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特開2024-163632廃プラスチックの熱分解生成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163632
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】廃プラスチックの熱分解生成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/12 20060101AFI20241115BHJP
【FI】
C08J11/12 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079409
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】児玉 瞬
(72)【発明者】
【氏名】半田 智彦
(72)【発明者】
【氏名】井田 寛人
(72)【発明者】
【氏名】平松 義文
(72)【発明者】
【氏名】赤司 信二
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA11
4F401AA13
4F401AA24
4F401BA03
4F401CA70
4F401CB10
4F401DA08
4F401DA16
4F401FA07Z
(57)【要約】
【課題】ポリ塩化ビニルを含む廃プラスチックを熱分解する際に、無機塩素ガスの生成量を低減させることができる廃プラスチックの熱分解生成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリスチレンの少なくともいずれかに由来する第1の樹脂を主成分として含む第1の廃プラスチックと、ポリ塩化ビニルに由来する第2の樹脂を含む第2の廃プラスチックと、ポリアミドに由来する第3の樹脂を含む第3の廃プラスチックとの混合物を得る工程と、前記混合物を熱分解することで、熱分解生成物を生成する熱分解工程を有する、廃プラスチックの熱分解生成物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリスチレンの少なくともいずれかに由来する第1の樹脂を主成分として含む第1の廃プラスチックと、ポリ塩化ビニルに由来する第2の樹脂を含む第2の廃プラスチックと、ポリアミドに由来する第3の樹脂を含む第3の廃プラスチックとの混合物を得る工程と、
前記混合物を熱分解することで、熱分解生成物を生成する熱分解工程を有する、
廃プラスチックの熱分解生成物の製造方法。
【請求項2】
前記第1の廃プラスチック、前記第2の廃プラスチック及び前記第3の廃プラスチック中に含まれる樹脂総量中において、塩素原子の含有量と、窒素原子の含有量とが下記数式(数10)の関係を満たす、
請求項1に記載の廃プラスチックの熱分解生成物の製造方法。
(前記樹脂総量中の前記窒素原子の含有量)/(前記樹脂総量中の前記塩素原子の含有量)≧0.2…(数10)
(前記数式(数10)中、前記窒素原子の含有量の単位は[質量%]であり、前記塩素原子の含有量の単位は[質量%]である。)
【請求項3】
前記第1の廃プラスチック、前記第2の廃プラスチック及び前記第3の廃プラスチック中に含まれる樹脂総量中において、
塩素原子の含有量は、0.01質量%以上20質量%以下であり、
窒素原子の含有量は、0.01質量%以上20質量%以下である、
請求項1または請求項2に記載の廃プラスチックの熱分解生成物の製造方法。
【請求項4】
前記混合物中に含まれる前記第1の廃プラスチック、前記第2の廃プラスチック、及び前記第3の廃プラスチックの合計量に対し、
前記第1の廃プラスチックの含有量は、70質量%以上99.8質量%以下であり、
前記第2の廃プラスチックの含有量は、0.01質量%以上10質量%以下であり、
前記第3の廃プラスチックの含有量は、0.01質量%以上20質量%以下である、
請求項2または請求項3に記載の廃プラスチックの熱分解生成物の製造方法。
【請求項5】
前記熱分解工程で生成された前記熱分解生成物は、軽質オレフィン含有ガスと、有機塩素とを含む、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の廃プラスチックの熱分解生成物の製造方法。
【請求項6】
前記熱分解工程で生成された前記熱分解生成物を冷却して、軽質オレフィン含有ガスと、油成分と、水成分とに分離する分離工程をさらに有し、
前記油成分は、有機塩素を含有し、
前記水成分は、無機塩素を含有する、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の廃プラスチックの熱分解生成物の製造方法。
【請求項7】
前記油成分中の前記有機塩素の含有率Cは、下記数式(数1)及び(数2)を満たす、
請求項6に記載の廃プラスチックの熱分解生成物の製造方法。
前記有機塩素の含有率C=(前記油成分中の有機塩素の含有量/塩素原子の合計の含有量)×100≧10.0…(数1)
塩素原子の合計の含有量=(前記油成分中の前記有機塩素の含有量)+(前記水成分中の前記無機塩素の含有量)…(数2)
(前記数式(数1)及び(数2)中、
油成分中の有機塩素の含有量の単位が[g]であり、
水成分中の無機塩素の含有量の単位が[g]であり、
塩素原子の合計の含有量の単位が[g]であり、
有機塩素の含有率Cの単位が[質量%]である。)
【請求項8】
前記水成分中の前記無機塩素の含有率Cは、下記数式(数2)及び(数3)を満たす、
請求項6または請求項7に記載の廃プラスチックの熱分解生成物の製造方法。
前記無機塩素の含有率C=(前記水成分中の前記無機塩素の含有量/塩素原子の合計の含有量)×100≦90.0…(数3)
塩素原子の合計の含有量=(前記油成分中の前記有機塩素の含有量)+(前記水成分中の前記無機塩素の含有量)…(数2)
(前記数式(数2)及び(数3)中、
油成分中の有機塩素の含有量の単位が[g]であり、
水成分中の無機塩素の含有量の単位が[g]であり、
塩素原子の合計の含有量の単位が[g]であり、
無機塩素の含有率Cの単位が[質量%]である。)
【請求項9】
前記熱分解生成物に含まれる前記軽質オレフィン含有ガスは、石油化学プロセスに供給されて用いられる、
請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の廃プラスチックの熱分解生成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃プラスチックの熱分解生成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは頑丈で腐食性がないことから、投棄された使用済みプラスチックによる海洋汚染が世界的な課題となっている。使用済みプラスチック(廃プラスチック)は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、及びポリ塩化ビニル(PVC)の4大汎用樹脂を主体として多様なプラスチックが排出されている。
廃プラスチックの処理問題が深刻化する中、廃プラスチックからオレフィンガスなどを回収するケミカルリサイクルが注目されている。しかしながら、ポリ塩化ビニル(PVC)を熱分解すると、腐食性を有する塩化水素が生成するため、塩化水素の取り扱いについて様々な検討がなされている。
