(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162992
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】搬送装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 9/00 20060101AFI20241114BHJP
B65H 5/06 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B65H9/00 K
B65H5/06 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023218011
(22)【出願日】2023-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2023077312
(32)【優先日】2023-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】星 直樹
(72)【発明者】
【氏名】江川 知宏
【テーマコード(参考)】
3F049
3F102
【Fターム(参考)】
3F049AA02
3F049CA32
3F049DA11
3F049LA01
3F049LB01
3F049LB08
3F049LB10
3F049LB11
3F102AA01
3F102AB01
3F102AB05
3F102AB06
3F102AB10
3F102BA02
3F102BB06
3F102EA03
3F102FA03
(57)【要約】
【課題】被搬送体の位置ずれを容易に矯正可能な搬送装置を提供する。
【解決手段】本発明の搬送装置は、第1ローラ軸166を有する第1ガイド板161と、第2ローラ軸167を有し第1ガイド板161に対向して配置された第2ガイド板162とを有し、第1ガイド板161と第2ガイド板162で被搬送体(用紙P)をガイドしつつ第1ローラ軸166に取付けられた第1ローラ部材と第2ローラ軸167に取付けられた第2ローラ部材で被搬送体を挟持して搬送可能な搬送装置であって、第1ローラ部材166aの硬度よりも、第2ローラ部材167aの硬度を高くすると共に、第1ローラ軸166と第2ローラ軸167の平行度を可変にしたことを特徴とする。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ローラ軸を有する第1ガイド板と、第2ローラ軸を有し前記第1ガイド板に対向して配置された第2ガイド板とを有し、前記第1ガイド板と前記第2ガイド板で被搬送体をガイドしつつ前記第1ローラ軸に取付けられた第1ローラ部材と前記第2ローラ軸に取付けられた第2ローラ部材で前記被搬送体を挟持して搬送可能な搬送装置であって、
前記第1ローラ部材の硬度よりも、前記第2ローラ部材の硬度を高くすると共に、前記第1ローラ軸と前記第2ローラ軸の平行度を可変にしたことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記第1ガイド板が固定ガイド板であり、前記第2ガイド板が可動ガイド板であり、当該可動ガイド板を前記固定ガイド板に対して可変に構成することにより、前記第1ローラ軸と前記第2ローラ軸の平行度を可変にしたことを特徴とする請求項1の搬送装置。
【請求項3】
前記可動ガイド板を前記固定ガイド板に対して開閉可能に構成したことを特徴とする請求項2の搬送装置。
【請求項4】
前記固定ガイド板と前記可動ガイド板の一端部がヒンジ軸を介して連結され、当該ヒンジ軸を中心として前記可動ガイド板が前記固定ガイド板に対して開閉可能に構成されていることを特徴とする請求項3の搬送装置。
【請求項5】
前記ヒンジ軸が、前記被搬送体の搬送方向と平行に配設されていることを特徴とする請求項4の搬送装置。
【請求項6】
前記ヒンジ軸の反対側となる前記固定ガイド板と前記可動ガイド板の他端部に、前記固定ガイド板と前記可動ガイド板を互いに係合する係合部材が配設されていることを特徴とする請求項5の搬送装置。
【請求項7】
前記係合部材が、前記可動ガイド板を前記固定ガイド板に対して可変にする複数位置で前記可動ガイド板の他端部に取付け可能であることを特徴とする請求項6の搬送装置。
【請求項8】
前記ヒンジ軸が前記可動ガイド板の可変を許容するガタを有することを特徴とする請求項7の搬送装置。
【請求項9】
前記ヒンジ軸が、前記被搬送体の搬送方向上流側から下流側に配設された第1ヒンジ軸、第2ヒンジ軸及び第3ヒンジ軸を有し、前記第1ヒンジ軸と前記第3ヒンジ軸が前記ガタを有することを特徴とする請求項8の搬送装置。
【請求項10】
