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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163799
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】パンツ型吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/49 20060101AFI20241115BHJP
   A61F 13/496 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
A61F13/49 315Z
A61F13/49 315A
A61F13/496
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079689
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大村 夏美
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸亨
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA12
3B200BB11
3B200CA03
3B200CA08
3B200DA01
3B200DA08
3B200DA21
(57)【要約】
【課題】吸収性本体を尿道口に押し当てずに身体に沿わせることで、違和感を低減しつつ漏れないパンツ型吸収性物品を提供すること。
【解決手段】吸収性本体(10)と、腹側胴回り部(20)と、背側胴回り部(30)と、を有するパンツ型吸収性物品(1)であって、吸収性本体(10)は中央弾性部材(17)を有し、中央弾性部材(17)は、少なくとも、吸収性物品(1)の長手方向の中央位置(CL1)よりも他方側に延在し、中央弾性部材(17)の一方側の端(17fe)は、複数の腹側胴回り弾性部材(23)のうち、腹側胴回り部(20)の左右方向の一方端から他方端まで連続的に延在している腹側胴回り弾性部材(23)の中で最も他方側に位置する腹側胴回り弾性部材(23dm)の他方側の端よりも他方側に位置し、吸収性コア(11)において、最小幅部(11Ct)を左右方向に三等分した領域のうち中央の領域にのみ中央弾性部材(17)が設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性コアを備える吸収性本体と、腹側胴回り部と、前記腹側胴回り部とは別部材として構成された背側胴回り部と、を有し、
前記腹側胴回り部及び前記背側胴回り部が、一対のサイド接合部によって環状に接合されたパンツ型吸収性物品であって、
展開且つ伸長状態において、
互いに交差する長手方向と左右方向と厚さ方向とを有し、
前記吸収性本体の前記長手方向の一方側の端部と前記腹側胴回り部とが接合され、前記吸収性本体の前記長手方向の他方側の端部と前記背側胴回り部とが接合されており、
前記吸収性本体は、前記左右方向の中央部、且つ、前記吸収性コアよりも前記厚さ方向の非肌側において、前記長手方向に伸縮可能な中央弾性部材を有し、
前記中央弾性部材は、少なくとも、前記パンツ型吸収性物品の前記長手方向の中央位置よりも前記他方側に延在し、
前記腹側胴回り部には、前記左右方向に伸縮する複数の腹側胴回り弾性部材が前記長手方向に並んで設けられ、
前記中央弾性部材のうちの伸縮性を発現する部分の前記一方側の端は、前記複数の腹側胴回り弾性部材のうち、前記腹側胴回り部の前記左右方向の一方端から他方端まで連続的に延在している前記腹側胴回り弾性部材の中で最も前記他方側に位置する前記腹側胴回り弾性部材の前記他方側の端よりも前記他方側に位置し、
前記吸収性コアにおいて、前記左右方向の長さが最も短い部分を最小幅部としたとき、前記最小幅部を前記左右方向に三等分した領域のうち中央の領域にのみ前記中央弾性部材が設けられている
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項2】
請求項1に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性本体の前記長手方向の前記一方側の端部と前記腹側胴回り部とが接合されている部分を腹側接合部としたとき、
前記左右方向の中央部において、前記中央弾性部材のうちの伸縮性を発現する部分の前記一方側の端は、前記腹側接合部の前記長手方向の前記他方側の端よりも前記他方側にある
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性本体には、複数の前記中央弾性部材が前記左右方向に並んで配されており、
前記中央弾性部材は、少なくとも前記長手方向の前記中央位置よりも前記他方側において、曲線状ではなく、且つ、前記中央弾性部材同士が交差していない
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記背側胴回り部は、前記サイド接合部の前記一方側の端よりも前記一方側に、前記長手方向の前記他方側から前記一方側に向かって前記左右方向の幅が狭くなった臀部カバー部を有し、
前記中央弾性部材は、前記臀部カバー部を前記長手方向に跨ぐように設けられている
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記中央弾性部材のうちの伸縮性を発現する部分の前記一方側の端は、前記腹側胴回り部の前記長手方向の前記他方側の端から、前記背側胴回り部の前記長手方向の前記一方側の端までの間を前記長手方向に二分する中央線よりも前記一方側に位置する
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記中央弾性部材のうちの伸縮性を発現する部分の前記一方側の端は、前記腹側胴回り部の前記長手方向の前記他方側の端から、前記背側胴回り部の前記長手方向の前記一方側の端までの間を前記長手方向に三分割する線のうち最も前記一方側にある線よりも前記他方側に位置する
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記中央弾性部材のうちの伸縮性を発現する部分の前記他方側の端は、前記腹側胴回り部の前記長手方向の前記他方側の端から、前記パンツ型吸収性物品の前記長手方向の前記他方側の端までの間を前記長手方向に二分する中央線よりも前記他方側に位置する
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記中央弾性部材は、肌側シートと、前記肌側シートよりも前記厚さ方向において非肌側に配された非肌側シートとの間に挟まれて接合されており、
前記長手方向において、前記中央弾性部材のうちの伸縮性を発現する部分の前記一方側の端から前記腹側胴回り部の前記他方側の端までの間であって、且つ、前記中央弾性部材の伸縮性が発現される領域と前記左右方向に重複する部分は、前記肌側シートと前記非肌側シートとが接合されていない非接合領域を有する
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項9】
請求項1又は2に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性コアは、前記左右方向及び前記長手方向の中央領域に、周囲よりも坪量が大きい高坪量部を有し、
前記吸収性本体の前記長手方向の前記一方側の端部と前記腹側胴回り部とが接合されている部分を腹側接合部としたとき、
前記長手方向において、前記高坪量部の前記一方側の端は、前記腹側接合部の前記他方側の端よりも前記他方側に位置し、
前記高坪量部の前記他方側の端と前記中央弾性部材とが、前記厚さ方向に見て重なる部分を有する
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項10】
請求項9に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記高坪量部の前記一方側の端と前記中央弾性部材とは、前記厚さ方向に見て重ならない
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項11】
請求項9に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記高坪量部は、前記長手方向において、前記パンツ型吸収性物品の前記中央位置から前記一方側の端までの長さが、前記中央位置から前記他方側の端までの長さより長い
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項12】
請求項9に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記高坪量部と、前記パンツ型吸収性物品の前記長手方向の前記中央位置とは、前記厚さ方向に見て重ならない
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項13】
請求項1又は2に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性コアは、前記長手方向の前記一方側の端部と前記他方側の端部との間に、前記一方側の前記端部及び前記他方側の前記端部と比べて前記左右方向の長さが短い幅狭部を有し、
前記幅狭部は、前記最小幅部を有し、
前記中央弾性部材のうちの伸縮性を発現する部分の前記一方側の端は、前記最小幅部の前記長手方向の前記他方側の端よりも前記一方側に位置する
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項14】
請求項13に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性コアの前記長手方向の中央位置よりも前記一方側において、前記吸収性コアのうち、前記左右方向の長さが最も長い部分を最大幅部としたとき、
前記中央弾性部材のうちの伸縮性を発現する部分の前記一方側の端は、前記最大幅部の前記長手方向の前記他方側の端よりも前記他方側に位置する
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項15】
請求項1又は2に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性本体の前記左右方向の両側に一対の防漏壁部を有し、
前記一対の防漏壁部には、前記長手方向に伸縮する防漏壁弾性部材が設けられており、
前記防漏壁弾性部材のうちの伸縮性を発現する部分の前記一方側の端は、前記腹側胴回り部と前記厚さ方向に見て重なっており、
