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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162989
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ウェーハの研削方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241114BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20241114BHJP
   B24B 1/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H01L21/304 631
B24B7/04 A
B24B1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023215967
(22)【出願日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2023078107
(32)【優先日】2023-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松澤 稔
(72)【発明者】
【氏名】辻本 浩平
【テーマコード(参考)】
3C043
3C049
5F057
【Fターム(参考)】
3C043BA03
3C043BA09
3C043BA16
3C043CC04
3C043DD05
3C043EE04
3C049AA04
3C049AA12
3C049AB04
3C049AB06
3C049CA01
3C049CB02
5F057AA05
5F057BA15
5F057BB03
5F057BB07
5F057BB09
5F057BB12
5F057CA15
5F057CA24
5F057CA25
5F057DA11
5F057EC15
5F057EC17
(57)【要約】
【課題】TAIKO研削で形成されるリング状補強部の内周上面角部に形成されるチッピングを抑制できるウェーハの研削方法を提供すること。
【解決手段】ウェーハの研削方法は、ウェーハの裏面に熱圧着シートを固定する熱圧着シート固定ステップ1001と、チャックテーブルでウェーハの表面側を保持する保持ステップ1003と、複数の研削砥石で形成される直径がウェーハの半径以下の研削ホイールの研削砥石の回転軌跡をチャックテーブルの保持面の回転軸と重なる位置に位置づけた状態で、研削ホイールとチャックテーブルとを研削ホイールの回転軸方向に相対的に接近させ、熱圧着シートの中央部を削り取るとともにウェーハの裏面側に円形凹部とリング状補強部とを形成する研削ステップ1004と、リング状補強部の上面に固定される熱圧着シートを剥離する剥離ステップ1007と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にデバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが形成されたウェーハの裏面を研削し、円形凹部と該円形凹部を囲繞するリング状補強部とを形成するウェーハの研削方法であって、
該ウェーハの裏面に熱圧着シートを固定する熱圧着シート固定ステップと、
保持面に回転軸を有するチャックテーブルで該ウェーハの該表面側を保持する保持ステップと、
環状の基台と該基台の自由端面に設けられた複数の研削砥石とを含み、複数の該研削砥石で形成される直径が該ウェーハの半径以下の研削ホイールを先端に装着したスピンドルを有する研削ユニットの該研削砥石の回転軌跡を該保持面の回転軸と重なる位置に位置づけた状態で、該研削ユニットと該チャックテーブルとを該スピンドルの回転軸方向に相対的に接近させ、該熱圧着シートの中央部を削り取るとともに該ウェーハの裏面側に該円形凹部と該リング状補強部とを形成する研削ステップと、
該リング状補強部の上面に固定される該熱圧着シートを剥離する剥離ステップと、
を備えるウェーハの研削方法。
【請求項2】
該剥離ステップの後、または該研削ステップの後且つ該剥離ステップの前に、
該円形凹部の底面をエッチングするエッチングステップと、
該エッチングステップの後に、該円形凹部の底面に金属膜を形成する金属膜形成ステップと、
を更に備える請求項1記載のウェーハの研削方法。
【請求項3】
該ウェーハの表面に保護部材を配設する保護部材配設ステップと、
を更に備える請求項1または請求項2記載のウェーハの研削方法。
【請求項4】
該熱圧着シートは、フィラーが添加されている、請求項1記載のウェーハの研削方法。
【請求項5】
該熱圧着シートは、フィラーが添加されたフィラー有り層と、フィラーが添加されていないフィラー無し層と、が積層されて形成され、該熱圧着シートの少なくとも一方の面側に該フィラー無し層が積層される、請求項1記載のウェーハの研削方法。
【請求項6】
該熱圧着シート固定ステップでは、該熱圧着シートの該フィラー無し層が積層された側の面を該ウェーハの裏面に向けて、該ウェーハの裏面に該熱圧着シートを固定する、請求項5記載のウェーハの研削方法。
【請求項7】
該熱圧着シート固定ステップでは、該熱圧着シートの該フィラー無し層が積層された側の面を該ウェーハの裏面とは反対側に向けて、該ウェーハの裏面に該熱圧着シートを固定する、請求項5記載のウェーハの研削方法。
【請求項8】
該熱圧着シートは、該熱圧着シートの両面側に該フィラー無し層が積層され、
該熱圧着シート固定ステップでは、該熱圧着シートの該フィラー無し層が積層された一方の面を該ウェーハの裏面に向けて、該熱圧着シートの該フィラー無し層が積層された他方の面を該ウェーハの裏面とは反対側に向けて、該ウェーハの裏面に該熱圧着シートを固定する、請求項5記載のウェーハの研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のデバイスが形成されたデバイス領域を表面に備えるウェーハの裏面の研削において、ウェーハの裏面の外周エッジ部分を残し、外周エッジ部分の内側のデバイス領域に対応するウェーハの裏面の内側部分のみを研削して薄化するTAIKO(登録商標)研削技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、SiP(System in Package)等の普及に伴い、ウェーハを歩留まり良く薄化できる研削技術が要望されており、ウェーハを薄化する研削技術の一つとして、TAIKO研削技術が知られている。TAIKO研削技術により、ウェーハの外周エッジ部分に補強部として機能するリング状補強部が形成される。リング状補強部が形成されることにより、ウェーハの内側部分が薄化された後においても、例えば、ウェーハの反り、及び搬送時におけるウェーハの割れ等が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-019461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、TAIKO研削技術により形成されるリング状補強部の内周上面角部には、ウェーハに研削砥石が食い付く際にウェーハの外周方向に向かってチッピングが発生する恐れがあるという問題があった。また、食い付き後の凹部形成にあたっても研削砥石の側面がリング状補強部の内周側面に接触することによって上記のチッピングは更に増加および増大する恐れがあるという問題があった。