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特開2024-163328使用済み吸収性物品を含む使用済み不織布製品からプラスチック材料を回収する方法
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  • 特開-使用済み吸収性物品を含む使用済み不織布製品からプラスチック材料を回収する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163328
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】使用済み吸収性物品を含む使用済み不織布製品からプラスチック材料を回収する方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 5/00 20060101AFI20241114BHJP
   B09B 3/30 20220101ALN20241114BHJP
   B09B 3/70 20220101ALN20241114BHJP
   B09B 101/67 20220101ALN20241114BHJP
   B09B 101/85 20220101ALN20241114BHJP
   B09B 101/75 20220101ALN20241114BHJP
【FI】
B09B5/00 Q ZAB
B09B5/00 Q
B09B3/30
B09B3/70
B09B101:67
B09B101:85
B09B101:75
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024159508
(22)【出願日】2024-09-13
(62)【分割の表示】P 2020176171の分割
【原出願日】2020-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】小西 孝義
(72)【発明者】
【氏名】平岡 利夫
(72)【発明者】
【氏名】石川 宜秀
(72)【発明者】
【氏名】栗田 範朋
(57)【要約】
【課題】使用済み吸収性物品を含む使用済み不織布製品由来のプラスチック材料であって、不純物が抑制されたプラスチック材料を提供する。
【解決手段】本プラスチック材料は、使用済み吸収性物品を含む使用済み不織布製品由来のプラスチック材料である。本プラスチック材料に含まれるパルプ繊維及び高吸水性ポリマーの割合は5質量%以下である。本プラスチック材料に含まれる灰分の割合は10質量%未満である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む使用済み吸収性物品を含む使用済み不織布製品由来のプラスチック材料であって、
前記プラスチック材料に含まれるパルプ繊維及び高吸水性ポリマーの割合は5質量%以下であり、
前記プラスチック材料に含まれる灰分の割合は10質量%未満である、
プラスチック材料。
【請求項2】
前記プラスチック材料の大きさは、150mm以下である、
請求項1に記載のプラスチック材料。
【請求項3】
前記プラスチック材料は酸性であり、
前記プラスチック材料では塩素は残留していない、
請求項1又は2に記載のプラスチック材料。
【請求項4】
前記プラスチック材料では一般細菌は検出限界以下である、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のプラスチック材料。
【請求項5】
前記使用済み不織布製品は、前記使用済み吸収性物品の他に、不織布を資材として有する、医療用ガウン、医療用キャップ及びマスクの少なくとも一つを含む、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のプラスチック材料。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のプラスチック材料由来の液状生成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み吸収性物品を含む使用済み不織布製品からプラスチック材料を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使用済み吸収性物品を含む使用済み不織布製品からプラスチック材料を回収する技術が知られている。例えば、特許文献1(特開2018-171589号公報)には、使用済み吸収性物品から構成部材を回収する方法が開示されている。この方法は、使用済み吸収性物品から構成部材であるフィルム及び吸収体材料を回収する方法である。この方法は、使用済み吸収性物品を水で膨潤させる前処理工程と、膨潤した使用済み吸収性物品に物理的な衝撃を与えて、使用済み吸収性物品を、少なくともフィルムと吸収体材料とに分解する分解工程と、分解されたフィルムと吸収体材料とを分離する分離工程と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-171589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、分離工程において、フィルムや不織布のようなプラスチック材料と、高吸水性ポリマーやパルプ繊維のような吸収体材料と、が互いに分離される。しかし、プラスチック材料から、吸収体材料を完全に分離することは難しく、分離されたプラスチック材料にある程度の吸収体材料が残存すること、すなわち、プラスチック材料にある程度の不純物が含まれることを避けられなかった。そのため、そのようなプラスチック材料の再利用には、固形燃料のようなある程度の不純物を含んでもよい用途しかなかった。
【0005】
このことは、使用済みの医療用ガウンや医療用キャップ、マスクのような他の不織布製品を、使用済みの吸収性物品と共にまとめて回収し、それら使用済みの不織布製品からプラスチック材料を回収する場合にも、同様に当てはまる。
【0006】
本発明の目的は、使用済み吸収性物品を含む使用済み不織布製品からプラスチック材料を回収する方法において、回収されるプラスチック材料の不純物を抑制することが可能な方法、及び、不純物が抑制されたプラスチック材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、使用済み吸収性物品を含む使用済み不織布製品からプラスチック材料を回収する方法であって、ここで、前記使用済み不織布製品は、プラスチック材料を含み、前記使用済み吸収性物品は、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維を更に含んでおり、不活化水溶液中で、前記使用済み不織布製品を分解して得られる前記プラスチック材料、前記高吸水性ポリマー及び前記パルプ繊維の混合物から、前記高吸水性ポリマー及び前記パルプ繊維を分離する一次分離工程と、空気中で、前記混合物に酸化剤水溶液を散布しつつ、物理的衝撃を加えることで、前記一次分離工程で分離されずに残存していた前記高吸水性ポリマー及び前記パルプ繊維を前記プラスチック材料から分離して、前記プラスチック材料を回収する二次分離工程と、を備える、方法、である。
