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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163644
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】検査方法及び塗装装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241115BHJP
【FI】
B41J2/01 207
B41J2/01 121
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079432
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】亀井 謙二
(72)【発明者】
【氏名】前田 崇秀
(72)【発明者】
【氏名】青木 健人
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 貴彦
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EB27
2C056EB40
2C056EE17
2C056FA09
2C056FB09
(57)【要約】
【課題】簡便な方法で液体吐出手段からの液体の吐出状態を検査する。
【解決手段】
液体吐出手段からの液体の吐出状態を検査する検査方法であって、透明な基材に対して前記液体吐出手段から透明インクを吐出させる吐出工程と、前記基材の一方の面側から紫外線を照射する照射工程と、紫外線を検出可能な検出手段によって前記基材の他方の面側から前記紫外線を検出する検出工程と、前記検出工程における検出結果に基づいて前記液体吐出手段における吐出状態を判定する判定工程とを有する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出手段からの液体の吐出状態を検査する検査方法であって、
透明な基材に対して前記液体吐出手段から透明インクを吐出させる吐出工程と、
前記基材の一方の面側から紫外線を照射する照射工程と、
紫外線を検出可能な検出手段によって前記基材の他方の面側から前記紫外線を検出する検出工程と、
前記検出工程における検出結果に基づいて前記液体吐出手段における吐出状態を判定する判定工程と、を有する、検査方法。
【請求項2】
前記他方の面は、前記基材に対して前記液体吐出手段から前記透明インクが吐出される面である、請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
前記基材は、少なくとも一方の面に、凹凸形状が形成されている、請求項1に記載の検査方法。
【請求項4】
前記判定工程は、前記検出工程にて検出された紫外線のパターンが、前記液体吐出手段から液体が吐出されるパターンと異なる場合に、前記液体吐出手段における吐出状態が異常であると判定する、請求項1に記載の検査方法。
【請求項5】
前記判定工程は、前記検出工程にて検出された紫外線のパターンの面積を算出することで、前記液体吐出手段における液体の常時吐出及び不吐出を検出する、請求項4に記載の検査方法。
【請求項6】
前記判定工程は、前記検出工程にて検出された紫外線のパターンの重心位置を算出することで、前記液体吐出手段における液体の吐出曲がりを検出する、請求項4に記載の検査方法。
【請求項7】
前記透明インクは、200~400nmの波長の光を吸収する樹脂を含んだインクである、請求項1に記載の検査方法。
【請求項8】
液体吐出手段からの液体を吐出することで塗装を行う塗装装置であって、
前記液体吐出手段は、透明な基材に対して透明インクを吐出し、
前記基材の一方の面側から紫外線を照射する照射手段と、
紫外線を検出可能であり、前記基材の他方の面側から前記紫外線を検出する検出手段と、
前記検出手段における検出結果に基づいて前記液体吐出手段における吐出状態を判定する判定手段と、を有する、塗装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査方法及び塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録ヘッドからインク等の液体を吐出することで、メディアに画像を形成する画像形成装置や塗装を行う塗装装置においては、記録ヘッドからの液体の吐出状態を検査することが知られている。
【0003】
例えば、紫外線により発光する蛍光体を透明インクに混合し、紫外線を照射してインクを発光させることでインクの吐出不良を検知する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願人は、より簡便な方法で、透明インクを吐出する液体吐出手段からの吐出状態を検査することができないか鋭意研究を行った。
【0005】
本発明は、簡便な方法で液体吐出手段からの液体の吐出状態を検査することができる検査方法及び塗装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、
液体吐出手段からの液体の吐出状態を検査する検査方法であって、
透明な基材に対して前記液体吐出手段から透明インクを吐出させる吐出工程と、
前記基材の一方の面から紫外線を照射する照射工程と、
紫外線を検出可能な検出手段によって前記基材の他方の面から前記紫外線を検出する検出工程と、
前記検出工程における検出結果に基づいて前記液体吐出手段における吐出状態を判定する判定工程とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡便な方法で液体吐出手段からの液体の吐出状態を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の検査方法を実施可能な塗装装置の一実施形態を示す図である。
図2図1に示した塗装装置の一構成例を示すブロック図である。
図3図1に示した塗装装置が備える供給機構の一構成例を示す図である。
図4図1に示した塗装装置が備えるヘッドの一構成例を示す斜視図である。
図5図4の平面S1により切断したヘッドの断面図である。