リング状補強部の内周上面角部に発生するチッピングは、チッピングによるウェーハ割れや、ウェットエッチング工程でチッピングを通過する薬液の影響によりリング状補強部の上面に凹部(波々形状)が形成されることによって金属膜形成不良、または、ダイシングテープの貼着不良に繋がるという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、TAIKO研削で形成されるリング状補強部の内周上面角部に形成されるチッピングを抑制できるウェーハの研削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のウェーハの研削方法は、表面にデバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが形成されたウェーハの裏面を研削し、円形凹部と該円形凹部を囲繞するリング状補強部とを形成するウェーハの研削方法であって、該ウェーハの裏面に熱圧着シートを固定する熱圧着シート固定ステップと、保持面に回転軸を有するチャックテーブルで該ウェーハの該表面側を保持する保持ステップと、環状の基台と該基台の自由端面に設けられた複数の研削砥石とを含み、複数の該研削砥石で形成される直径が該ウェーハの半径以下の研削ホイールを先端に装着したスピンドルを有する研削ユニットの該研削砥石の回転軌跡を該保持面の回転軸と重なる位置に位置づけた状態で、該研削ユニットと該チャックテーブルとを該スピンドルの回転軸方向に相対的に接近させ、該熱圧着シートの中央部を削り取るとともに該ウェーハの裏面側に該円形凹部と該リング状補強部とを形成する研削ステップと、該リング状補強部の上面に固定される該熱圧着シートを剥離する剥離ステップと、を備えるものである。
【0008】
該剥離ステップの後、または該研削ステップの後且つ該剥離ステップの前に、該円形凹部の底面をエッチングするエッチングステップと、該エッチングステップの後に、該円形凹部の底面に金属膜を形成する金属膜形成ステップと、を更に備えてもよい。
【0009】
該ウェーハの表面に保護部材を配設する保護部材配設ステップと、を更に備えてもよい。
【0010】
該熱圧着シートは、フィラーが添加されていてもよい。
【0011】
該熱圧着シートは、フィラーが添加されたフィラー有り層と、フィラーが添加されていないフィラー無し層と、が積層されて形成され、該熱圧着シートの少なくとも一方の面側に該フィラー無し層が積層されていてもよい。
【0012】
該熱圧着シート固定ステップでは、該熱圧着シートの該フィラー無し層が積層された側の面を該ウェーハの裏面に向けて、該ウェーハの裏面に該熱圧着シートを固定してもよい。
【0013】
該熱圧着シート固定ステップでは、該熱圧着シートの該フィラー無し層が積層された側の面を該ウェーハの裏面とは反対側に向けて、該ウェーハの裏面に該熱圧着シートを固定してもよい。
【0014】
該熱圧着シートは、該熱圧着シートの両面側に該フィラー無し層が積層され、該熱圧着シート固定ステップでは、該熱圧着シートの該フィラー無し層が積層された一方の面を該ウェーハの裏面に向けて、該熱圧着シートの該フィラー無し層が積層された他方の面を該ウェーハの裏面とは反対側に向けて、該ウェーハの裏面に該熱圧着シートを固定してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本願発明は、ウェーハの被研削面側である裏面側に熱圧着シートを固定した状態で、熱圧着シートを貫通させてTAIKO研削を実施するので、これによりリング状補強部の上面を熱圧着シートで補強及び保護した状態で研削するので、TAIKO研削で形成されるリング状補強部の内周上面角部に形成されるチッピングを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態1に係るウェーハの研削方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図2図2は、図1の熱圧着シート固定ステップを説明する斜視図である。
図3図3は、図1の熱圧着シート固定ステップを説明する側断面図である。
図4図4は、図1の保持ステップ及び研削ステップを説明する斜視図である。
図5図5は、図1の保持ステップ及び研削ステップを説明する側断面図である。
図6図6は、図1の研削ステップを説明する斜視図である。
図7図7は、図1の研削ステップを説明する側断面図である。
図8図8は、図1の研削ステップの要部を説明する側断面図である。
図9図9は、図1の研削ステップの要部を説明する側断面図である。
図10図10は、図1の金属膜形成ステップを説明する側断面図である。
図11図11は、図1の剥離ステップを説明する斜視図である。
図12図12は、図1の剥離ステップを説明する側断面図である。
図13図13は、比較例に係る研削ステップを説明する斜視図である。
図14図14は、比較例に係る研削ステップを説明する側断面図である。
図15図15は、比較例に係る研削ステップの要部を説明する上面図である。
図16図16は、比較例に係る研削ステップの要部を説明する上面図である。
図17図17は、実施形態2に係るウェーハの研削方法の熱圧着シート固定ステップで熱圧着する熱圧着シートを示す断面図である。
図18図18は、実施形態3及び実施形態4に係るウェーハの研削方法の熱圧着シート固定ステップで熱圧着する熱圧着シートを示す断面図である。
図19図19は、実施形態5に係るウェーハの研削方法の熱圧着シート固定ステップで熱圧着する熱圧着シートを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0018】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係るウェーハの研削方法を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係るウェーハの研削方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。実施形態1に係るウェーハの研削方法は、図1に示すように、熱圧着シート固定ステップ1001と、保護部材配設ステップ1002と、保持ステップ1003と、研削ステップ1004と、エッチングステップ1005と、金属膜形成ステップ1006と、剥離ステップ1007と、を備える。
【0019】
実施形態1に係るウェーハの研削方法の研削対象であるウェーハ100は、実施形態1では、図2に示すように、例えば、シリコン、サファイア、シリコンカーバイド(SiC)、ガリウムヒ素などを基板とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハ等である。ウェーハ100は、平坦な表面101に、互いに交差する複数の分割予定ラインによって区画されたそれぞれの領域にチップ状のデバイスが形成されたデバイス領域104と、デバイスが形成されておらず、デバイス領域104を囲繞する外周余剰領域105と、が形成されている。
【0020】
図2及び図3は、それぞれ、図1の熱圧着シート固定ステップ1001を説明する斜視図及び側断面図である。熱圧着シート固定ステップ1001は、図2及び図3に示すように、ウェーハ100の表面101の裏側の裏面102に熱圧着シート110を熱圧着して固定するステップである。
【0021】
熱圧着シート固定ステップ1001でウェーハ100の裏面102に固定する熱圧着シート110は、実施形態1では、少なくとも後述する研削ステップ1004により形成する円形凹部107(図6及び図7参照)を平面視で十分に覆うことが可能な形状及び大きさを有する。すなわち、熱圧着シート固定ステップ1001でウェーハ100の裏面102に固定する熱圧着シート110は、実施形態1では、少なくともデバイス領域104に対応するウェーハ100の裏面102の内側部分を平面視で十分に覆うことが可能な形状及び大きさを有する。熱圧着シート固定ステップ1001でウェーハ100の裏面102に固定する熱圧着シート110は、実施形態1では、図2及び図3に示すように、平面視でウェーハ100の裏面102と同等の形状及び大きさ、すなわち平面視でウェーハ100の裏面102と同等の直径を有する円形に形成される。
【0022】