例えば、特許文献1には、塩化ビニルを含む廃プラスチックを処理する脱塩素処理システムにおいて、塩化ビニルを含む廃プラスチックを熱分解炉へ投入する廃プラスチック投入装置と、廃プラスチック投入装置に接続され、廃プラスチック投入装置からの廃プラスチックに含まれる塩化ビニルを熱分解して塩化水素ガスと有機ガスとを発生させる熱分解炉と、熱分解炉に接続され、熱分解炉で発生した塩化水素ガスと有機ガスを処理するガス処理装置と、熱分解炉に接続され、熱分解炉において炭化あるいは溶融化した廃プラスチックを冷却固形化する冷却固形化装置と、熱分解炉に接続され、熱分解炉に所望量の不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置と、熱分解炉に接続され、熱分解炉内を真空にする真空装置と、を備えたことを特徴とする脱塩素処理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-309034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の脱塩素処理システムでは、熱分解炉で生成した塩化水素が、ガス処理装置の塩化水素ガス吸収塔で塩酸として回収される仕組みとなっている。塩化水素は、無機塩素ガスに相当する。
近年の廃プラスチックのケミカルリサイクルにおいては、熱分解炉で生成した塩化水素の処理方法だけでなく、熱分解炉で生成する塩化水素自体の生成量を低減させることも求められている。
【0005】
本発明の目的は、ポリ塩化ビニルを含む廃プラスチックを熱分解する際に、無機塩素ガスの生成量を低減させることができる廃プラスチックの熱分解生成物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリスチレンの少なくともいずれかに由来する第1の樹脂を主成分として含む第1の廃プラスチックと、ポリ塩化ビニルに由来する第2の樹脂を含む第2の廃プラスチックと、ポリアミドに由来する第3の樹脂を含む第3の廃プラスチックとの混合物を得る工程と、前記混合物を熱分解することで、熱分解生成物を生成する熱分解工程を有する、廃プラスチックの熱分解生成物の製造方法。
【0007】
[2]前記第1の廃プラスチック、前記第2の廃プラスチック及び前記第3の廃プラスチック中に含まれる樹脂総量中において、塩素原子の含有量と、窒素原子の含有量とが下記数式(数10)の関係を満たす、
前記[1]に記載の廃プラスチックの熱分解生成物の製造方法。
(前記樹脂総量中の前記窒素原子の含有量)/(前記樹脂総量中の前記塩素原子の含有量)≧0.2…(数10)
(前記数式(数10)中、前記窒素原子の含有量の単位は[質量%]であり、前記塩素原子の含有量の単位は[質量%]である。)
【0008】
[3]前記第1の廃プラスチック、前記第2の廃プラスチック及び前記第3の廃プラスチック中に含まれる樹脂総量中において、塩素原子の含有量は、0.01質量%以上20質量%以下であり、窒素原子の含有量は、0.01質量%以上20質量%以下である、
前記[1]または[2]に記載の廃プラスチックの熱分解生成物の製造方法。
【0009】
[4]前記混合物中に含まれる前記第1の廃プラスチック、前記第2の廃プラスチック、及び前記第3の廃プラスチックの合計量に対し、
前記第1の廃プラスチックの含有量は、70質量%以上99.8質量%以下であり、
前記第2の廃プラスチックの含有量は、0.01質量%以上10質量%以下であり、
前記第3の廃プラスチックの含有量は、0.01質量%以上20質量%以下である、
前記[2]または[3]に記載の廃プラスチックの熱分解生成物の製造方法。
【0010】
[5]前記熱分解工程で生成された前記熱分解生成物は、軽質オレフィン含有ガスと、有機塩素とを含む、前記[1]から[4]のいずれか一項に記載の廃プラスチックの熱分解生成物の製造方法。
【0011】
[6]前記熱分解工程で生成された前記熱分解生成物を冷却して、軽質オレフィン含有ガスと、油成分と、水成分とに分離する分離工程をさらに有し、
前記油成分は、有機塩素を含有し、
前記水成分は、無機塩素を含有する、
前記[1]から[5]のいずれか一項に記載の廃プラスチックの熱分解生成物の製造方法。
【0012】
[7]前記油成分中の前記有機塩素の含有率Cは、下記数式(数1)及び(数2)を満たす、
前記[6]に記載の廃プラスチックの熱分解生成物の製造方法。
前記有機塩素の含有率C=(前記油成分中の有機塩素の含有量/塩素原子の合計の含有量)×100≧10.0…(数1)
塩素原子の合計の含有量=(前記油成分中の前記有機塩素の含有量)+(前記水成分中の前記無機塩素の含有量)…(数2)
(前記数式(数1)及び(数2)中、
油成分中の有機塩素の含有量の単位が[g]であり、
水成分中の無機塩素の含有量の単位が[g]であり、
塩素原子の合計の含有量の単位が[g]であり、
有機塩素の含有率Cの単位が[質量%]である。)
【0013】
[8]前記水成分中の前記無機塩素の含有率Cは、下記数式(数2)及び(数3)を満たす、前記[6]または[7]に記載の廃プラスチックの熱分解生成物の製造方法。
前記無機塩素の含有率C=(前記水成分中の前記無機塩素の含有量/塩素原子の合計の含有量)×100≦90.0…(数3)
塩素原子の合計の含有量=(前記油成分中の前記有機塩素の含有量)+(前記水成分中の前記無機塩素の含有量)…(数2)
(前記数式(数2)及び(数3)中、
油成分中の有機塩素の含有量の単位が[g]であり、
水成分中の無機塩素の含有量の単位が[g]であり、
塩素原子の合計の含有量の単位が[g]であり、
無機塩素の含有率Cの単位が[質量%]である。)
【0014】
[9]前記熱分解生成物に含まれる前記軽質オレフィン含有ガスは、石油化学プロセスに供給されて用いられる、
前記[6]から[8]のいずれか一項に記載の廃プラスチックの熱分解生成物の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、ポリ塩化ビニルを含む廃プラスチックを熱分解する際に、無機塩素ガスの生成量を低減させることができる廃プラスチックの熱分解生成物の製造方法を提供することができる。さらには、ポリアミドに由来する廃プラスチックを用いることで、利用できる廃プラスチックの種類を多様化できる廃プラスチックの熱分解生成物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る製造方法の実施に用いることができる廃プラスチックの熱分解生成物の製造装置の概略図である。
図2】実施例及び比較例の評価で用いた実験装置の概略図である。
図3】実施例において、特定の有機塩素化合物の構造解析を行うために作製した試料(c)の特徴的な熱分解生成物の質量スペクトルの図である。
図4】試料(a)~(c)の熱分解GC―MS測定から得られるm/z=133のイオンを抽出したクロマトグラム上の、目的の有機塩素化合物のピークを示している。
図5】ポリアミド比率(PVC対比)と有機塩素比率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前に記載される数値を下限値とし、「~」の後に記載される数値を上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、「第1」、「第2」及び「第3」の序数による表現は、構成を区別することを目的としており、順序を意味するものではない。
本明細書において、序数を付していない表現、例えば、「廃プラスチック」又は「各廃プラスチック」という表現は、廃プラスチックの総称であり、「第1」、「第2」及び「第3」の序数を付した廃プラスチックに共通する説明をするときに使用する。
例えば、「第1の廃プラスチック」、「第2の廃プラスチック」及び「第3の廃プラスチック」のように序数を付して表記した複数の構成に共通して適用される説明がなされる場合に、序数を除いた「廃プラスチック」又は「各廃プラスチック」と表記することにより、「第1の廃プラスチック」、「第2の廃プラスチック」及び「第3の廃プラスチック」をまとめて表現する。