図6図1に示した塗装装置が備える制御部の機能構成の一例を示すブロック図である。
図7図1に示した塗装装置による塗装動作の一例を示すフローチャートである。
図8】本実施形態の塗装装置における検査機構の配置例を示す図である。
図9図8に示した透明メディアの一例を示す図である。
図10図8に示した構成における作用を説明するための図である。
図11】塗装装置のヘッドから透明インクが吐出された状態の一例を示す図である。
図12】本発明の検査方法における透明メディアの配置例を示す図である。
図13】透明メディアに印字される検査パターンの一例を示す図である。
図14】本発明の検査方法の一例を説明するためのフローチャートである。
図15】カメラにて検出された紫外線のパターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ただし、以下に示す形態は、本実施形態の技術思想を具現化するための検査方法を例示するものであって、以下に限定するものではない。また、実施形態に記載されている構成部の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさ、位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。また、以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており詳細説明を適宜省略する。
【0010】
〈塗装装置の構成例〉
図1は、本発明の検査方法を実施可能な塗装装置の一実施形態を示す図である。図2は、図1に示した塗装装置100の一構成例を示すブロック図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る塗装装置100は、液体吐出方式によって吐出した液体を対象物200に塗布する。塗装装置100による液体吐出方式は、例えば連続吐出方式である。連続吐出方式には、弁体の動作を制御することによりノズルを開閉させて吐出制御するバルブ方式や、ノズルから連続的に吐出したインク粒を帯電させ、偏向電極で曲げて印字面に吹き付けるコンティニュアス方式等が含まれる。対象物200に塗布された液体は、乾燥後に対象物200に固着する。
【0012】
図1及び図2に示すように、塗装装置100は、4つのヘッド11と、4つの検出部12と、4つのロボットアーム13と、供給機構14と、維持機構15と、検査機構60と、制御部20と、を有する。塗装装置100は、制御部20の制御下において、予め定められた対象物200の形状データと、4つの検出部12それぞれから出力された3つ以上の特徴点の三次元位置に関する情報と、に基づき、4つのヘッド11を保持するロボットアーム13を駆動させる。塗装装置100は、4つのロボットアーム13の駆動により、4つのヘッド11と対象物200との相対位置及び相対傾きを変化させ、4つのヘッド11のそれぞれから対象物200に液体を吐出する。塗装装置100は、4つのヘッド11から吐出した液体を対象物200に塗布することにより、対象物200を塗装することができる。また、塗装装置100は、検査機構60を用いて、4つのヘッド11からの液体の吐出状態を検査することができる。
【0013】
4つのヘッド11は、本発明にて液体吐出手段の一例となるものである。4つのヘッド11は、ヘッド11-1と、ヘッド11-2と、ヘッド11-3と、ヘッド11-4と、を含む。4つのヘッド11それぞれの構成は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。本明細書では、4つのヘッド11の構成は同じであるとする。塗装装置100が有するヘッド11の個数は、4つに限定されず、対象物200の大きさ、形状等に応じて適宜変更可能である。
【0014】
4つのヘッド11のそれぞれは、ノズルから対象物200に液体を吐出する。例えば、ヘッド11は、液体を吐出するノズルが複数形成されたノズル面を含み、ノズル面が対象物200の被塗布面に向き合うように配置される。4つのヘッド11は、複数のノズルのそれぞれから吐出した液体を対象物200に塗布する。なお、ヘッド11の構成については、図4及び図5も参照して別途詳述する。
【0015】
4つのヘッド11のそれぞれは、対象物200における相互に異なる領域に液体を吐出してもよい。4つのヘッド11のそれぞれから吐出される液体は、一部が重複する領域に吐出されてもよい。4つのヘッド11のそれぞれが、対象物200における相互に異なる領域に液体を吐出することにより、対象物200のサイズが大きな場合にも短時間で塗装を行うことができる。
【0016】
4つの検出部12は、検出部12-1と、検出部12-2と、検出部12-3と、検出部12-4と、を含む。4つの検出部12それぞれの構成は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。本明細書では、4つの検出部12の構成は同じであるとする。塗装装置100が有する検出部12の個数は、4つに限定されず、ヘッド11の数等に応じて適宜変更可能である。
【0017】
4つの検出部12のそれぞれは、対象物200における3つ以上の特徴点の三次元位置に関する情報である特徴点情報を出力する。4つの検出部12のそれぞれは、例えばステレオカメラを含む。ステレオカメラは、複数のカメラを有し、複数のカメラのそれぞれによる撮影画像間での視差に基づき、三角測量方式によって対象物200の距離画像を取得する。ステレオカメラは、特徴点情報として該距離画像を制御部20に出力する。
【0018】
4つのロボットアーム13は、ロボットアーム13-1と、ロボットアーム13-2と、ロボットアーム13-3と、ロボットアーム13-4と、を含む。4つのロボットアーム13のそれぞれの構成は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。本明細書では、4つのロボットアーム13の構成は同じであるとする。塗装装置100が有するロボットアーム13の個数は、4つに限定されず、ヘッド11の数等に応じて適宜変更可能である。
【0019】