熱圧着シート固定ステップ1001でウェーハ100の裏面102に固定する熱圧着シート110は、実施形態1では、粘着剤等の粘着性を有する合成樹脂から構成された層である糊層を有さず、熱可塑性樹脂をシート状に形成した熱可塑性樹脂シートである。熱圧着シート固定ステップ1001でウェーハ100の裏面102に固定する熱圧着シート110を構成する材料の熱可塑性樹脂は、温度が10℃以上30℃以下での貯蔵弾性率は1×10Pa以上1×10Pa以下であり、温度が80℃以上100℃以下での貯蔵弾性率は1×10Pa以上1×10Pa以下である。
【0023】
貯蔵弾性率は、損失弾性率(動的損失弾性率)や損失正接とともに動的弾性率測定(Dynamic Mechanical Analysis、DMA)によって測定される。具体的には、貯蔵弾性率は、日本工業規格のJIS K 7244-4(非共振強制振動法)、JIS K 7244-5(曲げモード)及びJIS K 7244-6(せん断モード)のいずれかに従う方法で測定される。なお、日本工業規格によれば、貯蔵弾性率は、0.01GPa(1×10Pa)より小さい場合にはJIS K 7244-6(せん断モード)に従う方法で測定することが好ましく、0.01GPa以上5GPa以下(1×10Pa以上5×10Pa以下)である場合にはJIS K 7244-4(非共振強制振動法)に従う方法で測定することが好ましく、5GPa(5×10Pa)より大きい場合にはJIS K 7244-5(曲げモード)に従う方法で測定することが好ましいとされている。
【0024】
貯蔵弾性率は、一般に測定時の温度及び測定時に加える変形の周波数(速度)によって変化する。熱圧着シート110を構成する熱可塑性樹脂は、より詳細には、温度が10℃以上30℃以下、及び、変形の周波数が0.01Hz以上10Hz以下の条件下において測定した貯蔵弾性率が1×10Pa以上1×10Pa以下であり、温度が80℃以上100℃以下、及び、変形の周波数が0.01Hz以上10Hz以下の条件下において測定した貯蔵弾性率は1×10Pa以上1×10Pa以下である。
【0025】
熱圧着シート固定ステップ1001でウェーハ100の裏面102に固定する熱圧着シート110を構成する材料の熱可塑性樹脂は、上記のような貯蔵弾性率を有し、温度が上昇することにより貯蔵弾性率が低下する性質を有するため、糊層を有さず、かつ、加熱することによりウェーハ100の裏面102に熱圧着して固定することが可能となる。なお、樹脂の貯蔵弾性率が1×10Pa未満である場合、当該樹脂がべたつき、粘着性が強過ぎるため、糊層を形成してしまう。樹脂の貯蔵弾性率が1×10Paより高い場合、当該樹脂が硬すぎて、ウェーハ100の裏面102に固定されない恐れがある。
【0026】
熱圧着シート固定ステップ1001でウェーハ100の裏面102に固定する熱圧着シート110は、具体的には、ポリオレフィン(Poly Olefine、PO)系の樹脂化合物をシート状に形成したポリオレフィンシートであり、例えば、ポリエチレン(Poly Ethylene、PE)をシート状に形成したポリエチレンシート、ポリプロピレン(Poly Propylene、PP)をシート状に形成したポリプロピレンシート、ポリスチレン(Poly Styrene、PS)をシート状に形成したポリスチレンシート等である。
【0027】
熱圧着シート固定ステップ1001では、まず、図2及び図3に示すように、ウェーハ100より平面視で十分に大きい保持テーブル10上に、ウェーハ100の裏面102側を上方に向けて露出させて載置し、ウェーハ100の裏面102上に少なくともデバイス領域104に対応するウェーハ100の裏面102の内側部分を平面視で十分に覆うように熱圧着シート110を載置する。なお、熱圧着シート固定ステップ1001では、本発明ではこれに限定されず、保持テーブル10上に熱圧着シート110を載置し、熱圧着シート110上に、ウェーハ100を、ウェーハ100の裏面102側を熱圧着シート110に向けて載置してもよい。
【0028】
熱圧着シート固定ステップ1001では、次に、熱圧着シート110を所定の温度(実施形態1では例えば50~150℃)で加熱して軟化させながら、ウェーハ100と熱圧着シート110とを厚み方向に沿って互いに接近させる方向に所定の押圧力(実施形態1では例えば0.3MPa以上)で所定の時間(実施形態1では例えば30秒以上)押圧することにより、熱圧着シート110をウェーハ100の裏面102に熱圧着して固定する。熱圧着シート固定ステップ1001では、保持テーブル10の内部もしくは平面視で熱圧着シート110を十分に覆う形状及び大きさを有する不図示の押圧部材の内部に備えられた熱源により熱圧着シート110を加熱しながら、この押圧部材で押圧して、熱圧着してもよい。また、熱圧着シート固定ステップ1001では、保持テーブル10の内部もしくは不図示の押圧ローラの内部に備えられた熱源により熱圧着シート110を加熱しながら、不図示の押圧ローラを、熱圧着シート110を介してウェーハ100の裏面102上の一端から他端まで回転移動させることにより押圧して、熱圧着してもよい。また、熱圧着シート固定ステップ1001では、赤外線によって、熱圧着シート110、ウェーハ100及び保持テーブル10の少なくともいずれかを加熱してもよい。
【0029】
もしくは、熱圧着シート固定ステップ1001では、不図示のローラを、熱圧着シート110を介してウェーハ100の裏面102上の一端から他端まで回転移動させることにより、熱圧着シート110をウェーハ100の裏面102上に密着させた後に、熱圧着シート110側から工業用ドライヤーで所定の温度(実施形態1では例えば150℃以上)の熱風を吹き付けることにより熱圧着シート110を加熱して軟化させることで、熱圧着シート110をウェーハ100に向けて押圧することなく、すなわち押圧力が0MPa下で、軟化した熱圧着シート110をウェーハ100の裏面102に熱圧着して固定してもよい。
【0030】
熱圧着シート固定ステップ1001では、実施形態1では、このように糊層のない熱圧着シート110をウェーハ100の裏面102に熱圧着して固定するので、追って実施する研削ステップ1004において熱圧着シート110の中央部111を削り取る際に、研削ホイール32(図4等参照)の研削砥石34(図4等参照)の研削面に粘着性を有する糊層が付着するといった研削における不具合が発生する恐れがなく、また、追って実施する剥離ステップ1007において熱圧着シート110の外周部112(図6及び図7等参照)をリング状補強部108の上面から剥離する際に、リング状補強部108の上面に粘着性を有する糊層が残ってしまうといった不具合が発生する恐れがない。
【0031】
保護部材配設ステップ1002は、ウェーハ100の表面101に保護部材を配設するステップである。保護部材配設ステップ1002でウェーハ100の表面101に配設する保護部材は、実施形態1では、例えば、平面視でウェーハ100の表面101と同等の形状及び大きさ、すなわち平面視でウェーハ100の表面101と同等の直径を有する円形に形成される。
【0032】
保護部材配設ステップ1002でウェーハ100の表面101に配設する保護部材は、実施形態1では、例えば、基材層と糊層(粘着層)とを有する粘着テープである。ここで、糊層は、粘着剤等の粘着性を有する合成樹脂から構成されており、基材層の一方の面に積層される。基材層は、合成樹脂から構成されている。このような粘着テープである保護部材は、実施形態1では、糊層側がウェーハ100の表面101に貼着される。保護部材配設ステップ1002でウェーハ100の表面101に配設された保護部材は、ウェーハ100の表面101を保護するものとなる。
【0033】
なお、保護部材配設ステップ1002でウェーハ100の表面101に配設する保護部材は、本発明では基材層と糊層とを有する形態に限定されず、熱圧着シート110と同様に糊層を有さず熱可塑性樹脂をシート状に形成した熱可塑性樹脂シートでもよく、この場合、保護部材配設ステップ1002では、熱可塑性樹脂シートである保護部材を熱圧着シート固定ステップ1001と同様の方法でウェーハ100の表面101に熱圧着して固定する。