前記固定ガイド板と前記可動ガイド板の一端部が、前記第2ヒンジ軸の近傍において支点ピンで連結され、当該支点ピンを中心として前記可動ガイド板が前記固定ガイド板に対して回動可能に構成されていることを特徴とする請求項9の搬送装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1の搬送装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は搬送装置及び画像形成装置に係り、特に傾斜可能なローラ軸を有する搬送装置と当該搬送装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カットシートを搬送する搬送装置において、用紙に対して画像が狙い通りの位置に描画されるようにシートの位置を自動補正するレジストレーション技術が知られている(特許文献1:特開平08-245019号公報)。このレジストレーション技術は、シートを挟持搬送する一対のローラの一方(傾動ローラ)を傾動させるものであるが、傾動ローラの傾動範囲に限界があるために自動補正可能な範囲に限度がある。
【0003】
一方、近年の画像形成装置においては、紙資源の節約を図るために用紙の両面に印刷する両面印刷が一般的になっている。両面印刷を行う場合、両面搬送経路内で用紙を反転させるために搬送経路が長くなる。特に、インクジェットプリンタのように画像形成後に用紙乾燥や用紙冷却が必要な装置では、乾燥工程・冷却工程のために装置が長大となる。
【0004】
さらに、乾燥工程・冷却工程ではローラ搬送ではなくベルト搬送になることが多い。このため、用紙の位置ずれ(シフト量)が搬送方向下流側にいくにつれて積み上がる。また、用紙の位置ずれは、搬送装置の各種部品の寸法公差や装置筐体の平行度のような搬送装置の個体ごとに異なる要因によっても影響を受ける。このため、用紙の位置ずれが従来のレジストレーション技術で自動補正可能な許容範囲を超えることがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、被搬送体の位置ずれを容易に矯正可能な搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の搬送装置は、第1ローラ軸を有する第1ガイド板と、第2ローラ軸を有し前記第1ガイド板に対向して配置された第2ガイド板とを有し、前記第1ガイド板と前記第2ガイド板で被搬送体をガイドしつつ前記第1ローラ軸に取付けられた第1ローラ部材と前記第2ローラ軸に取付けられた第2ローラ部材で前記被搬送体を挟持して搬送可能な搬送装置であって、前記第1ローラ部材の硬度よりも、前記第2ローラ部材の硬度を高くすると共に、前記第1ローラ軸と前記第2ローラ軸の平行度を可変にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被搬送体の位置ずれを容易に矯正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図2A】本発明の実施形態に係る搬送装置で使用する位置調整機構の基本構成を示す斜視図である。
【
図3B】可動ガイド板を開いた状態を搬送方向から見た位置調整機構の側面図である。
【
図3C】位置調整機構のローラ軸の平行度を(a)改変する前の側面図と(b)改変した後の側面図である。
【
図4】可動ガイド板を閉じた状態の位置調整機構の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
●画像形成装置
以下に、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、画像形成装置としての大型のインクジェットプリンタ100の概略構成図である。インクジェットプリンタ100は、主に、給紙部110、画像形成部120、乾燥・冷却部130、用紙反転部140、排紙部150、位置調整機構160から構成されている。
【0010】
給紙部110の用紙Pは、ローラやベルトを使用した搬送装置で排紙部150まで搬送される。なお、以下の説明で使用する「画像形成」とは、文字及び図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与することも意味する。
【0011】
インクジェットプリンタ100においては、給紙部110から給紙されるシート材としての記録材である用紙Pに対し、画像形成部120で画像形成用の液体であるインクにより画像を形成する。そして、用紙上に付着したインクを乾燥・冷却部130において乾燥させた後、用紙を排紙部150に排紙する。
【0012】
●給紙部