【0008】
本発明の他の態様は、使用済み吸収性物品を含む使用済み不織布製品由来のプラスチック材料であって、前記プラスチック材料に含まれるパルプ繊維及び高吸水性ポリマーの割合は5質量%以下であり、前記プラスチック材料に含まれる灰分の割合は10質量%未満である、プラスチック材料、である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法によれば、使用済み吸収性物品を含む使用済み不織布製品からプラスチック材料を回収する方法において、回収されるプラスチック材料の不純物を抑制することが可能な方法、及び、不純物が抑制されたプラスチック材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る使用済み吸収性物品を含む使用済み不織布製品からプラスチック材料を回収する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態は、以下の態様に関する。
[態様1]
使用済み吸収性物品を含む使用済み不織布製品からプラスチック材料を回収する方法であって、ここで、前記使用済み不織布製品は、プラスチック材料を含み、前記使用済み吸収性物品は、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維を更に含んでおり、不活化水溶液中で、前記使用済み不織布製品を分解して得られる前記プラスチック材料、前記高吸水性ポリマー及び前記パルプ繊維の混合物から、前記高吸水性ポリマー及び前記パルプ繊維を分離する一次分離工程と、空気中で、前記混合物に酸化剤水溶液を散布しつつ、物理的衝撃を加えることで、前記一次分離工程で分離されずに残存していた前記高吸水性ポリマー及び前記パルプ繊維を前記プラスチック材料から分離して、前記プラスチック材料を回収する二次分離工程と、を備える、方法。
【0012】
本方法では、まず、一次分離工程で、不活化水溶液で高吸水性ポリマーを不活化し脱水させ、膨潤を抑えつつ、プラスチック材料、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物から、大部分の高吸水性ポリマー及びパルプ繊維を分離する。そして、二次分離工程で、空気中で、混合物に酸化剤水溶液を散布しつつ物理的衝撃を与えながら、残存する高吸水性ポリマー及びパルプ繊維をプラスチック材料から分離することで、プラスチック材料を回収する。
このように、二次分離工程において、混合物に酸化剤水溶液を散布しているので、混合物に残存する高吸水性ポリマーの表面の少なくとも一部を分解することができる。それゆえ、プラスチック材料に付着した高吸水性ポリマーや、高吸水性ポリマーを介して付着したパルプ繊維を、プラスチック材料から除去し易くすることができる。それと共に、混合物を、酸化剤水溶液で洗浄して、殺菌、消毒、消臭を行うことができる。また、水(溶液)中ではなく、空気中で、混合物に物理的衝撃を与えているので、その物理的衝撃をプラスチック材料や高吸水性ポリマーやパルプ繊維に直接的に加えることができる。それゆえ、プラスチック材料に付着した高吸水性ポリマーやパルプ繊維を、プラスチック材料から取り除き易くすることができる。したがって、これらの相乗効果により、混合物(プラスチック材料)から高吸水性ポリマー及びパルプ繊維を容易に分離することができ、得られるプラスチック材料の不純物を抑制することができる。よって、そのプラスチック材料の再利用の用途を広げることが可能となる。
【0013】
[態様2]
前記酸化剤水溶液は、オゾン、二酸化塩素、過酢酸、次亜塩素酸ナトリウム及び過酸化水素のうちの少なくとも一つを含む水溶液である、態様1に記載の方法。
本方法では、酸化剤水溶液が、オゾン、二酸化塩素、過酢酸、次亜塩素酸ナトリウム及び過酸化水素のうちの少なくとも一つを含む水溶液である。そのため、混合物に残存する高吸水性ポリマーの表面をより適切に分解して、混合物に残存する高吸水性ポリマー及び高吸水性ポリマーが付着したパルプ繊維を、プラスチック材料からより除去し易くできる。それと共に、混合物を、より適切に殺菌、消毒、消臭できる。
【0014】
[態様3]
不活化水溶液中の前記使用済み不織布製品を破砕する破砕工程を更に備え、前記一次分離工程は、前記破砕工程で破砕された前記使用済み不織布製品における前記混合物から、前記高吸水性ポリマー及び前記パルプ繊維を分離する工程を含む、態様1又は2に記載の方法。
本方法では、一次分離工程の前に、不活化水溶液中の使用済み不織布製品を所定の大きさに破砕し、それにより、プラスチック材料、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維を所定の大きさに破砕する。すなわち、不活化水溶液で高吸水性ポリマーを不活化し脱水させ、膨潤を抑えつつ、プラスチック材料、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維を、一次分離工程や二次分離工程において分離し易い大きさにすることができる。したがって、混合物(プラスチック材料)から高吸水性ポリマー及びパルプ繊維をより容易に分離できる。
【0015】
[態様4]
前記一次分離工程において、前記不活化水溶液は、酸性水溶液であり、前記酸性水溶液のpHが所定の範囲内に維持されつつ、前記混合物から、前記高吸水性ポリマー及び前記パルプ繊維が分離される、態様1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
本方法では、一次分離工程において、不活化水溶液が酸性水溶液であり、酸性水溶液のpHが所定の範囲内に維持されつつ、混合物から、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維が分離されている。そのため、一次分離工程で、不活化水溶液で高吸水性ポリマーをより確実に、不活化し脱水させ、膨潤を抑えつつ、混合物から、大部分の高吸水性ポリマー及びパルプ繊維を分離できる。それにより、二次分離工程で分離の対象となる高吸水性ポリマー及びパルプ繊維を低減でき、混合物(プラスチック材料)から高吸水性ポリマー及びパルプ繊維をより容易に分離することができる。
【0016】
[態様5]