【0018】
〔第1実施形態〕
〔廃プラスチックの熱分解生成物の製造方法〕
第1実施形態に係る廃プラスチックの熱分解生成物の製造方法(以下、本実施形態に係る製造方法とも称する)は、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリスチレンの少なくともいずれかに由来する第1の樹脂を主成分として含む第1の廃プラスチックと、ポリ塩化ビニルに由来する第2の樹脂を含む第2の廃プラスチックと、ポリアミドに由来する第3の樹脂を含む第3の廃プラスチックとの混合物を得る工程と、前記混合物を熱分解することで、熱分解生成物を生成する熱分解工程を有する。
第1の廃プラスチック、第2の廃プラスチック、及び第3の廃プラスチックは互いに異なる廃プラスチックである。第1の樹脂、第2の樹脂、及び第3の樹脂は互いに異なる樹脂である。
熱分解生成物は、例えば熱分解装置から排出される際はガス成分である。熱分解生成物は、冷却により凝縮する成分と、凝縮しない成分とを含む。例えば、熱分解生成物を60℃で冷却すると、熱分解生成物のうち、凝縮する成分として、油成分と水成分とが分離される。
【0019】
本明細書において、無機塩素とは、ポリ塩化ビニル系重合体を含む第2の廃プラスチックの熱分解により生成する無機塩素ガス(塩化水素及び次亜塩素酸など)中の塩素原子を意味する。
本明細書において、有機塩素とは、有機塩素化合物中に含まれる塩素原子を意味する。
【0020】
本発明者らは、第1の樹脂(ポリプロピレン系重合体など)を主成分として含む第1の廃プラスチックと、第2の樹脂(ポリ塩化ビニル系重合体)を含む第2の廃プラスチックと、第3の樹脂(ポリアミド系重合体)を含む第3の廃プラスチックとの混合物を得た後、当該混合物を熱分解することにより、熱分解生成物中に、第2の樹脂(ポリ塩化ビニル系重合体)と、第3の樹脂(ポリアミド系重合体)との反応により生成したと考えられる有機塩素化合物(以下、特定の有機化合物とも称する)が含まれ、この特定の有機塩素化合物の生成により、無機塩素ガスの生成量が低減されることを見出した。よって、本実施形態に係る熱分解工程では、本来生成し得る無機塩素の一部が、特定の有機塩素化合物中の有機塩素に置き換わったと考えられる。
特定の有機塩素化合物の構造解析については、実施例の項で詳述する。
本実施形態に係る製造方法によれば、ポリ塩化ビニルを含む廃プラスチックを熱分解する際に、無機塩素ガスの生成量を低減させることができる。さらには、ポリアミドに由来する廃プラスチックを用いることで、利用できる廃プラスチックの種類を多様化することができる。
【0021】
また、従来から、熱分解生成物に含まれる無機塩素ガスは、各種設備の腐食の原因となるため、冷却装置で水に溶解させた後、アルカリ水で中和して廃棄されることが多い。
本実施形態に係る製造方法によれば、無機塩素ガスの生成量が低減するため、無機塩素の廃棄量を減らすことができる。
また、本実施形態の熱分解工程で得られる特定の有機塩素化合物は重たく、かつ水に溶けにくいため、熱分解生成物を冷却装置で分離する際に、油成分に分離される。分離された油成分は、燃料などに利用し得る。特定の有機塩素化合物を燃料などに利用できれば、資源の有効活用の要請にも応えることができる。
【0022】
<混合物を得る工程>
本実施形態に係る製造方法において、混合物を得る工程の一態様は、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリスチレンの少なくともいずれかに由来する第1の樹脂を主成分として含む第1の廃プラスチックと、ポリ塩化ビニルに由来する第2の樹脂を主成分として含む第2の廃プラスチックと、ポリアミドに由来する第3の樹脂を主成分として含む第3の廃プラスチックとを混合して混合物を得る工程である。混合物を得る工程の一態様は、前記第1の廃プラスチック、前記第2の廃プラスチック、及び前記第3の廃プラスチックを含む混合物を入手する工程であってもよい。
【0023】
本明細書において、主成分とは、対象物を構成する成分のうち、最も割合が大きい成分(例えば45質量%以上を占める成分)を意味する。例えば、主成分は、対象物に含まれる成分のうち、50質量%以上(上限100質量%)含有する成分を表す。
第1の廃プラスチック中における第1の樹脂の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
第2の廃プラスチックは、第2の樹脂を主成分として含むことが好ましく、第3の廃プラスチックは、第3の樹脂を主成分として含むことが好ましい。
第2の廃プラスチック中における第2の樹脂の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。第3の廃プラスチック中における第3の樹脂の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0024】
(第1の廃プラスチック、第2の廃プラスチック、及び第3の廃プラスチックの含有量)
混合物を得る工程で得られる混合物中において、各廃プラスチックの含有量は、以下の範囲であることが好ましい。各廃プラスチックの含有量は、廃プラスチックの総量(第1の廃プラスチック、第2の廃プラスチック、及び第3の廃プラスチックの合計量)に対する比率(単位:質量%)である。
混合物を熱分解した際に軽質オレフィン含有ガスをより多く生成させる観点から、第1の廃プラスチックの含有量は、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。第1の廃プラスチックの含有量の上限値は、99.98質量%以下であることが好ましい。
前記第2の廃プラスチックの含有量は、混合物を熱分解した際に無機塩素ガスの生成量をより低減させる観点から、少ない方が好ましい。
前記第2の廃プラスチックの含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5.0質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以下である。
前記第2の廃プラスチックの含有量の下限値は、例えば0.01質量%以上である。
前記第3の廃プラスチックの含有量は、無機塩素低減の観点から、第2の廃プラスチックの含有量よりも多い方が好ましい。
前記第3の廃プラスチックの含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。
前記第3の廃プラスチックの含有量の上限値は、例えば20質量%以下である。
第1の廃プラスチックの含有量は、70質量%以上であり、
第2の廃プラスチックの含有量は、0.01質量%以上10質量%以下であり、かつ
第3の廃プラスチックの含有量は、0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
第1の廃プラスチックの含有量は、90質量%以上であり、
第2の廃プラスチックの含有量は、0.01質量%以上2.0質量%以下であり、かつ
第3の廃プラスチックの含有量は、0.01質量%以上8.0質量%以下であることがより好ましい。
混合物を熱分解した際に、無機塩素の生成をより低減させる観点(つまり特定の有機塩素化合物を生成し易くする観点)から、前記第2の廃プラスチックの含有量に対する、前記第3の廃プラスチックの含有量の比率(前記第3の廃プラスチックの含有量/前記第2の廃プラスチックの含有量)(質量比)は、高いほど好ましい。
