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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163313
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】折り紙
(51)【国際特許分類】
   A63H 33/16 20060101AFI20241114BHJP
   A63H 33/00 20060101ALI20241114BHJP
   A63H 33/22 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A63H33/16 Z
A63H33/00 302C
A63H33/22 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024158870
(22)【出願日】2024-09-13
(62)【分割の表示】P 2020001326の分割
【原出願日】2020-01-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)配布日 2019年4月27日 配布した場所 ニコニコ超会議2019 開催場所 幕張メッセ(〒261-8550 千葉県千葉市美浜区中瀬2-1)
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】丸谷 和史
(72)【発明者】
【氏名】大谷 智子
(72)【発明者】
【氏名】檜垣 裕子
(57)【要約】
【課題】誰もが容易に錯視物を作成して楽しむことができる折り紙を提供する。
【解決手段】複数通りの折り方それぞれにより視認可能とされる面構成が異なるようにされている折り紙が提供される。ここで、複数通りの折り方のうちの第1の折り方により視認可能とされる面構成は、第1の錯視模様となり、複数通りの折り方のうちの第1の折り方とは異なる第2の折り方により視認可能とされる面構成は、第1の錯視模様とは異なる第2の錯視模様となるように、当該折り紙の表面模様が形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘキサフレクサゴンの折り紙であって、
内角が60度と120度であり、それぞれに表面模様が形成された、9個の略菱形領域を有し、
前記略菱形領域の表面模様は、略同一幅の複数の基本線分による模様であり、
第1の折り方により、前記9個の略菱形領域のうちの3個の略菱形領域による、第1の組み合わせ方による、第1の錯視模様が視認可能とされ、
第2の折り方により、前記9個の領域のうちの残りの6個のうちの3個の略菱形領域による、第2の組み合わせ方による、第2の錯視模様が視認可能とされ、
第3の折り方により、前記9個の領域のうちの残りの3個の略菱形領域による、第3の組み合わせ方による、第3の錯視模様が視認可能とされており、
前記第1の錯視模様は、前記略菱形領域を立方体形状の面の投影と認識させる前記立方体形状の錯視を生起させる前記ヘキサフレクサゴンの六角形の表面模様であり、前記ヘキサフレクサゴンの六角形の中心点に位置する前記立方体形状の1つの頂点に隣接する3つの辺の位置にそれぞれ設けられている第1模様と第2模様と第3模様とを含み、
前記9個の略菱形領域のうちの3個の略菱形領域は、第1の略菱形領域と第2の略菱形領域と第3の略菱形領域であり、
前記第1の略菱形領域の表面模様は、前記第1の略菱形領域の一辺側に位置する基本線分である第11基本線分と、前記第1の略菱形領域の他辺側に位置する基本線分である第12基本線分と、を含み、
前記第2の略菱形領域の表面模様は、前記第2の略菱形領域の一辺側に位置する基本線分である第21基本線分と、前記第2の略菱形領域の他辺側に位置する基本線分である第22基本線分と、を含み、
前記第3の略菱形領域の表面模様は、前記第3の略菱形領域の一辺側に位置する基本線分である第31基本線分と、前記第3の略菱形領域の他辺側に位置する基本線分である第32基本線分と、を含み、
前記第1模様は、前記第1の折り方により、隣り合わせに配置される前記第11基本線分と前記第21基本線分とを含み、
前記第2模様は、前記第1の折り方により、隣り合わせに配置される前記第22基本線分と前記第32基本線分とを含み、
前記第3模様は、前記第1の折り方により、隣り合わせに配置される前記第12基本線分と前記第31基本線分とを含む、折り紙。
【請求項2】
