(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163752
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】ゼオライトの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 39/48 20060101AFI20241115BHJP
【FI】
C01B39/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079616
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】小野塚 博暁
(72)【発明者】
【氏名】堤内 出
(72)【発明者】
【氏名】武脇 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】澤田 真人
(72)【発明者】
【氏名】横井 俊之
【テーマコード(参考)】
4G073
【Fターム(参考)】
4G073BA02
4G073BA04
4G073BA56
4G073BA57
4G073BA63
4G073BA75
4G073BB03
4G073BB14
4G073BB48
4G073CZ25
4G073CZ49
4G073CZ50
4G073FA12
4G073FB01
4G073FB02
4G073FB06
4G073FB14
4G073FB25
4G073FB30
4G073FC12
4G073FC30
4G073GA01
4G073GA03
4G073GA12
4G073UA03
4G073UB60
(57)【要約】
【課題】
従来製造が難しかったゼオライトを容易に得ることができるゼオライトの製造方法を提供すること。
【解決手段】
合成するゼオライト(X)と異なる複数のゼオライトをケイ素源として用いるゼオライトの製造方法であって、前記複数のゼオライトの少なくとも1つであるゼオライト(A)が、合成するゼオライト(X)を構成するCBUを1種以上有し、前記複数のゼオライトの他の少なくとも1つであるゼオライト(B)が、合成するゼオライト(X)を構成する別のCBUを1種以上有し、かつゼオライト(A)及びゼオライト(B)が、前記ケイ素源中に、それぞれ5質量%以上含有することを特徴とする、ゼオライトの製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成するゼオライト(X)と異なる複数のゼオライトをケイ素源として用いるゼオライトの製造方法であって、前記複数のゼオライトの少なくとも1つであるゼオライト(A)が、合成するゼオライト(X)を構成するCBUを1種以上有し、前記複数のゼオライトの他の少なくとも1つであるゼオライト(B)が、合成するゼオライト(X)を構成する別のCBUを1種以上有し、かつゼオライト(A)及びゼオライト(B)が、前記ケイ素源中に、それぞれ5質量%以上含有することを特徴とする、ゼオライトの製造方法。
【請求項2】
前記合成するゼオライト(X)がCON型ゼオライトである、請求項1に記載のゼオライトの製造方法。
【請求項3】
前記ゼオライト(A)がCBUとして少なくともbeaを有するゼオライトであり、前記ゼオライト(B)がCBUとして少なくともmelを有する、請求項2に記載のゼオライトの製造方法。
【請求項4】
前記ゼオライト(A)が、CBUとして少なくともbeaを有するBetaゼオライトであり、前記ゼオライト(B)が、CBUとしてmelを有するMFI型ゼオライトである、請求項3に記載のゼオライトの製造方法。
【請求項5】
前記合成するゼオライト(X)のケイ素(Si)とアルミニウム(Al)とのモル比(Si/Al)が500以下である、請求項1に記載のゼオライトの製造方法。
【請求項6】
Si/Alが50以下であるCON型ゼオライトを、種結晶として、ケイ素源に対して1質量%以上添加することを特徴とする、CON型ゼオライトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゼオライトの製造方法に関し、より詳細にはCON型ゼオライトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、触媒,吸着材,イオン交換材,分子篩や分離材など広く工業的に使われている。ゼオライトの構造はケイ素、アルミニウム、酸素原子からなるTO4ユニットを基本単位としており、さらにこのTO4ユニットがいくつか繋がることでcomposite building units(以下「CBU」と記載する。)と呼ばれる構造単位を有する。
目的とするゼオライトを合成する手法として、ゼオライトを出発原料としてそれを目的ゼオライトへ転換する、ゼオライト転換法という合成法が知られている。具体的には、目的のゼオライトと共通のCBUを有するゼオライトを合成原料として用いる方法が報告されているが(非特許文献1-3)、一方で、CBUの構造類似性だけで出発原料と最終生成物の相関は説明できないと主張する文献(非特許文献4)も存在する。
【0003】
ところで、ゼオライトの用途として、低級オレフィン製造用の触媒が挙げられるが、例えば特許文献1に開示されているように、メタノールおよび/またはジメチルエーテルを原料として、CON型構造を有するゼオライト(CIT-1ゼオライト)を活性成分として含む触媒を使用することにより、プロピレンとブテンを高収率で製造することができる。
しかしながらCON型ゼオライトは、触媒としての寿命が必ずしも十分とはいえず、触媒再生のために頻繁に反応ガスと再生ガスを切り替える必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J.Jpn.Petrol.Inst.,56,183-197(2013)
【非特許文献2】J.Am.Chem.Soc.,134,11542-11549(2012)
【非特許文献3】J.Nanosci.Nanotechnol.,13,3020-3026(2013)
【非特許文献4】Nat.Mater.,18,1177-1181(2019)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ゼオライトの製造方法としては、上述のような方法が知られているが、ゼオライトの種類によっては、製造が困難なものがある。
一例として、例えばCON型ゼオライトを例に挙げると、アルミニウムを多く含む低シリカCON型ゼオライトの合成は難しいことが知られている。すなわち、低シリカCON型ゼオライト等の合成困難なゼオライトを如何に簡便な方法で合成するかというのが重要な課題である。
本発明は、上記課題を解決するものであり、従来製造が難しかったゼオライトを容易に得ることができるゼオライトの製造方法を提供することを課題とする。
また、上述のように、CON型ゼオライトは低級オレフィン製造用の触媒として有用であるが、触媒寿命が不十分という問題がある。そこで、本発明は低級オレフィンの合成触媒として用いられる、触媒寿命の長いCON型ゼオライトの製造方法を提供することも本発明の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく検討を進め、合成されるゼオライトと共通のCBUを有する異なった2種以上のゼオライトを原料としてゼオライトを合成することで、合成困難なゼオライトを合成できることを見出し、本発明を完成させた。本発明では、構成するCBUすべてをそろえなくとも、その1種を含むゼオライトを2種以上使用することにより、容易に所望するゼオライトの単相を得ることができる。例えば、合成が困難な低シリカCON型ゼオライトの場合であっても、構成する4種のCBUすべてをそろえなくとも、その1種を含むゼオライトを2種以上使用することにより、容易に実質的にCON型のゼオライトの単相を得ることができ、しかも低シリカのCON型ゼオライトを得ることができる。
そしてさらに従来得ることが困難であり、そして本発明により容易に得られるようになった低シリカのCON型ゼオライトを種結晶として用いて得られたCON型ゼオライトを触媒として用いると、長期間高い原料転化率を維持することができることを見出したものである。
【0008】
本発明は、以下の要旨を含む。
