(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163275
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】基板処理方法及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
H01L21/304 601Z
H01L21/304 622W
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024157335
(22)【出願日】2024-09-11
(62)【分割の表示】P 2023000669の分割
【原出願日】2019-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2018240179
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】森 弘明
(72)【発明者】
【氏名】田之上 隼斗
(72)【発明者】
【氏名】川口 義広
(57)【要約】
【課題】基板同士が接合された重合基板において、周縁改質層を適切な位置に形成する。
【解決手段】基板を処理する基板処理方法であって、第1の基板と第2の基板が接合された重合基板における前記第2の基板を保持することと、前記第1の基板の内部に周縁用レーザ光を除去対象の周縁部と中央部との境界に沿って照射して、周縁改質層を形成することと、を有し、前記重合基板は、前記第1の基板の表面と前記第2の基板の表面が接合された接合領域と、当該接合領域の外側端部より径方向外側の領域である未接合領域と、を有し、前記周縁改質層を形成することにおいて、前記周縁改質層と前記接合領域の前記外側端部との距離が500μm以内となるように前記周縁用レーザ光を照射する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する基板処理方法であって、
第1の基板と第2の基板が接合された重合基板における前記第2の基板を保持することと、
前記第1の基板の内部に周縁用レーザ光を除去対象の周縁部と中央部との境界に沿って照射して、周縁改質層を形成することと、を有し、
前記重合基板は、前記第1の基板の表面と前記第2の基板の表面が接合された接合領域と、当該接合領域の外側端部より径方向外側の領域である未接合領域と、を有し、
前記周縁改質層を形成することにおいて、前記周縁改質層と前記接合領域の前記外側端部との距離が500μm以内となるように前記周縁用レーザ光を照射する、基板処理方法。
【請求項2】
前記周縁改質層を形成することにおいて、前記周縁改質層と前記接合領域の前記外側端部との距離が50μm以内となるように前記周縁用レーザ光を照射する、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
撮像部により、前記重合基板における前記接合領域と前記未接合領域との境界を撮像することで、画像を取得することを有する、請求項1又は2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記画像から、前記周縁改質層を形成する位置と前記接合領域の前記外側端部とのずれを補正することを有する、請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記重合基板に垂直な軸周りに回転可能に構成される基板保持部によって前記重合基板における前記第2の基板を保持することと、
前記画像から、前記基板保持部の回転中心と、前記接合領域の中心と、の偏心量を算出することと、
前記偏心量に基づいて、前記周縁改質層を形成する位置と前記接合領域の前記外側端部との相対位置を調整することで前記ずれを補正することと、を有する、請求項4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記基板保持部は移動機構を有し、当該移動機構により、前記周縁改質層を形成する位置と前記接合領域の前記外側端部との前記相対位置を調整する、請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記撮像部は、前記重合基板における前記接合領域と前記未接合領域との境界を撮像することで前記画像を取得するマイクロカメラと、前記重合基板の外側端部を撮像するマクロカメラと、を有し、
前記マクロカメラによって、前記重合基板の前記外側端部を撮像して第2の画像を取得することと、
前記第2の画像から前記基板保持部の中心と前記重合基板の中心の第2の偏心量を算出することと、
前記第2の偏心量に基づいて、前記マイクロカメラが前記重合基板における前記接合領域と前記未接合領域との境界を撮像することが可能な位置を決定することと、を有する、請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
基板を処理する基板処理装置であって、
第1の基板と第2の基板が接合された重合基板における前記第2の基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部に保持された前記重合基板における前記第1の基板の内部に、除去対象の周縁部と中央部との境界に沿って周縁用レーザ光を照射して周縁改質層を形成する改質装置と、を有し、
前記重合基板は、前記第1の基板の表面と前記第2の基板の表面が接合された接合領域と、当該接合領域の径方向外側の領域である未接合領域と、を有し、
前記改質装置は、前記周縁改質層と前記接合領域の外側端部との距離が500μm以内となるように前記周縁用レーザ光を照射するように構成される、基板処理装置。
【請求項9】
前記改質装置は、前記周縁改質層と前記接合領域の外側端部との距離が50μm以内となるように前記周縁用レーザ光を照射するように構成される、請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記重合基板における前記接合領域と前記未接合領域との境界を撮像することで画像を取得することが可能に構成される撮像部を有する、請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記画像から、前記周縁改質層を形成する位置と前記接合領域の前記外側端部とのずれを補正することを含む制御を実行する制御部を有する、請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記制御部は、
前記重合基板に垂直な軸周りに回転可能に構成される前記基板保持部によって前記重合基板における前記第2の基板を保持することと、
前記画像から、前記基板保持部の回転中心と、前記接合領域の中心と、の偏心量を算出することと、
前記偏心量に基づいて、前記周縁改質層を形成する位置と前記接合領域の前記外側端部との相対位置を調整することで前記ずれを補正することと、を含む制御を実行する、請求項11に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記基板保持部は移動機構を有し、
前記制御部は、
前記移動機構により、前記周縁改質層を形成する位置と前記接合領域の前記外側端部との前記相対位置を調整することを含む制御を実行する、請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記撮像部は、
前記重合基板における前記接合領域と前記未接合領域との境界を撮像することで前記画像を取得することが可能に構成されるマイクロカメラと、前記重合基板の外側端部を撮像するマクロカメラと、を有し、
前記制御部は、
前記マクロカメラによって、前記重合基板の前記外側端部を撮像して第2の画像を取得することと、
前記第2の画像から前記基板保持部の中心と前記重合基板の中心の第2の偏心量を算出することと、
前記第2の偏心量に基づいて、前記マイクロカメラが前記重合基板における前記接合領域と前記未接合領域との境界を撮像することが可能な位置を決定することと、を含む制御を実行する、請求項13に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、積層型半導体装置の製造方法が開示されている。この製造方法では、2以上の半導体ウェハを積層して積層型半導体装置を製造する。この際、各半導体ウェハは、他の半導体ウェハに積層された後、所望の厚みを持つように裏面研削される。
【0003】
特許文献2には、外周部に砥粒が設けられた円板状の研削工具を回転し、研削工具の少なくとも外周面を半導体ウェハに線状に当接させて半導体ウェハの周端部を略L字状に研削することが開示されている。半導体ウェハは、二枚のシリコンウェハを貼り合わせて作製されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-69736号公報
