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特開2024-16313部材形成方法、積層体製造方法および部材形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016313
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】部材形成方法、積層体製造方法および部材形成装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/455 20060101AFI20240131BHJP
【FI】
C23C16/455
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214584
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 浩司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】小川 朝敬
(72)【発明者】
【氏名】河原 弘治
【テーマコード(参考)】
4K030
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA06
4K030AA10
4K030AA17
4K030BA36
4K030BA37
4K030BA38
4K030BA42
4K030BA49
4K030CA11
4K030EA05
4K030EA06
4K030FA10
4K030JA03
4K030JA05
4K030JA10
4K030KA47
(57)【要約】
【課題】ニアネットシェイプ部材を容易に得る。
【解決手段】基材の表面の上に、熱CVD法によって、厚さが異なる部分を有する部材を形成する方法であって、上記基材を加熱しつつ、上記表面に原料ガスをガス出口から供給し、下記条件1~3の少なくともいずれかを満たす、部材形成方法。
条件1:上記表面と対向する位置に複数の上記ガス出口が配置され、上記ガス出口から上記表面までの垂直距離が上記ガス出口ごとに異なる。
条件2:上記表面と対向する位置に複数の上記ガス出口が配置され、上記ガス出口から出る上記原料ガスの流量が上記ガス出口ごとに異なる。
条件3:加熱された上記基材が、上記表面に沿った方向に、異なる温度を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面の上に、熱CVD法によって、厚さが異なる部分を有する部材を形成する方法であって、
前記基材を加熱しつつ、前記表面に原料ガスをガス出口から供給し、
下記条件1~3の少なくともいずれかを満たす、部材形成方法。
条件1:前記表面と対向する位置に複数の前記ガス出口が配置され、前記ガス出口から前記表面までの垂直距離が前記ガス出口ごとに異なる。
条件2:前記表面と対向する位置に複数の前記ガス出口が配置され、前記ガス出口から出る前記原料ガスの流量が前記ガス出口ごとに異なる。
条件3:加熱された前記基材が、前記表面に沿った方向に、異なる温度を有する。
【請求項2】
前記条件2において、前記原料ガスの前記ガス出口までの流量が、前記ガス出口ごとに異なる、請求項1に記載の部材形成方法。
【請求項3】
前記条件2において、前記ガス出口を構成する開口のサイズが、前記ガス出口ごとに異なる、請求項1に記載の部材形成方法。
【請求項4】
前記ガス出口が、1つの開口または複数の開口によって構成される、請求項1~3のいずれか1項に記載の部材形成方法。
【請求項5】
前記部材が、金属炭化物、金属酸化物、金属窒化物、ホウ素炭化物、ホウ素酸化物およびホウ素窒化物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の部材形成方法。
【請求項6】
前記部材は、前記厚さが異なる部分ごとに異なる構造を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の部材形成方法。
【請求項7】
前記部材が、半導体製造の際に使用される半導体製造装置用部材となる部材であって、
前記半導体製造装置用部材が、成膜装置用部材、エッチング装置用部材、フォーカスリング、エッジリング、サセプタ、電極または排気口である、請求項1~6のいずれか1項に記載の部材形成方法。
【請求項8】
