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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163620
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20241115BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N30/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079391
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シュピンドラー 慧敏
(72)【発明者】
【氏名】秋枝 大介
(72)【発明者】
【氏名】西木 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雄一郎
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058DA07
2G058GA14
(57)【要約】
【課題】気泡による測定結果の影響を抑えつつ、小型化および低コスト化が可能な自動分析装置を提供する。
【解決手段】本発明の自動分析装置は、液体を移送する送液ポンプと、前記送液ポンプの上流側にあって前記液体に含まれる気泡を捕捉する気泡トラップと、を備え、前記気泡トラップは、前記液体を移送する第1流路と、前記第1流路に接続され、前記第1流路より断面積の大きい肥大部と、前記肥大部から前記液体を排出する第2流路と、を備え、前記肥大部は、内部を上流側と下流側に区画する隔壁を少なくとも1つ有し、前記隔壁に開口が形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を移送する送液ポンプと、前記送液ポンプの上流側にあって前記液体に含まれる気泡を捕捉する気泡トラップと、を備え、
前記気泡トラップは、
前記液体を移送する第1流路と、
前記第1流路に接続され、前記第1流路より断面積の大きい肥大部と、
前記肥大部から前記液体を排出する第2流路と、を備え、
前記肥大部は、内部を上流側と下流側に区画する隔壁を少なくとも1つ有し、
前記隔壁に開口が形成されている、自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記肥大部は、上流側の第1隔壁と、下流側の第2隔壁と、を有し、
前記第1隔壁に形成される前記開口は、前記第2隔壁に形成される前記開口より大きい、自動分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載の自動分析装置において、
少なくとも1つの前記隔壁に形成される前記開口の中心軸は、前記第1流路の中心軸と、ずれた位置にある、自動分析装置。
【請求項4】
請求項1に記載の自動分析装置において、
少なくとも1つの前記隔壁に形成される前記開口の上流側は、前記第1流路に向けて突出する形状を有する、自動分析装置。
【請求項5】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記気泡トラップの上流側に、前記液体から溶存気体を除去する脱気装置を備える、自動分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記気泡トラップと前記送液ポンプの間に、前記液体から溶存気体を除去する脱気装置を備える、自動分析装置。
【請求項7】
請求項6に記載の自動分析装置において、
前記気泡トラップは、前記肥大部の内部に超音波を照射する超音波照射機構をさらに備える、自動分析装置。
【請求項8】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記肥大部と前記第2流路の下流側とを接続し、前記肥大部で捕捉された気泡を排出する第3流路と、
前記第2流路から排出される前記液体の流れと、前記第3流路から排出される前記気泡の流れと、を切り替える切替弁と、をさらに備える、自動分析装置。
【請求項9】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記肥大部を構成する壁の少なくとも一部が脱気膜で形成され、
前記脱気膜が減圧下に曝されている、自動分析装置。