4つのロボットアーム13は、ヘッド11を対象物200に対して相対移動させる移動機構の一例である。4つのロボットアーム13のそれぞれは、対象物200の近傍に配置される。ここでは、4つのロボットアーム13は、対象物200の周囲に配置され、それぞれがヘッド11及び検出部12を保持し、ヘッド11及び検出部12のそれぞれを対象物200に対して相対移動させる。なお、移動機構は、ヘッド11を対象物200に対して相対移動させることができれば、ロボットアーム13に限定されず、複数の直動ステージの組合せ等により構成されてもよい。
【0020】
図2において、供給機構14は、4つのヘッド11のそれぞれに液体を供給する。供給機構14の構成については、図3も参照して別途詳述する。
【0021】
維持機構15は、4つのヘッド11のそれぞれによる液体の吐出状態を維持する。維持機構15は、4つのヘッド11それぞれのノズル面を払拭するワイパー、4つのヘッド11それぞれの内部から液体を吸引する吸引ポンプ等を含む。維持機構15は、ワイパー、吸引ポンプ等を用いて、ノズル面に付着した増粘液体や異物、あるいはヘッド11の内部に存在する増粘液体や異物等を除去する。維持機構15は、増粘液体や異物等を除去することにより、4つのヘッド11それぞれにおける不吐出、吐出曲がり、吐出速度変動等の吐出異常を低減し、4つのヘッド11それぞれの吐出状態を正常状態に維持することができる。
【0022】
検査機構60は、紫外線光源61と、カメラ62とを備える。紫外線光源61は、本発明にて照射手段となるものである。紫外線光源61は、4つのヘッド11からの液体の吐出状態を検査する際に、ヘッド11から透明インクが吐出された透明メディアに対して一方の面側から紫外線を照射する。カメラ62は、本発明にて検出手段となるものであって、紫外線が照射された透明メディアを他方の面側から撮影することで紫外線を検出する。カメラ62としては、一般的な紫外線センサを用いることができる。ここでの「透明」は、可視光(波長400~800nm)に対して透過率60%以上であり、紫外線(波長200~400nm)に対して透過率60%未満であることを意味する。
【0023】
図1及び図2において、制御部20は、予め定められた対象物200の形状データと、検出部12から出力された特徴点情報と、に基づいて、ヘッド11による液体の吐出と、ロボットアーム13の動作と、を制御する。また、制御部20は、検査機構60における動作を制御する。
【0024】
制御部20は、例えば電気基板上に実装されたプロセッサまたは電気回路等により構成される。制御部20は、4つのヘッド11、4つの検出部12及び4つのロボットアーム13、検査機構60のそれぞれに対し、有線または無線により通信可能に接続されている。制御部20は、4つの検出部12から検出信号を受信し、4つのヘッド11及び4つのロボットアーム13に制御信号を送信できる。また、制御部20は、検査機構60に対して制御信号を送信し、検査機構60における紫外線の検出結果を受信することができる。
制御部20が実装された電気基板の配置位置は任意であり、該電気基板はヘッド11等に対して遠隔した位置に配置されてもよい。
【0025】
図2に示すように、制御部20は、CPU(Central Processing Unit)31と、ROM(Read Only Memory)32と、RAM(Random Access Memory)33と、HDD(Hard Disk Drive)/SSD(Solid State Drive)34と、機器接続I/F(Interface)35と、通信I/F36と、を有する。これらは、システムバスSを介して相互に電気的に接続している。
【0026】
CPU31は、RAM33を作業領域として使用し、ROM32に格納されているプログラムに規定された処理を実行することにより、制御部20全体の動作を制御する。
【0027】
ROM32は、CPU31への記録動作等の制御を実行するためのプログラム及びその他の固定データを格納する不揮発性のメモリである。
【0028】
RAM33は、ヘッド11による液体吐出、ロボットアーム13の駆動等において用いられる各種データ、検出部12、検査機構60による検出結果等を一時格納する揮発性のメモリである。
【0029】
HDD/SSD34は、対象物200の形状データや、対象物200に描く絵柄及び文字等の画像データ等を格納する不揮発性のメモリである。
【0030】
機器接続I/F35は、ヘッド11、検出部12、ロボットアーム13、供給機構14、維持機構15及び検査機構60のそれぞれに通信可能に接続するためのインターフェースである。
【0031】
通信I/F36は、ホストPC(Personal Computer)等の外部装置と制御部20とを通信可能に接続するためのインターフェースである。
【0032】
塗装装置100は、上記以外に、塗装装置100による液体の塗布条件等の設定画面等を表示する表示部、塗装装置100の操作を受け付けるタッチパネル、キーボード、マウス等の操作入力装置である操作部等を有してもよい。
【0033】
〈供給機構14の構成例〉
図3は、図1に示した塗装装置100が備える供給機構14の一構成例を示す図である。
【0034】
4つのヘッド11のそれぞれは、イエロー(Y)の液体を吐出するヘッド11Yと、マゼンタ(M)の液体を吐出するヘッド11Mと、シアン(C)の液体を吐出するヘッド11Cと、ブラック(K)の液体を吐出するヘッド11Kと、を含む。
【0035】
ヘッド11は、上記各色の液体を吐出するヘッドの他、オーバーコート液体を吐出するヘッド及びプライマ液体またはホワイト液体を吐出するヘッド等の他の液体を吐出するヘッドをさらに有してもよい。供給機構14は、ヘッド11に各色の液体を供給できる。
【0036】
供給機構14は、ヘッド11から吐出される各色の液体325を収容した密閉容器としての液体タンク330を含む。液体タンク330とヘッド11の注入口(供給ポート)とは、それぞれチューブ333を介して液体が流通可能に接続している。
【0037】
一方、液体タンク330は、エアーレギュレータ332を含むパイプ331を介してコンプレッサ230に接続しており、コンプレッサ230は加圧空気を供給する。これにより、加圧された各色の液体325はヘッド11の注入口へ供給され、塗装装置100はヘッド11のノズルから液体325を吐出する。
