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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163637
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】波長変換部材
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20241115BHJP
【FI】
G02B5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079415
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145104
【弁理士】
【氏名又は名称】膝舘 祥治
(72)【発明者】
【氏名】若木 貴功
【テーマコード(参考)】
2H148
【Fターム(参考)】
2H148AA00
(57)【要約】
【課題】波長変換効率の低下を低減できる波長変換部材を提供する。
【解決手段】第1主面、前記第1主面の反対側に位置する第2主面、および前記第1主面と前記第2主面とを接続する側面を有し、量子ドットを含む波長変換層と、第1主面上に配置される第1バリア層と、第2主面上に配置される第2バリア層と、第1バリア層および第2バリア層の間に配置され、平面視において波長変換層の側面を囲む無機部材と、第1バリア層及び無機部材の間に配置され、第1バリア層及び無機部材を接続する第1樹脂層と、第2バリア層及び無機部材の間に配置され、第2バリア層及び無機部材を接続する第2樹脂層と、を備える波長変換部材である。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面、前記第1主面の反対側に位置する第2主面、および前記第1主面と前記第2主面とを接続する側面を有し、量子ドットを含む波長変換層と、
前記第1主面上に配置される第1バリア層と、
前記第2主面上に配置される第2バリア層と、
前記第1バリア層および第2バリア層の間に配置され、平面視において前記波長変換層の前記側面を囲む無機部材と、
前記第1バリア層及び前記無機部材の間に配置され、前記第1バリア層及び前記無機部材を接続する第1樹脂層と、
前記第2バリア層及び前記無機部材の間に配置され、前記第2バリア層及び前記無機部材を接続する第2樹脂層と、を備える波長変換部材。
【請求項2】
前記無機部材は、金属を含む請求項1に記載の波長変換部材。
【請求項3】
前記無機部材は、気体透過度が1cc・m-2・24h-1・atm-1以下である請求項1に記載の波長変換部材。
【請求項4】
前記第1樹脂層は、前記第1バリア層と前記波長変換層との間の少なくとも一部に延在する部分を更に有する請求項1から3のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項5】
前記第2樹脂層は、前記第2バリア層と前記波長変換層との間の少なくとも一部に延在する部分を更に有する請求項1から3のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項6】
前記波長変換層は、
前記第1バリア層および前記波長変換層の間に配置される第3バリア層と、
前記第2バリア層および前記波長変換層の間に配置される第4バリア層と、を更に備える請求項1から3のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項7】
前記第3バリア層の側面は、前記第1樹脂層と前記無機部材との界面を被覆する請求項6に記載の波長変換部材。
【請求項8】
前記第4バリア層の側面は、前記第2樹脂層と前記無機部材との界面を被覆する請求項6に記載の波長変換部材。
【請求項9】
前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層と、前記第1バリア層、前記第2バリア層、前記波長変換層及び前記無機部材からなる群から選択される少なくとも2つとに囲まれる空隙を有する請求項1から3のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項10】
前記第1樹脂層および前記第2樹脂層の少なくとも一方は、前記波長変換層の側面と前記無機部材との間の少なくとも一部に延在する部分を更に有する請求項1から3のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項11】
前記波長変換層の第1主面に直交する方向において、前記波長変換層の厚みに対する前記無機部材の厚みの比が、0.6以上1以下である請求項1から3のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項12】
前記波長変換層の第1主面と前記波長変換層の側面に直交する断面において、前記波長変換層の側面に直交する方向における前記無機部材の幅は、100μm以上1mm以下である請求項1から3のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項13】
前記無機部材は、前記第1バリア層に対向する面に形成される少なくとも1つの第1凹部、および前記第2バリア層に対向する面に形成される少なくとも1つの第2凹部の少なくとも一方を有し、前記第1樹脂層の少なくとも一部が前記第1凹部に配置されるか、または前記第2樹脂層の少なくとも一部が前記第2凹部に配置される請求項1から3のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項14】
前記第1樹脂層の全体が前記第1凹部に収容されるか、または前記第2樹脂層の全体が前記第2凹部に収容される請求項13に記載の波長変換部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、波長変換部材に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等の画像表示装置の分野では、色再現性を向上させるため、量子ドットを含む波長変換部材を利用することが提案されている。このような装置では、量子ドットが水分、酸素等にさらされると、波長変換部材の波長変換効率が低下することがある。例えば、特許文献1では、量子ドットを含む機能層及び2つのガスバリアフィルムを有する機能層積層体と、その端面を覆う端面保護層と、を有する機能性積層フィルムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/039079号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
波長変換部材の波長変換効率の低下を低減することに関しては未だ改善の余地がある。
【0005】
本開示の一態様は、波長変換効率の低下を低減できる波長変換部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る波長変換部材は、第1主面、前記第1主面の反対側に位置する第2主面、および前記第1主面と前記第2主面とを接続する側面を有し、量子ドットを含む波長変換層と、前記第1主面上に配置される第1バリア層と、前記第2主面上に配置される第2バリア層と、前記第1バリア層および第2バリア層の間に配置され、平面視において前記波長変換層の前記側面を囲む無機部材と、前記第1バリア層及び前記無機部材の間に配置され、前記第1バリア層及び前記無機部材を接続する第1樹脂層と、前記第2バリア層及び前記無機部材の間に配置され、前記第2バリア層及び前記無機部材を接続する第2樹脂層と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、波長変換効率の低下を低減できる波長変換部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】実施形態1に係る波長変換部材を第2バリア層側からみた部分透過概略平面図である。
図1B図1Aに示す波長変換部材のA-A線断面における概略断面図である。
図2】実施形態2に係る波長変換部材の概略断面図である。
図3】実施形態3に係る波長変換部材の概略断面図である。
図4】実施形態4に係る波長変換部材の概略断面図である。
図5】実施形態5に係る波長変換部材の概略断面図である。
図6】実施形態6に係る波長変換部材の概略断面図である。
図7A】実施形態1に係る波長変換部材の製造方法の一工程を例示する概略断面図である。
図7B】実施形態1に係る波長変換部材の製造方法の一工程を例示する概略断面図である。
図7C】実施形態1に係る波長変換部材の製造方法の一工程を例示する概略断面図である。
図7D】実施形態1に係る波長変換部材の製造方法の一工程を例示する概略断面図である。
図7E】実施形態1に係る波長変換部材の製造方法の一工程を例示する概略断面図である。
図7F】実施形態1に係る波長変換部材の製造方法の一工程を例示する概略断面図である。
図7G】実施形態1に係る波長変換部材の製造方法の一工程を例示する概略断面図である。
図7H】実施形態1に係る波長変換部材の製造方法の一工程を例示する概略断面図である。
図8】波長変換部材の製造方法の一工程を示す概略上面図である。
図9】波長変換部材の製造方法の一工程を示す概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る発明を実施するための実施形態を説明する。なお、以下に説明する本開示に係る波長変換部材は、本開示に係る発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本開示に係る発明を以下のものに限定しない。各図面中、同一の機能を有する部材には、同一符号を付している場合がある。要点の説明又は理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態に分けて示す場合があるが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせは可能である。後述の実施形態では、前述と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態ごとには逐次言及しないものとする。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。また、断面図として、切断面のみを示す端面図を示す場合がある。
【0010】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されていれば、本用語に含まれる。また組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。さらに本明細書に記載される数値範囲の上限及び下限は、数値範囲として例示された数値をそれぞれ任意に選択して組み合わせることが可能である。本明細書において、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係等は、JIS Z8110に従う。蛍光体の半値幅は、発光材料の発光スペクトルにおいて、最大発光強度に対して発光強度が50%となる発光スペクトルの波長幅(半値全幅;FWHM)を意味する。本明細書において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。本明細書において「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、2以上の層が結合されていてもよく、2以上の層が分離可能であってもよい。また、「積層」との語は、2以上の層が接していてもよく、2以上の層が接しておらず他の部材を介して配置していてもよい。本明細書において層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」配置されるとは、上部だけでなく下部に配置される場合も含む。