給紙部110は、主に、複数の用紙Pが積載される給紙トレイ111と、給紙トレイ111から用紙を1枚ずつ分離して送り出す給送装置112と、用紙を画像形成部120へ送り込むレジストローラ対113とから構成されている。給送装置112には、ローラやコロを用いた装置や、エアー吸引を利用した装置など、あらゆる給送装置を用いることが可能である。
【0013】
給送装置112により給紙トレイ111から送り出された用紙は、その先端がレジストローラ対113に到達した後、レジストローラ対113が所定のタイミングで駆動することにより、画像形成部120へ給紙される。なお、本実施形態において、給紙部110は、画像形成部120へ用紙Pを送り出すものであれば、その構成に制限はない。
【0014】
●画像形成部
画像形成部120は、主に、給紙された用紙Pを受け取る受取り胴124と、受取り胴124によって搬送された用紙Pを外周面に担持して搬送する用紙担持ドラム122と、用紙担持ドラム122に担持された用紙Pに向けてインクを吐出するインク吐出部121と、用紙担持ドラム122によって搬送された用紙Pを乾燥・冷却部130へ受け渡す受渡し胴125とから構成されている。
【0015】
給紙部110から画像形成部120へ搬送されてきた用紙Pは、受取り胴124の表面に設けられた用紙グリッパによって先端が把持され、受取り胴124の表面移動に伴って搬送される。受取り胴124により搬送された用紙は、用紙担持ドラム122との対向位置で用紙担持ドラム122へ受け渡される。
【0016】
用紙担持ドラム122の表面にも用紙グリッパが設けられており、用紙の先端が用紙グリッパによって把持される。用紙担持ドラム122の表面には、複数の吸引孔が分散して形成されている。
【0017】
各吸引孔には吸引装置123によって用紙担持ドラム122の内側へ向かう吸い込み気流が発生する。受取り胴124から用紙担持ドラム122へ受け渡された用紙Pは、用紙グリッパによって先端が把持されるとともに、吸い込み気流によって用紙担持ドラム122の表面に吸着して、用紙担持ドラム122の表面移動に伴って搬送される。
【0018】
本実施形態のインク吐出部121は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の4色のインクを吐出して画像を形成する。インク吐出部121は、インクごとに個別の液体吐出ヘッド121C,121M,121Y,121Kを備えている。
【0019】
液体吐出ヘッド121C,121M,121Y,121Kは、液体を吐出するものであれば、その構成に制限はなく、あらゆる構成のものを採用することができる。必要に応じて、白色、金色、銀色などの特殊なインクを吐出する液体吐出ヘッドを設けたり、表面コート液などの画像を構成しない液体を吐出する液体吐出ヘッドを設けたりしてもよい。
【0020】
インク吐出部121の液体吐出ヘッド121C,121M,121Y,121Kは、画像情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。用紙担持ドラム122に担持された用紙Pがインク吐出部121との対向領域を通過する際に、液体吐出ヘッド121C,121M,121Y,121Kから各色インクが吐出され、当該画像情報に応じた画像が形成される。なお、本実施形態において、画像形成部120は、用紙P上に液体を付着させて画像を形成するであれば、その構成に制限はない。
【0021】
●乾燥・冷却部
乾燥・冷却部130は、主に、画像形成部120で用紙P上に付着したインクを乾燥・冷却するための乾燥・冷却機構131、132、133と、画像形成部120から搬送されてくる用紙Pをベルト搬送装置で搬送する搬送機構とから構成されている。画像形成部120から搬送されてきた用紙Pは、搬送機構に受け取られた後、乾燥・冷却機構131、132、133を順番に通過するように搬送され、排紙部150へ受け渡される。
【0022】
用紙Pが乾燥・冷却機構131、132、133を通過する際、用紙P上のインクに乾燥・冷却処理が施される。これにより、用紙Pのインク中の水分等の液分が蒸発し、用紙P上にインクが固着する。また、冷却処理によって用紙Pのカールが抑制される。
【0023】
●用紙反転部
用紙反転部140は、分岐部141とスイッチバック部142を有する。片面印刷の用紙Pは分岐部141を通過して排紙部150へ搬送される。両面印刷の用紙Pは分岐部141で分かれて下方に搬送され、スイッチバック部142を経て表裏反転された後、再び画像形成部120へ搬送される。
【0024】
スイッチバック部142から画像形成部120へ搬送される途中に、位置調整機構160が用紙搬送方向に連続して3ユニットで配設されている。これら位置調整機構160は、乾燥・冷却部130の下方に配設されている。位置調整機構160は用紙Pを搬送する複数のローラ軸を有し、一部のローラ軸を傾斜することにより用紙Pのシフト量を補正するように構成されている。