【請求項10】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記肥大部の断面積は、0.01mm2以上2000mm2以下である、自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料を定性・定量分析する自動分析装置には、液体クロマトグラフ(LC;Liquid Chromatograph)を用いたもの、生化学検査を行うもの、免疫検査を行うもの等がある。これらの自動分析装置では、試料等を導入するための媒体として液体が用いられる。用いられる液体は、水を含めた水系溶媒や有機溶媒等、自動分析装置の種類に応じて適宜選択される。
【0003】
このように、液体を移送する構成を有する自動分析装置において、液体内に気泡が混入していると、送液ポンプまたはその下流側の測定部(検出部)に気泡が流入して、測定結果に影響を与えてしまう場合がある。そのため、自動分析装置では、送液ポンプの上流側の流路に、液体内に含まれる気体を除去する機構を設けることが一般的に行われている。
例えば、特許文献1には、ポンプにより吸引される流路の途中に脱気装置を設置すること、脱気装置では中空糸膜の外側を負圧にすること、などが開示されている(段落0048-0049等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7195428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1などの自動分析装置で用いられる脱気装置は、チャンバー内を減圧するポンプや特殊な脱気膜が必要となるため、複雑で大型化し、自動分析装置の大型化やコストアップにつながる。
【0006】
本発明の目的は、気泡による測定結果の影響を抑えつつ、小型化および低コスト化が可能な自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題を解決するために、本発明の自動分析装置は、液体を移送する送液ポンプと、前記送液ポンプの上流側にあって前記液体に含まれる気泡を捕捉する気泡トラップと、を備え、前記気泡トラップは、前記液体を移送する第1流路と、前記第1流路に接続され、前記第1流路より断面積の大きい肥大部と、前記肥大部から前記液体を排出する第2流路と、を備え、前記肥大部は、内部を上流側と下流側に区画する隔壁を少なくとも1つ有し、前記隔壁に開口が形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、気泡による測定結果の影響を抑えつつ、小型化および低コスト化が可能な自動分析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1に係る液体クロマトグラフの概略構成図。
図2】実施例1に係る気泡トラップの基本的な構成図。
図3】実施例1に係る気泡トラップの変形例を示す構成図。
図4A】実施例1に係る気泡トラップの別の変形例であり、特に、各隔壁の開口が同軸上に配置された例を示す構成図。
図4B】実施例1に係る気泡トラップの別の変形例であり、特に、各隔壁の開口が異なる軸上に配置された例を示す構成図。
図5】実施例1に係る気泡トラップのさらに別の変形例を示す構成図。
図6】実施例2に係る自動分析装置の流路構成概略図。
図7】実施例3に係る自動分析装置の流路構成概略図。
図8】実施例3に係る気泡トラップの構成図。
図9】実施例4に係る気泡トラップの構成図。
図10】実施例5に係る気泡トラップの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【実施例0011】
以下、実施例1について、図1図5を参照して説明する。図1は、実施例1に係る液体クロマトグラフ100の概略構成図である。
【0012】
図1に示すように、液体クロマトグラフ100は、送液ポンプ104と、試料注入部105と、分離カラム106と、恒温部107と、検出部108と、を備える。送液ポンプ104は、移動相(液体)を移送する。試料注入部105は、送液ポンプ104の下流側に設置され、測定対象となる試料を分析流路に導入する。分離カラム106は、試料注入部105の下流側に接続され、移動相により運ばれた試料を各成分に分離する。恒温部107は、分離カラム106を収容して内部の温度を一定に維持するものであるが、省略されても良い。検出部108は、分離カラム106の下流側に接続され、分離カラム106により分離された試料に含まれる各成分を検出するものであり、例えば、紫外・可視吸光光度計、蛍光光度計、質量分析計などである。