【0038】
また、本実施形態においては、液体タンクとして、ヘッド11に供給される透明インクが収容された液体タンク330を有している。
【0039】
〈ヘッド11の構成例〉
図4は、図1に示した塗装装置100が備えるヘッド11の一構成例を示す斜視図である。図5は、図4の平面S1により切断したヘッド11の断面図である。
【0040】
図4及び図5に示すように、ヘッド11は、ハウジング110内に1列または複数列に並べて配置した複数の吐出モジュール340を有する。
【0041】
ヘッド11は、供給ポート111及び回収ポート112を有し、供給ポート111は吐出モジュール340に対して外部から加圧した液体を供給し、回収ポート112は吐出しなかった液体を外部に排出する。また、ハウジング110はコネクタ113を有する。
【0042】
図5に示すように、吐出モジュール340は、液体を吐出するノズル311を備えたノズル板321と、ノズル311が連通し、加圧した液体を供給する流路322と、ノズル311を開閉するニードル状の弁体を駆動する圧電素子324と、を有する。
【0043】
ノズル板321はハウジング110と接合している。流路322はハウジング110に設けた複数の吐出モジュール340に共通の流路である。塗装装置100は、流路322を通して供給ポート111から加圧液体を供給し、回収ポート112から液体を排出する。なお、対象物200に対して液体を吐出している期間は、ノズル311からの液体の吐出効率を低下させないようにするため、回収ポート112からの液体の排出を一時的に行わなくてもよい。
【0044】
〈制御部20の機能構成例〉
図6は、図1に示した塗装装置100が備える制御部20の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0045】
制御部20は、入力部21と、取得部22と、生成部23と、補正部24と、吐出制御部25と、供給制御部26と、維持制御部27と、移動制御部28と、出力部29と、検査制御部40と、を有する。
【0046】
入力部21及び出力部29の各機能は、図2の機器接続I/F35及び通信I/F36等により実現される。
【0047】
取得部22、生成部23、補正部24、吐出制御部25、供給制御部26、維持制御部27、移動制御部28及び検査制御部40の各機能は、CPU31がROM32に格納されているプログラムをRAM33に展開し、該プログラムに規定された処理を実行すること等により実現される。
【0048】
なお、ヘッド11等の制御部20以外の構成部が、制御部20が有する各機能の少なくとも一部を有してもよい。また制御部20が有する各機能の少なくとも一部は、制御部20と制御部20以外の構成部との分散処理により実現されてもよい。
【0049】
入力部21は、外部装置との間で通信を制御することにより、外部装置から対象物200の形状データD、及び対象物200を示す情報である対象物情報K1を入力する。また、入力部21は、検出部12との間で通信を制御することにより、検出部12から特徴点情報Eを入力する。また、入力部21は、検査機構60からの検査結果を受信する。
【0050】
取得部22は、入力部21を介して外部装置から入力した対象物情報K1に基づき、対象物200に塗装する液体の色に関する情報である塗装色情報K2を取得し、取得した塗装色情報K2を供給制御部26に出力する。
【0051】
生成部23は、入力部21を介して外部装置から入力した対象物200の形状データDに基づいて、ロボットアーム13がヘッド11を対象物200に対して相対移動させるための相対移動経路に関する情報である相対移動経路情報T1を生成する。生成部23は、生成した相対移動経路情報T1を補正部24に出力する。
【0052】
相対移動経路は、ヘッド11が対象物200に対して相対位置を変化させながら対象物200上を通る経路を意味する。ヘッド11は、対象物200に対する相対位置ごとでの対象物200の形状に応じて、対象物200に対する相対傾きを変化させてもよい。ヘッド11が対象物200に対する相対傾きを変化させる場合には、相対移動経路は、ヘッド11が対象物200に対して相対位置及び相対傾きを変化させながら対象物200上を通る経路を意味する。
【0053】
補正部24は、入力部21を介して複数の検出部12のそれぞれから入力した特徴点情報Eに基づいて、生成部23により生成された相対移動経路情報T1を補正する。補正部24は、補正後の相対移動経路に関する情報である補正経路情報T2を移動制御部28に出力する。
【0054】
補正部24は、特徴点情報Eに基づいて、搬送されてきた対象物200の位置及び傾きの形状データDに対する三次元的なずれを検出する。対象物200の位置及び傾きの形状データDに対する三次元的なずれは、対象物200の位置及び傾きに関する情報に対応する。
【0055】
補正部24は、対象物200の位置及び傾きの形状データDに対する三次元的なずれの検出結果に応じて、相対移動経路情報T1を補正して補正経路情報T2を取得する。補正部24は、取得した補正経路情報T2を移動制御部28に出力する。塗装装置100は、補経路情報T2に従って、対象物200に対してヘッド11を相対移動させる。これにより、塗装装置100は、対象物200とヘッド11におけるノズルとを三次元的に位置合わせし、塗装を行うことができる。
【0056】
吐出制御部25は、出力部29を介して吐出制御信号C1を出力することにより、複数のヘッド11からの液体の吐出を制御する。吐出制御部25は、例えば複数のヘッド11のそれぞれが有する複数のノズルのうち、液体を吐出するノズルの選択、該ノズルから液体を吐出するタイミング、該ノズルから吐出する液体の量、吐出周波数等を制御できる。また、吐出制御部25は、補正経路情報T2に基づき、上記の液体を吐出するノズルの選択、該ノズルから液体を吐出するタイミング等を制御できる。また、吐出制御部25は、検査制御部40からの命令に従って、ヘッド11からの透明インクの吐出を制御する。
【0057】