【0011】
実施形態1
図1Aは、実施形態1に係る波長変換部材100を第2バリア層10b側からみた部分透過概略平面図である。図1Bは、図1Aに示す波長変換部材のA-A線断面における概略断面図である。波長変換部材100は、例えば、平面視形状が略矩形形状である。波長変換部材100は、例えば、薄い板状である。図1Aに示すように無機部材30は、波長変換層20を囲って配置され、且つ、図1Bに示すように第1バリア層10aと第2バリア層10bの間に配置される。無機部材30は波長変換部材100の外周と波長変換層20の外周に沿って、波長変換層20に近接して配置される。無機部材30は波長変換層20に接して配置されてもよく、波長変換層20との間の少なくとも一部に空隙を有して配置されてもよい。図1Aでは、無機部材30は、波長変換層20の外周全体に亘って配置されているが、波長変換層20の外周の一部のみに配置されていてもよい。
【0012】
図1Bに示すように、波長変換部材100は、第1バリア層10aと、波長変換層20と、第2バリア層10bと、を含む。波長変換層20は、第1バリア層10a上に配置される。第2バリア層10bは、波長変換層20上に配置される。波長変換層20は、第1主面22と、第1主面22の反対側に位置する第2主面24と、第1主面22と第2主面24とを接続する側面26を有する。第1バリア層10aは、波長変換層20の第1主面22上に配置され、第2バリア層10bは、波長変換層20の第2主面24上に配置される。無機部材30は第1バリア層10aと第2バリア層10bとの間に配置される。無機部材30は、平面視において波長変換層20を囲み、側面26に近接して配置される。無機部材30は側面26に接して配置されてもよく、側面26との間の少なくとも一部に空隙を有して配置されてもよい。第1バリア層10aと無機部材30の間には、第1樹脂層40aが配置される。第1樹脂層40aは、第1バリア層10aと無機部材30とを接続して配置される。第2バリア層10bと無機部材30の間には、第2樹脂層40bが配置される。第2樹脂層40bは、第2バリア層10bと無機部材30とを接続して配置される。
【0013】
本明細書では、波長変換部材100において、第1バリア層10a側を「下方」や「下面側」等と称し、厚み方向Zにおいて、第1バリア層10aと反対側を「上方」や「上面側」等と称することがある。また、厚み方向Zに交差する方向を「側方」と称することがある。波長変換部材100は、例えば、液晶表示装置のバックライトユニット等に利用される。この場合、波長変換部材100は、例えば、複数の発光素子上に配置され、複数の発光素子を一括して覆う。複数の発光素子から出射された光は、波長変換部材100の下面(例えば、第1バリア層10a側)から波長変換部材100に入射する。該入射光のうち一部は波長変換され、波長変換されない入射光とともに波長変換部材100の上面(例えば、第2バリア層10b側)から出射する。以下に、波長変換部材100の構成について詳細に説明する。
【0014】
第1バリア層
第1バリア層10aは、例えば、水分、酸素等に対するバリア機能を有する層である。第1バリア層10aは、例えば、無機層を有するバリアフィルム等である。第1バリア層10aは、例えば膜状の樹脂硬化物である基材フィルムと基材フィルムの少なくとも一方の主面上に設けられる無機層とを有している。第1バリア層10がバリア機能を有することで、第1バリア層10a側から入り込んでくる水分、酸素等が波長変換層20に達することを低減でき、波長変換層20に含まれる量子ドットの発光効率の低下を抑えることができる。
【0015】
図1Bに示すように、第1バリア層10aは、波長変換層20の第1主面22と向かい合う第4主面14aと、第4主面14aの反対に位置する第3主面12aと、を含む。本明細書において2つの面が「向かい合う」とは、2つの面が接して配置されている状態であってもよく、2つの面が接しておらず他の部材を介して配置されている状態であってもよい。第3主面12aと第4主面14aとは、厚み方向Zにおいて反対に位置する。第3主面12aと第4主面14aとは、例えば、厚み方向Zに直交する略平面である。本明細書において、層の面が略平面であるとは、層の面が積層等の製造の過程で生じる凹凸を含む平面であることを意味する。該凹凸は、例えば、20μm以下の高低差を含む。第1バリア層10aは、第3主面12aと第4主面14aとを接続する第1端面16aを含む。第1端面16aは、例えば、厚み方向Zに延在する平面である。第1端面16aは、平面視において波長変換部材100の外周に沿って配置される。第1端面16aは、後述する無機部材30の第3端面36、第2バリア層10bの第2端面16b、第1樹脂層40aの第4端面46a及び第2樹脂層40bの第5端面46bと同一面上に配置される。
【0016】
第1バリア層10aの平均厚みは、例えば、波長変換部材100の平均厚みの5%以上60%以下であり、好ましくは20%以上45%以下である。第1バリア層10aの平均厚みは、例えば20μm以上150μm以下であってよく、好ましくは20μm以上120μm以下、又は25μm以上100μm以下であってよい。第1バリア層10aの平均厚みは、第3主面12aと第4主面14aとの間の平均距離とも言える。第1バリア層10aが膜状である場合、平均厚みは、例えば、反射分光膜厚計等を用いて測定した任意の3箇所の厚みの算術平均値として求められる。
【0017】
波長変換層
波長変換層20は、波長変換部材100に入射した光の一部の波長を変換する。波長変換層20は、量子ドットを含む。波長変換層20は、例えば、量子ドットを含む膜状の樹脂硬化物である。なお、量子ドットについての詳細は後述する。
【0018】
図1Bに示すように、波長変換層20は、第1主面22と、第1主面22の反対に位置する第2主面24とを含む。第1主面22と第2主面24とは、厚み方向Zにおいて反対に位置する。第1主面22と第2主面24とは、例えば、厚み方向Zに直交する略平面である。波長変換層20は、第1主面22と第1バリア層10aの第4主面とが向かいあって第1バリア層10上に配置される。
【0019】
波長変換層20の平均厚みD1は、例えば、第1バリア層10aの平均厚みに対して20%以上1500%以下であり、好ましくは、100%以上400%以下である。波長変換層20の平均厚みD1は、例えば、例えば30μm以上200μm以下であってよく、好ましくは30μm以上150μm以下、又は80μm以上120μm以下であってよい。波長変換層20の平均厚みD1は、第1主面22と第2主面24との間の平均距離とも言える。波長変換層20が膜状である場合、平均厚みは、膜状の第1バリア層10aと同様にして求められる。
【0020】
波長変換層20は、第1主面22と第2主面24とを接続する側面26を含む。側面26は厚み方向Zに延在する平面であってよい。側面26は波長変換部材100の端面よりも内側に位置する。波長変換部材100の端面よりも内側に位置するとは、図1のA-A線断面において、波長変換部材100の端面を基準とし、厚さ方向Zに直交する方向において波長変換部材100の端面よりも波長変換部材100の内部側に位置していることをいう。
【0021】
波長変換層20の側面26は、波長変換部材100の外周に沿って配置されている。側面26は、例えば、波長変換部材100の外周に沿って、環状に配置されている。A-A線断面において、側面26と波長変換部材100の端面との平面視における距離Wは、例えば、100μm以上1000μm以下であり、好ましくは100μm以上500μm以下である。
【0022】
また、波長変換層20は1層であってもよく、2層以上であってもよい。波長変換層20が複数の層である場合は、それぞれの層に含まれる量子ドットが有する発光ピーク波長を異ならせてもよい。また、波長変換層20は、少なくとも量子ドットを含む層を有していればよく、例えば、量子ドット以外の蛍光体を含む層を有していてもよい。また、波長変換層20のそれぞれの層には、1種類の量子ドットが含まれていてよく、2種類以上の量子ドットが含まれていてよく、又、1種類以上の量子ドットと1種類以上の蛍光体とが含まれていてよい。
【0023】
第2バリア層
第2バリア層10bは、第1バリア層10aと同様、例えば、水分、酸素等に対するバリア機能を有する層である。第2バリア層10bは、例えば、無機層を有するバリアフィルム等を用いることができる。第2バリア層10bがバリア機能を有することで、第2バリア層10b側から入り込んでくる水分、酸素等が波長変換層20に達することを低減でき、波長変換層20に含まれる量子ドットの発光効率の低下を抑えることができる。第2バリア層10bは、例えば、第1バリア層10aを構成する基材フィルム、無機層等と同じ部材を用いて、構成されてよい。
【0024】
図1Bに示すように、第2バリア層10bは、波長変換層20の第2主面24と向かい合う第5主面12bと、第5主面12bの反対に位置する第6主面14bと、を含む。第5主面12bと第6主面14bとは、厚み方向Zにおいて反対に位置する。第5主面12bと第6主面14bとは、例えば、厚み方向Zに直交する略平面である。第2バリア層10bは、第5主面12bと第6主面14bとを接続する第2端面16bを含む。第2端面16bは、例えば厚み方向Zに延在する平面である。第2端面16bは、平面視において波長変換部材100の外周に沿って配置される。第2端面16bは、第1バリア層10aの第1端面16a、後述する無機部材30の第3端面36、第1樹脂層40aの第4端面46a及び第2樹脂層40bの第5端面46bと同一面上に配置される。
【0025】
無機部材
無機部材30は、例えば、水分、酸素等に対する優れたバリア機能を有する部材である。無機部材30が波長変換層20の側面26を囲って配置されることで、波長変換層20の側面26からの水分、酸素等の侵入を効果的に低減することができ、波長変換層20に含まれる量子ドットの発光効率の低下を抑えることができる。無機部材30は、例えば気体透過度が1cc・m-2・24h-1・atm-1以下である材料から構成されてよく、アルミニウム、ステンレス等の金属材料、ガラス等から構成されてよい。特に、無機部材30は、金属材料から構成されることが好ましい。無機部材30が延性のある金属材料であることで、例えば、波長変換部材100を液晶表示装置に配置する際、液晶表示装置のフレームや、位置決め部材に波長変換部材100が接触したとしても、無機部材30の表面に割れ等が生じることを低減することができる。その結果、波長変換部材100のバリア機能の大幅な低下が起きにくくなる。
【0026】