前記物理的衝撃は、空気中で前記混合物を攪拌する羽根車における回転する羽の衝突により前記混合物に加えられる、態様1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
本方法では、物理的衝撃が、空気中で混合物を攪拌する羽根車における回転する羽の衝突により混合物に加えられる。それにより、空気中で、より確実に、混合物に物理的衝撃を加えることができる。それゆえ、混合物に残存する高吸水性ポリマー及び高吸水性ポリマーが付着したパルプ繊維を、プラスチック材料からより取り除き易くできる。
【0017】
[態様6]
前記一次分離工程は、並列接続された二台の一次分離装置のうちの一方で実施される、態様1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
一次分離工程を実施する一次分離装置は、最初の分離であるため、分離対象の資材が詰まるなどの状況が生じやすい。そこで、本方法では、一次分離工程が並列接続された二台の一次分離装置のうちの一方で実施される。それにより、例えば、稼働中の一方の一次分離装置にメンテナンスが必要な場合、その一方の一次分離装置を停止させつつ、他方の一次分離装置を稼働させることで、本方法を一時停止させることなく連続的に実行することができる。それゆえ、不純物の少ないプラスチック材料を効率的に回収できる。
【0018】
[態様7]
前記使用済み不織布製品は、前記使用済み吸収性物品の他に、不織布を資材として有する、医療用ガウン、医療用キャップ及びマスクの少なくとも一つを含む、態様1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
本方法は、使い捨ておむつのような使用済み吸収性物品の他に、不織布を資材として有する医療用ガウン、医療用キャップ、及びマスクの少なくとも一つを使用済み不織布製品として含む場合にも適用が可能である。その場合にも、得られるプラスチック材料の不純物を抑制することができ、プラスチック材料の再利用の用途を広げることが可能となる。
【0019】
[態様8]
前記二次分離工程で回収される前記プラスチック材料は、油化用である、態様1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
本方法では、二次分離工程で回収されるプラスチック材料は、油化用とすることができる。すなわち、本方法で得られるプラスチック材料は、不純物が抑制されたプラスチック材料であるため、その再利用の用途を油化(使用済みのプラスチック材料を熱又は触媒を使用して分解し、液状生成物を製造する技術)に広げることが可能となる。
【0020】
[態様9]
使用済み吸収性物品を含む使用済み不織布製品由来のプラスチック材料であって、前記プラスチック材料に含まれるパルプ繊維及び高吸水性ポリマーの割合は5質量%以下であり、前記プラスチック材料に含まれる灰分の割合は10質量%未満である、プラスチック材料。
本プラスチック材料は、使用済み吸収性物品を含む使用済み不織布製品由来のプラスチック材料であるにもかかわらず、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーの割合が5質量%以下であり、灰分の割合が10質量%未満である。すなわち、本プラスチック材料は、不純物が抑制されたプラスチック材料であるため、その再利用の用途を、様々な用途(例示:油化)に広げることが可能となる。
【0021】
以下、実施形態に係る使用済み吸収性物品を含む使用済み不織布製品からプラスチック材料を回収する方法について説明する。ただし、使用済み吸収性物品は、使用者によって使用された吸収性物品や未使用だが廃棄された吸収性物品を含む。吸収性物品としては、例えば使い捨ておむつ、尿取りパッド、生理用ナプキン、ベッドシート、ペットシートが挙げられる。使用済みの吸収性物品は、使用者の排泄物を吸収・保持した状態の吸収性物品を含む。また、使用済み不織布製品は、使用者によって使用された不織布製品や未使用だが廃棄された不織布製品を含む。不織布製品は、不織布を含む複数の部材から構成された製品であり、少なくとも合成樹脂製の不織布、すなわちプラスチック材料を含む。不織布製品としては、例えば、上記の吸収性物品の他に、医療用ガウン、医療用キャップ、マスク、ワイプスが挙げられる。なお、不織布製品は、少なくとも製品中に不織布を50質量%以上含むものとする。
【0022】
まず、吸収性物品の構成例について説明する。吸収性物品は、表面シートと、裏面シートと、表面シートと裏面シートとの間に配置された吸収体とを備える。吸収性物品の大きさの一例としては長さ約15~100cm、幅5~100cmが挙げられる。なお、吸収性物品は、一般的な吸収性物品が備える他の部材、例えば拡散シート、防漏壁、サイドシート、外装シートなどを更に含んでもよい。
【0023】
表面シートの構成部材としては、例えば液透過性の不織布、液透過孔を有する合成樹脂フィルム、これらの複合シート等が挙げられる。裏面シートの構成部材としては、例えば液不透過性の不織布、液不透過性の合成樹脂フィルム、これらの複合シートが挙げられる。拡散シートの構成部材としては、例えば液透過性の不織布が挙げられる。防漏壁やサイドシートの構成部材としては、例えば撥水性の不織布が挙げられ、防漏壁はゴムのような弾性部材を含んでもよい。外装シートの構成部材としては、例えば液不透過性かつ通気性の不織布、液不透過性かつ通気性の合成樹脂フィルム、これらの複合シートが挙げられる。不織布の種類としては、特に制限はなく、例えばメルトブローン不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布、エアスルー不織布などが挙げられる。また、合成樹脂フィルムの種類としては、特に制限はなく、公知のフィルム材料を用いることができる。ここで、不織布や合成樹脂フィルムの材料としては、吸収性物品用として使用可能であれば特に制限はないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンタレフタレート(PET)、ポリブチレンテレタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂等が挙げられる。これらの不織布や合成樹脂フィルムの材料は、合成樹脂であり、プラスチック材料ということができる。本実施形態では、裏面シートの構成部材をフィルムとし、表面シートの構成部材を不織布とする吸収性物品を例にして説明する。
【0024】