[1]合成するゼオライト(X)と異なる複数のゼオライトをケイ素源として用いるゼオライトの製造方法であって、前記複数のゼオライトの少なくとも1つであるゼオライト(A)が、合成するゼオライト(X)を構成するCBUを1種以上有し、前記複数のゼオライトの他の少なくとも1つであるゼオライト(B)が、合成するゼオライト(X)を構成する別のCBUを1種以上有し、かつゼオライト(A)及びゼオライト(B)が、前記ケイ素源中に、それぞれ5質量%以上含有することを特徴とする、ゼオライトの製造方法。
[2]前記合成するゼオライト(X)がCON型ゼオライトである、上記[1]に記載のゼオライトの製造方法。
[3]前記ゼオライト(A)がCBUとして少なくともbeaを有するゼオライトであり、前記ゼオライト(B)がCBUとして少なくともmelを有する、上記[1]又は[2]に記載のゼオライトの製造方法。
[4]前記ゼオライト(A)が、CBUとして少なくともbeaを有するBetaゼオライトであり、前記ゼオライト(B)が、CBUとして少なくともmelを有するMFI型ゼオライトである、上記[1]~[3]のいずれかに記載のゼオライトの製造方法。
[5]前記合成するゼオライト(X)のケイ素(Si)とアルミニウム(Al)とのモル比(Si/Al)が500以下である、上記[1]~[4]のいずれかに記載のゼオライトの製造方法。
[6]Si/Alが50以下であるCON型ゼオライトを、種結晶として、ケイ素源に対して1質量%以上添加することを特徴とする、CON型ゼオライトの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来製造が難しかったゼオライトを容易に得ることができるゼオライトの製造方法を提供することができる。また、低級オレフィンの合成触媒として用いられる、触媒寿命の長いCON型ゼオライトの製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1及び比較例1~3で合成したゼオライトの粉末X線回折結果を示す図である。
【
図2】実施例2及び比較例4に係るゼオライトを触媒として用いた低級オレフィンの製造における、メタノール転化率および各成分の選択率の推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はどのようなゼオライトにも適用可能であると考えられる。以下の説明では製造が難しいゼオライトの代表としてアルミニウムを多く含む低シリカCON型ゼオライトについて説明する。
すなわち以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0012】
[ゼオライトの製造方法]
ゼオライトの製造方法としては、(a)ケイ素源、(b)アルミニウム源、(c)アルカリ金属元素源及び/又はアルカリ土類金属元素源、および(d)有機構造規定剤、(e)水、必要に応じて種結晶、を含む結晶前駆体の混合物(以下、「原料」と記載することがある。)を調製し、これを水熱合成する方法で合成することができる。
【0013】
(原料の成分)
(a)ケイ素源
本実施形態で用いるケイ素源は、合成するゼオライト(X)と異なる複数のゼオライトをケイ素源として用いることが特徴である。複数のゼオライトの1つをゼオライト(A)としたときに、ゼオライト(A)のCBUの1種以上が、合成するゼオライト(X)を構成するCBUと同一であり、また、複数のゼオライトの他の1つをゼオライト(B)としたときに、ゼオライト(B)のCBUの1種以上が、合成するゼオライト(X)を構成するCBUと同一であることが肝要である。なお、CBUは前述の通り、International Zeolite Association(IZA)が定める構造単位のことをいう。
ゼオライト(X)としては、AFX型、Beta、CHA型、CON型、DDR型、ERI型、FAU型、FER型、KFI型、LEV型、LTA型、LTL型、MEL型、MFI型、MSE型、MTW型、MWW型、RHO型、SZR型が好ましく、より好ましくはCON型、CHA型、KFI型、MTW型、MWW型であり、さらに好ましくはCON型である。
【0014】
例えば、ゼオライト(X)が、CON型ゼオライトである場合、該CON型ゼオライトのCBUはbea、mel、bre及びlauであり、ゼオライト(A)及びゼオライト(B)の具体例としては、Beta、IFR型、MSE型、STT型、BOG型、BRE型、HEU型、IWR型、IWW型、RRO型、STI型、TER型、ASV型、ATO型、BCT型、DFO型、EZT型、ITH型、LAU型、MSO型、OSI型、‐RON型、SAO型、TUN型、UOZ型、DON型、MEL型、MFI型、MWW型、SFG型が挙げられる。中でも、CBUとして、bea、mtw及びmorを有するBetaゼオライトと、CBUとして、mfi、mel、mor及びcasを有するMFI型ゼオライトを好適に用いることができる。さらには、ゼオライト(A)がCBUとして少なくともbeaを有するゼオライトであり、ゼオライト(B)がCBUとして少なくともmelを有する態様が好ましい。より具体的には、ゼオライト(A)が、CBUとして少なくともbeaを有するBetaゼオライトであり、ゼオライト(B)が、CBUとしてmelを有するMFI型ゼオライトであることが好ましい。
【0015】
ゼオライト(X)が、CHA型ゼオライトである場合、該CHA型ゼオライトのCBUはd6r及びchaであり、ゼオライト(A)及びゼオライト(B)の具体例としては、AEI型、AFT型、AFX型、EAB型、EMT型、ERI型、FAU型、GME型、KFI型、LEV型、LTL型、LTN型、MOZ型、MSO型、MWW型、OFF型、SAS型、SAT型、SAV型、SBS型、SBT型、SZR型、TSC型、-WEN型が挙げられる。中でも、CBUとして、d6r及びsodを有するFAU型ゼオライトと、CBUとして、d6r、gme、cha及びaftを有するAFT型ゼオライトを好適に用いることができる。
【0016】
ゼオライト(X)が、KFI型ゼオライトである場合、該KFI型ゼオライトのCBUはd6r、pau及びltaであり、ゼオライト(A)及びゼオライト(B)の具体例としては、AEI型、AFT型、AFX型、CHA型、-CLO型、EAB型、EMT型、ERI型、FAU型、GME型、LEV型、LTA型、LTL型、LTN型、MER型、MOZ型、MSO型、MWW型、OFF型、PAU型、RHO型、SAS型、SAT型、SAV型、SBS型、SBT型、SZR型、TSC型、UFI型、-WEN型が挙げられる。中でも、CBUとして、d6r及びsodを有するFAU型ゼオライトと、CBUとして、d4r、sod及びltaを有するLTA型ゼオライトを好適に用いることができる。
【0017】
ゼオライト(X)が、MWW型ゼオライトである場合、該MWW型ゼオライトのCBUはd6r及びmelであり、ゼオライト(A)及びゼオライト(B)の具体例としては、AEI型、AFT型、AFX型、CHA型、CON型、DON型、EAB型、EMT型、ERI型、FAU型、GME型、ITH型、IWR型、IWW型、KFI型、LEV型、LTL型、LTN型、MEL型、MFI型、MOZ型、MSO型、MWW型、OFF型、SAS型、SAT型、SAV型、SBS型、SBT型、SFG型、SZR型、TSC型、-WEN型が挙げられる。中でも、CBUとして、d6r及びsodを有するFAU型ゼオライトと、CBUとして、mfi、mel、mor及びcasを有するMFI型ゼオライトを好適に用いることができる。
【0018】
ゼオライト(X)が、MTW型ゼオライトである場合、該MTW型ゼオライトのCBUはjbw、cas、bik及びmtwであり、ゼオライト(A)及びゼオライト(B)の具体例としては、Beta、BEC型、BIK型、BOG型、CAS型、CFI型、EUO型、GON型、IHW型、ISV型、IWV型、JBW型、MFI型、MSE型、MTT型、MTW型、NES型、NSI型、SFE型、SFF型、SFH型、SFN型、SSY型、STF型、STT型、TER型、TON型、TUN型、UTL型、VET型が挙げられる。中でも、CBUとして、bea、mtw及びmorを有するBetaゼオライトと、CBUとして、mfi、mel、mor及びcasを有するMFI型ゼオライトを好適に用いることができる。
【0019】
なお、Betaは従来*BEAと表記されていたゼオライトであり、ゼオライト,40(2)72-77(2023)に記載があるようにゼオライトのアスタリスク付き骨格タイプコードの廃止に伴い、Betaと表記した。
【0020】