【特許文献2】特開平9-216152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示にかかる技術は、基板同士が接合された重合基板において、周縁改質層を適切な位置に形成する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、基板を処理する基板処理方法であって、第1の基板と第2の基板が接合された重合基板における前記第2の基板を保持することと、前記第1の基板の内部に周縁用レーザ光を除去対象の周縁部と中央部との境界に沿って照射して、周縁改質層を形成することと、を有し、前記重合基板は、前記第1の基板の表面と前記第2の基板の表面が接合された接合領域と、当該接合領域の外側端部より径方向外側の領域である未接合領域と、を有し、前記周縁改質層を形成することにおいて、前記周縁改質層と前記接合領域の前記外側端部との距離が500μm以内となるように前記周縁用レーザ光を照射する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、基板同士が接合された重合基板において、周縁改質層を適切な位置に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態にかかるウェハ処理システムの構成の概略を模式的に示す平面図である。
【
図2】重合ウェハの構成の概略を示す側面図である。
【
図3】重合ウェハの一部の構成の概略を示す側面図である。
【
図6】周縁除去装置の構成の概略を示す平面図である。
【
図7】周縁除去装置の構成の概略を示す側面図である。
【
図8】搬送アームの構成の概略を示す縦断面図である。
【
図9】第1の実施形態にかかるウェハ処理の主な工程を示すフロー図である。
【
図10】第1の実施形態にかかるウェハ処理の主な工程の説明図である。
【
図12】処理ウェハに周縁改質層を形成する様子を示す説明図である。
【
図13】処理ウェハに周縁改質層を形成した様子を示す説明図である。
【
図14】処理ウェハに分割改質層を形成する様子を示す説明図である。
【
図15】処理ウェハに分割改質層を形成した様子を示す説明図である。
【
図16】処理ウェハに内部面改質層を形成する様子を示す説明図である。
【
図17】処理ウェハに内部面改質層を形成する様子を示す説明図である。
【
図18】周縁部を除去する様子を示す説明図である。
【
図19】処理ウェハから裏面ウェハを分離する様子を示す説明図である。
【
図20】他の実施形態にかかる周縁除去装置の構成の概略を示す側面図である。
【
図21】他の実施形態にかかる改質装置の構成の概略を示す平面図である。
【
図22】他の実施形態にかかる改質装置の構成の概略を示す平面図である。
【
図23】第1の実施形態の変形例にかかるウェハ処理の主な工程の説明図である。
【
図24】第2の実施形態にかかるウェハ処理の主な工程を示すフロー図である。
【
図25】第2の実施形態にかかるウェハ処理の主な工程の説明図である。
【
図26】第2の実施形態において処理ウェハから裏面ウェハを分離する様子を示す説明図である。
【
図27】除去分離装置の構成の概略を示す側面図である。
【
図28】第3の実施形態にかかるウェハ処理の主な工程を示すフロー図である。
【
図29】第3の実施形態にかかるウェハ処理の主な工程の説明図である。
【
図30】他の実施形態にかかる搬送アームの構成の概略を示す縦断面図である。
【
図31】他の実施形態にかかる吸着板の周縁部の構成の概略を示す縦断面図である。
【
図32】他の実施形態にかかる搬送アームにおいて周縁部を除去する様子を示す説明図である。
【
図33】他の実施形態にかかる改質装置の構成の概略を示す平面図である。
【
図34】他の実施形態において処理ウェハに周縁改質層を形成する様子を示す説明図である。
【
図35】他の実施形態において処理ウェハに内部面改質層を形成する様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
半導体デバイスの製造工程においては、例えば特許文献1に開示された方法のように、表面に複数の電子回路等のデバイスが形成された半導体ウェハ(以下、ウェハという)に対し、当該ウェハの裏面を研削加工して、ウェハを薄化することが行われている。
【0010】
ウェハの裏面の研削加工は、例えば当該裏面に研削砥石を当接させた状態で、ウェハと研削砥石をそれぞれ回転させ、さらに研削砥石を下降させて行われる。かかる場合、研削砥石が摩耗し、定期的な交換が必要となる。また、研削加工においては、研削水を使用し、その廃液処理も必要となる。このため、従来のウェハの薄化処理にはランニングコストがかかる。
【0011】
また、通常、ウェハの周縁部は面取り加工がされているが、上述のようにウェハの裏面に研削処理を行うと、ウェハの周縁部が鋭く尖った形状(いわゆるナイフエッジ形状)になる。そうすると、ウェハの周縁部でチッピングが発生し、ウェハが損傷を被るおそれがある。そこで、研削処理前に予めウェハの周縁部を除去する、いわゆるエッジトリムが行われている。
【0012】
上述した特許文献2に記載の端面研削装置は、このエッジトリムを行う装置である。しかしながら、この端面研削装置では、研削によりエッジトリムを行うため、砥石が摩耗し、定期的な交換が必要となる。また、大量の研削水を使用し、廃液処理も必要となる。このため、従来のエッジトリムにはランニングコストがかかる。
【0013】
本開示にかかる技術は、ウェハの薄化処理とエッジトリムを効率よく行うため、これらの前処理を効率よく行う。以下、本実施形態にかかる基板処理装置としてのウェハ処理システム、及び基板処理方法としてのウェハ処理方法について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
先ず、本実施形態にかかるウェハ処理システムの構成について説明する。
図1は、ウェハ処理システム1の構成の概略を模式的に示す平面図である。
【0015】
ウェハ処理システム1では、
図2及び
図3に示すように第1の基板としての処理ウェハWと第2の基板としての支持ウェハSとが接合された、重合基板としての重合ウェハTに対して所定の処理を行う。そしてウェハ処理システム1では、処理ウェハWの周縁部Weを除去し、さらに当該処理ウェハWを薄化する。以下、処理ウェハWにおいて、支持ウェハSに接合された面を表面Waといい、表面Waと反対側の面を裏面Wbという。同様に、支持ウェハSにおいて、処理ウェハWに接合された面を表面Saといい、表面Saと反対側の面を裏面Sbという。
【0016】
処理ウェハWは、例えばシリコンウェハなどの半導体ウェハであって、表面Waに複数のデバイスを含むデバイス層(図示せず)が形成されている。また、デバイス層にはさらに酸化膜F、例えばSiO2膜(TEOS膜)が形成されている。なお、処理ウェハWの周縁部Weは面取り加工がされており、周縁部Weの断面はその先端に向かって厚みが小さくなっている。また、周縁部Weはエッジトリムにおいて除去される部分であり、例えば処理ウェハWの外端部から径方向に1mm~5mmの範囲である。
【0017】
なお、
図2においては、図示の煩雑さを回避するため、酸化膜Fの図示を省略している。また、以下の説明で用いられる他の図面においても同様に、酸化膜Fの図示を省略する場合がある。
【0018】
支持ウェハSは、処理ウェハWを支持するウェハであって、例えばシリコンウェハである。支持ウェハSの表面Saには酸化膜(図示せず)が形成されている。また、支持ウェハSは、処理ウェハWの表面Waのデバイスを保護する保護材として機能する。なお、支持ウェハSの表面Saの複数のデバイスが形成されている場合には、処理ウェハWと同様に表面Saにデバイス層(図示せず)が形成される。
【0019】
ここで、処理ウェハWの周縁部Weにおいて、処理ウェハWと支持ウェハSが接合されていると、周縁部Weを適切に除去できないおそれがある。そこで、処理ウェハWと支持ウェハSの界面には、酸化膜Fと支持ウェハSの表面Saが接合された接合領域Aaと、接合領域Aaの径方向外側の領域である未接合領域Abとを形成する。このように未接合領域Abが存在することで、周縁部Weを適切に除去できる。なお、詳細は後述するが、接合領域Aaの外側端部は、除去される周縁部Weの内側端部より若干径方向外側に位置させることが好ましい。
【0020】
図1に示すようにウェハ処理システム1は、搬入出ステーション2と処理ステーション3を一体に接続した構成を有している。搬入出ステーション2は、例えば外部との間で複数の重合ウェハTを収容可能なカセットCtが搬入出される。処理ステーション3は、重合ウェハTに対して所定の処理を施す各種処理装置を備えている。
【0021】
搬入出ステーション2には、カセット載置台10が設けられている。図示の例では、カセット載置台10には、複数、例えば3つのカセットCtをY軸方向に一列に載置自在になっている。なお、カセット載置台10に載置されるカセットCtの個数は、本実施形態に限定されず、任意に決定することができる。
【0022】
搬入出ステーション2には、カセット載置台10のX軸負方向側において、当該カセット載置台10に隣接してウェハ搬送装置20が設けられている。ウェハ搬送装置20は、Y軸方向に延伸する搬送路21上を移動自在に構成されている。また、ウェハ搬送装置20は、重合ウェハTを保持して搬送する、例えば2つの搬送アーム22、22を有している。各搬送アーム22は、水平方向、鉛直方向、水平軸回り及び鉛直軸周りに移動自在に構成されている。なお、搬送アーム22の構成は本実施形態に限定されず、任意の構成を取り得る。そして、ウェハ搬送装置20は、カセット載置台10のカセットCt、及び後述するトランジション装置30に対して、重合ウェハTを搬送可能に構成されている。