吸収体の構成部材としては吸収体材料、すなわちパルプ繊維及び高吸水性ポリマーが挙げられる。パルプ繊維としては、例えば、セルロース系繊維が挙げられる。セルロース系繊維としては、例えば木材パルプ、架橋パルプ、非木材パルプ、再生セルロース、半合成セルロース等が挙げられる。パルプ繊維の大きさとしては、繊維の長径の平均値が例えば数十μmが挙げられ、20~40μmが好ましく、繊維長の平均値が例えば数mmが挙げられ、2~5mmが好ましい。高吸収性ポリマー(SuperAbsorbent Polymer:SAP)としては、例えばポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系の吸水性ポリマーが挙げられる。高吸水性ポリマーの大きさ(乾燥時)としては、粒径の平均値が例えば数百μmが挙げられ、200~500μmが好ましい。吸収体は液透過性シートで形成されたコアラップを含んでもよい。
【0025】
吸収体の一方の面及び他方の面は、それぞれ表面シート及び裏面シートに接着剤を介して接合されている。平面視で、表面シートのうちの、吸収体を囲むように、吸収体の外側に延出した部分(周縁部分)は、裏面シートのうちの、吸収体を囲むように、吸収体の外側に延出した部分(周縁部分)と接着剤を介して接合されている。したがって、吸収体は表面シートと裏面シートとの接合体の内部に包み込まれている。接着剤としては、特に制限はないが、例えばホットメルト型接着剤が挙げられる。ホットメルト型接着剤としては、例えばスチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-イソプレン-スチレン等のゴム系主体、又はポリエチレン等のオレフィン系主体の感圧型接着剤又は感熱型接着剤が挙げられる。
【0026】
また、医療用ガウン、医療用キャップ、マスク、ワイプスの構成例は次のとおりである。医療用ガウンは、不織布を含むものであれば特に制限はないが、例えば、着用者の身体を覆うように不織布で形成された身頃部と、着用者の両腕を覆うように不織布で形成された袖部と、身頃部を着用者の身体に固定する不織布等で形成された紐部を備えている。また、医療用キャップは、不織布を含むものであれば特に制限はないが、例えば、着用者の頭部を覆うように不織布で形成されたクラウン部を備えており、クラウン部を頭部に固定するように不織布等で形成された顎紐部を更に備えてもよい。また、マスクは、不織布を含むものであれば特に制限はないが、例えば、着用者の少なくとも鼻及び口を覆うように不織布で形成されたマスク本体部と、マスク本体部を着用者の顔の前面に固定するように不織布等で形成された一対の耳掛け部とを備えている。ワイプスは、一層又は複数層の不織布で形成されたシートを備えている。これらの製品で使用される不織布(及び合成樹脂フィルム)は、上述された不織布(及び合成樹脂フィルム)のいずれかを使用することができる。
【0027】
次に、実施形態に係る使用済み吸収性物品を含む使用済み不織布製品からプラスチック材料を回収する方法について、具体的に説明する。本実施形態では、不織布製品の例として、吸収性物品(例示:使い捨ておむつ)を取り上げて説明する。
【0028】
図1は、実施形態に係る使用済み吸収性物品を含む使用済み不織布製品からプラスチック材料を回収する方法を示すフローチャートである。本方法は、使用済み不織布製品からプラスチック材料を回収する工程として、一次分離工程S2と、二次分離工程S3と、を備えており、本実施形態では破砕工程S1と脱水・乾燥工程S4とを更に備えている。なお、本実施形態では本方法に関連して、除塵工程S5~パルプ繊維分離工程S8を更に備えている。以下、各工程について説明する。
【0029】
本実施形態では、使用済みの吸収性物品(不織布製品)を、再利用(リサイクル)のために外部から回収等して用いる。その際、複数の使用済みの吸収性物品を収集袋に封入することで、排泄物や菌類や臭気が外部に漏れることを抑制している。収集袋内の個々の使用済みの吸収性物品は、例えば、排泄物や菌類が表側に露出せず、臭気が周囲に拡散しないよう排泄物が排泄される表面シートを内側に、主に丸められた状態や折り畳まれた状態で回収等される。なお、使用済みの吸収性物品は、収集袋に封入されなくても、丸められなくてもよい。
【0030】
破砕工程S1は、不活化水溶液中の使用済み吸収性物品(不織布製品)を破砕する工程である。本実施形態では、破砕工程S1において、使用済み吸収性物品を封入した収集袋が、不活化水溶液である酸性水溶液を溜めた溶液槽に供給される。収集袋を含む酸性水溶液は、溶液槽から二軸破砕機(例示:二軸回転式破砕機、二軸差動式破砕機、二軸せん断式破砕機)へ送出される。収集袋は、二軸破砕機により、収集袋ごと破砕される。それにより、収集袋内の使用済み吸収性物品が、収集袋ごと酸性水溶液中で破砕されて、破砕物が生成される。破砕物は単独で又は酸性水溶液と共に、一次分離工程S2へ送られる。
【0031】
ここで、破砕工程S1では、破砕物の大きさが概ね25~150mmとなるように、使用済み吸収性物品が破砕されることが好ましい。25mm以上にすると、パルプ繊維及び高吸水性ポリマー以外の他の資材(例示:フィルム、不織布、弾性体など)が大きく切断されて、後続の工程でそれら資材とパルプ繊維及び高吸水性ポリマーとを分離し易くなる。150mm以下にすると、使用済みの吸収性物品の各資材同士が絡み難くなる。150mm超にすると、各資材同士が絡み易くなり、絡むと離解し難くなる。
【0032】
使用済み吸収性物品を不活化水溶液中で処理すると、使用済み吸収性物品に含まれる又は含まれていた高吸水性ポリマーは、不活化し、脱水して、小粒径になる。そのため、後続の工程において高吸水性ポリマーの取り扱いが容易になり、処理の効率が向上する。不活化水溶液として酸性水溶液、すなわち無機酸及び有機酸の水溶液を用いるのは、石灰や塩化カルシウムなどの水溶液と比較して、プラスチック材料やパルプ繊維に灰分が残留しないからであり、不活化の程度(粒径や比重の大きさ)をpHで調整し易いからでもある。酸性水溶液のpHとしては1.0~4.0が好ましい。pHを1.0以上にすると、設備が腐食し難く、排水処理時の中和処理に必要なアルカリ薬品も低減できる。pHを4.0以下にすると、高吸水性ポリマーを十分に小さくでき、殺菌能力も高められる。有機酸としては、例えばクエン酸、酒石酸、グリコール酸、リンゴ酸、コハク酸、酢酸、アスコルビン酸、等が挙げられ、クエン酸が好ましい。クエン酸のキレート効果により、排泄物中の金属イオン等がトラップされ除去可能であり、かつクエン酸の洗浄効果で、高い汚れ成分除去効果が期待できる。一方、無機酸としては、例えば硫酸、塩酸、硝酸が挙げられるが、塩素を含まないことやコスト等の観点から硫酸が好ましい。pHは水温により変化するため、本発明におけるpHは、水溶液温度20℃で測定したpHをいうものとする。有機酸水溶液の有機酸濃度は、特に限定されないが、有機酸がクエン酸の場合は、0.5質量%以上4質量%以下が好ましい。無機酸水溶液の無機酸濃度は、特に限定されないが、無機酸が硫酸の場合は、0.1質量%以上0.5質量%以下が好ましい。本実施形態では、不活化水溶液として、有機酸のクエン酸を用いている。