ケイ素源中の上記ゼオライト(A)及びゼオライト(B)の含有量は、それぞれ5質量%以上であることが好ましい。ゼオライト(A)の含有量について、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、よりさらに好ましくは20質量%以上、特に好ましくは25質量%以上、とりわけ好ましくは30質量%以上である。また、ゼオライト(B)の含有量について、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、よりさらに好ましくは20質量%以上、特に好ましくは25質量%以上、とりわけ好ましくは30質量%以上である。上記含有量以上であると、所望するゼオライト(X)が効果的に得られる。
ゼオライト(A)の含有量の上限については、特に制限されないが、原料中の他の成分の含有量を考慮すると、通常90質量%以下であり、70質量%以下であってよく、50質量%以下であってよい。また、ゼオライト(B)の含有量の上限については、特に制限されないが、原料中の他の成分の含有量を考慮すると、通常90質量%以下であり、70質量%以下であってよく、50質量%以下であってよい。
【0021】
上記ゼオライト(A)及びゼオライト(B)の粒子径は、特に限定されるものではないが、平均一次粒子径として、通常0.02μm以上、好ましくは0.04μm以上、より好ましくは0.06μm以上、通常5μm以下、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.60μm以下である。ゼオライト(A)及びゼオライト(B)の平均一次粒子径を上記範囲とすることで、原料中での溶解性が高くなり、副生物の生成を抑制し、結晶化を効率的に促進することができる。
【0022】
また、上記ゼオライト(A)及びゼオライト(B)は、水熱合成後に焼成を行っていない構造規定剤を含むゼオライト、焼成を行って構造規定剤を含まないゼオライトのいずれを用いてもよい。
ゼオライト(A)及びゼオライト(B)は、適当な溶媒、例えば水に分散させて原料に添加してもよいし、分散させずに直接添加してもよい。
【0023】
また、原料中には、上記ゼオライト(A)及びゼオライト(B)以外に、その他のケイ素源を有していてもよい。その他のケイ素源としては、通常、ケイ素源として用いられるものであれば制限はなく、例えば、微粉シリカ、シリカゾル、シリカゲル、ヒュームドシリカ、水ガラスなどのシリケート、テトラメトキシシランやテトラエトキシシラン等の珪素のアルコキシド、珪素のハロゲン化物などが挙げられる。また、上記ゼオライト(A)、ゼオライト(B)以外のゼオライト、例えば、FAU型ゼオライトやCHA型ゼオライトなどのシリカ含有ゼオライトやシリコアルミノホスフェートをケイ素源として用いてもよい。
これらのケイ素源は、上記ゼオライト(A)及びゼオライト(B)を有していればよく、その他のケイ素源は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0024】
これらのその他のケイ素源(つまりゼオライト(A)でも(B)でもないケイ素源)のうちでは、コスト面の有利さ、取り扱いの容易さの面で、好ましくは、微粉シリカ、シリカゾル、水ガラス、シリカ含有ゼオライトなどが用いられ、より好ましくは反応性の面で、シリカゾル、水ガラス、シリカ含有ゼオライトが用いられる。
その他のケイ素源のケイ素源中の含有量としては、特に限定されるものではないが、通常90質量%以下、好ましくは75質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。
【0025】
(b)アルミニウム源
本実施形態で用いるアルミニウム源としては、上述のゼオライト(A)及びゼオライト(B)等を含むゼオライト混合物が、ケイ素源であるとともに、アルミニウム源であってもよい。
本発明に係る原料には、上記複数のゼオライト以外のアルミニウム源が含まれていてもよく、例えば、アモルファスの水酸化アルミニウム、ギブサイト構造を持つ水酸化アルミニウム、バイヤーライト構造を持つ水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、ベーマイト、擬ベーマイト、アルミナゾル、アルミニウムアルコキシドなどが挙げられる。また、FAU型ゼオライトやCHA型ゼオライトなどのアルミニウム含有ゼオライトやアルミノホスフェートをアルミニウム源として用いてもよい。
これらアルミニウム源は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
これらのアルミニウム源のうち、コスト面の有利さ、取り扱いの容易さの面で、好ましくは、アモルファスの水酸化アルミニウム、ギブサイト構造を持つ水酸化アルミニウム、バイヤーライト構造を持つ水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミニウム含有ゼオライトが用いられ、より好ましくは反応性の面で、アモルファスの水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミニウム含有ゼオライトが用いられる。
そしてさらに好ましくは、アルミニウム源が、ケイ素源であり、かつアルミニウム源でもある化合物であり、該化合物がアルミニウム源中の90質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、不可避不純物を除き、アルミニウム源として用いられる化合物が、すべてのケイ素源でもある化合物を用いることである。そしてさらに好ましくは、不可避不純物を除き、アルミニウム源がすべてゼオライト(A)、ゼオライト(B)、および種結晶からなることであり、最も好ましくは、アルミニウム源が不可避不純物を除き、ゼオライト(A)とゼオライト(B)からなることである。
【0027】
(c)アルカリ金属元素源及び/またはアルカリ土類金属元素源
本実施形態の水熱合成に供する原料中に含まれるアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素としては特に限定されず、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが挙げられる。これらは1種が単独に含まれていても、2種以上が含まれていてもよいが、アルカリ性が高く、特に溶解性の原料を使用した際にゼオライトの結晶化が起こりやすい面でアルカリ金属元素を含むことが好ましい。
【0028】
アルカリ金属元素源、アルカリ土類金属元素源としては、その水酸化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸水素塩、炭酸塩などが挙げられる。これらの化合物のうち、水酸化物、炭酸水素塩、炭酸塩は、水溶液状態で塩基性を示すものである。具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどの水酸化物、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウムなどの炭酸水素塩、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウムなどの炭酸塩などが挙げられる。これらのうち、アルカリ性が高く、原料の溶解、続くゼオライトの結晶化を促進させる効果がある点で、好ましくは水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属元素の水酸化物であり、より好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムであり、さらに好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである。
これらのアルカリ金属源、アルカリ土類金属源は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
(d)有機構造規定剤