よって、前記比率(前記第3の廃プラスチックの含有量/前記第2の廃プラスチックの含有量)は、質量比で、0.5以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、2.0以上であることがさらに好ましく、3.0以上であることがさらに好ましく、4.0以上であることがさらに好ましい。前記比率(前記第3の廃プラスチックの含有量/前記第2の廃プラスチックの含有量)の上限値は、5.5超えであると有機塩素の生成量が飽和する傾向があることから(図5参照)、5.5以下であることが好ましい。
【0025】
(塩素原子の含有量と窒素原子の含有量との比率)
本実施形態に係る混合物を得る工程では、第1の廃プラスチック、第2の廃プラスチック及び第3の廃プラスチック中に含まれる樹脂総量中において、塩素原子の含有量と、窒素原子の含有量とが下記数式(数10)の関係を満たすことが好ましく、下記数式(数10A)の関係を満たすことがより好ましく、下記数式(数10B)の関係を満たすことがさらに好ましい。
すなわち、本実施形態に係る混合物を得る工程は、第1の廃プラスチック、第2の廃プラスチック及び第3の廃プラスチック中に含まれる樹脂総量に対し、塩素原子の含有量と、窒素原子の含有量とが下記数式(数10)の関係を満たすように、第1の廃プラスチック、第2の廃プラスチック、及び第3の廃プラスチックの混合物を得る工程であることが好ましい。
【0026】
(前記樹脂総量中の前記窒素原子の含有量)/(前記樹脂総量中の前記塩素原子の含有量)≧0.2…(数10)
(前記樹脂総量中の前記窒素原子の含有量)/(前記樹脂総量中の前記塩素原子の含有量)≧0.6…(数10A)
(前記樹脂総量中の前記窒素原子の含有量)/(前記樹脂総量中の前記塩素原子の含有量)≧1.2…(数10B)
(前記数式(数10)、(数10A)及び(数10B)中、前記窒素原子の含有量の単位は[質量%]であり、前記塩素原子の含有量の単位は[質量%]である。)
前記比率((前記樹脂総量中の前記窒素原子の含有量)/(前記樹脂総量中の前記塩素原子の含有量))の上限値は、2.0超えであると有機塩素の生成量が飽和する傾向があることから、2.0以下であることが好ましい。
【0027】
樹脂総量とは、第1の廃プラスチック、第2の廃プラスチック及び第3の廃プラスチック中に含まれる樹脂成分の総量であり、具体的には、第1の樹脂、第2の樹脂、及び第3の樹脂と、これらの樹脂以外の「他の樹脂」との合計量を意味する。
他の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アセタール樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、フッ素樹脂、及び熱硬化性樹脂(例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、及び不飽和ポリエステル樹脂など)が挙げられる。
廃プラスチックは、多種多様な樹脂を含む。例えば、第1の廃プラスチック中には、第1の樹脂以外に、第2の樹脂、第3の樹脂及び他の樹脂が含まれることがある。同様に、第2の廃プラスチック中には、第2の樹脂以外に、第1の樹脂、第3の樹脂及び他の樹脂が含まれることがある。第3の廃プラスチック中には、第3の樹脂以外に、第1の樹脂、第2の樹脂及び他の樹脂が含まれることがある。
よって、第1の廃プラスチック、第2の廃プラスチック及び第3の廃プラスチック中に含まれる樹脂総量中における塩素原子の含有量と、窒素原子の含有量との比率(質量比)が調整された混合物を熱分解することで、具体的には、前記数式(数10)の関係を満たす混合物を熱分解することで、第2の樹脂(ポリ塩化ビニル系重合体)と、第3の樹脂(ポリアミド系重合体)との反応が良好に進行し、特定の有機化合物が生成され易くなると考えられる。その結果、無機塩素の生成量がより低減されると考えられる。
【0028】
(塩素原子及び窒素原子の含有量)
本実施形態に係る混合物を得る工程では、混合物を熱分解した際に、特定の有機塩素化合物を生成し易く、かつ無機塩素の生成量をより低減させる観点から、第1の廃プラスチック、第2の廃プラスチック及び第3の廃プラスチック中に含まれる樹脂総量中において、塩素原子の含有量と、窒素原子の含有量とが、それぞれ以下の範囲であることが好ましい。
塩素原子の含有量は、0.01質量%以上20質量%以下であり、かつ窒素原子の含有量は、0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0029】
樹脂総量中に含まれる窒素原子は、ほとんどがポリアミド中の-NH基に由来する窒素原子であると考えられる。例えば、各廃プラスチック中の添加剤及び顔料に含まれる窒素原子は、非常に低濃度であるため、-NH基に由来する窒素原子の含有量には影響を与えない。
樹脂総量中に含まれる窒素原子の含有量は、CHN元素分析計(elementar社製、品番:vario EL cube)、または微量全窒素分析装置(日東精工アナリテック社製、品番:TN-2100H)を用いて測定することができる。
樹脂総量中に含まれる塩素原子の含有量は、実施例に記載の(a)燃焼装置、及び(b)イオンクロマトグラフィー分析装置を用いて測定することができる。
なお、本実施形態に係る混合物を得る工程において、成分が明記されている廃プラスチックを用いる場合、樹脂総量中の窒素原子の含有量及び塩素原子の含有量は、明記されている成分から算出することができる。
【0030】
混合物中における、第1の廃プラスチック、第2の廃プラスチック、及び第3の廃プラスチックの合計含有量は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。混合物の合計量に対する、第1の廃プラスチック、第2の廃プラスチック、及び第3の廃プラスチックの合計含有量の上限値は100質量%である。
【0031】
混合物を得る方法としては特に限定されないが、公知の方法により、第1の廃プラスチックと、第2の廃プラスチックと、第3の廃プラスチックとを混合する方法が挙げられる。混合手段としては、例えば、公知の混合装置を用いることができる。混合物を得る工程は、第1の廃プラスチックと、第2の廃プラスチックと、第3の廃プラスチックと、必要に応じて、他の材料を混合する工程であってもよいし、これらの廃プラスチック及び他の材料が予め混合された混合物を入手する工程であってもよい。
混合物を得る工程において、各廃プラスチックのサイズ及び形状は特に限定されない。
各廃プラスチックのサイズ及び形状は、混合物を熱分解する際に用いられる熱分解装置の仕様に応じて決定される。各廃プラスチックの形状は、ペレット状であることが好ましい。
【0032】
本実施形態は、混合物に、第1の廃プラスチック、第2の廃プラスチック、及び第3の廃プラスチック以外の他の材料が含まれることを除外しない。
他の材料としては、例えば、第1の廃プラスチック、第2の廃プラスチック、及び第3の廃プラスチック以外の廃プラスチック(以下、他の廃プラスチックとも称する)並びに各種添加剤などが挙げられる。
他の廃プラスチックとしては、例えば、前述の「他の樹脂」が挙げられる。
【0033】
<熱分解工程>
熱分解工程は、混合物を得る工程で得られた混合物を熱分解することで、熱分解生成物を生成する工程である。
熱分解生成物は、混合物を得る工程で得られた混合物を公知の熱分解装置(例えば熱分解炉)で熱分解することで生成される。
【0034】
(熱分解の条件)
熱分解工程における熱分解の温度は、混合物中に含まれる第1の樹脂、第2の樹脂及び第3の樹脂の種類及びそれぞれの含有量にもよるが、好ましくは580℃以上680℃以下である。