【0023】
搬入出ステーション2には、ウェハ搬送装置20のX軸負方向側において、当該ウェハ搬送装置20に隣接して、重合ウェハTを受け渡すためのトランジション装置30が設けられている。
【0024】
処理ステーション3には、例えば3つの処理ブロックG1~G3が設けられている。第1の処理ブロックG1、第2の処理ブロックG2、及び第3の処理ブロックG3は、X軸正方向側(搬入出ステーション2側)から負方向側にこの順で並べて配置されている。
【0025】
第1の処理ブロックG1には、エッチング装置40、洗浄装置41、及びウェハ搬送装置50が設けられている。エッチング装置40と洗浄装置41は、積層して配置されている。なお、エッチング装置40と洗浄装置41の数や配置はこれに限定されない。例えば、エッチング装置40と洗浄装置41はそれぞれX軸方向に延伸し、平面視において並列に並べて載置されていてもよい。さらに、これらエッチング装置40と洗浄装置41はそれぞれ、積層されていてもよい。
【0026】
エッチング装置40は、後述する加工装置80で研削された処理ウェハWの裏面Wbをエッチング処理する。例えば、裏面Wbに対して薬液(エッチング液)を供給し、当該裏面Wbをウェットエッチングする。薬液には、例えばHF、HNO3、H3PO4、TMAH、Choline、KOHなどが用いられる。
【0027】
洗浄装置41は、後述する加工装置80で研削された処理ウェハWの裏面Wbを洗浄する。例えば裏面Wbにブラシを当接させて、当該裏面Wbをスクラブ洗浄する。なお、裏面Wbの洗浄には、加圧された洗浄液を用いてもよい。また、洗浄装置41は、処理ウェハWの裏面Wbと共に、支持ウェハSの裏面Sbを洗浄する構成を有していてもよい。
【0028】
ウェハ搬送装置50は、例えばエッチング装置40と洗浄装置41に対してY軸負方向側に配置されている。ウェハ搬送装置50は、重合ウェハTを保持して搬送する、例えば2つの搬送アーム51、51を有している。各搬送アーム51は、水平方向、鉛直方向、水平軸回り及び鉛直軸周りに移動自在に構成されている。なお、搬送アーム51の構成は本実施形態に限定されず、任意の構成を取り得る。そして、ウェハ搬送装置50は、トランジション装置30、エッチング装置40、洗浄装置41、及び後述する改質装置60に対して、重合ウェハTを搬送可能に構成されている。
【0029】
第2の処理ブロックG2には、改質装置60、周縁除去装置61、及びウェハ搬送装置70が設けられている。改質装置60と周縁除去装置61は、積層して配置されている。なお、改質装置60と周縁除去装置61の数や配置はこれに限定されない。
【0030】
改質装置60は、処理ウェハWの内部にレーザ光を照射し、周縁改質層、分割改質層、及び内部面改質層を形成する。改質装置60の具体的な構成は後述する。
【0031】
周縁除去装置61は、改質装置60で形成された周縁改質層を基点に、処理ウェハWの周縁部Weを除去する。周縁除去装置61の具体的な構成は後述する。
【0032】
ウェハ搬送装置70は、例えば改質装置60と周縁除去装置61に対してY軸正方向側に配置されている。ウェハ搬送装置70は、重合ウェハTを保持して搬送する、例えば2つの搬送アーム71、71を有している。各搬送アーム71は、多関節のアーム部材72に支持され、水平方向、鉛直方向、水平軸回り及び鉛直軸周りに移動自在に構成されている。搬送アーム71の具体的な構成は後述する。そして、ウェハ搬送装置70は、洗浄装置41、改質装置60、周縁除去装置61、及び後述する加工装置80に対して、重合ウェハTを搬送可能に構成されている。
【0033】
第3の処理ブロックG3には、加工装置80が設けられている。なお、加工装置80の数や配置は本実施形態に限定されず、複数の加工装置80が任意に配置されていてもよい。
【0034】
加工装置80は、処理ウェハWの裏面Wbを研削する。そして、内部面改質層が形成された裏面Wbにおいて、当該内部面改質層を除去し、さらに周縁改質層を除去する。具体的に、加工装置80は、チャック81に保持された処理ウェハWの裏面Wbを研削砥石(図示せず)に当接させた状態で、処理ウェハWと研削砥石をそれぞれ回転させ、裏面Wbを研削する。なお、本実施形態では、チャック81と研削砥石(図示せず)が加工部を構成している。また、加工装置80には公知の研削装置(研磨装置)が用いられ、例えば特開2010-69601号公報に記載の装置が用いられる。
【0035】
以上のウェハ処理システム1には、制御装置90が設けられている。制御装置90は、例えばコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、ウェハ処理システム1における重合ウェハTの処理を制御するプログラムが格納されている。また、プログラム格納部には、上述の各種処理装置や搬送装置などの駆動系の動作を制御して、ウェハ処理システム1における後述の基板処理を実現させるためのプログラムも格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、当該記憶媒体Hから制御装置90にインストールされたものであってもよい。
【0036】
次に、上述した改質装置60について説明する。
図4は、改質装置60の構成の概略を示す平面図である。
図5は、改質装置60の構成の概略を示す側面図である。
【0037】
改質装置60は、重合ウェハTを上面で保持する、基板保持部としてのチャック100を有している。チャック100は、処理ウェハWが上側であって支持ウェハSが下側に配置された状態で、当該支持ウェハSを吸着保持する。チャック100は、エアベアリング101を介して、スライダテーブル102に支持されている。スライダテーブル102の下面側には、回転部103が設けられている。回転部103は、駆動源として例えばモータを内蔵している。チャック100は、回転部103によってエアベアリング101を介して、鉛直軸回りに回転自在に構成されている。スライダテーブル102は、その下面側に設けられた水平移動部104によって、基台106に設けられY軸方向に延伸するレール105に沿って移動可能に構成されている。なお、水平移動部104の駆動源は特に限定されるものではないが、例えばリニアモータが用いられる。
【0038】
チャック100の上方には、レーザヘッド110が設けられている。レーザヘッド110は、レンズ111を有している。レンズ111は、レーザヘッド110の下面に設けられた筒状の部材であり、チャック100に保持された処理ウェハWにレーザ光を照射する。なお、本実施形態では、周縁改質部と内部面改質部が共通のレーザヘッド110を有している。
【0039】
またレーザヘッド110は、図示しないLCOS(Liquid Crystal on Silicon)をさらに有している。LCOSは、空間光変調器であって、レーザ光を変調して出力する。具体的にLCOSは、レーザ光の焦点位置や位相を制御することができ、処理ウェハWに照射されるレーザ光の形状や数(分岐数)を調整することができる。
【0040】
そしてレーザヘッド110は、レーザ光発振器(図示せず)から発振された高周波のパルス状のレーザ光であって、処理ウェハWに対して透過性を有する波長のレーザ光を、処理ウェハWの内部の所定位置に集光して照射する。これによって、処理ウェハWの内部においてレーザ光が集光した部分が改質し、周縁改質層、分割改質層、及び内部面改質層が形成される。
【0041】
レーザヘッド110は、支持部材120に支持されている。レーザヘッド110は、鉛直方向に延伸するレール121に沿って、昇降機構130により昇降自在に構成されている。またレーザヘッド110は、移動機構131によってY軸方向に移動自在に構成されている。なお、昇降機構130及び移動機構131はそれぞれ、支持柱132に支持されている。
【0042】
チャック100の上方であって、レーザヘッド110のY軸正方向側には、マクロカメラ140とマイクロカメラ150が設けられている。例えば、マクロカメラ140とマイクロカメラ150は一体に構成され、マクロカメラ140はマイクロカメラ150のY軸正方向側に配置されている。マクロカメラ140とマイクロカメラ150は、昇降機構160によって昇降自在に構成され、さらに移動機構161によってY軸方向に移動自在に構成されている。
【0043】
マクロカメラ140は、処理ウェハW(重合ウェハT)の外側端部を撮像する。マクロカメラ140は、例えば同軸レンズを備え、可視光、例えば赤色光を照射し、さらに対象物からの反射光を受光する。なお例えば、マクロカメラ140の撮像倍率は2倍である。
【0044】
マイクロカメラ150は、処理ウェハWの周縁部を撮像し、接合領域Aaと未接合領域Abの境界を撮像する。マイクロカメラ150は、例えば同軸レンズを備え、赤外光(IR光)を照射し、さらに対象物からの反射光を受光する。なお例えば、マイクロカメラ150の撮像倍率は10倍であり、視野はマクロカメラ140に対して約1/5であり、ピクセルサイズはマクロカメラ140に対して約1/5である。