【0034】
実施形態1に係るウェーハの研削方法では、熱圧着シート固定ステップ1001の後に保護部材配設ステップ1002を実施しているが、本発明ではこれに限定されず、熱圧着シート固定ステップ1001の前に保護部材配設ステップ1002を実施してもよいし、保護部材配設ステップ1002を実施せずに省略しても構わない。なお、本願の図面では、保護部材配設ステップ1002でウェーハ100の表面101に配設した保護部材の図示を省略している。
【0035】
図4及び図5は、それぞれ、図1の保持ステップ1003及び研削ステップ1004を説明する斜視図及び側断面図である。保持ステップ1003は、図4及び図5に示すように、保持面23に回転軸25を有するチャックテーブル20でウェーハ100の表面101側を保持するステップである。
【0036】
保持ステップ1003でウェーハ100の表面101側を保持するチャックテーブル20は、図4及び図5に示すように、凹部が形成された円盤状の枠体21と、凹部内に嵌め込まれた円盤形状の吸着部22と、を備える。チャックテーブル20の吸着部22は、多数のポーラス孔を備えたポーラスセラミック等から形成され、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続されている。チャックテーブル20の吸着部22の上面は、載置されたウェーハ100を下方側から吸引保持する保持面23である。枠体21の上面と保持面23とは、実施形態1では、図5に示すように、チャックテーブル20の保持面23の中心24を頂点とし、外周が僅かに低い円錐面状に形成されている。なお、保持面23は、本発明ではこれに限定されず、平坦に形成されていてもよい。
【0037】
保持ステップ1003でウェーハ100の表面101側を保持するチャックテーブル20は、チャックテーブル20の枠体21の下方に接続された不図示の回転駆動源により、保持面23の中心24を通り、保持面23を形成する円錐の底面に直交する回転軸25回りに回転自在に設けられている。チャックテーブル20は、不図示の回転軸調整ユニットにより、回転軸25が鉛直方向に平行なZ軸方向に対して所定の範囲内の傾斜角だけ傾斜することができ、これに伴い、保持面23は、保持面23を形成する円錐の底面がXY平面に平行な水平面に対して同じ傾斜角だけ傾斜することができる。チャックテーブル20は、不図示の移動ユニットにより、一定の範囲内で水平方向と平行に移動自在に設けられている。
【0038】
保持ステップ1003では、まず、熱圧着シート固定ステップ1001及び保護部材配設ステップ1002の実施後に、不図示の搬送パッドにより、熱圧着シート固定ステップ1001でウェーハ100の裏面102に熱圧着して固定した熱圧着シート110の露出面側を上方から吸着保持して、チャックテーブル20の保持面23上に搬送し、チャックテーブル20の保持面23上で吸着保持を解除することで、図4及び図5に示すように、チャックテーブル20の保持面23上に、ウェーハ100を、ウェーハ100の表面101側を保持面23側に向けて載置する。保持ステップ1003では、次に、チャックテーブル20の保持面23上に載置したウェーハ100について、ウェーハ100の熱圧着シート固定ステップ1001で熱圧着シート110が固定された裏面102側を上方に露出させた状態で、チャックテーブル20の保持面23でウェーハ100の表面101側を吸引保持する。なお、保持ステップ1003では、保護部材配設ステップ1002を実施してウェーハ100の表面101に保護部材を配設している場合には、チャックテーブル20の保持面23でウェーハ100の表面101側を、保護部材を介して吸引保持する。
【0039】
図6及び図7は、それぞれ、図1の研削ステップ1004を説明する斜視図及び側断面図である。研削ステップ1004は、図4図5図6及び図7に示すように、環状の基台33と基台33の自由端面に設けられた複数の研削砥石34とを含み、複数の研削砥石34で形成される直径35がウェーハ100の半径以下の研削ホイール32を先端に装着したスピンドル31を有する研削ユニット30の研削砥石34の回転軌跡を、チャックテーブル20の保持面23の回転軸25と重なる位置に位置づけた状態で、研削ユニット30とチャックテーブル20とをスピンドル31の回転軸36の方向に相対的に接近させ、熱圧着シート110の中央部111を削り取るとともにウェーハ100の裏面102側に円形凹部107とリング状補強部108とを形成するステップである。
【0040】
研削ステップ1004を実施する研削ユニット30は、図4図5図6及び図7に示すように、スピンドル31と、研削ホイール32と、を備える。スピンドル31は、鉛直方向(Z軸方向)に平行な回転軸36回りに回転可能に設けられ、下側に向けられた先端(下端)に着脱可能に装着された研削ホイール32を鉛直方向に平行な回転軸36回りに回転可能に支持する。
【0041】
研削ホイール32は、環状の基台33と、複数の研削砥石34と、を含んで構成される。複数の研削砥石34は、環状の基台33の下側に向けられた自由端面(下面)に設けられており、研削ホイール32がスピンドル31の先端に装着された際の環状の基台33の回転軸36を中心とするウェーハ100の半径以下の直径35の環状に配置されている。ここで、直径35は、回転軸36と、回転軸36から基台33の自由端面に沿う方向に最も離れた研削砥石34の外周側の端との間の距離(長さ)で定められる。複数の研削砥石34は、研削ホイール32がスピンドル31の先端に装着されて回転軸36回りに回転することで、各研削砥石34の径方向の幅に概ね相当する幅を有し、外周の直径が直径35と同等となる円環状の回転軌跡を描く。研削砥石34は、実施形態1では、例えば、ダイヤモンド、cBN(cubic Boron Nitride)等の砥粒を、メタルボンド、レジンボンド、ビトリファイドボンド等のボンド材(結合材)で固定することによって形成されている。
【0042】
研削ステップ1004を実施する研削ユニット30は、スピンドル31が、チャックテーブル20の保持面23に、鉛直方向に対向するように配置されている。チャックテーブル20の回転軸25と、研削ユニット30のスピンドル31及び研削ホイール32の回転軸36とが、水平方向にずれて配設されており、チャックテーブル20を水平方向と平行に移動させることで、研削ホイール32の研削砥石34でウェーハ100の裏面102側を研削する際の研削ホイール32の研削砥石34側の研削面及びウェーハ100の裏面102側の被研削面の面内における、回転軸25と回転軸36との間の水平方向のずれを調整できる。
【0043】
研削ステップ1004を実施する研削ユニット30は、さらに、不図示の研削送りユニットと、不図示の研削流体供給ユニットと、を備える。研削送りユニットは、研削ユニット30のスピンドル31及びスピンドル31に装着された研削ホイール32をチャックテーブル20に対して研削送り方向(鉛直方向と平行なZ軸方向)に沿って相対的に移動させる研削送りをすることにより、スピンドル31及び研削ホイール32とチャックテーブル20とを相対的に研削送り方向に沿って接近および離間させる。
【0044】
研削送りユニットは、モータと、ボールねじと、ガイドと、を有する公知のボールねじ機構である。研削送りユニットは、Z軸の軸心回りに回転自在に設けられたボールねじと、ボールねじを軸心回りに回転させるモータと、スピンドル31をZ軸方向に移動自在に支持するガイドと、を有して構成されている。研削送りユニットは、不図示の制御ユニットにより、モータの駆動が制御されることにより、送り速度、及び、送り量等が制御される。ここで、送り速度は、研削送りユニットにより、スピンドル31及び研削ホイール32をチャックテーブル20に対してZ軸方向に沿って相対的に接近および離間させる速度のことを指す。また、送り量は、研削送りユニットによりスピンドル31及び研削ホイール32をチャックテーブル20に対してZ軸方向に沿って相対的に接近および離間させた量(高さ)のことを指す。送り速度は、単位時間当たりの送り量となる。