混合物は熱分解装置に導入されて熱分解される。熱分解装置内における混合物の滞留時間は、好ましくは5秒以上15秒以下である。
【0035】
熱分解工程で生成された熱分解生成物は、軽質オレフィン含有ガスと、有機塩素とを含む。具体的には、熱分解工程で生成された熱分解生成物は、軽質オレフィン含有ガスと、有機塩素と、無機塩素とを含み、有機塩素は無機塩素よりも多いことが好ましい。
【0036】
本実施形態に係る製造方法において、熱分解工程で生成された熱分解生成物を冷却して、軽質オレフィン含有ガスと、油成分と、水成分とに分離する分離工程をさらに有することが好ましい。
分離工程で分離された油成分は、有機塩素を含有し、分離工程で分離された水成分は、無機塩素を含有する。
【0037】
<分離工程>
分離工程は、例えば、冷却装置を用いて実施される。冷却装置に供給された熱分解生成物は、例えば、60℃程度に冷却される。この冷却により、熱分解生成物中に含まれる非凝縮性のガス成分は軽質オレフィン含有ガスとして分離され、熱分解生成物中に含まれる凝縮性のガス成分は、油成分と水成分とに分離される。
分離工程で分離された油成分には、例えば、第1の樹脂の原料に由来する油成分(例えば炭化水素油など)と、熱分解装置内でポリ塩化ビニルとポリアミドとが反応したことで生成された特定の有機塩素化合物が含まれる。
分離工程で分離された油成分は、資源を有効利用する観点から、熱分解装置に戻され、廃プラスチックを熱分解する際の燃料として使用されることが好ましい。
分離工程で分離された水成分には、第2の樹脂の熱分解で生成した無機塩素ガス(塩化水素及び次亜塩素酸など)が含まれる。通常、無機塩素ガスは水に溶かされ塩酸などとして分離される。
【0038】
本実施形態に係る製造方法において、前記油成分中の前記有機塩素の含有率Cは、下記数式(数1)及び(数2)を満たすことが好ましい。
前記有機塩素の含有率C=(前記油成分中の有機塩素の含有量/塩素原子の合計の含有量)×100≧10.0…(数1)
塩素原子の合計の含有量=(前記油成分中の前記有機塩素の含有量)+(前記水成分中の前記無機塩素の含有量)…(数2)
(前記数式(数1)及び(数2)中、
油成分中の有機塩素の含有量の単位が[g]であり、
水成分中の無機塩素の含有量の単位が[g]であり、
塩素原子の合計の含有量の単位が[g]であり、
有機塩素の含有率Cの単位が[質量%]である。)
【0039】
前記油成分中の前記有機塩素の含有率Cは、下記数式(数11)を満たすことがより好ましく、下記数式(数12)を満たすことがさらに好ましい。
前記有機塩素の含有率C=(前記油成分中の有機塩素の含有量/塩素原子の合計の含有量)×100≧20.0…(数11)
前記有機塩素の含有率C=(前記油成分中の有機塩素の含有量/塩素原子の合計の含有量)×100≧30.0…(数12)
【0040】
本実施形態に係る製造方法において、前記水成分中の前記無機塩素の含有率Cは、下記数式(数2)及び(数3)を満たすことが好ましい。
前記無機塩素の含有率C=(前記水成分中の前記無機塩素の含有量/塩素原子の合計の含有量)×100≦90.0…(数3)
塩素原子の合計の含有量=(前記油成分中の前記有機塩素の含有量)+(前記水成分中の前記無機塩素の含有量)…(数2)
(前記数式(数2)及び(数3)中、
油成分中の有機塩素の含有量の単位が[g]であり、
水成分中の無機塩素の含有量の単位が[g]であり、
塩素原子の合計の含有量の単位が[g]であり、
無機塩素の含有率Cの単位が[質量%]である。)
【0041】
前記水成分中の前記無機塩素の含有率Cは、下記数式(数31)を満たすことがより好ましく、下記数式(数32)を満たすことがさらに好ましい。
前記無機塩素の含有率C=(前記水成分中の前記無機塩素/塩素原子の合計量)×100≦80.0…(数31)
前記無機塩素の含有率C=(前記水成分中の前記無機塩素/塩素原子の合計量)×100≦70.0…(数32)
【0042】
前記数式中、油成分中の有機塩素の含有量、有機塩素の含有率C、水成分中の無機塩素の含有量、無機塩素の含有率C、及び塩素原子の合計の含有量は、実施例に記載の方法で測定される。
【0043】
本実施形態に係る製造方法において、熱分解生成物に含まれる軽質オレフィン含有ガスは、石油化学プロセスに供給されて用いられることが好ましい。
石油化学プロセスとしては、例えば、エチレン製造設備、プロピレン製造設備、及びガス回収装置等が挙げられる。
軽質オレフィンガスとは、エチレンガス及びプロピレンガスを意味する。
本実施形態に係る製造方法において、熱分解生成物に含まれる軽質オレフィン含有ガスは、プラスチック原料として再生可能なガス(リサイクルガス)として利用することができる。
【0044】
図1は、本実施形態に係る製造方法の実施に用いることができる廃プラスチッの熱分解生成物の製造装置100の概略図である。
廃プラスチックの熱分解生成物の製造装置100は、熱分解装置10、冷却装置12、除塵装置14、洗浄装置16、貯留ドラム18、及びオレフィン精製装置19を備える。熱分解装置10、冷却装置12、除塵装置14、洗浄装置16、貯留ドラム18、及びオレフィン精製装置19は、いずれも公知の装置である。
【0045】
熱分解装置10は、熱分解装置10内に導入された廃プラスチックを熱分解して熱分解生成物を生成する。熱分解生成物は、熱分解装置10の頂部から排出され、配管L1を通じて冷却装置12へ供給される。
【0046】
冷却装置12は、水を供給する配管L7と、冷却手段としての冷却塔とを備える。配管L7には、水の流量を調整するバルブV2が配置されている。
冷却装置12の底部には、熱分解生成物を冷却することで分離された油成分及び水成分がそれぞれ排出される配管L10及び配管L20が接続されている。熱分解生成物を冷却することで分離された軽質オレフィン含有ガスは、冷却装置12から排出され、配管L2を通じて除塵装置14へ供給される。
【0047】
貯留ドラム18は、冷却装置12で分離された油成分を貯留する。貯留ドラム18及び熱分解装置10は、配管L8によって接続されている。配管L8には、油成分の流量を調整するバルブV1が配置されている。
貯留ドラム18で貯留された油成分は、配管L8を通じて熱分解装置10へ供給され、廃プラスチックを熱分解するための燃料として利用される。
【0048】
除塵装置14は、水を供給する配管L3と、除塵手段としてのスクラバーとを備える。スクラバーとしては、例えば、ベンチュリ―スクラバー及びジェットスクラバーなどが挙げられる。除塵装置14で除塵された軽質オレフィン含有ガスは、配管L4を通じて洗浄装置16へ供給される。
【0049】
洗浄装置16は、洗浄手段としての洗浄塔を備える。洗浄塔としては、例えば苛性ソーダ洗浄塔などが挙げられる。軽質オレフィン含有ガスの洗浄に用いた洗浄水は、洗浄装置16の底部から排出され、配管L6を通じて洗浄装置16へ再度供給される。配管L6には、洗浄水の流量を調整するバルブV3が配置されている。
洗浄装置16で無機塩素等の酸性ガス等が除去(洗浄)された軽質オレフィン含有ガスは、配管L5を通じてオレフィン精製装置19へ供給される。配管L5には、軽質オレフィン含有ガスの流量を調整するバルブV4が配置されている。
【0050】
オレフィン精製装置19は、例えば、軽質オレフィン含有ガスからエチレン及びプロピレン等のオレフィンを精製する装置である。
【0051】
図1に示す熱分解生成物の製造装置100は、冷却装置12で分離された油成分が、貯留ドラム18で貯留された後、熱分解装置10へ供給され、廃プラスチックを熱分解するための燃料として利用される構造となっている。
【0052】
本実施形態に係る製造方法で用いられる第1の廃プラスチック、第2の廃プラスチック及び第3の廃プラスチックについて説明する。