【0025】
位置調整機構160は両面印刷時のみ通過する搬送経路に備えられているので、シフト量の小さい片面印刷時の第一面の搬送に影響を与えることなく、シフト量の大きい両面印刷時の第二面の搬送状態を改善することができる。位置調整機構160は複数ユニットにまたがって位置調整を実行することで、各位置調整機構160のローラ軸1本ごとの傾斜角を小さくし、傾斜するローラ軸と傾斜しないローラ軸との間の用紙のストレスを軽減しつつ、大きな位置補正効果を得ることができる。
【0026】
●排紙部
排紙部150は、主に、複数の用紙Pが積載される排紙トレイ151から構成されている。用紙反転部140を通過して搬送されてくる用紙Pは、排紙トレイ151上に順次積み重ねられて保持される。なお、本実施形態において、排紙部150は、用紙Pを排紙するものであれば、その構成に制限はない。
【0027】
●その他の機能部
本実施形態のインクジェットプリンタ100は、他の機能部を適宜追加することも可能である。例えば、給紙部110と画像形成部120との間に画像形成の前処理を行う前処理部を追加することができる。前処理部としては、例えば、インクと反応して滲みを抑制するための処理液を用紙Pに塗布する処理液塗布処理を行うものなどが挙げられるが、前処理の内容については特に制限はない。
【0028】
また、排紙部150の手前に画像形成の後処理を行う後処理部を追加することもできる。後処理部としては、例えば、画像が形成された複数枚の用紙を綴じる処理や、用紙変形を矯正させる矯正機構が挙げられるが、後処理の内容についても特に制限はない。
【0029】
●位置調整機構
図2Aと
図2Bに、本実施形態の搬送装置で使用する位置調整機構160の基本構成を示す。位置調整機構160は一対のガイド板161、162を有する。上方の第1ガイド板161が固定ガイド板161であり、下方の第2ガイド板162が可動ガイド板162である。
【0030】
これらガイド板161、162で用紙Pの上下面をガイドしつつ、用紙Pを
図2Aで左側から右側に搬送する。固定ガイド板161は水平状態で固定的に配設されている。これに対して可動ガイド板162は、固定ガイド板161に対して開閉可能に配設されている。
【0031】
すなわち、固定ガイド板161と可動ガイド板162は、それぞれの後方側一端部がヒンジ軸163で連結されている。このヒンジ軸163は用紙Pの搬送方向と平行に配設されている。ヒンジ軸163の反対側となる可動ガイド板162の前方側他端部が、ヒンジ軸163を中心として上下方向に回動可能とされている。
【0032】
ヒンジ軸163の長手方向両端部は、固定ガイド板161に設けられた左右一対の軸受部で支持することができる。なお、可動ガイド板162の前方側他端部は、図示しないロック手段によって固定ガイド板161の他端部に係合ロック可能に構成することができる。
【0033】
固定ガイド板161と可動ガイド板162は、
図2Bに示すように、第1ローラ軸166と第2ローラ軸167を有する。
図2Bは、
図2Aの固定ガイド板161と可動ガイド板162を省略した位置調整機構160の下面図である。
【0034】
用紙Pは、第1ローラ軸166に取付けられた第1ローラ部材166aと、第2ローラ軸167に取付けられた第2ローラ部材167aとの間に送り込まれる。用紙Pは、その後、第1ローラ部材166aと第2ローラ部材167aで挟持して搬送される。ローラ軸166、167の少なくとも一方は、図示しない駆動手段に連結されて回転駆動可能に構成されている。
【0035】
第1ローラ部材166aと第2ローラ部材167aは、合成ゴムやエラストマー等の弾性体で同径・同長に構成することができる。しかし、第1ローラ部材166aと第2ローラ部材167aは硬度(表面硬度)が異なる。
【0036】
傾斜角が可変の第2ローラ軸167の第2ローラ部材167aの方が、第1ローラ部材166aよりも硬度が高い。これは、非特許文献1に開示されているように、用紙Pの搬送方向が相対的に硬度が高い方のローラ部材に影響されるからである。
【0037】
ローラ部材166a、167aの表面硬度は、例えば、Asker-C硬度計やデュロメータ等で測定することができる。第1ローラ部材166aには、例えば、デュロメータ硬さ20~50のように低硬度エラストマー(SBS、SIS、SEDS等、オレフィン系エラストマー)を使用することができる。第2ローラ部材167aには、例えばデュロメータ硬さ65~80の範囲内であって例えばデュロメータ硬さ74のように、やや硬めの高硬度エラストマー(エステル系、ウレタン系、アラミド系)やポリプロピレン、ABS等の熱可塑性樹脂を使用することができる。