供給制御部26は、出力部29を介して供給制御信号C2を出力することにより、供給機構14から複数のヘッド11への液体の供給を制御する。供給制御部26は、例えば複数のヘッド11に供給する液体の色の選択、供給するタイミング、供給量等を制御できる。また、供給制御部26は、検査制御部40からの命令に従って、供給機構14からヘッド11への透明インクの供給を制御する。
【0058】
維持制御部27は、出力部29を介して維持制御信号C3を出力することにより、維持機構15から複数のヘッド11からの液体の吐出状態を維持する。維持制御部27は、例えば複数のヘッド11のうち、維持対象とするヘッドの選択、維持動作のタイミング等を制御できる。また、維持制御部27は、検査制御部40からの命令に従うタイミングにおいても維持機構15におけるヘッド11の維持を制御する。
【0059】
移動制御部28は、補正経路情報T2に基づいて、出力部29を介して移動制御信号C4を出力することにより、複数のロボットアーム13による複数のヘッド11それぞれの対象物200に対する相対移動を制御する。
【0060】
検査制御部40は、本発明にて判定手段となるものである。検査制御部40は、検査機構60を制御することで、ヘッド11からの液体の吐出状態を検査する。
【0061】
出力部29は、ヘッド11との間で通信を制御することにより、吐出制御信号C1をヘッド11に出力する。また出力部29は、ロボットアーム13との間で通信を制御することにより、移動制御信号C4をロボットアーム13に出力する。また出力部29は、供給機構14との間で通信を制御することにより、供給制御信号C2を供給機構14に出力する。また出力部29は、維持機構15との間で通信を制御することにより、維持制御信号C3を維持機構15に出力する。また、出力部29は、検査機構60との間で通信を制御することにより、検査制御部40からの命令を検査機構60に出力する。
【0062】
出力部29は、予め定められた対象物200の形状データDと、検出部12から出力された対象物200における3つ以上の特徴点の三次元位置に関する情報と、を取得すると、ヘッド11の対象物200に対する相対移動経路に関する情報を出力する出力部に対応する。
【0063】
〈塗装装置100の塗装時における動作例〉
図7は、図1に示した塗装装置100による塗装動作の一例を示すフローチャートである。
【0064】
塗装装置100は、後述する検査が完了し、対象物200が塗装装置100による塗装位置で停止したことを契機として、図7に示す動作を開始する。
【0065】
まず、ステップS71において、塗装装置100は、取得部22により、入力部21を介して外部装置から入力した対象物情報K1に基づき、対象物200に塗装する液体の色に関する情報である塗装色情報K2を取得する。取得部22は、取得した塗装色情報K2を供給制御部26に出力する。
【0066】
続いて、ステップS72において、塗装装置100は、供給制御部26により、供給機構14の動作を制御し、塗装色情報K2に対応する色の液体を4つのヘッド11のそれぞれに供給する。なお、吐出する液体の色が複数のヘッドごとで異なる場合には、塗装装置100は、塗装色情報K2に対応する色の液体を吐出するヘッドのみに該液体を供給してもよい。また、塗装装置100が複数の色で塗装を行う場合には、塗装装置100は、4つのヘッド11ごとに異なる色の液体を供給してもよい。
【0067】
続いて、ステップS73において、塗装装置100は、維持制御部27により、維持機構15の動作を制御し、塗装色情報K2に対応する色の液体を吐出する4つのヘッド11に対して維持動作を実行する。なお、吐出する液体の色が複数のヘッドごとで異なる場合には、塗装装置100は、塗装色情報K2に対応する色の液体を吐出するヘッドのみに対して維持動作を実行してもよい。また、ステップS73における維持動作は、後述するヘッド11の検査において行われているため、省略してもよい。
【0068】
続いて、ステップS74において、塗装装置100は、生成部23により、入力部21を介して外部装置から入力した対象物200の形状データDに基づいて、相対移動経路情報T1を生成する。生成部23は、生成した相対移動経路情報T1を補正部24に出力する。
【0069】
続いて、ステップS75において、塗装装置100は、補正部24により、入力部21を介して複数の検出部12のそれぞれから入力した特徴点情報Eに基づいて、搬送されてきた対象物200の位置及び傾きの形状データDに対する三次元的なずれを検出する。
【0070】
続いて、ステップS76において、塗装装置100は、補正部24により、対象物200の位置及び傾きの形状データDに対する三次元的なずれの検出結果に応じて、相対移動経路情報T1を補正し、補正経路情報T2を取得する。補正部24は、取得した補正経路情報T2を移動制御部28に出力する。
【0071】
続いて、ステップS77において、塗装装置100は、移動制御部28により、4つのロボットアーム13の動作を制御し、対象物200に対する複数のヘッド11それぞれの相対位置及び相対傾きを変化させながら、4つのヘッド11のそれぞれを相対移動させる。また、塗装装置100は、ヘッド11の相対移動とともに、吐出制御部25により4つのヘッド11それぞれによる液体の吐出を制御して、対象物200を塗装する。なお、塗装装置100は、対象物200上で塗装を行わない部分では、ヘッド11の相対移動のみを行い、該箇所ではヘッド11から液体を吐出させなくてもよい。また、塗装装置100は、ロボットアーム13によるヘッド11の相対移動速度や、ヘッド11による吐出周波数等を適宜変更しながら塗装を行ってもよい。
【0072】
続いて、ステップ78において、塗装装置100は、制御部20により、塗装を終了するか否かを判定する。例えば、制御部20は、操作部を介して塗装終了指示の操作入力を受け付けること、あるいは予め定められた対象物200の塗装範囲を塗装したか否かを判定すること等により、塗装を終了するか否かを判定できる。
【0073】
ステップS78において、塗装を終了しないと判定された場合には(ステップS78、NO)、塗装装置100は、ステップS77以降の動作を再度行う。一方、ステップS78において、塗装を終了すると判定された場合には(ステップS78、YES)、塗装装置100は、動作を終了する。
【0074】