無機部材30は、第1バリア層10aの第4主面14aに向かい合う第7主面32と、第7主面32の反対側に位置し、第2バリア層10bの第5主面12bに向かい合う第8主面34と、を含む。第7主面32と第8主面34とは、厚み方向Zにおいて反対に位置する。第7主面32と第8主面34とは、例えば、厚み方向Zに直交する略平面である。無機部材30の平均厚みD2は、例えば、波長変換部材100の平均厚みの60%以上100%以下であり、好ましくは90%以上98%以下である。また、無機部材30の平均厚みD2は、例えば、波長変換層20の平均厚みD1の60%以上100%以下であり、好ましくは90%以上98%以下である。更に無機部材30の平均厚みD2は、例えば50μm以上150μm以下であってよく、好ましくは80μm以上120μm以下、又は90μm以上98μm以下であってよい。無機部材30の平均厚みD2は、第7主面32と第8主面34との間の平均距離とも言える。無機部材30の平均厚みD2は、例えば、レーザー変位センサー等を用いて測定した任意の3箇所の厚みの算術平均値として求められる。
【0027】
無機部材30は、第7主面32と第8主面34を接続し、波長変換層20の側面26に向かい合う内側端面38と、第7主面32と第8主面34を接続し、内側端面の反対側に位置する外側端面36(第3端面36)と、を含む。内側端面及び外側端面は、それぞれ厚み方向Zに延在する平面であってよい。無機部材30の内側端面は、波長変換層20の外周に沿って側面26と向かい合って配置される。図1Bに示す波長変換部材100では、無機部材30の内側端面38は、波長変換層20の側面26と近接して配置される。無機部材30の外側端面36は、平面視において波長変換部材100の外周に沿って配置される。無機部材30の外側端面36は、波長変換部材100の端面の一部であってよい。無機部材30は、例えば、平面視において波長変換部材100の外周に沿って環状に配置されている。A-A線断面において、無機部材30の内側端面38と外側端面36の距離Wは、例えば、100μm以上1mm以下であり、好ましくは200μm以上であり、500μm以下、又は300μm以下である。
【0028】
無機部材30の内側端面38及び外側端面36の少なくとも一方は、後述する切断凸部を有していてもよい。例えば、内側端面に切断凸部を有することで、環状の無機部材の内側に波長変換層を配置する際に、波長変換層が内側で移動しにくくなるため、波長変換層の配置精度が向上する。切断部は、後述する波長変換部材の製造方法において、フレームから無機部材を切り出す際に形成される。
【0029】
第1樹脂層
第1樹脂層40aは、例えば、水分、酸素等に対するバリア機能を有し、第1バリア層10a及び無機部材30との密着性に優れる材料で形成される。第1樹脂層40aがバリア機能と密着性を有することで、第1バリア層10aと無機部材30との間から入り込んでくる水分、酸素等が波長変換層20に達することを低減でき、波長変換層20に含まれる量子ドットの発光効率の低下を低減することができる。
【0030】
第1樹脂層40aは、第1バリア層10aと無機部材30の間に配置され、第1バリア層10aと無機部材30とを接続する。第1樹脂層40aの一方の主面は、第1バリア層10aの第4主面14aと密着し、他方の主面は、無機部材30の第7主面32と密着する。第1樹脂層40aの平均厚みは、例えば、波長変換部材100の平均厚みの0.5%以上10%以下であり、好ましくは0.8%以上2%以下である。また、第1樹脂層40aの平均厚みは、例えば、無機部材30の平均厚みの0.5%以上10%以下であり、好ましくは0.8%以上2%以下である。
【0031】
第1樹脂層40aは、第1バリア層10aと波長変換層20との間の少なくとも一部にまで延在する部分を更に含んでいてもよい。第1樹脂層40aが、第1バリア層10aと波長変換層20との間にまで延在することで、波長変換部材の全体厚みのばらつきを低減させやすくなる。また、第1樹脂層40aは、波長変換層20の側面26と無機部材30の内側端面38との間の少なくとも一部にまで延在する部分を更に含んでいてもよい。第1樹脂層40aが、波長変換層20の側面26と無機部材30の内側端面38との間にまで延在することで、水分、酸素等が波長変換層20に達することを低減でき、波長変換層20に含まれる量子ドットの発光効率の低下を抑えることができる。また、波長変換層20と無機部材30との固着強度が向上する。
【0032】
第2樹脂層
第2樹脂層40bは、例えば、水分、酸素等に対するバリア機能を有し、第2バリア層10b及び無機部材30との密着性に優れる材料で形成される。第2樹脂層40bがバリア機能と密着性を有することで、第2バリア層10bと無機部材30との間から入り込んでくる水分、酸素等が波長変換層20に達することを低減でき、波長変換層20に含まれる量子ドットの発光効率の低下を抑えることができる。
【0033】
第2樹脂層40bは、第2バリア層10bと無機部材30の間に配置され、第2バリア層10bと無機部材30とを接続する。第2樹脂層40bの一方の主面は、第2バリア層10bの第5主面12bと密着し、他方の主面は、無機部材30の第8主面34と密着する。第2樹脂層40bの平均厚みは、例えば、波長変換部材100の平均厚みの0.5%以上10%以下であり、好ましくは0.8%以上2%以下である。また、第2樹脂層40bの平均厚みは、例えば、無機部材30の平均厚みの0.5%以上10%以下であり、好ましくは0.8%以上2%以下である。
【0034】
第2樹脂層40bは、第2バリア層10bと波長変換層20との間の少なくとも一部にまで延在する部分を更に含んでいてもよい。第2樹脂層40bが、第2バリア層10bと波長変換層20との間にまで延在することで、波長変換部材の全体厚みのばらつきを低減させやすくなる。また、第2樹脂層40bは、波長変換層20の側面26と無機部材30の内側端面38との間の少なくとも一部にまで延在する部分を更に含んでいてもよい。第2樹脂層40bが、波長変換層20の側面26と無機部材30の内側端面38との間にまで延在することで水分、酸素等が波長変換層20に達することを低減でき、波長変換層20に含まれる量子ドットの発光効率の低下を抑えることができる。また、波長変換層20と無機部材30との固着強度が向上する。
【0035】
次に、第1バリア層10a、第2バリア層10b、無機部材30、第1樹脂層40a、第2樹脂層40b及び波長変換層20の材料について詳細に説明する。
【0036】
第1バリア層及び第2バリア層
第1バリア層10aと第2バリア層10bには、同一材料を採用することができる。第1バリア層10a及び第2バリア層10bの酸素透過率は、例えば0.5cm・m-2・24h-1・atm-1以下であってよく、好ましくは0.3cm・m-2・24h-1・atm-1以下、又は0.1cm・m-2・24h-1・atm-1以下であってよい。第1バリア層10a及び第2バリア層10aの酸素透過率は、酸素透過率測定装置(例えば、MOCON社、OX-TRAN)を用いて、温度23℃かつ相対湿度65%の条件で測定することができる。なお、第1バリア層及び第2バリア層の酸素透過率は、主面に直交する方向において測定される。
【0037】
第1バリア層10a及び第2バリア層10bを構成する無機層を有するバリアフィルムは、例えば基材フィルムと基材フィルムの少なくとも一方の主面上に設けられる無機層とを有していてよい。また例えば、第1バリア層10a及び第2バリア層10bは、2つの基材フィルムと、2つの基材フィルムの間に配置される無機層を含む積層フィルムであってもよい。基材フィルムの構成材料としては、例えば、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。基材フィルムの構成材料としては、好ましくは、ポリエステル、セルローストリアセテートが挙げられる。
【0038】
上記基材フィルムの平均厚みは、例えば10μm以上150μm以下であってよく、好ましくは20μm以上125μm以下であってよい。基材フィルムの平均厚みが、10μm以上であると、波長変換部材のアッセンブリ、取扱い時における皺、折れの発生が効果的に低減される。また150μm以下であれば、画像表示装置の軽量化及び薄膜化に資することができる。
【0039】
基材フィルムは、単一のフィルムから構成されていてもよく、複数のフィルムから構成される積層フィルムであってもよい。このような積層フィルムは、用途に応じて、同種の構成原料のフィルムからなる複数の層から構成されていてもよく、異なる種類の構成原料のフィルムからなる複数の層から構成されていてもよい。
【0040】
無機層は、例えば、酸化物、窒化物、酸窒化物、炭化物等の無機化合物からなる膜であってよい。具体的には、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化インジウムスズ(ITO)等の金属酸化物;窒化アルミニウム等の金属窒化物、炭化アルミニウム等の金属炭化物、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸炭化ケイ素、酸化窒化炭化ケイ素等のケイ素酸化物;窒化ケイ素、窒化炭化ケイ素等のケイ素窒化物;炭化ケイ素等のケイ素炭化物;これらの水素化物などを挙げることができる。無機層は1種の無機化合物から構成されていてもよく、2種以上の無機化合物から構成されていてもよい。
【0041】
無機層の平均厚みは、例えば10nm以上200nm以下であってよく、好ましくは10nm以上100nm以下、又は15nm以上75nm以下であってよい。
【0042】
無機層は、形成材料に応じて公知の方法で形成すればよい。具体的には、CCP-CVD、ICP-CVD等のプラズマCVD法、マグネトロンスパッタリング、反応性スパッタリング等のスパッタリング法、真空蒸着法、気相堆積法などを挙げることができる。
【0043】
第1バリア層10a及び第2バリア層10bの表面には、プリズム加工が施されていてよい。例えば、波長変換部材100の出射面側に位置する第2バリア層10bの表面にアレイ状のプリズム加工が施される。これにより、波長変換部材100の出射面において、効率的に光を出射することができる。また、波長変換部材100の入射面側に位置する第1バリア層10aには、特定の波長の光を透過し、かつ、該特定の波長以外の波長の光を反射させる反射機構を設けてよい。第1バリア層10aは、例えば、ダイクロイックミラー層を備えていてよい。これにより、波長変換部材100内で反射された光のうち波長変換部材100の入射面側に戻る光を反射機構により出射面側に反射させることができる。なお、反射機構は、第2バリア層10bに設けられていてもよい。
【0044】
無機部材
無機部材の水分透過率は、例えば1g・m-2・24h-1・atm-1以下であってよく、好ましくは1×10-3g・m-2・24h-1・atm-1以下、又は1×10-5g・m-2・24h-1・atm-1以下であってよい。無機部材の水分透過率は、大気圧イオン化質量分析法(API-MS法)を用いて、温度23℃かつ相対湿度65%の条件で測定することができる。また、無機部材の水分透過率は、波長変換層の第1主面と直交し、かつ波長変換層、第1バリア層及び第2バリア層を通る断面(例えば、A-A線断面)において、波長変換部材の端部側から内側に向かう方向において測定される。
【0045】
無機部材の気体透過度は、例えば1cc・m-2・24h-1・atm-1以下であってよく、好ましくは1×10-3cc・m-2・24h-1・atm-1以下、又は1×10-5cc・m-2・24h-1・atm-1以下であってよい。無機部材の気体透過度は、大気圧イオン化質量分析法(API-MS法)を用いて、温度23℃かつ相対湿度65%の条件で測定することができる。また、無機部材の気体透過度は、波長変換層の第1主面と直交し、かつ波長変換層、第1バリア層及び第2バリア層を通る断面(例えば、A-A線断面)において、波長変換部材の端部側から内側に向かう方向において測定される。