【0045】
次に、上述した周縁除去装置61について説明する。
図6は、周縁除去装置61の構成の概略を示す平面図である。
図7は、周縁除去装置61の構成の概略を示す側面図である。
【0046】
周縁除去装置61は、重合ウェハTを上面で保持する、他の基板保持部としてのチャック170を有している。チャック170は、処理ウェハWが上側であって支持ウェハSが下側に配置された状態で、当該支持ウェハSを吸着保持する。またチャック170は、回転機構171によって鉛直軸回りに回転可能に構成されている。
【0047】
チャック170の上方には、処理ウェハWの周縁部Weを保持して移送する、周縁除去部としてのパッド180が設けられている。パッド180には例えば真空ポンプなどの吸引機構(図示せず)が接続され、パッド180はその下面において周縁部Weを吸着保持する。パッド180には、パッド180を鉛直方向に昇降させる昇降機構181と、パッド180を水平方向(X軸方向及びY軸方向)に移動させる移動機構182とが設けられている。
【0048】
チャック170の上方には、処理ウェハWから周縁部Weが除去されたか否かを確認するための検知部190が設けられている。検知部190は、チャック170に保持され、且つ周縁部Weが除去された処理ウェハWにおいて、周縁部Weの有無を検知する。検知部190には、例えばセンサが用いられる。センサは、例えばライン型のレーザ変位計であり、重合ウェハT(処理ウェハW)の周縁部にレーザを照射して当該重合ウェハTの厚みを測定することで、周縁部Weの有無を検知する。なお、検知部190による周縁部Weの有無の検知方法はこれに限定されない。例えば検知部190には、例えばラインカメラを用い、重合ウェハT(処理ウェハW)を撮像することで、周縁部Weの有無を検知してもよい。
【0049】
なお、チャック170の下方には、パッド180で移送された周縁部Weを回収する回収部(図示せず)が設けられている。回収部は、パッド180で吸着保持された周縁部Weを収容して回収する。
【0050】
次に、上述したウェハ搬送装置70の搬送アーム71について説明する。
図8は、搬送アーム71の構成の概略を示す縦断面図である。
【0051】
基板分離部及び搬送部としての搬送アーム71は、重合ウェハTより大きい径を有する、円板状の吸着板200を有している。吸着板200の下面には、処理ウェハWの中央部Wcを保持する保持部210が設けられている。
【0052】
保持部210には中央部Wcを吸引する吸引管211が接続され、吸引管211は例えば真空ポンプなどの吸引機構212に連通している。吸引管211には、吸引圧力を測定する圧力センサ213が設けられている。圧力センサ213の構成は任意であるが、例えばダイヤフラム型の圧力計が用いられる。
【0053】
吸着板200の上面には、当該吸着板200を鉛直軸回りに回転させる回転機構220が設けられている。回転機構220は、支持部材221に支持されている。また、支持部材221(回転機構220)は、アーム部材72に支持されている。
【0054】
次に、以上のように構成されたウェハ処理システム1を用いて行われる、第1の実施形態にかかるウェハ処理について説明する。
図9は、ウェハ処理の主な工程を示すフロー図である。
図10は、ウェハ処理の主な工程の説明図である。なお、本実施形態では、ウェハ処理システム1の外部の接合装置(図示せず)において、処理ウェハWと支持ウェハSが接合され、予め重合ウェハTが形成されている。
【0055】
先ず、
図10(a)に示す重合ウェハTを複数収納したカセットCtが、搬入出ステーション2のカセット載置台10に載置される。
【0056】
次に、ウェハ搬送装置20によりカセットCt内の重合ウェハTが取り出され、トランジション装置30に搬送される。続けて、ウェハ搬送装置50により、トランジション装置30の重合ウェハTが取り出され、改質装置60に搬送される。改質装置60では、
図10(b)に示すように処理ウェハWの内部に周縁改質層M1と分割改質層M2が順次形成され(
図9のステップA1、A2)、さらに
図10(c)に示すように内部面改質層M3が形成される(
図9のステップA3)。周縁改質層M1は、エッジトリムにおいて周縁部Weを除去の際の基点となるものである。分割改質層M2は、除去される周縁部Weを小片化するための基点となるものである。内部面改質層M3は、処理ウェハWを薄化するための基点となるものである。
【0057】
図11は、改質装置60における改質処理の主な工程の説明図である。先ず、
図11(a)に示すようにチャック100(スライダテーブル102)を搬入出位置P1に移動させる。そして、ウェハ搬送装置50から重合ウェハTが搬入され、チャック100に保持される。
【0058】
次に、
図11(b)に示すようにチャック100をマクロアライメント位置P2に移動させる。マクロアライメント位置P2は、マクロカメラ140が処理ウェハWの外側端部を撮像できる位置である。
【0059】
次に、マクロカメラ140によって、処理ウェハWの周方向360度における外側端部の画像が撮像される。撮像された画像は、マクロカメラ140から制御装置90に出力される。
【0060】
制御装置90では、マクロカメラ140の画像から、チャック100の中心Ccと処理ウェハWの中心Cwの第1の偏心量を算出する。さらに制御装置90では、第1の偏心量に基づいて、当該第1の偏心量のY軸成分を補正するように、チャック100の移動量を算出する。チャック100は、この算出された移動量に基づいてY軸方向に移動し、
図11(c)に示すようにチャック100をマイクロアライメント位置P3に移動させる。マイクロアライメント位置P3は、マイクロカメラ150が処理ウェハWの周縁部を撮像できる位置である。ここで、上述したようにマイクロカメラ150の視野はマクロカメラ140に対して約1/5と小さいため、第1の偏心量のY軸成分を補正しないと、処理ウェハWの周縁部がマイクロカメラ150の画角に入らず、マイクロカメラ150で撮像できない場合がある。このため、第1の偏心量に基づくY軸成分の補正は、チャック100をマイクロアライメント位置P3に移動させるためともいえる。
【0061】
次に、マイクロカメラ150によって、処理ウェハWの周方向360度における接合領域Aaと未接合領域Abの境界を撮像する。撮像された画像は、マイクロカメラ150から制御装置90に出力される。
【0062】
制御装置90では、マイクロカメラ150の画像から、チャック100の中心Ccと接合領域Aaの中心Caの第2の偏心量を算出する。さらに制御装置90では、第2の偏心量に基づいて、接合領域Aaの中心とチャック100の中心が一致するように、周縁改質層M1に対するチャック100の位置を決定する。ここで上述したように、処理ウェハWと支持ウェハSの接合前に未接合領域Abを形成するが、この未接合領域Abの中心(接合領域Aaの中心Ca)と、処理ウェハWの中心とがずれる場合がある。この点、本実施形態のように第2の偏心量に基づいて周縁改質層M1に対するチャック100の位置を調整することで、未接合領域Abのずれが補正される。
【0063】
次に、
図11(d)に示すようにチャック100を、改質位置P4に移動させる。改質位置P4は、レーザヘッド110が処理ウェハWにレーザ光を照射して、周縁改質層M1を形成する位置である。なお、本実施形態では、改質位置P4はマイクロアライメント位置P3と同じである。
【0064】
次に、
図12及び
図13に示すようにレーザヘッド110からレーザ光L1(周縁用レーザ光L1)を照射して、処理ウェハWの周縁部Weと中央部Wcの境界に周縁改質層M1を形成する(
図9のステップA1)。レーザ光L1は、LCOSによって、その形状と数が調整される。具体的にレーザ光L1は、後述の周縁改質層M1を形成するように、その焦点位置と位相が制御されて形状が調整される。また本実施形態では、レーザ光L1の数は1つである。
【0065】
上記レーザ光L1によって形成される周縁改質層M1は、厚み方向に延伸し縦長のアスペクト比を有する。周縁改質層M1の下端は、薄化後の処理ウェハWの目標表面(
図12中の点線)より上方に位置している。すなわち、周縁改質層M1の下端と処理ウェハWの表面Waとの間の距離H1は、薄化後の処理ウェハWの目標厚みH2より大きい。かかる場合、薄化後の処理ウェハWに周縁改質層M1が残らない。なお、処理ウェハWの内部には、周縁改質層M1からクラックC1が進展し、表面Waと裏面Wbに到達している。
【0066】
なお、周縁改質層M1は、接合領域Aaの外側端部よりも径方向内側に形成される。レーザヘッド110からのレーザ光L1によって周縁改質層M1を形成する際に、例えば加工誤差などにより周縁改質層M1が接合領域Aaの外側端部からずれて形成されたとしても、当該周縁改質層M1が接合領域Aaの外側端部から径方向外側に形成されるのを抑制できる。ここで、周縁改質層M1が接合領域Aaの外側端部から径方向外側に形成されると、周縁部Weが除去された後に支持ウェハSに対して処理ウェハWが浮いた状態になってしまう。この点、本実施形態では、かかる処理ウェハWの状態を確実に抑制することができる。
【0067】