以上のように、塗装装置100は、対象物200に塗装を行うことができる。なお、1つの対象物200に対する塗装が終了した後、次の対象物200がコンベア等により塗装位置まで搬送されて停止した際に、塗装装置100は、ステップS71以降の動作を行って、この次の対象物200を塗装することができる。
【0075】
〈塗装装置100におけるヘッド11の検査方法〉
以下に、上述した塗装装置100においてヘッド11からの液体の吐出状態を検査する検査方法について説明する。
【0076】
図8は、本実施形態の塗装装置100における検査機構60の配置例を示す図である。
【0077】
図8に示すように、本実施形態の塗装装置100における検査機構60は、透明メディア50を介して紫外線光源61とカメラ62とを対向させた状態で検査を行う。
【0078】
紫外線光源61は、透明メディア50の一方の面側に配置され、透明メディア50の一方の面に向けて紫外線を照射する。
【0079】
カメラ62は、本発明にて検出手段の一例となるものである。カメラ62は、紫外線を検出可能なものであって、透明メディア50の他方の面側に配置される。カメラ62は、紫外線光源61から照射され、透明メディア50を透過した紫外線を検出する。
【0080】
図9は、図8に示した透明メディア50の一例を示す図である。
【0081】
図8に示した透明メディア50は、本発明にて透明な基材の一例となるものであって、例えば、紫外線を透過可能なガラスまたは樹脂等の材料を含んで構成されている。透明メディア50は図9に示すように、一方の面に凹凸形状51が形成されていてもよい。凹凸形状51は、すり加工またはブラスト加工等により形成できる。
【0082】
図10は、図8に示した構成における作用を説明するための図である。
【0083】
図10に示すように、透明インク80は、紫外線63を透過させない性質を有している。そのため、図8に示したように、紫外線光源61によって透明メディア50の一方の面側から紫外線63を照射したとしても、透明メディア50上に透明インク80が付着している場合、紫外線63が透過せず、カメラ62において紫外線63が検出されない。
【0084】
そこで、塗装装置100において、透明メディア50に対してヘッド11から透明インク80を吐出する。その後、紫外線光源61によって透明メディア50の透明インク80が吐出された面とは反対側の面から紫外線63を照射する。また、透明メディア50の透明インク80が吐出された面からカメラ62にて紫外線を検出する。これにより、ヘッド11からのインクの吐出状態の検査を行う。なお、紫外線光源61によって透明メディア50の透明インク80が吐出された面から紫外線63を照射し、透明メディア50の透明インク80が吐出された面とは反対側の面からカメラ62にて紫外線を検出してもよい。
【0085】
なお、透明メディアに吐出される透明インクは、200~400nmの波長の光を吸収する樹脂を含んだものであってもよい。
【0086】
図11は、塗装装置100のヘッド11から透明インク80が吐出された状態の一例を示す図である。
【0087】
図11に示すように、塗装装置100のヘッド11から透明メディア50に対して透明インク80が吐出された場合、透明メディア50上には、透明インク80が付着した付着領域71と、透明インク80が付着しなかった非付着領域72とが存在する。この状態にて、紫外線光源61によって透明メディア50の一方の面側から紫外線63を照射するとともに、透明メディア50を他方の面側からカメラ62にて撮影することで紫外線63を検出する。すると、カメラ62にて撮影された画像においては、付着領域71は、紫外線63が透過しないため、影のように暗くなる。一方、非付着領域72は、紫外線63が透過することで明るくなる。この際、図9に示したように、透明メディア50の一方の面に、凹凸形状51が形成されていると、紫外線光源61から照射された紫外線63を拡散させることでカメラ62に入ってくる光量を一様にすることができる。なお、凹凸形状51は、透明メディア50の両面に形成されていてもよい。
【0088】
これにより、ヘッド11から吐出された液体の形状や有無を判別することができる。特に、車体の塗装を保護するために塗装を覆うようにしてヘッド11から吐出される透明なオーバーコート液体の形状や有無を判別することができる。その際、上述したように、透明メディアに吐出される透明インクが、200~400nmの波長の光を吸収する樹脂を含んだものであれば、車両の塗装表面の保護能力を向上させることができる。
【0089】
図12は、本発明の検査方法における透明メディア50の配置例を示す図である。
【0090】
図12に示すように、例えば、塗装装置100にて塗装が行われる車体の脇に透明メディア50を配置する。そして、ロボットアーム13によってヘッド11を透明メディア50に対向する領域に移動させ、ヘッド11から透明メディア50に対して透明インクを吐出することで、検査パターンを印字する。その後、上述したように、紫外線光源61によって透明メディア50の一方の面から紫外線63を照射するとともに、透明メディア50の他方の面からカメラ62にて紫外線を検出することで、ヘッド11からのインクの吐出状態の検査を行う。
【0091】
図13は、透明メディア50に印字される検査パターンの一例を示す図である。
【0092】
本実施形態におけるヘッド11は、メインヘッドと小ヘッドとを有する。そのため、図13に示すように、透明メディア50には、メインヘッドによる印字領域となるメインヘッド部73aと、小ヘッドによる印字領域となる小ヘッド部73bとが存在する。これらメインヘッド部73aと小ヘッド部73bとは、例えば、印字方向Aに互いに並行して延びるように存在する。メインヘッド部73aには、メインヘッドを構成する各ノズルに対応して透明インクが付着した付着領域71aと、透明インクが付着しなかった非付着領域72aとが存在する。また、小ヘッド部73bには、小ヘッドを構成する各ノズルに対応して透明インクが付着した付着領域71bと、透明インクが付着しなかった非付着領域72bとが存在する。
【0093】
図14は、本発明の検査方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【0094】
