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  • 特開-外用剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163277
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/195 20060101AFI20241114BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20241114BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20241114BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241114BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A61K31/195
A61Q19/00
A61K8/49
A61P17/00
A61K8/41
A61K8/44
A61K9/08
A61K47/18
A61K47/22
A61P29/00
A61Q5/00
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024157378
(22)【出願日】2024-09-11
(62)【分割の表示】P 2020569605の分割
【原出願日】2020-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2019012944
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591082421
【氏名又は名称】丸善製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 良
(72)【発明者】
【氏名】鳥家 圭悟
(57)【要約】
【課題】トラネキサム酸の結晶化抑制効果を有する外用剤を提供する。
【解決手段】
(A)トラネキサム酸、トラネキサム酸誘導体及びこれらの塩から選ばれる1種以上、及び、
(B)アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、トレオニン、γ-アミノ酪酸、これらの誘導体、並びにこれら及びこれらの誘導体の塩から選ばれる1種以上
を含有する外用剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)トラネキサム酸、トラネキサム酸誘導体及びこれらの塩から選ばれる1種以上、及び、
(B)アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、トレオニン、γ-アミノ酪酸、これらの誘導体、並びにこれら及びこれらの誘導体の塩から選ばれる1種以上
を含有する外用剤。
【請求項2】
(B)成分が、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、トレオニン、γ-アミノ酪酸、テアニン、ピロリドンカルボン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上である請求項1記載の外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラネキサム酸を含有する外用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラネキサム酸は、止血作用や抗炎症作用を有し、歯磨剤、医薬品等に広く使用されている。また、荒れ肌改善作用や美白作用を有し、化粧品等の皮膚又は毛髪用外用剤としても使用されている。
【0003】
しかしながら、トラネキサム酸は水溶性である一方で非常に結晶性が高く、水分の蒸発により、容易に結晶が析出するという課題があった。このようなトラネキサム酸の結晶化抑制の方法としては、フィチン酸(特許文献1:特開2018-48097号公報)、ポリヒドロキシ酸(特許文献2:特開2013-121955号公報)等を併用する方法が提案されている。しかしながら、トラネキサム酸の結晶化抑制効果にさらに優れた方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-48097号公報
【特許文献2】特開2013-121955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、トラネキサム酸の結晶化抑制効果を有する外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定のアミノ酸を併用することで、顕著なトラネキサム酸の結晶化抑制効果が得られることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0007】
従って、本発明は下記外用剤を提供する。以下、成分名として化粧品表示名称を使用する場合がある。
1.(A)トラネキサム酸、トラネキサム酸誘導体及びこれらの塩から選ばれる1種以上、及び、
(B)アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、トレオニン、γ-アミノ酪酸、これらの誘導体、並びにこれら及びこれらの誘導体の塩から選ばれる1種以上
を含有する外用剤。
2.(B)成分が、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、トレオニン、γ-アミノ酪酸、テアニン、ピロリドンカルボン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上である1記載の外用剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、顕著なトラネキサム酸の結晶化抑制効果を有する外用剤を提供することができる。これにより、トラネキサム酸の効果が十分に発揮できると共に、外用剤の外観も良く、使用感も良好なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】Asp0.5質量%、0.25質量%、0.125質量%、フィチン酸0.16質量%、ブランクのトラネキサム酸の結晶化抑制試験における、室温で24時間保存後の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