【0013】
なお、送液ポンプ104から送出される移動相は、試料を運搬する役割だけでなく、分離カラム106に充填された固定相との親和性の差により料を各成分に分離する役割も担っている。移動相としては、超純水、有機溶媒、緩衝溶媒などが用いられ、オペレータが測定目的や試料の種類に応じて移動相の種類を選択する。
【0014】
また、液体クロマトグラフ100は、貯蔵ボトル102と、監視センサ109と、移動相供給ボトル101と、移動相供給ポンプ103と、をさらに備える。貯蔵ボトル102は、移動相を貯蔵する。監視センサ109は、貯蔵ボトル102内の移動相残量を検出する。移動相供給ボトル101は、貯蔵ボトル102に供給するための移動相を貯蔵する。移動相供給ポンプ103は、移動相供給簿折る101から貯蔵ボトル102へ移動相を供給する。移動相供給ボトル101および貯蔵ボトル102には、ボトル内の圧力を大気圧と均等とするための通気口110が設けられている。そして、通気口110の一方端は、移動相供給ボトル101内または貯蔵ボトル102内に配置され、通気口110の他方端は大気に開放されている。
【0015】
さらに、液体クロマトグラフ100は、制御部111と、気泡トラップ1と、を備える。制御部111は、移動相供給ポンプ103や送液ポンプ104などに接続され、これらの動作を制御するとともに、監視センサ109にも接続され、移動相の残量監視も行う。気泡トラップ1は、送液ポンプ104の上流側、すなわち、貯蔵ボトル102と送液ポンプ104の間に配置され、移動相に含まれる気泡を捕捉する。
【0016】
以下、気泡トラップ1の構成について、図2図5を用いて具体的に説明する。なお、本実施例では、気泡トラップ1を液体クロマトグラフに適用した例について説明するが、気泡トラップ1は、送液ポンプを用いて液体を移送する構成を有する他(例えば生化学検査用や免疫検査用)の自動分析装置にも適用できる。
【0017】
図2は、実施例1に係る気泡トラップの基本的な構成図である。図2に示すように、本実施例の気泡トラップは、液体を移送する第1流路11と、第1流路11に接続され、第1流路11より断面積の大きい肥大部10と、肥大部10から液体を排出する第2流路12と、を備える。さらに、肥大部10は、内部を上流側と下流側に区画する隔壁として、第1隔壁13および第2隔壁14を有し、各隔壁は、それぞれ開口13aおよび開口14aを有する。
【0018】
自動分析装置の稼働時、第1流路11に混入した気泡は、肥大部10の入口付近で圧力が急に下がるため、粒径がより大きな気泡へ成長する。肥大部10の(第1流路11から第2流路12へ向かう液体の流れに対して垂直方向で切断した)断面積は、0.01mm以上2000mm以下が望ましい。肥大部10に流入した気泡を含む液体は、隔壁の存在により、流れが阻害されるため、気泡が肥大部10内に滞留する。そして、大きい粒径の気泡は、隔壁により捕捉され、隔壁に形成された開口の穴径に対して同等以下の小さい粒径の気泡のみが、隔壁を通過する。
【0019】
なお、肥大部10の内部を区画する隔壁の枚数は2枚に限定されず、各隔壁は複数の開口を有しても構わない。また、隔壁は、第1流路11および第2流路12に対して垂直なものに限定されず、各流路に対して一定の傾斜を有していても良い。
【0020】
さらに、図2は、気泡トラップが水平方向に配置された状態を示しているが、気泡トラップの配置は水平方向に限定されない。例えば、気泡は浮力により上昇する特性があることを考慮して、気泡トラップを鉛直方向に配置、すなわち、第1流路11が上側で第2流路12が下側となる配置とし、流路下流側に気泡が流入することをさらに抑制しても良い。
【0021】
図3は、実施例1に係る気泡トラップの変形例を示す構成図である。図3に示すように、本変形例の気泡トラップでは、上流側の第1隔壁13が有する開口13bの穴径は、下流側の第2隔壁14が有する開口14bの穴径よりも大きい。例えば、開口14bの穴径は、開口13bの穴径の1/2である。本変形例によれば、気泡のサイズに応じて肥大部10内で段階的に気泡を捕捉し、粒径の大きな気泡が流路下流側に流入することを抑制できる。
【0022】
図4Aおよび図4Bは、実施例1に係る気泡トラップの別の変形例を示す構成図である。本変形例の気泡トラップでは、隔壁に形成される開口の中心軸は、第1流路11の中心軸とずれた位置にある。