なお、本発明者らが鋭意検討したところ、周縁改質層M1と接合領域Aaの外側端部との距離Dが十分に小さいと周縁部Weを適切に除去できることを確認している。そして、この距離Dは500μm以内であるのが好く、さらに好ましくは50μm以内である。
【0068】
ここで、上述したように制御装置90では、第2の偏心量に基づいてチャック100の位置が決定されている。ステップA1では、この決定されたチャック100の位置に合わせて、接合領域Aaの中心とチャック100の中心が一致するように、回転部103によってチャック100を回転させると共に、水平移動部104によってチャック100をY軸方向に移動させる。この際、チャック100の回転とY軸方向の移動を同期させる。このように完全同期制御を行うことで、チャック100の移動を、決定された位置に誤差が少なく適切に追従させることができる。
【0069】
そして、このようにチャック100(処理ウェハW)を回転及び移動させながら、レーザヘッド110から処理ウェハWの内部にレーザ光L1を照射する。すなわち、第2の偏心量を補正しながら、周縁改質層M1を形成する。そうすると周縁改質層M1は、接合領域Aaと同心円状に環状に形成される。すなわち、
図12に示す周縁改質層M1と接合領域Aaの外側端部との距離Dを一定にすることができる。このため、その後周縁除去装置61において、周縁改質層M1を基点に周縁部Weを適切に除去することができる。
【0070】
なお、本例においては、第2の偏心量がX軸成分を備える場合に、チャック100をY軸方向に移動させつつ、チャック100を回転させて、当該X軸成分を補正している。一方、第2の偏心量がX軸成分を備えない場合には、チャック100を回転させずに、Y軸方向に移動させるだけでよい。
【0071】
次に、レーザヘッド110をY軸方向に移動させて、
図14及び
図15に示すようにレーザヘッド110からレーザ光L2(分割用レーザ光L2)を照射して、周縁改質層M1の径方向外側に分割改質層M2を形成する(
図9のステップA2)。この際、LCOSによって、レーザヘッド110から照射されるレーザ光が、レーザ光L1からレーザ光L2に切り替えられ、レーザ光L2はその形状と数が調整される。具体的にレーザ光L2は、後述の分割改質層M2を形成するように、その焦点位置と位相が制御されて形状が調整される。また本実施形態では、レーザ光L2の数は1つである。
【0072】
分割改質層M2も、周縁改質層M1と同様に厚み方向に延伸し、縦長のアスペクト比を有する。なお、本実施形態においては、分割改質層M2は周縁改質層M1と同じ高さに形成される。また、分割改質層M2からクラックC2が進展し、表面Waと裏面Wbに到達している。
【0073】
また、分割改質層M2及びクラックC2を径方向に数μmのピッチで複数形成することで、
図15に示すように周縁改質層M1から径方向外側に延伸する、1ラインの分割改質層M2が形成される。なお、図示の例においては、径方向に延伸するラインの分割改質層M2は8箇所に形成されているが、この分割改質層M2の数は任意である。少なくとも、分割改質層M2が2箇所に形成されていれば、周縁部Weは除去できる。かかる場合、エッジトリムにおいて周縁部Weを除去する際、当該周縁部Weは、環状の周縁改質層M1を基点に分離しつつ、分割改質層M2によって複数に分割される。そうすると、除去される周縁部Weが小片化され、より容易に除去することができる。
【0074】
なお、本実施形態では分割改質層M2を形成するにあたり、レーザヘッド110をY軸方向に移動させたが、チャック100をY軸方向に移動させてもよい。
【0075】
次に、
図16及び
図17に示すようにレーザヘッド110からレーザ光L3(内部面用レーザ光L3)を照射して、面方向に沿って内部面改質層M3を形成する(
図9のステップA3)。この際、LCOSによって、レーザヘッド110から照射されるレーザ光が、レーザ光L2からレーザ光L3に切り替えられ、レーザ光L3はその形状と数が調整される。具体的にレーザ光L3は、後述の内部面改質層M3を形成するように、その焦点位置と位相が制御されて形状が調整される。また本実施形態では、レーザ光L3の数は1つである。なお、
図17に示す黒塗り矢印はチャック100の回転方向を示し、以下の説明においても同様である。
【0076】
内部面改質層M3の下端は、薄化後の処理ウェハWの目標表面(
図16中の点線)より少し上方に位置している。すなわち、内部面改質層M3の下端と処理ウェハWの表面Waとの間の距離H3は、薄化後の処理ウェハWの目標厚みH2より少し大きい。なお、処理ウェハWの内部には、内部面改質層M3から面方向にクラックC3が進展する。
【0077】
ステップA3では、チャック100(処理ウェハW)を回転させると共に、レーザヘッド110を処理ウェハWの外周部から中心部に向けてY軸方向に移動させながら、レーザヘッド110から処理ウェハWの内部にレーザ光L3を照射する。そうすると、内部面改質層M3は、処理ウェハWの面内において、外側から内側に螺旋状に形成される。
【0078】
なお、本実施形態では内部面改質層M3を形成するにあたり、レーザヘッド110をY軸方向に移動させたが、チャック100をY軸方向に移動させてもよい。
【0079】
次に、
図11(e)に示すようにチャック100を搬入出位置P1に移動させる。そして、ウェハ搬送装置70によって重合ウェハTが搬出される。
【0080】
以上のように改質装置60では、ステップA1における周縁改質層M1とステップA3における内部面改質層M3がこの順で行われている。ここで、仮に周縁改質層M1の前に内部面改質層M3を形成すると、処理ウェハWに膨張や反りが発生する可能性がある。例えば内部面改質層M3を形成すると、クラックC3が処理ウェハWの面方向に形成される。そうすると、クラックC3に応力がかかり、処理ウェハWが面方向に膨張する。また、この膨張の大きさが処理ウェハWの面方向位置で異なると、局所的に処理ウェハWの分離が進む場合がある。かかる場合、処理ウェハWの高さが面内で不均一になり、反りが発生する。このように処理ウェハWに膨張や反りが発生すると、周縁改質層M1が適切な位置に形成することができない。そしてその結果、周縁部Weを適切に除去することができず、品質を確保することができない。この点、本実施形態では、周縁改質層M1と内部面改質層M3をこの順で形成し、処理ウェハWの膨張や反りを抑制することができる。
【0081】
次に、重合ウェハTはウェハ搬送装置70により周縁除去装置61に搬送される。周縁除去装置61では、
図10(d)に示すように周縁改質層M1を基点に、処理ウェハWの周縁部Weを除去する(
図9のステップA4)。ステップA4では、
図18に示すように昇降機構181によりパッド180を下降させて周縁部Weを吸着保持した後、さらにパッド180を上昇させる。そうすると、パッド180に保持された周縁部Weが、周縁改質層M1を基点に処理ウェハWから分離される。この際、分割改質層M2を基点に、周縁部Weは小片化して分離される。なお、除去された周縁部Weは、パッド180から回収部(図示せず)に回収される。
【0082】
次に、重合ウェハTはウェハ搬送装置70により加工装置80に搬送される。加工装置80では、先ず、搬送アーム71からチャック81に重合ウェハTを受け渡す際、
図10(e)に示すように内部面改質層M3を基点に、処理ウェハWの裏面Wb側(以下、裏面ウェハWb1という)を分離する(
図9のステップA5)。
【0083】
ステップA5では、
図19(a)に示すように搬送アーム71の吸着板200で処理ウェハWを吸着保持しつつ、チャック81で支持ウェハSを吸着保持する。そして、吸着板200を回転させて、内部面改質層M3を境界に裏面ウェハWb1が縁切りされる。その後、
図19(b)に示すように吸着板200が裏面ウェハWb1を吸着保持した状態で、当該吸着板200を上昇させて、処理ウェハWから裏面ウェハWb1を分離する。この際、圧力センサ213で裏面ウェハWb1を吸引する圧力を測定することで、裏面ウェハWb1の有無を検知して、処理ウェハWから裏面ウェハWb1が分離されたか否かを確認することができる。なお、
図19(b)に示したように吸着板200を上昇させるだけで裏面ウェハWb1を分離できる場合、
図19(a)に示した吸着板200の回転を省略してもよい。また、分離された裏面ウェハWb1は、ウェハ処理システム1の外部に回収される。
【0084】
続いて、
図10(f)に示すようにチャック81に保持された処理ウェハWの裏面Wbを研削し、当該裏面Wbに残る内部面改質層M3と周縁改質層M1を除去する(
図9のステップA6)。ステップA6では、裏面Wbに研削砥石を当接させた状態で、処理ウェハWと研削砥石をそれぞれ回転させ、裏面Wbを研削する。なおその後、洗浄液ノズル(図示せず)を用いて、処理ウェハWの裏面Wbが洗浄液によって洗浄されてもよい。
【0085】
次に、重合ウェハTはウェハ搬送装置70により洗浄装置41に搬送される。洗浄装置41では処理ウェハWの研削面である裏面Wbがスクラブ洗浄される(
図9のステップA7)。なお、洗浄装置41では、処理ウェハWの裏面Wbと共に、支持ウェハSの裏面Sbが洗浄されてもよい。
【0086】