【0038】
位置調整機構160は、ローラ軸167を有する可動ガイド板162を、固定ガイド板161に対して
図2Aの矢印で示すように開閉可能に構成されているだけでなく、後述するように回動可能にも構成されている。これにより、
図2Bのようにローラ軸167を傾斜させ、用紙搬送方向を
図2Bの矢印で示す方向に変更可能に構成されている。すなわち、
図2Bで左側から搬送されてきた用紙Pが正常位置よりも下側にDだけシフトしている場合、当該シフト量Dを解消するように構成されている。
【0039】
固定ガイド板161の後方側一端部下面には、ヒンジ軸163の近傍に支点ピン161bが突設されている。当該支点ピン161bによって、固定ガイド板161と可動ガイド板162の後方側一端部が回動可能に連結されている。
【0040】
固定ガイド板161の他端部下面には、支点ピン161bと反対側の位置に係合ピン161aが突設されている。当該係合ピン161aによって、固定ガイド板161と可動ガイド板162の他端部同士が係合可能に構成されている。
【0041】
可動ガイド板162の他端部の上面には、前記係合ピン161aが係合する係合部材としての調整プレート165が配設されている。調整プレート165の係合孔165aに係合ピン161aが嵌合することで、固定ガイド板161と可動ガイド板162の相対的位置関係が一定に定まるように構成されている。調整プレート165は、
図3Aで後述するように、可動ガイド板162に対して
図3Aの左右方向(搬送方向)で位置調整可能に取付可能となっている。
【0042】
図3A~
図3Cは、固定ガイド板161と可動ガイド板162に、それぞれ、左右一対でローラ軸166、167を配設した実施形態である。左右一対のローラ軸166、166とローラ軸167、167で用紙Pを搬送するので、用紙搬送力とシフト調整力が向上する。
【0043】
可動ガイド板162の調整によって2本のローラ軸167の傾斜角を一度に調整することができる。固定ガイド板161と可動ガイド板162に、3本以上のローラ軸を配設することも可能である。
【0044】
固定ガイド板161と可動ガイド板162に、ローラ軸166、167の各ローラ部材166a、167aを、固定ガイド板161と可動ガイド板162の内側に突出させる矩形状の切欠き孔161h、162hが形成されている。これら切欠き孔161h、162hから、ローラ部材166a、167aの外周面の一部が固定ガイド板161と可動ガイド板162の内側に突出している。ローラ軸166、167は固定ガイド板161と可動ガイド板162の外側に配設された図示しない軸受で回転可能に支持されている。
【0045】
可動ガイド板162の後方側一端部と前方側他端部に、L字状の折曲げ部162a、162bが形成されている。当該折曲げ部162a、162bによって、可動ガイド板162の剛性強度が向上されている。
【0046】
一端側の折曲げ部162aに、
図4のように3つのブラケット部162c、162d、162eが一体形成されている。これら3つのブラケット部162c、162d、162eは、3本のヒンジ軸163a、163b、163cを挿通支持するためのもので、搬送方向に等間隔で配設されている。
【0047】
3本のヒンジ軸163a、163b、163cは搬送方向に一直線で配設されている。3本のヒンジ軸163a、163b、163cは、搬送方向上流側から第1ヒンジ軸163a、第2ヒンジ軸163b、第3ヒンジ軸163cである。
【0048】
各ブラケット部162c、162d、162eに、ヒンジ軸163a、163b、163cを挿通する受け孔162c1、162d1、162e1が形成されている。両端の受け孔162c1と受け孔162e1は、搬送方向に延在した長孔で構成されている。
【0049】
これに対して中央の受け孔162d1は、第2ヒンジ軸163bをガタツキなく挿通可能な円形に形成されている。このため、可動ガイド板162が第2ヒンジ軸163bの近傍において
図3Bのピン孔162iに挿入された支点ピン161bを中心として
図4で矢印方向に回動(水平旋回)するとき、第1ヒンジ軸163aと第3ヒンジ軸163cが両端の受け孔162c1、162e1内において左右方向に移動可能である。すなわち、受け孔162c1と受け孔162e1の長孔形状によって、可動ガイド板162が支点ピン161bを中心として
図4の矢印方向に回動(水平旋回)するのを許容するガタが形成される。
【0050】
●調整プレート
調整プレート165の係合孔165aは、搬送方向ないしヒンジ軸163と直角な方向に延在する長孔で構成されている。これは、調整プレート165の係合孔165aに対する係合ピン161aの挿入をスムーズにするためである。但し、係合ピン161aと係合孔165aの間には、
