b)は溶融金属11の流れ方向の状態、図6(c)、図7(c)は溶融金属11の温度の検出位置の状態である。また、図8には制御手段4における検出状況(流速の導出状況)の一例の制御ブロックを示してある。
【0051】
図6(b)、図7(b)に示すように、上流、下流における溶融金属11の温度を不均一にするため、即ち、上流側の溶融金属11の温度を高くするため、上流側の光ファイバーセンサー2にパルス状に熱を印加する熱印加手段12が備えられている。熱印加手段12により上流側の光ファイバーセンサー2にパルス状に熱を印加することで、図6(a)、図7(a)に示すように熱流束が発生する。
【0052】
図6(b)、図7(b)に示すように、下流側の光ファイバーセンサー2で溶融金属11の温度を検出し、温度上昇が検出された位置を把握する。図6(c)、図7(c)に示すように、溶融金属11の流れ方向により温度の上昇が検出される位置が異なる。
【0053】
即ち、図6(c)に示すように、下流側の光ファイバーセンサー2の方向(x方向)に直行する方向に溶融金属11が流れている場合、熱流束が発生した位置と同じ位置で温度の上昇のピークが検出される。また、流れが速い場合ほど、裾の幅の広がりが小さくなる。
【0054】
図7(c)に示すように、下流側の光ファイバーセンサー2の方向(x方向)に対し、図中右側に向いた方向に溶融金属11が流れている場合、熱流束が発生した位置に対し、x方向にずれた位置で温度の上昇のピークが検出される。また、裾の幅の広がり具合により、x方向に直行する方向の成分が小さくなる。
【0055】
図8に基づいて制御ブロックの一例を説明する。
【0056】
図に示すように、ステップS1で熱印加手段12により上流側の光ファイバーセンサー2に対しパルス状に熱が印加される。ステップS2で下流側の光ファイバーセンサー2の温度が検出され、検出された温度、及び検出された位置がステップS3で導出される。ステップS4では、印加された熱の温度と検出された熱の温度の状況が把握され、溶融金属11の局所的な速さと方向(流速)がステップS5で導出され、流速分布(流れ状態の分布)が求められる。
【0057】
これにより、溶融金属11の局所的な速さと方向である流速を導出することができる。
【0058】
図9図10に基づいて、溶融金属11の流れ状態の分布(速さ分布)を導出する機能を説明する。
【0059】
図9には流れ状態の分布(速さ分布)を導出する機能を説明する概念を示してあり、図9(a)は電流を印加して光ファイバーセンサー2の保護管8を発熱させた状態、図9(b)は光ファイバーセンサー2の長手方向の位置の温度の低下度合井の状態である。また、図10には制御手段4における検出状況(速さの導出状況)の一例の制御ブロックを示してある。
【0060】
図9(a)に示すように、光ファイバーセンサー2の保護管8に定電流を印加して通電加熱する発熱手段13が備えられている。保護管8が加熱されることにより、光ファイバーセンサー2が溶融金属11よりも高い温度に維持される。溶融金属11が流通することにより保護管8の熱エネルギーが奪われて温度が低下し、光ファイバー7により温度の低下が検出される。
【0061】
溶融金属11の流れが速ければ冷却が促進されて温度がより低下し、図9(b)に示すように、一次元の温度分布が計測される。例えば、速さv1の溶融金属11の温度の降下が小さく、速さv2の溶融金属11の温度の降下が大きく、速さv3の溶融金属11の温度の降下が中程度である場合、溶融金属11の速さは、v2>v3>v1の関係となることが把握される。
【0062】
図10に基づいて制御ブロックの一例を説明する。
【0063】
図に示すように、ステップS11で発熱手段13により電流が印加され、ステップS12で光ファイバーセンサー2の長手方向の任意の位置の温度が検出される。光ファイバーセンサー2の降温の状況、位置がステップS13で判断される。ステップS14で各位置の温度に基づいて溶融金属11の速さv1、v2、v3が求められ、速さの分布が把握される。
【0064】
これにより、溶融金属11の局所的な速さv1、v2、v3を導出することができる。
【0065】
上述した実施例では、溶融金属11の温度分布、溶融金属11の流速分布(速さ及び方向)、溶融金属11の速さ分布の把握を個別に行う例を挙げて説明したが、各分布を任意に組み合わせて把握したり、全ての分布を同時に把握したりすることも可能である。
【0066】
上述した実施例では、溶融金属11の内部の温度の状況を直接計測し、溶融金属11の温度分布や流速分布、速さ分布を把握することができる。分布を把握することで、例えば、溶融金属11の注湯口の相対位置を調整して、金属の種類や製品の形状に応じて、温度分布、流速分布、速さ分布が少ない条件を設定することができ、鋳造の技術分野において、製品の不良の発生頻度を大幅に低下させて歩留まりの向上に寄与することができる。
【0067】
流体として非透明流体である鋳造用の溶融金属を例に挙げて説明したが、例えば、作動油や潤滑油など、他の流体(非透明流体、透明流体)に対しても本願発明を適用することができる。特に、目視できない場所で、内部が目視できない流体の温度分布、流速分布、速さ分布を把握して、製品や製造機器、保管機器、運用機器などのメンテナンスなどに利用することが有効である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、流体の温度状況把握装置、及び、流体の温度状況把握方法の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 模擬鋳型
2 光ファイバーセンサー
3 注湯手段
4 制御手段
7 光ファイバー
8 保護管
11 溶融金属
12 熱印加手段
13 発熱手段
図1
図2
図3
図4
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図8
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図10