次に、重合ウェハTはウェハ搬送装置50によりエッチング装置40に搬送される。エッチング装置40では処理ウェハWの裏面Wbが薬液によりウェットエッチングされる(
図9のステップA8)。上述した加工装置80で研削された裏面Wbには、研削痕が形成される場合がある。本ステップA8では、ウェットエッチングすることによって研削痕を除去でき、裏面Wbを平滑化することができる。
【0087】
その後、すべての処理が施された重合ウェハTは、ウェハ搬送装置50によりトランジション装置30に搬送され、さらにウェハ搬送装置20によりカセット載置台10のカセットCtに搬送される。こうして、ウェハ処理システム1における一連のウェハ処理が終了する。
【0088】
以上の実施形態によれば、周縁改質層M1を基点に周縁部Weを除去してエッジトリムを行い、さらに内部面改質層M3を基点に裏面ウェハWb1を分離して処理ウェハWの薄化処理を行っている。そして、これら周縁改質層M1と内部面改質層M3の形成に用いられるレーザヘッド110は経時的に劣化しにくく、消耗品が少なくなるため、メンテナンス頻度を低減することができる。また、レーザを用いたドライプロセスであるため、研削水や廃水処理が不要となる。このため、ランニングコストを低廉化することができる。したがって、従来の研削によるエッジトリムや研削による薄化処理に比して、ランニングコストを抑えることができる。
【0089】
なお、本実施形態では、ステップA6において裏面Wbの研削を行っているが、この研削は内部面改質層M3及び周縁改質層M1を除去すればよく、その研削量は数十μm程度と少ない。これに対して、従来のように処理ウェハWを薄化するために裏面Wbを研削する場合、その研削量は例えば700μm以上と多く、研削砥石の摩耗度合いが大きい。このため、本実施形態では、やはりメンテナンス頻度を低減することができる。
【0090】
また、本実施形態によれば、処理ウェハWの内部に周縁改質層M1と内部面改質層M3をこの順で形成している。上述したように、仮に内部面改質層M3を先に行った場合、処理ウェハWの膨張や反りが発生する場合があるが、本実施形態では、これら処理ウェハWの膨張や反りを抑制することができる。そしてその結果、周縁部Weを適切に除去することができ、品質を確保することができる。
【0091】
また、本実施形態によれば、1つのレーザヘッド110を用いてレーザ光L1~L3の形状を調整することで、周縁改質層M1、分割改質層M2、及び内部面改質層M3を形成することができる。すなわち、改質層が延伸する方向や、求められる加工品質が異なる場合でも、1つのレーザヘッド110を用いてレーザ光の適切な形状を選択することができる。そして、このように任意の形状の改質層を形成することができるので、当該改質層を形成する自由度が向上する。また、装置の占有面積(フットプリント)を小さくすることができ、省スペース化を実現することができる。さらに、装置構成が単純になるので、装置コストを低廉化することも可能となる。このように本実施形態では、処理ウェハWの薄化処理とエッジトリムの前処理を効率よく行うことができる。
【0092】
なお、以上の実施形態では、1つのレーザヘッド110によって異なる形状のレーザ光L1~L3を照射していたが、レーザヘッド110は、処理対象の重合ウェハTが改質装置60に搬入される前に較正(キャリブレーション)されるのが好ましい。より詳細には、重合ウェハTがチャック100に保持される前に、レーザヘッド110の較正をしておくのが好ましい。かかる場合、1つの処理ウェハWに対する改質処理中にレーザヘッド110の較正を行う必要がなく、レーザ光L1~L3の切り替えに要する時間を短縮することができる。その結果、ウェハ処理のスループットを向上させることができる。
【0093】
また、以上の実施形態では、周縁改質層M1を形成するに際し、レーザヘッド110から処理ウェハWの内部に1つのレーザ光L1を照射したが、複数のレーザ光L1を照射してもよい。かかる場合、周縁改質層M1を形成する時間を短縮することができ、ウェハ処理のスループットをさらに向上させることができる。同様に、内部面改質層M3を形成するに際し、レーザヘッド110から処理ウェハWの内部に1つのレーザ光L3を照射したが、複数のレーザ光L3を照射してもよい。かかる場合も、内部面改質層M3を形成する時間を短縮することができ、ウェハ処理のスループットをさらに向上させることができる。
【0094】
以上の実施形態では、周縁除去装置61においてパッド180を用いて周縁部Weを除去し、加工装置80において搬送アーム71を用いて処理ウェハWを分離していたが、これら周縁部Weの除去と搬送アーム71は同一装置内で行われてもよい。例えば
図20に示すように、周縁除去装置61においてチャック170の上方には、基板分離部としての吸着板230がさらに設けられている。吸着板230は、搬送アーム71の吸着板200と同様の構成であり、重合ウェハTより大きい径の円板形状を有する。吸着板230には例えば真空ポンプなどの吸引機構(図示せず)が接続され、吸着板230はその下面において処理ウェハWの裏面Wbを吸着保持する。吸着板230には、吸着板230を鉛直方向に昇降させる昇降機構231と、吸着板230を鉛直軸回りに回転させる回転機構232とが設けられている。
【0095】
かかる場合、ステップA4においてパッド180により周縁部Weを除去した後、ステップA5において吸着板230により処理ウェハWを分離する。ステップA5では、処理ウェハWの裏面Wbを、吸着板230で吸着保持する。そして、吸着板230を回転させて、内部面改質層M3を境界に裏面ウェハWb1が縁切りされる。その後、吸着板230が裏面ウェハWb1を吸着保持した状態で、当該吸着板230を上昇させて、処理ウェハWから裏面ウェハWb1を分離する。なお、吸着板230を上昇させるだけで裏面ウェハWb1を分離できる場合、吸着板230の回転を省略してもよい。
【0096】
なお、吸着板230は、処理ウェハWの中央部Wcと周縁部Weを個別に吸着保持してもよい。具体的に例えば、吸着板230の下面には、中央部Wcを保持する中央保持部(図示せず)と、周縁部Weを保持する周縁保持部(図示せず)とが設けられていてもよい。中央保持部と周縁保持部にはそれぞれ個別の吸引機構(図示せず)が接続され、これら中央保持部と周縁保持部を切り替えて、中央部Wcと周縁部Weを個別に吸着保持できる。かかる場合、ステップA4における周縁部Weの除去と、ステップA5における処理ウェハWの分離は、それぞれ吸着板230によって行われる。なお、本例においては、パッド180、昇降機構181及び移動機構182は省略される。
【0097】
本実施形態でも、処理ウェハWの周縁部Weの除去と処理ウェハWの分離を適切に行うことができる。しかも、これらを同一装置内で行うことができるため、ウェハ処理のスループットを向上させることができる。
【0098】
ここで、本実施形態では、処理ウェハWの内部に周縁改質層M1と内部面改質層M3をこの順で形成していたが、内部面改質層M3を形成する際、処理ウェハWが膨張する場合がある。かかる場合、処理ウェハWの膨張により周縁部Weが剥離し、剥離した周縁部Weが改質装置60内の回転部103や水平移動部104などの駆動系に悪影響を及ぼすおそれがある。そこで、周縁部Weの剥離防止対策を行うのが好ましい。対策としては、例えば次の2つが考えられる。
【0099】
1つ目の周縁部Weの剥離防止対策は、当該周縁部Weを物理的に押える方法である。例えば
図21に示すように、処理ウェハWの外側端部に当接する円筒状の周縁保持部240を複数設けてもよい。あるいは、例えば
図22に示すように、処理ウェハWの外側端部に当接する直方体状の周縁保持部241を複数設けてもよい。これら周縁保持部240、241はそれぞれ、移動機構(図示せず)によって鉛直方向及び水平方向に移動自在に構成されている。そして周縁保持部240、241は、処理ウェハWに対して点接触又は線接触するかの違いはあるものの、いずれにしても周縁部Weの剥離を防止することができる。なお、周縁保持部240、241は、内部面改質層M3を形成する際に処理ウェハWの外側端部に当接していればよく、それ以外では処理ウェハWから退避していていてもよい。
【0100】
2つ目の周縁部Weの剥離防止対策は、周縁改質層M1から処理ウェハWの厚み方向に形成されるクラックC1を表面Waのみに進展させる方法である。レーザヘッド110から照射されるレーザ光L1の形状を調整することで、
図23(a)に示すようにクラックC1が表面Waまでのみ進展し、裏面Wbには到達しないようにする。また、同様に、分割改質層M2を形成する際にも、クラックC2が表面Waまでのみ進展し、裏面Wbには到達しないようにする。かかる場合、その後、
図23(b)に示すように内部面改質層M3を形成しても、周縁部Weは処理ウェハWから剥離しない。
【0101】
次に、第2の実施形態にかかるウェハ処理について説明する。
図24は、ウェハ処理の主な工程を示すフロー図である。
図25は、ウェハ処理の主な工程の説明図である。
【0102】