前記中央弾性部材のうちの伸縮性を発現する部分の前記一方側の端は、前記防漏壁弾性部材のうちの伸縮性を発現する部分の前記一方側の端よりも前記他方側に位置する
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項16】
請求項1又は2に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性本体の前記長手方向の前記他方側の端部と前記背側胴回り部とが接着剤によって接合されており、
前記中央弾性部材は、前記厚さ方向に見て前記接着剤と重なっていない
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項17】
請求項16に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記吸収性本体の前記長手方向の前記一方側の端部と前記腹側胴回り部とが接着剤によって接合されており、
展開且つ伸長状態において、
前記中央弾性部材のうちの伸縮性を発現する部分によって前記長手方向及び前記左右方向に沿って形成される領域を中央弾性部材伸縮領域としたとき、
前記中央弾性部材伸縮領域を前記長手方向に沿って前記長手方向の前記一方側に延長させた一方側延長領域と、前記中央弾性部材伸縮領域を前記長手方向に沿って前記長手方向の前記他方側に延長させた他方側延長領域とは、前記厚さ方向に見て前記接着剤と重なっていない
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項18】
請求項1又は2に記載のパンツ型吸収性物品であって、
前記長手方向において、前記腹側胴回り部の前記他方側の端から、前記中央弾性部材のうちの伸縮性を発現する部分の前記一方側の端までの間の領域には、周囲よりも圧搾された圧搾部が前記吸収性コアに設けられていない
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項19】
吸収性コアを備える吸収性本体と、腹側胴回り部と、前記腹側胴回り部とは別部材として構成された背側胴回り部と、を有し、
前記腹側胴回り部及び前記背側胴回り部が、一対のサイド接合部によって環状に接合されたパンツ型吸収性物品であって、
展開且つ伸長状態において、
互いに交差する長手方向と左右方向と厚さ方向とを有し、
前記吸収性本体の前記長手方向の一方側の端部と前記腹側胴回り部とが接合された腹側接合部と、前記吸収性本体の前記長手方向の他方側の端部と前記背側胴回り部とが接合された背側接合部とを有し、
前記吸収性コアは、前記左右方向及び前記長手方向の中央領域に、周囲よりも坪量が大きい高坪量部を有し、
前記背側胴回り部には、前記左右方向に伸縮する複数の背側胴回り弾性部材が前記長手方向に並んで設けられ、
前記高坪量部の前記長手方向の前記一方側の端は、前記腹側接合部の前記長手方向の前記他方側の端よりも前記他方側に位置し、且つ、前記高坪量部の前記長手方向の前記他方側の端は、前記複数の背側胴回り弾性部材のうち最も前記一方側に位置する前記背側胴回り弾性部材の前記一方側の端よりも前記一方側、若しくは、前記背側接合部の前記長手方向の前記一方側の端よりも前記一方側に位置する
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【請求項20】
吸収性コアを備える吸収性本体と、腹側胴回り部と、前記腹側胴回り部とは別部材として構成された背側胴回り部と、を有し、
前記腹側胴回り部及び前記背側胴回り部が、一対のサイド接合部によって環状に接合されたパンツ型吸収性物品であって、
展開且つ伸長状態において、
互いに交差する長手方向と左右方向と厚さ方向とを有し、
前記吸収性本体の前記長手方向の一方側の端部と前記腹側胴回り部とが接合された腹側接合部と、前記吸収性本体の前記長手方向の他方側の端部と前記背側胴回り部とが接合された背側接合部とを有し、
前記吸収性コアは、前記左右方向及び前記長手方向の中央領域に、周囲よりも坪量が大きい高坪量部を有し、
前記背側胴回り部には、前記左右方向に伸縮する複数の背側胴回り弾性部材が前記長手方向に並んで設けられ、
前記高坪量部の前記他方側の端は、
前記複数の背側胴回り弾性部材のうち、前記サイド接合部よりも前記一方側に配置され、且つ、前記左右方向に沿って連続的に延在する前記背側胴回り弾性部材の中で最も前記一方側に位置する前記背側胴回り弾性部材の前記一方側の端よりも前記一方側に位置する
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツ型吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排泄液を吸収する吸収性本体と、吸収性本体を保持しつつ着用者の胴回りを覆う胴回り部材を備えたパンツ型の吸収性物品が広く知られている。例えば、特許文献1には、前後胴回り域と股下域とを有するパンツ型の使い捨て着用物品において、股下域から前後胴回り域を通って胴周り周縁部に達するように縦方向に延在する弾性部材を有することで、股下域と前後胴回り域を引き上げて、着用者の肌に密着させることが開示されている。また、特許文献2には、吸収性本体と、おむつの外面を形成する外装体とを備えるパンツ型の吸収性物品において、縦方向に伸縮性を発現する弾性部材を横方向の中央部に設けることで、着用者の臀部の溝部分に対するフィット性を向上させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-204744号公報
【特許文献2】特開2020-103884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている吸収性物品では、横方向の中央に設けられた縦方向に延在する弾性部材が前後胴回り域(腹側・背側胴回り部)まで延在していることで、パッド(吸収性本体)がずれにくくなり、当該弾性部材によってパッドが身体に密着しやすくなる一方で、着用者が女性の場合、尿道口においてもパッド(吸収性本体)を押し当て続けることになり、尿道口付近に痛み等の違和感が生じる虞があった。
【0005】
また、特許文献2に開示されているパンツ型吸収性物品のようにおむつの外装体を構成する部材が腹側から背側まで延在している物品では、外装体と吸収性本体とが女性の尿道口付近においても接合されていることから、着用中における外装体の変形が吸収性本体にまで及び易く、尿道口付近の吸収性本体にも変形の力が働いてしまい、違和感が発生する虞があった。
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、吸収性本体を尿道口に押し当てずに身体に沿わせることで、違和感を低減しつつ漏れないパンツ型吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための主たる発明は、吸収性コアを備える吸収性本体と、腹側胴回り部と、前記腹側胴回り部とは別部材として構成された背側胴回り部と、を有し、前記腹側胴回り部及び前記背側胴回り部が、一対のサイド接合部によって環状に接合されたパンツ型吸収性物品であって、展開且つ伸長状態において、互いに交差する長手方向と左右方向と厚さ方向とを有し、前記吸収性本体の前記長手方向の一方側の端部と前記腹側胴回り部とが接合され、前記吸収性本体の前記長手方向の他方側の端部と前記背側胴回り部とが接合されており、前記吸収性本体は、前記左右方向の中央部、且つ、前記吸収性コアよりも前記厚さ方向の非肌側において、前記長手方向に伸縮可能な中央弾性部材を有し、前記中央弾性部材は、少なくとも、前記パンツ型吸収性物品の前記長手方向の中央位置よりも前記他方側に延在し、前記腹側胴回り部には、前記左右方向に伸縮する複数の腹側胴回り弾性部材が前記長手方向に並んで設けられ、前記中央弾性部材のうちの伸縮性を発現する部分の前記一方側の端は、前記複数の腹側胴回り弾性部材のうち、前記腹側胴回り部の前記左右方向の一方端から他方端まで連続的に延在している前記腹側胴回り弾性部材の中で最も前記他方側に位置する前記腹側胴回り弾性部材の前記他方側の端よりも前記他方側に位置し、前記吸収性コアにおいて、前記左右方向の長さが最も短い部分を最小幅部としたとき、前記最小幅部を前記左右方向に三等分した領域のうち中央の領域にのみ前記中央弾性部材が設けられていることを特徴とするパンツ型吸収性物品である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吸収性本体を尿道口に押し当てずに身体に沿わせることで、違和感を低減しつつ漏れないパンツ型吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るパンツ型吸収性物品1を腹側から見た正面図である。
図2】第1実施形態に係る展開かつ伸張状態のパンツ型吸収性物品1を肌側から見た平面図である。
図3】展開かつ伸張状態のパンツ型吸収性物品1を非肌側から見た平面図である。
図4図4Aは、図2の第1中心線CL1での概略断面図であり、図4Bは、図2の第2中心線CL2での概略断面図である。
図5】吸収性本体10に設けられる接着領域10Rの説明図である。
図6】吸収性物品1に設けられた腹側接合部10RF及び背側接合部10RBの説明図である。
図7】吸収性本体10のバックシート13とシート部材14とを接合する接合領域14Rを説明する図である。
図8】吸収性コア11の幅狭部11Cを説明する平面図である。
図9】第2実施形態に係る展開かつ伸張状態のパンツ型吸収性物品1を肌側から見た平面図である。
図10図10Aは、図9の第1中心線CL1での概略断面図であり、図10Bは、図9の第2中心線CL2での概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
態様1は、吸収性コアを備える吸収性本体と、腹側胴回り部と、前記腹側胴回り部とは別部材として構成された背側胴回り部と、を有し、前記腹側胴回り部及び前記背側胴回り部が、一対のサイド接合部によって環状に接合あされたパンツ型吸収性物品であって、展開且つ伸長状態において、互いに交差する長手方向と左右方向と厚さ方向とを有し、前記吸収性本体の前記長手方向の一方側の端部と前記腹側胴回り部とが接合され、前記吸収性本体の前記長手方向の他方側の端部と前記背側胴回り部とが接合されており、前記吸収性本体は、前記左右方向の中央部、且つ、前記吸収性コアよりも前記厚さ方向の非肌側において、前記長手方向に伸縮可能な中央弾性部材を有し、前記中央弾性部材は、少なくとも、前記パンツ型吸収性物品の前記長手方向の中央位置よりも前記他方側に延在し、前記腹側胴回り部には、前記左右方向に伸縮する複数の腹側胴回り弾性部材が前記長手方向に並んで設けられ、前記中央弾性部材のうちの伸縮性を発現する部分の前記一方側の端は、前記複数の腹側胴回り弾性部材のうち、前記腹側胴回り部の前記左右方向の一方端から他方端まで連続的に延在している前記腹側胴回り弾性部材の中で最も前記他方側に位置する前記腹側胴回り弾性部材の前記他方側の端よりも前記他方側に位置し、前記吸収性コアにおいて、前記左右方向の長さが最も短い部分を最小幅部としたとき、前記最小幅部を前記左右方向に三等分した領域のうち中央の領域にのみ前記中央弾性部材が設けられていることを特徴とするパンツ型吸収性物品である。