【0045】
研削送りユニットは、モータの回転位置を読み取るエンコーダを含み、エンコーダが読み取ったモータの回転位置に基づいて、スピンドル31のチャックテーブル20に対するZ軸方向の相対的な位置を検出し、検出した相対的な位置を不図示の制御ユニットに出力する。また、研削送りユニットは、研削開始前、研削中及び研削終了後に、例えば一定時間毎(例えば、毎秒)に、スピンドル31のチャックテーブル20に対するZ軸方向の相対的な位置を検出することにより、送り速度や送り量を検出し、検出した送り速度や送り量を不図示の制御ユニットに出力する。なお、研削送りユニットは、エンコーダによりスピンドル31のチャックテーブル20に対するZ軸方向の相対的な位置を検出する構成に限定されず、Z軸方向に平行なリニアスケールと、研削送りユニットによりZ軸方向に移動自在に設けられリニアスケールの目盛を読み取る読み取りヘッドと、により構成してもよい。
【0046】
研削流体供給ユニットは、不図示の研削流体供給源と接続されており、不図示の研削流体供給源から供給される純水等の研削流体(研削水)を、チャックテーブル20に保持されたウェーハ100の裏面102側に向けて供給する。
【0047】
研削ステップ1004では、図4図5図6及び図7に示すように、まず、チャックテーブル20を水平方向と平行に移動させることで、研削ホイール32の研削砥石34でウェーハ100の裏面102側を研削する際の研削ホイール32の研削砥石34側の研削面及びウェーハ100の裏面102側の被研削面の面内における、回転軸25と回転軸36との間の水平方向のずれを調整することにより、研削砥石34の円環状の回転軌跡を、チャックテーブル20の保持面23の回転軸25と重なり、なおかつ、チャックテーブル20に保持されたウェーハ100の裏面102の外周余剰領域105に対応する領域である外周エッジ部分106の内周に内接する位置(所定研削位置、と称する。)に位置づける。
【0048】
研削ステップ1004では、研削砥石34の回転軌跡を所定研削位置に位置付けた後、次に、研削砥石34の回転軌跡を所定研削位置に位置付けた状態で、研削ユニット30のスピンドル31を鉛直方向に平行な回転軸36回りに回転駆動することにより、スピンドル31の下端に装着した研削ホイール32を鉛直方向に平行な回転軸36回りに回転させつつ、スピンドル31に対向配置された、ウェーハ100を保持するチャックテーブル20を回転軸25回りに回転させて、回転させたチャックテーブル20に保持されたウェーハ100に対し、研削流体供給ユニットにより研削流体を供給しながら、研削送りユニットにより、回転する研削ホイール32を研削送り方向に沿って押圧することによって、研削ホイール32の研削砥石34でチャックテーブル20に保持されたウェーハ100の裏面102側を研削する。
【0049】
研削ステップ1004では、このように研削することにより、ウェーハ100の裏面102側を研削ホイール32の研削砥石34の研削面に沿って研削して、ウェーハ100の裏面102側の被研削面を研削面と平行に形成する。研削ステップ1004では、そして、図6及び図7に示すように、研削ホイール32の研削砥石34により、ウェーハ100の裏面102側に熱圧着して固定した熱圧着シート110の中央部111を削り取り、さらにウェーハ100のデバイス領域104に対応するウェーハ100の裏面102の内側部分のみを研削して薄化することにより、ウェーハ100の裏面102側に円形凹部107と円形凹部107を囲繞するリング状補強部108とを形成する所謂TAIKO(登録商標)研削を実施する。
【0050】
ここで、熱圧着シート110の中央部111は、熱圧着シート110において、ウェーハ100の外周エッジ部分106の内側のデバイス領域104に対応する部分である。また、研削ステップ1004では、円形凹部107は、ウェーハ100の裏面102側において、ウェーハ100のデバイス領域104に対応する平面視での形状及び大きさに形成され、リング状補強部108は、ウェーハ100の裏面102側において、ウェーハ100の外周エッジ部分106に対応する平面視での形状及び大きさに形成される。
【0051】
研削ステップ1004では、研削送りユニットにより送り量を検出しながら研削ホイール32の研削砥石34でウェーハ100の裏面102側を研削するので、形成する円形凹部107の、リング状補強部108の上面を基準とするウェーハ100の厚み方向の深さを制御できる。なお、送り量を制御しながらの研削では、研削ユニット30の撓みや研削ホイール32の消耗等によって円形凹部107の深さに誤差が生じる恐れがあるため、別途非接触式の厚み測定器等を使用して、円形凹部107の深さを測定することが好ましい。
【0052】
研削ステップ1004では、図6及び図7に示すように、熱圧着シート110の外周エッジ部分106に対応する部分である外周部112を削り取らないため、熱圧着シート110の外周部112がリング状補強部108の上面に熱圧着されて固定された状態で残存する。
【0053】
図8及び図9は、いずれも、図1の研削ステップ1004の要部を説明する側断面図である。研削ステップ1004では、図8に示すように、ウェーハ100の裏面102側に熱圧着して固定した熱圧着シート110の中央部111を削り取り、ウェーハ100の裏面102に研削ホイール32の研削砥石34が食い付く際に、熱圧着シート110の外周部112が、リング状補強部108の上面を補強及び保護することにより、リング状補強部108の内周上面角部にウェーハ100の外周方向に向かってチッピング200(図16参照)が発生する恐れを抑制する。
【0054】
また、研削ステップ1004では、図9に示すように、研削ホイール32の研削砥石34がウェーハ100の裏面102側に食い付き後に円形凹部107を形成する際に、研削砥石34の外周側面がリング状補強部108の内周側面に接触する際にも、熱圧着シート110の外周部112が、リング状補強部108の上面を補強及び保護しつつ、内周面側で研削砥石34の外周側面にも接触することにより、リング状補強部108の内周上面角部にウェーハ100の外周方向に向かうチッピング200が増加及び増大する恐れを抑制する。
【0055】
このように、研削ステップ1004では、ウェーハ100の外周方向に向かってチッピング200が発生する恐れ、並びに、ウェーハ100の外周方向に向かうチッピング200が増加及び増大する恐れを抑制するので、チッピング200によるウェーハ100の割れを抑制するとともに、追って実施するエッチングステップ1005においてウェットエッチングする場合にチッピング200を通過する薬液の影響によりリング状補強部108の上面に凹部(波々形状)が形成される恐れを抑制でき、これにより、追って実施する金属膜形成ステップ1006において形成する金属膜120(図10参照)の形成不良や、ダイシングテープの貼着不良が起きる恐れを抑制できる。
【0056】
エッチングステップ1005は、研削ステップ1004で形成した円形凹部107の底面109をエッチングするステップである。エッチングステップ1005では、実施形態1では、例えばウェットエッチングを実施して、円形凹部107の底面109に薬液を供給することにより、薬液により円形凹部107の底面109をエッチングして、研削ステップ1004で円形凹部107の底面109に形成された研削痕を除去するとともに、円形凹部107の底面109を追って実施する金属膜形成ステップ1006で金属膜120を好適に形成できる表面状態に改質する。なお、エッチングステップ1005は、本発明では薬液を使用するウェットエッチングに限定されず、例えば、プラズマを使用するプラズマエッチングでもよい。
【0057】