前記基材が、炭素、金属、金属炭化物、金属酸化物および金属窒化物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の部材形成方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の部材形成方法を用いて、前記基材および前記部材を有する積層体を製造する、積層体製造方法。
【請求項10】
基材の表面の上に、熱CVD法によって、厚さが異なる部分を有する部材を形成する装置であって、
前記基材を加熱しつつ、前記表面に原料ガスをガス出口から供給し、
下記条件1~3の少なくともいずれかを満たす、部材形成装置。
条件1:前記表面と対向する位置に複数の前記ガス出口が配置され、前記ガス出口から前記表面までの垂直距離が前記ガス出口ごとに異なる。
条件2:前記表面と対向する位置に複数の前記ガス出口が配置され、前記ガス出口から出る前記原料ガスの流量が前記ガス出口ごとに異なる。
条件3:加熱された前記基材が、前記表面に沿った方向に、異なる温度を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材形成方法、積層体製造方法および部材形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ニアネットシェイプ部材の製造が行なわれている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-199063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ニアネットシェイプ部材は、最終製品(完成品)に近い形状を有する部材であり、例えば、厚さが異なる部分を有する部材(段差面を有する部材、傾斜面を有する部材など)である。
例えば、平板状の部材から最終製品を得る場合と比較して、ニアネットシェイプ部材を用いることで、最終製品の形状を得るために要する加工量が低減し、コスト面も優れる。
【0005】
本発明は、以上の点を鑑みてなされたものであり、ニアネットシェイプ部材を容易に得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、下記構成を採用することにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[10]を提供する。
[1]基材の表面の上に、熱CVD法によって、厚さが異なる部分を有する部材を形成する方法であって、上記基材を加熱しつつ、上記表面に原料ガスをガス出口から供給し、下記条件1~3の少なくともいずれかを満たす、部材形成方法。
条件1:上記表面と対向する位置に複数の上記ガス出口が配置され、上記ガス出口から上記表面までの垂直距離が上記ガス出口ごとに異なる。
条件2:上記表面と対向する位置に複数の上記ガス出口が配置され、上記ガス出口から出る上記原料ガスの流量が上記ガス出口ごとに異なる。
条件3:加熱された上記基材が、上記表面に沿った方向に、異なる温度を有する。
[2]上記条件2において、上記原料ガスの上記ガス出口までの流量が、上記ガス出口ごとに異なる、上記[1]に記載の部材形成方法。
[3]上記条件2において、上記ガス出口を構成する開口のサイズが、上記ガス出口ごとに異なる、上記[1]に記載の部材形成方法。
[4]上記ガス出口が、1つの開口または複数の開口によって構成される、上記[1]~[3]のいずれかに記載の部材形成方法。
[5]上記部材が、金属炭化物、金属酸化物、金属窒化物、ホウ素炭化物、ホウ素酸化物およびホウ素窒化物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、上記[1]~[4]のいずれかに記載の部材形成方法。
[6]上記部材は、上記厚さが異なる部分ごとに異なる構造を有する、上記[1]~[5]のいずれかに記載の部材形成方法。
[7]上記部材が、半導体製造の際に使用される半導体製造装置用部材となる部材であって、上記半導体製造装置用部材が、成膜装置用部材、エッチング装置用部材、フォーカスリング、エッジリング、サセプタ、電極または排気口である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の部材形成方法。
[8]上記基材が、炭素、金属、金属炭化物、金属酸化物および金属窒化物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する、上記[1]~[7]のいずれかに記載の部材形成方法。
[9]上記[1]~[8]のいずれかに記載の部材形成方法を用いて、上記基材および上記部材を有する積層体を製造する、積層体製造方法。