図3Aの左右方向(搬送方向)では殆どガタがないように構成されている。
【0051】
調整プレート165の係合孔165aの左右両側に、調整孔165bが一対で形成されている。また、可動ガイド板162の他端部には、これら調整孔165bに対応する位置にネジ孔162fが一対で形成されている。
【0052】
調整プレート165の係合孔165aの手前側に、複数(図示例で7つ)の調整孔165cが搬送方向において等間隔で形成されている。一方、可動ガイド板162の他端部には、これら複数の調整孔165cと対応して複数のネジ孔162gが形成されている。
【0053】
これらネジ孔162gのピッチ間隔は、調整孔165cのピッチ間隔に対して僅かにずらして形成されている。複数の調整孔165cのうち中央の調整孔165cを、いずれか1つのネジ孔162gに合わせた状態で、調整プレート165を可動ガイド板162にネジ止めすることができる。
【0054】
図示例では中央の調整孔165cを中央のネジ孔162gに合わせた状態が示されている。この状態で調整プレート165を可動ガイド板162にネジ止めすることで、固定ガイド板161に対する可動ガイド板162の回動角がゼロとなる。
【0055】
中央の調整孔165cを合わせるネジ孔162gを左側又は右側の任意のネジ孔162gに合わせて調整プレート165をネジ止めすることで、固定ガイド板161に対する可動ガイド板162の回動角を+(プラス)又は-(マイナス)側に振ることができる。この際、調整孔165cから透かして見えるネジ孔162gの形状によって、調整プレート165のプラス・マイナスの位置合わせを容易に行うことができる。したがって、可動ガイド板162や第2ローラ軸167の傾斜角を狙いの値に容易に固定することができる。
【0056】
●位置調整について
本実施形態の搬送装置ないし位置調整機構は、以上のように構成されている。前述したように、搬送経路が長い画像形成装置では用紙の位置ずれ(シフト量)が積み上がり、自動補正可能な許容範囲を超えることがある。また、この用紙の位置ずれは、搬送装置の個体ごとに異なる要因によっても影響を受ける。
【0057】
そこで、用紙Pを試験的に搬送することによって取得されたシフト量に対応して、当該シフト量を相殺するように前述した可動ガイド板162と調整プレート165の位置調整を行うことができる。具体的には、給紙部110から搬送を開始した特定の用紙Pが用紙反転部140を経由して再び給送装置112に戻ってきたときの当該用紙Pのシフト量を測定する。そして、3つの位置調整機構160によって当該シフト量がゼロになるように、可動ガイド板162と調整プレート165の位置調整を行ってローラ軸167の傾斜角を決定する。
【0058】
3つの位置調整機構160のローラ軸167の傾斜角を、すべて一定の傾斜角にすることで、用紙Pのシフト補正量が各位置調整機構160で均一化され、位置調整精度を向上することができる。またシフト補正を段階的に行うことで、用紙Pに対するダメージを抑制することができる。
【0059】
3つの位置調整機構160のローラ軸167の傾斜角は、必ずしも一定の傾斜角に統一する必要はない。用紙Pが最初に通過するローラ軸167の傾斜角を少なくし、下流側にいくにつれてローラ軸167の傾斜角を増加させてもよい。
【0060】
これにより、特に高速搬送における用紙Pのシフト補正を円滑化することができる。位置調整機構160は用紙搬送方向に簡単かつ低コストに増設可能なので、シフト量の大小に関わらずシフト量の相殺調整が可能である。
【0061】
位置調整機構160は、マシンの個体ごとに異なる用紙位置ずれ傾向の粗調の役割を果たす。マシン組立時や設置時の調整実施後は、都度の調整は基本的に不要である。しかしながら、印刷に使用する用紙Pの変更等によって相殺すべきシフト量が変化した場合は、搬送装置の手前側から可動ガイド板162を開くことで、可動ガイド板162と調整プレート165の位置を容易に再調整することができる。
【0062】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、前記実施形態では固定ガイド板161に対して可動ガイド板162を開閉可能かつ回動可能に配設したが、可動ガイド板162は必ずしも可動である必要はない。硬度が低い第1ローラ部材166aを有する第1ローラ軸166と、硬度が高い第2ローラ部材167aを有する第2ローラ軸167の平行度が可変であればよい。
【0063】