第1の実施形態では周縁部Weの除去と処理ウェハWの分離を別々に行っていたが、第2の実施形態ではこれらを同時に行う。これら周縁部Weの除去と処理ウェハWの分離は、例えば加工装置80において、除去分離部としての搬送アーム71を用いて行われる。なお、本実施形態の搬送アーム71は、処理ウェハWの全体、すなわち中央部Wcと周縁部Weを保持する。また、このように周縁部Weの除去が搬送アーム71を用いて行われるため、本実施形態のウェハ処理システム1では、周縁除去装置61を省略してもよい。
【0103】
第2の実施形態にかかるウェハ処理では、先ず、
図25(a)に示す重合ウェハTが改質装置60に搬送される。改質装置60では、
図25(b)に示すように処理ウェハWに周縁改質層M10(
図24のステップB1)が形成され、さらに
図25(c)に示すように内部面改質層M30(
図24のステップB2)が形成される。
【0104】
ここで、ステップB1における周縁改質層M10の形成方法は、ステップA1と同様である。但し、
図10(b)に示した周縁改質層M1ではクラックC1が表面Waと裏面Wbまで進展していたのに対し、周縁改質層M10からのクラックC10は表面Waまでのみ進展し、裏面Wbには到達しない。
【0105】
また、ステップB2における内部面改質層M30の形成方法は、ステップA3と同様である。但し、
図10(c)に示した内部面改質層M3ではクラックC3が面方向に処理ウェハWの外側端部まで進展していたのに対し、内部面改質層M30からのクラックC30は周縁改質層M10の内側のみに進展する。
【0106】
次に、重合ウェハTはウェハ搬送装置70により加工装置80に搬送される。加工装置80では、先ず、搬送アーム71からチャック81に重合ウェハTを受け渡す際、
図25(d)に示すように周縁改質層M10と内部面改質層M30を基点に、処理ウェハWの裏面Wb側(以下、裏面ウェハWb2という)を分離する(
図24のステップB3)。
【0107】
ステップB3では、
図26(a)に示すように搬送アーム71の吸着板200で処理ウェハWを吸着保持しつつ、チャック81で支持ウェハSを吸着保持する。そして、吸着板200を回転させて、周縁改質層M10と内部面改質層M30を境界に裏面ウェハWb2が縁切りされる。その後、
図26(b)に示すように吸着板200が裏面ウェハWb2を吸着保持した状態で、当該吸着板200を上昇させて、処理ウェハWから裏面ウェハWb2を分離する。このようにステップB3では、裏面ウェハWb2は周縁部Weと一体に分離され、すなわち周縁部Weの除去と処理ウェハWの分離が同時に行われる。
【0108】
続いて、
図25(e)に示すように処理ウェハWの裏面Wbが研削され(
図24のステップB4)、さらに洗浄装置41における裏面Wbの洗浄(
図24のステップB5)、エッチング装置40における裏面Wbのウェットエッチング(
図24のステップB6)が順次行われる。こうして、ウェハ処理システム1における一連のウェハ処理が終了する。
【0109】
本実施形態においても、処理ウェハWの内部に周縁改質層M10と内部面改質層M30をこの順で形成しており、第1の実施形態と同様の効果を享受することができる。しかも、周縁改質層M10からのクラックは裏面Wbに到達しないため、内部面改質層M30の形成時の処理ウェハWの膨張によって周縁部Weが剥離することもない。なお、周縁部Weの剥離をより確実に防止するため、
図21又は
図22に示したように周縁保持部240、241を設けてもよい。
【0110】
以上の実施形態では、周縁部Weの除去と処理ウェハWの分離は搬送アーム71を用いて行われたが、別途の装置で行われてもよい。例えばウェハ処理システム1には、周縁除去装置61に代えて、
図27に示す除去分離装置300が設けられていてもよい。
【0111】
除去分離装置300は、重合ウェハTを上面で保持する、他の基板保持部としてのチャック310を有している。チャック310は、処理ウェハWが上側であって支持ウェハSが下側に配置された状態で、当該支持ウェハSを吸着保持する。またチャック310は、回転機構311によって鉛直軸回りに回転可能に構成されている。
【0112】
チャック310の上方には、除去分離部としての吸着板320が設けられている。吸着板320は、搬送アーム71の吸着板200と同様の構成であり、重合ウェハTより大きい径の円板形状を有する。吸着板320には例えば真空ポンプなどの吸引機構(図示せず)が接続され、吸着板320はその下面において処理ウェハWの裏面Wbを吸着保持する。吸着板320には、吸着板320を鉛直方向に昇降させる昇降機構321と、吸着板320を鉛直軸回りに回転させる回転機構322とが設けられている。
【0113】
かかる場合、処理ウェハWの裏面Wbを、吸着板320で吸着保持する。そして、吸着板320を回転させて、周縁改質層M10と内部面改質層M30を境界に裏面ウェハWb2が縁切りされる。その後、吸着板320が裏面ウェハWb2を吸着保持した状態で、当該吸着板320を上昇させて、処理ウェハWから裏面ウェハWb2を分離する。本実施形態の除去分離装置300でも、処理ウェハWの周縁部Weの除去と処理ウェハWの分離を適切に行うことができる。
【0114】
次に、第3の実施形態にかかるウェハ処理について説明する。
図28は、ウェハ処理の主な工程を示すフロー図である。
図29は、ウェハ処理の主な工程の説明図である。
【0115】
第1の実施形態では内部面改質層M3を形成した後、周縁部Weを除去していたが、第3の実施形態では周縁部Weを除去した後、内部面改質層M31を形成する。すなわち、第3の実施形態では、周縁改質層M11の形成、周縁部Weの除去、内部面改質層M31の形成をこの順で行う。周縁改質層M11と内部面改質層M31はそれぞれ改質装置60で行われるが、周縁部Weの除去を改質装置60の外部で行うと、スループットが低下する。そこで、本実施形態では、周縁部Weの除去を改質装置60の内部において、周縁除去部としての搬送アーム71を用いて行う。このように周縁部Weの除去が搬送アーム71を用いて行われるため、本実施形態のウェハ処理システム1では、周縁除去装置61を省略してもよい。なお、搬送アーム71は後述するように基板分離部としても機能する。
【0116】
図30に示すように搬送アーム71は、処理ウェハWより大きい径を有する、円板状の吸着板400を有している。吸着板400の下面には、処理ウェハWの中央部Wcを保持する中央保持部410と、処理ウェハWの周縁部Weを保持する周縁保持部420と、が設けられている。
【0117】
中央保持部410には中央部Wcを吸引する吸引管411が接続され、吸引管411は例えば真空ポンプなどの中央吸引機構412に連通している。吸引管411には、吸引圧力を測定する中央圧力センサ413が設けられている。中央圧力センサ413の構成は任意であるが、例えばダイヤフラム型の圧力計が用いられる。
【0118】
周縁保持部420には周縁部Weを吸引する吸引管421が接続され、吸引管421は例えば真空ポンプなどの周縁吸引機構422に連通している。吸引管421には、吸引圧力を測定する周縁圧力センサ423が設けられている。周縁圧力センサ423の構成も任意であるが、例えばダイヤフラム型の圧力計が用いられる。
【0119】
なお、
図31に示すように吸着板400の周縁部であって、周縁保持部420が設けられる部分には、中央保持部410より上方に窪んだ窪み部400aが形成されている。後述するように周縁部Weは周縁除去部440によって押し上げられて除去されるが、窪み部400aは、この周縁部Weが押し上げられるスペースを確保している。
【0120】
かかる構成により、中央保持部410と周縁保持部420はそれぞれ個別に、中央部Wcと周縁部Weを吸引して保持することができる。また、中央圧力センサ413と周縁圧力センサ423はそれぞれ個別に、中央部Wcを吸引する圧力と周縁部Weを吸引する圧力を測定することができる。
【0121】
吸着板400の上面には、当該吸着板400を鉛直軸回りに回転させる回転機構430が設けられている。回転機構430は、支持部材431に支持されている。また、支持部材431(回転機構430)は、アーム部材72に支持されている。
【0122】
吸着板400の側方には、当該吸着板400の周方向に沿って周縁除去部440が複数設けられている。各周縁除去部440は、くさびローラ441と支持ローラ442を有している。
【0123】
くさびローラ441は、側面視において、先端が尖ったくさび形状を有している。くさびローラ441は、処理ウェハWと支持ウェハSの外側端部から、当該処理ウェハWと支持ウェハSの界面に挿入される。そして、挿入されたくさびローラ441により周縁部Weが押し上げられ、処理ウェハWから分離して除去される。
【0124】
支持ローラ442は、くさびローラ441の中心を貫通して、当該くさびローラ441を支持している。支持ローラ442は、移動機構(図示せず)によって水平方向に移動自在に構成され、支持ローラ442が移動することでくさびローラ441も移動する。また、支持ローラ442は鉛直軸回りに回転自在に構成され、支持ローラ442が回転することでくさびローラ441も回転する。なお、本実施形態では、支持ローラ442には、後述するようにチャック100の回転を受けて回転する、いわゆるフリーローラが用いられる。但し、支持ローラ442は、回転機構(図示せず)によって積極的に回転されてもよい。
【0125】