請求項1の折り紙であって、
前記第1模様は、前記第1の折り方により、隣り合わせに略平行に配置される前記第11基本線分と前記第21基本線分とを含む第1線分であり、
前記第2模様は、前記第1の折り方により、隣り合わせに略平行に配置される前記第22基本線分と前記第32基本線分とを含む第2線分であり、
前記第3模様は、前記第1の折り方により、隣り合わせに略平行に配置される前記第12基本線分と前記第31基本線分とを含む第3線分であり、
前記第1線分の幅、前記第2線分の幅、および前記第3線分の幅は、前記基本線分の幅よりも広い、折り紙。
【請求項3】
請求項1または2の折り紙であって、
前記第1模様と前記第2模様と前記第3模様は、略3回転対称の模様であり、
前記第2の錯視模様は、前記基本線分による略6回転対称の模様である、折り紙。
【請求項4】
ヘキサフレクサゴンの折り紙であって、
内角が60度と120度であり、それぞれに表面模様が形成された、9個の略菱形領域を有し、
第1の折り方により、前記9個の略菱形領域のうちの3個の略菱形領域による、第1の組み合わせ方による、第1の錯視模様が視認可能とされ、
第2の折り方により、前記9個の領域のうちの残りの6個のうちの3個の略菱形領域による、第2の組み合わせ方による、第2の錯視模様が視認可能とされ、
第3の折り方により、前記9個の領域のうちの残りの3個の略菱形領域による、第3の組み合わせ方による、第3の錯視模様が視認可能とされており、
前記第1の錯視模様は、前記略菱形領域を立方体形状の面の投影と認識させる前記立方体形状の錯視を生起させる前記ヘキサフレクサゴンの六角形の表面模様であり、前記ヘキサフレクサゴンの六角形の中心点に位置する前記立方体形状の1つの頂点に隣接する3つの辺の位置にそれぞれ設けられている略6回転対称ではない略3回転対称の第1模様と第2模様と第3模様とを含み、
前記第2の錯視模様は、略6回転対称の模様である、折り紙。
【請求項5】
ヘキサフレクサゴンの折り紙であって、
内角が60度と120度であり、それぞれに表面模様が形成された、9個の略菱形領域を有し、前記9個の略菱形領域は、折り目となる境界線でつながっており、
第1の折り方により、前記9個の略菱形領域のうちの3個の略菱形領域による、第1の組み合わせ方による、第1の錯視模様が視認可能とされ、
第2の折り方により、前記9個の領域のうちの残りの6個のうちの3個の略菱形領域による、第2の組み合わせ方による、第2の錯視模様が視認可能とされ、
第3の折り方により、前記9個の領域のうちの残りの3個の略菱形領域による、第3の組み合わせ方による、第3の錯視模様が視認可能とされており、
前記第1の錯視模様は、前記略菱形領域を立方体形状の面の投影と認識させる前記立方体形状の錯視を生起させる表面模様であり、前記ヘキサフレクサゴンの六角形の中心点に位置する前記立方体形状の1つの頂点に隣接する3つの辺の全体にわたる位置にそれぞれ設けられている略同一幅の第1線分と第2線分と第3線分とを含み、前記3つの辺は、前記折り目に沿って設けられている、折り紙。
【請求項6】
請求項5の折り紙であって、
前記略菱形領域の表面模様は、略同一幅の複数の基本線分による模様であり、
前記9個の略菱形領域のうちの3個の略菱形領域は、第1の略菱形領域と第2の略菱形領域と第3の略菱形領域であり、
前記第1の略菱形領域の表面模様は、前記第1の略菱形領域の一辺側に位置する基本線分である第11基本線分と、前記第1の略菱形領域の他辺側に位置する基本線分である第12基本線分と、を含み、
前記第2の略菱形領域の表面模様は、前記第2の略菱形領域の一辺側に位置する基本線分である第21基本線分と、前記第2の略菱形領域の他辺側に位置する基本線分である第22基本線分と、を含み、
前記第3の略菱形領域の表面模様は、前記第3の略菱形領域の一辺側に位置する基本線分である第31基本線分と、前記第3の略菱形領域の他辺側に位置する基本線分である第32基本線分と、を含み、
前記第1線分は、前記第1の折り方により、隣り合わせに略平行に配置される前記第11基本線分と前記第21基本線分とを含み、
前記第2線分は、前記第1の折り方により、隣り合わせに略平行に配置される前記第22基本線分と前記第32基本線分とを含み、
前記第3線分は、前記第1の折り方により、隣り合わせに略平行に配置される前記第12基本線分と前記第31基本線分とを含む、折り紙。
【請求項7】
ヘキサフレクサゴンの折り紙であって、
内角が60度と120度であり、それぞれに表面模様が形成された、9個の略菱形領域を有し、前記9個の略菱形領域は、折り目となる境界線でつながっており、