図10は、図1の金属膜形成ステップ1006を説明する側断面図である。金属膜形成ステップ1006は、エッチングステップ1005の後に、図10に示すように、円形凹部107の底面109に金属膜120を形成するステップである。金属膜形成ステップ1006では、実施形態1では、例えば金属蒸着やスパッタリング等により、円形凹部107の底面109及び側面等に金属膜120を形成する。
【0058】
実施形態1では、研削ステップ1004の後且つ剥離ステップ1007の前に、リング状補強部108の上面に熱圧着シート110の外周部112が熱圧着されて固定された状態で、エッチングステップ1005及び金属膜形成ステップ1006を実施するため、熱圧着シート110の外周部112が、リング状補強部108の上面を、ウェットエッチングの薬液が供給されない状態、かつ、金属膜120が形成されない状態に維持するマスクとして機能できる。ここで、金属膜形成ステップ1006で金属膜120が熱圧着シート110の外周部112上に形成された場合、熱圧着シート110の外周部112上に形成された金属膜120は、追って実施する剥離ステップ1007で、熱圧着シート110の外周部112と共に剥離されるので、熱圧着シート110の外周部112上において金属膜120が所々剥離してしまう状態となってしまう恐れを抑制する。なお、実施形態1では、研削ステップ1004の後且つ剥離ステップ1007の前に、エッチングステップ1005及び金属膜形成ステップ1006を実施しているが、本発明ではこれに限定されず、剥離ステップ1007の後に実施しても良い。
【0059】
図11及び図12は、それぞれ、図1の剥離ステップ1007を説明する斜視図及び側断面図である。剥離ステップ1007は、図11及び図12に示すように、リング状補強部108の上面に固定される熱圧着シート110を剥離するステップである。剥離ステップ1007では、研削ステップ1004で残存させたリング状補強部108の上面に熱圧着されて固定された熱圧着シート110の外周部112を、リング状補強部108の上面から剥離する。
【0060】
図13及び図14は、それぞれ、比較例に係る研削ステップを説明する斜視図及び側断面図である。図15及び図16は、いずれも、比較例に係る研削ステップの要部を説明する上面図である。図15は、比較例に係る研削ステップを実施後のウェーハ100の裏面102側全体を示す上面図であり、図16は、図15のXVIに示す部分を拡大した拡大図である。実施形態1をより明確に説明するため、従来技術に基づく比較例について、実施形態1と比較する形で説明する。比較例は、実施形態1において、実施形態1の要部である熱圧着シート固定ステップ1001及び熱圧着シート固定ステップ1001に伴って実施する剥離ステップ1007を省略して、研削ステップ1004と同様の研削ステップを実施するように変更したものである。このような比較例において、図13及び図14に示すように、研削ホイール32の研削砥石34で、熱圧着シート110が固定されていないウェーハ100の裏面102の内側部分のみを研削して薄化すると、ウェーハ100の裏面102に研削ホイール32の研削砥石34が食い付く際に、図16に示すように、リング状補強部108の内周上面角部にウェーハ100の外周方向に向かってチッピング200が発生する恐れがあり、研削ホイール32の研削砥石34がウェーハ100の裏面102側に食い付き後に円形凹部107を形成する際に、研削砥石34の外周側面がリング状補強部108の内周側面に接触する際にも、リング状補強部108の内周上面角部に形成されたウェーハ100の外周方向に向かうチッピング200が増加及び増大する恐れがあった。
【0061】
このような比較例に対し、実施形態1では、研削ステップ1004の実施前に熱圧着シート固定ステップ1001を実施して、研削ステップ1004において研削ホイール32の研削砥石34で研削する側の面であるウェーハ100の裏面102に熱圧着シート110を熱圧着して固定する。このため、実施形態1では、ウェーハ100の裏面102に研削ホイール32の研削砥石34が食い付く際、及び、研削ホイール32の研削砥石34がウェーハ100の裏面102側に食い付き後に円形凹部107を形成する際の、研削砥石34の外周側面がリング状補強部108の内周側面に接触する際に、熱圧着シート110の外周部112が、リング状補強部108の上面を補強及び保護すること、及び、さらに内周面側で研削砥石34の外周側面にも接触することにより、リング状補強部108の内周上面角部にウェーハ100の外周方向に向かってチッピング200が発生する恐れ、及び、リング状補強部108の内周上面角部にウェーハ100の外周方向に向かうチッピング200が増加及び増大する恐れを抑制できる。
【0062】
以上のような構成を有する実施形態1に係るウェーハの研削方法は、ウェーハ100の被研削面側である裏面102側に熱圧着シート110を固定した状態で、熱圧着シート110を貫通させてTAIKO研削を実施するので、これによりリング状補強部108の上面を熱圧着シート110で補強及び保護した状態で研削するので、TAIKO研削で形成されるリング状補強部108の内周上面角部に形成されるチッピング200を抑制できるという作用効果を奏する。
【0063】
また、実施形態1に係るウェーハの研削方法は、剥離ステップ1007の後、または研削ステップ1004の後且つ剥離ステップ1007の前に、エッチングステップ1005と、金属膜形成ステップ1006と、を更に備える。このため、実施形態1に係るウェーハの研削方法は、さらに、エッチングステップ1005においてウェットエッチングする場合にチッピング200を通過する薬液の影響によりリング状補強部108の上面に凹部(波々形状)が形成される恐れを抑制でき、これにより、金属膜形成ステップ1006において形成する金属膜120の形成不良が起きる恐れを抑制できる。
【0064】
また、実施形態1に係るウェーハの研削方法は、ウェーハ100の表面101に保護部材を配設する保護部材配設ステップ1002と、を更に備える。このため、実施形態1に係るウェーハの研削方法は、さらに、保持ステップ1003以降のステップの実施の際に、ウェーハ100のチップ状のデバイスが形成された表面101を保護することができる。
【0065】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係るウェーハの研削方法を図面に基づいて説明する。図17は、実施形態2に係るウェーハの研削方法の熱圧着シート固定ステップ1001で熱圧着する熱圧着シート110-2を示す断面図である。図17は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0066】
実施形態2に係るウェーハの研削方法は、実施形態1において、熱圧着シート固定ステップ1001でウェーハ100の裏面102に固定する熱圧着シート110を、図17に示す熱圧着シート110-2に変更したものであり、その他の構成は実施形態1と同様である。
【0067】
実施形態2で使用する熱圧着シート110-2は、図17に示すように、実施形態1で使用する熱圧着シート110において、さらにフィラー130が添加されたものである。具体的には、実施形態2で使用する熱圧着シート110-2は、実施形態1で使用する熱圧着シート110を構成する熱可塑性樹脂と同様の熱可塑性樹脂にフィラー130が添加されたフィラー130入りの熱可塑性樹脂をシート状に形成したフィラー130入りの熱可塑性樹脂シートである。
【0068】