【0011】
態様1のようなパンツ型吸収性物品によれば、吸収性本体と腹側・背側胴回り部とが接合されている部分によって、吸収性本体がしっかりと保持される。一方で、吸収性本体と腹側・背側胴回り部とが接合されていない部分(つまり、股下部分)は腹側・背側胴回り部に保持されないため、腹側・背側胴回り部の動きの影響を受けにくく、独立して変形し易くなる。中央弾性部材が長手方向中央線よりも他方側(後側)に延在することで、着用者の臀部の溝に吸収性本体を沿わせ易くなり、臀部の隙間を排泄物が伝ってしまうことを抑制できる。また、中央弾性部材の一方側の端(前側端)を連続する腹側胴回り弾性部材の他方側の端(下端)よりも他方側(下側・後側)に配置することで、吸収性本体を尿道口に押し当てることを回避しやすくなり、違和感を低減することができる。また、吸収性コアの最小幅部を左右方向に三等分した領域のうち、中央のみならず両側部の領域にも中央弾性部材が存在すると、股下部の吸収性コア全体が引き上げられて収縮し、お尻の溝に入り難くなる。三等分した領域のうち中央の領域のみに設けられることで、左右方向において収縮差が生じ、中央の領域がお尻の溝に入り易くなり、フィット性を向上させる。
【0012】
態様2は、前記吸収性本体の前記長手方向の前記一方側の端部と前記腹側胴回り部とが接合されている部分を腹側接合部としたとき、前記左右方向の中央部において、前記中央弾性部材のうちの伸縮性を発現する部分の前記一方側の端は、前記腹側接合部の前記長手方向の前記他方側の端よりも前記他方側にある態様1に記載のパンツ型吸収性物品である。
【0013】
態様2のようなパンツ型吸収性物品によれば、着用時に吸収性本体を尿道口に押し当てることを回避し易くなり、吸収性本体を尿道口に押し付けずに身体に沿わせるように着用することで、違和感を低減させることができる。
【0014】
態様3は、前記吸収性本体には、複数の前記中央弾性部材が前記左右方向に並んで配されており、前記中央弾性部材は、少なくとも前記長手方向の前記中央位置よりも前記他方側において、曲線状ではなく、且つ、前記中央弾性部材同士が交差していない態様1又は2に記載のパンツ型吸収性物品である。
【0015】
態様3のようなパンツ型吸収性物品によれば、複数の中央弾性部材が、曲線状であり且つ交差する場合、交差する部位に歪みが生じ、当該部位は剛性が高まる。そのような場合、当該交差した部位は、お尻の溝に沿わずに平らなまま維持されるか、若しくは、三角錐のような尖った形状に変形し易くなる。尖った形状に変形した場合、尖った部位前後は凸変形しにくくなり、それ故、お尻の溝に沿った変形がしにくくなる。中央弾性部材をそのような構成にしないことで、パンツ型吸収性物品の後方のフィット性の低下を回避する。
【0016】
態様4は、前記背側胴回り部は、前記サイド接合部の前記一方側の端よりも前記一方側に、前記長手方向の前記他方側から前記一方側に向かって前記左右方向の幅が狭くなった臀部カバー部を有し、前記中央弾性部材は、前記臀部カバー部を前記長手方向に跨ぐように設けられている態様1から3のいずれかに記載のパンツ型吸収性物品である。
【0017】
態様4のようなパンツ型吸収性物品によれば、臀部カバー部があることで、当該吸収性物品の前後が分かり易くなり、誤装着を回避する。また、臀部カバー部を跨ぐように中央弾性部材を配置することで、中央弾性部材がお尻の溝に沿い易くなり、フィット性が向上する。さらに左右方向外側にも臀部カバー部があることでお尻を覆うことができ、パンツ型吸収性物品の斜め後ろからの漏れを防ぐことができる。
【0018】
態様5は、前記中央弾性部材のうちの伸縮性を発現する部分の前記一方側の端は、前記腹側胴回り部の前記長手方向の前記他方側の端から、前記背側胴回り部の前記長手方向の前記一方側の端までの間を前記長手方向に二分する中央線よりも前記一方側に位置する態様1から4のいずれかに記載のパンツ型吸収性物品である。
【0019】
態様5のようなパンツ型吸収性物品によれば、腹側胴回り部の他方側の端(下端)から背側胴回り部の一方側の端(下端)までの間を二分する中央線は、着用時に尿道口のやや後方部、すなわち、女性の場合は膣口付近にかかる部分に当たる位置であり、それよりも一方側(前側)まで中央弾性部材が配されていることで、吸収性本体を尿道口よりもやや後方部にしっかりと押し当てることができ、伝い漏れを防止できる。
【0020】
態様6は、前記中央弾性部材のうちの伸縮性を発現する部分の前記一方側の端は、前記腹側胴回り部の前記長手方向の前記他方側の端から、前記背側胴回り部の前記長手方向の前記一方側の端までの間を前記長手方向に三分割する線のうち最も前記一方側にある線よりも前記他方側に位置する態様1から5のいずれかに記載のパンツ型吸収性物品である。
【0021】
態様6のようなパンツ型吸収性物品によれば、腹側胴回り部の他方側の端から、背側胴回り部の一方側の端までの間の前側3分の1の部分には中央弾性部材を設けないことで、吸収性本体を尿道口に押し当てることを回避し、着用時の違和感を低減させることができる。
【0022】
態様7は、前記中央弾性部材のうちの伸縮性を発現する部分の前記他方側の端は、前記腹側胴回り部の前記長手方向の前記他方側の端から、前記パンツ型吸収性物品の前記長手方向の前記他方側の端までの間を前記長手方向に二分する中央線よりも前記他方側に位置する態様1から6のいずれかに記載のパンツ型吸収性物品である。
【0023】
態様7のようなパンツ型吸収性物品によれば、腹側胴回り部の他方側の端(下端)からパンツ型吸収性物品の他方側の端(後端)までの間を二分する中央線は、女性の場合、装着時に会陰の後方から肛門付近に当たる位置である。そのような位置よりも後方(他方側)にまで中央弾性部材が設けられていることで、会陰から肛門にかかる溝部に対しても吸収性本体をしっかりと押し当てることができ、伝い漏れを防止する。
【0024】
態様8は、前記中央弾性部材は、肌側シートと、前記肌側シートよりも前記厚さ方向において非肌側に配された非肌側シートとの間に挟まれて接合されており、前記長手方向において、前記中央弾性部材のうちの伸縮性を発現する部分の前記一方側の端から前記腹側胴回り部の前記他方側の端までの間であって、且つ、前記中央弾性部材の伸縮性が発現される領域と前記左右方向に重複する部分は、前記肌側シートと前記非肌側シートとが接合されていない非接合領域を有する態様1から態様7のいずれかに記載のパンツ型吸収性物品である。
【0025】
態様8のようなパンツ型吸収性物品によれば、着用時には、腹側及び背側胴回り部がお腹周りを保持し、中央弾性部材によって吸収性コアをお尻の溝に沿ってフィットさせるが、尿道口に当たる部分の剛性を低減させることで、尿道口に対応する位置における吸収性本体との動きとの連動を低減させることができる。
【0026】
態様9は、前記吸収性コアは、前記左右方向及び前記長手方向の中央領域に、周囲よりも坪量が大きい高坪量部を有し、前記吸収性本体の前記長手方向の前記一方側の端部と前記腹側胴回り部とが接合されている部分を腹側接合部としたとき、前記長手方向において、前記高坪量部の前記一方側の端は、前記腹側接合部の前記他方側の端よりも前記他方側に位置し、前記高坪量部の前記他方側の端と前記中央弾性部材とが、前記厚さ方向に見て重なる部分を有する態様1から態様8のいずれかに記載のパンツ型吸収性物品である。
【0027】
態様9のようなパンツ型吸収性物品によれば、高坪量部では、排泄液を多く吸収することができ、当該高坪量部の一方側端(前端)が腹側接合部の他方側端(下端)よりも他方側(後側)にあることで、腹側胴回り部の動きに高坪量部を追従させにくくし、尿道口への刺激を低減できる。また、高坪量部の後側端部(他方側端部)が中央弾性部材と重なることで、吸収性コアをお尻の溝に密着させ易くなり、排泄液の伝い漏れを抑制できる。
【0028】
態様10は、前記高坪量部の前記一方側の端と前記中央弾性部材とは、前記厚さ方向に見て重ならない態様9に記載のパンツ型吸収性物品である。
【0029】
態様10のようなパンツ型吸収性物品によれば、高坪量部は、過度に収縮するとより剛性が高くなるため、高坪量部の一方側の端(前端)にまで中央弾性部材が配置されていると、尿道口に対応する部分を押しつけるよう態様になってしまう。高坪量部の一方側の端(前端)まで中央弾性部材が重ならないことで、尿道口に当たり続けることを回避する。
【0030】
態様11は、前記高坪量部は、前記長手方向において、前記パンツ型吸収性物品の前記中央位置から前記一方側の端までの長さが、前記中央位置から前記他方側の端までの長さより長い態様9又は10に記載のパンツ型吸収性物品である。
【0031】
態様11のようなパンツ型吸収性物品によれば、パンツ型吸収性物品の長手方向の中央位置は、着用時に最も股下の部分に配され、高坪量部が一方側(前側)に長く設けられていることで、排泄口に当接する前側において高坪量部が身体にフィットし、漏れを防止できる。また、中央位置よりも後側(他方側)にも高坪量部が存在することで、仰臥位や側臥位の姿勢の際も身体との間の隙間を作りにくくし、漏れを低減できる。
【0032】
態様12は、前記高坪量部と、前記パンツ型吸収性物品の前記長手方向の前記中央位置とは、前記厚さ方向に見て重ならない態様9に記載のパンツ型吸収性物品である。
【0033】
態様12のようなパンツ型吸収性物品によれば、パンツ型吸収性物品の長手方向の中央位置(中央線)は、製品が二つ折りにされる基準線であるため、そのような位置において重なっていると高坪量部に折り癖がつく虞がある。高坪量部に折り癖が生じると、排泄口に当接する部分のフィット性が低下し、漏れの原因となる場合があるが、重ならない構成にすることで、高坪量部に皺がつきにくくなり、フィット性の低下を回避できる。
【0034】
態様13は、前記吸収性コアは、前記長手方向の前記一方側の端部と前記他方側の端部との間に、前記一方側の前記端部及び前記他方側の前記端部と比べて前記左右方向の長さが短い幅狭部を有し、前記幅狭部は、前記最小幅部を有し、前記中央弾性部材のうちの伸縮性を発現する部分の前記一方側の端は、前記最小幅部の前記長手方向の前記他方側の端よりも前記一方側に位置する態様1から態様12のいずれかに記載のパンツ型吸収性物品。
【0035】