有機構造規定剤(「テンプレート」とも呼称される。以下、有機構造規定剤を「OSDA」(Organic Structure Directing Agent)と称す場合がある。)としては、テトラエチルアンモニウムカチオン(TEA)やテトラプロピルアンモニウムカチオン(TPA)などの公知の各種の物質を使用することができる。また、例えば米国特許5512267号に記載の窒素含有系有機構造規定剤として、N,N,N-トリメチル-(-)-cis-ミルタニルアンモニウムカチオンを使用することができる。このほか、N,N,N-トリメチル-(+)-cis-ミルタニルアンモニウムカチオン、N,N,N‐トリメチル-8-アンモニウムトリシクロ[5.2.1.02,6]‐デカン‐アンモニウムカチオン、N,N,N‐トリメチル-8-アンモニウムトリシクロ[5.2.1.02,6]‐デセン‐アンモニウムカチオン、ヘキサメトニウムカチオン、ペンタエトニウムカチオン、トリメチルベンジルアンモニウムカチオン等を含んでいてもよい。
【0030】
また、リン含有系有機構造規定剤としてテトラエチルホスホニウム、テトラプロピルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、ジフェニルジメチルホスホニウムのような公知の各種物質を使用することができる。
しかし、リン化合物は、合成されたゼオライトを焼成してOSDAを除去する際に有害物質である五酸化二リンを発生する可能性があるため、窒素含有系有機構造規定剤がより好ましい。
上記アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオンは、好適な本実施形態のCON型ゼオライトの形成を阻害しないアニオンを伴うものである。前記アニオンは、特に限定はされないが、具体的には、Cl-、Br-、I-などのハロゲンイオンや水酸化物イオン、酢酸塩、硫酸塩、カルボン酸塩等が用いられる。中でも、水酸化物イオンが特に好適に用いられる。
これらの有機構造規定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
(e)水
原料として用いる水としては、通常は、イオン交換水を用いる。
【0032】
(f)種結晶
本実施形態において、水熱合成に供する原料中に種結晶を添加してもよい。本発明においては、上記(a)ケイ素源として使用される、ゼオライト(A)及びゼオライト(B)等を含むゼオライト混合物が種結晶の役割も担う。種結晶としては、上記ゼオライト(A)及びゼオライト(B)を有していればよく、それ以上の種結晶は必要ないが、その他の種結晶を有していてもよい。その他の種結晶としては、1種のみを用いてもよく、構造や組成の異なるものを組み合わせて用いてもよい。その他の種結晶として用いるゼオライトの組成は、混合物の組成に大きく影響を与えるものでなければ、特に限定されるものではない。
例えば好適な態様である、CON型ゼオライトの製造における種結晶としては、CON型ゼオライトを用いてもよい。
種結晶として用いるゼオライトの粒子径は、特に限定されるものではないが、平均一次粒子径として、通常0.02μm以上、好ましくは0.04μm以上、より好ましくは0.06μm以上、通常5μm以下、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.60μm以下である。種結晶の平均一次粒子径を上記範囲とすることで、前記混合物中での種結晶の溶解性が高くなり、副生物の生成を抑制し、CON型相の結晶化を効率的に促進することができる。
【0033】
また、種結晶としては、水熱合成後に焼成を行っていない構造規定剤を含むゼオライト、焼成を行って構造規定剤を含まないゼオライトのいずれを用いてもよい。
種結晶は、適当な溶媒、例えば水に分散させて原料に添加してもよいし、分散させずに直接添加してもよい。
【0034】
(g)その他の元素M源
本実施形態における合成されるゼオライト(X)、例えばCON型ゼオライトは、構成元素としてケイ素、酸素、アルミニウム、およびアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素以外に、ホウ素、ガリウム、及び鉄から選ばれる少なくとも1種の元素M(以下、単に「元素M」という。)を含んでいてもよい。
【0035】
すなわち、水熱合成時の原料中には、元素M源を含んでいてもよい。元素M源としては特に限定されず、例えば、これらの元素の硫酸塩、硝酸塩、水酸化物、酸化物、アルコキシド、元素M含有ゼオライトなどから選ばれる。
これらの元素M源のうち、反応性の面で硫酸塩、硝酸塩、水酸化物、アルコキシドが好ましく、コスト面、作業面で硫酸塩、硝酸塩、水酸化物がより好ましい。
【0036】
ホウ素源としては、通常、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、酸化ホウ素、ホウ素含有ゼオライトなどが用いられ、好ましくはホウ酸、ホウ酸ナトリウムであり、より好ましくはホウ酸である。
また、ガリウム源としては、通常、硫酸ガリウム、硝酸ガリウム、酸化ガリウム、塩化ガリウム、リン酸ガリウム、水酸化ガリウム、ガリウム含有ゼオライトなどが用いられ、好ましくは硫酸ガリウム、硝酸ガリウムであり、より好ましくは硫酸ガリウムである。
鉄源としては、通常、硝酸鉄、硫酸鉄、酸化鉄、塩化鉄、水酸化鉄、鉄含有ゼオライトなどが用いられ、好ましくは硫酸鉄、硝酸鉄であり、より好ましくは硫酸鉄である。
【0037】
これらの元素M源は、1種を単独で用いてもよく、同一の元素のものの2種以上を組み合わせて用いてよく、また、異なる元素のものの1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、原料中に、その他の金属(鉛、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、錫、クロム、コバルトなど)源を含んでいてもよい。これらは混合物中に1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
【0038】
(原料の組成)
本実施形態において、水熱合成に供される原料(スラリーないしゲル)の好適な組成は次の通りである。
なお、以下の組成は、種結晶を添加する場合には、種結晶に含まれるケイ素、アルミニウムも含めて算出される値である。
【0039】
原料中のアルミニウム原子に対するケイ素原子のモル比(Si/Al)は、特に限定されるものではないが、通常1より大きく、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは8以上、特に好ましくは10以上であり、通常1000以下、好ましくは500以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは50以下、特に好ましくは25以下である。アルミニウム原子に対するケイ素原子のモル比を上記の範囲とすることで、CON型を指向し易くなり、合成収率が向上する。また、触媒として用いた場合に、Al由来の酸点により有機化合物原料を効率的に転換することができるため好ましい。
【0040】
原料中のケイ素原子に対するアルカリ金属原子とアルカリ土類金属原子の合計のモル比[(アルカリ金属原子+アルカリ土類金属原子)/Si]は、特に限定されるものではないが、通常0以上、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.075以上、さらに好ましくは0.10以上であり、通常0.60以下、好ましくは0.40以下、より好ましくは0.30以下、さらに好ましくは0.20以下、特に好ましくは0.15以下である。上記の比率を上記の範囲とすることで、アルミニウムのCON型ゼオライト骨格への取り込みが十分なものとなり、合成収率が向上する。また、副生成物の生成を抑制することができ、またCON相への結晶化速度を高めることができる点で好ましい。
【0041】
原料中のアルミニウム原子に対する前記アルカリ金属原子と前記アルカリ土類金属原子の合計のモル比[(アルカリ金属原子+アルカリ土類金属原子)/Al]は、特に限定されるものではないが、通常0.1以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、さらに好ましくは2以上であり、通常20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下である。上記の比率を上記の範囲とすることで、結晶化時のアルミニウムに対するアルカリ金属、アルカリ土類金属の相互作用が効果的なものとなり、CON型ゼオライトが得られやすい点で好ましい。
【0042】