塗装装置100においては、例えば上述したように車両への塗装を行う前に、ヘッド11からの液体の吐出状態の検査を行う。その際、図12に示したように、塗装装置100にて塗装が行われる車体の脇に透明メディア50が配置される。
【0095】
まず、ステップS1501において、塗装装置100は、検査制御部40により、維持機構15によるヘッド11の洗浄回数をリセットする。
【0096】
続いて、ステップS1502において、塗装装置100は、検査制御部40により、維持機構15によるヘッド11の洗浄回数を1だけ増加させ、増加させた洗浄回数が所定の回数を超えているかどうかを確認する。
【0097】
増加させた洗浄回数が所定の回数を超えていない場合は、検査制御部40は、維持制御部27に対して維持機構15におけるヘッド11の維持動作を行う旨の命令を出力する。そして、ステップS1503において、維持制御部27は、維持機構15によるヘッド11の洗浄等の維持動作を行う。
【0098】
一方、増加させた洗浄回数が所定の回数を超えている場合は、ステップS1508において、塗装装置100は、塗装を停止する。
【0099】
続いて、検査制御部40は、吐出制御部25に対してヘッド11から透明インクを吐出する旨の命令を出力する。すると、ステップS1504において、吐出制御部25は、ヘッド11から透明メディア50に対して透明インクを吐出することで、検査パターンを印字する(吐出工程)。なお、透明インクは、供給制御部26の制御によって、透明インクが収容された液体タンクから検査対象となるヘッド11に供給されることになる。
【0100】
続いて、ステップS1505において、塗装装置100は、検査制御部40により、紫外線光源61によって透明メディア50の一方の面側から紫外線63を照射する(照射工程)とともに、透明メディア50の他方の面側からカメラ62にて紫外線63を検出する(検出工程)。例えば、上述したように、紫外線光源61によって透明メディア50の透明インク80が吐出された面とは反対側の面側から紫外線63を照射する。また、透明メディア50の透明インク80が吐出された面側からカメラ62にて紫外線を検出する。これにより、透明メディア50に透明インクによって印字された検査パターンを撮影する。
【0101】
続いて、ステップS1506において、塗装装置100は、検査制御部40によって、カメラ62にて検出された紫外線63のパターンに基づいて、ヘッド11における吐出状態を判定する(判定工程)。
【0102】
図15は、カメラ62にて検出された紫外線63のパターンの一例を示す図である。
【0103】
ヘッド11の吐出状態に異常が生じている場合は、例えば図15(a)に示すように常時吐出パターン75が検出される場合がある。常時吐出パターン75は、正常な吐出パターン74とは異なり、印字方向Bに液体が常時吐出されるものである。常時吐出は、常時吐出パターン75の面積を算出し、正常な吐出パターン74の面積と比較することで、判定することができる。
【0104】
また、ヘッド11の吐出状態に異常が生じている場合は、例えば図15(b)に示すように不吐出パターン76が検出される場合がある。不吐出パターン76は、正常な吐出パターン74とは異なり、液体が吐出されないことによるものである。不吐出は、常時吐出パターン75の面積を算出し、正常な吐出パターン74の面積と比較することで、判定することができる。
【0105】
また、ヘッド11の吐出状態に異常が生じている場合は、例えば図15(c)に示すように吐出曲がりパターン77が検出される場合がある。吐出曲がりパターン77は、正常な吐出パターン74の並びに対して曲がった位置に存在するものである。吐出曲がりは、曲がりのない吐出パターン74のお手本データを取得しておき、このお手本データの重心位置と吐出曲がりパターン77の重心位置とを比較してパターンの曲がり量を測定し、曲がり量が規定の値を超えていた場合に曲がりと判定することができる。
【0106】
ステップS1506にてヘッド11における吐出状態が正常であると判定された場合は、ステップS1507において、塗装装置100は、図7に示した塗装を実施する。
【0107】
また、ステップS1506にてヘッド11における吐出状態が、不吐出や吐出曲がりであると判定された場合は、塗装装置100は、検査制御部40によって、ヘッド11の吐出状態に異常が生じていると判定し、ステップS1502における処理に戻る。そして、検査制御部40により、維持機構15によるヘッド11の洗浄回数を1だけ増加させ、増加させた洗浄回数が所定の回数を超えているかどうかを確認する。増加させた洗浄回数が所定の回数を超えていない場合は、ステップS1503において、維持機構15によるヘッド11の洗浄等の維持動作を行う。その際、ヘッド11における吐出状態が、不吐出や吐出曲がりである旨を表示部等に表示出力してもよい。
【0108】
また、ステップS1506にてヘッド11における吐出状態が、常時吐出であると判定された場合は、塗装装置100は、検査制御部40によって、ヘッド11の吐出状態に異常が生じていると判定し、ステップS1508において、塗装を停止する。その際、ヘッド11における吐出状態が、常時吐出である旨を表示部等に表示出力してもよい。
【0109】
このように、本実施形態においては、透明インクが紫外線を透過させない性質を利用し、透明インクを用いてヘッド11からの液体を吐出状態を検査している。具体的には、透明インクを透明メディアに吐出し、その後、透明メディアの一方の面側から紫外線を照射するとともに、透明メディアの他方の面側から紫外線を検出する。そして、紫外線の検出結果に基づいてヘッドにおける吐出状態を判定している。これにより、車体の塗装を保護するために塗装領域を覆うようにしてヘッド11から吐出されるオーバーコート液体のような、本来光を当てるだけでは検知できない透明なインクの吐出状態を検査することができる。この際、検出された紫外線のパターンに基づいてヘッドにおける吐出状態を判定することで、判定が容易にかつ確実なものとなる。例えば、検出された紫外線のパターンの面積を算出することで、ヘッドにおけるインクの常時吐出及び不吐出を検出することにより、判定が容易にかつ、より確実なものとなる。また、検出された紫外線のパターンの重心位置を算出することで、ヘッドにおけるインクの吐出曲がりを検出することにより、判定が容易にかつ、より確実なものとなる。