態様13のようなパンツ型吸収性物品によれば、最小幅部は、装着時に太腿の力が内側にかかり易い部分であり、女性の場合、装着時の太腿からの力によって膣口周辺に吸収性コアを押し当てる力が働く。中央弾性部材の一方側(前側)の端が最小幅部の他方側(後側)の端よりも一方側(前側)に位置することで、そのような押し当てた力が中央弾性部材と連動できるため、より膣口付近に押し当て易くなる。膣口から後方のお尻の溝に繋がる位置において隙間を作りにくくし、伝い漏れを抑制する。
【0036】
態様14は、前記吸収性コアの前記長手方向の中央位置よりも前記一方側において、前記吸収性コアのうち、前記左右方向の長さが最も長い部分を最大幅部としたとき、前記中央弾性部材のうちの伸縮性を発現する部分の前記一方側の端は、前記最大幅部の前記長手方向の前記他方側の端よりも前記他方側に位置する態様13に記載のパンツ型吸収性物品である。
【0037】
態様14のようなパンツ型吸収性物品によれば、中央弾性部材が最大幅部まで達していると、当該最大幅部においても肌への押し当てが強まり、肌側に隆起する虞がある。中央弾性部材が最大幅部よりも他方側(後側)であることで、肌への押し当てを抑制し、最大幅部は、身体に沿わせている状態(すなわち過度に押し当てない状態)を保持できる。
【0038】
態様15は、前記吸収性本体の前記左右方向の両側に一対の防漏壁部を有し、前記一対の防漏壁部には、前記長手方向に伸縮する防漏壁弾性部材が設けられており、前記防漏壁弾性部材のうちの伸縮性を発現する部分の前記一方側の端は、前記腹側胴回り部と前記厚さ方向に見て重なっており、前記中央弾性部材のうちの伸縮性を発現する部分の前記一方側の端は、前記防漏壁弾性部材のうちの伸縮性を発現する部分の前記一方側の端よりも前記他方側に位置する態様1から14のいずれかに記載のパンツ型吸収性物品である。
【0039】
態様15のようなパンツ型吸収性物品によれば、防漏壁弾性部材と腹側胴回り部とを連動させることによって、左右方向の外側に隙間が生じにくくなる。また、中央弾性部材の一方側の端(前端)が防漏壁弾性部材の一方側の端(前端)よりも他方側(後側)にあることで、尿道口付近の違和感を低減できる。
【0040】
態様16は、前記吸収性本体の前記長手方向の前記他方側の端部と前記背側胴回り部とが接着剤によって接合されており、前記中央弾性部材は、前記厚さ方向に見て前記接着剤と重なっていない態様1から15のいずれかに記載のパンツ型吸収性物品である。
【0041】
態様16のようなパンツ型吸収性物品によれば、中央弾性部材が接着剤と重なっていないことから、中央弾性部材が配された部分は剛性が低く、変形し易くなる。それにより、お尻の溝にフィットさせ易くなる。
【0042】
態様17は、前記吸収性本体の前記長手方向の前記一方側の端部と前記腹側胴回り部とが接着剤によって接合されており、展開且つ伸長状態において、前記中央弾性部材のうちの伸縮性を発現する部分によって前記長手方向及び前記左右方向に沿って形成される領域を中央弾性部材伸縮領域としたとき、前記中央弾性部材伸縮領域を前記長手方向に沿って前記長手方向の前記一方側に延長させた一方側延長領域と、前記中央弾性部材伸縮領域を前記長手方向に沿って前記長手方向の前記他方側に延長させた他方側延長領域とは、前記厚さ方向に見て前記接着剤と重なっていない態様16に記載のパンツ型吸収性物品である。
【0043】
態様17のようなパンツ型吸収性物品によれば、一方側延長領域及び他方側延長領域において、それぞれ胴回り部(腹側胴回り部又は背側胴回り部)と吸収性本体とが接合されていないことによって、左右方向の中央部において、胴回り部から吸収性本体に力を伝わりにくくすることができる。よって、胴回り部と吸収性本体とが重なる領域においても、左右方向の中央部が胴回り部の動きに追従して変形するのを抑制でき、違和感を低減させることができる。
【0044】
態様18は、前記長手方向において、前記腹側胴回り部の前記他方側の端から、前記中央弾性部材のうちの伸縮性を発現する部分の前記一方側の端までの間の領域には、周囲よりも圧搾された圧搾部が前記吸収性コアに設けられていない態様1から16のいずれかに記載のパンツ型吸収性物品である。
【0045】
態様18のようなパンツ型吸収性物品によれば、圧搾部は剛性が高くなることから、尿道口に対応する部位に圧搾部を設けないことで、尿道口付近に接した際に硬さ等の違和感を生じにくくする。また、圧搾部を起点として肌側に凸状変形しやすくなるため、尿道口に押し当てた際に形成された凸部が痛み等の違和感を生じさせる虞があり、そのようなリスクを回避する。
【0046】
態様19は、吸収性コアを備える吸収性本体と、腹側胴回り部と、前記腹側胴回り部とは別部材として構成された背側胴回り部と、を有し、前記腹側胴回り部及び前記背側胴回り部が、一対のサイド接合部によって環状に接合されたパンツ型吸収性物品であって、展開且つ伸長状態において、互いに交差する長手方向と左右方向と厚さ方向とを有し、前記吸収性本体の前記長手方向の一方側の端部と前記腹側胴回り部とが接合された腹側接合部と、前記吸収性本体の前記長手方向の他方側の端部と前記背側胴回り部とが接合された背側接合部とを有し、前記吸収性コアは、前記左右方向及び前記長手方向の中央領域に、周囲よりも坪量が大きい高坪量部を有し、前記背側胴回り部には、前記左右方向に伸縮する複数の背側胴回り弾性部材が前記長手方向に並んで設けられ、前記高坪量部の前記長手方向の前記一方側の端は、前記腹側接合部の前記長手方向の前記他方側の端よりも前記他方側に位置し、且つ、前記高坪量部の前記長手方向の前記他方側の端は、前記複数の背側胴回り弾性部材のうち最も前記一方側に位置する前記背側胴回り弾性部材の前記一方側の端よりも前記一方側、若しくは、前記背側接合部の前記長手方向の前記一方側の端よりも前記一方側に位置する
ことを特徴とするパンツ型吸収性物品である。
【0047】
態様19のようなパンツ型吸収性物品によれば、吸収性本体と腹側・背側胴回り部とが接合されている部分によって、吸収性本体がしっかりと保持される。一方で、吸収性本体と腹側・背側胴回り部とが接合されていない部分(つまり、股下部分)は腹側・背側胴回り部に保持されないため、腹側・背側胴回り部の動きの影響を受けにくく、独立して変形し易くなる。高坪量部の一方側の端(前端)及び他方側の端(後端)の上述位置により、腹側・背側胴回り部の動きに高坪量部が追従しにくくなる。よって、腹側・背側胴回り部の動きの影響を受けて高坪量部のフィット性が低下することを回避し易くなり、高坪量部における集中的な吸収性能を実現しやすくなる。
【0048】
態様20は、吸収性コアを備える吸収性本体と、腹側胴回り部と、前記腹側胴回り部とは別部材として構成された背側胴回り部と、を有し、前記腹側胴回り部及び前記背側胴回り部が、一対のサイド接合部によって環状に接合されたパンツ型吸収性物品であって、展開且つ伸長状態において、互いに交差する長手方向と左右方向と厚さ方向とを有し、前記吸収性本体の前記長手方向の一方側の端部と前記腹側胴回り部とが接合された腹側接合部と、前記吸収性本体の前記長手方向の他方側の端部と前記背側胴回り部とが接合された背側接合部とを有し、前記吸収性コアは、前記左右方向及び前記長手方向の中央領域に、周囲よりも坪量が大きい高坪量部を有し、前記背側胴回り部には、前記左右方向に伸縮する複数の背側胴回り弾性部材が前記長手方向に並んで設けられ、前記高坪量部の前記他方側の端は、前記複数の背側胴回り弾性部材のうち、前記サイド接合部よりも前記一方側に配置され、且つ、前記左右方向に沿って連続的に延在する前記背側胴回り弾性部材の中で最も前記一方側に位置する前記背側胴回り弾性部材の前記一方側の端よりも前記一方側に位置することを特徴とするパンツ型吸収性物品である。
【0049】
態様20のようなパンツ型吸収性物品によれば、吸収性本体と腹側・背側胴回り部とが接合されている部分によって、吸収性本体がしっかりと保持される。一方で、吸収性本体と腹側・背側胴回り部とが接合されていない部分(つまり、股下部分)は腹側・背側胴回り部に保持されないため、腹側・背側胴回り部の動きの影響を受けにくく、独立して変形し易くなる。サイド接合部よりも一方側(下側)にある背側胴回り弾性部材は、着用者の臀部と接する吸収性本体を保持し易くし、そのような背側胴回り弾性部材よりも一方側(前側)に高坪量部の他方側端(後端)があることで、身体の動きに追従する背側胴回り部からの力を高坪量部に伝えにくくすることができる。それにより、高坪量部のフィット性の低下を抑制する。
【0050】
===第1実施形態===
以下、本発明の第1実施形態に係るパンツ型吸収性物品1について説明する。本実施形態に係るパンツ型吸収性物品1は、パンツ型使い捨ておむつや、ショーツ型の生理用ナプキン等である。
【0051】
<<パンツ型吸収性物品1の基本構成>>
図1は、第1実施形態に係るパンツ型吸収性物品1を腹側から見た正面図である。図2は、第1実施形態に係る展開かつ伸張状態のパンツ型吸収性物品1を肌側から見た平面図である。図3は、展開かつ伸張状態のパンツ型吸収性物品1を非肌側から見た平面図である。図4Aは、図2の第1中心線CL1での概略断面図であり、図4Bは、図2の第2中心線CL2での概略断面図である。以下の説明では、パンツ型吸収性物品を単に「吸収性物品」とも称す。また、第1中心線CL1は、長手方向で製品(吸収性物品1)を2分する中心点において左右方向に延びる線であり、第2中心線CL2は、左右方向で製品を2分する中心点において長手方向に延びる線である。
【0052】
パンツ型吸収性物品1の展開状態とは、吸収性物品1の両側部に設けられている一対のサイド接合部2を分離して、吸収性物品1を開いて平面的に展開した状態である。また、パンツ型吸収性物品1の伸張状態とは、吸収性物品1の皺が視認できなくなる程度まで伸張させた状態である。具体的には、吸収性物品1を構成する各部材の寸法が、その部材単体の寸法と一致又はそれに近い寸法になるまで伸張させた状態である。
【0053】
図1に示すように、パンツ型吸収性物品1は、互いに直交する上下方向、左右方向、及び、前後方向(図1では紙面を貫通する方向)を有し、胴回り開口部BHと一対の脚回り開口部LHを有している。上下方向の上側が胴回り開口部BH側に対応し、下側が股下側に対応する。前後方向の前側が着用者の腹側に対応し、後側が着用者の背側に対応する。
【0054】
また、図2に示すパンツ型吸収性物品1の展開且つ伸長状態において、吸収性物品1は、互いに交差する長手方向、左右方向、及び、厚さ方向(図2では紙面を貫通する方向)を有している。なお、展開状態における上記の左右方向は、パンツ型状態(図1)における上記の左右方向と同じ方向である。また、展開状態の長手方向は、パンツ型状態の上下方向に沿った方向である。そして、長手方向の一方側が腹側(前側)に対応し、他方側が背側(後側)に対応している。また、図4A図4Bに示すように、吸収性物品1を構成する資材が積層された方向を厚さ方向とする。厚さ方向において着用者の肌と接する側を肌側とし、その反対側を非肌側とする。