[10]基材の表面の上に、熱CVD法によって、厚さが異なる部分を有する部材を形成する装置であって、上記基材を加熱しつつ、上記表面に原料ガスをガス出口から供給し、下記条件1~3の少なくともいずれかを満たす、部材形成装置。
条件1:上記表面と対向する位置に複数の上記ガス出口が配置され、上記ガス出口から上記表面までの垂直距離が上記ガス出口ごとに異なる。
条件2:上記表面と対向する位置に複数の上記ガス出口が配置され、上記ガス出口から出る上記原料ガスの流量が上記ガス出口ごとに異なる。
条件3:加熱された上記基材が、上記表面に沿った方向に、異なる温度を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ニアネットシェイプ部材を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態の装置を模式的に示す断面図である。
図2】第2の実施形態の装置を模式的に示す断面図である。
図3】第3の実施形態の装置を模式的に示す断面図である。
図4】第4の実施形態の装置を模式的に示す断面図である。
図5】第5の実施形態の装置を模式的に示す断面図である。
図6】第6の実施形態の装置を模式的に示す断面図である。
図7】第7の実施形態の装置を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の部材形成方法は、基材の表面の上に、熱CVD法によって、厚さが異なる部分を有する部材を形成する方法であって、上記基材を加熱しつつ、上記表面に原料ガスをガス出口から供給し、下記条件1~3の少なくともいずれかを満たす、部材形成方法である。
条件1:上記表面と対向する位置に複数の上記ガス出口が配置され、上記ガス出口から上記表面までの垂直距離が上記ガス出口ごとに異なる。
条件2:上記表面と対向する位置に複数の上記ガス出口が配置され、上記ガス出口から出る上記原料ガスの流量が上記ガス出口ごとに異なる。
条件3:加熱された上記基材が、上記表面に沿った方向に、異なる温度を有する。
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0011】
〈第1の実施形態〉
図1に基づいて、第1の実施形態を説明する。第1の実施形態は、少なくとも、上述した条件1を満たす実施形態である。
【0012】
図1は、第1の実施形態の装置1を模式的に示す断面図である。
図1には、装置1において、熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法によって、基材6の表面6aの上に部材7が形成されている状態が示されている。
【0013】
装置1は、主として、ハウジング2と、ハウジング2の外部から内部空間5に至るガス供給管3と、ハウジング2の内部空間5と外部とを接続する排気管4とを有する。
装置1は、更に、ハウジング2の内部空間5に配置された基材6を加熱するための加熱部9(加熱部9aおよび加熱部9b)を有する。
以下、装置1が有する各部について、説明する。
【0014】
ハウジング2の内部空間5には、基材6の裏面6bを支持するテーブル8が設けられている。テーブル8は、支柱8aを中心に回転自在であってもよい。
【0015】
第1の実施形態において、図1に示す基材6は、平板状であり、表面6aおよび裏面6bは、互いに平行な平面である。
テーブル8に支持された基材6の表面6aと平行な方向を「X軸方向」と呼び、表面6aと垂直な方向を「Z軸方向」と呼ぶ。
【0016】
ガス供給管3は、ハウジング2の外部から内部空間5に至り、内部空間5に配置された基材6の表面6aに、熱CVD用の原料ガスを供給する。
形成する部材7がSiC膜である場合、原料ガスとしては、例えば、メタン(CH)、四塩化ケイ素(SiCl)および水素(H)を含む混合ガスが挙げられるが、これに限定されない。
【0017】
ガス供給管3の内部空間5における末端は、閉塞端である。
ガス供給管3の閉塞端を含む一部(「S字部33」と呼ぶ)は、X軸方向に延び、かつ、途中でS字状に屈曲している。このため、S字部33は、Z軸方向に高低差を有する。
【0018】
ガス供給管3のS字部33における、基材6の表面6aと対向する位置には、ガス出口31およびガス出口32が設けられている。
ガス出口31およびガス出口32は、それぞれ、複数の開口によって構成されており、開口は、X軸方向に沿って、一列に配列されている。
第1の実施形態において、開口の形状およびサイズは、いずれも同一である。