原料中の有機構造規定剤の割合は、特に限定されるものではないが、ケイ素原子に対する有機構造規定剤のモル比(有機構造規定剤/Si)は、通常0.01以上、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.10以上、特に好ましくは0.15以上であり、通常0.60以下、好ましくは0.50以下、より好ましくは0.40以下、さらに好ましくは0.30以下、特に好ましくは0.25以下である。原料中の有機構造規定剤を上記の範囲とすることで、混合物中での核発生を促し、CON型ゼオライトの結晶化が促進され、収率良く合成できる点で好ましい。また、高価な有機構造規定剤の使用量を抑えられ、ゼオライトの製造コストを低減できる点で好ましい。
【0043】
原料中のアルミニウム原子に対する、前記有機構造規定剤、前記アルカリ金属原子と前記アルカリ土類金属原子の合計のモル比[(有機構造規定剤+アルカリ金属+アルカリ土類金属)/Al]は、特に限定されるものではないが、通常0.1以上、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは4以上であり、通常50以下、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは10以下である。上記の比率を上記の範囲とすることで、結晶化時のアルミニウムと有機構造規定剤、アルカリ金属、アルカリ土類金属の相互作用が効果的なものとなり、CON型ゼオライトが得られやすい点で好ましい。
【0044】
原料中の有機構造規定剤中には、N,N,N-トリメチル-(-)-cis-ミルタニルアンモニウムカチオンが含まれていることが好ましい。全有機構造規定剤中のN,N,N-トリメチル-(-)-cis-ミルタニルアンモニウムカチオン(以下、「TMMA」とする。)のモル比[TMMA/全有機構造規定剤(TMMA+その他)]としては、特に限定されるものではないが、通常0以上、好ましくは0.20以上、より好ましくは0.40以上、さらに好ましくは0.60以上、特に好ましくは0.80以上であり、上限は1.0である。TMMAの割合が多い方が、CON型構造の結晶化が進行し易い点で、好ましい。
【0045】
原料中の水の割合は、特に限定されるものではないが、ケイ素に対するH2Oのモル比(H2O/Si)として、通常6以上、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは12以上であり、通常50以下、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは25以下である。混合物中の水の割合を上記の範囲とすることで、結晶化を促進することができる。また、反応器当たりの生産性を高めることができる。反応時の粘度上昇による撹拌混合性の低下や廃液処理コストを抑えることができる点で好ましい。
【0046】
原料中に添加する種結晶の量は、特に限定されないが、本実施形態で添加する種結晶以外の混合物に含まれるケイ素(Si)がすべてSiO2であるとした時のSiO2に対して、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上であり、また、上限は特に限定されないが、通常20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。種結晶の量を上記の範囲とすることで、CON型構造を指向する前駆体量が十分なものとなり、結晶化を促進することができる。また、生成物中に含まれる種結晶由来の成分量が抑えられ、生産性を高めることができるため、生産コストを低減することができる。
【0047】
(反応前の原料の調製)
本実施形態の製造方法においては、以上述べた、ケイ素源、アルミニウム源、アルカリ金属元素源及び/またはアルカリ土類金属元素源、有機構造規定剤、及び水を混合し得られた原料を水熱合成する。これらの原料における各成分の混合順序は、特に限定されないが、好ましくはアルカリ溶液を調製した後にケイ素源、アルミニウム源を添加した方がより均一に原料が溶解する点から、水、アルカリ金属元素源及び/またはアルカリ土類金属元素源、及び有機構造規定剤を混合してアルカリ溶液を調製した後、ここへアルミニウム源、ケイ素源、必要に応じて種結晶の順番で添加して混合することが好ましい。
【0048】
(熟成)
上記のようにして調製された反応前の原料は、調製後直ちに水熱合成してもよいが、高い結晶性を有するゼオライトを得るために、所定の温度条件下で一定時間熟成してもよい。特にスケールアップする場合は撹拌性が悪くなり原料の混合状態が不十分となりやすい。そのため一定期間原料を撹拌しながら熟成させることにより、反応混合物をより均一な状態に改善することが好ましい。
熟成温度は通常100℃以下、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下であり、その下限は特に設けないが、通常0℃以上、好ましくは10℃以上である。熟成温度は熟成中一定でもよいし、段階的又は連続的に変化させてもよい。
熟成時間は特に限定されないが、通常2時間以上、好ましくは3時間以上、より好ましくは5時間以上であって、通常14日以下、好ましくは7日以下、さらに好ましくは3日以下である。
【0049】
(水熱合成工程)
上記原料を、反応容器中で加熱することにより(水熱合成)、CON型ゼオライト等のゼオライト(X)を製造することができる。
加熱温度(反応温度)は特に限定されず、通常100℃以上、好ましくは125℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは170℃以上であり、通常220℃以下、好ましくは210℃以下、より好ましくは205℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。反応温度を上記の範囲とすることで、CON型ゼオライトの結晶化時間を短縮することができ、ゼオライトの収率が向上する。また、異なる構造のゼオライトの副生を抑制できる点で好ましい。反応温度は反応中一定でもよいし、段階的又は連続的に変化させてもよい。
【0050】
加熱温度(反応温度)まで昇温するのに要する時間は、特に限定されるものではなく、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上であり、昇温に要する時間の上限は特にない。
【0051】
加熱時間(反応時間)は、通常1時間以上、好ましくは5時間以上、より好ましくは10時間以上であり、また上限は、通常30日間以下、好ましくは15日間以下、より好ましくは10日以下、さらに好ましくは7日間以下である。反応時間を上記の範囲とすることで、CON型ゼオライトの収率を向上させることができ、また、異なる構造のゼオライトの副生を抑制できる点で好ましい。
【0052】
反応時の圧力は特に限定されず、密閉容器中に入れた混合物を上記温度範囲に加熱したときに生じる自生圧力で十分であるが、必要に応じて、窒素などの不活性ガスを加えてもよい。
【0053】
[ゼオライトの種結晶としての使用]
以上のように、本発明の製造方法は、従来、製造が困難とされていたゼオライトを効率的に製造することができる。そして、本発明の製造方法にて製造されたゼオライト(X)は、さらにゼオライト(X)を製造する際の種結晶として有用である。
例えば、ゼオライト(X)の一態様であるCON型ゼオライトの場合であれば、本発明の製造方法によって、CON型のハイアルミゼオライトを容易に製造することができる。そして、このようにして製造したCON型のハイアルミゼオライトは、次のCON型ゼオライトを製造する際の種結晶として有用である。このように、本発明の製造方法にて製造されたゼオライトを種結晶として用いることで、より長期間高転化率を維持する触媒を製造することができる。
より具体的には、本発明の製造方法により製造されたCON型ハイアルミゼオライトは、例えばSi/Al(モル比、以下記載がない場合はモル比を意味する)が50以下であり、これを種結晶として、ケイ素源に対して1質量%以上添加することで、CON型ゼオライトが得られる。種結晶として用いられるCON型ハイアルミゼオライトのSi/Alは、40以下であることがより好ましく、30以下であることがさらに好ましい。
また、種結晶として用いられるCON型ハイアルミゼオライトの含有量は、ケイ素源に対して、2質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。