第1の折り方により、前記9個の略菱形領域のうちの3個の略菱形領域による、第1の組み合わせ方による、第1の錯視模様が視認可能とされ、
第2の折り方により、前記9個の領域のうちの残りの6個のうちの3個の略菱形領域による、第2の組み合わせ方による、第2の錯視模様が視認可能とされ、
第3の折り方により、前記9個の領域のうちの残りの3個の略菱形領域による、第3の組み合わせ方による、第3の錯視模様が視認可能とされており、
前記第1の錯視模様は、前記略菱形領域を立方体形状の面の投影と認識させる前記立方体形状の錯視を生起させる前記ヘキサフレクサゴンの六角形の表面模様であり、前記ヘキサフレクサゴンの六角形の中心点に位置する前記立方体形状の1つの頂点に隣接する3つの辺の位置に、前記辺それぞれに沿ったそれぞれ同一の方向を向いた複数の角が隙間を空けて並べられており、前記3つの辺は、前記折り目に沿って設けられている、折り紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錯視を引き起こす技術に関する。
【背景技術】
【0002】
アートやデザインの世界では図形による様々な錯視を利用した手法が用いられている。例えば、錯視アートなどの錯視物を、黒いテープを白い物に貼ることにより制作することは従来から行われている(例えば、非特許文献1,2等参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Darel Carey、“Topographical space No.1 Time-Lapse”、[online]、2016年、[2019年7月25日検索]、インターネット<https://www.darelcarey.com/art>
【非特許文献2】Buff Diss、“Queenwise”、[online]、2013年、[2019年7月25日検索]、インターネット<https://vimeo.com/128037813>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、錯視を生じさせる表面模様を生成するためには専門的な知識が必要であり、誰もが容易に錯視物を作成して楽しむことができない。
【0005】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、誰もが容易に錯視物を作成して楽しむことができる折り紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では上記の課題を解決するために、複数通りの折り方それぞれにより視認可能とされる面構成が異なるようにされている折り紙が提供される。ここで、複数通りの折り方のうちの第1の折り方により視認可能とされる面構成は、第1の錯視模様となり、複数通りの折り方のうちの第1の折り方とは異なる第2の折り方により視認可能とされる面構成は、第1の錯視模様とは異なる第2の錯視模様となるように、当該折り紙の表面模様が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、折り方を変えるだけで異なる錯視模様が視認可能となり、誰もが容易に錯視物を作成して楽しむことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1Aは第1実施形態の折り紙を例示した平面図であり、図1Bは第1実施形態の折り紙を例示した底面図である。
図2図2Aは第1実施形態の折り紙を例示した平面図であり、図2Bは第1実施形態の折り紙を例示した底面図である。
図3-1】図3Aは第1の折り方により視認可能とされる折り紙の面構成を例示した平面図である。図3Bは第2の折り方により視認可能とされる折り紙の面構成を例示した平面図である。図3Cは第3の折り方により視認可能とされる折り紙の面構成を例示した平面図である。
図3-2】図3Dは第1の折り方により視認可能とされる折り紙の別の面構成を例示した平面図である。図3Eは第2の折り方により視認可能とされる折り紙の別の面構成を例示した平面図である。図3Fは第3の折り方により視認可能とされる折り紙の別の面構成を例示した平面図である。
図4図4Aおよび図4Bは折り紙の折り方の変え方を例示するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態を説明する。