【0033】
なお、二軸破砕機へ投入される使用済み吸収性物品は、収集袋に入っていなくてもよい。また、使用済み吸収性物品を封入した収集袋又は収集袋に入っていない使用済み吸収性物品は、溶液槽を経由せずに、二軸破砕機へ投入されてもよい。また、二軸破砕機での破砕は、不活化水溶液中で行わなくてもよく、例えば空気中で行ってもよい。その場合、後続の工程である一次分離工程S2を、不活化水溶液中で行う。
【0034】
なお、不活化水溶液の温度を高くすることで(温度:70~95℃)、使用済み吸収性物品の構成部材間の接合に使用されている接着剤(例示:ホットメルト接着剤)を軟化させ、接着剤の接合力を低下できる。それにより、自然に又は小さな衝撃で構成部材同士を容易に離解させることができる。また、使用済み吸収性物品を殺菌(消毒)することも可能となる。
【0035】
このように、破砕工程S1では、使用済み吸収性物品における各構成部材が、概ね所定の大きさに破砕される。また、破砕時に生じる熱及び/又は不活化水溶液の熱により、各構成部材同士の接着剤の接合力が低下する場合、各構成部材が互いに容易に離間する。
【0036】
次いで、一次分離工程S2は、不活化水溶液中で、使用済み吸収性物品(不織布製品)を分解して得られるプラスチック材料、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物から、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維を分離する工程である。本実施形態では、一次分離工程S2において、破砕工程S1で生成された破砕物と不活化水溶液である酸性水溶液との混合物が、パルパー分離機(一次分離装置)に供給される。パルパー分離機は、洗浄槽及びふるい槽として機能する撹拌分離槽を有している。パルパー分離機において、破砕物と酸性水溶液との混合物は、撹拌されて、破砕物から汚れを除去する洗浄を施されつつ、スクリーンにより、パルプ繊維、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液を分離(除去)される。すなわち、パルプ繊維、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液は、スクリーンを通過して混合物から分離されて、パルパー分離機から送出される。一方、残った混合物、すなわち他の資材(収集袋、フィルム、不織布など)は、スクリーンを通過できずパルパー分離機内に残存する。その後、他の資材は、スクリューコンベアで単位時間当たり定量ずつ二次分離工程S3へ送出される。なお、他の資材の一部は、スクリーンを通過し得る。
【0037】
ただし、パルプ繊維、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液の一部は、混合物に残存し得る。また、混合物の他の資材である収集袋、フィルム、不織布などは、合成樹脂製であり、プラスチック材料ということができる。したがって、一次分離工程S2において、混合物である、プラスチック材料並びに少量の残存物(パルプ繊維、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液)がスクリーン上の残留物となり、混合物から分離されたパルプ繊維、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液がスクリーンを通過した通過物となる。
【0038】
本実施形態では、一次分離工程S2は、並列接続された二台の一次分離装置のうちの一方で実施される。例えば、二台のパルパー分離機を並列接続し、一方のパルパー分離機を稼働し、そのパルパー分離機にメンテナンス等が必要になった場合には、そのパルパー分離機を停止し、他方のパルパー分離機を稼働させる。それにより、連続的に、一次分離工程S2を実施できる。なお、一次分離装置は、三台以上並列接続されてもよい。
【0039】
本実施形態では、一次分離工程S2において、酸性水溶液のpHが所定の範囲内に維持されるように調整されている。pHの所定の範囲とは、pHの変動が±1.0以内の範囲とする。それにより、高吸水性ポリマーの比重さ及び大きさと、パルプ繊維の比重及び大きさとの相違が、所定の範囲内になるようにできる。この場合、相違が所定の範囲内とは、例えば一方が他方の0.2~5倍の範囲内とする。それにより、パルプ繊維と高吸水性ポリマーとの相違は、比重が所定の範囲内であり、かつ、大きさが所定の範囲内である。その結果、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを、使用済み吸収性物品の資材のうちのパルプ繊維及び高吸水性ポリマーを除いた他の資材(主にプラスチック材料)と、大きさや比重の相違を利用して容易に分離できる。pHの調整は、pHセンサで測定されるpHの値に基づいて、酸性の水溶液やアルカリ性の水溶液を用いて行うことができる。なお、二次分離工程S3においても、一次分離工程S2と同様にpHが調整されてもよい。
【0040】
また、破砕工程S1において、不活化水溶液(酸性水溶液)を用いる場合には、一次分離工程S2と同様に、酸性水溶液のpHが調整されてもよい。
【0041】
次いで、二次分離工程S3は、空気中で、混合物に酸化剤水溶液を散布しつつ、物理的衝撃を加えることで、一次分離工程で分離されずに残存していた高吸水性ポリマー及びパルプ繊維をプラスチック材料から分離することで、プラスチック材料を回収する。
【0042】
本実施形態では、二次分離工程S3において、一次分離工程S2でパルプ繊維や高吸水性ポリマー等を分離された混合物(残留物:プラスチック材料及び残存物)が、分離装置に供給される。その分離装置は、横倒しに設置された円筒部と、円筒部内に設けられた複数の羽根車と、円筒部の上側の外周面に設けられた複数の酸化剤水溶液供給部と、円筒部の下側の外周面に設けられたスクリーン(ふるい)と、を備える。円筒部の一端側に混合物の供給口があり、他端側に排出口がある。複数の羽根車は、円筒部の軸を中心にして回転しつつ、円筒部の一端側から他端側へ空気の流れが生じるように、円筒部の軸方向に沿って配置されている。複数の酸化剤水溶液供給部は、軸方向に沿って並んでいる。スクリーン(ふるい)の個々の開口の大きさは、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーが通過可能な大きさで、かつプラスチック材料が通過困難な大きさである。
【0043】