【0054】
以下、本発明の製造方法が適用される例として好適なCON型ゼオライトについて、説明する。
[CON型ゼオライト]
本発明の一実施形態はCON型ゼオライトである。CON型ゼオライトはその構成単位として、2つの12員環構造と、1つの10員環構造が交差した形状を有する3次元細孔構造を有するゼオライトである。この12員環構造を有するCON型ゼオライトは、8員環構造のみで構成されるCHA型ゼオライトや、10員環構造のみで構成されるMFI型ゼオライトと比較して、反応生成物の細孔内拡散において有利となる。また、CON型ゼオライトは、12員環構造と10員環構造がジグザグに交差する構造をとり、3方向の細孔が1箇所で交差しないため、インターセクションのスペースが小さく、反応によるコークが生成しにくく、反応活性の顕著な低下を招きにくいと考えられ、触媒寿命が長いという利点がある。
【0055】
本実施形態においてCON型ゼオライトは、特に限定されるものではないが、好ましくは結晶性メタロシリケートである。該メタロシリケートを構成する元素としては、特に限定はされないが、例えばアルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ジルコニウム(Zr)、錫(Sn)から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0056】
具体的に好ましくは、構成元素としてAlを含有する結晶性アルミノシリケートや、Gaを含有する結晶性ガロシリケートが挙げられる。これらのゼオライトは、ゼオライト骨格内のAlやGaが酸点となり、触媒反応の活性点として働くため、触媒活性に優れる。特にAlを含有するアルミノシリケートが触媒活性の観点からより望ましい。
【0057】
また、CON型ゼオライトは、後述する原料ゲル中にホウ素化合物を添加することによって得られやすくなることから、B(ホウ素)を構成元素として含んでいてもよい。このような例としては、構成元素としてSiおよびAlとBを含む結晶性ボロアルミノシリケートや、さらにGaを含む結晶性ガロボロアルミノシリケート等が挙げられる。
【0058】
前記結晶性アルミノシリケート及び結晶性ガロシリケートの場合、その構成元素の比率としては特に限定されるものではないが、そのSi/Alモル比、またはSi/Gaモル比は、通常1以上、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは8以上、特に好ましくは10以上、とりわけ好ましくは15以上であり、通常1000以下、好ましくは500以下、より好ましくは200以下、さらに好ましくは100以下、特に好ましくは50以下、とりわけ好ましくは25以下である。Si/Alモル比、またはSi/Gaモル比をこのような範囲とすることで、十分な触媒活性を有するとともに、触媒寿命が一層向上したゼオライト触媒とすることができる。
【0059】
また、本実施形態のCON型ゼオライトがB(ホウ素)を有する場合、Si/Bモル比は、特に限定されないが、通常3以上、好ましくは5以上、より好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上で、上限は例えば100000以下、50000以下、または10000以下であってよい。
【0060】
なお、本実施形態のCON型ゼオライトのSi、Al、Ga、B等の含有量は、通常、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)等により製造されたCON型ゼオライトについて測定された値であり、原料の仕込みの比率ではない。
【0061】
本実施形態のCON型ゼオライトのイオン交換サイトは、特に限定されず、H型であっても、金属イオンで交換されたものであってもよい。ここで、金属イオンとは、具体的にはアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオン、セリウム、タングステン、マンガン、鉄等である。
【0062】
本実施形態のCON型ゼオライトのBET比表面積は、特に限定されるものではなく、通常400m2/g以上、好ましくは450m2/g以上、より好ましくは500m2/g以上、さらに好ましくは550m2/g以上であり、通常1000m2/g以下、好ましくは800m2/g以下、より好ましくは700m2/g以下である。
【0063】
本実施形態のCON型ゼオライトの外表面積は、特に限定されるものではなく、通常10m2/g以上、好ましくは30m2/g以上、より好ましくは50m2/g以上、さらに好ましくは60m2/g以上、特に好ましくは70m2/g以上、とりわけ好ましくは80m2/g以上であり、通常400m2/g以下、好ましくは300m2/g以下、より好ましくは250m2/g以下である。
【0064】
本実施形態のCON型ゼオライトのマイクロ孔容積は、特に限定されるものでなく、通常0.10ml/g以上、好ましくは0.12ml/g以上、より好ましくは0.15ml/g以上、さらに好ましくは0.17ml/g以上、特に好ましくは0.19ml/g以上であって、通常3ml/g以下、好ましくは2ml/g以下である。なお、BET比表面積、外表面積、マイクロ孔容積は窒素吸脱着測定から算出することができる。
【0065】
本実施形態のCON型ゼオライトの平均一次粒子径は、特に限定されるものではなく、通常3μm以下、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは700nm以下、特に好ましくは500nm以下である。また通常20nm以上、好ましくは40nm以上である。
ここで、CON型ゼオライトの平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により求めることができる。
【0066】
[用途]
本発明の製造方法により製造されるゼオライト(X)は、種々の用途に使用される。以下、本発明の製造方法により製造されるゼオライトであるCON型ゼオライトを触媒として用いた場合を例として、詳細に説明する。なお、本発明の製造方法により製造されるゼオライト(X)は、触媒用途に限定されるものではない。
【0067】
<触媒>
本実施形態のCON型ゼオライトは触媒として使用することができる。特に、本実施形態のCON型ゼオライトは、低級オレフィンを生成する反応に用いられる触媒として有用であるが、本実施形態のゼオライト触媒の用途としては低級オレフィン製造用触媒に限られず、p-キシレンの製造、エチルベンゼン、クメンの製造、軽質炭化水素の芳香族化、水素化分解、水素化脱ろう、アルカンの異性化、自動車排ガス浄化などにも好適に用いられる。
【0068】
本実施形態のCON型ゼオライトは、そのまま本発明における触媒として反応に用いてもよいし、反応に不活性な他の物質、例えばアルカリ土類金属やケイ素を含む化合物との混合物として用いてもよいし、バインダーを用いて、造粒ないし成形して反応に用いてもよい。該反応に不活性な物質やバインダーとしては、アルミナまたはアルミナゾル、シリカ、シリカゲル、シリケート、石英、および、それらの混合物等が挙げられる。これらの中でも工業触媒として強度と触媒性能が優れることが期待される点でシリカが好ましい。これらの物質と混合することは、触媒全体のコスト削減、触媒の高密度化、触媒強度増加にも効果的である。
【0069】
本実施形態のCON型ゼオライトを含む触媒を用いて低級オレフィンを製造する方法において、原料としてはメタノール、ジメチルエーテルが挙げられるがこれに限定されず、目的とするオレフィンの種類によって適宜選択することができる。
【0070】
以下に、上記触媒を用いる低級オレフィンの製造方法について、原料がメタノールおよび/またはジメチルエーテルである場合を例示して説明する。
【0071】
<低級オレフィンの製造方法>
低級オレフィンの製造方法は、メタノールおよび/またはジメチルエーテルを含む原料に、上記CON型ゼオライトを含む触媒を接触させる工程を備える。
【0072】