図1Aおよび図2Aは本実施形態の折り紙1を例示した平面図である。図1Bおよび図2Bは折り紙1を例示した底面図であり、図1Aおよび図2Aの裏面を表す。本実施形態、図1Aおよび図2Aに示す折り紙1の面を「第1面」と呼び、図1Bおよび図2Bに示す折り紙1の面を「第2面」と呼ぶことにする。なお、説明の便宜上、図1Aおよび図1Bには点線の補助線が記載されているが、図2Aおよび図2Bに示すように実際の折り紙1には補助線は存在しない。
【0010】
本実施形態で例示する折り紙1は、一般に「ヘキサフレクサゴン(hexaflexagon)」と呼ばれる折り紙の既知の複数通りの折り方それぞれにより視認可能となる面にそれぞれ異なる錯視模様が形成されるように、折り紙1の両面に表面模様を形成したものである。本実施形態で例示する折り紙1の一方の面である第1面の輪郭形状は略平行四辺形である(図1A)。この略平行四辺形の二組の対辺のうち、対辺a,fの長さは、対辺a,gを5等分した長さと略同一である。辺aは、後述する各領域の辺となる線分a,b,c,d,eに略5等分され、辺gは、後述する各領域の辺となる線分g,h,i,j,kに略5等分されている。一組の対角f,fは略60°である。他の一組の対角a,aは略120°である。なお「略α」の例は「α」である。しかし、「略α」は厳密に「α」である必要はなく、本発明の作用効果を得られる限り「α」と同等なものを「略α」と扱ってもよい。
【0011】
本実施形態で例示する折り紙1の他方の面である第2面の輪郭形状は、第1面の輪郭形状の鏡像である略平行四辺形である(図1B)。折り紙1の第1面の各点a,b,c,d,e,f,g,h,i,j,k,mに対応する折り紙1の第2面の各点をa,b,c,d,e,f,g,h,i,j,k,mとする。すなわち、対辺f,aの長さは、対辺a,gを5等分した長さと略同一である。また、辺aは、後述する各領域の辺となる線分a,b,c,d,eに略5等分され、辺gは、後述する各領域の辺となる線分g,h,i,j,kに略5等分されている。また、一組の対角f,fは略60°である。また、他の一組の対角a,aは略120°である。
【0012】
折り紙1の、第1面の両端の略正三角形の領域a,fを除く領域は、略合同な9個の略菱形の領域b(第1菱形領域D),c(第2菱形領域D),d(第3菱形領域D),e(第4菱形領域D),f(第5菱形領域D),e(第6菱形領域D),d(第7菱形領域D),c(第8菱形領域D),b(第9菱形領域D)に区分されている(図1A図1B)。これらの第1菱形領域D,第2菱形領域D,第3菱形領域D,第4菱形領域D,第5菱形領域D,第6菱形領域D,第7菱形領域D,第8菱形領域D,第9菱形領域Dには、それぞれ表面模様が形成されている。図1A図1Bの例では、第2菱形領域D,第6菱形領域D,第9菱形領域Dの3個の領域の表面模様は、折り紙1の面においては隣接していないものの整合可能に構成されており、後述のように折り紙1が第1の折り方で折られた場合に当該3個の領域の表面模様を組み合わせた第1の錯視模様が視認可能となり、さらに、後述のように折り紙1が第2の折り方で折られた場合に当該3個の領域の表面模様を第1の錯視模様と異なるように組み合わせた第5の錯視模様が視認可能となるようにされている。第1菱形領域D,第4菱形領域D,第7菱形領域Dの3個の領域の表面模様は、折り紙1の面においては隣接していないものの整合可能に構成されており、後述のように折り紙1が第2の折り方で折られた場合に当該3個の領域の表面模様を組み合わせた第2の錯視模様が視認可能となり、さらに、後述のように折り紙1が第3の折り方で折られた場合に当該3個の領域の表面模様を第2の錯視模様と異なるように組み合わせた第6の錯視模様が視認可能となるようにされている。第3菱形領域D,第5菱形領域D,第8菱形領域Dの3個の領域の表面模様は、折り紙1の面においては隣接していないものの整合可能に構成されており、後述のように折り紙1が第3の折り方で折られた場合に当該3個の領域の表面模様を組み合わせた第3の錯視模様が視認可能となり、さらに、後述のように折り紙1が第1の折り方で折られた場合に当該3個の領域の表面模様を第3の錯視模様と異なるように組み合わせた第6の錯視模様が視認可能となるようにされている。なお、複数個の表面模様が整合可能とは、それらの表面模様が所定の折り方によって位置合わせされた際に、位置合わせにより隣接する領域の表面模様が視覚的な連続性と連結可能性を保持すること、言い換えると、位置合わせにより隣接する2個の領域の表面模様が纏まった1個の模様として認知されることが可能であり、視覚的な不連続が生じないこと、を意味する。