そして、混合物は、円筒部内の空気中で、酸化剤水溶液供給部から酸化剤水溶液を散布されつつ、円筒部内で回転する羽根車の羽で攪拌され、羽根車の羽の衝突により物理的衝撃を加えられつつ、円筒部の一端側から他端側へ移動する。その間に、混合物は、空気中を移動(流動)しながら、散布される酸化剤水溶液により、汚れを除去する洗浄(殺菌や漂白を含む)を施される。それと共に、混合物中のパルプ繊維や高吸水性ポリマーなどは、物理的衝撃や酸化剤による高吸水性ポリマーの酸化分解などにより、混合物中のプラスチック材料から取り除かれ、円筒部の下側のスクリーンを通過して酸化剤水溶液と共に分離(除去)される。一方、パルプ繊維や高吸水性ポリマーなどを除去された混合物中のプラスチック材料は、スクリーンを通過せずに、円筒部の他端側の排出口から排出される。すなわち、一次分離工程S2で分離されずに残存していた高吸水性ポリマー及びパルプ繊維がプラスチック材料から分離されて、不純物の抑制されたプラスチック材料が生成されて、回収される。なお、二次分離工程S3は空気中で行われるので、プラスチック材料の脱水が進む。また、分離された酸化剤水溶液を酸化剤処理工程S7(後述)で再利用してもよい。
【0044】
ここで、酸化剤水溶液は、酸化剤を含む水溶液である。酸化剤としては、オゾン、二酸化塩素、過酢酸、次亜塩素酸ナトリウム及び過酸化水素のうちの少なくとも一つを含んでいる。本実施形態では、酸化力や殺菌力や漂白力の観点から酸化剤としてオゾンを用いている。その場合、酸化剤水溶液は、酸性であることが好ましい。その理由は、オゾンの失活の抑制の観点や、高吸水性ポリマーの不活化の維持の観点である。更に、破砕工程S1や一次分離工程S2で不活化水溶液としてクエン酸水溶液のような酸性水溶液を用いている場合には、各工程の連続性の観点や、水溶液を無駄なく流用できる観でもある。なお、本方法で最終的に得られるプラスチック材料の用途が、塩素の残留を嫌う用途の場合には、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを使用しない。また、二次分離工程S3において分離された酸化剤水溶液を酸化剤処理工程S7(後述)で再利用する場合、パルプ繊維や高吸水性ポリマーを衛生材用途に使用する場合には、パルプ繊維での塩素の残留を抑制するために、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを使用しない。
【0045】
酸化剤水溶液中のオゾン濃度としては、所望の機能、すなわち酸化力や殺菌力や漂白力を実現できる濃度であれば特に限定されないが、例えば0.2~10質量ppmが挙げられ、0.5~5質量ppmが好ましい。濃度が低過ぎないことで、所望の機能を発揮でき、濃度が高過ぎないことで、機器の腐食を抑えられる。酸化剤水溶液での処理時間は、所望の機能を発揮できる時間であれば、特に限定されないが、酸化剤水溶液中のオゾン濃度が高ければ短く、オゾン濃度が低ければ長くし、典型的には1~10分である。酸化剤水溶液中のオゾン濃度(ppm)と処理工程の処理時間(分)の積(以下、「CT値」ともいう。)としては、例えば0.5~10ppm・分が挙げられ、1~5ppm・分が好ましい。CT値が小さ過ぎないことで、所望の機能を発揮でき、CT値が大き過ぎないことで、機器の腐食を抑えられる。なお、酸化剤水溶液としては、後述される酸化剤処理工程S7で使用された酸化剤水溶液を、濃度を下げて本工程で再利用してもよい。
【0046】
殺菌又は除菌に関し、例えば、使用済み紙おむつには10億個/ml以上の一般細菌が存在しているが、一次分離工程S2までの酸性水溶液では、殺菌し切れるとはいえない。そのため、一次分離工程S2で分離されたプラスチック材料(パルプ繊維や高吸水性ポリマーが少量付着)には、ある程度の一般細菌が存在する(例示:一般細菌3,400個/ml)。酸化剤水溶液を用いずに二次分離工程S3を実行する場合も同様である。そうなると、作業者の安全性への悪影響や取り出したプラスチック材料の腐敗・カビの発生などへの懸念が生じ得る。また、一般細菌が原因と思われる強い排泄物臭も存在する。しかし、酸化剤水溶液を用いた二次分離工程S3を実行することにより、プラスチック材料の一般細菌を、大腸菌同様に、検出限界以下に取り除くことができ、排泄物臭も殆どわからない程度まで低減することができる。
【0047】
次いで、脱水・乾燥工程S4を行ってもよい。脱水・乾燥工程S4は、分離されたプラスチック材料を脱水及び/又は乾燥する工程である。本実施形態では、恒温槽における高温の雰囲気又は熱風などでプラスチック材料を乾燥する工程を行う。乾燥温度としては、例えば80~120℃が挙げられる。乾燥時間は、乾燥温度にもよるが、例えば10~120分が挙げられ、15~100分好ましい。それにより、プラスチック材料に残存する水分を蒸発させて除去するだけでなく、プラスチック材料を殺菌できる。それにより、水分を除去しつつ、殺菌(消毒)の効果を奏することも可能となる。
【0048】
このように、本方法では、主に二次分離工程S3により、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維がプラスチック材料からより多く分離、除去されるので、不純物の低減されたプラスチック材料を回収することができる。そのプラスチック材料に含まれる不純物のうち、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーの割合は5質量%以下であり、好ましくは3質量%以下であり、灰分の割合は10質量%未満であり、好ましくは5質量%であり、より好ましくは3質量%以下である。更に、酸化剤による殺菌が行われるので、菌がほとんど存在しない。このような低不純物のプラスチック材料は、その再利用の用途を、様々な用途に広げることが可能となる。そのような用途としては、例えば使用済みのプラスチック材料を熱又は触媒を使用して分解し、液状生成物を製造する技術である油化が挙げられる。
【0049】
本方法では、まず、一次分離工程S2で、不活化水溶液(例示:酸性水溶液)で高吸水性ポリマーを不活化し脱水させ、膨潤を抑えつつ、プラスチック材料(フィルム、不織布等)、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維の混合物から、大部分の高吸水性ポリマー及びパルプ繊維を分離する。そして、二次分離工程S3で、空気中で、混合物に酸化剤水溶液(例示:オゾン水溶液)を散布しつつ物理的衝撃を与えながら、残存する高吸水性ポリマー及びパルプ繊維をプラスチック材料から分離することで、プラスチック材料を回収する。