原料として用いるメタノールおよびジメチルエーテルの製造由来は特に限定されない。例えば、石炭および天然ガス、ならびに製鉄業における副生物由来の水素/COの混合ガスの水素化反応により得られるもの、植物由来のアルコール類の改質反応により得られるもの、発酵法により得られるもの、再循環プラスチックや都市廃棄物等の有機物質から得られるもの、二酸化炭素を原料としたメタノール合成反応により得られるもの等が挙げられる。このとき各製造方法に起因するメタノールおよびジメチルエーテル以外の化合物が任意に混合した状態のものをそのまま用いてもよいし、精製したものを用いてもよい。
なお、反応原料としては、メタノールのみを用いてもよく、ジメチルエーテルのみを用いてもよく、これらを混合して用いてもよい。メタノールとジメチルエーテルを混合して用いる場合、その混合割合に制限はない。
【0073】
本実施形態における反応様式としては、メタノールおよび/またはジメチルエーテル供給原料が反応域において気相であれば特に限定されず、流動床反応装置、移動床反応装置または固定床反応装置を用いた公知の気相反応プロセスを適用することができる。固定床反応装置の場合、特に附帯設備を含めた設備費、触媒コスト、運転管理の点で有利である。
また、バッチ式、半連続式または連続式のいずれの形態でも行われ得るが、連続式で行うのが好ましく、その方法は、単一の反応器を用いた方法でもよいし、直列または並列に配置された複数の反応器を用いた方法でもよい。
【0074】
なお、固定床反応器に前述の触媒を充填する際、触媒層の温度分布を小さく抑えるために、石英砂、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ等の反応に不活性な粒状物を、触媒と混合して充填してもよい。この場合、石英砂等の反応に不活性な粒状物の使用量は特に制限はない。なお、この粒状物は、触媒との均一混合性の面から、触媒と同程度の粒径であることが好ましい。
また、反応器には、反応に伴う発熱を分散させることを目的に、反応基質(反応原料)を分割して供給してもよい。
【0075】
反応器に供給する全供給成分中の、メタノールとジメチルエーテルの合計濃度(基質濃度)に関しては特に制限はないが、メタノールとジメチルエーテルの和は、全供給成分中、90モル%以下が好ましい。更に好ましくは10モル%以上70モル%以下である。
【0076】
反応器内には、メタノールおよび/またはジメチルエーテルの他に、ヘリウム、アルゴン、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、水、パラフィン類、メタン等の炭化水素類、芳香族化合物類、および、それらの混合物など、反応に不活性な気体(希釈剤とも称する。)を存在させることができるが、この中でも水(水蒸気)が共存しているのが、分離が良好であることから好ましい。
このような希釈剤としては、反応原料に含まれている不純物をそのまま使用してもよいし、別途調製した希釈剤を反応原料と混合して用いてもよい。また、希釈剤は反応器に入れる前に反応原料と混合してもよいし、反応原料とは別に反応器に供給してもよい。
【0077】
反応温度の下限としては、通常約200℃以上、好ましくは250℃以上、より好ましくは300℃以上、特に好ましくは400℃以上であり、反応温度の上限としては、通常750℃以下、好ましくは700℃以下、より好ましくは600℃以下である。反応温度が低すぎると、反応速度が低く、未反応原料が多く残る傾向となり、さらに低級オレフィンの収率も低下する。一方で反応温度が高すぎると触媒の安定活性が得られにくく、低級オレフィンの収率が著しく低下する。なお、ここで、反応温度とは、触媒層出口の温度をさす。
【0078】
反応圧力の上限は通常5MPa(絶対圧、以下同様)以下、好ましくは2MPa以下であり、より好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.7MPa以下、特に好ましくは0.4MPa以下である。また、反応圧力の下限は特に制限されないが、通常0.1kPa以上、好ましくは7kPa以上、より好ましくは50kPa以上である。反応圧力が高すぎるとパラフィン類や芳香族化合物等の好ましくない副生成物の生成量が増え、低級オレフィンの収率が低下する傾向がある。反応圧力が低すぎると反応速度が遅くなる傾向がある。
【0079】
反応器出口ガス(反応器流出物)としては、反応生成物である低級オレフィン、副生成物および希釈剤を含む混合ガスが得られる。該混合ガス中の低級オレフィン濃度は通常5~95質量%である。
反応条件によっては反応生成物中に未反応原料としてメタノールおよび/またはジメチルエーテルが含まれるが、メタノールおよび/またはジメチルエーテルの転化率が100%になるような反応条件で反応を行うのが好ましい。それにより、反応生成物と未反応原料との分離が容易に、好ましくは不要になる。
副生成物としては炭素数が5以上のオレフィン類、パラフィン類、芳香族化合物および水が挙げられる。
【0080】
反応器出口ガスとしての、反応生成物である低級オレフィン、未反応原料、副生成物および希釈剤を含む混合ガスは、公知の分離・精製設備に導入し、それぞれの成分に応じて回収、精製、リサイクル、排出の処理を行えばよい。
【0081】
[CON型ゼオライトの製造方法]
本発明では、上述のように、従来製造が困難であったゼオライトの製造を容易にするものである。特に、本発明の別の態様で示す、触媒として使用する場合に長寿命になるCON型ゼオライトの製造方法において、有用な発明である。より具体的には、Si/Alが50以下であるCON型ゼオライトを、種結晶として、ケイ素源に対して1質量%以上添加することを特徴とする、CON型ゼオライトの製造方法である。
ここで、Si/Alとしては、50以下であり、より好ましくは40以下、さらに好ましくは30以下、特に好ましくは25以下である。アルミニウム原子に対するケイ素原子のモル比をこの範囲とすることで、より長期間高転化率を維持する触媒を製造することができる。
また、種結晶として用いられるCON型ハイアルミゼオライトの含有量は、ケイ素源に対して、1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上、特に好ましくは5質量%以上である。種結晶の含有量をこの範囲とすることで、CON型を指向し易くなり、合成収率が向上するとともに、より長期間高転化率を維持する触媒を製造することができる。
【実施例0082】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例により限定されるものではない。
(評価方法)
(1)ゼオライトの物性
<元素分析>
元素分析は、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)により行った。実施例1、2、比較例4のゼオライトの測定には、島津製作所社製「ICPE-9000」を用いた。
<X線回折測定>
合成したゼオライトのX線回折(XRD)測定は、Rigaku社製の「Ultima III」を用いて行った。
<窒素吸脱着測定>
合成したプロトン型ゼオライト粉末の窒素吸脱着測定は、マイクロトラック・ベル社製Belsorp-MAXを用いて行った。測定にあたり、ゼオライトを真空下に350℃で3時間加熱・乾燥させた後、液体窒素温度にて窒素吸脱着測定を実施した。データ解析はマイクロトラック・ベル社製の解析ソフトBELMasterを用いて行った。BET比表面積は相対圧(P/P0)が0.000002~0.12の測定データをBETプロットすることにより算出した。外表面積およびマイクロ孔容積は相対圧(P/P0)が0.85~0.92のデータをtプロットすることにより算出した。
【0083】
(2)反応評価
<低級オレフィンの製造>
実施例2および比較例4で得られたゼオライトを用いて、低級オレフィンの製造を行った。反応には、固定床流通反応装置を用い、内径6mmの石英反応管に、予め整粒したプロトン型ゼオライト粉末50mg(粒径:1~0.6mm)を充填した。メタノール50モル%、窒素50モル%の混合ガスをメタノールの重量空間速度が15hr
-1となるように反応器に供給し、500℃、0.1MPa(絶対圧)で反応を行った。反応開始から1時間毎にガスクロマトグラフィーで生成物の分析を行った。
図2にメタノール転化率、各成分の選択率の推移を表したグラフを示す。表2に反応から2時間後のメタノール転化率(%)、エチレン選択率(C-mol%)、プロピレン選択率(C-mol%)、ブテン選択率(C-mol%)および触媒寿命(hr)を示す。なお、触媒寿命はメタノール転化率が90%以上を維持する時間として定義した。
【0084】
[実施例1]