【0055】
パンツ型吸収性物品1は、吸収性本体10と、着用者の腹側部を覆う腹側胴回り部20と、当該腹側胴回り部20とは別部材として構成され、且つ、着用者の背側部を覆う背側胴回り部30と、を有する。以下の説明では、腹側胴回り部20と背側胴回り部30を合わせて胴回り部20,30とも称す。
【0056】
展開状態の吸収性物品1では、腹側胴回り部20と、背側胴回り部30とが互いに長手方向に間隔をあけて並んだ状態で位置し、これらの間に吸収性本体10が長手方向に沿って掛け渡されている。吸収性本体10の長手方向の一方側の端部10Fが腹側胴回り部20の肌側に接合固定され、吸収性本体10の長手方向の他方側の端部10Bが背側胴回り部30の肌側に接合固定されている。この状態から、吸収性本体10が長手方向に二つ折りされ、互いに対向する腹側胴回り部20と背側胴回り部30とが、一対のサイド接合部2にて左右方向両側部が連結され、パンツ型吸収性物品1となる。つまり、腹側胴回り部20及び背側胴回り部30は、一対のサイド接合部2によって、環状に接合されている。なお、サイド接合部2による接合方法としては、熱溶着や超音波溶着や接着剤による接合方法等を例示できる。
【0057】
吸収性本体10は、尿等の排泄液を吸収して保持する吸収性コア11と、吸収性コア11よりも肌側に配置された液透過性の表面シート12(例えば不織布や開孔フィルム等)と、吸収性コア11よりも非肌側に配置された液不透過性のバックシート13(例えば樹脂フィルム等)と、シート部材14(例えば疎水性の不織布等)を有する。また、吸収性コア11は、ティッシュペーパーや不織布等の液透過性のコアラップシート15で外周面が覆われていてもよい。表面シート12は、吸収性コア11を巻き込むように、左右方向の両側部が非肌側に折り返されている。シート部材14は、バックシート13よりも非肌側に配置されるとともに、表面シート12よりも肌側において防漏壁部3を形成している。
【0058】
吸収性コア11は、所定の液体吸収性素材を所定形状の一例としての平面視略砂時計形状に成形した成形体である。液体吸収性素材としては、保水性繊維や、高吸収性ポリマー(所謂SAP)等の液体吸収性粒状物を例示できる。保水性繊維は、水分を吸収し、保持する性質を有する繊維であれば、特に制限されず、例えば、セルロース系繊維(例えば、パルプ繊維、綿や麻等の非木材系繊維、レーヨン等の再生繊維等)を例示できる。
【0059】
図2及び図4Aに示すように、吸収性本体10の左右方向の両側部には、吸収性本体10の長手方向に沿って一対の防漏壁部3が設けられている。当該一対の防漏壁部3は、吸収性本体10の外装を構成するシート部材14が折り畳まれることによって吸収性本体10と一体的に形成されている。具体的には、シート部材14は、バックシート13の非肌側面を覆いつつ、左右方向の両外側に延出した部位が複数箇所で折り曲げられて、表面シート12の肌側面上の左右方向の両側部に設けられ、防漏壁部3が形成される。防漏壁部3には、防漏壁弾性部材16(例えば糸ゴム)が長手方向に沿って伸張した状態で取り付けられている。防漏壁弾性部材16の長手方向における伸縮性に基づいて、防漏壁部3が着用者の肌側に起立する。
【0060】
また、図3及び図4Aに示すように、吸収性本体10の左右方向の両側部であって、防漏壁弾性部材16よりも左右方向の外側に、吸収性本体10の長手方向に沿って伸縮する脚回り弾性部材18(例えば糸ゴム)が設けられていてもよい。
【0061】
また、吸収性本体10は、左右方向の中央部、且つ、吸収性コア11よりも厚さ方向の非肌側において、長手方向に伸縮可能な中央弾性部材17を有している。具体的には、本実施形態の中央弾性部材17は、バックシート13(肌側シート)と、バックシート13よりも厚さ方向において非肌側に配されたシート部材14(非肌側シート)との間に挟まれて接合されている。なお、長手方向における中央弾性部材17の位置についての詳細は、後述する。
【0062】
腹側胴回り部20は、腹側肌側シート21と、腹側肌側シート21よりも非肌側に積層された腹側非肌側シート22と、左右方向に伸縮する複数の腹側胴回り弾性部材23(例えば糸ゴム)とを有する。同様に、背側胴回り部30は、背側肌側シート31と、背側肌側シート31よりも非肌側に積層された背側非肌側シート32と、左右方向に伸縮する複数の背側胴回り弾性部材33(例えば糸ゴム)を有する。複数の腹側(背側)胴回り弾性部材23(33)は、腹側肌側シート21(背側肌側シート31)と腹側非肌側シート22(背側非肌側シート32)の間に、上下方向(長手方向)に並んで配置されるとともに、左右方向に伸張した状態で取り付けられている。腹側及び背側胴回り弾性部材23,33の伸縮性によって、腹側胴回り部20及び背側胴回り部30は、着用者の胴回りにフィットする。
【0063】
また、吸収性本体10の上端部を肌側から覆うように、カバーシート24,34が設けられていてもよい(図2参照)。カバーシート24,34によって、吸収性本体10の上端エッジが着用者の肌に食い込んでしまうことを抑制したり、吸収性本体10の口開きを抑制したりできる。
【0064】
また、図2に示すように、展開かつ伸張状態における腹側胴回り部20と背側胴回り部30の平面形状は異なる。腹側胴回り部20は、上下方向の長さがサイド接合部2と概ね同じ長さであり、左右方向に長い長方形状である。背側胴回り部30は、腹側胴回り部20と重なる長方形状のウェスト側部30Aと、さらに、サイド接合部2よりも下側(サイド接合部2の長手方向の一方側の端よりも一方側)に、上下方向の上側から下側(長手方向の他方側から一方側)に向かって左右方向の幅が狭くなった臀部カバー部30Bを有している。
【0065】
また、背側胴回り部30の下端部(サイド接合部2の下端部から臀部カバー部30Bに亘る部位)には、傾斜弾性部材35(例えば糸ゴム)が設けられている。傾斜弾性部材35は、背側胴回り部30の下側外縁におおよそ沿うように配置され、背側胴回り部30の左右方向の両側部から中央部に向かって下側に傾斜する部位と、背側胴回り部30の中央部において左右方向に延在する部位とを有する。傾斜弾性部材35も、背側肌側シート31と背側非肌側シート32の間に伸張した状態で取り付けられ、傾斜弾性部材35の伸縮性によって、背側胴回り部30の臀部カバー部30Bが着用者の臀部にフィットしやすくなり、臀部から捲れにくくなる。なお、図2では、傾斜弾性部材35として、3本の糸ゴムを例示するが、糸ゴムの数は特に限定されるものではない。
【0066】
以上、吸収性物品1の基本構成を説明したが、上記の吸収性物品1の構成は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、表面シート12とコアラップシート15の間に液透過性の中間シートが設けられていてもよい。また、背側胴回り部30が臀部カバー部30Bや傾斜弾性部材35を有さず、腹側胴回り部20と同じ平面形状であってもよいし、腹側胴回り部20が股下側に延出する部位を有していてもよい。また、胴回り部20,30の上端部(ウェスト部)には糸状の腹側及び背側胴回り弾性部材23,33を設け、しっかりとフィットさせ、それよりも下側では、糸状の胴回り弾性部材23,33の代わりに、伸縮性シートを配してもよい。腹側肌側シート21(背側肌側シート31)と腹側非肌側シート22(背側非肌側シート32)の間に伸縮性シートを配し、積層されたシートを間欠接合することで、胴回り部20,30は伸縮性を発現し、着用者の胴回りに面で柔らかくフィットする。
【0067】
上述のように、本実施形態の吸収性物品1は、吸収性本体10の左右方向中央におけるフィット性の向上のために中央弾性部材17が設けられている。従来のパンツ型吸収性物品においても、吸収性本体が装着中にずれにくい構成となるように、左右方向の中央に長手方向に伸縮する弾性部材を腹側胴回り部20及び背側胴回り部30の両方に延在するように取り付けることがある。そのような構成の場合、当該弾性部材によって着用者の身体に密着しやすくなるものの、例えば着用者が女性の場合は、女性の尿道口においても密着し易くなり、吸収体本体を押し当て続けることで、尿道口付近に痛み等の違和感が生じる虞があった。
【0068】
また、本実施形態とは異なり、例えば、吸収性物品1の外装体を構成する部材が腹側胴回り部から背側胴回り部まで連続する一体型の外装部材である場合、外装部材と吸収性本体とが女性の尿道口付近においても接合されていることから、着用中の外装部材の変形が吸収性本体にまで及び、尿道口付近の吸収性本体にも変形の力が働いてしまい、違和感が生じる虞があった。この点、本実施形態の背側胴回り部30は、腹側胴回り部20とは別部材として構成されている。つまり、吸収性本体10と腹側・背側胴回り部20、30とが接合されている部分によって、吸収性本体10をしっかりと保持しつつも、一方で接合されていない部分(つまり、股下部分)は腹側・背側胴回り部20,30に保持されないため、一体型の外装部材である場合に比べて、腹側・背側胴回り部20,30の動きの影響を受けにくく、股下部分は独立して変形し易くなる。
【0069】
なお、図2では、各中央弾性部材17のうち伸縮性を発現する部分(所謂有効長の部分)のみを示している。中央弾性部材17は、少なくとも、吸収性物品1の長手方向の中央位置(第1中心線CL1)よりも背側(他方側)に延在していればよい。中央弾性部材17が長手方向の第1中央線CL1よりも他方側(背側)に延在することで、中央弾性部材17が収縮した際に、着用者の臀部の溝に吸収性本体10を沿わせ易くなり、臀部の隙間を排泄物が伝ってしまうことを抑制できる。
【0070】
そして、本実施形態では、そのような中央弾性部材17のうちの伸縮性を発現する部分の長手方向の一方側(前側)の端17feは、長手方向に並んで設けられている複数の腹側胴回り弾性部材23のうち、腹側胴回り部20の左右方向の一方端から他方端まで連続的に延在している腹側胴回り弾性部材23の中で最も長手方向の他方側(後側)に位置する腹側胴回り弾性部材23dmよりも他方側(背側)に位置している。なお、「最も長手方向の他方側(背側)に位置する腹側胴回り弾性部材23dmよりも他方側」とは、例えば腹側胴回り弾性部材23dmが、帯状の弾性部材や、伸縮性シートである場合には、「最も長手方向の他方側(後側)に位置する腹側胴回り弾性部材23dmの他方側の端よりも他方側(後側)」を意味する。
【0071】