【0053】
(第1の廃プラスチック)
第1の廃プラスチックは、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリスチレンの少なくともいずれかに由来する第1の樹脂を主成分として含む廃プラスチックである。
ポリエチレンに由来する第1の樹脂とは、ポリエチレン系重合体を主成分とする樹脂であり、ポリプロピレンに由来する第1の樹脂とは、ポリプロピレン系重合体を主成分とする樹脂であり、ポリスチレンに由来する第1の樹脂とは、ポリスチレン系重合体を主成分とする樹脂である。
【0054】
ポリエチレン系重合体としては、例えば、エチレン単独重合体(例えば、低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンなど)、及びエチレンと他のモノマーとの共重合体(例えば、エチレン-オレフィン共重合体など)が挙げられる。
ポリプロピレン系重合体としては、例えば、プロピレン単独重合体、及びプロピレンと他のモノマーとの共重合体(例えばプロピレン-オレフィン共重合体など)が挙げられる。
ポリスチレン系重合体としては、スチレン単独重合体、及びスチレンと他のモノマーとの共重合体(例えばスチレン-(メタ)アクリル共重合体、AS樹脂及びABS樹脂など)が挙げられる。(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルを意味する。
ただし、塩化ビニル-エチレン共重合体及び塩化ビニル-プロピレン共重合体は、それぞれ、ポリエチレン系重合体及びポリプロピレン系重合体に該当せず、ポリ塩化ビニル系重合体に該当するものとする。よって、塩化ビニル-エチレン共重合体及び塩化ビニル-プロピレン共重合体は、どちらも第2の樹脂に分類される。
塩化ビニル-スチレン共重合体は、スチレン系重合体に該当せず、ポリ塩化ビニル系重合体に該当するものとする。よって、塩化ビニル-スチレン共重合体は、第2の樹脂に分類される。
第1の樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。第1の廃プラスチックは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0055】
第1の樹脂中におけるポリエチレン系重合体、ポリプロピレン系重合体及びポリスチレン系重合体の合計の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
第1の樹脂中において、ポリエチレン系重合体、ポリプロピレン系重合体及びポリスチレン系重合体の合計に対するポリエチレン系重合体及びポリプロピレン系重合体の合計の含有量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。
第1の樹脂中におけるポリエチレン系重合体及びポリプロピレン系重合体の合計の含有量が多い程、プラスチック原料として再生できるエチレンガス及びプロピレンガスの生成量を増やすことができるので好ましい。
【0056】
(第2の廃プラスチック)
第2の廃プラスチックは、ポリ塩化ビニルに由来する第2の樹脂を含む廃プラスチックである。
ポリ塩化ビニルに由来する第2の樹脂とは、ポリ塩化ビニル系重合体を主成分とする樹脂である。
ポリ塩化ビニル系重合体としては、例えば、塩化ビニル単独重合体、塩化ビニリデン単独重合体、並びに塩化ビニルと他のモノマーとの共重合体(例えば、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-プロピレン共重合体、塩化ビニル-ブタジエン共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-スチレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-(メタ)アクリル共重合体、及び塩化ビニル-アクリロニトリル共重合体など)が挙げられる。
第2の樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。第2の廃プラスチックは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
第2の樹脂中におけるポリ塩化ビニル系重合体の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0057】
(第3の廃プラスチック)
第3の廃プラスチックは、ポリアミドに由来する第3の樹脂を含む廃プラスチックである。ポリアミドはナイロンとも称される。
ポリアミドに由来する第3の樹脂とは、ポリアミド系重合体を主成分とする樹脂である。
ポリアミド系重合体としては、ナイロン及びアラミドが挙げられる。
一般に脂肪族骨格を含むポリアミドはナイロンと総称され、芳香族骨格のみで構成されるポリアミドはアラミドと総称される。
ナイロンとしては、脂肪族ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン66など)及び半芳香族ポリアミド(例えば、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロン9T、及びナイロンM5Tなど)が挙げられる。
ナイロン6Tとは、ヘキサメチレンジアミンと、テレフタル酸との縮合重合で合成されるナイロンである。ナイロン6Iとは、ヘキサメチレンジアミンと、イソフタル酸との縮合重合で合成されるナイロンである。ナイロン9Tとは、ノナンジアミンと、テレフタル酸との縮合重合で合成されるナイロンである。ナイロンM5Tは、メチルペンタジアミンと、テレフタル酸との縮合重合で合成されるナイロンである。
第3の樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。第3の廃プラスチックは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
第3の樹脂中におけるポリアミド系重合体の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0058】
第1の廃プラスチック、第2の廃プラスチック、及び第3の廃プラスチックは、それぞれ、無機物としてのフィラーを含んでもよい。フィラーの種類は特に限定されない。フィラーのサイズは、通常、ミクロサイズ又はナノサイズである。
各廃プラスチックに含まれるフィラーの含有量は、それぞれ、30質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、7.5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0059】
第1の廃プラスチック、第2の廃プラスチック、及び第3の廃プラスチックとしては、それぞれ、各廃プラスチックに含まれる成分(例えば、第1の樹脂、第2の樹脂、及び第3の樹脂など)及びその成分の含有量が明記されているものを用いることが好ましい。
現状、廃プラスチックに含まれる成分は、産業廃棄物及び一般廃棄物により大きく異なるうえ、廃プラスチックは多種多様な樹脂を含む。また、廃プラスチックには、プラスチック成分以外の成分(例えば金属及びガラスなど)も含まれることがある。よって、分析により、プラスチック成分(特に共重合体の成分)を正確に判別することは困難である。
よって、成分が明記されている廃プラスチックを用いることで、廃プラスチックの分類が容易になる。また、成分が明記されていることで、未知成分が熱分解されることが抑制される。そのため、熱分解装置を安定して稼働させることができる。