例えば、所定の折り方によって位置合わせされた隣接する2個の菱形領域の表面模様がある点を中心とした回転対称になっていれば、これら2個の菱形領域の表面模様は整合可能である。また、例えば、所定の折り方によって位置合わせされた隣接する2個の菱形領域において、位置合わせされた線上の模様が同一であれば、または、同一に近ければ、これら2個の菱形領域の表面模様は整合可能である。また、例えば、所定の折り方によって位置合わせされた隣接する2個の菱形領域において、位置合わせされた線の近傍の模様が位置合わせされた線に対して対称であれば、または、対称に近ければ、これら2個の菱形領域の表面模様は整合可能である。図1A図1Bのような強いコントラストを持つストライプの表面模様の場合であれば、例えば、ストライプの表面模様が形成された複数の領域の、所定の折り方によって位置合わせされる線の近傍でのパターン配置を略同一としたり、当該位置合わせされる線上でのピッチ(低輝度の領域の幅と高輝度の領域の幅)を略同一としたりすれば、これらの表面模様は整合可能となる。なお、領域a,fには、後述する糊付けの際に、頂点gと頂点f、頂点aと頂点k、頂点bと頂点m、がそれぞれ略同一の位置となるように位置合わせするための印が形成されているとよく、図1Aの例では、領域a,fの頂点g,fの内側付近に位置合わせのための印10a,10bが形成されている。また、折り紙1への表面模様および印10a,10bの形成方法に限定はないが、例えば、印刷によって表面模様および印10a,10bが形成されればよい。
【0013】
折り紙1を線分b,c,d,eで谷折し、すなわち、線分b,c,d,eで山折し(I)、線分b,c,d,e,fで山折し、すなわち、線分b,c,d,e,fで谷折し(II)、頂点gと頂点f、頂点aと頂点k、頂点bと頂点m、がそれぞれ略同一の位置となるように領域a,fを重ね合わせてこれらを糊付けする。
【0014】
上述のように糊付けされた折り紙1は、複数通りの折り方に変更可能であり、複数通りの折り方それぞれにより視認可能とされる面構成が異なるようにされている。図4Aおよび図4Bを用い、折り紙1の折り方の変更方法を説明する。図4Aに例示するように、糊付けされた状態の折り紙1を略平面にすると、折り紙1の面は略正六角形となっている。その略正六角形の6個の頂点のうち、前述した略菱形の領域の頂点が1個ずつ配置されている3個の頂点11,12,13からそれぞれ中央部分14へ向かう方向n1,n2,n3に折り紙1を押し、糊付け前に谷折りとした線分を谷折りとし、糊付け前に山折りとした線分を山折りとし、それを図4Bのように変形させる。図4Bの状態で中央部分14を方向n1,n2,n3と逆方向p1,p2,p3に開く。これによって折り紙1の折り方が次の折り方に変化する。例えば、折り紙1を略平面としたときに図3Aに例示するような第1の錯視模様101が視認可能である場合には、前述した折り方の変更により図3Bに例示するような第2の錯視模様102が視認可能となる。折り紙1を略平面としたときに図3Bに例示するような第2の錯視模様102が視認可能である場合には、前述した折り方の変更により図3Cに例示するような第3の錯視模様103が視認可能となる。折り紙1を略平面としたときに図3Cに例示するような第3の錯視模様103が視認可能である場合には、前述した折り方の変更により図3Aに例示するような第1の錯視模様101が視認可能となる。なお、折り方の変更は回帰的であるため何れの折り方が第何番目の折り方であるかを特定することに意味は無いが、説明の都合上、便宜的に、以降では、第1の錯視模様101が視認可能である折り方を第1の折り方、第2の錯視模様102が視認可能である折り方を第2の折り方、第3の錯視模様103が視認可能である折り方を第3の折り方、と呼ぶ。
【0015】
折り紙1を第1の折り方としたときには、折り紙1の第1の錯視模様101が視認可能となる面の裏側に位置する視認可能な面には、図3Dに例示するような第4の錯視模様104が視認可能とされる。また、折り紙1を第2の折り方としたときには、折り紙1の第2の錯視模様102が視認可能となる面の裏側に位置する視認可能な面には、図3Eに例示するような第5の錯視模様105が視認可能とされる。また、折り紙1を第3の折り方としたときには、折り紙1の第3の錯視模様103が視認可能となる面の裏側に位置する視認可能な面には、図3Fに例示するような第6の錯視模様106が視認可能とされる。なお、折り紙1を略平面としたときに図3Dに例示するような第4の錯視模様104が視認可能である場合には、前述した折り方の変更により図3Fに例示するような第6の錯視模様106が視認可能となり、折り紙1を略平面としたときに図3Fに例示するような第6の錯視模様106が視認可能である場合には、前述した折り方の変更により図3Eに例示するような第5の錯視模様105が視認可能となり、折り紙1を略平面としたときに図3Eに例示するような第5の錯視模様105が視認可能である場合には、前述した折り方の変更により図3Dに例示するような第4の錯視模様104が視認可能となる。