開口が円形である場合、そのサイズ(直径)は、例えば、1~50mmであり、5~25mmが好ましい。
【0019】
ガス供給管3の内部を流れる原料ガスは、ガス出口31およびガス出口32の開口を経て、基材6の表面6aに対して、Z軸方向に供給される。
【0020】
ガス供給管3のS字部33において、ガス出口31の開口が形成されている部分は、ガス出口32の開口が形成されている部分よりも、基材6の表面6aに近い。
すなわち、ガス出口31から基材6の表面6aまでの垂直距離(Z軸方向の距離)である距離Dは、ガス出口32から基材6の表面6aまでの垂直距離(Z軸方向の距離)である距離Dよりも短い。
距離Dおよび距離Dは、どちらも、例えば、1~100mmであり、10~150mmが好ましい。
【0021】
ガス供給管3の断面形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、正方形、長方形、多角形が挙げられる。
ガス供給管3は、二重管構造を有していてもよい。この場合、1本のガス供給管3によって、基材6の表面6aに対して、2種類の原料ガスを供給できる。
【0022】
排気管4は、例えば、真空ポンプ(図示せず)に接続しており、この真空ポンプの駆動によって、ハウジング2の内部空間5に含まれる気体を、外部に排気する。
【0023】
加熱部9(加熱部9aおよび加熱部9b)としては、特に限定されず、例えば、抵抗型加熱器であるヒータ;誘導加熱方式で基材6を加熱するコイル;基材6を光学的に加熱するレーザ;等が挙げられる。加熱部9は、テーブル8に埋め込まれていてもよい。
第1の実施形態では、加熱部9aおよび加熱部9bは、どちらも加熱出力が同じであり、テーブル8に支持された基材6を、X軸方向に均一に加熱する。
加熱部9は、内部空間5において、原料ガスが付着することを抑制するため、実際には、カバー部材(図示せず)によって覆われている。
なお、加熱部9は、基材6を適切に加熱できれば、ハウジング2の外部に配置されていてもよい。
【0024】
このような装置1において、部材7を形成する方法を説明する。
まず、基材6を、表面6aを上向きにして、テーブル8の上に配置する。任意の器具(図示せず)を用いて、基材6をテーブル8に固定してもよい。
次に、ハウジング2を密閉してから、内部空間5の圧力を調整する。例えば、排気管4に接続する真空ポンプを駆動させて、内部空間5を十分に減圧する。調整後における内部空間5の圧力は、例えば、10~100kPaの範囲である。
更に、加熱部9を駆動する。これにより、テーブル8の上に配置された基材6が均一に加熱される。
【0025】
次に、ハウジング2の外部からガス供給管3に原料ガスを導入する。原料ガス(例えば、メタン、四塩化ケイ素および水素を含む混合ガス)は、ガス供給管3の内部を流通して、S字部33に至り、ガス出口31およびガス出口32を構成する開口から、加熱された基材6の表面6aに向けて供給される。
これにより、基材6の表面6aの近傍で熱CVD反応が生じ、基材6の表面6aの上に、部材7(例えば、SiC膜)が形成される。
【0026】
このとき、第1の実施形態においては、ガス出口31から基材6の表面6aまでの距離Dは、ガス出口32から基材6の表面6aまでの距離Dよりも短い。
このため、ガス出口31と対面する領域の方が、ガス出口32と対面する領域よりも、原料ガスの供給量が多くなり、熱CVD反応が多く生じ、形成される部材7の厚さが増す。こうして、図1に示すように、段差面を有する部材7が得られる。
このような部材7は、厚さが異なる部分を有する。すなわち、図1に示す部材7においては、図1中左側部分の方が、図1中右側部分よりも厚い。
【0027】
その後、ハウジング2から、部材7および基材6からなる積層体を取り出す。積層体から基材6を除去し、部材7のみを使用してもよい。
取り出した部材7に対して、切削、研磨などの加工を施すことにより、段差を形成したり、孔を形成したりして、最終製品を得る。
【0028】
このとき、最終製品の形状が、部材7と同様に段差面を有する形状(例えば、部材7の相似形であり、かつ、部材7よりも小さい形状)である場合、部材7は、最終製品に近い形状を有するニアネットシェイプ部材であると言える。
この場合、例えば平板状の部材から最終製品を得るよりも、ニアネットシェイプ部材である部材7から最終製品を得る方が、加工量が減少する。このため、コスト面も優れる。
【0029】
更に、ニアネットシェイプ部材を得る場合は、平板状の部材を得るよりも、加工により除去される部分を形成するために要する時間、電力費、原料費などが低減するため、この点からも、コスト面に優れる。