[(A)成分]
(A)成分は、トラネキサム酸、トラネキサム酸誘導体及びこれらの塩から選ばれる1種以上であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。トラネキサム酸は、トランス-4-アミノメチルシクロヘキサン-1-カルボン酸である。トラネキサム酸誘導体としては、トラネキサム酸セチルエステル等のエステル誘導体、トラネキサム酸メチルアミド等のアミド誘導体等が挙げられる。塩としては、特に限定されず、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム、鉄、亜鉛等の金属塩、アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ステアリルアミン等の有機アミン塩等が挙げられる。
【0011】
(A)成分の含有量は特に限定されないが、外用剤中1~5質量%が好ましく、1~2質量%がより好ましい。
【0012】
[(B)成分]
(B)成分は、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、トレオニン、γ-アミノ酪酸、これらの誘導体、並びにこれら及びこれらの誘導体の塩から選ばれる1種以上であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0013】
上記アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、トレオニン、γ-アミノ酪酸(GABA)は、アミノ酸であり、D体、L体又はDL体でもよい。これらの誘導体としては、アミノ酸中の水素原子が、アルキル基、アルケニル基、アリール基等で置換されたエステル誘導体;水酸基の水素原子が、アシル基で置換されたエステル誘導体;水酸基の水素原子が、アルキル基、アルケニル基、アリール基等で置換されたエーテル誘導体;アミノ基の水素原子が、アシル基で置換されたアミド誘導体;アミノ基の水素原子が、アルキル基、アルケニル基、アリール基等で置換されたアミン誘導体等が挙げられる。具体的には、グルタミン酸の誘導体である、テアニン、ピロリドンカルボン酸等が挙げられる。
【0014】
上記アミノ酸塩及びアミノ酸誘導体の塩としては、特に限定されず、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム、鉄、亜鉛等の金属塩、アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ステアリルアミン等の有機アミン塩等が挙げられる。
【0015】
(B)成分としては、トラネキサム酸の結晶化抑制効果の点から、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、トレオニン、γ-アミノ酪酸、テアニン、ピロリドンカルボン酸、及びこれらの塩が好ましい。
【0016】
グルタミン酸又はその塩と、γ-アミノ酪酸又はその塩との組み合わせ、γ-アミノ酪酸又はその塩とテアニンとの組み合わせにより、トラネキサム酸の結晶化抑制効果の相乗効果を得ることができる点から、これらの組み合わせが好ましい。
【0017】
(B)成分の含有量は特に限定されないが、外用剤中0.05~5質量%が好ましく、0.125~2質量%がより好ましく、0.25~1質量%がさらに好ましい。この範囲とすることで、トラネキサム酸の結晶化抑制効果がより向上する。
【0018】
特に下記の成分又はその塩の場合は、下記範囲が特に好ましい。
アルギニン又はその塩:0.5~2質量%
アスパラギン酸:0.125~1質量%
グルタミン酸:0.125~1質量%
グリシン:0.75~1.25質量%
プロリン:1~2質量%
セリン:0.25~1質量%
トレオニン:0.5~1質量%
テアニン:0.125~0.25質量%
γ-アミノ酪酸:0.125~0.25質量%
ピロリドンカルボン酸:0.25~0.5質量%
【0019】
(A):(B)で表される、(A)成分と(B)成分との含有質量比は20:1~0.5:1が好ましく、16:1~1:1がより好ましく、8:1~2:1がさらに好ましい。この範囲とすることで、トラネキサム酸の結晶化抑制効果がより向上する。
【0020】
[任意成分]
本発明の外用剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、外用剤に通常用いられる成分を適量配合することができる。このような成分としては、例えば、美白剤、抗老化剤、保湿剤、防腐剤、抗菌剤、酵素、植物抽出物等の機能性成分の他、油剤、界面活性剤、香料、色素、pH調整剤、精製水等の水等が挙げられる。これらは、それぞれ1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて、適量を用いることができる。
【0021】
中でも、本発明の外用剤には多価アルコールを配合することが好ましい。多価アルコールは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。多価アルコールとしては、イソペンチルジオール、エチルヘキサンジオール、カプリリルグリコール、グリコール、(C15-18)グリコール、(C20-30)グリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、ジグリセリン、ジチアオクタンジオール、ジプロピレングリコール、チオグリセリン、1,10-デカンジオール、デシレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチルヒドロキシメチルシクロヘキサノール、フィタントリオール、フェノキシプロパンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、1,3-ブチレングリコール等のBG、PG、1,2-ヘキサンジオール、ヘキシレングリコール、ペンチレングリコール、メチルプロパンジオール、メンタンジオール、ラウリルグリコール等が挙げられる。