また、前記実施形態では被搬送体として用紙Pを説明したが、被搬送体は用紙Pに限られない。OHPシート又は布帛、金属シート、プラスチックフィルム、あるいは炭素繊維にあらかじめ樹脂を含浸させたプリプレグシートなども被搬送体に含まれる。現像剤又はインクを付着させることができる媒体、記録紙、記録シートと称されるものも、すべて「被搬送体」に含まれる。また、「用紙」には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ等も含まれる。
【0064】
<付記>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
<第1態様>
第1態様は、第1ローラ軸を有する第1ガイド板と、第2ローラ軸を有し前記第1ガイド板に対向して配置された第2ガイド板とを有し、前記第1ガイド板と前記第2ガイド板で被搬送体をガイドしつつ前記第1ローラ軸に取付けられた第1ローラ部材と前記第2ローラ軸に取付けられた第2ローラ部材で前記被搬送体を挟持して搬送可能な搬送装置であって、前記第1ローラ部材の硬度よりも、前記第2ローラ部材の硬度を高くすると共に、前記第1ローラ軸と前記第2ローラ軸の平行度を可変にしたことを特徴とする搬送装置である。
<第2態様>
第2態様は、前記第1ガイド板が固定ガイド板であり、前記第2ガイド板が可動ガイド板であり、当該可動ガイド板を前記固定ガイド板に対して可変に構成することにより、前記第1ローラ軸と前記第2ローラ軸の平行度を可変にしたことを特徴とする第1態様の搬送装置である。
<第3態様>
第3態様は、前記可動ガイド板を前記固定ガイド板に対して開閉可能に構成したことを特徴とする第2態様の搬送装置である。
<第4態様>
第4態様は、前記固定ガイド板と前記可動ガイド板の一端部がヒンジ軸を介して連結され、当該ヒンジ軸を中心として前記可動ガイド板が前記固定ガイド板に対して開閉可能に構成されていることを特徴とする第3態様の搬送装置である。
<第5態様>
第5態様は、前記ヒンジ軸が、前記被搬送体の搬送方向と平行に配設されていることを特徴とする第4態様の搬送装置である。
<第6態様>
第6態様は、前記ヒンジ軸の反対側となる前記固定ガイド板と前記可動ガイド板の他端部に、前記固定ガイド板と前記可動ガイド板を互いに係合する係合部材が配設されていることを特徴とする第5態様の搬送装置である。
<第7態様>
第7態様は、前記係合部材が、前記可動ガイド板を前記固定ガイド板に対して可変にする複数位置で前記可動ガイド板の他端部に取付け可能であることを特徴とする第6態様の搬送装置である。
<第8態様>
第8態様は、前記ヒンジ軸が前記可動ガイド板の可変を許容するガタを有することを特徴とする第7態様の搬送装置である。
<第9態様>
第9態様は、前記ヒンジ軸が、前記被搬送体の搬送方向上流側から下流側に配設された第1ヒンジ軸、第2ヒンジ軸及び第3ヒンジ軸を有し、前記第1ヒンジ軸と前記第3ヒンジ軸が前記ガタを有することを特徴とする第8態様の搬送装置である。
<第10態様>
第10態様は、前記固定ガイド板と前記可動ガイド板の一端部が、前記第2ヒンジ軸の近傍において支点ピンで連結され、当該支点ピンを中心として前記可動ガイド板が前記固定ガイド板に対して回動可能に構成されていることを特徴とする第9態様の搬送装置である。
<第11態様>
第11態様は、第1態様から第10態様のいずれか1の態様の搬送装置を備えたことを特徴とする画像形成装置である。
【符号の説明】
【0065】
100:インクジェットプリンタ(画像形成装置) 110:給紙部
111:給紙トレイ 112:給送装置
113:レジストローラ対 120:画像形成部
121:インク吐出部
121C,121M,121Y,121K:液体吐出ヘッド
122:用紙担持ドラム 123:吸引装置
124:受取り胴 125:受渡し胴
130:乾燥・冷却部 131-133:乾燥・冷却機構
140:用紙反転部 141:分岐部
142:スイッチバック部 150:排紙部
151:排紙トレイ 160:位置調整機構
161:固定ガイド板(第1ガイド板) 161a:係合ピン
161b:支点ピン 161h、162h:切欠き孔
162:可動ガイド板(第2ガイド板) 162a、162b:折曲げ部
162c、162d、162e:ブラケット部
162c1、162d1、162e1:受け孔
162f、162g:ネジ孔 162i:ピン孔
163:ヒンジ軸 163a-163c:ヒンジ軸
165:調整プレート 165a:係合孔
165b:調整孔 165c:調整孔
166:第1ローラ軸 166a:第1ローラ部材
167:第2ローラ軸 167a:第2ローラ部材
P:用紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0066】
【非特許文献】
【0067】
【非特許文献1】日本機械学会年次大会講演論文集(日本機械学会年次大会)2006号:Vol.5、ページ:605-606、発行年:2006年9月15日