【0030】
なお、部材7がSiC膜である場合、SiC膜は非常に硬いため加工に多くの時間を要することから、ニアネットシェイプ部材である部材7を得ることは、特に有用である。
また、大型の最終製品(具体的には、例えば、直径300mm、厚さ3mmを超える大型のフォーカスリング)を得る場合にも、ニアネットシェイプ部材である部材7を用いることは、非常に有用である。
【0031】
〈第2の実施形態〉
図2に基づいて、第2の実施形態を説明する。第2の実施形態は、少なくとも、上述した条件1を満たす実施形態である。
図2は、第2の実施形態の装置1を模式的に示す断面図である。図1に基づいて説明した第1の実施形態と同一の部分は同一の符号で示し、説明も省略する。
基材6に原料ガスを供給するガス供給管3の本数は、1本に限定されない。第2の実施形態では、2本のガス供給管3(すなわち、ガス供給管3aおよびガス供給管3b)のそれぞれに、ガス出口31およびガス出口32が設けられている。ガス供給管3aとガス供給管3bとで、内部を流れる原料ガスの流量は、同じである。
第2の実施形態においても、ガス出口31から基材6の表面6aまでの距離Dは、ガス出口32から基材6の表面6aまでの距離Dよりも短い。
このため、ガス出口31と対面する領域の方が、ガス出口32と対面する領域よりも、原料ガスの供給量が多くなり、熱CVD反応が多く生じ、形成される部材7の厚さが増す。こうして、ニアネットシェイプ部材である部材7が容易に得られる。
【0032】
〈第3の実施形態〉
図3に基づいて、第3の実施形態を説明する。第3の実施形態は、少なくとも、上述した条件2を満たす実施形態である。
図3は、第3の実施形態の装置1を模式的に示す断面図である。図1図2に基づいて説明した第1~第2の実施形態と同一の部分は同一の符号で示し、説明も省略する。
第3の実施形態では、ガス出口31から基材6の表面6aまでの距離Dと、ガス出口32から基材6の表面6aまでの距離Dとは、同じである。
もっとも、第3の実施形態では、ガス供給管3aの内部を流れる原料ガスの流量(ガス出口31までの流量)が、ガス供給管3bの内部を流れる原料ガスの流量(ガス出口32までの流量)よりも多い。
このため、ガス出口31と対面する領域の方が、ガス出口32と対面する領域よりも、原料ガスの供給量が多くなり、熱CVD反応が多く生じ、形成される部材7の厚さが増す。こうして、ニアネットシェイプ部材である部材7が容易に得られる。
【0033】
なお、ガス出口31およびガス出口32から出る黒矢印は、原料ガスおよびその流量を図示したものであり、図3では、視覚的に分かりやすくするために、ガス出口31から出る黒矢印を、ガス出口32から出る黒矢印よりも大きく描いている。
【0034】
〈第4の実施形態〉
図4に基づいて、第4の実施形態を説明する。第4の実施形態は、少なくとも、上述した条件2を満たす実施形態である。
図4は、第4の実施形態の装置1を模式的に示す断面図である。図1図3に基づいて説明した第1~第3の実施形態と同一の部分は同一の符号で示し、説明も省略する。
第4の実施形態では、距離Dと距離Dとが同じである。更に、第4の実施形態では、ガス供給管3aとガス供給管3bとで、内部を流れる原料ガスの流量も同じである。
もっとも、第4の実施形態では、ガス出口31を構成する開口のサイズが、ガス出口32を構成する開口のサイズよりも大きい。
このため、ガス出口31と対面する領域の方が、ガス出口32と対面する領域よりも、原料ガスの供給量が多くなり、熱CVD反応が多く生じ、形成される部材7の厚さが増す。こうして、ニアネットシェイプ部材である部材7が容易に得られる。
【0035】
なお、図4では、便宜的に、ガス出口31およびガス出口32を構成する開口の個数を、それぞれ、1個ずつにしているが、ガス出口31およびガス出口32は、それぞれ、同じ個数の複数の開口によって構成されていてもよい。
【0036】
〈第5の実施形態〉
図5に基づいて、第5の実施形態を説明する。第5の実施形態は、少なくとも、上述した条件3を満たす実施形態である。
図5は、第5の実施形態の装置1を模式的に示す断面図である。図1図4に基づいて説明した第1~第4の実施形態と同一の部分は同一の符号で示し、説明も省略する。
第5の実施形態では、第1の実施形態(図1)と同様に、ガス供給管3の本数は1本である。もっとも、ガス供給管3には、S字部33は無い。S字部33に相当する部分は、X軸方向に沿って直線状であり、この部分に、基材6の表面6aまでの垂直距離が同じ複数の開口からなるガス出口31が設けられている。ガス出口31を構成する開口から出る原料ガスの流量は、いずれも同じである。