本実施形態において、複数の腹側胴回り弾性部材23のうち、長手方向の他方側に位置する腹側胴回り弾性部材23は、厚さ方向に見て、吸収性本体10と重複する位置に配置されているものがある。具体的には、図3中、腹側胴回り部20のうち、下から8本の腹側胴回り弾性部材23がそれに該当する。そのような重複する位置に配置された腹側胴回り弾性部材23が左右方向の一方端から他方端まで連続的に延在している場合、装着時に収縮したときに、吸収性本体10を身体に押し当てるように作用する。中央弾性部材17の長手方向の一方側の端17feを、そのような左右方向に連続する腹側胴回り弾性部材23の中で最も長手方向他方側(後側)に位置する腹側弾性部材23dmよりも他方側(後側)に配置することで、吸収性本体10を尿道口に押し当てることを回避しやすくなり、違和感を低減することができる。
【0072】
また、吸収性コア11において、左右方向の長さが最も短い部分を最小幅部11Ctとしたとき、当該最小幅部11Ctを左右方向に三等分した領域のうち中央の領域にのみ中央弾性部材17が設けられている。図3に示すように、最小幅部11Ctを左右方向に三等分した領域とは、吸収性コア11の左右方向における最小幅部11Ctにおける両端11Cte、11Cte間の長さである最小幅長さW1を三等分する三等分線E1-E1、E2-E2により区画される領域である。そのうちの中央の領域とは、三等分線E1-E1と三等分線E2-E2との間の領域を意味し、当該領域に中央弾性部材17が配置されている。そして、本実施形態では、三等分した領域のうち、両側部の領域(すなわち、三等分線E1-E1の左側の領域と、三等分線E2-E2の右側の領域)には、中央弾性部材17が設けられていない。吸収性コア11の最小幅部11Ctを左右方向に三等分した領域のうち、中央のみならず上述の両側部の領域にも中央弾性部材17が存在すると、股下部において吸収性コア11全体が引き上げられて収縮し、お尻の溝に入り難くなる。中央弾性部材17が三等分した領域のうち中央の領域のみに設けられることで、左右方向において収縮差が生じ、中央の領域がお尻の溝に入り易くなり、フィット性を向上させることができる。
【0073】
次に、吸収性本体10と腹側胴回り部20,背側胴回り部30との接合について説明する。図5は、吸収性本体10に設けられる接着領域10Rの説明図である。図6は、吸収性物品1に設けられた腹側接合部10RF及び背側接合部10RBの説明図である。吸収性物品1の腹側接合部10RFは、吸収性本体10の長手方向の一方側の端部10Fと腹側胴回り部20とが接合されている部分である。また、吸収性物品1の背側接合部10RBは、吸収性本体10の長手方向の他方側の端部10Bと背側胴回り部30とが接合されている部分である。
【0074】
本実施形態の腹側接合部10RF及び背側接合部10RBは、実際に接着剤が塗布された領域に外接する左右方向及び長手方向に沿った直線で囲まれた閉じた部分である。接着剤は、腹側接合部10RF及び背側接合部10RBの全面に隈なく塗布する所謂ベタ塗りであってもよいし、周知の塗布パターン(例えば、スパイラルパターン、Ωパターン、ラインパターン等)で塗布してもよい。詳しくは、パターンで接着剤を塗布する場合、周囲の接着剤との間隔が1.5mm未満である部位は腹側接合部10RF或いは背側接合部10RBに含むものとする。
【0075】
また、図2と同様に、図6においても、各中央弾性部材17は、中央弾性部材17のうち伸縮性を発現する部分(所謂有効長の部分)のみを示している。そして、本実施形態では、展開及び伸長状態の吸収性物品1の左右方向の中央部において、中央弾性部材17の長手方向の一方側の端17feは、上述の腹側接合部10RFの長手方向の他方側の端10RFdよりも他方側に位置している。腹側接合部10RFでは、吸収性本体10が腹側胴回り部20にしっかりと接合固定されているため、当該部位では、着用時に吸収性本体10を身体に押し当てるようにフィットさせる。そして、中央弾性部材17の一方側の端17feがそのような腹側接合部10RFの他方側の端10RFdよりも他方側、すなわち股下側にあることで、吸収性物品1の着用時に吸収性本体10を尿道口に押し当てることを回避し易くなる。吸収性本体10を尿道口に押し付けずに身体に沿わせるように着用することで、着用時の違和感を低減させる。
【0076】
また、背側接合部10RBは、吸収性本体10の長手方向の他方側の端部10Bと背側胴回り部30とが接着剤(接着領域10R)によって接合されているが、図6に示すように、中央弾性部材17は、厚さ方向に見て当該接着剤(背側接合部10RB)と重なっておらず、また、背側胴回り部30の長手方向の一方側の端30deを超えて他方側(後側)に延在している。中央弾性部材17が接着剤(接着領域10R)と重なっていないことから、中央弾性部材17が配された部分は剛性が低く、変形しやすいため、着用時に中央弾性部材17が長手方向に収縮した際に、お尻の溝に吸収性コア11をフィットさせ易くなる。なお、中央弾性部材17が左右方向に並んで複数設けられている場合、少なくとも吸収性物品1の左右方向の中央部分に配置された中央弾性部材17が上述の構成になっていればよい。
【0077】
また、腹側接合部10RFにおいても同様に、吸収性本体10の長手方向の一方側の端部10Fと腹側胴回り部20とが接着剤(接着領域10R)によって接合されている。ここで、図6に示すように、中央弾性部材17のうちの伸縮性を発現する部分によって長手方向及び左右方向に沿って形成される領域を中央弾性部材伸縮領域Xとする。中央弾性部材17が複数本である場合は、左右方向の最も外側同士の中央弾性部材17間の左右方向の長さを中央弾性部材伸縮領域Xの左右方向の長さとする。中央弾性部材伸縮領域Xの長手方向の長さは、中央弾性部材17の有効長の長さとする。そして、中央弾性部材伸縮領域Xを長手方向に沿って長手方向の一方側に延長させた一方側延長領域Y1(図6中、前側のドットで示す領域)は、厚さ方向に見て接着剤(腹側接合部10RF)と重なっていない。また、中央弾性部材伸縮領域Xを長手方向に沿って長手方向の他方側に延長させた他方側延長領域Y2(図6中、後側のドットで示す領域)も同様に、厚さ方向に見て接着剤(背側接合部10RB)と重なっていない。
【0078】
一方側延長領域Y1及び他方側延長領域Y2において、それぞれ胴回り部(腹側胴回り部20又は背側胴回り部30)と吸収性本体10とが接合されていないことによって、吸収性物品1の左右方向の中央部において、腹側胴回り部20(又は背側胴回り部30)から吸収性本体10に力を伝わりにくくすることができる。よって、胴回り部20、30と吸収性本体10とが重なる領域においても、左右方向の中央部が胴回り部20、30の動きに追従して変形するのを抑制でき、違和感を低減させることができる。また、着用時に、中央弾性部材17によって吸収性本体10をお尻の溝に沿わせるように変形させるが、他方側延長領域Y2は、その変形の影響を受けやすい領域であり、他方側延長領域Y2においても接着剤と重ならないことから、当該変形を妨げにくくし、違和感の発生を低減させることができる。
【0079】
また、本実施形態の吸収性本体10に複数設けられている中央弾性部材17は、少なくとも吸収性物品1の長手方向の中央位置(CL1)よりも長手方向の他方側(後側)において、曲線状ではなく、且つ、中央弾性部材17同士が交差していないことが好ましい。仮に、複数の中央弾性部材17が、曲線状であり且つ交差していた場合、交差した部位に歪みが生じ、当該部位は剛性が高まることとなる。そのような場合、当該交差した部位は、着用者のお尻の溝に沿わずに平らなまま維持されるか、若しくは、三角錐のような尖った形状に変形し易くなる。尖った形状に変形する場合、尖った部位前後は凸状に変形しにくくなり、それ故、お尻の溝に沿った変形がしにくくなる。吸収性物品1の後方側において中央弾性部材17を曲線状且つ交差する構成にしないことで、吸収性物品1の後方のフィット性の低下を回避する。
【0080】
また、図2及び図3に戻り、中央弾性部材17は、臀部カバー部30Bを長手方向に跨ぐように設けられている。臀部カバー部30Bが存在することで、吸収性物品1の前後が分かり易くなり、誤装着を回避する。また、中央弾性部材17が臀部カバー部30Bを跨ぐように配置されていることで、中央弾性部材17がお尻の溝に沿い易くなり、フィット性が向上する。さらに左右方向外側にも臀部カバー部30Bがあることでお尻を覆うことができ、吸収性物品1の斜め後ろからの漏れを防ぐことができる。
【0081】
また、図6に示すように、中央弾性部材17の長手方向の一方側の端17feは、腹側胴回り部20の長手方向の他方側の端20deから、背側胴回り部30の長手方向の一方側の端30deまでの間を長手方向に三分割する線D1,D2のうち最も長手方向一方側にある線D1よりも他方側に位置している。つまり、腹側胴回り部20の他方側の端20deから、背側胴回り部30の一方側の端30deまでの間の前側3分の1の部分には中央弾性部材17を設けないことで、吸収性本体10を尿道口に押し当てることを回避し、着用時の違和感を低減させることができる。
【0082】
なお、本実施形態では、中央弾性部材17の長手方向の一方側の端17feは、腹側胴回り部20の長手方向の他方側の端20deから、背側胴回り部30の長手方向の一方側の端30deまでの間を長手方向に二分する中央線CL3(図6)よりも長手方向他方側(後側)に位置しているが、端17feは、当該中央線CL3よりも一方側(前側)に位置していてもよい。腹側胴回り部20の長手方向他方側の端(下端)20deから背側胴回り部30の一方側の端(下端)30deまでの間を二分する中央線CL3は、着用時に尿道口のやや後方部、すなわち、女性の場合は膣口付近にかかる部分に当たる位置であり、それよりも長手方向一方側(前側)まで中央弾性部材17が配置されていると、吸収性本体10を尿道口よりもやや後方部にしっかりと押し当てることができ、伝い漏れを防止できる。
【0083】
また、図6に示すように、中央弾性部材17の長手方向の他方側の端17beは、腹側胴回り部20の長手方向の他方側の端20deから、吸収性物品1の長手方向の他方側の端30ueまでの間を長手方向に二分する中央線CL4よりも他方側に位置している。腹側胴回り部20の長手方向他方側の端(下端)20deから吸収性物品1の他方側の端(後端)30ueまでの間を二分する中央線CL4は、女性の場合、装着時に会陰の後方から肛門付近に当たる位置であり、当該位置よりも後方(他方側)にまで中央弾性部材17が設けられていることで、会陰から肛門にかかる溝部に対しても吸収性本体10をしっかりと押し当てることができ、後方への伝い漏れを防止する。
【0084】