このように、二次分離工程S3において、混合物に酸化剤水溶液を散布しているので、混合物に残存する高吸水性ポリマーの表面の少なくとも一部を酸化分解して可溶化することができる。それゆえ、プラスチック材料に付着した高吸水性ポリマーや、高吸水性ポリマーを介して付着したパルプ繊維を、プラスチック材料から除去し易くすることができる。それと共に、混合物を、酸化剤水溶液で洗浄して、殺菌、消毒、消臭を行うことができる。また、水(溶液)中ではなく、空気中で、混合物に物理的衝撃を与えているので、その物理的衝撃をプラスチック材料や高吸水性ポリマーやパルプ繊維に直接的に加えることができる。それゆえ、プラスチック材料に付着した高吸水性ポリマーやパルプ繊維を、プラスチック材料から取り除き易くすることができる。したがって、これらの相乗効果により、混合物(プラスチック材料)から高吸水性ポリマー及びパルプ繊維を容易に分離することができ、得られるプラスチック材料の不純物を抑制することができる。よって、そのプラスチック材料の再利用の用途を広げることが可能となる。
【0050】
本方法では、好ましい態様として、酸化剤水溶液が、オゾン、二酸化塩素、過酢酸、次亜塩素酸ナトリウム及び過酸化水素のうちの少なくとも一つを含む水溶液である。そのため、混合物に残存する高吸水性ポリマーの表面をより適切に分解して、混合物に残存する高吸水性ポリマー及び高吸水性ポリマーが付着したパルプ繊維を、プラスチック材料からより除去し易くできる。それと共に、混合物を、より適切に殺菌、消毒、消臭できる。特に、オゾンがそれらの効果が高く好ましい。
【0051】
本法では、好ましい態様として、一次分離工程S2の前に、不活化水溶液中の使用済み不織布製品を所定の大きさに破砕し、それにより、プラスチック材料、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維を所定の大きさに破砕する(破砕工程S1)。すなわち、不活化水溶液で高吸水性ポリマーを不活化し脱水させ、膨潤を抑えつつ、プラスチック材料、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維を、一次分離工程や二次分離工程において分離し易い大きさにすることができる。したがって、混合物(プラスチック材料)から高吸水性ポリマー及びパルプ繊維をより容易に分離することができる。
【0052】
本方法では、好ましい態様として、一次分離工程S2において、不活化水溶液が酸性水溶液であり、酸性水溶液のpHが所定の範囲内に維持されつつ、混合物から、高吸水性ポリマー及びパルプ繊維が分離されている。そのため、一次分離工程で、不活化水溶液で高吸水性ポリマーをより確実に、不活化し脱水させ、膨潤を抑えつつ、混合物から、大部分の高吸水性ポリマー及びパルプ繊維を分離できる。それにより、二次分離工程で分離の対象となる高吸水性ポリマー及びパルプ繊維を低減でき、混合物(プラスチック材料)から高吸水性ポリマー及びパルプ繊維をより容易に分離することができる。
【0053】
本方法では、好ましい態様として、物理的衝撃が、空気中で混合物を攪拌する羽根車における回転する羽の衝突により混合物に加えられる。それにより、空気中で、より確実に、混合物に物理的衝撃を加えることができる。それゆえ、混合物に残存する高吸水性ポリマー及び高吸水性ポリマーが付着したパルプ繊維を、プラスチック材料からより取り除き易くすることができる。
【0054】
一次分離工程S2を実施する一次分離装置は、最初の分離であるため、分離対象の資材が詰まるなどの状況が生じやすい。そこで、本方法では、好ましい態様として、一次分離工程S2が並列接続された二台の一次分離装置のうちの一方で実施される。それにより、例えば、稼働中の一方の一次分離装置にメンテナンスが必要な場合、その一方の一次分離装置を停止させつつ、他方の一次分離装置を稼働させることで、本方法を一時停止させることなく連続的に実行することができる。それゆえ、不純物の少ないプラスチック材料を効率的に回収できる。
【0055】
本方法は、好ましい態様として、使い捨ておむつのような使用済み吸収性物品の他に、不織布を資材として有する医療用ガウン、医療用キャップ、及びマスクの少なくとも一つを使用済み不織布製品として含む場合にも適用が可能である。その場合にも、得られるプラスチック材料の不純物を抑制することができ、プラスチック材料の再利用の用途を広げることが可能となる。
【0056】
本方法では、好ましい態様として、二次分離工程S3で回収されるプラスチック材料は、油化用とすることができる。すなわち、本方法で得られるプラスチック材料は、不純物が抑制されたプラスチック材料であるため、その再利用の用途を油化(使用済みのプラスチック材料を熱又は触媒を使用して分解し、液状生成物を製造する技術)に広げることが可能となる。
【0057】
本プラスチック材料は、使用済み吸収性物品を含む使用済み不織布製品由来のプラスチック材料であるにもかかわらず、プラスチック材料に含まれるパルプ繊維及び高吸水性ポリマーの割合が5質量%以下であり、プラスチック材料に含まれる灰分の割合が10質量%未満である。すなわち、本プラスチック材料は、不純物が抑制されたプラスチック材料であるため、その再利用の用途を、様々な用途(例示:油化)に広げることができる。
【0058】
また、本実施形態では、図1に示すように、本方法は、使用済み不織布製品からパルプ繊維と高吸水性ポリマー(SuperAbsorbent Polymer:SAP)とを別々に回収する工程として、除塵工程S5とSAP分離工程S6と酸化剤処理工程S7とパルプ繊維分離工程S8とを更に備えている。
【0059】
本実施形態では、一次分離工程S2で分離されたパルプ繊維、高吸水性ポリマー、排泄物及び酸性水溶液を含む混合液は、除塵工程S5で処理される。なお、二次分離工程S3で分離されたパルプ繊維及び高吸水性ポリマーなども、上記混合液に混合されて、除塵工程S5で処理されてもよい。
【0060】
除塵工程S5は、少なくとも一台の分離機(例示:スクリーン分離機、サイクロン分離機)により、一次分離工程S2(及び二次分離工程S3)から供給された上記の混合液から、他の資材(収集袋、フィルム、不織布、弾性体など)などの異物を分離する。本実施形態では、除塵工程S5において、スクリーン分離機(目開きが相対的に大)、スクリーン分離機(目開きが相対的に小)及びサイクロン分離機がこの順に配置され、混合液から異物が順次分離される。それにより、異物の少ないパルプ繊維及び高吸水性ポリマーが得られる。異物の少ないパルプ繊維及び高吸水性ポリマーと酸性水溶液(排泄物を含む)との混合液は、SAP分離工程S6へ供給される。
【0061】
SAP分離工程S6は、少なくとも一台の分離機(例示:ドラムスクリーン分離機)により、除塵工程S5から供給された混合液(異物の少ないパルプ繊維及び高吸水性ポリマーを含む)から、高吸水性ポリマーを分離する。本実施形態では、SAP分離工程S6において、ドラムスクリーン分離機により、混合液から高吸水性ポリマー及び酸性水溶液(排泄物を含む)が分離される。それにより、異物の少ない高吸水性ポリマー及び酸性水溶液が得られる。高吸水性ポリマーは、他の分離機(例示:傾斜スクリーン分離機)により、酸性水溶液(液体)から分離されて、取り出される。一方、異物の少ないパルプ繊維(ただし少量の高吸水性ポリマーを含む)は、酸化剤処理工程S7へ供給される。