【0046】
また、無機部材の酸素透過率は、例えば1cc・m-2・24h-1・atm-1以下であってよく、好ましくは1×10-3cc・m-2・24h-1・atm-1以下、又は1×10-5cc・m-2・24h-1・atm-1以下であってよい。無機部材の酸素透過率は、気体透過度と同様にして測定することができる。また、無機部材の酸素透過率は、波長変換層の第1主面と直交し、かつ波長変換層、第1バリア層及び第2バリア層を通る断面(例えば、A-A線断面)において、波長変換部材の端部側から内側に向かう方向において測定される。
【0047】
無機部材の材質は、所望の気体透過度、酸素透過率及び水分透過率の少なくとも一つを達成可能な材質であればよく、少なくとも気体透過度を達成可能な材質であってよい。無機部材の材質としては、例えば金属、ガラス、セラミック等が挙げられ、金属及びガラスからなる群から選択される少なくとも1種であってよい。金属としては、アルミニウム、ステンレス等が挙げられる。無機部材の材質は、延性のある金属が好ましい。無機部材の材質が延性を有することで、物理的、熱的な衝撃による割れやクラックによるガス透過箇所が発生するのを回避できる。これより波長変換部材における衝撃による急激なガス透過率悪化を効果的に回避することができる。
【0048】
無機部材の表面は、平滑であってもよく、凹部が形成されていてもよい。凹部は、例えば無機部材の第7主面及び第8主面の少なくとも一方に形成されていてよい。無機部材の表面に凹部が形成されている場合、凹部の深さは、例えば0.1μm以上10μm以下であってよく、好ましくは0.5μm以上5μm以下であってよい。また凹部の深さは、例えば無機部材の厚みの0.2%以上20%以下であってよく、好ましくは1%以上10%以下であってよい。無機部材の凹部は、例えばウェットエッチングによって形成される。更に無機部材の表面には、例えばブラスト処理されて、細かい凹凸が形成されていてもよい。
【0049】
第1樹脂層及び第2樹脂
第1樹脂層及び第2樹脂層には、同一材料を採用することができる。第1樹脂層及び第2樹脂層を形成する材料は、ガスバリア機能を有することが好ましい。第1樹脂層及び第2樹脂層を形成する材料の酸素透過率は、例えば2.5g・m-2・24h-1・atm-1以下であってよく、好ましくは1.5g・m-2・24h-1・atm-1以下、又は0.5g・m-2・24h-1・atm-1以下であってよい。また、第1樹脂層及び第2樹脂層を形成する材料の水分透過率は、例えば10g・m-2・24h-1・atm-1以下であってよく、好ましくは5g・m-2・24h-1・atm-1以下、又は1g・m-2・24h-1・atm-1以下であってよい。
【0050】
第1樹脂層及び第2樹脂層を形成する材料は、ガスバリア機能に加えて、第1バリア層、第2バリア層及び無機部材に対する密着性に優れる材料であることが好ましい。第1樹脂層及び第2樹脂層を形成する材料としては、例えばエポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂等が挙げられる。
【0051】
第1樹脂層及び第2樹脂層は、その密着性が損なわれない程度において、必要に応じて無機フィラーを更に含んでいてもよい。第1樹脂層及び第2樹脂層が、水分透過率の低い無機フィラーを含有することで、水分、酸素等のガス進入をより効果的に抑制できる。
【0052】
波長変換層
上述したように、波長変換層20は量子ドットを含む。量子ドットとは、数nmから数十nm程度の粒子径を有する半導体結晶粒子である。物質のサイズをナノメートルオーダーまで小さくすると、物質内に電子が限られた状態でしか存在できなくなる。そのため、電子状態が離散的となり、粒子サイズによってバンドギャップが変化する。量子ドットは光を吸収して、そのバンドギャップエネルギーに相当する波長の光を放出する。そのため、粒子サイズ、結晶組成等を制御することにより、量子ドットの発光波長を制御することができ、量子ドットは波長変換物質として機能する。波長変換層20に含まれる量子ドットの粒径は、例えば、5nm以上50nm以下であり、好ましくは、5nm以上25nm以下である。
【0053】
量子ドットを構成する半導体ナノ粒子の粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)画像で観察される粒子の外周の任意の二点を結ぶ線分であって、当該粒子の中心を通過する線分のうち、最も長い線分を指す。半導体ナノ粒子の平均粒径は、TEM画像で観察される、粒径を計測可能な半導体ナノ粒子について、それぞれ粒径を測定し、それらの粒径の算術平均値を意味する。
【0054】
半導体ナノ粒子がロッド状の形状を有するものである場合には、短軸の長さを粒径とみなす。ここで、ロッド状の形状の粒子とは、長軸を含む面を観察したときに、一方向に長い長方形状を含む四角形状(断面は、円、楕円、又は多角形状を有する)、楕円形状、又は多角形状(例えば鉛筆のような形状)等として観察されるものであって、短軸の長さに対する長軸の長さの比が1.2より大きいものを指す。ロッド状の形状の粒子について、長軸の長さは、楕円形状の場合には、粒子の外周の任意の二点を結ぶ線分のうち、最も長い線分を指し、四角形状又は多角形状の場合、外周を規定する辺の中で最も長い辺に平行であり、かつ粒子の外周の任意の二点を結ぶ線分のうち、最も長い線分を指す。短軸の長さは、外周の任意の二点を結ぶ線分のうち、前記長軸の長さを規定する線分に直交し、かつ最も長さの長い線分をいう。半導体ナノ粒子の平均粒径は、具体的には、50000倍以上150000倍以下のTEM像で観察される、すべての計測可能な半導体ナノ粒子について粒径を測定し、それらの粒径の算術平均とする。ここで、「計測可能な」粒子は、TEM像において粒子全体の輪郭が観察できるものである。したがって、TEM像において、その一部が撮像範囲に含まれておらず、「切れて」いるような粒子は計測可能なものではない。1つのTEM像に含まれるナノ粒子が合計100点以上である場合には、1つのTEM像を用いて平均粒径を求める。1つのTEM像に含まれるナノ粒子の数が少ない場合には、撮像場所を変更して、TEM像をさらに取得し、2つ以上のTEM像に含まれる100点以上の粒子について粒径を測定して平均粒径を求める。
【0055】
量子ドットとして具体的には、例えば、ペロブスカイト系量子ドット、カルコパイライト系量子ドット、III-V族半導体系量子ドット等が挙げられる。ペロブスカイト系量子ドットは、例えば下記式(1)で表される化合物を含んでいてよい。
[M (1-w)]xM (1)
【0056】
前記式(1)中、Mは、Cs、Rb、K、Na及びLiからなる群から選択される少なくとも1種を含む第1元素を示す。Aは、アンモニウムイオン、ホルムアミジニウムイオン、グアニジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン及びプロトン化チオウレアイオンからなる群から選択される少なくとも1種を含む非金属カチオンを示す。Mは、Ge、Sn、Pb、Sb及びBiからなる群から選択される少なくとも1種を含む第2元素を示す。Xは、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン、チオシアネート、イソチオシアネート及びスルフィドからなる群から選択される少なくとも1種を含むアニオン又は配位子を示す。xは1以上4以下の数であり、yは1以上2以下の数であり、zは3以上9以下の数であり、wは0以上1以下の数である。前記式(1)において、第1元素M及び非金属カチオンAの両方を含む場合、第1元素M及び非金属カチオンAは共に、配位子を構成する原子団を表す。
【0057】
アンモニウムイオンは、例えば下記式(A-1)で表されてよい。ホルムアミジニウムイオンは、例えば下記式(A-2)で表されてよい。グアニジニウムイオンは、例えば下記式(A-3)で表されてよい。プロトン化チオウレアイオンは、例えば下記式(A-4)で表されてよい。イミダゾリウムイオンは、例えば下記式(A-5)で表されてよい。ピリジニウムイオンは、例えば下記式(A-6)で表されてよい。ピロリジニウムイオンは、例えば下記式(A-7)で表されてよい。非金属カチオンを表す各式中、Rは、互いに独立して、水素原子、炭素数1から4のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、ハロゲン原子及び擬ハロゲンからなる群から選択される少なくとも1種を表す。各式中の任意の2つのRは互いに連結して炭素数3から6の含窒素脂肪族環を形成してもよい。
【0058】
[R] (A-1)
[(NRRC] (A-2)
[(NR] (A-3)
[(NR-SR] (A-4)
【0059】
【化1】
【0060】
前記式(1)で表される組成を有する化合物を含むペロブスカイト系量子ドットは、光源からの光照射によって緑色光又は赤色光を発する。ペロブスカイト系量子ドットは、緑色光に関しては、発光ピーク波長が例えば380nm以上545nm以下の範囲内である光源からの光照射によって、475nm以上560nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する光を発してよい。緑色光を発光するペロブスカイト系量子ドットの発光ピーク波長は、好ましくは510nm以上550nm以下、又は525nm以上535nm以下の範囲内にあってよい。また、赤色光に関しては、発光ピーク波長が例えば380nm以上545nm以下の範囲内である光源からの光照射によって、600nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する光を発してよい。赤色光を発光するペロブスカイト系量子ドットの発光ピーク波長は、好ましくは610nm以上670nm以下、又は625nm以上635nm以下の範囲内にあってよい。また、ペロブスカイト系量子ドットの発光スペクトルにおける半値幅は、例えば35nm以下であってよく、好ましくは30nm以下、又は25nm以下であってよい。ペロブスカイト系量子ドットは、発光スペクトルにおいてバンド端発光を示してもよい。
【0061】
カルコパイライト系量子ドットの第1態様は、例えば、銀(Ag)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び硫黄(S)を含む第1半導体を含み、その表面には、Ga及びSを含む第2半導体が配置されて構成されていてよい。第2半導体は、さらにAgを含んでいてよい。第1半導体は、Ag、In、Ga及びSを含むカルコパイライト型構造を有する半導体であってよい。カルコパイライト系量子ドットの第1態様では、第1半導体を含む粒子の表面に、第2半導体を含む付着物が配置されていてよく、第2半導体を含む付着物が第1半導体を含む粒子を被覆していてもよい。さらに、カルコパイライト系量子ドットは、例えば、第1半導体を含む粒子をコアとし、第2半導体を含む付着物をシェルとして、コアの表面にシェルが配置されるコアシェル構造を有していてもよい。第1態様のカルコパイライト系量子ドットの詳細については、例えば特開2018-044142号公報、国際公開第2022/191032号等の記載を参照することができる。
【0062】