【0110】
なお、本実施形態においては、対象物200に塗装を行う塗装装置100に本発明の検査方法を適用したものを例に挙げて説明した。しかしながら、本発明の検査方法は、液体吐出手段から液体を吐出する装置であれば、対象物200に塗装を行う塗装装置100に限らない。さらには、対象物200に塗装を行う塗装装置100であっても、上述したようにロボットアーム13を制御したり、塗装の位置を補正したりするものでなくても適用することができる。
【0111】
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されない。すなわち、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。
【0112】
上述した実施形態において、検査時以外にてヘッド11から吐出される液体は、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、等を含む溶液、懸濁液、エマルジョン等でもよい。これらは例えば、インクジェット用インク、塗装用塗料、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0113】
対象物200は、液体が付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては,車体、建材、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布等の被記録媒体、電子基板、圧電素子等の電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セル等の媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0114】
実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【0115】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
(付記1)
液体吐出手段からの液体の吐出状態を検査する検査方法であって、
透明な基材に対して前記液体吐出手段から透明インクを吐出させる吐出工程と、
前記基材の一方の面側から紫外線を照射する照射工程と、
紫外線を検出可能な検出手段によって前記基材の他方の面側から前記紫外線を検出する検出工程と、
前記検出工程における検出結果に基づいて前記液体吐出手段における吐出状態を判定する判定工程と、を有する、検査方法。
(付記2)
前記他方の面は、前記基材に対して前記液体吐出手段から前記透明インクが吐出される面である、付記1に記載の検査方法。
(付記3)
前記基材は、少なくとも一方の面に、凹凸形状が形成されている、付記1または付記2に記載の検査方法。
(付記4)
前記判定工程は、前記検出工程にて検出された紫外線のパターンが、前記液体吐出手段から液体が吐出されるパターンと異なる場合に、前記液体吐出手段における吐出状態が異常であると判定する、付記1乃至3のいずれかに記載の検査方法。
(付記5)
前記判定工程は、前記検出工程にて検出された紫外線のパターンの面積を算出することで、前記液体吐出手段における液体の常時吐出及び不吐出を検出する、付記4に記載の検査方法。
(付記6)
前記判定工程は、前記検出工程にて検出された紫外線のパターンの重心位置を算出することで、前記液体吐出手段における液体の吐出曲がりを検出する、付記4に記載の検査方法。
(付記7)
前記透明インクは、200~400nmの波長の光を吸収する樹脂を含んだインクである、付記1乃至6のいずれかに記載の検査方法。
(付記8)
液体吐出手段からの液体を吐出することで塗装を行う塗装装置であって、
前記液体吐出手段は、透明な基材に対して透明インクを吐出し、
前記基材の一方の面側から紫外線を照射する照射手段と、
紫外線を検出可能であり、前記基材の他方の面側から前記紫外線を検出する検出手段と、
前記検出手段における検出結果に基づいて前記液体吐出手段における吐出状態を判定する判定手段と、を有する、塗装装置。
【符号の説明】
【0116】
11,11Y,11M,11C,11K ヘッド
11-1,11-2,11-3,11-4 ヘッド
12,12-1,12-2,12-3,12-4 検出部
13,13-1,13-2,13-3,13-4 ロボットアーム
14 供給機構
15 維持機構
20 制御部
21 入力部
22 取得部
23 生成部
24 補正部
25 吐出制御部
26 供給制御部
27 維持制御部
28 移動制御部
29 出力部
31 CPU
32 ROM
33 RAM
34 HDD/SSD
35 機器接続I/F
36 通信I/F
40 検査制御部
50 透明メディア
51 凹凸形状
60 検査機構
61 紫外線光源
62 カメラ
63 紫外線
71,71a,71b 付着領域
72,72a,72b 非付着領域
73a メインヘッド部
73b 小ヘッド部
74 吐出パターン
75 常時吐出パターン
76 不吐出パターン
77 吐出曲がりパターン
80 透明インク
100 塗装装置
110 ハウジング
111 供給ポート
112 回収ポート
113 コネクタ
200 対象物
211 塗装範囲
230 コンプレッサ
311 ノズル
321 ノズル板
322 流路
324 圧電素子
325 液体
330Y,330M,330C,330K 液体タンク
331 パイプ
332 エアーレギュレータ
333 チューブ
340 吐出モジュール
C1 吐出制御信号
C2 供給制御信号
C3 維持制御信号
C4 移動制御信号
D 形状データ
E 特徴量情報
K1 対象物情報
K2 塗装色情報
S システムバス
S1 平面
T1 相対移動経路情報
T2 補正経路情報
【先行技術文献】
【特許文献】
【0117】
【特許文献1】特許第4561296号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15