【0023】
図4Aは、第1隔壁13の開口13cおよび第2隔壁14の開口14cが、同軸上に配置された例を示している。図4Aのように、各開口を同軸上に配置する場合、各開口は第1流路11の中心軸よりも鉛直方向下側にオフセットさせることが、捕捉効果を高める上で望ましい。粒径が大きな気泡ほど、浮力が大きくなり、鉛直方向上側へ移動し易いためである。
【0024】
図4Bは、第1隔壁13の開口13dおよび第2隔壁14の開口14dが、異なる軸上に配置された例を示している。図4Bのような配置とすることで、開口13dから流入した気泡が、開口14dへ流入し難くなり、高い捕捉効果が期待できる。
【0025】
図5は、実施例1に係る気泡トラップのさらに別の変形例を示す構成図である。図5に示すように、本変形例の気泡トラップでは、第1隔壁13の開口13eの上流側および第2隔壁14の開口14eの上流側が、第1流路11に向けて突出する形状を有している。例えば各開口の上流側をテーパー形状とすることで、気泡が各開口に流入し難くなり、高い捕捉効果が期待できる。
【0026】
以上述べた本実施例では、図2図5に示す構造の気泡トラップ1を、送液ポンプ104の上流側に設置するだけで、気泡による測定結果の影響を抑制できる。したがって、脱気装置を設置した場合と比べて、液体クロマトグラフ100全体の簡易化、小型化および低コスト化が可能となる。なお、気泡トラップ1の構造は、図2図5に示すものに限定されず、これらを組み合わせたものであっても良い。
【0027】
ただし、実施例1に係る気泡トラップ1は、その構造上、捕捉できる気泡に限界があり、捕捉した気泡が肥大部10内で飽和状態に達すると、本来の捕捉効果が得られない可能性がある。したがって、気泡トラップ1だけでなく脱気装置2も、送液ポンプ104の上流側に設置するのが有効である。そこで、気泡トラップ1と脱気装置2の位置関係の異なる実施例2および実施例3に基づき、具体的に説明する。
【実施例0028】
以下、実施例2について、図6を参照して説明する。実施例2は、液体から溶存気体を除去する脱気装置2を、気泡トラップ1の上流側に配置した構成の例である。図6は、実施例2に係る自動分析装置の流路構成概略図である。図6に示すように、実施例2に係る自動分析装置では、流路上流側から流路下流側に向かって、脱気装置2、気泡トラップ1、送液ポンプ104、の順に設置されている。
【0029】
気泡トラップ1の上流側に脱気装置2を設置することで、気泡トラップ1へ流れ込む液体の溶存空気量は、飽和空気量に対して十分に減らすことが可能となる。したがって、気泡トラップ1で気泡が捕捉されたとしても、その気泡は流れ込む液体に徐々に溶け込むことで、自然に消滅することが期待される。なお、実施例2の構成の場合、気泡トラップ1ではなく脱気装置2だけを設置した構成と比べて、小型化などは難しくなるものの、送液ポンプ104やその下流側へ気泡が流入するリスクをより低減でき、測定精度がより向上する。例えば、脱気装置2の脱気性能を超えるような量の気泡が混入すると、脱気装置2での気泡除去が不完全となり、一部の気泡が脱気装置2の下流側に流入する場合もあるが、その場合にも、気泡トラップ1で気泡の捕捉が可能である。
【実施例0030】
以下、実施例3について、図7および図8を参照して説明する。実施例3は、液体から溶存気体を除去する脱気装置2を、気泡トラップ1の下流側(気泡トラップ1と送液ポンプ104の間)に配置した構成の例である。図7は、実施例3に係る自動分析装置の流路構成概略図である。図7に示すように、実施例3に係る自動分析装置では、流路上流側から流路下流側に向かって、気泡トラップ1、脱気装置2、送液ポンプ104、の順に設置されている。
【0031】
前述のように、脱気装置2の脱気性能を超えるような量の気泡が混入すると、脱気装置2での気泡除去が不完全となる。このため、実施例3では、大きな気泡については、脱気装置2より上流側に設置した気泡トラップ1で予め捕捉するものである。ただし、気泡トラップ1でも捕捉できる気泡にも限界があるため、実施例3の気泡トラップ1には、気泡を細かくする超音波照射機構30が設けられる。
【0032】
図8は、実施例3に係る気泡トラップの構成図である。図8に示すように、実施例3に係る気泡トラップは、肥大部10の内部に超音波を照射する超音波照射機構30が、肥大部10の外壁に設けられている。
【0033】