第1半導体は、少なくともAgを含み、その一部が置換されて銅(Cu)、金(Au)及びアルカリ金属(以下、Mと記すことがある)の少なくとも1種をさらに含んでいてもよく、実質的にAgから構成されていてよい。ここで「実質的に」とは、AgとAg以外のAgを置換する元素の総原子数に対するAg以外のAgを置換する元素の原子数の割合が、例えば10%以下であり、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下であることを示す。また、第1半導体は、実質的にAg及びアルカリ金属を構成元素としていてもよい。ここで「実質的に」とは、Ag、アルカリ金属並びにAg及びアルカリ金属以外のAgを置換する元素の総原子数に対するAg及びアルカリ金属以外のAgを置換する元素の原子数の割合が、例えば10%以下であり、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下であることを示す。なお、アルカリ金属には、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)及びセシウム(Cs)が含まれる。
【0063】
第1半導体は、例えば、以下の式(2a)で表される組成を有していてよい。
(Ag (1-p)InGa(1-r)(q+3)/2 (2a)
ここで、p、q及びrは、0<p≦1、0.20<q≦1.2、0<r<1を満たす。Mはアルカリ金属を示す。
【0064】
カルコパイライト系量子ドットの第1態様においては、表面に第2半導体が配置されていてもよい。第2半導体は、第1半導体よりバンドギャップエネルギーが大きい半導体を含んでいてよい。第2半導体は、実質的にGa及びSからなる半導体であってよい。また、第2半導体は、実質的にAg、Ga及びSからなる半導体であってよい。ここで「実質的に」とは、Ga及びSを含む半導体、又は、Ag、Ga及びSを含む半導体に含まれるすべての元素の原子数の合計を100%としたときに、Ga及びS以外、又は、Ag、Ga及びS以外の元素の原子数の割合が、例えば10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下であることを示す。
【0065】
第1態様のカルコパイライト系量子ドットは、発光ピーク波長が例えば380nm以上545nm以下の範囲内である光源からの光照射によって、475nm以上560nm以下の波長範囲(例えば、緑色)に発光ピーク波長を有するバンド端発光を示してもよく、発光ピーク波長は好ましくは510nm以上550nm以下、又は525nm以上535nm以下の範囲内であってよい。また、第1態様のカルコパイライト系量子ドットは、その発光スペクトルにおける半値幅が、例えば、45nm以下であってよく、好ましくは40nm以下、又は30nm以下あってよい。半値幅は例えば、15nm以上であってよい。
【0066】
カルコパイライト系量子ドットの第2態様は、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び硫黄(S)を含む第3半導体を含み、その表面には、Ga及びSを含む第4半導体が配置されて構成されていてよい。第4半導体は、さらにAgを含んでいてよい。第3半導体は、Cu、Ag、In、Ga及びSを含むカルコパイライト型構造を有する半導体であってよい。カルコパイライト系量子ドットの第2態様では、第3半導体を含む粒子の表面に、第4半導体を含む付着物が配置されていてよく、第4半導体を含む付着物が第3半導体を含む粒子を被覆していてもよい。さらに、カルコパイライト系量子ドットは、例えば、第3半導体を含む粒子をコアとし、第4半導体を含む付着物をシェルとして、コアの表面にシェルが配置されるコアシェル構造を有していてもよい。第2態様のカルコパイライト系量子ドットの詳細については、例えば国際公開2020/162622号、国際公開第2023/013361号等の記載を参照することができる。
【0067】
第3半導体は、少なくともAgとCuを含み、その一部が置換されて金(Au)及びアルカリ金属(M)を含んでいてもよい。第3半導体は、実質的にAg、Cu及びアルカリ金属を構成元素としていてもよい。ここで「実質的に」とは、Ag、Cu及びアルカリ金属、並びにAg、Cu及びアルカリ金属以外の元素の総原子数に対するAg、Cu及びアルカリ金属以外の元素の原子数の割合が、例えば10%以下であり、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下であることを示す。
【0068】
第3半導体は、例えば、以下の式(2b)で表される組成を有していてよい。
(AgCu(1-s)InGa(1-u)(t+3)/2 (2b)
ここで、s、t及びuは、0<s<1、0.20<t≦1.2、0<u<1を満たす。
【0069】
カルコパイライト系量子ドットの第2態様においては、表面に第4半導体が配置されていてもよい。第4半導体は、第3半導体よりバンドギャップエネルギーが大きい半導体を含んでいてよい。第4半導体は、実質的にGa及びSからなる半導体であってよい。また、第4半導体は、実質的にAg、Ga及びSからなる半導体であってよい。ここで「実質的に」とは、Ga及びSを含む半導体、又は、Ag、Ga及びSを含む半導体に含まれるすべての元素の原子数の合計を100%としたときに、Ga及びS以外、又は、Ag、Ga及びS以外の元素の原子数の割合が、例えば10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下であることを示す。
【0070】
第2態様のカルコパイライト系量子ドットは、発光ピーク波長が例えば380nm以上545nm以下の範囲内である光源からの光照射により、600nm以上680nm以下の波長範囲(例えば、赤色)に発光ピーク波長を有するバンド端発光を示してもよく、発光ピーク波長は好ましくは610nm以上670nm以下、620nm以上660nm以下、又は625nm以上635nm以下の範囲内であってよい。また、第2態様のカルコパイライト系量子ドットは、その発光スペクトルにおける半値幅が、例えば、70nm以下であってよく、好ましくは65nm以下、60nm以下、又は30nm以下であってよい。半値幅は例えば、15nm以上であってよい。
【0071】
カルコパイライト系量子ドットの第3態様は、例えば、銀(Ag)、ガリウム(Ga)及びセレン(Se)を含む第5半導体を含み、その表面には、亜鉛(Zn)及びS(硫黄)を含む第6半導体が配置されて構成されていてよい。第5半導体は、少なくともAg、Ga及びSeを含み、その一部が置換されてインジウム(In)及び硫黄(S)を含んでいてもよい。また、第6半導体は、Ga及びSeの少なくとも一方をさらに含んでいてよい。第5半導体は、Ag、Ga及びSeを含むカルコパイライト型構造を有する半導体であってよい。カルコパイライト系量子ドットの第3態様では、第5半導体を含む粒子の表面に、第6半導体を含む付着物が配置されていてよく、第6半導体を含む付着物が第5半導体を含む粒子を被覆していてもよい。さらに、カルコパイライト系量子ドットは、例えば、第5半導体を含む粒子をコアとし、第6半導体を含む付着物をシェルとして、コアの表面にシェルが配置されるコアシェル構造を有していてもよい。第3態様のカルコパイライト系量子ドットの詳細については、例えば国際公開第2021/039290号等の記載を参照することができる。
【0072】
第5半導体は、少なくともAg、Ga及びSeを含み、その一部が置換されてインジウム(In)及び硫黄(S)を含んでいてもよい。
【0073】
第5半導体は、例えば、以下の式(2c)で表される組成を有していてよい。
AgInGa1-xSe1-y (2c)
ここで、x及びyは、0≦x<1、0≦y≦1を満たす。
【0074】
カルコパイライト系量子ドットの第3態様においては、表面に第6半導体が配置されていてもよい。第6半導体は、第5半導体よりバンドギャップエネルギーが大きい半導体を含んでいてよい。第6半導体は、実質的にZn及びSからなる半導体であってよい。ここで「実質的に」とは、Zn及びSを含む半導体に含まれるすべての元素の原子数の合計を100%としたときに、Zn及びS以外の元素の原子数の割合が、例えば10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下であることを示す。
【0075】
第3態様のカルコパイライト系量子ドットは、発光ピーク波長が例えば380nm以上545nm以下の範囲内である光源からの光照射によって、600nm以上680nm以下の波長範囲(例えば、赤色)に発光ピーク波長を有するバンド端発光を示してもよく、発光ピーク波長は好ましくは610nm以上670nm以下、又は625nm以上635nm以下の範囲内であってよい。また、第3態様のカルコパイライト系量子ドットは、その発光スペクトルにおける半値幅が、例えば、50nm以下であってよく、好ましくは40nm以下、又は30nm以下であってよい。半値幅は例えば、15nm以上であってよい。
【0076】
リン化インジウム(InP)系量子ドットは、III-V族半導体を含む半導体ナノ粒子の一形態である。III-V族半導体としては、例えばAlN、AlP、AlAs、AlSb、GaAs、GaP、GaN、GaSb、InN、InAs、InP、InSb、TiN、TiP、TiAs、TiSb等を挙げることができる。
【0077】
III-V族系量子ドットは、III-V族半導体を含む半導体ナノ粒子の表面に、半導体ナノ粒子を構成するIII-V族半導体とは異なる第7半導体を含む付着物が配置されていてよく、第7半導体を含む付着物がIII-V族半導体を含む粒子を被覆していてもよい。さらに、III-V族系量子ドットは、例えば、III-V族半導体を含む粒子をコアとし、第7半導体を含む付着物をシェルとして、コアの表面にシェルが配置されるコアシェル構造を有していてもよい。第7半導体はIII-V族半導体よりもバンドギャップエネルギーの大きい半導体であってよい。III-V族半導体と第7半導体の組み合わせとしては、例えば、InP/ZnS、GaP/ZnS、InN/GaN、InP/CdSSe、InP/ZnSeTe、InGaP/ZnSe、InGaP/ZnS、InP/ZnSTe、InGaP/ZnSTe、InGaP/ZnSSe等が挙げられる。
【0078】
III-V族半導体系(例えば、リン化インジウム系)量子ドットは、発光ピーク波長が例えば380nm以上500nm以下の範囲内である光源からの光照射によって緑色光又は赤色光を発してよい。緑色光を発するIII-V族半導体系量子ドットは、発光ピーク波長が例えば380nm以上545nm以下の範囲内である光源、好ましくは発光ピーク波長が例えば380nm以上500nm以下の範囲内である光源からの光照射によって、475nm以上580nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有するバンド端発光を示してしてよい。発光ピーク波長は、好ましくは510nm以上570nm以下、520nm以上560nm以下、又は525nm以上535nm以下の範囲内にあってよい。また、赤色光を発するIII-V族半導体系量子ドットは、発光ピーク波長が例えば380nm以上545nm以下の範囲内である光源からの光照射により、600nm以上680nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有するバンド端発光を示してもよい。発光ピーク波長は好ましくは610nm以上670nm以下、620nm以上660nm以下、又は625nm以上635nm以下の範囲内であってよい。また、III-V族半導体系量子ドットは、その発光スペクトルにおける半値幅が、例えば、70nm以下であってよく、好ましくは65nm以下、60nm以下、又は30nm以下であってよい。半値幅は例えば、15nm以上であってよい。