【0016】
折り紙1を第1の折り方としたときに視認可能とされる第1の錯視模様101は、第2菱形領域D,第6菱形領域D,第9菱形領域Dの3個の菱形領域の表面模様を組み合わせたものであり、第2菱形領域Dの頂点cと第6菱形領域Dの頂点jと第9菱形領域Dの頂点gが略一致し、第2菱形領域Dの線分cと第9菱形領域Dの線分gが略一致し、第9菱形領域Dの線分gと第6菱形領域Dの線分jが略一致し、第6菱形領域Dの線分jと第2菱形領域Dの線分cが略一致するように、位置合わせされた錯視模様である。第2菱形領域Dと第6菱形領域Dと第9菱形領域Dは、第2菱形領域Dの頂点cと第6菱形領域Dの頂点jと第9菱形領域Dの頂点gが位置合わせされた点を中心とした回転対称となっている。また、第2菱形領域Dと第9菱形領域D、第9菱形領域Dと第6菱形領域D、第6菱形領域Dと第2菱形領域D、のそれぞれの組において、位置合わせされた各線上の模様は同一であり、かつ、位置合わせされた各線の近傍の模様は位置合わせされた線に対して対称である。
【0017】
また、折り紙1を第1の折り方としたときに視認可能とされるもう1つの錯視模様である第4の錯視模様104は、第3菱形領域D,第5菱形領域D,第8菱形領域Dの3個の菱形領域の表面模様を組み合わせたものであり、第3菱形領域Dの頂点jと第5菱形領域Dの頂点fと第8菱形領域Dの頂点cが略一致し、第3菱形領域Dの線分jと第5菱形領域Dの線分fが略一致し、第5菱形領域Dの線分fと第8菱形領域Dの線分cが略一致し、第8菱形領域Dの線分cと第3菱形領域Dの線分jが略一致するように、位置合わせされた錯視模様である。第3菱形領域Dと第5菱形領域Dと第8菱形領域Dは、第3菱形領域Dの頂点jと第5菱形領域Dの頂点fと第8菱形領域Dの頂点cが位置合わせされた点を中心とした回転対称となっている。また、第3菱形領域Dと第5菱形領域D、第5菱形領域Dと第8菱形領域D、第8菱形領域Dと第3菱形領域D、のそれぞれの組において、位置合わせされた各線上の模様は同一に近く、かつ、位置合わせされた各線の近傍の模様は位置合わせされた線に対して対称に近い。
【0018】
折り紙1を第2の折り方としたときに視認可能とされる第2の錯視模様102は、第1菱形領域D,第4菱形領域D,第7菱形領域Dの3個の菱形領域の表面模様を組み合わせたものであり、第1菱形領域Dの頂点bと第4菱形領域Dの頂点eと第7菱形領域Dの頂点iが略一致し、第1菱形領域Dの線分bと第4菱形領域Dの線分eが略一致し、第4菱形領域Dの線分eと第7菱形領域Dの線分iが略一致し、第7菱形領域Dの線分iと第1菱形領域Dの線分bが略一致するように、位置合わせされた錯視模様である。第1菱形領域Dと第4菱形領域Dと第7菱形領域Dは、第1菱形領域Dの頂点bと第4菱形領域Dの頂点eと第7菱形領域Dの頂点iが位置合わせされた点を中心とした回転対称となっている。また、第1菱形領域Dと第4菱形領域D、第4菱形領域Dと第7菱形領域D、第7菱形領域Dと第1菱形領域D、のそれぞれの組において、位置合わせされた各線上の模様は同一であり、位置合わせされた各線の近傍の模様は位置合わせされた線に対して対称である。
【0019】
また、折り紙1を第2の折り方としたときに視認可能とされるもう1つの錯視模様である第5の錯視模様105は、第2菱形領域D,第6菱形領域D,第9菱形領域Dの3個の菱形領域の表面模様を組み合わせたものであり、第2菱形領域Dの頂点iと第6菱形領域Dの頂点eと第9菱形領域Dの頂点bが略一致し、第2菱形領域Dの線分iと第6菱形領域Dの線分eが略一致し、第6菱形領域Dの線分eと第9菱形領域Dの線分bが略一致し、第9菱形領域Dの線分bと第2菱形領域Dの線分iが略一致するように、位置合わせされた錯視模様である。第2菱形領域Dと第6菱形領域Dと第9菱形領域Dは、第2菱形領域Dの頂点iと第6菱形領域Dの頂点eと第9菱形領域Dの頂点bが位置合わせされた点を中心とした回転対称となっている。また、第2菱形領域Dと第6菱形領域D、第6菱形領域Dと第9菱形領域D、第9菱形領域Dと第2菱形領域D、のそれぞれの組において、位置合わせされた各線上の模様は同一であり、位置合わせされた各線の近傍の模様は位置合わせされた線に対して対称である。