そして、自動分析装置の稼働時、超音波照射機構30が、超音波振動子を動作させ、肥大部10で捕捉された気泡に対して超音波31を照射することで、気泡を破泡または分散させる。気泡は、肥大部10で捕捉されている間、気泡トラップ内に一定時間とどまるため、超音波が照射され続けることとなり、十分な破泡または分散が可能となる。また、気泡トラップを通過した微細気泡は、脱気装置2の脱気性能の範囲で除去される。
【0034】
なお、超音波振動子は、比較的安価であるため、コストの増加が抑えられる利点もある。超音波振動子の振動周波数は、100kHz~1MHzが良いが、測定目的に応じて適宜選択される。また、実施例2の超音波照射機構30は、肥大部10の上側の外壁に配置されているが、超音波照射機構30の対面に反射板を配置し、超音波を両面から当てる構成であっても良い。
【実施例0035】
以下、実施例4について、図9を参照して説明する。前述のように、実施例1に係る気泡トラップは、その構造上、捕捉できる気泡に制限があり、捕捉した気泡が肥大部内で飽和状態に達すると、本来の捕捉効果が得られない可能性がある。そこで、実施例4では、脱気装置を設置する代わりに、気泡トラップ自体に、捕捉された気泡を肥大部から排出するためのパージ流路を形成する。
【0036】
図9は、実施例4に係る気泡トラップの構成図である。図9に示すように、実施例4に係る気泡トラップは、パージ流路20(第3流路)と、切替弁21と、をさらに備える。パージ流路20は、隔壁で区画された肥大部10のうちの一部と、第2流路12の下流側とを接続し、肥大部10で捕捉された気泡を排出する流路である。切替弁21は、第2流路12から排出される液体の流れと、パージ流路20から排出される気泡の流れと、を切り替える弁である。なお、図示は省略しているが、切替弁21の下流側には、分析に用いられる流路とは別に、廃液の排出に用いられる流路が分岐して設けられ、その分岐点に別の切替弁が設けられている。
【0037】
分析時、切替弁21は、第2流路12からの流れを開放し、パージ流路20からの流れを閉鎖する。一方、非分析時、切替弁21は、第2流路12からの流れを閉鎖し、パージ流路20からの流れを開放する。これにより、分析時に肥大部10で捕捉された気泡が、非分析時に排出されるので、気泡トラップ内で気泡が滞留して飽和状態に達するのを防ぐことができる。
【0038】
なお、気泡は肥大部10の上部に滞留する傾向があることを考慮して、パージ流路20の上流側の接続先は、肥大部10の上部とすることが望ましい。また、パージ流路20の上流側の接続先は、隔壁で区画された肥大部10のうち全部であっても良い。
【実施例0039】
以下、実施例5について、図10を参照して説明する。実施例5は、脱気装置を設置する代わりに、気泡トラップ自体を減圧チャンバー内に配置して、捕捉された気泡を肥大部の外部へ排出するものである。
【0040】
図10は、実施例5に係る気泡トラップの構成図である。図10に示すように、実施例5に係る気泡トラップは、肥大部10を構成する壁の一部が脱気膜41で形成され、脱気膜41が減圧チャンバー40により減圧下に曝されている。このため、肥大部10で捕捉された気泡は、脱気膜41を通過して外部へ排出される。
【0041】
なお、脱気膜41を含む部位が減圧下に曝されていれば、図10のように気泡トラップ自体が減圧チャンバー40内に配置される必要はなく、例えば、減圧チャンバー40と気泡トラップ1を配管で接続することで気泡トラップ内を減圧環境下にしても良い。
【0042】
なお、前述の実施例1~5は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。さらに、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0043】
1…気泡トラップ、2…脱気装置、10…肥大部、11…第1流路、12…第2流路、13…第1隔壁、13a-13e…開口、14…第2隔壁、14a-14e…開口、20…パージ流路、21…切替弁、30…超音波照射機構、31…超音波、40…減圧チャンバー、41…脱気膜、100…液体クロマトグラフ、101…移動相供給ボトル、102…貯蔵ボトル、103…移動相供給ポンプ、104…送液ポンプ、105…試料注入部、106…分離カラム、107…恒温部、108…検出部、109…監視センサ、110…通気口、111…制御部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10