【0079】
量子ドットは、必要に応じてペロブスカイト系量子ドット、カルコパイライト系量子ドット及びリン化インジウム系量子ドット以外の他の量子ドットを含んでいてもよい。他の量子ドットとしては、II-VI族半導体、IV-VI族半導体、IV族半導体からなる群より選択される少なくとも1種を含む粒子が挙げられる。
【0080】
II-VI族半導体の具体例としては、CdSe、CdTe、CdS、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgST
e、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe等が挙げられる。IV-VI族半導体の具体例としては、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、SnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe等が挙げられる。IV族半導体の具体例としては、Si、Ge、SiC、SiGe等が挙げられる。
【0081】
量子ドットは、その表面に表面修飾剤が配置されていてもよい。表面修飾剤の具体例としては、炭素数2以上20以下のアミノアルコール;イオン性表面修飾剤;ノニオン性表面修飾剤;炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含窒素化合物;炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含硫黄化合物;炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含酸素化合物、;炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含リン化合物;第2族元素、第12族元素及び第13族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含むハロゲン化物等を挙げることができる。表面修飾剤は、1種単独でも、異なる2種以上のものを組み合わせて用いてもよい。
【0082】
表面修飾剤として用いられるアミノアルコールは、アミノ基及びアルコール性水酸基を有し、炭素数2以上20以下の炭化水素基を含む化合物であればよい。アミノアルコールの炭素数は、好ましくは10以下、より好ましくは6以下である。アミノアルコールを構成する炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルカン、アルケン、アルキン等の炭化水素に由来してよい。炭化水素に由来するとは、炭化水素から少なくとも2つの水素原子を取り除いて炭化水素基が構成されることを意味する。アミノアルコールとして具体的には、アミノエタノール、アミノプロパノール、アミノブタノール、アミノペンタノール、アミノヘキサノール、アミノオクタノール等を挙げることができる。例えば、半導体ナノ粒子表面にアミノアルコールのアミノ基が結合し、その反対側である粒子最表面に水酸基が露出することで半導体ナノ粒子の極性に変化が生じ、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)への分散性が向上する。
【0083】
表面修飾剤として用いられるイオン性表面修飾剤としては、分子内にイオン性官能基を有する含窒素化合物、含硫黄化合物、含酸素化合物等が挙げられる。イオン性官能基はカチオン性、アニオン性のいずれであってもよく、少なくともカチオン性基を有することが好ましい。表面修飾剤の具体例及び表面修飾の方法は、例えばChemistryLetters,Vol.45,pp898-900,2016の記載を参照することができる。
【0084】
イオン性表面修飾剤は、例えば、3級又は4級アルキルアミノ基を有する含硫黄化合物であってよい。アルキルアミノ基のアルキル基の炭素数は、例えば1以上4以下であってよい。また、含硫黄化合物は、炭素数2以上20以下のアルキル又はアルケニルチオールであってよい。イオン性表面修飾剤として具体的には、ジメチルアミノエタンチオールのハロゲン化水素塩、トリメチルアンモニウムエタンチオールのハロゲン塩、ジメチルアミノブタンチオールのハロゲン化水素塩、トリメチルアンモニウムブタンチオールのハロゲン塩等が挙げられる。
【0085】
表面修飾剤として用いられるノニオン性表面修飾剤としては、例えば、アルキレングリコール単位、アルキレングリコールモノアルキルエーテル単位等を含むノニオン性官能基を有する、含窒素化合物、含硫黄化合物、含酸素化合物等が挙げられる。アルキレングリコール単位におけるアルキレン基の炭素数は、例えば、2以上8以下であってよく、好ましくは2以上4以下である。またアルキレングリコール単位の繰り返し数は、例えば1以上20以下であってよく、好ましくは2以上10以下である。ノニオン性表面修飾剤を構成する含窒素化合物はアミノ基を有していてよく、含硫黄化合物はチオール基を有していてよく、含酸素化合物は水酸基を有していてよい。ノニオン性表面修飾剤の具体例としては、メトキシトリエチレンオキシエタンチオール、メトキシヘキサエチレンオキシエタンチオール等が挙げられる。
【0086】
炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含窒素化合物としてはアミン類、アミド類等が挙げられる。炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含硫黄化合物としてはチオール類等が挙げられる。炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含酸素化合物としてはカルボン酸類、アルコール類、エーテル類、アルデヒド類、ケトン類などが挙げられる。炭素数4以上20以下の炭化水素基を有する含リン化合物としては、例えば、トリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスフィンオキシド、トリアリールホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0087】
第2族元素、第12族元素及び第13族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含むハロゲン化物としては、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛、塩化カドミウム、塩化アルミニウム、塩化ガリウム等が挙げられる。
【0088】
波長変換層に含まれる量子ドットは、475nm以上560nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する第1量子ドット及び600nm以上680nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する第2量子ドットからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。量子ドットは、第1量子ドットの少なくとも1種及び第2量子ドットの少なくとも1種を含んでいてもよい。第1量子ドットは、例えばペロブスカイト系量子ドット、リン化インジウム系量子ドット及び第1態様のカルコパイライト系量子ドットからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。好ましくは、第1量子ドットは、ペロブスカイト系量子ドット及び第1態様のカルコパイライト系量子ドットからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。また第2量子ドットは、例えばペロブスカイト系量子ドット、第2態様のカルコパイライト系量子ドット及びリン化インジウム系量子ドットからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。好ましくは、第2量子ドットは、第2態様のカルコパイライト系量子ドット及びリン化インジウム系量子ドットからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。波長変換層が、第1量子ドットと第2量子ドットを含むことで、波長変換層に例えば420nm以上460nm以下の波長を有する青色光が照射されると、第1量子ドット及び第2量子ドットからそれぞれ緑色光及び赤色光が射出される。その結果、第1量子ドット及び第2量子ドットから射出される緑色光及び赤色光と、波長変換層を透過する青色光の混色により、白色光が得られる。
【0089】
積層体を構成する波長変換層は1層であってもよく、2層以上であってもよい。例えば、波長変換層が2層である場合は、一方の波長変換層が第1量子ドットを含み、他方の波長変換層が第2量子ドットを含んでいてよい。波長変換層は、例えば、緑色光を発するカルコパイライト系量子ドットと赤色光を発するカルコパイライト系量子ドットとを含んでいてよい。波長変換層は、緑色光を発するカルコパイライト系量子ドットと赤色光を発するリン化インジウム系量子ドットとを含んでいてよい。波長変換層は、緑色光を発するペロブスカイト系量子ドットと赤色光を発するリン化インジウム系量子ドットとを含んでいてよい。波長変換層は、緑色光を発するペロブスカイト系量子ドットと赤色光を発するカルコパイライト系量子ドットとを含んでいてよい。また、波長変換層は、例えば、緑色光を発するカルコパイライト系量子ドットを含む層と、赤色光を発するカルコパイライト系量子ドットを含む層と、を含んでいてよい。波長変換層は、緑色光を発するカルコパイライト系量子ドットを含む層と、赤色光を発するリン化インジウム系量子ドットを含む層と、を含んでいてよい。波長変換層は、緑色光を発するペロブスカイト系量子ドットを含む層と、赤色光を発するリン化インジウム系量子ドットを含む層と、を含んでいてよい。波長変換層は、緑色光を発するペロブスカイト系量子ドットを含む層と、赤色光を発するカルコパイライト系量子ドットを含む層と、を含んでいてよい。
【0090】
波長変換層は、量子ドットに加えて必要に応じて量子ドット以外の発光材料として蛍光体の少なくとも1種を含んでいてもよい。蛍光体としては例えば、アルミニウムガーネット等のガーネット系蛍光体を用いることができる。ガーネット系蛍光体としては、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体、セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体が挙げられる。ガーネット系蛍光体の他に、ユウロピウム及び/又はクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム系蛍光体、ユウロピウムで賦活されたシリケート系蛍光体、β-SiAlON系蛍光体、CASN系又はSCASN系等の窒化物系蛍光体、LnSi11系又はLnSiAlON系等の希土類窒化物系蛍光体、BaSi:Eu系又はBaSi12:Eu系等の酸窒化物系蛍光体、CaS系、SrGa系、ZnS系等の硫化物系蛍光体、クロロシリケート系蛍光体、SrLiAl:Eu蛍光体、SrMgSiN:Eu蛍光体、マンガンで賦活されたフッ化物錯体蛍光体としてのKSiF:Mn蛍光体及びK(Si,Al)F:Mn蛍光体(例えば、KSi0.99Al0.015.99:Mn)などを用いることができる。本明細書において、蛍光体の組成を表す式中、カンマ(,)で区切られて記載されている複数の元素は、これらの複数の元素のうち少なくとも1種の元素を組成中に含有することを意味する。また、蛍光体の組成を表す式中、コロン(:)の前は母体結晶を表し、コロン(:)の後は賦活元素を表す。