【0020】
折り紙1を第3の折り方としたときに視認可能とされる第3の錯視模様103は、第3菱形領域D,第5菱形領域D,第8菱形領域Dの3個の菱形領域の表面模様を組み合わせたものであり、第3菱形領域Dの頂点dと第5菱形領域Dの頂点kと第8菱形領域Dの頂点hが略一致し、第3菱形領域Dの線分dと第8菱形領域Dの線分hが略一致し、第8菱形領域Dの線分hと第5菱形領域Dの線分kが略一致し、第5菱形領域Dの線分kと第3菱形領域Dの線分dが略一致するように、位置合わせされた錯視模様である。第3菱形領域Dと第5菱形領域Dと第8菱形領域Dは、第3菱形領域Dの頂点dと第5菱形領域Dの頂点kと第8菱形領域Dの頂点hが位置合わせされた点を中心とした回転対称となっている。また、第3菱形領域Dと第8菱形領域D、第8菱形領域Dと第5菱形領域D、第5菱形領域Dと第3菱形領域D、のそれぞれの組において、位置合わせされた各線上の模様は同一であり、位置合わせされた各線の近傍の模様は位置合わせされた線に対して対称である。
【0021】
また、折り紙1を第3の折り方としたときに視認可能とされるもう1つの錯視模様である第6の錯視模様106は、第1菱形領域D,第4菱形領域D,第7菱形領域Dの3個の菱形領域の表面模様を組み合わせたものであり、第1菱形領域Dの頂点hと第4菱形領域Dの頂点kと第7菱形領域Dの頂点dが略一致し、第1菱形領域Dの線分hと第7菱形領域Dの線分dが略一致し、第7菱形領域Dの線分dと第4菱形領域Dの線分kが略一致し、第4菱形領域Dの線分kと第1菱形領域Dの線分hが略一致するように、位置合わせされた錯視模様である。第1菱形領域Dと第4菱形領域Dと第7菱形領域Dは、第1菱形領域Dの頂点hと第4菱形領域Dの頂点kと第7菱形領域Dの頂点dが位置合わせされた点を中心とした回転対称となっている。また、第1菱形領域Dと第7菱形領域D、第7菱形領域Dと第4菱形領域D、第4菱形領域Dと第1菱形領域D、のそれぞれの組において、位置合わせされた各線上の模様は同一であり、位置合わせされた各線の近傍の模様は位置合わせされた線に対して対称である。
【0022】
すなわち、第1の錯視模様101と第5の錯視模様105は、同じ3個の菱形領域(第2菱形領域Dと第6菱形領域Dと第9菱形領域D)の表面模様を組み合わせたものであるが、第1の折り方による位置合わせのされ方と第2の折り方による位置合わせのされ方が異なることによって、異なる錯視模様とされている。また、第2の錯視模様102と第6の錯視模様106は、同じ3個の菱形領域(第1菱形領域Dと第4菱形領域Dと第7菱形領域D)の表面模様を組み合わせたものであるが、第2の折り方による位置合わせのされ方と第3の折り方による位置合わせのされ方が異なることによって、異なる錯視模様とされている。また、第3の錯視模様103と第4の錯視模様104は、同じ3個の菱形領域(第3菱形領域Dと第5菱形領域Dと第8菱形領域D)の表面模様を組み合わせたものであるが、第3の折り方による位置合わせのされ方と第1の折り方による位置合わせのされ方が異なることによって、異なる錯視模様とされている。このように、第1菱形領域Dから第9菱形領域Dの9個の各菱形領域は、折り紙1の所定の複数通りの折り方によって複数通りの位置合わせがされても、組み合わせたものが必ず錯視模様となり、それぞれ異なる錯視模様となるようにされている。
【0023】
<本発明の特徴>
以上のように、本発明の折り紙1の表面模様は、複数通りの折り方それぞれにより視認可能とされる面構成が異なるようにされており、複数通りの折り方のうちのある折り方(第1の折り方)により視認可能とされる面構成は、ある錯視模様(第1の錯視模様)となり、複数通りの折り方のうちの第1の折り方とは異なる折り方(第2の折り方)により視認可能とされる面構成は、第1の錯視模様とは異なる錯視模様(第2の錯視模様)となる。これにより、錯視の専門知識を必要とすることなく、誰もが容易に錯視物を作成して楽しむことができる。
【0024】