実施形態2で熱圧着シート110-2に添加されるフィラー130は、例えば、大きさが0.1nm以上400nm以下である。実施形態2で熱圧着シート110-2に添加されるフィラー130は、粒状であるが、本発明ではこれに限定されず、繊維のような柱状等の形状を有していてもよい。なお、本明細書では、フィラー130の大きさは、フィラー130の粒子径で定義される。粒子径の表し方には、幾何学的径、相当径等の既知の手法がある。幾何学的径には、フェレー(Feret)径、定方向最大径(即ち、Krummbein径)、Martin径、ふるい径等があり、相当径には、投影面積円相当径(即ち、Heywood径)、等表面積球相当径、等体積球相当径、ストークス径、光散乱径等がある。フィラー130が繊維のような柱状等の形状を有している場合でも、前述のフィラー130が粒状である場合と同様の方法で、フィラー130の大きさを定義できる。
【0069】
実施形態2で熱圧着シート110-2に添加されるフィラー130は、無機充填剤であることが好ましく、具体的には、溶融シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、クレー、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、酸化鉄、酸化チタン、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、マイカ、ガラス、石英、雲母等が好適に使用される。また、実施形態2で熱圧着シート110-2に添加されるフィラー130は、上記の2種類以上を混合して使用しても良い。実施形態2で熱圧着シート110-2に添加されるフィラー130は、上記した無機充填剤のうち、溶融シリカや結晶性シリカ等のシリカ類が使用されることが好ましく、この場合、フィラー130のコストを好適に抑制することができる。
【0070】
熱圧着シート110-2において、熱可塑性樹脂のうちフィラー130の含有割合(混合割合)は、0.01wt%~90wt%の範囲で変更可能であり、フィラー130の含有割合が多い方が、研削砥石34により研削加工されることで研削砥石34の砥粒を覆っているボンド材を除去して砥粒を突出させて研削砥石34を目立てして研削砥石34の研削加工品質を向上させるドレッシング効果も高くなるが、フィラー130の含有割合が多すぎると、熱圧着シート110-2がウェーハ100の裏面102に熱圧着しにくくなったり、全体が脆くなったりする可能性があるため、適宜の割合が選択される。
【0071】
実施形態2に係るウェーハの研削方法の研削ステップ1004は、実施形態1に係るウェーハの研削方法の研削ステップ1004において、熱圧着シート110の中央部111を削り取ることに代えて、フィラー130が添加された熱圧着シート110-2の中央部111を削り取るように変更したものである。実施形態2に係るウェーハの研削方法は、研削ステップ1004において、研削砥石34でフィラー130が添加された熱圧着シート110-2の中央部111を研削する際に、熱圧着シート110-2に添加されて混合されたフィラー130により、研削砥石34をドレッシングするドレッシング効果が得られる。
【0072】
以上のような構成を有する実施形態2に係るウェーハの研削方法は、実施形態1において、熱圧着シート固定ステップ1001でウェーハ100の裏面102に固定する熱圧着シート110を、さらにフィラー130を添加した熱圧着シート110-2に変更したものである。このため、実施形態2に係るウェーハの研削方法は、実施形態1と同様の効果を奏するとともに、さらに、研削ステップ1004において、研削砥石34でフィラー130が添加された熱圧着シート110-2の中央部111を研削する際に、熱圧着シート110-2に添加されて混合されたフィラー130により、研削砥石34をドレッシングすることで、研削砥石34の研削加工品質の悪化を抑制でき、これにより、TAIKO研削で形成されるリング状補強部108の内周上面角部に形成されるチッピング200をより好適に抑制できるという作用効果を奏するものとなる。
【0073】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3に係るウェーハの研削方法を図面に基づいて説明する。図18は、実施形態3及び実施形態4に係るウェーハの研削方法の熱圧着シート固定ステップ1001で熱圧着する熱圧着シート110-3を示す断面図である。図18は、実施形態1及び実施形態2と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0074】
実施形態3に係るウェーハの研削方法は、実施形態1,2において、熱圧着シート固定ステップ1001でウェーハ100の裏面102に固定する熱圧着シート110,110-2を、図18に示す熱圧着シート110-3に変更し、熱圧着シート110-3のフィラー無し層132が積層された側の面をウェーハ100の裏面102に向けて、ウェーハ100の裏面102に熱圧着シート110-3を固定するように変更したものであり、その他の構成は実施形態1,2と同様である。
【0075】
実施形態3で使用する熱圧着シート110-3は、図18に示すように、フィラー有り層131と、フィラー無し層132と、が積層されて形成され、熱圧着シート110-3の少なくとも一方の面側にフィラー無し層132が積層されたものである。ここで、フィラー有り層131は、実施形態2の熱圧着シート110-2と同様に、実施形態1で使用する熱圧着シート110を構成する熱可塑性樹脂と同様の熱可塑性樹脂にフィラー130が添加されたフィラー130入りの熱可塑性樹脂がシート状(層状)に形成されたものである。また、フィラー無し層132は、実施形態1で使用する熱圧着シート110を構成する熱可塑性樹脂と同様の熱可塑性樹脂にフィラー130が添加されていないフィラー130無しの熱可塑性樹脂がシート状(層状)に形成されたものである。
【0076】
なお、実施形態3で使用する熱圧着シート110-3は、図18に示す例では、フィラー有り層131とフィラー無し層132とがそれぞれ1枚ずつ積層されているが、本発明ではこれに限定されず、フィラー有り層131とフィラー無し層132とがそれぞれ少なくとも1枚ずつ積層されており、かつ、熱圧着シート110-3の少なくとも一方の面側にフィラー無し層132が積層されていれば、フィラー有り層131が複数枚積層されていてもよく、フィラー無し層132が複数枚積層されていてもよい。
【0077】
実施形態3に係るウェーハの研削方法では、ウェーハ100の裏面102にフィラー有り層131が接触しないため、ウェーハ100の裏面102にフィラー130が接触しないので、フィラー130によってウェーハ100の裏面102側が汚染してしまう恐れを抑制できる。
【0078】
実施形態3に係るウェーハの研削方法の研削ステップ1004は、実施形態1に係るウェーハの研削方法の研削ステップ1004において、熱圧着シート110の中央部111を削り取ることに代えて、熱圧着シート110-3のフィラー130が添加されたフィラー有り層131とフィラー130が添加されていないフィラー無し層132の中央部111を削り取るように変更したものである。実施形態3に係るウェーハの研削方法は、研削ステップ1004において、研削砥石34でフィラー130が添加されたフィラー有り層131の中央部111を研削する際に、フィラー有り層131に添加されて混合されたフィラー130により、研削砥石34をドレッシングするドレッシング効果が得られる。
【0079】
以上のような構成を有する実施形態3に係るウェーハの研削方法は、実施形態1,2において、熱圧着シート固定ステップ1001でウェーハ100の裏面102に固定する熱圧着シート110,110-2を、さらにフィラー有り層131とフィラー無し層132とが積層されて形成され、少なくとも一方の面側にフィラー無し層132が積層された熱圧着シート110-3に変更し、熱圧着シート110-3のフィラー無し層132が積層された側の面をウェーハ100の裏面102に向けて、ウェーハ100の裏面102に熱圧着シート110-3を固定するように変更したものである。このため、実施形態3に係るウェーハの研削方法は、実施形態1,2と同様の効果を奏するとともに、さらに、研削ステップ1004において研削砥石34でフィラー有り層131を研削する際に研削砥石34をドレッシングすることで研削砥石34の研削加工品質の悪化を抑制できることを維持しながら、フィラー無し層132によりウェーハ100の裏面102にフィラー130が接触することを回避して、フィラー130によってウェーハ100の裏面102側が汚染してしまう恐れを抑制できる、という作用効果を奏するものとなる。