【0037】
第5の実施形態においては、加熱部9aの加熱出力が、加熱部9bの加熱出力よりも大きい。このため、加熱された基材6は、X軸方向(表面6aに沿った方向)に、異なる温度を有する。具体的には、基材6の温度は、加熱部9aが配置されている図5中左側の方が、加熱部9bが配置されている、図5中右側よりも高い。
図5中左側の方が図5中右側よりも熱CVD反応が多く生じ、形成される部材7の厚さが増す。こうして、ニアネットシェイプ部材である部材7が容易に得られる。
【0038】
なお、加熱部9の周囲に記載された放射状の線は、加熱部9の加熱出力およびその大きさを図示したものであり、図5では、視覚的に分かりやすくするために、加熱部9aの周囲にある放射状の線を、加熱部9bの周囲にある放射状の線よりも大きく描いている。
【0039】
〈第6の実施形態〉
図6に基づいて、第6の実施形態を説明する。第6の実施形態は、少なくとも、上述した条件2を満たす実施形態である。
図6は、第6の実施形態の装置1を模式的に示す断面図である。図1図5に基づいて説明した第1~第5の実施形態と同一の部分は同一の符号で示し、説明も省略する。
第6の実施形態では、第5の実施形態(図5)と同様に、ガス供給管3の本数は1本であり、基材6の表面6aまでの垂直距離が同じ複数の開口からなるガス出口31が設けられている。
もっとも、ガス供給管3の末端(図6中右側)に近づくに従い、ガス出口31を構成する複数の開口のサイズ(直径)が徐々に小さくなっており、同様に、開口から出る原料ガスの流量も徐々に小さくなっている。ただし、図6においては、便宜的に、開口のサイズをいずれも同一にして描いている。
なお、加熱部9aと加熱部9bとで、加熱出力は同じである。
この場合、ガス供給管3の末端(図6中右側)に近づくに従い、熱CVD反応が少なくなり、形成される部材7の厚さが徐々に減る。こうして、図6中左側から右側に向けて下がる傾斜面を有する部材7が得られる。
このような傾斜面を有する部材7も、厚さが異なる部分を有する。すなわち、図6中左側部分の方が、図6中右側部分よりも厚さが大きい。
【0040】
〈第7の実施形態〉
図7に基づいて、第7の実施形態を説明する。第7の実施形態は、少なくとも、上述した条件1を満たす実施形態である。
図7は、第7の実施形態の装置1を模式的に示す断面図である。図1図6に基づいて説明した第1~第6の実施形態と同一の部分は同一の符号で示し、説明も省略する。
第7の実施形態は、基材6の形状以外は、第1の実施形態と同じである。
すなわち、第1~第6の実施形態では、平板状の基材6を示したが、これに限定されず、基材6は、図7に示すように、段差を有していてもよい。この場合、基材6の表面6aが段差面となっている。
第7の実施形態においても、ガス出口31から基材6の表面6aまでの距離Dは、ガス出口32から基材6の表面6aまでの距離Dよりも短い。
このため、ガス出口31と対面する領域の方が、ガス出口32と対面する領域よりも、原料ガスの供給量が多くなり、熱CVD反応が多く生じ、形成される部材7の厚さが増す。こうして、ニアネットシェイプ部材である部材7が容易に得られる。
【0041】
〈その他の実施形態〉
上述した実施形態では、基材6の表面6aの側に部材7を形成したが、基材6の裏面6bの側に部材7を形成してもよい。
この場合、ハウジング2の内部空間5において、基材6の裏面6bを露出させる。そのために、例えば、テーブル8に代えて、基材6の一部(例えば端部)のみを保持する器具(図示せず)を設けてもよい。
そのうえで、基材6の裏面6bと対向する位置にも、例えば、ガス出口31およびガス出口32を配置する。これにより、基材6の裏面6bに対しても原料ガスが供給されて、この裏面6bに接する部材7が形成される。
【0042】
更に、上述した実施形態では、一枚の基材6に対してのみ部材7を形成したが、複数の基材6に対して、それぞれ、部材7を形成してもよい。
この場合、例えば、基材6の個数に応じて、ガス供給管3の本数を増やす。これにより、複数の基材6の表面6aおよび/または裏面6bに対しても原料ガスが供給されて、それぞれに、部材7が形成される。
【0043】
更に、上述した実施形態では、ガス出口が1つ(ガス出口31)である場合または2つ(ガス出口31およびガス出口32)である場合を示したが、ガス出口の個数は、所望する部材7の形状に応じて、適宜設定され、3つ以上であってもよい。