例えば、「ヘキサフレクサゴン」を本発明の折り紙1とする場合には、表面模様が形成された9個の略菱形領域を有し、第1の折り方により、9個の菱形領域のうちの3個の略菱形領域による第1の組み合わせ方による第1の錯視模様が視認可能とされ、第2の折り方により、9個の略菱形領域のうちの残りの6個のうちの3個の略菱形領域による第2の組み合わせ方による第2の錯視模様が視認可能とされ、第3の折り方により、9個の略菱形領域のうちの残りの3個の略菱形領域による第3の組み合わせ方による第3の錯視模様が視認可能とされる。そして、第1の組み合わせ方において、含まれる領域の表面模様は整合可能に構成されており、かつ、第2の組み合わせ方において、含まれる領域の表面模様は整合可能に構成されており、かつ、第3の組み合わせ方において、含まれる領域の表面模様は整合可能に構成されている。より具体的には、第1から第3の各組み合わせ方における3個の略菱形領域の表面模様は、各組み合わせ方により形成される略正六角形の中心に対して回転対称である。また、第1から第3の各組み合わせ方によって隣接する2個の略菱形領域による組それぞれにおいて、位置合わせされた線上の模様は同一である。また、第1から第3の各組み合わせ方によって隣接する2個の略菱形領域による組それぞれにおいて、位置合わせされた線の近傍の模様は位置合わせされた線に対して対称である。
【0025】
「ヘキサフレクサゴン」を本発明の折り紙1とする場合には、更に、第1の折り方のときには第1の錯視模様とは異なるもう1つの錯視模様である第4の錯視模様が視認可能とされる。第4の錯視模様は、第3の折り方により視認可能となる第3の錯視模様と同じ3個の略菱形領域による、第3の組み合わせ方とは異なる第4の組み合わせ方による模様である。また、第2の折り方のときには第2の錯視模様とは異なるもう1つの錯視模様である第5の錯視模様が視認可能とされる。第5の錯視模様は、第1の折り方により視認可能となる第1の錯視模様と同じ3個の略菱形領域による、第1の組み合わせ方とは異なる第5の組み合わせ方による模様である。また、第3の折り方のときには第3の錯視模様とは異なるもう1つの錯視模様である第6の錯視模様が視認可能とされる。第6の錯視模様は、第2の折り方により視認可能となる第2の錯視模様と同じ3個の略菱形領域による、第2の組み合わせ方とは異なる第6の組み合わせ方による模様である。そして、第1~第3の組み合わせ方に加えて、第4から第6の組み合わせ方においても、含まれる領域の表面模様は整合可能に構成されるようにするとよい。より具体的には、第1から第6の各組み合わせ方における3個の略菱形領域の表面模様は、各組み合わせ方により形成される略正六角形の中心に対して回転対称とするとよい。また、第1から第6の各組み合わせ方によって隣接する2個の略菱形領域による組それぞれにおいて、位置合わせされた線上の模様は同一または同一に近くするとよい。また、第1から第6の各組み合わせ方によって隣接する2個の略菱形領域による組それぞれにおいて、位置合わせされた線の近傍の模様は位置合わせされた線に対して対称または対称に近くなるようにするとよい。
【0026】
なお、「ヘキサフレクサゴン」の六角形は立方体の2次元投影の輪郭線ととらえることができ、「ヘキサフレクサゴン」を構成する略菱形領域は当該立方体の面の投影と一致させることができる。さらに、本発明によれば、各略菱形領域の表面模様を組み合わせて形成した「ヘキサフレクサゴン」の表面模様によって、「ヘキサフレクサゴン」が平面であるという解釈が打ち消され、立方体の平面絵の投影図を描画したものであるという解釈を、単に六角形の輪郭を描画した場合よりも強く生起させることができる。そのため、「ヘキサフレクサゴン」を本発明の折り紙1とすることにより、立体形状の錯視を容易に生起させることが可能になる。
【0027】
[その他の変形例]
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、第1実施形態において、第1菱形領域D,第2菱形領域D,第3菱形領域D,第4菱形領域D,第5菱形領域D,第6菱形領域D,第7菱形領域D,第8菱形領域D,第9菱形領域Dに、上述したストライプの表面模様に代えて、その他の表面模様が形成されてもよい。また、上述の第1実施形態では、折り方に応じて、同じ表面模様が形成された複数の領域が視認可能とされ、それらの組み合わせに応じて異なる錯視模様が表れる例を示した。しかし、これは本発明を限定するものではない。すなわち、折り方に応じて異なる表面模様が形成された複数の領域が視認可能とされ、それらの組み合わせに応じて異なる錯視模様が表れてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 折り紙
~D 第1~9菱形領域
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4