30.9質量%N,N,N-トリメチル-(-)-cis-ミルタニルアンモニウムハイドロキサイド(表1中、「TMMAOH」と記載する。)水溶液5.5337g、8M水酸化ナトリウム水溶液0.6584gおよび脱塩水17.3217gを混合し、これにホウ酸(H3BO3)0.2509gを加えて撹拌した後に、ケイ素源としてBetaゼオライト(CP814E、Si/Al=12.5 Zeolyst社製)を0.8047g、MFI型ゼオライト(HSZ-820-NHA、Si/Al=11.5 東ソー社製)を0.8117g、ヒュームドシリカ(Cab-O-sil M7D CABOT社製)を0.9076g加えて十分に撹拌することにより原料ゲルを調製した。
【0085】
得られた原料ゲルをオートクレーブに仕込み、40rpm回転下、200℃で7日間加熱して水熱合成を行った。生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させ、白色粉末を得た。生成物のX線回折(XRD)パターンから、得られた生成物がCON型ゼオライトであることを確認した。
なお、表1中、アルミニウム源についての記載はないが、これはケイ素源として記載したゼオライトがアルミニウム源でもあるためである。
【0086】
[比較例1]
30.9質量%TMMAOH水溶液5.5154g、8M水酸化ナトリウム水溶液0.6282gおよび脱塩水17.3660gを混合し、これにホウ酸(H3BO3)0.2458gを加えて撹拌した後に、ケイ素源としてBetaゼオライト(CP814E、Si/Al=12.5 Zeolyst社製)を1.6020g、ヒュームドシリカ(Cab-O-sil M7D CABOT社製)を0.9053g加えて十分に撹拌することにより原料ゲルを調製した。
【0087】
得られた原料ゲルをオートクレーブに仕込み、40rpm回転下、200℃で7日間加熱して水熱合成を行った。生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させ、白色粉末を得た。生成物のX線回折(XRD)パターンから、得られた生成物がCON型ゼオライトとBetaゼオライトの混合物であることを確認した。
【0088】
[比較例2]
30.9質量%TMMAOH水溶液5.5254g、8M水酸化ナトリウム水溶液0.8270gおよび脱塩水17.3291gを混合し、これにホウ酸(H3BO3)0.2475gを加えて撹拌した後に、ケイ素源としてMFI型ゼオライト(HSZ-820-NHA、Si/Al=11.5 東ソー社製)を1.6009g、ヒュームドシリカ(Cab-O-sil M7D CABOT社製)を0.9032g加えて十分に撹拌することにより原料ゲルを調製した。
【0089】
得られた原料ゲルをオートクレーブに仕込み、40rpm回転下、170℃で7日間加熱して水熱合成を行った。生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させ、白色粉末を得た。生成物のX線回折(XRD)パターンから、得られた生成物がCON型ゼオライトとMFI型ゼオライトの混合物であることを確認した。
【0090】
[比較例3]
30.9質量%TMMAOH水溶液5.5227g、8M水酸化ナトリウム水溶液0.6198gおよび脱塩水17.3179gを混合し、これにホウ酸(H3BO3)0.2476gおよび硫酸アルミニウム0.4018gを加えて撹拌した後に、ケイ素源としてヒュームドシリカ(Cab-O-sil M7D CABOT社製)を2.4008g加えて十分に撹拌した。さらに種結晶としてCON型ゼオライト(Si/Al=270)を0.0490g加えて、撹拌することにより原料ゲルを調製した。
【0091】
得られた原料ゲルをオートクレーブに仕込み、40rpm回転下、170℃で7日間加熱して水熱合成を行った。生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させ、白色粉末を得た。生成物のX線回折(XRD)パターンから、得られた生成物がアモルファスであることを確認した。
【0092】
【0093】
実施例1、比較例1~3の合成条件および合成結果について、表1に示す。なお、表中ケイ素源の欄は、ケイ素源の質量の総和を1とした質量比であり、表中のSi/Alの欄はモル比を意味する。
ケイ素源として、Betaゼオライト及びMFI型ゼオライトを用いた実施例1では、Si/Alの低い(Al含有量の高い)CON型ゼオライトが得られた。一方、比較例1及び2ではCON型のゼオライトが得られるものの、それぞれBetaゼオライトとの混合物(比較例1)であり、MFI型ゼオライトの混合物(比較例2)であった。また、比較例3では結晶性を有さない、アモルファスが合成された。
【0094】
[実施例2]
30.9質量%TMMAOH水溶液5.5499g、8M水酸化ナトリウム水溶液0.6569gおよび脱塩水17.3027gを混合し、これにホウ酸(H3BO3)0.2470gおよび硫酸アルミニウム0.0256gを加えて撹拌した後に、ケイ素源としてヒュームドシリカ(Cab-O-sil M7D CABOT社製)を2.4058g加えて十分に撹拌した後に、種結晶としてプロトン型のCON型ゼオライト(Si/Al=20)を0.0481g加えて、撹拌することにより原料ゲルを調製した。
【0095】
得られた原料ゲルをオートクレーブに仕込み、40rpm回転下、170℃で4日間加熱して水熱合成を行った。生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させ、白色粉末を得た。生成物のX線回折(XRD)パターンから、得られた生成物がCON型ゼオライトであることを確認した。乾燥後に、空気雰囲気下、600℃で6時間焼成し、ナトリウム型ゼオライト粉末を得た。
【0096】
得られた粉末を2.5N硝酸アンモニウム水溶液中で80℃、2時間のイオン交換を行い、その後濾過、乾燥した。乾燥した粉末を再び2.5N硝酸アンモニウム水溶液中で80℃、3時間のイオン交換を行い、その後濾過、乾燥してアンモニウム型ゼオライト粉末を得た。その後空気雰囲気下、600℃で3時間焼成して実施例2のプロトン型ゼオライト粉末を得た。
【0097】
[比較例4]
30.9質量%TMMAOH水溶液5.5253g、8M水酸化ナトリウム水溶液0.6235gおよび脱塩水17.3117gを混合し、これにホウ酸(H3BO3)0.2471gおよび硫酸アルミニウム0.0256gを加えて撹拌した後に、ケイ素源としてヒュームドシリカ(Cab-O-sil M7D CABOT社製)を2.4031g加えて十分に撹拌した後に、種結晶としてCON型ゼオライト(Si/Al=270)を0.0481g加えて、撹拌することにより原料ゲルを調製した。
【0098】
得られた原料ゲルをオートクレーブに仕込み、40rpm回転下、170℃で7日間加熱して水熱合成を行った。生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させ、白色粉末を得た。生成物のX線回折(XRD)パターンから、得られた生成物がCON型ゼオライトであることを確認した。乾燥後に、空気雰囲気下、600℃で6時間焼成し、ナトリウム型ゼオライト粉末を得た。
【0099】
得られた粉末を2.5N硝酸アンモニウム水溶液中で80℃、2時間のイオン交換を行い、その後濾過、乾燥した。乾燥した粉末を再び2.5N硝酸アンモニウム水溶液中で80℃、3時間のイオン交換を行い、その後濾過、乾燥してアンモニウム型ゼオライト粉末を得た。その後空気雰囲気下、600℃で3時間焼成して比較例4のプロトン型ゼオライト粉末を得た。
【0100】
実施例2及び比較例4について、上記反応評価(低級オレフィンの製造)を行った。結果について表2に示す。表中単位がないものはモル比を意味する。
【0101】
【0102】
実施例2に係るゼオライトは、比較例4と比較して、外表面積が大きく、長期間高い原料転化率を維持していることが分かる。
本発明の製造方法によれば、従来製造が難しかったゼオライトを容易に得ることができる。ゼオライトは、触媒,吸着材,イオン交換材,分子篩や分離材として多くの工業用途をもつ。そして、本発明によれば、従来製造が困難であったゼオライトが容易に製造することができるため、さらにゼオライトを用いた種々の用途が期待される。以上の点から、本発明は工業的に重要な技術であり、産業に貢献し得る技術である。