図2に戻り、本実施形態では、防漏壁部3に設けられた防漏壁弾性部材16によって防漏壁部3が着用者の肌側に起立することで、左右方向への排泄液の漏れを防止している。なお、図2では、各防漏壁弾性部材16のうち、伸縮性を発現する部分(所謂有効長の部分)のみを示している。防漏壁弾性部材16は、本実施形態において、当該防漏壁弾性部材16の長手方向の一方側の端16aeが腹側胴回り部20と厚さ方向に見て重なるように設けられている。そして、中央弾性部材17の長手方向一方側の端17feは、防漏壁弾性部材16の一方側の端16aeよりも他方側(後側)に位置することが好ましい。まず、着用時に防漏壁弾性部材16と腹側胴回り部20とを連動させることによって、左右方向の外側に隙間が生じにくくなり、所謂横漏れの発生を抑制することができる。また、中央弾性部材17の一方側の端(前端)17feが防漏壁弾性部材16の一方側の端(前端)16aeよりも他方側(後方側)にあることで、横漏れを防止しつつも、左右方向中央、つまり尿道口付近の押し付けを抑制し、尿道口付近の違和感を低減することができる。
【0085】
図7は、吸収性本体10のバックシート13とシート部材14とを接合する接合領域14Rを説明する図である。本実施形態において、中央弾性部材17は、図4A及び図4Bに示すように、バックシート13(肌側シート)と、バックシート13よりも厚さ方向において非肌側に配されたシート部材14(非肌側シート)との間に挟まれて接合されている。具体的には、中央弾性部材17は、シート部材14上に配される際に接着剤等(不図示)によってシート部材14に接着される。そして、さらに中央弾性部材17よりも肌側に配されたバックシート13と、シート部材14とが接合領域14R(図7の斜線で示す部分)によって接合される。接合領域14Rは、接着剤が塗布された領域であり、当該接着剤は、接合領域14Rの全面に隈なく塗布する所謂ベタ塗りであってもよいし、周知の塗布パターン(例えば、スパイラルパターン、Ωパターン、ラインパターン等)で塗布してもよい。
【0086】
また、図7に示すように、バックシート13とシート部材14とが接着剤で接合されていない領域(すなわち、バックシート13とシート部材14とが重ね合わされた領域のうち、接合領域14R以外の領域)を非接合領域NRとしたとき、長手方向において、中央弾性部材17の一方側の端17feから腹側胴回り部20の他方側の端20deまでの間(領域N1)であって、且つ、中央弾性部材17の伸縮性が発現される領域と左右方向に重複する部分T1(図7中、ドットで示す部分)は、上述の非接合領域NRを有している。ここで、「中央弾性部材17の伸縮性が発現される領域と左右方向に重複する」とは、まず、左右方向における「中央弾性部材17の伸縮性が発現される領域」の範囲を、左右方向に並んで設けられている複数の中央弾性部材17のうち、左右方向の最も一方側に位置する中央弾性部材17から最も他方側に位置する中央弾性部材17までの間(両外側の中央弾性部材17間の左右方向全域)とし、左右方向において当該最も一方側の中央弾性部材17から最も他方側の中央弾性部材17までの間と重複する部位を「中央弾性部材17の伸縮性が発現される領域と左右方向に重複する」部位とする。
【0087】
本実施形態において、上述の部分T1は、全域が非接合領域NRであり、接合領域14Rと比較して、剛性が下がる領域である。吸収性物品1の着用時には、胴回り部20、30がお腹周りを保持し、中央弾性部材17が収縮することによって吸収性コア11をお尻の溝に沿ってフィットさせることができる。そして、長手方向において中央弾性部材17の一方側の端17feから腹側胴回り部20の他方側の端20deまでの間(領域N1)、且つ、中央弾性部材17の伸縮性が発現される領域と左右方向に重複する部分T1は、着用時に着用者の尿道口に当たる領域である。当該部分T1が非接合領域NRであることによって、部分T1の剛性が下がり、尿道口に対応する位置において、吸収性本体10の動きとの連動を低減させることができる。
【0088】
また、図7に示すように、接合領域14Rは、厚さ方向(図7の紙面を貫通する方向)に見て、中央弾性部材17とも重複していない。つまり、バックシート13とシート部材14とを接着する接着剤が、中央弾性部材17が配されている領域には設けられていない。このような構成により、中央弾性部材17が配されている領域の剛性が下がり、より変形しやすい領域となる。この場合、接合領域14Rとの剛性差により、中央弾性部材17が配されている領域は、吸収性コア11が凸状に変形し易くなり、故に、臀部の溝及び周辺部の形状に沿い易くなる。よって、臀部の溝及び周辺部と吸収性物品1との間に隙間が生じ難くなり、排泄液の後方への伝い漏れを抑制できる。
【0089】
また、バックシート13とシート部材14とが接合される接合領域14R(接着剤)は、上述の通り、中央弾性部材17が配されている領域に設けられていないだけでなく、中央弾性部材17が配されている領域(図6の中央弾性部材伸縮領域Xに相当)を長手方向の一方側に延長させた領域(図6の一方側延長領域Y1に相当)及び長手方向の他方側に延長させた領域(図6の他方側延長領域Y2に相当)においても、設けられていない(図7)。この点につき、吸収性物品1の吸収性本体10を製造する過程での利点について、次のように説明する。中央弾性部材17は、長手方向に伸長した状態でバックシート13とシート部材14との間に挟まれて配置され、連続した状態の吸収性本体10が長手方向の両端の位置で切断されて個々の吸収性本体10の形態となる際に中央弾性部材17も切断される。このとき、上述の長手方向の一方側に延長させた領域及び他方側に延長させた領域のそれぞれにおいては、吸収性本体10の長手方向の両端まで接合領域14R(接着剤)が存在していないことから、中央弾性部材17と接着剤とが重なっていない部位を切断できる。中央弾性部材17と接着剤が重なる層を切断すると、接着剤により、切断された中央弾性部材17が長手方向内側に収縮しにくくなるが、接着剤が存在していないことで、切断された中央弾性部材17が長手方向内側に向かって収縮する際に、引きつり等を生じずに収縮し易くなる。
【0090】
図8は、吸収性コア11の幅狭部11Cを説明する平面図である。図8に示すように、吸収性コア11は、吸収性コア11の長手方向の一方側の端部と他方側の端部との間、或いは、少なくとも着用時に着用者の股下に対応する股下部において、前記長手方向の一方側の端部及び他方側の端部と比べて左右方向の長さが短い幅狭部11Cを有することが好ましい。そうすることで、着用者の股下部の動き(脚の開閉等)が、吸収性コア11に作用し難く、当該股下部の動きが吸収性コア11の幅狭部11Cよりも長手方向外側に伝達されてしまうことを抑制できる。
【0091】
そして、幅狭部11Cにおいて、左右方向の長さが最も短い部分が上述の最小幅部11Ct(図3及び図8参照、図8では斜線で示した部分)であり、中央弾性部材17のうちの伸縮性を発現する部分(図8では、伸縮性を発現する部分のみを図示している)の長手方向一方側(前側)の端17feは、最小幅部11Ctの長手方向の他方側(後側)の端11Ctbよりも一方側(前側)に位置している。最小幅部11Ctは、吸収性物品1の装着時に太腿部の力が内側にかかり易い部分であり、特に女性の場合、装着時の太腿からの力によって膣口周辺に吸収性コア11を押し当てる力が働きやすい部分である。中央弾性部材17の一方側の端17feがそのような最小幅部11Ctの他方側の端11Ctbよりも一方側(前側)に位置することで、吸収性コア11を押し当てる力が中央弾性部材17と連動できるため、より膣口付近に押し当て易くなる。これにより、膣口から後方のお尻の溝に繋がる位置において吸収性物品1と身体との隙間を作りにくくし、伝い漏れを抑制する。
【0092】
また、本実施形態では、中央弾性部材17の長手方向一方側の端17feは、最小幅部11Ctの長手方向一方側の端11Cta(図8)よりも他方側(後側)に位置しているが、これに限定されず、中央弾性部材17の一方側の端17feは、最小幅部11Ctの一方側の端11Ctaよりも一方側(前側)に位置していてもよい。装着時に太腿の力が内側にかかり易い最小幅部11Ctの前側の端11Ctaよりもさらに前側にまで中央弾性部材17が配置されることで、太腿からの内側への力と中央弾性部材17の収縮力が連動して、特に女性の場合は、膣口周辺に吸収性コア11を押し当てることができる。膣口周辺におけるフィット性を向上させることで吸収性物品1と身体との隙間を作りにくくし、後方への伝い漏れを抑制できる。
【0093】
また、図8に示すように、吸収性コア11の長手方向の中央位置CL1よりも一方側(前側)において、吸収性コア11のうち、左右方向の長さが最も長い部分を最大幅部11Hとしたとき、中央弾性部材17の長手方向一方側の端17feは、最大幅部11Hよりも他方側(後側)に位置している。なお、本実施形態の吸収性コア11の最大幅部11Hは、左右方向の縁が曲線状であるため、長手方向に長さを有していないが、最大幅部11Hは長手方向に所定の長さを有する矩形状であってもよく、その場合、中央弾性部材17の長手方向一方側の端17feは、最大幅部11Hの長手方向の他方側(後側)の端よりも他方側(後側)に位置することが望ましい。
【0094】
仮に、中央弾性部材17が最大幅部11Hまで達していると、当該最大幅部11Hにおいても中央弾性部材17の収縮力により肌への押し当てが強まり、肌側に隆起する虞があるが、中央弾性部材17が当該最大幅部11Hよりも他方側(後側)に配置されていることで、肌への押し当てを抑制し、最大幅部11Hは、装着時の太腿から内側にかかる力によって身体に沿わせている状態(すなわち過度に押し当てない状態)を保持できる。
【0095】
また、吸収性物品1のような吸収性物品の場合、吸収性コア11の一部に例えば、線状や点状の周囲よりも圧搾された圧搾部を設けることがあるが、本実施形態においては、長手方向において、腹側胴回り部20の他方側の端20deから、中央弾性部材17の長手方向一方側の端17feまでの間の領域(図7の領域N1)には、周囲よりも圧搾された圧搾部が吸収性コア11に設けられていないことが好ましい。圧搾部は剛性が高くなることから、装着時に尿道口に対応する部位、つまり、上述の「腹側胴回り部20の他方側の端20deから、中央弾性部材17の長手方向一方側の端17feまでの間の領域(図7の領域N1)」に圧搾部を設けないことで、尿道口付近に吸収性コア11が接した際に硬さ等の違和感を生じにくくする。また、仮に圧搾部が存在すると、圧搾部を起点として肌側に凸状変形しやすくなるため、尿道口に押し当てた際に形成された凸部が痛み等の違和感を生じさせる虞もあり、圧搾部を設けないことでそのようなリスクを回避する。
【0096】
===第2実施形態===
次に、図9図10A及び図10Bに基づいて、第2実施形態に係るパンツ型吸収性物品1について説明する。尚、以下の第2実施形態の説明において、第1実施形態と同様の構成については、同符号を用いて説明を省略する。第2実施形態に係る吸収性物品1は、吸収性コア11が後述する高坪量部11NTを有する点で第1実施形態と異なる。
【0097】