【0062】
酸化剤処理工程S7は、酸化剤水溶液により、SAP分離工程S6から供給された異物の少ないパルプ繊維(ただし、少量の高吸水性ポリマーを含む)中の高吸水性ポリマーを酸化分解し、可溶化して、パルプ繊維から除去する。本実施形態では、酸化剤処理工程S7において、酸化剤としてオゾンを含む酸化剤水溶液を貯留する処理槽に、パルプ繊維が投入され、パルプ繊維中の高吸水性ポリマーが酸化分解され、可溶化されて、不純物のきわめて少ないパルプ繊維が得られる。不純物(高吸水性ポリマーを含む)の少ないパルプ繊維は、酸化剤水溶液と共にパルプ繊維分離工程S8へ供給される。
【0063】
酸化剤処理工程S7における酸化剤の種類については、二次分離工程S3の酸化剤と同様である。本実施形態では、酸化力や殺菌力や漂白力の観点から酸化剤としてオゾンを用いている。酸化剤水溶液中のオゾン濃度は、高吸水性ポリマーを分解することができる濃度であれば、特に限定されないが、例えば10~50質量ppmが挙げられる。濃度が低過ぎないことで、高吸水性ポリマーを完全に可溶化でき、濃度が高過ぎないことで、パルプ繊維に損傷を与えることはない。酸化剤水溶液での処理時間は、高吸水性ポリマーを分解することができる時間であれば、特に限定されないが、酸化剤水溶液中のオゾン濃度が高ければ短く、オゾン濃度が低ければ長くし、典型的には5~120分である。酸化剤水溶液中のオゾン濃度(ppm)と処理工程の処理時間(分)の積(以下「CT値」ともいう。)は、好ましくは100~6000ppm・分である。CT値が小さすぎると、高吸水性ポリマーを完全に可溶化できずパルプ繊維に高吸水性ポリマーが残留するおそれがあり、CT値が大きすぎると、パルプ繊維に損傷を与えるおそれがある
【0064】
パルプ繊維分離工程S8は、分離機(例示:スクリーン分離機)により、酸化剤処理工程S7から供給されたパルプ繊維及び酸化剤水溶液から、パルプ繊維を分離する。このようにして分離、回収されたパルプ繊維は、いわゆるリサイクルパルプ繊維となる。リサイクルパルプ繊維は洗浄水で洗浄されて取り出される。
【実施例0065】
以下、実施例に基づき、本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【0066】
(1)試料
未使用の使用済みの使い捨ておむつを原料とし、図1に示される方法を実行して、一次分離工程S2終了後、及び、二次分離工程S3終了後のそれぞれにおいて、プラスチック材料を回収した。ただし、二次分離工程S3におけるオゾン濃度及び処理時間(CT値)は、1ppm×2分(2ppm・分)とした。
【0067】
(2)評価方法
一次分離工程S2、及び、二次分離工程S3(オゾンを用いない場合を含む)のそれぞれについて、プラスチックに付着し残留するパルプ繊維残留量(質量%)、プラスチックに付着し残留する高吸水性ポリマー残留量(質量%)、灰分の残留量(質量%)を評価した。
ただし、それぞれの算出方法は、以下のとおりである。
(a)パルプ繊維残留量(質量%)、高吸水性ポリマー残留量(質量%)
<一次分離工程後の残留量測定方法>
一次分離工程にて、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーを分離後のプラスチック材料を乾燥(120℃×60分)し、約1kg秤量して(測定値A)、試料α1とする。次いで、試料α1を、固形物濃度1%の水溶液に調整し、撹拌しながらオゾンガスを吹込み、オゾン処理を行う。ただし、水溶液中のオゾン濃度及び処理時間を50ppm×30分(CT値1500)とする(高吸水性ポリマーが分解、可溶化され除去される)。次いで、オゾン水溶液を固液分離して得られた試料α2を乾燥(120℃×60分)し、秤量する(測定値A’)。その結果、|A’-A|が残留していた高吸水性ポリマーの残留質量Dとなる。一方、試料α2をトルエンに浸漬し、接着剤(HMA)を溶解し、パルプ繊維とプラスチック材料とに分離する。次いで、パルプ繊維をドラフト内で風乾(60分)後、秤量した結果が、パルプ繊維の残留質量Cとなる。プラスチック材料そのものの質量Bは、A-D-Cにて算出される。
したがって、
プラスチック材料(質量%)=B/A×100
パルプ繊維(質量%)=C/A×100
高吸水性ポリマー(質量%)=D/A×100;
<二次分離工程後の残留量測定方法>
二次分離工程後後の残留量も一次分離工程後の残留量測定方法と同様である。
(b)灰分の残留量(質量%)
灰分は、有機質が灰化されてあとに残った無機質又は不燃性残留物の量を意味し、灰分の残留量(質量%)、すなわち灰分率は、測定すべき試料に含まれる灰分の比率(質量比)を意味する。上記灰分率は、生理処理用品材料規格の「2.一般試験法」の「5.灰分試験法」に従って測定する。具体的には、灰分率は、以下の通り測定される。
(i)あらかじめ白金製、石英製又は磁製のるつぼ(蓋付き)を、500~550℃で1時間強熱し、放冷後、その質量を精密に量る。
(ii)120℃で60分乾燥したプラスチック材料2~4gを採取し、るつぼに入れ、その質量を精密に量る。
(iii)るつぼを、必要ならば蓋をとるか、又はずらして、初めは弱く加熱し、徐々に温度を上げて500~550℃で4時間以上強熱して、炭化物が残らなくなるまで灰化する。
(iv)放冷後、るつぼの質量を精密に量る。再び残留物を恒量になるまで灰化し、放冷後、るつぼの質量を精密に量る。それら(1)、(2)、(4)の測定値に基づいて、灰分率(質量%)を算出する。
【0068】
(3)評価結果
一次分離工程S2後にプラスチック材料として分離されるもののうち、パルプ繊維の割合(残留量)は約25質量%であり、高吸水性ポリマーの割合(残留量)は約10質量%であり、5質量%超であった。灰分の割合(残留量)は、12.3質量%であり10質量%超であった。
二次分離工程S3後にプラスチック材料として分離されるもののうち、パルプ繊維の割合は約3質量%であり、高吸水性ポリマーの割合は約1質量%であり、5質量%以下であった。灰分の割合は約7質量%であり10質量%以下であった。
したがって、二次分離工程S3を追加することで、プラスチック材料に含まれるパルプ繊維、高吸水性ポリマー及び灰分、すなわち不純物を著しく低減できた。
【0069】
本発明の吸収性物品は、上述した各実施形態に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組合せや変更等が可能である。
【符号の説明】
【0070】
S2 一次分離工程
S3 二次分離工程
図1