【0080】
〔実施形態4〕
本発明の実施形態4に係るウェーハの研削方法を図面に基づいて説明する。実施形態4に係るウェーハの研削方法は、実施形態3において、熱圧着シート固定ステップ1001で熱圧着シート110-3のフィラー無し層132側をウェーハ100の裏面102に向けて固定することに代えて、熱圧着シート110-3のフィラー無し層132側をウェーハ100の裏面102とは反対側の面に向けて、ウェーハ100の裏面102に熱圧着シート110-3を固定するように変更したものであり、その他の構成は実施形態3と同様である。
【0081】
実施形態4に係るウェーハの研削方法では、保持ステップ1003で、搬送パッドにより、熱圧着シート固定ステップ1001でウェーハ100の裏面102に熱圧着して固定した熱圧着シート110-4のフィラー無し層132側を上方から吸着保持して、チャックテーブル20の保持面23上に搬送するので、搬送パッドにフィラー有り層131が接触しないため、搬送パッドにフィラー130が接触しないので、フィラー130によって搬送パッドが汚染してしまう恐れを抑制できる。
【0082】
実施形態4に係るウェーハの研削方法は、実施形態3に係るウェーハの研削方法と同様に、研削ステップ1004において、研削砥石34でフィラー130が添加された熱圧着シート110-3のフィラー有り層131の中央部111を研削する際に、フィラー有り層131に添加されて混合されたフィラー130により、研削砥石34をドレッシングするドレッシング効果が得られる。
【0083】
以上のような構成を有する実施形態4に係るウェーハの研削方法は、実施形態3において、熱圧着シート固定ステップ1001で熱圧着シート110-3のフィラー無し層132側をウェーハ100の裏面102に向けて固定することに代えて、熱圧着シート110-3のフィラー無し層132側をウェーハ100の裏面102とは反対側の面に向けて、ウェーハ100の裏面102に熱圧着シート110-3を固定するように変更したものである。このため、実施形態4に係るウェーハの研削方法は、実施形態1,2と同様の効果を奏するとともに、さらに、研削ステップ1004において研削砥石34でフィラー有り層131を研削する際に研削砥石34をドレッシングすることで研削砥石34の研削加工品質の悪化を抑制できることを維持しながら、フィラー無し層132によりウェーハ100の裏面102とは反対側の露出側を上方から吸着保持する搬送パッドにフィラー130が接触することを回避して、フィラー130によって搬送パッドが汚染してしまう恐れを抑制できる、という作用効果を奏するものとなる。
【0084】
〔実施形態5〕
本発明の実施形態5に係るウェーハの研削方法を図面に基づいて説明する。図19は、実施形態5に係るウェーハの研削方法の熱圧着シート固定ステップ1001で熱圧着する熱圧着シート110-4を示す断面図である。図19は、実施形態1、実施形態2、実施形態3及び実施形態4と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0085】
実施形態5に係るウェーハの研削方法は、実施形態1,2,3,4において、熱圧着シート固定ステップ1001でウェーハ100の裏面102に固定する熱圧着シート110,110-2,110-3を、図19に示す熱圧着シート110-4に変更したものであり、その他の構成は実施形態1,2,3,4と同様である。
【0086】
実施形態5で使用する熱圧着シート110-4は、図19に示すように、フィラー有り層131と、フィラー無し層132と、が積層されて形成され、熱圧着シート110-4の両面側にフィラー無し層132が積層されたものである。なお、実施形態5で使用する熱圧着シート110-4は、図19に示す例では、フィラー有り層131が1枚とフィラー無し層132が2枚とが積層されているが、本発明ではこれに限定されず、フィラー有り層131が少なくとも1枚積層されており、かつ、熱圧着シート110-4の両面側にフィラー無し層132が積層されていれば、フィラー有り層131が複数枚積層されていてもよく、フィラー無し層132が3枚以上積層されていてもよい。
【0087】
実施形態5に係るウェーハの研削方法では、実施形態3と同様に、ウェーハ100の裏面102にフィラー有り層131が接触しないため、ウェーハ100の裏面102にフィラー130が接触しないので、フィラー130によってウェーハ100の裏面102側が汚染してしまう恐れを抑制できる。また、実施形態5に係るウェーハの研削方法では、実施形態4と同様に、保持ステップ1003で、搬送パッドにより、熱圧着シート固定ステップ1001でウェーハ100の裏面102に熱圧着して固定した熱圧着シート110-4のフィラー無し層132側を上方から吸着保持して、チャックテーブル20の保持面23上に搬送するので、搬送パッドにフィラー有り層131が接触しないため、搬送パッドにフィラー130が接触しないので、フィラー130によって搬送パッドが汚染してしまう恐れを抑制できる。
【0088】
実施形態5に係るウェーハの研削方法は、実施形態3,4に係るウェーハの研削方法と同様に、研削ステップ1004において、研削砥石34でフィラー130が添加された熱圧着シート110-4のフィラー有り層131の中央部111を研削する際に、フィラー有り層131に添加されて混合されたフィラー130により、研削砥石34をドレッシングするドレッシング効果が得られる。
【0089】
以上のような構成を有する実施形態5に係るウェーハの研削方法は、実施形態1,2,3,4において、熱圧着シート固定ステップ1001でウェーハ100の裏面102に固定する熱圧着シート110,110-2,110-3を熱圧着シート110-4に変更したものである。このため、実施形態5に係るウェーハの研削方法は、実施形態1,2と同様の効果を奏するとともに、さらに、研削ステップ1004において研削砥石34でフィラー有り層131を研削する際に研削砥石34をドレッシングすることで研削砥石34の研削加工品質の悪化を抑制できることを維持しながら、実施形態3と同様に、フィラー無し層132によりウェーハ100の裏面102にフィラー130が接触することを回避して、フィラー130によってウェーハ100の裏面102側が汚染してしまう恐れを抑制できるとともに、実施形態4と同様に、フィラー無し層132によりウェーハ100の裏面102とは反対側の露出側を上方から吸着保持する搬送パッドにフィラー130が接触することを回避して、フィラー130によって搬送パッドが汚染してしまう恐れを抑制できる、という作用効果を奏するものとなる。
【0090】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0091】
20 チャックテーブル
23 保持面
25 回転軸
30 研削ユニット
31 スピンドル
32 研削ホイール
33 基台
34 研削砥石
35 直径
36 回転軸
100 ウェーハ
101 表面
102 裏面
104 デバイス領域
105 外周余剰領域
107 円形凹部
108 リング状補強部
109 底面
110,110-2,110-3,110-4 熱圧着シート
111 中央部
120 金属膜
130 フィラー
131 フィラー有り層
132 フィラー無し層
1001 熱圧着シート固定ステップ
1002 保護部材配設ステップ
1003 保持ステップ
1004 研削ステップ
1005 エッチングステップ
1006 金属膜形成ステップ
1007 剥離ステップ
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