支持ローラ442の上面には回転シャフト443が設けられ、回転シャフト443は移動機構444に支持されている。移動機構444は、支持部材431の上面外周部に設けられている。移動機構444は例えばエアシリンダであり、回転シャフト443を介して、くさびローラ441と支持ローラ442を水平方向に移動させることができる。
【0126】
第3の実施形態にかかるウェハ処理では、先ず、
図29(a)に示す重合ウェハTが改質装置60に搬送される。改質装置60では、
図29(b)に示すように処理ウェハWに周縁改質層M11と分割改質層M21が順次形成される(
図28のステップC1、C2)。なお、ステップC1における周縁改質層M11の形成方法はステップA1と同様であり、ステップC2における分割改質層M21の形成方法はステップA2と同様である。
【0127】
次に、ウェハ搬送装置70の搬送アーム71が改質装置60の内部に進入し、
図29(c)に示すように周縁部Weが除去される(
図28のステップC3)。
【0128】
ステップC3では、先ず、搬送アーム71の吸着板400で処理ウェハWの裏面Wbを吸着保持する。その後、
図32(a)に示すようにくさびローラ441を重合ウェハT側に移動させ、くさびローラ441を処理ウェハWと支持ウェハSの界面に当接させる。この際、吸着板400を回転させることで、くさびローラ441も平面視において逆方向に回転する。次に、
図32(b)に示すように吸着板400を回転させながら、くさびローラ441をさらに移動させ、処理ウェハWと支持ウェハSの界面に挿入する。そうすると、周縁部Weが押し上げられ、処理ウェハWから分離し、周縁保持部420に吸着保持される。
【0129】
その後、周縁保持部420で周縁部Weを吸着保持しつつ、複数のくさびローラ441で周縁部Weを保持した状態で、搬送アーム71が改質装置60から退出する。そして、改質装置60の外部に設けられた回収部(図示せず)において、周縁部Weが回収される。
【0130】
なお、この周縁部Weを除去する際、中央圧力センサ413と周縁圧力センサ423により、それぞれ中央部Wcを吸引する圧力と周縁部Weを吸引する圧力を測定する。周縁部Weが適切に除去されている場合、中央部Wcを吸引する圧力はゼロで、周縁部Weを吸引する圧力は所定の圧力となる。一方、周縁部Weが適切に除去されていない場合、例えば周縁部Weを吸引する圧力がゼロとなる。このように中央圧力センサ413と周縁圧力センサ423で吸引圧力を測定することで、処理ウェハWに対する周縁部Weの有無を検知して、処理ウェハWから周縁部Weが除去されたか否かを確認することができる。
【0131】
次に、改質装置60において、
図29(d)に示すように内部面改質層M31が形成される(
図28のステップC4)。なお、ステップC4における内部面改質層M31の形成方法はステップA3と同様である。
【0132】
次に、重合ウェハTはウェハ搬送装置70により加工装置80に搬送される。加工装置80では、先ず、搬送アーム71からチャック81に重合ウェハTを受け渡す際、
図29(e)に示すように内部面改質層M31を基点に、処理ウェハWの裏面Wb側(以下、裏面ウェハWb3という)を分離する(
図28のステップC5)。なお、ステップC5における処理ウェハWの分離方法はステップA5と同様である。また、処理ウェハWの分離は、搬送アーム71を用いて行う方法に限定されず、例えば
図20に示した周縁除去装置61と同様の装置を用いて行ってもよい。
【0133】
続いて、
図29(f)に示すように処理ウェハWの裏面Wbが研削され(
図28のステップC6)、さらに洗浄装置41における裏面Wbの洗浄(
図28のステップC7)、エッチング装置40における裏面Wbのウェットエッチング(
図28のステップC8)が順次行われる。こうして、ウェハ処理システム1における一連のウェハ処理が終了する。
【0134】
本実施形態においても、処理ウェハWの内部に周縁改質層M11と内部面改質層M31をこの順で形成しており、第1の実施形態と同様の効果を享受することができる。しかも、ステップC1の周縁改質層M11の形成、ステップC3の周縁部Weの除去、ステップC4内部面改質層M31の形成が、一の改質装置60で行われるので、ウェハ処理のスループットを維持することができる。なお、本実施形態では、ステップC3の周縁部Weの除去を改質装置60内で行ったが、もちろん別途の装置で行ってもよい。
【0135】
次に、改質装置60の他の実施形態について説明する。上記実施形態の改質装置60には、1つのレーザヘッド110が設けられていたが、
図33に示すように複数、例えば2つのレーザヘッド110、500が設けられていてもよい。本実施形態では説明の便宜上、レーザヘッド110を第1のレーザヘッド110といい、レーザヘッド500を第2のレーザヘッド500という。なお、レーザヘッドの数は本実施形態に限定されない。また、
図33においては図示の煩雑さを回避するため、マクロカメラ140とマイクロカメラ150の図示を省略している。
【0136】
第2のレーザヘッド500は、第1のレーザヘッド110のY軸正方向側に設けられている。第2のレーザヘッド500の構成は、第1のレーザヘッド110の構成と同様である。すなわち、第2のレーザヘッド500は、レンズ501とLCOS(図示せず)を有している。
【0137】
第2のレーザヘッド500の支持構成も、第1のレーザヘッド110の支持構成と同様である。すなわち、第2のレーザヘッド500は、支持部材510、レール511、昇降機構520、及び移動機構521に支持されている。そして、第2のレーザヘッド500は、昇降自在かつY軸方向に移動自在に構成されている。
【0138】
かかる場合、例えば第1の実施形態において周縁改質層M1を形成する際には、
図34に示すように第1のレーザヘッド110と第2のレーザヘッド500を、処理ウェハWの外周部において同心円上に配置する。そして、処理ウェハWを回転させながら、第1のレーザヘッド110からレーザ光L12を照射するとともに、第2のレーザヘッド500からレーザ光L13を照射する。そうすると、レーザ光L12によって周縁改質層M12が形成され、レーザ光L13によって周縁改質層M13が形成される。周縁改質層M12、M13はそれぞれ処理ウェハWの半周分に形成され、これら周縁改質層M12、M13を合わせて周縁改質層M1が環状に形成される。すなわち、本実施形態では、周縁改質層M1を形成するにあたり、処理ウェハWは180度回転させるだけでよい。したがって、周縁改質層M1を形成する時間を短縮することができ、その結果、ウェハ処理のスループットをさらに向上させることができる。
【0139】
なお、上記例においては、第1のレーザヘッド110からのレーザ光L12と、第2のレーザヘッド500からのレーザ光L13とを、処理ウェハWの内部において同じ深さに照射し、周縁改質層M12と周縁改質層M13を同じ深さに形成していた。この点、レーザ光L12とレーザ光L13を異なる深さに照射し、周縁改質層M12と周縁改質層M13を異なる深さに形成してもよい。
【0140】
また、内部面改質層M3を形成する際には、
図35に示すように第1のレーザヘッド110と第2のレーザヘッド500を、処理ウェハWの外周部において同心円上に配置する。そして、処理ウェハWを回転させると共に、第1のレーザヘッド110と第2のレーザヘッド500をそれぞれ処理ウェハWの外周部から中心部に向けてY軸方向に移動させる。すなわち、第1のレーザヘッド110をY軸正方向に移動させ、第2のレーザヘッド500をY軸負方向に移動させる。この処理ウェハWの回転及びレーザヘッド110、500の移動中、第1のレーザヘッド110から処理ウェハWの内部にレーザ光L32を照射し、第2のレーザヘッド500から処理ウェハWの内部にレーザ光L33を照射する。そうすると、レーザ光L32によって内部面改質層M32が形成され、レーザ光L33によって内部面改質層M33が形成される。内部面改質層M32、M33はそれぞれ螺旋状に形成され、処理ウェハWの全面に内部面改質層M3が形成される。このように内部面改質層M32、M33を同時に形成することにより、内部面改質層M3を形成する時間を短縮することができ、その結果、ウェハ処理のスループットをさらに向上させることができる。
【0141】
なお、以上の実施形態では、分割改質層M2の形成は、改質装置60において他の周縁改質層M1と内部面改質層M3の形成で用いられるレーザヘッド110を用いて形成したが、別途のレーザヘッド(図示せず)を用いてもよい。さらに改質装置60では、周縁改質層M1、分割改質層M2、内部面改質層M3をそれぞれ、別のレーザヘッド(図示せず)を用いて形成してもよい。
【0142】
例えば、上記実施形態では、接合前の処理ウェハWと支持ウェハSの界面に未接合領域Abを形成したが、接合後に未接合領域Abを形成してもよい。例えば接合後、酸化膜Fの外周部にレーザ光を照射することで、接合強度を低下させ、未接合領域Abを形成することも可能である。
【0143】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0144】
1 ウェハ処理システム
60 改質装置
100 チャック
110 レーザヘッド
S 支持ウェハ
T 重合ウェハ
W 処理ウェハ