また、各廃プラスチックに含まれる成分をそれぞれ分析することで、第1の廃プラスチック、第2の廃プラスチック、及び第3の廃プラスチックに分類してもよいし、各廃プラスチックに含まれる成分及びその含有量を特定してもよい。
各廃プラスチックに含まれる成分は、例えば、赤外分光光度計(IR)、フーリエ変換赤外分光光度計(FR-IR)、核磁気共鳴分析(NMR)装置、及びガスクロマトグラフなどの公知の分析装置を複数用い、公知の分析手段(例えば、赤外線吸収スペクトル、H-NMRスペクトル、13C-NMRスペクトル、及びガスクロマトグラフィーなど)で分析することができる。
また、各廃プラスチックに含まれる成分は、樹脂判別ハンディセンサー(株式会社リコー製、品番:RICOH HANDY PLASTIC SENSOR B150)を用いて分析してもよい。
【0060】
〔実施形態の変形〕
第1実施形態に係る製造方法が分離工程を有する場合、分離工程で分離された油成分を混合物を得る工程で得られた混合物と共に熱分解してもよい。すなわち、第1実施形態に係る熱分解工程は、分離工程で分離された油成分を熱分解装置に導入し、当該油成分を、混合物を得る工程で得られた混合物と共に熱分解する工程であってもよい。
【0061】
一実施形態に係る熱分解生成物の製造方法は、混合物を得る工程を有さなくてもよい。
一実施形態に係る熱分解生成物の製造方法は、第1の廃プラスチック、第2の廃プラスチック、及び第3の廃プラスチックを熱分解装置に導入して熱分解する(つまり各廃プラスチックを熱分解装置内で共存させて熱分解する)ことで、熱分解生成物を生成してもよい。
【0062】
本発明は、前記実施形態に限定されない。本発明は、本発明の目的を達成できる範囲での変形及び改良等を含むことができる。
【実施例0063】
以下、本発明に係る実施例を説明する。本発明はこれらの実施例によって何ら限定されない。
【0064】
[有機塩素化合物の構造解析]
ポリ塩化ビニル(第2の樹脂)と、ポリアミド(第3の樹脂)との反応により特定の有機塩素化合物が生成されたことを確認するために、以下の構造解析1~3を行った。
【0065】
<評価用試料(a)~(c)の調製>
ペレット状のポリ塩化ビニル(PVC)と、ペレット状のポリアミド(PA)とを準備した。ポリアミド(PA)としてはナイロン6を用いた。
ポリ塩化ビニル(PVC)とポリアミド(PA)とを表1に記載の質量比で秤量し、凍結粉砕機を用いて粉砕した。粉砕したPVCとPAとを混合して熱分解GC-MS測定用の試料(a)~(c)とした。
【0066】
<測定手順>
各試料をサンプルカップに測り取り、熱分解装置に取り付けた。熱分解GC―MSへのポリ塩化ビニルの導入量が一定(100μg)となるように、試料の重量を試料毎に調整した。次に、サンプルカップを熱分解装置へ落とし、同時にGC―MS測定を開始した。
【0067】
<使用装置>
熱分解装置:フロンティアラボ社製「EGA/PY-3030D」
ガスクロマトグラフ質量分析計(GC―MS):Agilent製「8890B/5977B」
カラム:Agilent製「HP-5ms UI」(長さ30m×内径0.25mm×膜厚0.25 μm)
【0068】
<熱分解GC―MS条件>
熱分解温度:650℃
スプリット比:50:1
キャリアガス(He)流速:1mL/分
GCオーブン温度:50℃(2分)から昇温速度10℃/分で320℃まで昇温し、320℃で10分間保持した。
【0069】
<構造解析1>
試料(c)の特徴的な熱分解生成物の質量スペクトルを図3に示す。
図3に示すように、試料(c)の熱分解生成物から、m/z=133、m/z=135、m/z=114、及びm/z=154に特徴的なシグナルが観測された。
熱分解GC―MS測定では、試料(c)から、実際には数十成分もの熱分解物が検出される。その中で図3の質量スペクトルを有する成分(具体的には、m/z=133、m/z=135、m/z=114、及びm/z=154のシグナル)に着目した理由は、これらの成分は、PA単体を熱分解した際にも、PVC単体を熱分解した際にも検出されない特徴的な成分だからである。
図3中、(i)で示すm/z=133と、(i)で示すm/z=135とのフラグメントイオンのシグナルは、おおよそ3:1の強度で観測され、塩素原子の同位体比(3:1)を示すことから、試料(c)の熱分解生成物は塩素原子を含む。
図3中、(ii)で示すフラグメントイオンは、PAの熱分解物に由来するイオンと推定されることから、試料(c)の熱分解生成物は、PAの熱分解物に由来した部分構造を含む(参考文献:Pyrolysis-GC/MS Data Book of Synthetic Polymers:Pyrograms,Thermograms and MS of Pyrolyzates Elsevier;第1版(2011/10/27))。
以上より、図3に示す試料(c)の熱分解生成物は、PVCとPAとの反応物である有機塩素化合物と推定された。
【0070】
<構造解析2>
図4は、試料(a)~(c)を熱分解GC―MS測定した際のm/z=133の抽出イオンクロマトグラムである。図4中、構造解析1で規定した成分のピークを(*)で示す。
ピーク(*)の面積から、試料(a)のピーク(*)の面積を基準として、下記数式(数1X)を用いて試料(b)の面積比を算出し、下記数式(数2X)を用いて試料(c)の面積比を算出した。
試料(b)の面積比=(試料(b)のピーク(*)の面積/試料(a)のピーク(*)の面積)…(数1X)
試料(c)の面積比=(試料(c)のピーク(*)の面積/試料(a)のピーク(*)の面積)…(数2X)
【0071】
<構造解析3>
構造解析2で得られた、試料(a)、試料(b)及び試料(c)の目的成分のピークの面積比を、有機塩素化合物中の有機塩素比率に換算した。結果を表1に示す。
有機塩素比率への換算は、実験で得られた図5のグラフを用いた。図5は、ポリアミド比率(PVC対比)と有機塩素比率(質量%)との関係を示すグラフである。ポリアミド比率(PVC対比)とは、PVCの含有量に対するPAの含有量の比率(質量基準)であり、有機塩素比率(質量%)とは、PA及びPVCの合計含有量に対する有機塩素の含有量の比率(質量基準)である。
図5中、有機塩素比率(PVC:PA=1:4(質量比)のときに78.8質量%、ピーク面積は149)を正として、構造解析2で得られた目的成分のピーク面積比から、線形で有機塩素比率に換算した。
【0072】
【表1】
【0073】
構造解析1~3の結果より、ポリ塩化ビニルと、ポリアミドとの反応により特定の有機塩素化合物が生成されたことが推定された。
また、試料(a)~(c)の有機塩素比率の対比により、ポリ塩化ビニルに対するポリアミドの比率を増大することで、有機塩素がより多く生成されることが推定された。
【0074】
〔評価に用いた実験装置の構成〕
実施例1~2及び比較例1の評価は図2に示す実験装置101を用いて行った。図2に、実験装置101の概略図を示す。
実験装置101は、図1に示す熱分解生成物の製造装置100を実験用に小型化して改良した装置である。
実験装置101は、熱分解装置10Aと、直列に接続された3本のインピンジャー20と、廃プラスチックが導入される流路L1Aと、熱分解装置10A及びインピンジャー20を接続する流路L2Aと、各インピンジャー20を接続する流路21と、熱分解により生じた残渣を回収する排出口23と、軽質オレフィン含有ガスを排出する流路22と、を備えている。流路22には、流量計24が設けられている。それぞれのインピンジャー20には冷却水Wが貯留されている。
【0075】
〔実施例1〕
ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)を1:1(質量比)で含む第1の廃プラスチック(2100g)と、ポリ塩化ビニル(PVC)を含む第2の廃プラスチック(140g)と、ポリアミド(PA)を含む第3の廃プラスチック(560g)とを準備し、これらの廃プラスチックを混合して、混合物1(2800g)を得た。ポリアミド(PA)としては、ナイロン6を用いた。
第1の廃プラスチック、第2の廃プラスチック及び第3の廃プラスチックとして、それぞれ、成分が明記されている廃プラスチックを用いた。
ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)は第1の樹脂に相当し、ポリ塩化ビニル(PVC)は第2の樹脂に相当し、ポリアミド(PA)は第3の樹脂に相当する。
第1の廃プラスチック中の第1の樹脂の含有量は、100質量%である。第2の廃プラスチック中の第2の樹脂の含有量は、80質量%である。第3の廃プラスチック中の第3の樹脂の含有量は、100質量%である。
廃プラスチックの形状は、いずれもペレット状である。混合物1を下記条件で熱分解し、熱分解生成物を生成した。
-条件-
・装置 :実験装置が備える熱分解装置10A(容積8L)
・熱分解温度 :650℃
・圧力 :2kPa
・熱分解装置10A中における混合物1の滞留時間:8秒
【0076】
次に、熱分解装置10Aで生成した熱分解生成物を下記条件で3本のインピンジャー20に貯留された冷却水に順番に通気させることで、油成分及び水成分を凝縮させた。なお、インピンジャー20内の冷却水Wは外部から氷冷することで0℃に調整されている。
その後、インピンジャー20の冷却水Wの上部に凝縮した凝縮物を1日静置して油層と水層とに分離したのち、油層を油成分として回収し、水層を水成分として回収した。
水中への通気により凝縮されなかったガス(軽質オレフィン含有ガス)は、流路22から回収した。また、熱分解で生じた残渣も排出口23から回収した。
-条件-
・各インピンジャー20内の冷却水W :900mL
・冷却水Wの温度:0℃
【0077】
〔実施例2〕
実施例1と同様の第1の廃プラスチック、第2の廃プラスチック、及び第3の廃プラスチックを用いた。
実施例2は、第1の廃プラスチック、第2の廃プラスチック、及び第3の廃プラスチックを、表2に示す割合になるように混合して混合物2を得た以外、実施例1と同様にして、熱分解生成物を生成した。その後、実施例1と同様にして、熱分解生成物から油成分及び水成分を凝縮させた後、油成分及び水成分を回収した。
【0078】
〔比較例1〕
実施例1と同様の第1の廃プラスチック及び第2の廃プラスチックを用いた。
比較例1は、第1の廃プラスチック及び第2の廃プラスチックを、表2に示す割合になるように混合して混合物1Cを得た以外、実施例1と同様にして、熱分解生成物を生成した。その後、実施例1と同様にして、熱分解生成物から油成分及び水成分を凝縮させた後、油成分及び水成分を回収した。
【0079】
<評価>
(軽質オレフィン含有ガス)
流路22から回収したガス(軽質オレフィン含有ガス)について、ガスクロマトグラフを用いて、ガス中に、炭化水素留分が含まれることを確認した。
ガスクロマトグラフの条件は以下の通りである。
-条件-
・測定機:ガスクロマトグラフ(Agilent社製、品番:7890A)
・検出器:FID(水素炎イオン化検出器)
・カラム:2つのAgilent社製カラムを、品番「123-1015」及び品番「19091P-S12」の順で接続し、品番「123-1015」の側から軽質オレフィン含有ガスを通気した。
・検出器温度:250℃
【0080】
(塩素原子の含有量に対する窒素原子の含有量の比率(窒素原子の含有量/塩素原子の含有量))
実施例1~2及び比較例1で用いた混合物を用いて、樹脂総量中における窒素原子の含有量(N原子の含有量)及び塩素原子の含有量(Cl原子の含有量)を以下の方法で測定した。得られた値から、塩素原子の含有量に対する窒素原子の含有量の比率(N原子の含有量/Cl原子の含有量)を算出した。結果を表2に示す。
窒素原子の含有量は、CHN元素分析計(elementar社製、品番:vario EL cube)を用いて測定した。
塩素原子の含有量は、以下の装置を用いて測定した。
(a)燃焼装置
装置:日東精工アナリテック社製、製品名「AQF-2100H」、
(b)イオンクロマトグラフィー分析装置
装置:サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、製品名「DIONEX Integrion RFIC」
・カラム:「IonPac AG12A」及び「IonPac AS12A」
【0081】
(油成分中の有機塩素の含有率C及び水成分中の無機塩素の含有率C
各例で得られた油成分中の有機塩素の含有率C及び水成分中の無機塩素の含有率Cを、それぞれ以下の方法で求めた。結果を表2に示す。
【0082】
(1)全塩素原子分析
回収した油成分及び水成分中の塩素原子の合計の含有量を以下の装置を用いて測定した。
(a)燃焼装置
装置:日東精工アナリテック社製、製品名「AQF-2100H」、
(b)イオンクロマトグラフィー分析装置
装置:サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、製品名「DIONEX Integrion RFIC」
・カラム:「IonPac AG12A」及び「IonPac AS12A」
【0083】
(2)無機塩素分析
回収した水成分中の無機塩素の含有量を以下の装置を用いて測定した。水成分中の無機塩素の含有率Cは、前記数式(数3)より算出した。
装置:サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、製品名「DIONEX ICS2000」
・カラム:「IonPac AG11HG」及び「IonPac AS11HG」
(3)有機塩素分析
回収した油成分中の有機塩素の含有量は、上記塩素原子の合計の含有量と、無機塩素の含有量との差から算出した。油成分中の有機塩素の含有率Cは、前記数式(数1)より算出した。
【0084】
【表2】
【0085】
第1の廃プラスチックと、第2の廃プラスチックと、第3の廃プラスチックとを表2に記載の比率で含む混合物を熱分解した実施例1~2は、混合物中にポリアミド(第3の廃プラスチック)を含まない比較例1に比べ、有機塩素の含有率Cが高く、無機塩素の含有率Cが低くなった。
また、実施例1と実施例2との対比により、樹脂総量中におけるN原子の比率(N原子の含有量/Cl原子の含有量)を増大することで、有機塩素の含有率がCより高く、かつ無機塩素の含有率Cがより低くなった。
以上の結果より、本実施例によれば、ポリ塩化ビニルを含む廃プラスチックを熱分解する際に、無機塩素ガスの生成量を低減できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の廃プラスチックの熱分解生成物の製造方法は、腐食性を有する塩化水素の生成量を低減できることに加え、熱分解生成物中に含まれる軽質オレフィン含有ガスをプラスチック原料として再利用し得る技術であるため、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0087】
10,10A…熱分解装置、12…冷却装置、14…除塵装置、16…洗浄装置、18…貯留ドラム、19…オレフィン精製装置、20…インピンジャー、21,22…流路、23…排出口、24…流量計、100…熱分解生成物の製造装置,101…実験装置、L1,L2,L3,L4,L5,L6,L10,L20…配管、L1A,L2A…流路。
図1
図2
図3
図4
図5