【0091】
波長変換層は、例えば、緑色光を発するカルコパイライト系量子ドットと赤色光を発するマンガンで賦活されたフッ化物錯体蛍光体とを含んでいてよく、緑色光を発するペロブスカイト系量子ドットと赤色光を発するマンガンで賦活されたフッ化物錯体蛍光体とを含んでいてよい。また、波長変換層は、緑色光を発するカルコパイライト系量子ドットを含む層と、赤色光を発するマンガンで賦活されたフッ化物錯体蛍光体を含む層と、を含んでいてよい。さらに波長変換層は、緑色光を発するペロブスカイト系量子ドットを含む層と、赤色光を発するマンガンで賦活されたフッ化物錯体蛍光体を含む層と、を含んでいてよい。
【0092】
波長変換層は、量子ドットに加えて硬化樹脂を含んでいてもよい。硬化樹脂は、後述する光硬化性組成物の硬化物であってよい。波長変換層に含まれる量子ドットの含有率は、硬化樹脂の全量に対して、例えば、0.01質量%以上1.0質量%以下であってよく、好ましくは0.05質量%以上0.5質量%以下、又は0.1質量%以上0.5質量%以下であってよい。量子ドットの含有率が0.01質量%以上であると、光を照射する際に充分な発光強度が得られる傾向にあり、量子ドットの含有率が1.0質量%以下であると、量子ドットの凝集が抑えられ、色ムラが低減される傾向にある。
【0093】
硬化樹脂を形成する光硬化性組成物は、例えば(メタ)アクリル化合物を含んでいてよい。(メタ)アクリル化合物は、1分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有する単官能(メタ)アクリル化合物であってもよく、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリル化合物であってもよい。(メタ)アクリル化合物としては、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよく、単官能(メタ)アクリル化合物及び多官能(メタ)アクリル化合物を併用してもよい。
【0094】
実施形態2
実施形態2に係る波長変換部材110について図2を参照して説明する。図2は波長変換部材110の概略部分断面図である。図2に示すように、波長変換部材110では、第1樹脂層42aが第1バリア層10aと波長変換層20との間にまで延在する部分を有し、第2樹脂層42bが第2バリア層10bと波長変換層20との間にまで延在する部分を有する点で、波長変換部材100と異なる。図2では、第1樹脂層42a及び第2樹脂層42bが波長変換層20上まで延在している部分を有しているが、第1樹脂層42a及び第2樹脂層42bの一方のみが延在する部分を有していてもよい。また、第1樹脂層42a及び第2樹脂層42bの波長変換層20上にまで延在している部分は、波長変換層20の主面全体を被覆していてもよく、主面の一部を被覆していてもよい。第1樹脂層42a又は第2樹脂層42bが無機部材30上から連続し、且つ波長変換層20上まで延在している部分を有していることで、波長変換部材110の全体厚みをばらつきにくくさせることができる。例えば、実施形態1に係る波長変換部材100では、波長変換層20および無機部材30の双方の厚みを考慮して、第1樹脂層40aおよび第2樹脂層40bを適切な塗布量で、かつ適切な押圧力等で配置して厚みを調整することが望ましい。一方で、実施形態2に係る波長変換部材110では、波長変換層20および無機部材30の厚みを略同等に設定し、波長変換層20上および無機部材30上に膜状の第1樹脂層42aまたは第2樹脂層42bを連続して配置することで、上述の波長変換部材の製造上の厚みのばらつきを低減しやすくなる。なお、略同等とは、±10%の誤差を含む。
【0095】
実施形態3
実施形態3に係る波長変換部材120について図3を参照して説明する。図3は波長変換部材120の概略部分断面図である。図3に示すように、実施形態3に係る波長変換部材120は、第1バリア層10a及び波長変換層20との間に配置される第3バリア層11aと、第2バリア層10b及び波長変換層20との間に配置される第4バリア層11bと、を更に備える点で、波長変換部材100と異なる。図3では、波長変換部材120が第3バリア層11aと第4バリア層11bの両方を含んでいるが、一方のみを含んでいてもよい。第3バリア層11a及び第4バリア層11bを含むことで、例えば波長変換部材120の製造時において、波長変換層20が外部環境から保護されて波長変換部材の発光効率の低下をより低減することができる。特に、波長変換層20が水分、酸素等により劣化しやすい量子ドット(例えば、カルコパイライト系量子ドット)または蛍光体を含んでいる場合に、波長変換層20を製造し、且つ、第1バリア層10a上または第2バリア層10b上に該波長変換層20を配置する間において、波長変換層20が外部環境に曝されて劣化することを低減することができる。
【0096】
図3に示すように、第3バリア層11aの側面は、第1樹脂層40aと無機部材30との界面を被覆していてよい。また第4バリア層11bの側面は、第2樹脂層40bと無機部材30との界面を被覆していてよい。第1樹脂層11aと無機部材30の界面が第3バリア層11aの側面で被覆されていることで、第1バリア層10aと無機部材30との間から入り込んでくる水分、酸素等が波長変換層20に達することをより低減することができ、波長変換層20に含まれる量子ドットの発光効率の低下をより抑えることができる。また、第2樹脂層11bと無機部材30の界面が第4バリア層11bの側面で被覆されていることで、第2バリア層10bと無機部材30との間から入り込んでくる水分、酸素等が波長変換層20に達することをより低減することができ、波長変換層20に含まれる量子ドットの発光効率の低下をより抑えることができる。
【0097】
第3バリア層11a及び第4バリア層11bとしては、第1バリア層10a及び第2バリア層10bと同様の材料を採用することができる。第3バリア層11a及び第4バリア層11bの基材フィルムの平均厚みは、例えば20μm以上150μm以下であってよく、好ましくは25μm以上100μm以下であってよい。なお、第3バリア層及び第4バリア層の無機層は、第1バリア層又は第2バリア層の無機層よりも厚みが薄くてもよい。
【0098】
実施形態4
実施形態4に係る波長変換部材130について図4を参照して説明する。図4は波長変換部材130の概略部分断面図である。図4に示すように、実施形態4に係る波長変換部材130は、以下の点で実施形態1に係る波長変換部材100とは異なる。すなわち、波長変換部材130では、無機部材30と波長変換層20とが互いに離隔して配置され、第2樹脂層44bが無機部材30と波長変換層20の間に挟まれる第2樹脂層延在部44cを含む。波長変換部材130は、第1樹脂層及び第2樹脂層と、第1バリア層10aと、無機部材20と、波長変換層20とに囲まれる空隙50を含む。無機部材30と波長変換層20とが互いに離隔して配置されることで、波長変換層20を配置する際に、無機部材30と波長変換層20が接触することを低減することができる。また、空隙50を設けることで、波長変換層20を配置する際の位置精度の余裕度及び無機部材30を形成する際の加工の余裕度を確保しやすい。その結果、波長変換部材の製造における歩留まりを向上させることができる。
【0099】
図4では、第2樹脂層44bが波長変換部材20と無機部材30との間に第2樹脂層延在部44cが形成されているが、第1樹脂層44aが無機部材30と波長変換層20の間に挟まれる第1樹脂層延在部を含んでいてもよい。すなわち、第1樹脂層44aおよび第2樹脂層44bの少なくとも一方は、波長変換層20の側面と無機部材30との間の少なくとも一部に延在する部分を更に有していてもよい。例えば、波長変換部材130が複数の波長変換層を含む場合、劣化しやすい量子ドットを含む波長変換層側にある樹脂層が、波長変換層の側面と無機部材との間にまで延在することが好ましい。例えば、波長変換部材が複数の波長変換層20を有し、第2バリア層10b側に劣化しやすい量子ドット(例えば、カルコパイライト系量子ドット)を含む波長変換層が配置されている場合は、第2樹脂層44bが第2樹脂層延在部44cを有することが好ましい。第2樹脂層延在部44cは、第2バリア層側の波長変換層(例えば、カルコパイライト系量子ドットを含む層)の側面の少なくとも一部を被覆することが好ましく、側面のすべてを被覆することがより好ましい。
【0100】
図4では、第1樹脂層及び第2樹脂層と、第1バリア層10aと、無機部材30と、波長変換層20とに囲まれる空隙50が形成されているが、第1樹脂層及び第2樹脂層と、第2バリア層10bと、無機部材30と、波長変換層20とに囲まれる空隙が形成されていてもよい。また、空隙は、第1樹脂層及び第2樹脂層と、第1バリア層10a又は第2バリア層10bと、無機部材30とに囲まれていてもよく、第1樹脂層及び第2樹脂層と、無機部材30と、波長変換層20とに囲まれていてもよい。すなわち、空隙は、第1樹脂層及び第2樹脂層と、第1バリア層10a、第2バリア層10b、波長変換層20及び無機部材30からなる群から選択される少なくとも2つと、に囲まれて形成されていてもよい。
【0101】
図4では、第1樹脂層44a及び第2樹脂層44bは、それぞれ波長変換部材130の端面まで延在し、第1樹脂層44a及び第2樹脂層44bの外側面は、それぞれ波長変換部材130の端面を形成しているが、第1樹脂層44a及び第2樹脂層44bの少なくとも一方の外側面は、波長変換部材130の端面よりも内側に位置していてもよい。
【0102】
実施形態5
実施形態5に係る波長変換部材140について図5を参照して説明する。図5は波長変換部材140の概略部分断面図である。図5に示すように、実施形態5に係る波長変換部材140は、無機部材32の第1バリア層10aに対向する第7主面に第1樹脂層46aが配置される凹部を有し、無機部材32の第2バリア層10bに対向する第8主面に第2樹脂層46bが配置される凹部を有する点で、実施形態1に係る波長変換部材100と異なる。無機部材の第7主面及び第8主面の少なくとも一方に凹部が形成され、凹部内に第1樹脂層又は第2樹脂層の少なくとも一部が配置されることで第1バリア層及び第2バリア層と無機部材との密着性がより向上する。これにより、第1バリア層と無機部材との間及び第2バリア層と無機部材との間から入り込んでくる水分、酸素等が波長変換層20に達することを低減でき、波長変換層20に含まれる量子ドットの発光効率の低下を抑えることができる。
【0103】
図5では、第7主面及び第8主面のそれぞれに凹部が形成されているが、第7主面及び第8主面の少なくとも一方に凹部が形成されていてもよい。また図5では、第7主面及び第8主面にはそれぞれ1つずつ凹部が形成されているが、それぞれ複数の凹部が形成されていてもよい。更に図5では、第1樹脂層46a及び第2樹脂層46bはそれぞれ凹部に収容されているが、第1樹脂層46a及び第2樹脂層46bの少なくとも一方は、凹部から第7主面上又は第8主面上にまで延在していてもよい。
【0104】
実施形態6