図9は、第2実施形態に係る展開かつ伸張状態のパンツ型吸収性物品1を肌側から見た平面図である。図10Aは、図9の第1中心線CL1での概略断面図であり、図10Bは、図9の第2中心線CL2での概略断面図である。
【0098】
図9に示すように、展開且つ伸長状態において、本実施形態の吸収性コア11は、左右方向及び長手方向の中央領域に、周囲よりも坪量が大きい高坪量部11NT(図9中、ドットで示した部分)を有している。高坪量部11NTでは、周囲と比較して、吸収性コア11を構成する液体吸収性素材(繊維)の坪量(g/cm)が大きく、また、当該高坪量部11NTは、左右方向に所定の幅を有し、且つ、長手方向に沿って延在している。また、高坪量部11NTは、吸収性コア11の厚みが周囲よりも厚くなっている。
【0099】
なお、図9図10A及び図10Bに示す高坪量部11NTでは、左右方向及び長手方向の外側に向かうにしたがって、吸収性コア11の坪量が徐々に小さくなっているが、これに限らない。例えば、高坪量部11NTでの吸収性コア11の坪量が一定であり、高坪量部11NTとその周囲との境界で段差が生じていてもよい。
【0100】
また、吸収性コア11の坪量の比較は、周知の方法で行えばよい。例えば、吸収性コア11の断面を目視で比較したり、対象部位を吸収性物品1から切り出して、各部の質量を面積で除した値(g/cm)を算出して比較したりしてもよい。
【0101】
なお、本実施形態のように、背側胴回り部30が腹側胴回り部20とは別部材として構成され、吸収性本体10と腹側・背側胴回り部20、30とが腹側接合部10RF及び背側接合部10RBによって接合され、さらに、吸収性コア11が高坪量部11NTを有する構成であっても、仮に、従来のパンツ型吸収性物品のように、高坪量部11NTが例えば、背側胴回り部30において、傾斜弾性部材35や背側接合部10RBと厚さ方向にみて重なるように設けられていると、背側胴回り部30の動きに併せて高坪量部11NTにまで影響が及ぶ虞がある。
【0102】
また、本実施形態の背側胴回り部30は臀部カバー部30Bを有しているが、臀部カバー部30Bを有さない場合、若しくは、臀部カバー部30Bの代わりに、ウェスト側部30Aをさらに長手方向の内側(下側)に延ばして、長手方向に並んで設けられている背側胴回り弾性部材33をさらに下側にまで設ける場合であっても、そのような背側胴回り弾性部材33と高坪量部11NTとが厚さ方向にみて重なるように配置されると、背側胴回り弾性部材33の動きに高坪量部11NTが追従してしまう虞もある。
【0103】
この点、まず、図9に示すように、高坪量部11NTの長手方向の一方側(前側)の端11NTaは、腹側接合部10RFの長手方向の他方側(後側)の端10RFdよりも他方側(後側)に位置し、且つ、高坪量部11NTの長手方向の他方側(背側)の端11NTbは、複数の背側胴回り弾性部材33のうち最も長手方向の一方側に位置する背側胴回り弾性部材(33dm)よりも長手方向一方側、若しくは、背側接合部10RBの長手方向の一方側の端10RBdよりも長手方向一方側に位置することが好ましい。
【0104】
なお、背側胴回り弾性部材33が、例えば、幅広の伸縮性シート等からなる場合は、高坪量部11NTの他方側(後側)の端11NTbは、最も長手方向の一方側に位置する背側胴回り弾性部材の長手方向一方側の端よりも一方側に位置することが好ましい。
【0105】
また、ここでいう背側胴回り弾性部材33とは、第1実施形態において図3で示した通り、左右方向に沿って連続的に延在している弾性部材を意味する。つまり、左右方向に収縮することで左右方向に沿ったフィット性を維持する弾性部材の動きの影響を受けない位置に高坪量部11NTが配置されることが好ましい。
【0106】
吸収性本体10と胴回り部20、30とが接合されていない部分(つまり、股下部分)は、胴回り部20、30に保持されないため、胴回り部20、30の動きの影響を受けにくく、独立して変形し易くなる。高坪量部11NTの長手方向一方側の端(前端)11NTa及び他方側の端(後端)11NTbが、腹側・背側接合部10RF,10RBや、背側胴回り弾性部材33の影響を受けにくい位置に配置されていることで、胴回り部20,30の動きに高坪量部11NTが追従しにくくなる。よって、胴回り部20,30の動きの影響を受けて高坪量部11NTのフィット性が低下することを回避し易くなり、高坪量部11NTにおける集中的な吸収性能を実現しやすくなる。
【0107】
また、本実施形態のように、臀部カバー部30Bに傾斜弾性部材35が設けられている場合、高坪量部11NTの長手方向他方側(背側)の端11NTbは、傾斜弾性部材35のうち最も長手方向の一方側に位置する傾斜弾性部材35dmよりも長手方向一方側(前側)に位置することが好ましい。また、傾斜弾性部材35の代わりに、左右方向に沿って連続的に延在する背側胴回り弾性部材33を、背側胴回り部30のサイド接合部2よりも下側(長手方向の一方側)にさらに設ける場合、高坪量部11NTの長手方向他方側(背側)の端11NTbは、そのようなサイド接合部2よりも長手方向一方側に配置される複数の背側胴回り弾性部材33の中で最も長手方向一方側に位置する背側胴回り弾性部材33の一方側の端よりも一方側に位置することが好ましい。
【0108】
サイド接合部2よりも長手方向一方側(下側)にある背側胴回り弾性部材33(傾斜弾性部材35)は、着用者の臀部と接する吸収性本体10を保持し易くし、そのような背側胴回り弾性部材33(傾斜弾性部材35)よりも一方側(前側)に高坪量部11NTの他方側端(後端)11NTbがあることで、身体の動きに追従する背側胴回り部30からの力を高坪量部11NTに伝えにくくすることができる。それにより高坪量部11NTのフィット性の低下を抑制する。
【0109】
また、図9に示すように、本実施形態では、高坪量部11NTの長手方向他方側の端11NTbと中央弾性部材17とが、厚さ方向に見て重なる部分を有する。高坪量部11NTでは、排泄液を多く吸収することができ、高坪量部11NTの長手方向一方側の端(前端)11NTaが腹側接合部10RFの他方側の端(下端)10RFdよりも他方側(後側)にあることで、腹側胴回り部20の動きに高坪量部11NTを追従させにくくし、尿道口への刺激を低減できる。また、高坪量部11NTの長手方向他方側の端11NTbが中央弾性部材17と重なることで、吸収性コア11をお尻の溝に密着させ易くなり、排泄液の伝い漏れを抑制できる。
【0110】
また、本実施形態では、高坪量部11NTの長手方向一方側の端11NTaと中央弾性部材17とは、厚さ方向に見て重ならない。高坪量部11NTは、過度に収縮すると剛性が高くなり、仮に、高坪量部11NTの長手方向一方側の端(前端)11NTaにまで中央弾性部材17が配置されていると、尿道口に対応する部分を押しつけるような形態になってしまう。高坪量部11NTの長手方向一方側の端(前端)11NTaまで中央弾性部材17が重ならないことで、吸収性コア11が尿道口に当たり続けるのを回避する。
【0111】
また、高坪量部11NTは、長手方向において、吸収性物品1の中央位置(CL1)から長手方向一方側の端11NTaまでの長さ11NT1が、中央位置(CL1)から他方側の端11NTbまでの長さ11NT2より長くなっている(11NT1>11NT2)。吸収性物品1の長手方向の中央位置(第1中央線CL1)は、着用時に最も股下の部分に配される部位であり、高坪量部11NTが前側(腹側)に長く設けられていることで、尿道口に当接する前側において高坪量部11NTが身体にフィットし、漏れを防止できる。また、後側にも高坪量部11NTが存在することで、仰臥位や側臥位の姿勢の際も身体との間の隙間を作りにくくし、漏れを低減できる。
【0112】
なお、高坪量部11NTと、吸収性物品1の長手方向の中央位置(第1中央線CL1)とは、厚さ方向に見て重ならない構成であってもよい。吸収性物品1の長手方向の中央位置である第1中央線CL1は、製品が二つ折りにされる基準線であるため、重なっていると高坪量部11NTに折り癖がつく虞がある。高坪量部11NTに折り癖が生じると、排泄口に当接する部分のフィット性が低下し、漏れの原因となる場合があるが、重ならない構成にすることで、高坪量部11NTに皺がつきにくくなり、フィット性の低下を回避できる。
【0113】
また、本実施形態の吸収性コア11も、吸収性コア11の長手方向の一方側の端部及び他方側の端部と比べて左右方向の長さが短い幅狭部(第1実施形態の図8の幅狭部11C参照)を有しており、高坪量部11NTは、長手方向において、当該幅狭部が存在する領域内に設けられていることが好ましい。幅狭部は、吸収性本体10の左右方向の両端部で不要な吸収性素材(繊維)が少ない部分であり、そのような幅狭部に高坪量部11NTを配置することで、吸収性物品1の装着時に太腿からの力が加わった際に、左右方向の中央部に配置されている高坪量部11NTのフィット性を妨げにくくすることができる。
【0114】
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【0115】
尚、本発明の一実施例として吸収性物品を例示したが、特に子供用又は大人用の使い捨ておむつであると、便を収容する空間が必要となる場合があり、上述の実施形態における吸収性物品1は後方部に便の収容空間を設けない構成となることから、ショーツ型生理用ナプキンに適用することが好ましい。また、上述の実施形態におけるパンツ型吸収性物品は、伝い漏れを抑制できるという観点から、経血の伝い漏れ防止にも好適に適用可能であるため、ショーツ型ナプキンに適用することが好ましい。
【符号の説明】
【0116】
1 パンツ型吸収性物品
2 サイド接合部
3 防漏壁部
10 吸収性本体
10B 他方側の端部
10F 一方側の端部
10R 接着領域
10RB 背側接合部
10RBd 端
10RF 腹側接合部
10RFd 端
11 吸収性コア
11C 幅狭部
11Ct 最小幅部
11Cta 端
11Ctb 端
11H 最大幅部
11NT 高坪量部
11NTa 端
11NTb 端
12 表面シート
13 バックシート(肌側シート)
14 シート部材(非肌側シート)
14R 接合領域
15 コアラップシート
16 防漏壁弾性部材
16ae 端
17 中央弾性部材
17be 端
17fe 端
18 脚回り弾性部材
20 腹側胴回り部
20de 他方側の端
21 腹側肌側シート
22 腹側非肌側シート
23 腹側胴回り弾性部材
24 カバーシート
30 背側胴回り部
30A ウェスト側部
30B 臀部カバー部
30de 一方側の端
30ue 他方側の端
31 背側肌側シート
32 背側非肌側シート
33 背側胴回り弾性部材
34 カバーシート
35 傾斜弾性部材
図1
図2
図3
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図10