例えば、ガス出口の個数が3つある場合、そのうち2つのガス出口について、基材6の表面6aまでの垂直距離は同じであったり、出る原料ガスの流量が同じであったりしてもよい。
【0044】
〈基材〉
基材6の形状は、上述した実施形態(図1図7)で示した形状に限定されず、例えば、形成される部材7の形状、用途などに、応じて適宜変更される。
例えば、基材6を表面6a(または裏面6b)の側から見たときの形状としては、矩形、円形、楕円形、ドーナッツ形などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
基材6の素材は、特に限定されないが、耐熱性を有する素材が好ましい。
具体的には、基材6は、炭素、金属、金属炭化物、金属酸化物および金属窒化物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
ここで、「金属」としては、例えば、ケイ素(Si)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)およびマグネシウム(Mg)からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0046】
〈部材(ニアネットシェイプ部材)〉
得られる部材7は、厚さが異なる部分を有する部材であればよく、その形状は、その用途に応じて、適宜変更される。
なお、部材7において、部分の厚さの差は、例えば、0.1~30mmであり、1~20mmが好ましい。
【0047】
得られる部材7は、ニアネットシェイプ部材であり、わずかな加工によって、半導体製造の際に使用される半導体製造装置用部材となる部材であることが好ましい。
ここで、半導体製造装置用部材としては、例えば、成膜装置用部材、エッチング装置用部材、フォーカスリング、エッジリング、サセプタ、電極または排気口が好適に挙げられる。
【0048】
部材7は、SiC膜に限定されない。
部材7は、金属炭化物、金属酸化物、金属窒化物、ホウ素炭化物、ホウ素酸化物およびホウ素窒化物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
ここで、金属としては、例えば、Si、Ta、Ti、AlおよびMgからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0049】
上述した実施形態において、得られた部材(SiC膜など)は、厚さが異なる部分ごとに構造(結晶子サイズ、結晶方位など)が異なる場合がある。
そこで、本発明者らは、これを実証する試験を行なった。
【0050】
具体的には、炭素製の基材の表面に対して、メタン(CH)、四塩化ケイ素(SiCl)および水素(H)を含む混合ガス(構成元素のモル比C/Si=14、H/Si=1)を供給して、熱CVD反応を生じさせて、SiC膜を形成した。
このとき、上述した条件2を満たすために、基材の表面と対向する位置に、3つのガス出口(ガス出口A~C)を配置し、各ガス出口から出る原料ガスの流量(単位:sccm)を、下記表1に示すように異ならせた。
なお、各ガス出口について、開口のサイズは同一とし、基材の表面までの垂直距離も同一とした。更に、熱CVD反応に際して、基材を均一に加熱した。
【0051】
このようにして得られたSiC膜は、各ガス出口と対向する位置ごとに、異なる厚さを有していた。具体的には、原料ガスの流量が多くなるに従い、ガス出口A、BおよびCの順に、厚さが増えていた。
得られたSiC膜の表面について、各ガス出口と対向する位置ごとに、X線回折データを得て、結晶子サイズ(単位:nm)を求めた。結果を下記表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
上記表1に示すように、得られたSiC膜の表面においては、各ガス出口と対向する位置ごとに、結晶子サイズが異なっていた。
したがって、得られたSiC膜については、厚さが異なる部分ごとに構造(この場合、結晶子サイズ)が異なることが実証された。
【符号の説明】
【0054】
1:装置
2:ハウジング
3、3a、3b:ガス供給管
31:ガス出口
32:ガス出口
33:S字部
4:排気管
5:内部空間
6:基材
6a:基材の表面
6b:基材の裏面
7:部材
8:テーブル
8a:支柱
9、9a、9b:加熱部
、D:ガス出口から基材の表面までの垂直距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7