実施形態6に係る波長変換部材150について図6を参照して説明する。図6は波長変換部材150の概略部分断面図である。図6に示すように、実施形態6に係る波長変換部材150は、無機部材32の第1バリア層10aに対向する第7主面に第1樹脂層48aが配置される複数の凹部を有し、第1樹脂層48aが第7主面を被覆している点、および無機部材32の第2バリア層10bに対向する第8主面に第2樹脂層48bが配置される複数の凹部を有し、第2樹脂層48bが第8主面を被覆している点で、実施形態1に係る波長変換部材100と異なる。無機部材の第7主面及び第8主面の少なくとも一方に凹部が形成され、凹部内に第1樹脂層又は第2樹脂層の少なくとも一部が配置されることで第1バリア層及び第2バリア層と無機部材との密着性がより向上する。これにより、第1バリア層と無機部材との間及び第2バリア層と無機部材との間から入り込んでくる水分、酸素等が波長変換層20に達することを低減でき、波長変換層20に含まれる量子ドットの発光効率の低下を抑えることができる。更に、第7主面又は第8主面に複数の凹部が形成されることで、波長変換部材の端部に到達する光に対して、凹部によって光を散乱させて、波長変換部材の端部における光漏れの強度を低減することができる。
【0105】
波長変換部材の製造方法
波長変換部材の製造方法は、例えば、仮支持体上に無機部材を含むフレームを配置する第1工程と、仮支持体上に配置されたフレーム上に樹脂層を形成する第2工程と、形成された樹脂層上にバリア層を配置する第3工程と、仮支持体を除去する第4工程と、無機部材の内側に波長変換層を配置する第5工程と、フレーム上に樹脂層を形成する第6工程と、形成された樹脂層上にバリア層を配置する第7工程と、フレームの無機部材を切り出して波長変換部材を得る第8工程と、を含んでいてよい。以下、波長変換部材の製造方法について図7Aから図7Hを参照して説明する。
【0106】
第1工程
図7Aに示すように、第1工程では、仮支持体60上に無機部材を含むフレーム80を配置する。仮支持体は、粘着性を有し、フレームを保持可能な部材であればよい。仮支持体60としては、例えばUVシートを用いることができる。UVシートとは、例えば、アクリル、ウレタンなどの基材シートの片面にUV照射により粘着力が低下する粘着層を配置したシートである。フレーム80は、図8に示すように、無機部材30と、無機部材30を包囲する枠部70と、枠部70と無機部材30とを接続する吊り部72とを含む。フレーム80では、無機部材30が吊り部72を介して枠部70に保持されていることにより、波長変換部材100を製造する際に、無機部材の反り、形状変化等が低減される。
【0107】
フレーム80は、図9に示すように、無機部材30の内部に補助板74が設けられたフレーム前駆体80aから、補助板74を除去して形成されてもよい。フレーム前駆体80aは、無機部材30と、無機部材30を吊り部72を介して外側から保持する枠部70と、無機部材30を吊り部76を介して内側から保持する補助板74とを備える。無機部材30が外側と内側の両側から保持されていることで、運搬時等における無機部材の反り、形状変化等がより低減される。フレーム前駆体80aからの補助板74の除去は、無機部材30と吊り部76の接続部分を切断することで行うことができる。接続部分の切断は、例えばカッター等で行うことができる。フレーム80がフレーム前駆体80aから形成される場合、無機部材30の波長変換層に向かい合う内側端面には、接続部分の切断に依って形成される切断部が形成される。切断部は、吊り部76の一部を含んだ切断凸部を有していてよい。内側端面の切断部に切断凸部があることで、後の無機部材の内側に波長変換層を配置する工程(第5工程)において、波長変換層が内側で移動しにくくなるため、波長変換層の配置精度が向上する。また、波長変換層と無機部材との密着性が向上する。
【0108】
第2工程
図7Bに示すように、第2工程では、仮支持体60上に配置されたフレーム80上に樹脂層46を形成する。樹脂層46は少なくとも無機部材30上に形成されていればよく、吊り部72及び枠部70の上にも形成されてもよい。樹脂層46は、例えば樹脂と溶剤を含む樹脂組成物を付与し、溶剤の少なくとも一部を除去することで形成される。
【0109】
第3工程
図7Cに示すように、第3工程では、フレーム80上に形成された樹脂層46上にバリアフィルム14を配置する。バリアフィルム14は、例えば基材フィルムと無機層から構成される。バリアフィルム14の配置は、例えば真空貼り合わせによりバリアフィルム14を樹脂層46上に貼り合わせることで行われる。バリアフィルム14が無機層を含む場合、無機層が樹脂層46と向かい合うようにバリアフィルム14は貼り付けられる。さらに、樹脂層46が紫外線硬化型の場合、バリアフィルム14を貼り付けた後、バリアフィルム14を介して紫外線を照射して樹脂層46を硬化してもよい。第3工程によりバリアフィルム14上に樹脂層46を介して無機部材を含むフレーム80が配置され、フレーム80上に仮支持体60が積層された中間部材が得られる。
【0110】
第4工程
図7Dに示すように、第4工程では、仮支持体60を除去する。仮支持体60除去は、例えば紫外線照射等により仮支持体の粘着性を低下させることで行うことができる。第4工程によりバリアフィルム14上に樹脂層46を介して無機部材を含むフレーム80が配置された中間部材が得られる。
【0111】
第5工程
図7Eに示すように、第5工程では、フレーム80の無機部材の内側に波長変換層20を配置する。波長変換層20は量子ドットと樹脂硬化物とを含み、フレーム80の内側の形状に合わせて形成される。波長変換層を予め形成しておくことで、その厚みの制御が容易にでき、均一な厚みを有する波長変換層を形成することができる。フレーム80の内側に配置する波長変換層20の厚みは、樹脂層46とフレーム80の厚みの合計よりも厚くなっている。
【0112】
第6工程
図7Fに示すように、第6工程では、内側に波長変換層20が配置されたフレーム80の上に樹脂層46を形成する。樹脂層46は少なくとも無機部材30上に形成されていればよく、吊り部72及び枠部70の上にも形成されてもよい。樹脂層46は、例えば樹脂と溶剤を含む樹脂組成物を付与し、溶剤の少なくとも一部を除去することで形成される。
【0113】
第7工程
図7Gに示すように、第7工程では、フレーム80上に形成された樹脂層46上にバリアフィルム14を配置する。バリアフィルム14の配置は、例えば真空貼り合わせによりバリアフィルム14を樹脂層46上に貼り合わせることで行われる。バリアフィルム14が無機層を含む場合、無機層が樹脂層46と向かい合うようにバリアフィルム14は貼り付けられる。さらに、樹脂層46が紫外線硬化型の場合、バリアフィルム14を貼り付けた後、バリアフィルム14を介して紫外線を照射して樹脂層46を硬化してもよい。第7工程により、バリアフィルム14上に樹脂層46を介して無機部材を含むフレーム80が積層され、フレーム80上に樹脂層46を介してバリアフィルム14が積層され、フレームの内側に波長変換層20が配置された波長変換部材前駆体102が得られる。
【0114】
第8工程
図7Hに示すように、第8工程では、波長変換部材前駆体102において、フレーム80から無機部材30を切り出すように波長変換部材前駆体102を切断して波長変換部材100を得る。波長変換部材前駆体102の切断は、無機部材30及び枠部70を接続する吊り部72と、無機部材30との接続部分を切断することで行われる。切断は、例えばカッター等を用いて行われる。第8工程で得られる波長変換部材100においては、接続部分の切断によって無機部材の外側端面に切断部が形成される。
【0115】
本開示に係る発明は、例えば以下の態様を包含してよい。
[1] 第1主面、前記第1主面の反対側に位置する第2主面、および前記第1主面と前記第2主面とを接続する側面を有し、量子ドットを含む波長変換層と、
前記第1主面上に配置される第1バリア層と、
前記第2主面上に配置される第2バリア層と、
前記第1バリア層および第2バリア層の間に配置され、平面視において前記波長変換層の前記側面を囲む無機部材と、
前記第1バリア層及び前記無機部材の間に配置され、前記第1バリア層及び前記無機部材を接続する第1樹脂層と、
前記第2バリア層及び前記無機部材の間に配置され、前記第2バリア層及び前記無機部材を接続する第2樹脂層と、を備える波長変換部材。
【0116】
[2] 前記無機部材は、金属を含む[1]に記載の波長変換部材。
【0117】
「3」 前記無機部材は、気体透過度が1cc・m-2・24h-1・atm-1以下である[1]又は[2]に記載の波長変換部材。
【0118】
[4] 前記第1樹脂層は、前記第1バリア層と前記波長変換層との間の少なくとも一部に延在する部分を更に有する[1]から[3]のいずれかに記載の波長変換部材。
【0119】
[5] 前記第2樹脂層は、前記第2バリア層と前記波長変換層との間の少なくとも一部に延在する部分を更に有する[1]から[4]のいずれかに記載の波長変換部材。
【0120】
[6] 前記波長変換層は、前記第1バリア層および前記波長変換層の間に配置される第3バリア層と、前記第2バリア層および前記波長変換層の間に配置される第4バリア層と、を更に備える[1]から[5]のいずれかに記載の波長変換部材。
【0121】
[7] 前記第3バリア層の側面は、前記第1樹脂層と前記無機部材との界面を被覆する[6]に記載の波長変換部材。
【0122】
[8] 前記第4バリア層の側面は、前記第2樹脂層と前記無機部材との界面を被覆する[6]又は[7]に記載の波長変換部材。
【0123】
[9] 前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層と、前記第1バリア層、前記第2バリア層、前記波長変換層及び前記無機部材からなる群から選択される少なくとも2つとに囲まれる空隙を有する[1]から[8]のいずれかに記載の波長変換部材。
【0124】
[10] 前記第1樹脂層および前記第2樹脂層の少なくとも一方は、前記波長変換層の側面と前記無機部材との間の少なくとも一部に延在する部分を更に有する[1]から[9]のいずれかに記載の波長変換部材。
【0125】
[11] 前記波長変換層の第1主面に直交する方向において、前記波長変換層の厚みに対する前記無機部材の厚みの比が、0.6以上1以下である[1]から[10]のいずれかに記載の波長変換部材。
【0126】
[12] 前記波長変換層の第1主面と前記波長変換層の側面に直交する断面において、前記波長変換層の側面に直交する方向における前記無機部材の幅は、100μm以上1mm以下である[1]から[11]のいずれかに記載の波長変換部材。
【0127】
[13] 前記無機部材は、前記第1バリア層に対向する面に形成される少なくとも1つの第1凹部、および前記第2バリア層に対向する面に形成される少なくとも1つの第2凹部の少なくとも一方を有し、前記第1樹脂層の少なくとも一部が前記第1凹部に配置されるか、または前記第2樹脂層の少なくとも一部が前記第2凹部に配置される[1]から[13]のいずれかに記載の波長変換部材。
【0128】
[14] 前記第1樹脂層の全体が前記第1凹部に収容されるか、または前記第2樹脂層の全体が前記第2凹部に収容される[13]に記載の波長変換部材。
【符号の説明】
【0129】
100,110,120,130,140,150 波長変換部材
10a 第1バリア層
10b 第2バリア層
20 波長変換層
30 無機部材
40a 第1樹脂層
40b 第2樹脂層
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図8
図9