【0022】
多価アルコールを配合する場合、その含有量は、外用剤中1.0~30.0質量%が好ましく、2.0~30.0質量%がより好ましい。
【0023】
外用剤としては、医薬品、医薬部外品、化粧品等特に限定されない。中でも皮膚用、頭髪用の外用剤に好適である。皮膚は、顔、頭皮、腕等の身体等、特に限定されないが、口腔内は含まない。外用剤の形態としては特に限定されず、液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、ローション剤、エアゾール剤等にすることができる。トラネキサム酸の結晶化抑制効果が期待される形態としては、液剤、ローション剤等が挙げられる。
【0024】
外用剤、特に医薬部外品又は化粧品用の外用剤とする場合の用途としては、例えば、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、美容液、日焼け止め用化粧料、パック、マスク、ハンドクリーム、ボディローション、ボディークリーム等の基礎化粧料;洗顔料、メイク落とし、ボディーシャンプー等の皮膚洗浄料;シャンプー、リンス、トリートメント等の頭皮及び毛髪化粧料;ファンデーション、リップ、マスカラ等のメイクアップ化粧料等が挙げられる。
【0025】
外用剤のpHは特に限定されず、25℃で3~8が好ましく、5.0~7.0がより好ましい。
【0026】
[トラネキサム酸の結晶化抑制方法]
本発明は、(A)トラネキサム酸、トラネキサム酸誘導体及びこれらの塩から選ばれる1種以上を含有する外用剤に、(B)アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、トレオニン、γ-アミノ酪酸、これらの誘導体、並びにこれら及びこれらの誘導体の塩から選ばれる1種以上を配合する、トラネキサム酸の結晶化抑制方法を提供する。また、上記(A)成分と(B)成分とを含有するトラネキサム酸の結晶化抑制剤とすることもできる。それぞれ、好適な成分、配合量等は上記と同じである。
【実施例0027】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%、比率は質量比を示し、表中の各成分の量は純分換算した量である。
【0028】
下記成分について、表中に記載の濃度でトラネキサム酸の結晶化抑制試験を行った。結果を表中に併記する。
[試験例:トラネキサム酸の結晶化抑制]
(1)試験サンプル(pH3~8)
下記組成の組成物を作製した。
トラネキサム酸 2%
1,3-ブチレングリコール 30%
サンプル 表中の記載濃度
精製水 残部
合計 100%
【0029】
(2)試験方法
上記組成物を下記プレートに3.0g/ウェルで添加し、室温で24時間保存後に下記(3)に記載の方法で画像解析を行った。
プレート
株式会社ステム社製
材質:PS(ポリスチレン)
プレートサイズ:128×86×20mm
型番:6穴(平底)
ウェル径×高さ(mm):φ33.5×16.7
【0030】
(3)画像解析
・画像解析
スキャナ:Docu Center-IV C5575(Fuji Xerox社製) 画像取り込み解像度:300dpi
画像解析ソフト:ImageJ(ver. 1.50i)
画像のウェル内部の領域をOvalツールによって円形に選択し、Analyze/MeasureでMean gray valueを測定した。
【0031】
(4)Mean gray valueの結果から、トラネキサム酸の結晶化抑制効果を下記基準で示す。数値が低いほど、トラネキサム酸の結晶化抑制効果が高いことを示す。
+++:20未満
++:20以上40未満
+:40以上60未満
-:60以上
【0032】
以下、略称を示す。
Ala:L-アラニン
Arg:L-アルギニン
Asp:L-アスパラギン酸
Cys:DL-システイン
Glu:L-グルタミン酸
Gly:L-グリシン
His:L-ヒスチジン
Ile:L-イソロイシン
Pro:L-プロリン
Ser:L-セリン
Thr:DL-トレオニン
Tyr:L-チロシン
Poly-Lys:ポリ-L-リジン
Poly-PA:ポリリン酸Na
Theanine:L-テアニン
GABA:γ-アミノ酪酸
PCA:DL-ピロリドンカルボン酸
【0033】
【表1】
【0034】
Asp0.5%、0.25%、0.125%、フィチン酸0.16%、ブランクの上記トラネキサム酸の結晶化抑制試験における、室温で24時間保存後の写真を図1に示す。アスパラギン酸は、フィチン酸よりも高いトラネキサム酸の結晶化抑制効果を有することが確認された。
【0035】
【表2】
【0036】
上記結果から、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、プロリン、セリン、トレオニン、テアニン、γ-アミノ酪酸、ピロリドンカルボン酸は、トラネキサム酸の結晶化抑制効果を有することが確認された。
【0037】
【表3】
【0038】
上記結果から、アラニン、システイン、ヒスチジン、イソロイシン、チロシン、ポリリジン、ポリリン酸ナトリウムには、トラネキサム酸の結晶化抑制効果は確認されなかった。
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
表3の結果から、Glu:L-グルタミン酸とGABA:γ-アミノ酪酸とを併用することで、トラネキサム酸の結晶化抑制における相乗効果が確認された。
表4の結果から、合計量が0.125%となるように調整しているので、GABAとTheanineとが相加効果の場合は「+」となるが、「++」となっているので、GABA:γ-アミノ酪酸と、Theanine:L-テアニンを併用することで、トラネキサム酸の結晶化抑制における相乗効果が確認された。
【0042】
[実施例、比較例]
精製水に精製水以外の成分を混合溶解して調製し、表4に示す組成の化粧水を得た。化粧品表示名称で記載する。上記と同様の方法でトラネキサム酸の結晶化抑制効果を評価した。結果を表中に併記する。
【0043】
【表6】
図1